デジタル人材育成推進協議会(第2回)議事録

1.日時

令和4年12月26日(月曜日) 16時00分~17時30分

2.場所

オンライン

3.議題

  1. 大学・高専等におけるデジタル人材育成の加速に向けて
  2. 地域の産官学の連携による人材育成のあり方について(実務家教員の活用を含む)

4.議事録

【池田高等教育局長】  皆様,こんにちは。定刻となりましたので,ただいまより第2回デジタル人材育成推進協議会を開催いたします。委員の皆様におかれましては,御多忙の中,御出席をいただき誠にありがとうございます。司会進行を務めさせていただきます文部科学省の高等教育局長の池田でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 本日は11名の委員のうち,10名の方に御参加をいただいております。なお,御欠席の経済同友会神宮委員の代理として,経済同友会の髙橋調査役に御出席をいただいております。
 早速でございますが,本日の議題に入ります。まず議題1の「大学・高専等におけるデジタル人材育成の加速に向けて」でございます。資料に基づき,文部科学省と経済産業省から説明した後,全国知事会,情報処理推進機構,日本経済団体連合会の順番で御説明をいただき,最後に自由討議の時間を設けさせていただきます。まずは資料1を御覧ください。
 それでは,資料内容について塩田課長から御説明をお願いします。

【塩田専門教育課長】  それでは説明申し上げます。1ページをおめくりいただければと思います。
 これが前回の協議会における主な御指摘をまとめたものでございます。御指摘を大きく3つの論点に整理いたしまして,それぞれ教育関係の委員からの御指摘と,産業界,地方公共団体等の委員からの御指摘に分けて掲載してみたものでございます。
 1点目でございます。デジタル人材の不足についてということで,教育関係の委員より,情報中核人材が圧倒的に不足しており,そのため情報人材を育成する学部定員や教職員の増加が必要であること,23区規制の在り方の検討が必要という御指摘がございました。また,産業界・地方公共団体等の委員より,あらゆる業種業態でDXが必要だが,デジタル人材は逼迫していること,日本はユーザー側の企業にデジタル人材が少ないこと,人材が東京圏に集中し,人材不足は地方でより深刻であり人材が都市部に流れてしまうこと,中小企業では社内育成が難しいという御指摘がございました。
 2点目,育成すべきデジタル人材像につきましては,教育関係の委員より,ITそのものに関して中核的な知見を持つ人材,また,文理横断型教育によって,よき理解者,賢いユーザーの育成を目指していくべきだというような御指摘がございました。また, 産業界・地方公共団体等の委員より,全従業員が日々の業務でデータを利活用すべきであり,DXを推進するリーダーも必要であること,全国民がリテラシーを身につけるとともに,エキスパート人材も必要,さらに文系も含め,視野を広くする視点が必要であるといった御指摘がございました。
 3点目のデジタル人材の育成方法につきましては,教育関係の委員より,企業との連携,特にインターンシップが有効であること,教員の人数が十分ではなく,企業の方や卒業生に担ってもらうことが必要であること,小・中学校において早期から教える取組が必要であること,文系・理系がインターフェースを持てるような文理横断型教育が重要であること,地域課題を踏まえた自治体との連携が必要という御指摘がございました。
 また, 産業界・地方公共団体等の委員より,専門性を持って教える人材をどう確保するかが課題であり,このような人材の確保に向けて戦略的に取り組んでいくべきであること,民間企業の知見を生かした実務家教員のさらなる活躍が必要であり,そのため,実務家教員の派遣が活性化するような施策を検討すべきという御指摘をいただいたところでございます。
 2ページでございますが,こういった御指摘も踏まえまして,大学・高専の機能強化に向けた基金につきまして補正予算で3,002億円が計上されましたので説明申し上げます。
 下段の事業内容の丸1 丸2 でございますが,丸1 デジタル,グリーンといった成長分野への学部再編を促すためのものでございまして,私立と公立の大学を対象としてございます。丸2 は高度情報専門人材の育成に向けまして,大学院と学部の強化を促すためのものでございまして,こちらにつきましては国公私立の大学・高専を対象としてございます。具体の制度設計は今後検討していくことになりますけれども,本基金の2つのメニューにより,デジタル人材の育成を加速していければと存じます。また,高等教育段階のみならず,初等・中等教育段階における取組や連携につきましても検討を進める必要があると認識してございます。
 3ページでございますが,本基金を独立行政法人の大学改革支援学位授与機構に設置するための法改正が先の臨時国会で行われておりますので,その概要でございます。特に2にございますように,今後助成業務に係る基本方針を定める,こういったプロセスを経まして,具体の制度設計を行っていくことになります。
 4ページでございます。こちらは「情報」,「データサイエンス」の名称を学科,専攻名に含む理工系の学部・研究科の定員を整理したものでございます。これは令和3年度時点の数値でございます。学部段階でございますけれども,私立大学の定員が最も多くて,国立大学の定員の3倍ぐらいの数ということになってございまして,合計が約2万2,000人でございます。一方,修士・博士を合わせました研究科,大学院段階では国立のほうが多くなっており,合計が約7,800人となってございます。
 右のピラミッドは,AI戦略で掲げられました人材育成目標でございます。応用基礎レベルの習得を目指す25万人の層よりも,このような専門的な人材というのは赤い帯で示している上位に位置づけることができるというイメージであり,先ほどの基金のメニュー丸1 や丸2 で,こうした層の人材について増加を目指すということかと考えてございます。
 5ページでございますが,これは先ほどのピラミッドのより詳しい説明でございます。文部科学省では,リテラシーレベルと応用基礎レベルにつきまして,大学・高専の優れた教育プログラムを認定する制度を行っておりまして,既に応用基礎レベルで68件,リテラシーレベルで217件,このようなプログラムを認定して,教育の全国展開を図っているというものでございます。
 6ページでございますが,先ほどの認定制度も含めまして,数理・データサイエンス・AI教育を普及させるために11大学の拠点校を中心として全国9ブロック内でコンソーシアム活動を支援する取組を行っております。
 7ページが最後の資料でございます。これは先ほどの基金とはまた別に,人文社会科学系分野の大学院におきまして,情報系分野と掛け合わせた教育を行っていただく大学院を支援するためのプログラムでございまして,本年度より6大学への支援を開始しているといったものでございます。
 文部科学省からの説明は以上でございます。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,経済産業省より資料2について御説明をお願いいたします。

