モデル・コア・カリキュラム改訂に関する連絡調整委員会(第1回)議事要旨

1.日時

令和3年8月18日(水曜日)14時00分~16時00分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 設置趣旨等について
  2. 委員長の選任について
  3. モデル・コア・カリキュラム改訂の検討体制及びスケジュール(案)について
  4. 調査研究チームからの令和2年度報告について
  5. その他

4.出席者

委員

    伊藤委員、江藤委員、小川委員、北川委員、北村委員、栗原委員、齊藤委員、嶋田委員、永井委員、奈良委員、羽鳥委員、
    福井委員、前田委員、俣木委員、三浦委員、南委員、門田委員、柳川委員、山口委員

 

5.議事要旨

【小松﨑課長補佐】  
 ただいまからモデル・コア・カリキュラム改訂に関する連絡調整委員会を開催いたします。私は、後ほど座長が選任されるまでの間、進行を務めさせていただきます医学教育課長補佐の小松崎と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 なお、本日の委員会はYouTubeにてライブ配信をしております。
 初めに、本日は今回の改訂に係る第1回目の会議ですので、文部科学省を代表いたしまして、高等教育局長の伯井より一言御挨拶を申し上げます。
【伯井高等教育局長】  
 文部科学省高等教育局長の伯井でございます。この度は、医学教育・歯学教育に関するモデル・コア・カリキュラム改訂に関する連絡調整委員会の委員に御就任いただきまして、また、先生方は大変御多忙の中、オンラインではございますが、今回御出席いただきまして、誠にありがとうございます。感謝申し上げたいと思います。
 先生方には既に御案内のとおり、モデル・コア・カリキュラムは、各大学が策定するカリキュラムのうち全大学で共通して取り組むべきコアの部分を抽出し、モデルとして体系的に整理したものでして、平成13年3月の策定以来、3度の改訂を経て、今日では全ての医学部・歯学部において活用いただいております。現行の平成28年度の改訂以降も、新型コロナウイルス感染症の流行や、AI、ビッグデータの活用等による医療技術の高度化と新たな医療倫理、または超高齢社会の到来による合併症患者の増加等の医療の在り方の変化など、社会の目まぐるしい変革が起きております。
 令和3年5月に成立した医療法等の一部改正では、共用試験が公的化されるとともに、臨床実習において医行為を行う、いわゆるStudent Doctor、Student Dentistが法的に位置づけられ、卒前・卒後教育のさらなる峻烈化への対応や、今後も起こり得る新興感染症に備えた感染症教育など、新たな課題も出てきたところでございます。
 こうした状況の変化、あるいは今後の不可避な社会情勢の変化を踏まえ、貴改訂では卒前段階における医療人材の水平的な協調も進めるべく、医学、歯学、薬学のモデル・コア・カリキュラムを同時に改訂することとしております。
 先生方におかれましては、それぞれの立場や職域にとらわれず、ぜひ忌憚のない活発な御意見をいただきまして、新しいモデル・コア・カリキュラムが在学時の学生のみならず、社会の要請にかなった新たな時代の医療への指針となり、実りのある学びがなされるよう活発な御議論をぜひともよろしくお願いいたします。今日はまたよろしくお願いいたします。
【小松﨑課長補佐】 
 ありがとうございます。
 では、次に配付資料の確認をさせていただきますが、一応電子媒体ということで、画面で議事次第を表示することで代えさせていただきたいと思います。皆様、ファイル等、お手元にもし届いてないなどあれば、お申し付けいただければと思います。
 なお、資料につきましては、後ほど当省のホームページに公表する予定となっております。
 配付資料については、今画面に映っているとおり、資料1から資料5までが本資料、参考資料として、参考資料1から参考資料7まで送付させていただいております。
 では、次に、コアカリ改訂に関する恒常的な組織の設置趣旨の説明及び委員の紹介をさせていただきたいと思います。
 恒常的な組織の設置については、平成19年に設置しまして、令和3年5月21日に一部改正を行っております。目的といたしましては、医学教育モデル・コア・カリキュラム及び歯学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂に関する恒常的な組織を設置するために、委員会を設置しております。役割といたしましては、(1)から(5)にあるとおりでございますが、法制度、名称等の変更に対応したモデル・コア・カリキュラムの改訂、あるいは(2)にありますとおり、モデル・コア・カリキュラムの検証・評価、(3)にありますとおり、それに必要な調査研究、(4)関係機関への周知徹底、各大学の取組状況の検証などを役割としております。
 今回、モデル・コア・カリキュラム改訂に関する連絡調整委員ということで、名簿にありますとおり、医学教育課長の伊藤をはじめとしまして、歯学教育改善・充実に関する調査研究協力者会議座長の江藤先生、日本私立医科大学協会会長の小川先生、国立大学医学部長会議常置委員会委員長の北川先生、東京大学名誉教授の北村先生、医療系大学間共用試験実施評価機構理事長の栗原先生、全国医学部長病院長会議医学教育委員会委員長の齊藤先生、東京医科歯科大学特任教授の嶋田先生、自治医科大学学長の永井先生、日本医学教育評価機構常勤理事の奈良先生、日本医師会常任理事の羽鳥先生、京都大学名誉教授の福井先生、新潟大学歯学部長の前田先生、東京歯科大学歯科医学教育開発センター客員教授の俣木先生、日本私立歯科大学協会会長の三浦先生、読売新聞東京本社常務取締役調査研究本部長の南先生、日本医学会会長の門田先生、日本歯科医師会副会長の柳川先生、NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口先生を委員とさせていただいております。
 なお、オブザーバーといたしまして、厚生労働省医政局歯科保健課長の小椋課長、厚生労働省医政局医事課長の山本課長にいらっしゃっていただいております。
 続きまして、資料2、連絡調整委員会の公開について確認させていただきたいと思います。
 モデル・コア・カリキュラム改訂に関する連絡調整委員会の公開については、1番、議事、2番、会議資料、3番、議事録、全て原則として公開させていただきたいと考えております。なお、本委員会を非公開とすることが適当であると認めた場合には、本委員会を公開にしないことができるとさせていただいておりますが、本日もYouTubeにて基本的には公開とさせていただいておりますので、本日もそのように進めさせていただければと思います。
 続きまして、座長の選任を審議いただきます。
 座長の選任方法については、委員の互選という形でさせていただきたいと考えておりますが、いかがでしょうか。御異議のある方は挙手、あるいは直接御発言という形でお願いいたします。

(「異議なし」の声あり)

【小松﨑課長補佐】 
 それでは座長の選任を行いたいと思います。どなたか御推薦をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 福井先生、お願いします。
【福井委員】 
 福井です。それでは、私から永井先生を推薦させていただきたいと思います。あえて理由を述べる必要はないと考えますが、先生は医学、医療、医学教育全般に最も造詣の深い先生のお一人でございます。また、当初からモデル・コア・カリキュラムの作成に関わってこられ、変遷、発展をよく御存じで、そして何よりも先生は常に、合理的、理性的な判断をされますので、ぜひ座長をお願いできればと考えた次第です。よろしくお願いします。
【小松﨑課長補佐】 
 ありがとうございます。ほかに推薦される方はいらっしゃいますか。

 (「なし」の声あり)

【小松﨑課長補佐】 
 ほかに推薦される方がおられないようでしたら、ただいま福井先生より御推薦いただきました永井委員を本委員会の座長とすることでよろしいでしょうか。御異議ある方は挙手、あるいは御同意いただける方は画面上でうなずいていただいてもいいです。

 (「異議なし」の声あり)

