学校法人ガバナンス改革会議(第5回) 議事要旨

1.日時

令和3年9月9日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. 私立学校関係団体からのヒアリング
  2. 学校法人のガバナンスについて
  3. その他

4.出席者

委員

増田座長,安西委員,石井委員,岡田委員,久保利委員,酒井委員,戸張委員,西村委員,野村委員,八田委員,松本委員,本山委員

文部科学省

森高等教育局私学部長,小谷高等教育局私学部私学行政課長,相原高等教育局私学部私学行政課課長補佐

オブザーバー

一般社団法人日本私立大学連盟副会長 村田治
日本私立大学協会常務理事,私立大学基本問題研究会大学経営部会長 水戸英則
日本私立短期大学協会副会長 麻生隆史
日本私立短期大学協会常任理事 川並弘純
日本私立小学校連合会会長 重永睦夫
全日本私立幼稚園連合会副会長 四ツ釡雅彦
全国専修学校各種学校総連合会会長 福田益和

5.議事要旨

<議題1 私立学校関係団体からのヒアリング>
・事務局から配布資料について説明。

【増田座長】
 ヒアリングの開始に先立ちまして,一言申し上げておきたく存じます。当ガバナンス改革の始まりには,幾つかの学校法人における不祥事件や不正事件等が契機となっております。加えて,また,大変残念なことでありますが,ここ数日来,日本を代表する私立大学の日本大学が,東京地検特捜部から強制捜査を受けております。背任,横領の疑いと言われておりますが,こうした経営をめぐる理事等の不祥事が,このところ学校法人で相次いで報道されております。先日は,関西の明浄学院の理事長だった女性が,2審で懲役刑の判決を受けております。こうした不祥事は,ひとえに学校法人が他の公益法人等に比べまして,ガバナンス体制が脆弱であるということ,制度設計に大きな問題があるということがあったのではないか,ということでこの会議が立ち上がったという理由であります。
 不正等から学校法人を守るためにも,ガバナンスの強化が必要だということは,皆様にも御理解いただけることと思います。ガバナンスの体制を強化することによりまして,こうした不祥事件等の発生を未然に防ぎ,社会の批判を受けることをなくすことは無論のことでありますが,将来の日本を担う若者の教育を担っておられる学校法人の皆様方が社会のお手本となっていただきたいからであります。と同時に,将来にわたり我が国が世界の先進諸国に伍して発展できるような教育・研究体制にしていただきたいと願ってのことであります。
 我々,このガバナンス会議のメンバーは,学校法人の今後の発展を願って,提言をしていきたいと考えておるところでございます。関係団体の皆様には,その点に御理解をいただきたいと存じます。
 それでは,早速,一般社団法人私立大学連盟の村田副会長様,お願いいたします。
【村田氏】
 日本私立大学連盟を代表しまして,評議員会の機能についてどのように考えるかということにつき,意見を述べさせていただきます。
 まず,議論の前提となっております,社会福祉法人と同等の学校法人ガバナンス制度改革につきましては,同一的な制度に整えることを目的化しないように,学校法人の何が問題で,何を解決すべきなのかということを明確化し,そして,大学院,大学の教職員が共有化することが重要だと考えておりますので,この点をぜひお願いしたいと思います。
 次に,評議員会に関する機能や権限に関しまして,お話をさせていただきます。現在の議論では,評議員会を理事等の選解任,あるいは法人の重要事項を議決する機関に見直し,そのメンバー構成に学内者を入れないという方向で進んでいるかと思います。
 しかしながら,私立大学の多様な何百もある教育プログラム,あるいは教育体系はもとより,様々な特色のあるカリキュラム,あるいはそのカリキュラム間の有機的な連携,あるいは企業と大学の連携,あるいは研究分野,あるいは医療を含めての問題,それらを含め,専門知識を持たない方が責任を持って大学の重要事項の判断をできるとはとても考えられないということが,まず申し上げたい点でございます。
 また,重要事項の意思決定機関を重層的にすることによって,執行,意思決定,監督の機能バランスが崩れ,大学改革のスピード感が,あるいはスピードが鈍化すると考えてございます。
 御存じのように,高等教育,あるいは大学は,今,非常に大きな国際競争にさらされてございます。国際競争力を保つ,あるいは大学改革のスピードを担保していく上でも,まず,教学と経営が一体的に運営されていく。ヒト,モノ,カネがあってこその改革ができるわけで,その辺りのことを重要に考えていただければと思ってございます。
 私大連としては,私立大学が公の教育,公教育を担う組織として,情報公開を推進し,ガバナンスを強化していくことには全く異論はございません。ただ,現在議論されている方向では,大学ガバナンスを実質化していくことは難しいのではないかと考えてございます。大学の教学及び経営を深く理解した上で,10年先の長期的スパンを見据えた判断ができ,かつ,善管注意義務や損害賠償責任が発生することを承知の上で,本当に評議員になろうという学外者がいるのだろうかと。恐らくなかなかいないのではないかというのが私の個人的な感想でございます。
 したがいまして,評議員会は,これまで積み上げてきました学内外のコミュニケーションのチャネルの役割,これが重要であると考えてございまして,執行の責任と権限を持つ理事会と,幅広い議論と法人運営の意見の反映の中核機能としての評議員会の関係性,その関係性において,役員の選解任については,新たな第三者的な仕組みを構築し,監査機能と連携させていくことが適切な方法ではないかと考えてございます。
 また,私大連のガバナンスコードは,コンプライ・オア・エクスプレインを行うことが原則となっており,現在,その方法論を検討しております。私立大学をまとめる私大連というメンバーシップの中で,会員の自助努力,あるいは自浄作用を高めていくことが重要であろうと考えてございます。
【増田座長】
 それでは,次に,日本私立大学協会,水戸常務理事様,お願いいたします。
【水戸氏】
 まずは,この会議に関して,感謝をしたいと思っております。なぜならば,学校法人のガバナンス改革に資する幾つかの御提言,監事の独立性の強化や不祥事防止の実効性の確保,ガバナンスコードの充実,理事・監事の職務機能の実質化等は,民意を得る対応として,私ども協会としても取り入れ,ぜひ前向きに検討したいと考えております。
 では,ヒアリングの1番目の座長の御趣旨で,社福法人と同等のガバナンス体制を取った場合に,実際の運用面において困難が予想される取組事項があるかについては,評議員会の位置付けが該当するのではないかということです。
 まず,私立学校は,これまで数次の制度改正を経て,一部不祥事は出ておりますけれども多様性を持った制度として安定的に機能してきております。この適正に機能しているガバナンス体制を画一化することは,制度運営上で大きな支障を生む結果にならないかということが懸念されるという点でございます。
 大学は,自治という教職員を中心とする大学人自身による,いわゆる自主的な運営が尊重されるところでございまして,特に私立大学においては,建学の精神を基に,その独立性が担保されることが最重要であります。教学運営,経営管理両面で,外部者のコントロールや監督は必要ですけど,必要以上に強化することは,自主自律運営を旨とする私立大学では望ましくないと考えられるわけでございます。
 さて,評議員会の位置付けでございますが,そもそも私立大学は有志の篤志家がボランティアで寄附を持ち寄り創設され,評議員は現在でもほとんどが無報酬でございます。創設者,教職員,卒業生の集まりが評議員会でありまして,諮問機関としての位置付けの背景には,戦前・戦後,これまでの法的・歴史的経験,経緯を反映しております。全国615ある私立大学の約90%以上が,評議員会を諮問機関として管理運営する実態があり,評議員,構成員約1万4,000名と推計されますけれども,この6割強が,いわゆる教職員,卒業生などの内部者となっており,この事実は重要であるということでございます。
 今回,評議員会を議決機関として,理事会の監督,役員の選解任等,強力な権限を持たせれば,現在の評議員会の運営実態とかなりの乖離が生じ,私学関係者に大きな影響を与えることになるということが懸念されるわけでございます。
 顧みれば,2016年の法改正前の社福法人のガバナンス体制は,評議員会が任意設置とか,役員選任方法等,定款がないという,極めて脆弱な状況において,法改正により評議員会を議決・監督機関としてガバナンス体制を導入しておりますから,これは当然の対応であったと思われます。
 一方,学校法人はガバナンス体制が法的・歴史的にも充実され,法人役員の各責務を規定した改正私学法が1年前に施行されたばかりであり,この中で議決機関の理事会と諮問機関の評議員会の権限機能を入れ替えて運営させるというガバナンス体制を導入することになり,多くの学校法人において大きな混乱を引き起こす可能性は高いということで,実施した場合の影響は提出資料に書いてあるとおりでございます。いわゆる実態がそうなっているから,もし導入する場合にどうしたらいいかということが問題であるということを指摘したいということでございます。
 では,増田座長の2番目の趣旨,どのような代替的な取組を行っていくことが適切かということにつきましては,まず,私ども私立大学協会が提示した代替案が提出資料の6ページに記載してございますので,この案もぜひ中で議論,検討していただければということでございます。
 また,本件に関しては,やはり連盟,協会などと対話を重視して,パブリックコメントも含めて時間をかけてやることが望ましいという2点でございます。
 最後に,座長のヒアリングの3番目の趣旨,社福や公益法人と異なる仕組みを必要とする理由は何かということについてでございます。社福法人では,業務執行メンバーを含まない評議員会に,業務執行を担う理事会に対する牽制・監督機能が与えられております。しかし,私立大学においては,先ほどから申しますとおり,理事会が教学面の活動を支援し,組織,人事,財政面からチェック,監督を行っております。この中で,内部者が多数を占める評議員会が,理事の選解任,重要事項の決定権を持つことになれば,理事会の決定・チェック機能は格段に後退すると思われます。大学が一体として進めるべき教育,経営両面での改革遂行が困難となり,学校法人としての責務が果たせなくなるおそれが出てくると思われます。したがって,学校法人の評議員会は,諮問機関の位置付けが望ましいということでございます。
 以上でございますが,最後に,ガバナンスコードは,私学の健全な成長と発展につなげていくことが期待され,コンプライ・オア・エクスプレイン方式への移行と,さらに充実強化をしていく必要があるということには異存がないところでございます。
【増田座長】
