薬学教育モデル・コア・カリキュラム改訂に関する専門研究委員会(第1回)議事録

1.日時

令和4年2月7日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 今後の薬学教育モデル・コア・カリキュラムの在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

石井委員、伊藤委員、井上委員、小澤委員、角山委員、河野委員、小佐野委員、小西委員、鈴木委員、高田委員、高橋委員、長津委員、平井委員、平田委員、本間委員、矢野委員

オブザーバー

   オブザーバー:厚生労働省医薬・生活衛生局総務課 太田薬事企画官、磯﨑国際医薬審査情報分析官
   意見発表者:全国薬害被害者団体連絡協議会 勝村副代表世話人

5.議事録

【追川係長】  それでは定刻となりましたので,これより薬学教育モデル・コア・カリキュラム改訂に関する専門研究委員会第1回を始めさせていただきます。私は医学教育課薬学教育係長の追川と申します。後ほど座長が選任されるまで進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず,会議の開催に当たり,医学教育課長の伊藤より御挨拶申し上げます。
【伊藤課長】  皆様,おはようございます。事務局を代表しまして,開会に当たり一言御挨拶申し上げたいと思います。
 先生方におかれましては,今回の薬学教育モデル・コア・カリキュラム改訂の当研究委員会の委員をお引き受けいただきまして,大変御多忙の中この検討に御協力いただきますことに,まずもって感謝申し上げたいと思います。ありがとうございます。
 今回の改訂は,モデル・コア・カリキュラムの改訂といたしましては第3期のコア・カリキュラムを策定する会議となります。薬剤師養成を考えるのに当たりまして,現在薬剤師を取り巻く背景,環境といたしましては,今この猛威を振るっております新型コロナウイルスの感染拡大や,また高齢化の進展に伴う医療需要の増大,地域包括ケアシステムの一員としての薬剤師の貢献等,薬学を取り巻く状況は大変大きく変わってきていることがございます。
 先般,厚生労働省さんの会議,昨年の6月になりますけれども,薬剤師の養成・資質向上に関する検討会におきまして今後の薬剤師が目指す姿を示されているところでございます。確認的に申し上げますと,対人業務を充実させ,地域の医療機関・薬局の多職種と連携しながら患者・住民を支えていく役割が期待されるということ。また,新しい技術,ICT等の活用,医療安全の確保,感染症への対応といったものも求められてきているところでございます。
 ですので,今回,3回目のコア・カリキュラム策定に向けては,これらの求められる薬剤師の養成像も踏まえたものとすべきということで,我々も考えているところでございます。そういった観点から,文部科学省では令和3年8月に薬剤師の養成の在り方に関する検討会を設置いたしまして,このたび,コア・カリキュラムの改訂に関しましては今回が第1回の開催という運びになります。これは令和4年度の策定に向けて精力的な御審議を頂きたいと思っておりますので,本日キックオフとなりますけれども,先生方の御協力,何とぞよろしくお願いしたく,簡単ではございますけれども開催の挨拶としたいと思います。本日より,どうぞよろしくお願いします。
【追川係長】  続いて配付資料の確認をさせていただきます。次第を御覧ください。
 資料1「薬学教育モデル・コア・カリキュラムに関する恒常的な組織の設置について」,資料2「薬学系人材養成の在り方に関する検討の公開について」,資料3-1「薬学教育モデル・コア・カリキュラム改訂の経緯等について」,資料3-2「薬剤師として求められる基本的な資質・能力(提案)」,資料3-3「薬学教育モデル・コア・カリキュラム改訂の基本方針(案)」,資料3-4「大項目A~Gと中項目,小項目のリスト(案)」,資料4「薬学系人材養成の在り方に関する検討会(第2回)委員からの主な意見」,資料5「日本病院薬剤師会提出資料」,資料6「日本薬剤師会提出資料」,資料7「全国薬害被害者団体連絡協議会提出資料」。参考資料1-1から5については読み上げを省略させていただきます。以上です。
 続きまして,御出席いただいている委員の皆様を五十音順で御紹介させていただきます。
 一般社団法人日本病院薬剤師会理事,石井委員。
 特定非営利活動法人薬学共用試験センター理事,伊藤委員。
帝京大学副学長,井上委員。
 広島大学副学長,小澤委員。
 大阪医科薬科大学薬学部准教授,角山委員。
 徳島大学大学院医歯薬学研究部教授,河野委員。
 帝京大学薬学部教授,小佐野委員。
 京都大学大学院医学研究科教授,小西委員。
 名古屋市立大学大学院薬学研究科教授,鈴木委員。
 日本赤十字看護大学名誉教授,高田委員。
 東京理科大学薬学部教授,高橋委員。
 公益社団法人日本薬剤師会常務理事,長津委員。
 兵庫県赤十字血液センター所長,平井委員。
 和歌山県立医科大学薬学部教授,平田委員。
 一般社団法人薬学教育協議会代表理事,本間委員。
 神戸大学医学部附属病院教授,矢野委員。
 次に,本日出席の文部科学省関係者を御紹介申し上げます。
 文部科学省医学教育課,課長の伊藤でございます。
【伊藤課長】  よろしくお願いします。
【追川係長】  企画官の島田でございます。
【島田企画官】  よろしくお願いします。
【追川係長】  課長補佐の小松崎でございます。
【小松崎課長補佐】  よろしくお願いします。
【追川係長】  課長補佐の境でございます。
【境課長補佐】  よろしくお願いします。
【追川係長】  薬学教育専門官の大久保でございます。
【大久保専門官】  よろしくお願いします。
【追川係長】  続きまして,オブザーバーとして出席いただいております厚生労働省関係者を御紹介申し上げます。
 医薬・生活衛生局総務課,太田薬事企画官。
 医薬・生活衛生局総務課,磯﨑国際医薬審査情報分析官。
 また,本日は議題1のヒアリングに関連して,全国薬害被害者団体連絡協議会の副代表世話人である勝村久司様にも御同席いただいております。
 それでは会議を始めるに当たり,委員会の公開について御報告させていただきます。資料2を御覧ください。薬学系人材養成の在り方に関する検討会の公開については,1にございますとおり,座長の選任その他人事に関する事項の議決をする場合等を除き,原則として公開で行います。2にございますとおり,会議を傍聴しようとする場合はあらかじめ文部科学省に登録を頂いております。また,飛ばしまして7のとおり,検討会の下に置かれる小委員会等の公開については原則として検討会と同様の扱いとすることとしており,本委員会についても原則として公開の扱いとなります。以上です。
 続きまして,座長の選任に入らせていただきます。まず,座長の選任方法については,事務局としては委員の互選という形とさせていただきたいと考えておりますが,いかがでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【追川係長】  ありがとうございます。それでは座長の選任を行います。どなたか御推薦を頂ければと思いますが,いかがでしょうか。
【小澤委員】  よろしいでしょうか。
【追川係長】  お願いいたします。
【小澤委員】  広島大学の小澤でございます。
先ほど伊藤課長からもございました在り方検討会の副座長だったと思うのですけれども,あと,文部科学省の委託事業の,この前に当たる調査研究会の取りまとめをしてくださったということから,井上圭三先生にお願いしてはどうかというか,御適任ではないかなと思うんですけれども,いかがでございましょうか。
【追川係長】  ありがとうございます。
 ほかに推薦される方がおられないようでしたら,ただいま御推薦いただきました井上委員を本委員会の座長とすることでよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは当委員会の座長は井上委員にお願いしたいと思います。座長選任に先立ちまして,井上座長から一言御挨拶を頂きたいと思います。お願いいたします。
【井上座長】  ただいま座長という大変大役を仰せつかりました井上でございます。
 今回のコアカリ改訂が,我が国の医療体制のいろいろな課題があるかと思いますが,こういう課題の改善に少しでもお役に立つよう努力いたしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【追川係長】  ありがとうございます。
 これからの議事進行及び副座長の指名は井上座長にお願いいたします。それでは井上座長,よろしくお願いいたします。
【井上座長】  それではまず副座長についてですけれども,一般社団法人薬学教育協議会代表理事を務めておられますし,また今回のコアカリの改訂に当たりまして,この方向性あるいは現行のコアカリの課題等について検討を進めてまいりました本間委員にお願いしたいと思います。皆様,いかがでしょうか。
 もし御異論がなければ本間委員にお願いすることにいたしまして,本間委員からもお一言御挨拶をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【本間副座長】  薬学教育協議会の本間でございます。
 副座長に御指名いただきましてありがとうございます。大役ではございますけれども精いっぱい頑張りたいと思いますので,何とぞよろしくお願い申し上げます。
【追川係長】  ありがとうございました。「薬学系人材養成の在り方に関する検討会の公開について」に基づき,これよりユーチューブ配信を行い,公開にて会議を進めてまいります。
【井上座長】  それではこれより課題1「今後の薬学教育モデル・コア・カリキュラムの在り方について」に入ることにいたします。まず,事務局より説明をよろしくお願いいたします。
【大久保専門官】  事務局でございます。
 それでは資料3-1の説明をしたいと思います。まず初めに,薬学教育モデル・コア・カリキュラム改訂の経緯等について御説明申し上げます。
 2ページ目をお願いします。こちらは医学・歯学・薬学・看護学,各領域のコアカリ策定・改訂の変遷を示したものでございます。医学と歯学は平成13年に策定いたしまして,これまで3回改訂しております。近年では6年ごとに改訂しておりまして,今回4回目の改訂となります。薬学では6年制教育が始まった平成18年4月から開始し,今回2回目の改訂となります。看護学では平成31年4月の入学生から開始いたしました。
 3ページ目をお願いします。コアカリ改訂に向けた課題や盛り込むべき事項について,これまで調査研究を日本私立薬科大学協会に委託してまいりました。令和元年にスタートして,今年度は3年目となります。令和3年度,12月24日開催の在り方検討会でコアカリ改訂の検討を開始したところでございます。また,2022年度,令和4年度にコアカリ改訂が完了し,薬学・医学・歯学は同時改訂する予定でございます。令和5年度に準備期間として周知を図り,令和6年度入学生より新しいコアカリをスタートさせたいと考えております。
 4ページ目をお願いします。12月24日に在り方検討会,それから本日,第1回の薬学コアカリ改訂専門研究委員会が立ち上がりました。以後,適時開催いたしまして検討を進めまして,令和4年の秋頃に素案を決定し,パブコメを経て,令和5年3月にはコアカリの決定を見込んでおります。
 5ページ目をお願いします。薬学教育モデル・コア・カリキュラム改訂の体制ということで,右側が初版策定時のものでございます。日本薬学会が「薬学教育モデル・コアカリキュラム」,文部科学省で「実務実習モデル・コアカリキュラム」をつくりまして,合本したものでございます。左側は平成25年改訂,現行版のものですけれども,薬学モデル・コアカリキュラムの改訂等を決定する組織として薬学系人材養成の在り方に関する検討会,そして薬学モデル・コアカリキュラムの改訂の原案を作成する組織として薬学教育モデル・コアカリキュラムに関する専門研究委員会を文部科学省で主宰いたしました。今回も同じ体制で行いたいと考えております。