【内田情報技術利用促進課長】  経済産業省の情報技術利用促進課長の内田でございます。資料に基づいて御説明させていただきます。
 2ページを御覧ください。まず,改めて強調させていただきたいのは,DX――デジタルトランスフォーメーションの推進と人材育成は両輪であるということでございます。DXの最大の課題はデータ人材不足だと言われております。このため,企業は即戦力人材を市場から確保するのみならず,社内で実践的なスキルを身につけるような人材の育成に取り組むようになっております。本協議会のテーマでありますデジタル人材育成についても,これが企業や社会のニーズに応えるものになっているかどうかを意識しながら進めていく必要があると考えております。前回御紹介いたしましたデジタル推進人材を5年間で230万人育成するという政府目標も,こうした考え方を踏まえております。経済産業省では,デジタル人材育成プラットフォームや国家試験を通じて,デジタル,特にDXを推進する実践人材の育成に貢献してまいりたいと思います。
 3ページを御覧ください。前回も御紹介,御説明いたしましたけれども,まず,下段の全国大で育成すべきデジタル人材育成を進めることはもちろんでございますけれども,地域によっては産業の特性,産業分布が異なることから,図の上段のように各地域の産業集積の特性を踏まえて,産業別に必要な人材像,またはスキルを整理し,人材育成を地域ごとに進めていくことも必要だと考えております。
 4ページを御覧ください。全国大のデジタル推進人材の育成を促進するべく,このたび経済産業省とIPA――情報処理推進機構では,デジタルスキル標準を整備いたしましたので,この場を借りて御報告させていただきます。
 こちらにございますとおり,DXリテラシー標準とDX推進スキル標準の2つのスキルセットで構成されます。前者は3月に公表いたしましたので,今回は12月に公表いたしました後者について御説明いたします。
 5ページを御覧ください。IPAからも後ほど説明があると思いますけれども,IT化やDXが従来のIT企業のみならず,全ての企業にとっての課題となる中で,人材に求められるスキルも,従来のITスキルに加えてDX時代に求められる人材像が必要になってきます。DX推進スキル標準は,DXの担い手となるスキルを整理したもので,この図に示しましたとおり,5つの人材類型からなります。これらにつきまして,ロール,それから,役割とスキルの詳細を定義してございます。
 6ページを御覧ください。DX推進スキル標準のユーザーとしては,一つにはDXを推進する企業や組織,それから2つ目に,DXの推進の担い手となる個人,さらには3つ目としまして,そうしたスキルを習得する上で必要となる学習コンテンツを提供する事業者を想定しています。
 7ページを御覧ください。DX推進スキル標準はこちらに示しました各分野の有識者に御尽力,御協力をいただきまして検討いたしました。
 8ページを御覧ください。DX推進スキル標準は,IPA及び検討委員の皆様の多大な御協力のおかげで無事公表することができましたが,今後は人材育成や人材市場の活性化に貢献するために,いかに使っていただくかという観点から,デジタル庁をはじめ,関係省庁と連携し,様々な民間プレーヤーの関与を得ながら,普及・活用に取り組みます。また,ユーザーのフィードバックを受けながら,技術革新の速いこの分野でございますので,策定したらこれで終わりということではなく,むしろこれが始まりということで,このスキル標準の継続的な見直しに努めていきたいと思います。
 9ページを御覧ください。こちらは前回御説明しましたデジタル人材育成プラットフォームですが,先ほどのスキル標準との結びつけにも取り組んでまいります。
 少し飛ばしていただきまして,13ページを御覧ください。地域ごとの人材育成の先行事例としてやはり半導体を取り上げたいと思います。前回も御紹介しましたとおり,九州を皮切りに,東北,広島で産学官のコンソーシアムが立ち上がりました。先週ちょうど熊本を訪問する機会を得ましたけれども,国内最大規模の半導体工場の立ち上げに合わせて人材育成の取組が急速に動き出してございます。国内最大級のデジタル産業基盤への投資が,人材育成ニーズを喚起している状況でございます。
 熊本大学では国内で初となる半導体デバイス工学課程を令和6年度から立ち上げる予定ですが,それに先駆けて,半導体研究教育センターを4月に設置し,地域の関連企業はもちろんのこと,地域外の大学研究機関とも連携を始めました。教員ですとか設備の確保といった課題もまだございますけれども,こういった将来を見据えた人材育成の好事例として参考になる部分があるのではないかと思います。
 このページの下に示しましたとおり,さらなる取組として,半導体プロフェッショナル・グローバル人材の育成も急務でございます。これは今後多機能化していきますエッジデバイス,量子,AIを含めたコンピューティングニーズを踏まえた半導体の回路設計から,最先端のパッケージ,量産のアプリケーションまで俯瞰的に理解し,グローバルな舞台でプロフェッショナルとして活躍する人材を確保・育成することを目的とするものです。LSTCを事務局といたしまして,国内外の教育関係,研究機関,企業研究所から次世代の半導体産業が求める人材を選抜し,海外で最先端の技術開発に取り組むことを考えてございます。
 飛ばしていただきまして15ページ,九州地域の事例としてもう一つ御紹介させていただきたいのは,地域の佐世保高専,熊本高専もいち早く取組を始めております。これも先週,熊本高専でお話を伺いましたけれども,半導体科目の新設,カリキュラムの作成という九州の先行事例を踏まえまして,今日も参加されております高専機構さんが半導体教育のモデルコアカリキュラムを整理し,これを全国の高専に横展開する方針と伺っております。それぞれの地域で産業界との連携の下で実践的な教育体制が構築され,ますますニーズが高まる,そういった即戦力人材の供給に果たす高専の役割にも大いに期待したいと思います。
 18ページに飛んでいただきまして,最後になりますが,以上,いろいろと御説明させていただきましたが,まとめ的に記載しております。一つには,地域の実情を踏まえて人材育成が地域経済に貢献することが重要である点,もう一つは,全国大でデジタル人材育成を進める上で,3つ目の丸になりますけれども,全国的に実施可能な育成の方法を整理する必要があると考えてございます。
 例えば,この後に説明があると思いますけれども,IPAの情報処理技術者試験は,企業の最新の事例をタイムリーに反映し,またこれをウェブでも公開しております。AI,ビッグデータの活用から,ニューラルネットワークのアルゴリズムまで実に多様な事例がございます。これらを実践的な教材として大いに活用できるのではないかと考えております。
 また,JEITAは20年近く実務家による大学向けプログラムを実施しておりまして,大学・高専におけるデジタル人材育成に協力したいという経済界のこうした潜在的な意欲を大学・高専の現場に結びつけるような運用方策を検討する必要があるかと考えております。
 以降のページは参考資料となっておりますので,適宜御参照ください。
 以上で,経済産業省の説明を終わります。ありがとうございました。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,全国知事会の大村委員より,資料3について御説明をお願いいたします。

【大村委員】  皆さん,こんにちは。愛知県知事の大村秀章です。私は知事会の文教・スポーツ常任委員会委員長を務めさせていただいております。よろしくお願いいたします。
 本日は第2回デジタル人材育成推進協議会ということで,委員の皆様,そしてまた文部科学省,経済産業省の皆さん,関係の皆さんに心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。
 それでは,全国知事会を代表してデジタル人材の育成について申し上げたいと思います。全国知事会は10月27日に緊急提言を出させていただきました。この点について御説明をさせていただきたいと思います。3点ございまして,まず大学・高専のデジタル分野の定員増と教育人材の確保,そして基金の創設の3点ということでお願いをさせていただいております。
 3点目の基金の創設でありますけれども,私は自民党のプロジェクトチームにもオンラインで参加をいたしまして,この点について必要性を強く申し上げさせていただきました。そういうことも含め,今回補正予算で3,002億円の予算を確保いただきました。基金の創設によりまして,施設整備にかかる初期投資,また一定期間の継続的な教員の人件費などの支援がなされ,意欲ある大学・高専が予見可能性を持って,デジタル人材の育成に複数年度,年度をまたがって取り組めるということで,大変有意義であると考えております。
 大学・高専は地域の将来を支える人材,産業育成に多大な貢献をしております。地方創生にとりまして重要な役割を担い,地域におけるデジタル人材の育成・確保において,大変重要な役割を果たしております。財政面で継続的に支援するということ大変意義あることでございますので,よろしくお願いします。
 そして,戻って1点目の大学・高専のデジタル分野の定員増でございますが,デジタル人材こそ東京一極集中となっておりまして,地域への偏在が課題となっております。地方を中心として深刻な状況にあるデジタル人材不足を解消するために,大学の情報系学部の定員増といった高等教育機関における人材育成をはじめ,様々な手法を用いた取組をぜひとも強力に進めていただきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
 2点目,教育人材の確保でございますが,デジタル人材育成のためには教える人材の確保が重要であります。このため大学などにおける実務家教員の活用・促進など,産学官が連携した取組をぜひ進めていただきたいと思っております。デジタル人材の育成は急務であります。デジタル分野は日進月歩でありますので,スピード感を持って前に進めていただくように関係の皆様の御尽力をお願いしたいと思います。
 引き続き私ども全国知事会をはじめ,地方自治体6団体も産業界,大学・高専の皆さんとしっかり連携をして,デジタル人材の育成・底上げを図っていきたいと考えておりますので,今後とも何とぞよろしくお願いいたします。
 私からの説明は以上です。ありがとうございました。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 なお,大村委員におかれましては,公務の御都合によりここで御退席されると伺っております。ありがとうございました。
 続きまして,情報処理推進機構の富田委員より,資料4について御説明をお願いいたします。

