デジタル人材育成推進協議会(第1回)議事録

1.日時

令和4年9月29日(木曜日) 14時00分~15時30分

2.場所

文部科学省 省議室(東館11階)
(対面・オンライン)

3.議題

  1. デジタル人材育成推進協議会について
  2. デジタル人材育成の支援強化方策について

4.議事録

【池田高等教育局長】  それでは,ただいまより,第1回デジタル人材育成推進協議会を開催いたします。委員の皆様におかれましては,御多忙の中,御出席いただき,誠にありがとうございます。本日,司会進行を務めます,文部科学省高等教育局長の池田でございます。よろしくお願いいたします。
 本日の出席委員につきましては,お手元の委員一覧で御確認をいただければと存じます。なお,本日は,大村委員,神宮委員,平松委員の代理として,大嵜様,齋藤様,池田様に御出席いただいております。
 会議の開催に当たりまして,永岡文部科学大臣,西村経済産業大臣から,御挨拶をお願いいたします。
 初めに,永岡大臣,よろしくお願いいたします。
 
【永岡文科大臣】  皆様,こんにちは。文部科学大臣の永岡桂子でございます。構成員の皆様方におかれましては,本日は,御多用のところ,第1回デジタル人材育成推進協議会に御参加いただきまして,誠にありがとうございます。変化の激しい現在におきまして,山積する社会課題を解決していくためには,最先端のデジタル技術の活用が必要不可欠であり,その担い手であるデジタル人材の育成,そして確保が喫緊の課題となっております。特に我が国の国際競争力を強化していく観点からも高等教育機関におけますデジタル人材の育成機能についての量的拡充と質的向上は極めて重要でありまして,直近の目標といたしまして,専門分野にデジタル技術を活用する力を持った大学生,そして高専生を2024年度までに毎年17万人育成することとされております。このため,経済産業省と連携し,産業界,地方公共団体,そして,大学,高専の関係者の皆様を構成員とする協議会を立ち上げることといたしました。本協議会におきましては,それぞれのお立場から御意見をいただきまして,産学官が一体となってデジタル人材の育成を進めていければと思っております。
 文部科学省におきましても,デジタル人材の「読み・書き・そろばん」とも言われます,数理・データサイエンス・AI教育について,優れた教育プログラムを政府が認定する制度を通じ,全ての大学生・高専生が基礎的な知識やスキルを習得できるよう,環境整備を進めているところでございます。また,本年5月に取りまとめられました教育未来創造会議「第一次提言」におきましては,デジタル・グリーン等の成長分野を牽引する高度専門人材の育成や大学等の再編促進の取組を集中的に進めていくことなどが提言されております。文部科学省といたしましては,この提言を踏まえ,成長分野を牽引する大学・高専の機能強化に向けた継続的な支援策の創設という形で概算要求を行っているところでございます。これは,学部の再編等により,デジタルをはじめとした成長分野の専門人材の育成機能を強化する大学・高専を支援しようというものでございます。各構成員の先生方におかれましては,こうした文部科学省の取組についても忌憚のない御意見をいただけますよう,よろしくお願いいたします。また,デジタル人材の具体的なニーズ,そして実務家教員の活用といった,産学官連携による取組などにつきまして,自由闊達な御議論をいただきますようお願い申し上げまして,私の挨拶とさせていただきます。
 本日は,どうぞよろしくお願いいたします。
 
【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,西村大臣,よろしくお願いいたします。
 
【西村経産大臣】  経済産業大臣の西村康稔でございます。経済界,大学,高等専門学校,全国知事会,皆様方におかれましては,お忙しいところを御参加いただきまして,ありがとうございます。今,永岡大臣からお話ありましたけれども,まさに,大学・高等専門学校(高専)におけるデジタル人材の育成強化は,近い将来の日本経済を担ってもらう担い手づくりそのものであります。この重要なテーマをデジタル人材育成推進協議会で議論できる,その第1回が開かれますこと,本当にうれしく思っております。
 岸田総理が掲げますデジタル田園都市国家構想の実現に当たり,企業変革を担うデジタル人材の育成は中核的な課題であります。政府全体で2026年度までにデジタル推進人材を230万人育成するという目標を掲げております。これを実現する上で,大学・高専におけるデジタル人材育成機能強化は急務であります。本協議会を通じて,社会が求める人材をいかに育成していくべきか,活発に御議論いただければというふうに思います。既にDXがいろんなところで動き始めており,多くの皆さんがDXの必要性を感じ始めているところであります。昨日,三菱地所は全社員1万人をDX人材に育成するプログラムを開始したことを発表しました。地域においても,例えば石川県の加賀市は,加賀市リスキリング宣言を発表し,デジタル人材育成を通じて世界に通用する企業の創出を目指しております。このように,企業や自治体,それぞれデジタル人材育成の取組が加速をしているところであります。
 こうした中で,経産省におきましても,大きく二つの側面から取組を進めてきております。第一に,全国規模でのデジタル人材の育成であります。今年3月に,実践的なDX推進スキルを身につける,デジタル人材育成プラットフォームを立ち上げました。既に,広く活用は進んでおります。IPAの情報処理技術者試験やセキュリティ分野における講師派遣と併せて,全国の大学・高専での実践的なデジタル教育の現場においても積極的に活用いただけるよう,連携を図っていければというふうに考えております。第二に,地域の特性を踏まえた人材育成です。具体的には,例えば,半導体産業の基盤強化に向けて,設備投資支援に加えて,人材育成・確保に取り組んでおります。まずは九州で産官学のコンソーシアムを立ち上げ,半導体産業に必要な人材像を可視化し,具体的な取組として,カリキュラムを公表いたしました。同様の取組が東北・中国地方にも広がっております。また,急速に需要が高まる蓄電池の分野においても,関連産業が集積する関西地域において,同様の産学官のコンソーシアムが先月立ち上げられたばかりであります。このようにして,地域が中心となって将来の産業の担い手を育成する取組が進められているところであります。
 私自身,今月,シリコンバレーを訪問いたしました。そこでスタンフォード大学の日本人研究者や日本人の学生と面会をいたしました。高校を卒業して同大学に入学したある女性は,応用数学を修了し,現地でディープラーニングの分野で働き始めております。また,後輩の理系女子高校生のメンターとしてのいろんな支援も行ってくれていました。面会したほかの方々も含めて,皆さん,いずれもデジタル分野に大きな可能性を見いだされています。また,現地のベンチャー企業を支援するなど,投資をしている方々から,高専の学生がシリコンバレーに来て,たまたま私の地元の明石の高専生だったようですけれども,先生も学生も非常に意欲的で前向きな取組を積極的にしていたようでありまして,将来が楽しみだというお話をされていましたし,高専の人材の可能性を強く指摘されておられました。
 経産省としても,ぜひ,国内のDXで活躍するデジタル人材から海外に羽ばたく若者まで,様々な人材を型にはめずに幅広く支援をしていきたいというふうに考えております。皆様からも,様々な御意見をいただければと思います。
 最後になりますが,本協議会は,地方の自治体,大学,高専,経済界,一堂に会する貴重な機会でありますので,それぞれのお立場での取組に加えて,連携を深めていく場としてもぜひ御活用いただければというふうに思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 
【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 永岡大臣,西村大臣におかれましては,ここで退室されます。

(永岡大臣,西村大臣 退室)

 
【池田高等教育局長】  プレスの皆様も,ここで御退室をお願いいたします。

(報道関係者 退室)

 
【池田高等教育局長】  それでは,本日の議題に入らせていただきます。議題(1)のデジタル人材育成推進協議会についてです。配付資料1-1,1-2を御覧いただきたいと思います。資料内容については,文部科学省から説明をお願いします。
 