 7ページ目をお願いします。前回改訂の流れでございますが,平成23年9月に専門研究委員会が立ち上がり,ヒアリングやアンケートを行いまして,8ページ目になりますけれども,平成25年12月に専門研究委員会において改訂案を取りまとめ,同25日には在り方検討会に報告いたしまして改訂モデル・コアカリキュラムの策定をしたという流れになっております。
 9ページ目をお願いいたします。こちらは現行のコアカリキュラムの構造を比較したものです。共通して薬学・医学・歯学・看護学ともにAからGの7部構成となっておりました。
 10ページ目をお願いします。現行コアカリの資質・能力を並べたものでございます。医学と歯学は平成28年度改訂の際に共通化を図りました。
 11ページ目をお願いします。この共通化を図りました平成28年度版の医学教育モデル・コア・カリキュラムには留意事項が示されておりまして,医師以外の各職種においても,チーム医療等の推進の観点から,医療人として共有すべき価値観を共通で盛り込むことが重要と考えられると示されております。12ページ目ですけれども,歯学も同様の記載がされました。医学と異なる部分だけ太文字で示しております。このようなことから,今回医歯薬同時改訂に当たりまして,薬学においても共有すべき価値観を盛り込むことを図りました。
 13ページ目と14ページ目は,参考といたしまして医学・歯学の今回のコアカリ改訂に向けた基本方針を示しております。
 15ページ目をお願いします。平成28年度の医学・歯学のコアカリ改訂の際には,資質・能力の共通化を図るのに当たりまして,医学・歯学共通のキャッチフレーズを掲げました。今回の医歯薬同時改訂では薬学部も含めた共通のキャッチフレーズを掲げたいと考えました。文部科学省で原案を作成し,医学・歯学・薬学のコア・カリキュラムについて,調査研究を委託している先生方と相談して調整を図りました。「未来の社会や地域を見据え,多様な場や人をつなぎ活躍できる医療人の養成」と銘打ちました。四角の囲みの中の文章は,上のほうは近年の医療の動向や課題から求められる人材を示しております。赤字の部分については,それをカリキュラムにどう反映させるか,薬学の調査研究を委託している先生方にアレンジしていただいたものでございます。こちらについては在り方検討会に諮り,お認めいただきました。参考といたしまして,医学の調査研究チームのアレンジと歯学の調査研究のアレンジによるものを16ページと17ページに示しております。
 18ページ目をお願いします。薬剤師として求められる基本的な資質・能力を示しております。左側の列は平成25年に改訂された現行薬学教育コアカリキュラムに示す資質,中央の赤囲みの列は令和4年度改訂コアカリの資質・能力,右側の列には参考に医学・歯学の資質・能力を示しております。資質・能力を共通化するのに当たりまして,医学・歯学・薬学の3領域の調査研究の委託をしている先生方にお集まりいただき,議論をお願いしながら文部科学省で調整したものでございます。
 順に申し上げますと,1,プロフェッショナリズム。2,総合的に患者・生活者をみる姿勢。3,生涯にわたって共に学ぶ姿勢。4,科学的探究。5,専門知識に基づいた問題解決能力。6,情報・科学技術を活かす能力。7,薬物治療の実践的能力。8,コミュニケーション能力。9,多職種連携能力。10,社会における医療の役割の理解,となっております。
 7の「薬物治療の実践的能力」に相当する医学・歯学の資質・能力は「患者ケアのための診療技能」となっております。これは医療を提供する手段は職種によって異なりますため,別々のものといたしました。ほかは全て共通のものとなっております。
 また,2の「総合的に患者・生活者をみる姿勢」ですが,医歯薬どの領域でも自身の専門にとどまらず,患者を総合的にみる姿勢が重要であるとして新設いたしました。
 6の「情報・科学技術を活かす能力」ですけれども,ICT技術の進展,AIの発展に伴い,医療従事者がこれらを適切に活用して社会に貢献する能力が求められるとして,今回の改訂版では特に追加したものでございます。
 これを12月24日に開催いたしました在り方検討会に諮り,お認めいただいております。
 私からの説明は以上でございます。
【井上座長】  ありがとうございます。
 それでは引き続きまして,薬学教育モデル・コア・カリキュラム改訂に向けた基本方針案等につきまして,私どもの委託事業に委員として参加しております本間委員から御説明をお願いしたいと思います。本間委員,どうぞよろしくお願いいたします。
【本間副座長】  本間から御説明申し上げます。
 今,御紹介がありましたとおり,私立薬科大学協会が受託いたしました調査研究の結果を御説明いたします。今,大久保さんから御説明がありましたとおり,薬剤師として求められる基本的な資質・能力がここに掲げてございまして,左側のカラムは今御説明があった項目でございます。右側に細かく書かれているのがその説明文という意味でございます。案の段階でございます。
 10個の項目がございまして,それぞれに説明が加えられているということでございます。御説明は今,大久保さんからあったので特に私からは控えますけれども,基本的には現行の薬学のモデル・コアカリキュラムに掲げられていた基本的な資質をほぼ踏襲しておるところでございますが,幾つか,医歯との整合性といいますか,それに合わせる基本方針でございましたので,それに基づいて新たなものが加わっているということでございます。
 次をお願いいたします。これは今回のモデル・コア・カリキュラム改訂に向けた基本方針でございます。1番目から御説明いたします。1番目は非常に大きなことでございますけれども,今後非常に大きく変貌する社会で活躍できる薬剤師を想定した教育内容の検討ということをうたっております。そこにありますとおり,少子高齢社会,高騰する医療費,医療制度変革,高度医療技術の急速な進歩等,非常に変革が大きいということで,そこに対応できる薬剤師の育成ということを掲げてございます。
 2番目は,生涯にわたって目標とする「薬剤師としての基本的資質・能力」を提示した新たなモデル・コア・カリキュラムの展開ということでございます。その文章をちょっと読ませていただきますが,現行のモデル・コアカリキュラムでは,6年卒業時に必要とされる「薬剤師としての基本的資質」を掲げた学習成果基盤型教育とGIO・SBOsを提示したプロセス基盤型教育の構成が混在しているということでございます。この状況を改めまして,生涯にわたって目標とする「薬剤師としての基本的資質・能力」を掲げた学習成果基盤型教育の新展開を行うことをうたっております。
 プロセス基盤型教育の構成は,GIO・SBOsを掲げてこれを全て達成して,それで段階を踏んで上へ進んでいくという考え方でございます。同時に学習成果基盤型教育の考え方も取り込んでいまして,それが混在していたというのが現行のモデル・コアカリキュラムの特徴です。これを改めて,学習成果基盤型教育に統一するという考え方をしております。
 3番目を御説明いたします。各大学の責任あるカリキュラム運用のための自由度の向上ということでございます。これは少し読ませていただきます。現行のモデル・コアカリキュラムでは学習すべき事項がSBOsとして細部にわたって記載されており,各大学はそれらを網羅するのに時間を費やされて大学独自の内容をカリキュラムに取り入れる余裕がない。詳細なSBOsを廃して学習すべき内容をコアとし,各大学の理念やディプロマポリシーに基づき責任を持った教育が可能となるように,大学のカリキュラム作成における自由度を高める,という内容でございます。
 SBOsのことを御説明申し上げましたけれども,そのSBOsの数が非常に多い,1,000を超える数でございまして,それらを全て達成するということになりますと大変時間が費やされているのが現状だということでございます。それを改めてほしいということを多くの大学から,多くの先生方から意見として出されておりましたので,それをまず改めようということでございます。そのSBOsをまず廃し,基本的な考え方としては,各大学の理念あるいはディプロマポリシーに基づいて,それぞれの大学が責任を持った教育が可能となるようなカリキュラムをつくっていただこうという考え方でございます。
 4番目でございます。課題の発見と解決を科学的に探究する人材育成の視点。これも長く大学の先生方から寄せられた意見でございますけれども,課題の発見と解決を科学的に探究する,つまり研究の能力といいますか,研究を求める姿勢といいますか,そういうものをうたったものでございます。
 5番目。これは医歯薬の横並びでの教育共通化ということでございます。これは医と歯と薬,全てにわたってこの基本方針として加えられておりますけれども,先ほどの大久保さんからの御説明にもありましたとおり,モデル・コア・カリキュラムの体系をそろえて,共通化を図るべき内容については検討して,整合性を図ろうという考え方でございます。
 以上が基本的な方針の御説明でございます。
 次をお願い申し上げます。委託事業の検討チームで検討されたモデル・コア・カリキュラムの案について御説明いたします。大項目,中項目,小項目から成る構成となっておりまして,大項目はAからGまで,そこに書かれているとおりでございます。Aには薬剤師として求められる基本的な資質・能力を掲げております。先ほど御説明申し上げたとおりでございます。B,社会と薬学。C,基礎薬学。D,臨床に繋がる医療薬学。E,衛生薬学・公衆衛生薬学。F,臨床薬学。G,薬学研究。こういう構成となっております。
 それぞれの大項目の中身について,最初にこれを御説明いたします。現行のモデル・コアカリキュラムでは,左側にありますAからGの構成になっておりますけれども,この改訂案では右側にありますとおりAからG,ほぼ同じような形ですけれども,少し変えるということでございます。Aとしては「薬剤師としての基本的資質・能力」でございます。Bはこれまでは「薬学と社会」でしたけれども,今度は「社会と薬学」というふうに,社会を前面に出したということでございます。Cの「薬学基礎」は「基礎薬学」と名前を少し変えてありますけれども,ほぼ同じことかと思います。現行のモデル・コアカリキュラムのDとEに当たるそれぞれが逆になってございます。Dとして「臨床に繋がる医療薬学」ということで内容をまとめさせていただいております。それからEが「衛生薬学・公衆衛生薬学」になっております。これは考え方としては,CとDで基本的な内容を勉強するということ,それに基づいてEとFが成り立つという考え方に基づいて,Dが先に来て,Eがその後に来るという考え方で構成されております。それからF,「薬学臨床」と呼ばれていたものは「臨床薬学」という名前でFにまとめられておりまして,Gは「薬学研究」となってございます。
 次のページからそれぞれの大項目の内容についてお話をいたします。これはAの大項目でございますが,先ほどから御説明している「薬剤師として求められる基本的な資質・能力」でございます。これは先ほど御説明申し上げました。
 次をお願いいたします。B,これは「社会と薬学」の中の構成でございます。横軸はB-1からB-4まで中項目が掲げられております。それぞれの中項目に縦軸として小項目の題名が書かれてございます。B-1を例にしますと,「集団に対する医療」という中項目が掲げられ,それぞれ1から5までの小項目が「保健医療統計」から最後,「社会保障(医療・福祉・介護の制度)」までまとめられております。以下,B-2,B-3,B-4についても同様でございます。
