大学院段階の学生支援のための新たな制度に関する検討会議(第2回)議事録

1.日時

令和4年10月12日(水曜日)10時00分~12時00分

2.議事録

【小林座長】  皆さん,おはようございます。定刻になりましたので,ただいまより,大学院段階の学生支援の新たな制度に関する検討会議(第2回)を開催いたします。
 本日は御多忙の中,御出席いただき誠にありがとうございます。今日はオンラインの出席の方が多いのですが,よろしくお願いいたします。本日は,阪本委員が御欠席となります。私もオンラインで参加ということで,御協力よろしくお願いいたします。
 初めに,本日の配付資料の確認をさせていただきます。本日の配付資料は,議事次第のとおり4点,合わせて11ページとなっております。不足等がございましたら事務局にお申し出ください。
 本日は,前回の議論を踏まえまして,制度の目的,考え方について議論したいと考えております。まず,前回会議で委員の皆様からいただいた御意見を踏まえて,日本における所得連動返還方式と米国連邦政府による学生ローンにおける所得連動型の返還制度について,事務局から説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
【松本専門官】  事務局から,資料1及び2について御説明させていただきます。資料1,1枚目の貸与奨学金における所得連動返還方式の概要を御覧ください。
 まず,概要に書いてございますとおり,本制度,無利子奨学金を対象といたしまして,無理なく返還ができるよう,返還者の所得に応じて返還月額を変動させるという制度でございます。こちらの返還の方式につきましては,所得連動型とするか,あるいは定額返還とするかという形につきまして,貸与の申込み時に学生が選択をいたしました上で,その上で貸与終了時までは変更が可能ということとされております。
 詳細な仕組みにつきましては下の表を御覧ください。下の表にありますとおり,返還の月額につきましては,まず,所得連動型の返還方式によりますと,前年の課税所得の9%,これを12で割って月額とした上で返還をいただくこととしております。ただし,こちらの金額が2,000円を下回るような場合につきましては,最低月額として2,000円を返還いただくという形になります。課税所得の算出に当たりましては,給与等の収入から各種の控除をいたしました個人住民税の課税総所得金額を用いることとされております。定額返還を選びました場合には,右側にありますとおり,借りた総額に応じた月額が設定されます。
 返還の期間につきましては,所得連動型返還の場合は返還完了までということになりまして,所得によって返還完了までの期間が異なることとなります。定額返還の場合には,右側にございますとおり,10年から20年の間で借りた総額によって返還完了までの期間が決定されます。
 それぞれの返還方式の選択率は,令和3年度の採用者実績で申しますと,所得連動型が18.8%,定額返還が81.2%となっております。それぞれの方式,選んだ場合の返還のイメージを中央の図に記載しておりまして,こちら,例えばですけれども,私大・自宅外の学生さんが月額5万円×4年間の貸与を受けた場合,貸与総額は4年間で合計240万円となりまして,この場合,定額返還の場合は15年をかけて返還いただくということになります。そうしますと,月額は単純に割り算をしまして,1万3,333円一月当たりというところが青い線のところに記載してございますけれども,こちら,所得連動返還方式を選択した場合におきましては,まず1年目は,定額返還方式の場合の金額の半分ということで月額6,667円を返還いただきます。その上で,2年目以降につきましては,前年の年収が例えば300万円程度であった場合は,月額約8,600円。それから,例えば450万円程度まで年収が上がりますと,約1万5,400円といった形になります。それから,途中で例えばですけれども,失職をしたという形で前年の年収が100万円程度であった場合は,この場合は課税所得の9%という計算が2,000円を下回りますので,月額返還額は2,000円に設定をされ,またその後,所得,年収が上がりましたら,それに応じた返還をいただくというような形式になります。
 それから,表の中段右側にありますとおり,定額返還方式におきましては,一定の要件を満たす場合,いわゆる減額返還,月々の返還額を2分の1または3分の1に減額するということが可能となっております。また,いずれの返還方式におきましても,表の下にありますとおり,本人の年収が300万円以下の場合等につきましては,返還期限の猶予が適用可能となっておりまして,こうした減額返還制度や返還期限の猶予の制度につきましては,次のページに概要をおまとめしております。こちらは,前回の参考資料1と同じ資料となっておりますので,説明については省略させていただきます。
 続きまして,資料2,「米国連邦政府による学生ローンにおける所得連動型の返還制度について①」という資料を御覧ください。米国の学生の経済的支援につきましては,例えば給付型の奨学金でありましたり,あるいは州政府が実施するもの,各大学が実施するもの,様々ございますけれども,今回の議論に資するものとして,学生ローンにおける所得連動型の返還制度についてある程度情報を絞ってまとめさせていただいております。
 まず,上の経緯を御覧いただければと思いますが,連邦政府が関与する学生のローンに関しましては,1965年に政府の保証つきの民間学生ローンという形で低所得者向けの給付型奨学金と併せて制度化をされておりますが,こちらの制度につきましては2010年度に廃止されておりまして,現在残っておりますのは,2行目,1993年に創設されたとあります連邦政府が直接実施する学生ローンということになっております。この制度の中で所得連動型がいつからできたかということなんですけれども,1994年,債務不履行の解消や低賃金の公共サービス人材の確保のために,連邦政府の直接実施学生ローンにおきまして,所得連動型の返還制度等が創設されております。2022年,令和4年現在におきましては,債権の約45%が所得連動型の返還となっているというデータもございます。
 左側の表を御覧いただければと思いますが,こちらは所得連動かどうかということにかかわらず,連邦政府直接学生ローン全般に共通する制度をまとめたものです。まず,支援の形態としては様々なメニューがございますが,学生または保護者への貸付け,双方ございまして,いずれの制度にしても利息があるということとなっております。2022年7月末時点で利率4.99%とされております。また,このローンにつきましては,基本的に支払いは大学に振り込まれるということで,その送金が大学において授業料等に充てられるという形になります。
 支援の金額につきましては,様々ローンの申込みをされる方によりますけれども,年間5,500ドルから1万2,500ドル程度というふうにされておりまして,学校種や家計,それから利用者の意向に応じて決定されます。
 対象につきましては,基本的に希望者全員ということにされております。一部,メニューによっては経済的要件がございましたり,それから,卒業生の債務不履行率が高い大学については,この制度を利用できなくなるといった特殊なルールもございます。
 徴収の方法につきましては,イギリスやオーストラリアにつきましては,源泉徴収を行っているということを前回御紹介させていただきましたけれども,米国連邦政府のローンにつきましては,大学等の指定する回収機関に学生や保護者,その債務を負っている者が支払うという形になっております。
 返還の状況につきましては,返済が開始されてから3年以内に270日以上の延滞をした者の割合が7.3%というふうにされております。この返還状況の2点目,3点目については後ほどまた戻ってまいりますので,まず,右側の「所得連動型の返還制度について」を御覧ください。所得連動型の返還プランにつきましては様々なメニューがございますけれども,おおむね共通するような特徴を2つまとめさせていただいたものがその下の太字の部分でして,課税所得が約1.4万ドルを超えた場合には,その超えた額の10%から20%等を返還することとされております。それから,どのプランにおきましても,20年から25年返還を続けた場合や,あるいは政府機関等に10年以上勤務した場合につきましては,残額は返還免除ということとされております。
 ただ,右下の※3の部分を御覧いただければと思いますが,この制度を使いました返還免除額につきましては,所得税の課税対象となり得ることとされております。また,留意点といたしましては,左側の表のところで申し上げましたとおり,アメリカの学生ローン,利息がございますので,返還免除となった額がそのまま連邦政府の損失となっているわけではない。つまりは,100借りて80返して,残り20が免除というような,そういった単純な構造になっているわけではございませんので,返還免除までに返還した額というのは,人によって大きく異なり得るということになります。
 お金の流れにつきまして,その下に水色地でまとめさせていただいておりますが,連邦政府が利用者の設定した額を大学に支払う,大学において授業料等に充てられる,その上で残額が利用者に支払われる場合もございますが,いずれにせよ,卒業の後に利用者が所得に応じて返還をしていく,回収機関に支払うという形になります。
 右下の表は,近年導入された返還プランの例についてまとめております。これらを含めて複数存在しておりまして,ローンの種類等に応じて選択できるプラン・選択できないプランがございまして,選択できるプランの中から利用者が選びます。また,所得連動以外の,定額返還等も選択可能ということになっております。
 例えば,プラン1つ目,Pay As You Earn Repayment Planですと,収入による制限がり,収入によってはこのプランをそもそも選べないということでありますが,このプランをもし選べた場合については,裁量的所得という所要の計算を経て出された金額の10%,または,仮に10年割賦とした場合の額の小さいほうを返還していく。返還免除までの年数は20年となっております。
 それから,Revised Pay As You Earn Repayment Plan,下側のプランを選びますと,こちらは収入による利用制限はなく,その代わり裁量的所得の10%を機械的に納めてきます。返還免除までの年数は20年というふうにされております。
 これらのプランにつきましては,近年導入されているものでありまして,こうしたものについて選択している者の数は非常に増えているようです。そういったことに伴いまして,利息による収入がどれぐらいになるかという試算についても連邦政府のほうで様々に試算を行っており,その状況が表の左下に書いてございますが,ここ25年の貸付けにつきましては,利息によっておよそ1,140億ドルの収入を生むというふうに当初予測されておりましたけれども,最新の予測では,およそ1,970億ドルの減収に修正をされておりまして,その修正理由として,どの返還プランをそれぞれのユーザーが選ぶかという選択,それから,所得連動型返還プランを選んだ方の所得の伸びがどうなっているのか,こういったところの数字の変更によりまして,収入の試算が減収へと修正されているというふうに連邦政府においても発表されております。
 次のページ,学生ローンにおける所得連動型の返還制度について②につきましては,これは連邦政府の学生ローン制度が,授業料分をぴったり支援するという制度にそもそもなっておりませんので,そういった意味で授業料の目安などがあったほうが分かりやすいかと思いまして,参考として各学校種別につけているものですので,それぞれの数字についての説明は省略させていただきます。