【小松﨑課長補佐】 
 それでは、本委員会の座長は永井先生にお願いしたいと思います。
 座長選任に伴いまして、永井先生から一言御挨拶をいただきたいと思います。永井座長、よろしくお願いいたします。
【永井座長】 
 自治医科大学の永井でございます。大変重要な役割を仰せつかりまして恐縮しております。
 現在、医学、医療が非常に大きく変わっていますし、社会自体もコロナ等で変化しております。ぜひよいコア・カリキュラムを取りまとめできるようにしたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【小松﨑課長補佐】  
 では、ここからの進行は永井座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【永井座長】 
 それでは議事次第に沿って、3、モデル・コア・カリキュラム改訂の検討体制及びスケジュール(案)、4、調査研究チームからの令和2年度報告、5、その他について議事を進めたいと思います。
 まずモデル・コア・カリキュラム改訂の検討体制とスケジュール(案)について、事務局から説明をお願いいたします。
【島田企画官】 
 はい、ありがとうございます。事務局の文部科学省医学教育課企画官の島田と申します。私から資料3につきまして御説明させていただきます。
 2枚目をお願いします。これまでの医学、歯学、薬学、看護学のコアカリ策定・改訂の変遷でございます。
 先生方は御承知のことばかりかと思いますけれども、先ほど局長より御挨拶申し上げましたとおり、平成13年3月に最初の医学のコア・カリキュラム、そして歯学のコア・カリキュラムが策定されております。その後、平成19年、平成23年、平成29年、3回の改訂を経まして、現行のコア・カリキュラムが運用されているところでございます。このほか薬学につきましては、平成14年に初版、第1回目のコアカリが策定されて以降、一度の改訂を経て現状に至っております。看護学につきましては平成29年に策定されております。
 今回の連絡調整委員会におきましては、この中で医学と歯学教育に係るモデル・コア・カリキュラムの改訂について検討いただきます。前回改訂時におきましては、この黄色の四角の一番下ですけれども、医学教育については東京大学、歯学教育につきましては東京医科歯科大学に委託をいたしまして、改訂の素案の作成などを行う調査研究チームを組織いただきました。それぞれのコアカリ案につきまして、医学教育、歯学教育、それぞれ専門研究委員会を組織して御議論いただいた上で、医学、歯学共同の連絡調整委員会で御議論いただいたという3階建て構造となっておりました。
 次の次のスライドで今回の検討体制について御説明いたしますが、今回は、前回改訂にございました中2階の専門研究委員会をなくしまして、2階建て構造としております。今回、医学につきましては日本医学教育学会、歯学につきましては日本歯科医学教育学会に委託を行いまして、昨年度から調査研究を実施いただいております。それぞれの調査研究チームから、こちらの医学、歯学共通の連絡調整委員会に改訂原案などを提示いただき、御議論いただくという検討体制でございます。
 1枚スライドをお戻りさせていただきますが、検討スケジュール(案)でございます。こちらには、6年教育のある医学、歯学、薬学のみ記載しております。
 医学、歯学につきましては、先ほどお話しいたしましたとおり、昨年度から調査研究委託が始まっておりまして、今年度2年目となってございます。そして本日、この連絡調整委員会で本格的にといいますか、医学・歯学のモデル・コア・カリキュラムの改訂の検討を開始いただきます。そして、来年度も検討をいただきまして、来年度に薬学も同時にコア・カリキュラムの改訂を完了し、1年強の準備期間、周知期間を経て、令和6年度の学生受入れというところに持っていきたいと考えております。薬学につきましては、1年早く調査研究委託が始まっているところですが、6年教育の医学、歯学、薬学につきまして、コア・カリキュラム同時改訂を目指したいと考えております。
 6枚目の資料でございますが、改訂に向けたスケジュール(案)でございます。
 大枠は先ほど申し上げたとおりですけれども、連絡調整委員会といたしましては、本日第1回におきまして、昨年度からの調査研究チームの報告をいただきます。この報告なども踏まえまして委員の先生方から御意見をいただき、次回は、10月頃を予定しております第2回連絡調整委員会におきまして、本日の委員からの御意見なども踏まえて、研究チームから改訂方針(案)、改訂のポイントとなる事項について提示いただき、この改訂方針(案)について御議論いただく予定としております。第3回は、来年度春頃に開催できればと考えておりますが、この第1回、第2回の議論を踏まえてコアカリ改訂(素案)を調査研究チームからそれぞれ提示いただき、御議論いただきたいと考えております。そして、第4回の夏頃には、それらの御意見も踏まえたコアカリ(案)を御確認いただきまして、パブリックコメントを経て、第5回、来年度冬頃の連絡調整委員会におきまして、モデル・コア・カリキュラム決定、そして、1年強の周知期間を経て、令和6年度入学生から適用し、学年進行に従いまして順次適用という形にできればと考えております。
 ここのスケジュールには、モデル・コア・カリキュラムのスケジュールしか書かれておりませんが、このほか同時に進んでいる事項といたしまして、例えば、医師法、歯科医師法の改正が今年度なされまして、診療参加型臨床実習における医学生、歯学生の位置づけの明確化がなされております。こちらは、医学生については令和5年度、歯学生については令和6年度から適用、施行と聞いております。また、医師国家試験、歯科医師国家試験の改善検討や出題基準の改訂などもなされており、そして卒前・卒後のシームレスという観点では、卒後臨床研修の制度の見直しなども順次行われているところでございます。医科につきましては、CC-EPOCの正式運用なども行われておりますが、これらの制度の変更が順次行われていきますけれども、厚生労働省など関係各所と有機的に連携しながら、今回のモデル・コア・カリキュラムに反映させていければと考えております。
 7枚目以降の資料は参考としておつけしておりますが、前回改訂時の連絡調整委員会における議論のスケジュールが8枚目、9枚目でございまして、10枚目は医学、歯学、薬学、そして看護学も含めたモデル・コア・カリキュラムの対比表、そして12枚目からは前回改訂時に示された留意事項ということで、コア・カリキュラムについてのみならず、全般的な留意事項が記されておりますので、改めてこちらに掲載させていただきます。御参考にしていただければと思います。
 このほか、資料7-1、7-2は、今回御説明いたしませんけれども、7月に開催いたしました医学、歯学教育指導者のためのワークショップの事前アンケートを実施しておりますので、そちらも適宜御参照いただければと思っております。
 事務局からの説明は以上です。
【永井座長】 
 はい、ありがとうございました。
 ただいまの事務局からの説明について御質問のある方は御発言をお願いしたいと思います。オンラインですので、初めに一言声をかけていただければと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。全体の体制とスケジュールでございますが。

(「なし」の声あり)

