学校法人ガバナンス改革会議(第9回) 議事要旨

1.日時

令和3年11月11日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. 内部統制システム、会計監査人について
  2. 情報開示について
  3. 学校法人のガバナンスについて
  4. その他

4.出席者

委員

増田座長,安西委員,石井委員,岡田委員,久保利委員,酒井委員,戸張委員,西村委員,八田委員,松本委員,本山委員

文部科学省

滝波高等教育局私学部私学行政課長,相原高等教育局私学部私学行政課課長補佐

5.議事要旨

<議題1 内部統制システム、会計監査人について>
・事務局から配布資料について説明。
・事務局及び松本委員から議題1について説明。

【八田委員】
  資料1と,参考資料1に関して御説明いたします。
  学校法人の内部統制システムの整備・運用に関して,基本的に私学法の中においてその位置づけを明確にするということ。
  そして,それを踏まえて,手続的な部分に関しましては,他の公益法人における法規制と同じように,政省令等で内容を織り込めばよろしいのではないかということを申し上げたいと思います。
  この内部統制の議論というのは、いわゆる組織の健全な運営のための規律づけということで,営利法人,非営利法人問わず,今,我が国では,ほとんどの社会的に有意義な活動を行っている法人においては,法の中において一文内部統制の重要性とその整備・運用について規定されているところでありますが,現時点で私学法においてはその点が触れられていないということがありますので,これを織り込んでいただきたいということです。
  資料1の下のところの四角の中の参考,一般社団法人,一般財団法人においてはこういった規定があります。
  この文脈は,その前提となる会社法において既に規定されているものとほぼ同様な文章において規定されているところでありまして,特にこれを変更するというものではありません。
  したがって,学校法人の場合ですと,2ページの下段,太文字で書いてありますが,「以上より」というところで,こういう文言になるのかということで,念のため読ませていただきます。
  学校法人の場合では,「理事の職務の執行が法令及び寄附行為に適合することを確保するための体制その他法人の業務の適正を確保するために必要な体制の整備」をもって,内部統制システムと考え,そして,さらに重要なのは,整備・運用し,それが有効に機能していなければ意味がないということから,この内部統制に対するモニタリング,検証を行い,可能であるならば,それをもっての監査上の意見も述べるという観点から,監事監査が重要な役割を果たすべきであるということを申し上げたいのであります。
  さらに,省令等に関しましては,先ほど御紹介申し上げました参考資料1において,社会福祉法人及び公益法人における内部統制の規定が既に盛られているところであり,これに準ずる形で学校法人の場合にも規定されることが求められると思います。
  今,申し上げましたように,この内部統制の整備及び運用は,当然ながら業務執行を行っている責任のある立場,最終的には理事長だと思いますが,そちらの責任で整備・運用し,かつ,評価をするのですが,第三者の立場で専門的にそれが機能しているかどうかを監視しなければならないということから,御案内のとおり,我が国では上場会社については,それを外部の公認会計士または監査法人たる会計監査人が評価結果を監査報告書において表明する,つまり,内部統制監査報告書というのが義務づけられているわけであります。
  ただ,他の公益法人等においては,そこまでまだ立ち至っていませんが,実際に会計監査あるいは監事監査が遂行されていくためには,当然ながら組織の健全性も加味して監査を行うわけですから,私は個人的には,監事監査も最終的にはこの内部統制の適否に関しても意見表明することが求められるのではないかという気がします。
  ただ,これは,先ほど座長からもありましたように,規模の大小とか,あるいは,監事の員数の問題とか,様々な特殊性がありますので,それは,今後,検討の余地があるかもしれませんが,基本的な考え方はそういうところで規定がなされるべきだというふうに考えております。
  この内部統制の重要性に関しましては,私のこの資料でも紹介していますが,今年の3月に公表された前の有識者会議の報告書においてもその重要性,体制整備の重要性が指摘されているところであり,考え方は全く一にするものであるというふうに理解しております。
  そして,この後,戸張委員のほうからお話があるかもしれませんが,会計監査人の立場でも,規模の大きいところあるいは助成金や補助金が巨額なところ,こういうところは,会計監査人の監査対象にもなるということを想定しておく必要があるのではないかという気がするわけであります。
  いずれにせよ,監事監査と会計監査人監査,これも有効かつ効率的に行われる,そのための前提として内部統制が有効でなければならないということは必須でありますので,この点は必ず織り込まれるようにしていただきたいということで,御紹介申し上げました。
【戸張委員】
  資料2のところで,まず,前回と同じですけれども,有識者会議の報告書にありますとおり,法人の規模等に応じた義務づけを会計監査人について検討し,計算書類や財産目録等の作成期限を1か月延長する方向で検討していくべきと提言されております。
  まず,現状で,学校法人はほかの非営利法人と違いまして,9割が私学振興助成法に基づく会計監査を受けております,また,経営者の方もほとんどの方は真面目と理解しておりますので,他の法人に比べて一般的には不正が少ない。
  ただ,ガバナンスの観点からいくと,一定の規模以上のところに,機関として公認会計士を会計監査人として設置し,法的権限と責任を強化されるべきだという提言をしたいと思っております。
  もちろん,現在の学校法人会計基準がそのままですと,やはり限界があるのではないかと考えておりまして,学校法人会計基準につきましては,根拠法令を私立学校振興助成法から私立学校法に変更して,私立学校と私立学校振興助成法の双方の趣旨にかなう学校法人会計基準を策定する必要があるのではないかと思っております。
  具体的にガバナンスの観点から言いますと,例えば現状の会計基準では,学校法人の出資割合が2分の1以上の会社についてのみ注記が求められているということで,例えば40%しか持っていないところは注記からも外れており,ある学校法人では40%の割合で事件が起きておりますので,学校法人の出資による会社に係る事項とか,関連当事者との取引の注記とかを厳格化する。
  また,外部公表としてセグメント情報等の財務情報の外部公開を前提とした附属明細書とか,そういったところ,つまり,監査を入れればいいというだけではなくて,既に監査は9割入っているわけですから,ガバナンスにもかなった学校法人会計基準を新たにつくり直すということが必要と思っております。
  先ほど座長からも話がありましたように,まずは大学,文科省所轄の学校法人に機関としての会計監査人を設置して,先ほど八田委員からも話がありましたように,監事とともに内部統制等の確認もするというようなことが必要と思います。
  その他の細かいところといいますか,職務・権限・義務とか,責任,選任,資格,欠格事由,補助者の制限とか解任とか任期とか,これらは決めていかなければいけないのですが,前提として,参考資料3のところに,社会福祉法人と公益財団法人の例が会計監査人については定められていますので,基本的にこれと同じでよろしいのではないかと私は思っておりますが,違うのが,公益財団法人のところには,例えば,権限のところに子法人に対する報告要求であるとか,財産の状況の調査も,法人または子法人というように,社会福祉法人と違って子法人に関するものが入ってますので,これにつきましては,学校法人に関しても,公益財団法人のほうの子法人に関するものを加えるということです。
  この子法人の考え方は,形式的な出資割合のみではなくて,実質的な支配の有無というところで判断し,人的なつながりの強いところについても確認するということが必要かと思っております。
【岡田委員】
  先ほど,八田委員から御説明ありました参考資料1に社会福祉法人あるいは一般社団法人の施行規則があり、監事のことについて随分書いてあるわけです。内部統制のお話ですが,監事は大変重要な役割だというお話がありましたので,これについて申し上げたいと思います。監事について,例えば社会福祉法施行規則では5,6,7,8,9,10号。これは大変重要なことだと思います。