 次はCの「基礎薬学」でございます。少し展開が大きいので文字が小さくなっていて恐縮でございますが,C-1からC-7まで中項目が展開されております。大きくまとめてしまいますと,C-1,C-2が物理に相当する内容で,C-3,C-4,C-5が化学に対応しております。C-6,C-7が生物に対応していると言っていいと思います。それぞれの中項目につきまして,縦軸に小項目が展開しております。一番右のカラムは生理・解剖に相当するところでございまして,ここがそれぞれ神経系,内分泌系等に細かく分かれておりますので,数が少し多くなってございます。以上が基礎薬学の内容でございます。
 次はDの「臨床に繋がる医療薬学」でございます。これも同じような中項目,小項目の展開でございます。D-2の小項目が少し多くなっておりますが,これは先ほどの生理・解剖の小項目の展開が多かった関係で,それに対応する形で小項目の量が少し多くなっているということでございます。
 次,お願いいたします。これはEの「衛生薬学・公衆衛生薬学」でございます。これも同じような展開でございます。4つの中項目と3つの小項目に展開されているということでございます。
 次がF,「臨床薬学」でございます。これも4つの中項目と小項目が幾つかに展開されております。これにつきましては,臨床薬学というものが1年生から6年生までの全学年にわたって学ぶ内容という考え方で展開していただいております。6年制薬学教育の基本的なゴールという考え方でこの内容をまとめていただいております。
 次,お願いいたします。これはGの「薬学研究」でございます。これもG-1,G-2の中項目と2つの小項目に分かれて,主に卒業研究を中心にまとめられておりますが,研究マインドを醸成する意味においては,先ほどからお話ししているとおり,非常に大事な内容でございますので,1年から6年までのコースワークの中で研究に取り組む姿勢等を養っていく内容ということで,こういう形でまとめていただいております。
 以上が中項目と小項目の御説明でございます。
 次をお願いいたします。これは一つの例として御説明差し上げることでございますが,大項目B「社会と薬学」の中の中項目B-2に相当します「医薬品等の規制」の,さらにその中の一つ,B-2-1の「医薬品開発を取り巻く環境」の中の具体的なことをお示ししていることでございます。各小項目では,まず「ねらい」が文章として掲げられることになっております。その「ねらい」の中で,緑で書かれておりますけれども,この小項目がどのようなほかの領域,項目とつながるかもそこに掲げられております。
 その次に「学習目標」が箇条書で説明されるということでございます。そしてその「学習目標」の説明を補うように,具体的な「学習事項」が掲げられているということでございます。こういう構成で全ての小項目がまとめられているということでございます。その例としてこの一つの小項目を御説明させていただきました。
 簡単でございますけれども,私からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【井上座長】  ありがとうございます。
 ただいまの説明について御質問はございますでしょうか。なお,委員におかれましては,オンラインでございますので,まず初めに御発声いただくか,手を挙げる機能を使ってリアクションしていただければと思います。それでは適宜,御発言をよろしくお願いいたします。いかがでございましょうか。
【石井委員】  石井ですけれども,よろしいでしょうか。
【井上座長】  どうぞお願いします。
【石井委員】  御説明ありがとうございました。
 今回,「ねらい」というものが出ていますけれども,もうちょっと詳細に説明していただけませんでしょうか。いきなり「ねらい」といって,次,「目標」「事項」とございますが,それがOBEとどういうふうに連動しているのか,御説明いただくとありがたいです。
【井上座長】  本間先生,よろしくお願いします。
【本間副座長】  分かりました。これは本当の一つの例でございますけれども,「医薬品開発を取り巻く環境」という小項目を学ぶに当たって,「ねらい」としてそこに掲げられているようなことをゴールとして考えてカリキュラムを構成してくださいと,そういうことでございます。「ねらい」ということで文章化されておりまして,一体この小項目ではどういうことを学習の最終的なゴールとするのかということが掲げられているということでございます。
 「ねらい」の内容を読ませていただくと,「医薬品の開発は,人類の保健衛生の維持・向上に欠かせないものであり,世界レベルで進められている。また,医薬品の開発には特別な体制を要し,国際的な状況が日本の医療に直接影響する。わが国の医薬品開発の仕組みと国際的な取組みなどを学修し,関連する項目の学修内容と関連付けて,国内での医薬品を巡る課題や薬剤師の役割について理解する」というゴールを掲げておるということです。少し大きな形で表記されていると思います。
 それから次が「つながり」ですけれども,これは今回のモデル・コア・カリキュラムの中では特に重視した内容でございまして,大項目から始まって中項目,小項目がどういうつながりを持ってカリキュラムが構成されているか,関連する項目を抜き出して,学生の学習の,あるいは教員のカリキュラム作成に当たっての参考にしていただくという内容でございます。
 次,「学習目標」は,「ねらい」が非常に大きく書かれておりますので,それを具体的に,概念的に,総括的に掲げたものということでございます。それも分かりやすいように,理解しやすいように箇条書になってございます。これも大きく,また総合的な,あるいは概念的な表記になってございますので,次の「学習事項」として,より具体的な,言ってみればテクニカルターム,専門用語が掲げられていて,より内容が具体的になっていくという形でございます。これらを念頭にカリキュラムを組んでいただいて,「学習目標」さらには「ねらい」を達成していただきたいということでございます。
 そして,御質問のOBEでございますけれども,今回のモデル・コア・カリキュラムは,Aに「薬剤師として求められる基本的資質・能力」という形で掲げさせていただきました。これは将来にわたって求める内容と規定いたしました。非常にレベルの高い内容でございます。先ほど御説明したとおり,中身は非常にレベルが高いものばかりでございます。ですので,今回のモデル・コア・カリキュラムでは,ここに掲げた内容は6年生の卒業に当たって求められるものとは思っておりません。卒業後も研さんを積んで,薬剤師として生涯にわたって追求していっていただきたいと。そういう内容として掲げたものでございます。
 OBEのそれぞれの学習成果は一体何かということでございますが,それは先ほども御説明申し上げたとおり,各大学の理念とディプロマポリシーに従って,各大学で6年次のアウトカムを設定していただくという考え方でございます。それぞれの大学でつくっていただければ,コアとなるものはもちろん共通でございますけれども,それぞれの大学の理念、ディプロマポリシーに従って,その独自性に基づいてアウトカムを設定していただいき,また大学独自のカリキュラムポリシーを作成していただいて,それに基づいたカリキュラムがつくられるものと考えております。そういう自由度を上げることが今回のモデル・コア・カリキュラムの一つの目標と考えております。
 以上でございますが,いかがでしょうか。
【井上座長】  石井先生,これで納得されるかどうかはちょっと分かりませんけれども,これから先,こういうことも含めて議論を進めていければといいかなと思いますので。石井先生ばかりでなくほかの先生からの御発言もありますので,次に回したいと思います。小澤先生,いかがでしょうか。どうぞ。
【小澤委員】  今,これについてはもうやめようという感じで,井上先生が言われたので申し訳ないのですが。これは僕,初めて今日見たのですけれども,これは「ねらい」ってもともとのGIOで,「学習目標」と「学習事項」ってもともとのSBOを無理やり2つに分けてこういうふうにしたので,つくられた方と本間先生には申し訳ないですけれども,先ほど下が具体的とおっしゃったのですけれども,上にはガイドラインがあるのですけれども,下にはガイドラインということはなくて,強いて言えば7番のこの中の一つとして入れているのかなという気はします。そうするとガイドラインは本来,疾病についてくるものであってというふうに考えてみると,結構各大学がこれを読まれて,自分たちのいわゆる目標に対して,卒業時の目標に対して組まれるときに困られるような気がしていて。その辺の御議論はどうだったのですかというのがまず一点。
 もう一点,これも資料3-4ですけれども,これは今のコアカリキュラムを英訳させていただいて,その時の経験で申し上げたいのですけれども,最初のページにAからGまで書いてあるじゃないですか。このDに「臨床に繋がる医療薬学」と書いてあるのですけれども,これ,確かにそうなんですよ。私たち,まだまだ臨床につながるものをやっているか,十分かと言われたら,不十分です。だからそのお気持ちが入っているのだと思うのですけれども。これ,実は私が英訳するときには,前を省きました。pharmacotherapyという形にしました。なぜかというと,「臨床に繋がる」という英語をつけると,日本ではまだそんなことを言わなくちゃいけないレベルなのかとか,あるいは日本では臨床につながらない医療薬学もやっているのだなというふうなことを勘違いされる傾向があるので,やめました。ですので,ぜひ,お気持ちは分かるのですよ。正しいです。多分これは正しいですけれども,こういうふうに表に出て高校生が見るものですので,医療につながらないものがあるようなものではなく,これはなくても十分通じますので,「医療薬学」とシンプルになったらいいなと思いました。
 すいません,2番目はお願いで,1番目は簡単な質問ですけれども,よろしくお願いいたします。
【井上座長】  小澤先生の最初のほうのコメントはなかなかすぐにぱっと答えにくい内容ではあるのですけれども。
【小澤委員】  結構です。私の勘違いだと思いますので。
【井上座長】  いやいや,大変重要な御指摘だと思いますので,そういう御指摘も踏まえてこれから検討していくということにさせていただければと思います。
【小澤委員】  ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
【井上座長】  ほかの方々,いかがでしょうか。
【矢野委員】  神戸大学,矢野です。
【井上座長】  どうぞ。
【矢野委員】  資料3-4の3ページ目のAの薬剤師の基本的資質,それの新しく6の「情報・科学技術を活かす能力」として記載がございますが,その最後が「医療・薬学研究を実践する」となっているのに少し違和感があります。これが最後,研究を実践するだけに読まれてしまうのが何となく違うのかなと。実際はそれを業務で使っていきたいというところだと思うのですが,医学とかの場合もこういった研究という文言になっているのでしょうか。以上です。
【井上座長】  この部分については,医学・歯学・薬学でこの「情報・科学技術を活かす能力」について別の委員会をつくって,そこでいろいろなことを検討しております。その検討に薬学から出ている小佐野委員にできたらここはレスポンスをお願いしたいと思います。小佐野委員,よろしくお願いいたします。
【小佐野委員】  小佐野です。
 医歯薬で共通でいろいろと議論してきました。それで今の6の能力のいわゆる3行説明は,やはり取りあえず仮として作ったもので,私たちもこれは必ずしもベストだとは思わずに,幾つか検討を重ねてきました。それで今,その提案として最後,ちょっとざらっと読むだけで申し訳ないですけれども,今,一応検討して変えようと。今のまさに矢野先生の御指摘のとおりで,我々もこの研究だけではないということ。
