障害のある学生の修学支援に関する検討会(令和5年度)(第2回) 議事録

1.日時

令和5年6月9日(金曜日) 16時~18時

2.場所

オンライン開催

3.議題

  1. 本検討会での論点等について
  2. 関係者へのヒアリング等
  3. その他

4.議事録

【竹田座長】  定刻となりましたので、ただいまから、「障害のある学生の修学支援に関する検討会(第2回)」を開催いたします。皆様には、御多忙中にもかかわらずお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 初めに、本日、矢澤委員が、10分ほど遅れての御参加との御連絡を頂いております。
 本日は、前回御議論いただきました内容を踏まえ、事務局が修正した「論点整理」について御決定いただきます。その後、ヒアリングとして、文部科学省「障害のある学生の修学・就職支援促進事業」に採択されている、東京大学、京都大学の取組について、近藤委員、村田委員から御説明いただきます。
 まずは、事務局より配付資料の御確認をお願いします。
【小栗補佐】  文部科学省学生支援課課長補佐の小栗でございます。本日は、御多忙中にもかかわらず御出席いただき、ありがとうございます。
 配付資料につきましては、議事次第のとおりとなっております。過不足がありましたら事務局まで、議事の途中でも結構ですので、遠慮なくお知らせいただければと思います。
【竹田座長】  ありがとうございました。
 それでは、最初の議事、(1)番「本検討会での論点等について」に関し、資料1-1及び資料1-2の御説明をお願いいたします。
【小栗補佐】  第1回検討会及び検討会の後、委員の先生方から多くの御意見・御指摘を頂きました。これから御説明する資料1-1に反映しているもの以外にも多数の御意見・御指摘を頂きましたので、まずは、頂いた御意見・御指摘を簡潔に御紹介させていただくとともに、その対応や考え方について御説明させていただきたいと思います。そして、その上で「論点整理」の修正案について御説明させていただければと思いますが、よろしいでしょうか。
 では、まず第1回検討会及び検討会後に頂いた御意見及びその対応案について御説明させていただきます。
 まず、現在、文部科学省において改正作業が進められている「対応指針」の進行状況等について御意見を頂きました。「対応指針」の進行状況等につきましては、次回以降の検討会で、特別支援教育課より御説明させていただければと思います。
 続いて、職員対応要領について御意見がございました。私学においても職員対応要領の策定が必要ではないか。部署・附属施設ごとの職員対応要領の位置づけの必要性。それから、改正差別解消法の周知を徹底し、各大学の職員対応要領の改正を促すべきなどの御意見がございました。
 まず、私学における職員対応要領につきましては、御承知のとおり、法的に策定の義務を課されているものではございませんが、前回の検討会で自主的に職員対応要領に当たるものを策定している私立大学の例の御紹介もございました。つきましては、そのような大学にヒアリングを行い、「第三次まとめ」においては一つの在り方として紹介することとしてはどうかと考えております。また、部署・附属施設ごとの職員対応要領の策定や改正につきましては、その有効性や必要性を「第三次まとめ」においても盛り込むこととしてはどうかと考えております。
 続いて、今回の検討の対象の範囲に関する御意見についてでございます。通信教育課程や大学院、単位互換の学生を、対象の範囲として明確にすべしとの御意見につきましては、対象の範囲であることが明確になるよう、資料1-1の修正案に反映しております。一方、ポスドク・教職員を検討の対象の範囲とするという御指摘・御意見につきましては、この検討会が、障害のある学生の修学支援という位置づけもございまして、そこでポスドク・教職員を議論すると、議論の対象が広がり過ぎてしまうと考えられますので、検討の範囲からは外したいとは思いますが、一方で、今回の差別解消法の改正に伴って合理的配慮が義務化されるのは、学生だけではございません。そこは間違いございませんので、「第三次まとめ」の中において、学生のみならずポスドクや教職員も合理的配慮の対象であることに留意するような旨は触れたいと考えております。また、留学生につきましては、特に留学生固有の課題として挙げられるものがあれば、そこは「第三次まとめ」の中でも触れたいと考えております。また、中小規模や単科大学、短期大学、通信制課程といった私学の多様性についても、学内の体制整備や地域社会資源との連携の中で触れていきたいと考えております。また、専修学校・各種学校につきましては、「第二次まとめ」と同様の記述で、「第三次まとめ」においても明記することとしたいと考えております。
 続きまして、根拠資料に関する御意見につきましても、「論点整理」の中でも一つの論点として盛り込んで、反映させております。
 また、国連の障害者の権利に関する委員会からの総括所見との整合性に関する御意見もございました。こちらにつきましては、政府における議論の進捗を踏まえて検討していきたいと考えております。
 合理的配慮や紛争防止に関しまして御意見がございました。合理的配慮の不提供と不当な差別的取扱いとの関係に関する御意見、大学等として合理的配慮をどのように捉えるべきか議論してほしいという御意見、合理的配慮の判断に時間がかかり過ぎている事例があるとの御指摘、高校から大学への移行や、保護者への配慮・対応に関する御意見などがございました。これらの御意見につきましては、これから御説明させていただく「論点整理」の中の「障害学生支援の基本的な考えに関すること」の項目を見直すとともに、今後の議論を踏まえ、「第三次まとめ」に反映していきたいと考えております。
 入試に関する御意見として、入試の前のオープンキャンパスや説明会での差別的取扱いの事例の御指摘や、多様な入試形態を持つ私学における体制整備の必要について御指摘がございました。オープンキャンパスや進学説明会につきましては、「『学生』の範囲」の中の「大学等に入学を希望する者」において、オープンキャンパスや進学説明会に参加する者が含まれることを追加するとともに、「第三次まとめ」にも反映したいと思います。また、入試における合理的配慮につきましても、私学の入試の多様性に言及しつつ、いずれの入試においても合理的配慮を適切に実施する旨を明記することとしてはどうかと考えております。
 オンラインによる授業に関する御意見につきまして、通信制課程における合理的配慮、オンライン授業のアクセシビリティを充実させるための取組、対面とのハイブリッドの在り方等、いずれの御指摘も今後の議論を踏まえて、「第三次まとめ」の中に反映していきたいと考えております。また、合理的配慮としてのオンライン授業と、オンライン授業で認定できる単位数の上限については、一度、文部科学省でも考え方を整理したいと考えております。
 専門人材の育成に関する御意見につきましては、検討会での議論を踏まえて「第三次まとめ」に反映していきたいと考えます。
 就職支援や地域との連携に関しましても、委員の先生方からの御指摘に基づいて、資料1-1に具体的な連携先などを追記しております。
 また、資料1-1の「検討すべき事項」内の各項目に関する個別の御意見も頂いております。これらにつきまして、項目の移動や不要項目の削除を行うとともに、追加の御意見につきましても、今回の「論点整理」の中には反映されていないところもありますけれども、今後の議論を踏まえて「第三次まとめ」の中では反映していきたいと考えております。
 また、読書バリアフリーに関する御指摘につきましても、大学図書館における対応として盛り込んでいきたいと考えております。
 また、「第三次まとめ」の周知に関しても御意見を頂いております。こちらも、「第三次まとめ」取りまとめ直後にどのような周知を行うかということについては、事務局で検討するとともに、国立大学の学生担当理事・部課長会議でございますとか、私学団体などが開催する会議・研修会などの場を活用して、周知に努めてまいりたいと考えております。
 このほかにも御意見を頂いております。まず予算に関するものとして、国立大学の運営費交付金に関する御質問がございましたので、回答させていただきます。詳細が分かるものをということでございました。
 まず運営費交付金の中では、障害者向け情報発信促進等経費というものが平成25年度から措置されております。これは、平成24年度の本検討会の「第一次まとめ」等も踏まえて措置されたものでございまして、既に障害のある学生への支援を専門的に担当する部署を設置し、専属の教職員を配置している大学に対して教員経費を計上し、措置するものでございます。この経費につきましては、平成30年度に運営費交付金の基幹経費に計上されておりますが、それまでの25年度から29年度の間に56大学に対して配分を行っております。
 また、令和4年度以降は、ミッション実現加速化経費の共通政策課題分として、障害学生支援分というものを盛り込んでおります。具体的には、障害者基本計画の成果指標に基づく各大学の取組状況を調査いたしまして、現在、取組ができていない大学には、専門的な知識を持った教員を採用することで適切に支援を進めるための教員人件費相当額を、取組を拡充する予定の大学等には、マンパワーを補い、一層支援を進めるための事務職員人件費相当額をそれぞれ措置しておりまして、令和4年度に24大学に配分したところでございます。
 運営費交付金については、以上でございます。
 また、私学助成についても御意見をいろいろと頂きました。私学助成につきましては、頂いた御意見を私学助成課とも共有しまして、今後の予算の検討に反映していきたいと考えております。
 また、障害学生数のデータに関しまして、知的障害の学生数について御質問がございました。こちらにつきましては、本日、オブザーバーで参加していただいております日本学生支援機構より御説明をお願いしたいと思います。竹林副部長、よろしくお願いいたします。
【独立行政法人日本学生支援機構】  日本学生支援機構学生生活部の竹林でございます。
 前回の検討会で御質問がございました、知的障害のある障害学生に関するデータでございますけれども、私どもが毎年度実施しております「大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査」におきましても、この点については把握しております。ただ、分類上は「精神障害」の中に分類されておりまして、また精神障害と発達障害が重複している場合には、「その他の障害」の区分に知的障害の学生が含まれております。具体的には、調査票の診断名欄に「知的障害」といった回答がなされていれば、その学生については、精神障害の中の特に知的障害があるということが分かります。あくまでも大学側からの回答があった分でございまして、正確な数ではないのですけれども、令和3年度の実態調査の「精神障害」及び「その他の障害」の中で、診断名欄に「知的障害等」と記載のあったものを数え上げてみたところ、令和3年5月1日現在で141人となっております。
 以上でございます。
【小栗補佐】  ありがとうございました。
 頂きました御意見・御指摘に関する対応の御説明は以上となります。
 続きまして、資料1-1「障害のある学生の修学支援に関する検討会における論点整理(修正案)」について御説明させていただきます。資料1-1を御覧ください。なお、資料1-2は資料1-1の修正前のものとなっておりますので、基本的に参考として御覧いただければと思います。修正箇所はアンダーラインを引いた上で、どなたの御意見を踏まえたものなのかを括弧書きで記載しております。なお、全体を通じて、前回は「~してはどうか」と記載していたものについては、「~とする」と修正しております。
 初めに、「Ⅱ.検討の対象範囲」についてです。ここでは、白澤委員、殿岡委員、中野委員、南谷委員、村田委員の御意見を反映いたしました。大学に入学を希望する者について、「当該大学の入学試験を受験する者のみならず、当該大学が開催するオープンキャンパス・進学説明会等に参加する者を含む」と明記いたしました。続いて、「学生には」として、「大学院生及び通信教育課程で学ぶ学生」を明記したほか、「第二次まとめ」では曖昧だった、交流校との交流に基づいて学ぶ学生を、「国内の協定校との協定に基づいて学ぶ学生」と「海外の交流校との交流に基づいて学ぶ留学生」と、分けて記載するように修正いたしました。