 次に,日本私立短期大学協会,麻生副会長様,川並常任理事様,お願いいたします。
【麻生氏】
 日本私立短期大学協会を代表して,私並びに川並常任理事が意見を申し上げます。
 早速,意見ですが,ガバナンス強化のため,令和元年に改正されました現行私学法はまだ2年半しかたっておらず,それにさらなる改正をするには,もう少しガバナンスに関する検証をした上で議論すべきであると考えます。もちろん,ガバナンスが機能していない場合は,その強化は必要だと考えます。
 今回,審議の資料と動画を閲覧させていただきまして,申し上げたいことが幾つかありますが,一番重要である点について絞ってお話をさせていただきます。それは,評議員会と評議員についてです。仮に評議員会を理事選任・解任に関する決議機関とした場合,当然,評議員には善管注意義務と損害賠償責任を負わせる必要があると考えます。その際,評議員の要件が,理事,教職員を入れない議論がなされております。完全に理事や学校と利益相反に当たらない評議員の選出方法は,評議員選考委員会等を設置して決めるという意見もありますが,その委員会の委員は誰が指名するのか。また,評議員選考委員会には,善管注意義務と損害賠償責任を負わせることがあるのであろうか。様々な疑問が生じ,これは現実的ではないと考えます。
 評議員選考システムの問題のほかに,仮に卒業生及び外部有識者のみが選任,指名された場合,選任されたその方はその職を受託するでしょうか。その責任の重さゆえ,辞退される方が多くなり,評議員が決まらないということが危惧されます。
 さらに,それを防ぐために,理事等と同様の評議員報酬を義務化すること等になれば,学校法人の財政負担も大きくなります。加えて,幾つかの利害関係のない学校法人の評議員を複数兼務して生計を立てる,いわゆる職業評議員のような方が増えることが危惧されます。
 学校法人の評議員は,教学とマネジメントに精通した方がふさわしいと誰しも考えるでしょう。しかし,結果的に私学の建学の精神を理解されない方が評議員となり,学校法人及び設置校の業務執行に影響を及ぼす可能性があります。
改革会議におかれましては,特に小規模法人の実態と,私たちが果たしてきた公共性と私学の独自性をより深く調査された上で,現実に合った議論をされることを希望いたします。
 私から最後に,国際競争力のある大学を設置する学校法人を目指しておられるように拝察されますが,文部科学大臣所轄の短期大学を設置する学校法人は,特に地域貢献,職業教育,女子教育に力を入れ,日本の高等教育の振興に寄与してきました。国際通用性も大変重要ですが,国内の地方創生の一端を担っている短期大学を適切に運営できるガバナンスも組み入れて議論していただきたいと存じます。
 次に,本協会常任理事,川並常任理事からお願いいたします。
【川並氏】
 私のほうからは,総論の一部についてお話をさせていただきたいと思います。
 まず,今回,俎上に上がっております学校法人でございますが,学校法人の規模という形で,資料では4ページに書かせていただいております。大学法人,短期大学法人,高等学校法人等々,法人の区分があるわけでございます。さらに,学校法人,準学校法人,昨今では,文部科学大臣所管法人,地方公共団体所管法人というような区別もされておりますけれども,それぞれの法人の中での規模というものについてまちまちであるということ,大学にあっては,収容定員が800人未満の大学法人が145法人存在し,短期大学にあっては,法人の約85%が収容定員300名未満の短期大学であるということであります。これが同じ文部科学大臣所管法人という形で区分されています。
 また,そういう意味での高等学校法人,幼稚園法人の規模ということについても御検討いただきたいと思いますが,この規模の切り方についても,教職員数,基本金,教育事業活動収入など,いろいろな切り口がありますが,どういう形で議論していただくのが適切かということについても,ぜひ御議論いただきたいと思います。
【増田座長】
 次に,日本私立小学校連合会,重永会長様,お願いいたします。
【重永氏】
 私どもが既に提出しておる意見書を,各委員の先生方,お読みいただいているということでございますので,詳細はそちらのほうに譲りまして,私のほうからは,本日は5点だけ短くお話しさせていただきます。
 一つは,意見書にも書きましたが,対立構造を制度として私立学校の運営に持ち込むことには反対だということでございます。三権分立等のことが援用されておりますけれども,学校教育の場,とりわけ私ども小学校ですとか幼稚園に対立構造を持ち込むのは反対でございます。私どもの学校教育現場には,穏やかな空気が必要だということを御理解いただきたいというふうに思います。
 2点目でございますが,既に大学,短大の先生方からお話しされているところですが,評議員会に,現行の諮問以上の大きな権能を与えるということが構想されていますけれども,これを実施するためには,膨大な事務局機能が必要になるというふうに判断しております。その事務局機能の人件費や費用をどこからお出しになるおつもりなのかということを,疑問に思ってございます。
 三つ目でございますが,私立学校は,創立者と建学の精神を抜きに考えることはできないと考えております。評議員会から,創立者の親族,理事長の親族,あるいは関係者を一切外すと構想されていますけれども,私どもは,それを一概に断じるというのには反対でございます。もちろん私は創立者親族でも理事長親族でもございませんけれども,私立学校の建学の精神というのを一番理解しているのは,創立者の御子孫だったり,親族だったりする場合がございます。そういう方々を一律に外す構想というのは考えられません。
 また,改革会議の中で,自分の銅像を残すために学校をつくった場合もあるというようなことが言われておりましたけれども,私は寡聞にしてそういう人物は知りませんが,一つだけ申しておきますと,神奈川県の私学会館には,神奈川県知事だった方の銅像が据え付けられております。私学関係者の銅像は一つもございません。これは,私学関係者が天動説として自分たちを中心に世界が回っていると考えていないことの一つの証拠だと思っておりますので,御紹介しておきたいと思います。いずれにしても,創立者の子孫や親族というのを,私どもは大事にしてございます。
 4点目ですが,世界に通用する大学をつくるために,攻めのガバナンスをということも御議論されていますが,そのために閣議決定されているので,その方向で改革会議の答申をまとめるというお話だと思うのですけれども,どうしてもそういうことで私立学校法をいじらなければならないのであれば,私立学校法から大学を外して,私立大学法をつくる。すなわち,高専や高校以下の学校運営については,現行で進めるということではいけないのでしょうか。そういうことを思っております。
 最後になりますけれども,やはり私立大学も含めまして,現行法でしばらく進めていくというのが一番いいと思っておりますけれども,そのために閣議決定を取り下げてもらうという選択肢は一つもないのでしょうか。私どもは,私立小学校廃止という閣議決定を受けまして,文部大臣が全国放送をしてしまった後に,閣議決定を取り下げていただいたという経験を持っておりますので,そのことも申し添えておきたいと思います。
【増田座長】
 次に,全日本私立幼稚園連合会,四ツ釡副会長様,お願いいたします。
【四ツ釡氏】
 私立幼稚園といたしましては,1点,規模や特性が大学を設置する法人と異なっているということについて,御説明させていただければと思います。まず,私立幼稚園の規模というものは,地域の実情等に応じて様々ございます。大学などが設置する園もあれば,一つの法人で幾つもの系列園を持っているといった比較的大きな園もございますけれども,ほとんどが100名から200名の園児数である小規模園,また,地方に行けば,本当に100名以下というのはざらにございます。
 私立幼稚園は,創設者が田畑を提供して幼稚園を始めたところが多く,親から子,子から孫へと,家族で細々と経営を引き継いでいっているという,そういった背景がございます。そのため,学校法人といえども,家族的な色合いが非常に強いのが特徴でございまして,その分,建学の精神,教育の理念というものが守られやすいという強みも持っております。
 また,規模が小さい上に,扱う対象となる子供の親の年齢が低く,当然,所得も少ないために,昔から保育料を安く抑えざるを得ない,そういう状況がございました。
 そして,人件費を抑えるために,理事長が園長を兼ね,その園長が自ら送迎バスを運転し事務もやりということで,1人何役もこなして経営を支えてきたということがございます。
 このことが逆に,私立幼稚園の補助金が増えてこなかったということの一因とも言えまして,そのため,学校法人であっても,おらが園なのだという意識が強く残っている状況でございます。
 また,私立幼稚園では,理事,評議員の方々に,小学校の校長先生だった方,地元の小さい会社の経営者の方,議員さん,また,一線を退いた近所の方など,地域の方々にお願いしております。地域に根づいた園運営を行っていると言えると思います。
 それから,大学などと違って,園児が全国から集められるということはできませんので,送迎バスは回しておりますけれども,ごく限られた狭い地域の中で子供が集まってきています。ですから,地元の信頼というものがなければ園児を集めることができません。経営が成り立たなくなるということが言えます。
 そして,この少子化の今の時代,隣の幼稚園だけではなく,保育所との園児の獲得競争があり,その中で園の評判を落とすようなことがありますと,これはもう大打撃でございます。こういったことも,不正を防ぐ一つの要因,一因となるのではないかなとも考えられます。
 それから,評議員の中に現場の教職員が入るということについて,幼稚園は,他の学校種以上に子供と密接に関わり,その分,保護者との関係も深くございます。子供の育ちや,それから,保護者の悩み,要望などを一番理解している現場の教員が評議員に加わるということは,こうした利用者の思いを吸い上げていくことにつながりまして,園運営にとってとても大事なことだと考えております。
 以上のように,私立幼稚園は地域に根づいた存在であり,少子化が進む中,なおのこと地域に根づきながら活動していかなければいけないと考えております。
 したがいまして,評議員と理事会が管理・監督する側される側という関係ではなく,表裏一体となって,共に幼児教育を進めていこうという関係性が望ましいと考えます。
 さらに申し上げるならば,理事会を監督できるような評議員会を設置するということになれば,必要なときにだけ会議に出席するという立場では,正しい評価,判断を下すことはできませんので,常勤のそういった評議員を置かなければならなくなります。そういったときに,人件費がかさみますので,規模の小さな幼稚園では負担がとても大きくなります。この費用をどこで負担していただけるのか。自前でそれを負担せよということになりますと,せっかく幼児教育の無償化というものが実現いたしまして,保護者負担が軽減されるようになってまいりましたことに対する逆行ということも言えるかと思います。