【富田委員】  皆さん,今日は,よろしくお願いいたします。
 デジタル人材育成推進に向けて,独立行政法人情報処理推進機構――IPAでは,情報処理技術者試験というものを50年来という言い方ができると思うのですが,継続して推進してまいりました。そのことを踏まえ,この試験から見えてくるデジタル人材育成の姿や,これを活用していただきたいということを含めて,これから説明していきたいと思います。
 最初のページをお願いいたします。先ほど経済産業省のほうから説明がありましたデジタルスキル標準,DXリテラシー標準とDX推進スキル標準,今年の3月にリテラシー,そして,DX推進スキルは先週にアップをさせていただきました。IPAでスキル標準のほうをやっておりますが,これはどちらかというと,デジタル,いわゆるDXを企業が推進していく上で必要なスキルという観点から,これまでのいろいろなスキル標準を見直して新たに制定したものでございます。
 そのような意味で試験と若干のずれがありまして,試験はこれまでIT企業がITのエンジニア,そういう人たちが情報やシステムを作っていく上で必要な技術というものに的が当たっていたわけでございますけれども,そこを少しDX,ユーザー企業が推進していく上でも必要な機能というものを取り入れながら拡張しておりますので,試験のほうは今後これに合わせていくというようなことで調整を取っていく予定になっております。現在はITパスポートがDXリテラシーをほぼカバーして,それから基本情報,応用情報,高度試験という3段階の試験によってDX推進のスキル標準をカバーしていくということを考えております。
 3ページをお願いいたします。これはリテラシーのところで,ITパスポート試験の状況です。前回少し口頭で申し上げましたが,右側の上のグラフ,これがITパスポート試験の年度ごとの伸びを示しているわけですけれども,大体10%前後で伸びていましたが,2021年度にぐんと伸びたというような絵になっております。2022年度もこれを超える形で今進んできておりますので,この流れというのは非常に大きくなっています。
 これを支えているのが,下のグラフの左になります。これはIT企業,非IT企業,大学,専門学校,高校ごとに年度別で示しておりますが,もともとこの試験はリテラシーのところですので,IT企業の場合は,事務方や,営業部門という人たち,あるいは新入社員などが受けていたケースが多いです。この1年の伸びを支えているのは実は非IT系企業です。ここはITエンジニアが非常に少ないと言われている企業のことで,ITパスポートの応募者数はもう2倍を超える伸びを示しています。
 ちなみにそこに大学や専門学校を入れておりますが,情報の高校での必修化等の動きを含めて,大学でもITパスポートの応募者数が大分伸びてきているというのも御覧に入れられると思います。
 また,企業の中では,業種によって結構差はあるのですが,金融,保険業が特に大きな伸びを示しています。また,製造業やサービス業もこの1年で大きく伸びています。それぞれの業種で,やはりDXを推進していくために,ITリテラシーを持った職員を養成していきたいという意気込みが感じられます。
 企業によっては企業自体が1年間,例えばある企業は2,000人を受けさせるために,2,000枚の前売りを購入していただいています。そういう企業には,結果の統計情報などをお知らせするというようなことでサービスをしております。
 それでは,4ページをお願いします。これはITパスポートだけではなくて,その上の試験を含めて,大学が試験を活用している状況を2017年度に調べさせていただいたものです。少し古いデータでございますが,入試優遇に使っているもの,あるいは単位を認定して,この試験によって単位を認定しているもの,それから,シラバスの一部や全部を参考とした授業カリキュラムの策定にここを使っているケース,あるいは受験対策支援講座として実施している学校,それから,情報処理技術者試験の受験料手数料を補助している学校があったり,合格者を表彰したり,そういうことをやっていただいている学校もあるというようなことで,何らかの形で使っていただいている学校がここに書いてある数です。361校に活用していただいているということです。
 右側にありますように,我々は数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度が文部科学省から出されると,それに併せて,先ほど言いましたITパスポートという試験をこの4月からiパス5.0という形で,数理・データサイエンス・AI(リテラシーレベル),モデルカリキュラムに対応させ,そのようなものを取り入れていき,できるだけ環境の変化に順応して試験も変えているということでございます。
 5ページをお願いいたします。大学生の受験状況ということで,今日は文部科学省並びに学校関係の方が多いということでお示ししています。この数を多いと見るか,少ないと見るかというのは,大学生の数などもありますので,一概に言えないのですが,ITパスポート試験が1年間で大体,大学生3万8,000人,これは全体の15%,基本情報技術者試験,これが試験の中では一番易しいほうに入るのですけれども,13.6%ということで,このあたりまでは結構な人数が受けていただいているということになります。情報学部の方がやはり多いという感触を持っております。ただ,応用試験とか高度試験になりますと,高度試験は1%を切るような内容になっておりまして,これはまだまだ,これからみんなのリテラシーが上がる,情報学部の技術レベルを上げていくということが必要になっていくという中で,大いに応用試験とか高度試験の活用を図っていただくことが重要になるのではないかというふうに思っております。
 6ページをお願いいたします。今私どもの試験をつくっている,いわゆる試験委員というのがございますが,実は大多数が民間企業に勤務して,その日の夜IPAに来てもらって試験問題作成を行うというようなことを進めているので,今450名で構成しておりますけれども,かなりリアルな,現在の企業が欲しているDXの,まさにやっていくような課題が,高度試験では試験問題として出されております。
 そういう意味で,ぜひ,この試験の一つ一つを説明するわけではございませんけれども,タクシー会社の配車におけるDXというAIとビッグデータを活用したモデルや,バーチャルリアリティーでアバターを使ったVR空間によるオンライン会議サービスの開発の問題でありますとか,7ページにいきますと,ニューラルネットワークによる手書きの問題というようなことをやっているなど,DX推進プロジェクトの監査,DX推進を進める企業の監査に入る人たちの技術というような監査技術もこういうところで教えていますし,スマホのQRコード決済のサービスの開発といったようなことも高度試験の中では取り入れています。
 かなり最近のネタを使って試験問題にしておりまして,こういう試験問題は,ある程度時間が経ちますと公開して,回答も出しますので,こういうものを学校の先生が不足する中で,いろいろなことに活用していただくことは非常に重要ではないかというふうに考えております。
 8ページをお願いします。そういうことで試験を活用している大学,短大というのは,先ほど示したように全体の3分の1であり,これを私は結構いるというふうにも思っているのですけれども,全国の大学生263万人の情報技術者試験における大学生の応募者数は,年間5万人にとどまっているという言い方もできるというふうに思っています。そういう意味で,情報処理技術者試験のさらなる活用を期待しているところです。
 それから,大学・高専に向けた試験の広報に当たりまして,実は個別の学校に向けてプロモーションを随時実施しております。先生方でこういうことに非常に関心を持たれている学校については,問合せがありますと,こちらからいろいろな資料を送らせていただいておりますが,IPAから実は複数の大学・高専に向けて一度に広く周知する連絡手段というのを持っておりません。例えば,メーリングリストとか,IPAから直接周知する手段もあると思いますので,大学等の知見の活用を円滑に進めていくためにも,こういった関係を今後構築していけたら大変うれしいと思っております。そういう意味で,今日の資料を参考にしていただいて,ぜひIPAの活用を考えていただけるとうれしいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,日本経済団体連合会の平松委員より,資料5について御説明をお願いいたします。

【平松委員】  平松です。よろしくお願いします。
 私からは,経団連が10月11日に公表した「『次期教育振興基本計画』策定に向けた提言」に基づき,デジタル人材の育成に関する経団連の考え方を説明いたします。お手元の資料「デジタル人材の育成に関する経団連の考え方」は,経済連提言の主な内容を記載したものです。そちらを御覧になりながら,お聴き取りください。
 Society 5.0におきましては,エキスパート人材の育成はもちろん,全ての国民が情報リテラシーを身につけ,デジタル技術を利活用できるようにすることを基本とすべきと考えております。
 第一に,小・中・高における情報教育の充実です。特に高校では,今年度から「情報Ⅰ」が必修科目となったものの,外部人材の活用を含め,専門的に指導できる教員の確保を急ぐ必要があります。また,全ての大学で「情報Ⅰ」を入試科目として課すべきと考えます。
 第二に,高等教育における数理・データサイエンス・AI教育です。政府の「AI戦略2019」の内容も踏まえて,リテラシーレベルの数理・データサイエンス・AI教育プログラムについて,全国の大学・高専で必修科目として実施すべきことを提言しています。
 また,数理・データサイエンス・AI教育は,リカレント教育でも推進する必要があります。具体的には,多くの大学・企業が,デジタル人材育成プラットフォーム「マナビDX」に参画し,オンライン教育コンテンツや社会課題の解決に資するプログラムの開発に取り組むべきことも盛り込んでおります。
 さらに,エキスパート人材の不足が深刻であることや,日本の大学は理工系の定員比率が低いことを踏まえて,デジタル分野のエキスパート人材の育成に向けた環境整備は急務です。教員不足を補うため,産学官連携によるプラットフォームを構築することも一案と考えます。
 第三に,理系学生の拡大です。大学には自らの特色等に鑑み,デジタルやグリーンといった成長分野の学部・研究科への再編を早急に実現していただきたいと考えます。経済界も,女性理工系人材のキャリアパスやロールモデルに関する情報発信の強化や,理工系分野を専攻する女子学生のさらなる積極的な採用について検討してまいります。
 以上,経済界は,デジタル人材の育成を優先度の高い教育政策と捉えております。この協議会を通じて,デジタル人材育成の取組が大きく進展することを期待しております。
 以上です。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。各委員の皆様から御説明いただき,誠にありがとうございました。
 それでは,ここから自由討議に入りたいと思います。時間は20分程度を予定しておりますので,御発言のある方は挙手ボタンでお知らせいただければと思います。
 彦根商工会議所の橋本委員,お願いいたします。

