デジタル人材育成推進協議会(第3回)議事録

1.日時

令和5年9月15日(金曜日) 10時00分~11時30分

2.場所

オンライン

3.議題

  1. 政策動向を踏まえたデジタル人材育成の取組について
  2. 地域の産学官の連携による人材育成のあり方について(実務家教員の活用を含む)
  3. その他

4.議事録

【森専門教育課企画官】  定刻となりましたので,ただいまより第3回デジタル人材育成推進協議会を開催いたします。委員の皆様におかれましては,御多忙の中,御出席いただき,誠にありがとうございます。
 本日進行を務めます文部科学省高等教育局専門教育課の森でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 初めに,このたび,委員の交代がありましたので,お知らせいたします。委員名簿は,参考資料のとおりでございますが,新たに一般社団法人公立大学協会副会長の浅井委員,独立行政法人情報処理推進機構理事長の齊藤委員,一般社団法人電子情報技術産業協会常務理事の平井委員に御就任いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は,大村委員の代理として,愛知県経済産業局情報通信政策推進監の中谷様。田中委員の代理として,早稲田大学情報企画担当理事の山名様に御出席いただいております。
 なお,谷口委員,橋本委員は御欠席となっております。
 また,本日は滋賀大学,熊本大学,北海道経済産業局及び北海道大学の皆様にも御参加いただいております。御多忙のところ,誠にありがとうございます。
 それでは,議事に入ります。議事1つ目の政策動向を踏まえたデジタル人材育成の取組についてです。
 文部科学省,経済産業省から,それぞれ説明の後,高度情報専門人材育成の取組について,滋賀大学,熊本大学から御説明をいただき,意見交換とさせていただくこととしております。
 それでは,文部科学省から説明をお願いいたします。
 
【梅原専門教育課長】  おはようございます。文部科学省の専門教育課長の梅原でございます。
 本日,デジタル人材の育成につきまして,文部科学省から4点ほど説明をさせていただきます。よろしくお願いいたします。1ページお願いいたします。
 1点目,大学・高専強化支援事業。いわゆる成長分野を牽引する大学・高専の機能強化に向けた基金についてでございます。そこに書いてございますように,このデジタル・グリーンなどの成長分野を担うような理系人材について,日本は諸外国と比べても学生の割合が非常に低いということで,そこに数字も書いておりますけれども,日本35%に対して諸外国は40%を超える国が多いというような現状がございます。
 そういった現状を踏まえて,教育未来創造会議,政府の会議の第一次提言,2022年の5月に取りまとまっておりますけれども,自然科学分野を専攻する学生を世界トップレベルの5割程度を目指し,デジタル・グリーン等の成長分野への大学の再編等を進めますというようなことで,取りまとまっております。
 そういったものを受けて,この令和4年度の第2次補正予算におきまして,3,002億の予算が措置されたところでございます。
 内容については,御存じの方も多いかと思いますけれども,2つのパートになっておりまして,下の「支援の内容」というところでございますけれども,支援1,学部再編等による特定成長分野(デジタル・グリーン等)への転換。こちらは特に理系割合の低い私立でありますとか,公立を対象とした事業でございまして,おおむね20億円程度で,原則8年という支援でございます。受付期間といたしましては,令和14年までということで,10年程度を見越して公募していくというような流れでございます。
 2点目のほうは,その支援2というところの「高度情報専門人材の確保に向けた機能強化」ということで,こちらのほうは,情報系の分野を持たれている国公私立の大学・高専全てを対象とした,大学院の取組が中心の事業となっております。こちらは,定額補助10億円程度までということで,最長10年の支援となってございます。また,ハイレベル枠といたしまして,より高いレベルで行っていただくというところについては,20億円程度の支援を行うような流れにしてございます。
 3ページまで飛んでいただきます。選定結果でございますけれども,7月21日に公表しておりまして,公私立を対象としました学部転換の支援1につきましては,67件。また,高度情報人材の支援2につきましては,51件の選定をしてございます。また,その20億円の支援となるハイレベル枠につきましては,北海道大学,筑波大学以下7大学の選定を行ったところでございます。
 下に書いてございますけれども,特に今回の選定を経まして,この支援1の学部転換につきましては,デジタル・グリーンということで募集はしたわけでございますけれども,このデジタル分野への学部学科の改組の割合というところは,全体の64%ございました。この結果,今後その設置認可等により変わりうるわけでございますけれども,最大で6,000名程度の定員増につながるのではないかというようなところを見込んでおるところでございます。
 また,支援2の高度情報専門人材につきましては,選定大学51件につきまして,おおむね学士1,131名,修士1,682名,博士190名,高専206名の定員増を見込んでおるところでございます。
 次の4ページお願いします。詳しく説明いたしませんけれども,こちらは支援1の選定校でございまして,私立大学が非常に多くなっております。この中に理系学部を初めて設置するようないわゆる文系がメインの大学も多くございまして,今回67件のうちの約3割がいわゆる人文社会系の大学が初めて理系を設置するというような例でございました。
 次のページお願いします。それからこちらの支援2でございますけれども,高度情報専門人材につきましても,国公私立大学に加えまして,国立の高専も5校ほど選定してございます。
 また,青い枠囲いで書いてございますけれども,東京23区内という点ではこの東京工業大学を選定してございます。こちらは,特例措置の概要,枠囲いにさらに書いておりますけれども,臨時的な定員増加ということで認められたところでございます。
 6ページお願いいたします。ハイレベル枠につきましては,この7校を選定したところでございますけれども,例えば滋賀大学を御覧いただけますと,この学士段階で55名,修士で60名,博士で5名というような定員増でございまして,滋賀大学,我が国初のデータサイエンス学部として非常に有名ではございますが,トヨタさんと連携してこの企業との連携の中で様々なリカレント教育でありますとか実践的な教育をされていくというような意欲的なプログラムでございます。
 7ページ目お願いします。2点目はAI戦略の取組でございます。AI戦略2019,御案内のとおり取りまとまっておりますけれども,このデジタル時代の「読み・書き・そろばん」である「数理・データサイエンス・AI」といったような取組を,この大学・高専全体に広めていくというものです。この下にありますけれども,AI戦略の目標としましては,この2025年度に向けて,全ての大学・高専生約50万人に対して,このリテラシーレベルの教育を普及し,そしてまた25万人に対して,この応用基礎レベルの教育を普及させていくというような目標がございます。
 そういったものに向けて,政府といたしましても,内閣府,経産省,文科省一体となって,この優れたカリキュラムを認定する認定制度というようなものを設けて,2021年から取組を進めてございます。
 その結果,右下のほうの枠囲みに書かせていただいておりますけれども,リテラシーレベルにつきましては,今年で3年目になりますが,既に382件の認定をしてございまして, 約41万人の学生がこのプログラムを受講することが可能になってございます。
 また,応用基礎レベルにつきましては,2年目でございますけれども,147件の認定で約13万人というようなことで,順調にこのAI戦略の目標達成に向けて進捗しているところでございます。
 では少し飛ばして10ページお願いいたします。3点目でございますけれども,この「数理・データサイエンス・AI」の人材育成に向けて,概算要求もさせていただいております。特に理系転換でありますとか理工農分野の情報人材の育成というところを基金でしっかり強化させていただいているところでございますけれども,こちらのほうにつきましては,人文・社会科学系等の研究科における取組を支援するというようなところをこの予算事業で進めさせていただいております。
 次のページお願いします。Xプログラムと書かせていただいておりますけれども,内容は 1,2というところにございますが,この人文・社会科学系等と情報系のプログラム両方の要素を含む学位を取得するプログラムをこれまで支援しております。
 現在ここに書いておりますように滋賀大学以下6大学の取組を支援しておりますけれども,来年度の概算要求におきましては,さらにこういった人文・社会系等の研究科,既に認定された6大学につきましては,総合大学が非常に多いわけでございますけれども,こういった理系の学部を有さない単科大学でも取組を進めていただけるようにいたします。例えば芸術系の大学が,芸術とデジタル。また,スポーツの大学や教員養成系の大学。そういったところが実務家教員を活用するなどして意欲的な学位プログラムを構築していただけるような取組を支援していきたいと考えております。そういった形でこの事業につきましては,合計10億円の増要求をさせていただいております。
 12ページお願いいたします。最後でございますけれども,4点目。生成AIについて,文部科学省におきましても,この大学・高専における生成AIの教学面の取扱いについて,7月13日に事務連絡を出させていただいております。留意すべき論点でありますとか,また,活用が想定される場面の例など詳細を記載させていただきまして,大学の取組の参考となるよう示させていただいたところでございます。
 時間もございますので,この辺にしたいと思います。失礼いたします。
 
【森専門教育課企画官】  ありがとうございました。
 続きまして,経済産業省,資料2について御説明いただくこととしておりますが,その後に,経済産業省の補足といたしまして,情報処理推進機構の齊藤委員から,参考資料2についても御説明をいただくこととなっております。
 まずは,経済産業省,よろしくお願いいたします。
 