 また、一番最後に書いておりました、障害の根拠資料に関する記載は、「検討すべき事項」に移動いたしました。
 続きまして、「Ⅲ.検討事項の整理」の「検討すべき事項」の修正箇所について御説明いたします。
 (1)「障害学生支援の基本的な考えに関すること」のところで、最初に、障害の「社会モデル」の理解が正しく行われないと、障害学生支援が適切に行われないのではないかとの考えから、「障害の『社会モデル』の理解に関すること」を追加いたしました。また、川島委員の御指摘を踏まえ、2ポツ目、「『合理的配慮の不提供』と『不当な差別的取り扱い』の関係の理解」という形に修正いたしました。
 また、最後のポツで、「障害の根拠資料に関する考え方に関すること」をここに移動いたしました。
 続いて、(2)「学内の体制整備や合理的配慮の提供に関すること」でございます。ここにつきましては、高橋委員からの御指摘を踏まえて、(5)に当初書いておりました「学内の学生支援部署の連携に関すること」を移動いたしました。
 続いて、(4)「大学等と国・地域・社会資源等との連携に関すること」でございます。タイトルに「国」を追加いたしました。また、タイトルと重複する項目は削除するとともに、白澤委員、南谷委員の御指摘を踏まえ、「国や政府機関等の取組の活用に関すること」を追加、殿岡委員の御指摘を踏まえ、「障害学生や大学等のサポートを行う民間団体との連携に関すること」を追加いたしました。
 最後に、(5)「障害学生の就職等の支援に関すること」でございます。まず、タイトルでございますが、当初は「就職支援」としておりましたが、進路が必ずしも就職だけではないとの御指摘を踏まえまして、タイトルに「等の」を追加いたしました。また、前回、「障害学生の就職支援に関すること」というのを1ポツ目に書いておりまして、これがタイトルと同じではないかという御指摘がございました。ここにつきましては、「障害学生に対する低年次からの卒業後の進路への意識付けに関すること」という形に修正させていただければと思います。また最後の、連携に関する箇所は、村田委員の御指摘を踏まえ、「企業・自治体・支援機関等」と修正いたしました。
 説明は以上です。どうぞよろしくお願いいたします。
【竹田座長】  どうもありがとうございました。
 ただいまの御説明について、御意見、御質問等はございませんでしょうか。よろしくお願いいたします。挙手ボタンでお願いします。白澤委員、お願いいたします。
【白澤委員】  筑波技術大学の白澤です。
 細かいところで、見落としていたのですけれども、「検討の対象範囲」の中の「学生の活動の範囲」のところで、入学、学級編制と文章が続いていると思うのですが、その後半で、「課外活動への参加、就職活動等、教育に関する全ての事項」と書かれているのですが、これは「教育研究」であるべきではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。ほかの部分でも、やはり大学院生の存在というのは忘れてはならないとして合意されているかと思うので、文言として加えておいたほうがいいのではないかと感じました。以上です。
【竹田座長】  いかがでしょうか。まず御意見を頂いて、それに対してまたお考えなども、多少時間がございますので、ディスカッションできればと思います。ほかの委員の先生方、いかがでしょうか。
【竹田座長】  中野委員、よろしくお願いします。
【中野委員】  ありがとうございます。慶應大学の中野です。修正の提案が2つと、それから今後の議論のお願いが2つございます。
 まず修正の提案ですが、先ほどの御説明で、私立大学の対応指針等について、様々、議論の中ではこれから論じて、整理の中に最終的には取り込んでいくという御説明があったわけですが、今回の「第三次まとめ」の中で、私立大学へのアプローチというのはとても重要かと思いますので、論点整理の項目の中のどこかに明記していただいてもよいように思うのですけれども、いかがでしょうか。これが1点目の修正の提案です。
 それから、2点目の修正の提案なのですが、(1)「障害学生支援の基本的な考えに関すること」の中に、「合理的配慮提供に関わる大学等の責任(コンプライアンス)と建設的対話の重要性に関すること」という表記がございます。これは、内容としてはよいと思うのですが、コンプライアンスと建設的対話というのは、確かに相互に関連することではありますが、内容としては異なる内容だと思いますので、項目を分けて記載していただいたほうがよいのではないかと思います。これは御検討いただければと思います。
 それから今後の議論のお願いなのですけれども、これまで我々の提出した意見について先ほど、とても丁寧に御説明いただいたのですが、私自身振り返ってみて、表明することを失念していた点がございましたので、追加で意見表明させていただきます。
 まず1番目です。読書環境の整備については先ほど御回答いただいたのですが、読書環境とは別に、ホームページを含む各種情報へのアクセシビリティの問題があります。これは御存じのように、令和4年5月25日に成立した「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」に呼応する部分かと思います。今後の議論の中で、ぜひこの推進法との関係についても、読書環境とは別に議論ができるとよいのではないかと思います。
 それから2番目は、(4)「大学等と国・地域・社会資源等との連携に関すること」についてです。これは、障害者総合支援法に規定されている「移動支援事業」並びに地域生活支援事業の中に規定されている「意思疎通支援事業」の2つの事業との関係の検討を含むという意味を含んで書いていただいたのだと思います。移動支援事業と意思疎通支援事業の2つの事業は、大学における修学ととても密接な関係があると思いますので、今後の議論の中で、ぜひ議論を深めていくことができるとよいと考えております。
 以上でございます。
【竹田座長】  どうもありがとうございました。
 そのほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 今、お二方の委員から出た、白澤委員からは、割と、もしかしたら大きめなテーマかもしれないのですけれども、教育に研究を加えるかということで、これは多分、一次、二次のときにも少し議論があったかもしれませんが、扱う内容は、若干というか、かなり違う部分が出てくる可能性はあるんです。ですので、ほかの委員からもこの後、少し御意見を頂ければと思います。
 それから中野委員からは、今の状況に鑑みて、私立大学を、特出しと言うとちょっと変ですけれども、かなり強調したほうがいいのではないかという御意見とか、あと合理的配慮とコンプライアンスは少し別物だという、おっしゃるとおりなのかなということで、その辺は整理したほうが……、整理というか別建てにしたほうがいいという御意見だったと思いますけれども。
 それから、情報アクセシビリティの問題。これは、継続して従前から言われていたことを、さらに強調する必要はあるのかなと思います。情報公開ということで、いろいろな観点でやっぱり重要な側面もあるし、法的なものも変わってきておりますので、その辺の御意見を頂きました。
 あと、意思疎通支援事業、移動支援事業という、別の進行している事業との整合性というあたりを論点の中に少し加えたらどうかという御意見だったかなと思います。中野委員のほうは、大体そのとおりかなと思います。
 それで、必要性はともかくとして、議論の対象にどこまでできるかというのは、個人的に少し思うのは、研究を対象範囲とするかどうかということは、多分、現場感覚でも大きな問題がいろいろあることは事実かなと思うのですが、ほかの委員の先生方、少し、研究というものも書くか、あるいはその辺、連続性があるということは御承知のとおりなので、もし御意見を頂ければと思います。よろしくお願いします。
 南谷委員、よろしくお願いします。
【南谷委員】  大学入試センターの南谷でございます。
 前回の検討会で、大学院生が学生としてちゃんと意識されるようにということで提案させていただいて、こちら、事務局のほうで反映いただきまして、どうもありがとうございました。また、場合によってはポスドクのような存在にもちょっと関心を広める必要があるのではないかという点に関しても、今回、言及いただきまして大変感謝しております。
 私は、やはり教育の中でも非常に研究寄りの部分というものを、どうサポートしていくか、支援体制を構築するかということに、かなり興味がありまして、その観点からお話しさせていただこうと思うのですが、例えば大学院生において博士課程で博士論文を提出するには、国際学会で3本以上、研究を発表することが、実質的に条件として求められているような場合、あるいは修士論文でも国内学会で発表を行うように、あるいは卒業論文を書くような場合でもポスター発表をするようにというような、内規といいますか、実質的にそういうルールを持たせて教育を行っている場合があります。
 今、三つほど例を出しましたが、これらの活動というのは明らかに研究を要求しているわけです。だとすると、学生の教育の一環として、彼らに自主的に研究を推進させるということが常態化している部分、求められている部分があると。そうだとすると、少なくともそういった形での研究というものをサポートするということを明確化しないと、我々の今回の検討会の目的としては、趣旨にかなわない部分も出てきてしまうのではないかなと思っています。つまり、やはり研究というものに関しても、ちゃんとはっきりした位置づけをして認めて、支援していくべきではないか、配慮に含めるべきではないかというのが私の意見となります。
 以上です。
【竹田座長】  ありがとうございました。続きまして、殿岡委員、お願いいたします。
【殿岡委員】  殿岡です。
 今の南谷先生の先ほどの発言と関連づけながらいこうと思います。私たち障害学生当事者の活動の中でも、修士あるいは博士課程で頑張られている障害学生を応援しているところです。その中で、教育と研究が高等教育において不可分であるということはもちろんなのですが、学内のそういった合理的配慮だけではなくて、地域の生活支援や地域の福祉支援との関係も結構大事になってきていて、ポストドクターになったときに、例えば大学修学支援事業が使えるのかとか、地域生活支援事業が使えるのかとか、いろんな福祉分野との連携もそうですし、こういった分野で整理がついていない分野がまだまだ多くあります。こういった課題を整理できるのはこの修学支援の検討会以外に、現行、日本には置かれていないので、ぜひ今回の検討会で対象として加えていただいて、一定の整理ができてくると、安心して障害学生が研究できる。そして、結果として安心して障害学生が学問的成果を上げることができる。そういったところに導いていけたらいいのかなと思います。以上です。
【竹田座長】  どうもありがとうございます。それでは村田委員、よろしくお願いします。
【村田委員】  村田です。よろしくお願いいたします。
 障害学生支援の現場において、これが教育なのか研究なのかということを区切って支援を提供するということはあまりないかなというのが実感です。例えば卒業論文を書くというのが教育なのか研究なのかとか、それは修士課程などでも同様で、そういう意味では、学生にはもちろん大学院生等も入るので、その学生の活動の一環である研究というものに、この場で言及していくこと自体には賛成です。もちろん時間的な制約もあるので、どの程度細かく議論できるかというのは会議の進捗次第かとは思いますが、言及していくことには賛成です。
