学校法人ガバナンス改革会議(第2回) 議事要旨

1.日時

令和3年8月6日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. 学校法人のガバナンスに関する意見交換
  2. その他

4.出席者

委員

増田座長,安西委員,石井委員,岡田委員,久保利委員,酒井委員,戸張委員,西村委員,野村委員,八田委員,松本委員,本山委員

文部科学省

森高等教育局私学部長,小谷高等教育局私学部私学行政課長,相原高等教育局私学部私学行政課課長補佐

5.議事要旨

<議題1 学校法人のガバナンスに関する意見交換>
・事務局(相原私学行政課課長補佐)より資料1について説明。
【増田座長】  
 ただいま事務局から改めて前回当日配付いただいた当改革会議の設置趣旨のペーパーを修正の上,お配り頂きましたが,ここにも記載がありますように,学校法人制度について社会福祉法人制度改革,公益社団・財団法人制度の改革を踏まえ,それらと同等のガバナンス機能が確実に発揮できる制度改正のため,文部科学大臣直属の会議として文部科学事務次官決定により外部有識者で構成される会議として本会議は設置されております。学校法人のガバナンス改革案を策定しまして,検討結果は他の審議会等を経ずに直接大臣に報告するということを確認いたしたく存じます。
 なお,前回の会議の冒頭にも申し上げましたが,委員各位におかれましては,社会のため,公益のため,中立の立場から御発言を頂きたくお願い申し上げます。これはまず1点目です。
 その意味では,当会議の報告書は私学法の改正を前提としておりますので,法律の専門家の知見を得ておきたいと思いますので,座長のアドバイザーないし補佐のような方を置きまして,会議に陪席させたいと思います。この候補としまして小川尚史弁護士をお願いしたいと思っております。
 それから,欧米諸国の大学法人や国大法人ガバナンスの方向性,また,組織ガバナンスに詳しい冨山和彦氏にお話を伺い,意見交換をする機会を持ちたいと思います。が,先ほど事務局からお話がございましたけれども,日程が何しろタイトですので,正式の会議とは別に懇談会みたいな形で,都合のつく方のみでオンラインで行いたいと思っております。
 また,先ほど事務局から御説明がございましたけれども,ヒアリングについては関係団体の皆様から書面によって意見,要望等を頂きまして,その後,再質問した上でヒアリングを行うということにしたいと思います。

・松本委員から資料2ついて説明,その後八田委員より補足説明。
【松本委員】
 八田委員とともに論点整理をいたしました。今回の会議は,先ほど座長からお示し頂きましたように,税制優遇を受ける公益法人としての学校法人にふさわしい体制の構築です。監督・経営を分離する。経営陣の利益相反・自己監視を排除する。こうしたことを私学法に明記することが委員会のミッションと理解し,論点を整理いたしました。
 資料に沿って説明を申し上げます。まず,改正に当たっては,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律,公益社団法人及び公益財団法人の認定に関する法律,社会福祉法の準用,こうしたもの,つまり,同じ公益法人で準用可能な条文は何かの洗い出しが前提となってきます。同時に準用できないもの,規定がないものは新たに私学法等に書き込むことも求められてくると考えております。設置紙には書かれていませんが,国立大学法人法,その親法に当たる独立行政法人通則法と平仄の合わないものもあります。具体例の一つは,私学法24条の学校法人の責務です。独法通則法の3条,業務の公共性,透明性及び自主性等よりも緩い規定になっています。
 脱線しますが,政府が研究振興のために10兆円規模の大学ファンドというものを作りました。設置形態を問わず,つまり,国公私どれでも研究力,頑張っているところに支援していくという趣旨だと聞いています。支援を受ける最重要の要件は,ガバナンスです。大学を要する学校法人にとっては,大きなチャンスになるのではないかという期待も込めて,この論点整理に臨みました。
 以下2以下です。具体の総論が2の機関設計になります。会計監査人は新設です。3から7については,機関設計の各論に当たります。3の評議員会については,まず位置付けの明確化が必要になります。一般社団法人法,社会福祉法を準用すると,法人と委任関係であることの明確化が必要になってきます。任務懈怠が認められると理事,監事,会計監査人と同様に損害賠償責任が発生することになります。評議員会を議決機関に変更するというのであれば,評議員会の議決事項を理事会が代わりに議決できるとした寄附行為の定めの扱いも変わってきます。理事,監事との兼務禁止,教職員の就任禁止,監事を選任・解任する権限,それから,人数や任期の定めも明文化する必要があります。
 4の理事会です。理事会の選任・解任の方法,理事長の選定・解職の規定,兼務禁止,親族らの就任禁止,人数,任期はもちろんですが,理事会が重要な業務執行に関する決定を理事に委任してはならないという旨の規定も必要になってきます。5の学長については,国立大学法人法でのガバナンス改革を踏まえて盛り込みました。グローバルスタンダードということを考えると,ここは設置形態を問わず大きな問題になっています。6の監事です。選任と解任が問題視されています。例えば私学法38条の4で,評議員会の同意を得て理事長が監事を選任するということになっています。監督と経営の分離を確保するためには,この条文の改正を考えなくてはいけません。任期については,上位法,社会福祉法の規定どおりでいいのかどうかについても疑問が残ります。7の会計監査人は,現在では置くことを義務付けられていません。公益財団法人と       社会福祉法人は,大規模法人には設置を義務付けています。
 最後に透明性と説明責任の担保です。ここまで挙げてきた機関設計は,この透明性・説明責任を担保するための,言ってしまえば手段です。それぞれの機関の方々が説明責任を果たせるための設計もやはり議論の対象とすることが必要ではないかと考えます。例えば私学法26条で収益事業が学校法人に認められています。学校法人が出資してのホールディングス,こういったものを経営している場合,連結決算にしていないと,そこでの収益やお金の流れが見えなくなるということがあると聞いています。これを誰がどのように監督するのか,その方法の担保も考えなくてはいけない事例として挙げておきます。
【八田委員】
 総論といいますか,かなり明確に今回の会議で議論すべき論点については,松本委員からお話がありましたので,重複するところは避けます。と同時に,これから私が申し上げる内容は,実際にこれから委員の皆さん方が議論していただく,その内容であるということを御承知おき下さい。先ほど座長からも今回の会議の設置の趣旨,それから,構成等について資料も添付されていて御説明を受けました。基本的には,いわゆる公益法人という大きい括りの中で学校法人だけが特別扱いされる状況にあるわけではないということです。やはり社会のニーズと,それから,社会の資源,貴重な資源を補助金や交付金等で使っているわけでありますから,それに対して社会的責任が生じます。そのために必要な組織体制を構築し,そして,有効かつ円滑に運用しなければいけないのだと,これがいわゆるガバナンスの基本だと思っております。
 今,松本委員から御紹介頂きました内容は,基本的にはその組織の有り様という形で,機関設計をどうすべきなのか,ここに尽きると思っております。実際に先般終了しました有識者会議においても,それぞれに現在位置付けられている役員及び評議員のミッション,あるいは機能,権限,これについても議論がなされましたけれども,最終的には両論併記とは言わないですけれども,このような議論がなされたということで終わっているわけであります。ただ,今回は設置の趣旨が明らかに法律改正を目途として大臣に御報告しなければいけないということで,ある程度ゴールが決まっているわけであります。したがって,それに向けてこの会議の中での合意形成をしていく必要があります。
 例えば先ほどの資料の3番目,評議員の扱いであります。これは読めば読むほど非常に不透明なというか,よく分からない状況にある現在の姿が見えてくるわけですが,これは一般財団,社団との流れで見るならば,恐らく社員総会が果たすべき内容に近いものを評議員会が行うのであろうと,こういう議論があるわけであります。それも様々御意見があると思いますが,そこでやはり重大な意思決定もしなければいけません。となると,単なる諮問機関として,現在は学校法人の中では役員として扱っていないわけでありますから,この宙ぶらりん状態のものをまず明確に位置付けることが不可欠です。そして,評議員会の方で理事,監事を明確に選定,そして場合によっては解任,こういう役割と機能を明示していくことが求められます。