 また,どの学校種も学校自己評価,学校関係者評価等行っておりますけれども,幼稚園も当然,行っております。そういった中で理事会,評議員会,それから学校関係者評価委員会などもございますので,似たようなそういった組織がまたできてくるということになりますと,混乱を生じます。
 それとまた,幼稚園団体,私立幼稚園団体といたしましても,保育の質を評価するシステムも既に構築しております。そこでまた,運営の評価につきましては,保育所,認定こども園などは,第三者評価を受ければ加算が受けられるということもございますけれども,私立幼稚園はそういったことがございません。
 ですので,そういった運営の評価につきましては,当然,小さい規模といえども,公認会計士の監査を,外部監査を受けておりますので,そういったところもしっかりチェックが入っておりますので,考慮いただければと思います。
 最後になりますけれども,新型コロナウイルスがまだ終息に向かっていない中,私たち私立幼稚園も預かり保育を通して,保育所や認定こども園と同様に,エッセンシャルワーカーの方々のお子さんをお預かりしています。本当に現場の中でコロナ感染の先生が出ないかということも心配しながらやっております。そういった,懸命に地域の教育活動を支えている私たちにさらなる負担がかからないように,どうか御配慮いただければと思います。
 本年3月に公表されました学校法人のガバナンスの発揮に向けた今後の取組の基本的な方向性については,大学を設置する学校法人の在り方として,取組の基本的な方向性を示されたものと私どもも理解しております。今後の議論の前提といたしまして,幼稚園の規模,そしてその特性につきまして,さきに述べましたようなことを考慮いただきまして,御検討いただければと思います。
【増田座長】
 次に,全国専修学校各種学校総連合会,福田会長様,お願いします。
【福田氏】
 本日は,専修学校と各種学校,法人で申し上げれば準学校法人の立場から,ガバナンス改革の方向性について意見を申し述べさせていただきます。
 意見書の冒頭で,専修学校,各種学校の制度,また,学校種としての規模,その他特性については記述してございますので,見ていただいているのではないかという理解で進めさせていただきたいと思います。
 本日のヒアリングで,全て学校教育法の1条校のヒアリングがございましたが,専修学校,各種学校は,1条校と異なり,国からの経常費は一切頂いておりません。税制上の優遇策につきましては,現在,基本的に学校法人と準学校法人で差異はございません。
 今回のガバナンス強化に向けた改革は,例えば,社会福祉法人と同様にすべきという意見も聞いておりますが,介護保険と連動した社会福祉法人の運営と学校法人,まして国からの補助金が全くない準学校法人とを同列とみなすこと自体が,それは違うのではというのが率直な感想でございます。
 当然ですが,我が国の教育において大きな役割を担ってきた私立学校が,公益性や公平性の観点からガバナンスの強化を求められていることは十分に理解をしています。改革を進めるに当たっては,当事者である学校法人の意見をお聞きいただき,改革案にその意見を反映させることが大切と考えてございます。
 既にガバナンス機能の充実に関しては,先ほども話が出ておりましたが,私学法改正により,監事機能の強化など,具体的な制度改正によりまして,必要な対応が図られてきています。これまでの監事による内部統制機能の検証を行うことが先ではないでしょうか。
 学校が永続性を持って運営されるために必要な要件が,現行制度に盛り込まれていると理解をしております。建学の精神や教育理念の継承が学校法人にとって極めて重要であり,学校法人の教育と経営に責任を持つ理事会よりも,経営権のない第三者的な立場の評議員会に強い決定権を与えることは,その学校法人の根本的理念が継承されない可能性があると考えます。
 評議員会に全ての重要事項の決定権を持たせることによって,学校法人による不祥事が少なくなるのか。評議員会に対するガバナンスはどのように担保されるのか。評議員会に全権を委ねることがガバナンスの形という論理にはどのような根拠があるのか。これまでの公益法人改革がそうであったからその方向性を踏襲する,そのことが学校法人のガバナンス改革会議であるとするならば,疑問を持たざるを得ません。
 一方で,具体的な改革案が出されていますが,文部科学省所管の法人と都道府県所管の法人との取扱い,及び法人の規模による配慮は,報告書にもあるとおり,必要であると考えます。
 また,積極的な意味で申し上げれば,準学校法人であったとしても,将来的に財務情報等の公開も必要だと考えてございます。特に高等教育機関である専門学校につきましては,既に職業実践専門課程制度や,高等教育の修学支援新制度によりまして,情報公開も進んでおります。決してガバナンスやコンプライアンスの強化,社会的説明責任を果たすことに後ろ向きというわけではなく,必要なことはやっていくべきであろうと考えてございます。
 しかしながら,そういった改革を進めるに当たっては,ぜひとも当事者の意見を具体案に反映していただきたいということを重ねて申し上げまして,意見陳述とさせていただきます。
【久保利委員】
 今,お話を聞いていて,どうも前提となる,要するに立法事実といいますか,何でこういう検討がされるようになってきたかということについて,私の考えていることと,協会の先生方がお考えになっていることは,まるで違うような感じがします。座長も冒頭おっしゃいましたけれども,多くの学校法人,あるいは連合会も含めて,いろいろな不祥事が出ているという事実はお認めになるのかならないのか。この大前提である今,学校法人のガバナンスを強化しないと,不祥事が多発し続けるという危機感についての御理解がどうも我々と違うのかなという感じがいたします。
 2番目に,大学,高等教育含めさらに幼稚園教育の世界との比較というのは,私も目にしたことがありませんので,これは分かりませんけれども,少なくとも大学,大学院レベルの研究・教育について言うと,日本はずっと劣化を続けているわけです。順位はどんどん落ちているわけです。これは大変だということで,政府も肝を入れて,しっかりとそこを是正しようということで考えています。
 この二つが私は今回の改正の立法事実のポイントと思っておりますけれども,このポイントを二つとも否定されてしまいますと,むしろそれは口で何とおっしゃられても,この改正には反対だと。こういう方向での改正はしてほしくないという御意見なのかなと思わざるを得ません。そして,今皆さんがおっしゃっているのは,全て現状でいいのだと。現状のような状態の中で,評議員についても,諮問委員会というか,諮問機関に止めて,議決はさせない。
 しかし,今の評議員というのは,諮問委員としての組織としてその人たちが選ばれているわけですから,それがいるのいないのという話を聞いていると,かつてコーポレートガバナンスで,社外取締役の成り手がいない。社外取締役にお金を払ったら大変だと。こういう議論とほとんど重なるように私は思ってしまいます。今,社外取締役は,そういう状況ではなくて,むしろこれこそガバナンスの肝というふうに会社においてはなってまいりました。
 そうすると,学校法人において,今,皆さん方が異口同音におっしゃっておられた,こういう考え方というのは,これからも維持していかれるおつもりなのでしょうか。ここで改革をしないと,学校法人そのものが,自分たちの学校も含めて協会も含めて大変なことになります。国際競争で負けてしまうということについての危機感はないのでしょうか。
【水戸氏】
 久保利委員の御意見で,まず,不祥事について,認めるか認めないか。私立大学協会としても,不祥事については実際に起きていますし,その不祥事を何とか防止をしなければいけないと。そのためにどうしたらいいのかということについては常に考えているということです。
 今回,評議員会に監督機能を持たせて,不祥事の防止をさせるということについて,果たしてそれが効果があるのかどうなのかというところがやはり議論になっているわけです。それは他の公益法人や会社法でも同じように,様々な改定,改正をこれまで行ってきて,不祥事が起きる都度,改正,改定を行い,また不祥事が起きて,改正,改定を行っているということでございますので,評議員会に監督機能を持たせて不祥事が防止できるのかということが疑問であるということです。
 なぜ疑問なのかというと,評議員会は,先ほどからお話をしておりますように,内部者が非常に6割と多いわけです。ですので,その辺りについて,評議員会に任せておくと,いわゆる不祥事防止の監督機能以上の権限も与えてしまうと,評議員会の中での,いわゆる様々な意見の対立みたいなものが生じて,議事進行,大学運営に支障を来すものではないかなという意味合いです。
 ですから,不祥事防止はしなければいけない。やはり監事が理事の執行状況を見る。理事は理事同士の執行状況を見る。それから,やはり公益通報システムをきちっと完備し,これを義務づけると。そして,コンプライアンス教育をやっていくというようなことで,何とか不祥事防止を図れないのか。協会としては,不祥事が起きたことも認めていますし,この防止を何とか図るためにいい方法はないかということをいつも模索をしております。
 それから2番目,久保利委員の御疑問でございますが,世界に冠たるということでございまして,もちろんハイヤーランキング,世界ランキングでも,なかなか上位のランキングに入ってきません。中小私立大学においても,教育の質というのは,今,文部科学省の中教審でも質保証のシステム部会で,教育の質保証については学修者本位の立場に立った教育ということを徹底しろということで,学内でも,教育の質の保証,内部質保証,これは最重点でやはり教育改革の重点として置いているわけでございます。
 ですので,そこの辺りは,先ほども申しましたように,私立大学の卒業生が毎年210万人おりますから,私も図表をそちらに提出しておりますが,2040年には労働力の6割が私立大学の卒業生になります。その核を,いわゆる中間層,大事な中間層をなすわけですので,そこの教育を徹底しないと,日本の国自体が駄目になるという意識でございますので,協会全体もそういう意識でございますので,教育は絶対におろそかにできないというところがポイントであろうと思います。
【久保利委員】
 お答えいただきましてありがとうございます。非常に明快なお答えをいただいたのでよく分かったのですが,逆に言いますと,例えば,第1のポイントについては,評議員会に任せることは本当に効率的なのか。なぜならば,今の評議員会には内部者が多いとおっしゃいました。しかし,少なくとも我々が今考えている評議員会に内部者がそんなにごちゃごちゃいるなんていうことは考えたこともございません。そこから変えていくということを我々は提言しているつもりですので,そこは誤解ないようにしていただきたいです。