 もう一つの観点としては、研究に関してこの会議で言及していくということになると、やはり、いわゆる「第三次まとめ」みたいなものを出したときの影響の及ぶ先が、より幅広くなるんじゃないかということを期待しています。つまり、大学等の各機関で研究についての支援もしっかりやっていきましょうというだけのメッセージではなくて、いわゆる学協会に対してのメッセージにもなるような気がして、非常にそこを期待しています。研究活動は学内に閉じるということは少なくて、むしろ学会等にも出ていく。そのときの合理的配慮等の対応というのは、主催者である学協会側にも責務があるものだと考えていますので、学協会側に十分な理解・対応の能力がないということになってしまうと、骨抜きになってしまうのではないかと。この点について本検討会で言及していくということは、最終的に目指していく報告書「第三次まとめ」の中でも言及できる糸口になるような気がしていますので、その点においても、検討会で言及していくことの重要性を感じております。
 以上です。
【竹田座長】  ありがとうございました。
 神藤委員、お願いします。
【神藤委員】  関西大学では、以前、聴覚障害のある大学院生を支援したことがあるのですけれども、そのときに、手話通訳士をつけてほしいということで、つけるのですけれども、その手話通訳士さんも、授業の内容が高度であって、なかなか通訳が難しいというような現状があったので、大学でもそういうふうに努力はしますけれども、手話通訳士の養成であるとか、そういう情報保障について国ももっと力を入れるようにしていただければなと思います。お金もかかりますので、研究者に支援できるようなお金を出していただくとか、やはり国を挙げての支援に結びついたらいいなと思います。以上です。
【竹田座長】  ありがとうございました。
 では中野委員、お願いいたします。
【中野委員】  中野でございます。
 大学院設置基準によれば、「教育研究上の目的」(第一条の二)と記されております。また、修士や博士課程におきましては、専門分野における研究能力等を養っていく(第三条、第四条)ということが目的になっております。どこまで研究を取り上げていくかについては、今後の議論だと思いますが、一般論として考えると、修士や博士課程に在籍している学生が大学院で学ぶ上では、研究能力は必要不可欠だと思いますので、研究も支援の対象にした方が良いと思います。以上です。
【竹田座長】  ありがとうございました。
 いかがでしょうかね。大方の委員……、大方というか、ほとんど全ての委員の先生方からは、その範囲も、その取上げ方とか示し方は今後の御議論だとは思うんですけど、教育と研究は、現実問題としては、実際は支援されているところがかなり多いかなとは思いますが。
 川島委員、お願いいたします。
【川島委員】  川島です。ありがとうございます。
 大学がその研究環境の整備を、他の学生と同じように、障害のある学生にするという意味では、当然、大学は研究に関しても合理的配慮の対象となるし、事前的改善措置の対象にもなると言えると思います。以上です。
【竹田座長】  ありがとうございました。
 ある意味では、これまでの検討会ではまだ踏み込み切れていない部分というか、そういう部分ではあると思うのですが、従来からいろんな方がおっしゃるように、修士課程の学生も増えてきていたり、博士に行って実際どういう形で支援ができるのかという、研究の分野もいろいろであったり、それから先ほど村田委員に非常に重要な観点の御指摘を頂きましたが、学協会との関係。学協会側での合理的配慮の提供とか、あるいは、例えば移動する場合の、移動するための運送事業者の合理的配慮とか、いろんな部分が関係してくるわけですが、そういう理解を進めるという意味でもすごく重要なような気もしますが、実際、取上げ方とか書き込み方に関しては、ちょっと複雑な問題もあるかと思いますので、この場でというよりは、追記・加筆事項を、先生方、今いろいろな御意見を頂きましたので、それを踏まえまして事務局で調整して、メール等で皆様に御照会するような形で、整合性を取らせていただければと思いますが、よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。そのほか、いかがでしょうか。大丈夫でしょうか。
 では、1につきましては、そのような形で進めさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
【竹田座長】  殿岡委員、よろしくお願いします。
【殿岡委員】  殿岡です。
 遅くなりましたが、日本学生支援機構の竹林副部長から、知的障害の統計を提出いただき、ありがとうございました。100名を超える在籍が確認できたということで、大変意義があることではないかなと思うと同時に、知的障害のある学生への配慮ということも当然、想定されていくべきものとして認識できたのではないかと思います。
 私からは、以前にメールでもお送りしたのですが、「検討すべき事項」1の「基本的な考え」の中で、教育の評価と不当な差別的取扱いについてということで提案させていただいたのですが、これは今、不当な差別的取扱いは「理解」という項目になってしまっているのですが、今後、深めていくに当たって、これの項目は、もう一個、今後増やしていただけるのかどうか、確認させていただければと思います。
 以上です。
【竹田座長】  殿岡委員、すみません。(1)番の社会モデルの部分の理解に関することということを項目として追加するかどうかという確認でよろしいでしょうか。
【殿岡委員】   (1)あるいは(2)の中に、教育の目的・内容から不当な差別的取扱いを除去するという項目をぜひ入れていただくようにということで、前回書かせていただいたのですけれども、不当な差別的取扱いのことが「理解に関すること」となっているので、その辺をちょっと深めていくには別項目のほうがいいのかなと思うのですが、いかがでしょうか。
【小栗補佐】  すみません。事務局から御説明させていただきたいと思います。
【竹田座長】  お願いします。
【小栗補佐】  殿岡委員から、不当な差別的取扱いの除去に関することを入れるべきという御意見をメールでも頂いておりました。このことにつきまして、事務局としての考えとしては、こういった理解に関することの中で、除去するということが必要だということに触れていけばよいのかなと考えており、ここには反映していなかったというところがございます。以上でございます。
【竹田座長】  私からですけれども、多分、川島委員に前回、御指摘いただきました、合理的配慮の不提供と不当な差別的取扱いの関係ということ、それから、先ほどの議論で中野委員から別建てにしたほうがいいのではないかという御提案のあったコンプライアンスの問題とか、この辺が、項目として出ている中での御議論の中で、不当な差別的取扱い、当然、禁止事項ですけれども、そういった議論も出てきて、それが取りまとめの中に、ある程度きちんと反映されていく形があるのではないかなと思いますので、多分この辺はかなり、今回すごく社会モデルの理解という、委員の先生方にとってはある意味では当たり前のことが、やはり私立大学を含め、対象校がすごく増えるということで、改めて出てきている一番の大前提になるかなと思いますので、今、殿岡委員が言われたようなことも当然、論点、議論の中では出てくるのかなと思いますので、今後の議論の中で、またいろいろ御意見を頂いて反映できればと思いますが、よろしいでしょうか。
【殿岡委員】  了解いたしました。引き続き深めていければと思います。ありがとうございます。
【竹田座長】  ありがとうございました。
 それでは次の事項に移らせていただいてよろしいでしょうか。
 それでは、次の議事(2)番「関係者へのヒアリング等」に入らせていただきます。まず、今、御議論いただきました「論点整理(案)」に基づき、各論点に幅広く関連する、文部科学省の「障害のある学生の修学・就職支援促進事業」にこれまで採択されております、東京大学、京都大学の取組について、近藤委員、村田委員の順に御説明いただきます。
 それでは、近藤委員から御説明をお願いいたします。
【近藤委員】  東京大学の近藤です。よろしくお願いいたします。
 画面の共有は私のほうでさせていただいてよろしいでしょうか。
【小栗補佐】  事務局です。差し支えございません。よろしくお願いいたします。
【近藤委員】  今、画面を共有いたしました。ありがとうございます。
 それでは今から、東京大学、障害と高等教育に関するプラットフォーム、これは略称でPHEDと呼んでおりますけれども、そちらの枠組みと取組について、15分ほどで御紹介させていただきたいと思います。
 まず、上のほうに載っているのは、PHEDのウェブサイトの映像を載せております。このプラットフォーム事業の大きな枠組みについて御説明しております。
 このPHEDなのですけれども、障害のある学生の修学・就労、社会活躍を支えるため、大学及び企業によるプラットフォームをつくるということで、「障害学生支援スタンダード」、これは後ほど触れますけれども、大学の中での障害学生支援というものを枠組み化して構造化したスタンダード集がございますけれども、そちらに基づいて、各種ウェビナー等による研修事業であったり相談事業を行っております。その他、自律的な障害のある学生たちの学習であったり、一部、生活であったり、そういう面も支えるということで、支援機器の活用ということも非常に重要な側面になってきておりますので、この支援機器ライブラリーを用意して、それを公開して、関係者と共有、共に使うというやり方を行っております。それから、タウンミーティングを通じた地域連携ネットワークの構築を行っております。連携団体としては、通称、AHEAD JAPANと呼ばれる全国高等教育障害学生支援協議会の皆様と、あとは略称ACEさんと呼ばれる企業アクセシビリティ・コンソーシアム、それから聴覚障害についてはPEPNet-Japanの皆様との連携によって取組を行っております。
 こちらがPHEDの事業の柱なのですけれども、1本目の柱は専門的相談事業です。全国の大学や学生、教職員からもあるのですけれども、様々な相談が寄せられますので、そちらに高い専門性を持った形で相談対応をしていくということを行っています。
 2本目の柱は専門的研修事業なのですが、やはり大学の中で、質の高い障害学生支援を担う人材を育てていくということで、先ほどお話ししたスタンダード集に基づいた研修の展開を行っております。
 それから三つ目が地域連携の促進事業ということで、こちらは我々は通称、タウンミーティングと呼称しているのですけれども、全国の大学の中に、地域のハブになっていただいて、そこを中心に、大学だけではなく、企業であったり、行政の関係者であったり、中間支援事業者であったり、様々な皆様にその地域の中でお集まりいただいて、そこで、大学の在学中のみならず、卒後の活躍についてどのような連携ができるのか、地域の社会課題はどういうことか、そういったことを様々に議論していただく。こちらを我々のほうでバックアップさせていただくという取組を行っております。
 代表校としては東京大学が行っておりますけれども、密に連携する形で事業を行っていただいているのは、筑波大学の皆さんと富山大学の皆さんです。さらに、参加校の皆さん、それから参加機関の皆さんとの連携なのですけれども、こちらは代表校としては、私たちと連携校で、富山大学・筑波大学の皆さんと連携していますが、実際的には、先ほどのスタンダード集に8の領域を設けておりますので、その8つの領域に、今まででいうと大体40ぐらいの大学であったり、あとは企業・団体の皆様に、専門委員として御参加いただいております。そうした皆様と連携する中で、各部会ごとに質の高いスタンダード集をつくっていただいておりますので、そういった皆さんとの連携をしながら運営しているという状況になっております。現在、先ほどの専門部会の方を含めて、今、全国77の大学の皆様が参加校としてPHEDのネットワークに御参加くださっており、参加企業・団体については67社の皆様にこの連携に参加していただいております。
 先ほど述べましたように、密に連携しているのは、特に専門部会の委員の皆様なのですけれども、参加校や参加企業の皆様には、相互に、イベントであったり、障害学生支援に関する、もしくは就労への移行に関するようなイベント情報などを様々に交換して、こちらをウェブサイト上、もしくは私たちが設けておりますメーリングリストというかメールリストで、情報を交換するということを行っています。