 その代わり,それに見合った責任も明確に規定しなければいけないとなってくると,メンバー構成が非常に重要になってきます。これは理事であれ,監事であれ,それぞれの役割を担う方々,一番大事なのは,その適格性と誠実性,こういったものが担保されなければいけないわけですけれども,いかにしてそういう方々を選出,選定していくのかということです。これが論点メモの最後のところの,いわゆる透明性や説明責任にもリンクするわけでありますが,ここがやはり大きな論点になってくるだろうと思われます。その場合には例えば評議員,理事,監事などの選定を独立的に行うような別途,サブコミッティという形で指名委員会や選定委員会を作る流れもあるのかもしれません。
 いずれにせよ,それぞれの機関設計の中で,この評議員,理事会,理事,そして監事の在り方,さらに当然ながら会計の透明性,信頼性を担保することが必要です。そのために,今,世界標準として外部の専門家である会計監査人の監査,これは当然に必要です。ただ,それも学校法人の場合,非常に千差万別といいますか,物すごく規模の大小があって,幼稚園のような小さいところ,そこまで全部義務付けるのかというと,これはやはり実態にそぐわないだろうということもあって,ある程度の規模的な問題,それは実践の部分で議論する話でありまして,基本的には会計監査人というものも一つの機関の中に位置付けて議論していく必要があるだろうと思います。それは既に3月に公表されました有識者会議の報告書の中においても個別の意見として盛られているわけでありますが,方向性が定まっていなかったということで,恐らく今回,再びさらに具体的な議論をするということで改革会議が設置されたものと思います。
 それともう一つは,やはり学校法人の場合,重要なのは教学の部分で学長がいますけれども,ここが恐らく他の職種と違って非常に特殊性といいますか,独自性があります。でも,これは全ての公益法人,あるいは他の法人においてもそれぞれが担っている業務の特殊性,あるいは独創性というのがあるわけでありますが,その部分は抜き出しをする形で私学法の中で明確にしていく必要があります。となってくると,最初の提言にもありましたけれども,原則のところでまず議論のスタートは,公益法人改革の一環として扱われている社団,財団,こういったもの,さらには近時の改正がなされた社会福祉法人,これをベースにするということで,何ら違和感はないのかなという気がいたします。
 ということで,今回のこの会議は,できるだけ委員会として一つの方向性を見定めていき,それが受け入れられる場合でもどこに問題があるのか,あるいはどうしても受け入れられない課題があるのか,その辺を突き詰めていく必要があるということで,あちらもこちらもという玉虫色的な議論は余り意味がないのではないか,こんなことを思っております。
 今回の論点メモは大枠をまず決めて,委員の方達の自由な,そして誠実な御意見を交わすべきだという座長からの御指示がありましたので,これ以上個別のことは,また後で申し上げたいと思います。以上,補足的に御説明いたしました。
【野村委員】
 私自身は前回の有識者会議のメンバーでもありますので,まず一言お話しさせていただきたいのは,有り難いことに前回の議論から後戻りしないということが確認されましたことは,大変有り難いなと思っております。ただ,私,前回の会議ではもう少し過激なことを申し上げて,取り上げられないことも幾つかありまして,そういったようなことでは今後もう少し議論の中で発言させていただきたいと思っているところもございます。
 ただ,今日は,今,個別論点というよりは,ただいまの御説明に関連して数点だけお話しさせていただきたいのですが,一つは義務の話が先ほど松本委員からございまして,善管注意義務のエンフォースの仕方がやや難しい面があろうかと思っております。委任契約に基づいて理事等が負っている善管注意義務違反については,例えば株主代表訴訟になぞらえるような形で,評議員の代表者みたいな者が訴訟を起こすといったようなことも可能なのですけれども,その評議員そのもの自体に対して,その義務を負わせた場合に,それをどうやってエンフォースするかというのは非常に難しいと思います。
 放棄すべきという意味ではなくて,やるべきなのですが,どうやってやるかというのが難しいという趣旨でございます。株主の場合には無答責でございまして,株主は,義務は負っておりません。基本的に株価が下がって自分が損するだけという仕組みになっているわけですけれども,評議員の場合にはそういったような形での不利益が発生しませんので,いいかげんな権力闘争を巻き起こすというようことが懸念されますので,その辺りをどのようにするかということが1点でございます。これは先ほど少し八田委員からあった,どういう人を選ぶかという大きな問題もございまして,前回の会議で私は委員会方式,あるいは選任に関して委員会方式等を提言もいたしましたけれども,まだその辺りは煮詰まっていないということかなと思っております。
 それから,議論の中で前回もありましたが,ガバナンスコードの話が当然出てまいりまして,これは前回ヒアリングをしますと,各団体がガバナンスコードを作っていますと言っているのですが,コンプライ・オア・エクスプレインの形をとらずに何となく準則的なものをやんわりと定めているというような状況になっているのですが,これも非常に難しいところがありまして,ガバナンスコードを仮に作っても,それをどうやってエンフォースするかというのもすごく難しいところでございます。上場企業の場合については,いわゆるコーポレートガバナンスコードがありますけれども,これは上場規則ですので,基本的にフルコンプライがまず前提です。
 インセンティブとしてフルコンプライがあって,できなければエクスプレインしますという,そういう枠組みになっていますけれども,仮に大学の場合にガバナンスコードを作っても,フルコンプライというよりは取捨選択,多様性みたいな,そういう議論に当然なってしまいますので,規範としての役割を果たしにくいという問題があるかと思います。そうなりますと,このガバナンスコードの議論をはたで見ていますと,結局,そこに逃げ込んでいってしまうわけです。この論点については,例えば委員会を設置するかどうかは,私立大学ごとに多様性があるので,では,これはガバナンスコードにお任せしましょうと言った途端に結局何もしないという議論になるということなので,可能な限り法律に書き込めるものは法律に書き込んでいくという,そういった姿勢で臨む方が合理的ではないかなと思っております。
 それからもう一つは,同じくエンフォースの話で申し上げますと,ディスクローズがやはり最終的には重要で,年次報告みたいなものをきちっと開示して,それにコミットしてもらうというような,こういう枠組み,大事なのですけれども,これ,上場企業の場合にはディスクローズはやはり金融商品取引法や法律に基づいて,かなり厳格に書き方から何から規律が決まっていて,さらには投資家との間でスチュワードシップ・コードでエンゲージメントを行っておりますので,そういった形での非常に強い強制力が働くわけなのですが,私も長く,三十何年間,大学におりますけれども,こういうのを作りますと大概宿題をこなすという形で,教員なものですから,みんな宿題をこなすのは得意なのです。ですから,一生懸命宿題をこなして立派な報告書を作るということに注力してしまいまして,教育改革や本来の学生と向き合ってしっかりと能力を高めていくこと,グローバル人材を育成することという本当のところに向き合うよりも,宿題をこなすことに相当の注力が及んでしまうという部分がありますので,この辺りのところも工夫をしないと,結局のところは無駄な作業をただ積み上げていってしまうということにもなりかねません。その辺りだけ1点お話しさせていただいて,総論だけの話になりましたが,よろしくお願い申し上げます。
【本山委員】
 今回の論点整理に基づいてお話をさせていただきたいと思います。今回のガバナンス改革について反対するとかしないとか,そういう問題ではなくて,反対するようなことは考えていません。それは意見としてです。大学の人間からすると,理事長,理事等の監督,監視機能を強化すればよいのであって,歴史と成り立ちが違う,事業規模もまた異なる社会福祉法人や公益財団法人と制度設計をそろえるということは,余り固執しなくてもよいのではないかと感じております。