【塩田専門教育課長】  それでは,まず,資料1-1から御説明申し上げます。
 本協議会の趣旨ですが,地域の社会課題解決等を全国で進めるためには,その担い手となるデジタル人材の育成・確保が不可欠だという問題意識があり,各構成員間での連携・協力のもと,具体化に向けて協議を行うというものです。
 2の検討事項ですが,二つあり,マル1が,産学官連携による大学・高専の人材育成機能の強化。マル2が,地域ごとのデジタル人材ニーズの把握・検討・産業育成の促進です。
 4では,議事は原則として公開とすることを示しており,別紙は,構成員の皆様のお名前等を書かせていただいています。
 併せて,資料1-2も説明いたします。これは,本協議会の狙いをさらに詳しく記載した資料で,目的を成長分野の国際競争力を支えるデジタル人材の産学官連携による育成と示しています。デジタル人材の育成機能強化ということでは,例えば,大学・高専の学部・学科の増設等の促進,さらには新たな時代を牽引するトップレベルのデジタル人材育成の支援,このようなことを検討するものです。また,地域ごとの人材ニーズ等につきましては,各地域におけるデジタル人材のニーズの把握・検討,産業育成に向けた地域コンソーシアム,また,最先端の教育研究を行うための実務家教員の供給体制の地域ごとの確立,このようなことを検討してはどうかということを考えています。
 さらには,また改めて説明申し上げますが,文科省事業,経産省事業で,全国,地域に着目した取組をしていますので,そのような取組とも連携をして,本協議会でしっかりと御議論させていただければと考えています。
 説明,以上でございます。
 
【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 今の御説明について,何か御質問などありますか。
 よろしいでしょうか。
 それでは,次の議題に移らせていただきます。議題(2),デジタル人材育成の支援強化方策についてです。ここでは,政府及び各委員の皆様方より各界におけるデジタル人材育成に関する現状などについて3分程度で御発表いただき,その後,時間の許す限り,自由討議とさせていただきたいと思います。
 初めに,文部科学省及び経済産業省より,デジタル人材育成に関する行政の取組を御説明させていただきます。
 それでは,文部科学省から,よろしくお願いいたします。
 
【塩田専門教育課長】  それでは,資料2-1ですが,最近の政府の主な提言の抜粋を示しています。本年5月,教育未来創造会議において,各大学等における,DX,デジタル,グリーン等の成長分野への再編等を行う際の初期投資等の支援を行うという提言がなされています。また,「骨太の方針」においては,デジタル人材を2026年度末までに230万人育成するということと併せまして,先ほどと同趣旨の大学等の再編促進を進めていくのだということが示されております。また,新しい資本主義のグランドデザインにおいても,2026年度末までに330万人,こちらのほうは現在の技術者数100万人も追加されておりますので330万となっています。さらには,AI・データサイエンス等の教育を強化して,文理を問わず人材を育成していくことも示しています。また,デジタル田園都市国家構想におきましても,小・中・高・大学における教育を通じ,リテラシーを確実に身につけるようにすると示されるなど,このようなことがしっかりと政府の文書に書かれています。
 続いて,文科省の取組である数理・データサイエンス・AI教育の全国展開の推進では,デジタル社会の「読み・書き・そろばん」とも言われる数理・データサイエンス・AI教育を全国に展開していくための取組でございます。本年度より全国の9ブロックで活動しており,このブロックごとに代表校をお願いし,ここに記載のあるような大学が代表校となり,それ以外にも,拠点校,特定分野校を担う大学が軸となり,カリキュラム作成,教材作成,さらには,Ph.D.プログラムの機能強化,エキスパート人材の育成,このようなことにしっかりとブロックごとで取り組んでいただいております。
 続いての資料は,これら施策を進めるに当たり,
地方経産局としっかりと連携をしていることを示しており,経産局が各ブロックの代表校と連携し,このような取組を各地で進めているというものです。
 続きまして,数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度という施策であり,リテラシーレベル,応用基礎レベル,この二つのレベルにおいて各大学の取組を国が認定し,特に優れた教育プログラムをプラス選定するというものでございます。
 詳しくは,次の資料となりますが,まず,左側のリテラシーレベルですが,こちらは基礎的な素養を身につける初級レベルのプログラムとなっています。右側の応用基礎レベルは,自らの専門分野において数理・データサイエンス・AIを活用することができる応用基礎力を習得するプログラムとなっており,各大学の教育プログラムを国が認定するというものです。
 次の6ページに,特に優れたプログラムだということで,プラス選定を受けた大学・高専の一覧を載せてございます。
 続きまして,こちらは,成長分野を牽引する大学・高専の機能強化ということで,政府文書に示された提言等を受けたものです。背景・課題でございますが,日本では大学で理工系を専攻する学生がOECD平均より低い上に,OECD諸国の多くが理工系学部の学生数を増やしている中,日本ではほとんど変わっていないという,諸外国と比べた状況があります。そのような状況を踏まえ,デジタル・グリーン等の成長分野を牽引する高度専門人材の育成のために,成長分野への学部転換等の改革に各大学・高専が踏み切れるように,継続的・機動的な支援を行う事業として,基金を含め,継続的な支援策の創設を検討しております。支援メニューとしては三つ想定しており,マル1は学部の再編等による特定成長分野への転換等支援ということで,こちらは大学としては私立・公立を主に念頭に置いたメニューです。マル2は高専を念頭に置いたメニュー,マル3はトップレベルの情報人材の育成支援です。このトップレベルというのは,学部にとどまらず,大学院での教育を念頭に置いたものでございまして,国公私の大学を対象としてトップレベルの情報人材の育成支援をするための概算要求している状況です。
 続きまして,御参考情報でございますが,政府の人材育成目標として230万人,文科省分は左の緑色のところの2024年度末までに年17万人というのが目標として掲げられているというものでございます。
 あとは御参考で,最後にジョブ型研究インターンシップを御紹介したいと思います。これは,経団連様の御協力を得て進めているものですが,2ポツの三つ目について,最初のポツにあるように,大学院生,当面の間は博士課程の,特に自然科学系の博士課程の学生を対象とし,長期間かつ有給のインターンシップを進めるものです。正規の教育課程の単位科目として実施し,企業はジョブディスクリプションを提示していただき,さらには採用選考活動に反映していただくということでして,博士課程学生の多様なキャリアパスを確保するためにこのような取組をしております。また,3ポツにありますように,50企業,59大学による協議会の下で推進していき,文部科学省といたしましては,大学・高専が輩出した優秀な人材がしっかりと社会でも活躍していただけるような取組をしているという紹介です。
 説明は,以上でございます。
 