  これは会社法の規定における一般の事業会社でも同じことが言えますが,監査役については,その補助すべき使用人を置くこととか,あるいは,その使用人が執行からの独立性があるかということは大変重要なことなので,これはぜひ,私学法なのか,私学法に施行規則があるのか,それらに定めて監事の権限を相当程度担保していただきたいと思います。
【増田座長】
  今のお話は,内部統制について,監事に内部監査部門から報告をもらうとか,そういう話につながるんですか。
【岡田委員】
  内部監査部門の報告というのは,事業会社でもいろいろな問題があるんですけれども。
【増田座長】
  事業会社ではありますよね。
【岡田委員】
  報告ラインがどうかという問題はあるんですが。
【増田座長】
  ツーレポート・ラインとか言っていますけれども。
【岡田委員】
  やはり執行に対してだけではなく,監事にも報告する,そういうラインをつくるということは私は望ましいと思います。
【八田委員】
  今,岡田委員がおっしゃったように,この社会福祉法の施行規則,それから,一般社団財団でもそういう規定がありますので,監事も内部統制の議論の中に明確に位置づけるということが必要だと思います。
  一応私,監査論を専攻していますが,外でしゃべるときには,監事は内部統制の番人だという,そういう表現をもって説明していますので,細かい規定は施行規則の中で織り込みますが,監事の役割として非常に重要なものであるということだけは再認識すべきだと思います。
【酒井委員】
  私は八田委員,戸張委員の御提案には全く賛成でありますし,岡田議員の言われたことにも賛同します。
  結構法制的な見地からの質問なんですが,まず,内部統制の整備義務というのは,理事会に課せられるという理解でよろしいのかという。理事に課される義務ですか。会社法上では,たしか取締役に課される義務になっていると思いますが。
  その上で,この体制整備の大枠は法律事項として,その内部統制システムの細かいところについては規則等の省令に委ねるという理解でよろしいのかということです。
  それから,もう1つは,内部統制報告書,これはちょっと僕もあれなんですけれども,金商法上法律事項になっているんでしたっけ。であれば,金商法と同じたてつけで,やはり私学法の中で法律事項にするという理解なのかということと,それから,会計監査人の監査証明を出さなければいけないんですが,これも同じように金商法上の義務だったのか。
  そこは本当は僕が説明しなければいけないのかもしれないんですが,ちょっとすぐには分からないんですが,そういうことで法的な義務であれば,それも同じように,この我々の中でも法的義務とするという理解でよろしいのかということなんですが。いかがでしょうか。
【八田委員】
  金商法上は,第193条の第1項は財務書類の監査,従前どおりの証取法時代からの会計監査でありますが,金商法では,第193条2の第2項が新設されて,そこで内部統制監査が義務づけられました。したがって,全て法定事項であります。
【酒井委員】
  そうすると,内部統制システム整備の細目だけが規則に落ちているという理解。
【八田委員】
  これは会社法の話ですから。今,申し上げたのは,金商法における内部統制の財務報告の内部統制の議論であります。ただ,上場会社はほぼ大会社なので,両方規定されていますから,当然,第一の前提として,会社法の規定を受けつつ,踏まえて金商法の規定いきます。
  ただ,汎用性がある普遍的なのは会社法の議論ですので,ほかはみんな会社法の議論に則って作成されており、そちらでは,法定上の義務として報告が求められているわけではありません。
【酒井委員】
  あとは,内部統制システムの整備の義務は,会社法は取締役ですから,学校法人にすると理事に課せられるという理解でよろしいんでしょうか。
【増田座長】
  会社法上,内部統制の構築義務というのは,個人ではなくて,取締役会でしょう。担当はいますけれども,取締役会で決議して,構築義務があるということなので。あと,報告義務もありますね。
【相原補佐】
  取締役会の非設置の会社においては,取締役の義務ということになります。そして,取締役会設置会社においては取締役会の決定義務があり,かつ,重ねて,解釈として,善管注意義務,忠実義務の1つの具体的な姿として,具体の内部統制についても,それぞれの取締役が何らか負っているというふうに解釈されているところだと思います。
【酒井委員】
  学校法人とのパラレルで考えると,理事会は設置されているので,理事会の内部統制システムの整備義務という形になるわけですね。
【増田座長】
  いずれにしても,法定で設置義務をきちんと負わせるということと,あと,中身については施行規則あるいは政省令で決めるということになると思うんですけれども。一応それを入れるということですね。
  会計監査人についてはいかがでしょうか。先ほど戸張委員のほうから御説明ありましたけれども,そういったことで,学校法人会計基準の見直しを含めて,これは,ただ,どういう形でやるかということも一応書いておかなければいけないと思いますので,やはり規制当局である文科省と関係者ということになると思うんですけれども,そこに設置した委員会で決めていく。それで,公なものにしていっていただければ,会計基準自体も公的なものとして整備されていくと思うんです。それに基づいて監査をしていくということになりますね。
  あと,先ほどあった内部統制の問題は当然あって,内部監査部門がないと,なかなか大きな大学法人の監査は大変だと思いますので。
  最初に私のほうで申し上げた,フルスペックということになりますと,大学法人を設置している学校法人については,内部統制の設置義務だとか,会計監査人の設置義務というのをやはり負っていただくということになると思うんですが,いかがでしょうか。
【久保利委員】
  大学についてはフルスペックだということで,私は,当然だし,よろしいというふうに思います。
  ただ,それ以外の例外として,もっと小さい規模のものについては簡素化,簡略化ということがあり得ないわけではないというふうに思っておりますけれども,ただ,やはり内部統制システムの何もないような学校法人が免税を受けたり,有利な取扱いを受けるということ自体はおかしいと思いますから,基本的には大学がフルスペック,そのフルスペックまでは要求しないけれども,しかし,必要なそういう制度設計はしっかり法律上に書くなり何なりして,それは守ってもらうという座長の提案,そういう骨子を19日に出すということも含めて,私は賛成いたします。
  それから,先ほど座長のおっしゃった基本構造の話ですけれども,これも教学の自治に踏み込もうなんていうことは私も全然考えていません。
  ただ,ある意味で言うと,経営がしっかりしないところで教学が本当にしっかりとできるのかというのは大変怪しい感じがいたしました。
  ちょうど今日の日経新聞に昭和女子大の板東眞理子先生がお書きになっています。要するに,今,大学教育が問題になっているのは,学業軽視で教学が空洞化したというところが問題でありまして,それはなぜ空洞化したかといえば,ガバナンスがしっかりしていなかったというのも大きな原因ではないか。そういう意味では,教員社会が保守的で閉鎖的だと言われる,そういう非常に古いときからの伝統的な考え方だけでやってきて,現代の状況にマッチしていない。本当にノブレス・オブリージュみたいなことを全く大学が,そういう教育をしてきていないではないかという批判をしておられます。
  私も全くそう思いますので,そういう意味で基本構造の中で教学の自治をぐちゃぐちゃにするなんていう,そんな大学改革はないわけであります。
  むしろ,立派にやってもらうためには車の両輪だから,ガバナンスはしっかりやってもらいますよ。そのときに,教学という名の下に,逆にガバナンスを揺るがすようなことは決して望ましいわけではない。
  こういうふうに考えますので,座長の御提案2つとも私は賛成します。
【戸張委員】
  先ほど内部統制は必ずなければという話もあったのですけれども,実態として,学校法人では,幼稚園もありまして,100人以下の生徒しかいなくて,本当に小さいところでやっている。
  それで,私たち監査人もほぼ全取引を見れたりとか,理事長と直に話したりとか,また,会計については別の会計事務所が見ているとか,内部統制と言えるところまではできていなくても,小さければ全部見られてしまうというところもあるので,やはり知事所轄でも一定の規模以上のところに限定するとかという手当ては必要かという感じはいたします。
【増田座長】
  だから,そういう意味では,内部統制というのはそういうものですよね。1人で経営していれば,執行も牽制も全部一人できるわけですから。そういうかたちもあってもいいし,その場合はちゃんと外部からチェックを受けることになりますよね。
