学校法人ガバナンス改革会議(第6回) 議事要旨

1.日時

令和3年9月22日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. 学校法人のガバナンスについて
  2. 全国知事会からのヒアリング
  3. その他

4.出席者

委員

増田座長,安西委員,久保利委員,酒井委員,戸張委員,西村委員,野村委員,八田委員,松本委員,本山委員

文部科学省

森高等教育局私学部長,小谷高等教育局私学部私学行政課長,相原高等教育局私学部私学行政課課長補佐

オブザーバー

東京都生活文化局私学部私学行政課長 伊与浩暁

5.議事要旨

<議題1 学校法人のガバナンスについて>
・事務局から配布資料について説明。
・八田委員及び松本委員からから資料1ついて説明。

【八田委員】
 それでは,資料の1を御覧ください。
 これまで,この会議の中で再三申し上げていますように,限られている回数のこの会議ですので,後戻りしたり,あるいは紛糾するような内容を繰り返さないために,これまでの議論を簡単にまとめた上で,次なるテーマの御議論に入っていただきたいと,こういう対応で,1枚目は,前回の意見交換のポイントについて簡単に触れております。
 各関連団体の方から様々な御意見をいただきました。
 ただ,このヒアリングで示された団体の方々の主張というのは,現在の評議員会の役割及び権限,構成等を念頭に置いたものであり,例えば一つの例として,内部者が非常に多い評議員会に監督機能を持たせると,評議員会でかえって意見の対立が起こって,法人運営に支障を来すおそれがあるとか,あるいは二重の監督機能があってスピード感にもとると,こういった非常に否定的な御意見がありましたが,少なくとも,集約するならば,それは現状維持を求める声であったというふうに捉えることができると思います。そのため,本改革会議で既に合意を得てきた評議員会の役割及び権限,構成等とは,残念ながら,かなりの隔たりがあったのではないかという認識を持っております。
 したがいまして,この改革会議としましても,新たな学校法人ガバナンスの全体像及びその最高監督・議決機関としての評議員会の姿を早急に明示する必要があるのではないかということが第1点として指摘できます。
 第2点は,たまたま前回の会合の前日,日大での大きな不祥事が報道されたその直後であったということもありまして,いわゆる学校法人等における不祥事の問題は非常に喫緊のテーマとして皆さんがリスク感覚を高めていただかなくてはならないわけですが,残念ながら,どなたからもそれに関しての発言は出ませんでした。したがって,これが今,各関連団体の方々のお持ちの考えなのかとなると,世間の理解と異なり,社会の認識とずれがあるのではないかという気がいたしております。
 複数の関係者の方々は,こうした不祥事について問題視しているということの御認識はあるようですが,その一方で,前回の私学法の改正で行われたように,監事の権限を強化すれば,それで十分であるということ。したがって,評議員の権限等を明確にするのは不要であるというような意見もありました。しかし,それは,健全なガバナンスを二重三重に構築していくためには,いわゆる人事権も持ったような形で評議員会の権限をみなすということは,全く違った論点で議論されなければならないだろうということです。やはり,不祥事の認識や防止策についての考え方が,本改革会議とは異なっていたというふうに論ずることができます。
 そして,その後,学校法人ガバナンス改革会議に関する各委員からの意見交換がなされました。例えば,現場の理事長様からの御意見の中には,ガバナンス改革は応援するけれども,それに見合って,事後監視型の形に取るならば,一定の緩和措置を講じてもらいたいということ。今,大学等において新学部等を設置する,あるいは増設をするなど行う場合には,かなりの分量の書類の作成,資料の提出が求められてくる。非常にこれは負担であること,そして初めて対応する場合には,自分たちだけの力ではなかなかできなく,専門家の力を借りなくてはならないというような,やはり時代に見合わないような状況もある。この辺も同時に見直してもらいたいと,こういう御意見がありました。
 それから評議員会,これは小ぶりといいますか,少人数の意思決定ができるような形で構築し直すべきだという改革会議の考え方ではありますが,では人数の上限はどうするのかということの議論をどこかで決めなければならないだろうとの考えもあります。その点,一つの考え方がガバナンスコード,この辺で考えることが必要なのかもしれません。
 それから,評議員会の差止め請求権,あるいは代表訴訟のような責任追及手段,こういったものについても組み込んで議論してもらいたいということ。
 それから,評議員会を独立の委員会として見ていくならば,現状の理事長が招集するという規定でいいのであろうか,この辺も検討材料ではないかと。
 さらに,やはり一番問題なのは,どの学校法人においても,多くの不祥事の場合の論点は,理事長に絶大なる権限が集中しているということであって,その理事長がどういう形で選ばれてくるのか,その辺の不透明さ,これにメスを入れる必要があるだろうということです。とりわけ委員の中からは,ファミリー企業のような世襲制度を持っているような学校法人,これについても,確かに建学の精神や創始者の意思が継承される必要はあるけれども,現在のように公益性あるいは社会性を持っている大学学校法人において,ただただ学校法人の自律性,自主性だけに委ねるということにおいては,多くの疑念があるだろうということで,今回の新たなガバナンス改革会議の中で,全体像を示すことを必要だというふうに再認識したというわけであります。
【松本委員】
 前回,皆様にお示しした資料に,今年3月に報告が出されました,まとめが出された学校法人のガバナンスに関する有識者会議で示された論点も盛り込んでいます。
 今日,皆様に御議論いただきたいものは,まず理事会について,役割。これは役割については,前回の会議では,特に記述はありませんでした。
 権限・職務については,有識者会議で,理事長の選定・解職は理事会の責任において行うであるとか,理事会の議事録の作成を義務化し,その内容を評議員会に公開する,議事録は監事も確認する,理事会の招集通知の対象に監事を加える。こうした交互の監視機能,監査機能や何かを張り巡らせたガバナンスを構想しています。
 この理事会を構成する理事についてです。権限・職務,それから義務・責任,適格基準,こうしたことについては,私学法には記載されたとおり,皆様にお示ししたとおりの条文がございます。
 ただ,この適格基準については,これまでのこの改革会議の中で,校長になったら自動的に理事に入るということになっているけれど,こういうことでいいのだろうか,やめるべきではないだろうかという御意見をいただいています。
 選任,解任については,評議員会の権限ということで,既に合意事項ができております。ここについては,これで割愛させていただきます。
 任期です。私学法で,今,理事の任期については,寄附行為の定めにより行っております。これは私学法で明記すべきではないか,それから再任の規定は必要か,こういったことについても議論をお願いいたします。
 人数については,現行法では5人以上,うち1人は理事長としか書いていません。この辺については,どのようにしたらいいのか。現在は,評議員は理事の倍以上というふうにされているけど,じゃあ何人が適正なのか。評議員との人数の関係も検討するべきなのかもしれません。
 問題となっている,先ほど八田委員からも御指摘ありました理事長の話です。理事長の選定・解職については,どのようにするか。
 現行法では,理事のうち1人は寄附行為の定めるところにより理事長とするとしております。前回の会議でありましたように,理事長の選定・解職というのが誰の権限なのか,私学法の中には明記されておりません。
 そこで,例えば,先ほど申し上げたとおり,理事会での選定・解職とするといった記述が必要なのか。
 それから,さらに選び方。選び方は互選とする,もしくは理事総数の過半数,4分の3以上,議決によりなどとした記述が必要なのかということも検討いただきたいと願っております。
 ちなみに,寄附行為を幾つかの大学を見ましたところ,理事会での選定だけでなく,評議員会の選定などの例がありました。
 この理事長の選定・解職については,一般財団法人法では,理事会は理事の中から代表理事を選定しなければならないとしか記述されておりません。社会福祉法人法45条の13でも,理事会は理事の中から理事長1人を選定しなければならないという記述になります。
 すみません,次に移ります。監事です。もう一つ大きな山場となるのが,この監事のことです。
 監事の役割というのは,監査。監督が上からだとすると,監査というのは,横から見る。視点が違うという考え方に基づくものだということを,法律家から伺っています。それでいいのかどうかも含めて,議論をお願いします。
 権限・職務については,既に私学法で37条3項,以下のようなものが書かれています。
 これに対して,財産の状況。私学法では,学校法人の財産の状況を監査するとなっておりますが,財産の状況だけでなく,計算書,計算書類,事業報告の監査とするべきではないか。より細かくということですね。
 それから,監事の監査を受けて,評議員会,理事会は何をしなければいけないか,私学法に明記すべきなのかということも御検討いただきたいと思っています。
 違法行為への対応について,評議員から監事への報告義務。監事による評議員会開催の要求などを盛り込めないか。この辺りも,ぜひ議論いただきたいです。
 義務・責任は,既に委任関係,それから法人,第三者に対する損害賠償責任を負う,連帯責任,この辺が明記されております。この辺をもっと深掘りするべきなのか,さらに具体的に書くべきなのか,この辺りもぜひ議論をお願いします。
 適格基準については,私学法の明記にプラスして,有識者会議からは,各理事の親族・特殊関係者については監事への就任を禁止すると,最終報告書には明記されておりました。このことについても議論をお願いします。
 監事の選任については,既に評議員会の権限として合意を得ている事項です。
 解任についても同様です。ただ,ここについては,有識者会議の中で,監事の解任の議案については,辞任した監事,解任された監事を含め,監事の意見を確認する手続を求めることとするという一文が盛り込まれております。つまり,学内の問題を指摘した場合に,本人の意思とは関係なく,辞任に追い込まれた,解任されてしまった事例ということを想定しております。