【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,経済産業省から,御説明をお願いいたします。
 
【内田情報技術利用促進課長】  ありがとうございます。経済産業省から,デジタル推進人材の育成の取組について,御説明させていただきます。次のページ,お願いいたします。
 今日,DXの推進は待ったなしと言われております。そのDXの推進の鍵は,デジタル人材の育成と言われております。私たちは,デジタル人材の育成に当たりましては,まず,全てのビジネスパーソンがデジタルリテラシーを習得することが重要と考えております。その上で,DXを推進する立場の人材は,変革のためのマインドセットの理解・体得した上で,専門的なデジタル知識・能力が必要というふうに考えております。経済産業省は下に掲げます五つのスキルセットを検討中でございまして,このスキルセットが策定された暁には,関係省庁も含めまして様々なデジタル人材教育の横串となるような,こういったスキルセットを通じてデジタル人材育成の様々なメニューを提供していければというふうに考えてございます。次,お願いいたします。
 実践的なデジタル推進人材の育成を進めるために,冒頭に経済産業大臣からもございましたけれども,経済産業省といたしましては,二層構造のアプローチを考えてございます。まず,全国大で人材育成を進めていくために,デジタル人材が身につけるための汎用的なデジタルスキルにつきまして,先ほど御紹介いたしましたデジタルスキル標準を定義し,これを,この協議会を通じて大学・高専とも連携しながら,人材育成をさらに加速させていきたいというふうに考えてございます。加えまして,各地域の産業集積の特性を踏まえまして,産業別に必要な人材像・スキルを整理し,人材育成を地域ごとに進めていく,この二層構造で今後とも進めてまいりたいというふうに考えてございます。次,お願いいたします。
 まず,全国的な取組について,御紹介させていただきます。デジタル田園都市国家構想の実現に向けまして,経済産業省は,関係省庁の協力を得まして,デジタル人材育成プラットフォームを立ち上げました。この図に示されておりますとおり,1層から3層までの様々な学びの機会を通じてDXを推進する実践的な人材を一気通貫で育成することを考えてございます。既に,このプログラムは本年開始されまして,多数の応募をいただいております。引き続き,積極的に御活用いただければというふうに考えております。次,お願いいたします。
 実践的なデジタル人材の育成に向けて,この協議会を通じまして,経済産業省の期待といたしましては,ぜひ様々な連携を関係者の皆様と深めていきたいと考えております。文部科学省及び大学・高等専門学校で提供されているプログラムに加えまして,経済産業省が提供するプログラムの特徴であります,実践的な人材育成のプログラムを様々な形で活用いただけるというふうに考えてございます。先ほど御紹介いたしましたスキル標準,情報処理技術者試験,デジタル人材育成プラットフォーム,セキュリティ人材育成のための全国的な講師派遣,こういったアプローチを積極的に協力・連携させていただければと思います。次,お願いいたします。
 特にセキュリティにつきましては,今日も参加いただいておりますけど,IPA,産業界が高等専門学校に講師を派遣し,セキュリティ人材を具体的に支援したり,それから,地域の民間企業,行政,教育機関,関係団体が築き上げたコミュニティを全国的に展開してございます。次,お願いいたします。
 続きまして,地域の取組につきましても,簡単に御紹介させていただきます。半導体産業基盤の強化のため,九州地域におきまして産官学の人材育成のためのコンソーシアムが組成されました。右下にございますとおり,企業,九州地域の大学・高専では,熊本高専,九州工業大学,九州大学,熊本大学が参加されております。それから,自治体も参加された,産学官のコンソーシアムを通じまして,左下にございますとおり,モデルカリキュラムの策定ですとか,半導体研究教育センターの立ち上げ,人材トレーニングセンターの整備等が動き出してございます。こうした取組が,東北地域,中国地域においても,同様に立ち上がってございます。次,お願いいたします。
 こうした取組を進める上で欠かせないのは,産業界の協力でございます。今日も御参加いただいておりますJEITA(電子情報技術産業協会)の取組を簡単に御紹介させていただきますと,JEITAは,今後10年間で約4万人の半導体人材が必要として,全国大のネットワーク構築を通じて,人材育成にJEITAとしても積極的に協力していくということを表明しております。具体的には,ブロックごとに幹事社を設け,地域ごとのニーズを踏まえながら,講師派遣,設備提供,カリキュラムの策定等の協力を行っております。それから,後で御紹介ございますけれども,CEATEC2022,今年のCEATECにおきましても,半導体のフォーラムを開催し,積極的に,半導体産業の魅力ですとか,人材育成の必要性を発信されていくというふうに伺っております。次,お願いいたします。
 半導体と同様の取組が,蓄電池でも行われております。特に蓄電池産業が集積する関西エリアにおきまして,同じく産学官のコンソーシアムが既に立ち上がっております。同様に,工業学校や高専等でのカリキュラムの導入等,産官学が協力しながら,この地域における蓄電池人材の育成にも努めてまいります。
 最後に,同様の取組といたしまして,将来のロボット分野の人材育成の可能性についても,御紹介させていただきます。日本の産業は今後,特にIoT産業の発展に伴い,ロボット産業の振興は欠かせないものであります。こうしたロボットの開発ですとか,インテグレート等を担う人材の育成につきましても,現在,全国的な未来ロボティクスエンジニア育成協議会が立ち上がっておりますが,こうした取組はまだ点にとどまっております。これを,全国各地域に広がっていくような,面的な取組へと拡大してまいりたい。それぞれの地域での取組を経済産業省としても後押ししていきたいと思います。
 以下は参考資料でございますので適宜御覧いただければと思いますが,こうした取組を通じまして,全国規模でのデジタル人材育成の強化,地域ニーズを踏まえた地域ベースでの人材育成の両輪で,取り組んでまいります。その際,産学官の連携がその前提となります。今回の協議会を契機に,関係者の皆様方とさらに議論を深められればと存じます。
 以上でございます。
 
【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 それでは,ここからは委員の皆様方から順次御発言をお願いいたします。恐縮ながら,まず,会場にお越しの委員の方々から,座席順にお願いしたいと思います。まず,国立大学協会の西尾副会長から,時計回りで順次御発言をいただいた後,オンライン出席をいただいております,大嵜様,齋藤様,橋本様,松井様の順で,御発言をいただければと思います。
 では,まず初めに,国立大学協会,西尾副会長,よろしくお願いいたします。
 
【西尾委員】  2ページ目をお願いします。現在では,科学,教育,産業等の全てにおいてデータ駆動型となっており,Society 5.0実現の基盤になっております。しかし,それを支える情報の中核的な基礎理論を習得して実践技術を身につけた情報中核人材,あるいはトップレベル人材が圧倒的に不足しています。
 3ページ,4ページに示しましたとおり,量的な面では,IT人材は2030年までに45万人不足するというデータがあります。また,人材の質については,デジタル競争力ランキングで63カ国中62位という,大変厳しい状況です。
5ページ目をお願いいたします。では,情報人材の育成の現状はどうでしょうか。国立大学の場合,学部名や学科名に情報を含むものを抽出しますと,入学定員は5,400名程度ですが,その大半は情報関連人材であり,情報分野の中核人材は2,000名足らずと推定されます。国公私立大学全体では,学部名や学科名に「情報」を冠した入学定員総数の2割程度が中核人材と考えられます。一方,米国では,2006年からの10年間に,学部レベルにおいて,いわゆるトップレベルの情報人材としての教育を受けている学生は4倍になっています。中国では,例えば上海交通大学では,15年以上前にコンピュータサイエンス学部とは別途に,高度なソフトウェア,サイバーセキュリティ人材を育成する2学部を設置し,トップレベル人材を毎年数百名オーダーで育成しています。それに対して我が国は惨憺たる状況であり,産業競争力が弱体しても当然と言えます。
6ページ目をお願いします。そこで,強化策の第一弾として,まずは情報人材を育成する学部入学定員及び教職員数を大幅に増やすことが不可欠です。また,その拠点となる学部は,全国の地域ブロックの拠点でもあり,該当エリアの小中高校の情報教育への接続拠点,該当エリアのリカレント教育の拠点としても,貢献していきます。
 7ページ目をお願いいたします。情報人材の育成は大学入学後では遅く,OECDが調査した情報通信分野の国際競争力で,日本は20位近くで低迷しているのも,そのことに要因があります。スライドに示しておりますように,高専では「情報そのもの」を学ぶ学科の大幅な拡充,高校では「理数科」と同様の「情報科」の設置が待たれます。
 8ページ目をお願いいたします。以上のことを実現する有力な方法は,現在,文部科学省が検討している基金を含めた継続的支援策が緊急かつ十分な規模で創設されることだと確信します。しかも,2023年度に開始しないと手遅れになってしまうと,危惧しております。
 以上です。
 
【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,国立高等専門学校機構,谷口理事長,よろしくお願いいたします。
 