 それ以降のページにつきましては,第1回会議の再掲でございますので,こちらの説明は割愛させていただきます。
 事務局から資料1,2につきましては,以上です。
【小林座長】  ありがとうございました。それでは,事務局からの御説明に関しまして,御質問等ありましたらお願いいたします。対面で御出席の委員におかれましても,御質問等があれば,タブレットの挙手ボタンでお願いいたします。いかがでしょうか。
 川端委員,どうぞ。
【川端委員】  ありがとうございます。1点だけ,ちょっと私自体がよく分かっていなくて,日本の貸与型の有利子に関してはどういう状況なんですか。これと同じようなことが組まれているんですか。それともこれとはまた別次元のものなんですか。
【萬谷理事】  では,私から。学生支援機構の萬谷でございます。所得連動返還方式は,現行では第一種奨学金,無利子のほうにだけ導入をされております。それは制度をつくったときの議論としては,第二種のほうは有利子,若干の利子がつく奨学金なものですから,所得連動ということで計算する場合に,利子の計算とかそういった要素が入ってくるということで,まずは第一種から実施するということだったと理解しております。
 以上でございます。
【川端委員】  ということは,有利子に関しては終わる期間が決定されているという。
【萬谷理事】  そうですね,定額返還方式……。
【川端委員】  ですよね。
【萬谷理事】  でございます。
【川端委員】  所得連動というのは,要するに期間がどんどん延びていくパターンなので,利息が入ったら利息ががんがん上がっていくという話になっていくというので今の有利子の場合はやめているという。
【萬谷理事】  はい。
【川端委員】  アメリカにおいても,これ有利子だからという話があって,きっとそこがかなりキーになっていくような気がしていました。
 あと,もう一点だけ。4ページ目のアメリカの政府の話,どうもありがとうございました。で,結局,左の下に書いている1,970億ドル,これは何? 破綻しつつあるということなんですか,このローンは。
【今村企画官】  債権の総額が,小さく1.4兆ドルと書いておりますように,1ドル100円だとしても140兆円。
【川端委員】  140兆円。
【今村企画官】  はい。
【川端委員】  の中の1,970億ドル。
【今村企画官】  そういったローンプログラムにおいて,少し前の試算では,利子などによって1,140億ドルですから,10兆円ぐらいプラスになるだろうと見積もっていたところ,より直近の値で計算し直したら,逆に20兆円マイナスになったと。その差額が30兆円分だったというもので,その影響というのは無視できないものとは思いますが,ただ,破綻しているというところまでにはならないんじゃないかと思っています。
【川端委員】  イギリスと,それから豪州の話,前回出た場合は,基本的には,もともとが無償のやつを有償にしたためにこういうのは,政府が手を入れてでもやっていこうと。一方,アメリカの場合は,今の話をお聞きしたら,結局,この中でエコシステムが出来上がっていないと動かない世界をつくっていて,だけど思ったほど収入は上がらず,ちょっとがたがたしていますよというのが今の状況という感じなんですかね。
【今村企画官】  利率が高く設定されているので,たくさん返す人と,結果として返せなかった人との中でお金のやりくりがなされるという制度設計であると思います。一方で,近年,様々な政権が替わるたびに,学生向けの支援というのを充実するというのを打ち出して,打ち出しては新しいプランが加わってきておりますので,利用者の間だけの助け合いでは支え切れず,公的な負担というのが一定程度なされているというふうに理解しました。
【川端委員】  ありがとうございました。
【小林座長】  私のほうで少し補足いたしますと,まず,有利子の問題ですが,これは非常に重要な問題で,日本では今,非常に金利が低いので大きな問題にはなっておりませんけれど,常に所得連動型の場合には大きな問題になっております。イギリスも当初は,所得連動型に関しては無利子でやってきました。オーストラリアも実質的には無利子という言い方をしていますけれど,インフレ連動で上がっていくというだけで,いわゆる利子はついていない。これは川端委員御指摘のように,所得連動は所得の低い人が長期間にわたって返済する仕組みですので,有利子ですと非常に利息が高くなってしまうという問題があるので,それを回避するためにそういう利子補給を行っている。前回イギリスで少し御説明しましたのは,その利子補給分がかなりの金額に上っているというのがイギリスの状況だということです。それで,イギリスの場合には,所得に応じてゼロから3%までの利息を取るという方式に今変更されているということです。
 それが第1点目の問題で,アメリカの場合には,今まで所得連動型があまり普及しなかったのは,利子が非常に高かったということがあるのですが,これは2番目の問題とも関係しますが,特にオバマ政権,それからバイデン政権はコロナ禍のためにですけれど,利子を下げているということがありまして,予測よりも非常に低い収入しか得られていないというのが現在の状況です。
 これが第1点目の問題で,それから第2点目の問題について言いますと,この予測は,実はGAO(Government Accountability Office),日本で言うと会計検査院に当たるところが出している予測でありまして,これについてもいろいろな予測が出ていますので,そのうちの1つとお考えいただければいいかと思います。
 川端委員,よろしいでしょうか。
【川端委員】  ありがとうございます。
【小林座長】  では,赤井委員,よろしくお願いします。
【赤井委員】  ありがとうございます。今,有利子,利子のところを非常に分かりやすく説明していただきました。日本は低いけど,高くなれば無利子でやることによるコストがかかるということだと思います。
 アメリカとの比較で,前回の資料の6ページですかね,6ページに分かりやすくオーストラリア,英国を並べてあり,ここに米国を並べてきたときにどういうふうになるのかというのは説明されていると思うんですけど,その辺りの確認で,基本的には全員が利用可能で,徴収は指定する機関が行ってということなので,徴収はオーストラリアや英国のような税当局ではなくて日本型で,そういう理解でいいのかと,あとは規模感,いわゆるアメリカで言うのはもうかなり結局浸透しているという理解でいいのか。これ,規模感的にどのぐらいの割合の人がこれを使っているのか。
 あとは,免除のところで,アメリカは政府機関に勤務すると免除になるというふうに書いていて,日本は昔そういうのがあったような気もするんですけど,今はないので,日本である死亡とか,あとは特に優れた業績とか,そういうのはアメリカにあるのか。その辺り,日本と比べてアメリカのは,どこが似ていてどこが違うというところをもう一度整理して教えていただけますでしょうか。すみません。
【松本専門官】  事務局からお答えします。まず,支援の形態から徴収方法のところまでにつきましては,今,赤井委員に御指摘いただいたとおりでして,対象については希望者全員というところはほとんど同じということかとは思いますし,徴収方法につきましては,イギリス,オーストラリアとはアメリカは異なるということになります。
 それから,返還されない債権の割合につきまして,同じようにこの表に並べられるような数字がないかいろいろ調査をしたところではあるんですけれども,全く同じような形で,幾らこの年度に貸したものが最終的に何%返ってこないというストレートなデータにつきましては,少なくとも確認できませんでしたので,収入減収の予測……。
【赤井委員】  すみません,規模感というのは,希望者全員ですけど,どのぐらいの人がこの制度を利用しているかというのはどうなんですか。
【松本専門官】  まず,連邦政府ローンを利用している者の割合で言いますと,資料2の2枚目にございまして,いわゆる日本でよく話題に上がるようなアメリカの4年制の大学は「私立・非営利」に該当しますけれども,そこの数字で言いますと,連邦政府ローン利用者の割合が60%というふうになっております。また,その中で何%の方が所得連動型のプランを選んでいるのかというところで,債権の総額につきましては,45%というふうに書かせていただいておりますけれども,利用者についてもかなり伸びておりまして,すみません,手元に今正確なデータがないのですが,半分前後ぐらいには達していたかというふうに思います(注:約33%)。改めて確認はさせていただきますが,そのように近年,非常に利用者が増えているというふうに言えるかと思います。
【赤井委員】  ありがとうございます。あと,免除に関してはどうですか。
【松本専門官】  免除につきましては,米国の制度におきましては,先ほど御説明しましたとおり,所得連動型のプランである場合,このプラン以外にもベーシックなものが2つございまして,合計4つのプラン。いずれにしても,20年から25年間返還を続けた場合につきましては返還免除ということとなっております。
 それから,日本の場合は,御指摘いただいたように,いわゆる全く同じような公的機関での返還免除というものは今現在ございませんけれども,大学院の段階におきましては,業績優秀者の返還免除制度というものがございまして,第1回の会議で資料をおつけしていて,今回お配りしておらず大変恐縮ですけれども,修士課程で申し上げますと全体の3割,それから,博士課程で申し上げますと,45%の大学院生につきまして特に優れた業績による返還免除制度が設けられております。
【赤井委員】  それはアメリカにはないということですね。
【松本専門官】  アメリカに同様の制度は,この連邦政府のローンにおきましては確認できませんでした。
【赤井委員】  あと,すみません最後に,5ページの利用状況というのは,これは学部レベルですか,院も入っているんですか。
【松本専門官】  こちらは学部です。
【赤井委員】  院はまた別にあるということですよね,利用割合。
【松本専門官】  はい。アメリカの制度,ただいま御紹介申し上げたものは学部を中心にしてまとめておりまして,ただ,同様のスキームで大学院についても様々なプランが用意されております。返還免除までの年数が異なるということでありましたり,その他何かしら要件が異なるということですが,大学院分,グラデュエートの部分だけを切り出したデータというのはここにはお示しできておりません。基本的なスキームについては同じというふうにお考えいただいて差し支えないかと思います。
【赤井委員】  分かりました。今,大学院を議論しているので,分かりました。ありがとうございました。
【小林座長】  また少し補足いたしますと,大学院用の連邦学生ローンというのが別にありまして,これはかなり利率が高いものです。利用状況については,先ほど事務局から出ましたように,細かい集計というのはあまり出されていないのですが,調べれば出てくると思います。アメリカの場合には,アンダーグラデュエートとグラデュエートの区別というのはあまりしていないのです。ですから,そういう意味では,統計ではかなり一緒になったものが出てくるということがあります。
 それから,徴収についてですけれど,実際は連邦政府が直接行えるわけではないので,民間に委託してそこが行っているということで,これは私が連邦政府に聞いたのはかなり前の話なので,現在そういう形になっているかどうか分かりませんけれど,特に変更したということは聞いていませんので,同じような形で民間委託で実際はやっていると思います。