 任期です。寄附行為の定めによるというのが,現行の私学法での記述です。これに対して有識者会議では,理事の任期と同等以上の期間と書かれております。同等以上でいいのか,理事の任期を超えると書くべきなのか,この辺もぜひ議論をお願いしたいです。人数は,現在は2人以上となっております。
 本日御欠席の岡田委員から,検討をお願いしたいということで御連絡をいただいております。私学法との関連において,ガバナンスコードでは監事と内部監査の連携の強化,一定規模以上または全てに内部監査部門設置を義務づけること,一定規模以上は会計監査を義務づけるとすることなどを盛り込んでやろうかという御提案をいただいております。
【酒井委員】
 今御説明いただいた中で,最初に八田委員から御説明があった,まず1の①,評議員会に関する認識のずれ。これは私も非常に,前回のヒアリングで感じました。
 ただ,最後のところで,新たなガバナンスの全体像及び監督機関,議決機関としての評議員会の姿を早急に明示する必要があるというところについては,どんなイメージなのかがちょっと分からなくて,何か中間報告的なことを考えておられるのかなというふうにも思いましたが,このずれは,実は,既にヒアリングが終わってしまっているので,もうあとは,むしろ最終報告で,いろいろな懸念がありますので,その最終報告の中で懸念を払拭するように丁寧に書くのがいいのではないかなと。
 なぜかといいますと,早急に明示する必要があるといっても,実は懸念の中には,評議員が損害賠償責任を問われたら評議員いなくなるぞという話も懸念として挙げられていますが,これは善管注意義務の在り方とか,かなりの議論をして細部を詰めていかないと,結局できないので,やっぱり最終的な姿が見えないと,早急に提示できるものではないものですから。もし,そうであるならば,むしろ最終報告の中で,いろいろ挙げられた懸念を払拭するように丁寧に説明するものにしたらどうかというのが第1点です。
 それから次に,相次ぐ不祥事への視点。前回,確かに日大の問題について,学校側からは特に話が出なかったのをショックと受け止められた方おられますが,あの時点では,ただ日大に捜索が入ったということだけで,それについてコメントするというのはかなり難しいことなので,そこはちょっと御容赦,寛容に見てあげたらいかがかなと思いました。
 ただ,一番問題は,日大は2018年にフットボール事件で第三者委員会の報告書が出て,そこでガバナンスを問われながら,そのガバナンスについて,定款も含めて,ほとんど何も変えてないということ,これがむしろ問題ですが,まだ捜査中の今の段階で,ちょっとそこまで連盟や協会側に学校側に指摘してもらうというのは難しいことかなと思いました。
 それから論点整理については,これは個別のものではなくて,この論点整理の中では学校法人のガバナンスに関する有識者会議の部分も含めてまとめていただいておりますが,実は有識者会議というのは,私や有識者会議からのメンバーの方は御存じのとおり,とにかくこの有識者会議は,ガバナンスの一丁目一番地である理事の選任,解任を評議員会が行うと。ここについて何とか突破をしようということで,有識者会議の中で話し合って,最終的にはコンセンサスを得てきたものであって,しかも有識者会議には,学校関係者もかなり入っていて,いろいろな意見が出たわけですね。
 今回の改革会議は,またメンバーもがらっと変わりましたので,これからの議論においても,それほど有識者会議の結論を,何か一つの金科玉条のごとく捉えるのではなくて,むしろ,聖書の逆ですけど,新しい革袋ができたのだから,新しい酒を入れるつもりで,かなり大きく有識者会議の内容も変更を加えていいただくという視点で議論をしていただけたらと思います。
【八田委員】
 今,酒井委員の御指摘のあった最初のところの早い段階で全体像という話ですけれども,これは最初のときに松本委員からも,現在の学校法人のガバナンスを鳥瞰する形で,俯瞰する形でポンチ絵が出ています。その評議員会の位置づけが,現在のところ,非常に不十分ないし不透明というか,そして私学法上も明文規定があまりないということです。したがって,そこをまず明確に示して,理事会,理事長,そして監事,会計監査人,これを明らかにすべきではないかということでして,目指すところは今,酒井委員がおっしゃったように,最終報告書の中で丁寧に説明をして,御納得いただくような形を取りたいと,そういう点であります。
 それから,日大の問題が出なかったことについては,いろいろな評価があると思いますが,私は,やはり高度な倫理感が求められる学校,あるいは教育機関において,疑わしきは避けるという大前提がリスク感覚として持っていなくてはならないわけであって,それに関わるような団体の方々が,一言たりとも,この問題について触れていないということと。少なくとも司直の手が入ったわけですから。確かに,これは裁判の問題で,どうなるか全く分からないですが,少なくとも社会の国民が全て疑念を抱いているわけですから,それに対して,やはり何らかのコメントがあってしかるべきではないかというのが,委員からの回答であったということで,これ以上何か明らかにしろという話をしたわけではありません。
 それから今,論点のほうで,前回の有識者会議の話ですが,これは様々な意見が出て,見方によっては両論併記的な,あるいは,あるべき姿の希望的観測のような文章がありましたので,それは一応,横に置いて,今回の改革会議のほうで最終結論を導いていけばいいだろうというふうに理解しております。
【久保利委員】
 酒井先生のおっしゃっていること,よく分かるつもりですけれども,結局,八田先生の今のお話と組み合わせてみると,もう少し概観的なことでもいいから,もう少し全体像というか,例えば本当に何十人もいるような評議員会のことを考えているわけじゃないとか,もう少し概要でもいいから,おおむねこんな制度を考えていると示してはどうか。逆に言うと,もうヒアリングは終わりましたけれども,しかし各学校法人は,じゃあ次どういうふうにしようかと多分,検討されていると思いますから,そういう中で,もう少し前倒しで,こんなことをイメージしているんですというメッセージを出したほうが多分いいという意味で,早期に明示というふうにおっしゃっているので,ディテールまで全部決めるという話ではないように思うんですね。
 ですから,僕は,そういう意味での,もう少し概略性,あるいは評議員会がどういう存在なのかと。
 これ野村先生だったかどなたかおっしゃっていましたけど,例えば会社における株主総会というのが学校法人にはないのだと。そうすると,いわゆる取締役会にあたる理事会というのはあるけれども,その総会に該当するようなものが全くないので,それのイメージというか,そういう存在として評議員会というものを考えたらどうかと。ただし,人数がそんなにたくさんいたら,それこそまとまらないから,そこで,少人数であってもいいので,そういう組織を別途,上から鳥瞰するような,俯瞰する,そういうものをつくりましょうということです。その辺のイメージは早く対外的にも,この会議が出したほうがいいのかなというふうに,今お二方のお話を聞いていて,どっちもごもっともですけれども,何となく概要は早く出したほうがいいかもしれないと思いました。
 それから,日大事件との不祥事ですけど,あれ聞いていて思ったのは,ガサは確かに入っただけなので,どんなことをしたのか分かりません。ただ問題なのは,一旦,アメフトの事件で理事を辞めた方が,また戻っていると。あのときは責任を取って辞めたはずだったと僕は思っていたんですけれども,じゃ戻ったときに,どういう審議があって,どういう過程で戻ったのかというのは一切,日大は明らかにしていないですよね。捜査が入ったので,あの人戻っていたんだということが分かった。あるいは子会社のほうの役員もやっているし,本体の大学の理事にも戻っている。それって,あまりにもガバナンスがないじゃないかということを,どなたからも発言がなかったという,その辺りが私はすごく気になったので,どんな犯罪が起きたのか,それに対してどういうふうにするかという,そこまで求めているわけじゃありませんけど。
 結局,社団的法人は人事が全てですから,そういう点で,ガバナンスがいかに効いていないのかということについて,問題だよねという発言があってもよかったというふうに思いました。
【松本委員】
 金科玉条のごとく有識者会議のコメントについて扱うというつもりはなくて,こういった議論が過去にあったので,これを踏まえて,もちろんこれも,これ自身を全部ひっくり返しても構わないですが,既にこういった議論が出ているということをヒントにしていただきたい,そう思って書きました。
【増田座長】
 確かに今の,どういうふうに公開していくかで,YouTubeのほうは一応4回までは既に公開されているんですけど,まだ議事要旨自体は出ていないんですよね。そういう意味じゃ,過去にこのガバナンス会議で議論したことが,まだ世間に大っぴらには出ていないと。YouTube自体も,全部聞くとなると1回分で2時間かかるわけですよ。幸いにして,1回目,2回目なんかは1,500アクセスとか1,600アクセスとか相当数の人が見ているようですね。最近の第4回でも900人ぐらいの方が,YouTubeを見ているようなので,それなりに公表した効果はあると思うんですけど,議事要旨自体がまだ公開されていませんので,どういう議論が進んでいて,先ほどの評議員会,評議員についてこういうふうに考えているんだということが,どこまで理解されているか,そういう点はあると思いますけれども,徐々にその辺は情報が社会に出てくると思いますので,これも含めて,いかに公表していくか,我々の考えていることを世間に出していくかという点は,これからのこととは思いますけれども,そういうこと含めて,いずれにしても,もう今年いっぱいにこのガバナンス改革会議の報告書を出さなきゃいけないわけですから,その前にどれだけできるかという点はあるとは思います。
 それと,先ほどの日大を含めた大学法人等事案の件でございますけど,これについては,所管官庁である文科省さんのほうから次回,第7回のガバナンス改革会議において,制度的な面と,それから実際の扱いについてお話をいただくということで,ヒアリングしたいと思っていますので,それについて,もし御意見があればおっしゃっていただければと思います。
【西村委員】