【永井座長】 
 御発言なければ、それでは今後このようなスケジュールで委員会を進めていきたいと思います。
 では、続いて、調査研究チームにおける令和2年度の報告について、医学教育と歯学教育のそれぞれのチームから説明をいただきたいと思います。
 質疑応答の時間は、それぞれのチームの説明ごとにお取りしますけれども、両チームの説明及び質疑応答の終了後に、自由討議の時間がたくさんございます。医学教育、歯学教育に共通する御意見については、その際に御発言いただければと思います。
 ではまず、医学教育について、調査研究チーム座長の小西先生から説明をお願いいたします。
【小西調査研究チーム座長】 
 永井委員長、どうもありがとうございます。聞こえておりますでしょうか。
【永井座長】 
 大丈夫です。
【小西調査研究チーム座長】 
 ありがとうございます。
 それでは、医学の調査研究チームから昨年度の御報告をいたしたいと思います。
 医学の調査研究チームの座長を務めております日本医学教育学会の小西靖彦と申します。令和2年度の活動概要と調査研究について御報告を申し上げます。
 医学教育モデル・コア・カリキュラム――以下、コアカリと省略いたしますが、コアカリは平成12年度、2000年度に初版が著されて以降、次回が第5版となります。この度、初めて日本医学教育学会が調査研究班を受託いたしました。大変誇りに思っております。文部科学省と相談の上、スライドに示した16名の委員を編成いたしました。私が座長を、名古屋大学の錦織先生に副座長を務めていただいています。日本医学教育学会の理事が6名、代議員7名、会員3名の構成として、将来への継続性に配慮して若いメンバーを入れるようにいたしました。基礎系、社会系、臨床系、臨床実習などの背景とともに、バックグラウンドの多様性に配慮いたしました。医学教育に関わる団体とのリエゾンパーソンも配置いたしております。メンバーは医学教育と現場の専門家として調査研究に当たります。
 令和2年度の活動概要をお伝えいたします。
 第1回ミーティング、全体会議を昨年の12月に行いました。以後1か月に1回の運営で続けてまいっております。このような時期ですので、会議は全てウェブで行っています。それぞれが医学教育に熱心なメンバーですので、滞りなく進んでいる印象を持っております。3月19日に令和2年度の報告書を確定し、本日、連絡調整委員会の皆様にお届けしているところです。
 昨年のキッキング会議では、16名のメンバーで共有いたしましたチームの意義と責務について記載をいたしました。コアカリの改訂は、今後数年間の医師、医学者の養成の基礎となります。チームメンバーは、医学教育の専門家として医学教育の理論に基づいて、また、医学教育の実践に基づいて改訂を行いたいと考えております。文部科学省や様々なステークホルダーとの対話を通じて、よりよい医療人の育成に資するコアカリを行いたいと考えております。
 それでは、令和2年度のコアカリの調査研究活動について御説明いたします。
 まず、これまでのコアカリ改訂が意味のある効果をもたらしたのかについて、1番として、コアカリの改訂が学修者、すなわち学生に及ぼした影響、2番として、各大学のカリキュラムに与えた影響について検証を行っております。
 一方で、コロナは社会の様々な場面でパラダイムシフトを起こしました。不足していたものを明らかにしました。この影響の大きさを考え、コアカリが現状に対応していなかった点についての緊急検証を行いました。これが3番、感染症教育の在り方についてであります。この3番の調査は2021年度、今年度に行う改訂を一部先行するものという意味もございました。
 三つのワーキンググループを編成して、4、5名ずつで活動しております。正副の座長は、可能な限り全てのワーキンググループに参加しました。1番の学修者能力に対する調査は山脇正永リーダー、2番の各大学へのカリキュラム調査は高橋誠リーダー、3番の感染症教育の調査は中山健夫リーダーの下で、毎週1、2回のミーティングが持たれ、精力的な調査を進めたところであります。
 行った調査内容について記載いたしましたが、後で個別に申し上げますので、ここでは説明を省略いたします。
 成果物として、本日皆様にお送りしております465ページの報告書を刊行いたしました。また、この内容は、文部科学省のホームページで見ることができるようになっております。
 さて、調査研究の結果でございます。
 1番として、コアカリが学修者―学生に及ぼす効果につきましては、調査対象として、共用試験のデータ、厚生労働省の研修医アンケート、卒後すぐのEPOCデータ、全国医学部長病院長会議の白書、あるいはJAMEPのデータなどに許可を得て当たりました。コアカリが改訂されて2、3年後に各大学のカリキュラムが改訂されることが多く、また、そこでの入学者が卒業するには、さらに6年がかかります。このため、学修者に与える影響調査は主に平成22年度、前々回の改訂についての検証を行いました。医師として活動するのは卒業より先のことですから、コアカリは今の課題だけではなく、10年先を考えて策定すべきということも分かってまいります。コアカリ改訂以外に学修者に与える因子は、医師国家試験やJACMEによるカリキュラム改革、あるいは学生の医行為の範囲の変化など、多岐にわたることも考えるべきところでした。
 1番の調査研究の調査結果の抜粋でございます。膨大な調査の一部のみとなりますことをお許しください。
 コアカリ改訂前後で学修者のアウトカムに変動があったもの、これはございました。CBTやOSCEなどの一部の項目もそれに当たります。ただし、実際にコアカリ改訂による変化かという点については、評価がやはり困難でした。学修者のアウトカムへの指標特定が困難であるという点や、時系列のベンチマーク指標をあらかじめ置いていないこと、コアカリ以外の交絡因子が大きいということが、その理由として挙げられます。
 ただし、コアカリ改訂の真のアウトカムとして、学修者の評価は重要であります。今後、例えば研修を開始したときの、臨床研修を開始する直前の臨床パフォーマンスのデータなど、あらかじめ仕組まれたデータの蓄積が必要と考えました。コアカリの改訂前に学修者のベンチマーク、今申し上げました追跡指標をあらかじめ設定しておくこと、各大学の教育IRデータを利用して改訂効果を分析することなどが次年以降への提言としてなされたところです。
 2番目のチームは、コアカリが各大学のカリキュラムに与えた影響について、まず様々な団体が行っておりました調査データなどを収集・整理いたしました。これには、AJMCのカリキュラム調査、医学教育学会の白書、文部科学省によるコアカリ改訂に関する調査、夏の文科省ワークショップの事前アンケート、全国地域医療教育協議会の調査などを解析しております。様々な団体のデータをお示しいただいたことに、この場を借りて深く感謝申し上げます。
 なお、これだけでは不足する情報については、このチームから全国の大学に50の設問からなるアンケート調査を行いました。幸い82全大学から回答を得ることができました。アンケート内容については、報告書の105ページ以降を御参照いただければと思います。
 これも短いまとめで恐縮ですが、平成28年度のコアカリ改訂を受けて、約7割の大学でカリキュラム改革が明確に実施されているということが判明いたしました。
 3分の2はコアカリ、3分の1は自主的なカリキュラムとされているところですが、実際の自主的なカリキュラムは、アンケートによりますと、全国平均で13.4%というところでございました。
 診療参加型実習は、充実化が進んでおりますが、教員の不足と負担増加が課題となっていることが浮き彫りになりました。
 地域医療について、9割以上の大学でプログラムの整備がなされております。その実施大学の半数は、学内の実施でした。
 前回記載された社会科学や行動科学などに対しては、対応の困難さが現れておりました。
 次回追加すべき事柄としてアンケートで聞いたところ、データサイエンスやAI―人工知能、プログラミングなど、もしくは感染症疫学や地域医療の実習などが挙げられておりました。
 医学の進歩によるカリキュラム肥大の悩みや学修項目中心のコアカリに方略や評価をどの程度盛り込むべきかなどの課題も抽出されたところであります。
 3番目の感染症教育グループは、有識者の13名、医師、看護師、薬剤師、検査技師へのインタビューを中心に活動しました。
 そのリサーチクエスチョンとして、一つ目は、2020年度時点での医学部での感染症教育の現状を把握すること。二つ目として、現コアカリで感染症に関連した項目や内容が、現場でどのように捉えられているかを明らかにすること。三つ目として、医学部学生が最低限学ぶ必要がある感染症領域の内容が何かを明らかにすること。四つ目として、コアカリの改訂に当たって新たに取り入れるべき内容があるか、あればどのような内容かを明らかにすること。五つ目として、現在のコア・カリキュラムで感染症に関連した項目・内容などの問題点や課題がないかを明らかにすることでございました。
 先ほど申しましたが、このチームの活動は2021年度の改訂作業、これから行います業務において、コアカリに必要なものは何か、あるいは文言だけの記載ではなく、実際に大学の教育に根づかせるにはどのようにすればよいかなどを策定するための試行研究の意味合いを持って行ったところであります。
 感染症に関しては、尾身先生や西浦先生など数名の講師からの御講演もいただき、質問を加えて、16名のメンバー全員が参加機会をとって、全体の認識を高めたところです。これらの内容についても報告書に記載をいたしましたので、どうぞ御覧ください。
 このチームとしては、先ほどの13名の他職種の有識者に半構造化インタビューを行って、そこから質的研究の方法なども使用して、課題の抽出と次回コアカリ改訂への提言をまとめました。その概要はスライドにあるところです。
 まず、感染症に対する考え方の大枠をコアカリに明確に記載する。2番目として、頻度の高い微生物と疾患を厳選すること。3番目、学修項目だけでなく、感染症領域の到達度を具体的に示すこと。4番目として、感染症領域以外の領域との統合的な教育を進めること。5番目として、その他、教育方法や教材・教員、FDなどが提言されております。
 昨年末から約3か月の調査研究について、要点のみで失礼でございましたが、御説明いたしました。調査研究事業は本年度も継続して行っております。国民の皆様によい医療を提供することを前提として、医師養成の基礎となるコアカリの改訂作業にも着手することになると思います。今後とも連絡調整委員会の皆様の御指導をどうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。永井先生、ありがとうございました。
【永井座長】 
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明について御質問がありましたらお受けしたいと思います。全体的なことはまた後ほどお伺いしますが、ここでお聞きしておきたいことがありましたら御発言お願いいたします。
 はい、どうぞ。
【羽鳥委員】 
 小西先生、貴重な報告をありがとうございます。大変勉強になりました。