 それから,公的サービスに就いた場合,10年間返還免除になるという話ですけれど,公的サービスというのはかなり広く規定されていまして,法律で明確にこの職種だということが規定されています。もちろん公務員とかは該当するのですけれど,それ以外にもNPOとかNGOとか,かなり広く公的サービスを捉えていることに特徴があります。
 以上です。
【赤井委員】  じゃ,公的機関のメリットが上がりますよね,これがあると。
【小林座長】  ええ。
【赤井委員】  ありがとうございます。
【小林座長】  よろしいでしょうか。ほかにございませんでしょうか。
 特にございませんようでしたら,次に進めさせていただきます。まず,制度の目的,考え方に関する議論というので,議題2に入りたいと思います。前回,先生方からいただいた御意見を踏まえまして,事務局から資料について説明をお願いいたします。
【藤吉課長】  今,座長からございましたけれども,前回,制度の目的について明確にすべきという御指摘をいただきましたので,資料の3を作成いたしております。また,具体的な制度の検討を進めていく必要があるということで,幾つかの論点につきまして,複数の案を資料の4にまとめておりますので,それぞれにつきまして今村企画官から御説明をいたします。
【今村企画官】  では,資料の3を御覧ください。10ページでございます。この新たに設ける制度がどういった目的なのかというのを明らかにすることで,国民に対するメッセージをシャープなものにしていこうという御意見を踏まえまして,事務局のほうで,前回までに様々な意見があったものを大きく3つの形でまとめました。
 1点目,2点目は,授業料負担があることが大学院進学の判断に与える影響を限定的なものとする。極力抑えたいということ。それから,高度人材・専門人材の拡大というのをまず挙げました。その下,小さなポツに内容,説明書きを書いております。最初のポツの下の段に「参考」とありますように,令和2年に始まった学部段階の修学支援新制度でございますが,この1期生が大学の学部を終えて大学院に進学するのが令和6年度になります。このように経済的に困難な世帯を含めて修学の機会が拡大している中で,そもそも学部段階で授業料を負担してこなかった学生が大学院に進学すると。その大学院進学を検討するに当たって,当面の経済的負担によって大学院での学びの機会を逃すことのないようにしたいというものです。進学後,授業料という形で当座まとまった金額の納付が求められるわけですが,そのことが進学するかどうかの判断について過度に抑制しないようにしたいということでございます。
 次のポツです。個人の自己実現だけでなく,社会全体として,高度人材・専門人材が拡大し還元されるということになるよう,より多くの方が大学院において高度な知を身につけられるようにしたいというものでございます。これらの目的に照らすならば,学部から直接進学する者だけでなく,社会人の学び直しもターゲットになるのではないかというふうに考えました。
 それから,制度設計に当たっては,所得に応じた納付,ある意味セーフティーネットだというふうに思っています。将来の自分への投資として大学院段階へのチャレンジを後押しすることにつながるのではないかと。つまり,セーフティーネットの語源に照らすならば,空中ブランコに安全網が引かれていることでチャレンジできるというものでございますが,大学院修了後の納付が一定の年収にならなければ始まらないとか,納付額も低収入のときには抑えられたものにするという制度であることで,仮に大学院修了後の就職が思うようなものでなかったとしても,安心してチャレンジできる仕組みとする必要があると考えました。
 続きまして,3点目として,教育費負担に関する国民的な議論の契機というものを挙げました。我が国では,高校生の保護者へのアンケートなどからも,教育費を親が負担するということが一般的となっております。一方で,この大学院に導入する新たな制度は本人が負担するものでありますことから,そのような教育費の負担の在り方を議論する契機となるのではないかというふうに考えた次第です。
 そのような議論に当たっては※をつけております,これは骨太2022からの引用でございますが,教育費を親や子供本人,それに加えて,国も含めてそれぞれの主体がどのように負担すべきかといった論点ですとか,この新たな制度が国民的に理解をいただき,受け入れられるものなのかどうかということについても考慮する必要があると考えております。
 以上が資料の3でございます。
 続きまして,資料の4でございます。この新たな制度の議論をさらに深掘りすべく,様々な論点ごとに複数の選択肢というものを考えた次第です。これは文科省としてこの方向で行くというのを示したものではございませんで,あくまでも委員の皆様から御意見をいただきやすくするようなたたき台として提示いたしました。
 まず,(1)といたしましては,授業料を不徴収とする方法でございます。この会議におきまして,イギリス,オーストラリア,それから,本日アメリカの例も確認してまいりましたが,いずれも,現金が学生にはいかず大学に振り込まれることで授業料不徴収という形を取っておりました。そこで,我が国においても,授業料に相当する額について学生支援機構が,学生を介さずに直接大学院に年1回または2回支払う,大学による代理受領というやり方でそれが実現できるのではないかと考えます。
 その具体的な利用の方式というのは,案1,原則全員が利用。利用辞退の申出により在学中の授業料納付も可能とするというやり方とするか,使いたい人だけが使うという案の2の2つが考えられます。しかしながら,※をつけましたように,案の1のやり方につきましては,この後(2)で御説明するように,年収要件を設けるかどうかということによっても大きく左右されると考えます。
 続きまして,(2)対象学生でございます。この新たな制度の対象としては,大学院段階の中でも,修士課程及び専門職大学院の学生としてはどうかと考えました。その学生の収入要件については3パターンが考えられます。
 1点目は,今の無利子貸与型奨学金における収入要件と同じ299万円とする。この場合,現行でも修士課程,専門職大学院の学生の8割以上は対象になり得るというふうに考えられますが,特に社会人学生の多い専門職大学院ではこの割合は大分低くなります。案の2としては,現行よりも収入上限を引き上げるなど別の要件を設ける。それから,理屈の上では考えられる案の3として,年収要件をそもそも設けないという3案でございます。
 続いて3点目,支援の形態・支援額でございます。イギリスの例も参考にいたしまして,授業料を不徴収とするための支援と,授業料以外にも生活費に充てているという実態がございますことから,授業料支援とは別に在学中の生活費の支援を行うというこの2本立てとしてはどうかと考えました。なお,この2つを併用するかどうかは学生が判断すればよいと思います。
 その2本立てとした上で,それぞれの使えるお金の額の水準については,例えば①,授業料については,国公立と私立との2種類を設定いたしまして,それぞれについては,授業料の平均額をベースとしてはどうかというふうに考えました。生活費支援の水準につきましては,過度な利用額,いわゆる借り過ぎということにならないように,授業料支援との合計額を今の貸与型奨学金と同水準にしてはどうかというふうに考えます。なお,この現行の貸与型奨学金と同水準というのは,修士の場合,月額で5万円と8.8万円が選べまして,月8万8,000円の利用の場合,年額ですと106万円になります。ですので,50万円であったり70万円であったりという授業料支援のほか,数十万円の生活費支援という,そういうイメージでこの②の記載といたしました。
 続きまして,(4)卒業後に納付を開始する年収水準でございますが,これも2案が考えられると思います。案の1は,146万円という現行と全く同じ水準でございます。それから,案の2としては,現行よりも年収水準を引き上げるということが考えられます。
 5点目,卒業後に納付する額(月額)につきましては,案の1,現行の所得連動返還と同じ計算方式で,先ほど資料1や2の説明で松本が説明したように,最低でも2,000円,課税所得の9%というものがまず1つと,もう一つ,案の1の所得連動と定額との選択を可能としてはどうかというのも考えられると思います。その際,定額返還ですと減額返還制度が活用できますが,この減額返還制度につきましては,この会議とは別に我々文科省内におきまして,この利用をもっと柔軟にできないか,具体的には325万円までしか使えないとされている減額返還制度について年収水準を上げることも検討しておりまして,もしそれが成立した暁には,こちらの案の2にも適用してはどうかというものでございます。
 最後に,その他関連する論点といたしまして何点か挙げました。いずれも前回に挙げている論点でございます。一番上から,卒業後の納付が困難となる場合の対応(返還猶予,機関保証など)という点。1つ飛んでいただきまして,学生,社会人への周知,初等中等教育段階における周知,それから,卒業後の納付支援策として,業績優秀者であったり,企業による代理返還,それから博士課程在籍者や博士課程修了者の待遇改善など,前回でも示した論点がございます。
 加えまして,上から2つ目に新たに書きましたのは,複数の学校種で利用しているケースに何らか対応しなければならないのではないかというのを書きました。これの意味するところは,今の貸与型奨学金では,学部で利用している方が引き続き大学院で利用し,それぞれで所得連動返還を選択した場合,債務としては別々の債務ということになりまして,所得の9%がそれぞれにかかってしまいます。なので,博士課程まで利用し続けた場合は,9+9+9で所得の27%というような状況になるということについて,何らか改善が必要ではないかということで記載をした次第です。
 資料3,4の説明は以上でございます。
【小林座長】  ありがとうございました。まず,制度の目的・効果,こちらについて議論をしていきたいと思います。この後に個々の論点について検討したいと思いますので,目的のところ,資料の3について御意見を伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。
 川端委員,どうぞ。
【川端委員】  では,私のほうから少し。ありがとうございました。これでかなりシャープになったかと思います。幾つかの点で,授業料負担が進学の判断とか意思決定をできるだけ感じなくしましょうというもの。それから,2つ目は高度人材・専門人材,これはベースとして大学院生,大学院への進学。ただ,拡大とやると,人数を増やすんかという。要するに,何がゴールになるんかなという。今,充足率が低いところが増えていく世界を目指しているというよりは,よりもっと高度な人たち,行きたいと思っているけど行けなかった人たちが行くんだという意味じゃ,これ自体は拡大というか,強化というか,そういうような人材をさらに増やしていって,もっと言うと,大学院自体の倍率を上げるという,そんな姿から始まるのかなと思いました。
 あと,もう一点は,社会人のリカレントの話が前回ちょっと出たけど,これで非常にシャープになった。要するに大学院に行く人ねという。もうその人に限定してやります。そうすると,おのずとこの後,順々に所得制限だとか何とかいろんなものを別建てで考えなきゃならないのか,学生が進学するときの所得水準と社会人が学び直す場合の所得水準は,当然,家に扶養家族がいて,子供がいて,でも大学院に行きたいんだという,そういう人たちをどう支援するという世界になるので,多分そこのペルソナが少し違って,2本立てなのか全廃,制限を取っちゃうのかという姿なのかなと思いました。