 第7回で日大の事件についても文科省ヒアリングで扱うということで,御説明を希望する点として,今設置されているガバナンス構造の中で,どの部分は機能したのか伺いたいと思います。監事や会計監査が問題発覚に役に立ったのかなど。理事同士の相互間の善管注意義務は多分機能しなかったのではないかと想像しますが,監事による事後的なチェックはできたのか,どこから問題が発覚したのかなど,分かったら教えていただきたい。
【増田座長】
 この辺は具体的に日大の名前を挙げて,なかなか説明するのは難しいとは思う。先ほど酒井委員からの話もありましたけれども,進行中事案なので。だから,今の現状の所管官庁としての監督の仕方とか,制度的な面についての説明はできるだろうと思うんですけど,個別な問題に入ってきますと,現在進行中だということもございますし,やはりそうなると,判明している範囲のところでもレピュテーションの問題もあり,非公表ということつまり,会議自体クローズでやるしかないなと思うんですね。
【相原補佐】
 今,座長からお話のございましたように,次回,扱うといたしましたらば,現行の私立学校法における行政,所轄庁の指導監督権限というのがどのようになっており,そしてまた過去の事案などで,それはどのように不祥事が発生時に所管庁がそれを運用したのかというところを中心にお話を申し上げるというようなことで考えるということで準備をさせていただくとともに,今回,今御指摘いただいているような日大の現在進行形の部分に関してというところでは,ちょっと非公表にするにしても,そこは扱うのは難しいかなと考えております。
【西村委員】
 問題発覚がどこかについては分かるのでしょうか。メディアから発覚したとか,内部で問題認識ができたのかなど,そういうことは分かりますでしょうか。
【相原補佐】
 今回の問題については,私どもに報告があった,あるいは私どもが調査を開始したというのが契機となっているものではございませんで,あくまで地検の捜査が始まったということでございます。したがって,その辺の経緯というところは私どものほうでは存じておりませんので,そこは捜査の過程を見守るという立場にあることでございます。
【戸張委員】
 評議員の話ですけれども,前回も言いましたけど,評議員会がどのように運営されるかという具体的なイメージができていないから,むやみに反対されたりというところがあると思います。ですから,こちらの主な意見のところにありますけれども,やはり評議員会の開催について,少なくとも定時総会みたいな,定時,決算のときに開催するとか,あとほかに,何か月に1回以上開催するとか,どのような開催の中でガバナンスされていくのかというイメージを,提示する必要があるかなと思います。
 理事長による経営がファミリー企業的になっているという面は,これはこれで問題だと思いますけれども,規模の問題で,幼稚園のみを設置している学校法人は,どうしても親族等が経営せざるを得ないというところがあるので,規模の問題もある程度考慮して,いいところもあるというところも理解する必要があると思います。
 今日の論点整理のところで,監事のところで意見があります。監事さんと監査を通じて接するときに,やはり求められている活動がされていないと思われるケースが多いので,それをどのように監事さんにそれなりの活動をしていただくかというところが一番重要かなと思います。
 現行では,会計年度の終了後2か月以内に理事会,評議員会に監査報告を提出するということになっていますけど,まず,この2か月以内というのは,期間的にこれは実際ちょっと無理な話だと思っています。ですから,ここは,ほかの非営利法人と同様に3か月以内にする必要があると思います。
 極端な話,評議員会が最終決定するということであれば,理事会でなくて評議員会だけに監査報告するのでも構わないのではないかという個人的な意見を持っています。
 それから任期に関しましては,やはり理事の任期と同等以上というよりは,理事の任期よりも長い,超にするということが必要だと思いますし,また一定の規模以上の法人には,常勤の監事さんを設定していただくような手当てが必要かなと思います。常勤で内部統制であるとか,理事の活動とかをチェックしていただく,常勤といっても毎日来ているわけじゃない,週何日かでも常勤とは言えると思いますが,このことについては,私学法の中に入れるのがいいのか,ガバナンスコードの中に入れるのがいいのかは,考える必要はあると思いますけど,一定の規模以上の学校法人につきましては,少なくとも監事さんは常勤でいていただける必要があると思います。常勤でいていただけることで初めて会計士の監査と監事さんの監査と内部監査の三様監査が一体化してガバナンスの強化になっていくのではないかと思います。
【増田座長】
 先ほどちょっと申し上げましたけど,10月の第7回の会議のときに一応,評議員会の議決事項とするのかとか,理事会では,何を例えば起案し議決事項にするかとか,それにもよってくると思うんですね。例えば計算書類なんか,やっぱり評議員会の必ず承認事項にする,あるいは決議事項にするということであれば,理事会でも起案・承認・決議するけれども,評議員会では最終的な監督として承認・決議するということになれば,やはり少なくとも年に何回か,2回とか数回とかあると決まってきますよね,議決事項によって。だから,そういうことも含めて,10月の7回のときに,今日の議論を含めて整理していただいて,議論していただきたいと思っています。
【八田委員】
 今,戸張委員がおっしゃった監事のことについて,ちょっとコメントというか,確認をさせていただきたいんですけれども,資料の3ページで現行の私学法。ただ,これは前回,一部改正されているので,そこで変わったと思うんですけれども,まず監事の権限・職務というところで,冒頭,学校法人を監査すると書いてあるんですね。これ何を言っているのか,よく分からないわけですよ。学校法人の何を見るのかと。
 なぜかというと,もう御案内のとおり,日本の非営利組織の監事監査というのは,会社法の監査役監査をほぼ全面的に準用する形でつくられてきている制度設計なんですね。そうしますと,ただ,その場合であっても,今,会社法では,監査役設置会社以外に他の委員会設置会社もありますから,それはさておきまして,監査役設置会社の場合に,会社法では,監査役は取締役の職務の執行を監査すると書いてあるわけですよ。つまり,株式会社の監査をするとは書いてないんですね。
 これは言葉の問題かもしれませんが,そうなってくると,業務執行に関わっている人たちがいかなる業務を行っているのか。ここでは,業務執行の責任者は当然,課せられたアカウンタビリティを履行する,説明責任を履行するために,計算書類や財務書類を正しく作って開示をする。これ当然の話であります。したがって,それも見る。
 しかし,その会計数値だけの問題ではなくて,その背後にある行為や業務に関して,その適切性,合理性,妥当性,これもみんな見るというのが多分,監事監査の原点にあると思うんですね。その辺をちゃんと明示しなければ,後日,監査役,監事の責任を問うという場合に,はっきりしないのではないか。つまり,職務内容をもう少し明確にすべきではないかということと,監事の職務権限,これをもう一回,明確な形で見直す必要があるのではないかという気がします。
 それから,当然ながら,先ほど西村委員からあって,私もよく分からないですが,日大の場合に,大きいですから,監事さんは四,五名いるんじゃないでしょうか。しかし,これまでの経緯を外から見ていても,監事監査が機能したという側面は一切見えない。
 さらに残念なのは,今回の事案,これも司直の手にわたっていますから分かりませんけれども,数億円の不透明な金額の動きがあるということは,当然,会計上の問題にも大きく関わるわけですから,会計監査人は何をしていたのかというような議論にも結びつく可能性がある。ただ,それはまた会計監査人のところで議論していただきます。
 となってくると,監事として,かなり覚悟を持って業務執行,理事の活動を見なければならないために,戸張委員おっしゃったように,やはりまずは監事の任期ですよね,身分保障をするために。
 御案内のとおり,会社法では,戦後,監査役は1年の任期が,複数回の改正によって,まず4年まで延びてきたわけです。これは,個々の会社の定款をもって短縮することはできないんですね。したがって,それほど身分保障を強くしている。
 一方,取締役は基本的に2年,監査役設置会社の場合は。それでもやはり,活性化するために多くの会社さんは,定款で1年と定めているところもあるようであります。
 ということで,当然ながら,執行業務に関わる理事の方たちよりは当然長くする必要がある。
 ただ,これももろ刃の剣といいますか,じゃ長ければいいだろうとなると,今,監査役は4年ですけれども,少し言葉は失礼ですが,一旦,異分子的な監査役さんを入れてしまうと4年間,組織が乱れてしまうと,こういう事案も実はあるんですね。
 したがって,個人的には,,その辺を合理的に見るならば,3年ぐらいの任期が良いのではないかと思っています。少なくとも理事よりは長くなくてはならないということ,それともう一つは,戸張委員おっしゃったように,規模にもよりますけれども,当然やはり内部の業務内容を子細に情報として入手するためには常勤の監事さんを置いておくこと,これは当然必要だと思うし,もしもそのぐらいの規模の場合には,監事さん,常勤1人以外に外部2人ぐらい,つまり3名ぐらいですね。このぐらい,やはりいたほうが,健全なガバナンスを構築し,そしてそれに対する全面的な責任も履行してもらうという,監事監査にとっては有用ではないかという気がします。
【増田座長】
 今の学校法人を監査すると書いてあるんですが,学校法人の業務というのが,本当は法律上は入っているんですね。業務を監査するだから,一応,学校法人そのものというより,学校法人の業務を監査する。
【八田委員】
 ですから,これをそのまま素直に読むと,全てを見ろということですね。
【野村委員】
 今お話のありました監事のところ,やっぱり肝の部分でありまして,まだまだ改善しなきゃいけないところがあると思います。
 一つは,今お話がありましたように,監事の権限のところが,確かに会社法をベースにはしているんですけれども,幾つか足りないところがあるような気がします。
 一つは業務執行の差止め請求権。これは監査役の最も典型的なというか,一番,伝家の宝刀として用意されているもので,株主が本来やるべきことを監査役がやるという形で設計されていまして,会社法上は,その会社に重大な損害が生ずるおそれがある場合には監事役が差止め請求権を行使するということになっていますので,業務を止めるという権限があってもいいんじゃないかなというふうに思います。