  そのかたちもあるわけで,幼稚園なんかの場合はそういうタイプと思うので,一応基本的な考え方は同じだと思うんです。
【西村委員】
  今,お話しのように,規模に応じてというところはその義務づけのところで少し考慮をした記載になるというので,全体としては,基本的には内部統制の整備義務化ということで,私も賛成です。
  その上で,現在そういう形が整っていても,監査の実効性が必ずしも担保されていない状況もあります。そこにまず何を追加するかについても記載できるようにしたほうがよいと思います。
【増田座長】
  現状,まだ内部統制はそんなに整える義務はないから,整備・運用はしていませんよね。大学法人のお話ですか。
【西村委員】
  はい。大学法人で整っているところであっても,やはり不祥事が防ぐのが難しい。ガバナンスの中で対応できているところばかりではないわけです。
  そういう点も考えて,一歩進んだ提案も検討の目的に入っていたと思いますので、一歩進んだ提案ができないかと思います。
【八田委員】
  西村委員がおっしゃるのは私も基本的に同感です。
  どういうことかと申し上げると,内部統制は万能ではありません。当然,整備・運用していったとしても,組織の中にやはり異分子というのがいる可能性があるんです。そこまで全部網をかけることはできない。
  ただ,やはり内部統制というものは頓服と違って漢方薬のようなものであり,ある意味で組織を健康体の体質にして強くしますから。これは例えですけれども。
  やはり早め早めに問題点を摘出,抽出し,そして,抑止力をかけることができる。
  ただ,やはり実際には,見本となるような内部統制体制整備と運用をされていたのではないかというところであっても不祥事は起きる。
  そのときに,私は,監事がほとんど役割を担っていないという個人的な評価をしています。
  したがって,ここに内部統制の議論が入るということは,旧来よりも増して,監事に対する役割期待,そして,責任の大きさというのが求められてくると思います。
  従来のように,ただ,お飾りというような言葉はおかしいですけれども,何となく非常勤で2人ぐらいいて,監査っぽいことをやったよねというのではなくて,実質的な意味合いを持った監査をしなければいけないので,やはり監事になられる方,あるいは,監事になっておられる方の意識改革をちゃんとしてもらわないと無理だと思います。
【増田座長】
  連携をきっちりやるということと,監事自身の責任感といいますか,内部統制システムの監査といういう役割,そういったことをきちんとやっていただくということが大事なのではないか。
  不正等の防止は内部統制だけでは完全にはできないわけです。だから,監事だとか,会計監査人だとか,あるいは,理事会だとか,やはりその辺と連携してやっていくわけですよね。それが求められているのではないかと思うんです。監事は監事さんの役割をきちんとやらなければいけない。
  だから,そういう意味では,監事さんも大変ですよね。責任が重いし。
【酒井委員】
  私も皆さんと同じで,確かに全部その内部統制でうまくチェックができればいいんですけれども,例えば統制環境等になると,非常にチェックが難しくて,例えば,つい最近大きな不祥事が起きた三菱電機の関係なんかで,私は,会計監査人にも監査で何か止められたんですかと言ったら,いや,無理ですという感じなんです。
  ですから,内部統制って万能ではないんですが,まずシステムとして内部統制整備義務を課して,そこに監事,会計監査人から監事を入れるという形をつくって,牽制していくというところから入っていって,それで,中身をさらに詰めていくのは,もちろん理事たちの意識と,やはり監事の力が結構大きいんだと思います。
  実際に内部統制報告書というのは出ますけれども,これは非常に形式的なもので,監査証明を監査人から出してもらうんですけれども,これも比較的あっさりしたもので,やはり会計監査人はどうしても会計のほうに注力するという面もありますので。
  ただ,やはり形をつくるということだけでも大きな1本になるのではないかと思います。
【増田座長】
  今のお話なんですけれども,金融商品取引法の会計監査人の監査の場合は,内部統制も財務に関わる内部統制システムの監査ということなんです。だから,そういう意味では,ちょっとはずれている部分,カバーしていない部分もあることはあるんだけれども,おっしゃるとおり,万全ではないと思います。
【石井委員】
  大きな方向性としては同じなんですけれども,その監事の機能を本当に有効活用するためには,どうしてもやはり内部統制をきちんとしていくというところが重要で,どうしてもその中の情報を非常勤の監事がどうやって取っていくかという意味では,内部監査室が実質的に機能していって,問題をきちんと,詳細を把握させてもらうということがないと,なかなかやはり実際の機能を果たすことが難しいんだろうというふうに感じているんです。
  なので,本当に内部統制についてきちんと定めていただいて,最低限その監事ができる状態をつくってもらう。それを理事会なり理事の責任にしてもらうというのは,やはりガバナンスを進める上では絶対に必要なことだというふうに思っているので,ここはぜひやっていただきたいというふうに思っています。
  あと,会計監査人についても,やはり関連者取引の部分をきちんと注記なり厳格化することによって,結構な数の不正が防げるのではないかというふうにも感じているところで,個々の取引をきちんとチェックしていただくというのは,やはり会計士の先生方のお力を借りていくというのが多分一番効率的で,見落としもないということかというふうに思っているので,この今日,議題になっている2点というのは,本当のガバナンスをぎゅっと効率的に,効果的にしていくためには重要なところだと思っているので,ここの部分を,今まで整備されているところももちろんあるけれども,多分基準があまり明確でなかった分,かなりまちまちで,できているところとできてないところと,あと,人が替わるとうまくは機能しなくなったりみたいなところが物すごくあったと思うので,ここの部分を詰めていただくというのが今回の重要な点かというふうに感じています。
【久保利委員】
  要するに内部統制というのは,これを構築する義務だけではなくて,実施する,継続的に運営する,そして,よりよくどんどん改革をするという義務が実は会社法的に考えてみると,これは野村先生の領分かもしれませんけれども,これはやはりそういうことが期待されている。
  単に制度的につくればいい,機関的につくればいいという問題ではないんだということをぜひ理解した上で立法したい。
  もう1つは,三様監査と言われますけれども,結局会計監査人と監事と内部統制システム,この三者がそれぞれ同じ監査という言葉を使っても,若干意味合いが違ってくる。それは,違ってくるところにもまた意味があって,単なる屋上屋の話ではない。
  そうなってくると,監事さんの独立性,胆力のある監事がびしっと言う。内部統制では,実は,怪しいな,おかしいなと思ってもなかなかトップに言い切れないというところを,監事がしっかりと言っていただく。さらにそれを独立した会計監査人がしっかりと見る。こういうそれぞれみんな色合いの違った人たちが重畳的に見ることによって,より強い重層的な監査ができる。これを期待しているということなので,私はぜひその辺りを十分配慮した,三菱電機にならないような監査システム,内部統制をつくりたい。そういう条文にしたいというふうに思います。
【岡田委員】
  一言だけよろしいですか。監査役協会に関係していたので。
  今,久保利先生がおっしゃったことは一番大事ですが,一番難しいのです。監事あるいは監査役が矜持を持って言うべきことをちゃんと言えるか。ほとんどの場合はこれが言えていないところが不祥事の元なんです。分かっていたかもしれないが言えなかった。
  それをどうやって補強していくか、が課題だと思います。規定があればできるものばかりではないので,,監査役協会でつくったほうがいいかもしれないんですが,監事の使命は大変重いんだという監事の心得のようなものを,つくらないと駄目かと。
  会社の監査役は,会社法上の責任負うので,監査役協会に入ってたくさん勉強しますが,半分ぐらいの人はほとんど素人なんです。初めて勉強する人が多い。
  でも,監事の方はもっと素人ではないかと思うし,ましてや意識もないのかもしれない。
  皆さんには適用されないかもしれませんが,中にはそういう方もいらっしゃると思うので,ここを何らかの形で補強していく必要性があると思いました。

