学校法人ガバナンス改革会議(第4回) 議事要旨

1.日時

令和3年8月23日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. 学校法人のガバナンスに関する意見交換
  2. その他

4.出席者

委員

増田座長,安西委員,石井委員,岡田委員,久保利委員,酒井委員,戸張委員,西村委員,野村委員,八田委員,松本委員

文部科学省

森高等教育局私学部長,小谷高等教育局私学部私学行政課長,相原高等教育局私学部私学行政課課長補佐

5.議事要旨

<議題1 学校法人のガバナンスに関する意見交換>
・事務局から配布資料について説明。
・八田委員及び松本委員からから資料2ついて説明。

【八田委員】
 資料2ということで,4枚物の資料を作成してお渡ししております。文章は3ページにわたり,そして最後のページはポンチ絵ということで議論に資するための図表を用意しております。
 最初に私から1ページ目の御説明をさせていただきます。ここでは前回も申し上げましたように,そもそもこの改革会議がどういうミッションかといいますか,あるいはゴールをどこに求めて会議が進められなければならないのか,こういうことを念頭に前回のときにも会議の目的ということを書きました。これをもう1回確認の意味で四角の囲みの中に書いてあります。監督と経営を分離する。そして経営陣の利益相反,自己監視を排除する。さらには骨太の方の閣議決定の文書にもありますが,税制優遇を受ける学校法人にふさわしい体制を構築する。基本的には,これは正に一般に言われるガバナンスの1丁目1番地の議論を据え置いて,それにふさわしい学校法人体系を見直すのだと,こういうことだと思います。
 そこで一つ目のこの文章ですが,前回御議論頂きました内容,多岐にわたった御発言がありました。その中で今日,実質的に御議論頂く内容,基本的には評議員及び評議員会の機関設計の問題の中の議論でありますが,それに至るための各委員から頂いている,あるいは御発言頂いた中の要約をここに書いておりまして,これを念頭に御議論頂くことが効率的な会議になるのではないかということでまとめさせていただきました。
 まず1ページ目は,この改革会議の目的といいますか,趣旨でありまして,これは事務局から提出していただいておりますガバナンス改革会議の趣旨の文章の中にも入っているとおりであります。今回の改革会議は,社会福祉法人制度,公益社団・財団法人制度と同等のガバナンス機能が発揮できる学校法人の制度改正を行うのだと,これは今年の6月18日の閣議決定の中の文章でもありますし,これを踏まえて年内までに対応するという流れがあって,この改革会議が進められていると承知しております。
 二つ目であります。学校法人のガバナンスに関するこの有識者会議が,御案内のとおり,去る3月19日に公表いたしましたが,この報告書では様々な議論がなされていますが,ここでなされた議論を踏まえ,そこから後戻りすることは,もうしないのだということです。様々な御意見がありますけれども,ここでの会議を進めていくためにどのような現実的な対応が必要なのか,こういうことをお話し頂きたいということで,念のため,各委員の方々にもう1回,このことだけを確認しておいていただきたいということで文章にまとめておきました。
 それから,三つ目であります。法改正を念頭に議論していくための基本的視点として,前回もお示しし,今日もその議論に入るわけですけれども,学校法人の機関設計を明確にすることが不可欠であるということ。そして,前回のこの有識者会議でも一番議論が紛糾したところといいますか,時間をかけて議論されてきたところは,何と言ってもやはり評議員会の在り方ではないのかということであります。
 それから,四つ目であります。新しい私学法において,公益法人ないしは一般の社団・財団法人制度と同等以上という流れが示されていますけれども,委員の中から,それよりも更に進んだ規律付けを行うことで単に守りのガバナンスといいますか,そうではなくて世界と戦える大学,あるいは攻めのガバナンスになるような方向性を見いだすべきではないか,こういう御主張がありましたので,それもまとめておきました。
 それから,次が2004年の私学改正法では,理事会が最終権限を持つ形になっており,理事長が暴走しやすい組織になっているという御指摘がありました。したがって,評議員会の在り方,これが一番問題なのだということの御指摘,実際にこのときの議論に参加されていた委員からの御発言がありました。