 単純に条文を引用して全く同様の役割を担わせることが本当に,また,方法が,ガバナンスの有用が基本のような気がします。例えばこういった,いろいろな公益法人と同様な形にすることによって,大学の不正が起こらないかどうかのシミュレーションをやるなり,あるいは過去にこういうこと,小委員会の在り方もそうなのですけれども,それをやっていたからいろいろ,今の制度だからいろいろ不正が起こっているのか。
【増田座長】
 本山委員,今御意見頂くのは,今,松本委員と八田委員が論点整理としてまとめたもの,ありましたね。これについて議論をすることについて御意見を伺いたいんですよ。各項目についての御意見ではなくて,それはこの後やりますので,よろしいですか。
【本山委員】
 はい。結構です。
【増田座長】  
 よろしいですか。それでは,ほかに御意見がある方もいるかもしれませんので,この論点整理についての御意見,御質問を伺っているわけなんですよ。ほかの委員の方も,これについて御意見,御質問があればご発言頂きたいと思っております。その後,これでよろしいということになれば,個別に御意見を伺っていくというふうにしたいと思っているのですが,いかがでしょうか。
 そうしないと収拾つかなくなってしまうので,皆さん,御意見あるのだと思うので,議論の進め方を今議論しているわけです。よろしいですか。御質問ありますか,何か。御意見,御質問がなければ,次に個別の議論に入りたいと思いますが,よろしいでしょうか。それでは,御意見,御質問ないようですので,始めたいと思います。
 それでは,論点整理の各項目について議論を進めてまいりたいと思います。それでは,自由に御意見頂きたいと思いますので,この後は結構ですから,意見を頂くのは構いません,よろしいでしょうか。では,御意見,御質問のある方はどうぞ,お願いします。本山委員,どうぞ。
【本山委員】
 すみません。全て学校法人の説明をするときのバーが非常に高いわけです。公益法人の作るバーは,それほど私は,高くないのではないかなという理解をしていました。そういうものと全部一緒にしてガバナンスがこうなのだから,全部そっちに合わせろというのは乱暴ではないかなと思います。その辺も御議論頂いた上で,それともう一つ,これが実際に価値,効果があるのかということの検証もやる必要があるのではないかなと思います。それから,機関設計のところなのですけれども,本学のガバナンスコードにおいても2名以上の外部理事選任を明記しております。主に外部理事が想定される非業務執行理事に理事会内において監督の機能を期待するのであれば,評議員でも監督機能を期待するのは屋上屋を重ねることになるような気がします。
 理事会が主体的かつ機動的に対処する体制の構築を目指した2004年の私学法改正の意図を逆行することになると思います。前回,安西委員もおっしゃられたように,2004年の私学法改正が何を目的で行われ,制度改正が当初の目的を実現したのか否か,また,現行制度のどのような部分を改めるべきか,その辺の検証をする必要があるのではないかと思います。また,昨年監事の機能強化も行われました。その効果も併せて検証すべきではないかなと思います。それと評議員のところなのですけれども,現時点では皆さんが評議員にどのような人物の就任を想定しているのか分かりませんが,日本中で500を超える学校法人が適任者を募った場合,既に企業における社外取締役も人材不足に陥っているようですが,理事との兼任を認めない,学内関係者の選任に上限を課すというようなことでは,学校法人の運営に責任を持てる優秀な人材を確保することが困難ではないかと思っております。
 それから,評議員の解任がテーマとなっていますが,今回の改革では理事会の監督・監視機能が強化されますが,評議員会の監督・監視も必要と考えています。ここまでの議論では,理事会に対しては性悪説を取る一方,評議員会に対しては性善説を取る極端な制度設計に見えるように思います。さらに教職員就任禁止ということがありますが,学校法人の評議員会,これは歴史的な背景がありまして,本学では同窓会のメンバーも加わりながら,選挙についても,同窓会の代議員を中心にしながら選挙で選んでいるという部分もあります。評議員会での審議,諮問機関として果たしている大きな役割になります。本学の場合は65名の評議員のうち,26名を選任教職員,28名を同窓会,学識経験者を10名強と教職員と同窓が各4割,そのほかが2割弱の役割で構成されており,広く教職員,同窓,その他の方々より法人の運営に広い意見を頂いている状況です。
 これは本学だけの事例ではなくて,もう少し評議員会の在り方についての情報を集めて判断した方がよろしいのではないかなと思います。理事会についてはガバナンス強化の手段として,評議員会の利用を想定していますが,民間企業出身の経験から言わせていただくと,選解任の権限,理事会の監督・監視機能としては評議員会ではなくて,学外理事,あるいは理事会理事のメンバー,過去に私の大学は理事が理事会で解任するという事例が幾つかあります。やはりこれは不祥事を起こしたということではなくて,放漫経営というか,経営がうまくいっていないという中で理事長が解任される事例が幾つかあります。これは大変恥ずかしいことなのですけれども,これは毎日のように見ている理事がそれを認識できるということがありますので,これはこの方がよろしいのではないかと思っております。この辺の実態ももう少し調査されたらいかがかなと思います。
 学長については,まだ方向性が示されていませんが,現状のミッション,選解任の方法,任期等について,今のところ問題を感じておりませんが,この辺につきましても学長は学生の選考委員会で得られた先生を就任投票,選んで学長に決めているのですけれども,大きな問題が起こるかもしれません。これについての,解任についてのことも別途検討することも考えなければいけないかなと思います。考える時期が来るかもしれません。
 監事については,ミッション,それから,選解任の方法,任期についての問題を感じておりませんが,監事機能強化の一環として常勤の監事の設置を持てるのであれば,賛成です。常勤といいましても,非常勤監事になっていますけれども,ほぼ常勤に近い形で我々は導入しています。会計監査人については,比較表にもありますように,学校法人は財務諸表の公表が従前より整備されており,監事,検査法人等の監査でそこは感じておりません。
 透明性と説明責任の担保については,全く問題を,寄附行為を定款に改める必要性は全く感じておりません。監督と経営の分離と責任ある教学の確立を常に説明できる体制の構築,税制上の優遇と透明性の担保というプロセスが大前提としてこれまでの議論でも指摘されているとおり,補助金の交付を受け,税制面でも恩恵を受けている学校法人のガバナンスに透明性と説明責任が求められることは理解しております。3月の報告書の中にもガバナンスに関する情報の開示や理事会の招集通知対象に監事を加えるということがあります。それは常に導入できるように考えております。
 ただ,理事会イコール悪と決めつけ,評議員会を強化すれば全てが改善されるという議論にはやはり違和感があります。理事長を見ているのは理事会が,理事が毎日理事長を見ています。それから,事務員も毎日見ています。それで悪いことができる環境は,できない仕組みになっています。そういうことを常々,事務員は理事長に物を言えというような形に今なっているかなと思います。こういう意見に対して検討頂けたらということでお話をさせていただきました。
【増田座長】
 前回の有識者会議の報告書も皆さん読んでおられまして,方向性については相当踏み込んでおられますので,むしろ,今回はガバナンスをきちっと法律に盛り込んでいこうということを議論したいと思っていますので,是非その点,御理解頂きたいと思います。
 調査をするとか,そういう話は前回の会議でもヒアリングを随分やっていますし,委員にも学校法人の現役の方も入られて議論されていますから,十分そういうことは言われたと思います。今回も書面でいただくことになっていますので,是非その辺も踏まえて議論に参加していただけると有り難いと思います。
【安西委員】
 2004年,私学法が改正されたときに理事会が最終権限を持つという形になったかと理解しておりまして,当時,私はそれに反対した経緯がございます。やはり評議員会が最終権限を持つべきではないかということを申し上げたことは,一応,この場でも申し上げておければと思います。
 そういう意味では,先ほど2人の委員の方がまとめで最初におっしゃったことに私は基本的に賛成でございます。特に全国の大学を見渡したときに,理事会がある意味,独走と言うといけませんけれども,そういうことが起こりがちな組織ではあります。その中で評議員会がどういう権限を持って最終的な決定機関になるのかということが問われていると理解しています。そういう中では,先ほどもありましたけれども,評議員の選任の仕方,これが非常に大事です。