【谷口委員】  御紹介にあずかりました,高等専門学校,国立は,キャンパスは55あるのですが,51校,それを取りまとめさせていただいている,高専機構の理事長を仰せつかっている谷口でございます。
 今,西尾先生のほうから,高専を含めて,おおよそ大事なことを言っていただきました。高専というのは,御承知のように,中学校を出た15歳の学生さんが入ってきて,1学年,大体1万数千人いるということですけども,その学生さんたちには,基本的には,情報系の学科でなくても,最低のリテラシーの教育というのを以前からやってきています。高専の一つの特徴は,それを頭で理解するだけじゃなくて,具体的に社会のいろんなものに落とし込んでいく。ですから,例えばロボコンでも,ロボットを創って,そこにAIを入れる,ディープラーニングを組み入れる,そういう形で今までと全く違う性能のロボットができる。ですから,今,半導体でありますとか,電池でありますとか,いろんな社会的な課題がありますが,そういうものも全て,共通項として,DX化というか,そういうものが必ず必要になってくる。このことを認識した上で,高専の教育というのを基本的にやっています。専門の名前が,情報とか何か,そういうのがついたところは51の高専の半分ぐらいにはあるのですけども,そこの高専だけでなくて,ほかの高専でも情報関連の基本的な教育はやっています。ここで,大事なことは,数の問題ももちろんありますが,レベル,どの程度までちゃんとやるかという,質の問題も併せて考え,中身を考えないと,やったことあるというだけでは,残念ながら使い物にならない。本当にDX人材使えるためには,企業とか大学とかとの連携が非常に大事です。特に,企業に行かせていただいて,例えばインターシップに取り組む。これはかなりやっていますから,その中で学んでくることが非常に多い。高専の学生さんは,まず手足を動かして,何でもやります。頭で理解してというより,先に手を動かして理解するというのが得意ですし,決して,できないということは言いません。やってみますと言います。やってみて,そして,うまくいかなかったところからどんどん考えて,学びを深めることで解決していきながらという,いわゆる実践的な教育の仕方をずっとやってきましたから,それが身についています。高専生はそういう形でいろんな活動をしているということを,まず御理解ください。
 そういう意味では,皆さんの御期待に応えられるような人材を中学校を出たところから一つ一つつくっていきながら,トップレベル,もちろんレベルの高いところも大学等とも協力させていただいて人材をつくらせていただいています。一方でDX人材は,中学校からでも遅いかもしれないという話があります。ですから,高専で学んだ学生さんが,今度は小学校とか中学校とかに行って,そして,今,プログラミングの授業とか,小学校で始まったわけですので,その機会を活用して,小学校や中学校の子供たちに教えることもやっています。教えることは結構,学ぶことにもなりますので。高専生をこき使っているのではありません。ちゃんとそれなりにしかるべく手当なんかを出していただいて,お手伝いさせていただいています。ですから,これからは小学校からずっと継続的にやっていかないといけない。今はもうそういうふうになっていますけど,そういうことも含めて人材育成をやらせていただいているという状況にあります。
 ですが,DX人材は,まだまだ足りないというか,人手不足。特に先生方が必ずしも十分ではありません。ですから,高専の場合には,今,コロナで遠隔授業の進め方を学びましたから,遠隔で企業の方に入っていただいて授業の一端をやっていただくということもありますし,もちろんインターンシップで学生さんが企業に行くということもありますけれども,さらに,高専の卒業生にも協力を頂くことを勧めています。意外と,DX関係のいろんな領域で活躍している卒業生は数多いです。NTTとKDDIのトップは違うかもしれませんけど,そのほかの,この業界のほとんどの執行役員の人たちはみんな高専の卒業だと言っても過言ではないぐらい,活躍しています。ですから,私は今,卒業生の皆さんに,あんたたちの後輩のために手伝ってくれと申し上げています。給料はそんなに出せないけど手伝ってくれと言って,無理を言いながら手伝ってもらっています。彼らは一生懸命やってくれますから,それが大きな力になっていますが,本当はDX人材を育てるための先生方をちゃんと育てていかないと,と思います。そうでなければレベルの高い,質の高いDX人材というのは育成できないということだけ,申し上げておきます。
 もう3分たちましたからやめますけど,いろいろと申し上げたいことはいっぱいありますということだけ申し上げて,今日はこれだけにします。
 
【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,日本私立大学団体連合会,田中会長,よろしくお願いいたします。
 
【田中委員】  ありがとうございます。日本私立大学団体連合会の会長,また,早稲田大学総長を務めております,田中でございます。
 先ほどの西尾先生の御発言にもございましたとおり,令和元年6月に総合イノベーション戦略推進会議がまとめられました「AI戦略2019」では,データサイエンス・AIを理解でき,各専門分野で応用できる人材を年間約25万人育成するという,具体的目標が立てられています。しかしながら,現在のシミュレーションでは,西尾先生もおっしゃっていたことでございますけれど,2030年を見ると先端IT人材が54万5,000人不足するという試算が出てきております。現在のように,高校の時代から,あなたは文系,あなたは理系というふうに分けて教育をして,大学の4年間も自然科学系の理学・工学部や医学部系の学生と人文社会系の学生は全く異なる教育を受けるという,日本のこの教育システムを続けていく場合に,特に私立大学ではそういう傾向は強いのですが,その場合には非常にデジタル化人材の育成が進まないということになります。
 具体的な例を申し上げますと,新型コロナ・パンデミックの中で緊急搬送される患者さんを,救急車の中で電話を5時間,8時間とか16時間,電話をかけ続けて,空いている病床を探しているのですが,これは,ビッグデータとして全ての首都圏の病院の病床をコンピューターのビッグデータに入れておいて,各病院が1床埋まるごとに入力していくと,GPSで救急車の場所はITが分かりますから,ITは30分以内に1床空いているとか,1時間以内であれば5床空いているとかいうことが即座に分かるはずです。少なくとも,5分,7~8分の間に分かっているはずなのですね。なぜこれができないかというと,保健所の方や市役所の方はほとんど全て,政策立案者が文系だからです。私も政治学ですので文系ですが,私は大学院時代に大型計算機を回す計量分析を学ぶためにアメリカの大学で学んでおりますが,そのために留学しているのですが,そういう経験から言うと,我々,人文社会系の人間は,科学技術が人類社会にどう貢献できるかの想像力が足りないのだと思います。また,理系の方は,そういうシステムはすぐ作れますから,言われれば1週間もあれば作っていただけますが,言わないと分からない。これは,理系の方たちは,英語の論文を読んで,実験をし,検証をし,学会発表を英語でして,英語で論文を出すということに,朝の9時,10時から,夜中の11時まで研究し続けているというのは立派なのですが,忙し過ぎる。彼らは,コロナ・パンデミックなどの中で人々がどう行動するか,経済大恐慌が起きたときに人々はどんなパニックとなり,どう考え,どう行動するか,また,軍事大国が隣国に侵略した場合に人々はどういうふうに行動するのかということを御存じないと思います。科学技術を人間社会に応用するということの視野が欠けているのではないか。ですから,ここは文理融合ではないと思っています。私は,実際に文理融合はほとんど不可能で,物理学者が経済学の最先端の論文を出版することはほとんどできないと思いますし,政治学者が応用物理学の最先端を理解することはできないと思います。しかし,よき理解者になり,ワイズユーザー,賢いユーザーになることは可能である。今,文理を完全に分断している教育に問題があると思っています。
 例えば,早稲田大学で申し上げれば,2009年から文系の学生に数学を教えています,基礎の論理的数理論を。そして,統計学入門も教え始めました。2017年から統計学をデータ科学入門に変えました。これはAIを用いてビッグデータを解析するという方法に変えています。早稲田大学は8,900名が1学年の定員ですが,6,000名の文系の学生が数学の入門とデータ科学入門を学んでいます。8,900名のうち1,600名は,理工系の学生が自分たちの学部で両方学んでいますので,早稲田の場合は,8,900名中7,600名は文理を超えて教育する。今,文部科学省がおっしゃっている,いわゆる文理横断型の教育を進めています。理系の学生はもう少し,人々の行動などを理解するような文系の教育もこれから必要だと思っております。文系の学生は理系の科学技術の有用性というものを理解するようなレベルには徐々に達しつつあると思っています。まだまだ十分ではないですが,そういうことを進めていく必要があります。
その中で,現在行われている,東京23区内の大学では,学科の増設もできない,人員の増設もできないということでは,理系人材を増やすということ,また,理工系をOECD諸国のように50%にする。今,日本では3分の1しかいないのですね。理系の人材を50%に上げるということは,東京23区の規制をかけている限り,ほとんど不可能であると思われております。
 また,コロナを経験して我々は,今回のようにオンラインの会議でありますとか,ハイブリッドの会議というものはいかに有用かということが分かってきていますから,様々な方式を活用しながら,文理横断教育,文系と理系がインターフェースを持てるような教育を進める必要があろうかと思っております。そのような意味では,経済産業省,文部科学省にも御支援をいただきたいと思っている次第でございます。よろしくお願いいたします。
 
【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 次に,公立大学協会,竹中副会長,よろしくお願いいたします。
 