 先ほど申し上げた8領域の専門部会、私たちはSIGと呼んでいるのですけれども、このSIGは、ある程度恣意的なのですけれども、8つの専門領域を設けています。そこで多くの、全国で第一線で御活躍の皆様に御参加いただいて、各領域のスタンダードをつくっていただいているところです。例えば、アクセシビリティをテーマにした部会。それからあと、法の理解、法的根拠等、そうしたところを考える部会。それから、テクノロジー、支援技術に関する部会。さらには、配慮の根拠資料といったものに関する部会。学内のソーシャルワークがどうしても必要になるので、この学内のソーシャルワークに関する部会。さらに、これは少し分かりにくいテーマなのですけれども、「要件と基準」と申しまして、例えば教育実習に行く学生たちに、合理的配慮の提供は当然必要になってくるわけなのですけれども、そこには、実習先の機関での職務を遂行することということが同時に求められますので、その職務遂行と合理的配慮、その間の基準をどう考えるかという非常に難しい問題に取り組んでいただいております。それから、キャリア移行についてです。これは、インターンシップであったり、地域の大学外の様々な就労移行の支援に関する社会資源もございます。そうしたものの活用であったり、企業との取組の共有であるとか、そういったことをテーマにしております。そして最後は防災ですけれども、防災については、やはり各大学の中で、特に地震であったり水害であったり、様々なことが特によく起こる地域などもございます。そうしたところで、障害という、障害のある学生がそこにいるという観点を強調するための防災の部会で、非常に活発に活躍していただいております。
 私たちが考える、このスタンダード集の各大学での活用なのですけれども、こちらは現在、実際にこうした進め方はどうかということで、幾つかの大学で進めているところです。具体的にどういう進め方をするかというと、新しく新任で来られた教職員の方、障害学生支援に関わる方に対して、このPHEDのスタンダードは8領域でかなり詳しいものが用意されていますので、まず一つの領域のスタンダードを読み込んで、自己の知識や経験、スキルを、項目ごとに評価していただきます。その後、PHEDでは、各SIGの皆様に、スタンダードに関係する動画を作っていただいたり、資料を作っていただいたりしていますので、それらを実際に閲覧することによって、より深い理解を促すようなことをやっていただいております。その次に、大学の中にスーパーバイザー役の方が、自校の条項では、今の大学、私たちの大学ではこういう状況なんですよとか、この部分に課題が残されていますよといったようなことを、スーパーバイザーを通じて研修・情報を提供する。これをワンセットとしまして、これを8領域のスタンダードそれぞれについて実施するということを、今、実際に行っていただいております。実施順序はこのような順序で、法の理解から始まって防災まで、順々に実施しておいていただくということをやっていただいています。このやり方のマニュアルみたいなものを今年度は作成して、それも各大学の皆様にお配りすることを計画しているところです。
 さらに、個別相談については、もう幅広に受け付けております。いつも何かしら、電話であったり、メールであったり、直接の来訪であったり、様々な方から御相談を頂いております。これは、障害学生、障害のある教職員、それから大学や障害学生支援の関係者、もしくは一般の学生さんです。支援を担当している学生さんとかから気軽に御連絡いただくこともあります。もしくは、企業や自治体の支援関係の皆様から御連絡いただくこともあります。
 ただ、中には非常に高い専門性を必要とするような対応事項もありまして、私たちのところで対応を進めておるのですけれども、中には、かなり重めの相談というか、いわゆる訴訟に近いような形の相談も、そう少なくない形でやってまいります。そういったところには、専門部会の一部の皆様からの専門的な助言を得ながら、相談対応を進めているところです。
 ATライブラリー。これは支援機器のライブラリーで、先ほど申し上げましたけれども、こちら、ぜひウェブサイトを御覧になっていただければと思いますが、ウェブサイトに、全てではないですが、一部掲載しておりますが、100種類以上の支援機器を用意して、かつ、そこに支援機器のことがよく分かっている専門家を配置しておりますので、個別相談等、それから無料での大学もしくは企業への貸出しということも行っております。貸出しの期間については2週間程度と一定期間の制限を設けさせていただいております。
 タウンミーティングについては、全国、様々な参加機関、今、77大学に御参加いただいておりますが、そういった方々に折々お声がけをして、全国の様々な地域でネットワーク会議を開くということを、およそ2か月に1回程度、開催させていただいております。過去に開催したタウンミーティングについては、ここにありますウェブサイト、PHEDのウェブサイトのタウンミーティングの項目のところに掲載しておりますが、全国、お声がけいただいた様々なところで、大学の方にハブになっていただいて、各地の大学の方に連携の核になっていただき、地域の企業の皆様であったり、あとは行政の皆様、さらに、障害者雇用というのは今、大企業が中心になって進めているところではあるのですけれども、大企業にはなかなか本社でしか、東京と大阪にしか採用の機能がないこともございますので、そこは大企業の人事を通じて支社の方にもお越しいただいて、障害のある学生のことを知っていただいたりしています。こういったところでネットワーキングを行うことで、その地域の中に横のつながりをつくっていただくということをやっています。
 何度か、このタウンミーティングを実施してくださったところでは、次のステップとして、例えばインターンシップであったり、連携の独自のイベントであったり、そういうことをやりたいという声が上がってまいりますので、そこでは、例えばまず実施が簡単な連携としては、学内に人事の方にお越しいただいて、1対1で学生と話をする、そこに支援部署が関わってサポートするといったような、学内の企業面談をお勧めしています。こちらは実は、PHEDとも連携しております、この後、話してくださる村田先生のところのHEAPでマニュアル化してくださっていたりしますので、そういったものをお示ししています。次はジョブシャドウイングといって、実際の業務に関わるわけではないのですけれども、企業の中で働いておられる社員の方に1日、障害のある学生が張り付いて、ずっとモニタリングをするというか、シャドウイングをすることで、企業内でどのようなスキルが求められているのかということをつぶさに把握するという、ジョブシャドウイングというプログラムが一般的にありますが、これらを障害版にアレンジしたようなマニュアルをつくっておりますので、こちらをお示ししたりしております。さらに、実際にもう、実務型のインターンシップも実施してくださるようなところも出ていて、そういったことを事例として御紹介して、各地の大学で、そういった取組をなさってみませんかということを、私たちのほうでファシリテートというか、応援させていただいています。
 それから、こちらが最後になるのですけれども、もともと障害者差別解消法は、2006年に国連でつくられた障害者権利条約という国際条約が背景になっております。この国際条約は、御存じのとおり、もう非常に全世界の多くの国々で批准の段階もしくはその後の段階まで進んでいる国が増えております。アジアの国においても、アジア環太平洋の中でも、やはり障害のある大学生の支援と、その後の社会の中での活躍に関心を持っている国がどんどん増えてきておりますので、アジア環太平洋地域で、障害と教育、雇用のインクルージョンに関して、毎年、国際シンポジウムを行っておりまして、ついこの間、今年に入ってからも行ったのですが、19か国から200名の方が参加がありました。第5回は今年12月にまた開催する予定でおります。こうした形での連携を進めているところです。
 以上、駆け足になりましたけれども、私たちPHEDで行っている事業は以上となります。ありがとうございました。
【竹田座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして村田委員から御説明をお願いいたします。
【村田委員】  京都大学の村田です。
 それでは、私も画面を共有しながらHEAPの事業を紹介させていただきたいと思います。こちら、HEAPと通称で申し上げましたけれども、正式名称は、京都大学の高等教育アクセシビリティプラットフォーム、Higher Education Accessibility Platformの略ということでHEAPと呼んでおります。今、御紹介いただいた東京大学のPHED、近藤先生のチームとほぼ一体となって運営しているというのが実態かと思っております。これらのネットワーク事業、プラットフォーム事業は、まさに「第二次まとめ」を契機にして、高等教育機関における障害学生支援のプラットフォーム形成、そしてスタンダードを構築しようということでスタートしていますが、この2拠点で、重なり合うところは協力し合って、そして事業そのものもすみ分けてやっていこうということでスタートしています。
 HEAPについて、まずざっくりと目的を書いておりますが、これらについては、先ほどのPHEDと基本的には同じようなものです。ノウハウを蓄積して、人材育成あるいは相談事業を行っていく。そして、スタンダードを構築するというようなことが柱になっています。とりわけHEAPの活動でいうと、温度差の是正であるとか、各地域のネットワークの形成、支援現場の担当者の横のつながりをつくっていくとか、その辺りのバックアップをしているというのが特徴かなと思っております。この辺りの底上げ事業のようなことを中心にしているのがHEAPの活動の特徴です。
 ここにも書いているとおり、「第二次まとめ」を契機として、各種の補助を受けながら実施しているところですが、徐々に利用される障害のある学生、地域のネットワークの方、あるいは各大学の方が増えているというのが実感です。後ほど、相談事業の実態なども報告できればと思いますので、ここではまず全体像について説明したいと思います。
 まず事業体制ですが、私のほうでディレクターを務めております。HEAPはいわゆるプロジェクトということになりますが、本事業の特徴としては、京都大学における障害学生支援の専門部署であるDRCという部署があって、私も含めて、この部署のスタッフでHEAPというプロジェクトを運営しているというのが特徴でしょうか。つまり、実は現場の人間が、相談事業であったり各種プロジェクトをいろいろな形で協力しながら実施しているというのが、我々の取組の特徴かなと思っています。
 実施体制については画像を入れております。事業本部は、代表校を京都大学が務めておりますが、他にも四つの連携校の皆さんに適宜御協力いただきながら、各種プロジェクトを進めております。現在は、広島大学さん、大阪大学さん、筑波技術大学さん、そして今年度からは九州大学さんにも加わっていただく形で事業を進めているところです。
 参加機関に関しては、こちらもPHEDと重なる部分が多いですが、AHEAD JAPAN等の障害学生支援に関するネットワーク事業、その他にも障害種別ごとの専門の団体とか、そういったところにも参加していただいておりますし、この会議にも出席してくださっていますが、企業アクセシビリティ・コンソーシアム、ACEさんであるとか、地域の支援機関などの方々にも適宜、御協力いただいております。
 参加校という枠組みとしては、御覧いただいたとおりなのですが、国公私立を問わず、手を挙げてくださった方々に登録していただいて、適宜、情報共有あるいは御指導いただきながら進めているというのが今の実態です。
 また、この事業を適正に進めていくためにも、アドバイザリーボードという制度を設けておりまして、今、7名の専門家の方々に入っていただき、我々の事業のモニタリングをしていただいているというのが、我々の事業体制となっております。