【内田情報技術利用促進課長】  経済産業省でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
 資料御投影ください。
 まず,冒頭でございますけれども,経済社会のDX,デジタルトランスフォーメーションが加速するにつれ,データ人材の不足が顕著となっております。人材の質,量ともに大幅に不足しているというデータもございます。
 そうした中,昨年立ち上がりましたこの協議会の議論。また,ここから生まれた政策が,ある種の火つけ役となり,各地,各主体でデータ人材の育成が強化されていること,推進していることを大変心強く思います。改めて,協議会の御参加の皆様方に,経済産業省としても感謝申し上げます。
 資料3ページお願いいたします。昨年もお示ししましたけれども,実践的なデータ人材の育成が重要だというふうに考えてございます。この考え方,下のレイヤーにありますとおり,これは全国津々浦々でDXを理解する人材を強化育成していくことが大事だと思いますし,それから,地域ごとに産業特性が異なります。
 そういったデジタル産業別の人材も合わせて各地域で育成を強化していくことが必要と考えております。この考え方が,各地でこの半年間,様々な形で具体化,進展をしております。今日も北海道経済産業局,それから滋賀大学,熊本大学から御説明あると伺っていますし,また,この後,情報処理推進機構,IPAのほうからもその取組の強化がされていることの御説明があるかと思います。
 こういった形で,多くの関係者が問題意識,課題意識を共有しながらデジタル人材の育成に向けて引き続き取り組んでいくことが重要と考えております。
 4ページお願いいたします。地域の人材育成ということで,特に半導体について一言だけ言及させていただきます。こちらの真ん中にありますとおり,九州を発端として,東北・中国地域・中部地域,さらには関東。そして直近では,北海道でラピダスが立ち上がったことがきっかけとなりまして,地域の産官学の取組の連携が始まっております。
 こうした地域の人材育成の強化をする過程の中で,先ほど文部科学省から説明のございました支援事業が,九州で言いますと九州大学,熊本大学。赤字で表記しております。東北ですと東北大学,中国地域ですと広島大学,岡山大学。それから記載はありませんけれども,北海道では北海道大学といった中核となる大学が,この強化事業に申請し,採択されているということは大変心強いと考えております。
 次ページ以降は,その詳細ですので,割愛させていただきます。
 続きまして,7ページに飛んでいただきまして,地域を越えて全国全体で人材育成を進めていかなくてはいけないという論点でございます。これもこれまで御説明のとおりでございますけれども,政府はデジタル人材の不足を受けて,5年間で230万人を育成するという政府目標を設定し,文部科学省・経済産業省・厚生労働省を中心として,各省が連携をして取り組んでおります。
 その中で経済産業省の取組を幾つか御紹介させていただきます。次の8ページをお願いいたします。昨年の12月に御報告したところですけれども,デジタルスキル標準。こちらは,DX時代の人材像,デジタル人材とはどういったものかというものを,スキルを明確にし,可視化し,整理し,公表したものでございます。個人の学びですとか,あるいは組織内の人材育成確保の指針にしていただくことが目的でございまして,こうしたスキルを身につけることによって,デジタルによって社会が変革していく。その変革の重要性を高めることを目的としております。
 次のページに,具体的な活用のステップを示させていただきました。まずは,このデジタルスキル標準をベースに組織内,あるいはその自身がどうなりたいか。そういった人材像を定義していただき,その次にこのスキル標準と照らしながら,今の保有スキル,今自分のスキルがどのような状況にあるかというところを可視化する。最終的に人材育成に取り組むということでありまして,全国の様々な企業で活用が始まっておりまして,例えば先日,イオングループは,ホームページでも公表されていますが,グループ全体の教育制度の中で,このデジタルスキル標準をベースとした人材育成,人材養成コースを編成したということでございます。こういった形で,社会の様々な場所でデジタルスキル標準の活用が進み,データ人材育成が強化されることを期待しております。
 次のページが,データ人材育成プラットフォームということで,こちらは政府が提供しております学びのポータルサイトでございます。この運営をこれまで1年間行ったところ,次のページに実績を示しておりますけれども,人材育成プラットフォームの下で,リテラシーレベルで6万人,アドバンストレベルで1.4万人が学んでおりますし,それから企業の組織内の人材育成という意味では,アドバンストレベルで4.4万人など,大きな数字が見えてきております。
 この後幾つか実践的な人材育成の取組を御紹介させていただきます。次のページ,明治大学が,これは今回の強化事業には申し込んではないのですけれども,協議会の議論を様々参照されて,独自に人材育成のプログラムを立ち上げました。特に経営人材とデジタル人材のハイブリッド人材を育成するというユニークな取組でございます。この協議会の議論がある種このプログラムの立ち上げを後押ししたというふうに伺っております。
 次のページは,これは組織単体というよりは,地域ぐるみで議論が始まっているという御紹介であります。本件も,この協議会の議論が後押ししたところがございますけれども,熊本県のお隣の宮崎県は,人材の流出が止まらないと。さらに半導体の集積が始まったことによって,より多くの人材が県外に流れていく状況が生まれているということで,県内の産業,経済,大学等の持続可能性の観点から,地元での人材育成を産学官で取り組んでいこうということで,旭化成が中心となって,コンソーシアムを立ち上げたということでございます。
 それから3つ目の事例が次のページでございますけれども,こちらは企業の取組でございます。日本IBMは,全国各地に地域DXセンターを設立しました。こちらは地域のDXの後押しそのものというよりは,地域の人材不足を課題と認識して,地域在住者あるいは学生へのデジタルスキル教育の機会を提供しているということでございまして,IBMから地域の各大学に,講師やアドバイザーを派遣しているということでございます。
 最後に,文部科学省のほうからも文部科学省の生成AIの対応の取組,御紹介ありましたので,経済産業省からも一言だけ御紹介させていただきます。
 デジタル人材のスキルが,生成AIの登場によりまして,急速に変化していくことが想定されます。17ページでございますけれども,生成AIが,今年上半期に非常に盛り上がったことから,経済産業省においても,デジタル人材の育成手法を検討する会議におきまして,生成AIのインパクト,生成AIが人材のスキルに及ぼす影響を検討いたしました。
 次のページが報告書の概要でございますけれども,二,三述べさせていただきますと,ボックスの(2)になりますが,生成AIの進化のスピードが非常に速くて,人材育成のスピードとミスマッチが生じているということ。ですから,なおさらこの歩みを止めずに,学び続けるということを,しかも主体的に学び続けることの重要性ですとか,生成AIを適切に使うための「プロンプト」と呼ばれるスキルの習熟。さらには従来のスキル,批判的思考ですとか生成AIが生み出したものをどう評価するかといったような思考能力も重要だということが論点として挙げられました。
 この議論のアウトプットといたしまして,この後IPAのほうからも御紹介あると思いますけれども,デジタルスキル標準を生成AI対応にアップデートする等の政策を見直すなど,新しい政策を打ち出しているところでございます。
 以上のような取組を続けながら,技術進歩に遅れずに,デジタル人材の育成をさらに強化してまいりたいというふうに考えております。引き続き協議会の皆様と御協力させていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 
【森専門教育課企画官】  御説明の補足といたしまして,情報処理推進機構の齊藤委員から,参考資料2につきまして,御説明お願いいたします。
 