 あと,セーフティーネットは,先ほどちょっとお話しされたように,あくまでもセーフティーに感じられる形ということなので,そうすると,所得は少ないけど,ずっと後ろに借金が延びていくだけでは済まない世界かな。そうだとすると,無利子にせざるを得ないしというようなものが順々に決まっていくような,そんな気がして非常に明快になったかなという気がします。
 あと,目的3に関しては,国民的な議論というのは,先ほど最初に出ましたように,アメリカのように,結局は利子収入みたいなもので全体がカバーされてという動きよりは,やっぱり国としてこういう人たちを支援していくという意味では,公費型のものがかなりお金を突っ込みながら回っていく世界を発進するんですかねという,そんな気がしました。
 すみません。感想ですけど,以上です。ありがとうございました。
【小林座長】  ありがとうございました。大きな問題の提起といたしましては,社会人については少し別建ての議論が必要ではないかということですね。これについては,ターゲットとするということはもちろん前回も出ておりましたし,この目的の中に入るわけですが,その場合は少し別に考えなければいけないのではないかという議論で,これは非常に大きな問題提起だと思います。特に修士課程といいましても,いわゆる今までの修士課程と専門職大学院というのはかなり性格が違いますので,その辺も同じような意味合いで議論する必要があるのではないかという気がしております。それが大きな問題の提起だと思います。
 それ以外に関しましては,今までの議論を踏まえますと,無利子にせざるを得ないのではないかということも,後の議論ですけれど,これも御指摘のとおりかと考えておりますが,これについてはまた後で御意見をいただければと思います。
 それから,目的の3については,教育未来創造会議等でもかなり言われていることなので,それをここでも目的の中に加えていることだろうと思います。
 ほかに御意見ございませんでしょうか。いかがですか。特に今の社会人と別に考えるということが必要ではないかという点については,いかがでしょう。これは次の具体的な議論のところでも伺うことかもしれませんが。
 濱中委員,どうぞ。
【濱中委員】  濱中です。社会人と別々に考える必要があるかどうかという点について,目的としては分ける必要はそんなにないかなというふうに私は理解をしています。現状でも,日本学生支援機構の奨学金については,新規に学部を卒業したばかりの学生さんであっても,奨学金の基準は,親ではなく本人の所得で決まっているわけですから,基本的に社会人の人とすぐ進学する人でも,そんなに大差ない制度になっているわけですね。先ほど意見があったように,年齢が30代半ばぐらい以降になれば,子供がいたりとか家族がいたりという部分についても,所得基準をもし設けるのであれば,そのときの控除額等で所得の上限調整が恐らく可能だと思うので,最初から社会人用,学生用と分ける必要はそんなにないかなというふうに考えています。
 むしろここで気になるのは,目的の順番,並び方で,3番目の国民的議論の喚起はちょっと論点が違うので最後で仕方がないと思うんですけど,2番目と1番目は,どちらが先なのかなというのはちょっと悩ましいというか,2番目の大学院全体を充実させるというか,大学院進学者を充実させていくという観点を重視するのであれば,むしろ2番のほうが上にあり,そのための方策として授業料不徴収の話が出てくるというほうが順番としては正しいのかなと。ただ,奨学金の議論なので,授業料負担というか,負担軽減,経済支援のほうが1番のほうの目的に上がってしまうというのも何となく理解はできるので,どちらを先に出すかというのは,戦略的には考えどころかなというふうに思いました。
 以上でございます。
【小林座長】  ありがとうございました。また新たな提案ですが,これについてもいかがでしょうか。1と2を変えたほうがいいのではないかという御提案ですが。
 川端委員,どうぞ。
【川端委員】  すみません,ウェブだから一々手を挙げないとなかなかしゃべれないんですけど,おっしゃるとおり,これ,どのラインでやるか。ただ,高度人材・専門人材ってこうなると,どこかで評価が必要になってくるというそんな気がして,私はこれ自体はやっぱり全員,希望者とか,原則全員というスタンスのほうが訴求力が強く出て,こんなような気がしています。今の段階では高度人材・専門人材だからというところの,だから何をするかは何も書いていないので,全員に対してとか希望者に対してでしかないので,そこに審査するとか選別するとか,何かそんなような話にならないほうがきっとこれはいいのだろうなという,そんな気がしました。私の意見です,個人的な。
【小林座長】  ありがとうございました。よろしいでしょうか,ほかの委員の方。
 座長があまり言うのもどうかとは思いますけれど,今の御懸念について言いますと,大学院ですので,大学院で当然,入学に際して基準を設けてそれぞれの大学院が選抜を行っているわけですから,そこである程度の,高度人材・専門人材ということにふさわしいかどうかということは各大学院が判断されると思います。ですから,そこのところをどう考えるかということだろうと私個人は思いますけれど,川端委員,それでよろしいんではないかと思うのですが,いかがですか。
【川端委員】  ちょっと気楽な話を少しさせてもらうと,今ぶっちゃけ,充足率がそんなに,修士課程に関しても,文系を中心に,それから私学中心に充足率がなかなか上がらないという世界があって,この辺がいろんな意味でフォーカスを強く当てられていく気がするんですよね。そういう意味で,いや,それはそれで重要なんですよ。そういうところの人たちってこうなると,今,大枠で見たら,修士課程でもやっぱり社会人であったり,留学生がかなりの割合を占めていて,そういうところも含めてこれはどう見るのという。最初に先生がおっしゃるように,選抜されていて入試があって,それを受けた上での人たちなんですよと,こういう話にはなっているんだけど,改めてここに高度人材・専門人材と,こういう話を強く掲げると,本当にそうなのというところがどこかここかにあるような。いや,話題にしてもいいですし,話題にしなくて進んでいってもいいかなという,そんな気がしています。
【小林座長】  ありがとうございます。いかがでしょうか。日本学生支援機構の奨学金という形になると思うのですけれど,具体的にはこれから次の問題ですけれど,その場合,日本学生支援機構の奨学金というのは,経済的な要件と学業の要件と両方満たすものに奨学金を出すということに法律的になっていますので,何らかの意味で,学業といいますか,そちらのほうの基準も,メリット基準も使うということが前提になっていると思うのですね。この書き方ですと,確かにそこが少し明確ではない気がします。大学院に進学する能力があって,かつ経済的に負担が大きいので,そういう人材に対して,濱中委員が言ったように,これを最初に掲げるとしたら,まずそこが目的であって,そういう人たちを拡大,専門的人材を養成するということで,そのために経済的な負担を減らすということの目的が2番目に来るという,そういう形で少し,多分ここにそのことが明確にあまり書かれていないということが問題ではないかと思うのですけど,いかがでしょうか。
【川端委員】  川端ですけど,今先生がおっしゃったように,合体していてもいいような気がしますね,この1,2って。
【小林座長】  それでしたら,せっかく御指摘いただきましたので,事務局とも検討しますが,2と1をひっくり返して,そこのところに今の日本学生支援機構の奨学金の目的規定みたいなのも参考にしてつくっていくと。そういうようなことでよろしいでしょうか。
 今,手が挙がりましたね。荒張委員,どうぞ。
【荒張委員】  私もほかの委員の先生方のお話を聞いていてちょっと思ったんですけれども,前回の資料を拝見しても,現状の学生支援機構の奨学金が,大学院になると世帯年収じゃなくて本人年収なわけですよね。ですので,もともとの奨学金の趣旨が,経済的に困窮な世帯の子女であっても高等教育の機会を与えようということで奨学金がなされたというのは理解している一方で,既にこの大学院の考え方というのは,本人の年収の中で,将来の自分の年収の中でさらにワンステップ上の高等教育を受ける機会を得られるかどうかというところでの支援だということが読み取れてくるので,そういったときにこの「経済的に困難な世帯を含めて」というところは,背景説明ではあるけれど,何かこれ自身がこの制度の話に直接関係するんだろうか,というところが若干疑問に思ったんですけれども,そこはどのように考えればよろしいんでしょうか。
【小林座長】  私の考え方を先に少し,事務局には後でお聞きしますけれど,申しますと,「経済的に困難な世帯を含めて修学の機会が拡大している」というのは,これは修学支援新制度で学部の段階の話ですね。
【荒張委員】  はい。
【小林座長】  川端委員もちょっとおっしゃっていたと思うのですけれど,それと高度な人材・専門人材というのが何かうまくつながらないわけです。ですから,そこのところが,これが別の議論ですよ,言わば。
【荒張委員】  やっぱりそうですよね。なので,ちょっとそこに私も同じように違和感を覚えたのと,こういう制度がある中で,経済的に困難な方がまず学部生として支援を受けて,さらに大学院を目指すときに,整合的なというか,無理のない返還ができるような新しい仕組みを同時に用意するということであれば理解できるんですけれども,ちょっとその辺のところが気になりました。
【小林座長】  ありがとうございます。今の点については事務局いかがでしょうか。
【今村企画官】  表現の工夫は必要かと思いますが,意図といたしましては,保護者からの支援に頼れない人たちがいるのではないかという思いが強いです。そういった学生たちは,大学学部卒業後の進路選択に当たって,大学院に行きたいと思っても,頼れないから働いて稼がなきゃいけないという思いが強いのではないか。それは印象論ではなく,前回お示しした学生のアンケートでも,経済的な理由で進学ではなく就職という選択をしているという学生が一定程度いるということも見てとれましたので,そういう考えで入れておりますが,ただ,荒張先生がおっしゃるように,本人の収入に基づいてやっておりますので,理屈の上では,親御さんの経済的状況がどういう状況であったとしても,利用は可能ではあります。ただ,心理的なハードルがある人たちに対して,心配することなく,チャレンジしたければ,修了後の自分の進路というのもよくよく勘案した上で判断してくださいというメッセージは届けたいなと思った次第です。
【荒張委員】  なるほど。分かりました。その際に,先ほどダブルにならないようにというのは次のページでも出てくると思うんですけど,そこの部分はちゃんと強調していったほうがいいのかもしれませんね。9%がダブルになるようなところであると。
【小林座長】  それは次の問題として確かにあると思いますので,またそれで議論したいと思います。ありがとうございました。
【荒張委員】  ありがとうございました。
【小林座長】  ですから,今のお話というのは,目的の1のところを少し,これ一行しか書いていないのですけれど,先ほどの保護者調査のこととかを入れてもっとエビデンスを示さないと,やはりちょっと分かりにくいと思います。ですから,その辺りも含めて,次までにまた原案を考えていただければと思いますが,よろしいでしょうか。
【今村企画官】  はい。
【小林座長】  では,赤井委員,どうぞ。