 調査結果の抜粋で、次回改訂に追加したほうがよいことで、データサイエンス、AI、プログラミング、医療IT、そして感染症のこと、地域医療の教育方略と評価方法、まさにそのとおりだと思います。そして、その下に書かれている医科学の進歩への対応と総量のスリム化ということも、とても重要なことだと思います。医学生は学ぶべきことが多くなって、昔だったら一、二年でやっていた教養に相当するものがおろそかになって、哲学倫理などを学ぶ機会がへって医学が中心になって、1年のときからもう解剖が始まるような大学もあります。それがいいことなのかどうかは、また今後議論するべきことだと思います。
 一つお伺いします。先ほど感染症のことを非常にピックアップしていただいて、とてもありがたいと思うのですけども、日本医師会でも生涯教育の中で、いわゆる共通講習として感染症、医療倫理、医療安全の3つを特出しして、全医師が生涯教育として定期的に学ぶ機会を作っています今回コロナのことがあって、ここを強くピックアップしたのだと思いますが、まだほかにも、例えば医療経済、医療制度、医療保険の仕組みなども医学教育の中で大事ではないかと思うんですが、このあたりは話題にはならなかったでしょうか。以上です。
【小西調査研究チーム座長】 
 よろしいでしょうか。羽鳥先生、どうも御質問ありがとうございます。また貴重な御意見ありがとうございました。
 昨年度の調査はこの三つに限って行ったわけでございます。これまでのコアカリの成果のところを押さえるということが先の二つですね。学修者とカリキュラムに与えた影響、これが大事ということで、まず行いました。今の中で申し上げたとおり、感染症に関してはちょっと事態が大きいことがございましたので、先行して研究を始めたというところでございます。
 今、羽鳥先生がおっしゃいましたように、医療安全、あるいは医療経済を含めた社会的なものに関しては、今年度のチームが新たにいわゆる社会系の教育についてということも含めて調査を開始しております。ぜひ羽鳥先生をはじめとして皆様方の御意見をいただければと、私どもとしては思います。基礎系についての検討を始めるとともに、社会における医療という意味での検討を始めているところでございます。
【羽鳥委員】 
 はい、分かりました。ありがとうございました。
【永井座長】 
 ほかにいかがでしょうか。はい、どうぞ。
【山口委員】 
 御説明ありがとうございました。山口でございます。
 三つほど質問があるんですけれども、まず資料10ページ、コアカリの改訂前後で学修者の学修アウトカムが変動した項目があった、これはどのような項目だったのかということと、それからベンチマークを立てることができればこの効果を見ることができるのかどうかというのが、まずこのページの質問です。
 二つ目として、12ページの真ん中辺りに、平成28年度の改訂コアカリで対応が困難だった内容ということで、社会科学領域と人の行動と心理と書いてありますけれども、これは何がどう対応が難しかったのか。具体的な学習につなげるのが難しいということなのか、対応できるためにこんなことが必要だというような何か分かったことがあったのかということをお聞きしたいのが二つ目です。
 三つ目として、14ページの感染症教育の在り方ということで、コアカリへの提言の中に、その他として教員と書かれていますけれども、感染症に関しては専門家が少ないと聞いています。これを例えば今回のコアカリの改訂に入れて、教員として対応が可能なほどの人数がいらっしゃるかどうかということが、こういった調査をされた中で出てきたのかどうかということ。
 その三つほどをお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【永井座長】 
 はい、どうぞ。
【小西調査研究チーム座長】 
 山口さん、どうもありがとうございます。三つの御質問にお答えいたします。
 まず、学修アウトカムについては、特に共用試験実施評価機構にも御協力をいただきまして、CBTのデータとかOSCEのデータなどで、経年的に変化していって上がっているものがあるということであります。これを具体的に申し上げてもいいのですが、ただ、ここで申し上げると、それが何かコアカリが変わったからというふうな意見になるかと思いますが、実はその理由はやっぱり不明としか言いようがないんですね。ですから、この委員会で何か正式に申し上げるよりは、学生の例えばOSCEのコミュニケーションのところが上ってきたとかいうようなことがございましたが、これがコアカリを変えたからかどうかというところに関する判断は非常に難しいところがありますので、コメントだけにとどめさせていただきたいと思います。大変大事なところで、今日聞かれるかなと思っておりましたが、こういうコメントになります。
 一方で、ベンチマークをやはり先に仕組んでおくといいますか、この言葉がいいかどうかは分かりませんが、これは重要だと思います。例えば、今回感染症教育について、恐らく何か変更すると思います。そうしましたら、要するにリサーチ的に言いますと、前値を取ってないのに、後でこの効果があったかは出ないんですね。そういうことを今まであまりしてなかったので、今年度のチームでは、こういうコアカリ自体のIRと申しますか、データのセッティングをしておくというような仕事をするチームを動かしておるところでございます。まだ途中でございますけれども、アウトカムを測るためにはやはりベンチマークを仕組んでおくということをまずしようとしているのが、1点目のお答えでございます。
 それから、社会医学、行動医学について困難だと言いましたところは、これは今日もJACMEから奈良先生がおいでになっていますが、国際基準の中でも行動医学、社会医学というのが、領域2のなかに項目を立ててもうできております。ちょうど前回の改訂、私は、申し訳ありません、絡んでおりませんでしたが、今日来ております錦織副座長を含めた前回のメンバーは、そのこともあって、前回のコアカリの平成28年度版の中に行動科学、社会科学を入れて、比較的細かい項目まで書きました。ただ、結局のところ、それに対して大学へのインタビューを、あるいはアンケートをかけますと、実際何をしたらいいかまだちょっと困っているという大学の答えが多かったということでございます。
 これから引き出されることは、やはりJACMEなどとも協力いたしまして、こうしなさいと書いておいただけでいいのか、要するに学修目標の羅列だけでいいのか、方略を含めてどうするか、評価も含めてどうするかというところをコアカリの中にどう盛り込んでいくのかというのが、今年度のテーマになると考えております。これが2点目の、お答えになっておりませんが、完全な回答ではないですが、こういうお答えをするべきかと思いました。
 3番目の具体的な感染症についての教員が足らないというところについては、全く御指摘のとおりです。今申し上げた方略にも入ってくるところかと思います。いくら「これをしてください」と言っても、それぞれの82大学の中で、そんな教員いないよというところで「やれ」と言いましてもということが起こります。
 この辺については、まだこの時点で申し上げることはちょっと限られておりますが、インタビューの中で出てきた事実、あるいは専門家へのヒアリングの中で、構造化インタビューの中で往復して出てきた事実から申し上げられるのは、例えば、その専門の学会を含め共通教材を作って、それを全国で共有するというようなことが考えられるということが、一つの流れとして今、出てきております。これはちょうど、例えば緩和医療の教育のワークショップがございますが、これが内容について結構中央で作成してやっているというようなことがございます。これに似たような構造がありますが、私どもがここまでまだ踏み込んでは考えておりませんが、昨年度の研究結果から、インタビューで出てきた一つのお答えがこういうものではないかと考えています。現状でのお答えはこういうところになろうかと思います。以上です。
【山口委員】 
 はい、よく分かりました。ありがとうございました。
【永井座長】 
 ほかにいかがでしょうか。奈良委員、どうぞ。
【奈良委員】 
 日本医学教育評価機構(JACME)の奈良でございます。小西先生からも御発言いただきましたが、JACMEでは、各医学部の教育プログラムを確認して評価させていただいています。本日時点で56校を認定していますが、これまでの評価を振り返って日本の医学部で改善を検討する課題が浮かび上がってきました。小西先生がご提示になった課題は一つの例でございますが、行動科学に関する教育が十分ではないのが現状です。すなわち、行動科学で何を教育するのか、どこを到達目標にするか、残念ながら多くの医学部で確定されていないかと思います。ただ、翻って海外諸国での医学部教育を見てみますと、行動科学そのものはアメリカから発展してきた経緯がありますが、アジア諸国、ヨーロッパ諸国においては行動科学教育が重視されており、医師の育成には欠かせない教育として実施されています。日本の医学部教育においても、行動科学を定義し、教育内容を確定していくことが求められるかと思います。
カリキュラムというのはどちらかというと履修科目を羅列することが主にはなりますが、項目だけではなく、方略や評価も含めたものにしていただければ教育の向上につながるかと思います。
 なおモデル・コア・カリキュラムの精神では、 “モデル”であり、かつ“コア”として、教育の2/3程度を示しています。各医学部で特色を活かし、工夫した教育が行われることが望ましいと考えます。ぜひ教育の1/3程度は各大学の裁量で優れた医学教育を行って、国民から信頼される医師を養成していただきたいと思います。
 それから、先ほど山口委員からも御発言がありましたけど、学修者の視点を考慮することも重要だと思います。そもそも共用試験は出題基準がコアカリですので、共用試験の成績向上からだけで学修アウトカムを測定することには無理があろうかと思います。ほかの評価の指標を取り入れていくことも必要かなと思いました。
 以上、コメントですけれども、今後の検討の材料にしていただければと思います。ありがとうございました。
【永井座長】 
 ありがとうございました。
 まだ御意見がおありかもしれませんが、ちょっと時間の関係で先へ進ませていただいて、後ほど総合討論でいただければと思います。
 では、歯学教育について調査研究チーム座長の河野委員から御説明をお願いいたします。
【河野調査研究チーム座長】 
 座長を拝命しております河野ですけど、聞こえますでしょうか。大丈夫ですか。
【永井座長】 
 大丈夫です。
【河野調査研究チーム座長】 
 それでは、令和2年度の調査報告をさせていただきます。
 今回6年ごとのコアカリの改訂に当たり、全国の歯科大学、歯学部での平成28年度版コアカリ実施状況の分析を行い、コアカリ改訂のための資料を収集し、改訂素案を作成することを目的に、本事業を実施しているところです。令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、歯学教育の停滞や教育方略の見直しなどの対応に迫られましたので、全国の歯科大学、歯学部のコアカリの対応状況の調査とコアカリの教育効果の検証調査を、臨床研修医の指導医と令和2年度の研修医を対象として行うとともに、コロナ禍での教育方略についての調査を同時に行いました。