【水戸氏】
 それはよく分かります。
【久保利委員】
 2番目の,教育を大事にする。当然でございます。その教育の質の保証を行うことの意味です。我々が問題にしているのは,その質を保証するとか,いい教育をしろと号令をかけただけで教育がよくなるわけではないです。それはやはりガバナンスというものが大変大事ではないかと思います。そのガバナンスによって,いい教育をしないような理事長や学長は追放されます。そして,本当に質の高いものを教育できるような環境をつくります。それをしましょうというのがこのガバナンス改革でありまして,少なくとも教育の質が高くなければいけないというのは協会の皆さん方も一致していると思います。
 問題は,どうしたら質の高い教育をできるのかということです。それは,今のガバナンス体制では無理でしょう。なぜならば,ずっとやってきてずっと低いのだから,国際的な順位はどんどん落ちてしまっているのだから,何か根本から変えなければいけません。それが問題ではないかと,私どもは議論をしているわけですけれども,そこの認識が,ガバナンスを変えても駄目なのだというのなら,何をすればいいのか。ずっとやってこられた先生方をしっかり教育していく。その教育を学生,生徒に与える。それが整合しないので,私どもとしてはそこは心配だといって,ガバナンスという視点を取り上げたわけであります。
【水戸氏】
 久保利委員の御意見,全く私も同感です。ガバナンス改革会議の御提言の一番冒頭に,やはりいいガバナンス組織とは,いいリーダーを選び,悪いリーダーはすぐ退出させるべきだ,そういう仕組みをつくることが一番いいガバナンス組織の形態の在り方であるとうたっておりますので,そこは全く私も同感でございまして,そういう学校法人にできればと思っておりますので,念のため付け加えておきます。
【村田氏】
 先ほどの久保利委員の御質問ですけれども,不祥事がないなんていうのは思っておりません。先ほど水戸氏がおっしゃいましたように,日本私立大学連盟といたしましても,今回の評議員会の設置によって,不祥事がなくなるのかということはどうなんだろうと思っております。むしろ監事の機能をより強くしていくことのほうが大きいだろうし,それから,先ほど外部の社外取締役の話が出ましたけれども,理事会においても,学内ではなくて外部からの理事ということで,より牽制機能が出てくるのだろうと思うのです。
 それから,教育の国際通用性,あるいは国際競争力のところでございますが,逆に,評議員会のところに理事会と同等の,あるいは理事会と同じような形の項目について決定権を持つということは,意思決定がある意味,重層化しまして,非常にスピーディーにいろいろなことができなくなってきます。私立大学の大きな問題のうちの一つが,やはり意思決定のスピードだと思うのです。その点,評議員会に意思決定の権限をとなりますと,そこの問題がすごく遅くなっていくというふうに思います。
 それから,同時に,教育の問題,あるいは研究や教育で低位置のランキングがというのは,これは私立大学だけの問題ではなくて,国公立大学も含めて高等教育全体の問題だと思っています。これに関しましては,ガバナンスの問題で解決がつくとはとても思っておりません。むしろ日本の高等教育の在り方をどうするかという,より根本的なところで議論をしていく必要があるのかなとも思っております。
 とはいえ,私立大学について言いますと,それをガバナンスの問題を,特に今回のように,評議員会の権限を強めることによって,教育の質等々が上がるとは到底思えません。といいますのも,まさに教育の質,あるいは,そういったことは,先ほど申し上げましたように,教育・研究について分かっている人がしっかりと判断をしていかないといけないわけで,もちろん外部の牽制機能は大事ですけれども,評議員会の全員が外部の人がなる形で,そこが意思決定をしていくとなってくるところに,かなり心配をしています。
 そういう意味では,ガバナンスの問題と,それから教育の質等々の,教育・研究のところが,評議員会に権限を持たせるところに私は若干矛盾があるのではないかと考えています。
【戸張委員】
 評議員に理事の選任・解任権限をつけると,学校側からそれは拒否的なものというのは理解できますけれども,過去の社会福祉法人であるとか公益法人で実施している中で,それなりにうまく機能はしているのだということは,まず御理解いただきたいと思います。
 それから,攻めのガバナンスというところ,不正を防止という話が出ていますけれども,私が特に今回考えているのは,そうではなくて,やるべきことをきちんとやっていない理事長の方は再任されないという機能を評議員に持たせる。つまり,定員割れして,経営がにっちもさっちもいかなくて,今後どうするのですかということをこちらから言いたくなるようなくらい,そのときになったら考えますとか,そんな話をされる理事長の方も中にはいらっしゃるので,やはりここは最低限やるべきことはしっかりとやっていただく,しっかりとやらないと再任されないことになるというところが重要と思っております。
 ほかの回でも発言しておりますとおり,規模の問題で,幼稚園から大学まで全く画一的なものにするというのは,これは問題だなと思っております。特に幼稚園のみを設置する学校法人についての特殊性ですね。認定こども園との問題だとか,子ども・子育て支援新制度とか,いろいろな問題があるので,そこは特に考慮する必要はあるかなと思います。
【野村委員】
 まず,先ほど議論ありました不祥事について,監事の権限を強化すれば,評議員の権限は要らないという,これ,論理的におかしいと思うのです。レフェリーが2人いたほうが強化されますので,1人が強化されるのは当たり前ですけれども,もう1人が要らないという論にはなりませんので,ここについて御回答いただければ思います。
 それから,先ほど銅像というのは,これは象徴的な話で,あえて分かりやすく申し上げただけで,別にそれが実態としてあると言っているわけではないのですが,そこにある動機というのは,結局,本来の教育・研究というよりは,自分たちの利益を優先してしまうという状況が起こったときに,これは違法行為ではありませんので,それをどうやって是正するのかということです。その是正の仕方について,監事には権限がないと思いますので,一体誰がそれをコントロールするのかということについて,現状と,それから打開策を教えていただければと思います。
 それから,評議員について,先ほど意思決定に関与すると,非常に難しいことが起こると言っていましたが,我々の案は,かなり限定的な事柄についてしか議決しないことになっておりますので,通常の学校運営全てについて二重に意思決定を行うわけではないということです。これを前提とした上で,なおやはり評議員の権限は強化し過ぎだとお考えなのか。この点について御回答いただければと思います。
【松本委員】
 私からの質問は,まず1点は,評議員会と仲よくやっていたというのは変ですが,評議員会の権限を強化することに対しての反対意見について伺いたいことがあります。まず,これは日本私立学校振興・共済事業団の調査です。これは文科省の資料にあります。その中で,過去3年間,平成22年から24年の中で,理事会の諮問に対して評議員会が「ノー」と言った内容があると回答した学校法人はほとんど存在しません。つまり,99%の大学法人,それから短期大学法人については,評議員会は,理事長に諮問されたとおり「イエス」と言っています。この事実に対して皆さんはどのようにお考えになるのか,それを伺います。これがまず1点。
 それから,もう一つです。昨日の今日です。昨日,日大に東京地検が捜索に入っています。にもかかわらず,今日,どなたからもこの話が上がってこなかったということについて,私は驚きを禁じ得ません。これ,今日,もしこれが公開された場合には,多くの人たちが,なぜこの人たちはこの話をしないんだろうと,きっと驚くと思われます。なぜ話をしなかったのか。つまり,こういった不祥事はごくごく例外的なものなのか,仕方ないよね,よくあることだよねなのか,それとも人ごとなのか,どういうふうに考えてこの話を皆さん避けられたのか。この辺についてもお考えを伺います。
【酒井委員】
 まず,質問の前提として申し上げたいのは,我々,このガバナンス改革会議は,政府からも独立した形で,また,多様な人たちが中立的,独立的な立場で議論をしているものであって,我々は必ずしも社会福祉法人,あるいは財団,社団法人とのアナロジーで議論しているわけではございません。それは,私もその中で,はっきりと議論の中で申し上げましたが,しかもそれを守りのガバナンス,攻めのガバナンスを考えていこうということでやってきたものです。
 以下は質問といいますか,皆さんのリアクションがあれば言っていただきたいのですが,皆さんの中から,本当に評議員に理事への人事権を与えたら不祥事が少なくなるのか,その根拠を問うという話がございましたけれども,これは,人類の英知として,1740年からモンテスキューが『法の精神』の中で三権分立というものを出してきているわけであって,それは不動のものとして考えて,ハードとしてそのような仕組みというのは絶対に有効だというのが一つ我々の考えとしてあるのですが,それに対して何か反論があるのでしょうかということと,それから,皆さんの御意見を聞いていると,実際に難しいではないかということで,人材確保はどうするのかと。報酬はどうするのかとか,現場を知らない人でできるのかとかいう議論がありますが,これも必ずしも40人,50人,100人を用意しろと我々が言っているわけではなくて,規模的にはもっとうんと小さくていいという議論も我々はしておりますし,現場を知らない人間ができるのかということになると,会社の社外役員は,なったときは全然その企業のことを知らずに,それでもしっかり機能しているという事実をどういうふうにお考えになるのかという。お金を払えないというのは,恐らく評議員って,財団,社団でもほとんど無償だと思います。そんなようなことも含めて実現不可能だという議論について,どのようにお考えなのかということ。
 最後ですが,我々は攻めのガバナンスというのも考えておりまして,やはり大学の一番大事な教学を充実させるということが絶対に必要だと思っています。この教学を充実させるためには,国の予算が限られている中で,やはり産学協同という方向というのがすごく大事であって,東大も最近債券を発行したりしておりますが,このような攻めのガバナンスを行うためには,守りのガバナンスも強める必要があるのではないかという議論を我々はしているので,それについてどのようにお考えかということです。
【八田委員】
 これまでの議論でもはっきり出ているのですけれども,今日,関係団体の方々がお話しになっているのは,現行の評議員会が頭の中にあって,それを諮問から決議のほうに持っていくのは,これはいかがなものかという。この前提が,私たちのこれまで進めてきている議論と全く違うのです。
