大学院段階の学生支援のための新たな制度に関する検討会議(第1回)議事録

1.日時

令和4年9月13日(火曜日)10時00分~12時00分

2.議事録

【藤吉課長】  それでは,定刻少し前ですけど,皆様方お集まりですので,ただいまより大学院段階の学生支援の新たな制度に関する検討会議を開催したいと思います。本日は皆様方,大変御多忙の中,御出席賜りまして誠にありがとうございます。
 初めに,本日の配付資料の確認をさせていただきます。本日の配付資料は,議事次第のとおり,7点ございます。また,参考資料2点,合わせまして44ページとなっております。不足等ございましたら事務局に申し出ていただきたいと思います。皆様方よろしいでしょうか。
 それでは次に,本会議の委員の皆様方を御紹介させていただきます。資料1の別紙に委員の名簿を記載しておりますので,御覧ください。先生方を名簿の順に御紹介させていただきます。
 まず,赤井伸郎委員でございます。
【赤井委員】  よろしくお願いします。
【藤吉課長】  よろしくお願いいたします。
 続きまして,荒張健委員でございます。
【荒張委員】  荒張でございます。よろしくお願いします。
【藤吉課長】  よろしくお願いします。
 続きまして,川端和重委員です。
【川端委員】  川端です。今日ウェブで失礼します。よろしくお願いいたします。
【藤吉課長】  よろしくお願いいたします。
 続きまして,小林雅之委員です。小林先生には本会議の座長をあらかじめお願いしております。
【小林座長】  小林でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【藤吉課長】  よろしくお願いいたします。
 続きまして,阪本崇委員でございます。
【阪本委員】  阪本です。よろしくお願いいたします。本日オンラインで失礼いたします。
【藤吉課長】  よろしくお願いいたします。
 そして,濱中義隆委員でございます。
【濱中委員】  濱中でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【藤吉課長】  よろしくお願いいたします。
 また,オブザーバーといたしまして日本学生支援機構,JASSOから陪席をしておりますので,御紹介いたします。萬谷宏之理事でございます。
【萬谷理事】  萬谷です。よろしくお願いいたします。
【藤吉課長】  皆様方,今日はどうぞよろしくお願いいたします。
 以後の議事の進行は小林座長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【小林座長】  ありがとうございます。皆さん,改めておはようございます。小林でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず,早速ですが,本会議の公開についてお諮りしたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。
【今村企画官】  学生・留学生課企画官の今村でございます。よろしくお願いいたします。本会議の公開の取扱いにつきまして,事務局として一案を作成いたしましたので,資料2を御覧ください。
 本会議の公開・非公開につきましては,非公開とすることが適当であると認める案件を除きまして,原則公開としてはどうかと考えております。2ポツ,3ポツ,会議資料,議事録につきましても同様に,原則公開,例外的に非公開としてはどうかと考えております。
 以上でございます。
【小林座長】  よろしいですか。それでは,原案通り,了承したいと思います。
 それでは,初めに池田高等教育局長より御挨拶をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【池田局長】  おはようございます。高等教育局長の池田でございます。本日は,お忙しい中,委員の皆様には御出席いただきましてありがとうございます。また,この検討会議の委員も御快諾いただきまして,重ねて御礼を申し上げます。
 高等教育における学びの支援につきましては,これまで給付型奨学金と授業料等減免をセットで支援する高等教育の修学支援新制度の創設,あるいは貸与型奨学金の柔軟な返還方法の導入などに取り組んでまいりました。
 一方,今年5月に取りまとめられました教育未来創造会議の第一次提言におきましては,大学院段階における授業料不徴収,卒業後納付の導入などにより,ライフイベントに応じて柔軟に返還できる仕組みの創設などが提言されておりまして,その後,6月に閣議決定された骨太の方針でも,同様の内容が盛り込まれております。
 この検討会議におかれましては,こうした動きを踏まえて,特に3点,1点目は授業料を在学中に不徴収とするための方策,2点目は制度利用開始時における所得要件や所得の算出方法などを含めた対象の在り方,3点目は対象となる卒業後の所得水準など出世払いの具体的方法,この3点を中心に御議論をお願いいたしたいと考えております。
 この検討会議には,平成27年度から所得連動返還型奨学金制度の有識者会議のときも委員をお引き受けいただいた4人の先生方に加えまして,今回,大学院の状況や奨学金事業の実務などにもお詳しい先生方お二人にも入っていただきまして,これから年内をめどに取りまとめをいただきたいと思います。
 先生方からの忌憚ない御意見,活発な御議論をお願い申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。
【小林座長】  ありがとうございます。
 それでは,私からも一言御挨拶申し上げたいと思います。今,局長から御挨拶,御説明があったとおりですけれど,この会議では,教育未来創造会議の提言などを踏まえまして,在学中は授業料を徴収せず,卒業(修了)後に所得を連動した納付を可能にする新たな制度の導入に向けて,具体的な課題について検討を深めるということが期待されております。
 授業料を在学中に不徴収するための方策,あるいは制度の対象範囲,出世払いの在り方について,これまでの貸与型奨学金の実施状況や諸外国における大学の授業料の支援の在り方等,それらを踏まえつつ,今年度末までの短期間で早急に検討していくということが求められております。
 先ほども局長からございましたが,平成27年から28年にかけて,所得連動型奨学金制度有識者会議において,この点についてはかなり詳細に検討いたしましたが,そういった経験も踏まえまして,どのような観点からの議論を行うかということ,委員に期待するかなど,お考えを御紹介していただければというふうに考えております。どうぞよろしくお願いします。
 それでは,まず検討を進めるに当たって,政府提言等について,大学院段階の学生支援に関わる記載及び支援の現状等について,事務局から御説明をお願いいたします。
【今村企画官】  それでは,お配りの資料の3から6につきまして御説明いたします。この後,御議論いただく前提となります現状の政府の方針ですとか,関係のデータ等についてお伝えいたします。
 まず,資料3でございます。こちらが,先ほども御挨拶で言及ございました教育未来創造会議の提言です。こちらの会議は,総理が議長となって関係閣僚や有識者がメンバー,構成員となっている会議体です。本年5月に提言が出ました。特にポイントは,6ページを御覧ください。6ページの破線,四角囲みでございます。下線を引いているところですが,在学中は授業料を徴収せず,卒業(修了)後の所得に連動して返還・納付を可能とする新たな制度を,高等教育の修学支援新制度の対象とはなっていない大学院段階において導入するということが提言されました。
 こちらの提言を受けて,その約1か月後,政府の閣議決定である骨太方針でも,同様の記載が盛り込まれたところです。次の7ページを御覧ください。7ページで線を引いておりますところ,ほぼ教育未来の提言と同様なのですが,つまり在学中は授業料を徴収せず卒業後の所得に応じて納付を可能とする新たな制度,これを,少し飛んでいただいて最後の結びのところですが,まずは大学院段階において導入するということになっております。ここでも修学支援新制度の対象とはなっていない大学院段階において導入すると。
 ただ,教育未来と違いますのは,中ほどに様々な留意点,今後検討しなければいけない視点というのが入っております。つまり,教育費を親・子供本人・国がどのように負担すべきかという論点や,この新たな制度が国民的に理解・受け入れられるのかどうかといったことを十分に考慮した上で,今後,本格的に導入することを検討していきましょうと。その本格導入を検討するのですが,まずは大学院段階において導入すると,このような文の構成となっております。
 続きまして,資料の4でございます。このように,親なのか,子供本人なのか,はたまた公的な支援なのかといったことを踏まえながら検討していくということになりました。このような骨太の記載が入った背景といたしまして,実は文科省と国研が年々,これまで継続的にアンケート調査,高3生の保護者のアンケート調査をやっております。そこでは,大学の学費は親が出すのは当然だというように答えている保護者が8割に達している状況でして,18歳の子供を持つ親にとって,大学の学費は,やっぱり子供の分は出すべきだというふうに多くの日本の親御さんたちは考えていらっしゃると。そのような中で,出世払い的な仕組みを導入するに当たっては,まずは大学院段階から入れてはどうかと,今政府においては考えている次第でございます。
 その大学院につきまして,現状どうなっているのかというのをまとめたのが資料4でございます。主に人数,数の面で,ここではまとめておりますが,国際的に修士号及び博士号取得者の人口当たりで比較をいたしますと,日本は主要先進国と比べて少ない状況でございます。
 このグラフでは2008年と19年を比較しておりますが,日本は横ばい,または減少しているのに対して,ほかの多くの国々では増加しているという状況でございます。
 次のページは,日本の現状の学生数の推移で,過去10年間を見ますと,博士課程では横ばい,修士や専門職課程では減少傾向にあるというのが,この10年の状況です。
 その次のページでございます。学部や大学院生に対して公的な経済的支援はどのようになっているのかというのを,比較のために一覧の表にいたしました。左に学部,真ん中が大学院,修士,右側が博士課程で,上の段が貸与型の支援,下の段が授業料支援などの給付型の支援を並べております。特に大学院段階について赤い枠で囲んでおりますが,修士と博士を比べますと,特に修士のほうが若干手薄であるという状況が見てとれます。博士課程につきましては,若手研究者の支援という視点から,近年,給付型の支援を充実しているところでございます。以上が資料の4でございます。
 続きまして,資料の5を御覧ください。このたび政府としては,大学院段階に新たな支援を導入していこうということにいたしましたが,その大学院に進学する学部の4年生について,どのような意識にあるのか,経済的な状況が進学に影響をもたらしているのかというのを確認いたしたく,本日のこの会議に先立ちまして,短期間かつ極めて限定的な対象ではありますが,学部4年生にアンケート調査を行いました。