 それから会社が,法人と,それから理事との間に何らかの訴訟が起こる場合,特に損害賠償請求権発生するような場合は,かねて代表訴訟の話はしていましたが,本則は,監査役が会社を代表して訴えを提起するということになっていまして,これは,監査役は独立性があって,しがらみがないので,本来,任せておけば,会社を代表して訴訟を提起してくれるということが期待されていると,こういう形になっていますので,この場合,私学の場合でも,法人を代表して法廷訴訟担当として,まずは訴えるということができると考えるべきだと思います。
 これすらワークしないので株主代表訴訟があるということになっていますので,そこは前提として置いておくべきではないかなと思います。
 ほかにもありますが,細かくなりますので,いずれにせよ,まだまだ足りないところがありますので,補充するべきだという意見でございます。
【酒井委員】
 今出た意見で若干のコメントを申し上げますと,監事がどこまで見るのかということについては,違法な行為を見るのか,あるいは,さらに進んで,それが妥当な職務行為かどうかを見るのかということは,やはり決めておかなければいけなくて,会社法では,監査役は違法性の監査とされている一方で,監査等委員,あるいは監査委員については妥当性監査にも及ぶということになりますので,そこの立てつけをどうするのかということは考えておく必要があると思います。
 それからもう一つ,常勤が望ましいのではないかということですが,これはもちろん常勤が望ましいですが,会社で,大会社で常勤監査役を持っているというのは,これは工場とか子会社の多さということで,しょっちゅうそういったところへ行って見てくる,あるいは仕掛品とか,情報を見る。仕掛品とか,そういうものを見に行ったりとか,そういう業務が結構,かなりの部分を占めていって,常勤監査,監事が必要な学校というのが,恐らく,あまりないだろうと思います。
 それを今度,常勤化をかなり義務づけることによって,人材の確保という面で,結構,学校法人側のハードルが上がってしまうような感じがしますので,そこについては,かなり慎重な見方が必要なんじゃないかなと思います。
 逆に,ただ監事が機能しないと困るので,監事の教育訓練というのには力を注いでいただいて,場合によっては,各学校がやるのではなくて,文科省等が監事を集めて,しっかりした会計のいろいろな教育訓練の機会を与えるとか,そういうことも考えていいただいたらいいのかなと思いました。
 それからもう一つ,日大も含めて,この不祥事の防止としての監事,あるいは評議員に何を求めるかということですけれども,これからの議論を考えていったときに,多分,今度の日大の事件は,一番の肝は,いろいろ設計会社。設計会社が幾つかコンペ方式でやって,そのコンペで1位になったところを,そのコンペの内容をひっくり返しちゃって,本当に指名したい2位会社を1位にしちゃったという件で,多分そこのポイントの入替えをしていると思うんですよね。その1位,2位のポイントの入替えをですね。それで自分の思うところに受注させたということで,その受注会社からキックバック的に入ってくるというあれなんですけど,そこの一番のプロポーザル方式のコンペをうまくやったということは,これ会計監査人でも,監事でも,見抜くことは無理だと思います。
 そういうものを今後,いろいろ企業,学校の不祥事を見て,これを収めるということでやると,どんどん,どんどん分厚い監事体制,あるいは評議員体制になってきちゃって,これは,かえって学校法人のかなりの負担にもなってくるという,下手すると角を矯めて牛を殺すことにもなりかねないので,その辺については,しっかりした制度があれば,抑止効果があることは間違いないので,これからの議論で,この不祥事を防ぐためにはこういう制度が必要だということを言っていくと,ものすごい分厚い監視体制が必要になってきて,それを目指すのかということなると,そこはちょっとどうかなという感じはいたしました。
【久保利委員】
 最近の監査役の役割ということを考えると,これは違法性監査,妥当性監査を区別する時代はもう終わっていて,全て本当に社会のためになっているか,株主のためにトータルの利益になっているかどうかという視点から監査役はどんどん何でもやりなさいと。差止めというのも必ずしも,適法性に違反する場合だけがそうではないというふうになってきているので,監事を監査役さんなのか,あるいは監査等委員会の委員なのかということを,そんなに学校法人に厳格に及ぼす必要,僕はないだろうと思っています。
 とにかく,今,先生がおっしゃったとおり,常勤は僕は必要だと思うんですね。もちろん規模の問題はありますから,あまり小さくて要らないというのは,もちろんそれはあるでしょうけど。でも日大の場合,4人監事がいて,そのうちの2人が常勤ですよね。常勤でいながら,これだけのことが,まるで分からないというのは,だから常勤したって駄目なんだということになったのでは元も子もない話であります。むしろ監事の質なり,あるいは監事の学校,学生等に対する忠誠心というか。理事長への忠誠心ではなくて。そういう独立性というのは本当に担保されていたかどうかという問題なのかな。
 ですから,そういう意味でいうと,法律に何か書けば,それで全部解決するということとは私も思いませんけれども,じゃあ,それを文科省が日本中の学校の監事を集めて教育できるかというと,それもなかなか難しいかもしれない。
 僕は,文科省とか地方公共団体を批判したり,たたいたつもりは別にないんです。むしろ逆に,一生懸命やっても,こういうものは起きますよということになると,結局,日本の学校教育あるいは学校法人を強くするためには,文科省よ頑張れとか,地方自治体よ,もっと徹底的にやれとかという話ではなくて,学校法人が自浄能力というか,ガバナンスをしっかり持っている学校ですよということによって信頼感を勝ち得ていくしかないのかなというふうに思われるので,だからガバナンス改革をやっているんだと。文科省がいるから要らないんだとか,地方公共団体があるから要らないんだという問題とは全然違うというふうに思います。
 だからこそ,ガバナンスをしっかりやるためには,監事にどれだけの権限と義務を課すか。逆に言うと,学校が生き延びるための大変な状況ですから,それでコストがかかってもしようがないじゃないかというふうに私は思います。
【増田座長】
 確かに組織の規模によって,やっぱり違うと思います。常勤の問題もそうですし,それから,ちょっと申し上げたいのは,やっぱり監事だけが強化されても駄目なので,やっぱり理事会の監督だとか,会計監査人を設置するとか,これも規模ですよね。全部の学校法人について同じように設ける必要はないと思いますし,一定の考え方は必要なので,この辺のところを,やっぱり整理していかなきゃいけないと思うんですよ。
 内部統制部門についても設置すべきだという岡田委員の話がありましたけれども,内部統制の仕組みも,それは組織の大きさによって大分違ってくるんですよね。だから,それこそ費用対効果で,コストをうんとかければいいというものでもないので,この辺は整理していく必要はあると思うんです。
 それから,先ほど野村委員のほうから話がありましたけど,差止め請求権というのは今,監事はあるんですよね。理事の行為について,差止め請求権を持っているんです。改正私学法上は,確か作ったと思うんですよね。
 だから,そういうふうなので一応強化はされてきつつあるんだけど,過程だということなので。やっぱり会計監査人だけにやれと言われても難しいので,監事と,それから理事会は,ちゃんと一緒に機能してもらわなきゃ駄目だと思います。
 今回の学校法人の場合は評議員会と理事会と,それから監事と会計監査人で,いろいろなガバナンスをちゃんと強化することによって不祥事を防いでいくというものがあると思います。それに加えて,所管官庁,文科省さんがちゃんとやれるという仕組みにしないと,多分,あまり防げなくなっちゃうということだと思います。
【野村委員】
 今,先ほどもちょっと論点出てきましたけど,これ監事というのは,手足がなければ動けないですよね。伝統的に会社法は,監査役が勝手に自分でスタッフを設けて,それで監査費用に乗せて会社に請求しろと長年言ってきて,現実には,そんなものはうまくいかないわけですよね。ただ,この私学法自体は,その考え方を引きずっている可能性があります。
 ですから,先ほどありましたように,内部統制システムというのを,これは本来,業務執行側がつくるものですけれども,現時点における会社法の考え方は,もうレポーティングラインがデュアルレポーティングラインになっていまして,業務執行側のほうに当然,報告しますけれども,連携というよりは,むしろ,ちゃんと監査役のほうの側ですね,監事の側にもリアルタイム,同時に情報が上がると,そういう仕掛けを要求しなきゃいけないと思いますので,そこをちょっと考える必要があると思います。
 今,最近はもっと進んでいまして,もうそんな何か概念的に監事,監査役。先ほど久保利先生おっしゃっていましたけど,監査役と監査等委員を概念的に分けるのではなくて,これは機能として一緒なので,むしろ監査役が,こういうところを,内部統制システムのほうを動かしてみてほしいと思ったら,内部監査部門に例えば指示を出せるぐらいの,そういう運用でも構わないんだということになっているんですね。
 ですから,そういう意味では,内部監査をうまく利用して情報収集しながらやっていくと,そういうふうにしないと,私は知らなかったから責任ありませんという変なロジックになってしまいますので,そこはちゃんと構築したほうがいいんじゃないかなと思います。
【酒井委員】
 久保利委員の言われたことで,私も監事は適法性だけでなくて妥当性にもどんどん踏み込んで議論をすればいいと思います。
 ただ,最終的に,それに失敗したようなときの損害賠償責任というのが,どうしても重くのしかかってきますし,監事になる人については,それが非常に懸念材料になって,それは適法性監査にとどまるのか,妥当性監査まで責任を負うのかによって,損害賠償の範囲というのが変わってきますので,やはりそこは議論をしておかないといけないのかなというふうに思います。
 ただ実態的には,妥当性も含めて,どんどん理事,理事会等に物を申し入れていくというのが望ましいとは思います。
【戸張委員】