 したがって,先般,久保利委員だと思いますが,ヒアリングするならもっと後でいいのではないのかと。もう少し我々の議論が煮詰まってから,その方向性をお示しした上でやったほうがいいのではないかということで,後戻りしないようにしたかったのですけれども,今日は全部後戻りしているように感じています。したがって,議論がかみ合わないというのが大前提だと思います。
 例えば,内部者が多いから駄目だと。我々は,内部者のことはもう考えていないわけです。それから,意思決定のスピードが遅くなると。これは,評議員の数をコンパクトにするために,1桁の人数でという流れも今見えてきているわけです。20人30人の評議員は全く考えていませんから。そういう前提でやはり議論したほうがよかったのかと。反省点があります。
 それから,評議員会をそういった形にすれば,本当に不祥事がなくなるかというと,これは酒井委員と全く同じです。何をやっても100%になることはあり得ないと思っています。ただ,従来よりも健全な抑止力と,それから,社会に対する説明責任が果たせるような健全なガバナンスをお示しすることができるというわけで,そのためには,やはり執行と監視・監督,これはしっかりと分別するというのは,これは組織運営の一丁目一番地の議論ですから。
 残念なのは,今日,大学の問題もありましたけれども,たまたまここで私が個別に言うのは他意があるわけではないですけれども,幼稚園の連合会の方が出ていますが,私にとっては,先般,幼稚園の連合会のほうで発生した4億円を超える金銭不祥事,こういう問題が,見本を示すべき団体においてさえ起きているとなってくると,皆さん方は,その傘下にある幼稚園のガバナンスに対して,本当に正しい理解をお持ちなのかどうか。これについて疑念が生じてしまうということで,もう少しやはり皆さん方の将来に向けての教育ですから,真摯に考えていただきたいと思います。単なる現状維持だけを言うのではなくて,改革のためにどうあるべきかという建設的な考え方を持っていただきたいと思います。質問というよりも,お願いということです。
【岡田委員】
 私は,今までの先生方の御意見に全く同感でございますので,1点だけ,理事会と評議員会が対立構造である,あるいは,意思決定が重層化するというような御意見があるのですが,決してそんなことはありません。よく読んでいただく,あるいは,先ほどからの御意見にもあるように,株式会社でも,取締役と執行側は別に取締役が意思決定をするというよりも,重要事項に関して監督しているということであって,この役割を学校法人に入れようとすることですから,その誤解を解いた上で,逆戻りはしないで,先の議論をしていかないといけないのではないかと思いました。意見です。
【安西委員】
 多少重なりますけれども,まず,理事会,理事長が独走しないように,評議員会がやはり監督責任を持つという構造は,先ほどからありますように,割と普遍的な構造ではないかと思われます。
それに対して,理事会があればいいのだという,それでいいのだと,今日のヒアリングの先生方からは聞こえるのでありますけれども,その点についてどういうふうにお考えになるか。
 それから,もう1点は,これも重なりますけれども,評議員会に全部何しろ決定権限を持たせると言っているわけではなくて,かなり限定された重要事項について,やはり最終的には評議員会で決定すべきではないかと。そういう議論になっておりますので,そこのギャップがかなりあるように感じられます。
 あとは,評議員のレベルというのでしょうか,それだけのスキルがあるのかということになるかと思いますけれども,これもやはりスキームをつくって,それでそういう評議員が本当にその学校法人を応援していくようにしていくことが大事なことで,対立関係と最初に言われると,かなり違和感あるというのが私の感覚でございます。印象を交えてでありますけど,以上にさせていただきます。
【水戸氏】
 端的に申し上げます。岡田委員,それから松本委員,酒井委員,それから八田委員,全員の,それから安西委員も含めて,評議員会というのは,やはりこれまで諮問機関であったのです。それで提言をし,そして,理事会に対していろいろな意見を言うと。そして,理事会を牽制するという機能もきちんとこれは私学法に書いてあるわけです。ですので,評議員会がそういう機能を,まず実質的に機能を今まで果たしてきていないというところが一つ問題があります。
 おっしゃるとおり,不祥事防止のために,三権分立の思想はよく分かりますし,どこかでやはり監視機能を持たせる。今は理事は理事同士,監事が理事の執行状況を見る,評議員は評議員同士という曖昧な区別になっておりますから,評議員会の中にそういう監視機能みたいなものをどうやって持たせるのかということは,一つ,方向づけとしてはぜひ議論していただきたいと思っておりますし,私どもも,それについては不祥事防止の観点から,これは入れたいと検討しておるところでございます。
 いずれにしろ,評議員会については,今でも私学法の42条の2項で,諮問事項を議題とできると書いてありますので,議決機関としても機能できるわけです。その辺りの理解はしっかりとしておりますので,そんなに大きなギャップはないのではないかと感じております。
【村田氏】
 一つ一つお答えしてもいいのですけれども,今,水戸氏がおっしゃったことと同じようなことになるかもしれませんけれども,決して我々は,今,評議員会の機能が完全になんていうのは思ってはいないです。それは認識しているのですけれども,先ほど八田委員がおっしゃったのだと思いますが,今示されている形というのは,評議員数をどうするのか,あるいは,その選任をどうするのか,機能をどうするのかというところがはっきりしていないので,正直,我々は現在の評議員を基に考えざるを得ないというところなのです。
 それと,もう1点は,ここが一番大きいところだと思うんですが,先ほど来,攻めのガバナンスと守りのガバナンスということがあるのですが,攻めのガバナンスということを考えた場合,例えば,重要事項であったとしても,その重要事項を何にするかによって,理事会の機能と,それから評議員会の決定事項がどうなるかによって,攻めのガバナンス,スピーディーにできるのかということと,守りのガバナンスとしての理事長への監督機能等々についてのところが,どう折り合いがつくのかというところがちょっと見えていないわけです。ですから,我々としても,今を前提にして考えざるを得ないと思っております。
 それから,松本委員から,日大について今回全く発言がないというのは,正直なところ,今,捜査をされて,中身は我々も分かっていませんから,発言しようがないというのが本音のところでございますので,また中身が分かってくると,それぞれいろいろなことが全部分かってくるのだろうなと思います。
 一つは,やはり繰り返しになりますが,攻めのガバナンスと守りのガバナンスのところのバランスをどうするか。現行の評議員会を具体的にどうしていこうとされているのか。それから,監事との機能のすみ分けをどうするのか。もう少し具体的なところが分からないと,なかなか我々としても反応がしがたいというのが,率直なところです。おっしゃっているところは分かるのですが,そこのところをもう少し丁寧に我々の意見も聞いていただきながら進めていただきたいなというふうに思います。
【八田委員】
 今の御発言で,これまでの議論が分からないとおっしゃったのですが,実は今日は第5回目の会合でありまして,第3回,第4回で評議員の議論は詳細に行われています。したがって,それを踏まえて,今日,意見書をいただければよかったなということ……。
【村田氏】
 いや,分かっております。ただ,具体的に評議員の人数をどこまでするのかとか,それから,各大学によって,今,いろいろなことがばらばらなのです。もう少し具体的なことをしていただかないと,なかなか難しいと思っています。
【野村委員】
 先ほど私立大学協会のほうから,評議員の,やはり機能させることで不祥事防止をさせることは考えていいというお話があって,私は非常に心強く思ったのですけれども,これまでの会社法の改正の歴史の中で,不祥事が起こって,ずっと監査役の権限強化というのをやってきたのです。これは,もちろん効果はある程度発揮したのですけれども,監査役には人事権がないのです。したがって,最終的なグリップが全然利かないわけです。ですから,人事権のあるほうに監督,モニタリングの機能を強化しようということで,ここで平成になりまして,平成14年から改正を行い,平成17年,そして平成26年,令和元年と,ずっと人事権のあるほうにモニタリング機能を強化していこうということにしているわけです。
 ですから,やはり自分の首が飛ぶかもしれないという状況の中で監督している人がいるという状況は,これはつくらざるを得ませんので,ここをやはり監事の権限強化では,どうしてもお茶を濁すことはできないと。
 そうなったときに,どうやればワーカブルか,これは議論すべきだとは思いますけれども,いずれにせよ,我々が基本的に考えているのは,何もしない理事が再任されないとか,あるいは自分の利益を追求しているときには首がすげ替えるとか,違法性がなくてもガバナンスが利くという状況をつくるためには,これはもう評議員をワークさせるしかないということです。ここはもう決定事項なのではないかなと思っているところです。
【重永氏】
 今,野村委員のほうからお話しいただきましたけれども,よく理解できました。先ほど私,銅像のことを話しましたが,そのことも象徴的な物の言い方だったということで,その点も理解いたしました。
 野村委員のおっしゃったことで,評議員会をどのような方向性で強めていくかということも理解したつもりですが,私,意見表明の中で申しましたように,やはり非常勤では無理だと思っておりますし,常勤にしたときの人件費のことですとか,その評議員の方を補佐する事務局機能というのも必要になってくるというふうに思っておりますので,そういうところがうまく構想されていけば,決して反対という一本で行くつもりはございません。
 それからもう一つ,松本委員が言われた,なぜ一言もないかという点でございますけれども,これについては,先ほど村田氏のほうがお話しになったとおりですけれども,我々,全く関心外でいるわけではありません。本日も,私どもの事務局長と,今日の会議の直前で,一体何だろうというふうなことなんかも話しておりますし,強い関心を持ってございます。
【西村委員】
 外部の参画がこれまで弱かったという御認識は多分あると思いますし,内部の教職員などの参加でうまく機能してきていないということも,共通認識ではあると思います。
 これからこの会議でも考えていくわけですけれども,外部の参画をどのように有効にするか,内部の教職員においても協同と緊張関係を持った参画の仕方がどのようにできるのかについて検討していただきたい点であると思っております。