 調査の対象は,3ポツにありますように,15の大学に協力を得まして,3,000名を対象にアンケートをし,有効回答数は約半数でございました。このような限られた条件で行ったものでございますので,あくまでも参考値,全国的な学部4年生の傾向を表すものではないということについては,留意が必要かと思います。
 内容について,次のページ,12ページを御覧ください。このアンケート調査の結果の概要でございます。
 左側の上の段にあるように,回答した学生の学問分野は,グラフのとおり,理工・農系が半数以上という状況です。
 また,その下,御覧ください。修学支援新制度や貸与型奨学金など,何らかの奨学金を利用している者は32.5%おりました。
 この学問分野ごと,それから奨学金を利用しているかどうかについては,右側を御覧ください。大学院への進学希望の有無については,学問分野によっては,右上のとおり,様々差がございました。一方,奨学金を利用しているかどうかで,大学院への進学の希望についての差はないと。いずれも6割程度が進学を希望するという状況でございます。
 次のページを御覧ください。この後,大学院への進学を希望しない者とする者とに分けて,いろいろと聞いております。
 13ページの図の2-2-1でございます。右上の図ですが,大学院へ進学希望しない理由というのを聞きました。それで,この希望しない理由を,最も当てはまる理由と2番目の理由の2つ回答してもらっています。多くの割合を占める回答は,水色のマル1,早く社会に出て仕事の経験を積みたいから,オレンジのマル2,大学院で学修・研究を深めたいという気持ちがあまりないからといったものが主ではありましたが,少なからず経済的な理由,例えば黄色の4,経済的に家庭に頼ることが困難,紫のマル5,大学院に行く場合は奨学金を借りることになるが借金は避けたいといった経済的な理由を挙げる学生もおりました。1番目の理由,2番目の理由,いずれか,もしくは両方,何らかの形で経済的な理由を挙げている学生は,赤で囲んだところにありますように,38.1%が経済的な理由を挙げております。
 この大学院進学は希望しない学生らに,下の段でございます,在学中は授業料を納めなくてよいが,修了後の収入において無理なく授業料相当額を月々返還する,こういった新たな仕組みが,もしあなたの進路選択のときにあった場合,大学院に行った可能性がありますかと聞いたところ,27%が進学したかもしれないと答えております。
 次のページを御覧ください。同様の質問を文系,理系の学問分野別に聞いたところ,ここでは学問分野によって大きな違いは見てとれませんでした。
 しかしながら,その次の15ページです。奨学金を利用している者,していない者で比べてみたところ,右側の赤囲みを御覧ください。奨学金を利用している学生は,大学院へ進学を希望しない理由として経済的な理由を挙げた者が約6割,57%で,全体の傾向より多く,そのような理由を挙げています。
 下の段,御覧ください。新たな支援の枠組があったら利用して大学院に行った可能性ありますかという質問に対しては,4割が行ったかもしれないと答えていて,全体の27%を上回る回答でございました。
 次の16ページを御覧ください。今度は,大学院への進学を希望する者について,いろいろ聞いております。まず,右上の円グラフですが,ここでは,先ほどと同様に進学を希望する者に対しても,新たな在学中は不徴収,修了後に収入に応じて月々返還と,こういった仕組みがあった場合,利用しますかというのを聞いたところ,利用すると答えたのは水色の約4割,6割は使わないというふうに答えております。
 使わない理由として,下の段にあるとおり,オレンジの「保護者に授業料を出してもらえるから」,灰色の「新たな制度であっても,あとで払うことには変わりないから」,この2つが使わない主な理由となっております。
 これらにつきまして,17ページでございます。同様に,学問分野ごとに聞いたところ,ここでも顕著な違いはございませんでしたが,強いて挙げますと,右上,図の3-5でございます。理工・農系よりも人文・社会系のほうが,「新たな制度を利用する」と答えた割合は高いという状況です。
 続いて18ページでございます。学部段階で奨学金を利用していたか,いないかで,回答の傾向は異なっておりまして,右上を御覧ください。新たな制度の利用希望は,奨学金を利用している者は6割に対して,全体では4割ということで,利用したいという者が多いと。
 ただ,4割は今,奨学金を利用していても,新たな制度は利用しないと答えていまして,その理由につきまして,下の段を御覧ください。先ほど全体の傾向としては,保護者に出してもらえるからというのが多いと御説明いたしましたが,奨学金利用者は,使わない理由としては,水色でございます。今の進学希望先で授業料が減免となったり,給付型の奨学金が得られたりする見込みがあるから,新たな仕組みは使わないと思うというふうに答えておりまして,このことから既存の支援制度と新たな仕組みの調和をどう図るかという視点が重要かと考えております。
 最後に,19ページでございます。新たな仕組みは,卒業後の所得に応じて返還をしていただくというものでございますので,この返還が始まる年収水準はいくらが適当かということを聞いております。図,見ていただきますと,いろいろな属性ごとに分けて分析してみましたが,そんなに大きな違いはないかと思います。
 共通して言えるのは,年収300万以上と答えた割合は少なく,それ以外の選択肢は満遍なく選ばれていると思います。
 1点留意すべきと思いましたのが,紫の選択肢,所得の一定割合。これは米印で示すように,所得の一定割合が返還額となるのであれば,返還が必要となる年収水準はいずれであってもよいという選択肢も設けましたが,この選択肢を選ぶ学生も一定程度,存在したという状況でございます。
 以上がアンケート調査でございました。
 2つ飛んでいただきまして,22ページから資料の6,諸外国との比較の資料を作成いたしました。今回,我々が新たに検討する,在学中は不徴収,修了後に返還をいただくという仕組みについて,オーストラリア,英国で先行事例がございましたので,大いに参考にすべきかと考えております。22ページに,3か国を一覧表にいたしました。
 左側,日本では,類似の仕組みとして,無利子奨学金の返還を所得連動の方式で返還していくというものが既にございます。これは平成29年度から導入されており,家庭からの給付が減少している状況や,若年者の雇用環境が悪化しているということを踏まえて,より緩やかに,自動的に本人の経済状況に応じた返還額を決定する仕組みを導入したところです。
 一方で,諸外国,オーストラリア,英国では,これら両国はそもそも無償であったというところが,導入の背景として大きく異なっております。オーストラリアは1989年まで,イギリスは1998年までは,大学は無償でございました。そこに,授業料を導入するに当たって,それまで無償であった学生が払い始めるというのに,卒業後,所得に応じて払ってもらえばということで,より導入をしやすく受け入れやすい仕組みとして始まったという点が,背景として大きく異なっております。
 また,支援の形態でございますが,下に絵でイメージ図を描いております。
 左側の日本の今の所得連動返還方式は,JASSOから学生に現金で奨学金が振り込まれて,それを受け取った学生が,授業料であったり,その他学費や生活費に充てるというところに対して,右側,オーストラリアやイギリスの例ですと,学生は在学中は授業料を支払わず,授業料相当額の補助金が大学に投入されまして,卒業後,所得に応じて返還していくというのは,日本も,英,豪も一緒でございます。
 ただ,徴収方法が若干異なっており,我が国では口座振替でございますが,英,豪では,税当局が源泉徴収をしているというのが大きく異なっております。
 また,対象でございますが,上の表の真ん中ほどに対象という記載しておりますが,一番異なっておりますのは,授業料が無償だったものを有償としたという経緯からも,英,豪では,全員が利用可能で,希望者だけが先に払うことが可能というふうになっております。
 それから,返還の額や返還が始まる年収という欄を下から2番目に設けました。各国ごとに税法の仕組みが大きく異なっておりますので,これは厳密に公平に比較することは極めて難しいかと思います。
 我が国では年収ではなく,様々な控除が引かれた後の課税所得の9%ですので,年収146万円,単身者の場合は課税所得が26万円となり,それに9%を掛けたところから累進的に納めてもらうと。それを下回る場合は一律2,000円という状況です。一方で,オーストラリアは,課税所得のほか,様々なものを加えた額に,その額が460万円を超えたときに,それぞれの階層に応じて1~10%の納付率がかかって返還をしていくと。イギリスの場合は,年収が440万円を超えた場合,その超えた分の9%ですので,例えば500万円だと440万を差っ引いた60万円に9%が掛けられて,それを返還していくと。しかも,返還開始から30年経過後は,もうそれ以上徴収しないというような仕組みとなっているようです。
 こういった返還の仕方がいろいろ異なっていることもありまして,返還されない債権の割合,最終的に返ってこない割合というものも比較してみました。
 これも比較は難しいのですが,我が国の場合,3か月以上,延滞している債権の割合というのは3%です。もちろん,この後督促を行い,これをずっと下回る額が最終的に返ってこないというものでございます。
 オーストラリアの場合は,政府が試算をしておりまして,貸付額の15%が将来戻ってこないだろうというふうに試算されています。
 イギリスでは,同様に,30~45%が,もう返ってこないので,予算措置として,損失を穴埋めする分として予算計上されているということで,財源に対して,財政への影響というのも大きく異なっているかと思います。
 この次のページ以降は,今申し上げたことの詳細ですので,一つ一つ御説明は割愛いたしますが,1点,ぜひ皆様にお伝えしたいのが,23ページのオーストラリアにも,25ページのイギリスにも書いておるのですが,それぞれの制度の変更検討時には,学位の取得に対して課税することも議論されました。しかしながら,現時点で導入には至っていないということでございます。つまり,貸した額以上に多くのものを稼げるようになった場合には納めてもらうという考え方も,両国においても議論されたそうですが,公平性の観点,それから,他の国を見ても,そのような仕組みは導入されていないということもあって,現状,実現には至っていないというふうに聞いております。
 説明,以上でございます。
【小林座長】  ありがとうございました。詳細な調査の紹介と,それから各国の所得連動型についての御説明がありました。この事務局からの説明について,御質問があればお願いしたいと思います。また,御意見等については後ほど,検討課題ということでお示ししたいと思いますので,御質問だけ,よろしくお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。特に確認しておきたいこととか,ございませんでしょうか。どうぞ。