 ですからちょっと読んでみますと,その後提案して今検討しているのは,社会における高度先端技術に関心を持ち,薬剤師としての専門性を生かし,倫理のところもあるので情報・科学技術に関わるという形をちょっと条件にして,情報・科学技術に関わる倫理,法律,制度,規範を遵守して,疫学,人工知能やビッグデータ等に関わる技術を積極的に利活用するという,研究にとどまらずに,多くの診療やあるいは保健衛生に使わないといけないということで,積極的に利活用するということと,薬剤師の専門性を生かすという言葉を入れて現在検討しているところです。よろしいでしょうか。
【矢野委員】  ありがとうございました。
【小佐野委員】  御指摘のとおり,これはたまたま医学のところで慌てて我々も検討委員会ができなかった段階で出さなければいけなかったので,ここは医歯薬でまた検討しているところですが。多分だんだん落ち着いてきていますので,薬学としては今のような方向性で御指摘のような形に直したいと思っています。
 以上です。
【井上座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
【高田委員】  高田ですが,質問よろしいでしょうか。
【井上座長】  どうぞよろしくお願いします。
【高田委員】  このことはこの改訂と直接関係するかどうか分からないですが,大項目AからGの先ほどの3-4の資料ですけれども,このAは先ほどの御説明で,これは卒業時というよりも生涯にわたって目指すべき方向性というか,ということを表しているという御説明があったので理解できたのですけれども,ただ,こういったこの1から10まで挙げられているところのベーシックなところといったらいいのでしょうか,芽は教育の中でつくっておかないといけないというふうに理解できるかと思うのです。そうしますと,このAは,BからGまでの中に言ってみたら具体的なその基礎的なところはちりばめられているといったらいいのか,どういう位置関係になるのかが,ちょっと私,門外漢ということもあって分かりにくいので,その御説明があったらありがたいのです。
【井上座長】  これは本間委員,よろしくお願いいたします。
【本間副座長】  分かりました。私から御説明いたします。
 御質問のとおりかと思います。まさに非常に大事な点を御指摘いただいたかなと思います。私どもは,この生涯にわたって求めるべき資質に科目がどのようにひもづけされていくのか,どのように発展していくのかということも併せて検討してまとめようと思っております。それを示すことによって,直接それを見る学生さん,あるいは社会の方々に,どういう薬学の内容でそういう人を育てようとしているのかが伝わるのかと思っておりますので,御指摘いただいたことの関連図といいますか,中身は,小項目・中項目・大項目がここに挙げました資質とどう結びつくのかをまとめてお示ししようとも考えております。まだそれが出来上がっておりませんので今日お示しすることはできませんでしたけれども,そのように計画をしております。
 以上でございます。
【高田委員】  ありがとうございました。楽しみにしております。
【井上座長】  ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
 いろいろとまだまだあると思いますが,本日はこの辺にしまして,先に進ませていただきたいと思います。
 それでは,昨年12月24日に開催されました薬学系人材養成の在り方に関する検討会第2回,ここでコアカリ改訂に関して出された意見がございます。これを事務局より説明していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【大久保専門官】  事務局でございます。
 それでは資料4に基づいて御説明申し上げたいと思います。文部科学省と委託事業からの説明に対しまして,在り方検討会の委員からありました主な意見について御紹介したいと思います。
 モデル・コア・カリキュラムの改訂につきまして,薬学生が学習すべき内容の部分につきましては,プロフェッショナリズムというキーワードが入るのはすばらしいことだと思う。世間のニーズに応えるにはどのような知識の取得が必要か考えることが大切である。今ある知識を丸暗記するようなカリキュラムにしてはいけない。研究,臨床は切り離せるものではなく,薬学部はその両方を学ぶところである。研究に対する倫理も必要である。などという意見がございました。
 大学の自由度,スリム化という点につきましては,あくまでもコアなカリキュラムであって,それ以外のところは,どのような人材を育成するのか各大学でカリキュラムの設定をしていけばよいという意見もありました。4つ目のポツですけれども,コアカリにたくさん記載されていることが自分たちの領域の影響力の大きさを示すというような錯覚が起こりがちなので,どう防ぐかということを検討いただきたいというものもございました。
 それから卒業後の職域,人材育成等に関連いたしまして,例えば製薬メーカー,公衆衛生,地方公共団体等,それからほかのポツにもありますけれども大学院への進学や教員等も含めて,様々な職種に就職していることをコアカリに含められないかと思うという意見もございました。一方で,この項目の最後のポツですけれども,医療人の育成を大きな目標として,各大学では企業人を目指す学生,研究者を目指す学生等,目指す学生像は各大学のレベルで決めていけばよいのではないかという意見もございました。
 また,薬学教育モデル・コア・カリキュラムのキャッチフレーズにつきましては,医歯薬共通ということについてはチームで患者をみるという点でよいことであるなど,賛同が得られました。簡単ではございますが,以上でございます。
【井上座長】  ありがとうございました。
 それでは次に行きたいと思います。関係団体それから患者さんの立場から,薬学教育モデル・コア・カリキュラムについて御意見を頂きたいと思います。
 最初に日本病院薬剤師会の理事,石井伊都子先生から発表をお願いいたします。石井先生は本会の委員でありますけれども,今回の発表内容については,委員としての御意見ではなくて,団体の立場からの御意見ということでお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【石井委員】  井上先生,ありがとうございます。それでは資料を共有させていただきます。
 それでは,文部科学省から事前にモデル・コア・カリキュラムに対する考えや課題を示せということでまとめましたのでお話ししたいと思います。
 まずこれまで,現行の25年改訂版モデル・コアカリキュラムは,まず「薬剤師として求められる基本的な資質」を策定するという大きな変革がありました。それと同時にOBEを導入し,また,私ども病院が受ける実習のところは,事前実務実習,病院・薬局実習が「薬学臨床」と一体化したものになってございました。これ自体,大きな変革でございました。
 新たな力点として,安全で有効な薬物治療の提案とそれを実施・評価できる能力の修得ということが非常に強くうたわれ,チーム医療・地域医療への参画が示されました。そしてさらに,コアカリだけでは十分に実務実習の内容を補えなかったため,「薬学実務実習に関するガイドライン」が策定されました。それと同時に,評価もつくっていったわけです。大学が主導的な役割を果たすということと,電磁的日誌の導入により情報が共有化され,以前よりは効率的に実習が行えるようになりました。
 病院実習における長期実務実習に対する基本的な考えといたしましては,日本病院薬剤師会から以下の5つが出されています。基本的な考え方は,代表的な疾患、グループ実習やふるさと実習の実行です。グループというのは病院のグループですね。補えない場合の部分をグループでやるとか,ふるさと実習を推奨していきましょうということでございます。
 特に最後の学生の評価について,ガイドラインに従うということで,これにはルーブリック評価が取り入れられました。ここについては,繰り返しいろいろな説明会やシンポジウムが開かれてあったのは皆さん記憶に新しいところだと思います。
 そこでこれに関しまして,実務実習に関連して報告された論文数を、私は医中誌で検索してみました。当然英語の論文もあるのですが,今回は日本人の共有といったところで簡単に見積もれるものとして検索いたしました。まず上です。薬学&実務実習というキーワードで引くと2,953あり,本文があったものが738でした。原著論文といたしましては479でございました。その中で,本文があったものが358でした。さらに病院に限ってみますと,原著論文がその6割,287本で,本文があったものが213でした。これだけ非常に皆さん積極的に取り組んで,ましてや評価の工夫とか,学生の理解度を意識するといった内容のものがございましたので,積極的に取り組んでくださったものと思います。
 では,病院薬剤師の評価者から見た課題です。課題1として,これまで先ほどのお話にもありましたようにOBEを取り入れてきましたが,コアカリ自体は中途半端なOBEということになってしまいました。特にルーブリック評価,先ほど実習の中身について長期,薬局,病院を通したもの対してルーブリック評価を作ったと申しましたが, 10の資質,アウトカムに対してルーブリック評価をつくって評価をしていくのが本来のOBEでございますので,これが中途半端になっています。ガイドラインで補ったということでございますが,これはあくまで私たち病院・薬局実習を通したもの,これを知識・技能・態度全体を評価するということで取り入れてまいりましたので,まだまだ中途半端な感じではあります。
 次に8疾患問題です。左に示す8疾患,皆さん,これはどうですかとかという指摘がありました。ほかにも経験してほしい疾患があるとか,季節性・地域性も実際にあります。あと,その病院の特徴とかタイミングによってもいろいろあります。皆さん,このようにグループ実習あるいは薬局・病院で関わったところ全体でやればいいんだよというふうに補ってきましたが,これはもう少し自由度があってもいいように思いました。
 次,ルーブリック評価の問題点でございます。これがルーブリックの1から4ってどんなことというような説明です。実際には薬局と病院が連携した実習にもかかわらず,結果的に同じ評価表を使うのは難しいということで,別々のルーブリック表になりました。レベル4は非常にレベルが高過ぎるものでございましたので,やはりこれは単位をあげるには,学生さんが単位を取得するにはどういう評価にするのがいいのか,ここを少し話し合っていかなければいけないなと思いました。あと実際,このルーブリック,現場としてはようやく慣れてきたのに評価内容を変えると混乱するとか,それから現在,厚労省でも課題としています卒前・卒後の一貫した教育など,これらを今後意識していかなければいけませんので,実習の評価はもう少し何かこの辺りで工夫が必要だと考えてございます。
 チーム医療に対する評価と評価の困難さといたしまして,チーム医療は学生さん自体のパフォーマンスだけでも評価できませんし,チームがいいか悪いかによっても決まってきてしまうので,これは非常に難しい。また,これまでのコアカリに関しては,これも理想として書いてございます。薬剤師としてあるべき姿が含まれるということがありましたので,実際には参加・体験の解釈は施設任せになることが多い。これが問題でございました。さらにこちらに対しては,実習のレポートから振り返りとか,そういった日誌によって評価を決めていくということでしたので,果たしてこれが正当な評価になっているのか。実際に大学の先生が中心になって評価しようということがございましたので,その情報交換もまだまだ不足がありますのでこれもちょっと難しいという,いまだに残る課題でございます。