【橋本委員】  皆さん,こんにちは。滋賀県彦根商工会議所の橋本です。よろしくお願いいたします。
 先ほど文部科学省さんから御説明がありました,先般成立しました補正予算におきまして,大学・高専の機能強化に向けた基金というものが予算化されまして,大変心強い限りだと思っております。
 また,経済産業省さんから御説明がありました,佐世保,熊本の半導体の取組,また彦根市でも官民が関心を寄せていますデータセンターというものもございます。情報関連産業を地域に呼び込むには,その担い手となる人材が不可欠であると思います。日本全体でデジタル人材を増やすことが本当に必要だと思っております。
 先ほど来御説明があったかと思いますけれども,予算の使い道におきまして,理系の情報系の学部を拡大するために文系をスクラップするということではなくて,文系の情報学部も拡充が必要であると思っております。そもそも情報の分野において,文系・理系という区分にこだわる必要がないと思っています。地元の滋賀大学データサイエンス学部でも,文系や理系という枠組みにとらわれないというふうにされています。
 私自身も情報関連産業で働いた経験がございますが,実際の企業活動では,理系のIT技術者だけではなくて,例えば,エンジニアとユーザー,現場というものをつなぐ人材の役割も重要であり,そうした人材にも情報系の知識が不可欠であると思っております。
 以上です。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,経済同友会の髙橋調査役,お願いいたします。

【神宮委員代理(髙橋様)】  経済同友会の髙橋でございます。本日は構成員の神宮が所要のため,代理として発言させていただきます。
 今回デジタル人材の育成を加速していく必要性を,産業界としても非常に強く感じております。令和3年度の総務省の調査によると,やはり日本企業におけるDXを進める上での課題は人材不足との回答が53.1%と最多となるとの認識をしております。日本の産業界においてもデジタル人材の育成が急務であり,経済同友会としてもぜひこの施策を進めていただきたく思っております。
 その上で,本日はデジタル人材を育成していくに当たり御検討いただきたいこととして,2点申し上げたいと思っております。1つ目はデジタルリテラシーを兼ね備えた上で,イノベーションを起こす変革的な人材を育てるということでございます。デジタル人材というと,プログラミング教育など,高度専門人材にスポットライトが当たりがちではありますが,企業がDXを推進していく上で必要な人材は,そのような専門的な人材のみならず,いわゆるデジタルリテラシーを持った上で業務に精通している人材かと思っています。
 このような人材を育てるためには,デジタルに関するナレッジやスキルをインプットする教育のみならず,ナレッジやスキルを活用した上で,自ら課題を見つけてそれを解決するコンピテンシーを育てる探求型の教育をぜひ御検討いただければと思っております。
 2つ目は,高度人材の育成のみならず,幅広い層に適用できるような教育の在り方もぜひ検討していただきたいと思っております。企業がDXを推進していく上で,デジタルリテラシーは一部のIT部門やDX部門のみならず,全ての部門に必要なスキルとなってまいります。このため,いわゆる社内でいう分厚い中間層に相当する一般社員全員にもそのようなデジタルリテラシーを展開していく必要性があるのではないかと思います。
 このため,ITを活用した上で大学のオープン化等を図って,デジタル教育をいつでも,どこでも,誰でも受講できるような状態にすること,それにより一部の限られた高度人材育成のみならず,国民全体を視野に入れた幅広い層にインクルーシブな教育の在り方を併せて検討いただきたいと思っております。
 最後になりますが,先進諸国の経済が成熟する中で,まさに人材とデジタルは国力の源泉だと思っております。長期的な,継続的な支援を持って,人材とデジタルへの投資をお願いしたいとともに,その投資により,そのようなデジタル人材が育っているかをきめ細かく定点観測していただき,PDCAをぜひ回していただきたいと思っております。
 以上でございます。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,田中委員,お願いいたします。

【田中委員】  ありがとうございます。日本私立大学団体連合会の田中でございます。今までのお話の中で,経済産業省からの御説明が一番広い視野でお話しになったと思うのですが,半導体まで含めますと,これはインフラだと思います。ITでありますとか,データサイエンスのインフラであるコンピューターを作るというところまで半導体ですと入ってくると思います。
 もちろん,そちらも人材を育てる必要はあると思うのですが,今恐らく急務なのは,経済同友会の髙橋様や彦根商工会議所の橋本さんも仰っているように,文理の壁を取っ払った形で,文系の人間でもデータサイエンスが使えるようになること,さらにもう少しレベルが高くなると,ITも使えるという,プログラムまで含むと思います。そのあたりのところを,どういうふうに国が政策を立てていくかということですが,文部科学省の御説明ですと恐らくデータ科学,データサイエンスの部分とITの部分ぐらいまでの教育を早急に進めるということになるのではないでしょうか。5年間で250万人の人材を育てるということになりますと,恐らくデータ科学の賢いユーザーを育てることが急務だろうと思っています。
 さらにその先のIT,そして,経済産業省が標準型とその次の推進型とおっしゃっているのは,非常に的確な2つのレベルの御指摘だと思います。推進型の方たちですと,いわゆるマシンラーニング,機械学習などの手法とかを編み出していくような高いレベルの方である。日本人が遅れているのはその前の文系の政策決定者のデータ科学の活用のレベルが低いのだと思います。それからその普及度が低い。この両方の問題があると思いますけれども,高いレベルのデータ科学学部を多く作っていくということよりも,まずは人文社会系の学部でもデータ科学というものが使えるようにしていくということが急務であろうと思います。ここ5年ぐらいで何十万人というデジタル科学の活用者,利用者が出てこなければならないだろうというふうに思っておりますので,大学としてはそういうところから力を入れなければと存じております。また後で発言の機会があると思いますので,もう少し深いところでまた後ほど御説明させていただければと思います。
 私からは以上でございます。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,新経済連盟の関委員からお願いいたします。

【関委員】  ありがとうございます。新経済連盟の関です。
 先ほど基金についての御説明がありました。この基金をぜひ活用して,デジタル人材不足への対策を取っていただきたく思います。特に情報系学部・学科の定員拡充,カリキュラム改革といったものについて基金を活用し,質量ともに拡充できるよう対応を考えていただきたく思います。
 なお,デジタル人材とは何かという議論について,情報系学部・学科の卒業生だけではなく,理系の他の学科,場合によっては文系の学科についても,それぞれの専門分野で高度なデジタル技術を活用し研究を行うというケースが多々あるかと思います。そのようなケースにおいても,例えば,AIの活用などが考えられるため,大学での高度なデジタル教育という意味では,情報系学部・学科以外においてもデジタル教育に取り組んでいただけるような環境づくりを基金の活用を通じやっていただきたく思います。
 また,第1回目の会合でも,育成すべきデジタル人材という人たちの塊については,裾野を広く考えるべきだと申し上げました。これは富士山のようなイメージのものであり,トップレベルの人たちの質・量を確保・拡充していくためには,裾野が広くないといけないと思います。今日御説明いただいた文部科学省の資料の中にもそれに類した例が若干あるのですが,ここで留意すべき点として2つございまして,一つは,裾野の下のほうの人たちでも,勉強することによってどんどんスキルアップを図っていけば,富士山の上のほうに行ける人もいますので,適性のある人というのはどんどん教育すれば伸びていくと思います。要は,上下間の移動を柔軟にできるようにすべきだと思います。
 もう一つは,デジタル人材に求められるスキル,あるいは適性というのは,時代とともに結構変わるものだと思います。例えば,今までデータサイエンティストとして勉強した人も,ニーズが別にあれば,ビジネスアーキテクトになっているなど,専門性についても適宜変化をするものだと思います。その人の特性や興味,能力に応じ,それらが柔軟に変化できるような形でイメージすべきというふうに思います。
 さらに,基金の配分の考え方について,これは産業界からの視点ですが,実務でデジタルスキルを活用できる人を産業界としては特に求めているため,例えば,カリキュラムで実務家教育を重視している大学等には基金の配分を厚くするなどの考え方をしていただいてもいいのではないかと考えます。特にデジタル教育の強化や,国内外からの実務家教員の受入れなどの体制整備を積極的にしている大学・高専等については支援を厚くすることなどを通じ,大学・高専側の意識改革も必要であると考えます。
 最後に,東京23区内の大学について定員増を抑制する規制があると認識しております。23区規制と言われるものです。これについては,人材育成が急務である状況を踏まえると,特にデジタル分野等の先端分野については,こういった規制は撤廃すべきだと考えます。ブレーキを踏んでいる場合ではないというふうに思いますので,ぜひ御検討いただければと思います。
 以上です。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 あとお三方,JEITAの松井委員,経団連の平松委員,国大協の西尾委員からお手が挙がっています。それ以外の方は大丈夫かと思いますが,公立大学協会の竹中委員も挙げておられています。