【荒張委員】  すみません,1つ聞かせてください。22ページのオーストラリアと英国の返還されない債権の割合が,かなり高いなというのが率直な感想なんですけれども,一方で,これは一定の金額がいくと源泉徴収をしているという理解なので,普通に就職の機会を得ていれば,ほぼ回収できるんじゃないのかなと思う一方で,このパーセントが出ているということは,そこまで就職できていない,それだけの報酬を得ることができていないということと理解してよろしいんでしょうか。
【今村企画官】  背景について,オーストラリアには職員を出張させまして,聞き取りも行いました。背景として,オーストラリアの場合は,この460万,ここでは日本円で現時点でのレートで記載しておりますが,460万円を超えないケースが多いということと,いつまでも返還が始まらないということと,海外に移った場合,所得を捕捉し切れないと。
【荒張委員】  ああ,そういう問題があるんですか。
【今村企画官】  はい。オーストラリア人が,英語圏なので,世界中で活躍されるんだと思います。そういった方の所得を捕捉し切れずに,税当局が徴収するというのに限界があるということでございました。
 イギリスの場合は,同様に440万円を超えない限りは,そもそも返還が始まりませんし,始まったとしても,閾値を差っ引いた額に9%がかかりますので,返還額自体も多くはございません。また,あまり高齢の人から取らないと30年経過,返還が始まってから30年したら,もうそこで終わりということなので,返ってこない額が多いと見積もられています。
【荒張委員】  そういうことなんですね。そうすると,奨学金を返済できないレベルの賃金しか得られていない方が多いという問題と,所得状況を把握できないという問題では,全然,議論が変わるのかなと思いました。すみません,ちょっと最初の感想です。
【今村企画官】  ちなみに参考資料のほうで,大学院卒と学部卒,高卒の平均賃金のデータを記載いたしました。ここでは高学歴ほど収入は高く,生涯で見ますと,数千万の規模で差が生じてくると思います。38ページに,その資料は載せております。
【荒張委員】  これは日本ですか。
【今村企画官】  はい。我が国のデータです。
【小林座長】  私のほうから補足いたしますと,これオーストラリアの場合は,物価スライド制を取っていますので,どんどん最低額が上がってしまっているんですね。現在460万で,これ1回下げているのですよ,高くなり過ぎてしまっているので。それから授業料相当額が,最初はそれほど高くなかったのですけど,現在は相当高くなっていますので,そこでも,なかなか返還ができない人が現れているという問題もあります。
 それからイギリスの場合には,ここに,先ほど説明はなかったんですけれど,利子補給という問題がありまして,利子の分については全て国庫負担で補助している。この額が相当な大きなものになっています。
 ただ,非常にややこしいんですけど,所得に応じて利子を取っているという制度もあります。利子補給の公費負担が大き過ぎるものですから,所得に応じて利息を取るという仕組みも後から導入されているのですけれど,まだ利子率はそれほど大きくない。3%まで取るということになっています。その結果として,30~45%という非常に高いデフォルトになることが予想されているというのが,現在のイギリスの状況だと思います。
【荒張委員】  分かりました。ありがとうございます。
【小林座長】  ほかに御質問いかがでしょうか。よろしいでしょうか。また後ほどの検討の中……。
 すみません。失礼いたしました。川端委員,お願いいたします。
【川端委員】  ありがとうございます。川端です。全体像がそんなに分かっていなくて,ちょっとだけ今の話にも関係してお聞きしたいのは,オーストラリアとイギリスの話を出されているのは基本,ベースが無償から始まって,それを結局,有償化していくという部分で,こういうような制度がつくられていったという。一方,この話題ちょいと出たときに,アメリカのバイデン政権から始まった,向こうはもう有償が前提で,それを救うんだみたいな感じで無償化の話が出ていて。
 どこかで,後ででもどこでもいいんですけれども,もともと有償なものを無償化に向かっていったときにこういう制度をつくられているところがあれば,教えていただければ。いや,もし御存じだったら今でも結構ですし,また後でも結構ですけれども,そこでの制度の形の面白い,面白いというか,モデルになりそうなところがあれば教えていただければというのが意見です。
【小林座長】  ありがとうございました。事務局いかがですか。
【今村企画官】  今回はイギリスとオーストラリアが在学中不徴収,卒業後,所得に連動させるというモデルに最も近いと思って取り上げました。このほか,これまでもいろいろな諸外国の制度は調べておりますが,今の御指摘にかなうとすれば,アメリカにおいても所得連動型の返還方式というのがあると聞いております。
【川端委員】  多分,ベースが無償から始まっていなくて有償から始まった場合には,つくり方がかなり違っているんじゃないかなと思ったので,ちょっとお聞きしました。また,どこかで教えていただければと思います。ありがとうございました。
【小林座長】  ありがとうございました。少し補足いたしますと,アメリカの場合には給付型奨学金が非常に大きな割合を占めておりますが,それ以外にも連邦政府のローンというのも非常に大きな額になって,社会問題になっているわけで,バイデン政権の今度の政策はそれに対応するものになるわけです。非常に複雑な制度でありまして,所得連動型というものについても,現在でも5種類ぐらいの返還方式がある。時の政権によってどんどん新しいプランが付け加えられていくというやり方を取っていますので。それで今回は,参考にするには少し議論が複雑になり過ぎるということもありますので,アメリカの例については特に出さなかったというようなことがあります。もし必要でしたら,またアメリカについても若干の紹介はできればとは思っております。それでよろしいですか。
 川端委員,ありがとうございました。今の,よろしいでしょうか。
 それでは,次に,検討課題について事務局から御説明,よろしくお願いします。
【今村企画官】  資料の7を御覧ください。今後,皆様に御議論いただくに当たって,このような検討課題を御議論してはいかがでしょうかという御提案でございます。大きく3点及び。
【赤井委員】  何ページですか。
【今村企画官】  26ページです。大きく3点及び各論として課題の4に何点かまとめております。
 最初に,検討課題の1として,在学中に不徴収とするためにはどのようなやり方があるべきかというのが1つあると思っております。改めてこの表を再掲しておりますが,日本は学生本人に振り込んでいるところ,イギリスやオーストラリアでは学生からは在学中は徴収せず,政府が補助金を支出しております。
 代理受領等というふうに書きましたが,似たような仕組みにするために,学生本人の債権債務である奨学金を学生本人に振り込まず,大学に代理受領させることで,右側のピンクのイギリスやオーストラリアとほぼ同じ効果が得られるのではないかということも考えております。
 続いて,検討課題の2でございます。対象学生はどうすべきかという点です。イギリスやオーストラリアでは,成り立ちからしても,全員が使える仕組みとなっておりますが,我が国においては,法律の規定上,経済的に困難な学生に限定をしております。その限定の仕方を現状,修士段階では299万,本人の収入が299万円以下との区切りを設けてはいますが,これを外れる学生も少なからずおりますので,その点どうあるべきかというのが一つ課題としてございます。
 また,対象という意味では,ちょっと資料の構成がうまくいっておらず恐縮なのですが,検討課題の4の(3)にも入れているのですが,骨太方針などでは大学院段階に導入というふうに決まっておりますけれども,対象の課程として,修士課程なのか博士課程なのか,修士には専門職大学院も含むのかといったことも併せて詰めなければならないと考えております。
 戻っていただきまして,検討課題の3番目,出世払い,返し方については,いろいろと考えなければならないと思うのですが,その点について,参考の3で四角囲みにある点を御覧ください。
 今,世間で出世払いという言葉が使われるときに,2つの考え方が混在しているのではないか危惧しております。つまり,(1)にありますように,修了後,一定の年収に達した段階から年収に応じて政府が肩代わりした自身の授業料を納付する。自身の授業料相当額以上の支払いは発生しない。一定の年収に達した段階からというところで出世払いというふうにする見方と,(2)一定の年収に達した段階から年収に応じて,自身の授業料を超えて授業料を納付する。年収に応じて,自分の授業料相当額以上の支払いが発生し得ると。そのような考え方で使われるケースも見られます。
 この点につきまして,先ほど御説明したように,イギリスやオーストラリアでは,Graduate taxという仕組みとして,高収入の人が借りた分以上の支払いをするというアイデアも浮上していましたが,いずれも導入には至っていないという状況です。
 それから,返還の方法につきまして,現行の情報を参考4として,その下の段に書いております。9%が収入ではなく課税所得にかかるというもの。2,000円は,いかに収入が少なかったとしても最低でも2,000円だけは返還してもらうということ。しかし,年収が300万以下の場合,本人が申し出れば,返還が猶予されるという救済措置も併せて設けられております。
 その次のページは,委員の皆様にも一部いらっしゃいます,平成28年に有識者会議を設置して新たな所得連動返還奨学金の議論をした際の審議のまとめ,取りまとめ文書から抜粋しております。ここで2,000円を取る理由としては,契約関係が継続していることを確認し,返還者の意識を継続させるということや返還口座の維持・管理コストも鑑みて,一定の返還額を求めることとしたということです。9%についても,様々な試算を行いまして,この水準が妥当であるということを御議論いただいて,今に至っております。
 続きまして,検討課題の4番目として,いろいろな論点を入れました。奨学金の貸与する額として,いくらぐらいが適切なのか。例えば参考の5は,今の大学院の授業料の水準について,それぞれ平均や国立大学の標準額を示しております。参考の6では,今,修士や博士の学生が無利子の奨学金を利用する場合,このように5万円,8万8,000円のいずれかを選択するといったのが現状となっております。
 それから,(2)以降,奨学金は無利子とすべきか,有利子とすべきかとか,(4),卒業後の返還,納付の支援として,今,業績優秀者は免除するというものがあったり,企業が代理返還するというのをJASSOで受け入れたりというのを今なおやっておるのですが,この取扱いは今後どうしていくべきか。
 それから,納付の期限。年数,本人の年齢を勘案して,イギリスのような仕組みはあるわけですが,それを我が国においても考えるべきかどうか。
 保証の在り方として,親,親戚などの保証人を立てる人的保証なのか,返還が所得連動だと長期化しますので,機関保証を原則とすべきかといった論点もございます。
 学生や社会人等への周知方法についても,併せて検討しなければならないと考えております。
 以上でございます。