<議題2 学校法人のガバナンスについて>
・八田委員及び松本委員から資料2ついて説明。

【八田委員】
 資料の2を御覧いただきます。前回から,座長の指示によりまして,これまでの議論を念のため確認しておいてもらいたいということがありましたので,第3回議論,これは冨山和彦氏をお招きして,ヒアリングをさせていただきました。そのときの主なポイントについて書き込んでおきました。
 そして,次が第4回,前回の議論であります。8月23日。ここでは,一応,評議員会の機能の機関化の問題と役割等々について詳細な御議論をいただきましたので,現行の私学法と,将来を見据えた法改正を念頭に,各委員の御意見,そして,その中である程度方向性が定まったということで,合意された事項ということで,これは小川法制調査員と松本委員にお力添えいただきまして,作っております。
 そして,三つ目が,次の機関の問題として,理事会の問題,あるいは理事長,この辺を御議論いただきたいということで作っております。
 ということで,一応,先ほど発言しましたが,限られた回数の会合でありますので,できるだけ後戻りしない形で進めていくということ。そして,できるならば,ある程度の合意事項については確認をしていきたいという趣旨で,このレジュメ,論点整理をしておりますので,その点御理解ください。
 そして,書いてある項目に関しましては,お読みいただくと分かりますので,今日は多分,3番目の,この理事・理事会のところの論点,ここで進めていくのだと思いますが,その前に,一応,前回の評議員会の議論,三つの桁で作ってありますが,これについて,松本委員,お願いできますでしょうか。
【松本委員】
 今回は,今,八田委員から御報告ありましたように,後戻りしないために,三つの表にまとめています。
 まずは論点の2ページ目を御覧ください。まずは,ここからが一番学校法人関係者が気になさるところではあります。本当に簡単に進めていきます。
 まずは役割です。合意事項としては,評議員会を最高監督・議決機関とするというところです。
 表の次の段は,権限です。権限については,万能ではないけれど,評議員が何に関して議決するのか。現行制度では理事長が聴かなければならないとしています。それについては,先ほども質問の中でもお示ししたように,文科省の配付資料の中に興味深い調査がありました。理事会の諮問を評議員会が否定したケースはほとんどないという調査結果です。となると,今は機能していません。
 こうした現状を受け,たくさんの御提案をいただきました。その結果,最高監督・議決機関として以下のことを議決する。理事,監事,会計監査人の選任・解任,これは監督に当たるところです。その下には,中期計画,事業計画,こういったものが合意事項としてまとめさせていただきました。
 それから,3ページ目です。義務・責任については,現行制度では定めがないため,善管注意義務,損害賠償責任を負うことについて合意をいただきました。
 次,適格基準です。現行で認められている現役の教職員,理事は評議員から除外します。先ほどの議論にもありましたように,除外することについて皆様の合意をいただきました。元教職員,元理事の扱いについては,今後の議論です。
 選任方式は,各法人の寄附行為に委ねられています。これについて,理事会・理事による選任は無効とします。選定委員会を設ける。選任・解任の透明性,情報公開を担保するといったことについて皆様の合意をいただきました。
 4ページ目です。解任についても,理事会・理事による解任は無効とするといった点に合意をいただきました。
 任期は,理事の任期より長くするといったことに合意をいただいています。
 次に,員数です。数は,今は理事定数の2倍を超える数とされていますが,最低人数を示すにとどめるべきだとの意見で合意されました。
 次は,ここからです。一番最後,今日の議論になります。これからの議論の論点整理,5ページ目です。今回,皆さんはまだ事件の渦中にあったのでコメントできないということを関係者からいただきました。ただ,今報道されている限りでは,理事長,理事が事件の主要関係者として報道されているということになると,やはりここが問題になります。理事長は,理事会というものがひょっとしたら監督ができる体制かどうかという疑念が生じてきます。
 理事長は学校法人の代表者です。理事長の補佐役として理事が存在する立てつけに,私学法ではなっています。理事と学校法人は委任関係で,法人や第三者への損害賠償責任を負うと明記されています。
 では,どんな人が理事になれるのか。私学法は,学校法人の設置する私立学校の校長や評議員などを明記しています。このうち評議員については,前回の合意事項にもあるように,理事との兼任は禁止となります。そのほかの適格基準では,法人の役員,職員でない者を外部理事に入れることや,役員のうちには,役員の配偶者や三親等以内の親族が1人を超えて含まれてはならないと明記されています。
 選任・解任については,評議員の権限になることから,プロセスの透明化をどのように制度化するのかが論点になります。
 任期についても議論をお願いいたします。
 最後の人数です。理事は5人以上,うち1人は理事長です。ここで問題なのは,理事長の選任です。今は寄附行為に委ねられています。理事会での選定・解職とするという明記の仕方なのか,互選とするといった方法論も書き込むのか,それ以外の方法があるのか,議論をお願いします。
 最後です。今回のガバナンス改革会議は,学校法人の強化の追い風になるとお考えになった複数の理事長から,ヒアリングとは別にこちらのほうに要請をいただいております。一言で言えば,学校法人の強化を図りたい。だからこそ,ガバナンス改革は応援する。その代わり,一定の規制緩和をお願いしたいといった声でした。
 例えば,大学については,たくさんの規制が課されています。学部や大学院を設置するのは,もう3年は確保しなくてはいけません。大学設置者,私学行政課に,合わせて40種類もの書類を提出しなければなりません。やり取りの一部は郵便で,つまり直筆,郵便でなければならないそうです。そのために,手続に時間がかかります。自律した経営をするために,定員も厳しく制限されているのが足かせになります。
 今回の改革は,学校法人自らが公正性,透明性,責任性,説明責任を果たす自律的ガバナンスに転換する大きなきっかけになると考えています。それによって,教育力,研究力を高め,経営力をしっかりと持った法人にする。ぜひ学校法人の皆様と手を携えて,日本の未来を一緒につくっていきたいと願っております。先ほどの意見の中でも,ぜひそういう意味で理解をして,一緒にやっていきたいというお声もいただきました。それも含めて御議論をお願いいたします。