【齊藤委員】  IPA,独立行政法人情報処理推進機構の理事長になりました齊藤です。この4月から理事長を務めております。
 次のページお願いします。今回この4月から,IPAが第5期中計。次の5年間の中計というのを立てて,その中でMission,Vision,Valueというのを少し固めました。今日はその紹介と,この中でやっていこうとしている話,それと皆さんへのお願いというのをさっとさせていただきます。
 最初にMissionとしては,「デジタルで豊かな社会に」とありますけれども,基本的にはサイバー空間,先ほどの半導体が使われるところの中にソフトウエアを中心にしたサイバー空間にシステムが出来上がってまいります。そうしたところを我々がきちんと担っていくという意味で,Visionをちゃんとつくって,それで自分たちの行動パターン,Valueも決めてということで定めております。
 基本的には「デジタルを活用して豊かな社会に」とあるのは,昨今デジタルの領域では産業競争力含めて後進国になっていて,やはり日本自体を新たなサイバー空間を活用したデジタル社会での先進国にしていくという活動をやらなきゃいけないという中で,やっぱり真ん中にVisionが必要だと考えているからです。新たな基盤をしっかりつくる,これはいわゆるプラットフォーム的な,いわゆるシステム基盤としての話と,もう一つは人材育成です。それと安全安心を確保するようなフレームワークとかアーキテクチャをつくる話,そして,それをつくるような産学官の知を集める,その場を担うことをIPAでやっていこうということが,Visionに示してあります。
 そうした中で,我々の行動パターン,Valueとしては,ここにあります5つのような形で,自らも変わっていこうということで,まず進めようとしているのがここに書いてある内容です。
 次のページお願いします。第5期中計のIPAの中で,メインになるのは,デジタル技術の利用促進を通じて豊かな暮らしを実現するためには,まず,社会全体のアーキテクチャを構想して設計しなきゃいけないことです。そこを担っていくような,その基盤をきちんと提供していくような環境をつくんなきゃいけないというのがまず頭にありまして,それでデジタル基盤提供を1つの事業方針に定めております。
 これは,デジタルアーキテクチャ・デザインセンターというアーキテクチャを設計するセンターと,もう一つはデジタル基盤センターというのをこの4月からスタートしていますが,今,いろいろな意味でサイバー空間において,いろいろな各企業のデジタル変革がバラバラに進んでいるという話が日本である一方で,国際的に言うと,欧州・米国ではきちんとした国際標準に見合ったものをつくって,いわゆる産業戦略の中で,デジタルを活用したシナリオで,いろいろなインフラを整えているという状況もあります。日本でも同じような形で,やっていかなきゃいけないということで,例えば米国のNISTのような機能とか,欧州のフラウンホーファーのような機能をIPAで持つということを謳いながら,デジタル基盤を提供していこうというのが,頭にある話です。
 それを支えるようなデジタル人材,これからのデジタル社会を牽引していくようなデジタル人材の育成に対する,いわゆるフレームワークとか教育の仕組み,それとアセスメントの仕組みというのをちゃんとやっていかなきゃいけないというのが左の下にありまして,そうしたシステムを,きちんとしたリスクマネジメントをしながらサイバー空間が安全安心に活用できるようなサイバーセキュリティを確保していくこと,この3本の事業というのをきちんとコアに据えながら,IPA自体をこれからのデジタル社会を支えていくような部隊にしていくことを今進めている途中でございます。
 次,お願いします。そうした中に,人材育成の話で言うと,先ほどの話ですが,いわゆるいろいろな標準を定めてきちんと整理する,フレームワークを定めるという話と,それからその中できちんとしたデジタル人材を育成するという話,それと,そういうデジタル人材を育成した結果をアセスメントする,評価するという話です。それも,ここにありますようなイノベーション人材の育成からサイバーセキュリティの人材育成,そして,スキル標準を定めて,さらに組織を変革していくようなDX人材を育成していくような話があります。さらには最後の一番下が国家試験とか情報処理技術者試験というアセスメントをやることもあります。この辺りをきちんと人材育成の中で体系的に構築していくということを考えていこうとしております。
 この人材育成のところでいろいろと今進めているところで,いろいろ連携させていただきたいというのを,次に紹介します。
 これはITパスポートの試験ですけれども,基本的にはITのリテラシーを全体的に持ってもらいたいということで進めています。特にこれまでの工学系だけではない人文系の人たちの領域でも持ってもらいたいということで,ITパスポートと定義して,その試験をやっております。2022年には過去最高で25万人強の人がこれを応募しましたが,23年の8月までにはさらに前年同期比でも応募数が増加中ということでございました。
 ただこの中で,大学とか高専含めて,在学者に対するiパス受験者の比率がまだ2%未満であって,やはり先ほど人文系のところの人たちも情報処理,情報関係のいろんな学科を増やすということがありましたが,いわゆるAI活用も含めて,デジタルというのはリテラシーとしてベースに持ちながら,各分野のいろんな研究開発とかいろいろな仕事をやっていく話になるので,ここの学生からのパーセンテージを増やしていきたいと考えております。
 本年8月には,先ほどありました生成AIに対してのシラバスを改訂するなどして,最新状況に見合ったようなそんな試験内容に随時変更しています。ぜひこの辺りを一緒に推奨していただければというふうに思います。
 次お願いします。これは国家試験でやっている,いわゆる情報処理技術者試験のところでございますけれども,左側のほうにレベル,下からリテラシー向上,それから応用基礎,エキスパートということで縦軸あります。ここの中間の応用基礎の部分にターゲットを当てた教育プログラム,認定制度の話でございます。
 先ほどのiパスというのはどちらかというと,一番下の,いわゆる全員がリテラシーを持ったらいいという領域でのいわゆるアセスメントの試験でございますけれども,今回ここで記載しているのは,いわゆる高等教育の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」への対応として,FEというところを設定して,今応用基礎レベルモデルのカリキュラムに対応した形でこれを見直して進めようとしていることです。ここへの応募というのを併せて推奨していただければということで少し考えております。
 次お願いします。以上,IPAがいろいろこれまで進めている人材育成の中で,IPAが知識・技術の評価機会として,試験の実施とか,突出したイノベーション人材の育成というのを行いながら社会に貢献していくつもりですが,皆様方の高等教育における人材育成と相乗効果が図れるように,数理とかデータサイエンス,AIモデルカリキュラムに対してのITパスポートの試験だけではなくて,ITエンジニアの入り口となる基本情報技術者試験,FEについても,対応づけを進めていただければというふうに思います。
 今後ここの部分は,いわゆる試験のところの受験への推奨もお願いしたいと思いますし,また,情報学部とか情報学科等の優秀な学生に対しては,我々が行っている,先ほども経産省から紹介がありました未踏事業への挑戦も行うよう呼びかけていただきたいと思います。
 こういう展開を模索する中で,やはり我々IPAも学生の方たちとの情報を持ちながら,いろいろな情報を届けたいと考えておりますので,そのような情報提供の仕組みの整備もお願いできればというふうに思います。
 以上でございます。
 
【森専門教育課企画官】  ありがとうございました。
 続きまして,滋賀大学データサイエンス学部長の椎名様より,資料3について御説明をお願いいたします。
 
【滋賀大学(椎名様)】  それでは,滋賀大学の取組を御紹介します。次のページをお願いいたします。
 滋賀大学は,2017年に日本で最初のデータサイエンス学部を設置いたしました。2年後に修士課程,さらにその1年後に博士課程を設置いたしまして,現在3期生まで,修士,学士それぞれ右側にあるような数字の学生を輩出しております。一方で社会人のリスキニングにも大きな実績を残してきました。第3次中期計画中の累計が3,866名。昨年度ですと1,604名ぐらいになります。例えば具体例としまして,トヨタグループのDX中核人材を育成する。これは「人材育成道場」という呼び名をしているのですけれども,これは年間200人を超える規模で今運営しております。
 次のページをお願いいたします。滋賀大学はいろいろな形で,データサイエンスの全国的な教育の普及に貢献していると思っているのですけれども,ここでは3つほど紹介させていただきます。左側のほう,先ほど文部科学省のほうから御説明ありましたけれども,数理・データサイエンス・AI教育の全国展開の推進というのがございます。こちら,11校拠点校があるのですけれども,これの1つの拠点校として選ばれて活動しております。
 右側上のほうなのですけれども,長い名前になりますが,データサイエンス系大学教育組織連絡会というのがございます。こちらは,データサイエンス系の学部を持つ大学が,横につながった組織で,滋賀大学は発起校として中核的な役割を果たしております。情報交換や,学会などで発表を行っております。
 その下なのですけれども,いわゆるDX周りの人材全般が,もちろん不足はしているのですが,中でも統計分野のエキスパートが非常に足りていないということがございまして,こちら文部科学省の事業になるのですが,統計エキスパートを人材育成するという事業ございます。こちらは,中核機関として統計数理研究所がございますが,滋賀大学は西の拠点として活動しております。
 次のページをお願いいたします。こういう活動を行いながら,徐々に組織を大きくしていったのですが,開設以来現在までほぼ教員数は2.3倍まで増えました。実は,そこにちょっと滋賀大学の特徴があるのですが,もちろん文部科学省から予算をつけていただいて,教員数を増やしていったという面もあるのですけれども,そのほとんどの部分は,自ら稼いで,そのお金で新しく教員を雇って,またさらに共同研究をやっていくと。真ん中のところでございますけれども,共同研究などの外部資金の受け入れ額は,この6年で12.3倍まで増えました。当然なのですけれども,それに伴って,企業自治体との連携協定数も6.8倍まで増えています。
 次のページお願いいたします。今回お認めいただいた事業なのですけれども,これは高度データサイエンス・AI専門人材を大規模に,なおかつスピード感を持って育成するという事業になります。この2つの点を評価いただいたのだと自負しております。
 具体的に言いますと,博士前期課程を7年度に80名。現在は40名ですから,こちらを倍増いたします。それから博士後期課程は,現在定員3名ですけれども,9年度に6名,最終的には8名に。それから学士課程のほうは,現在定員が100なのですけれども,これも2年後に1.5倍して150名,併せて編入枠も新たに設けます。
 教員のほうも,これに応じまして,現在の学部の教員が28名なのですけれども,これを40名まで増やすという計画です。
 次のページお願いいたします。もちろん規模的にはそれなりのものになっているわけですけれども,これを悠長に三,四年もかけてやっていますと,ますます諸外国から離されてしまうということもありまして,これをスピード感を持ってやるということで,令和7年度に修士課程を倍増,それから学部の定員を1.5倍にするという計画でおります。
 次のページお願いします。その背景としまして,ここにどれぐらいのニーズがあるのかというデータを出しているのですけれども,お時間ございませんので,左上のほうのグラフだけ見ていただければと思うのですが,こちらは修士課程の志願者の推移を表しています。去年ですと,大体80名ぐらい。今年は1回目の入試が終わったのですけれども,これまた3割ぐらい増えたので,今年は恐らく定員40に対して100名を超えるのではないかなと考えています。
 あと,右の上のほうにも書いているのですけれども,大体3分の1ぐらいが企業様から派遣を頂いているのですが,こちらのリピート率が非常に高いです。大体20程度の企業自治体等が毎年,あるいは継続的に大学院のほうに人材を派遣いただいています。
 次のページお願いいたします。ここから最後の2枚で,一体滋賀大学でどういう形で人材育成を行っているか。そのモデルを簡単に御紹介したいと思います。左のところにありますように,まず基本はデータアナリシス,統計学の分野とデータエンジニアリング,コンピューター科学の分野ですけれども,ここら辺の基礎をしっかり学んでいくと。もちろんこれは一番大事なことなのですけれども,最終的にはデータから価値を見いださないと意味がないという考えに従っています。ですから,1年のときから,いわゆる価値創造の訓練を積極的に行っているのがうちの特徴かと思います。
 実際そのために,下の枠に書いてあるのですけれども,企業自治体等から,データ,あるいは課題を提供いただく。あるいは実際に,実務家教員,インダストリアルアドバイザーという形で教壇に立っていただく。あるいは先ほど申しましたように企業様から院生を派遣していただき,その院生がたくさんやっております共同研究に実際参加していただく。そういう形でスキームを回しています。
 次のページをお願いいたします。今回,基本的に規模感を増やし,スピード感を持ってやるということを先ほど申し上げたのですけれども,やはり今回,先ほどからお話が出ていますように,新しい大きな動きが幾つかありますので,そこの教育面を充実させていかなければいけないと考えています。
 右下のところに,AIイノベーションという形でくくっているのですけれども,基本的には2つのことを考えております。1つは大規模言語モデルの扱いです。これは多分,滋賀大学の計算資源からすると,大規模言語モデルそのものを新しくつくるというよりは,むしろそれをローカライズしていって,そこから何かサービス,価値を生み出すということを考えております。
 それから,もう一つはどうしても深層学習でブラックボックス化しつつあるので,重要なことは,原因と結果の道筋をはっきりさせる。こちらに対する注意はますます深まってくると思いますので,因果推論をもう一つの柱として考えております。
 以上となります。
 