 また,評議員の義務とおっしゃいましたけれども,これはなかなか,野村委員が言われたように難しいところがあると思いますけれども,評議員がきちっと見識を持って理事会を監視する,そういう組織にしないと学校法人というのは,これからやはりかなりいろいろなことが問われていくのではないかと思っています。一応,私の考え方を申し上げましたけれども,先ほど少し,誤解があるといけないので,理事会がしっかりとすればいいのだというふうには,全国の大学を見る限り,そういうふうには思えないので,そのことは是非申し上げておければと思います。
【戸張委員】
 まず一つ,先ほど委員の発言の中で,確かに設置基準が歴史的に違うのだというふうなことがありました。たしかに厳しい設置基準で,私財をなげうって私立学校を作られている方が多いということは承知しております。もともと財団としての性質が強い学校法人ですから当然そうなりますし,良質な教育をするためにはきちっとした園舎とか校庭とか建物等がなければいけないというふうなことで,かなりの私財をなげうっている方が。ただ,えてしてそうすると,創業者の方が自分たちの学校なのだというような意識にやはりなりやすいということで,私も評議員の中に理事の選解任の権限を持たせるということに賛成であります。ほとんどの学校はきちんと運営されていると思いますけれども,創業者一族の方がこれは自分たちの学校なのだというふうに思いやすい環境があるのはよろしくないかなと思います。
 それから,機関設計の中で初めて公認会計士などを会計監査人として設置するというふうに入っております。ほかの公益法人,社団法人にももちろん入ったのですけれども,そもそも学校法人は私学助成法の方で,大学はもう100%公認会計士,監査法人の監査が入っておりますので,そこに対する影響はそれほどないと思うのです。ですから,もう少し広いところの,例えば文科省の所轄のところの学校については,会計監査人を設置するにしても,大学などはほぼ上場会社と同等の監査を受けていますので問題ないと思います。
 ただ,何が違ってくるかといいますと,今,私学助成法上は所轄庁に提出する計算書類だけを確認するという立て付けになっております。ただ,私立学校法で公認会計士の監査ということになりますと,例えばホームページで公表している計算書類も一応確認することになるかと思います。全国から学生を集めたり,今後は留学生を多く入れるなど,非常に社会的な影響が多くなる大学等はやはり私立学校法の中に会計監査人制度を機関として入れて,きちっと会計的な数値については,ただ単に所轄庁に出す計算書類だけではなく,公認会計士の監査等を導入する。また,同じ法律の中で監査をすることによって,監事の監査と連携して進めていくことができるかなと思っております。
【増田座長】
 座長の司会の仕方が悪いのかもしれないですけれども,項目全体の意見は頂いていますので,個別の項目ごとに皆さんのご意見を頂いていこうと思いますが,いかがでしょうか。よろしければ,そのように進めたいと思います。
 まず,最初の原則法,これについて,ここ論点整理に書いてありますように一般社団法人及び一般財団法人に関する法律,公益社団及び公益財団法人の認定等に関する法律,社会福祉法第6章社会福祉法人の準用についてとなっていますけれども,あと準用可能な条文,準用ができない,規定がないものはどれか,私学法等に書き込む必要はあるかとか,いずれにしても洗い出しが必要なので,これは文科省の方で洗い出していただくことかなと思いますけれども,独立行政法人通則法,国立大学法人法との平仄が合わない責務などについて,これについての御意見をまず頂きましょうか。まず,この準用についてどうかということについて,御意見ございますか。
【八田委員】
 先ほど事務局からも御説明頂いている資料1の末尾の2枚目にある,高等教育局私学部で作っている「学校法人ガバナンス改革会議について」と題する文章の中で,今回のガバナンス改革会議の趣旨および会議構成が明示されています。そこでは公益社団・財団法人制度,それから,社会福祉法人制度の改正の状況を踏まえて議論しようということですから,ここにまずスタートのラインがあるということは,はっきりしているということです。それが先ほどの何か学校設置の基準の方がハードルが高いとか低いとか,そういう各論の話もありましたが,総論的に枠組みを明確に,そしてガバナンス体制を社会的に説明できるような方向に見直すという,このスタートラインはここに間違いないので,ここだけまず明確にしていただいた方がよろしいかと思います。
【野村委員】
 先ほど本山委員から,こういった形で平仄を合わせること自体が概念法学的ではないのかという,そういう御指摘があったかと思うのですが,実は一般社団法人法という法律ができたときには,先行して会社法が作られておりまして,私,法制審議会で会社法の改正をやっておりましたけれども,これと一般社団法人法の法律の立て付けは全く一緒で,ほぼ条文はミラーの状態になっております。
 社会福祉法人もその後,それに基づいて改正が行われています。これは一体なぜなのかというと,実はガバナンスに関しては,基本的に価値中立的に,理念的に正しい在り方というのをある程度,型として存在しているのです。例えば権限のある人が自分を選ぶ,要するに業務執行する人が自分を選ぶなどということは愚の骨頂であるということは,どなたに言っても分かるわけなので,そうなると,選任,解任についてやはり独立性のある人たちによって選んでいくという当たり前の事柄なのです。
 そういう意味では,枠組みとして,基本的にまず一般社団法人法や会社法もベースは一緒ですけれども,ガバナンスの基本中の基本というのに合わせていくということは,当然の前提ではないのかなと思っております。実証研究等もありまして,その中で例えばファミリービジネスをやっているところがどういうパフォーマンスをするのかとか,それはやはり八田委員から出てきた各論の問題としてはあるのですけれども,法制度の問題として,枠組みとしてどういう形を取るかというところでの議論では,余りそういうことにぶれはないので,是非この進め方で行っていただければと思います。
【久保利委員】
 これ,当たり前の原則法だと思います。特にガバナンスの中で別に株式会社というのは,これは本山委員,よく御存じですけれども,別に公的な資金を導入頂いているわけでも,特別の税金免除をもらっているわけでも何でもないわけです。しかし,そういう中でやはりガバナンスの型というのがもうはっきりしてきているというのは十分御理解頂けているのだと思います。そういう点で具体的に本山委員が理事長をおやりになっていた理科大がどうなのか知りませんけれども,しかし,根本的にはこの大原則というのに基づいて学校法人法というのを変えていくというミッション,これはもうすごく当然のことだと思いますし,我々としては早急にそれを作っていかなければいかんと考えております。
【酒井委員】
 私も端的に言いますと,お2人の御発言と全く同じで,もう形であって,しかも,会社法改正など,そういう最近の話ではなくて,これはもうモンテスキューが法の精神で言っている三権分立ということですので,これはもう形なのです。議論として今後,例えば日本で有名な指名委員会等設置会社という最先端の制度を持ちながら不祥事が起きるなど,そういうことはあるのですけれども,それはその制度が悪いのではなくて,ほかにいろいろな原因があるわけであって,だから,議論としてはやはり形の在り方というのは,どうしても必要な議論であって,その型についていろいろな批判が出るというのは,恐らく型から来るものではないと思います。余り生産的な議論にはならないような気がします。
【石井委員】
 私も端的にとは思っているのですけれども,大事なところなので意見をと思ったのですが,性善説というよりは,本当に皆さんがおっしゃっているように,どういうふうにガバナンスの形を作っていくかというところだと思うので,今の議論の方向性というのはどうしても必要だと思うし,本山委員がおっしゃっているような特殊性というのは,それはそう踏まえた上でどうその中で組み込んでいくかというところはあると思うのですけれども,一般的な方向性としてやはり評議会に権限を持たせていくというところは,もう既定路線なのかなと認識していますので,一応,その意見だけ述べさせていただきました。
【増田座長】
 要するに準用できるとかではなく,準用するということで,八田委員からご意見がありましたけれども,この会議の設置趣旨に,準用するのだということが書いてありますので,そこから外れるというのは,この会議の設置意義そのものがなくなりますので,それはできないと私は思います。