 日大に絡めての話になりますけど,未然に防ぐ方法として,機関設計とか,そういったものも重要だと思いますけれども,今回,事実は分かりませんが,100%子会社を通じた何か取引がされていたと報道されています。過去,不正の事例を見ますと,やはり子会社だとか孫会社を使った,これは企業も含めて,そういった問題が起きているのが多いので,例えばですけれども,子会社,関連会社,また関係団体があった場合,その計算書類とか決算書を参考資料として役員会に出すとか,会計監査人に見せる,監事さんにも提示する,外部に公表する必要はないと思いますけれども,評議員会にも参考資料として出すだとか,あと監事さんも子会社等の調査に行けるだとか,会計監査人も子会社等を見れるだとか,そういったところをやらないと,結局うまいことやられてしまいます。やはり不正というのは,頭を使ってやられているケースにどのように対応できるかということは,機関設計だけでは未然に防げない部分はありますけれども,ほかの決算書とか,いろいろなことで,ガバナンスに関して検討する必要があるかなと思います。
【増田座長】
 確かに今の振興助成法の監査というのは一応やられているわけだけど,計算書類単体の会計基準での監査ですし,学校法人会計基準自体も,ちゃんと見直さないといけないところはあると思うんですね。子会社だけじゃなくて,実質的に支配している会社,孫会社も含めて,そういうところに対しても開示し,監査の対象にちゃんと入れるとかしないと。30年前の日本の会社においても,子会社を使って粉飾決算をやる例があったわけですけど,今はそんなことをやっている会社はありません。会計基準上,もうできませんから。だから,そういう意味じゃ変わってきているので,この辺は,ぜひ会計士協会の辺りで学校法人会計基準の見直しを提案してもらったらいいかなと思うんですね。重要な子会社等については,ちゃんと開示をする,監査の対象に入れるといったことが必要なのかなと思います。
【八田委員】
 監事監査というか,監事になられる方々が,いかに有効に求められている役割を履行することができるのかと,これは恐らく監査という行為自体に求められている期待だと思います。ただ,私は自分の専攻領域は監査ですけれども,ずっと勉強してきてみると,知識とか経験,これは当然あってしかるべきだと思うんですが,やはり最後の最後は覚悟というか,あるいは決断というか,そしてそれをちゃんと理解できるようなリスク感覚。最近では会計監査人の世界では,職業的な懐疑心という形で,前例踏襲とか,旧来こうだったからこうだよなんて先入觀を持っての判断はしてはならないということが規定されています。つまり,業務のプロセスを適切に監視しなさいということです。
 先ほど酒井委員もおっしゃったように,適法性とか妥当性,あるいは合理性といった形での議論というのはもう古い議論でありまして,やはり監事とか監査役は健全な業務執行がなされているかということを全面的には見届けてもらいたいということです。ただ1点,意思決定に関わるものではないんだということです。したがって,当然,意思決定の側においては,経営判断の原則がありますから,その結果,何か融資をした結果,仮に大損をしても,監事さんがそれを見ていたときに,十分な資料と適切な説明があって,そして認めているならば,何ら問われるものではないんですね。私は監査役監査とか監事監査はプロセスチェックだと思っているわけです。手続がちゃんと透明性ある形で,そして得られるべき情報を全部得た上で,そして合理的な判断がなされているかどうかを見届けること。これは理事会においても,評議員会においても同じです。
 したがって,そのときに,それが法に触れるとか,そんな細かい話じゃなくて,やはりこれが今の時点で,社会通念からいっても,合理的かどうかということを見届けているんだと私は思うんですね。でも,これを求めると,なかなか難しいし,さっき申し上げたように,やはり監事の生命線は,私は精神構造といいますか,強い意識と覚悟と使命感,そしてステークホルダーから選ばれている人々に対して果たすべきミッションに対する意識ですよね。これをどうやって植え付けるのかと。なかなか難しい問題があります。
 でも,私の知っている大学のなかには,結構,常勤の監事さんを置いています。常勤さんを置いて,それなりに,やはりすばらしい監査をしているという学校法人ありますので,そんなに重い認識を持ったら誰も成り手がないよとは逆でありまして,ちゃんとやってみたいとと思う方はいるはずです。
 例えば公認会計士の先生方でも,ある年齢以上の方で法人を離れれば,やはり社会に貢献したいということで,教育とか後継者育成という問題に対して強い関心を持っておられる専門家いっぱいおられますから,そういう方に常勤になっていただく必要がある。
 ただ,重要なのは,こういった監事に対して,しかるべき報酬をちゃんと用意しなくてはならないということです。法外なものは要らないですけど,相応の報酬をちゃんと与えて,そして,いい監査はそれなりに高いんだよと。その代わり,社会から見ても評価が高くなると。あるいは持続可能な,強靱な学校法人運営ができる,こういうことを示してもらうことが必要ではないかと思っています。
 それからもう一つ,今,増田座長が言われたように,今回の日大の例もそうですけれども,今,学校法人は,一部制限はありますが,収益事業を行うことができます。自分でもできるし,子会社等を使ってもできる。その部分を考えたときに,利益に目がくらんで,やはり暴走する可能性もあるということもありますから,当然,会社法あるいは金商法と同じように,連結ベースでの集団での財務報告,これは絶対に求める必要があると思います。
 今も一部,脚注で注記をするというような規定があるようですが,こんなのでは全然役に立たないと思います。
【増田座長】
 今の監事の選任の仕方もあると思うんですね。今,理事長が評議員会の同意を得て選任するとなっていますけど,この辺の選任の仕方の問題,それから独立性ですよね。そういったことがきちっとしないと,やっぱり監事は機能を果たしづらい,職務を果たしづらいんじゃないかなと思いました。
【安西委員】
 監事の権限,あるいは任命の手続等々,立てつけの問題と,さっきから言われている抜け道を塞ぐ。どういうふうに立てつけをつくろうと,いろいろな抜け道というのはあり得ますので,それを塞ぐということと,ちょっと別に考えていただいたほうがいいんじゃないか。
 理由は,学校法人の規模が,さっきからありますように非常に違うので,大学関係でいえば,やっぱり年間予算が数100億,1,000億台,2,000億台,そういう大学もあるわけで,そういう,かなり大規模な予算を流している大学の監査というのをどうやってやるかというのは,やはり相当独立した監事でないと,それはできませんし,時間も相当使わないとできないはずなんですね。これと幼稚園等々の監事とは,ちょっと違うわけです。
 それを考えたときに,大学にいた者として申し上げられるのは,やっぱりどうしても大学側としては,穏当にいきたいというのか,そういうことは働く可能性がありますので,やはりスタンダードというのか,ケースというんでしょうか,監事はこういうことをやるべきだということを,また,こういうことはきちっと塞いでほしいということを,その立てつけとは別に,スタンダードなケースを並べて,それを例示してあげる必要があるんじゃないかと思いますね。大学側は,抽象的な監事はこうあるべきだと言われても,やはり具体的にどういうことをやっていけばいいのかということは,大規模な大学は分かっているところもありますけれども,一般的に言って,学校法人みんな,監事はこういうことをきちっとやるべきだということを,抽象的なレベルではなくて,具体的に教えてあげる必要があるんじゃないかというふうに思います。そういうギャップは,法律家の先生方と大学の現場と,やっぱりあるということは御理解いただけるといいんじゃないかと思います。
 ちょっと議論が外れるかもしれませんけれども,これがやっぱりうまくいっていただくためには必要なことなのではないかというふうに思いました。
【増田座長】
 安西委員のおっしゃられる意味ですが,会社の場合は,監査役協会で監査役の監査基準というのをつくっています。だから,それでいくと,会計士の側もそうですけど,会計士の側も,やっぱり監査基準というのをつくっていますよね。やっぱりそういうのがないと,いわゆるよりどころというか,最低でもこれはしなきゃいけないというのはあるわけですから。
【安西委員】
 本当は学校法人の監査やっている方々の団体みたいなのはあって,そこがきちっとコードを,ガバナンスコードというのか何というのか,モラルコードですね,それを持ってやられるような方向が,私学という立場では望ましいような気がします。ちょっと遠い話で恐縮ですけれども。
【増田座長】
 見本はあるわけだから,同じようなことできるとは私は思いますけれども。そんなもの,最初から高度なものをどんどんつくっていく必要もないわけだし,走りながら考えるので,一応できるとは私は思いますけどね。
【安西委員】
 何かそういう,国に頼るとかそういうことよりも,私学として自律して,監査の在り方をきちっと積み上げていってほしいなと思います。そのためのステップという,きっかけをつくってあげないと,学校法人側は,自分たちではなかなか動かないだろうなと。現実問題として,そういうふうに思うところありますね。
【増田座長】
 この間,私学の関係団体の方,来られて,いろいろお話しされたけど,そういったものをちゃんと提示していけばいいと思うんですね。そういった中身を,監事の集まりだとか,そういうのがあって,自主的にこういうマニュアルみたいなものをつくってやっていくんだというのを出していかないと,世間に認められるようにならないと思いますね。
【安西委員】
 ちょっと気になっておりますのは,この間のヒアリング,そうですけれども,現状を言っているだけだと。現状維持したいんだというふうに,こちらサイドは思うと。
 一方で,じゃあといって,どうしても対立関係になっていくことが多少気になっておりまして,やはり彼らに対して情報を与えてあげないと,なかなか本当にいいものはできていきにくいだろうなと思いますので,それでちょっと申し上げた次第。
 立てつけは,おっしゃるとおりだと思いますので。
【本山委員】
 監事は,もう相当前ですけど,どちらかというと,教員で退職された方を中心にしながらやっていたんですね。監事の役割が何かと説明したって,よく分からない。それで,私が理事長になってから一応,卒業生もいろいろな役員をやって,監査役をやって退任した。まだ,どこかいろいろな団体で監査役をやっている人間もいますけれども,監査役とは何かということを口で説明しなくたって分かるような人間,ある程度大きな企業,大企業,それを1名と,もう一つは,公認会計士ですね。卒業生で公認会計士がいますから,それを選んで,監事としています。それが1期2期続いて,任期もありますから。