【小林座長】  ありがとうございました。検討の課題について4点挙げていただいたわけでありますけれど,今日はこれについては特にどの課題ということではなくて御意見をいただきたいと思っていますが,4のところはかなり詳細な制度上の問題になりますので,3までのところで,この会議の方向性といいますか,そういったものを確認したいと思っております。
 今の事務局からの御説明についても御質問はあろうかと思いますので,それも含めて質問,御意見,いかがでしょうか。赤井委員,どうぞ。
【赤井委員】  すみません。大阪大学,赤井です。よろしくお願いします。前回のにも出させていただいていたので,ある程度,制度は理解しているつもりなんですけれども。
 まず検討課題1のところで質問になりますけど,海外のような形にするには代理受領をすればいいということだったんですが,要するに,今の制度上,それほど無理なく導入できるという理解でよろしいですか。あと,コスト面とかは,どんな感じですか。
【今村企画官】  代理受領とする場合,制度,法令等を手当てしなくとも可能というふうには考えております。そういう意味では,実現可能性は高いと思います。
 コストの面では,大学側の御協力がなければ難しいと思っておりまして,本当に少ない一部の大学では,似たような仕組みを,コロナ禍の臨時的な対応として行ったことがございます。そこでは,奨学金が振り込まれる前に当面の現金が学生が必要だということで,大学が立て替えて学生に渡してあげて,後からJASSOから大学に振り込むということをやりました。なので,できないことはないと思っております。
【赤井委員】  それに関連するんですけど,今回は,これ骨太とかにも書かれていて,要するに,授業料は取らないというような不徴収みたいな言葉が入っているんですけど,授業料分を学生に渡して払っても実質的には取っていないというようなことにも理解はできると思います。実質的に取らないという話ではなく,事実上,払わないというところを重視するというような方針になっているんですね。重視するというか,もう不徴収という言葉の意味は,政府の方針であるという理解ですね。
【今村企画官】  今,赤井先生がおっしゃっているのは,今の奨学金制度を前提にして,授業料に達するほどのお金が学生本人に振り込まれていることをもって授業料不徴収というふうには捉えられないという,そういう御質問ですね。
【赤井委員】  いや,そういうような形で捉えられるなら,授業料不徴収だと。それも実質的にはそうだと言える可能性もありますけど,この政府の方針的には,それは駄目だという前提に基づいて,今ピンクの制度を検討しているという,そういう理解で。
【今村企画官】  はい。文科省はそのように受け止めています。今の仕組みのままでは授業料不徴収とは言えないんじゃないかと。
【赤井委員】  言えないと。実質的に,その分渡して払ってくださいといっても,言えると考える人もいると思いますけど,政府の方針としては,それは言えないというふうに。
【今村企画官】  はい。
【赤井委員】  じゃあ,ピンクの制度を考えていくことになるということですね。
【今村企画官】  はい。
【赤井委員】  はい。分かりました。じゃあ,もう一個だけ,いいですか,簡単に。
【小林座長】  どうぞ。
【赤井委員】  検討課題3のところの(2)は,英国,欧州に関しては,そういうのを検討したけど駄目だったと。2は結局,その分ちょっと多めに払ってもらって,逆に言うと,払い切れない,財政負担みたいな分をカバーしてもらおうみたいな,要するに,学生だけでの保険制度みたいな感じだと思うんですけど,結局,この2は検討して駄目だということは,もうこの2という事例を入れている国は存在しないということですね。
【今村企画官】  我々は,無いことを証明するのは難しいですけど,把握できていません。
【赤井委員】  今のところは,あり得ない。分かりました。あり得る話だとは思いますけど。結局,誰がコストを負担するかということだと思うので。
 以上です。ありがとうございました。
【小林座長】  ありがとうございました。すみません,少し補足しますと,これは,サーチャージという概念で,余分に取るというのは,検討はオーストラリアとか,イギリスでもあったようですけれど,結局それは実現しないと。いろいろ問題があるということらしい。それから,これは少し蛇足ですけれど,先ほどの不徴収というのは,あくまで在学中,不徴収ですので,別に全部徴収しないという意味ではないわけですから,給付ではないということです。それは改めて確認しておきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは,荒張委員,どうぞ。
【荒張委員】  すみません,ちょっと何か基本的な質問で恐縮なんですけれども,今の不徴収にしていくという目的がよく分からなくて。というのは,奨学金を払っているんだけれども,必ずしも大学に授業料を払わずに,別の用途に使ってしまう人もいるので,ちゃんと貸与したお金を大学に払ってもらうということを確保するには,この直接に大学に払うというのは分かりやすいなと思うので,何か私はこれを見たときに,それが目的なのかなというふうに,ぱっと思ってしまったのですけれども,赤井先生の先ほどのお話に,政府が不徴収云々ということを言っているという話は,またちょっと何かニュアンスが違うのかしらというところもあって。その不徴収と言っているところが,どういうことを狙いとしているのか教えていただければと思います。
 あと,このオーストラリアと英国のモデルと日本のモデルを比較したときに,誰にお金を給付するのかという問題と,どう回収するのかということが2つ交ざってしまっていると思いました。回収の部分は,先ほどだと,オーストラリアと英国は源泉徴収で取るという話で,日本は自主的に返済していただくということだと。これは大きな違いなのかなと思っていまして,不徴収と言っているこの議論のポイントは両方になるということでしょうか。そこがよく分からなかったので,教えてください。要するに,論点は給付と回収の2つと思っていいのか,いやいや,その最初のお金の払い方だけの問題を議論しているのか。そこがよく分からなかったんですが。
【小林座長】  意見ですが,よろしいですか。
【今村企画官】  はい。まず,我々が検討しなければいけないと思っていますのは,まさに資料7で大きく3点挙げました,最初の在学中の不徴収という,取らないというやり方はどうするのかということと,あとは返還の方法として,課題の3に挙げておりますように,ここでは返還開始やパーセンテージを参考として載せましたが,徴収の機関。機関というのは実施機関として税当局が行うのか,今のJASSOの口座振替方式かというのも当然含まれると思います,この課題の3のほうに。
 諸外国で行っている仕組みを,そのまま我が国に適用するとなると,税当局の担務というか,法律で与えられているミッションを大きく変えることになると思いますので,税ではないお金の徴収をやるということは,我が国では今,想定されていないです。
 あとは,今,授業料相当分が貸与されていて,学生本人が払っているのと実質的には変わらないという御指摘は,おっしゃるとおりだと思います。実質的には変わらないと思いますが,ただ,今,貸与奨学金を利用している学生に聞いても,新たな仕組みがあったら使いたいというふうにアンケートで今回確認が取れましたし,在学中,払わなくていいんだというのが,心理的なハードルを下げて,より大学院に行ってみようか,今はお金がネックでちょっと控えようかなと思っている大学生に対して,そういうものがインセンティブになるのではないかなとは感じています。
【荒張委員】  なるほど。印象が違ってくるというところは少し狙いにあるということなんですね。
【今村企画官】  はい。
【荒張委員】  そういうことですか。なるほど。
【赤井委員】  授業料払わないといけない人にしか授業料も渡さないわけだから。ポケットに入れられない。
【荒張委員】  ただ,その理解は逆に,そういうストレスがない一方で,借りているという意識も下がっちゃうかもしれないということですよね。そこをどう考えるかというところでしょうかね。
【藤吉課長】  そこなんですよね。まさにそこが結構ポイントで,そこが解消されないと,今までの貸与型とあまり変わらないじゃないかということで。ですので,いかに授業料を在学中,不徴収だということで,心理的な進学のハードルを下げつつ,それが借金にならない感というのを,いかに感じてもらうかということで,いくらぐらいまで収入が得られなければ払わなくて済む,出世払いですと。そういう後者の払い方についても,丁寧な制度設計が必要だと思うんですね。
 ですので,今,出世払いというのは,先ほどアンケートの結果を確認したように,皆さんが思う出世払いって様々だと思いますけれども,せっかく進学しても,借金が頭にあって,ずっと4年間悶々とするのではなくて,ちゃんと皆さんと同じように,所得によらずにスタートラインに立てましたと。思い切り勉強していただいて,卒業した後に,そこからはもう皆さん自分の努力次第ですと。それによって収入が得られたら払い始めてくださいと。
 あるいは機会。経済的に困難な方が進学を断念しないように,そういった進学の機会を皆さんに提供したいということだと思います。
【荒張委員】  なるほど。何かいつも,どうやって返してもらうのかを話題にしていたのですが,今日は違うんですね。むしろ,どうやって修学の機会をもっとチャレンジしていただこうかという話なんですね。そうなると,ここで言っている,多分,政府側の出世払いの意図としては,いや,後で就職したら返してくださいという意味での出世払いというよりも,一定金額いったら払ってくれればいいから,駄目だったら,もう政府が負担しますのでという前提を置いているということなんでしょうか。
【赤井委員】  財務省も,そんな,はいはいとは言っていないと思います。
【藤吉課長】  そこが,まだこれから。
【赤井委員】  バランスです。
【荒張委員】  でも,そういう意図があるという理解でいいですか。
【藤吉課長】  はい。
【荒張委員】  分かりました。
【赤井委員】  政治側には。
【荒張委員】  よく分かりました。大前提が,よく分かっていなかった。
【小林座長】  よろしいですか。少し私のほうから補足しますと,源泉徴収については,これは非常に大きな改革ですので,法令上,文科省だけの話ではないので,なかなか難しいのですが,イギリスもオーストラリアも,なぜこれを採用しているかというと,1つには,回収コストが極端に下がる,源泉徴収で済みますから。もう一つは,所得のある人からは必ず取れるという,そういう意味で,猶予とか,デフォルトが下がるはずだということでやっている。これについて,私もイギリス,オーストラリア両方,当局から聞いてきましたけれど,やはり相当ハードルは高い。政治的に非常に多くの議論をして,何年もかかって実現したと聞いています。
 それから,その貸与について,現行の制度では使い込んでしまうんではないかというお話ですけれど,これは,そのためには,修学支援新制度のほうは,授業料減免と給付型奨学金の二本立てになっているわけです。