【赤井委員】  私もどっちがいいかというのはちょっと悩むところで,今言われた「経済的に困難な世帯を含めて」というところのこの2文,目的1と2が行が引っついていて,その下に文章が来ていて,でも,2の下に文章と3の下に文章があるから,2の下の文章は2の説明ということでいいんですか。その辺の理解があれですけど,今言われた「経済的に困難な世帯を含めて」という文章は目的1の説明ですよね。
【今村企画官】  そうです。
【赤井委員】  目的2の説明が,その下の高度人材の還元ということですよね。だから,そこのところがちゃんと明確に対応していればいいというのと,あとは,この会議でこういうのを決めるのはいいと思うんですけれど,もともと上の政治であったり,もっと大きな会議の下で書かれているので,そのときの理念がどっちだったのかというところを踏まえてつくらなくていいのかという。ここだけで決めていいんだったらいいですけど。言っているのは,やっぱり公平性を重視してこの制度を入れようというのが上から上がってきたものなのか,それとも効率性,もっと一人一人のレベルを上げることが日本の社会のためにいいんだみたいなところから来ているのか。その上の政治的なところの,それでいいか分かりませんけど,政治的にどっちからこの議論が出てきたのかというところを意識してまとめるほうが,後々ここでのまとめ方と政治の思いが違うということになってもいけないような気がするので。
 多分,政治的には,行きたくても行けない,行くなら自分で払ってねみたいなことになる学生がやっぱり大学院は多くて,それだとなかなか,親にまた迷惑かける,自分で払ってねというよりも,親にさらに授業料を払ってもらっていくということに引け目を感じる学生が多いから,こういう制度を入れましょうというようなところもあったような気がするので,そうすると,1のほうが強いのかなという気はしていますけど。ちょっとそれは参考までの意見なので,あとはお任せします。
【小林座長】  ありがとうございました。先ほど3について,教育未来創造会議の議論にこういうところが入っているということを申し上げましたけど,1も2も実は入っている。ですから,そこをきちんと出しておくというのは重要だと思いますので,今日はこの簡単な資料だけでやっていますけど,実際に書くときにはそういうものをいろいろ入れていただいて,それを受けてこういう形で書くということですね。そういう形にしていただければ,赤井委員が言われたことは明確になると思います。
 ただ,私の見るところでは,教育未来創造会議の議論というのも,この2の話と1の話というのは必ずしも,整合的でないとは言いませんけれど,別々の観点からだったりする。ですから,そこが今少し議論になっているように難しい。ここでこの議論をするときに少し難しいのかなという気はいたします。そこはもう少し検討させていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。
 ほかに御意見ございませんでしょうか。よろしいですか,赤井委員。ありがとうございました。では,引き続き検討をお願いいたします。
 それでは,目的の議論については以上にいたしまして,制度の基本的な考え方ですね,具体的な制度設計についての議論に移りたいと思います。これについても幾つか原案を示していただいておりますけれど,もちろん,先ほど事務局から説明がありましたように,これが必ずしも原案というよりも,たたき台というような意味合いが強いということと,それから,もちろん委員の中で,これ以外によりいい案であれば,それをここで提案していただければと思います。いかがでしょうか。順番に一応やっていきたいと思いますが。まず,授業料を不徴収とする方法について,これは原則全員とするか,それとも希望者のみという形にするかということですが,これについてはいかがでしょうか。
【赤井委員】  全員がいいと思います,僕は。
【小林座長】  ありがとうございます。よろしいですか。全員という案1のほうがいいのではないかということですが,ほかに御意見ございませんでしょうか。
【赤井委員】  財源の問題はあると思いますけど,そこを考えなければ。
【川端委員】  最後,全てそこに行くと思いますけどね,財源の話に。1つ,最初にお話しされたように,これはこういう目的のためにやるんですとなれば,それに一番近いのはやっぱり案1になっている。最後に全体とすると財源は一体どうなるという,こういう話になっていくような気がしますけど。
【小林座長】  そこの辺りは非常に重要な議論ですけれども,ここでは財源論については特に触れていないわけですね。ですから,そこはどうするかというのは少しあるとは思いますけれど,前回も財務省と関係省庁と,この問題はここだけでは片づかないのではないかということで議論があったと思いますけれど,事務局のほうとしてはその辺り,まだ,前回では特に調整はしていないというお話でしたが,いかがでしょうか。
【今村企画官】  この会議の議論も踏まえて,政府部内では調整をしてまいります。
【小林座長】  分かりました。じゃ,こちらでまず原案を出すということですね。
【今村企画官】  はい。そうですね,おっしゃるとおりです。それで,今ちょうど1番目の論点のお話になっていましたが,2番目の年収要件とセットで御検討いただいたほうがよろしいかと思いました。と申しますのも,(1)の案の1というのは,年収要件がなければこれはできますが,年収要件がある場合,案の1のような状況を生み出すのは,相当知恵を絞らなきゃいけないなと今聞いていて思った次第です。
【小林座長】  分かりました。一応,案の1が今,委員の中では支持されているわけですが,2も考える必要があるということですね。
【今村企画官】  はい。
【小林座長】  1つ私のほうから補足しますと,案の1の場合ですと,これはオーストラリアとかイギリスが採用している方式になるわけですが,日本の場合で言いますと,優秀者免除という制度があるわけでありまして,これは全額が1割,半額が2割ということになりますので,合理的に考えれば,優秀者免除の対象になるわけですから,案の1というふうになるのと,希望者のみというのは,よっぽど将来の負担をしたくないという,借金をしたくないという方以外は,案の1といいますか,申し込むのが合理的な選択だというふうに思います。それを少し考慮に入れていただければというふうに思います。
 それでは,対象学生について,ここは非常に重要な論点でありまして,いわゆる出世払いというふうに言われているわけでありまして……。
【濱中委員】  小林先生,ちょっとよろしいですか。手挙げていますので,よろしいですか。
【小林座長】  ごめんなさい。濱中委員,どうぞ。
【濱中委員】  小林先生が今御指摘したことはちょっと事務局の認識とはずれているというか,案1の原則全員利用というのは,制度を大きく変えたというアピールをする上で非常によいと思いますし,できればそうしてほしいですけど,問題は,(2)の年収要件を設ける場合,希望するけど利用できないという人が,対象学生の選び方によっては出てくるということだと思うんですね。要するに,年収が高くて,あなたは希望はしているけどこの制度は使えませんよとなったときに,後からその人だけにピンポイントで授業料払ってくださいというような仕組みにせざるを得なくなりますが,それが実務的に可能なのかというのが次の論点として出てくるということかと理解しました。
 同じく実務的な面についていうと,現状でも,JASSOの奨学金の利用者は,大学院でも半分いかないぐらいじゃないですかね。50%ぐらいですかね。ちょっと正確な数は分からないですけど。ということは,半分の学生は,もし将来の借金が嫌だとなると,窓口で利用を辞退しますという届けを出さなければいけなくて,それはそれでまた大学の事務にすごく嫌がられる可能性が想像できるので,対象学生というか,実際にどれくらいの学生さんがこれを利用するのかという見積りの下に制度を設計しないと,制度としては正しいんだけど,運用ができませんみたいなことにならないかということが非常に危惧されるというところです。
【小林座長】  少し今の意見は2の話と関わって,実際にそれぞれの案で運用した場合にどの程度の利用率になるかという見込みが必要だということが1点ですね。実際の問題としては学生のほうが幾つかのタイプに分かれてしまう。どちらの案を取っても幾つかのタイプに分かれてしまうだろうというのがもう一つの論点ですね。それはそれぞれそのとおりだと思いますが,いずれにしても2と関係しますので,2と併せて議論していただきたいと思います。
 それでは,荒張委員,どうぞ。
【荒張委員】  ありがとうございます。ちょっと質問なんですけれども,ここで言っている,「原則全員が利用」と言っているのと今までの奨学金の話とはどういうふうな整理をするという前提なんですか。今までの奨学金を全部これに変えていくということなんですか。ちょっとそこがよく分からなかったんですけど。
【今村企画官】  事務局として,この資料4を作成した念頭に置いておりましたのは,大学院修士において,今の形の第一種奨学金,無利子奨学金は大きく再編,改廃する。
【荒張委員】  なるほど。それを前提ということですね。
【今村企画官】  はい。それに代わるものとして,授業料支援と生活費支援が新たに生まれるというイメージです。
【荒張委員】  分かりました。了解です。そこの大前提がちょっと不明確だったので。理解できました。ありがとうございます。
【小林座長】  ありがとうございます。これは3の問題とも関連していますので,また後で現行制度との関係というのは議論したいと思います。
 では,川端委員,どうぞ。
【川端委員】  すみません,ありがとうございます。今のお話,大前提はやっぱり,最初にいろいろ言われているように,これは心理戦だと思っているんですよ。本当に足らない人にお金をあげるのではなくて,借りてもらうという世界だから,そうすると心理的なバリアを落とすというのは,ともかく制度をシンプルにしないと。そういう意味では,授業料不徴収全員ですよとやって,年収要件もありませんよとやって,その上で生活費と授業料というやり方とかいろんなものが出てくるけど,あと最後にタイミングという話があるんですけど,それを置いても,やっぱり心理的に分かりやすい制度にするためには,こういういろんな条件はつけないのがいいんじゃないかというのが私の提案です。
【小林座長】  ありがとうございます。まさしくオーストラリアやイギリスに近い制度ということです。
 ほかに御意見いかがでしょうか。
 1については,案の1ということが今のところ支持されていると思いますが,2番については,今,川端委員のほうから,案の3で年収要件は特に設ける必要はないのではないかという御意見ですが,いかがでしょうか。ここはかなり重要な論点だと思いますが,出世払いということにそれほどこだわるかどうかという問題にも関わるとは思いますけれど,いかがでしょうか。
【荒張委員】  小林先生,いいですか。荒張です。
【小林座長】  荒張委員,どうぞ。
【荒張委員】  今の収入要件の話と併せて,有利子と無利子と,そこはどうなるんですかね。これを見ていると,基本的には無利子を前提としているように読み取れるのかなと思っているんですけど。
【小林座長】  私としても,無利子ではないかと考えていますが。
【荒張委員】  無利子を前提として,収入要件がなくてもいいんじゃないかという,そういう御質問ということでよろしいですか。
【小林座長】  これ結局,また最後に財源の問題になるわけでありまして,無利子奨学金の場合は国庫ですね。有利子奨学金の場合は財投その他ですので,その辺の財源論とも関わってきますけれど,今のところは,私は,先ほど来,アメリカの例で申し上げているように,利息が高くなるとこの制度というのはあまり機能しなくなるおそれがありますから,そういう意味では,無利子ではないかと考えていますが。