<議題2 情報開示について>
・事務局、岡田委員及び戸張委員から配布資料について説明。

【増田座長】
  次に,議題2に移ります。
  情報開示について。まず,参考資料2に基づきまして,事務局から説明をお願いします。
【相原補佐】
  では,参考資料2をお願いいたします。
  こちらには,学校法人の情報開示の実情ということで,私立学校法あるいはそれ以外の関係の法令等に基づく取組の状況をここで概観しております。
  まず,1つ目が,私学法に基づいて,大臣所轄学校法人に義務で課されておりますのが,インターネットによる寄附行為,監査報告書,それから,計算書類等の公表という仕組みでございます。
  このうち貸借対照表,収支計算書等の計算書類の部分は学校法人会計基準,文部省令による様式の定めがありますが,事業報告書につきましては,現在は通知によって作成例という形で提示しているという状況でございます。
  この点,本日,冒頭,資料の御紹介いたしました,追加の配付資料ということで,公認会計士協会における平成21年に出ております事業報告書記載例といった,そういう取組,工夫というのもあるということでございました。
  次の2つ目が,それぞれの事務所における備付け・閲覧ということでの義務でございます。この対象は寄附行為,それから,財産目録等の計算書類ということになっております。なお,米印にありますように,都道府県の所管の法人については,この閲覧の請求権は利害関係人に限られているというような制度となっております。
  次に,3つ目でございますが,所轄庁に対して補助金交付を受けている場合は,私立学校振興助成法に基づいて,貸借対照表,収支計算書,それから,計算書類以外に収支予算書というのもつけて届け出るというような仕組みというのがございます。
  また,4つ目ですが,私立学校振興共済事業団におきまして,『今日の私学財政』という冊子が毎年度刊行されておりまして,そこで全国集計値の動向として貸借対照表,収支計算書の状況が公表されているということです。
  また,経営の面以外の部分も含んでということになりますが,その他の情報公表の仕組みということで,1つは,それぞれの大学における教育研究活動の状況についての公表ということで,その中には経営に関する部分として,在学生数とか,あるいは,入学金・授業料といった徴収費用といった部分もこの開示科目ということになっております。
  もう1つは,大学ポートレートという事業がございまして,大学改革支援・学位授与機構と私立学校振興共済事業団の協力で,これは全体としては国公私立通じての共通的な教育情報の公表の仕組みということで,ホームページから全ての日本の認可されている大学の一定の情報というものにアクセスすることができるようになっている。このような情報の開示の状況があるということで御紹介いたしました。
【増田座長】
  次いで,それでは,資料3について,岡田委員のほうから御説明いただきまして,今ほど事務局のほうからお話のあった会計士協会のほうのつくってあるというものについて,戸張委員から続いてやっていただきたいと思います。
【岡田委員】
  資料3でまとめていますが、事業報告について,私は企業におりましたので,会社法をベースとする事業報告はどういう規定に基づいて作られているのか,どんなものが作られているのかを整理し,では,学校法人についてはどうなんだろうかという考え方でこの資料を作りました。
  今日いただいた資料は大変立派な記載例がありますので,私の作業は無駄だったかもしれないですが,それについては後ほど触れたいと思います。
  資料3の最初のほうです。事業報告というのは会社法で規定されている。これは計算書類,それから,事業報告,それらの附属明細を作りなさいというのが会社法では簡単に書いてありますが,それについての細則が会社法施行規則にずらずらと書いてあるわけです。
  全体をカバーするものに加え社外役員がいる場合はどうだ,会計参与を設置している場合はどうかとか,会計監査人を設置している場合はどうかというのが,また個別の条文でカバーされて,公開会社は公開会社の特則が別にある。
  このたてつけで全ての会社,これは公開会社に限らず全ての会社が事業報告を作らなければいけない。こういう規則になっています
  ですから,学校法人についても全て作るべきですし,作らなければいけないと思います。ただ,どれだけ詳細に書くかについてはそれぞれ違うかもしれません。
  ここに2として上場会社の事業報告例を記載しており,A社というのは私の出身会社の三井物産で,B社というのはソニーですが、簡単に整理した内容をそれぞれざっと御覧になっていただくと,同じようなたてつけで書いています。
  でも,事業報告は規則で開示しなければならないものは決まっており、,そのほかの書きぶりはほぼ自由ということなので,これを比較していただきますと,順番などは,それぞれの会社の特徴が出ていると思います。
  例えばA社,三井物産の例で言うと,経営環境,それから,経営成績,財務状態等について。これは計算書類も出していますがバランスシート、PL、キャッシュフロー計算書では増減は何だとか,傾向値はどうだとかという説明は何もないので,事業報告で書いています。
  あるいは中期経営計画の進捗状況,設備だとか,資金調達の有無。それから,対処すべき課題。この辺はどの会社も当たり前のように書いていますが,そのさらに下のほうへ行っていただくと,これは事業報告でどう書けとかいうことはあまりないんですけれども,コーポレートガバナンス体制というのは必ずどこの会社も入れています。
  例えば三井物産の例で言うと,取締役会の構成とか,あるいは,指名,報酬,ガバナンス委員会というのがあります。これは任意の委員会なんですけれども,その役割期待とか,どんな議論をしている,メンバーはどういうものかとかなり詳しく書いてあります。それに加えて,会計監査人の状況。
  それから,そこの最後になりますが,業務の適正を確保するために必要な体制及び当該体制の運用状況。これで,我が社では行動規範を持っています、コンプライアンス委員会をつくってどんな活動しています、あるいは,懲戒に対してはどういう考え方で処分しています。そういうことを事細かに書いています。
  B社についてもほぼ同じような書きぶりであります。
  3ページ目に行っていただきまして,ポイントとしては,この事業報告というのは財務情報に加えまして,非財務情報で会社の状況をステークホルダーに開示するもの。これが会社の状況を開示する株主総会に出る招集通知と一緒に出るということですね。企業はかなりここに力を入れてアピールするところ,これをやりますが,アピールだけしているのではなくて,自分の持っている課題についても株主にやはり正直に書いている。こういう開示をしています。
  ポイントとして下に書いています。繰り返しになるところもありますが,経営成績や事業環境,増減分析などで分かりやすく説明する。あるいは,中期経営計画など中長期の見通しを,あるいは,進捗成果を書いている。それから,今,どこに注力しているか。注力分野について強調する。最近ではサステナビリティーとかESGなどのトピックとなっている項目へどう対応しているかを説明する。資金調達,設備投資,それから,対処すべき課題は何か。業績予算は何だ。事業拠点とか使用人の状況,主な借入金,役員の状況。
  ここで,また最後にコーポレートガバナンスの状況。コーポレートガバナンス,委員会というのは指名,報酬,監査委員会等の委員会の役割期待とか機能,メンバーなどです。
  内部統制のまさに整備・運用状況をここで説明するということになっています。
  最後にですけれども,学校法人の事業報告書における開示事項はどうなんだろうか。これは,会社と同じように非財務情報を開示するわけですが,これは開示というよりは,監査をどうするかというところです。これは,ここに監査役と私は書いてしまったんですが、これは監事です。監事と会計監査人が非財務情報を見るべきなのか,あるいは,どうやって見るのかが課題ではないか。
  それから,役員の選任基準とか,選任手続,活動状況,報酬,開示する必要があるのかないのか。あるいは理事会の開催状況もあります。
  それから,監事の選任基準。役員とか監事の選任基準は会社法ではここまでは求められていませんけれども,では,どう考えるか。
  それから,会計監査人の状況。評議員の構成の考え方。これも選任基準,選任手続。あるいは評議員会の開催状況です。
  ガバナンスの状況,それと,子法人の状況。
  こういうものが,今までは開示されてないものを追加で開示を求めていくべきかどうか。これが1つの私の提案で,開示を求めていくべきではないかと思います。
  先ほど拝見した学校法人による事業報告書の記載例というのは,ほとんどの部分をカバーしていると思うんですが,ざっと見たところ,やはりコーポレートガバナンスとか,ガバナンス体制,内部統制についての記載というのはないような気がしますので,ここをやはり求めていくことが今後の課題なのかというふうに思いました。
  以上です。
【戸張委員】
  今,岡田委員がおっしゃったように,ガバナンスの観点からこの事業報告書の案があるわけではありません。ですから,そこはちょっと足りないと思っています。
  そもそも平成16年に私学部長通知で,ひな形まではいかないのですが,項目で法人の概要,事業の概要,財務の概要,これらを書いたらどうかという提示がまず,文部科学省からありまして,例示として,学校の学部だとか,学科であるとか,定員であるとか,あと,当年度の事業の概要とか,目的とか,進捗状況とかという細かいものが書いてなかったものですから,日本公認会計士協会からは,これはあくまでも研究報告として,参考にしてくださいということで平成21年につくったもので,最終改正は平成28年に行われております。
  この中には相当細かいところを記載した記載例1と,それから,簡便な幼稚園のみを設置する学校でも参考にしていただけるような記載例2という2つあります。
  私も今日,ここに来る前に,何人かの公認会計士の仲間に,大学ではどういう形になっているのかと聞きましたら,ある学校では,この会計士協会の記載例1,これをたたき台にして,さらにもっと詳しく書いている大学もあるし,また,そうではない大学もある。
  ただ,ほとんど大学はこちらの記載例1のほうを参考につくっているケースが多いのではないかということでした。
  それから,知事所轄のほうは,たしか埼玉県だったと思うのですが,幼稚園のみのほうにやはり簡便な,これはひな形みたいなものをつくって,それで,これでつくりなさいという提示をしている。