 アメリカのペル奨学金という給付型奨学金でも,基本的には高等教育機関に支払われるようになっていますので,そういうところでは少し工夫の余地があるのではないかと思います。
 あと,これは財政の方とか金融の方に言うのは,もう釈迦に説法ですけど,ローンというのは,例えば在学中に4年で払わなければいけないものを10年,20年に分けて払うわけですから,そういう意味では教育費の負担を軽減できるという,そういうものとして捉えられると考えられると思います。ありがとうございました。
 川端委員,お手が挙がっていますか。
【川端委員】  ありがとうございます。そっちに座って皆さんと話したい気分なんですけれども。
 今,少し話題になっていた,結局,制度は制度なんですけど,使う側の,どういう感覚を持たれるのかというところ,そこがやっぱり,これのど真ん中にあるのかな,それの上で,その制度とか,いろんなものが決まっていくかなという。
 私自体,中教審のいろんなところで博士課程の,特に理工系を中心に,ドクターへの奨学金であるとか,いろんな話を今までやってきた経験から言うと,大学院でドクターの話の場合は,お金に困っているのではなくて,博士離れをどうやって食い止めるかという,そういう観点の中の1個にお金の話があって,フェローシップとか,SPRINGとか,新しい事業がいっぱい起こっているという話。
 修士課程に関しては,ちょうどゾーンが中途半端なところにあると感じています。要するに学部生の場合は,親が全部抱えているから,親の収入だとか何とかという話を中心に,親に訴求するようなものというのが制度設計ですが,修士課程になると,これB4の,ちょうどアンケートを取っていただいたように,B4が何を考えるかという。それで,親が授業料は払っているわなという話みたいなんですが,本人たちはそろそろ22も超えて独り立ちなんだよなという部分があって,本人にも訴求しなきゃならない。
 その上で一体,制度として,これは誰に,どのように訴求するのがいいのかという。修士課程,修士に行こうとしている,先ほどのアンケートとかいろんなお話を聞いていると,要するに,収入がないとか,不安とか,何かその辺のぼんやりした,ある割合で。でも,その人たちが将来いくら稼ぐか全然分からないわけですよね。そうじゃなくて,B4の状態において,家庭にお金があまりなくて,修士において授業料を家が払ってはくれそうもない,でもバイトでできないわけはない,育英会を借りようと思えば借りれるという,そういうゾーンの人たちに,この制度はどんなふうに訴求してという意味で,ターゲットをもっとはっきりできないかなというのは,さっきからずっとお聞きしていて。ここのこういうような人たちに対して,これを使ってもらうということ。
 だから,例えば有能だという,優秀な人をというと,今度,優秀なというキーワードが,このセレクションの中には,どうしても入ってこざるを得なくなるし,じゃあ,それは誰がやるという話でしょうし,お金だけではないんだという話になっていくと。
 先ほどちょっとお話に出ましたように,授業料減免とか無償の奨学金だとかという別途そういうものが,大学院になればなるほど,いろんな意味で,見えるところにそれはぶら下がっている。そういうものとこれは,どういう補完関係で,誰をエンカレッジできるか,しようとしているかというようなところが,もう一声,明らかになっていくといいかなと。一遍にはいかないにしても,いろいろ議論させていただいて,はっきりしていくといいかなというふうに思っております。
 ちょっとコメントみたいな話ですが,以上です。
【小林座長】  ありがとうございました。今の点についてはいかがですか。何か事務局から。
【今村企画官】  今の川端先生の御指摘は,おっしゃるとおりで,対象やどの層を特に応援したいんだというメッセージはにじみ出るようにしたいなと思いました。一応,我々として,議論いただく材料として,もう一点の視点,御用意しておりますのが,参考資料で社会人学生の話も入れております。社会人学生については,通しのページ数,すみません,40ページ以降,社会人学生の話を何枚か載せていまして,近年,博士課程は伸びているんですが,ほとんどが保健分野ですということ。それから,特に国際比較を41ページで載せていますが,ここで載せているデータは,社会人学生の定義が難しいので,このOECDの調査では30歳以上の入学者ということで見ています。日本は修士では極めて割合は低く,博士課程はOECD平均並みという状況です。
 その次,42ページ以降,これ様々な調査で,リカレント教育がなかなか進んでいない,その背景をアンケート等で聞いていまして,経済的な理由や時間のゆとりがないといったことが,いろいろなアンケートから見てとれるというのを2つ掲載している次第です。
 ですので,今の学生支援機構の奨学金は,社会人も利用できなくはないのですが,収入が299万以下というふうに設定されているので,働きながら夜間や土日の大学院に行くという場合は,利用するのは極めて難しい状況にございます。ただ,そういった方々が,十分な収入を得ているんだから奨学金を借りなくていいというふうにしてよいのかどうかというのは,一つの論点だと思います。
【川端委員】  すみません。
【小林座長】  どうぞ。
【川端委員】  2つあって,修士課程の社会人というターゲットと,それからリカレントという社会人というのは,ちょっと分けながら進めないと,これ,すごいややこしい話が先に待ってそうで。社会人学生の30歳以上のとかいう話と。いや,それはそれでいいんですよ。それを本当にエンカレッジ,これでするんだ,一つの柱にするんだって設定するなら,それはそれで結構だとは思いますけれども。ぜひそういう柱をはっきり,幾つかの柱をはっきりさせた上で,その先の返還の仕方だとか,渡し方だとか,それを学生にどうメッセージとして渡すだとかという整理をしていくといいかなと思いました。
【小林座長】  ありがとうございます。川端先生,御質問でよろしいですか。
【川端委員】  はい。
【小林座長】  今,社会人とリカレントと分けるべきだとおっしゃったのですけれど,私,社会人のほうはよく分かるのですけど,リカレントというのは,どういうイメージでおっしゃられたのか,ちょっと御説明いただけますか。
【川端委員】  ちょっと前に経産省の委員会だとかでリカレントどうするという議論をしたときに,リカレントが,ぶっちゃけ単位取得,何だっけ,履修証明プログラムみたいな,そんなような話から始まって,一番端っこまで行くとカルチャースクールまで行っちゃう,そんなようなものに大学及び大学院はどういうふうな関係を持っていくか。産業界から非常に強い要望がリカレントに対してある。そのときには,大手だとかが絡むと,企業が丸抱えしたリカレントもあれば,辞めてしまった後で個人がどうにかしようとしているリカレントもあったり,それは厚労省がお金を少し出していたりって,いろんなパターンがあって,これでどこか救おうとするのであれば,それのどのゾーンという話になっていて,結構複雑な世界になるなというのが今の,いや,印象的な話です。
【小林座長】  ありがとうございました。分かりました。確かに,これを場合分けしてどうするかということになると,かなり難しい問題があるということは理解できました。ありがとうございました。
 阪本委員,お待たせしました。どうぞよろしくお願いいたします。
【阪本委員】  少し話を戻してしまうことになるかもしれないんですけれども,先ほどの代理徴収の話なんですけれども,大学院の場合,学費が大きく異なるというか,バラエティーが結構あるような気もしています。
 例えば本学の大学院の場合は,ここで示されているような金額からすると,かなり学費が低い状態になっておりまして,こういったときに,その代理徴収というのが果たして見合うのかどうかというのは,ちょっと考える必要があるかなと。
 それと,先ほどの川端先生のお話にもありましたけれども,これはリカレントだけではなくて,大学院にも進学目的ということもかなり,普通の修士を出るというようなケースでも,個別の資格の認定のためだけに来られるようなケースというのもございまして,そういった場合の学生も対象にするのかというようなところは少し検討をする必要があるかなというふうに思います。
 代理徴収に関しましては,これを学部生にも広げていくというようなことを将来見込んでいるというのであれば,検討は非常に大きな意味があるかなというふうに考えました。
 以上です。
【小林座長】  ありがとうございました。また少し違う論点で,そういうケースがあるということですね。
 濱中委員,どうぞ。
【濱中委員】  初回なので全般的な話をします。大学院を対象にということで今回スタートしているんですけど,今,阪本先生が最後におっしゃったように,骨太方針で,まずは大学院段階という書き方があるところを見ると,やはり将来的には学部生にも,この仕組みを拡張していきたいということだと思うので,その学部生に適用したときに,何か不整合が起きないような仕組みとすることが重要かと。既に現在,学部のほうでは,無利子奨学金に限って所得連動返還をやっているわけですから,それとの整合性というのは,かなり考えなければならない。
 この不徴収というのは,在学中,不徴収という,何か携帯電話の実質ゼロ円みたいな,本当にゼロ円なのか悩むわけですが,国際的に見ると,学生個人に奨学金を振り込んでいる国ってほとんどないというのが僕の理解ですね。ローンであっても,アメリカは,一旦大学に振り込まれて,大学から授業料とか寮費を引いた分が,もし余れば本人に来るという仕組みです。
 奨学金が正しくというか,何に使われているかを示すというところもあるし,もう一つは,貸し過ぎとか借り過ぎを防ぐというか,必要な額を必要な人に貸しているということを社会的には明示できるという仕組みなので,そういう仕組みに持っていかないとならない。現状,返還を易しくするというか,返還が困難になった人にどういう手段を講じるかということが論点となっており,一つは,この出世払いであり所得連動返還なんですけど,その他に猶予だったりとか減額返還とかもありますけど,そもそも貸し過ぎなんじゃないかという批判があるときには,その返還を易しくする仕組みというのはなかなか導入しにくいので,やっぱりお金の流れを明確にして,必要な人に必要な額だけ貸していますというのを分かるようにするためにも,この代理受領というか,学校にまず一旦振り込んで,学校が正しく必要な額を取っているというような仕組みに,我が国でも変えていく必要があるのかなと思います。
 さらに考えてみると,今の日本育英会時代からの仕組みって,もう何十年も前にできて,それからずっと変わらないというか,墨守しているって言い方が悪いですけど,あまり近代化されていない感じがするので,検討する必要があるんだろうなと思います。
 ただ大学院のものを,学部に広げたときに,両者で大きく異なるのは,今の大学院生に対する貸与,実はかなりの額を貸していて,先ほど赤井先生がおっしゃたように,既に無徴収といえば無徴収になっているはずです。修士課程で8万8,000円貸しているわけですよね。これ12倍すると100万近くになるので,既に,国立大学であれば,はるかに授業料を超えた額を貸していて,生活費分も見ているわけですよね。