【荒張委員】  私も多分,有利子の部分になってくると,かなり雪だるま式に膨らんでいくところが懸念されていて,理屈として,無利息だったらお金の回収云々というところは,それを延ばしてもファイナンス的に問題はない話になってくると思うので,私は無利子のほうがいいかなと思っているのと,あとそうなってくると,この収入要件というのは逆に言えば,高ければ高いだけ返していただけるということなので,そういう意味でも,シンプルであるというところと併せて,あまりここに収入要件はなくてもいいのかなと個人的には思いました。そのほうが次のトライをしようという人もハードルなく入ってこられるんじゃないかなというふうに思いましたので,そちらのほうがいいと思います。
【小林座長】  ありがとうございます。1の案1,対象学生はやはり案3ということを御支持されるということだと思います。一言付け加えておきますと,所得連動型の場合には機関保証という制度になりますので,保証料という形で手数料は取られます。この問題はここでは直接書いていないのですけれど,その問題が入ってくるということは一応念頭に置く必要があるかと思います。
 ほかにいかがでしょうか,皆さん。
【赤井委員】  赤井です。
【小林座長】  赤井委員,お願いします。どうぞ。
【赤井委員】  私も年収要件,いろいろやっぱり考えないといけない。全員にすると予算はかなり要るということで,財務省的な面から見ると絞るべきじゃないかとか,あとはばらまきじゃないかとか言う人がいるとか,財務省的には絞ったほうがいいと言うかもしれないですけど,やっぱり先ほど言われたシンプルだとか,訴求力とか,あとは事務手続の面も考えると,全員としておくほうが年収をチェックする必要がなくなるので,事務的な面とかそういうコストもいろいろ考えると,やっぱり年収要件はないほうがいいと思います。あとは返してもらえるとかそういうこともあると思うので,総合的にいろいろなことのバランスを考えると,年収要件ないという形でやるのがいいような。現在でも85%ですし,ほとんど少ない人と考えると,ある一部の人のために作業をたくさんすることになることを考えれば,設けないということにして,あと先ほどおっしゃったような機関保証みたいなお金がかかるとしたら,実際お金ある人は,そうしていてもこの制度を使わないということもあるでしょうし,それでいいんじゃないかと思いました。
 以上です。
【濱中委員】  小林先生,すみません。よろしいですか。
【小林座長】  どうぞ,濱中委員。
【濱中委員】  先ほど小林先生が少しおっしゃっていたかと思うんですけど,現行の日本学生支援機構は,経済的に困難がある人と学業成績が優秀な人に対して支援をするというのが法律上前提として決まっているらしいので,要件を何も設けない場合には,そもそもその法律に反するというようなおそれはないのかということを一応確認しておきたいというか,現行のJASSOの法律を変えないままこの制度を導入しようとすると,何かしらの形式的な要件が必要になってくるのではないかというような気もしてくるのですが,その点についてはいかがですか。学業成績のほうは,先ほど話に出た入学時の選抜があるとか,指導教員の推薦とかで何とかなるにしても,経済的に困窮というほうの要件は,何か年収とは別の基準でそれをきちんと,この人たちは全員満たしていますということを担保できるのであれば,もちろん制度としてはシンプルなほうがいいので,私もこの要件なしの案に賛成しますけど,事務的にというか,制度的にどうなのかというところを一応確認しておいたほうがよいかなというふうに思います。
 以上です。
【小林座長】  ありがとうございます。それは私もちょっと懸念していた点なので,法律的な問題なのですけれど,事務局のほうでいかがでしょうか。
【今村企画官】  濱中委員がおっしゃるとおり,年収要件を設けない場合は,現行法での実施は不可能だと考えております。
【小林座長】  つまり,法律を改正する必要があるということですか。
【今村企画官】  はい。
【小林座長】  そうすると,かなり大きな問題になると思いますが,法律改正を伴っても,案3でやはりシンプルなほうがいいか,そうすると現実問題としてはかなり,法律改正を伴いますから遅くなると思いますが,それでも案3でいくのかどうかということですね。この会議の結論としてそっちがいいのかどうかということですが。
 川端委員,どうぞ。
【川端委員】  ありがとうございます。大きい立ち位置は,JASSOの奨学金改革をやっているのか,それとも,一番最初に大学院段階での授業料とかこういうものをベースに進学者を強化するとか,専門人材を増やすんですと,これが大前提なのかによるかなとさっきからずっと思っていて,ゴールを高度人材とか専門人材とか,こういうような人材自体をもっと強化していくという大きいプランつくりましょうというのであれば,今の制度改革をどうぞやってくださいという話。ただ,制度改革は時間がかかるんだったら,じゃあ,年収要件をすごい上のほうに取っておいて,500万ぐらいに取っておいて,大半はかからないようにしてしまって,それでオーケーにしてしまって突っ走るというやり方もあるんだけど,基本的にはやっぱり一番効果的なやり方という,ゴールに向かってという,そこはやっぱり外せないところかなという,そんな気がしています。
 あとはもう,先ほどの逃げ道的な話でやっちまうというのもやり方でしょうし,正面切って,最初の目的3のように,教育費負担の国民的な議論の契機ですと言うなら,改革してもらいましょうよ,JASSOのと,こういう話をやってもいいかと思います。
【小林座長】  ありがとうございました。1つの新しい提案だと思いますが,先ほど少し申し上げましたけど,これは対象のほうですから,この制度に入るときの要件ですけれど,出世払いという話もありますので,その辺りをどう考えるかという問題とも関係するとは思いますけれど,高めに設定するということについては……。今村さん,どうぞ。
【今村企画官】  恐縮でございます。事務局からこの会議の前提といいましょうか,現時点に至るまでの様々な政府決定の内容について,まず事実関係を御紹介したいと思います。
 政府で教育未来創造会議で5月に提言が出されて,その提言を受ける形で閣議決定で骨太方針が決まりました。この方針として政府が今示しているのは,授業料を徴収せずに卒業後の所得に応じて納付する新たな制度,これの本格導入を検討してくことは示しておりまして,それに先立って,まずは大学院段階に導入するというような記載ぶりです。ですので,解釈によっては,大学院段階にまずは導入するものが最終的なゴールの形でなくても,閣議決定文書との関係では許容範囲なのではないかというふうに解釈は可能です。
 加えて,教育未来創造会議の提言を実行に移すために,実現するために工程表というものも決めております。この工程表においては,この仕組みは令和6年度に導入を目指すというふうになっておりまして,最終的な本格導入に向けての試験的な導入を令和6年度にするというふうに合わせて解釈すると,そのような状況でございます。
 ですので,我々としては,この工程表に沿って,令和6年度にできるだけよりよい形のものを入れる。一方で,令和6年度というのはもう目標として上げておりますので,そこは守っていきたいと,このような状況が文部科学省の置かれている状況でございます。
【小林座長】  ありがとうございました。今,先ほど赤井委員が言われたもう少し上の決定事項という中にそういう制約があるということの御説明だったと思いますが,それを踏まえていかがでしょうか。
【川端委員】  川端ですけど,今の話をお聞きしても,別にJASSO改革するための委員会ではなくて,そういうような制度を新たにつくりましょう,そのための財源の一部としてJASSOを使ったり何かが使えるんだったら,公的な資金であったりという制度を新たにつくりましょうという,こういう話かと思うので,ただ,メジャーの財源がどうもJASSOの10兆円をベースにした話を使わざるを得ないというので,そこに引っかかると時間がかかるから引っかからないような制度設計だけど,令和6年には実行できるような,テンポラリーというか,そういうような制度として,例えばJASSOのさっきの考え方だとかの改革というのには時間がかかるから,それはもうちょっと時間かけてやりましょう,まずはこの制度を走らせるためにはこれぐらいの,例えばさっきの年収要件だとかというのも基本的には大きい,ある程度高いところに設定して,それをやれば何ができるかというと,要するにリカレントの人たちもそこには引っかからなくなるしという,それぐらいのものを一気につくっちゃうと,まずはいける。ただし,先ほどお話しになったゴールのところの目的3ですね,3の中にそういうJASSO資金の改革も中に入れておく,引っかかるのであれば。というのをすると,この3がはっきりすると思いますけどね。
【小林座長】  ありがとうございました。そうすると,長期の検討課題として,JASSOの法の改正というか,法律改正も必要だと。ということは,この会議としてまず報告としては出すと。
【川端委員】  はい。
【小林座長】  ということですね,1点は。それからもう一つは,対象学生については,これは案の2ですよね,結局。収入上限を引き上げるということになりますから。
【川端委員】  そうですね。
【小林座長】  それもかなり高めに設定していいのではないかということで川端委員のほうから提案があったわけですが,いかがでしょうか。
 荒張委員,どうぞ。
【荒張委員】  収入金額を上げるというのは1つの方法かとは思うんですけれども,一方で,有利子の奨学金は,そうすると残るんですよね,さっきの話だと。
【小林座長】  現行の制度ではそうなりますね。
【荒張委員】  多分,無利子の部分を新制度に移行すると理解したので,そうすると今度,有利子も530万までのという規定の中で一種も上げていったときに,じゃあ,その差はどうしていくのか。もちろん学業とかそういったのがあるのかもしれませんけれども,その辺はどう考えたらよいのでしょうか。
【小林座長】  それは3とも関わる話だと私は理解しているのですけれど,結局,どう整理するかという問題ですね。現行の制度と次の制度をどういうふうに整理するかという問題ですね。
【荒張委員】  そうです。
【小林座長】  ですから,論点としては3になると思いますが,そこに移る前に2がかなり重要だと思いますので,案の2でよろしいでしょうか。ここが一つ,非常に重要な論点になると思いますので,皆さんの合意を取っておきたいのですが,よろしいでしょうか。
【荒張委員】  要は,案3は今の現行法では難しいと。
【小林座長】  ええ。現行法では難しいので。
【荒張委員】  令和6年導入ということも考えていくと,より現実的な案に絞らざるを得ないということですよね。
【小林座長】  そうです。それで長期的な課題としては,法律改正も含めて検討するべきだというのがここで出そうという,そういう原案です。
【荒張委員】  なるほど。分かりました。
【小林座長】  よろしいでしょうか。今日,阪本委員が欠席ですので,最終的には阪本委員の御意見も伺わなければいけないと思いますが,今日の会議の結論としてはそういうことでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 そうしましたら,3の論点,支援の形態・支援額ということで,今,荒張委員からありましたように,有利子をどうするかという問題で,ここは先ほど,生活費についても支援をするというので2本立てにするという話ですが,その場合,現行の有利子制度のままなのかどうか,その辺りについてもう少し事務局のお考えをお聞きしたいんですが。