 事業全体の進め方ですが、基本的には障害学生支援の中で幾つかの時間軸、段階というものがあって、高大の接続の部分、そして修学支援の部分、そして社会移行というフェーズに分けて、各種プロジェクトを打っていくという位置づけになっています。プログラムの例を幾つか書いておりますが、相談事業を中心として、例えば高大の接続に関するプレキャンパスのプログラムであるとか、PHEDとも連携しているところでは各地域のネットワークを広げるタウンミーティングの活動、あるいは多職種連携ミーティングといって、タウンミーティングと似てはいるのですが、その地域の中での専門的な支援者がどのように連携していくか、どのように情報を構築していくかといった辺りを、より専門的にやるようプロジェクトも実施しております。
 また、「若手Co.ミーティング」と書いておりますが、若手という年齢に限ったことではないと思いますが、障害学生支援の分野というのは比較的新しい分野になりますし、こういった専門性があればいいというシンプルなものでもない、そういった領域かなと思っています。そのなかで、こういった分野を進めていくに当たっては、専門的人材の育成というのが非常に重要な要素だと考えているのですが、一方では、なかなかファーストキャリアの方とか若手のコーディネーターというところに十分に注目が集まらないというようなところも、課題認識として持っているものですから、あえてこのような名称でコミュニティー化を図って、人材の育成を目指しているということになります。そのほか、各種のセミナーとか勉強会、これは障害の種別ごとに実施したりしますが、このようなことも運営しています。
 各種のコンテンツもいろいろとリリースしてきております。相談事業を通じてまとめたQ&Aのデータベースですね。例えば体制整備のことや合理的配慮の提供に関することとか、そのようなことを一問一答形式でまとめているデータベースがあります。こちらも今、百数十、データが集まっていて、こういったものを活用しながら、スタッフ研修やワークショップに活用してもらえるようなものになっていると思っています。
 また、ノウハウの蓄積としては、Tipsシートや動画をいろいろと公開しております。例えばATの使い方であるとか、一つ一つの支援のノウハウ、それこそ情報保障もそうですし、資料等のテキストデータ化に関するようなノウハウなど、いずれも入門編ですけれども、そういった基礎的な資料をまとめて使ってもらえるようなものをリリースしています。
 また、多職種連携に関しては、地域の中で高等教育機関に在籍している学生等が、地域のリソースをどのように活用できるかということを促進するために、情報のアーカイブであるとかマッピングみたいなことをやっています。この辺り、後ほども少し紹介したいと思っています。
 また、「ひと呼吸」というのはちょっと分かりにくいかもしれませんが、この領域の専門的人材の様々な考え方であるとか、専門性を培ってきた経緯みたいなもの、あるいはそこから出てきている経験則や展望みたいなものをまとめているコンテンツになっています。
 さらには、これは時節柄ということになりますが、「コロナと障害学生」というコンテンツで、この間、何が起きてきたのか、そこで支援担当者や学生たちが何を考えてきたのかということを、ウェブマガジンのような形式でリリースしています。
 また、最後に書いている「Book Match」というのも少し分かりにくいかもしれませんが、これは障害のある学生の学生生活を取り上げたコンテンツです。障害のある学生を取り上げるとなると、どうしても障害のことやどのように支援を受けているかとか、そういったところに注目が集まりがちですが、障害のある学生といっても、一学生にすぎないという意味では普通の学生なんです。そういった、障害のある学生たちの日常的な様子というものを、例えば中高生の障害のある生徒に知っていただきたいと考えて、より日常レベルの彼らの生活というものを知っていただけるようなコンテンツが作れないかということでリリースしてきています。
 少し、ここからダイジェスト的なものになりますけれども、それぞれのスライドで簡単に補足していきたいと思います。
 Q&Aのデータベースについては、今、118あるのですけれども、これらもフィルターを通して少し検索ができるような形になっていて、日常的に、あるいは専門的にも使ってもらえるようなものになっているんじゃないかなと思っています。
 また、Tipsや動画というのは、少し画像が小さくて見づらいかもしれませんが、A4、1枚のシートになっているようなもので、まず基礎編の導入的な理解をしてもらおうというものをリリースしています。また、数が多いわけではないのですが、動画のコンテンツなども用意していて、例えばATの使い方ですとか、そういったものを簡単な動画でまとめているものをいくつかリリースしてきております。
 また、多職種連携のところでは、先ほど申し上げたように、実は学生が使えるような地域の資源というものがそれなりに数があるのですけれども、なかなか知られていないという実態があるのも今の現状かなと思っています。それは、学生本人もそうですし、大学側も、学生に起こっている困難さをいかに大学だけで解決していけるかということだけを考えがちなのですが、実は地域の資源が活用できるものがありますよと。これがなかなか地域側から見えづらくなっているのも一つ現状としてありますので、それであれば、同一地域の中で、大学生が使えるというところにフォーカスしてリスト化できないか。また、それを同一地域の中でマッピングするということを、これは京都市をパイロットとして作成したものですけれども、こういったものも他地域で展開できないかと思っていて、実際にやってみたいというお声も届いているところです。
 さらに、「ひと呼吸」はこれまで十数冊、数年をかけて発行してきております。趣旨としては先ほど申し上げたとおりなのですが、HEAPがリリースするコンテンツの中でも一番注目が集まっているものの一つなのかなと思っています。逆に言うと、ここに反響が集まるということは、やはりこの分野でどのように働いていくのか、人材をどのように育成していくのかということを多くの方々が考えているということの現れでもあるかなと思っています。
 こうやって全国的な会議をしたり、ネットワークの中で議論をしたりしていると、いわゆる同業者に当たる人たちというのはたくさん見つかるわけですが、私も含めて各大学レベルになれば、実は担当者は少人数でやっていて、大学規模からすると非常に小さな存在であると思っています。そういった意味でも、それぞれの考え方やノウハウをつないでいくようなコンテンツによって、職能団体として育てていくみたいなことも目標にできればなということで、このようなコンテンツも続けております。
 さらに、「コロナと障害学生」に関しては、特に初期のコロナ禍の状況下で各種のインタビューを取ってきております。また、専門家からも意見等をもらい、客観的にコロナ禍での対応というものから何が見いだせるのかということをまとめてきました。また、それの次の段階として、各種の経験値や生の声をアーカイブしようということで募集して、いわゆる投書形式でまとめて、コロナ禍における障害学生支援の一つの記録、記憶になればいいなということで、まとめてきました。
 もう一つ、取り上げていたBook Matchですね。より日常的な、障害のある学生の生の実態をお届けできたらということでのコンテンツになっています。主に中高生に、大学進学後の自分たちの生活のイメージみたいなものを持ってもらいたいなということが目標としてありましたので、障害のことや支援をどうやって使っているかとか、そのようなことではなく、例えばここで取り上げているのは、全盲の学生の日常的な生活の出来事なのですが、学生がキャンパスで過ごしていたり料理をしたりといった日常生活を送っている様子や、サークル活動とか、この学生が趣味としてやっていたものをお伝えして、1人の一学生の4年間にすぎないというようなところ、そういったところをむしろ中高生などにも知ってもらいたいなということで、こういったコンテンツを作っています。視覚的にもあるいは表現としても分かりやすくなるようにということで、文章だけではなくて、写真や詩などを活用しながら、より親しみやすいようなコンテンツになればということでつくってきました。
 次に、ATに関することですが、これもPHEDと基本的には同様ですが、ATのライブラリーを持っています。ウェブサイトにも、全てではありませんが、検索ができるような形で各種のATを紹介しています。これらについては、例えば地域ごとの担当者のネットワーク会議のようなところに出向いていって、全ては持っていけないのですが、実際に触れていただけるような機会をつくるとか、京都大学の中でも何度かこういったライブラリーを展示するような機会を実施していて、大学関係者はもちろんなのですが、同じ日に初・中等の関係者にもアナウンスして、参加してもらえるような機会をつくって実施したりしています。また、期限は設けていますが貸出しも適宜行っていて、よく利用していただいています。ただ、貸出しも単純に物を貸すだけではなくて、やはり現地に行ってフィッティングしなければいけないような案件も幾つか出てきていますので、私やスタッフがその大学に出向いて、実際にフィッティングを一緒にさせてもらうみたいなことも併せてやっています。これらのノウハウをまとめたようなColumnとかFitting Noteといったコンテンツも、この1年ぐらいですか、さらに拡充してリリースしてきました。
 最後に相談事業ですが、様々なノウハウ等を背景にしながら、実際の相談を日常的に受けています。日々、かなり高い頻度で電話ないしメールの相談が入ってくるぐらいの件数にはなっています。年間を通して言うと、三桁を超える相談が入ってきているのが今の実態です。もちろん、ライトに答えられるような相談内容もありますが、先ほど近藤先生もおっしゃっていたようなトラブルに発展しているような事案を扱うことも出てきています。このような相談対応について、この分野の中でどこがその相談機能を担保していくのかというのは、大きな課題になってくる部分かなと思っております。そのほか、相談事業から見えている課題認識みたいなものも幾つかありますので、この後のヒアリング、ディスカッションの中で、もし時間があれば紹介できればと思っています。
 以上、HEAPの活動報告とさせていただきます。ありがとうございました。
【竹田座長】  どうもありがとうございました。近藤委員、村田委員、それぞれすばらしい取組を、とても分かりやすく御説明いただきました。
 まず初めに個別の御発表に関して、具体的な事項等の確認などを含めた御質問等、委員の皆様方からありましたら、まずお願いいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 時間が、比較的余裕を今日は持てていますので、この後、プラットフォーム事業は、前回の「第二次まとめ」のときも、一つの大きな柱というか目玉というか、そういうものだったのではないかなと。その結果として、それぞれの拠点ができて、今日、今、御発表いただいたようなすばらしい成果を上げているということで、これを今後どうしていくか、どういった機能を付加するべきなのか、あるいは、もっと広げていくべきものなのかとか、いろいろな委員の先生方から多くの御意見を頂きたいと思います。そういう部分かなと思いますし、村田委員、近藤委員が実際、取りまとめて実施されている中での課題感というか、そういう部分なども御提言があるかなと思いますので、特に個別具体的な数値の確認とかそういうものがなければ、むしろ早めに、こちらの今後の在り方とか、それから、こういった機能を強化したらいいのではないかとか、あるいは、今回、何となく関西と関東というようなイメージで、HEAPとPHEDというふうに思っているわけですけど、資料を拝見すると、HEAPの中の参加校に東工大が入っている部分とか、筑波もちょっとずつ両方に関わらせていただいたりという、純粋に地域ごとというわけでもない部分もあったり、あとお話の中で少し重複している部分があって、協力して成果を上げている部分もあったり、それぞれの特色を出してうまくいっている部分とかも、いろいろあるかなと思いますので、時間がありますので、近藤委員、村田委員から、最初、プレゼンテーションを15分ずつということでお願いしてございますけれども、もし補足的な部分、今、私がお話ししたようなことも含めてございましたら、それぞれ追加で頂ければと思います。