【西尾委員】  池田局長,1点質問して良いでしょうか。産学官の連携の人材育成については,後半で議論されると考えてよろしいですか。

【池田高等教育局長】  はい,そうです。今御指摘いただいたように2つ目の議題で人材育成の在り方を議論していただきますので,2つ目にも関係する御意見の場合は,ちょっと先でお願いできればと思います。

【西尾委員】  はい,分かりました。それでは,後半において意見を申し上げる際に,情報リテラシーに関するコメントを併せて述べます。

【池田高等教育局長】  そうしましたら,JEITAの松井委員,お願いいたします。

【松井委員】  JEITAの松井でございます。よろしくお願いいたします。情報系人材の拡充に向けた各種施策,また法整備に関しまして感謝を申し上げたいと思います。また,同じく情報系人材の拡充に関して,東京23区での定員規制の見直しというのは急務だと考え,今後も活発な議論を期待しておるところでございます。
 私のほうから第1回目の会合でも申しましたように,育成論議とは少し別に,日本のアカデミアを出た優秀な学生さんが日本市場で活躍するためにはどうするべきか,という点でございます。
 これからの日本の職場,現場というのは,今後ますます成長が見込まれるアジア市場を牽引するという役割が期待されており,特に先端技術を磨き上げて,様々なイノベーションを誘発させる中核的な存在となり,また,センター・オブ・エクセレンスとして機能していくということが見込まれています。こういった環境において,未来のデジタルコア人材が鍛え上げられることになるというふうに確信しております。
 今回論議されておられますデジタル人材の中から,特に優秀な人材をふさわしい処遇で迎え入れる中で,多種多様な人材がさらに切磋琢磨で鍛え上げられて,またそれが評判となって,さらに海外人材を日本に呼び込んでいく。こういった正のスパイラルというものをビジョンに掲げながら,私ども産業界としては,引き続きアカデミアの皆様と連携をして,将来を担う人材の活躍をサポートしていきたいというふうに考えております。コメントでございます。
 以上です。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,経団連の平松委員お願いいたします。

【平松委員】  平松です。2点コメントさせてください。
 まず,本日,文部科学省,経済産業省より御紹介いただきました各種施策はいずれも進めていくべきだと考えます。特にDX推進スキル標準が体系化されたことは,企業での人材育成・活用にとどまらず,産学連携やリカレント教育などに取り組む共通基盤として積極的に活用したいと思います。DX推進スキル標準を含むDX人材育成のスキームを実効性の高いものにするためには,グローバルに通用する戦えるものであるかという視点で,産官学で徹底活用しながら,継続的にブラッシュアップしていくことが重要だと思います。
 2点目は,文部科学省資料の4ページにありますように,これまでの情報系学部約2.2万人,研究科約0.8万人という入学定員は,デジタル人材の不足分を埋めるにはまだまだ不十分だと思います。デジタル人材育成のための学部の新設や定員増につきまして有効な支援策を講じ,障害となっている規制を緩和するなど,大学側の要望を吸い上げ,産官学で連携して取り組む必要があると思います。
 以上です。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,公立大学協会の竹中委員,お願いします。

【竹中委員】  私のほうも第2のほうでお願いしたいと思います。

【池田高等教育局長】  承知いたしました。
 そうすると,あと高専機構の谷口委員,お願いいたします。第1のところは谷口委員までにさせていただきます。

【谷口委員】  IPAの富田理事長のほうから,いろいろな連絡先がないという話がありましたので,一言発言させていただきます。高専の場合は高専機構の本部に言っていただいたら,すぐに全国の全部の学校に手配します。ここで作られたような試験などは,教育の中でも有効に使っていきたいと思いますし,非常にいい内容の試験内容になっていますので,ぜひその点だけ押えておいてください。
 それから,教育者が足りないとかという話も誰かからありましたけれども,これも高専の場合には,卒業生を有効に活用させていただくことを考えています。卒業生が結構ICT関係の第一線で働いている者がおりますから。卒業生が有効に活躍できるように,卒業生にもお話しさせていただいて,各業界の卒業生を全体的に取りまとめてお手伝いするようにというふうにお願いもしています。今,文部科学省のほうも先生に関する人事面のいろいろな約束事を変えていただいて,随分自由に産業界の色々な方が活躍できるようになってきたということがあります。卒業生の教育への参画については,それを上手に活用させていただこうと思っていますので,,よろしくお願いしたい。卒業生も一生懸命やると言ってくれていますので,問題解決の一助になればと思って,参考までにということで発言させていただきました。
 以上です。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 まだ御発言したいことがある方もいらっしゃるかと思いますが,議題2の後半での自由討議でお願いできればと思います。
 続きまして,議題2の「地域の産官学の連携による人材育成の在り方について」でございます。ここでは資料に基づき,文部科学省と電子情報技術産業協会の松井委員から,デジタル人材の育成に必要不可欠な実務家教員の活用に関する現状等を御発表いただき,その後,先ほどのお二方も含めて自由討議をさせていただきたいと思います。
 では大変恐縮ですが,時間がやや押しぎみなので,説明時間,簡潔にお願いいたします。まず,文部科学省からよろしくお願いします。

【塩田専門教育課長】  それでは,簡潔に御説明申し上げます。1ページでございます。これは数理・データサイエンス・AI教育を展開していく上で,教員の状況についてアンケートを行ったものでございます。青のほうが不足していると回答している学校の割合でございまして,特に下段のデータサイエンス,AIを担当できる教員の状況について,こちらのほうで不足の状況,特に国立が不足しているという回答が多いという状況を示してございます。
 2ページをお願いいたします。これは先ほども御説明しましたけれども,数理・データサイエンス・AI教育を全国展開するために,2つのレベルで文部科学大臣が認定する制度を設けているというものでございます。
 3ページをお願いいたします。リテラシーレベル,応用基礎レベルの内容を簡単に説明したものでございます。リテラシーレベルは下のほうですけれども,初級レベルの数理・データサイエンス・AI教育を取得することを目指したものということで,こちらは大学・高専生全員に受けていただきたいということを目指しています。それよりも上級の応用基礎レベルにおきましては,黒字の部分ですけれども,自らの専門分野への数理・データサイエンス・AI教育の応用基礎力を習得することを目指すということで,こちらのほうは全大学・高専生の半分ぐらいの受講を目指しているといったものでございます。
 4ページでございますが,先ほどのリテラシー,応用基礎レベルを教える教員につきまして,各ブロックの代表校がブロック内の大学にヒアリングを実施いたしましたので,その概要を御説明いたします。
 現状の傾向は資料中央に記載しておりますが,例えば,首都圏の大学につきましては,リカレントとか,企業連携とか,他大学等への普及,こういったことを実施する教員が不足している一方,次の理系単科や総合大学におきましては,リテラシーレベルや応用基礎レベルにおいては不足していないということがあります。また,首都圏外の大学や文系単科大学におきましては,応用基礎レベルを教える教員が不足しているといった傾向がうかがえたというものでございます。
 赤枠のまとめの部分ですけれども,地方に所在する大学のほうがより教員が不足している傾向があること,オンラインや実務家教員の採用などで工夫しながら対応している状況だということ,また今後,例えば全ての学生に拡充していく場合には,やはり教員が不足する大学が大半であるというような状況だということでございます。
 さらに5ページでございますけれども,実務家教員の必要性についての教育現場の声ですけれども,授業の一部を実務家教員に依頼することは,これまで以上に,現在授業を実施しているアカデミア側の教員の負担になることが想定されるものの,教育の質の向上ですとか,学生の動機づけ,モチベーションの向上につながるという前向きな回答ですとか,アカデミア出身の教員採用が困難な状況の中,アカデミア教員と同じ役割を担うことができる実務家教員の採用ができれば,負担の軽減につながる。このような御指摘があったというものでございます。
 また,実務家教員への主な意見といたしましては,授業の一部で,数理・データサイエンス・AI教育の必要性を話してもらいたいですとか,応用基礎レベルにおいて自身の経験談を話してもらいたい。また,実践的科目を教えてもらいたい。教育経験がある人に教えてもらいたい。長期間同じ人,同じ企業に担当してもらいたい。授業科目を一部ではなく,全て任すことができる実務家教員が欲しい。このような回答があったということでございます。
 こうした回答を踏まえまして,赤枠の今後の対応方針でございますけれども,各地域ブロックにおきまして,まずは授業の一部を担当する実務家教員を派遣していただくために,ブロック代表校と,地方経産局がそういった枠組みを調整していってはどうかというふうに考えてございます。
 6ページでございますが,各地方経産局とブロック代表校の打合せの状況でございます。例えば,北海道ブロックなどにおきましては,講師派遣制度の在り方,連携の在り方について話合いがされている状況で,各ブロックにおいて濃淡はありますけれども,そういった議論が進められているというものでございます。
 7ページでございますが,本年9月に大学設置基準が見直されまして,実務家教員の登用等を進めるための制度見直しが行われたというものでございます。従来の専任教員制度を改めまして,基幹教員制度というものを導入してございます。以前の専任教員制度では,一の大学に限って専任教員となるとされておりましたところ,基幹教員制度では,複数の大学でも参入は可能となり,優秀な実務家教員の活躍の場が広がるということが期待されるといった制度改正を行っているという参考情報でございます。
 以降のページに,各ブロックのそれぞれの御指摘があるのですが,今回は時間がないので,割愛させていただきます。お時間があるときに御参照いただければ幸いです。
 以上でございます。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,JEITAの松井委員より,資料7について御説明をお願いいたします。