【今村企画官】  もしここに示したとおり,つまり,これはもう少し言葉を補いますと,特に丸2に記載している内容は,先ほども口頭でお伝えしましたように,現行と同水準ということで,無利子奨学金をベースにするならば,現行は年106万円を貸し付けております。それと同水準ということです。つまり,私立大学ならば,70万円程度の授業料支援と30万円程度の生活費支援になるということになります。ただ,それで足る学生もいらっしゃれば,そうでない学生もいて,今は様々なニーズに対して有利子奨学金がそれを受け止めておりますので,有利子についても,この新たな仕組みが固まるとともに,併せて検討しなければならないと思います,変えるかどうかをですね。
【小林座長】  今の段階では,そうすると,有利子奨学金をどのようにするかということは,まず3が決まらないとその議論にならないということですか。
【今村企画官】  はい。基本的には変える必要はないと思うんですが,ただ,収入要件が変わるのであれば,有利子がそれより低い状況をよいとするのかどうか。それについて,いい悪いについてまだ事務局としても定まった見解はございません。
【小林座長】  分かりました。そうしましたら,まず,3について先に議論するというのが先決のようですので,まず,授業料支援の水準についてですけれど,国公立と私立の2本立てだということと,授業料の平均額をベースにする。これは前回御説明がありましたが,これについてはいかがでしょうか。
 濱中委員,どうぞ。
【濱中委員】  これは制度の趣旨からいくと,授業料については全額ローンで面倒を見てもらえるというのが本筋だとは思いますね。日本の場合,国公立大学は基本的に授業料はどこも同じ額に設定されているからあまり問題にはならないですけど,私学でも授業料の差が10万,15万ぐらいの幅に収まるならば,不徴収というからには,全額をカバーできるのが当然よいと思います。ただ,そうすると授業料をべらぼうに上げる大学が出てくるのではないかという心配が必ず出てくるわけで,その問題さえクリアできれば,その大学が設定する授業料は原則全額をこの制度で面倒見てもらえるというのを基本に設定して,極端に高いところだけ何か制限をかけるというようなやり方が正しいのではないかなというふうに思います。残った部分の生活費の支援が,月額で3万円ぐらいになるんですかね。その分は,授業料の不徴収を利用した人に限って給付するとか,そうした仕組みにしていくというのが本筋ではないかというふうに考えます。
 以上です。
【小林座長】  ありがとうございました。確かに,現在でも授業料,年額300万とかいう私立はありますので,文系でも高額のところがありますので,その辺りをどう考えるかという問題ですね。ですから,原則は全額をカバーするということですが,極端に高いのが出た場合にどうするかということと,それから,これはアメリカのべネット仮説と言われるものですけど,奨学金が上がると授業料を上げることが可能になるので,授業料を上げる大学が出てくるのではないかという,その懸念をどういうふうに考えるかという,そういう御指摘だったと思います。これについていかがでしょうか。
 すみません,確認ですけれど,現在のところでは,国立大学は一定の基準があって,標準額の20%ということになっていますけれど,私立大学については特に規制といいますか,そういうものはないですね。大学の自由に設定できるということですね。
【今村企画官】  小林先生,大変申し訳ございませんが,音声が途切れ途切れでございまして,もう一度お願いできますでしょうか。
【小林座長】  すみません。それじゃ,もう一回ゆっくり話します。
【今村企画官】  申し訳ございません。
【小林座長】  いえ,とんでもないです。国立大学の授業料については,現在,標準額と20%までの値上げということで規制がかかっております。しかし,私立大学に関しては特にそういう規制はなく,全く私立大学が自由に授業料を設定できるという理解でよろしいのでしょうか。
【今村企画官】  おっしゃるとおりです。
【小林座長】  そうしますと,今の授業料を上げる大学が出てくるかもしれないということについては,その懸念は拭えない。ただし,もちろん実際には,価格設定というのは当然,志願者数とかそういうこととも関係しますから,そんな簡単な問題ではないとは思いますが,いずれにしても規制はかけられないという,そういうことですね。
【今村企画官】  おっしゃるとおりです。
【小林座長】  分かりました。ありがとうございます。ということなのですが,いかがでしょうか。元に戻って申し上げますと,濱中委員は,基本的には全額をカバーするべきだという御意見で,ここでは平均額ということになっているのですが,そうではなくて,それぞれの各大学によって授業料水準が私立は違いますから,それぞれに応じて全部カバーするというような,そういう形を取るということでしょうか。濱中委員,お願いします。
【濱中委員】  不徴収をうたうからには,やはりそのほうがすっきりするというか,平均額より少しだけ授業料が高い大学だと,あなたたちはちょっと額が足りないから,あと5万円だけ授業料を納めてくださいとかいうのは何か違うかなと。それだったら最初から,本当に不徴収の形を取れるのであれば,そのほうがはるかに望ましいだろうと,そういうことですね。
【小林座長】  という御意見ですが,いかがでしょうか。どなたか,すみません,手が挙がっていますね。
【今村企画官】  事務局,今村です。
【小林座長】  どうぞ。
【今村企画官】  このような案を考えました背景といいましょうか,どうしてこういうことに至ったかを御説明したいと思いますが,まず,授業料不徴収であるので,大学ごとに個別に対応するというのが理想だというふうに私も思います。他方で,それが実行可能なのかということと,小林先生が確認されたように,それ以上の額に上げないことを担保する仕組みがございません。我々が参考にしてきたイギリスやオーストラリアの例では,オーストラリアにおける高等教育機関はほぼ国立であるということが我々と事情が異なりますし,イギリスにおいても,私立大学で日本においてもすごく有名な大学が幾つもございますが,授業料政策については,基本的に公的な枠組みの範囲内というふうに聞いておりますので,我が国の私立大学と状況は全く異なっております。
 加えて,令和2年に始まりました学部段階の修学支援新制度も,高等教育の無償化をうたってはおりますが,技術的な限界から一定の額,具体的には年額70万円を授業料減免の上限といたしまして,それを超える分については本人が負担しているということもございますが,こういう先例も踏まえまして,このような形が現実的なやり方ではないかというふうに考えた次第です。
【小林座長】  ありがとうございました。日本の現状を考えると,こちらのほうがフィージビリティーが高いという御説明だったと思いますが,いかがでしょうか。
 川端委員,どうぞ。
【川端委員】  それぞれそのとおりで,やっぱり一つ,授業料は不徴収と,こういうメッセージ性というのは重要で,重要なんですが,最後の最後に財源の話が絶対絡んでくるんですけど,要するに私立大学のほうで今,ちょっと前の資料を基にすると,8万人か9万人ぐらい大学院生がいそうで,それで国立が14万人ぐらいいて,授業料の金額自体が倍だとか3倍だとかってこうやると,同じぐらいのお金が私立のほうにも必要になってきて,それは一体どこに,例えば財源として吸収できるかというのが,今までやられていた第一種の無利子の例えば奨学金,あそこを財源にやっていくとすると,要するに授業料のためにお金がわーっと流れていったために,生活費として国立の理系だとかああいうところで,それで食っていた人たちのほうに行く人数が減っていくとかいう,そんなスキームがもし起こるのであれば,全体バランスをやっぱり考える必要が出てくるというところもあるかなというのがちょっと思いついた意見です。
 そういう意味で,どこかでキャップを引く必要もあるかもしれないし,先ほどの平均値みたいなものを使わなきゃならないのかもしれないしというので,どこかでボリュームを教えていただけると。これ全部を例えば,不実施にした場合に一体幾らぐらいの財源が必要になってくるのかという,そんな話をリアルにやると,この辺の話はもっとリアルに議論できるかなと,そんな気がしました。
【小林座長】  ありがとうございます。ただ,先ほど確認しましたように,今のところ財源の話というのはできていないということのようですので,その辺りは,今のところは,確かにおっしゃるように現実的に考える必要があると思いますけれど,そこの議論ができないということだと思いますが。
【川端委員】  でも,規模感だけでもどこかで知っておく必要があるかもしれないですね。全部を不実施にした場合に,一体どれぐらいの授業料の金額に膨れ上がるのかというのは。
【小林座長】  そうですね。それはぜひ,そんなに難しい試算ではないと思いますので,規模感については,次回までに出していただければと思いますが。
【今村企画官】  承知しました。
【小林座長】  よろしいですか。
【今村企画官】  確認できる直近の年度で,決算ベースで私立大学や国立大学の授業料収入の値があれば,それと,あとは,大学院修士段階での貸与奨学金の貸与額の年間の額,これを比較できないか検討いたします。
【小林座長】  分かりました。よろしくお願いします。これは一つの考え方ですけれど,先ほど来出ていますように,理想的といいますか,べき論といいますか,そういうものだとこちらのほうが望ましいんだけど,現実には様々な制約があってそれは難しい。その中には,エフィシェンシーのほうの効率の問題もあるでしょうし,様々な制約があるわけですから,そこは将来的には検討する課題であるけれど,今回はとにかく令和6年度までに実現しなければいけないということなので,こういうふうにすると。そういうような書き方を検討したいと思いますが,いかがでしょうか,そんな形で。例えば不徴収が,形としては非常にメッセージ性もありますし,確かに望ましいと思いますけれど,現実の問題としてそれはなかなか難しいということになれば,この会議としてはこういう結論になったと,そういうような書き方にすると問題性が非常にはっきり分かると思うのですが,いかがでしょうか。
【今村企画官】  座長,よろしいでしょうか。
【小林座長】  はい,どうぞ。
【今村企画官】  事務局からお願いでございますが,先ほど私が申し上げたのは,事務方としての実施に当たっての困難さは申し上げました。一方で,この制度の目指すところに照らしてどうかという視点なんですが,例えば,学部段階の高等教育の無償化におきましても,あまりにも高額な私立大学の授業料の全てはカバーできておりません。それは財源もさることながら,そういった高額な授業料を設定しているところは,卒業後の私的な便益も高いのではないかという論点があろうかと思います。特に修士段階,専門職大学院ですと,私立の平均額の2倍,3倍の授業料を設定しているところはございますが,基本は専門職大学院で,そのような投資に見合う大学院修了後のリターンがあるというのも勘案した授業料設定をしているのではないかと思われますので,そのような考えで設定された高額な授業料にまで公的リソースを投入する必要があるのかどうか。それは投入すべきだけれども,現状難しいので今はこの程度にするとするのか,そもそも投入すべきでないのかどうかという,その当・不当を事務局では判断しづらいことについて皆様の御意見をいただければと思いますが,いかがでございましょうか。