【竹中委員】  公立大学は,来年,100校の加盟校を迎えます。しかし,設置者の財政規模等,いろいろな要素がありまして,全体としてどのような考え方かというのは,まとまりが難しい状況です。
 公立大学におけるデジタル人材育成の取組をまとめました。公立大学は,その歴史や規模,学部の種類などにおいて多様な性格を持っているが,逆に地域課題の集積地とも言えます。設置自治体が密接なステークホルダーとして存在する点は公立大学の大きな特徴でございまして,ぜひ,その利点を生かしてデジタル人材の育成に取り組むというふうな方向性かと思っております。
 具体的なお話につきましては,政策的なことについては,もう既に触れられておりますので,公立大学協会の中でどのような事例があるかを御紹介したいと思います。
 滋賀県立大学は,8年前に,国公立の中では一番早い段階で,地域ひと・モノ・未来情報研究センターということで,主として大学院教育の副教科目として情報科学を落とし込んでいらっしゃいます。次のスライドをお願いいたしたいと思います。
 公立大学の中で数少ない総合大学でございますが,横浜市立大学の文理融合・実課題解決型データサイエンティスト育成,これは文部科学省の援助を受けて行われております。
 公立大学ならばこそということで,地方創生推進交付金を受けたということでございますが,秋田版スマート農業による地域の活性化と人材育成。このような具体的なもので研究課題をつかまえながら,スマート農業指導士育成プログラムというふうな形で社会実装化を図っていらっしゃるという例でございます。
 これも同じように,ちりめんじゃこ,いわゆる小魚の中に入っている異物をAIを使って実際に同定していく尾道市立大学の事例です。
 今後始まります,理系の女子の開発。高大接続以前に女子の中高生の理系への関心を高めるということで,北九州市立大学がオンラインラボと体験ラボで,理系というものはどういうものかと,サイエンスガールプロジェクトを提案しています。
 お示しいたしましたように,公立大学では既に幾つかのプロジェクトが走っていると,私自身は思っております。私が担当しております副会長の守備範囲から申し上げますと,教学というところでございます。できましたらこういうプロジェクトを広く皆様方に認識をしていただきながら,どこに何を置いていただくのがいいのか。また,公立大学の性格から申し上げますと,国の助成金・補助金がなかなか取りにくいシステムになってきております。国立指定,あるいは私学指定という科目が多過ぎるというふうに考えております。ぜひ,今後,そういうチャンスを公立大学にもいただきたいというふうに思っております。
 それから,先ほど,せっかく田中先生が触れていただきましたので,私,単科の医科大学の学長を私学と公立で11年間やっております。コロナ禍,医学部は文理融合のまさに典型的な学問の府になっております。この医学部をどういうふうに利用されるのかというのは,我々にとりますと,既にデータを処理して文理融合するという学問そのものが医学でございますので,また違った面で御示唆をいただければ医学部全体への考え方を変えることができるという観点も指摘をしておきたいというふうに思っております。
 以上でございます。
 
【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,日本経済団体連合会,池田SDGs本部長,よろしくお願いいたします。
 
【平松委員代理(池田様)】  経団連でSDGS本部長を務めております,池田と申します。教育問題を担当しています。本日は,委員の平松部会長はどうしても外せない用事がございまして,代理出席による発言,恐縮です。
 さて,先ほど永岡大臣からも御発言ございましたように,Society 5.0において,情報活用能力は現代の「読み・書き・そろばん」と言える,必須の能力です。そのため,全ての国民が情報リテラシーを身につけ,デジタル技術を利活用できるようにすべきと考えています。また,同時に,Society 5.0をリードしていくエキスパート人材を育成していくことも,我が国の国際競争力強化の観点から必須の課題であると考えています。コロナ禍により日本のデジタル化が周回遅れであるということが発覚した今,経団連では,前者,後者とも我が国にとって喫緊の課題であると認識しています。
前者に関しまして,高校で2022年度より情報Iが必須科目となったものの,公立高校では2割強の教員が情報の免許を持たずに教えているのが実態と伺っております。先ほど谷口様からも御指摘があったとおり,専門性を持った先生をどう確保していくのかも課題であるというふうに認識をしてございます。
経団連では,今後,小中高生,大学生,そして社会人に至るまで,デジタル人材を育成していく必要があると考えています。その一方で,現在,あらゆる業種・業態で,デジタル化・DXが必要とされており,デジタル人材が極めて逼迫しているのが実情です。そのような中,教える人材をどのように確保し,どのように効率的に育成していくのか,国家戦略的なビジョンを描きつつ,オールジャパンで迅速に対応していくことが必要と考えています。
このような問題意識から,今回,経産省様と文科省様が連携してデジタル推進人材育成の取り組みを開始したことについて,大いに歓迎しますし,期待を申し上げたいと存じます。
 企業は今,DX化やデジタル人材育成に向けて試行錯誤をしています。そのようななか,経産省資料の3ページから7ページにございますように,政府のリーダーシップの下で,DX推進人材向けのスキル標準を定義するとともに,情報処理技術者試験やデジタル人材育成プラットフォームを活用し,全国大で人材育成を進めていくことは,大変ありがたいと考えています。その際,重要なことは,スキルの標準化に当たって,我が国のみならず,国際的に通用するものにしていただきたいと存じます。この点について,強くお願い申し上げます。
また,4ページのデジタル人材育成プラットフォームにおきまして,参考資料を拝見しますと,我が国で不足しているDX人材の規模と比較して受講者数の規模が1桁少ないようにも思います。予算の問題もあるかと思いますが,この枠組みを使って産学官が連携して,どのように迅速かつ大規模に受講者数を増やしていくかは,大きな課題であると考えています。
 さらに,資料の2ページに,DXを進める企業等におけるビジネスパーソンの人材像が記載されていますが,デジタル技術の基礎を学ぶだけでは不十分であり,全従業員が日々の業務においてデータを利活用する実践・アクションが必要だと考えています。加えて,現場でDXを推進する上では,リーダーの存在が不可欠ですので,これらの点について,御配慮いただきたいと思っております。
 最後に,文科省様の資料の7ページの「成長分野をけん引する大学・高専の機能強化に向けた継続的支援策の創設」につきまして,一言申し上げます。経団連では,DXとともに,グリーントランスフォーメーション(GX)も重要な成長戦略の柱と考えています。そのような観点から,大学等においてもDXやGXなどの成長分野でイノベーションを創出するエキスパート人材を重点的に育成する体制を整えていただくことは大変意義があると認識しています。大学等でそのような体制を整えていただきまして,産学官が連携・協働して経済社会の発展をリードする人材を育成していくということが重要と考えております。
 私からは,以上です。よろしくお願いいたします。
 
【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,新経済連盟,関事務局長,よろしくお願いいたします。
 
【関委員】  新経済連盟の事務局長の関と申します。発言の機会をいただき,ありがとうございます。私のほうから,資料はございませんので,口頭にて御説明をさせていただきます。
 新経済連盟は,経済団体であり,様々な政策提言をさせていただいております。DXの推進などももちろんその一つであり,デジタル人材の育成についても最重要課題と捉え,研究をしているところでございます。育成すべきデジタル人材というのはどういうものかと考えたときに,経済団体から見ますと,かなり幅広く捉えるべきであると考えております。情報系の学部・学科の拡充というのはもちろん必要なのですが,それ以外の理系の学部・学科についても,デジタルを活用するという視点からすると,やはり拡充というのが必要だと思いますし,デジタル教育ということも非常に重要です。また,企業にはデジタルマーケティンなどの仕事に従事している人がおり,こういった人たちは理系という範疇も超えているのではないかと思いますので,文系の人も含めてデジタル教育というものを考えていく必要があり,既に社会人になっている人のリカレント教育も重要と考えております。とにかく裾野を広く大きくするという視点が必要であり,そうしないとトップレベルの人材の十分な数というのも確保できないと考えております。その意味で,産学官の連携というのは非常に重要だと思っています。
 企業には,デジタル実務にたけた者というのは相当な数おりますので,既に取り組んでいる部分はありますが,そういった者を大学・高専に教員として派遣して教えさせるといったことが,より活性化するような環境を整えるべきだと思っています。そのためには,企業から見てのインセンティブ,すなわちヒト・モノ・カネをそういったものにつぎ込めるインセンティブになるような,例えば,税制の手当であるとか,あるいは,派遣される教員の給料の補填をもっと柔軟にできるようにするであるとか,国の資金をうまく活用しやすいようにするであるといったもろもろの施策を取っていただき,企業から大学・高専への実務者の派遣というのをもっともっと進められるようにすべきだと考えております。こういった施策につきまして,ほかにもたくさんやるべき施策はあると思いますが,ぜひ,いつまでに何をという形でKPIをきちっと設定していただき,それを踏まえながら進めていただきたいと思います。17万人や230万人という目標をさらにブレークダウンし,何をどこまで,いつまでにやるかということを数値化し,そのインデックスを基に進捗管理がされるようにということをお願いして,私のコメントとさせていただきます。ありがとうございます。
 
【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,情報処理推進機構,富田理事長,よろしくおねがいいたします。
 