 近藤委員、いかがでしょうか。
【近藤委員】  ありがとうございます。実際、私たち、京都大学のHEAPの皆さんとは、村田委員からのお話もあったのですけれども、ほぼ一体的に動いているというのが現状だと思います。PHEDには全国の様々なところから相談がございますし、特にこの地域をPHEDが担当しているということはございません。タウンミーティングの中で、その地域特性が話題になってくることはあるのですけれども、大学の中で体制構築をしていくことは、地域性があるというよりも、どこの地域でも法に基づいてしっかりやっていく必要があることですので、私たちはHEAPとも連携しながらニーズのある大学に相談対応していっているという状況です。
 先ほどのPHEDでのスタンダード構築、スタンダード集の構築というところにも、恐らく、日本の中で非常に大きく活躍されている皆さんは、ここに委員として来ていただいている皆さんもまさにそうなのですけれども、ほぼ入っていただいているのではないか。ただ、私たちのところではまだ見えていないところもあるので、その辺りのところは、お互いに声かけをしながら、「ああした方々に関わっていただくといいんじゃないか」みたいなアウトリーチをかけて、こうした、先ほどの専門委員会のような枠組みの中にどんどん、各地域で活躍されている方を巻き込んでいくといった連携をしています。
 なので、今の連携のところで大きな課題を感じているというところは、実はそれほど感じていないというか、すごく私たちとしても学びの多い時間を過ごさせていただいています。ただやはり大きな課題としてあるのは、先ほども述べましたけれども、個別相談のところですね。個別相談で、やはり本当に訴訟が関わっていくような重めの案件ということになってまいりますと、私たちのところで積極的に相談にはどんどん乗っていきますが、1件当たり、本当に、長いものになると、もう年単位で、やり取りに関しても百回以上といったようなやり取りを続けていく。それで、関係の方、場合によっては本当に、実際に訴訟が起こっているケースというのもありますので、そこにも第三者的に関わっていくということをやっておるのですけれども。その枠組みですが、今、私が自分の中で考えているものは、やはり各地域の差別解消支援地域協議会等と連携していくであったりとか、様々な展開は考えられると思います。すると大学の学内の支援体制や、そこから就労への移行の発展ということだけにとどまらない、各地域のつながりの中に発展させていくという機能が必要になってきます。この辺りの相談のところを、どうなっていけば、最も充実したリソースで、かつ関係者の方々の紛争の形がよりよい方向に向かうように貢献できる形と言えるのか、本当に悩みながら続けているところというのが実情です。この辺りの機能は、本来は何かの形で強化できればと考えてはいるのですけれども、今できる範囲で懸命に臨んでいるという状況かと思います。
 私としては、気になるところはそこかと。
【竹田座長】  ありがとうございました。村田委員は、補足あるいは課題あるいは御提言というか、これはまだ2回目ですので、今後の議論の中でも、こういう事業を、なくしていいと思う人は誰もいないと思うので、むしろどういうふうに強化したり増やしていったり、あるいは新たに始めるような、先ほど中野委員からあった、私立大学などがたくさん入ってくるときに、どういった形でこういった拠点を助言できるかというようなことも含めて、いかがでしょうか。
【村田委員】  ありがとうございます。村田です。
 やはり、相談事業とかネットワーク事業をしております中で、この業界や各機関が抱える課題というものがつぶさに見えてきているというのが、この事業をやっていく一つの重要な要素にもなっているような気がしています。つまり、現場の実態を知るという意味ですね。課題として認識している部分がたくさんありますので、こういう場なので率直に幾つか申し上げられたらと思っています。
 まずは、やはり体制整備のところというのは、まだかなり温度差があるということと、取り組んではいるものの、少しシステム自体がぎくしゃくしたというか、率直に言えば、適切にシステムが構築されにくい、あるいは運用されにくいような実態が見えてきているのも事実です。もちろん、各大学の中で、例えば予算やマンパワーが足りないという話はよく出てくるのですが、例えば予算に関しても、もちろん何らかの補助というものが今後どんどん拡充されることを望んではおりますが、例えば国立・私立の場合、国立で言えば運営費交付金ですし、私学の場合であれば経常費補助金、私学助成のほうに該当しますけれども、こういったものは何らかの形で障害学生支援に関するものがついているという言い方ができると思うのです。ただ、それ自体がきちっと現場の運営に反映されていないような実態というのは正直見えてきます。率直に言えば、例えば支援の利用学生が三十人、五十人、百人いますよと。ただ、実際にどれぐらいの予算を現場で扱っているかというと、本来、運営費交付金や私学助成の中に含まれていると解釈できるような金額が、全くそういった現場に反映されていない実態、こういったものが見えてきます。あるいは公立大学の場合は、もちろん位置づけが異なりますが、公立大学の場合というのは、当然、地方公共団体が高等教育という事業をやる意義やその役割を感じてやっている事業であるにもかかわらず、十分そういった理解というものがなされていない。つまり、予算の出どころは地方公共団体になるわけですが、そこに対して障害のある学生がいて支援をしたいと言っても、実は地方公共団体側からそこに関する協力がなかなか得られないという実態は見聞きすることが多いです。このように、予算に関しても、現場として足りないみたいな話はよく聞くのですが、実際に体制整備の中で適正に必要な予算が分散されているのかというところは、こういった事業の中からも見えているところです。
 また、1回目の検討会で、私は合理的配慮のシステムやフローにおいて、そこで時間がかかり過ぎてしまうようなことへの懸念があるという発言をしました。もちろん、合理的配慮というものは、必要性、妥当性をきちっと判断しなければいけませんので、時には判断に時間がかかるようなケースがあるのも事実なのですが、ただ大学の規範として、運用ルールとして、判断等に長い時間を要してしまうということがデフォルトになってしまうということもどうかなと思っています。
 一方では、このように時間がかかり過ぎている実態ということに加えて、合理的配慮が学内でシステム化・制度化されたことによる、少しバランスの悪い弊害みたいなものも聞くことがあります。どういうことかというと、合理的配慮というのは、実際の教育現場、各教員等も、建設的対話の非常に重要な当事者だと思っているのですが、実はその合理的配慮の決定が、とある委員会などで第三者的に決定されて、それが教育現場に一方的に通知されるというような実態もどうやらあるようなのです。このような場合、現場の教職員からすると、もちろん合理的配慮は提供したいと思っていたとしても、自分たちの教育の本質というものを十分に鑑みずに、どこか第三者的なところでどうやら決まってきて、それをやってくださいみたいな通知がきて驚いてしまう。このようなケースをうかがうと、制度化してきちっとやりたいという思いは非常によく分かるのですが、合理的配慮の本質的な部分というものが抜け落ちてしまっているんじゃないかなということも感じます。制度化されてシステム化されていることが増えているというのは非常にいいことだと思いますが、本当に妥当な運用になっているかどうかというところのモニタリングあるいはその理解の啓発というものを、この分野としては広めていかないといけないんじゃないかなという課題認識を持っています。
 また、相談事業の中では、接続の課題、例えば高大の部分とか社会移行の部分という、高等教育のカテゴリーだけでは解決し得ない問題がたくさん耳に入ってくるというのも、よくある相談内容の一つだと思っています。こういった、いわゆるトランジションの問題だけではなくて、高等教育、学生が抱える困難さというのは、何も教育機関だけの問題ではないこともたくさんあるんですよね。例えば、重度障害の学生の生活支援であるとか、通学等の問題であるとか、あるいは読書バリアフリーなどもそうかもしれません。要は各機関だけの問題ではない問題が、各大学の支援現場で非常に大きな課題になっている。これは、各大学が独自に頑張るというだけではなくて、やはりカテゴリー全体でその対応を考えていかなくてはいけない課題なのだろうと思っていますので、AHEAD JAPANであるとか、我々HEAPやPHEDというような全国的なネットワークを通じて、いろんなカテゴリーとの接続、すみ分けみたいなものも、今後ますますやっていかないといけないんじゃないかと思っています。
 幾つかほかにも課題はあるのですが、最後に一つだけ申し上げておきたいのが、やはり専門的人材の問題です。これは、PHEDでもスタンダードを構築してくれて、これらを活用する形で我々も一緒になってスタッフの研修というのをやってきております。正直、かなり労力をかけて研修を行っていて、それをパイロットにしているのですけれども、そこまでやって初めて高い効果が得られるというような実態もつかんでいるところです。だから、この専門的人材の育成というのは、やはり本腰を入れていかないと、なかなか本当の意味で実態は改善しないんじゃないかなというのが課題の認識です。そういったことと並行すると思いますが、率直に申し上げて、各大学の専門的人材の処遇とか位置づけというものが軽視されているという実態は申し上げざるを得ないところかなと思っています。新しい分野であるということで、仕方がないところもあるのかもしれませんが、現場の多くのコーディネーターは有期雇用であったり、そもそも待遇が専門職に見合っていないような実態というのは、かなり多く散見されております。また、例えば若手の人材等の課題で言いましても、若手であればあるほど、人材育成の場にどんどん出ていくとか研修の場にどんどん出ていくということが必要になると思うのですが、若手のコーディネーターというのは、どちらかというと現場を回すということが使命として与えられていることが多くて、外に出ていくのはむしろ、その上の人たちであることが多くなっていく。若手は現場に残って、現場を回すということが仕事の中心になっている。そうなってくると、スキルアップの機会というものが、やはり制限されてしまうということが実態としてはあると思っています。なので、やはりこういった人材の育成については、この検討会でもぜひ議論していっていただきたいと思っていますし、今後、次年度以降、全国的に何か展開していくとなれば、やはり専門的人材の育成というのが、非常に重要な柱になるんじゃないかなという認識を持っています。
 すみません。長くなりましたが、相談事業等から見えてきている課題の認識として発言させていただきました。ありがとうございました。
【竹田座長】  ありがとうございました。お二方とも現場感覚で、非常に多くの課題を的確に御説明いただきました。村田委員の専門人材のキャリアパスなども、当初から議論はあっても、なかなか現実問題としては、かなり現場の方のキャリアパスがどうしたらうまくいくかということが、今も多分解決されていない部分があるかなと思うところで、ぜひ今後の検討の中で扱えればいいかなと思いますが、近藤委員がチャットで、幾つか追加で、先ほどの紛争の問題だけではなくて、紛争は紛争で非常に大きな問題、それをどう解決するかということが機能として求められるということを、これは村田委員のほうも頂きましたが、相談機能、それからやはり同じように専門人材の育成というのは、今の支援人材のキャリアパスとか雇用の安定性ということで。もし違ったら、近藤委員、補足をお願いします。それから、あとは企業との連携ということで、キャリア支援ということかなと思いますが、いかがでしょうか。近藤委員、追加でお願いします。