 だから,大学院に関しては,授業料の分は今回検討の仕組みで措置されるとして,今の生活費分を含む奨学金との絡みで,そちらとセットでというか,今の貸与型の奨学金のほうも少し制度をいじる必要はあるかと。
 学部については,国立大学の自宅生だと今,月に3万5,000円ぐらいですかね。だから,1年にしても,学部の場合,国立大学でも,恐らく授業料相当額をカバーできない可能性が高い。有利子で12万とか借りれば別ですけど,授業料よりも貸与額のほうが少ないので,お釣りの部分は出ないんだけど,不徴収ということをにらめば,もう少し最初に貸す額を大きくするような仕組みにしなくてはならないはず。そこは大学院と大きく違うところですね。
 そうしたところもにらんで,貸す額はどれぐらいになるか。それに見合った返し方としては,どういうものが望ましいか。そうした観点からの検討が必要であろうかというふうに思うわけです。そういう観点で議論していただけるといいかなというのを,最初の回なので,提案したいなと思います。
 以上です。
【小林座長】  ありがとうございました。今の点について,お答え,事務局のほうからありますか。提案ですけど。
【今村企画官】  御提案の趣旨としては,学部も見据えて今,制度設計すべきだということですかね。
【濱中委員】  学部生にすぐ適用できないにしても,大学院生に特化したような仕組みにする必要は必ずしもないのかなということですね。先ほど出てきたリカレントはどうだとか,そういう話とかのほうに特化して決めちゃうと,何かすごい応用範囲の狭い仕組みになってしまうし,当然,学部のときも借りた,大学院も借りたという人は出てくるんだから,その整合性を取れるような仕組みという,大学生つまり学部で借りたときのものと大学院で借りたときのものが全然違う仕組みだというのは,奨学生にとってもあまりいいことではないと思うので,やっぱり連続的なものとして考える必要があるかなというふうには思います。
【今村企画官】  承知しました。
【小林座長】  私のほうからも,その点に一つ提案があるのですけれど。現在,日本学生支援機構の奨学金については,優秀者免除というのが大学院にありますけれど,学部などにはないのです。かつてはそれが,返還免除の仕組みがあったわけですけれど,現在は大学院しかない。学部のほうは免除にならないというところで大学院に進学を決めるということになるわけですよね。ですから,その辺りも併せて,将来もし大学院に進学する人を増やすとか,そういうことが目的であるのであれば,少し考えてもいいのかなというように思います。
 これは少し,この会議の検討課題から逸脱するかもしれませんけれど,将来的にはそういうことまで考えて。多分,濱中委員の意見も,そういうことだと思いますけれど。ここは大学院段階のというのがついていますけれど,やはり学部のことも考えておかないといけないというのが,確かにそのとおりだと思いますので,そこは少し整理していただければと思います。
 ほかにいかがですか。
 すみません,もう一つだけ,じゃあ私のほうから。コストの問題というのが,先ほどの最初に事務局から御説明がありましたけど,これ意外と,やはり大きいんですよね。事務コストという意味です。現在,修学支援新制度が行われておるわけですけれど,これはやはり大学にとっても,かなり負担になっているというようなこともあるんですね。
 これについてはいくつか調査がなされているし,私も個別に意見聞いていますけれど,やはりかなり大学側がシャドウコストといいますか,直接は目に見えないわけですけど,そういうコストが発生していると。それからJASSOのほうもそれなりに,また事務負担が増えているわけですよね。その辺りどう考えるかというので,例えば高校の場合,同じようなことが起きたと思うんですね。授業料分については,修学支援制度というので,実質的には,だんだん無くしていく方向でやっているわけですけど,この場合には,例えば加配というような制度がありまして,事務負担を軽減するような制度というのも取られているんですね。そういったことも少し考えないと,どんどん制度が増えていくと,それだけそういうシャドウなコストというのが増えてきますから,そこは少し考える必要があるかなと思います。ありがとうございました。
 どうぞ,荒張委員。
【荒張委員】  コストというところで私,違う観点で,どのようにお考えになられているのか,ちょっとお伺いしたいんですけれども。学生支援機構が貸与している場合って,あくまで奨学金という,要は貸付けの台帳をシステム上,JASSOのほうで持って,回収に当たっていくわけですよね。それがこの英国型のほうに行った場合に,今度,今までだとパターンで,この人は幾ら借りてというところで,ある程度‥‥‥。あれ自由に決められるんでしたっけ,借りる額って。学生支援機構……。
【萬谷理事】  一種も二種も,借りる額を自分で選択することができます。
【荒張委員】  選択できるんですね。
【萬谷理事】  ただ,上限と下限がございますけれども。
【荒張委員】  なるほど。パターンにはなっているという感じでしたっけ。それが今度,新しい制度のときに,今の先生方のお話聞いていると,授業料も大学によって違ったりして,その額をどう返してもらうか管理する必要が出てくるわけですが,「債権管理」と言っちゃうと,また何か元も子もなくなっちゃうかもしれませんが,それは誰が行うことになってくるんでしょうかね。
 要するに,これ,源泉徴収を前提に考えていくとなると,そこをどういうふうにやるんでしょうか。
【今村企画官】  源泉徴収をやるかやらないかは,いろいろな課題が大きいと思います。
【荒張委員】  そうでしたね。先ほどの話でしたね。
【今村企画官】  はい。もしJASSOの奨学金の仕組みを踏襲しながら新しい制度をつくった場合,徴収方法としては,今の現行の口座振替のやり方を踏襲するのかなと思うんです。その場合は債権の管理もJASSOで行うというのが一つ考えられます。
【荒張委員】  そうすると,JASSOがまた債権を持つような形にするということになるんですかね。
【今村企画官】  今の無利子奨学金のお金の流れ方を,本人じゃなく大学に振り込むとかというものであるならば,債権債務の関係性は変わらないと思います。学生だった個人とJASSOの関係になると思います。
【荒張委員】  そういうふうになるんですか。だから,政府と言っているけど,実質的にはJASSOが大学に払ってということになるんですか。このピンクの,この。
【今村企画官】  今お示しのは,オーストラリア,英国の図では,政府が大学に補助金を出すという,海外ではそうしているという絵で……。
【荒張委員】  そうですよね。
【今村企画官】  すみません。そのとおり我が国においてやるとなると。
【荒張委員】  結構大変な話になるわけですよね。制度もそうだけど。どうなる……。
【濱中委員】  よろしいですか。最近フォローしてませんけど,イギリスだとスチューデント・ローンズ・カンパニーという,政府機関みたいなものですけど,ちょっと違う,一応,会社になっているんですよね,あれ。何て言えばいいんですかね。
【小林座長】  一応,政府の関連機関ではある。
【濱中委員】  政府機関だけれども,そういう機関を置いているので,完全に政府そのものではなくて,やっぱりちょっとというか,一つバッファーを置いていると思いますね。
【荒張委員】  独法,JASSOと同じようなものですよね,そうするとね。
【赤井委員】  JASSO,政府の一機関。
【濱中委員】  政府機関だけど,一応,そういうものを置いている。私立大学にもしお金を出すんだったら,JASSO経由で行くのか,私学事業団の補助金の名目で行くのかは,ちょっとまた考えどころなんじゃないかなと。いろいろ問題はあると思うんですけど,この代理受領。とにかく政府が直接,私立学校にお金を払うのはまずいんですよね,現行の法律上は。
【赤井委員】  まずいでしょう。それを無理やり変えさすのは無理でしょう……。
【荒張委員】  ああ,そういう問題もあるんですか。すみません。このピンクの図でちょっとイメージをしてしまったので,そういう質問をしたんですけど。じゃ結局はJASSOが大学に払ってということになると,あまり変わらないわけですね。そういうことなんですね。分かりました。
【小林座長】  この図はかなり簡略化されているので,実はもう少し,今,濱中委員からあったように,イギリスもオーストラリアも複雑な図なんですけれど,議論が少し混乱しますので,簡単な図になっていると思うのですけれど。イギリスの場合は,スチューデント・ローンズ・カンパニーというところが一旦は払うという形になっていますし,それからオーストラリアの場合は,コモンプレイスという,公立大学だけに適用するような形で,実際には大学に払われるという仕組みになっている。ですから,オーストラリアとイギリスでも違いますけれど,いずれにしても,もう少し複雑な仕組みではやっています。
 ですから,この図で,参考1のところが,非常に乱暴に言うと,JASSOから今,学生に奨学金という形で振り込まれているわけですが,これがJASSOから大学という形でなるというふうに理解してよろしいのですか。
【今村企画官】  我々としてこうするというのが,まだはっきりと決まっているわけではございません。この初回の皆さんの御意見等も踏まえながら,次回以降,こういうのを考えてみましたというのをお示したいとは思います。
 ただ,既に口頭でお話ししているように,今の仕組みを手直しするだけで,ピンクの世界に近いお金の流れは実現するやり方はございます。
【小林座長】  これについて,具体的には,ですから,まだこれから検討しなければいけないということだと思いますが。
 他に御意見いかがでしょうか。川端先生,どうぞ。
【川端委員】  ありがとうございます。いや,皆さんのお話をお聞きしていて,ちょうど今グラフが出たので,30ページとかいうのを出していただくと。この前のページですね。貸与型の奨学金の大学院の推移が急速に下がってきている。先ほどからフレームを見ていると,結局,JASSO経由の貸与型の奨学金の一種類みたいな話になっていく。大学に直接払い込むとか何とかあったとしても,その手続的な話が何か,こういうふうな見え方していると。今,だから,ある意味,大学院ですら学生さんは,あまりこういうものを利用しなくなっているというものが起こっていて,この一部に生活に困っていてというものがあって,それをエンカレッジするんですというような流れを考えているから,このグラフはあまり関係がないという立ち位置なんでしょうかね。
【今村企画官】  今村です。川端先生おっしゃっているのは,貸与人員が減っているので,ニーズ自体が減少しているのではないかということですよね。
【川端委員】  そうです。要するにJASSO以外のものを,いろんなもの使っていたり,もしくは親がかりな話がさらに進んでいたり,いろんなことが起こっていて,昔のように全部JASSOが全てではない時代に入っているという。
【今村企画官】  まず,このグラフは大学院生数に対しての割合が併記されていないので,これだけでは評価が難しいのですが,ただ,おっしゃるように,この減少幅は,大学院生数全体の減少以上に減ってはいます。