【富田委員】  ただいま紹介いただきました,IPA(情報処理推進機構)理事長の富田でございます。私どもは経済産業省の御指導の下にIT関連の業務を実践しているわけですけれども,特に,サイバーセキュリティ関係,それから,人材育成で言うと,情報処理技術者試験だとか,未踏/セキュリティ・キャンプといった,とんがった人材の育成とか,産業サイバーセキュリティセンターみたいに,社会人でOT・ITのエンジニアの中核人材を,インフラを守る人材の育成ということをやってきておりまして,そのほか,ITスキル標準,DX推進,認定,それから,白書関係,DX絡みの白書,最近では,DADC,アーキテクチャー,全体像を描いてちゃんと進めていかなきゃいけないというようなことで,そういうITに絡むことを経済産業省と相談しながらやっておりまして,本日の関連,デジタル推進人材育成で言えば,先ほどの経済産業省の資料の中に出てくる,情報処理技術者試験,ITパスポート,このITパスポートというのが実はデジタルリテラシーと関連していまして,情報処理技術者試験はどちらかというと,情報をつくる人,いわゆる情報学部に当たる人たちの受皿みたいな企業だとすると,ITパスポートは非IT企業向けのリテラシーというものをターゲットにしていまして,例えば,高校で情報Iが必須化になるのに合わせてシラバスの内容と整合させたりということで,できるだけ文科省のプログラムが変化したときにはそれに合わせていけるようなことも考えてきて,やってきています。
 今日は,私はこのITパスポートを通していろんなことが見えてきているので,少しそれを紹介したいと思っているのですけれども,一つは,日本のITエンジニアは非常にIT企業に偏っているというのは皆さん御存じのとおりで,大体7対3。最近のデータは少ないのですけれども,ほぼ変わってないと思います。アメリカとかヨーロッパは,4対6ですね。ユーザー企業のほうにITエンジニアが多くいる。今,DXを推進するのが各企業にとって待ったなしになっている中で,相変わらずITエンジニアはIT企業にいるという状態に変化はない。人材の流通がなかなかできないという日本の中において企業は何を考えているかというと,自分たちの企業の痛みだとか,いろんな仕組みだとかを分かっている人間にDXを進めてもらわないと,ITのプロが来たってできないよというのが本音だと思うのですね。そういう意味で,今起きているのは,企業の人間にIT教育をするというのが流れになってきています。先ほど大臣も言われていましたが,三菱地所で1万人という,リテラシーをグループ全員に持たすのだと言っていますけど,実はこういう動きがITパスポートの受験者に見えています。ITパスポートは今まで大体,IT企業と非IT企業の人数比は五分五分ぐらいのところで推移していたのですが,ここのところに来て,今年のデータはまだあれですけど,2020年で67%に増えて,2021年では77%が非IT企業になっている。IT企業はITパスポートを何で受けているのか,幾つか調べてみると,実はITをやる人間ではなくて,IT企業も,人事があったり,営業があったりするので,営業全員に受けさせているとか,事務部門に受けさせている。ですから,IT人材と言いながら,実は,ITパスポートを受けているのは,非IT職務に就いている人たちにリテラシーをつけさせたいというのが,今,企業で大きく動いているというふうに感じています。
 そういう意味で,私どもも感じているのは,ITパスポートの領域というのをいかに強くしていくか。文科省がやられている,小学校からGIGAスクール構想があり,情報Iの必須化があり,2025年から大学入学共通テストでプログラミングを含む情報の出題が決まっているということで,恐らく高校までのところはかなりの確度でリテラシーを持った人が進んでいくと。そういう意味で,本日の議論になっている,大学とか,高専とか,そういうところでリテラシーをどうやって,せっかくやってきたものを,4年間とか途絶えるとこの業界というのはどんどん技術が変わっているので,そこでリテラシーを加えていってほしいということと,もう一つは,大学なので応用力とかをつけてほしい。それから,情報学部じゃない学部にぜひ,自分の学部の題材でITを使ったいろんなことを勉強していってほしい。ですから,まさに今日の話の中にあったデータサイエンスだとかAIの基礎能力を育成するということで数理・データサイエンス・AI教育プログラムというのを文科省でやられているのは非常にいいことだと思っていまして,あの認定制度は全大学生・高専生というのをうたっておられたので,ぜひそこを充実していただけると,まさに企業はこれから入ってくる人を教育しなくてよくて,今は企業の中で教育を一生懸命進めていますけど,これはしようがないのでリスキルをやっていくしかないのですが,これから出てくる人は,ほぼ同じレベルの人が新入社員として入ってくる,こういう状態にしていただくとかなりリテラシーが上がっていくのではないかということで,問題は,この中から落ちこぼれがないように。それから,もちろん情報学部もこれからどんどん,もっととんがった人たちをつくっていかなきゃいけないし,先ほど経団連の方からあった,国際的に通用するということは非常に重要なので,情報学部の質の向上というのはこれからやっていかなきゃいけないことだと思いますけれども,むしろ情報学部以外のところのリテラシーというのに着目して,高専なんかで全部やっていますよというお話もありましたので非常に心強いと思いますが,そういうことを増やしていくことが非常に大事だな。落ちこぼれのないSociety 5.0,全国民がITのことが分かる,「読み・書き・そろばん」にしていく。日本人は本当の「読み・書き・そろばん」は得意なのですごいと思いますけど,そこにITも同じレベルに入れていきたいなというふうな思いがありまして,IPAとしてはぜひそういうことを経済産業省の御指導の下で進めていきたいというふうに思っていますので,大学の方々といろんなことで協力し合ってやっていけたらうれしいというふうに思っております。
 私からは,以上です。
 
【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 ここからは,オンライン出席の委員の方々から御発言をいただきたいと思います。まず,愛知県労働局,大嵜就業推進監,よろしくお願いいたします。
 
【大村委員代理(大嵜様)】  こんにちは。代理で出席させていただいております,愛知県労働局就業推進監の大嵜でございます。よろしくお願いいたします。
 デジタル社会の実現に向けては,デジタル技術を活用して地域の課題解決や新たな価値を生み出す人材,それから,教育を担う人材など,専門知識を有する多種多様な人材の育成・確保が必要と考えております。愛知県では,デジタル人材の不足に対応するため,今後取り組むデジタル人材育成施策を今年3月に「あいちデジタル人材育成支援アクションプラン」として策定したところです。本プランでは,中小企業への支援,離転職者への支援,未来の産業を担う人材への支援,この三つを3本柱としており,プランに基づいてデジタル人材育成施策を展開しております。
 まず,中小企業の支援に対しましては,階層別研修のほか,アドバイザーを企業に派遣し,社内研修カリキュラムの作成から研修の実施,修了後のフォローまでの伴走支援を実施しております。また,離転職者への支援につきましては,県立岡崎高等技術専門学校にデジタル関連の訓練科を新設するほか,雇用セーフティネット対策訓練において経済界のニーズに即したカリキュラムを作成するとともに,デジタル関連の定員を大幅に増員しております。また,未来の産業を担う人材への支援につきましては,愛知県立大学においてデジタル技術活用の基礎知識を習得させる科目を開設しております。
 県立高等学校では,工科高校で教育の充実を図るとともに,商業高校にITビジネス科の設置を進めることとしております。さらに,地域の産業界,大学,金融機関,行政が一体となって,本県産業のデジタル化・DXを推進するために,昨年,あいち産業DX推進コンソーシアムを設立し,人材育成等に向けたセミナーの開催など,様々な取組を展開しております。
 大学に関しましては,愛知県内に52の大学がございます。そのうち18の大学に情報系学部・学科が設置されております。最近の動きといたしましては,2021年4月に名古屋国際工科専門職大学が開校しました。また,今年4月に名城大学に情報工学部が開設されるなど,各大学において時代のニーズに合った学部・学科の再編の動きが見られるところでございます。デジタル人材は東京圏に集中しており,人材不足は地方においてより深刻であると思いますので,東京圏以外の大学に対し,量的拡大のより手厚い支援をお願いしたいと思います。また,今後も我が国の国際競争力を維持するためには,デジタル人材の質的な向上が必要なことから,新たな時代を牽引するトップレベルのデジタル人材の育成を強力に進めていただきたいと考えております。
 以上です。
 
【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 次に,経済同友会,齋藤執行役,よろしくお願いいたします。
 