 そして病院の問題です。病院は業務として発展的な展開がなされています。これが当院,千葉大学における実習時間の割りつけで,左のグラフですが,病棟業務実習がぐぐっと6割以上に達しているのが分かります。一方,2019年になりますと,これが改定コアカリに準拠した実習なのですが,調剤業務はほとんどやっていない。これはやはり薬局さんでやってくるといった理由からです。病院の業務は発展的展開を遂げますので,実際に学生さんにそれをやはり体験してほしいというのもあります。ここに書いてあるように,病院業務と実習内容はリンクするということで,コアカリに実際には書き切れないもの,あるいは実習施設での担保,質の向上,これは私たちの命題でもございますが,ここのところ。実際には書き切れないものがいっぱいあって,それを発展的にやっていきたいということもございます。
 学生さんから見たよい実習ということ,これは薬学教育協議会のホームページで見ることができるのですが,実務実習の良い事例の件数で,この表は病院のものをまとめてみました。過去3年のものが掲示されています。令和2年度に関しましてはもうコロナが始まっているので少ないので,これはどうしようもないですけれども,一番多いところ,充実した実習環境と指導体制の構築があります。さらに次に続くのは薬物療法の実践,チーム医療です。令和元年に関しても同じような傾向が続いています。
 内訳を見てみますと,薬物療法の実践は,化学療法ですとかTDMをやりましたとか,PMDAに副作用報告をしましたというのがあります。医療連携の体制,多職種カンファレンスに参加したとか,チーム医療に参加したとか,急性期から慢性期で複数の施設を連携して見ることができたとか,退院時共同指導で病院の薬剤師とかかりつけ薬剤師と一緒にできたとか,不足している項目を他院でできたとか,こういった連携のいい事例があるわけです。さらに,充実した環境で,ここも医師・看護師と連携したとあります。先ほどのほうに分類してもいいような内容ですが,ここが注目すべきコメントが,薬局から病院であるために最初から病棟で実習が可能となったとか,患者さんの退院を見届けることができた、病院スタッフ全員で実際に実習を見てくれたとか,こういった報告がございました。
 こうしてみると,実践・体験・参加により,学生の満足度が高くなるのは明々白々でございますので,我々受ける側は,やはりこれを意識していかなければいけないと改めて感じているところでございます。
 さらなるリクエスト・提案,さらなる課題といたしまして,中途半端なOBEに対しましては,これも本間先生の御説明にございました。やはりこれは工夫が必要であろうと思います。8疾患ですが,広く浅くよりは,やはり1つの疾患であってもより深くということ。さらに,病院の特徴,いろいろな病院を経験していただくということで,より深くということ。ただ,やはりがん,循環器,感染症などは必須項目としていくような新しい視点が必要にもなります。ルーブリックですね。これについては先ほど述べたように薬局,病院で同じ評価ができることが望ましく,さらには卒前・卒後の一貫した評価ができることが望ましいと考えます。さらにチーム医療に関するOBEの過剰表現。これは評価にも困難さがあります。業務の発展的展開。これも実習には取り入れていかなければいけないことです。
 さらに,学生は実践・体験・参加型であることを求めています。これらを合わせて考えてみると,コアカリの表記は,やはりOBEであれば,学生が主語になり,学生・指導者が共に理解しやすいものであってほしいと思います。さらに,コアカリの表現としてはminimum requirements,病院,薬局に関してはそれが一番いいのではないかと感じます。それが難しいのであれば,これはガイドラインという形になるかもしれませんけれども,実践の義務・優先順位づけが必要に思います。
 私からは以上です。御清聴ありがとうございました。
【井上座長】  ありがとうございました。大変重要な御指摘をいろいろと頂いております。こういう御指摘を踏まえて,さらに検討していければと思います。多少まだ討論の時間がございますので,何かこの際ございましたらお願いしたいと思います。
 例えば今の御指摘の臨床実習ですね。この辺のことになりますと,Fを検討された鈴木先生,あるいは8疾患ということになると医療薬学を担当した小佐野先生ということになるのですけれども,鈴木先生,小佐野先生,何か御発言がありますでしょうか。鈴木先生。
【鈴木委員】  鈴木でございます。
 石井先生,大変詳しく評価をしていただきましてありがとうございました。今後の多分,F,薬学臨床,臨床薬学の策定には非常に役に立つ分析だと思いますので,参考にさせていただきたいと思います。
 今,問題に出ました「学習目標」と「学習事項」は,私,今たまたま井上先生がおっしゃられたように,事前に私立薬科大学協会の委託事業の中で少しずつ策定させていただきましたけれども,OBEになるべく近づけるということで,「学習目標」が基本的にはコンピテンシーというか「ねらい」がありまして,何ができればいいか,何ができるようになるのかということが「学習目標」に入れてあって,「学習事項」は今まで勉強してきたこういう知識をきちっと確認して,その知識をきちっと使えるようになるのが「学習目標」という形でつくることで,その「学習目標」の到達度をある程度測定する形のルーブリックをつくっていけばいいのではないかと考えています。
 ただ,先ほど言われました基本的な資質とのリンクにつきましては,本間先生が言われたとおり,もう少しやはり検討が必要なのかなと考えております。
 それからもう一つ,私たちの検討のグループの中で出てきましたのは,今言われたとおり参加・体験型で,しかも薬局も実際には患者さんへの対応が多くなっておりまして,実務実習といいますと,まるで作業をして調剤をしてお薬をつくる実習のように感じてしまいまして,医学・歯学・看護などと合わせまして,できればこのコアカリを機会に,薬学の臨床実習という形できちっと臨床に対応する実習だということを規定する方向で進めていけたらなと思っております。
 私からは一応以上です。
【小佐野委員】  じゃあ,小佐野からもいいですか。
 8疾患の件については確かに現実,大学で3年間追跡したのですが,なかなか全部できていないということがあります。これはやはり現場のほうでも,これも行動主義ではないのですけれども,全部の疾患を無理やりやらなければいけないということで,中途半端に浅くやることは確かに見られることです。
 ただ,たしか25年の改訂の時にこの8疾患が出た本当のいきさつは,多分逆に言うと1つの疾患にあまりにも深く,病院のように深くできればいいですけれども,場合によってはいつも同じ患者さんしか相手にさせてもらえなくて,いつの間にかアルバイト的な,いわゆる行動主義になってしまうことに対して,少しでも広く学生には患者さんに当ててほしいという願いがあって。これを見てみますと薬局ではすごくそこを努力してくださって,一時得意なものを本人に任せているだけから随分改善してきた傾向が見られます。ただ,先生がおっしゃるように,やはり病院でも難しい疾患もありますし,この概念の中でどうしてもやらなければいけないということがあると,そこはやはり改善の必要があるという形です。
 それで,Dのほうはいろいろと議論があると思うのですが。まずここは一般論として,全部の病気を少しなるべくフォローして,そして次,Fの臨床薬学のところで一人一人の患者さんについての授業を大学でまずきちっとシミュレーションしてから,そして現場に出ていくという,これが必要で。今までほとんどFは実務実習と事前学習しかなくて,現場に行って初めて処方解析したなんていうとんでもない話を,僕はこの前,石井先生からもお聞きしたものですから,そういうことがないように,大学でまずは事例としてきちっと一人一人の治療に責任を持って,今まで学んだところを使っていく。その一つの基本が医療薬学にあるのかなと思っています。
 ただ,さっきの小澤先生の指摘のように,医療薬学と臨床薬学と薬学臨床という言葉の概念ができないうちに独り歩きしていますので,ここはしっかりとカリキュラムで学問体系をつくった上で,言葉の概念をしっかりつけていかなければいけないなということも感じていますので,先生方から御意見を頂ければと思います。
 Dのところはそういう意味では比較的網羅的に疾患をやり,そしてガイドラインまではやって,一般論として大学で先生方の現場に行くときにしっかり知識が使えるようにという形で構成してあります。ですから,現場で全部をやるのと違って,大学でしっかりと基本的な,軽重をつけながら疾患を各大学で考えていくという方針になるのかなと思っています。
 以上です。
【井上座長】  ありがとうございます。まだまだあるかと思いますけれども,また引き続きということにさせていただきたいと思います。
 それでは引き続きまして,日本薬剤師会の常務理事,長津雅則先生から発表をお願いしたいと思います。長津先生はやはり本会の委員でありますけれども,今回の発表内容につきましては,委員としての御意見ではなくて,団体の立場からの意見ということでよろしくお願いいたします。長津先生,どうぞよろしくお願いいたします。
【長津委員】  お時間を頂きありがとうございます。日本薬剤師会の長津でございます。
 私自身,教育者ではございませんので,一薬局の薬剤師という立場で日本薬剤師会におるわけですので,今,石井先生から実務実習を俯瞰された非常によいプレゼンテーションを頂き,私も勉強になりました。まず我々,日本薬剤師会として薬学教育モデル・コア・カリキュラムへの意見ということで今回まとめさせてもらっております。
 私たちとしては,薬局で働くという,その薬剤師が一体に何を目指すのか,何を大切にするのかというところをまずはやはり学生さんには理解していただかなくてはならないと思っていまして,こちらが,我々が今,最も大事にしている薬局の機能でございます。右上にあります高度薬学管理機能は,やはり専門医療機関との連携が大事になってきますので,こちらに関しては病院の実習でも相当いい実習というか,教育がなされていると思っております。我々薬局としましては,この左上にあります健康サポート機能,まず非常に大切な薬局のそもそもの機能というもの,これを見失ってはならないというところを強く思っております。
 その上で,かかりつけ薬剤師・かかりつけ薬局の機能があって,こちらが今で言うところの地域連携薬局の機能にかなり近しいものなのかなと思います。我々は服薬情報の一元的な管理がとても重要であって,それが街の薬局の使命でありまして,それは保険の調剤のみならず,我々は物を売りますので,一般用医薬品なども含めた,かかりつけ機能がとても薬局としては大切なんだというところを学生には見せなくてはならないと,私も学生を預かる薬剤師として,そこはとても大切に考えております。これが街の薬局の根本的な魂なのだろうと思っております。
 こちらが今の薬局・薬剤師を取り巻く現状としてまとめたものですけれども,今申し上げたかかりつけの機能がございます。これはまず根本的にあるのは,一元的な管理ということは全ての医療機関や,服用薬はもちろんOTCを含めての一元的管理をするのが薬局の機能であるということ。24時間対応ですとか在宅対応は,今多くの薬局がこれはなされておりますので,こういったものを肌感覚で学生にはやはり感じ取っていただきたいと思っていまして、何よりもやはり今,連携が重要な世の中になってきている中で,医療機関などとの連携は見せなくてはならないと考えております。
 また,健康サポート機能が薬局のそもそもの機能に近いものですけれども,これは健康情報を発信する拠点であるという,それが薬局であって,調剤する薬を売る以外のところで健康をサポートするという,地域住民に対しての我々の職務であるところは学生さんにはよく理解していただきたいなと考えております。