【森専門教育課企画官】  ありがとうございます。
 続きまして,熊本大学理事・副学長の宇佐川様より,資料4について御説明をお願いいたします。
 
【熊本大学(宇佐川様)】  宇佐川でございます。よろしくお願いいたします。
 次のページをお願いできますでしょうか。本学の取組でございますが,ハイレベル枠に申請するに際しまして,半導体の企業が入ってきたこと。それから,それ以前に熊本県がDXグランドデザインを策定いたしまして,そこに高等教育として寄与するということで,準備をしておりました。
 半導体分野が急に動き始めたのが2021年かと思うのですが,まず,教員組織を本年4月に半導体・デジタル研究機構ということで,総合情報学分野と,半導体分野。およそ40名体制で今もプラスアルファで新しい人員を求めようとして,専任教員の体制を準備しておりました。
 一方,来年の4月に設置をお認めいただきました工学部のほうには,半導体のデバイス課程を申請してお認めいただいたのですが,それに加えまして,文理融合系の情報融合学環という学部組織をお認めいただき,そこには理学部,法学部それから工学部からの定員を移すことで60名体制をつくりました。
 教育課程としては,データサイエンスの総合コース,想定40名。それに対して,製造プロセスで半導体のところでもデータサイエンスは非常に重要になっているということを踏まえまして,20名を配置するという想定をしています。その学士課程の上に,大学院自然科学教育部という理工の大学院がございまして,ここに半導体・情報専攻ということで修士課程は純増70名の120名定員。それから博士課程は,現在の定員を分かつ形で,半導体・情報専攻22名という体制で,大学院に教育を強化しようとしています。
 我々の大学の工学部の進学率がおよそ70%ありまして,学部を卒業してすぐ就職するよりも,修士を終えて社会に出る者が非常に多くございまして,この部分を強化したいというのが,今回の申請の内容となってございます。
 海外との連携は,国内の東大,九州大学,産総研。それから地元に企業としていらっしゃるSONYやTEL。それ以外に半導体の製造をやっておられるTSMCとの関係が深い大学とも連携をすること。それから,語学カリキュラムについては,米国の政府の御支援。それから高専との連携をさせていただいております。
 次のページをお願いいたします。ここで全体のスケジュール感なのですが,先ほど申しましたように令和4年の4月に機構をつくって教員の体制をここで組みまして,来年には半導体デバイス課程を加えて,情報融合学環ということで文理の融合で女子枠を設定したような課程をスタートさせます。
 本来であれば,学年進行とすべきところなのですが,人材養成が急であることから,令和7年に大学院の博士課程と修士課程を増員するということで,今から文部科学省に御相談に伺いたいというふうに考えてございまして,希望どおりお認めをいただければ,令和9年には修士課程を,令和10年には博士の人材を輩出することができるというふうに考えてございます。
 次のページをお願いいたします。これが全体像として,今回の取組の増員の規模になります。学士課程においては,令和5年度時点で105名程度が高度情報人材に相当する卵になろうかと思いますが,そういう人材を185名に増員する。加えまして,修士のほうは令和7年度から70名純増して,現在の自然科学教育部の情報分野の学生が50名おりますが,それに対して,120名を想定する。博士課程は5名を目安としているところなのですが,これは22名に増員するという計画でございます。
 次をお願いいたします。これが博士前期課程の想定している科目群なのですが,基礎的な科目については,高度情報専門人材にふさわしい科目群が用意されて,それに加えまして,インターンシップ等々で少しシェアを広げるなど,いろいろな形で企業との連携を保つような格好で,専門科目によって専門性を高めていくというふうに想定しています。出先としては,やはりソフト系のところ,IT関連企業と半導体と両方をにらんだ形になってございます。
 次のページお願いします。博士後期課程についても基本的には考え方は同じで,数学・データサイエンス・AI系を基礎科目として,そこにそれぞれの専門性を組み立てていくということで,学位としては博士,工学または情報学を想定してございます。
 次のページをお願いいたします。ここが本学の取組の特徴になろうかと思いますが,台湾の国立重点大学とのMOUを結んで,ここの分野で半導体の大学院を持っているところと連携すると同時に,その分野でも本当に必要とされているAI・ビッグデータ関係の実践的な教育を進めていきたい。
 それから,国際的な活動をするために英語教育は不可欠でございまして,在福岡米国領事館からのお声がけもありまして,English Language Specialist Programの提供を受け,今週の初めまで,米国から派遣された先生と2週間にわたり教育プログラムの議論をしてまいりました。
 また,当然のように出口としては,日本の企業に人材配置することは当然なのですが,国際的な場で活躍できるようなところに,インターンシップも含めて機会提供ができるようにしたいと考えてございます。
 次のページお願いします。時間がなくなってまいりましたが,熊本県に置かれている大学として,熊本県の定めたDX人材プラットフォーム。ここには産学官金のメンバーがおられまして,金融関係のデータをいただくことも既に準備を進めておりまして,これがリカレント教育として,地域の大学とも連携するような形でプログラム全体を運用したいと考えております。
 少し時間過ぎてしまいまして,申し訳ございませんでした。
 
【森専門教育課企画官】  それでは,意見交換に入ります。御発言のある方は,挙手をお願いしたいと思います。
 山名様,御発言お願いいたします。
 
【田中委員代理(山名様)】  ありがとうございます。田中の代理で出席しております早稲田大学の山名と申します。
 代理の身分で発言するのもあれなのですけれども,我々の大学を含めて,公式になっておりますのが,例えば今の事例で熊本大学さんの例を挙げさせていただいて大変恐縮なのですが,経産省さん半導体に今すごく力を入れられておられて,すごく投資をされて。特に九州地域を含めてということだと思うのですけれども,熊本大学さん大変精緻に御計画をされていらっしゃるのですが,我々の大学も含めて,学生がなかなか思うところに就職してくれないというのがどうしても出てきておりまして,我々のところももちろん当然半導体関係の学科ございますけれども,なかなかそういったところに就職をしてくれないと。受け入れる枠はあるのだけれどもということで,この辺についての戦略というのは,どういうふうに我々考えていくべきなのかなというふうに思っているところでございます。
 
【熊本大学(宇佐川様)】  熊本大学宇佐川でございますが,発言お許しいただけますでしょうか。
 
【森専門教育課企画官】  お願いいたします。
 
【熊本大学(宇佐川様)】  先生の御指摘のように,我々も九州地区に半導体の企業は1980年代よりずっとあって,今本学に所属する学生の何割かは,御両親や御親戚の方で,その分野に従事された方がいらっしゃいまして,やはりアップダウンがあったことは重々承知しているというふうに考えております。
 ただ,地元に実際にマニファクチュアリングをされているところがたくさんあって,実習に行くとそこに魅力を感じて進んでいくということ。それから共同研究講座によって,具体にはソニーセミコンダクタマニュファクチャリングのほうから共同研究講座を設置いただいておりまして,そこで実際に半導体製造を,イメージセンサーの製造等に関わられた先生が半導体の教育をされますと,学生としてはやはり非常に身近に感じて,そういう分野で自分の力を発揮してみたいというふうに考えている者も少なからずおります。
 特にデータサイエンスに関しては,ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングさんのほうでは,データサイエンス技術部門ということで,100万パラメーターぐらいを製造パラメーターとして管理されているということで,どうしても統計やデータサイエンス,AI人材のところもきちんと教育してくださいという御依頼もあり,その辺りのいわゆる狭い意味での半導体だけではないのだということを訴えるように留意しているということでございます。
 以上です。
 