 それで,今はどういうふうになっているかというと,会計士の場合は全部,公認会計士も入っているわけなので,ダブっている部分もありますから,むしろ弁護士の卒業生で,理科大なのに珍しく弁護士もいますから,そういう人間に,ひとつ勉強の意味で監査役をやってもらうのと,もう一人は,研究のほうの,業務のほうの,お金のほうだけ,不正,悪いことやっていないかという話だけの中心だった部分もあったんですけれども,いわゆる業務監査のところでね。研究の監査だとか,その辺はどうなのかということを一応見る必要があるんじゃないかということで,今期は,次の理事長が選んでくれたんですけれども,前の経産省の事務次官の方を選んで,具体的な例で恐縮ですけれども,そういった形で選んで,あくまでも独立した形でもって,理事長のサポートする。理事長の言いなりになるという意味じゃなくて,いろいろヒアリングしてもらって,理事長が見えないところを必ずつかんでもらうと。
 それと,先ほど来から議論出ていますけれども,文科省からは副学長も監査しろというふうに言われていますので,副学長も見るようにしていまして,理事長と副学長,それともう一つは,法人の事務員,部長ですね,部長にもヒアリングも全部やるようにしております。そういった関係で,月1回しか来なかったんですけれども,大体,月に二,三回来ていただく。先ほど二,三回来ていただけば常勤,どうか分かりませんけれども,給料も上げまして,少し,月1回で,常勤はちょっと難しそうなので,そういった形で段階的に少し日数を増やして,給料も上げて,きちっと見てもらおうというふうな形に変えましたけどね。
【増田座長】
 先ほど内部統制の話が出ましたけど,これは岡田委員からも監事のところで,やっぱり内部統制の仕組みをちゃんと理事会のほうでつくる,内部統制の構築義務を理事会に課して,先ほどはツーレポートラインと言いましたけれども,監事と,それから執行部のほうの,両方に出すような形がいいじゃないかという話がありましたけど,この辺のところは非常に重要なところだと思うんですね。多分この後,会計監査人と内部統制ということで,第8回のときに議論することになってはいるんですけれども,この辺も監事と,やっぱり内部統制部門というのは当然重要な関係があるわけで,内部統制構築の義務づけを理事会にして,それはスタッフもちゃんとそろえてやるということにしないと,監事はスタッフもあまりいないという状況ですと,なかなか機能を果たせない,職務を果たせないということになると思いますので,この辺のところも理事会の職務の中に義務づける必要があるんじゃないかなと私は思います。
【本山委員】
 その場合の監事のスタッフは,今年は前回までやった監事を1人スタッフに置いて,それともう一つは,監査室のメンバーがサポートするという体制になっていますから,監事だけで全部動ける。スケジュール調整も何も全部,それは秘書のほうがやるようにして,全部流して監事のサポートをするような形にはなっています。
【野村委員】
 先ほどちょっと私が勘違いをしていて,差止め請求権の規定がないのではないかと申し上げたことに対して座長のほうから御訂正いただきましたが,確かに一般社団法人法の条文を準用する形で,先般の改正で導入はされているんですが,それは,先ほど冒頭に,監事の職務のところで,法人の業務を監査する,法人の財産の状況を監査する,さらには理事の業務執行を監督するという,三つ立てになっているんですけれども,そのうちの三つ目について差止め請求権がある形になっているんですね。そうなりますと,どういうコンセプトなのか分かりませんが,法人の業務の監査というのをやっておきながら,法人の違法行為については差し止められないという立てつけになっていますので,どうも,どういう整理なのかがよく分からないと。そうすると,準用条文じゃなくて,やっぱり表出しして,学校法人,私学法だけ独特の条文をつくる必要があるかどうかも含めて,ちょっと検討していただく必要があるんじゃないかなと,1点だけ,ちょっと付け加えさせていただきます。
【相原補佐】
 まさに今,野村先生から指摘いただいたところと, 3点ほど補足したいと思います。
 常勤の監事のお話が幾つか委員の先生からも御指摘いただいていましたが,こちらは現在の学校法人の状況,回答ベースではありますけれども,データ集にも載っておりますが,私学,私立大学全体で今92%が非常勤,8%が常勤の監事を設置しておられるというようなデータが一つございます。
 それから,ここで監事のサポート体制についても今日も議論及んでおりますけれども,また座長から御指摘もありましたように,内部統制の,まさに具体事項。実際には省令の事項が多いわけですけれども,そこの議論の中で,また会計監査人なんかとも併せて取り扱ってい ただければと思います。
 それから,野村委員から御指摘のあった,多分,会社法386条だろうと思いますが,会社と取締役の訴えについて,監査役が会社を代表されるというような規律については,確かに私立学校法上は設けられておりませんが,この点は,一般法人法においては,制度は既にあるというところで,違いは出ているというところであります。
【増田座長】
 理事会の役割として,議事録作成なんかの話が出ているんですけれども,結局これについては,寄附行為の中で,みんな決めるような形になっているんですね,今の私学法はね。だから,これをちゃんとした,今後どういう形で公表するかということも関わってくるわけですけれども,備え置くということと,議事録は今まで作っているか作っていないか分からないんですね。議事録というのはあるかどうか分からないし,それをどこにも公表していないから,いいかげんなことをやっているんじゃないかと,みんな思っている節があるわけですよ。だから,ここはやっぱり寄附行為じゃなくて,本当は定款のほうがいいと思うんだけど,ちゃんと,やっぱり法律に作成義務を書いたほうがいいと思うんです。議事録をちゃんと作成して,備え置いて開示するということをね。やっぱりそうしないと,プロセスが分からないですよね,どういうふうに決定していったかということがわかるように。
 監事が監査する場合でも,会計監査人が会計監査する場合でもそうですけれども,あとは理事会が監督する場合でも,過去にこれ,ちゃんと審議し決議したのかとか,それも見えないわけですよ。
 だから,そういう意味じゃ,そういった決定のプロセスの見える化も考える必要あるのかなと思います。
【八田委員】
 今,増田座長言われたように,理事会のところで,2ページ目の論点整理,一番上。既に有識者会議のほうで,ここのところはかなり詳細な議論をしていて,それをピックアップして,まとめてあります。私も驚くべきこと,体験の中であったんですけれども,これまで議事録を作成していないという大学もあるんですね。じゃ何をもって理事の業務の執行を監視できたのか,監事からの目で見てですね。つまり,この大前提に立つようなことが非常に稚拙になっているということがあります。
 ただ,改革会議のほうでそこまで,言うならば,レベルの低い話までしなきゃいけないのかとなると,これはもう有識者会議のほうでまとまっていますから,ここのところの議論をもう少しちゃんと明確にする形で報告書には盛りたいということで,いかがでしょうかね。
【増田座長】
 次回のときには,前回までに議論した評議員,評議員会,それから今日の理事会,理事,それから監事,それぞれの役割についての一応の皆さんの御意見をいただいていますので,それを論点整理としてまとめまして,皆さんに確認したいと思うんですね。ちょっと細かいことも入りますけど,決議事項なんかどうするかというのもありますよね。理事会と評議員会の決議事項,どういうふうに仕分けしていくのか。あるいは,両方で決議するけれども,評議員会のほうが上位で監督するかとかですね。その辺のところも,ちゃんとまとめたいと思うんですね。前回までに一応お話はついていると思いますけど,今日の理事の話と監事の話と含めまして,まとめたいと思います。皆さんの同意を得た上でまとめていかなきゃいけないので,何かあれば,また,今日は時間がありませんので,それまでに御意見があれば,事務局の方へ言っていただければと思います。
【久保利委員】
 普通,会社法だと,何でもかんでも法律には書けないので,そこから省令であるとか政令に移管をして,かなり細かいところまで,箸の上げ下ろしと言っては語弊がありますけれども,それがないと,実は企業もほとんど動けないんですよね。ですから,法律はできたけれども,政省令ができないので,まだ中身はなかなか決まらないという,そんな一部上場会社が幾らもあります。学校法人に,やっぱりそういうかなりのディテールまで示さないで,こんなふうなという概論だけ言ってみても,なかなか実効性のある改良は難しいかなと思うので。そこまでが僕らの役割かどうか分かりませんけど,文科省のほうでもよく考えていただいて,いわゆる,つまらん箸の上げ下ろしじゃなくて,きちんとして,これ効果を出せるような仕掛け,仕組み,ガイドライン。だから,こういうものをつくるという方向でやらないと,実効性は上がらないかなと思いました。
【安西委員】
 大学を含めた学校法人,やっぱり,ある意味横並びで,やらなくていいことはやらないということになりがちなので,さっきの議事録作らないとかいうのも,ちゃんと議事録は作るものだということを,ある意味明記してあげないと,それはなかなかやらないと思います。
 そういう意味で,私学法に明記することも含めて,最低限のことはきちっと,こちらで報告書に含めて出していただいたほうが,結果的には成果が上がるのではないか。私学にとってもいいことになるというふうに私としては思いますね。
【酒井委員】
 これはちょっと将来の立法の問題ですが,今の議事録もそうですが,例えば内部統制システムについては,会社法で基本だけ定まっていて,会社法施行規則で細かく決まって,さらにガバナンスコード等があるので,やはり将来の立法としては,全部私学法に入れるというのは,これまたあれなので,省令に落とすもの,ソフトローでやるものとか,その辺はやっぱり,文科省がよく考えてもらえばいいと思うんですが,やってもらったらいいと思います。
【野村委員】
 条文の中に議事録閲覧謄写請求権というのを設けると,議事録作っていないと駄目だということは分かりますので,それだけです。