 今回の報告では、スライドに示しますように、調査研究チームの構成と、令和2年度の調査研究として行いました四つのアンケートの結果の概要をお話しします。そして最後に、アンケート結果からコアカリ改訂への提言を述べたいと思います。
 スライドに調査研究チームの構成を示します。全ての専門領域をカバーする12名の調査研究チームを構成し、共用試験実施評価機構と文部科学省の技術参与の先生方に協力者として加わっていただき、事業を実施しております。
 令和2年度は、この研究チームに四つのワーキングをつくり、コアカリの実施状況の調査、歯科医師臨床研修の指導医及び研修医に対するアンケート調査、コロナ禍での講義等の実施状況の調査、感染症教育に関する調査を行いました。時間が限られていますので、これらの調査の主立ったところを御説明したいと思います。
 まず、コアカリの実施状況における調査の概要をスライドに示します。全国の29大学・歯学部を対象として行いました。回答は全ての大学からいただき、回答率100%でした。調査内容はスライドに示す8項目です。
 「平成28年度改訂版のコアカリが導入されたことによって、貴大学のカリキュラム改訂を行いましたか」の質問に対して、5施設が全面的に、21施設が部分的に改正を行ったとの回答を得ました。その改訂の時期は、平成28年度が最も多く、次いで平成29年度、30年度、31年度でした。シラバスの見直しは、10施設で全面改訂、18施設で部分改訂でした。改訂をしていない施設が1施設ありました。
 改訂の内容は、科目の追加・廃止、教育内容の修正、開講時期や授業時間の変更等が挙げられています。
 平成28年度コアカリ改訂版によって、医療福祉や医療保険・医療経済・経営学、スポーツ歯学、多職種共同、キャリア教育、研究倫理などが多くの施設で行われるようになりました。一方、臨床実習前や臨床実習中の歯科診療所や高齢者施設での学外臨床実習の実施は7割程度にとどまっていました。
 診療参加型臨床実習については、今回スライドに示すように、「診療参加型臨床実習とは」という定義を示した上で回答していただきました。その結果、29施設中25施設で全面導入、4施設で部分導入ということで、全ての施設で診療参加型臨床実習が実施されているとの回答でした。また、G領域にある臨床実習の内容と分類は、全ての施設でこれを参考に臨床実習のケースが決められていることが分かりました。
 さらに、案として示されています、診療参加型臨床実習のためのガイドラインは、1施設を除いて活用しているとの回答を得ました。
 参加型臨床実習を実施する上での課題を挙げてもらうと、やはり患者の確保が22施設と最も多く、次いで設備や教育環境などのハード面、指導歯科医の質や量の問題が挙げられています。
 スライドにはこのアンケート結果をまとめておりますので、後で御覧いただければと思います。
 次いで、臨床研修の指導医へのアンケート調査の概要を示します。調査は全国の歯科大学・歯学部の附属病院とその協力型研修施設で臨床研修に7年以上携わっている指導医を対象として行いました。調査項目はスライドに示す6項目です。
 回答をいただいた施設の研修医の受入れ状況を示します。平成23年から平成29年度までの研修医は平成22年度改訂版以前のコアカリ学修者、平成30年以降の研修医は平成22年改訂版コアカリ学修者ですので、その両方を受け入れて研修指導を行った45名の指導医に対して、平成22年度改訂版コアカリの効果の検証をしていただきました。
 平成28年度改訂版コアカリA領域に、歯科医として求められる基本的な資質、能力に挙げられている九つの能力について、受入れ研修医の評価をしてもらいました。上段は平成29年度以前の、下段は平成30年度以降の研修医の評価を示しています。患者に対する責任感、コミュニケーション能力、基本的な治療、課題探求・問題解決能力、医療安全の5項目で、平成30年度以降の研修医、すなわち平成22年度改訂版コアカリ学修者に対する評価が低いという結果になりました。一方、医学的知識、高齢者、要介護者への対応、科学的・論理的思考、感染予防に関しては、平成22年度改訂版コアカリ学修者が高い評価となりました。
 臨床研修の指導医が考える歯学教育に強化すべき項目は、診断能力、臨床推論、基本的な臨床技能、治療計画の立案、全身管理でした。
 次に、令和2年度の研修医へのアンケート調査の概要を示します。調査項目はスライドに示す7項目です。
 回答者は平成30年以降の卒業生1,127名と、平成29年以前の卒業生86名、未回答者3名の1,206名です。
 研修医が受けた診療参加型臨床実習の充実度は、平成22年度改訂版コアカリ学修者のほうが高い傾向でした。しかし、「充実していなかった」「全く充実していなかった」と回答した研修医も多い傾向にありました。
 臨床研修開始時点での歯科医としての基本的な能力の習得度の自己評価は、基本的な治療、高齢者、要介護者への対応能力が最も低く、次いで医学的知識、科学的・倫理的思考、課題探求・問題解決能力が低いという傾向にありました。これらの項目に関しましては、平成22年度改訂版コアカリ学修者の自己評価が、平成22年度以前のコアカリ学修者に比べて低い傾向にありました。一方、プロフェッショナリズム、コミュニケーション能力、標準予防、医療安全に関する自己評価は高いという結果になりました。
 研修医さんが考える歯学部教育に強化すべき項目は、臨床能力、治療計画の立案、臨床推論、基本的臨床技能、全身管理と、優先度は異なりますが、指導医と同じ項目が挙げられました。
 このスライドにはコアカリ改訂の効果のアンケートのまとめを示していますので、後で御覧いただければと思います。
 スライドにはコロナ禍での講義等の実施状況についての概要を示します。全国の歯科大学・歯学部を対象に行いました。調査内容はスライドに示す7項目です。
 回答率は100%でしたが、一部記載の不十分なところがあるので、有効回答率を96.6%といたしました。
 スライドは令和2年度の講義等の実施状況を月ごとに示したものです。基礎系実習、解剖実習、シミュレーション実習は、第一波の感染状況が落ち着いてから対面で実施が月ごとに増えたのに対しまして、講義は10月以降対面の講義が減少し、双方向のオンライン講義が増える傾向にありました。
 参加型臨床実習以外の臨床実習は、見学とか介助ですが、4月、5月はほとんど行われてない状況でしたが、10月以降は約4割の施設で対面での実施、約半分はシミュレーション実習やレポート、双方向のオンライン実習で対応している状況でした。
 診療参加型臨床実習も同様に4月、5月はほとんど行われていない状況でしたが、10月以降は約6割の施設で再開、約2割が見学型で対応、その他シミュレーション実習やレポート実習で対応した状況です。各施設の立地する都道府県の感染状況を勘案しながら対面での実施が図られている状況を示しています。
 これらのアンケート調査から、次期カリキュラムの改訂に対しまして、1、学修目標の列記主体から学修方略、評価の例示の記載の追加検討が必要だと考えます。多くの施設では多様なニーズを踏まえた様々な教育内容及び学修方略の見直しがコアカリ改訂を契機として行われていることが分かりましたが、対応できない施設も散見されています。各施設の状況もありますけれども、グッド・プラクティスを示すことにより全体の歯学教育の底上げにつながると考えられます。
 2番目に、Student Dentistの法整備による「臨床実習の内容と分類」及び「歯学教育における診療参加型臨床実習実施のためのガイドライン(案)」の改訂。コアカリ改訂により、診療参加型臨床実習は全ての施設で行われており、「臨床実習の内容と分類」及び「診療参加型臨床実習のためのガイドライン(案)」は活用されていました。令和6年度より、歯科医師法の改正によりStudent Dentistの称号が与えられることから、さらに診療参加型臨床実習において実施できる歯科医療行為の拡大が期待できることから、改訂は必須であると考えられました。
 3番目、General Dentistとしての能力を涵養する学修項目の設定。一口腔単位で口腔内を評価して、疾患発現の原因やプロセス、悪化因子となるリスクを抽出して、治療計画の立案につなげる教育を含めてほしいとの意見が、研修医さんからも、研修指導医からも得られました。患者中心の歯科医療を実践するためには、臨床推論、歯科での検査、総合治療計画の立案能力の習得をコアカリで強化する必要があると考えられます。加えて、現場では医学的な知識の強化が求められています。
 4番目、プロフェッショナリズム、生涯学習の涵養、科学的探究の教育。これは平成28年度改訂のコアカリで新たに示された能力ですが、これらに関して習得度が低いと感じる指導医が多い状況です。これらは6年間を通じて学修し、習得する能力であり、らせん型学修が必要であると考えられます。これらの学修を強化することが大切であると考えられました。
 5番目、学修評価を念頭に入れた学修目標の設定。学修評価の中に合否制が含まれるものがある施設が見受けられました。コアカリにおいては、最終的に全ての学修目標への到達度が評価されることを念頭に置いて、評価可能な内容を記載とすることを考慮する必要があると考えられます。
 あと、グローバル化への対応。オンラインを用いた教育も可能となっていることから、歯科英語教育をコアカリに含める検討が必要と思われました。
 7番目として、新型コロナウイルス感染症に対する対応等の感染症教育。感染症対策の歴史を踏まえながら、感染症の疫学の意義など、感染症の基本的知識や感染予防の技能の学修についての議論をこれから深めなければならないと考えられました。
 以上、令和2年度の授業の要点とコア・カリキュラムの改訂に対する提言の報告をいたしました。調査連絡会議の先生方にはいろんな御意見をいただき、改訂に反映させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。詳細の報告は報告書のほうを御覧ください。御清聴ありがとうございました。以上です。
【永井座長】 
 河野先生、ありがとうございました。それでは、今の時点でお聞きしておきたいことがありましたら、御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。どなたか御質問、御意見ございませんでしょうか。
 俣木委員、どうぞ。
【俣木委員】 
 はい。最後のアンケート調査からの提言で、General Dentistとしての総合能力というか、総合診療というようなものの必要性を挙げられていました。卒前教育では主に縦割り方式で専門領域を教えているのが現状です。そこにさらに横糸を通すような教育をしなくてはいけないとは思いますが、そうすると、カリキュラムのスリム化に反することになるような感じもするのですが、その辺については何か議論があったでしょうか。
【河野調査研究チーム座長】 