【松井委員】  改めまして,JEITAの松井でございます。
 それでは,2ページをお願いします。先ほどの経済産業省のお話でも触れていただきましたが,JEITAでは約20年前から,大学・高専向けにプログラムを実施してきております。会員企業380社のうち,主にIT企業が講師となって大学で授業を行っておりますJEITA講座,在阪の会員企業が大阪大学,神戸大学の大学院で教えるJEITA関西講座,IT・エレクトロニクス各社が,慶應大学,横浜国立大学で教えるJEITAモデルカリキュラム,それから,半導体,実装技術などといった専門的な教育プログラム等でございます。
 この中で,JEITA講座は,IT業界で働く仕事の魅力,キャリアということについてお話をしてきました。AI,IoTといったような先進技術に関する各社の事例を御紹介し,また大学の先生方,学生さんとも定期的に意見交換を行う機会を設けて,現場のニーズを把握しながら,適宜授業の内容を変えてきているということでございます。
 3ページをお願いいたします。最後のページになりますが,情報系学生の育成に当たりまして,お願いも含めて何点かコメントをさせていただきたいと存じます。
 まず,1点目ですが,デジタルを扱う実践的な学びの機会を一層充実させていただきたいという点です。学校で座学,オンラインで学んだとしても,実践の機会がなければ,やはり身につきにくいと思います。実際の現場で試行錯誤する,また学生さんが積極的に関係者を巻き込んでいくような経験,こういったことが非常に重要だと考えております。既に,現在でも各社においてのインターンあるいはCOプログラムなど,幾つかの機会は存在していることは承知しておりますが,まだまだ足りないのではないかというふうに思っております。民間企業に就職する方に限ったお話ではなくて,観光庁,アカデミア,あるいはNPO等で活躍される際にも,こういった経験,スキルは求められるのではないかと思っております。
 2点目ですが,前回の会議でも申し上げましたが,産業界とアカデミア相互の人材交流をもっと活発にすべきだと思っております。実務家教員を雇用する,あるいは新規事業を実施する,しかしながら,既存の大学カリキュラムとは連動しない,そういったことがあるのではないかと思います。アカデミアの教職員の皆様にも,ぜひ産業界のデジタルの現場を体感いただきたい。その上で新たなシラバスを順次設計いただいて,学生の皆さんの知的好奇心を刺激していただきたいと思っております。産業界としても,各社の主力となるような人材を逆にアカデミアのほうに派遣していきたいとも考えております。
 3点目でございます。少し口幅ったいものになるかもしれませんが,現在海外の人材,特に東南アジアの学生さんはソフトウエアに精通しています。また,日本人に比べて英語に対する理解度も高くて,積極的に議論をリードする,そういった様子が見られる。このままではやはりいけないなというふうに思っております。情報系人材の拡充に関して,アカデミア全体としてどこを目指すのか,それは高等教育だけではなくて,今の中学生,高校生が大いに関心を示すような具体的な人物像というものを描いて,そこと現実とのギャップをどう埋めていくか,このような論議が必要なのではないかなというふうに思っています。
 産業界からの要望を少し申し上げるならば,学生の皆様にはぜひグローバルの視点を持っていただきたい。学生時代を通じて,国際学会,あるいは海外のプロジェクト,こういったものに積極的に関わる経験をしてほしいなと思っております。また,具体的なスキルとして,C言語などではなくて,オブジェクト志向のプログラミング言語を習得して,アジャイル開発等もぜひ経験していただきたい。可能であれば,システムを開発するということにとどまらず,システムの社会実装というようなことを望んでおります。
 それから,最後に4点目でございます。地域の産学連携による人材育成という点でございますが,デジタル田園都市国家構想の旗印の下で,各地のDXニーズというものを酌み取って,また,全国の学生さんが情報系の学問に関心を持っていただけるように,各地域において活発な御議論をお願いしたいと思っております。多くの学生さんがデジタル分野を目指して,全体としてレベルアップが進むということを楽しみにしております。また,オンライン教育等を通じて,全国の学生さんが高水準の情報系講義を効率よく聴講できる,こういったことを,国を中心として産学官が連携して取り組むということが大事だなというふうに考えております。
 以上,コメントでございます。ありがとうございました。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 それでは,ここから残り時間で自由討議に入りたいと思います。御発言のある方は,挙手ボタンを押していただきますが,まず,先ほど手を挙げられていた国大協の西尾委員,それから公大協の竹中委員の順で御意見をいただければと思います。お願いします。

【西尾委員】  大阪大学の西尾です。資料の1ページ目を出していただけますか。今までのお話は,企業から大学に向けた取組に関するものでしたが,今度は,国立大学が地域において産学官の連携によるデジタル人材育成にどのような貢献をしているかについて,特に最近重要なリスキリング教育や,リカレント教育の観点から,一つの例として本学における活動を紹介したいと思います。
 2ページを参照ください。「組込み適塾」とは,先進的組込みシステム技術者の育成を目的として,組込みシステム産業振興機構が2008年度より開催している産学官連携による人材育成プログラムです。「組込み製品開発の各段階で,製品開発の鍵を握るアーキテクトとして,開発をリードできる技術者」の育成を目指しております。2008年に開講して以来,約1,850名が受講し,体系的かつ専門性の高い研修と技術者の交流を行ってきました。
 3ページでは,組込み適塾の推進体制を紹介しております。関西経済連合会を背景とした組込みシステム産業振興機構が主催しておりまして,産学官などから100を超す機関が参画し,本格的な連携体制の下で,トップレベルの講師陣による基礎から最先端までの講義・実習を行っております。大阪大学は,機構の理事長を私が務め,塾長・講師の派遣,さらには会場の提供など全面的な支援を行っております。
 4ページでは,カリキュラム体系の概要を示しています。”DO”,”HOW”,”WHAT”をキャッチコピーに三つのコースを設けて,各々若手技術者,中堅技術者,マネージャー・企画担当者を対象としたカリキュラムを実施しております。
 5ページでは,受講者数などの推移を示しています。コロナ禍にあっても,活動水準を概ね維持できており,関心度の高さが伺えます。さらに,関西地域以外からの受講者もありまして,地域的にも広がっております。
 6ページでは,年間の活動のスナップショットを紹介しております。入塾式を開講しており,また修了式では優秀者の表彰などを行ったりしております。
 7ページ,8ページでは,もう一つ別のタイプの産学官連携の人材育成の例を紹介しております。一つの企業との間で展開しているデジタル人材育成事業です。
 大阪大学は,ダイキン工業株式会社と10年間の大規模な包括連携協定を結んでおります。この連携協定の中には,単に共同研究のみならず,デジタル人材養成プログラムも含まれています。ダイキン工業では,今までは,理系では機械系,あるいは化学系が中心であった雇用を,情報系に大幅に切り替えると同時に,既存社員に対しても情報技術教育を強力に行う方針を採られました。
 その背景には,IoT技術の急速な展開に伴い,情報技術,ビッグデータ解析,人工知能の技術を駆使して,新たなサービスを展開することが必須になっていることがございます。それを推進するために,社内にダイキン情報技術大学(DICT)が2017年に開設され,これまでに大阪大学の情報系の教員が,新入社員,既存社員累計569名に対して座学教育を行ってきました。
 8ページでは,DICTにおける2018年度から2021年度までの過去4年間の成果を中心に示しております。DICT全体では,既に1,000名までの育成計画を完遂されており,その内座学,オフィスアワーなどで本学の教員が貢献しております。このような活動が功を奏して,最近では,ダイキン工業はDX化においても日本をリードする企業になっています。
 以上,二つの例をもとに本日のテーマに関する本学の活動を紹介しましたが,大学がいかにリカレント教育,リスキリング教育で貢献できるかという一つの例となるかと思っております。国立大学全体では,同様の活動が様々に展開されていると考えております。
 なお一つだけ,先ほど前半で手を挙げさせていただいたことなのですが,髙橋様をはじめ,皆様がお話しされたリテラシー教育の重要性については,私も強く認識しております。
 大学に入ってから教育するのでは遅過ぎる一つの重要な内容が,様々な応用分野においてデータを扱うときの倫理感の問題です。大学に入る前に,高校レベルでしっかり身につけておかないと,プライバシー等の問題に対しての知見を持った高度なデジタル人材には育っていかないと思っています。そういった観点から,大学に入る以前の段階で,いわゆる情報に関するELSI(エルシー)の問題についても併せて教育をしていく必要があると思っています。
 以上です。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続いて,公大協の竹中委員,お願いいたします。