<議題2 全国知事会からのヒアリング>
・事務局から配布資料について説明。

【増田座長】
 それでは,議題2に入りたいと思います。全国知事会からのヒアリングに先立ちまして,都道府県私立学校主管部局及び都道府県知事所轄法人に対するアンケートの結果につきまして,事務局より御説明をお願いいたします。
【相原補佐】
 資料2に,都道府県の担当部局課のアンケート結果と,それから,都道府県の所轄の学校法人のアンケート結果をまとめております。
 まず,都道府県のアンケートから紹介になりますが,問1といたしまして,前進の有識者会議の3月の報告書の事項について,どのように考えるのかという意見で,グラフにございますように,おおむね賛成,それから懸念はあるけれども賛成という意見が多くなっておりますが,やはり,この2番,3番の役員の選解任,評議員の構成なんかの在り方の部分では,少し懸念が強いというような状況が見てとれるかと思いますが,ここも本日,八田委員から御指摘のあったように,情報の部分,あるいは評議員会のイメージというのが十分にはつかめていない中での御心配というような面もあろうかと思います。
 次に,問2ということで,懸念がある,あるいは反対を選択された県の具体の自由記述をここで掲載しております。
 この前の私立学校関係者のヒアリングの意見とかなり似たような御意見を頂戴しておりますが,規模,地域の違いがあるため,一律に人員の数や質を確保することが難しい。あるいは,都道府県の所轄の,特に体制というところへの懸念,そして,その準備の時間を要するといった御意見をいただいております。
 また,問3といたしまして,都道府県で独自の,そういったガバナンス向上の取組というのもお聞きしておりましたが,私学助成の要件といたしまして,国同様に,不祥事等があったような場合に不交付や減額といった措置を行ったり,あるいは情報公開を義務づけたり,そのような取組が見られるところでございます。
 続けて,問4といたしまして,大臣所轄の学校法人は,財務書類の一般閲覧とインターネットの公開というのが義務づけられておるのに対しまして,知事所轄法人においては,この部分が利害関係者の閲覧請求ということにとどまっておる制度の違いがございます。そのため,現状として,どの程度開示の取組がされているのかというところをお聞きいたしましたところ,ここの表のとおり,近年,かなり開示が急速に進んでおるようでございまして,全ての記載情報を開示しているという県も9件出ておるところであります。一部の書類についても小科目まで開示されているというところも合わせて21件というような回答になっておるところです。
 次に,問5といたしまして,この大臣所轄法人と同様の情報公開の取組をすることに対してのスタンスといたしましては,賛成が26,懸念があるというのが18というような状況。
 その具体の懸念ということで,問6のほうで自由記述でございますけれども,インターネット環境が整っていない小規模な学校法人もあるというような御意見,また公表によって法人の正当な利益を害するおそれがあると考えるというような御意見を頂戴したところです。
 また最後に,自由記述として,こういったガバナンス改革全般に,質問事項以外で提案があればということで,いただいた意見といたしまして,特殊関係者の評議員の就任というのを制限すべきであるといった御意見,それからガバナンス改善に国のほうでもインセンティブというのをつけてほしいと。あるいは会計監査に関して,所轄庁も連携するような形を取れないかといった御意見をいただいたところでございます。
 次に5ページから,都道府県の所轄の学校法人のアンケートについて回答を取りまとめております。
 今回,この法人数の回答数が2,000程度ということで,全体としては3割に満たない回答数でありまして,まずは速報値として御紹介をいたします。現在も回答のほうは受け付けておりますので,また最終の集計値を追って御紹介したいと思います。
 まず5ページですけれども,理事の人数ということで,7人弱というのが県所轄法人の平均。そのうち校長が1.1人,そして評議員から評議員会で選任された者が2.9人,そして寄附行為による選任が2.8人というような構成となっておりました。外部理事は2.8人おられるということでした。
 次に,このうち,評議員の2号理事について,どのような選任の方法を取っておられるのかということで,選択肢としては幾つかありますが,理事会で選任しているというのが9%,評議員会が同意・承認・推薦等を行って理事会へ選任しているのが3割弱,そして評議員会で選任しているというのが6割と,このような状況となっております。
 また,3号理事ということで,寄附行為で各法人の選任するところにつきましては,少しこの①の理事会選任というのが半数超というような回答の状況となっております。
 次に2-4でございますけれども,理事の解任の事由あるいは解任の手続を明確に寄附行為で定めを置いているのかどうかというところについては,解任事由のありなし,解任手続のありなしで,組合せで回答をいただきました。この中では,解任事由がない,そして解任手続もないという法人が1.3%含まれるという回答でございました。
 また,その次に理事長の解職手続について同様に寄附行為の定めがあるかどうかというところでは,定めのあるところが6割,ないところが4割弱というような回答となっております。
 次に評議員会の状況でございますが,評議員の全体の数につきましては,およそ理事の2倍超ということで法令上もありますが,平均で15人弱ということになっておりました。
 そして,このうち役員が2.6人,それ以外の職員が1.4人,教員が2名というような構成ということが姿として分かったところでございます。
 また,このうち評議員で3号ということで,外部者の評議員の直近の経歴というのでアンケートをしておるのが,この回答3-2ということになります。
 次に3-3ですけれども,評議員会については,諮問事項を一定の議決を要するという取扱いも法令上できるということになっておりまして,現在それを,どの程度の事項に議決事項として位置づけているのかということで,ここで御覧いただきますと,多くの法人で一定の事項について運営上,この重要方針を評議員会の議決を得ているという回答であったところです。
 最後に監事等でございますけれども,監事の平均は2人ということで,法令上ぎりぎりの最低定数を確保しているという数字となっております。
 また,監事がおられる場合に,内部監査との連携,あるいは補助職員を配置しているのかというところでは,一定の連携をしているというのは8割ございますが,補助者がいるかどうかということになりますと,資料下のほうですけれども,3割に職員の配置というのは少し下がってしまうという状況でございます。
 次に,会計監査人の監査につきましては,私学助成の受給に伴って受けているという法人,これが4分の3でございますが,それ以外にも任意で独立監査人の監査を受けておられるというところも13%あったところであります。
 最後に,監査人と監事の連携については何らか取っておられるという回答が約6割というような状況でございました。
 最後,決算等の状況,情報につきましては,また後ほど御確認をいただければと思います。
【増田座長】
 本日は,全国知事会を代表して,東京都生活文化局私学部私学行政課の伊与課長に御参加を頂戴しております。それでは,全国知事会から御発表をお願いいたします。
【伊与氏】
 最初に,今回,私お話しするのは資料3の部分ですが,左肩に全国知事会提出資料となっておりますが,最初に申し上げておきますが,私,本日は全国知事会の代表意見ということではなくて,東京都の私立学校所管部の意見として,こちら提出させていただいておりますので,その点はお断りさせていただきます。
 文部科学省のほうから,私立学校の多い都市部の自治体をということで,全国知事会を経由して東京都に依頼があったものと認識をしております。ということで,東京都としてお答えをさせていただきます。
 早速ですが,3月のガバナンス改革会議の提言に対する東京都の意見でございます。今,こちら,画面に資料を投影されておりますが,表にお示ししているとおり,四つの論点に整理して,私立学校所管部としての意見を述べさせていただきます。
 まず一つ目,学校法人に社会福祉法人等と同等の仕組みを導入することについてということでございます。これについて,東京都といたしましては,事業の目的・性質,設立のハードル等が全く異なっております社会福祉法人等のガバナンスの仕組みを学校法人に同様に適用することは,学校運営・教育活動における私学の自主性,独自性に重大な影響を及ぼす懸念があると考えております。
 次に二つ目,大学法人対象の3月の提言について,都道府県知事所轄学校法人に適用することについてでございます。東京都の意見でございます。幼稚園,小学校,中学校,高等学校等を設置する都道府県所轄法人は,大学法人とは,事業・財政規模や事業運営の状況が著しく異なっております。このため,評議員等の制度変更をそのまま当てはめると,人材確保ですとか法人運営のコストが課題となって,かえって機能不全を起こす可能性もあると考えております。都道府県知事所轄法人の法的規制については,その規模や運営実態を踏まえた検討が必要であると考えます。
 3番目に,評議員会・評議員の職務等についてでございます。3月の提言による評議員の役割・権限の強化や就任制限により,評議員の責任・業務量は,現状に比べて,相当に大きなものになると認識しております。都道府県所轄法人は,先ほども申しましたが,事業・財政規模や事業運営の状況が様々であり,現状においても役員・評議員の成り手の確保に苦労している法人が多数あるというのが現状でございます。各学校の教育理念や実態を理解する評議員の選任ができないことにより,建学の精神に基づく学校運営・教育活動への悪影響が生じるおそれがあると考えます。
 四つ目でございます。これまでのガバナンス強化との整合性でございます。私立学校法はガバナンス強化を目的として,令和元年度改正により,監事,評議員会等の規定改正が行われたところでございます。こちらは令和2年4月施行でございます。各学校法人は改正私立学法に基づきまして全法人寄附行為変更を行って,ガバナンス強化に取り組んでいるところでございます。
 ちなみに,東京都所轄法人は準学校法人を含めて約700法人ございまして,これら700法人について,全て寄附行為変更を行ったところでございます。
 こうした状況がある中で,さらなる改正を行うのであれば,令和元年度改正の効果を十分に検証した上で,内容を検討するべきであると考えております。
【八田委員】
 これまでの議論を,ある程度確認されていれば,今日のこの意見が若干齟齬を来しているということをお気づきになるんじゃないかなと思います。というのも,このボックスの二つ目,そしてボックスの三つ目に,それぞれ評議員の件で,人材確保とか成り手の確保が困難,困難と書いてあるんですね。
 先ほど相原課長のほうで説明された資料でいくと,現在,このデータの資料ですと,問3-1で,評議員総数の平均は15人弱なんですよ。多分そんなに大きくないのも全部入っていますよね。
 我々がこれまで議論してきたのは,もっとスリム化して,一桁の評議員で実質的な業務を行っていただきたいというわけですから,法人のほうにとってもコスト負担というのはずっと軽くなるし,ただ成り手の評議員の方々の役割,責任はそれなりに重くなるということは当然で,それに対して堪えられるような人材は十分にいると私は認識しております。
 したがって,成り手がいないから,人材確保が困難だからという考え方については,そんな数なんか要らないわけですから,この辺の御認識の違いを明確にしていただきたいと思います。
 それから,今回の改革会議の冒頭の趣旨にも,社会福祉法人等と同等云々と書いていますが,これはガバナンスの仕組みをあるべき姿で考えていくんだということで,何も社会福祉法人の業務が違うから違う形のガバナンスを考えているわけではないんですね。その辺の,いわゆる基本的な御理解もしていただいたほうがいいのではないかなと。
 そうすると,業務の執行と監視・監督と明確に分けて,そして健全な組織運営をすれば,監督官庁も十分な監視・監督ができるというふうに考えますので,かえって業務は軽減されるんじゃないかなという気がします。
【野村委員】