・事務局から資料3及び参考資料ついて説明。

【岡田委員】
 伺いたいのですが,議論したことが整理されていて,これでいいのですけれども,例えば,評議員会について,法令をこういうふうにしていったらどうだという議論と,それから,ガバナンスコードにこういうものを入れていったらどうだ,例えば,評議員の適格性について形式基準でこうなっているということが書かれていますけれども,そういうのもガバナンスコードで入れていったほうがいいのではないかと思います。こういう議論は今後されると理解してよろしいのですね。
【八田委員】
 資料の説明ですけど,今,岡田委員がおっしゃったのは,今日提出された3ページの適格のところに,前回議論なされて,そこまでは詰め切れていないという部分があります。それは,この適格性基準はガバナンスコードに書けばいいのではないかと思います。こういう議論もありましたということで,残してあるわけです。
したがって,私たちの理解は,この流れが高まってくれば,明確になってくるだろうと思います。そういう感じがします。
【岡田委員】
 そうであれば,今後,理事の説明にもありますし,そこで全て関わるということですよね。ガバナンスコードにはこう入れたほうがいいとか,あるいはこれは法律に入れたほうがいいという議論をしていかなければいけないという理解でいるのですけれども,それでよろしいですね。
【相原私学行政課課長補佐】
 補足をさせていただくと,年内に制度改正事項というのを取りまとめていただくというのはもちろん必須でありますが,ただ,年内の議論の事項として,ガバナンスコードの議論を一切排除するということでは必ずしもなく,御議論いただいた中で,ガバナンスコードにしたらどうだという事項があれば,それも併せてこの中でも議論をいただいて,全くそこは支障がないものだと思いますが,座長,いかがでしょうか。
【増田座長】
 そうですね。ここはそのつもりで作っていただいたのだと思います。確定事項ということではなくて,これから議論していいのではないかということで,まだ真ん中になっているわけですね。よろしいでしょうか。
【岡田委員】
 はい。
【野村委員】
 前回のところで,戻らないようにということで作っていただいた評議員の表の一番下の員数のところですけれども,確かに前回の議論では,最低人数のみを示せばいいのではないかと。これは法制上も,ほかはみんな,例えば,取締役が3人以上でと書いてありますので,上限は書いていないわけですけれども,今日の議論の中で,むしろクルーシャルな問題は,余り人がたくさんい過ぎると,船頭が多くて,結局,みんな無責任になるという。いわゆる集合問題が起こるのです。ですから,合理的な人数にするということはどこかで書かなければいけないのですが,これ,法令で上限を切っているというのは余り見たことがないので,むしろ今,岡田委員がおっしゃられたようなガバナンスコードで,少なくても合理的な員数については,ここは上限を決めてもらうべきだということを付加しておいたほうがいいのではないかなというのが,今日,1点,意見でございます。
 それから,理事会のほうでおまとめいただいていますけれども,やはり一番重要なのは,理事も選任,そうなのですけど,理事長の選任です。ここの不透明さが,やはり非常に大きな問題をはらんでいるのだと思うのです。理事長,ずっと永遠に一生という人がいると。今回も不祥事になっています日大の田中さんも同じようなものですけれども,結局,権力にずっとついておられれば,やはり腐敗することは当然出てくるわけです。そういったようなところが交代できるようにするためには,やはり透明性のある手続を,法令上,ある程度組み込んでいかなければいけないと思います。
 ただ,ここで一番問題となるのは,恐らく前から出ていますファミリー企業です。ですから,家業としてやっている私立大学が多くて,結局,世襲です。その世襲させるための手続を寄附行為に組み込んでいるというのが,これが今日の皆さんの言っている多様性というやつです。これ,全然多様性ではないですけれども,そういうもくろみみたいなものが寄附行為という言葉の中に組み込まれているわけです。
 ただ,ここは,建学の精神だとか,まさにお金を出したときの人が知っていることは,孫までみんなそれを知っているのだからというロジックなのですが,ここをやはり闘っていくための論理を我々がきちんと持たないと,最後はここでちゃぶ台返されてしまうというふうに思いますので,何らかの合理的な手続と同時に,なぜそうするべきなのか,寄附行為に委ねるのがどこが不合理なのかということを,ここでは議論すべきなのではないかなと思っています。
【安西委員】
 法律的な立てつけ,あるいは組織のガバナンスの立てつけの議論というのは,現実の非常にいろいろなことでいろいろなふうにやってきた幼稚園から大学に至る学校法人個々の現場と,かなりやはりある意味ギャップがあるわけです。そこのギャップをぜひ縮めていくように,私学行政課も大変だと思いますけれども,やはりなるべくコミュニケーションを取っていただいて,先ほどから言われているように,建学の精神があるのだから何だとか,そのことと,合理的なガバナンスの在り方ということのギャップが,私が今まで行っているところとしては,非常にやはりギャップが大きいので,これをきちんとうまく生かせて,しかも,攻めのガバナンスと言われますけど,学校法人が本当にいい形で未来に向かって進むようにしていくのに,これだけやればできるのかというと,なかなかそうはいかないわけです。ほかにいろいろな条件があります。大学一つとってみても,こういう仕組みをつくったからといって,その大学がすぐよくなっていくのかというと,そこは現場が本当にその気にならないと,それはなかなかよくならないのです。
 それには,やはりぜひできるだけ日頃から,こういう進み方をしているのだということは,コミュニケーションというのでしょうか,知らせていただくようにはしていただきたいなと思います。それは申し上げておければと思います。
【増田座長】
 一応,1,2までは,前回までの議論を確認するという意味なんで,それについての御意見をまずいただいて……。
 今の話は分かりましたけど,今の議論は3番目の論点整理ということで,次の理事会の議論に入りたいのですけど,今まで確認していただいた1番目2番目の確認事項について,野村委員からもお話がありましたけど,そういうことについての御意見をいただければと思います。次に3番目に理事会というところの議論に入りたいと思います。確認しないと後戻りしてしまうということで,議事録みたいのが出てきておらず,YouTubeしかないので,一応,こちらのほうでまとめたものについて,このように確定したものだと確認していただきたいのです。皆さんの大勢はこういう御意見でしたということでおまとめいただいてあるのです。よろしいですか。だから,それについて,いや,そんなことないよというのであれば,御意見をいただければと思います。
【安西委員】
 今の確認事項について,現場の,それこそたくさんいろいろある学校法人が見ると,かなりギャップがあるということはありますので,そこは御注意いただいて,できるだけコミュニケーションを取っていっていただきたい。そういう意味でございます。
【増田座長】
 そういう意味では,今日のヒアリングでも少し御理解いただいた点があったかなと思いますけれども,どこまでできるかですね。
【安西委員】
 タイミングは別ですけど,ヒアリングは非常に大事だと思います。
【戸張委員】
 今日,ヒアリングを受けて,評議員会のイメージ,特に開催回数とかのイメージが,まだ皆様から得られていないのかなという気がいたしました。現状では1回しか開催されていないとか,実態として現状の評議員会ではそうなっていると思いますが,例えば,前回の合意事項の中で,予算も評議員の承認事項にすれば,最低3月と6月の2回の開催が必要になりますし,開催回数とかのイメージをもうちょっと煮詰めて出せば,理事会の回数ともセットですが,評議員会を4回開催している公益法人もありますし,そこら辺のイメージを示せれば,どういう運用かというイメージが各団体の方にもつかめると思います。
【酒井委員】
 私の指摘はすごくマイナーな点ですが,議事録の中で,確定事項で,3ページの選任方式で,理事会・理事による選任は無効とするということが書いてあって,次の4ページの解任についても,理事会・理事による解任は無効とするとなっていますけれども,そもそも権限で,理事・監事の選任・解任を評議員会の権限に持っていくことが決まっていますので,あえてこれ,無効は当然なので,両方削除したほうがいいだろうなという感じはいたします。
【野村委員】
 以前の有識者会議のときの資料には載っていたと思いますが,私,何度も発言したと記憶しているのですが,評議員会の差止請求権というのと,それから,責任追及のための,代表訴訟に準ずるような責任追及手段,ここについて表の中にはまだ十分盛り込まれていない感じがあるのですが,御議論を忘れずに,まだコンセンサスができていないということであれば,それはそれで結構ですが,議論を落とさずに進めていただければと思います。
 例えば,理事が学校法人に対して損害賠償責任を負っている状況のときに,学校法人をその理事が牛耳っていますと,誰も責任追及しませんので,責任追及をしなければいけないのです。それが現行ですと,株主が代表訴訟といって,法定訴訟担当ということで,自分が原告になって訴えることができるということになっているので,損害賠償が実現するという仕組みになっていまして,これは原告である株主にお金が払われるわけではありませんので,1万3,000円払えばすぐに請求できるという,非常に簡単な訴訟なので,エンフォースに効果があるということになっているわけです。
 これが,現在,学校法人の場合はないです。そうすると,理事長が大学に物すごく大きな損害を与えてしまったとして,損害賠償責任が発生しているとは思っても,誰も訴えなければそのままということになってしまいませんかねという,そういう話です。
【松本委員】
 なるほど。それを権限に入れたほうがいいという御意見ということでよろしいですか。
【野村委員】
 もともと代表訴訟に準ずるものとして,評議員がそれをやるべきではないかということを主張しておりましたので。
【増田座長】
 これ,以前も言われていましたよね。だから,入れていいのではないかと思いますよ。もともと入っていたんだから。
【松本委員】