  ほかの県では,私が聞いたところでは,とにかく幼稚園とかは,どのような行事をやったか,それをちゃんと事業報告に載せておきなさいとか,いろいろな指導の仕方が各所轄庁によってあるというようなことが現状でありますので,確かに対処すべき課題であるとか,アクションプランであるとか,あと,ガバナンスに関するところ,子法人の状況であるとか,そういったところがやはり足りないという部分もあるし,ここは逆に,必要がないのかというところもあれば,その辺の最低限,フルスペックの大学であれば,このぐらいは書いてくださいという項目を,今後,たたき台として検討していただければいいのかと思います。
【増田座長】
  そういうことで,大学設置法人ですと,やはり上場会社並みの事業報告の内容を開示してもらうというのが必要なのかと思いますけれども,どんなものでしょうか。
  あと,開示するに際して,ホームページではなくて,上場会社の場合は,やはり取引所だったらTDネットがありますし,あと,財務局なりに届け出られた有価証券報告書は,金融庁の電子開示システム、EDINETで閲覧できるようになっています。
  だから,そういう意味では,一覧性があるところがあるので,その辺のところはどうするか,どこで開示してもらうか。この辺をこの後議論いただいたらいいかと思うんだけれども,アイデアがあれば,おっしゃっていただくとありがたいと思います。
【松本委員】
  大学ポートレートのことについて,それから,事業所の事務所での備付けのことについて質問を2点させてください。
  大学ポートレートは,発足のときに,開設のときに,たしか私立大学は任意での参加だったと記憶しているんですが,今はどのくらいの大学が参加しているんでしょうか。
  当時問題になった退学率が掲載されているという記憶がまだないんですが,その辺りはどうなっているのかということが1点と,それから,もう1点は,情報開示,各法人事務所での備付けは,大学ではインターネットでも開示していますが,その附属の学校,高校や中学については,同じように学校法人としてインターネットに掲載しているのがどのぐらいのパーセンテージがあるのか,この点も教えていただけますでしょうか。
【相原補佐】
  大学ポートレートは,多分法令上の義務がかかっているというものではございませんので,その点の担保というのはないということで。
  それと,もう1つは,掲載についてもやはり項目自体も,共通のものは共通ではあるわけですけれども,基本的に任意であるとともに,さらにその項目内の書き方というのも大学さんによって,お考え,あるいは,アピールしたいところとか,違いがあって,全く同じものを同じように書いているというものでも必ずしもないという点でございました。
  おっしゃったような部分での,統計的に今,どうかという部分は持ち合わせていないんですが,仕組みとしてはそういうものだというふうに御理解いただければと思います。
  それから,インターネットでどれぐらいかという部分は,都道府県のお話ですよね。
【松本委員】
  大学が附属の中学・高校を持っているケースがありますね。大学の部分はインターネットに載っているけれども,中学・高校については見当たらないので,これは一体どうなっているのかということ教えていただきたい。
【戸張委員】
  恐らく合計しか出していないので,大学から附属幼稚園から中学校・高校まで全部合わせた合計が載っている。だから,附属が載っていない,大学だけが載っているのではなくて,恐らく学校法人としての合計が載っているというのがほとんどではないかと私は理解していますけれども。
【相原補佐】
  会計の計算書類としては法人単位で作りますので,幼稚園から大学まで複数に学校があった場合にも,その法人全体の情報としての書類というのは1本なんです。
  その意味では,大学のみとか幼稚園のみという数字がそこに直接現れるわけでは必ずしもありません。
  それは,法人会計基準上は,学校部門別,病院とか幼稚園とかの別に分けたセグメントに近いものになりますけれども,内訳表という,また明細のようなものがあるんですが,これは,いわゆるここで言う収支計算書とかに関しては内訳表が存在はするんですが,それ自体が法人の正式の計算書類ではないんです。
  そこを,では,どこまで法人の書類という中で,セグメントまでがしっかり分かるものが開示されるべきかというのは,また,1つ別の議論として存在するという理解だと思います。
【増田座長】
  これは,附属病院なんかもどうなんでしょう。一緒になってしまっているとすると,分からない。
  そういう意味では,これはやはりセグメントを考えていくとか,会計上,別紙を作るとか,内訳表を作るとかという,全部ではなくて,主要なものについてはある程度求めるということも必要なのかと思いますけれども。
  もちろん今の開示の内容を,計算書類もそうだし,それから,先ほど来議論のあった事業報告書にどこまでこれを求めるか。
  少なくともある程度のところはやはり法定して,ここは大学法人としては開示をすべきだというのは決める必要があると思うんです。詳細はやはり施行規則で落としてもいいと思うんですけれども。
【戸張委員】
  一元管理の公表の方法につきましては,上場会社がしているEDINETというのがありますので,それを参考にする。
  社会福祉法人も同様にWAMNETというのがありまして,それぞれ社会福祉法人の計算書類等が公表されておりますので,これは予算もかかることだとは思いますけれども,そういったものを検討するということが必要かと思います。
【酒井委員】
  私も御提案にはほとんど賛成なんですが,若干非財務情報という点については,確かに会社は今,これが非常に重要とされていますが,これは恐らく企業のリスクの問題で,今,やはり非財務情報として注力しているのは気候変動リスクとか人権リスクとか,あるいは地政学的な米中対立とか,今,企業が非財務情報と言っているものは学校法人でどの程度,具体的にどんなことがあるのかというのがあまり想定されないんですが,そこはどんな感じなんでしょうか。
【岡田委員】
  確かに企業と大分違いますけれども,例えば先ほどの,もしガバナンスの状況を記述していた場合,これは実際にどういう裏づけがあるのか,その運用の仕方でいいのかというのを見るか見ないかというところなんですけれども。そんなぐらいしかないかと思います。
【増田座長】
  私もそう思いますが,ガバナンス状況の開示は今度の改革の中で非常に重要だと思うんです。開示で牽制が効くような仕組みになるわけだから,それがありきたりのものではやはり駄目なので,きちんと機能するような仕組みにしなければいけないので,その辺をやはり記載してもらうというのが大事なのかと思います。
  あと,先ほどあった開示をどういうふうな形でやるか。これは,文科省といろいろ相談してやっていく必要があると思いますけれども,仕組みとしては,電子的開示が今できるわけだから,参考にしてもらえばできるのではないかと思いますので,御検討いただきたいと思います。
【岡田委員】
  先ほど会計監査人を設けるかどうかは法人の規模によるというお話がありましたが、小規模法人ではどうするのか。
  では,会計監査しない。しても,誰も見なくなるのか。監事は見るかもしれないです。
  そういう意味では,ここにガバナンスの状況というのを事業報告に求めるというのは,ガバナンスと言われてしまうと,幼稚園などは困ってしまうと思いますが,最低限の内部牽制とか,そういうものはありますよとか,まず,それを彼らに考えるチャンスをというか,考えさせる機会になると思うんです。それをやらないと,何にも考えずにどんどん進んでしまう。
  いや,うちは現金を扱っている人と帳簿をつける人はみんな1人でやっている。それは仕方がないよね。そうであればその人をよく見なきゃいけないよねというのが最低限の内部統制というか,そういうところから始まるようなガバナンスというんですか,それは何かレビューさせるようなシステムに持っていかないと。
  上場会社の場合は,そんなことは言わなくてもちゃんとやりますけれども,これだけ幅の広い学校法人があることから,そこでの手当ては,ガバナンスは書かなくていいよではなくて,むしろそれぞれのレベルによって違うけれども,ここは考えてねというところが必要な気がしました。
【八田委員】
  岡田議員がおっしゃったことと私は全く同じで,内部統制の議論というのは,1人で全てやっている場合にはこの議論がないと言われているんです。
  でも,業務において組織化されて2人以上に業務が分かれたときに内部統制の議論が始まるというんです。全部見られるわけではないから。
  そうすると,やはり最低でも内部牽制というのは,明確に組織として位置づけるかどうかは別として,意識はちゃんとないと,それは抑止力が働かないし,ステークホルダーといいますか,幼稚園であっても,幼稚園の園児さんとか父兄の方,そういった人たちから浄財を集めて運営しているわけです。
  先般園長先生か何かかが運転手 をやって,そして,その間,半日園児を閉じ込めてしまって,死亡に至ってしまった。大変な不幸な事件がありましたよね。あれは全部自分で1人でやっているわけです。本当はちゃんとどこかで,節目節目で必ずチェックが働かなければいけないけれども。
  したがって,やはり報告書として,原則にのっとったような重装備の内部統制は必要ないですが,そういうリスクはあるということさえ理解できていない人がいますので。
  先ほど戸張委員がおっしゃったように,会計監査人が全部見ていますよ。それは見てもいいんですけれども,やはりまず主人公である彼ら,彼女たちにちゃんとそういう意識を持っていただいて,でも,分業するほどに経済効率も高くないから,あるいは,コストもかかるから,当然それは1人でやっているけれども,でも。その場合,リスクが高いから,会計監査人はちゃんと見てくださいねという作業になるわけですから,その辺は明確にしないとまずいと思います。
【戸張委員】
  私も説明したように,私学振興助成法に基づく会計監査は,これは公認会計士の監査が入っていますので,9割の学校法人には公認会計士が会計の部分は入っていますから,そこは問題ないと思うのですけれども,会計基準を変えれば,ガバナンスに関しても,それは私学助成法の監査であろうが,私学法の監査であろうが,きちんと見るようになると思います。
  八田先生もおっしゃったように,あと私が思うのは,やはり監事さんなのです。結局,100人しか園児がいないような幼稚園にも,ちゃんとお二人の監事さんがいるのですが,私学法の中で求められているような監査を本当にやっているのかと言われると,ちょっとそこは首をかしげざるを得ないような状況は確かにあります。それはあると思います。やはり今までそこまで求められてなかったのです。
  ですから,今後,その中で監事さんというのは私学法の中に入っている役員ですから,ここはきちんとやるのだということを,これは幼稚園から大学まで必要なのだということを徹底すれば,相当そこの問題はクリアされるのではないかと思います。