 ちょっと実務的なことも関わることですけれども,先般の改正で,700に及ぶ監督対象の学校法人に対して寄附行為の改正をお求めになられたということだったんですが,この作業の中で,学校法人のほうから強い抵抗があったとか,あるいは作業が滞ったとか,そういったようなことがあったのかどうか。また,この作業にどのぐらいの日数がかかったのか,ちょっと教えていただけますでしょうか。
【伊与氏】
 まずは八田委員の御意見に対してでございますが,こちらの東京都意見は実際,都道府県所轄法人として700の法人を,実はお話をして,学校の法人運営,学校の実態等も見せていただきつつ,申し上げた意見でございます。人数で,今よりも人数的に縮小されるからというのは,机上の空論かなと思います。
 実際,今回,この評議員会の改正をするのであれば,委員もおっしゃっていましたけれども,理事の選解任ですとか,重要事項の議決ですとか,非常に権限も大きくなろうかと思います。
 また,理事との兼任を基本的に認めない,あと学校の教職員なんかの評議員の収入も基本的に制限していくという方向ですので,基本的に外部の方が評議員になるということを考えると,外部の方で勉強して,きちっと学校の学校運営,現場の実態について勉強して通じていただいて,これだけの権限をということで,今,都道府県所轄法人,実際,評議員はボランティア的に無報酬でやっていただいている方が多い中で,実際これを引き受けていただける方を探すというのは,非常に困難が伴うものと思っております。
 単に人数が今よりも縮小するからということではないのではないかなと,都道府県の所轄の実感として考えるといったところでございます。
 あと,700法人の寄附行為変更のことでございますが,こちらから,東京都のほうからも寄附行為の作成例等を示して,各学校法人とやり取りをして,改正について御理解をいただいて,進めていただきました。
 期間としては,年単位ですね。数年かけてやっているというところでございます。
【野村委員】
 少なくとも年に1回は評議員会開かれていたはずですが,寄附行為を変えること自体に何年もかかるというのはなぜですか。
【伊与氏】
 こちらで東京都のほうで処理している年数のお話ですね。それぞれの学校法人さんは,おっしゃるとおり,寄附行為の変更案文作って,理事会,評議員会なりにかけて,東京都に申請していただければなんですけれども,それを受ける東京都の立場としては,それだけの数の法人がありますので,処理するのにスパンが必要であるということですね。
【野村委員】
 私が伺いたかったのは法人側のほうの対応だったんですが。事務処理にかかったのは分かりましたけど,法人のほうで強い抵抗があって,全然受け入れられなかったということはなかったという理解でよろしいですね。
【伊与氏】
 強い抵抗があって受け入れられなかったということは,私は聞いておりません。令和元年の改正についてのお話でございますよね。
【増田座長】
 伊与課長,先ほどの八田委員の質問の2点目。要するに,学校法人が社会福祉法人だとか公益法人と違う,全然違うんだということで,同等のものじゃおかしいじゃないかということを言われたんだけど,それについてはどうなんですか。同等のものじゃおかしいじゃないか,学校法人。ガバナンスについての考え方ですよ。
【伊与氏】
 このガバナンス改革会議がもともと社会福祉法人等と,そのガバナンスの仕組みを,学校法人もそろえるということを前提に議論が始まっているというのは聞いておりまして,認識しております。この辺,文科省さんにもお聞きしたいんですけれども,都道府県法人についていったときに,今回のガバナンスを強化するということについては,問題だとか不祥事という言葉が資料の中でも使われておりましたけれども,実際,社会福祉法人で近年の不祥事どれだけあったかということと,都道府県所轄法人で不祥事どれだけあったかということって,実際比べて,その辺のエビデンスって取っていらっしゃるんでしょうか。
【相原補佐】
 文科省のほうでは例年,各都道府県の措置命令の発動状況といった部分の調査はかけさせていただいております。ただ,社会福祉法人の実際の指導の状況といった部分は,私どもは把握はしておりません。
【伊与氏】
 ガバナンス強化するのは,ガバナンスの在り方を変えることによって,一つには問題だとか不祥事を起こす学校法人を抑制したいということがあると思うんですけれども,その中で,社会福祉法人のガバナンスを学校法人に同様のものを適用するということは,当然,都道府県学校法人よりも社会福祉法人の不祥事のほうが少ないだろうなと思っているんですけど,きちんとエビデンス等の確認をされていないで,社会福祉法人のガバナンスを学校法人,都道府県法人に適用していくというのは大丈夫なのかなと心配になっているんですけど,比較って本当にされていないですか。
【酒井委員】
 今,エビデンスのお話が出ましたから。実は,このガバナンスの在り方として,三権分立という考え方,これはもう1600年以降の人類の英知でして,三権によって抑止したほうが,二権といえば,例えば監事のみが理事会を抑止するより抑止効果が上がるのは,エビデンス以前の問題で,世界の民主主義国家は全て,この三権分立を使っているんですね。ですから,これはむしろ,もう形として常識ということで,そこに一つ一つのエビデンスを求めること自体は無理がありますし,実は,どうしてかといいますと,この三権分立による抑止効果によって,起こるべき不祥事が起きなかったことは,エビデンスで立証することはできないんですね。ということを考えると,やはり人類の英知であるガバナンスの形,三権分立ということ,それはもう避けて通れない改革だと思います。
 ですから,我々の議論も,ここでエビデンスを議論することは,あまり生産的ではないと思います。
【伊与氏】
 評議員については私立学校法で,先ほども話がありましたけれども,理事の定数の2倍超ということで,そういう意味で,学校関係者の理事と,あと外部有識者等の評議員で,学校の運営だとか学校現場のことも分かりつつ,外部の意見も取り入れていくということで,ある意味,うまい仕組みになっているのかなと思っています。
 実際,法令上では,そこで定めていないですけれども,寄附行為で各学校法人のほうで議決機関の扱いにしている法人も,先ほどアンケート結果でもありましたけれども,非常に多くの法人がそうしているというところで,現在の私立学校法の規定も,ある程度,評議員のところについては合理性がある形でつくられているのかなと認識しています。これを今回,大きく変えるということなので,それは社会福祉法人に倣ったような規定に変えるということで,逆に大きく変えてしまうことによって,学校法人のガバナンスが,かえって悪くなってしまうという可能性もないではないと思う。仕組みを変えるわけなので,そこで影響があることは当然なので,よくなるかもしれないし,悪くもなるかもしれないということで,そのときに,エビデンスは関係ないというようなことをおっしゃっていましたけれども,実際,都道府県所轄の学校法人のこれまでの問題と,今ガバナンス強化していらっしゃる社会福祉法人での実際の問題,不祥事の数を,実際どうなのかというところは,この仕組みを導入するという上で,検討材料の一つとしては当然,見ておくべきではないのかなと思うんですけれども。
 原理で三権分立の話に遡って,実際の現実に動いている学校法人の話を言われてしまうと,そうですかというところではあるんですけれども,実際,ちょっと心配は拭えないところかなと思います。
【増田座長】
 700法人あって,全然今まで問題起きていないですか。不祥事は何も起きていなかった。今まで何にも問題点はなかったんですか。
【伊与氏】
 そこの話にすり替えられると困るので,これ日本全国の法令改正の話をしているので,日本全国の傾向どうですかということを私は話しているんです。
【増田座長】
 東京都で結構です。
【伊与氏】
 全くないわけじゃないですよ。ただ,私,社会福祉法人と比べてどうですかということを尋ねていて,そこは私,情報ないので,そこは国のほうで調べていただけないかと思うんですけれど。
【戸張委員】
 ガバナンス改革の問題でもちろん不正防止もありますけれども,子供が減っていく中で定員割れしている学校は知事所轄でもあると思いますので,きちんとそういうことに対応することをやる理事長が必要で,何もしないと再任されないというようなところに意味があるのではないかと思っております。
【八田委員】
 伊与さんがさっきおっしゃった,評議員,理事が当然であって,それはうまく機能しているという,この前提が我々とは全く違うんですね。理事というのは業務執行されるわけであって,監視・監督される立場の人間ですね。評議員は,それを上位の目から見るわけであって,その両方,アクセルとブレーキを兼ねてガバナンスが健全だという理解は,もう今現在の考え方は通用しないわけです。ただ,学校法人の歴史がありますから,こういう形になってきたのは否めない事実ですけどね。それを原点に立ち至って今考えているのは,この改革会議ですから,その辺を誤解なきようにお願いしたいと思います。
【野村委員】
 伊与課長がおっしゃっておられることは分からなくはないんですけれども,基本的にガバナンスの問題を我々なぜ考えているかというと,御指摘のとおり,不祥事について多いところ少ないところがあって,多いところが失敗していて,少ないところが成功していると,そういうことではないんですね。これ多くある,数が多くて業務が,例えば複雑だったり,お金を触る業務だったりとか,そういったようなものであれば不祥事は起こりやすいので,仕事の種類によって不祥事の数は違ってきますので,ガバナンスだけで不祥事が全部防止できているわけではないわけですよね。
 ですから,数比べてもあまり意味がなくて,まず形で我々がこだわっているのは,先ほどから出ていますように,難しい問題じゃないんです。普通にスポーツやるときに,監督と選手が混然一体となっていますと,これ当然のことながら監督する人は,自分もサッカーのコートならサッカーのコートに入って球蹴っちゃっていますと,当然,失敗したことについて,ドンマイドンマイになっちゃうんですよね。
 ところが,監督というのはコートの外にいて,選手が選手として専念しているという形になれば,選手交代ももちろんできますし,それから報酬でコントロールすることもできるしという,これ当然の原理なので,これまで会社法も,ほかの法制も,みんな監督する人は独立性を確保するという方向で進んできたんですね。
 ですから,今議論をしているのは,ちゃんとした独立性のある人たちが機能分化した形でガバナンスが効く仕組みになっているかどうかということを問題としているので,そこは前提なんです。
 その上で,どの組織も,独立性を確保すると情報が入らなくなると必ず反対するんですね。それはなぜかというと,監督される人が危機感を覚えるからです。むしろ自分が入っているとコントロールできるので,独立性というのは物すごく嫌いなんですね,みんな。だから,情報が入らなくなってガバナンスが効かなくなるって必ず,100回も1,000回も私聞きましたけど,情報収集は別にちゃんとルートを設けて,情報収集をさせればいいだけの話なんですね。これは機能させればいいだけの話で,監督される人は必ず中に入りたがります。監督するほうの側に一緒に入りたがるんですけど,この仕組みは駄目だということは,もういろいろな組織の中で実証されてきているので,それが残っている学校法人は既に古いタイプになっていますねということは,ここは大前提になっていて,みんなでこの形は普通のものにしましょうということをやっているだけです。
 ですから,今の形は普通じゃない形なので,ですから,この普通な形に戻す方法をみんなで議論しているということは御理解いただければというふうに思います。

<議題3 その他>
・増田座長より,次回会議において,委員の討議を継続するとともに,学校法人において不祥事が発生した際の所轄庁としての対応について,文部科学省からヒアリングを行いたいとの提案があり,反対意見はなく,次回,ヒアリングを実施することとなった。
・事務局(相原私学行政課課長補佐)より,次回は10月15日(金)15時~17時に開催するとの案内があった。

―― 了 ――
 

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