 それから,次でありますが,現在,評議員会の位置付けが基本的に諮問委員会,諮問機関という位置付けになっているということもあって,その諮問機関となっている評議員会を理事・監事の選任・解任権と学校法人の運営に関する重要事項についての議決権を有すること,そういう形に持っていくという流れがあるのではないかという指摘であります。
 それから,次が学校法人のステークホルダーの代表からなるこの評議員会の位置付け,これが非常に難しいということもあって,中には株式会社で言うならば株主総会に相当し,理事会は取締役会ないしは執行役,そういった執行状況を監督し,理事長・学長以下の執行部隊を監視するという考えではないのかという委員からの御意見がありました。
 私学法では,特に学長の権限は規定されておらず,基本的には学校運営に関しては学校教育法に基づいて権限を定めています。つまり,前回の議論でも事務局から御説明頂きましたが,私学の中には,この選択によって様々なタイプの制度設計がなされています。ここにやはり自由度はあるけれども,一律的な規制といいますか,考え方が浸透していないのではないかというような問題点があるのかもしれません。
 それから,先ほどの評議員会の位置付けの中でもありましたけれども,その中に更に理事会や教育側の学長,その教員組織などいろいろなものがあります。あるいは同じ学校法人といっても大学だけではなくて,傘下に小中学校から幼稚園まであります。こういうものを総括して考えていったときに,持ち株会社を念頭に置いた場合に,持ち株会社の下に大学,高校,幼稚園などがあるといえます。したがって,理事長は,この持ち株会社を運営しているということで考えるとうまく説明が付くのではないか,このような御意見がありました。
 それ以外にも当然,第1回目の論点の中に監事,それから,会計監査人,さらには透明性や説明責任の担保といった幾つかの論点を頭出しさせていただきました。これについての御意見も頂いていますけれども,全部まとめてやると拡散してしまうという座長からのお話もありましたので,今回はこの評議員会というところを中心に御議論頂くのがよろしいのではないかということで,松本委員とともにまとめさせていただいたのが2ページ以下であります。
【松本委員】
 以下2ページ目の機関設計の確認のところから御説明いたします。これは別添のイメージ図を御参照頂きながら聞いていただけると有り難いです。今回のイメージ図というのは,前回議論を基に書いた概念図にすぎません。細かい点については省いております。本改革会議では,公益法人との同等性の担保を目指しているため,私学法の機関設計に関する規定は全面的な見直しが必要になってきます。特にこの今回の2番の③については,本日の議論に関しての例示と御理解頂ければ有り難いです。前回の会議で学長らの権限について話し合うべきだという御要望を頂いたことについては,よく承知しております。これは後日の課題としてまた改めて提示致します。
 3番の評議員会,ここからの説明に移ります。前回の会議で私学の現状に詳しい安西委員からは,評議員会が最終権限を持つべきとの御意見を頂いていました。理事会を最高議決機関とした2004年の私学法改正が私学のよさを引き出す結果になっていないことも御教示頂きました。石井委員からも評議員会に権限を持たせることは既定路線との御意見も頂戴しました。
 以下,①から⑧については先行する一般社団,財団法人法や社会福祉法人法などを基に主な論点として書いています。1番の役割,学校法人の最高監督機関で,学校法人の運営に関する重要事項の承認を行う。こういったことについて御議論をお願いします。2番の権限,これについても議論の多いところではないかと考えています。3番の義務・責任についても善管注意義務で損害賠償責任も負うということについて,どのように担保するべきなのかということについて御議論をお願いします。4番です。中でも問題になるのは恐らく4番の評議員の適格基準ではないかと考えております。評議員の適格基準の中のこの使用人,特に現職の教職員について排除するべきか否かということです。公益法人と同等のガバナンスを担保するというためには,①の一律禁止になります。この点については,前回報告書で上限を設ける。ただし,議決権は持たせないといった提言がなされていました。この点については御議論をお願いいたします。その後の参照は,私立学校法の条文を,どれを生かして,どれを外すべきかという参考までに幾つかピックアップしてここに載せました。