<議題3 学校法人のガバナンスについて>
・松本委員及び八田委員から配布資料について説明。

【増田座長】
  続いて,これまでの議論のまとめを資料4としてお示ししておりますので,作成いただきました八田委員,松本委員からそれぞれ御説明をお願いいたします。
【松本委員】
  これまでの論点で何が合意できているか,課題として残されているのは何かを整理したのが,この資料4です。
  まず,2ページを御覧ください。
  冒頭,座長コメントにもありました教学の問題,教学と,それから,評議員との関係,こういったことについて要確認ということで,真ん中の列に「評議員は,理事を選任する際に教員の意見を聞く。こうしたシステムを確立することができるのかどうか。それは法律か,それ以外かなどの議論をお願いいたします。
  これは5ページにも全く同じ内容を記載してございます。
  次,4ページを御覧いただけますか。1ページ飛びまして,4ページです。
  これは大変申し訳ないんですが,訂正の御案内です。一番下の段,理事の適格基準の合意事項について,お詫びと訂正です。
  一番下の右側の列で,「公益認定法人法」とありますのは,「公益法人認定法」の誤りです。お手元で修正をお願いできますでしょうか。申し訳ございません。
  続いて,6ページ,7ページ,8ページの上段まで。この監事,それから,会計監査,会計監査人,内部監査システムについては,先ほど来,八田委員,戸張委員,岡田委員から御説明いただいたとおりの内容を収めております。
  最後,8ページの寄附行為以降について説明をさせてください。
  この寄附行為について,これまでの議論の中で寄附行為を定款に変更したらどうかという御提案か何度かありました。
  確かにこの言葉は根本規則及びそれを表した書面というものをイメージしにくいという指摘があり,既に一般社団法人,財団法人では,定款で統一されています。
  この点を踏まえて,私学法ではどうするのか。これについての御議論をお願いします。
  最後の情報開示です。
  先ほど,相原課長補佐の御説明にもありましたように,これまでも様々な情報開示の制度はありました。ただ,基本的には,財務情報が紙ベースであること,それから,事務所の備付けなどの問題があって,必ずしも多くの方々が見ることができる状態とは言い切れない。これが現状です。
  さらにフォーマットが統一されていないこと,任意性であることなどから,比較可能であるかというと,そうとも言い切れないという問題もございます。
  前回,配付された資料,学校法人のガバナンスに関するアンケート集計結果によりますと,事務所備付け以外には特段行ってないという学校法人が,都道府県知事所轄法人の6割を占めているという現実もあります。
  そこで,より信頼される学校法人にするために,先ほど来皆様のお話にもありましたように,財務情報のプラットフォームを構築し,共通のフォーマットに記載して多くの方々に見てもらうことを盛り込んでございます。
  この会議の目的は,そもそも税制優遇を受ける学校法人にふさわしい体制の構築です。評議員会,監事,内部統制システム等に加え,社会全体で学校法人を見守り,応援する体制の構築が必要ではないかと考えております。
  先ほど西村委員からのコメントにもありました,一歩進んだ提案をできないか。これについて,こういった統一されたサイト,一覧,一元管理の情報開示システムをこの会議体から発信することはできないだろうかということをここに盛り込んでございます。
【八田委員】
  内容ではありませんが,先ほど寄附行為という文言を,これは既に財団法人等でも定款というふうに変わっております。
  私もちょっと調べてもらったところ,寄附行為というのは,英語ではendowment actないしはcontribution actだ。
  つまり,もともと篤志家がお金を出して寄附をして,それをその篤志家の意図に従って教育貢献のために使ってもらいたいという,私流に言うならば,これは性善説にのっとった基金規定なんです。その時に,actという用語を行為と多分間違って訳してしまったと思うんです。これは誤訳ですから。この際,しっかり換えていただいて,定款という基本的な条項に換える。
  前回の有識者会議のときにも,何人かの学校行政にはあまりたけていない方たちがこの寄附行為というものを初めて見るとびっくりするわけです。何か分からない。逆に,学校行政とか,それに精通した方は,これは歴史的な背景があって大事なんだと。そういう守旧派的な議論はもうやめにして,新しい時代にのっとった考えを受け入れることで誰もが分かるようにしていただきたい。したがって、まずはその文言から,正しく意味をくみ取ってこれを定款にしていただきたいということを私は個人的に希望します。
  それから,情報開示。今の情報化社会においてこれは大変重要であります。ネットを使った情報開示,適時適切な開示,そのためにはやはり統一的なプラットフォームをつくって,そして,最低限の開示項目を決めて行う。
  例えば上場会社では東証のTDnetなんていうのがあって,瞬時のうちにそれを誰もが見られるという状況がありますので,やはり今の時代は,トランスペアレント,透明性を持った説明責任,アカウンタビリティーを履行することが何にも増して重要だと思いますので,この際,それも織り込んで,法律の中で議論していただきたいと思います。
【酒井委員】
  それで,私の1つの質問は,大きな質問というか,昨日の岸田総理の記者会見でも出ていたんですが,今回,新しい資本主義実現会議の緊急提言というのが出ていまして,そこで実は学校の話が出て,10兆円規模の大学ファンドを今年度内に実現する。世界と伍する研究大学に求められるガバナンス改革や外部資金確保の強化などの大学改革の実現に向けて,来年に通常国会に法案を提出するということが書かれているんですが,文科省の方に伺いたいんですが,これって,我々が議論している内容もそこのラインに入っているという話なんでしょうか。
【相原補佐】
  今,酒井委員の御指摘いただいた,世界と伍する大学の御議論,これは内閣府で先般来,検討が先んじて行われてきておりまして,現在も文部科学省の研究開発,研究振興局を中心に大学の中でも国立,公立,私立共通で,そして,いわゆるトップの大学というところに対しての研究の体制というのはしっかり整っている,そして,その大学がさらに様々な資金あるいは支援というのを得ながら,継続的に成長していく,そういう世界を引っ張っていく大学というのを目指していくという議論がある中で,特にそのガバナンスという面でも1つの側面として御議論が出ているということでございまして,私どもの議論が総理のおっしゃった議論そのものということではなくて,一部は構成しているわけですけれども,10兆円ファンドのほうというのは,まさにそのトップ大学を対象とした議論ということで,御議論は少し対象がずれてくることになってまいります。
【酒井委員】
  もしこういうラインの話ですと,例えば理事に経営者を入れるとか,社外,独立の経営者を理事に入れるとか,そういう議論がまた出てくるとは思うんですが。ちょっとそこが気になったものですから。
  今,一つ一つ御説明した中で,2つばかりコメントさせていただきますと,2ページの要確認事項の「評議員は,理事を選任する際に教員の意見を聞く」ということにするのか,法律事項とするのかという話については,これは野村委員も前からおっしゃっていて,教員というのは,むしろ理事の部下なんだから,教員を評議員に入れることはまかりならんということをおっしゃっていたと思うんですが,その理屈というのは同じことではないかというふうに思います。
  それで,恐らく各学校は,評議員が裸で理事を選任するということはできないところが多いので,そうすると,理事選考委員という独立委員をつくってくるところが多いのではないかという感じはしますけれども,それは,そこに教員が学校の判断で入ってくるということは,これを阻止する必要はないんですが,法律事項としてこれを聞かなければいけないということにすることについては,若干問題があるのかと思いました。
  それから,5ページの星印,「学長の選任について配慮が必要」ということなんですが,この学長の選任というのは各学校の自治にお任せすればよろしいという理解でいいのかどうか,皆さんもそうなんですが,その2点について若干御意見とかありましたら,聞いてみたいと思います。
【安西委員】
  先ほどの要確認「評議員は,理事を選任する際に教員の意見を聞く」。こう言われると,選任について聞かなければいけないように見えるのでありますけれども,私はメールで申し上げたのは,評議員会の議決事項について教員の意見を聞く機会を,それぞれの学校次第ですけれども,設けることができるというふうにしたほうがいいのではないかということであります。
  理由は,大学に多少限りますけれども,私立大学の定員割れが今,46%ぐらい,私大の46%は定員割れになっている状況で,評議員会あるいは理事会はやはり経営優先にしていくのが当然だと思います。
  そういう中で,一方で,大学の場合ですけれども,私大の学生というのは日本全国の大学生の約75%を占めておりまして,そこにおける教育の在り方というのは,逆に非常に大事になってまいります。
  そういう状況の中で,教学と,それから,経営のバランスをぜひ取っていただきたいということでありますので,何か法文として聞かなければいけないとか,そういう問題というよりは,各学校がしっかり,さっきもありましたけれども,やはり教学の充実を心がけていくのが私学の最も大切なことだと思いますので,そちらに向けて評議員会と理事会がきちんと走っていけるようにしていただきたいということでございます。
  往々にしてやはり評議員会は,教学の内容を御存じない方が評議員になることは,全国一般ですけれども,一般的に言って,そういうことになりがちなので,それで申し上げた次第であります。
【増田座長】
  先ほど私,最初に議論に先立ちましてそういったことを申し上げたんですけれども,今の安西委員の話は,法定化しろという話ではなくて,教職員等の意見を聞く機会を設けるというのは各学校のほうに任せるんだけれども,そういったことを報告書の中に書いたらどうかということでしょうか。そういう理解でよろしいでしょうか。
【安西委員】
  そうですね。やはり私は,私学というのは各学校がきちんと決めていくべきだと思うんです,基本的に,自分のスタンスというものは。
  そういう理念の下で申し上げているわけであります。
  本当にやはり教学を大事にするのであれば,教員の意見を聞くのは当然だと思いますけれども,そうではないというんだったら,そうじゃないんだということなので,全国こうしなければいけないということよりは,やはりこの会議体としてはリコメンデーションというんでしょうか,何でしょうか。こういうふうにしたほうがいいという,そういうことを付け加えていただいたほうがバランスが取れるという意味です。
【安西委員】
  どうしても法律論議というか,どうしても会社法とか,もちろん企業のガバナンスを参考にしていただくのはいいんですけれども,しつこくで申し訳ないんですけれども,やはり教学の充実ということが私学であっても大事だということはぜひ御理解いただきたいということであります。
【増田座長】
  それは皆さん分かっていると思います。ぜひそういう方向でまとめたいと思います。
【酒井委員】
  私も教員の意見を聞くことの重要性は全く同感ですので,ただ,法的事項とするのはどうかということだけですので,安西委員の言われたことには全く異論はありませんし,恐らくそれを,例えば今回の報告書に書き込むのか,あるいは,その後,多分議論されるであろう学校法人のガバナンスコードに盛り込むのか,これをまた議論すればいいのかという感じがします。
【増田座長】
  私,最初に提案したんですけれども,要するにそういったことをできるような,例えば各学校の希望,要望に応じて,今,寄附行為で言っていますけれども,定款の中に盛り込むというようなこともあるんだと思うんです。