【森専門教育課企画官】  IPAの齊藤委員,お願いします。
 
【齊藤委員】  ありがとうございます。全般的な話なのですけれども,我々のIPAでデジタル人材育成の中に,アーキテクト育成の話をしているのですよね。基本的にはデジタルを活用すると,今のAIをとか,データサイエンスのような技術をパーツとして,いろいろな分野で適用することが個別にはあるのですけれども,それを今度例えばDXのシナリオにのっとっていくと,トランスフォーメーションというのは現状のやり方,システムを変えていかなきゃいけないので,システム的な視点というアーキテクチャが必要になるのですよ。
 これは今のGAFAなど,いろいろな海外でITの新興ITベンダーがプラットフォーマーとしてやっている話は,ある意味会社経営そのものをデジタル化していくみたいな話があって,ここは個別のいろいろな技術のものはあるのだけれども,トータルとして経営をデジタルでやっている視点を経営者が持たなければいけない。
 そういうやっぱり(デジタル)人材がある程度いないと,日本の企業が従来のものづくりの延長線上にビジネスをやっているだけで,これから日本の産業力が高まるような形にはならないというのが私イメージあります。日本の中には,従来の昭和の時代,私が育ってきた昭和の時代からのものづくり中心で出来上がったやり方とか仕組みがあって,その中にデジタルを活用するというのが今の流れになっているのですけれども,そもそも,そうした従来のやり方自体を抜本的に変えていかなきゃいけないというのがDXの本質で,それができる人材をでは,産学連携の中でどうやって育てるかという議論が多分いるのですよ。
 だからそういう意味で言うと,人文のところの人材でも,例えばAIとか含めたデジタルの活用人材をつくる話はあるのですけれども,日本の国としての,いわゆる人材ポートフォリオのようなものを眺めたときに,どういうふうな育成をしていくのか,何名ぐらい,例えば経営ができるような,アーキテクトができるようなそういう人材を育成していくのかというような話をトータルで考えていく必要があるかなとイメージしました。
 だから半導体でも,いろんな意味でデータを活用しながら,先ほどのものづくりのやり方を変える話は,多分,半導体の製造業でもいろいろなやり方を変える話としてあるのでしょう。例えば販売・ディストリビューションしていく際には,いわゆるデジタルを活用して,簡単に世界に届けていくような,そんな仕組みを併せてビジネスとして考えていかないと拙いと思います。恐らくプラットフォーマーの延長線上にある発想をする海外のものづくりの方たちというのは,そういうやり方で攻めてくるのですよね。そういう観点で,この産学連携の中でも,どうしていくかという議論が必要かなというふうに感じました。
 意見ですけれども,以上です。
 
【森専門教育課企画官】  ありがとうございます。
 次,新経済連盟の関委員お願いいたします。
 
【関委員】  新経済連盟の関です。
 御説明ありがとうございました。デジタル人材育成に向けての基金の創設と助成業務の運用推進,急ピッチで進めていただきありがとうございます。デジタル人材の不足が顕著ですので,ぜひこの基金を活用して高いレベルの質・量が確保されるように,お願いしたいと思います。
 少しコメントさせていただきたいのですが,そのデジタル人材育成の目標や計画と,それぞれ細かい施策も含め,各種施策との関係性が今ひとつ明らかでないと思い,例えば5年間で230万人育成という目標に対して,それぞれの施策がどう貢献するのか,貢献を期待されているのかというのが,具体的に紐付いていないと感じています。
 例えば,人材育成プラットフォームという施策に対して,この230万人育成目標のうちどのぐらい貢献しているかという,民間企業的な発想でいくと,それぞれ細かいKPIを設定し,その細かいKPIの集合体の結果が,どのように230万人達成に結びついていくのか,またこれらのKPIを設定した上で,それぞれPDCAサイクルを回していく,というようなことをやっていくので,ぜひそういった考え方も取り入れていただけたらと思います。
 次に,これは以前も申し上げたことですが,育成すべきデジタル人材の裾野を広く考えるという観点について,御説明の中にもそういった言葉が入っていたと理解しております。引き続き,情報科学分野以外の学生についても,そういった基金の活用も含め,育成推進をお願いしたいと思います。
 3点目に,AI関連人材について,育成戦略を明確にすべきというのは当然だと思うのですが,この人材に求められるスキルや適正というのは,技術の発展とともに常に変化をしていくと思いますので,デジタルスキル標準なども含め,技術動向や産業界のニーズ,そういったものをにらみながら,柔軟に対応を変化していっていただきたいと思います。
 以上でございます。ありがとうございます。
 
【森専門教育課企画官】  ありがとうございました。
 続きまして,国立大学協会理事,大阪大学の総長であります西尾先生,お願いいたします。
 
【西尾委員】  どうもありがとうございます。
 スイスの国際経営開発研究所,IMDが公表した世界のデジタル競争力ランキングによると, 2022年時点で,日本はデジタル・技術スキルの領域において全63か国中62位であるというのが現状です。さらに,一説では我が国において2030年までにIT人材が45万人不足するという問題に直面しています。このような状況を打破していくには,私は今がラストチャンスだと考えております。そういった中で,今回,文部科学省および経済産業省における事業により,先ほど来御紹介いただいた様々な人材育成プログラムが今年度から大々的に始まったということは,非常に大きな意義があると考えております。
 これによって,今後,先程申し上げましたような深刻な課題が一つでも,一歩ずつでも改善がなされ,解決がなされていればと思います。そのためには,事業の遂行の過程で,デジタルランキング等の状況を注視するといったフォローアップを十分に行っていく必要があるのではないか,ということを強く感じております。
 また,先ほどIPAの齊藤様からお話しいただきましたように,DX化の推進においてリーダーシップを取っていけるような人材が,社会変革を促す意味では非常に重要であると考えております。その観点から,2点ほどご質問したく存じます。滋賀大学でなさっておられます共同研究の実績は本当にすばらしいものであると,先ほどのプレゼンテーションで感銘を受けました。そのような共同研究の中で,アーキテクトの育成といったところまで踏み込んでおられるのか,ぜひとも伺いたく思っております。
 2点目ですが,現在導入しておられる様々な認定制度は,非常に大きな意味合いを持っていると考えております。ITパスポートのような資格を取得していくことによって,個々人の知見やスキルを向上させることは大変意義のあることですが,その中でもリテラシーレベルで,小中学生,あるいは高校生といった低年齢層も対象にしておられる点は,今後の日本のことを考えると,非常に重要だと考えております。
 そのパスポート等の内容において,スキルを身につけるだけではなく,大量のデータ,情報を扱うことに関する倫理の問題,例えば個人情報の取り扱いや,SNSで他人を攻撃することがどのような意味を持つのかといったリテラシーの教育は,この枠組みの中に入っているのでしょうか。もし入っていないようであれば,ぜひ追加していただきたいと思います。
 情報分野における国際競争力でトップランクに位置しているのは,デンマークをはじめとする北欧諸国です。そこでは,情報倫理に関する教育が,小中高のレベルで非常に徹底して行われます。そのことをぜひとも今後,御考慮いただければと思っています。
 また,これは質問ではなくコメントですけれども,熊本大学で行われているプログラムの御紹介の中で,台湾を含めた国際的な連携ということをおっしゃっていただきました。これは非常に重要なことであると思っております。私は,コロナ禍になる前に台湾の国立清華大学等を訪問して,半導体関係のグループの方々と非常に密な議論をしましたけれども,そこにいる方々は,学生も含めて,自分たちが台湾の産業を支えているのだ,世界の半導体を支えているのだという非常に強い自負を持って取り組んでおられたのが大変印象的でした。
 ですから,そのような研究者,大学に所属する学生と連携していくことによって,日本の学生たちの半導体関係への取組に対する積極性がより高まるのではないかと考えております。ぜひとも国際的な連携の枠組みを大事にしていただければと思いました。
 取り急ぎ,以上のように質問とコメントをさせていただきます。
 
【森専門教育課企画官】  ありがとうございます。御質問が2点ほどあったようでございますので,1つ目につきましては,滋賀大学様から。その後は,経済産業省様からお答えいただくという形でよろしければ,そのような形にさせていただきたいと思います。
 
【西尾委員】  ぜひお願いします。
 
【森専門教育課企画官】  申し訳ありません。時間がかなり押している状況もありますので,回答は御簡潔にお願いできればと思います。
 滋賀大学さん,お願いします。
 
【滋賀大学(椎名様)】  今,西尾先生から御質問がありましたけれども,まさにおっしゃるとおり,狭義のデータサイエンス,統計学プラス情報学のところだけでは駄目だという意識がだんだん強くなってきて,そこのところはどんどん自動化されてきているのです。ですから,果たして大学でそこだけ教えているのは駄目だという意識は我々もあって,先ほどから出ていますいわゆるビジネスアーキテクトとして,その前後の部分も含めて幅広く教えるべきだという認識があって,それは今後のカリキュラムで取り入れていきたいと思っております。
 以上です。
 
【森専門教育課企画官】  経済産業省様,よろしいでしょうか。
 
【内田情報技術利用促進課長】  すみません,どの質問を経済産業省にということでしょうか。
 
【森専門教育課企画官】  ITパスポートとかそういったものでございます。IPAのほうがよろしかったでしょうか。
 
【齊藤委員】  じゃあIPAのほうで。いわゆる今倫理の話は併せて含めてやっていますということで,考慮は十分にしていますという回答ですが,よろしいですか。
 
【森専門教育課企画官】  ありがとうございます。御質問につきまして,今ので回答ということにさせていただきますけれども,御発言につきまして,ちょっと時間が押しておりますので,今お手を挙げていただいています電子情報技術産業協会の平井様のその後に,経団連の平松様。その後,経済産業省のほうでお手も挙げていらっしゃるので,その3名の順番ということで,この後御発言いただくという形でお願いいたします。
 