【西村委員】
 私もガバナンスをこれから整えるに当たっては,ほかの公益法人,ほかの法人での基本形というのは変わらないものだと思いますので,そこを参考にしながらということが必要であると思います。そして,評議員会について,学校法人ですと実施におけるモチベーションをどのように確保するのか,企業などに比べて難しいので,運用についてかなり工夫をしていく必要があると考えております。
【増田座長】
 そうしますと,今までの委員の大半の方の御意見は,準用するべきだという意見でございますし,それでは,ここに書いてありますように準用ができないとか,規定がないとかいうことについては,これは事務局の方では洗い出してもらえますか。洗い出してありますか。
【相原私学行政課課長補佐】
 先生方からも御指摘を頂いておりますように,社会福祉法人制度改革,公益法人制度改革を踏まえてというのは,骨太の方針2019の時点から既に方向性としてまず閣議決定で示されているものであるということは,まず申し上げておきたいと思います。
 他方,この資料2関して,今後誤解がないようにということで事務局から補足させていただきたいのは,準用が可能か,できないかというような書き方をここでは頂いているわけですけれども,基本的に会議の御議論といたしましては,他の法人制度と同様の型,今日は型という話が出ております。そのような型で行くのか,あるいは何か特殊の事情というのを鑑みての修正というのを行うのかというような,そういう議論をしていただくということかなと思っています。
 準用するのか,あるいは独自の条文を書き込むのかというのは,あくまで法律的には技術的な形式論でありまして,準用であっても読み替えて違う内容にする準用というようなこともございますので,独自に規定していても同じであったり,同じでなかったりということもございます。今後は同じ中身にするのか,そうじゃないのかという内容面で純粋に着目して議論を頂ければ,後は法制的な内閣法制局の審査というのもございますので,その結果としての準用かどうかというところはこだわらないで大丈夫でございますということを補足させていただきたいと思います。
【八田委員】
 何々に依拠するという考え方はどうなのでしょうか。
【相原私学行政課課長補佐】  
 依拠というのは,むしろ,純粋に規定あるいは表象されている制度の,むしろ,その根定にある考え方にのっとって導き出す場合には依拠するということになろうかと思います。理念的な部分は依拠するというところになろうと思いますし,制度的な部分は同じにするかどうかというところでの議論かなと思います。
【酒井委員】
 今の相原課長補佐の御発言を受けてですが,我々も内閣法制局に随分行ったりしていましたが,準用というのはかなり厳格な事項で,若干ここではミスリーディングになるかもしれません。同じような型が当てはまるかみたいな議論とともに,今度,せっかく我々が新しい法律,改革に向けて議論する中で,そうするとむしろ,公益社団法人よりもっと進んだ制度もあり得るだろうというような議論も当然ここでやはりやっておきたいので,準用というと,できる,できないの後追いだけになってしまうので,若干,準用というのは,法制的にも若干問題があるので,そこは今,相原課長補佐が言われたような枠組みで議論をしていただくのがいいと思います。
 また,準用と全然違う話なのですが,以前,前回の有識者会議では,一応,法律の全部対照表,公益社団法人,財団法人,学校法人,社会福祉法人の対照表という,それぞれの条文に近い対照表を配っていただいて,これはこれで便利なものなので,場合によって,それを次回以降に配付することも文科省の方で検討いただけたらと思います。
【野村委員】
 準用については,文言をそのまま借りてくるというような議論を今する必要はなくて,それは法制上の問題ですから,そこは法制局とやり合っていただければと思うのですけれども,逆に仇になることもありまして,例えばGPIFの改革のとき,私,関係していまして,それで内閣法制局にも行ったのですけれども,例えば独法はみんな総理するという言葉を使っているから,全部総理するに合わせろみたいなことを言われてしまうと,かえってこちらが目指していることと合わなくなってしまうということもありますので,余り文言に拘泥することなく実現したいことが何なのかということをきちっと確認して,その言葉にふさわしいものを法制化していただければと思います。
 それからもう1点,酒井委員からも前回もお話がありましたけれども,我々,目指しているものというのは不祥事防止だけではなくて,やはり世界と戦っていけるような大学を創っていくということだと思います。そういう意味では,よりプラスアルファで一般の社団法人などではないような規律付けというものがどこかで必要になっていきます。例えば学長問題などいろいろこれから議論されると思うのですけれども,そういったようなところに本当に私,長く大学にいて,権力闘争と,要するに何かみんなに良いことをたくさん言わないと学長になれないからといって空手形ばかり切っているような大学では戦えないです。こういうようなしっかりとした改革ができる大学を創っていかないと,もうみんな教員からも職員からも嫌がられても,うちの大学は一番を目指すのだというような学校がしっかり営めるようにしていくためにどうすればいいのかという,より積極的な議論をすると,一般社団法人では到底足りないプラスアルファの規律が必要なのだということだけは確認しておいていただければと思います。
【増田座長】
 前回も安西委員からございましたけれども,いわゆる守りのガバナンスだけではなくて,攻めのガバナンスという話がありましたけれども,是非そういう意味を含めてガバナンスをむしろ公益法人などより強化してやっていかなければいけないという意見を言っていきたいと思います。
【久保利委員】
 大変結構な御意見だと思いまして,私も賛成です。ただし,今,いわゆる不祥事だけではなくて,海外の大学がどんどん伸びていっている中で,日本はこういう状態にあるのだということは,今ある日本の大学がガバナンス上も相当ひどい問題点を持っているのです。したがって,野村委員がおっしゃるように,世界に出ていけることを確かに求めたいのですけれども,まず一つは,今までの日本の大学の水準よりも随分落ちているところが増えてきています。これをまずなくしましょう。その上で攻めのガバナンスを含めて出ていこうよという非常に難しい役割といいますか,視野の長期スパンの話を今言われていると思います。
 そういう点で,そのためにも余り後ろ向きの学校法人の特殊性や,本学はこんなに違うなど,という議論は余りやらないで,もっと前向きに,どうしたら良い大学になっていって,本当に良い研究なり良い教育ができるのか,そのためのガバナンスは何かという攻めのガバナンスだったら私は大賛成でございます。
【岡田委員】
 今の話の流れで,ガバナンスの議論で学校の方々がおっしゃるのは,教学があるので教育と企業は違うのだということです。確かに企業は利益を追求します。お金という話になるのですが,学校は教育という,高邁な理念を追求していくという大きな違いはあります。ただ,教育の理念を追求すると同時に,学校法人はやはり寄附,助成金だとかお金も扱っている立場であるわけです。そういう立場の学校法人がやはりガバナンスを効かせていくということは,どんな形態であれ絶対に必要なことだと私は思います。
 一方,企業の場合は利益という指標で測る。それを株主に還元していくということなのですが,学校はそうは必ずしもなっていない。大変大きな資金を持っている学校はデリバティブに投資して失敗しているところもありますけれども,これは別の問題として,本当にお金を運用するよりは,教学としての成果を出していきます。では,その成果は一体何ですかというところなのです。これは目に見えないものがあります。成果としては例えば東大に何人入ったとか,ノーベル賞を何人もらったという具体的なものはあるかもしれないですけれども,多くの場合無形なもので測っていかざるを得ないということなのです。
 では,企業は違うのかというと,これも最近変わってきています。よくパーパスと言われるのですけれども,お金で測るものだけではない,ESGも含めてどんなあり姿,あるいは志と言ってもいいかもしれません。企業もそういうものを求め,要求されるようになってきているという意味で言うと,学校もやはり志だとか,理念だとか,これをよく議論していくというところが成果につながっていくのだと思うのです。要するにそういうものをしっかりと外に見せていく。学校法人も,我々はこういう議論をして,こういう理念でやっていますということを見せていくことが大変重要であって,そういう意味では透明性だとか説明責任,これはまさしくガバナンスの基本なわけです。そういうことをこのガバナンスの改革会議で今後の機関設計などの話の中で是非議論していただきたいと思います。