【神宮委員代理(齋藤様)】  経済同友会の齋藤でございます。本日は,構成員の神宮が所用のため,代理かつオンラインで失礼いたします。
 経済同友会におきましても,デジタル人材を含め,これからの社会において価値を創造する人材を社会全体でどう育成していくのか,企業経営者が非常に高い問題意識や危機感を持ちながら議論をし,提言しております。本日は,そういったものを3点,簡単に御紹介させていただきたいと思います。
 まず第1点は,高度専門人材の教育の核となる高等教育機関への期待でございます。時代の環境変化に応じて,学部・学科の増設・再編,定員増などが柔軟かつスピーディーに進められることが非常に重要だと考えております。それに加えまして,例えば,オンライン教育やデジタルコンテンツを活用しながら,教育コンテンツをよりオープン化していってはどうかというふうに考えております。若い学生のみならず,社会人になっても多様な形で自らの能力・スキルをアップデートし続けられる機会を今よりも容易な形で提供し,かつ,そこで身につけた能力・スキルが社会で本当に実践的に役立つものになっているかをしっかり認定していく仕組みづくりが重要ではないかと考えております。
 第2点としましては,そのような中でも,産学連携,企業の協力の在り方でございます。現在,DXがあらゆる産業で求められておりますけれども,先ほどもお話ありましたように,日本ではユーザー側の企業にデジタル人材が少ないことが非常に課題になっております。例えば,物流の方々にお話を聞いてみましても,業界横断,そしてサプライチェーン全体でのプラットフォームづくりが今後の非常に難しい課題となっておりますけれども,なかなか競合他社と手を組むことが難しいというような話もございました。そこで,中立的な位置づけにある教育機関というのを一つのプラットフォームにして,それぞれの企業の有する課題ですとか,それに関連するデータ,ノウハウを持ち寄りながら,そしてまた,実験フィールドとしての物流の現場などの機会を提供することによって,そこで実践的な研究とか人材育成に役立てていただけるのではないかというふうに考えてございます。
 第3点としましては,学生に対するサポートです。少し古い話になりますけれども,以前,デジタル庁が発足する際に,それに対する意見として,産学官の連携の下でデジタル人材育成プログラムを策定し,そこに新たな奨学プログラムを創設してはどうかということを提案させていただきました。民間企業はもちろんですけれども,国あるいは自治体のデジタル化というのが社会全体のインフラ整備としては待ったなしという状況になっている中で,例えば,こうした奨学プログラムで学んだ学生が一定期間,デジタル庁ですとか地方公共団体において国家的・公共的なプロジェクトに携わり,そこで実績を積んで評価された上で,さらに国内外の各セクターで活躍していくようなことをイメージさせていただいております。
 簡単ではございますが,以上でございます。ありがとうございました。
 
【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 続きまして,彦根商工会議所,橋本副会頭,お願いいたします。
 
【橋本委員】  滋賀県の彦根商工会議所で副会頭並びにIT推進研究会の委員長をしております,橋本と申します。今日は,オンラインでよろしくお願いいたします。商工会議所を代表しまして,私としましては中小企業の経営者の視点で参加をさせていただきたいと思っております。
 まず,商工会議所の紹介ですけれども,全国に515の商工会議所がございまして,地域の総合経済団体として,デジタル化,中小企業の生産性向上など,中小企業の支援,そして,地域経済の活性化に取り組んでいるところでございます。
 彦根商工会議所並びに彦根地域について資料を提出しましたが,時間の関係もございますので,後ほど御確認いただきたいと思います。具体的に少しだけ紹介させていただきますと,彦根商工会議所にIT推進研究会というのを設置しまして,また,2017年に日本で初めて地元滋賀大学にデータサイエンス学部というものができまして,デジタル化に取り組む中小企業と滋賀大の学生を受け入れまして,デジタル化,学生の実践教育としてインターンシップ等を行っています。
 また,ジュニア教育ということで,小学生を対象にプログラミング教室やプログラミングコンテストを開催しています。こちらも滋賀大のデータサイエンス学部の学生がメンターとしてコーチングしていただいたり,また,小学生の高学年もしくは中学生向けのプログラミング教材を滋賀大データサイエンス学部で開発していただいているところです。
 次に,全国の商工会議所の意見を述べさせていただきます。全国の商工会議所の会員企業様からは,「外部専門人材の活用だけではなくて社内のデジタル人材育成が重要」,また,「業務の現場とデジタル専門人材とを通訳のようにつなげられる人材が社内に必要」という声が寄せられています。しかしながら,我々中小企業自身では社内のデジタル人材を育成・確保するのは難しいというのが実情でございます。さらに,地元の高等教育機関で学んだデジタル人材が都心部のほうに流れてしまって地元の企業に就職するのがなかなか難しいということで,育成したデジタル人材が地元企業に就職しやすくなる仕組みもぜひお願いしたいことです。
 私の企業の紹介を少しさせていただきますと,建設業をメインにさせていただいていますけれども,3年ほど前からドローンを導入しまして,3Dスキャナー等の測量をドローンで行ったり,また,勤怠管理や事業化システムなど,総務部門でもIT化を進めているところです。本協議会が地域の中小企業のデジタル化を推進する人材の育成・確保に具体的につながることを期待しております。
 私からは,以上です。
 
【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 最後になりますが,電子情報技術産業協会の松井IT・エレクトロニクス人材育成検討会委員長,よろしくお願いいたします。
 
【松井委員】  JEITAでIT・エレクトロニクス人材育成検討会の委員長を拝命しております,松井です。どうぞよろしくお願いします。次のページ,よろしくお願いします。
 JEITAでは,次世代の人材育成に積極的に取り組んでおり,特に大学・高専といった高等教育機関に対しては,例えば,大学の授業でAIをテーマに登壇したり,シンポジウムで各企業の第一線の技術者・先輩社員が自身の経験を語ったり,様々な機会を通じて,私どもの業界がどのようなものか,将来に対してどのように考えているか等,業界の魅力を伝える活動を長年続けてまいりました。昨年度,とある大学で優秀な企業の技術者が授業を実施したところ,受講された学生さんからのフィードバックとして,日本企業はやっぱりすごいなと,将来の選択肢として考えたいなどと,大きな反響がありました。我々の業界は,B to Bの製品やサービスを扱うことが多いので,B to C,Consumerと異なって,知る人ぞ知るという傾向もございます。そういった中で,大学に出向いた授業等を通じて仕事の様子やわくわく感などを本音で語る,言わば先輩の背中を見せることによって,学生の皆さんにも共感していただける部分が多いのではないかというふうに考えました。次のページ,お願いいたします。
 私たちは,日進月歩のデジタル技術において,常に学び続ける向上心を持ち続けることが重要ではないかというふうに考えております。そのためには,民間企業の知見を生かしてデジタルに明るい人材がどんどん大学等で教鞭を振るって次世代の人材を鍛えていくということが望ましいと思います。実務家教員の登用というふうに言われて久しいですが,まだまだ,教育現場で十分な数の民間人材が活躍しているとは思っておりません。様々な制約があることは承知しておりますが,とにもかくにもデジタルというところは待ったなしの,進化のスピードが激しいということもあって,企業にいるような民間人材,ぜひ活用を進めていただきたいというふうに願っています。
 また,人材交流に取り組むというのも非常に有力なアイデアです。先ほど文科省さんのお話にもありましたが,先日,弊社にも,マッチングを通じて弊社の取組テーマに応募をしてくださった,大変優秀なAI博士課程の学生さんが8週間のインターンシップに参加をしてくれました。私自身も最終成果報告会に同席しましたが,さすがだなと,目のつけどころが違うなというふうに感じました。これは,私ども企業,学生さんにとっても,やりたいテーマ,やってほしかったテーマで,本当にウィン・ウィンということで,こうやって教育現場と産業がつながっていくということが大事だなと思いました。今日,多々,お話が出ておりますように,教職員の皆さんも含めて,デジタルの現場,企業の現場というのを体験していただくということが,今後,望ましいのかなというふうに考えています。
 デジタル教育の機会というのは今日もお話に出ていたように様々だと思いますが,私どもJEITAが主催する展示会CEATECでは,データサイエンスを学ぶ学生の皆様に未来の絵姿を理解していただけるようなコンテンツをオンラインで提供していきたいと思っております。次のページ,よろしくお願いします。
 今年のCEATECですが,3年ぶりに幕張メッセでリアル開催を実施いたします。オンラインとハイブリッド形式で10月に実施を予定しております。共創,共に未来を創るというコンセプトの下で,今回も多くの出展を見込んでおります。次のページ,お願いします。
 最後のページになりますが,今回のCEATECでは,学生向けに幾つかの企画を準備しています。一つは,先ほど経産省さんからも御紹介のありました半導体に関するものであり,半導体の未来が分かる展示ブース,また,半導体人材に関するカンファレンスを準備して,ふだん半導体になじみのない学生さんであっても理解しやすい内容にしていきたいと思います。半導体の企画については,高専機構さんの御協力の下,既に全国の高専さんに御案内をさせていただいております。とにかく一目見ていただきたい,そして知っていだたきたいというところが大事だと思います。もう一つは,オンライン上の交流です。本協議会のテーマの一つでもあります地方における人材育成ともリンクしますが,今回のCEATECでは遠方の学生さんともオンラインでつながる機会というのを設けて,どのようにして様々な社会課題を解決するか,それぞれの思いをぶつけて,新しいつながりを生む,バリューをつくっていく,そんな場を提供したいというふうに考えております。ぜひ,御期待いただきたいと思います。
 最後になりますが,私,企業の中で人事部門を担当しておりますが,今日,お話を伺っておりまして,産学官の協力で待ったなしのデジタル人材の育成に努める,ここは非常にすばらしい方向性だと思います。一方で,今日,西村大臣のお話にもありましたように,世界にそういった人材を提供していく,ここはいいと思うのですが,もう一つは,日本経済を担ってもらう,こっちがちょっと課題かなと。要は,こういった教育を受けた人のモビリティーは物すごく高い,また,マーケットのレートが物すごく高いので,本当に日本に残って,日本の会社の一員,あるいは組織の一員となって,日本の経済を支える人材になってもらえるか。ここについては,こういった人材が本当に日本の組織・企業を選んでもらえるというプラットフォームを産と官でつくっていかないといけないなと。これは人事としての課題だと感じました。
 以上でございます。ありがとうございました。
 