【竹中委員】  早速ですが,資料の共有をお願いいたします。先ほど情報系学部・学科の設置状況で公立大学はやはり数が少ないのですが,具体的にどういうふうな活動をしているのかということを知っていただきたいと思います。
 2枚目をお願いいたします。公立大学は地域課題とセットで組んできているということと,我々が設置者と呼びます地方自治体との連携の中で事業の活性化を図っています。さらに,地域おこしという点でもユニークな活動がありますので,御紹介をしておきたいというふうに思っております。
 次の資料,3枚目,これは高知工科大学で香美市のICT化の推進をやっておられる。公立大学にいる者,設置者がどこまで関わってくれるかというのが大変大きな課題でございます。そういうことを続けています。
 次のスライドをお願いします。次の資料は4枚目を,これは私の地元の福知山公立大学がやっている,もう少し大きな京都府北部の過疎地域の都市圏構想の推進事業に関わって,自治体との連携をしているということでございます。
 5枚目をお願いします。これは山陽小野田市立山口東京理科大学の試みです。ここでは現地の産業界と連携したデータサイエンス教育に大変力を入れておられますし,その中で特徴的なものは,医工連携といいますが,薬学と薬工連携を進められているということです。
 その次をお願いいたします。これは山梨県立大学ですが,ここは国立山梨大学との連携を大学院等々でされておられます。その中で地域デザインコース,あるいは福祉と医療の現場をAI等々でどのように変えていくかといった全体的な都道府県レベルを通じた連携をされている,いわゆる地域活性化人材育成事業の一環に取り組まれているということになります。
 最後のスライドになります。名古屋市立大学では,多分全国初だと思います。御紹介したいと思います。電子と工学が共存する教育の特性を生かした総合デザイナーの育成,これは多分AIとかデジタルを含めてもそうなのですが,我々医学・医療もそうなのですけれども,全体のデザイン性をしっかり分かった研究者,あるいは科学者を育成していくということはこの分野でとても重要だと思いますので,公大協としても大変期待をしているところでございます。
 以上でございます。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,彦根商工会議所の橋本委員,お願いします。

【橋本委員】  ありがとうございます。地域の産官学の連携ということで少し紹介をさせていただきます。前回も触れさせていただきましたけれども,彦根商工会議所と地元滋賀大学の取組でございます。彦根商工会議所と滋賀大学のほうでは,包括連携協定を締結させていただきまして,インターンシップやプログラミング教材の開発に取り組んでいるところです。
 インターンシップでは,デジタル化に取り組む地元の中小企業などが,滋賀大学データサイエンス学部の学生をインターン生として受け入れ,学生と企業が一緒にデジタル化に取り組んでいます。具体的な取組内容は配付資料で紹介させていただいております。
 この表にありますとおり,業種ですとか,大企業・中小企業に関わらず,インターンシップ受入れをしていただいています。学生は,各種のデータ分析,アクセス解析など,マーケティング,ブランディングなど,企業の現場で実践をしています。
 また,彦根商工会議所は小学生を対象に,プログラミング教室やプログラミングコンテストを開催しています。プログラミングコンテストに関しましては,小学校の夏休みの宿題で,自由研究というものがあると思いますが,これに代わりまして,プログラミングも自由研究に代わるものとして,彦根市の教育委員会にお願いして,各小学校で認められているところです。また,プログラミング教室のほうでは,滋賀大学の学生がコーチングをするなど,上位のプログラミング教材の開発をしていただいています。具体的にはパイソンですとか,AIプログラミングなどを行っていただいています。学んだことを企業の現場で実践したり,他者に教えたりすることで学生は能力を高め,地域や企業はデジタル化を進めるきっかけになるなど,関係者全体にメリットが生まれているところです。今後の取組の参考になれば幸いです。
 以上です。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続いて,私立大学団体連合会の田中委員,お願いします。

【田中委員】  ありがとうございます。本日のお話で産学連携のところではJEITAの松井様のお話が非常に私どもの共感を呼ぶものでございました。私の資料のスライドの5枚目を出していただきたいと思うのですが,よろしいでしょうか。
 これで御覧いただくと分かりになりますように,今から10年前の2012年に120万人いた18歳人口は,大学進学は50パーセント,ですから60万人が大学進学を希望していました。2050年には,18歳人口が80万人になりますので,3分の1はいなくなります。大学進学率がもし変わらなければ,40万人しか高等教育を受けなくなります。そうなりますと,日本の国際競争力がすごく落ちるのです。
 その次のスライドをお願いいたします。国際競争力の低下がある。海外から優秀な学生に入ってもらって,とどまってもらう必要がある。その次に,日本でデジタル化などを教えていなければ,優秀な海外からの学生さんが日本にとどまることがなくなってしまう。また,日本の大学でそれを教えなければ,とても来てもらえないということです。
 続いてはデジタル化の衰退であります。1990年に世界第1位だった日本の産業競争力が,2020年には34位にまで落ちている。この大きな遅れの原因は,デジタル化の遅れであろうというふうに考えているわけであります。
 もう少しお話しさせていただきますが,政策の話もありましたとおり,海外から呼び込む必要があるということはまさにそのとおりだと思っています。
 それから,各地のデジタル人材育成ということで,デジタル田園都市構想が重要だという話ですけれども,実はそのために23区の定員規制を進めるということは良い解決策ではないと考えています。23区の定員規制の見直しは,JEITAの松井さんも,新経済連盟の関さん,また,経団連の平松さんも御指摘になっているところでありますが,具体的にはデジタル人材の育成を妨げるということになると思うのです。
 今,地方から東京の大学,首都圏の大学に学びにくる学生さんもいますが,その方たちは地方に戻らない。何故かというと,地方の産業の育成が日本で進んでいないからです。そこに就職してもらうようにするというためには,JEITA松井さんのお話にもあったわけですけれども,各地の産業のデジタル化を推進することが重要です。日本の競争力を高めることになりますが,そのときに地方でデジタル人材になる方を,オンラインでもいいので首都圏の大学で教育をする。そうすると,首都圏で学んでいる学生が地方に戻ることになると思うのです。
 そういうような活性化をしていかないと,例えば,熊本で育った者は熊本大学に行きなさいとか,島根で育った者は島根大学に行きなさいと言っていて,島根にとどめようとしても,現在我々の持っているデータでは,18歳では首都圏以外の道府県の人口は減っていません。しかし,22歳で減ります。これでは何もならないのです。ですから,首都圏の大学に学生を来させないようにすることは,地方の産業の活性化になっていないのです。地方を活性化するためには,首都圏でもどこでもいいので,日本中なり世界で学んで,その方たちが地方に戻って産業を活性化することだと思う。
 そのためには,本日ありますような産学の連携による教育の活性化が必要であるということであると思います。それをオンライン教育はもう実用化してきているわけでありますから,場所を問わずに教育ができる。地方の産業で活躍している実務家教員は,首都圏の大学でもお教えになる。そうすると,ロールモデルがいるわけですから,首都圏の大学の学生たちも地方で仕事を始めることになると思っています。
 そういう意味で23区規制の撤廃はもう待ったなしだと思います。23区だけはデジタル化を進めないとなれば,日本のデジタル化は進まないのです。そこを進めると同時に,全国のデジタル化教育も,デジタル人材の育成も進めなければならないと思っております。23区の規制ということによって縮こまっていては,日本はますます縮こまるだけだと感じている次第でございます。これは多くの皆様から御指摘いただいた,経団連,新経済連盟,またJEITAの皆様も御指摘いただいていると本日感じましたので,よろしく御理解いただければと思います。
 私からは以上でございます。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,新経済連盟の関委員,お願いいたします。