 さらに高度薬学管理機能を有している薬局,そもそも抗がん剤について分からない薬剤師がいてはならないわけですけれども,実際にはがんで通院されている方が多い薬局とまれな薬局という峻別はあります。私は街の中で面分業をしていますので,がんの患者さんは私の頭の中でも数えられるぐらいしかいない。その中でどれだけがん治療,高度薬学管理機能を見せられるかというのも重要な側面だと考えております。
 薬剤師の養成のところですが,この赤囲みの中の薬学教育が今の議論だろうと思うのですけれども、この2行目にありますOTCの対応ですが,健康サポート機能が我々薬局独特な機能だと思っております。これは後に出ますが,どうも私たち自身もここは少しまだまだ足りないのかなと思っているところであります。
 下の赤囲みの中ですけれども,これは薬局及び医療機関の薬剤師の業務の中で,調剤業務と,さらに今,先ほども議論がありましたけれども,ICTを応用した薬剤師の資質の向上も議論されている中で,このような電子処方箋ですとか電子版お薬手帳など,あるいはオンライン資格確認ですとかオンライン服薬指導ですとか,もちろん私が学生だったときにはあり得ないようなことが,今,世の中で起こっているわけで,これらに対応する我々もここはよく理解しなければならないですけれども,こういった技術の進歩があるよというのも学生さんには,よくよく理解してもらい,これは何が重要なのか,何が患者さんや一般の地域の住民に対して有用なものなのかをよく説明しなくてはならないと思っております。
 そして薬剤師の資質向上としては,卒業した後も薬剤師は常に勉強で,毎日毎日勉強であって,どうも学生さんを見ていますと,何となく4年生のいわゆる共用試験が終わったのが一つのゴールであるかのような印象も受けるわけですけれども,その後実習に来られますと,何となく魂の抜けちゃった子もいなくもない中で,実は卒業して国家試験に受かって,薬局で働いた後からが本番の勉強なんだというのは,全く僕たちはそういう背中を見せなければいけないのかなという認識はございます。
 それから昨今議論の的ですけれども,こちらがワクチンの接種,今,予防接種が私の地元でも昨日から高齢者への集団接種が始まった中で,薬剤師がその集団接種会場に出張っています。それで今はワクチンの薬液の充塡をしておりますけれども,歯科医師ですとか臨床検査技師などが筋肉注射を実際にする中で薬剤師はやらないのかという議論も頂いております。私たちはやらせろとは言いませんけれども,社会の情勢に鑑みまして,もしそういうことがあったとしたならば,ワクチン接種が必要になった際に即座に対応できるというのは,薬剤師の社会の中でそれはもう整えてある。これが例えば違法性の阻却なのか,法改正が必要なのかという議論も含めて,薬剤師にはそういったことを俯瞰して理解していただくことも重要だと考えております。
 これが大学の教育に入るかどうかは別としまして,我々としましてはこのようなプログラムをつくっていると、これが,薬剤師が社会のために今準備していることだというのも理解していただきたいなと思っています。これは日本薬剤師会が都道府県薬剤師会の協力を得て講義や実務と,それから修了した薬剤師に対して修了証を発行することで,いざその時が来たときには薬剤師がそれに協力できる体制を整えているという事実でございます。
 今後の薬剤師に求められることをここに整理してみました。やはり対人業務です。薬局はそもそも対人業務のところでございますので,毎日何十人と来る患者さんに対して,いかに対人業務として我々薬剤師が職能を発揮できるかを見せるのは重要だと考えております。それにはやはり一元的な管理が必要であって,なぜ一元的な管理が必要なのかというところを重要に力強く教えなくてはならないと思っています。昨今やはり服薬のフォローアップも重要視されて,これは法にも書かれましたので,法律で定められたからやっているのではなくて,そもそも薬局はそういうことをやっていたのだと。そして,疑義照会や処方提案がいかに患者さんの利益になるのかということですとか,医療機関以外にも関係職種と連携を取ることで地域の医療が発展できるということ。それから在宅医療。これは終末期の対応が非常に考え方は様々なのですけれども,そういった死生観も重要なのかなと思っておりまして,これは書き加えさせていただいております。それからOTCをはじめとするいわゆる相談応需が健康サポート機能ですので,こういうものが重要ですよということ。
 それから3つ目のポツですけれども,ICTや調剤機器の利活用も今後世の中で大事なことになってきて,さらにその他として新興・再興感染症への対応も薬剤師なくしてはできないところで,我々としても感染症の学問は非常に重要だと考えております。
 それからこちらが現行のカリキュラムにおける薬局実習の課題を整理してみました。こちらは調査研究というかアンケートですけれども,先ほど来議論がありますが,1つ目のポツで,8疾患にとらわれ過ぎると,ただやったやったと,8つ「やった」を並べることになってしまいますので,薬局としましては,そこは絶対にそれにとらわれ過ぎることのないような,やれば理想ですけれども,それがマストではないという考え方を持っています。
 それから実習生のキャラクターが影響するという趣旨のコメントが結構あるのですけれども,これはそもそも実習生というか学生の人間性の問題になりますので,そういった醸成した人間性を持った,個性を持った方が来ればいいのですが,そうでもない場合にはかなり学習成果としても影響を及ぼすのかなという印象を受けております。
 それから,ここが実は我々の課題なのですが,セルフメディケーション支援というようなところがどうも達成感がない。これは薬局自身の問題が非常に大きい。薬局自身がセルフメディケーションに積極的でないところもあるのも事実ですので,これは我々としては非常に強く反省し,それをアナウンスしなくてはならないと思っています。
 こちらがそのグラフになっているところですけれども,御覧になって分かるとおり,調剤ができるとか,そういった処方監査ができるというのは,これはもうかなり皆さんよくできましたという評価になりますが,一番下のDのところ,処方設計と薬物療法になりますとやはりちょっと達成率が落ちてきています。ここがどういうことなのかもよくよく検討しなくてはならない。なぜこれは達成率が少ないのかというところは重要な今後の検討課題かと思います。
 それからこちらがEの在宅医療。在宅医療は今,ほとんどの薬局が積極的にやっていますので,以前に比べますとかなり達成していますが,このFが僕は非常に懸念しているところです。セルフメディケーション支援がどうも達成できていない。これは我々,現場の薬剤師が日本中でしっかりセルフメディケーションを支援するスキルを身につけなくては,まず学生に教えられないという,非常に反省しなくてはならないデータだと思っています。
 こちらがまとめたところになります。これは参加・体験型の実習について,やはりセルフメディケーションが落ちています。Dの処方設計と薬物療法も落ちている。これを今後いかに充実させるかというところが大切なところなのかなと思っております。
 こちらが,大学が主体となっての病院との連携ですけれども,これは何となくお見せするのが嫌な感じなのですが。赤い部分が非常に少のうございまして,どうも薬局としましては,薬局実習が終わったら何となくそのまま放置しているというところもある一方,大学さんも薬局と病院とをつなぐという意識があまりないところも多いと聞いています。そういったところが,我々ももっともっと,先ほど石井先生のプレゼンを聞いて僕も非常に勉強になったのですが,そのように病院でどういうことが行われたのかも我々はよく知らなければならないので,そういう体制は構築していきたいと思っています。
 こちらが大学主体との連携の円グラフになりますけれども,これはやはり青い面積が多いのは何とかしなくてはならないところでしょう。
 こちらがコアカリで我々が,充実追加が必要だと考えていることですけれども,やはり薬局の薬剤師はある程度根性論で物を考えることが多いので,最初のポツの医療の担い手としての倫理観が非常に重要なところです。私の患者を学生に与える,私の患者に学生が相手をするということは,倫理観が醸成されていないと僕は非常に嫌なのです。ですからそういった倫理観も,あくまでも医療は患者中心であるという,その倫理観を大学としてはしっかり教えていただきたいということ。それから昨今の学生によく見られるコミュニケーションスキルが非常にない方が多くて,これは患者とのコミュニケーションもそうですけれども,我々薬剤師や職員とのコミュニケーションができないようでは,これは患者の相手は到底できない。それから連携ですとか,あるいは薬学管理などですとか,介護の分野ですとか,OTC,ICT,そして感染症。このようなところをコアカリではしっかり入れていただきたいなと考えております。
 最後にまとめになります。薬剤師業務は今,転換期を迎えているのは皆さん御承知のとおりで,今回のコアカリの改訂は大変重要だと,我々日本薬剤師会も考えております。
 ここなのですけれども,国家試験対策に注力し過ぎているのを我々としては非常に感じる。ここに注力し過ぎず,臨床に出て活躍できるような薬剤師の育成が求められるところです。そのためには最新の臨床経験が豊富な教員が僕らはとても重要だと思っていまして,併せて臨床経験が豊富な実務家教員の育成,配置,これを十分に行う必要があると考えています。
 そしてさらに,基礎の科学が分からない学生が薬剤師となってはならない。医療は常に進歩している中で,新しいものができたときには基礎のサイエンスがないと絶対それは理解できない。ですから,さきのほうにありますとおり,国家試験対策に注力し過ぎますとこのベーシックサイエンスが足りないことになりますので,ここはくれぐれも大学には注意していただきたいなと思っています。
 最後に,薬局の実務実習でも教育内容の充実を図るべく努めていきたいというのが我々としては主張しなくてはならないところかなと思っております。
 長くなりましたが以上でございます。ありがとうございました。
【井上座長】  ありがとうございました。大変重要な御指摘を頂いております。ICTとか,あるいは倫理でありますとか,そのようなことについてはかなりしっかり織り込んでいるかと思います。セルフメディケーションの辺りは大変重要な課題ではないかなと思っておりますが。F,鈴木先生,何かこの辺,コメントはありますでしょうか。
【鈴木委員】  ありがとうございます。長津先生,ありがとうございます。
 現在の薬局が非常に大きな変化の中にあって,薬剤師の職能を非常にこれから特に高めなければいけないところだということはよく私も存じ上げているつもりで。先生がお話しされた感染症のところにつきましては,かなり別項立てをして,詳しく薬剤師の能力についてきちっと書く必要があるかなということで進めてまいりました。
 あと,一つはやはり実習でどうしても,石井先生のところでも,それから長津先生のところでも,8疾患だけではなくて,例えば一包化をやったとか,あるいは無菌調製をやったとか,ただ単にこれをやったよというのをチェックだけしてそれで実習をやったというような形の体験主義といいますか,やればいいんだというところから,できれば今度のコアカリで,あるいは今度つくるガイドラインでは,それでもって薬剤師がどういう能力を身につけていなければならないのか,患者さんとか地域の方たちに対してどういうことが提供できる能力がなければいけないのかという,それはもちろん資質にも関係してくることですけれども,今度の薬学教育ではそういうところまできちっと提示した形で,学生たちの教育を進める方向ができればいいなと考えておりますので,今後とも御指導のほどよろしくお願いいたします。