【平井委員】  恐れ入ります。JEITA,電子情報技術産業協会の平井でございます。本日から,参加させていただいております。
 まず,両省から御説明いただきました,デジタル人材育成確保に向けた各種の施策に関しまして,非常に内容的にも,また予算規模的にも,充実したものを御用意いただきまして,感謝申し上げます。加えまして,多くの大学,高専などで,このデジタル分野の人材育成の強化が図られているということ。デジタルソリューションを提供する側の私どもの産業界としても,非常に心強く感じているところでございます。
 こういった政策等ときちんと連携していくために,JEITAといたしましても,先ほど経済産業省のほうから御説明いただきました半導体関係の人材育成のコンソーシアムに対しまして,講師の派遣,カリキュラムを一緒に築き上げるというような形で協力を申し上げているところでございます。その点,また引き続きよろしくお願いいたします。
 それから,先ほど齊藤委員のほうから御指摘あったところ,デジタル産業,半導体などのデジタル産業を担う人材だけではなくて,様々な産業においてデジタルを活用していくような,いわゆるアーキテクチャ人材と,いった観点も非常に重要だという御指摘,まさに正鵠を得たものだと思っております。
 私どもJEITA,手前みそになりますけれども,展示会CEATECを毎年開催しておりまして,今年も10月17日から20日まで4日間,幕張メッセにて開催を予定してございます。ここの4つほどあるテーマのうちの大きな1つの柱が人材でございまして,次世代,未来を担う学生向けの企画を,今準備を進めているところでございます。
 その時に,このデジタルの魅力でありますとか,あるいは学生さんのキャリア選択に役立つような情報を発信していこうと考えております。もちろん半導体でありますとか,様々なデジタル機器に関しましては展示ブースも用意してございますけれども,さらに将来像,どのような社会がデジタルによって実現できるのか。そういったビジョンを描いていくこと,にも腐心しているところでございます。
 今日の集まりのアカデミアの皆様方にも,もし機会がありましたら,技術動向の調査分析に加えまして,こういったデジタルを社会で使っていったときのビジョンを感じ取っていただくという意味でも,ぜひ幕張へ足をお運びいただきまして,今後のキャリア指導にも御活用いただきたいと思っております。
 以上でございます。ありがとうございました。
 
【森専門教育課企画官】  ありがとうございました。
 それでは,日本経済団体連合会の平松委員お願いいたします。
 
【平松委員】  平松でございます。御説明ありがとうございました。
 文科省,経産省の各種施策が着実に効果を上げ始めてきていると聞いております。今後さらに,これらの施策を産学官連携で推進し有意義なものにするためには,各種施策が目指す数年後のターゲットや期待水準等について,全員が共通の認識を持てるようなロードマップがあると,さらに理解が深まると思います。
 デジタルスキル標準については,適宜アップデートすることで,産官学で大事に育てていきたいと思っています。企業でもデジタル教育が随分進んできております。これをより実践的なものにするためには,これは我々企業側の取組になりますが,デジタルスキル標準を基にスキルをしっかりと身につけた人に対して,その人が活躍できるような仕事にアサインして,適切に評価し,処遇にも反映する事例をつくっていくことが重要です。現場でそうした活用ができないのであれば,デジタルスキル標準の方にフィードバックし,デジタルスキル標準を実践的なものに改善していく必要があります。この取組があって初めて実践的かつ有意義なものになると思っています。
 デジタル人材の育成に向けた取組は着実に進んでいますが,実務家教員に関しては,なかなか進んでいません。企業側でこういうことをしてほしいといったことがありましたら,一緒に実務家教員の活躍の場を広げることに貢献していきたいと思いますので,よろしくお願いします。
 以上です。
 
【森専門教育課企画官】  ありがとうございます。実務家の話については,議事の2番目でも一応御議論いただくということを予定しております。
 それでは,経済産業省さんよろしくお願いします。
 
【内田情報技術利用促進課長】  時間も押していますので,大変手短にコメントさせていただきます。
 新経連の関委員から御指摘ありました2点,まずは人材育成230万人のKPIでございますけれども,こちらはまさに各省庁連携して政府全体で取り組んでいるところでございますが,各省ごとに,それから政府全体でKPIを設定しておりまして,特に2024年2026年のKPIを昨年12月に閣議決定されましたデジタル田園都市国家構想総合戦略の中に記載,明記をしております。政府内でも,定期的にフォローアップをしておりますところ,御報告いたします。
 もう1点,生成AI対応等,様々な形でスキルが発展するということに合わせていかなくてはいけないという論点は,これはまさにおっしゃるとおりでして,先ほど経済産業省,IPAのほうからも御紹介いたしました生成AI対応の人材スキルの見直し。特にスキル標準のアップデートは,政府の取組として非常に異例だと思いますけれども,2か月間の短期で集中的に議論をして,対応を公表したところでございます。この議論は今後とも続けていきたいと思いますので,ぜひ,アカデミアの皆様,産業界の皆様との継続的な議論もさせていただければと思います。
 以上です。
 
【森専門教育課企画官】  ありがとうございました。
 多くの意見,ありがとうございます。
 それでは,次の議事に移りたいと思います。議事の2つ目でございますが,地域の産学官の連携による人材育成の在り方についてというものでございます。
 まず,文部科学省から説明の後,地域での産学官の連携事例につきまして,北海道経済産業局及び北海道大学から御説明いただきたいと思っております。
 それでは,文部科学省から説明をお願いいたします。
 
【梅原専門教育課長】  専門教育課長の梅原でございます。時間もございませんので,簡潔に実務家教員の確保,活用というところでプレゼンさせていただきます。
 この実務家教員の確保,活用を進めていくためにということで,先ほど御紹介いたしましたこの大学・高専の機能強化のための3,000億の基金でございますけれども,こういったところにおきましても,実務経験のある教員等による授業科目を配置する計画。そういったものを申請要件としておるところでございます。
 また,支援2の高度情報人材の確保というようなところでも,この各大学が実際に出されてきた計画の中においても様々にこの実務経験のある教員の確保・活用というところがもう計画の中に盛り込まれているというようなところでございます。下にポイントで少し書かせていただいておりますけれども,この計画の内容は様々でございますが,このデジタルに関する社会実装関係のPBLの科目のうち,特に演習実習において実務経験のある教員を活用される。そういった事例が多く見られたように思われます。
 また,雇用形態といたしましても,常勤の場合もございますし,また,授業科目を担当するという意味での非常勤の講師。また,授業科目の一部を担当されるというような形など様々でございました。
 また,人材確保というところでも,JREC-INなどを用いた求人というようなものもありましたし,連携企業からの在籍出向。また,クロスアポイントメント制度,そして地元の企業さんからの招聘でありますとか,また,この産学官連携の枠組みにおいて派遣を協議したというような事例もございました。
 次の2ページ3ページ目にそれぞれの事例を書かせていただいておりますけれども,ちょっと時間の関係で省略させていただきます。 それで先ほど滋賀大学さんからも御紹介いただきましたけれども,文部科学省のほうは今数理・データサイエンス・AI教育の全国展開ということで,全国9つのブロックで取組を進めております。
 そういった中でも,そこの小さな字で書かせていただいておりますけれども,このデジタル人材プラットフォーム。経産省さんの取組との連携や,それぞれのブロックが地方の経済産業局さんと連携して取組を進めさせていただいております。
 そういった中で,今200校以上の加盟校ございますけれども,この実務家教員の確保でありますとか派遣でありますとか,情報収集。そういったところで,文科省,経産省,そして大学がしっかりタッグを組む形で取組を進めさせていただいておるというふうに認識してございます。
 6ページまで飛んでいただけますでしょうか。そして文部科学省のほうでも,この大学教員の実務家教員になられる方の基本的な素養を身につけていただくというようなことで,こういった事業も展開しております。この事業自体は今年度で終了でございますけれども,こういった大学教員としてのシラバスの作成に始まるようなこういった基本的なことでありますとか,またそれぞれの実務家の方と大学をマッチングするためのシステムの構築ですとか,そういったことについてもこの事業の中で取組を進めさせていただいておるところでございます。
 引き続き,皆さんの御協力を得てしっかりと実務家教員の確保育成というところを進めていきたいと思います。どうもありがとうございます。
 
【森専門教育課企画官】  ありがとうございました。
 続きまして,北海道経済産業局地域経済部長の菅原様,北海道大学数理・データサイエンス教育研究センター長の大鐘様より資料6について,御説明をお願いいたします。
 