【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 本来であれば,ここから自由討議の予定でしたけれども,かなり時間が押しておりますので,これまでの皆様の発表に関して,ぜひ初回に聞いておきたいという御質問,あるいは,ここだけは言い足りなかったのでもう一言言いたいという方があれば,挙手をお願いいたします。
 
【田中委員】  日本私立大学連合会の会長で,早稲田の田中でございますが,私立大学でも,また早稲田大学でもリカレント教育としてデジタル人材に対するIT教育ですとかデータ科学教育を文系の社員の方に提供するということは考えています。オンデマンドのプログラムをつくるという大学は増えておりますし,早稲田もそれをやっておりますが,恐らく5年から10年でそこはニーズがなくなるようにならなければならない。先ほど富田様のお話にもありましたけれども,今,企業にいる文系の方たちがデータ科学に入門して,学んでいく。それが十分に行き渡って普及し切れれば,10年後には新たに大学から入っていく者たちは両方学んでいるということになるので,文系でも理系のデジタル科学が分かる者,理系の方でも人間の行動というものを理解するということになってくれば,そのリカレント教育も要らなくなるのです。リカレント教育は未来永劫続くのではないと思っていますが,現在は大学のほうからかなり体系的に,特にオンラインを利用してオンデマンドで提供すれば,企業にいる方たちはかなり学ぶ時間が自由になりますので,オンデマンド型のリカレント教育そういうことが必要であると存じております。
 以上でございます。
 
【池田高等教育局長】  西尾委員,お願いします。
 
【西尾委員】  本日の議論を聞かせていただきました中で,一つ気が付いた点について発言させていただきます。それは,「by IT」,つまりITを使って何かを行う人材と,「of IT」,つまり,ITそのものに関してきっちりと中核的な知見やスキルを有する人材とを区別して考える必要があるということです。そこで,そもそも情報の学理は確立されているのかということが問題となりますが,御存知のように大学入学共通テストの科目に「情報I」を導入することが決定しております。大学で「情報」に関する教育を行うための学理がきっちりと確立をされてないような状況で,入試科目として採用されることはあり得ません。「情報」の学理は確立されています。ここで,私が強く申し上げたいことは,学部の段階で「by IT」に主眼を置いた教育を受けた学生の人生やキャリアを考えた際に,情報の学理のバックボーンを持たない根なし草のような人材になってしまう恐れがあるということです。もちろん,大学院レベルにおいては,様々な分野と交差する,いわゆるインターディシプリナリーな研究を推し進めることには賛成いたします。しかしながら,国際競争力の観点では,現在,日本で特に不足しているのは,「of IT」の人材であり,この層を真に強化する必要があると考えます。このような人材が不足している状況下では,例えば,産業界においてテスラのようなITが主導して動くような車の開発など,新たな産業を興すことのできる人材は出てきません。以上のことから,私の先程の発言では,「of IT」の人材を今後,いかにして学部レベルあるいは高専レベルで育成していくかということが喫緊の課題であるということを強調させていただきました。
 以上です。
 
【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 そろそろお時間でございますので,最後に,事務局を務めます私と経済産業省の野原商務情報政策局長からも一言ずつ申し上げて,まとめとしたいと思います。
 まず,私から少し申し上げますと,いろいろな御意見をいただきまして,ありがとうございました。おおむね,デジタル人材の育成が急務で非常に大事だということや,そのために産学官連携が非常にキーとなるというような点は,皆様,共通認識をされていたように思いますが,最後に西尾委員がまとめられましたように,by ITとof IT,ここは少し分けて考える必要があると思っております。
 また,大学と高専への期待というのは産業界の皆様方からも意見をかなり寄せられましたが,一方で教員の確保も必要でございます。これは数だけでなくて質をどう確保していくかということと,それから,KPIのお話も出ましたし,国の私どもはマクロでどうしても考えがちですけれども,地域で学んだデジタル人材が都市部に流出してしまうというような御意見もありました。その辺の都市と地域のことも考える必要があるかと思います。さらに,リカレントが重要と考えます。特に自発的に学び続ける人が必要であって,これを育てていく。これは恐らく,デジタル人材ということに限らず,教育全体に係る,初等中等教育から大学教育まで,さらにその後のキャリアパスの確保ということまで係る,非常に大きい,難しい問題があると思っております。
 文部科学省としては,今日,最初のほうで御説明した,施策として概算要求にも盛り込んでおりますので,今日いただいた御意見も,さらに検討を深めて,より充実したものでしっかりと予算を確保できるように頑張っていきたいと思いますので,今後,さらに多様な観点から御意見をこの場でいただきつつ,引き続き,日本の未来を切り開く人材を育成していきたいと考えておりますので,よろしくお願いいたします。
 
【野原商務情報政策局長】  ありがとうございます。経済産業省の野原でございます。本日は,経済界,大学,高専,知事会の皆様から,貴重な御意見をたくさんいただきました。初回の会合で一巡プラスちょっとということだったのですけれども,有意義な議論ができたと思います。冒頭,西村大臣から申し上げたとおり,経済産業省としては,実践的なデジタル人材を育成していくために,全国規模での育成と産業・地域単位での育成の2方面からアプローチしていくということで考えております。いずれにおいても,産学官の連携は大変重要で,不可欠なものだと思っております。本日の御意見,いろいろ御指摘がありました。西尾先生から設計の話がありましたけれども,半導体で特に日本で人材が薄いのは設計のところでございまして,まさにおっしゃっているとおりだなというふうに,日々,実感しているところでございます。そのほかにも,23区の定員の話もございました。これも非常に重要な御指摘でありまして,今回の取組に即効性を持たせようとすると,この問題も論点として議論をする必要があるのかなというふうに思います。
 いずれにいたしましても,大学・高専における実践教育の進展に向けて,文科省さんと連携を,これまでもしておりますが,さらにそれを深めて,両省の取組を連動させながら,具体的な取組を進めてまいりたいと思います。また,こうした議論を,予算,税制等のプロセスにも反映させていきたいと考えております。大学・高専における実践的な情報教育の強化に向けて,こうした多様な関係者の皆様が一堂に会して議論することは非常に有意義だと考えております。こうした議論を通じまして,各参加者の連携がさらに深まっていくことを期待しております。
 本日は,御多忙のところを御参加いただきまして,ありがとうございました。次回以降も,どうぞよろしくお願い申し上げます。
 
【池田高等教育局長】  ありがとうございました。
 両省で連携をしながら進めていきたいと思いますので,引き続き,よろしくお願いいたします。
 次回は,年内の開催を予定しております。具体的な日程は,後日,調整させていただきたいと思います。若干,時間を超過いたしましたけれども,以上で第1回デジタル人材育成推進協議会を終了いたします。どうもありがとうございました。(拍手)
 
―― 了 ――

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