 スリム化に関しての議論もありましたが、平成28年度コアカリにおいて大分スリム化はされていますので、議論の中では、必要なものは増やしていってもいいのではないかというような議論をしております。以上です。
【永井座長】 
 よろしいでしょうか。はい、ほかにいかがでしょうか。はい、どうぞ。
【柳川委員】 
 河野先生、大変丁寧な御説明をありがとうございました。
 28ページの今のところで、Student Dentistが令和6年からということで、座学偏重との観点からも重要と思います。従前よりも診療参加型臨床実習の充実が期待できるということでありますが、具体的にどんなところが、これまでできなかったけれどもできるようになるのではないかと期待されるのかを例示していただきたいというのが1点です。
 2点目は、そうは言っても、コロナ禍で、なかなか患者さんの確保だとかケースの確保は困難だということで、何かその補完的な方法としてICT活用とかというのは進んでいるんでしょうか。その2点をお願いいたします。
【永井座長】 
 はい、どうぞ。
【河野調査研究チーム座長】 
 ありがとうございます。Student Dentistの称号を与えられると症例が増えるかというと、なかなか難しいところだと思っています。難易度の難しいものができるかというと、非常に難しいと思います。どういうところができないかというのは厚労省の医道審議会で検討されるということですので、コアカリ改訂のチームとしては、その医道審議会に提案するような形で、こういう症例がStudent Dentistとして適しているのではないかというようなものを出さざるを得ないかなというところで話が進んでおります。
 あと、2番目のケース数が不足している場合の補完実習に関してですけれども、今はITを使ったものというのはなかなか進んではおりません。いわゆる従来のマネキンを使った実習になるかと思っています。ただ、一部の大学では患者ロボットを使った補完授業なども行っているところがありますので、そういう事例は示していきたいとは思います。ただ、いろんなチームの中で意見がございまして、あまり補完授業を全面的に出すと、参加型臨床実習が停滞するのではないかというようなこともありますので、そこら辺のバランスを考えながら補完実習の件は考えていきたいと思っております。以上です。
【永井座長】 
 よろしいでしょうか。
【柳川委員】 
 ありがとうございました。
【永井座長】 
 はい、ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 前田委員、どうぞ。
【前田委員】 
 グローバル化への対応が英語だけになっていますよね。グローバル化というのは、英語教育というのは一つの方略であって、それがグローバル化ではないわけで、もう少し大きな目でグローバル化ということを考えないと駄目だと思います。また、現場を見ていると、やっぱりコアカリの量が多過ぎます。コアカリでカバーするのは教育内容の3分の2という話がありますけれども、結局もうほとんどの大学でいっぱいいっぱいの状態になっているという現状にあります。
 さっき河野先生が前回の改訂で減らしたと言いますけれども、あれは減ってないんですね。全然減ってないわけで、やはり各大学の特色を出さないといけませんので、もう少しコアカリの量を見直す、ミニマムリクワイアメントという考えできちんと見直していただきたいということが大事かと思います。
 それと、もう一つ、General Dentistというのは、先ほど縦割りというのがありましたけど、ここをどういうふうにして横串を刺すかと言ったときに、端に追加するだけなら、どうしてもコアカリの量が多くなってしまうわけですね。これは先生方も御存じのように、いわゆるオロジーをなくすと言ったんだけど、歯科の場合、臨床教育では、そのオロジーのまま残っているので結局こういうことになっているので、そこを何とかうまく工夫をしてやっていただかない限りは、コアカリの量は増えるし、General Dentist養成はうまくいかないのではないかなと思って聞いていました。以上です。
【永井座長】 
 河野先生、今の点はいかがでしょうか。
【河野調査研究チーム座長】 
 ありがとうございます。二つ、御示唆いただいた点については十分考慮して、これから検討を進めていきたいと思います。ありがとうございました。以上です。
【永井座長】 
 よろしいでしょうか。
 そうしましたら、ここから時間まで、医学教育、歯学教育に共通する事項を含めて、改訂に当たって留意する事項等、個別事項でも結構ですので、各委員から自由に御発言をいただきたいと思います。今日は特に意見集約とか、何か決定するということはございませんので、御自由に発言をお願いいたします。できるだけ多くの方から御発言いただきたいと思います。どこからでも結構ですので、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
 福井委員、どうぞ。
【福井委員】 
 福井です。私から具体的な点についてお願いです。医学のほうは、Aの「医師として求められる基本的な資質・能力」からGの「臨床実習」まであり、Bが「社会と医学・医療」になっております。実は今回見直してみて、「社会と医学・医療」のところにEBM(根拠に基づく医療)が入っていることに気が付きました。この根拠に基づく医療は、集団としての患者さんを対象とした研究をした上で、そのデータを個人に用いるにはどうしたらいいのかという、その手順を示したのがEBM、根拠に基づく医療ですので、どちらかというと、Aの中の6番目の「医療の質と安全の管理」のほうに移す方向で、ぜひ検討をお願いしたいと思います。
 次に、コア・カリキュラムの内容とは直接関係なくて申し訳ないんですが、前回の改訂時に、卒前教育、卒後臨床教育、専門医教育、それから生涯教育という縦の流れを、同じような視点から統一できないかという話がございました。当時の日本医師会会長の横倉先生にこのモデル・コア・カリキュラムの内容を踏まえて、統一する方向で動いていただけないかというお願いに行ったことがございます。厚生労働省の当時の医事課長も御一緒されたように思います。「その方向で考えます」と横倉会長はおっしゃいました。今後、羽鳥先生、申し訳ないんですけれども、その方向で日本医師会でも対応していただけませんでしょうか。以上です。
【河野調査研究チーム座長】 
 ありがとうございます。まさにその見直しをしているところでありますので、年末までにはきちんと報告できると思います。福井先生、どうもありがとうございました。
【永井座長】 
 ありがとうございます。小西委員、どうぞ。
【小西調査研究チーム座長】 
 すみません。小川先生、失礼しました。今の話について、私からもお答えと言いますか、コメントをさせてください。
 福井先生、どうもありがとうございました。AとGの問題について、ここで細かく答えるというやり方が正しいかどうか、今後一緒にちょっと考えていきたいというところでお話しするのがいいと思いますが、EBMについてはおっしゃるとおりで、社会とというBのところなのか、いろんな、A、B、C、D、E、F、Gのこの構造もこれでいいのかというところ、これはずっと2000年からこういう形になっておりますけど、そのあたりも含めて考えるところはあるなと思います。Aはやはりコンピテンスですので、大きいものになっておりますから、そことの関係を含めて考えたいと。あるいは、EBMはむしろ臨床ではないかという御意見もあるかもしれません。様々な御意見があると思いますので、ぜひ考えていきたいというところで。
 そこで、福井先生にぜひお願いしたいのが、今の生涯教育を含めて、前回厚労省のササキさんも含めて、研修とのつながりが大変あのとき進んだと私は認識しております。そこを今回もぜひ、そちらは2025年ですからちょっと年がずれるのかもしれませんが、コアカリが何かつくって、あれ、またここ合わないねというようなことをやっても仕方ありませんし、これから先コアカリを考えていく中に先生方の研究班との常時の連絡をぜひしながら進めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。ここをもってお願いをしてしまって大変恐縮ですが、特に卒後との連絡は大事で、臨床実習の2年と臨床研修の2年がかなり近いものになってきた現在、アウトカムの立て方というのも共に考えるべきかなと。この4年間のアウトカムということも出てくるように思いますので、ぜひお話をしながら進めていきたいと思います。その上で、日本医師会とも今後の、それからさっきの生涯教育、専門教育がありまして、その先にも生涯教育があります。そことの連絡についても検討していきたいと思います。どうもありがとうございました。
【永井座長】 
 ありがとうございます。いかがでしょうか。はい、どうぞ。
【江藤委員】 
 よろしいでしょうか。共用試験の副理事長の江藤です。
【永井座長】 
 はい、よろしくお願いします。
【江藤委員】 
 1点目は、これは歯学系に関わることでございますが、診療参加型臨床実習の実質化という問題です。共用試験のほうで、共用試験歯学系OSCEの効果に関する調査報告書を、まだ配付しておりませんけれども、本年出しております。それによれば、29歯科大学・歯学部において診療参加型臨床実習の時間数が30週から60週と、大学間で非常に大きな差がございます。また、国際比較においても、日本の歯科大学・歯学部の診療参加型臨床実習の時間数は少ないという調査結果もございます。
 それで、先ほどの河野先生の御説明の中で、28ページに、歯学教育における診療参加型臨床実習のためのガイドラインというのが出てございますけれども、これだけ臨床実習の時間数に幅があるということは、この診療参加型臨床実習の単位数ないしは時間数をコアカリに付属する臨床実習ガイドラインに書き込むということを御検討いただけないかというのが1点でございます。いわば診療参加型臨床実習の時間数の標準化でございます。
 それから2点目でございますけれども、先ほどの河野先生の御説明の17ページに、指導医アンケートの中で、強化すべき項目として臨床推論というのが出てございます。コアカリの平成28年度改訂版を見ますと、医学版では73ページに、基本的診療知識として臨床推論が大きく位置づけられておりますけれども、歯学版のコアカリを見ますと、35ページの診療の基本、それから51ページの基本的診察法、この両項目の中に臨床推論というのは記載されておりません。一方、日本口腔内科学会においても、歯学教育における臨床推論の必要性が強調されております。このことから、歯学のコアカリにも臨床推論を入れていただくことを御検討いただけないだろうかと。この2点でございます。以上でございます。
【永井座長】 
 ありがとうございます。河野先生、今の点、いかがでしょうか。
【河野調査研究チーム座長】 
 ありがとうございます。診療参加型実習の時間数の標準化については、厚労省、文部科学省と相談をしながら、ガイドラインの中に含めるかどうかは検討したいと思います。