【菅原北海道経済産業局地域経済部長】  北海道経済産業局菅原でございます。それでは,簡潔に私どもの取組を御紹介します。1ページ目お願いします。
 資料にあるとおり,全国でデジタル人材育成を進めるこの全国協議会ができています。この動きを踏まえて,北海道の中において関係機関で連携をして,この3月に地域ブロック版として全国第1号となる協議会を設置し,3月に本会議,それから7月にワーキンググループ第1回会議を開催したところです。
 この協議会では,道内企業,特に中堅中小企業が多いのですけれども,こうした企業のデジタル人材の育成,それから,地産地消といいますか,道内で輩出される人材に道内で就職していただくというような取組をベースに,資料下に記載があります取組の1から4までを中心にやっていこうとしています。
取組の1つ目としては,デジタル人材のターゲティング,カリキュラムということで,どういう人材が産業界・教育界双方で欲しいのかという人材像のターゲット化などを行いました。
 それから取組の2つ目としては,カリキュラムの強化,そして(2)にありますけれども,大学への実務家教員の派遣の仕組みです。これをつくっていきたいと思っています。取組の3つ目としては,後ほど説明しますが,道内の学生と企業の接点が薄いということで,そこの接点を強くしたいと思っています。取組の4つ目としては,これらの取組の実効性を高めるため,関係機関とのネットワークの強化などを図っていくということです。
 2ページ目お願いします。北海道協議会は,教育機関として道内でデジタル人材を育成している大学の多く,それから右側に記載のある道内高専4つ全て,そして産業界,行政機関,計26で構成をされています。
次のページお願いします。取組の1を簡単に説明します。協議会,産業界ともに事前のヒアリング等によると,育成すべきターゲットの人材像について,双方で大きな違いはありませんでした。下の図で示す,中堅中小企業向けの人材,類型的に言うと類型2から5。こうした類型の人材をしっかりと育成していくという予定で考えております。
 次のページお願いします。取組の2の(1)のカリキュラムの強化ということですけれども,AIとかデータサイエンス,数理に関する知識,それからスキルの習得についての内容は充実しているという認識を産業界・教育界双方が持っていますが,先ほど話題も出ていましたように,特にビジネス思考,コミュニケーション力,それから課題解決力などのそのビジネス素養を高めるカリキュラムが不足しているという声が多いということですので,今後企業データの分析等を踏まえたPBLを講義に導入していくということで,カリキュラムの追加強化の取組を検討しています。
 6ページ目お願いします。取組の2の(2)です。大学等への実務家教員の派遣の仕組みをつくっていこうと思っています。大学では数理教育とかデータサイエンス,AI教育で教員の不足が目立ってきているという調査結果もあるため,教員の不足を埋めるためにも実務家教員の活用が効果的であろうと捉えています。北海道協議会には第1弾ということで,北見工業大学からサイバーセキュリティ,それからプログラミング言語,こうしたことに関する実務家教員の派遣の要望が寄せられています。今学内で諸条件の調整をしており,これを産業界に提示してマッチングをしていくという予定にしておりますが,この北見工大のモデルを広く道内の大学に広めていく,横展開をしていきたいと考えています。それから,実務家教員の講義を共有できるような動画のコンテンツを作成していきたいと思っております。
 8ページ目お願いします。道内企業の就職促進に関して,道内高卒で道内大学に入学した学生が,道内就職を希望する割合が85%と,全国平均より10ポイントほど高いという調査結果があります。ただ,学生から見ると,道内企業をよく知らないとか,道外企業のほうが実際には条件がいいということで,道外に流出するケースが非常に多い実態があります。
 そこで,道内で育成した人材が道内で活躍いただきたいということから,学生と企業と直接的かつ実効的な接点の拡大をしていきたいと考えております。特に実践的なインターンシップ,実務家教育による企業のケーススタディへの発信をしたものを積極的に進めていきたいと考えております。
 私からの説明としては以上ですが,取組を進めていく中で実務家教員派遣に関する課題等も少しずつ見えてきていると思います。この点について,北海道協議会のワーキンググループの座長で,北大のデータサイエンス教育研究センターの大鐘センター長から以降の説明をお願いしたいと思います。

【北海道大学(大鐘様)】  北大の大鐘でございます。簡単にかいつまんで説明させていただきます。
 今,お話がありました北海道版協議会のワーキンググループ,それから,北海道経済産業局様が精力的に行ったヒアリングの結果から,幾つか課題が見えてきましたので,御紹介させていただきます。
 まず,大学側といたしましては,シラバスとカリキュラム,これらがきちんと整備されておりますので,ここに実務家教員を入れるとなると,多くの学内調整が必要になるということです。機能強化支援事業のように方針が決定しているものであれば,非常にやりやすいのですけれども,若手の実動部隊がプログラムを設計しているような場合は,この調整が困難であるというようなことが考えられます。
 それから,実務家教員をある程度長期に渡って採用する必要がありますので,その点担保されるのかどうかという不安が1つありました。それから,これは予算上必ず生じるものですので,予算確保問題が発生する可能性があるということです。
 次をお願いいたします。産業界側からの問題としては,まず,学術体系的な内容について大学から依頼されるということがあっても,なかなか対応しにくいということが挙げられます。社会実装実例については非常に得意であるので,マッチングをきちんと行う必要があるということです。
 それから,会社,企業の顔となる方,すなわち,キーパーソンが実務家教員として派遣される可能性が高いです。また,非開示データを講義等で使用する場合は,NDAを結ぶのですけれども,情報漏えいのリスクはゼロにはなりません。このような問題のある中で,テーマや人員を出すインセンティブがあるかという点が挙げられます。これは大学側と産業界がきちんと認識する必要があるということです。
 次をお願いいたします。グッドプラクティスの例として,北見工業大学様をお示しします。非常に長きにわたりまして,リコーITソリューションズ様に講義を担当いただいています。修士の1年生対象の講義の結果,学生さんがこのリコーITソリューションズさんを知って就職するという事例がありまして,先ほど言ったインセンティブの問題,それから,その前に菅原部長からお話がありました,道内企業に就職を促進するという課題を解決できる可能性があるということでございます。
 以上,簡単ですけれども,説明を終わらせていただきます。
 
【森専門教育課企画官】  ありがとうございました。
 それでは,意見交換に入りたいと思います。時間の都合,議事の2つ目の今回のこの議事,2番目だけではなくて全体を通して御発言いただければと思っております。何か御発言あれば。
 まず,経済同友会の神宮様。
 
【神宮委員】  同友会の神宮でございます。
 本日はご説明ありがとうございました。予算をしっかり取られて,基金サポートによる学部・学科の強化であるとか,大学での積極的な教育の取組に加え,産学連携がいろいろな形で進み始めているなと思いまして,大変素晴らしいと思いました。
 私から前の議題も含めて,2つコメントをさせていただければと思います。
 まず1点目ですが,大学のほうがこれだけ強化しているということがございますので,これから理系人材を増やすためには,中学高校の段階から理系に進むことによるキャリアの可能性について,ここをしっかり学生に伝えることがとても重要ではないかと思っております。もしかしたら,御両親に伝えることも必要ではないかと思います。
 例えば中学時点で,理数科目の成績は男女とも変わらないのに,いざ女性の理系進学率となると大きく下がるのは,なかなか将来の仕事と結びつきづらい,こういったところがあるのではないかと思っております。
 この国全体のことで申し上げますと,男女問わずではありますが,やはりこれからデジタル人材を増やすためには,キャリア教育。これについてぜひ力を入れていただきたいと思っております。
 本当に若い方に大きなチャンスがあると思います。同友会としましては,これまでも学校への出張授業なども行っておりますが,オンライン含めて全国の学校のサポートも可能かと思いますので,ぜひ積極的な御検討をお願いしたいなと思います。
 それから2点目ですが,企業のインセンティブのお話が今日もありましたが,経産省の方のお話にもありましたとおり,産業界としては,もう企業のDX待ったなしという状況で,各社デジタル人材の育成に力を入れ始めたところです。ただ,簡単に専門人材が育つというわけではございませんので,現在は新卒・キャリアの採用どちらも,人材獲得競争がもう一段と激しくなってきております。激化していると。ここをまず皆様に強くお伝えしたいと思ったところでございます。既にチャンスが広がっているということでございます。
 もともとデジタルに精通している人材というのは,どこでも通用するスキルということがありますし,あとキャリアアップに関しても,いろいろな環境でいろいろなプロジェクトでいろいろな技術を学んでいきたいというような考え方の違いがありまして,基本的には流動性のある人材群と捉えております。
 企業としては,そういった流動性があるからこそということもありますが,選ばれ続けるということが必要になってございまして,ここではジョブ型の採用ですとか,それからスキルに合った通常とは違う報酬体系,ここまで踏み込んで,今人事政策を行っている企業が増えているということでございます。
 先ほど先生の獲得の話もありましたけれども,やはりこの教える側の人材獲得,マッチングという課題については,産業界としても認識をしているところでございます。先ほど申し上げたとおり,DX人材獲得というのが企業としては死活問題だという状況がありますので,これは産学連携の取組を発展させるにはとてもいい機会ではないかなと,タイミングなのではないかと一方で思ってございます。
 企業側としましては,学校を支援することによって,デジタル人材全体の母数が増えるという長期的なメリットはもちろんありますが,喫緊の課題である優秀な学生を獲得したいということもございますので,その1つの取組として大きなチャンスだと捉えております。直接採用に結びつかなくても,学生達の中で口コミもすごく広がっていくところでもありますので,この会社はデジタル人材育成に力を入れているという企業ブランドをつくることも本当は大きなインセンティブになっておりまして,ここは連携が進むいいタイミングではないかと思います。
 今日かなり取組が進んでいる連携の事例もございましたけれども,一方で私も企業の今社長をしておりますが,企業側に協力の意思はあるのですけれども,各学校の中でどういった要望があるのかということが全体的に把握しづらいとか,マッチングがしづらいというところがあると思いますので,そこのマッチングの仕組み,これはもうぜひ進めていければと思っております。同友会はそういった活動に協力したいと思っておりますので,ぜひ御要望いただければと思います。
 全国という意味で言うと,オンラインを活用すればより質の高い授業をスピード感を持ってできることもありますので,地域での取組ということもあると思いますが,ぜひ相乗効果を出すために,全体の底上げということで御活用いただきたいということ,加えて企業側もDX人材育成にすごく力を入れておりますので,大学の授業にアクセスしやすいような,こういった取組もぜひよろしくお願いしたいと思います。
 同友会からは以上でございます。
 