【本山委員】
 先ほど来から攻めのガバナンスという話があるのですけれども,いろいろ私立大学にはこれから課題があって,時期が来ると思うのですけれども,その論議を十二分にやっていく必要があると思うのですけれども,特に今,企業と同様に学校の場合はもうけなければいけないということはないのかもしれないけれども,赤字では駄目です。しかも,それはお金の蓄積によって,それが将来の研究費にお金が回せるというために体制を作るというのは,私は攻めのガバナンスだと思います。大体,皆さん,今,御存じだと思いますけれども,大学の支出というのは三つしかないです。教職員の人件費,それと二つは教育研究費,それと管理経費です。今,平均しますと人件費が53%です。教育研究費を使っていたら赤字になるので,教育研究費をできるだけ抑えながら管理経費というのを10%前後だと思うのですけれども,教育研究費で調整している大学が多いです。
 だから,帰属収支のところが前回の文科省の資料によれば3.何%の基礎収支だと思うのですけれども,このまま行ったら金は使えません。今度は国からの補助金もどんどん減っていきます。今のところ10%です。10%のお金で,その中でどうやってお金の蓄積をしていくか。それは先ほどお金のあるところはいいけれども,お金を作っていくための蓄積をしていかないと何も運用もできないのです。運用するためには学生,卒業生や何かいたから,その人間を活用しながら,一番悪いのは,どこかに一任契約で任せてしまうというのは駄目です。しっかりと理事会がチェックしながら運用していくということが大切です。収入は授業料収入と,そのほか共同研究による費用などがありますけれども,寄附が大きいです。寄附が少ない学校は,ある程度運用して貯めていかないとお金は貯まりません。それは将来,発展はないと私は思います。
 こういう体制を作るためには,評議員会はほとんど反対です。何で運用するんだって,私はもう大変でした。とにかくその実態を,皆さんに学校経営の実態というのをもう少し御覧になって見た上でやっていかないと,これは私学の発展はどうでもいいというなら別なのですけれども,国立大学の方は10兆円の研究資金を回すだとか,いろいろやっていますけれども,しっかりやっているのは,名前を出して恐縮ですけれども,早稲田と慶應だけです。あと医学部が教育研究費を回して,人件費を低い大学で,それと数校ありますけれども,ほとんどが人件費の比率は高いです。そういうところは教育研究費の比率は低いです。その辺のところをこれからは教育研究費の比率を上げていく。どういうふうにやっていくか,それをそのまま今の理事会の在り方ではないか。そこに攻めのガバナンスが私はあるのではないかなと思います。
【安西委員】
 個別の大学のことは別として,先ほどからのずっと経緯で申し上げますと,ガバナンスの問題として教学について学長の権限と責任をどういうふうに担保し,また,法文上どうするのかということをやはり議論すべきだと思われます。理事会と学長の間の関係がなかなかグズグズと言うとあれですけれども,そういうケースも見受けられますけれども,先ほどから言われている攻めのガバナンスということで申し上げると,学長に対しては一旦権限を与えたら,ある程度の期間きちんと,もちろん評価をしつつ,教学の面では任せて,それで結果を評価するということが恐らく正しいと思いますけれども,その中の細かいガバナンスの在り方,途中のタイミングなど,いろいろなことは別ですけれども,今申し上げた教学のことで言えば,学長の権限と責任,それから,理事会,評議員会との関係をしっかり議論していただくことが大事ではないかと思います。
【増田座長】
 今,安西委員のおっしゃられたように,私は学長というのは,企業で言ったら執行部隊の責任者だと思うのです。教育研究の責任者だと思っていますので,おっしゃられるとおりで,学長は,企業の取締役社長で執行部隊の長,いわゆるCOOです。私はそう思っています。
【岡田委員】
 まさにそのとおりだと思います。ただ,一般の企業の場合には執行部隊があって,それを監督する取締役会があります。これを機関設計で言うと評議員会が,ある意味取締役会的なもの,学長,理事会が執行部隊,ここまでは明確なのですが,一般の企業のステークホルダー,株主などの監視がなかなか学校法人には効いていない,効きにくいです。先ほども話がありましたけれども,評議員会が理事会を監督するのでもいいのだけれども,評議員会を監督するというか,それに対する評価は誰がやるのですかというところは見えないところです。
【増田座長】
 私見ですけれども,評議員会というのはステークホルダーの代表で出てきて,いわゆる株主総会では株主だけがメンバーですけれども,評議員会の方はそうではなくて,同窓生や教職員のOB・OGなどのステークホルダーの代表みたいな人が評議員になっていて,評議員が理事会なりの執行状況の監視をする。理事会は,いわゆる学長等の執行,COOのやっていることを監視していくというふうなことで,一応,考えたらいいのかなと思ったのですが,皆さんの意見を是非頂きたいです。  
【野村委員】
 今,岡田委員の方からあった評議員問題は冒頭,私が申し上げたように株主とアナロジーが難しくて,やはりこの方々にも一定の義務を負わせて,場合によっては解任もしなければいけないし,責任も善管注意義務を負わせて何らかの責任を負わせないといけないとは思います。そうしないと,そこに強大な権限を与えるというのは,まずいだろうというふうには思っています。
 その問題とは別に,安西委員が御指摘なされていることがやはり私立大学においての本質的な問題で,最も難しい問題だと思います。教学と理事会というのが二元的に存在している中で,ここで例えば学長というのを選挙で選んだのだけれども,その学長は望ましくないといって理事会が引っくり返すという,これがここ数年続いていたりするわけです。さらには,その学長の選考というのは参考投票にしましょうというような動きももちろんあるわけですし,あるいは理事長は,じゃあ,どうするのだ。理事長についてはサクセッションプランはしっかりとあるのか,あるいは指名委員会は必要ないのか,こういう議論があるわけです。
 先ほどの株式会社等とのアナロジーでいきますと,実はここ,執行のところが理事長と,それから,教学の責任者である学長という頭が二つある形になるわけなのです。この関係をどういうふうにするのかということが大事で,他方でやはり,ここが大事な点は,学問の自由というのを守らなければいけないという部分は当然にあるわけなので,そこをどうするか。しかし,一方で,私も教員ですけれども,教員はみんなわがままなので,自分の研究が世界で一番役に立っていると思い込んでいるわけなのです。ですから,私に全ての予算は欲しいというふうにみんな思っています。何も効果が上がっていないだろうというと,私の研究は100年後に評価されるのだから,分からないやつが文句を言うなという,こういう環境の中にあるわけです。その中で理事長というのが改革をしようとすると,教学は明らかに反対という形になって,改革が進まないという問題があります。
 それからもう一つ,非常に難しい問題は,病院などもそうなのですけれども,教員と事務職員というのが,ヒエラルキーがあるのです。これ,あってはいけないヒエラルキーなのですけれども,なぜか何もしない教員でも教員であるだけで偉いという状況になってしまうという,この関係がビジネスの世界では余りない世界なのです。ここはしっかりと,例えば理事会サイドの方で決めるべき事柄で,こういう形できちっと管理,運営しましょうといったときに統率がとれるというのは,事務職員の方々は,ここはしっかりと上意下達の状況になっているのですけれども,教員が横置きになっていることによって物が進まないという問題ももちろんあります。こういうのをどうするかという,これが大学のパフォーマンスを歪めている部分というのがいろいろありますので,どっちもどっちなのです。
 理事長の方が暴走するという,安西委員が最初におっしゃられたのはかなりたくさんあって,私物化して自分の銅像を建てることに力を注いでいる方,あるいはもともと地方で名士になるために学校を持つのだという,そういう形でただ学校をお飾りにして使うというような人たちもいます。どっちもどっちでいろいろな問題を抱えていますので,ここの学長問題と理事会問題,理事長問題をどうするかというところをやはり深刻に議論しないと,今回の改革にはつながらないと思います。