 ただ、先生が言われた共用試験のアンケートは、いわゆる診療参加型臨床実習以外の臨床実習、例えば見学とかを含めたものとなっている施設と、なっていない施設があると思っています、ちょっとアンケートでの説明の仕方が悪かったのかも分からないですけれども、確かにおっしゃるとおり時間数はばらついていますので、どこかで医科のように規定できるような方向で改訂はしたいと考えています。
 あと、臨床推論に関しましては、先ほどのスライドでも御説明しましたように、今回のカリキュラムの改訂の中に入れていきたいと考えております。以上です。
【永井座長】 
 はい、ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 山口委員、どうぞ。
【山口委員】 
 ありがとうございます。先ほどコアカリは10年先を見定めてというようなお話がございました。医科のほうですけれども、先ほど御説明の中で、次回改訂で追加したほうがいいことという中に、医療ITやAIなどが入っていました。10年先ということを考えると、かなり当たり前になってくるオンライン診療ですね。今はコロナによって時限的措置だったものが、やや強引に恒久化する方向で動いています。おそらくこの先、例えば糖尿病であれば、血液検査もアプリでできるようになるような開発がどんどん進んでいると聞いています。そうしたときにやはり学生の間から、何でもオンラインでやればいいではなくて、どんなことに気をつけないといけないのか、そして、オンライン診療で有効なことはどういうことなのかということを、きちんとした基礎知識を得た上で医師になっていただきたいと思っていますので、そういったことも盛り込んでいく必要があるのではないかということが一つです。
 もう一つ、先ほど羽鳥委員から医療経済の話がございました。今のコアカリを見ていますと、B-1-8のところに医療経済や医療保険、介護保険、そういったことを学ぶということが既にコアカリに入っていますけれども、患者の立場から見ていると、もっと臨床現場で必要な制度、例えば事故調のことや産科医療補償制度のことなど、そういったことについてあまり学生のときに学ばず臨床の現場に出て来られていて、例えば医薬品の副作用についても、入院する程度以上の副作用が出れば救済制度なんかがあるわけで、患者と密接に関係する制度のことにちょっと薄いなという印象がございます。そんなこともぜひ、臨床現場で役立つ制度ということも学んで、医師になった段階で皆さんがコアカリとして共通認識できているというのがあると、患者としてもありがたいと思いましたので、ぜひ御検討いただきたいと思います。以上です。
【永井座長】 
 ありがとうございます。よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。
 はい、北村委員、どうぞ。
【北村委員】 
 ありがとうございます。前回改訂に関わった者として、また小西先生にお願いがございます。
 一つは、Aに医師としての基本的資質と能力という分野があります。これはアウトカム・ベースドのカリキュラムを作る上で非常に重要なものと考えて、前回及びその前から整備してきました。今回ぜひこのマイルストーンと言いますか、6年間で達成するのはいいのですが、2年生でここまでできる、4年生でどこまでできるというような段階を追ったものを作っていただけると、実質化するのではなかと。
 さらに、先ほど福井先生と小西先生の間であったように、研修のアウトカムもほぼほぼ並んでいますので、マイルストーンもそこまで含めたマイルストーンであるとすばらしいものができると。そして、それができれば、小西先生が最初におっしゃったコアカリの改訂によって何が変わったか、学生がどう変わったかということにもできるのではないかと思います。以上が1点目です。
 もう一つあります。前回のときは診療参加型臨床実習の実質化ということに力点を置いて、EPAやポートフォリオまでかなり具体的なことまで書き込みました。その結果、PCC-OSCEも正式実施され、学生の評価は随分進んだのではないかと思います。されど、大学によって診療参加型臨床実習の質というのはかなり違うと思うので、ある意味、なんちゃって参加型みたいなところもありますので、実習そのものを評価するというか、学生の評価ではなくて、この大学の実習のここがいいとか、そういう評価まで踏み込んでいただいて、この改訂によって診療参加型臨床実習が本当の臨床教育のまとめになるという仕掛けにしていただけたらと思います。以上です。
【永井座長】 
 ありがとうございます。よろしいでしょうか。ほかに御発言はございますでしょうか。はい、どうぞ。
【羽鳥委員】 
 文科省の方に特にお願いしたいんですけど、この卒前2年間と卒後2年間、この4年間で実臨床にたちむかえる医師・歯科医師を育てるというのが目標になっています。それから先ほど福井先生、小西先生、皆様から変革のアウトカムの評価をぜひやってほしいのと、それからもう一つ、ちょうどここの卒業のところで所管する文科省から厚労省に移るということもあって、連携がうまく行っていないと、この4年間でしっかりした医療者を育てるということがうまくいかないのではないかと思うので、ここのあたりの連携をうまく取るような仕組みをこの中でぜひ組んでいってほしいと思います。
 このコアカリが10年間の集大成になるという基本的なところですけど、そこでStudent Doctor、Student Dentistを育てるということがあるわけですので、この4年間のところがうまくいかないと、何をやっていたんだということになると思いますので、文科省と厚労省の連携をよくすること、そしてアウトカムの評価をしっかりするということを皆さんでぜひお願いしたいと思います。以上です。
【永井座長】 
 ありがとうございます。ほかに。はい、門田委員、どうぞ。
【門田委員】 
 門田です。私は教育の現場を離れて十数年経っていますので、皆様方が今おっしゃっておられるようにより具体的なことについてなかなか意見として申し上げることはできないのですが、逆にそういうことがないのであえてお願いしておきたいと思うことがあります。今回のこのコロナ禍ということで、相当大きな医学教育上の課題で、大きな問題点を露呈させたということはもう事実間違いないと思います。そういうふうなことで、先ほどの小西先生の話でも、感染症のことが検討されたということがありました。実際、感染症だけではなく、社会的な立場からの医学の云々というようなお話まで展開されているという話があったのですけども、この全体的な今までの日本の医学、あるいは日本が学んだドイツ医学と言いますか、そういうところを考えてみるときに、やっぱりどんどんどんどん細分化の方向、分断化の方向へ進んできたということは否めないのではないでしょうか。それは一種専門性を高め、より高度医療推進ということに間違いなく貢献したけれども、今回のこと、あるいはさらにちょっと振り返ってみるならば、東日本大震災の原発事故のような問題が発生したときに、結局誰も何もできない医学教育が我が国では行われてきていたという認識、今度は感染症のほうでまた10年目にそれを勉強させられたということを考えるときに、やっぱりこのコアカリの中でと言うべきかどうか分かりませんけど、医学教育の中で一番中心に置いておくべきことがひょっとするとおろそかになってきたことにあまり気づかず、高度医療推進という形でどんどん流れてきた今までの歴史を、この機会にやはり見直せということを言われているのかもしれないと思います。こういう観点で、このタイミングで見直しをすることになったときには、感染症を何とかするという観点よりもさらに大きな視点でもって、我々がやってきている今の医学教育そのものを検討するということをぜひやっておくほうがいいのではないかな、あるいは、やっておかなければならないのかなという感じがするんですね。
 現場を離れているから、現場のことを、今現実問題になっていることをということよりもこういうことを言いましたけれども、その点を入れて、そしてなおかつ今の現場の問題をどういう形に加えるかということを考えていただきたいと、スタートに当たって思いました。以上です。
【永井座長】 
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。はい、齊藤委員。
【齊藤委員】 
 齊藤でございます。全国医学部長病院長会議では、医師養成のシームレス化、卒前卒後をつなげようということを目指して、そして共用試験の公的化だとかStudent Doctorの法的立場の担保ということを求めて、それがまさに実現したタイミングにあるわけです。このコアカリにおきましても、シームレス化について十分に視点を入れておく必要があるだろうということで、EPOCの新しいEPOC2になるときに、卒前のほうのCC-EPOCも入れようということで作業をさせていただいたのですが、そのときに、さっき北村先生がおっしゃっていた部分なんかが割と卒後の臨床研修の到達目標とうまくがっちゃんこできない、やりづらい部分もありまして、その辺は大きく見直す必要があるだろうということが見えています。
 あともう一つは、臨床実習の医学生ができる医行為をどういうふうに規定していくかという部分については、もしかしたらこのコアカリの中でもある程度踏み込んでいく必要があるかなと思いますので、その2点をAJMCとしては指摘しておきたいと思います。以上です。
【永井座長】 
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。南委員、どうぞ。
【南委員】 
 読売新聞の南でございます。私もかなり長いことこのコアカリの議論に関わってまいりました。率直に思うことを申し上げることになると思うのですが、具体的にコアカリの内容にはかなり細かな議論がなされているので、どの部分をどうしてほしいといったことは、教育の現場にもおりませんし、申し上げられないのですが、一つは、先ほど門田先生が言われたことに近いかもしれません。近年社会の求めということがこの医学教育にも大きい位置を占めるようになってきたがゆえに、どうしても医学よりも医療のほうに偏ってきた傾向があります。医学と医療の関係というのもきちんとした定義の上で申し上げるわけではないんですが、医学の知識を持って社会的に実践するのが医療とすれば、むしろ患者さんを相手にする医療現場のことから医学教育に求められることが多くなり、そちらに引きずられていく現状があるのも無理がないと思います。
 でも、医学部であり歯学部なわけですから、医療学部というものが今はありますけれども、あえてここは医学の教育であるということを、いま一度考えておく必要があるのではないか。折に触れてそういうことを抑えておく必要があると思います。
 それともう一つ。もちろん患者さんのことを考えない医学というのはないかもしれませんけれども、その関わりは医学と医療現場ではちょっと違うのだろうと思いますし、そこは医学教育に関わる方々の間では共通の理解と言いますか、共有しておくことが必要ではないかという気が、今回の感染症問題などを見ていても感じます。