【川端委員】  ですよね。最初のほうにお見せいただいた大学院の動きを見ていると,おおむねフラットみたいな感じですよね,ここ10年ぐらい。そういう中で学生さんが,このJASSOをどういうふうに見ているかとか,どう活用しようかというような話をしているところもあるので,手続だとか,それからセレクションの仕方,大学院になればなるほど。ただの救済だったら親の所得だとか何とかだけど,今回の話は,やっぱり今後の話の,どれだけ稼げるかみたいな話で,一時立て替えますという状態なので,それがどういうふうに映るかという。それを大学と一緒にやらないと多分,学生さんが動かないんだろうなとか思いながら,さっきからちょっとお聞きしていました。
 だから,そういう意味では,学生さんの評価の仕方だとか,その辺も含めて,少し議論したほうがいいような気がしました。
 以上です。
【小林座長】  ありがとうございました。今の点はいかがでしょうか。ほかの委員の方でも結構だと思いますが。
 この方式を採用することの目的とか,それから具体的な方法についてもかなり議論があったと思いますが,かなり大きな問題になっているというか,どうしても仕方がないんですけれど,お金絡みの話ですので,先ほど来ありますように,大学院だけの問題ではない。学部のことも考えるとか,社会人の問題もあるとか,いろんなことが入ってきてしまうのはやむを得ないとは思うんですが,少し議論を整理しないといけないとは思うのです。
 今日のところで,今まで議論を伺っていますと,最初の徴収の方式としては,まだこれから少し議論が必要だろうということですね。徴収というより不徴収については,どういう形があり得るのかというのは,もう少し議論が必要だと。
 それから,対象学生については,特に議論といいますか,どの程度の収入を得たかという出世払いの定義について,検討課題の3のところと併せて議論になっていたように思いますけれど,これについては一応,出世払いについては1のほう,授業料相当額以上には支払いは発生しないということですね。それから,現行の制度について,整合性を取るということは必要ですけれど,それについては,これから検討課題が必要だということ。
 それから,先ほど来出てきたことで,検討課題の4で,どのぐらいの額を徴収するのか。日本の場合,国公私立それぞれありますから,それをどのように考えるかという問題ですね。
 それから,業績免除のような仕組みがあるわけですけれど,それをどのように考えるか。
 いろんな課題があると思うんですが,ほかに御意見。もう検討課題の4のところまで話が進んでいますので,ありましたら,ぜひ御意見を伺いたいんですが。
 赤井委員,どうぞ。
【赤井委員】  確認ですけど。1つ目は,検討課題3の出世払いのところにはあまり書かれていない。現行は無利子奨学金で所得連動,入っていますよね。
【小林座長】  はい。
【赤井委員】  だから,今度入れるとしたら,基本,無利子奨学金で入れていくということは,もう利子の問題は,無利子奨学金,幅増やすと思ったら,利子の問題は,もう財源負担にならざるを得ないですよね。財源というか,国の税金で穴埋めする,1でいく限りは。そこの前提が多分,背後にあるというのが1つと,その確認。そういうことですね。
【小林座長】  はい。
【赤井委員】  それから現行で,今,無利子奨学金というのが,1ページのところですかね。本人年収290万円のところまで,あと博士だったら340万円,この上限,今の所得の,それが一番,多分スタート,そこの課題2のところにもあったような金額のスタートになるという,ですよね。
 もう一つ確認は,この無利子奨学金の今配っている金額は,この課題のところに明示はされていないんですけど,これ自体も調整しながら新しいのを入れていくのか,基本,これの上に乗せていくのか。そこは,この課題でいうと,何番目のところの調整なんですか。そこは,もう今の現行はそのままという前提があるから,課題に書かれていないんですか。
【小林座長】  今の点,どうですか。
【今村企画官】 そのような詳細については,本会議での議論を踏まえて検討したいと考えておりました。
【赤井委員】 国として,こういう方針を出したときは,基本,現在のこの無利子奨学金,普通に学生に渡している奨学金,それは置いたまま新しいのを上乗せするというような考えで,この文章を書かれているんでしょうか。
【今村企画官】  その骨太方針等を決定した時点で,こういう方式でやるということまでは決まっておりません。我々の中でも,かくあるべきだというのは決まっていない……。
【赤井委員】  でも,拡充みたいなイメージですよね,文章としては。文章としてはイメージとしては,この金額の上に,さらに授業料免除分を上乗せしていく。でも,そこまでは言われていないけど,拡充だから,最低限この金額よりも増やすというのが前提にあると。
 極端な話,先ほどの話もありましたけど,この146万円渡したら,その中から授業料も払えているじゃないかという話もあるので,今度入れるとしたら,この金額を若干下げた上で授業料分を上乗せして,実質的には,また実質という言葉使いますけど,例えば最大146のところは200になるけれども,200というぐらいにしておいて,授業料分は大学に直接払いますから,本人が借りれる額は,授業料分除いた120とか,そんなぐらいになるというような議論も,今,可能性はあると思って,今後進めていくんでしょうか。
【今村企画官】  そういう意味では,5月や6月に決まっていることは,授業料を徴収しない新たな制度を大学院に導入すると,そこまでしか決まっておりませんで,その具体の中身は,まさにこの会議で議論していくことかと思います。ですので,現行案のまま,何も変えないというのはさすがに,政府の5月,6月の考えは,新たな制度の導入と言っている以上,今のままというのはあり得ないと思うんですが,その水準,貸し付ける相手をどの範囲とするか,貸し付ける額は,今,何かが決まっているものではありません。
【赤井委員】  じゃ,必ずしも146に,そのまま授業料足した分までいくというイメージではなくて,そこも今後調整しながら金額決めていくということですね。分かりました。
【小林座長】  今の点は,もう一回,私も確認したいのですが,確かに拡充するのかどうかということですけどね。授業料相当分については不徴収だということで分かったのですけれど,当然,生活費部分があるわけです。それについては貸与奨学金のままなのかどうか。つまり,現行の制度を残すのかとか,そういう問題,発生するわけです。
 ですから,そこは貸与金額が大きくなるという問題ありますけど,現行でも,それは発生している問題なので,それはどうするのかというのがあって。
【赤井委員】  多分その論点が,この課題の4つの中では,あまり明確に書かれていない気もするので,次の会議のときにでも,もし可能だったら,課題のどこかに入れておいていただくほうが。
【今村企画官】  貸す額の上限はどの程度の数字であるべきかということですよね。
【赤井委員】  その中に入り込みますよね。
【小林座長】  だから,そういうように一本化するということかということですね,先ほどの御質問は。
【赤井委員】  まあ,そうなりますね。そうですね。今の140に,そのまま授業料これ,授業料とは別ですといって上乗せしちゃうと,すごい額になるので,そこは上限アップで調整すると。
【今村企画官】  今日の御意見で,そこまではっきり明確な話ではございませんけれども,この新たな制度を導入することをもって,多額の貸付けを学生に対して行うという御意見はなかったかと存じます。
 あと,貸し過ぎもよくないというお話もございますし,現行制度をどのように変更して,授業料不徴収で,学生にとって心理的なハードルなく,大学院進学をより前向きに考えられるか。一方で借り過ぎもよくないというのを踏まえて,案を考えていきたいと思いました。
【濱中委員】  それに関連して。
【小林座長】  どうぞ。濱中委員。
【濱中委員】  考えてみると,現行の大学院生対象の無利子奨学金は,このまま残して二本立てで選択制にするというのは,また話をややこしくするから,基本的には原則こっちにすべきかと。オーストラリアやイギリスもそうで,どうしてもローンは嫌です,先に払いますという人はいて,ローンを使わない人がいるんですけど,基本的には,やっぱり新しい制度に誘導するような仕組みにしないと,非常にややこしいものが出来上がる可能性が高いのではないでしょうか。
【今村企画官】  そのとき,今の貸与奨学金,使えない学生がいます。大学の学部を卒業してストレートで進学した場合は,299を下回る学生が大半だとは思いますが,JASSOの学生生活調査で,大学院生の収入の状況を見ましたところ,299以下が,一般の修士の9割,8割ぐらいはカバーできていますが,使えない学生もいますし,専門職になると,ずっと低くなります。5,6割だったと記憶しておりますので,今,濱中先生がおっしゃったように,原則この新たな仕組みを使ってくださいといったときに,今の所得水準だと,貸与の基準だと使えない学生が出てくるのをどう考えるべきかというのも論点だと思っております。
【濱中委員】  こちらは,だから,この検討課題2に書いてある,対象者の所得基準を緩める必要があるのではないかということですね。でも,考えてみると,今のJASSOのローンも,なぜか所得制限をつけているんだけど,大学院生に関しては,それすら本当は要らないんじゃないか。それは,この今日の話とは違うけれども,考えてみれば,そうですね。大体,大人なんだから,たくさん金を持っている人に貸したほうが返ってくる可能性も高いだろうというのが普通の金融の論理のような気もするので,社会人学生って,本当にこれはね。
【赤井委員】  だから,焦げつきはないから全員て……。
【小林座長】  いや,そこは重要な論点で,所得制限があるというのを前提にするかどうかということですよね,今おっしゃっているのは。選択制ではあるけど,原則は全員だということですよね。
【赤井委員】  海外,それじゃないんですか。海外も制限あるんでしたっけ。
【小林座長】  ここは少し検討課題に明確にはされていないのですけど,オーストラリア,イギリスは原則全員だということですけど,この制度も,だから選択制なのか,それとも原則全員なのかというのは明確にしておいたほうがいいと思います。
【赤井委員】  払いたい人は払えという。意外に払っているという話でしたよね,たしか。
【小林座長】  先に払いたい人は払ってもいいということですよね。
【赤井委員】  オーストラリアでも。
【今村企画官】  オーストラリア,イギリスでは,イギリスの例は,すみません。オーストラリアは明確に聞いていまして,先払いしているのは1割。ローンプログラム使っているのは9割でした。
【小林座長】  オーストラリアの場合は,以前には先払いの場合,ディスカウントがありまして,利息分をディスカウントして,割り引いて先払いすればいいという制度があったので,それを使う人がいたのですけれど,現在では,その仕組みがなくなっていますので。前回の所得連動型の会議のときも,議論した問題ですけど,結局,逆選抜が起きる可能性があるわけです。ですから,それを考えると,やはり私は原則は全員参加。どうしても先に払いたい,ローンを抱えるのは嫌だという方もいらっしゃる可能性がありますから,そこまでは排除できないと思いますけど,原則は,やはり原則先払いにしないと,この制度の意味というのは,あまりないと思っています。