【森専門教育課企画官】  ありがとうございます。
 時間が超過しております。大変恐縮でございますが,引き続きお付き合いいただければと思っております。
 御発言については,御簡潔にお願いできればと思っています。
 今挙手いただいていますのが,公大協の浅井委員,あと新経連の関委員お二人ということでございますので,まず,浅井委員お願いいたします。
 
【浅井委員】  公大協の浅井でございます。
 1つは自分の大学の取組からなのですけれども,いわゆる進化型の実務家教員養成プログラムというのを現在行っておりまして,その中でやっとそういう実務家教員の方が大学に採用されて就職していただけるようなケースが今出てきています。
 ただやはり企業の御理解がないと,なかなかそういうところのプログラムへ来ていただけないということもありますので,クロスアポイントメントというか,そういうことも御理解いただきながら送り出していただけるとすごくありがたいかなと思っています。
 もう1点は,公立大学としましては,やはり設置自治体の理解がないとなかなかデジタル人材を養成する学部とかの設置が進まないということもありますので,設置自治体の御理解をいただきながら,そういうところへの働きかけというのも国全体として,お願いできればと思っています。
 私からは以上でございます。
 
【森専門教育課企画官】  ありがとうございます。
 関委員お願いいたします。
 
【関委員】  新経済連盟の関です。ありがとうございます。私のほうからは議題2について1点と,それ以外について1点コメントさせていただきます。
 企業からの寄附金についての損金算入の措置などありがとうございます。それ以外に,例えばリカレントの受入れ費用,PBLの共同開発費用,こういったものについても引き続き税制優遇について検討いただければと考えております。
 加えて,大学定員の23区規制について,以前この場でも申し上げたことがあるのですが,撤廃をすべきだと考えております。現状,非常に制限がある形で実現されている状況だと認識しています。理学・工学分野に限るであるとか,数年以内に入学定員の見直しが必要など,非常に制限がついている状態だと思います。
 国の施策というのはメッセージ性が非常に大事だと思っております。この23区規制というものを見ると,デジタル人材育成に非常に高いプライオリティーを置いて推進していくのだというメッセージ性が感じられないのです。程々でいいのではないか,といったようなメッセージになってしまうのではないかと危惧しており,この23区規制,私は大変疑問に思います。
 
【森専門教育課企画官】  ありがとうございました。
 それでは,お時間まいりましたので,閉会時間も近づいて参りましたが,最後に協議会の総括として,経済産業省の野原局長,文部科学省の池田局長からそれぞれ一言お願いしたいと思います。
 それでは,野原局長お願いいたします。
 
【野原商務情報政策局長】  経済産業省商務情報政策局長の野原でございます。本日も貴重な御意見をいただきまして,ありがとうございます。本日も大変有意義な議論になったと思います。
 本日の会合では,政府やIPAの取組のみならず,滋賀大学,熊本大学,北海道大学,それから北海道デジタル人材育成推進協議会から,地域の人材育成が動き出しているということを御紹介いただきました。
 実務家教員のさらなる活用は,多くの大学・高専に共通の課題であると思います。本日御紹介のあった先進事例のノウハウが共有され,横展開が図られることが,我が国の高等教育機関におけるデジタル人材育成の裾野の拡大につながるものと期待しております。経済産業省も,地方の経済産業局を中心に,地域の産業と大学・高専の対話が進むように尽力してまいります。
 デジタル人材の育成に当たっては,技術進歩に柔軟に対応することも不可欠でございます。生成AIの登場は象徴的な出来事であったわけですが,経済産業省としては,今年の8月に生成AI時代のDX推進に必要な人材。スキルの考え方について集中的に検討会で検討いたしまして,デジタルスキル標準のアップデート。それからIPAが行っているITパスポート試験の出題範囲の見直しを行いました。今後も生成AIがDX推進の専門人材に与える影響について,検討を進めてまいります。
 様々な関係者の皆様の御努力によりまして,初等中等教育から始まる我が国の情報教育,デジタル人材育成は着実な進展を見せております。本協議会の議論は,その流れを加速するためのものでございます。本協議会を通じて,関係者の努力がそれぞれバラバラの取組ということではなくて,有機的に連携することを期待しております。
 とりわけ,大学・高専の教育と経済界の人材ニーズがシームレスに接続する必要ありますし,経済界の協力と大学・高専の教育が一体として,有機的に連動していく。その実現を推進するエンジンとして,この協議会が機能,貢献していくことを期待しております。
 デジタル人材の中でも半導体人材の育成は急務でございまして,産学官の連携が不可欠です。前回御紹介した各地域の取組に加えまして,北海道でもラピダスをはじめとする地域の産学官連携により人材育成の取組が始まったところでございます。
 全国各地域での半導体生産拠点の立地に移行する形で,半導体人材育成に関する機能の強化に向けて,本協議会の議論の成果である大学・高専機能強化支援事業によりまして,北海道大学,熊本大学,佐世保高専などが選定されております。
 今後各地の人材育成に加えまして,次世代半導体のオープンイノベーション拠点であるASTCのリーディングセミコンダクターテクノロジーセンターが,国内外のアカデミア,国研,産業界とともに,半導体のトップ人材の人材育成プログラムを検討中でございますが,文部科学省のお力を借りながら,文部科学省と緊密に連携を取って,取り組んで参ります。
 本日は御多忙のところ御参加いただきまして,ありがとうございました。デジタル人材育成に向けて,引き続き産学の皆様と議論し連携させていただければと思っております。ありがとうございます。
 
【森専門教育課企画官】  ありがとうございます。
 次に,池田局長よろしくお願いします。
 
【池田高等教育局長】  高等教育局長の池田でございます。本日も大変活発な御議論いただきまして,誠にありがとうございました。滋賀大学,熊本大学,北海道経産局,北海道大学におかれましては,お忙しいところ事例紹介をいただきまして,感謝を申し上げます。
 本日いろいろ多岐にわたる御意見を頂きましたけれども,特に私として印象に残っている点は3つございます。
 1つは,大学と産業界との連携によって,特に実務家教員をどう確保していくか。これは大変大きな課題だと思っております。特に,今日御発表の中にもありましたけれども,大学教員は,どちらかというところ学術的,体系的な教育研究に強みがあるわけですが,一方で実務的なところはやはり実務家の方に,企業の方などに来ていただく必要がありますので,そういった組合せ。あるいは企業と大学のマッチング。こういったことは,産業界と大学がうまく円滑に連携をしていかないと,なかなかうまく結びついていかないと思いますので,引き続きよろしくお願いいたしたいと思います。
 それから2つ目は,神宮委員がおっしゃっていましたけれども,理系を増やしていくためには,やはり中高,さらには小学校。小中高からの取組も非常に大事であると思っております。私どももこの取組を進める上で,常に初等中等教育との連携を意識しておりまして,高大接続と言うと,どちらかと言えば大学入試ばかりがクローズアップされますけれども,そうではなくて初等中等教育からの学びをいかに大学まで続けて,社会に送り出していくか。この広い意味での高大接続が非常に大事だと思っておりますので,これも産業界とも連携をしていただきながら,取組を進めていく必要があると思います。また,その際キャリア教育も各企業の連携をいただきながら,キャリア教育も強化していく必要があると思っています。
 それから3点目は西尾委員がおっしゃっておりました,倫理とかリテラシーを確実に身につけてもらう。これも非常に大事なことだと思っております。特に今年前半は生成系AIがいろいろクローズアップされている中で,大きく倫理やリテラシー,さらにはELSIと言われる問題課題。これをしっかり進めていく必要あると思っておりますし,阪大はELSIにかなり力を入れて取り組んでおられますので,こういった先進的な知見も活用しながら対応していく必要があるかなと思っております。
 今日,梅原課長から説明しましたように,文科省としても,前回以降取組がかなり進んでおりまして,3,000億円の基金での初回の公募選定が終わっておりまして,各大学,学部の改組に向けて今スタートを切っております。
 また,今日いろいろ説明したいろいろな取組。あるいは来年度要求に乗せた取組もございますので,こうした取組を,先ほど野原局長もおっしゃっていましたが,こうした施策を有機的に連携しながら,経産省とも連携し,また,産業界とも連携しながら,しっかりと進めてまいりたいと思いますので,この協議会の場でも大所高所からの御議論を引き続きお願いできればと思います。
 本日はありがとうございました。
 
【森専門教育課企画官】  ありがとうございました。
 それでは,次の開催等につきまして,事務局で検討したいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。本日はお時間が超過して申し訳ありませんでした。
 それでは,以上で第3回デジタル人材育成推進協議会を終了いたします。ありがとうございます。
 
―― 了 ――

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