  だから,そういう教職員の意見を聞くものを評議員会の諮問助言機関として設けるものとするとか。
  定款というのは,会社だったら法律と一緒になってしまうんだけれども,各学校においてつくれるわけだから。法律で言っているのではなくて,そういったことを例として報告書の中に事例として書いてみる。そういう考え方もあるのではないかということぐらいになりますけれども。
  ガバナンスコードでは変えられないと思いますので,そういったことを検討したらどうかと思って提案したところです。
【久保利委員】
  安西先生の御意見,酒井先生の御意見,なかなか微妙で,どう理解するかということによって意味が違ってくると僕は思うんです。
  多分安西先生のおっしゃっているとおり,聞いて悪いことはないじゃないか。聞くのはできるんですという御趣旨だと思います。
  ただ,それがもし法律なり何らかの条文の中に,聞くことができるというふうに書くとどうなるかというと,聞くことができるのに聞かないということによほどの合理的な説明ができないと,結局聞かなければいけないということになってしまうのではないか。
  したがって,聞いてはいけないと書くなら別ですけれども,そんなことは書かないわけですから。そうすると,聞きたかったら聞けばいいし,聞きたくなかったら聞かなければいい。大体,評議員会がどういうふうに判断するか分かりませんけれども,教学の点ですばらしい学校だということになっていれば,新規応募者もたくさんいるだろうし,多分いい人が評議員になりたいと言ってくるだろうし,ある意味で言うと,ガバナンス上問題がない学校かもしれないです。
  そうすると,ガバナンス上問題がある学校というのは,むしろそこでいい教学が行われていない,あるいは,社会的に評価されるような教育をしていないというところが問題になってくるのではないか。その教育をしてあまり評価されていないのをやっているのが現職の教員だということになってくると,方向性として,教員の意見を聞かないといけないとか,聞いたほうがいいんだとかというふうに行くのは果たして本当にガバナンスの在り方としていいんだろうか。
  評議員の人たちがみんないい学校にする,いい教育をするためには教員の話を聞かなければいけないと言うなら,それは聞けばいいわけですし。
  サクセッションプランと同じで,労働組合の意見を聞いてもいいですと言ったら,多分労働組合の意見をみんな聞かなければいけなくなってくると思うんです。
  だから,そういう点で,私はあまり深入りをしないというか,禁止をする必要もないが,推奨するようなことを言う必要もないという,なかなかなまくらな意見で申し訳ありませんけれども,それは,むしろ立法の謙抑的な発想ということで,あえてそこは言いませんけれども。御自身で考えて,いい学校に聞いたほうがなると思ったら,おやりになればいいし。
  それから,それを定款に書く必要があるのかどうかというと,今度は,定款というのはある意味では,評議員会を拘束するわけですから,そうすると,それに拘束されるのが本当はよくないというふうに僕は思うので,ある意味では,ここはレッセフェールで,そういう自信があるなら,どうぞお聞きになってもいいし,聞かなくてもいいし。
  それは評議員会の矜持としてお考えになって,いい学校をつくるためにどうしたらいいかというのをお考えいただくということぐらいで止めておいたほうが,酒井先生,何かよろしいんじゃないかと僕は思いました。
【酒井委員】
  私の理解,全く法律には書かないという理解ですし,安西委員もそういう理解ではないかと思います。
  逆に,定款で,評議員はこういう教員の意見も聞くんだということを規定することを法律で阻止することは,これは無理だと思います。一般社団財団法人も,いろいろな諮問機関を,たくさん委員会を持っていまして,その意見を聞くというようなものありますので,それを法律上できない仕組みにすること自体は無理だと思います。
【増田座長】
  私もそれは法律上書くのではなくて,そういう話も,こういうこともありますというぐらいの話かと思ったんですけれども。
  分かりました。一応そういうことで,それでは,また骨子としてまとめて出したいと思います。
  松本さん,この合意事項の中で要確認というのは,これについて皆さん異論があるかどうかということですね。
【松本委員】
  これを確認させてもらいたかったということです。細かいところはほかにもありますが,時間もあまりないので。例えば3ページ目,クーリングオフ期間とか,それから,評議員の任期,員数,こういったことも何となくふわっと終わってしまっているので,これはこのままでいいのかどうかも,こんなのでいいんじゃないのという形で終わっているところもあります。
  それから,5ページ目の。要確認が実はここには3つもありまして,理事の任期,これを私学法で明記するのかとか,それから,こちらの人数であるとか,理事長の選定・解職についてはどうするのか。これも実はまだきちんとした合意というところまで,書き込めることにはなってない。今までの議事録を読みながら,私はそう思っています。
【増田座長】
  これはこのまま法律に盛り込んでしまっていいのではないかと思うんだけれども。一応議論してここまで決まったように私は思っていたんですけれども,御異論のある方,おっしゃっていただきたいと思います。
  今まで,特に年数だとか,人数だとか,この辺についてあまり議論してもしょうがないという話で,これは2年とか5年でどうかとか,こういうように決まったように理解していましたけれども,いかがでしょうか。
  御異論なければ,一応確認させていただいたということで,合意されたということでよろしいでしょうか。
  ほかのところはどうでしょうか。まだほかにも,6ページにも要確認がありますね。
【松本委員】
  これは今日,初めて出てきたところですが,監事のところ。それから,会計監査人は先ほども御説明いただいているところなんですが。
【安西委員】
  5ページのところだったんですけれども,何だったかというと,5ページの右のほうの理事の選任の,「評議員は選任の際に教学の意向を確認する」というのがさっきと連動しているんですけれども,理事の選任の際に教学の意向を確認するというふうに私は意見を差し上げたわけではないので,それはこちらとしては確認させていただきたかった。
【松本委員】
  ごめんなさい。これは削除する。
【安西委員】
  削除ではなくて,私が申し上げたのは,評議員会というのは最高議決機関になるとしますよね。なるわけですけれども,その際に,評議員が教学のことを知らない方が多い学校法人が多いのではないかと思うので,その際に教員の意見を聞くことができるような,そういう場を,絶対つくれと申し上げているわけでもない。先ほど申し上げたように,学校法人次第だということを,この中ではなくていいんですけれども,どこかに触れておいていただきたいというふうに申し上げたつもりなんです。
  だから,座長が最初に言われた,私が申し上げたことのお答えというのがかなり当たっておられるのではないかという気がいたしました。
  この,論点まとめの,こういうふうに書かれると,非常に強く受け取られるので,ちょっとどうかというふうに思った次第です。選任の際にというふうに申し上げたわけではないので。
【増田座長】
  これはマストになっちゃいますね。
  ここは,これを書いてしまうと,それこそ,先ほど久保利委員の話とも合ってこなくなってくるわけだから。そうではないんですよね。
  だから,ここは,そういうことが各大学の事情に応じて考えてもらうということなんだと思うんです。意向を聞くというのは。それは,別に止めるものではない。止めるものではないけれども,基本的には独立した立場でやってもらわなければいけない。ということなので,そういうことができるということを報告書の中に書くということですか。
  これは法律の中に書くわけではないから。書けないですから。
【久保利委員】
  だから,逆に言うと,教員を入れるか入れないかは別にして,例えば評議員会が,自分たちは教学が必ずしも全部が分からないから,諮問委員会をつくりたいとか,何か特別にそういう選任委員会みたいな,指名委員会みたいなものをつくりたいとか,それは自由なんですよということが多分安西先生のおっしゃりたいことなのではないか。
  そういう不安があるならば,そういうチャンスというか,そういう機会をちゃんとつくるべきではないでしょうかという御提案だと私は思いましたので,そういうことであれば,それはもちろんやったらいいわけですし。
  その必要がないというふうに評議員がみんな,俺たちはそれなりに教学のことはちゃんと分かっているんだと言うなら,それはやらなくてもいいわけですから。
  やれとかやるなとかという話ではなくて,そういう制度設計も許されますというのをどこかに。
【増田座長】
  考えられるということですよね。そういうことを書く。報告書の中に。
【久保利委員】
  僕の今のあれもそうですけれども,今までの理事長一任みたいな感じで,誰をどうするかというのを決めちゃうのに対して指名に対する報酬に対する諮問委員会をつくりなさいというのが今の会社法の流れになっていますから,そういうものをつくることは僕も全然問題ないと思っていますので。
【増田座長】
  だから,そういう意味では,今のおっしゃった会社法上の指名委員会なんかも,やはり社内の人も入っているわけじゃないですか。やはり情報を取らないと,候補者が何人かいて,そこの中で選ぶという場合は,それはあります。
  だから,それを参考にしてもらうというのがやはり1つの考えだと思うんです。
  だから,そういう意味ですよね。別に法律に書くということではなくて。
【久保利委員】
  それは法律とか規則に書くという話とは違って,だから,ガバナンスコード辺りで,よりよいあれを選ぶためにはこういうことも考えられる。
【増田座長】
  それで,私は,座長提案で申し上げたのは,法律には書けないけれども,また書かないけれども,そういうことも考えられるということを付け加えて書いたらどうか。
  それは別にマストではもちろんないわけだから。ここのところはそういうふうな書き方がいいと思うんです。
【久保利委員】
  ちょっとそこは書いてみないと。
【増田座長】
  分からないけれども,今の安西委員と酒井委員のおっしゃるところは分かりましたので,できるだけその意を汲むような形で考えてみます。案として出しますので。久保利委員とよく相談して出せるようにしたいと思いますので,よろしくお願いします。
  ここのところは確かに微妙です。あまり書き過ぎてしまうと,ここに書いてしまうと,やはりマストになってしまうから。だから,ここはちょっと微妙なので,だけれども,かといって,やはり教学の自治は尊重しているんだということも我々としては言いたいわけなので,そこのところはやっていきたいと思います。
【安西委員】
  国立大学法人のほうは,教育研究評議会があって,助言機関を置かなければいけないことになっているわけなんです。
  私学で,今のこの会議の進行状況で言うと,それが全くないままにというふうに受け取られてしまう可能性がありまして,私学の側に。0か1というふうに受け取れられる可能性があるので,それはやはり学校法人次第だと座長のおっしゃるとおりで,そこはちゃんと多少言っていただかないと,現場が間違える可能性があるのではないかということであります。
【増田座長】
  先行の会社法なんかの実例もあるので,そういったことも参考として書くような書き方を考えてみます。
【西村委員】
  今の安西先生,酒井先生の意見に追加ついて,私も,評議員が内部の組織の情報をつかむ,把握することは学校法人に限らなくてもかなり難しいと思いますので,評議員機能の実効性を保つためには,諮問委員会等を置けるように,かなり明示的に書いたほうがいいのではないかと思います。
  記載しておかないとなかなか設置されない可能性もあり,理事会や理事長からの資料だけで判断するとことになりかねないと思います。その点をはもう少し明記をしてほしいということです。