 すみません。川端先生,お待たせしました。どうぞ。
【川端委員】  ありがとうございます。いや,今のはやっぱり本質だと思いますね。この制度は,オーストラリアみたいに,原則全員というスタイル。これだったら,すごい訴求力があると思うんですよね。
 もう一個は,もう一つ先ほどから言われている生活費と授業料のこの2つの制度を,どういうふうに組み合わせるのか,組み合わさないのか。要するにセレクションが,例えば大学院なので,やっぱり優秀者とか,何かそんなようなセレクションがどこかに入っていくとすると,ばらばらにそれぞれ。一体として渡す場合と,それから,それぞれがセレクションの仕方が違うから,一つは収入所得制限か何かで,もう一つは優秀者みたいな話になると,今までの授業料免除も,それに近い格好で動いている。
 だから,これは一体どっち側に走っていくのかなという。最初からずっと話を聞くと,アンケート調査からいったら一定数,お金があれば行くんだみたいな人がいるんです,それを救いますというと,どちらかというと,所得制限とかそっち側の話で動いていく。その辺がやっぱりターゲットで決まるのかなという気がしています。
 もう一点は,大きい意味で,財源どうするんですかねという。要するに,これはあくまでも,ある割合の人数を突っ込んだら,JASSOが持っている10兆円のランニングの部分でやるにしても,エキストラな部分になるので,それは,定常的にやろうとすると,その財源をどういうふうに賄うか。下手すると,このもともとあるJASSOの貸付けを減らすだとか,統合するだとか,何かそんな話になりかねないなと思っていて,その上で,その影響というのも全体として見なきゃならない部分もあるんでしょうねという,そこはそれで,ぜひ数字をどこかではじかないといけないのかなという気がしました。
 以上です。
【小林座長】  これは非常に大きな問題で,財源というのは,ここには確かに検討課題には入っていないのですが,どうするかというのは,ある程度見極めが必要ですので,これはまさしく,先ほど来出ておりますように,文科省だけの問題ではないわけですから,関係省庁と検討する必要があるかと思いますが,その辺について何か方向性というのはありますか,現在のところ。
【藤吉課長】  財源については,まだ確とした方向性はございません。
 ただ,濱中先生が当初おっしゃったように,仮に学部への拡張とかを考えた場合に,今ありましたような,原則全員が学部でHECSとなりますとものすごい額かなと,すぐに分かりますので。ただ,大学院ですので,その10分の1ぐらいかと思いますけれども,これを制度設計するに当たっては,そういった学部への拡大ですとか,あるいはJASSOの奨学金全体への影響とか,そういったものを考えていかなくちゃいけないと思っていますし,そこは今,座長おっしゃったように,文科省だけでは財源生み出せませんので,よく財政当局とも御相談していきたいと思います。
【小林座長】  ありがとうございました。どうぞ。
【川端委員】  すみません。ちょっとだけ,今の話を受けてね。財源考えるときに,一番はじめのこの8ページ目か,Ph.D.ホルダーであるとか修士の数が少ないんだ,他国に比べて。これ本当に考えるつもりなのかという。要するに,学部生でこのグラフを描かれると分かるんですけれども,ドイツ,フランスより日本のほうが多いんですよね,学部生は。ただし,修士になると,がたっと落ちて,ドクターなると,もっとがたっと落ちるというのが日本の特徴になっていて,だから,この修士を増やさなきゃという,このエンカレッジの話として,この話をつくっていくという。ずっと将来の話ですけどね。というストーリーだとすれば,学部からこちらのほうに少し財源を移していくというやり方もあるんだろうなというふうに思いました。
【小林座長】  ありがとうございます。
【池田局長】  よろしいですか。
【小林座長】  どうぞ。
【池田局長】  局長の池田です。私も9月1日付で着任いたしましたので,まだいろいろ,情報を整理して取り組んでまいりたいと思っておりますけれども,ちょうど前職が研究振興局長で,文科省の中の研究振興局と科学技術・学術政策局で今,博士人材を減少傾向にあるのをどうしようか等々,科学技術・イノベーション基本計画も踏まえて,取り組んできたところでございます。
 そうした中で,一方,この話もございまして,これ,先ほどからいろいろ御議論いただいているように,大きな方向性は未来会議や骨太に盛り込まれていますけれども,まだ具体的な制度設計など詰めずに方向性だけが決まった側面もかなりございますし,御議論いただいているように,オーストラリアやイギリスはもともと授業料がないところで,新たに授業料導入に伴って,このHECS-HELPなどの仕組みが出来上がってきたのに対して,日本は授業料があるという前提で,これまで育英会のいろいろな制度の改善を続けて今の制度が出来上がっていますので,いろんな意味で整合性を取りながら,財源の問題も見据えながら,うまい,いいところに着地点を見いだすという議論が必要だと思っています。
 非常に解を見いだすのは難しいですけれども,今,一方で,冒頭申し上げた博士人材支援なども見据えながら,この制度でどこまでを,何をターゲットにして,学部との整合性どうするかというのも,論点かなり多うございますけれども,この検討会議で御意見いただきながら,できるだけよりよい制度にするよう,方向性を出していただければと思っています。
 以上です。
【小林座長】  ありがとうございました。確かに冒頭にありましたように,もともとは教育未来創造会議,あるいは骨太方針にあることから始まっているわけですので,政府全体で取り組むべき課題だということだと思いますし,それなりに財源も考えていくということだとは思います。
 ただ,私自身,少し教育未来創造会議とかの提言を見ていますと,いろんなものが交ざっている。ですから,今日の川端先生のおっしゃった,ターゲットがよく分からない。例えば理系とか女子とかというのも入っている。今日,それとリカレント,社会人という問題が出てきましたけれど,その辺り少し整理する必要があるのかなと。
 それからもう一つは,この目的として,大学院の人材を,優秀な人材を増やしたいというような目的になっているのかどうかということですね。そこのところが,最初,出世払いという議論が出たときには,必ずしもそういう話ではなかったと思いますので,その辺りのことについて少し整理が必要かなと思います。
 恐縮ですけれど,この制度導入の目的を明確にしないと,なかなか議論が先に進まないのではないかと思いますので,少し整理をしていただいて,次回以降,検討したいと思います。
 ほかに御意見がございますでしょうか。あるいは次回に向けて,こういう点ももう少し考えたほうがいいとか,こういう資料があったほうがいいとかというようなことがありますでしょうか。
 濱中委員,どうぞ。
【濱中委員】  僕も前の所得連動返還型のときの委員だから,大体は覚えているんですけど。現行の所得連動返還の細かい説明が今日なかったので,多分この後ろのほうの論点の4番とかを検討するとき必要になると思うので,それは一度,用意していただくとよろしいかなと思います。
【藤吉課長】  承知しました。
【小林座長】  そうですね。新しく入られた委員の方もいらっしゃいますので,そこは少し丁寧に説明が要るかと思います。
 それから,少し迷っているのが,アメリカの所得連動型について紹介したほうがいいのかどうかということで,先ほど申し上げたように,これは,すごく複雑な制度なので,それを関係あるようなところだけ少し紹介するほうがいいのかなと。というのは,オーストラリア,イギリスの場合には,先ほど来出ていますように,公立大学中心で,しかも,もともと授業料を徴収していなかったところに徴収するので,後払いにしたという経緯があるわけです。ところがアメリカの場合には,学生数でいうと公立大学が約4分の3を占めていますけれど,私立大学も大きな位置を占めていますし,授業料の高騰が問題になっているのは,むしろ私立大学ですので,そういう意味では,アメリカの制度も少し紹介したほうがいいのかなというような気もいたします。
 先ほどバイデンのステートメントの話が出ましたけど,あそこではいくつも重要な提案をほかにしていまして,例えば所得連動型の返済率を10%から5%に下げる,ローンの負担軽減というのを,帳消しにするというのを現行,20年で帳消しにするというのが一部のローンで実施されているのですが,それをもう少し拡大して10年にするとか,かなりいろいろな提案がなされています。
 ただ,これは昔からなされている提案なので,これがすぐに実現するかどうかは分かりませんけれど,そういったことがありますので,全部を紹介するというのは非常に難しいと思いますので,ごく一部だけ,関係しそうなところだけ,少しアメリカのことも紹介したほうがいいのかなという気もするのですが,いかがでしょうか。何か逆に議論が混乱する可能性もあるんですが。
【川端委員】  ごめんなさい。先ほどちょっとそういう話を,話題を振ったので,ちょっとお話しすると,やっぱりオーストラリアとイギリスは,先ほどからお話のあるように,無償からスタートしているという。そうでないところで,例えば何か使える。
【小林座長】  先生,すみません,ちょっと。
【川端委員】  駄目ですか。
【小林座長】  すみません,音声が途切れたので,もう一度お願いいたします。
【川端委員】  ごめんなさい。ありがとうございます。先ほど言っていたオーストラリアとイギリスは基本,無償からスタートした制度設計なので,ぜひ無償でないところからスタートしたもので何か使えるようなものが1個でも。全部網羅的に見たいわけでなくて,何かモデルになるようなものがあれば教えていただければという提案でしたので,小林先生のおっしゃるような話で十分だと思います。
【小林座長】  ありがとうございます。
 他の委員の方いかがですか。よろしいですか。
 では,すみません,また事務局には負担をかけますが,よろしくお願いします。私のほうも出しますので。
【今村企画官】  ありがとうございます。
【小林座長】  そろそろ時間になりますが,他によろしいでしょうか。
 かなり,予想はされていたんですが,この問題は細かい制度設計をすればいいと思っていたのですが,やはり本質的な問題というのは相当入ってこざるを得ないので,次回以降,少し整理して,また検討したいと思います。
 それでは,少し早いですが,本日はここまでとしたいと思います。皆さん,活発な御議論ありがとうございました。
 最後に,今後のスケジュールについて事務局から説明をお願いいたします。
【藤吉課長】  本日はありがとうございました。
 次回は10月の12日の10時からの予定としておりますので,詳細については,また追って御連絡をさしあげたいと思います。また,本日の議事録を作成いたしまして,出席の先生方に内容を確認していただいた上で公表したいと思っております。
【小林座長】  ありがとうございました。
 それでは,本日の会議,これで終了したいと思います。どうも皆さん,ありがとうございました。
 
―― 了 ――