 分かりました。では,ここの権限のところの合意事項に入れていいということでよろしいでしょうか。
【野村委員】
 合意できているかどうかは分かりませんが……。
【増田座長】
 ほかの委員の方で,これについて意見ございますか。
【増田座長】
 前から主張されているので,私はそれでいいと思いますけど。よろしいですか。
 そういうことで,松本委員,分かりましたか。
【松本委員】
 分かりました。
【増田座長】
 それでは,そういうことで,一応,いつまでも元に戻っては議論できないので,はっきりしたところだけは確認していきたいので,議事録の代わりみたいなものだけど,これで確認していきたいと思っていますので,よろしくお願いします。
【岡田委員】
 第41条に,理事長が評議員会を招集するということになっているのですが,先ほど評議員会の回数とか,どういう運営をしていくのかという話で思い出したんですけれども,これは前回も論点になっていなかったのですが,これは何か変える必要はないのでしょうか。41条の3項ですかね。
【野村委員】
 普通の株主総会と同じように,理事会が当然招集をすると決めて,それで,招集するのは理事長が,法令上は現行の株式会社法では取締役となっていますから,定款で定めた順番に従って,第1順位の者が招集するという手続だと思いますけれども,これ,通常体です。ただ,こうなると,嫌なことは開かないですよね。例えば,自分が首になるかもしれないという評議員会は開きませんので,そうなると,当然,評議員に,少数株主権みたいな形で,評議員会の開催を請求する権限を与えるということになるのだと思います。
【岡田委員】
 分かりました。これは前回の議事録に入っているわけですね。
【野村委員】
 そうだと思います。そういうふうに制度設計していかないといけなくて,結局,例えば請求してから何日以内に,いついつまでの期限とする評議員会が開催されないときには,請求した者がそれを自ら招集することができるという,そういった制度設計にするのではないかなと思います。
【岡田委員】
 分かりました。
【増田座長】
 よろしいでしょうか。そういうことで,そうすると,少し加えていただければいいのかな,ここのところ。確認したほうがいいと思うのですけど,いかがでしょうか。
【松本委員】
 今,岡田委員と野村委員からいただいた,差止請求権ですとか,評議員会を招集する権限などを盛り込んだ議事録,もう一回,この表の中に権限の中に入れて書き直します。
【西村委員】
 これまでの議論のところで,評議員について,権限の強化は具体的にまとめていただいていますが,どのようにしたら機能を有効に発揮できるのかについても,御意見は出されてきたと思うので,その点も項目立てしておいたほうがいいのではないかと思います,いかがでしょうか。
【増田座長】
 なるほど。この辺はどうでしょうか。効果の問題ですよね。野村委員が言われたように,エンフォースに効果,実効性の問題ですが,これは,いろいろなことがはらんできますよね。公表・開示の問題もあるし,それから,監査,監督各機関が連携してやるというのもあるだろうし,評議員だけじゃ駄目だと僕は思っていて,監事だとか,会計監査人も連携してやらないと,ガバナンスは強化できないのですよね。
【野村委員】
 既に法制上,例えば,一般社団法人の場合でも,しっかりとルールが基本ありまして,株式会社の場合もあります。例えば,違法行為が見つかった場合について,例えば評議員は監事に報告しなければいけないとか,監事が評議員会の開催を求めなければいけないとか,そういった連携の機能は条文があるのです。これを盛り込むことにすればいいのではないかなと思います。
 例えば,株主は取締役会の招集もできるのです。具体的に言うと,取締役が違法行為を行っていることが分かった場合については,実際は余りワークしていませんけれども取締役会の招集をすることもできます。さらに,裁判所を絡めていろいろやる機能がありまして,裁判所に検査役の選任を求めて,検査役が違法行為を発見したら,評議員会の開催を求めるというような,こういう仕組みにもなっています。これは法制上もたくさんいろいろな制度がありますので,もし整理する必要があるのであれば,会社法とかあるいは一般社団法人法とかであるものは,別に削る必要は全然ないと思いますので,全部入れ込んでいいのではないかなと思います。
【松本委員】
 2回目の会議で示しましたイラスト,イメージ図の中にそれぞれの連携というものを書き込んであります。だから,あれを基に,どことどこが監督関係にあるのか,どことどこが連携をするのかということも,これからの議論の中で入れ込んでいって,全体として実効性を担保できるような仕組みにしていきたいというふうな思いでこの表を作っています。
【野村委員】
 それで結構ですけど,恐らくこれ,法律をつくらなければいけないので,内閣法制局で法制上そろってなければいけないのです。ですから,特に削る必要がなければそろえればいいと思いますし,足す必要があるのだったら,説明,すごく分厚い文書を持って,文科省の人が内閣法制局に行かなければいけなくなってしまうので,本当に必要なのかどうか吟味して,ずらさなくてもいいものはそろえていけばいいと思いますので,ここは文科省の方に整理をお手伝いいただければ,条文全部そろうと思いますけど,最終にチェックする必要があるのだったら,私のほうで見ますので,ぜひお任せいただければと思います。
【相原補佐】
 先生方おっしゃられるような,機関同士の相互関係というのは,条文上,それぞれの機関だったり,選任・解任のところだったり,いろいろなところにちりばめられて,義務,あるいは請求権,あるいはそれがうまくいかない場合の招集権もありますので,一覧はしにくいのですが,主要な部分,比較表にも全部は一応押さえて我々も認識はしておりますので,必要に応じてまた御助言をさせていただきたいと思います。
【増田座長】
 時間が大分押してしまって,ほとんど議論ができなくなってしまいましたけど,今日の本題である理事会についての議論,主な論点があるのですけれども,これについて何か御質問,御意見ありますでしょうか。
【八田委員】
 今回の論点整理を作っているときに,文科省の事務の方とも御指導いただきながらやっていたのですけど,一番最後のところで,理事長の選び方の手続といいますか,こちらでは一応理事会の互選という文言で提示しているのですけれども,事務局のほうからは,理事会での選定・解職という表現ではないかというような話がありました。選定・解職というのは,これは手続を言っているのであって,手続といいますか,機能ですかね。実際にそれをどういうふうに行うのかというのが互選だと思っているのですね。この辺の違いだけ教えてください。
【相原私学行政課課長補佐】
 会社であれば,取締役会がない会社においては,取締役は互選,あるいは定款に基づいてみたいなことだったと思います。それに対して,取締役会設置会社は,取締役会の職務として,取締役会で理事長の選定・解職を行うというようなことで,基本的には,学校法人には理事会という機関が必置になっていることを踏まえれば,理事会でこういうことをやってもらうという職務機能というのを書くのが適切なのではないかと考えたところです。
【野村委員】
 今ので正しい御説明だと思います。理事会の権限というふうに決めると,書き方は選定・解釈になると思います。今は選任・解任という言葉を使わないですね,理事長というのは。あれは理事であることを前提とした付加的な役職ですので,その場合は選定・解職という形になります。解職しても,理事の根っこの部分が残りますので,元の委任関係を解除するところは解任という言葉を使っていて,理事自体からなくなる場合は解任という言葉を使うということで,ですから,選定・解職ということになると思うのですが,そうなった場合に,理事会の権限というふうに規定すると,理事会の一般の決議に関する手続がワークする形になりますので,例えば,多数決で決めるというふうに理事会の規定になっているとすれば,選定も解職も皆,多数決で決めるということになるという立てつけになるのだと思います。法令上の書き方は,選定・解職になるものと理解しております。
【八田委員】
 分かりました。30条の規定で,役員の話で,選任及び解任の方法となっていますけど,今このことはもうなくなっているのですか。
【野村委員】
 いえ,取締役は選任及び解任です。
【八田委員】
 いやいや,そうではなくて,私学法です。
【野村委員】
 私学法は,だから,役員といった場合に,例えば,理事であれば選任・解任です。理事長は,選定・解職です。
【八田委員】
 なるほど。分かりました。
【相原私学行政課課長補佐】
 補足ですが,理事長は,理事という立場を持ちながら,その上に理事長という職を重ねて持っておられます。そのような整理になります。
【野村委員】
 私も授業でそのように説明しております。
【増田座長】
 議論する時間がほとんどなくて申し訳ないです,今日は本当に。前のヒアリングでちょっといろいろ――でも,あれはこちらの立場もいろいろ言っておかなければいけないところがあったので,時間が取られたのはしようがなかったと思いますけれども,よかったと思っています,むしろいろいろ話をさせていただいて。
【酒井委員】
 理事会・理事についても頭出ししておいたほうがよろしいのではないかという座長のお話があったものですから,次回の議論で一番大きな点についてだけ申し上げますと,校長理事制度,これについてどう考えるかということは,次回ぜひお考えいただけたらと思います。個人的には,校長理事というのは私学法の制度はやめるべきだと思います。理事は評議員会で任命するという原則によることとし,教学の代表者である校長の意見を理事会に反映することが望ましいと考えれば,校長を理事に任命すれば足りると思います。そして,理事として相応しくないような人が校長に任命されるということはないと思います。また,校長理事制度というのがありますと,理事として解任された場合,校長のステータスは残るのかという問題も生じます。ここはかなり私学法でも肝の部分ですので,皆さん,じっくりと議論していただけたらと思います。

<議題3 その他>
・事務局(相原私学行政課課長補佐)より,次回は9月22日(水)10時~12時に開催するとの案内があった。

―― 了 ――
 

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