【増田座長】
 なかなか難しい問題ですけれども,解決しなければいけない問題です。学長をどういうふうな方法で選任していくか,あるいは評価はどうするかなど,教学の方の評価がきちっとされていく必要があると思います。学長の評価の問題,それを監督する理事会の問題,評議員会の役割の問題もありますけれども,皆さん,どういうふうにお考えになりますか。なかなか大きな問題ではありますけれども,解決しなければいけない問題です。   
【戸張委員】
 学長の話ですけれども,今,皆さん,もちろん大学を前提に話されていると思います。ただ,第1回目の会議のときもそうでした。説明があったように,私立学校法の改正になると,これは幼稚園法人から全部になりますので,学長の設置について機関の話が出てくると思うのですけれども,他の数が圧倒的に多い幼稚園だけを設置しているとか,中学,高校の法人について学長とかで機関設定した場合の取扱いをどうしたらいいのかということは,今後の検討の課題に入れていただければと思います。  
【酒井委員】
 野村委員の問題提起について,私もそうだと思いますが,会社とのアナロジーで言いますと,学長,理事長は執行,例えば指名委員会等設置会社,言えば執行役になるわけです。最近は会社でも執行と監督の分離ということは言われています。それに対する監督機能としては,やはり理事会というのがあって,その理事を監督するのが評議員というのが大きな枠組みなのだと思います。
 この学長と理事長の関係についても,これは非常に悩ましくて,学校によっては学長兼理事長というところも少なくないし,国立大学はそうなのでしょうか。多分,慶應なども学長兼理事長だと思いますが,そこの関係は悩ましいのですが,それが牽制作用だけではなくて,今は産学共同ということで教学と運営が一緒にやっていかなければいけない場面というのがあって,これがまたこれからの学校の特殊性にもなると思います。制度設計に当たっては,そういうことも考えていただくのがいいと思います。 
【松本委員】
 今,酒井委員がおっしゃった国立大学の話なのですが,私は国立大学のガバナンス改革に少し関わっております。経営と教学の分離は,すでに挙がっています。
【増田座長】
 ボードとトラスティというか,ボードは取締役会で,トラスティというのは評議員みたいなイメージに私は思っているのですけれども,その中で学長も理事になっていてボードに入っているというのが一つの形かなと思うのですけれども,その任命の仕方です。だから,企業だと企業理念など,そういうのに従ってやりますし,学校であれば学校の建学の精神など,そういうので一応縛られるのだと思うのです。寄附行為で決められてくるのだと思いますけれども,そういう話がやはりあって,その上で選任されてくる。選任については,推薦委員会や選考委員会を作ってやっていくというようなことも当然考えられるわけだし,これら実務的な問題というのは,これから議論をいろいろしていったらいいと思うのですけれども,機関設計のところは基本的な大事なところで,決めなければいけないところです。よろしいでしょうか。結構面倒くさい話,難しい話ですけれども。
【八田委員】
 今の私立学校法で学長の権限,役割,責任,そういうのは個別具体的にどのような形で規定されているのでしょうか。
【相原私学行政課課長補佐】
 私立学校法においては,学長という機関に関しての権限そのものは一切規定していないという理解でよろしいかと思います。基本的には学校の運営に関して学校教育法に基づいて権限というのを校長,学長,園長が全て持っておられるということがまず前提となります。先ほど来,国立大学の話が少し出てまいりましたが,国立大学法人の場合は,法人の長に今私が申し上げました学校教育法上の学長をそのまま法人の長に充てる,すなわち私学の仕組みで言えば,理事長兼学長というのを制度として,逆に言うと決めてしまっているのが国立大学法人だということであります。
 したがって,逆の言い方になりますが,何も決めていないということイコール実態として私学の選択によりまして,様々なタイプの制度設計が取り得ます。具体的には,お話にありましたように理事長兼学長というようなタイプもございますし,また,学長そのものの位置付けも業務執行理事というようなのに相当するような方もおられるでしょうし,あるいは指名委員会設置会社の執行役,通常の会社の役員の下の執行役員というようなクラスのような方もおられるかもしれませんし,部長,雇われ店長といったような方もおられるかもしれないです。
 その辺りは様々な選択というのが,その機関としては,実際に幼稚園から大学まである中でも選択し得るということが,すなわち法的には,基本的に学長と理事の関係というのを決めていないという特色ではあると思いますが,1点だけ私立学校法でそこのリンクをしっかり張っておりますのは,前回の有識者会議においても話題になりましたが,校長理事制度という仕組みがありまして,例えば雇われ店長的な校長先生であったとしても,その教育,研究等に関してしっかり意見を経営面にも反映できるようにするという教学と経営の連携のリンクを張る観点から,校長理事ということで,理事の中には設置する学校の理事を一人以上含めてくださいというような形での最低限の設計の思想というのが私立学校法上とられています。このような紹介でございます。
【安西委員】
 今,国立大学のガバナンスについて事務局から言われました。実質的にはそうかもしれないと思うのですけれども,私の理解では,国立大学法人法によると,まず国立大学は理事会がないわけです。経営協議会と教育研究評議会があって,その上というか,役員会があって,そこの役員会の決定が最終決定になるという理解でございます。一応,少し申し上げておければと思います。
 以上です。
【酒井委員】
 私も安西委員の質問は,相原課長補佐に伺いたいのですが,例えば東京大学は総長がいて,理事が何人か,5人程度いるような構成になっていますけれども,それはまず安西委員の指摘されたようなものとは違うという理解なのでしょうかというのが,それが一つ質問であって,もう一つは先ほどから言われていた校長理事制度,これは私学法にあるわけですけれども,これがかなり大学の特殊性で,前回の有識者会議のときも,この校長理事制度をどうするかということ,確かに校長が理事に入るのは結構必要性もあるというような議論もあって,ここは今度の我々の改革会議でもやはり大きな議論のポイントになるのかもしれないので,その点もよろしくお願いいたします。
【相原私学行政課課長補佐】
 国立大学,あるいはその元となっている独立行政法人は全く経緯も含めて,制度の設計の質は違うということでございまして,なかなか同時に横に並べてみるというのも難しさというのはあろうかと思いますけれども,基本的な考えとして,まず法人の長というのは,法律上では独任機関ということになっておりまして,所轄の大臣などから独立行政法人,国立大学法人の長というのは直接任命を受けるということでございます。
 また,その理事というのは,逆にそこは大臣などの任命ということではなくて,任命を受けました長,国立大学であれば学長ですが,学長がさらに任命するというようなことで,そこの理事のメンバー及び長,合わせて役員会のようなものを構成しつつ,さらにその決定に関しては経営協議会,教育研究評議会といった組織において重要事項というのを審議して意見を聞くというような構成になっています。前回の会議の資料4に今年の法改正後の会議体の構成の概念図も載せておったかと思いますので,改めて御覧を頂ければと思います。
【松本委員】
 冒頭に国立大学法人法のことを出したのは,国立大学法人をお手本にすべきというつもりではありません。国立大学も問題を持っています。最低限,その問題になっている国立大学法人は超えなければいけないという問題意識の基に申し上げたつもりです。
【増田座長】
 企業の方だって,岡田委員,今までもそれぞれCOOとCEOと兼任で,要するに執行部隊の社長と,監督する側の取締役会の議長が同じで,執行と監督が一緒だったという,時代がありました。今もそういう会社は多いですけれども,そういう意味では,監督する側が執行部隊を監督しているというのは,分けた方が分かりやすいということもあって,ガバナンス今は少しずつ変わってきつつあります。そういったことを少しお話し頂けると有り難いと思うのですが,形は作らなければいけないと思うのです。やはり型を作るという意味は必要なので,執行と監視,監督は別にしていかないと牽制が効かないと思うのです。
【岡田委員】