 先ほど出ました実務家教育とか薬学実務実習とかではなく,やはり僕たちも臨床系教員とか,要はやはりきちんと患者さんに寄り添った形の教育ができる教員でなければいけないと思っていますので,実務というところから,物から人へというところは,大学もそれから教員もと考えております。
 私からは以上です。よろしくお願いいたします。
【平井委員】  すいません,ちょっといいでしょうか。平井ですけれども,意見があります。
【井上座長】  大分時間が押してまいりましたので、短くお願いします。
【平井委員】  はい。OTCの件だけ御意見申し上げたいのですけれども,今のOTCはなかなかやりにくいというのは,OTCというかセルフメディケーション,こうすると結局何か疾患に対して診断がどうしても入ってまいりますよね。診断は医師がするもので,薬剤師はしてはいけないという強い縛りがあって,だから結局今のモデルで病気になった人に対して,病気になってから薬剤師が接するというこのモデルを踏襲している限り,このセルフメディケーションはなかなか難しいと思うのです。
 だから,健康サポート薬局機能という,さっき長津先生が重要視されていましたけれども,そこが私はすごく重要で,病気になる前,あるいはよく分からないとき。病気になっちゃったらそれはもうお医者の範疇なのですけれども,そうでないところを攻めるのが薬剤師の仕事だという考え方でいけば,日本医師会の顔色ばかり見なくても済むんじゃないかなと思って。そういうことを今回のコア・カリキュラムでは今までと違うものなのだというところでぜひ打ち出していただきたいなと考えています。
 以上です。
【井上座長】  ありがとうございます。
【長津委員】  ありがとうございます。
【井上座長】  それでは先に行きます。最後に全国薬害被害者団体連絡協議会,これの副代表世話人でおられます勝村久司様より発表をよろしくお願いいたします。勝村先生,どうぞよろしくお願いいたします。
【勝村氏】  どうも発言の機会を頂きありがとうございます。では画面の共有をさせていただきます。
 私,御紹介いただきました全国薬害被害者団体連絡協議会の副代表で,設立当初から文部科学省との関連のことの主担者をしております勝村でございます。よろしくお願いします。
 委員の皆様のお手元には資料2つをお配りいただいているということです。1つ目は古いですが,日本薬剤師会雑誌からの原稿依頼を受けて書いたもので,薬剤師の方々が薬害への関心が薄いのではないかということを書いているものです。2つ目の資料は,私たちがずっと続けている文部科学大臣への要請をしている内容の,私たちの思いを書いているものです。
 では、ここからは、スライドに沿ってお話をさせて頂きます。
全国薬害被害者団体連絡協議会は,今現在これらの団体が加盟しています。これらの団体を代表する形で本日発言させていただきます。
 まず,全国薬害被害者団体連絡協議会と文部科学省の対話の歴史とか経緯ですけれども,1999年8月24日に厚生労働省の正面玄関の前に「薬害根絶誓いの碑」が設置されました。二度と薬害を発生させることのないようにという思いで,そういう文言が刻まれたものが設置されたのです。
 その同じ年の10月22日に全国薬害被害者団体連絡協議会が設立されました。設立の日に私たちが取った行動は1つだけで,文部科学省と話合いをしたということです。この全国薬害被害者団体連絡協議会は,私たちは薬被連と呼んでいますが,薬被連は,それぞれ厚生労働省とは既にいろいろな議論をしてきた団体でしたので,文部科学省と議論するために設立された団体という色合いが当初は非常に強かったわけです。
 最初の要望は,まず公教育の中で薬害問題について課程に書くように学習指導要領等に明記してほしいと。これは今現在,進んできています。2番目の高等教育において,ここが今回の皆さんの議論に関わるところですが,カリキュラムの中に薬害問題に関する内容を盛り込んでほしいということを,最初の1回目の時から言っております。3つ目が,生涯学習においても文部科学省の管轄ですので,薬害が起こらないようにということをやっていってほしいということです。
 下に書いていますが,スモンの被害者団体などは歴史が古い薬害ですから,1981年の頃から現代社会の教科書にかなり一時期は薬害について,高度経済成長時代の薬害についていろいろ書かれていたものが,文部省が検定意見をつけてそれがなくなっていったという歴史があり,それに対して非常にしっかりと教育に対しても運動をしてやっていたところだったのですが,この1999年という厚生労働省が誓いの碑を造った年の小学校の教科書に薬害エイズの記述があったにもかかわらず,文部省が検定意見をつけてその全文が削除されたことが朝日新聞で大きく批判されたりしていたというのが99年だったわけです。
 続いて,実際にその時の1回目の要望の回答はこういう回答だったんです。ここに書いてあるとおり,当時の文部科学省の担当官の回答は,国会議員が付き添わないと交渉に応じないということで,国会議員も複数来ていたのですけれども,薬害と薬物乱用を混同する回答に終始していたと。つまり文部科学省の担当官も薬害を知らなかったと。これは当たり前で,薬害に関する教育が日本ではされてこなかったわけで,公教育でも高等教育でも十分にされてこなかったわけで,非常に勉強しているはずの人たちも薬害について知らないということは当たり前だったということがあります。
 全国薬害被害者団体連絡協議会は設立の翌日に東京都内で薬害根絶フォーラムという大きなシンポジウムを開いていますが,この時のテーマは「薬害と教育」だったわけです。それで多くの薬剤師の方も参加していただいて感想を書いてもらいましたけれども,「薬害というものがどういうものか初めて知った」という薬剤師の感想が非常に多く集まったことが,新聞の社説なんかも含めて,そういう感想も含めて報道されたことがありました。
 さらに翌年の2000年から毎年,薬害根絶誓いの碑が設立された8月24日に「薬害根絶デー」を開いて,ずっとこれを続けています。特に2002年3月に私たちの加盟団体の薬害ヤコブと国で和解が成立したのですけれども,その和解の確認書の中では「我が国で医薬品等による悲惨な被害が多発していることを重視し,その発生を防止するため,医学,歯学,薬学,看護学部等の教育の中で過去の事件等を取り上げるなどして医薬品等の安全性に対する関心が高められるよう努めるものとする」ということが,国との和解の中で約束されているということがあります。
 また,文部科学省との面談の際には,毎年文部科学大臣が原則出席してくれており、2006年の文部科学大臣の発言は非常にしっかりと発言していただいて,自分が大臣を替わろうとも,常に大臣が出ていく,私たちと面談を毎年することを申し送ることを約束していただきましたし,薬害は原爆と同じようになくしていくことを日本を挙げてやっていくんだというような発言をしていただいていると。そういう経緯があります。
 なので,私たちのスローガン,私たちは何を目的に活動しているかというと,「子どもたちを将来,薬害の被害者にも加害者にもしたくない」という思いです。ぜひ皆さん,ここに参加されている委員の皆さんも同じ思いでいてくださっているものと思いますが,被害者が出るということは加害者が出るということで,加害者にならないようにすることがまさに高等教育の目指すところで,それが被害者を出さないことにつながるわけです。
 もう一つ,私たちのスローガンでは「薬害の原因はクスリだと思っていませんか?」という言い方をしています。つまり私たちは薬害の原因は薬だとは思っていないということで,全ての薬害に共通する一つのことは,産官学の専門家等の故意や不作為を含む不健全な判断や言動によって被害が拡大した,そのことによって本来防げたはずの被害が拡大した,そういう人災が薬害だと私たちは考えているということです。
 サリドマイドでは,海外では回収されていたのに,日本では専門家が大丈夫であると発言したことが新聞などでも大きく報道され,海外では回収していた後にもたくさん薬が飲まれて,それで被害が拡大しています。スモンも専門家が伝染病だと語ったために被害の救済が遅れたどころか,差別偏見が広がり,非常に大変な薬害になってしまったわけです。薬害エイズも海外では加熱製剤が使用されていたのに,国はそれを様々な理由というか,目先の利益などのことを考えて早期導入せずに,それで血友病の子供たちの被害が拡大してしまったと。陣痛促進剤は1974年の段階から産官学の専門家の一部の人たちは添付文書の大幅改訂,最大使用量を半分以下にしなければいけない,筋肉注射で打ってもいいと添付文書に書いてあるけれども,1分間に3滴ぐらいの点滴から始めなければいけない,感受性の個人差が非常に大きいから重篤な被害が繰り返されていたことを知っていたのに,被害者団体が厚生労働省と交渉するまで18年,または別の見方をすると36年間も添付文書の改訂が遅れて,それで被害が拡大してしまったというようなことが歴史としてありました。
 ということで,このスライドの下に書いていますが,薬剤師の皆さんには全ての薬害の詳細を的確に学んで考えてほしいし,産官学の利益相反,専門家個人の問題,メディアや専門家の問題,それから被害者や一部の専門家が薬害を指摘しても,利益相反のある専門家や産官学がそれを否定するプロモーションを続けたという歴史もあるわけです。だから薬害は過去にもっとあった可能性もありますし,私たちの現在の加盟団体以外にもありますし,今も多数起こっている可能性がある。こういうことは時代を経ないと薬害であったと分からなかったものが今も,過去にもたくさんあった。なので,これからの未来にも,過去には高度経済成長時代という言い方をしますが,今も常に経済成長,経済成長と言われている中で国民の健康を守ることを教育でやっていくのは非常に大事な,重要な役割だと思っています。
 一方,公教育のほうは,厚生労働省が「薬害を学ぼう」という冊子を配布することを続けてくれています。それを基にしたいろいろな中高の実践例が非常にいい形でできつつあります。ここから何を学んでいくかということに関して,薬害からは偏見や差別や人権教育,それから技術とかに関する倫理教育,歴史の教育,科学教育,経済優先の資本主義社会の中の消費者教育,被害から素直に学べる社会を育てる教育,情報公開と民主主義教育,まさに行政・司法・国会と社会運動ですね。そういう社会がどう変わっていくか,国がどうあるべきかというような議論。そういうことを全部学べるということです。
 ということは,薬害を学ばないで倫理教育とか人権教育だとか医療者への教育,そういう教育はやはりできないし,逆に薬害を抜きにした,ある意味ではそういう教育をするということは非常に実際空虚な感じがするわけです。
 薬剤師や薬学者に私たちが求めることといえば学問的良心それから職業的良心となるわけですが,そうすると過去の薬害を考えると,WHOが推奨している,厚労省が認可しているというだけでは駄目だと。さらに本当に市販後の調査とかを分析できて,その推奨理由や認可過程,二次情報だけではなくて一次情報も精査して,防止していけるような専門家を育てていってほしい。それは薬害の歴史を学んでいるとそういうことに気づくわけですが,薬害を学んでいないと二次情報だけでうのみにしてしまう,本当に専門家と呼べるのかというようなレベルになってしまう可能性を僕たちは危惧しています。
 論文で結論が出ているといっても同様で,論文の一次情報を批判的にちゃんと見ているのか,論文の結論だけの二次情報だけで受け入れてしまっていないかというようなところが,実際,過去の薬害を学んでいくと,そういうところまで見ていくことが専門家にとって必要なんだということが分かっていってもらえると思うのです。