【小林座長】  事務局からの提案として,今,私のほうは理想論といいますか,あるべき姿としてはこうですけれど,現実の制約の中では,現在,特に令和6年実施ということを考えると,こういう形の提案になりますというようなことを報告として出したらいいのではないかと申し上げたのですけれど,もう少し事務局の側ではそこを踏み込んでといいますか,現実に即したほうにしたほうがいいのではないかという御提案だと思いますが,その辺りいかがでしょうか。
 川端委員,どうぞ。
【川端委員】  大きい意味では,座長が言われたようなまとめ方になっていくというのがリアルかなと思っています。その上で,今事務局からの問いかけのような話は個別に詰めていく必要があって,個人的に言うと,専門職大学院だとか,いろんな意味で医系だとか,その後のペイ,収入を考えて授業料設定がされていくという自由設定がされている。そうはそうなんだけどというところなんですよね。でも,そこに線が引けるかというのはすごい難しい気がします。
 要するに,じゃあ,修士だってそうじゃないという話なんですよね。学部より修士のほうが生涯賃金は高くなりますよみたいな話も出ているので,そういう意味では,その後の収入から鑑みて,それは支援がどうのこうのという話もあっていいような気はしますけど,でも,これはあくまでローンを組んでいる状態なので,無償でお金を出しますよというのに関しては今言われたような議論の論点が必要だけど,これはローンを組むという話だから,基本的にはそこは別に問わなくていいような気がしますけどね。
 あとは,バルクとしての金額をどうするというので,その人1人のためにこちらの学生10人分を使いますみたいな話になると,それはおかしい話というところがやっぱりあるかもしれないので,それは先ほど座長が言われたように,あるところで線を引かなきゃならないとか,フィージブルにするための方策としての例外があったりというのを付け加えていかざるを得ないのかもしれないですね。という意見です。
【小林座長】  ありがとうございました。ほかに御意見ございませんでしょうか。
 そうしましたら,先ほど規模感が分からないということもありましたし,この辺り,具体的にもう少し試算がないとエビデンスが少し足りないような気もしますので,次回までに事務局でその辺は出していただいて,それから,先ほども申した,事務局のほうからありました制約条件についても,今までは必ずしも明示的に出されていませんでしたので,その辺り,こういう条件でこういうことを考えなければいけないということを次回までに出していただいて,もう一度原案をつくっていただくというようなことで次回に送りたいと思いますが,よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。もうあと10分程度しかありませんので,次にいきたいと思います。よろしいですか。生活支援のほうについても同じ問題ですが,これは先ほど申し上げたように,有利子が絡んできますが,その辺を含めてこれも同じ問題,支援の形態支援額という意味では同じ問題ですので,これも含めて次回ということにしたいと思います。
 次が,4のところがやはり重要な論点の1つで,出世払いに関わるわけですけれど,これについては2案が出されていますが,いかがでしょうか。特に手が挙がっていないと思いますが。
【川端委員】  すみません,川端です。
【小林座長】  川端委員,どうぞ。
【川端委員】  ありがとうございます。私自体ちょっとよく分かっていないので,この146万というのが閾として現行そうなんだという話なのかもしれませんけど,これは生活保護? 違うか。この数字は何の数字なんでしたっけ,146万って。
【今村企画官】  課税所得の9%を12で割ったものが2,000円になる,その境目がちょうど年収で146万円と。この年収146万円から様々な控除とかを引かれて課税所得が算出されまして,9%を掛けて12で割って2,000円になるぎりぎりのところがこの146になります。2,000円というのは,どんなに少ない収入所得であっても,最低限これだけは納めてくださいということで決めたのが2,000円でして,その2,000円ありきで逆算して出てきたものがこの年収146万円になります。
【川端委員】  ひっくり返すと,どういう状況に卒業後になっているかというのが何かイメージできるといいなとさっきから思っていて,要するに,修士でドクターに行った。ドクターに行って学振取っていてというようなところもこれに入っちゃうんですかね。学振はいないか。こっち,JASSOじゃないんだ。JSPSだ。
 とかね,もう一個言うと,例えばドクターが終わった後にポスドクやっているとか,どんな生活の状況になったらこの146万になっているのかなと思って。えらい低い金額なので,これよりも落ちたら生活保護? みたいな感じもさっきからしていて。どういうものを救おうとしているのか。どういうものを救うというか,要するに,どうせずっと減りはしないんだから,猶予しているだけだからなんですけど,どんなイメージなんですかね。これは,だから借りる人間にとって,こういう状況になったらあなた方は猶予になりますよという,こういう状況になったらという状況が何か語れるといいんですけどね。それによっちゃ,もうちょっと上のほうに置いていてもという。数字ではこういう数字が出ているんだけどというところです。
【小林座長】  ありがとうございました。第1回のときに,一応,賃金水準は,賃金プロファイルという形で出されているのですけど,かなり高くなっていますが,今,川端委員からありましたように,あれはあくまで平均の話ですので,状況によって全然違いますので,これはなかなか卒業後の,修士修了後の状況というのがどの程度エビデンスがあるか分かりませんけれど,それも少し次回までに出せるかどうか検討してみたいと思います。
 赤井委員,どうぞ。
【赤井委員】  ありがとうございます。細かいことを言い出すと,細かい新しいデータでいろいろやらないといけなくなるとは思うんですけど,ひとまずは,今回こういう制度を入れましょうということなので,これまでの決まった146とか2,000円とか,そういうものは今までどおりで,新しいところを加えていくみたいなほうが分かりやすいのかなという気がしているので,(4)は案1で,(5)も,今入っている所得連動と同じような仕組みでいいんじゃないかなと思いました。
 以上です。
【小林座長】  ありがとうございます。ただ,私が少し気にしているのは,先ほど申しましたように,一応これは出世払いというのが,それこそ上の会議のほうでは言っているわけなので,146万で出世払いと言えるのかというのがちょっと引っかかるんですが。
【赤井委員】  でも,いきなり高くなるわけではないですよね,146を超えたからといって。結局,だから今の制度だと,だんだん払う量が増えるんですよね。
【小林座長】  はい。
【赤井委員】  だから出世払い,出世できる可能性が出てきたので,ちょっとずつ多めに払ってもらうという,そんなイメージかなと。分かりました。
【小林座長】  一応,2つありまして,出世払いということと,ライフイベントに応じたというのがありまして,そちらのほうはまだあまり具体的な検討はされていないと思いますけれど,これも一応,念頭に置いていただければと思います。
 荒張委員,どうぞ。
【荒張委員】  出世払いというのは何をイメージするのかという話ですけれども,要は,定額で決められた約定に基づいて払うということではなくて,収入の多寡に応じて無理のない返済をしていきましょうと,そういう意味で出世というか,所得の獲得の度合いに応じて柔軟に返していきましょうというふうに理解すれば,既に以前,所得連動返還型の奨学金の検討において,2,000円だとか9%というものも合理的な検討をされて導かれたと思いますので,私はあまりそこに違和感はないですね。そういう意味では,「出世払い」について,本当に所得がもっと高くなってから払うんだという印象をもしかしたら世の中の人は持つかもしれませんけれども,そこはそんなに変える必要が本当にあるのかな? と思いますけれど。
 それとも逆に,意図としては,もっとたくさんの収入が得られたら,そこから返してくださいという意味を含んでいるものなんでしょうか,政府の意図として。
【小林座長】  政府の意図は,私が教育未来創造会議の資料を読む限りでは,そこまでは言っていないと思いますが。というか,出世払いという意味が,ですから,もともとそれほど明確に定義されて使われていないのでよく分からないということなので,この会議としては,今言われたように所得に応じてという所得連動のほうを重視するというのは一つの考え方だと思います。
【荒張委員】  逆に,じゃあ現行と変わらないじゃないかという,そういう意見も出てきたりするんですかね。
【小林座長】  そうですね。それはあり得ます。
【荒張委員】  そこがちょっと懸念ですね。
【小林座長】  それが案の2ということになるわけですけれど,少し違う水準にしたほうがいいのではないかということですね。
【荒張委員】  なるほど。そうすると,前回の御議論と何を変えていくのかというところ,そこから議論しないといけないということですよね。
【小林座長】  まあ,そうなりますね。
【荒張委員】  分かりました。
【小林座長】  濱中委員,どうぞ。
【濱中委員】  (5)のほうです。卒業後に納付する額とありますけど,よく見ると,案の2は,現行の定額返還と併存させるような案だというふうに読めます。今回は,現行の定額返還とどちらかを選べるという仕組みはやめたほうがよいのではないかというのが,学部に導入したときもそう思ったんですけど,私の意見ですね。特に大学院になると,卒業後の年収は比較的高めです。今日は資料の1で返還額のイメージ図を出してもらっていますけど,これは学部の私立自宅外生で,貸与総額240万の例です。先ほどあったように,修士課程では月額8万8,000円で,年間にすると106万円だから,貸与総額は大体同じぐらいになるので,定額返還を選ぶと恐らく資料1と同じような返還月額になるはずです。そうだとすると,所得連動返還を選んだ場合,年収が450万円くらいの,修士課程,博士課程まで行った学生にとってそんなに高くはないと思われる年収でも,現行の定額返還よりも,毎月の返還額がむしろ高くなってしまうんですね。そうなると,なかなか最初から所得連動返還を選ぶインセンティブは働かないというか,文系の大学院とかで,将来の仕事が見通せないみたいな人以外はなかなか選びにくくなってしまうと思うので,できれば所得連動返還一本に絞る,もちろん人によっては返還額がかえって高くなるという批判は来るんでしょうけど,そういうシンプルな仕組みにしたほうがよいかなということだけは意見として述べておこうかなと思います。
 以上です。
【小林座長】  ありがとうございました。すみません,もう時間になっております。今回いろいろまた検討課題,それから資料等で宿題もいただいておりますので,次回に回したいと思います。委員の先生方から,特に次回に向けて何かございますでしょうか。
【小林座長】  では,事務局から,次回等について御説明をお願いいたします。
【藤吉課長】  次回は,11月11日金曜日の10時から開催の予定でございますので,詳細については追って連絡をいたします。また,本日の議事録を作成して,出席委員に内容を御確認いただいた上で公表したいと思います。今日いただきました宿題につきましては,できる限り御用意して,次回お示ししたいと思っております。
 以上です。
【小林座長】  ありがとうございました。
 それでは,本日も実に活発な御意見,御審議いただきましてありがとうございました。第2回はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――