 たとえばその一つの例として、社会の目から見ると、「医学博士」というものは、医学教育の中で今どのように論じられているのか分かりませんが、医師でない医学博士という肩書が社会ではきちんと認識されていない実態があります。大学の先生方に「栄養系の教員に医学博士が多いけれど、医学の立場ではどう考えられているのですか」と率直に聞かれることがあります。医学部の卒業生は、近年むしろ医学博士を取得するより専門医の方に向かっていますね。大学院に行って博士を取るとか、あるいは論文博士でもそうですけど、博士ということに関心を持たない若い医師が多くなっている現状があります。しかし、世界的にまた日本でも、やはり医学博士――メディカルドクターというのは、医師を意味する共通語である訳で、このまま非医師の医学博士が増えることは社会的にもいかがかという気がします。医学系研究科で研鑽を積んだ非医師が博士号を取得することが問題なのではなくこれからの医学の在り方として、医学博士という学位をどう考えるのか、社会の認識と乖離しすぎないうちに考えていただきたいと思うわけです。医学教育の本論から少し外れてしまい申し訳ありませんが、そんなことを思います。
【永井座長】 
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。ぜひ皆様から一言ずつでも御発言いただきたいと思います。北川委員、どうぞ。
【北川委員】 
 ありがとうございます。今、南委員がおっしゃったような基礎医学系の大学院、基礎医学を目指す医師というのか、医師による医学研究というものを進めなければいけないという観点からすると、コアカリの中にも少しそういう観点を入れていただけると、興味を持てるようなところが入っているといいかなという印象を持ちます。
 それから、今、栗原先生を中心に、CBTとかOSCEとかが公的試験化される準備が進んでいると思いますけれども、北村先生、齊藤先生もおっしゃったように、そのCBT、OSCEと医師国家試験という三つの試験が例えば公的化されたとすると、その各々がどこの領域までをカバーしていればいいのかということもコアカリの中に示されていると分かりやすいと言いますか、どこまでやったらCBTレベルで、どこまでやったら最終的な国家試験レベルというようなことも、マイルストーンと同じような意味合いかもしれませんけれども、そういう観点も少し入れていただけると分かりやすくなるのではないかなと思いました。以上です。
【永井座長】 
 はい、ありがとうございます。はい、どなたか。どうぞ。
【栗原委員】 
 共用試験のことが出ましたので、ちょっと一言申し上げたいのですけれども、今般共用試験が法の下で行われることになりました。しかし、これは内容に踏み込んだことではないので、そこをよく注意していただきたいということと、試験で何を求めるかは、どういう教育目標で教育を行い、どういう評価をするかが大事だと思いますので、ぜひこのコアカリのところで、どういう学生を育てるか、何を学生に求めるかを明確にしておくことが大切ではないかと考えます。あんまり試験、試験で縛るということは、私は好ましいことではないと思いますので、今度、共用試験が法制化されましたが、これはもし実習中に患者さんに障害が加わったときに、実習は法的に担保されているということの意味が大きいと思います。患者さんに寄り添う医療・医学を見据えた上で、あまりにも細分化されていると門田先生が先ほどおっしゃいましたが、そこら辺を見据えたコアカリができた上で、試験と評価の在り方を考えることが必要だと思います。学生は評価に引っ張られますので、十分考えなくてはいけないと思います。
 機構は皆さんの求めている教育に相応しい試験を適正にやることが役割と考えています。ぜひコアカリと連携しながら、共用試験のやり方と評価を考えることが必要ではないかと思います。その整合性がとれていないと学生の学習が増えてしまって、健全な医学教育ができないのではないかと思います。今、こういう社会状態になって、人と人のコミュニケーションが希薄になっている中、学生も非常に戸惑っていと思います。医学教育の原点を大切にするようなコアカリであり、また評価を考えていく必要があるのではないかと強く思っております。以上です。
【永井座長】 
 ありがとうございます。はい、嶋田委員、どうぞ。
【嶋田委員】 
 前回の平成28年度歯学の調査研究チームリーダーの立場から発言させていただきますが、前回は医学調査研究チームリーダーの北村先生といろんなことで相談して作成いたしました。例えば医学・歯学の「求められる基本的な資質の能力」については、医学教育の方でもいろいろ討議していただき、医療人として共有すべき、価値観を共通で盛り込みました。また、歯科医師としての必要な医学知識や疾患名などは医学の調査研究チームと合同で話し合いながら作成しました。毎回医学研究チーム会議に歯学の委員を参加させていただいて、また医学のほうからも審議内容によっては北村先生に参加していただいて、お互いに共通な認識で一貫性を取るようにコア・カリキュラム作成してきました。
 ここで、医学の小西先生と歯学の河野先生にお願いしたいのですけれども、医学も歯学も卒前教育の段階で水平的な協調を進めることは、卒前・卒後の一貫性のある教育に基づく垂直的な協調と合わせて重要なことだと思いますので、共有すべきことは共有し、医学、歯学がそれぞれ特徴あることは特徴として、お互いに協力してコア・カリキュラムを作成していただきたいと思います。可能であれば医学、歯学からお互いに委員がそれぞれの会議に参加していただいて、より理解を深めていただき、コア・カリキュラムを作っていただければ、より国民にも分かりやすいコア・カリキュラムになるのではないかと思います。
【永井座長】 
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。まだ御発言いただいてない委員の方、いかがでしょうか。小川先生、いかがでしょうか。はい、どうぞ。
【小川委員】 
 やはりコア・カリキュラムというのは、学生にとっては基本的な、もう必ずこれは履修しておかなければならないというコアなわけです。やっぱり先ほどどなたかがおっしゃいましたけども、コアがコアではなくて、かなり広い範囲になってしまっていることは否めないと思います。いかに医学生が、あるいは歯学生が、6年間のうちに必ずしっかりと身につけておかなければならないもの、そしてそういうものが結局基になって、自分で考えていろんなことができるようになるというのが本来のモデル・コアだと思いますので、前回の28年度の改訂版を見ても、学生に対してはかなりの負担になっているのではないかなと思います。それよりは、勉強の仕方を教授することによって、応用力をつけ自ら学習し発展できる手法の習得がコア・カリキュラムになっていただければ非常にありがたいなと思っております。以上です。
【永井座長】 
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。三浦委員、いかがでしょうか。
【三浦委員】 
 いろいろな御意見を伺いまして、一つ、前から気になっていることなのですが、歯科医学の分野では、医科の内容、生命科学等を取り入れて、教育のほうにも生かしているのですけれども、これから高齢者が増えて、いろんな問題が起きてくるときに、医科のほうのコア・カリキュラムの中にもう少し歯科医学、あるいは歯科医療のことを取り入れていただければなと思います。ただ、これはモデル・コア・カリキュラムですから、あまり量が増えますと学生さんの負担が大きくなりますので、そこをうまく調整しながら、医科のほうでも歯科医学・歯科医療のことをもう少し学んでいけるチャンスを与えていただければなと思います。以上です。
【永井座長】 
 はい、ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 私からは、先ほど小西先生の資料にもありましたけれども、データサイエンス教育やAI教育が重要になっています。これは最先端技術の話ではありますが、現在、相当身近な存在になっています。AIに振り回されないように、特に倫理の問題がいろいろ含まれていますので、そのあたりもしっかり教えておいていただきたいと思います。
 いかがでしょうか。福井先生、どうぞ。
【福井委員】 
 2点ほど。先ほど小西先生も指摘された厚生労働省の卒後臨床研修のプログラムとの連携について、ぜひ今まで以上に頻繁にコミュニケーションができればと思います。
 二つ目ですが、卒前教育、卒後臨床研修、専門医教育、生涯教育、それら4つの分野の関係者が集まって話をすることも必要ではないかなと思っている次第です。これは文部科学省の会議ですので、どうやって話を持っていっていいのかよく分かりません・・・。以上です。
【永井座長】 
 はい、ありがとうございます。奈良先生は手が挙がっているようですが、よろしいですか。
【奈良委員】 
 先ほど申し述べさせていただきましたが、履修項目を明記することは重要ですが、教育の方略とか評価も取り入れて、教育全体を俯瞰するコアカリにしていただければと思います。例えば、先ほど歯科の前田先生がお話しになったように、コアカリを当初作成したときはオロジーを廃止するところから始まりました。しかしながら、JACMEによる評価を振り返ってみますと、オロジーに代わって統合型教育が十分に実施されている医学部は少ないのも現状です。アメリカを始め、海外諸外国の医学教育は基礎医学や社会医学と臨床医学との統合型教育がトレンドになっています。統合型教育には、基礎医学間あるいは臨床医学間の水平統合だとか、基礎医学と臨床医学の垂直統合だとか、いろんなスタイルがありますが、そういった方略をコア・カリキュラムの中でも御提示いただければなと考えます。よろしくお願いします。
【永井座長】 
 はい、ありがとうございます。
 そろそろ時間となりましたので、このあたりにしておきたいと思いますが、またお気づきの点がありましたらメール等で事務局にお寄せください。
 各調査研究チームにおかれましては、今日の御意見を踏まえてさらに調査研究を進め、コアカリ改訂方針(案)をまとめていただき、次回の本委員会で議論をさせていただきたいと思います。
 それでは、最後に事務局から予定等についてお願いいたします。
【小松﨑課長補佐】 
 永井先生、委員の先生、活発な御議論ありがとうございました。
 最後に、資料5に基づきまして、今後のスケジュールを御説明させていただきます。
 まず、今回は8月18日ということで第1回を開催させていただきました。第2回は10月21日の14時から16時を予定しております。この場で調査研究チームのほうから本日の御意見も踏まえた改訂方針(案)が提示されることになりますので、また活発な御議論をいただければと思います。それ以降については、令和4年度の春頃に第3回連絡調整委員会、令和4年度夏頃に第4回の連絡調整委員会、令和4年度冬頃に連絡調整委員会の第5回ということで、コアカリが決定される予定になっております。以上となります。
【永井座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、本日の会議はこれで終了いたします。お忙しいところありがとうございました。

―― 了 ――

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