 人権感覚を高めるためには,患者の視点,消費者の視点,市民の視点よりも,何よりも被害者の視点は絶対に無視してほしくないですし,薬害の被害者たちは皆,医療を必要としている。それだけに医療の質をしっかり高めてほしいと思っているのです。二度と同じようなことが起こらないように,防げるものは防いでほしい,そういう被害者の思いをぜひ教育に生かしていってほしいと思うわけです。
 薬剤師会の関係者と薬害の被害者団体の対話も過去にはありました。コンビニやインターネットなどで薬をどんどん販売してもいいんじゃないかということが関係の業界や楽天とかそういうところからもいろいろあった際に,薬剤師会の関係者から,薬剤師を通さないと販売はしないことが大事だと思わないかということを言われ,被害者団体も一緒に協力してくれないかというような要請を受けました。その際、私たちはこう答えています。「薬剤師は薬害を知っている。薬害を知らないコンビニの店員に薬を売らせるわけにはいかない」と,そう言えるのならば協力しましょうと私たちは言いました。また,薬剤師がたくさん今養成されている中で,病院の中の医療でも薬剤師がもっと関わっていくべきだと思いませんか、ということに関しては,疑義照会を一回したけれども医師はそれでいいんだと言ったからもう諦めましたではなくて,本当に疑義照会をすることの意義とか,薬害を知っているから,歴史的にすごく知っていると,そういうことを学んでいるからしっかりと被害を防止できるんだ言うんだったら協力しましょうと言いました。
 実際その後,日本薬剤師会は非常に薬害の被害者たちの話を聴くような講演会を多数開催してくれたわけです。薬の販売に関する検討会とか中医協とかに私たちの関係の者が委員をやっていますから,こういう動きに対してやはり薬の販売や医療現場では薬剤師を大事にしてほしいということを私たちは訴えてきました。
 それで、本題のモデル・コア・カリキュラムへの要望に関してですが,これは前回の時に私たちが要望した内容がこの2つです。今回,非常に危惧していることになってしまっていて,今からちょっと厳しい意見を言わなければいけないのですが,今回,今日の議論でも再三出てきていますが,この改訂案によってこういうふうに変わるということです。実際にこれ,AとAが名称は変わっていますが,つまりAの意味は一緒だと思うのですが,Aの内容が現行のものと改訂案で大きく変わっていることに非常に大きな危惧を抱いています。
 どう変わっているかですが,前回のAには,Aの基本事項の(1)の最初の「薬剤師の使命」の冒頭に「薬害防止における役割を理解する」,つまり薬剤師の使命として薬害防止における役割を理解することが書かれています。実際その具体的なところではここの6番,7番,薬害の原因や社会的背景及びその後の対応を説明できる,それから代表的な薬害に関して,患者や家族の身になって医療を考えていける,そういう教育をしていくことが前回のモデル・コアカリキュラムの冒頭にこれが書かれてあって,国民としては非常に信頼の置ける薬剤師が育っていくような期待があったわけです。
 ところが今回の大項目・中項目・小項目,これが今回のAですけれども,完全に「薬害」という言葉が消えてしまっていて,薬害について教育することがなくなってしまうのではないか,実際、改定案ではなくなってしまっている現状があり,ぜひ私たちとしては少なくとも前回と同じであるべきで、後退してしまう感は絶対に,これからますます経済成長と言っていくわけですから,後退しているという感があるようでは本当に困りますし,さらに発展させてほしいと思っているところなのです。特にこういうふうに前回のカリキュラムで薬害の教育をやった結果,実際どういうふうに大学の薬学部の中でそれが生かされ,どんな教育がされ,またはどういう反省点があり,さらにこういう目的を達成し,薬剤師の使命を進めていくためにはどういうふうにしていったらいいのかというような議論をしていただきたかったのに,完全に消えてしまっているのはどういうことなのかと,私たちは感じているわけです。
 さらに,現行のモデル・コアカリキュラムでは「医薬品の安全性」にも「薬害」という言葉が載っていたわけですが,そういうことからすると,改定案でなぜか「薬害」という言葉が消えてしまっていることの意味が今のところ私たちは理解できないわけですけれども。
 まとめとしては,新たな薬学教育モデル・コア・カリキュラムでも,質・量ともに,これまでと少なくとも同等,これまで以上に薬害防止に向けて必要な教育がなされるように。それは本当に将来,薬害の被害者にも加害者にも子供たちをさせないという,それは文部科学省の責務だと思いますし,子供たちが将来薬害の被害者にも加害者にもならないようにするために,薬学教育モデル・コア・カリキュラムには薬害防止の観点はやはり入れていただきたい。地に足のついたカリキュラムをやはりちゃんとしていっていただきたいと思っています。
 それから,プロフェッショナルとは何かということが2つ目のところですけれども,もしここが消えてしまうようなことになってしまえば,文部科学省自体がやっぱり薬害の,次に起こってしまう薬害の原因だったのじゃないかということになって,やっぱり薬害は人がつくっているんじゃないかということになってしまうと思います。
 文部科学省さんには,私たちが医学部・薬学部・看護学部,特に薬学部で多数90分立ての授業とか特別授業なんかをして,その成果,学生の感想がいかによいかを毎年渡しています。昨年度も医学教育課長宛てに渡しています。多くの実践例があり,私たちとしては90分1回だけではなくて,15回連続で単位認定がされるような薬害防止教育がつくられるべきだと思っています。それは本当に将来の薬剤師のため,日本の医療のために,国民のために非常に重要なことだと思っていますし,実際,私も最近行ったある国公立大学の薬学部の卒業間際の学生は,私が90分間,薬害防止の話をした後に,大学の先生が何か質問はありますかと聞いたら,手を挙げて涙をためながら,今までで一番いい授業を受けたと言ってくれました。これをもっと早く聞いていれば,私が勉強する姿勢はもっと変わっていたかもしれないとまで言ってくれているわけです。そういう薬害を知らない人たち,薬害を知っている人たちの差異がある現状の中で,ぜひ薬害を知っていただいて,そのことが非常に重要だということをモデル・コア・カリキュラムを通じて伝えていく役割を担っていただきたいと思います。
 最後に,これで私たちが意見をする機会は終わってしまって,もう議論に参加できないと思うのですけれども,もしこのままで消えてしまうままでいってしまうようであれば,私たちは何らかの動きを別途しなければいけないということを,今,考えております。ぜひ引き続き情報共有なり,情報提供なり,意見交換なりする機会を頂ければありがたいと思います。
 以上です。どうも御清聴ありがとうございました。
【井上座長】  ありがとうございました。
 大変厳しい御意見を頂きました。私どもは医薬品の安全性を非常に重視しておりますし,また,薬害につきましてもほとんどの大学が患者さんをお呼びして聴くようなスタンスを取っております。したがいまして,薬害のことについて軽視しているということは決してないのですけれども,今回の,今,皆さんにお示しした資料の中に「薬害」という言葉が登場していない点については私どもも考えるところがございます。何とかしなければいけない。もうちょっと表現的にきちっとすべきだったのかなとは思います。
 「基本事項」の中に現行のコアカリキュラムではあるのですけれども,この「基本事項」が「資質・能力」という言葉に変わってしまいました。したがって,じゃあどこに入れようかということになりまして,今,「薬学と社会」,ここに薬剤師の使命とかそういう項目が入ってくることになりました。これは今回お見せした資料の中には,この「薬学と社会」の中にその辺のところが入っていないんですね。これは「プロフェッショナリズム」が項目として上がってしまったために,そこに入るのかなということで,そこの検討が遅れてしまいました。それが一つの要因になっております。
 ですので,多分次回お示しする案の中には薬剤師の使命というようなことがもっと明確な形で記載され,そこに薬害等も登場することになると思っております。御指摘されたことは真摯に受け止めて対応したいと思っております。よろしくお願いします。
【勝村氏】  ありがとうございます。よろしくお願いします。
【井上座長】  時間が大分過ぎておりますけれども,何か御発言はございますでしょうか。
【平田委員】  平田です。
【井上座長】  どうぞ。
【平田委員】  先ほどの件,ちょっとカリキュラムの領域の構成のところですが,Bの最初のところにほとんど同じ,Aにさっきおっしゃったところがそのまま入っているように思います。ですからちょっとカリキュラムの構成上,Aにないのは確かにちょっと伝わりにくいところかもしれませんが。ただ,薬害の扱いとかはさっきおっしゃったとおりで,もう少し練らないといけないところがあるかもしれませんが,一応,前回の「基本事項」は「社会と薬学」の中に取り込んだ形で構成されていますので,その点はさっきおっしゃったところの部分の文言はそのまま入っているように思います。ですから,むしろ今からいろいろその部分についての御意見を頂いて,もっと強化していかないといけないところもあるかもしれませんので,その辺りはまた御意見を頂きながらつくっていかないといけないのかなと思っています。
【勝村氏】  ありがとうございます。ちょっとよろしいでしょうか。
 私たちがよく知る先生方もたくさんおられて,その点,一定の信頼をしているところではあるのですけれども,一応,本当に学生の皆さんにとっても,私たち患者側にとっても一つの象徴ではあるので,非常に大項目というか,冒頭というか,非常に見えやすい形で倫理なり人権なり,そういうことも含めて薬剤師はやっぱり必要だと思える書き方がされていたということなので,非常にリーズナブルな内容ももちろん皆さんにとって必要だと思うんですけれども,ある種コア・カリキュラムは象徴的な教育の本来の指針というか,そういう指し示すものでもあると思いますので,ぜひ私たちとしては冒頭に書いてくれると安心感があって,そういうものがぜひ維持していただけるとありがたいなという思いはあります。
【平田委員】  私が答えられることかどうか,その辺りは十分に反映させていかないといけないと思いますので。いわゆる構成上の問題というよりも,さっき言った非常に重要なところの部分が冒頭へというお考えはよく理解できますので。ありがとうございます。
【勝村氏】  ありがとうございます。
【井上座長】  ほかによろしいでしょうか。
 それではありがとうございました。皆様方の御意見を踏まえて検討を進めてまいります。また次回のこの会にどこまで改訂したものが出せるかまだまだよく分かりませんけれども,速やかに改訂できるものに関しては次の会にお示しして,また御意見を頂くというふうに進めていきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは時間ですので,最後に事務局より連絡事項をよろしくお願いいたします。
【追川係長】  事務局でございます。
 次回の会議ですが,3月7日,月曜日,10時から12時の開催を予定しております。議題や資料については追って御連絡させていただきます。
 事務局からは以上でございます。
【井上座長】  ありがとうございます。
 以上で本日の会議は閉会とさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは以上で閉会といたします。ありがとうございました。
 ―― 了 ――

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