【関委員】  ありがとうございます。新経済連盟の関です。
 実務家教員を大学に派遣した場合にどのような教育を行うべきかと考えたときに,やはり実務に基づいたいろいろなお話をする,あるいは実践的な演習とか,例えば,データ分析とか,AIといったものについて実践的に何かいろいろ,実際にシステム化をするとか,教えていくということになるのかなというふうにイメージしております。
 その場合,会員企業の何社かにちょっとヒアリングをしたのですけれども,実務家教員として大学に派遣できるような人材はそんなにいないよねという話でございまして,例えば,プロジェクトマネージャーとか,プロジェクトリーダーとか,そういった人たちには適性があるからという感じがするのですけれども,そういった人も潤沢にいるわけではなくて,実務家教員として派遣した場合に,実業務に対してはマイナスの影響が出てくる。そこまで考えていくと,そのマイナスに見合うような報酬であるとか,報酬以外の何かメリットが企業側にないと,派遣しづらいという話でございました。
 また,実際派遣される実務家教員になる人についても,給与の補填とかも限界がありますので,その人自身の待遇を改善するという視点も必要だろうというふうに思いますので,結構課題があるなというところまでを,ちょっと認識でございました。
 以上でございます。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,経団連の平松委員,お願いいたします。

【平松委員】  平松です。地方大学におけるデジタル分野を教えられる教員が特に不足をしているのは深刻な問題だと思います。地域を越えて産官学で連携する観点から,他大学の教員や実務家教員が,オンライン形式で指導できる環境の整備を進めていくべきです。
 また,大学が実務家教員を採用する際に,研究者教員の採用時と同一の選考基準を用いて,実務家教員に博士号の取得や一定水準以上の研究業績を求めている大学がまだ多いです。大学には実務家教員としての能力を適切に評価するため,実務家教員に特化した選考基準や柔軟な雇用形態,勤務形態等を検討いただきたいと思います。
 以上です。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,経済同友会の髙橋調査役,お願いいたします。

【神宮委員代理(髙橋様)】  ありがとうございます。経済同友会としても,産学連携による人材育成の在り方は非常に前向きですばらしいと思っております。我々ももともと子供の教育といったところは,学校の先生のみに頼るのではなくて,企業が積極的に参画していくことで,社会全体で育てていくという考え方を持っておりますので,ぜひそういった観点からもこういう施策は進めていくべきだと思っております。
 一方で,ちょっと課題として2点ほど挙げさせていただきたいのが,まず1点目が,現在企業が仮に教育に人材を派遣する意思があったとしても,そういうようなところの取組というものが個人や地域団体での個別の活動に限られているケースが多く,大学との連携といったところはなかなか図りづらいという課題も残っているかと思っております。ですので,こういうような企業と教育参画を広く受け付けるような機能,学校とのマッチングを図るような機能ということが必要ではないかといった点が1点目でございます。
 もう一点は,実務家は業務には非常に精通しているものの,一方で,教えるといったところに対してはなかなか単発で講義するというところ可能であっても,複数回にわたって人に教えていくといったところの教育には慣れていないというところがありますので,現在文部科学省様のほうで取組とされていらっしゃる「持続的な産学共同人材育成システム構築事業」というのも行われていますけれども,このような機能を拡充して,実務家から実務教育をした上での教育についても,ぜひ御検討いただきたいと思っております。
 以上です。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 挙手ボタンを押されている方はこれで皆様,御意見をいただけたと思いますが,ほかによろしゅうございますか。
 それでは,大変活発な御議論いただきまして,ありがとうございました。本日のまとめとして経済産業省の野原商務情報政策局長から一言いただいた後,私からも一言申し上げたいと思います。
 まず,初めに野原局長,お願いいたします。

【野原商務情報政策局長】  経済産業省商務情報政策局長の野原でございます。本日も貴重な御意見をいただきまして,ありがとうございます。初回会合に引き続きまして,大変有意義な議論になったと思います。高専機構の谷口理事長からIPAの富田理事長の要請に対して即対応いただけるという御返答をいただきまして,ありがとうございました。
 各地の半導体コンソーシアム,それから関西地域ではバッテリー・蓄電池の人材育成コンソーシアムなど,高専機構と連携しながら様々な取組を進めておりまして,さらに連携・協力を強化・拡大していきたいと考えております。産業界からは経済産業省に対する様々な要請がまだおありだと思いますので,担当部局,担当課室に対応させますので,遠慮なく私あるいは担当部局のほうへ言っていただければ,対応したいと思います。
 本日の議論を伺っておりましても,大学・高専におけるデジタル人材育成機能の強化をいかに実行していくかというフェーズに入ってきたと実感しております。大学・高専における人材育成は,地域のニーズを踏まえて,地域の関与を得る形で設計され,これが地域経済の発展につながらなければ,一過性のものとなってしまいます。こうした認識の下,産学官が連携した取組を進めていく必要がございますし,関係機関とのコラボレーションによる取組の進展を期待しております。
 経済産業省としては,先の経済対策補正予算におきまして,半導体,それから次世代情報処理基盤,次世代コンピューティングシステムの関係で,総額1.3兆円の予算を計上しておりまして,これらの予算を活用してデジタル産業政策をさらに強化してまいりたいと考えておりますが,ここにデジタル人材育成とのシナジーが生まれてまいりまして,当省の担当課長の内田の説明で御紹介したとおり,九州をはじめ複数の地域で人材育成を生み出しておりますが,その先に見据えているのは,多機能化・高機能化するエッジデバイス,それから量子・AIを含めたコンピューティングのニーズを踏まえた半導体の設計からアプリケーションまでを俯瞰して,グローバルに活躍するプロフェッショナル人材でございます。
 このためLSTC――Leading-edge Semiconductor Technology Centerと最先端の半導体技術センター,ラピダス社というのを立ち上げまして,各大学・高専からえりすぐりの研究者を結集し,何人かヨーロッパに派遣して,最先端の技術開発に取り組む,これを日本で実装する。この人材育成プロセスの立ち上げと拡大が,日本のデジタル産業が世界と競争していく上での重要な対策であるというふうに考えております。
 これには大学関係者をはじめとする本協議会の皆様の御協力が不可欠でございまして,当該人材育成プログラムの具体化に当たりまして,今後ますます本協議会の皆様と連携させていただければと思います。今後個別に必要なところで御相談を申し上げたいと思います。
 併せてデジタル産業の底上げの観点から,DXの担い手となる人材の全国規模での育成も急務でございます。本日議論にあったとおりでございます。これまでその人材像が明確でなかったところ,先週の水曜日,12月21日にデジタルスキル標準を策定・公表いたしました。今後は関係省庁との連携の下で,様々な民間プレーヤーの関与も得ながら,普及・活用に向け取り組むとともにユーザーからのフィードバックを得ながら,その継続的な見直しを行ってまいります。大学・高専と経済界における人材育成がシームレスに持続するための取組として,本協議会の皆様とともにこのスキル標準の普及・利用促進に取り組めればと思います。
 本日は御多忙のところ御参加いただきまして,ありがとうございました。来年も引き続き本協議会において皆様と議論させていただければと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 それでは,私からも少し申し上げたいと思います。第1回に引き続き,本日も大変活発な御議論をいただきまして,誠にありがとうございました。私どもとしては,まずは冒頭専門教育課長の塩田から御説明いたしましたように,3,002億円の基金が第2次補正予算でできることになりましたので,大学や高専が積極的に手を挙げていただけるように柔軟に考えつつ支援ができるよう準備を進めてまいりたいと思っております。
 それから,今日多岐にわたる御意見が出ましたけれども,特に教員の確保に関しては,実務での活躍・活用,あるいは実践的な教育ということで何人かの委員から御意見が出ておりました。一方で,大学の先生方に聞くと,この分野は,特にトップレベルの人材がなかなかいないということで,先ほど企業でも必ずしも人材は多くないというお話もございました。そういった意味で,良質な教員を確保するということが,産学官の連携が非常に重要になってくるなというふうに感じております。
 また,今日大学に入る以前の倫理感は高校までのところで教育する必要がある,あるいは学校との組織的な連携が大事だというようなお話をいただきました。この基金を創設するための法案の審議でもかなり御指摘いただいておりますけれども,この機関はどちらかというと出口に近い,社会に出るところの大学や大学院の組織を整備するものですけれども,当然ながら,そこだけやっていても理系に有為な人材が行かないと,デジタルも含めた理工系の人材が増えないというような御指摘もありますので,私どもとしては,小・中・高等学校の教育と大学の教育を一貫して,広い意味での高大接続もきちんと進めながら,この基金を各大学や高専にうまく活用していただきたいというように考えております。
 それから最後に,今日は23区規制の話を何人かの先生からいただきましたけれども,これは様々なお立場の方から御意見をいただいておりますが,こうした御意見も踏まえて,今内閣官房の担当部局と私どもとで相談をしているところでございますので,ここも適切に対応していきたいというふうに考えております。
 以上でございますけれども,今後まだまだしっかりと議論して共通認識を図らなければいけない課題もたくさんあると思います。来年もこの協議会で充実した議論をさせていただければと考えておりますので,引き続きよろしくお願いいたします。今日はどうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

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