【八田委員】
  理事と監事の任期について,まず,5ページで,任期は,これまでは寄附行為ですけども,一般法人法で2年以内。もしそれを踏襲するなら,私もそれはいいと思います。そうすると,マックス2年ですよね。
  それを踏まえて,監事のほうは任期は特に議論の対象に挙がってこないんですが,たまたま昨日ちょっと別件で調べたときに,会社法は,監査役は取締役のちょうど倍にしているんです。2年の任期の監査役設置会社の場合には4年,それから,先般始まった監査等委員会設置会社の場合の監査等委員は,監査等委員以外の取締役は1年なので2年というふうにしていますから,それに平仄を合わせるならば,2年以内。
  そして,理事の倍の年度。その大学法人が寄附行為で1年とするならば,2年でもいいし。2年にするなら4年というふうに,しっかり,はっきりさせたほうがよろしいと思いますので,意見として述べました。
【増田座長】
  それでは,2年と4年でどうですか。別に重任は妨げないわけですものね。だから,ちゃんと選任というプロセスが要るわけだけれども,それは任期を必ずつくるということですね。今の提案でよろしいでしょうか。はっきりさせるということですね。
  あと,松本さん,何か要確認はほかにもあったっけ。次のページもそうか。
【松本委員】
  6ページにまだたくさんあります。
【増田座長】
  ただ,これは事業報告の内容に関わってきますね。結局,業務監査といっても,どういう活動しているか。事業報告の全体が分からないと監査するほうもなかなか大変なんです。
  基本的にこういったことは全部認める,監査するということになるんですよね。
【岡田委員】
  先ほどお話ししたように,やはり事業報告も監査するのが原則ではないか。
【増田座長】
  原則ですよね。だって,そうしないと,どこまでの監査したか分からないですもんね。だから,当然事業の報告について監査します,業務の執行についても監査するということですから,そういうことになりますよね。
  だから,これは全部入っていいんじゃないですか。あと,個別にちょっと見ていく必要あるだろうけれども。
  あとは,この予防的なことがありましたね。不正行為を発見した場合には差止め請求みたいな話でしたか。
  これもたしか何か準用規定があったんですね。だから,これも全部このまま入れても問題ないですね。今,これはあるんだっけ。違いましたっけ。この発見した場合の差止め請求。
【相原補佐】
  不正行為,違法行為を発見した場合の報告義務というのは,現状の私学法にもあるんですが,ここでは松本委員が書かれているのは,その発動の要件の範囲が多分違っていて,現在の私学法は,こういう不正等のおそれがあると認めるときに義務が明示的にはかかっていない。ほかの法人では,そのおそれがあるときに義務がかかっているので,そこはずれを直してはどうかという提案ではないかと思いました。
【増田座長】
  これはいかがですか。僕は入れたほうがいいと思うんですけれども。やはり同じように。大学法人といえどもやはり社会的影響は大きいわけだから,いろいろな事件になる前に止めるというのはやむを得ないでしょう。
【久保利委員】
  よろしいんじゃないでしょうか。おそれがあると認めても報告もしないというのは,そのほうがおかしいと僕は思うので。
【増田座長】
  それは義務違反というか,役割を果たしていないことになってしまうので。
【久保利委員】
  要確認は,私はこのように,松本委員のように変えることに賛成でございます。
  あとは,まだほかにも要確認ってあるんですよね。
【増田座長】
  この兼職の禁止とか,この辺はもう。
【松本委員】
  ほかの法律に明記されているものをここに平仄を合わせるべきではないかということをここに盛り込みました。
【増田座長】
  あと,前回の有識者会議でも,ここはすべきだというのが書いてあるわけでしょう。
【酒井委員】
  私が,おそれのある場合ということについてなんですが,これも久保利委員のおっしゃるとおりで,実際に不正行為や違法行為そのものを見るということは案外なくて,おそれの段階が多いので,そこを何か報告義務を外してしまうと,かなりのものが抜けてしまうというふうに思っただけです。
【岡田委員】
  1点。監事で,常勤というのは,もちろん義務づけはできないのかもしれないですけれども,それもある程度規模以上とか,常勤監事がいたほうがいいのではないかとは思います。どういうたてつけにするかは分からないんですが,御意見を伺いたいと思います。
【八田委員】
  それもガバナンスコードで書くんじゃじゃないんですか。
【増田座長】
  常勤を置いていないところもありますよね,上場会社でも。
【岡田委員】
  置けないとかね。
【増田座長】
  だから,そういう意味では,置けないのか置かないのか知らないけれども,相当内部監査が充実しないと。
  今はいないですか。常勤は必ず1人はいますか。いや,いないときもあったんじゃないですか。
【八田委員】
  ええ,いないの多いですよ。
【増田座長】
  常勤いない上場会社ありますよね。
【八田委員】
  上場会社ですか。
  上場会社,監査役の場合は常勤がいないと。
【岡田委員】
  それはあり得ないじゃないですか。
【増田座長】
  監査役は。
【八田委員】
  常勤いないと駄目です。
【増田座長】
  常勤いますけれども,監査等委員のいないところはあるでしょう。
【八田委員】
  監査等委員は非常勤でもいいんです。
【増田座長】
  だけど,東証はそうだったでしょう。東証は一時常勤いなかった。
【岡田委員】
  監査等委員会は常勤いないですよね。
【増田座長】
  常勤いなかったときありますよ。上場会社でありますよ,そういう意味じゃ,監査等委員は。
【八田委員】
  だから,ガバナンスが怪しいと言われているわけなので。
【酒井委員】
  結構大きな会社で常勤の監査委員,監査等委員はいないところがあります。
【増田座長】
  怪しいところの会社と言っていますけれども。
【酒井委員】
  これを義務づけるのはどうかという感じはしますね。
【増田座長】
  ここは,義務づけるのはちょっとやめましょう。ガバナンスコードで手当てする。
【岡田委員】
  では,ガバナンスコードで書くとか。手当てはする。
【石井委員】
  今の,私も常勤の関係で,やはり私のいたところでも最初常勤の方がいらっしゃって,その方がお辞めになるときに常勤で次をということで探したんですけれども,やはりかなり難しいということで,監査の経験があって常勤で入ってくださる方というのはなかなか見つけるのが難しくて,そこを重視するよりは,非常勤であっても内部監査室と連携してきちんとやっていくほうを優先しようということで,1回私のいた法人でも結構議論になったところなので,義務づけも難しいと思うし,ガバナンスコードに盛り込むのもちょっときついのかというふうには感じているところです。
【増田座長】
  それでは,そういうことで,常勤は一応取りあえず法律には織り込まない。
  それで,次にほかのところはどうでしょうか。要確認のところは,今日の情報開示のところがあったんですね。これは松本さんの提案で,八田さんも言われたけれども,これはいいんじゃないですか。TDnetみたいなものを,統一的に開示するプラットフォームをつくるとか,そういったことだとか,あと,内容です,様式だとか。
  これについては,この後,法律には書かないけれども,ちゃんと開示をここでさせるということを盛り込むということでよろしいでしょうか。
【岡田委員】
  私もこれは賛成ですけれども,プラットフォームをつくるって大変な作業ですし,お金もかかることですから,その前にやるべきことというんですか,備置きだけではなくて,学校のホームページとか,ネットに張って見やすくするとか,紙を見にいかないと見られないというのを変えないと,ここまでも行かないんじゃないかという気がする。実際はどうなんでしょう。
【増田座長】
  結構やっている。
【松本委員】
  大学についてですが,大学のホームページに確かに寄附行為ですとか財務諸表がありますけれども,物すごく深いところにある大学が結構ありまして,例えば,今回,逮捕者を出した大学は,寄附行為を探すまでにとても時間がかかりました。
  だから,財務諸表もそうなんですが,ホームページの一番目立つところにあるという,そういうふうなところにはないけれども。
【岡田委員】
  これは法律とは関係ない話です。
【松本委員】
  だから,ホームページに載せてくださいだけでは,立ち行かないという思いを込めてここに書きました。
【八田委員】
  今は各大学は文科省とリンクはしていないんですか。
【相原補佐】
  リアルタイムではないのですが,私どもも定期的に財務情報の公表状況というのは,過去も調査というのは全大学に対して行っておりまして,その結果としての,ホームページのどこに載っているのかというところを是正するという意味ではなくて,その載った部分を我々の文部科学省のホームページで集約して掲載するという取組はやっています。
  ただ,それはリアルタイムにいつも追いついているというわけではございませんが,そのようなことはやってきております。
【増田座長】
  だから,改善すればいいと思いますが。
【八田委員】
  私は,文科省が中長期的には,そこに行って,××大学法人を見たければ,ぱっと行って,あるいは定款が見たければぱっと行く。それはこの時代は,紙媒体とかタイムラグがあるなんていうことはあり得ないと思います。
  つくるほうは法人が責任を持ってやるわけであって。そうすると,第三者が見るときに比較可能性も高まるわけです。
  今,松本さんがおっしゃったように,見たいもの,個別の大学の定款と計算書類とばらばらになるわけです。非常に詳細に書いているのもありますし,事業報告内容も。
  やはりその辺は統一的に透明性を高める必要がありますから。文科省は大変だと思いますけれども,予算ちゃんと取ってやっていただく。
【増田座長】
  だけど,イニシャルコストはかかるけれども,コストがかかるといっても,あとはメンテナンスコストだけですね。
【八田委員】
  だから,それならリンクだけさせればいいんです。
【岡田委員】
  それでは,文科省のホームページのどこにあるかが一般知られていないと,最初そこへ行かないです。
【増田座長】
  大学法人はみんなホームページ持ってやっていますけれども。やっていて,見れば見られないことないけれども,非常に探すのが大変ですよね。
  いろいろな報告書見たけれども,まちまちでいろいろなところがあるから。
  あと,さっき言った監事のところなんだけれども,外部監事を1名以上義務づけるなんていうのがありましたけれども,6ページ,これはどうですか。
【松本委員】
  これはまだ検討中。
【増田座長】
  検討中なんだけれども,先取りするんですか。
【松本委員】
  公益法人認定法で検討中という話なんです。先取りという意味ではない。
【増田座長】
  これはいかがなものでしょうか。この外部理事の定義というのがあるだろうけれども,上のほうの。これはどうなんでしょうか。
  これもありますよね。外部理事というのは,どういうふうに考えるかですね。先取りするのはいいけれども。
  利害関係人の兼職禁止だとか,これは分かりますね。上のほうの。この辺はいいと思うんだけれども。だけど,ここのところはどうですか。
  結構,外部理事というと,どういう人を考えているか。確かに独立性がある人というのを考えていかなければいけないのですが。
  これはちょっとペンディングにします。今日はなかなか結論が出ないですね。時間が予定の時間に来ていますので終了とします。

<議題4 その他>
・事務局(相原私学行政課課長補佐)より,次回は11月19日(金)10時~12時に開催するとの案内があった。

  ―― 了 ――

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高等教育局私学部私学行政課

(高等教育局私学部私学行政課)