【近藤委員】  ありがとうございます。もう本当に、最初の3本柱で挙げたことというのと全く同じことなのですけれども。そこの細部の部分にそれぞれなってしまうのですが。この三つの柱のテーマは、ずっと残り続けているというか、現時点でそれらが非常によい形で出来上がっているわけでは全くないという状況が、今の大学を取り巻く状況だと思いますので。ここを、本来はプラットフォームのようなものが存在しなかったとしても、各大学、各地域で相談の機能も充実していて、専門的人材もどんどん育っていて、その地域の卒後の多様な社会活躍につながっていくようなハブに大学がなり得ているみたいな形になると、本当にすばらしいなと思うのですけれども。やはりまだまだそこを補強していく、そもそも存在しないものであれば、それをつくっていくということが必要になってくると思います。新しく申し上げることではないのですけれども、より、その3本の柱を深めていくというところが、とても重要だと考えています。
【竹田座長】  ありがとうございました。
 これまで御発表いただきましたもの、御議論も踏まえて、具体的な課題なども見えてきたと思うのですが、今後もこういったプラットフォーム事業を、次年度以降も実施していくということに当たって、具体的な、どういった機能か、あるいは役割が必要となるかなど、これはすごく重要な問題だと思いますので、委員の皆様方から御意見を頂ければと思います。まだ御発言のない委員の先生から、もしお願いできればと思います。
 もしよろしければ、プラットフォームでキャリアの話、タウンミーティングの話などもPHEDで出ましたけれども、島津委員、何かコメントを頂ければと思います。いかがでしょうか。
【島津委員】  ありがとうございます。企業アクセシビリティ・コンソーシアム、ACEの島津です。PHED、HEAPともに、ACE、つまり企業の連合の立場として関わらせていただくことは多くございまして、やはり企業側から見たときに、まず一つが、企業が障害学生たちとつながりながら、そこに対して例えば就労に関わる内容、その一歩手前も含め、インターンシップであったり、学生と接点を持つようなイベントであったり、そういったところを企画・運営していく上で、やはり大学であったりその大学周辺というところがネットワーキングされているというところがすごく心強いところではありまして、そこから様々な大学であったり連携機関、リソースに対して活動を周知しつつ、企業と障害学生がつながる場を創出していただくというところに、多くの御協力いただいているというのが日常的なところです。
 あとは、私はもう一つの立場として、堀場製作所という会社の人事をやっているわけなのですけれども、そこで先日も村田先生のところで、京都大学のDEARセッションというDRCの活動に、企業としても参加させていただきまして、そこではやはり、DEARセッションという、DRCでやられている取組で、すごく私が価値を感じるところが、企業と学生が接する最初の機会が就職活動の、例えば説明会とか面接であるというところは、やはり地域の障がい学生の支援のリソsースの一つとして企業を捉えたときには遅過ぎるというところは、すごく感覚としては持っていまして、やはり早期の段階で、面接で改まった場という形ではなく、学生が気軽に企業に対して、例えば私はどういう準備をしておいたほうがいいですかであったり、あとは例えば企業で働くに当たって、どういう、例えば現実的なハードルであったり難しさであったり、さらに各論に入っていくと、障害を開示するか開示しないかは、企業はどう捉えていますかであったり、あとはもう、率直な言い方をすると、障害者手帳を持って開示していることは有利に働きますか、不利に働きますかみたいな話まで、その辺りの各論というところは、もちろんケース・バイ・ケースの部分はあるのですけれども、そこに関して、やはり生にきちんと現実も含めて、説得力を持った形で答えられるリソースの一つとしての企業というところは、地域社会が有効活用していくべきだとは思いますので、やはり両先生の今の取組というところが、さらに企業と学生をつなぎながら、企業からしても、それによって、より高い精度でマッチングができたり、入社後、長く活躍してもらったり、あとはもちろん雇用率の推進というところは、企業の立場としてはすごく大事な課題としてありますので、そこの推進も結果的にはいい形でつながるというような、いい連携の仕方を継続していきたいです。就労という観点では、この会議体の中でも、ぜひ議論の中で、新しいアイデアであったり、今後の拡大的な取組というところはお話しさせていただきたいなと考えております。
 以上です。
【竹田座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、白澤委員、先に挙手がございますのでお願いします。
【白澤委員】  筑波技術大学の白澤です。大変興味深い御発表をありがとうございました。
 竹田先生から拠点事業の今後ということでお話しいただきましたので、2点ほど、質問というかコメントをさせていただければと思います。
 まず1点目は、恐らく2つの大学からはなかなか言いづらいかと思うので私から言わせていただくと、現在までこのプラットフォーム事業というのは、本当に短い期間、一年、二年、長くても3年ぐらいの短い期間のプロジェクト事業という形をずっと繰り返してこられていて、1年ごとに予算の申請をしたり、来年度に予算がつながるかどうかわからないという非常に不安定な状況で活動を続けてこられたと思うんです。こういう中で、先ほど村田先生が、「相談機能を今後どう担保していくのか検討が必要」と大変控え目におっしゃっていましたけれども、こういった機能をやはり安定的に運用していくための方策を、この検討会から発信していく必要があるのではないかと思っています。
 私どもも聴覚障害学生支援の専門的なネットワークということで、2004年にPEPNet-Japanを立ち上げた後、しばらくは時限付のプロジェクト経費でつないでいたのですが、その後、2012年に一般経費化していただき、継続的に予算を頂いている状況があります。それにより、国立大学の運営費交付金なので、1%減の対象になってしまうという状況はあるのですけれども、それでも、やはり安定的に人員を雇用して、専門的な人材を中核に置きながら全国の大学をサポートしていける体制を得られたのは、とてもありがたく思っています。なので、やはりこういったプラットフォームの機能、特に相談機能については、日本全体のインフラとして必要不可欠なものなので、常設のセンターとして、育てていくべきものなのではないかなと感じております。
 それから2点目ですけれども、先ほど来から上がってきた相談事例の重さについては、私どものところでも大変多くの相談を頂いているので、非常に共感を覚えております。我々PEPNet-Japanは、聴覚障害専門の相談機関ではありますけれども、それでも昨年度1年間で年間750件の相談を頂きました。この中には非常にライトなものも含まれますけれども、資料請求を除く相談、すなわち相談を受けて何かしらの回答をしたり、講師を派遣したりしなければいけないものが500件以上あって、毎日、必ず1~2件の連絡が来るといったような状況で回してきております。
 その中には、大変すばらしい好事例で、全国に広げていきたいというような例もあるのですけれども、やっぱり気になる事例というのもあります。恐らくHEAPやPHEDにも同じような事例はあると思うのですけれども、例えば、未だに、大学で手話通訳を用意することができません。代わりに、御家庭で費用を負担してくださるのであれば授業に配置することは認めますとか、講義の場合は、FMマイクをつけることは可能ですが、グループディスカッションで参加者に回してもらうといった依頼には、対応しかねますといったように、努力義務が課せられているにも関わらず、ほんの少しの「努力」すらしてもらえないような事例も多数含まれているんです。もちろん、こういう事例については、一つ一つ対応は致しますけれども、同じような事例が今後生じないように、何かできないものなのかと感じるんですよね。恐らく、先ほど話のあった訴訟事例の中にも、同じような側面が含まれているのではないかと思うのですけれども、例えばアメリカなどでは、そうした問題事例が発生したときに、教育省や市民権局などが介入を行って、その事例が公表されるので、各大学は、その事例を見て自大学の取り組みを見直すといった効果があったりするかと思います。日本の場合は、このように強い権力をもって制する方法はあまりそぐわないかもしれないですが、それでも、せっかく相談機関があって、そこに集まってくる事例があるのだとしたら、それをもとに、全国の大学に働きかけて行くような仕組みを作れないかと思うのです。例えばJASSOさんでやっていらっしゃる相談事業の事例と併せて、気になる事例を吸い上げ、この内容を国大協や私立大学協会等の研修に生かしていってもらうとか、あるいはもう少し直接的に、文部科学省から全国の大学にアプローチをかけるとか、何か大学の取り組み改善につなげていけるような仕組みがあればと感じています。
 それぞれの機関でたくさんの相談を受け付け、そこに専門性が蓄積されていくということも重要だとは思うのですけれども、ここで抱え切れない事例というのもありますし、抱えていただけでは全国的な解決につながっていかない事例というのもたくさんあるので、そういうものの解決方法、解決の仕組みを、次のフェーズに入っていく際に検討できないかなというのが意見です。
 もしコメントを頂けるのでしたら、のちほどで構いませんので、近藤先生や村田先生のほうで、こういった仕組みについて、御意見があれば頂けるとありがたいなと思っております。
 以上です。
【竹田座長】  ありがとうございました。また後ほど時間がありましたら、コメントいただきたいと思います。
 御発言が初めての委員で、では高橋委員からお願いいたします。
【高橋委員】  信州大学の高橋です。
 2つのプラットフォーム事業に関する御発表、そして白澤委員の相談拠点、PEPNetからの、やっぱり全国拠点で御相談を受け付けるというようなところのお話もありました。これに関しまして、プラットフォーム事業の今後みたいなことに関して、今後の議論で扱っていけるといいのかなと思ったのですけれども、一つの在り方として、忘れないうちに一言、こんな方向はというのを言っておこうかなと思ったのは、そういった相談の拠点みたいなものが、やっぱり全国に二か所とか三か所とかしかないと、なかなか身近にすぐ相談できるという形にはなりづらいという中で、そういった相談・助言をしてくれるような専門家が各地域の拠点大学にいるみたいな、何かそういう形があって、そういった拠点のところには、きちんと予算措置もなされるみたいなことがあると、それが持続的になりやすいのかなとは思いました。もともとプラットフォーム事業も、「第二次まとめ」の中でそういったものの必要性が提案され、かつ、そもそも提案するときに、たしか10拠点ぐらいできればみたいな感じで計画自体はなされましたが、予算が十分につかないという中で2拠点という感じになったという経緯があったかと思います。ですので、改めて「第三次まとめ」でも、その必要性、要するに2拠点で継続していたところ、そこの必要性というか、利用もある、必要性があるということの実績を基に、やっぱりこれは拡大していくものなんだという発信を「第三次まとめ」でしていくことで、その持続性がまたできていくのかなと思いました。恐らく論点の中の4番、「大学等と国・地域・社会資源等との連携」みたいな中の項目にも上がっておりますので、そういった中で、またこれを具体的に出していければいいのかなと思いました。
 取りあえず以上です。
【竹田座長】  どうもありがとうございました。
 それでは神藤委員、お願いします。
【神藤委員】  関西大学の神藤です。PHEDとHEAPの活動、お疲れさまでございます。
 先ほど白澤委員もおっしゃいましたけれども、お二人の頑張りにたいへん支えられているところはありまして、この業界、特に個人の頑張りで支えられているところが、もう全般的にあります。先ほど予算のことも、1年置きとか3年ぐらいとかおっしゃっていましたけど、やはりこの事業も継続的にできるように考えていただければなと私も思います。