 今,座長がおっしゃったとおりですが,企業の側も執行と監督の分離というのはなかなか進んでいないです。取締役会の過半数を執行役員兼務が占めています。そのため執行役員で構成される経営会議で決まったことは,取締役会で自動的に多数決で決まるという状況になります。これはおかしいのではないかとスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議で申し上げました。ただ,日本の中で過半数を社外役員にというのは,まだまだ通らないので,その辺は難しいところはあると思うのですが,理念として執行と監督の分離というのをしっかりするという理念でコーポレートガバナンスコードは,一歩一歩は進んでいます。
【増田座長】
 そういう意味では監視・監督の仕組みとしてコーポレートガバナンスコードではチェックは効くようになっています。その辺は評議員,取締役会,学長それぞれの役割だとかというのは,形をきちっと決めなければいけないと思われます。
【岡田委員】
 機関設計としては,評議員会や理事会,理事長,校長,それから,監事,それぞれがやはりきちっとした権限と責任を持ってワークして,それぞれが牽制する設計が必要です。先ほど三権分立という話も出ましたけれども,そうでないとガバナンスは効かないと思います。私学法を読ませていただいても,評議員というのは極端に言うと責任も権限もない諮問機関ということなのですけれども,それだけでは理事会を監督はできません。現状を見ると,それぞれの学校で違うのでしょうけれども,多数の卒業生と教員と話し合って,私学の今後の方向性や理念を話そうと,このこと自体は大変結構なことだと思うのですが,これがここで言っている機関設計の評議員会かというと,そうではないと思いますから,ここを大きく変えなければいけません。
 ただ,大学の方では相当な抵抗が出ると思いますし,私大の評議員の方々,100人を超える評議員会もあるわけで,お辞め頂いてこういう形にしますといったときに大変な問題が起こると思います。ですから,そこを乗り越えなければいけないのですけれども,今の評議員会は存在意義があるから変える必要はないのだという議論が出てきたとしても,名前を変えてガバナンス機関とは別の運用をお願いする必要があると思います。
【野村委員】
 問題を戻してしまって恐縮なのですけれども,学長,理事長問題でどういうモデルで理解するかというのは多様で,今までの議論ですと何となく単体の企業を念頭に置いて,評議員会は株主総会,理事会を取締役会、あとは執行でCEOやCOOみたいな形で学長,理事長を両方置くみたいな,こんなイメージになっていると思います。けれども,何か違う面がありまして,例えば持ち株会社みたいなものを念頭に置いていただきますと,持ち株会社の下に大学もあれば,高校もあれば,幼稚園もあれば,こういうのが学校の体制としては多いわけです。理事長というのは,この持ち株会社を管理,運営しているというような感じで予算の措置や資本のアロケーション,人事の配置などもやっています。
 まさに経営をやっているわけなのですが,その持ち株会社の傘下にあります大学では教育事業というのを行っているものですから,その教育事業というものについての責任をしっかりと遂行する人として,学長という人が置かれていて,この人をどうコントロールするかというのが理事会と学長の関係として整理できるかなとは思っています。安西委員がおっしゃられたように,この持ち株会社傘下の企業,子会社の方に独立性を持たせてしっかりと責任を持たせるということになると,伝統的には教学というイメージとは違って,経営についても一定の責任を持つということです。それを理事会としっかりと連携を保ちながら,事業として教育をやるのですけれども,経営の大きな枠組みの中で,経営にもしっかりと関心を持ちながら管理運営をするというふうにしていかなければいけなくて,そうしないと単純に教員の利益団体の代表みたいになってしまうのです。
 こういうのではやはり,伝統的な教学,理事会問題というところから抜け出せませんので,やはりイメージとしては,しっかりと独立性を持たせて,そこで責任を持たせます。その代わりうまくいかなかったら,すぐに首になるのだというような評価と人事の体系というのをきちっと作って,そして,その代わり任せたことについては,きちっとやれるものについては,理事会が不用意に関与して,例えば教員の人事に首を突っ込んできて,自分の知り合いだから,これを何とか教員にしてくれみたいなものを持ち込んでくることは絶対にブロックする。それが学問,あるいは教育の質を維持するという意味では大事なのだというような,そういう関係を整理した方がいいのではないかなと。このアナロジーでも,実は余り的確ではない部分が残るのです。ただ,一つの単体の中で執行が,頭二つというモデルよりは何となく実態に合っているような感じもしますので,少しその辺りのところのアナロジーの仕方,これをもう少し詰めていただいた方がいいかなと思います。
【久保利委員】
 何かだんだん議論がどこかの大学の教授会みたいな雰囲気になってきて,非常に精細な議論なのだけれども,本当にこれってどこへ行くのだろうかという感じがしないでもないのです。したがって,一応,今日,論点の整理ということで,原則については大方の賛成が得られて,あとは機関設計の話としては,なかなかモデル的な機関設計,規模の大小もありますし,うまくいっているところとうまくいっていないところ,何が違うのかと言われても必ずしもよく分かりません。そういう中で,これ以後は評議員会,理事会,学長云々というふうには一つ一つ議論していきますけれども,今の議論の機関設計というところでかなりいろいろな議論が出ていると思うのです。これはやはり少し整理をした方がいいのかと思います。
 例えば逆に言うと,アナロジーとして言われている日本における取締役会,これの有り様というのも実は千差万別です。僕自身が上場会社を三つも四つもやっているときに,違うガバナンスではないのというようなことはありました。けれども,みんな目標はどこに置いているかというと,日本型で言うと指名委員会等設置会社という形があり,もう一つはアメリカの取締役会みたいなものを一つの理想形というふうに考えて,そこに近づこうという論がありました。私が,社外取締役をやっていたJPX,日本取引所グループというのは,14名の取締役のうちの9名が社外でございまして,社外がたくさんだと良いことがあるということで,例えば不祥事が起きたときの調査委員会というのも大事務所に丸投げしないで,その社外取締役で委員会を作ったということもありましたし,そういう点で多分いろいろなケースを考えてみれば,いろいろな会社があるようにいろいろな大学があるのだと思います。
 ただし,その中で世界のマーケットで教育,研究で競争していくというのは幼稚園法人ではないわけですから,そうすると野村委員がおっしゃったようなホールディングスを持っているような,そういう大きなところでどのようなガバナンスをしていくか,これが立派なガバナンスを示せれば,それにみんな倣っていこうというので模範演技として,これをまねしていこうというところが出てくると思うのです。そのためにはやはり,理想形のものを一つ考えて,我々としては,せっかく立法するのですから,こういうふうにしていけば大筋間違いないよと。あとは人の問題とか,大学の文化,伝統とかいろいろなのがあるでしょうけれども,根本的には,骨組みはこういう形だよというのを出せればいいなと思っています。
 そういう点で,具体例に入っていくと,とことんいろいろなケースがあると思いますので,この機関設計のところで,今日いろいろ議論したことを次の議論の中で生かしていければいいなと思いますし,大筋,酒井委員をはじめ,大勢の委員がおっしゃっていることについては,ほとんど違和感なく,そうだなというふうに思っていますので,その方向で座長に次回以降も進めていただければと思います。
【酒井委員】
 今後の議論で何となくイメージとして理事長が執行でやって,理事会が監督で,評議員会がさらにその監督だみたいなイメージがどうもあれなのですが,これは実は理事会というのは,業務執行の決定をするということに普通なっていて,会社でも大事なM&Aというのは全部取締役会でやらなければいけなくて,その上で執行が動くのです。ですから,理事会の業務執行決定機能,大学でも,学校でも結局そういうことになるので,そこが,監督と執行の分離といったときに,執行が理事長,監督が理事会という,そのような構図では若干ないので,今後の議論でもその辺は少し念頭に入れていただけたらと思います。

<議題2 その他>
・事務局(相原私学行政課課長補佐)より,次回は8月23日(月)15時~17時に開催するとの案内があった。

―― 了 ――

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