 今後、私立大学の障害学生支援を充実させていくためには、私は事務職員なのですけれども、事務職員に気づいてもらうというか、事務職員がこういうふうなことをしないといけないんだよというようなことを各大学に伝えるということがすごく大事なんじゃないかなと思います。例えば中小の大学であったりしたら、障害学生支援を充実させることが、大学の教育力を向上させるためには重要で、それは障害のある・なしにかかわらず、障害学生支援を充実させていくことで、大学全体が向上していくんだというような成功事例を示すとかですかね。何か、教員の方々もなのですけれども、職員にも、そういうことをすることが大学を向上させて、学生さんもこの大学に入りたいと思うというようなことを、伝えていくというようなことが大事なんじゃないかなと思っています。
 先ほどからの専門人材の育成についても、やはりそういう予算をつけようというふうに、事務職員の上司が思わないと大学行政は動かないところもありますので、その辺もこの取りまとめで、どうやって表現できるのかは難しいのですけれど、この取りまとめができた後ででも、全国の大学に周知するときにそういうことも考えながらやっていくということができたらいいなと思います。
 以上です。
【竹田座長】  ありがとうございました。それでは、殿岡委員、中野委員、その後、続いて、指名で恐縮ですけど、柏倉委員、矢澤委員からも御発言いただければと思いますので、よろしくお願いします。それでは殿岡委員、よろしくお願いします。
【殿岡委員】  殿岡です。当センターは、障害当事者の集まりとして、ずっとやってきているわけですが、だいたい年間100件位の相談をお受けしている状態です。さまざまな相談があるんですが、今日2つ御報告いただいたPHEDとHEAPというのは、いわゆる大学がそれなりにやり続けていて、動いている大学にとっては大変いいのですけれども、私どものところに来ている相談というのは、そうではない大学からの相談、それとやはりそうではない大学へ受験する学生からの相談というのが大変あります。
 やはり、PHEDもHEAPも大学の中にある組織になっているので、大学の外から見たときに、やはりPHEDと、それをアドボケートできたりするものと両方が必要で、連携が本当に大事だなということを痛感させていただいています。幾つかあるのですが、一つは、全国の大学のランキングを私どもは作っているのですが、それを見ていくと、まだまだ全国各地で大変よくやっているにもかかわらず、PHEDとの連携には入っていない大学もたくさんあります。今後こういった拠点を増やしていくのであれば、特に私立の大学になると思うのですけれども、まだまだそういった埋もれている人材、埋もれている必要な取組をさらに上げていく必要があるかなというのが一点。
 もう一点は、やはり2つの取組とも、日本には800余の大学があるのですが、上位、多分200校ぐらいには訴求できていると思うのですけれども、上位400校、順位を500校、600校といった中低位以下の学校が、きちっとここから抜け出て、順位を伸ばしていける、そこの部分というのがまだ抜けていて、ようするに、結果的に取組は進むのですが、これも厳密にデータが出ているわけではないのですが、結果として大学間の格差が開いてしまっている状況もあるので、中低位の学校の底上げに向けた事業というのも必要なのかなと思います。
 最後に、やはり、繰り返しになりますが、私どもにできるのは、大学の外からきちんと評価し、状況を把握し、相談を受ける体制と、大学内での体制を、きちんと連携させていく重要性を改めて感じさせていただきましたので、述べさせていただきました。
 殿岡は以上です。
【竹田座長】  どうもありがとうございました。とても大事な視点で、中小の大学、格差の問題などを御発言いただいたかと思います。
 この後、時間の関係で恐縮ですが、川島委員までで、一応この場での御意見の表明は閉じさせていただきますが、またこの件に関して、御意見は前回同様、メール等で事務局に頂く形ができるかと思いますので、その点、御承知おきいただきたいと思います。
 それでは中野委員から、まず先にお願いいたします。
【中野委員】  中野です。
 先ほどの殿岡委員と同様なのですけれども、大学間格差は私も非常に気になっています。PHEDやHEAPで非常にすばらしい取組が行われて、どんどん進んでいく大学がある一方で、なかなかそこについていけない、もしくはそういう意識がまだ持てていない大学もあるかと思いますので、この格差を埋めるための取組を、HEAPやPHEDとは別に行っていく必要があると思っています。以上です。
【竹田座長】  ありがとうございました。それでは柏倉委員、もしコメントがありましたら、よろしくお願いいたします。
【柏倉委員】  よろしくお願いします。
 私は、HEAPやPHEDの事業が始まった頃から、いろいろ事業委員会に入れていただいて、いろいろとその進み具合などを見せていただきながら、思うところはいっぱいあるのですけれども、当初は拠点をつくって、そこを中心に枠を広げていくというんですか、様々な大学に広げていくような事業だったと思うのですけれども、結果的に東大と京大がずっと請け負ってやっていく中で、非常にノウハウが蓄積されてきていて、以前は例えばJASSOを通じて拠点校の支援などが行われていたんですけど、今はこの2校がいろいろなネットワークを支える機能を持っていると実感しています。例えば東海地区もネットワークをやっているのですけれども、いつもHEAPにお世話になりながらやっているんです。
 それで、先生方からいろいろ出ているように、大学間格差というのは非常に大きくて、今回、法律改正で、私学の合理的配慮の問題というのは大きなテーマになっていくのですけれども、予算がない中で、あるいは人材がいない中でどうするのかといったときに、HEAPやPHEDの役割がますます重要性を持ってきていると認識していまして、現時点で、この2校を選んで予算をつけていくというようなことよりも、こういった研究が蓄積されて、ネットワークを支えるような機能を持った、そういった役割を、継続的に日本全体のネットワークの下支えをする機関として見直していくような、白澤委員も先ほどおっしゃっていたことに共通すると思うのですけれども、そういう位置づけを考えていかなければいけないなと今思っているところです。それぐらい、2017年から六年、七年の蓄積というのは大きいと思っているので、この検討会でもそういった整理ができるといいのかな。
 だから、この2校が何か立派な大学になって、学生支援のモデルになったということではなくて、私の認識では、全国の大学のネットワークを支える、非常に重要な機能を持っている機関になっているという認識なので、そういう整理もぜひしていただくといいのかなと思っています。
 以上です。
【竹田座長】  ありがとうございました。矢澤委員、お願いします。
【矢澤委員】  仙台高専、矢澤です。
 先ほど来、各委員がおっしゃるとおり、まず小規模ですね。私は1回目のときも、小規模の機関、あと専門家がいない機関が、今後、私立大学の義務化も含めて、非常に対応に対して苦慮していくのではないかと思うというようなことを発言したのですけれども、やはりそこにどう目を向けていくかだと思います。2つのプラットフォーム事業がすばらしいネットワークの支えをしていることはもちろん論を待たないのですけれども、高橋委員が言われたように、そういう拠点といいますか、相談できるような場所が、もうちょっと地域に多くできるといいなということと、あと、そういう小規模のところというのは、抱えている問題として結構あり得るのが定員割れとかで、大学とか自体が、もうそちらのほうでいっぱいいっぱいで、障害学生支援とか、そういうどころではないみたいなふうになってしまっているところもあると思うんです。それで、障害学生支援とか合理的配慮の裾野を広げていくという意味では、そういうところが、「第三次まとめ」がもし参考になって、きちんと目を向けてもらえるようになるということが、理想だけ言っているのですけれども、なかなかどうまとめていくかというのは難しいと思うのですけれども、重要なのかなと。
 そのときに、これはプラットフォーム事業と別かもしれないのですが、やはりそういう小規模の機関というのは、管理職が全て予算の振り分けとか、いろんなことに、どこを重要視していくかということを結構、決定権というかが強いようなイメージもあるので、やはり管理職向けの、障害学生支援に対する啓蒙とか理解の機会というのは非常に重要だと思うので、その辺りをこの検討会でも何か提言できていけるといいのかなと思いました。
 以上です。
【竹田座長】  ありがとうございました。それでは川島委員、お願いいたします。
【川島委員】  ありがとうございます。
 PHED、HEAPの取組は、全ての大学にとってもちろん非常に重要だと思いました。白澤委員のお話にありましたように、相談件数というものも非常に多いと思うのですけれども、ここに挙げられている相談件数はまさに氷山の一角で、まだ知られていない事例とか埋もれている事例もたくさんあると思います。
 私学が合理的配慮義務の対象となる中で、人材もなかなか育てないといけないという中で、どうやったら紛争防止・解決を効果的に、より進められるかという方策も考えるところですけれども、特に私が1点、最後に指摘したいのは、全ての教職員に対する教育研修というようなものが重要ではないかなと思います。御存じのとおり、昨年12月の内閣府調査で、障害者差別解消法のことを知らない人がどれだけいるかということで、74.6%の方は、障害者差別解消法のことを知らないと。4分の3の国民は知らないわけですよね。そういう中で、大学の教職員も障害者差別解消法のことは知らないとか、名前を知っていても中身は分からないという人が非常に多くいる中で、どう考えたらいいのかというときに、いわゆる科研費の研究倫理e-ラーニングのような仕組みであると思うのですけれども、裾野を広くして、全ての教職員に一律でそういう研修を受けてもらうような仕組みも、今後必要になってくるのではないかなということを最後に申し添えたいと思います。
 以上です。
【竹田座長】  どうもありがとうございました。
 多くの貴重な御意見を頂いたと思います。拠点事業に関してということでございますが、今後の議論の中で取り上げたり、参考にすべき御意見もたくさんあったかと思います。時間の関係で、まだまだ多くの御意見もあるかとは存じますので、その部分は前回同様、事務局にメール等でぜひ御意見を頂戴できればと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは最後に、当面の検討会のスケジュールについて、事務局から御説明をお願いいたします。
【小栗補佐】  それでは、資料4を御覧ください。
 第3回は、7月13日木曜日、16時から18時、オンラインで開催の予定でございます。また第4回につきましては、8月3日木曜日、今度は14時から16時、こちらもオンラインで開催の予定でございます。この日程の調整につきまして、確定に当たり、御都合等、御配慮を先生方に頂きまして、どうもありがとうございました。また、第3回につきましてはヒアリングを実施するほか、今回頂いた御意見を踏まえて、まず「論点整理」をまとめた上で、さらにそれを、具体的内容をまとめた「第三次まとめ」の取りまとめに向けた基本的な考え方という形にして、お示しさせていただきたいと思います。また、「第三次まとめ」の骨子につきましても、ここで提示・御議論いただければと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。
【竹田座長】  ありがとうございました。
 本日の議事は以上ですが、その他、会合全体を通しまして御意見等はございませんでしょうか。
 それでは、次回も引き続きヒアリングと議論を進めていきたいと考えております。今回同様、ヒアリングに御対応いただく方や御説明に御協力いただく委員につきましては、私のほうで事務局と調整して委員の皆様にお伝えしたいと思います。
 以上で、「障害のある学生の修学支援に関する検討会(第2回)」を終了いたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――