 ⑤です。⑤の評議員の選任方式についても,これも前回の議論でも多くの委員から意見が出されました。こういった人をどうやって選ぶか,選ぶ人をどうやって選ぶかということで延々と続くことになりかねません。選任にしても,その後の解任にしても基本的には理事会,理事による選任・解任は法的に無効とするというところから,これを明記することから始めてはどうかという提案をいたします。まず,選任については,例えば独立の評議員選定委員会の設置の義務付けも御検討頂ければ有り難いです。解任についてです。強い権限を持たせるとなると,当然,誰が評議員を監督するのかというのも問題になってきます。評議員の監督は相互監視とし,評議員の解任時を定めるとともに,評議員会に解任権限を与え,所轄庁の解任勧告の対象とする考え方,こういったものがあり得るのか御議論をお願いいたします。
 それから,任期です。「理事と同等以上とする」としないと,評議員会と理事会の関係性に矛盾が生じてきます。8番目は人数です。現行私学法では,理事の定数の2倍を超える数というふうに明記されています。一般社団,財団法人では3人以上としています。これについても御議論をお願いいたします。最後です。評議員会の実態把握,これについての御提案も頂きました。先行する公益法人,社会福祉法人の実態はどうなっているのか。これをヒアリングしてはどうかという提案です。これについても御検討下さい。
 最後になりましたが,事前に財務省から以下のようなコメントを頂きました。公益法人,社会福祉法人程度のガバナンスもできず,説明責任も果たせない学校法人に公的支援をする必然があるのだろうか。そういった私学は補助しないよう,文科省には再三伝えているという厳しい内容でした。これも申し添えておきます。
【酒井委員】
 私の意見といいますか,コメントは,最初の機関設計の確認のところでございまして,そのうちの①のポツの2,各部門の教学責任者(学長など)は理事となるという部分については,確かに有識者会議の意見書では,そのような形になっているのですが,実はここは余り詳しく,最後の頃で,それほど厳密な議論がなされたわけではございません。それで,有識者会議の意見書を見ますと,こんな形になっているのです。
 学長は理事となると書いてあって,一方で学長の選任は大学の自治に配慮しつつ,学校の自主性に任せるので,評議員会が校長,学長の解任に関与することは想定されていないということになっていまして,実は有識者会議の能見座長が,この有識者会議後に外の論文で発表したものとして,この有識者会議では,校長であるが,理事でない者が生じることを認めているというようなことを書かれていますし,このままですと,そういう形で校長であるが理事でない者というのが出てしまう可能性があるのです。
 ところが,そもそも,では,なぜ校長理事制度を設けるのかという存在理由は,経営面と教学面の連携を図って安定的な学校運営の実現に資するために必要があるから,校長理事を設けるのだということになっているので,校長であるけれども理事でない者が生じてしまうということは,非常に理念的に好ましくないのだと思います。現実問題としても,例えば会社とのパラレルで考えると,評議員会が株主総会ということになりますと,株主総会で取締役の任命を拒否した人が会社の社長に就いてしまうような事態ですので,ガバナンス上も大きな問題があるように思います。
 そもそも評議員会が理事としてバツを付けた人間が教学のトップにふさわしいのかという問題がありますので,規定の仕方で,例えば校長は理事となるという規定ではなくて,校長は理事の中から選ぶというやり方ならば,またそういう問題が発生しない可能性はあるので,もう既定路線ということではなくて,この学長の問題は非常に学校にとって大切な問題ですので,ここは今後の議論にも含めておいていただいた方がよろしいかなと思いました。
【戸張委員】
 最初にこの方向に水を差すわけにいかないので,最初だけ確認しておきたい点がありまして,前回も少し言ったのですけれども,皆様,大学設置法人を前提に話をしているというところがあります。前回の有識者会議は,ある程度規模の大きな大学法人を前提にした話合いだったと記憶していまして,今回,この機関設計をした場合,幼稚園しか持っていないような,圧倒的に数としては一番多い幼稚園しか持っていないところの評議員等の扱いも変わってくるという,それで進めるのだというのであれば,それはそれでいいのですけれども,幼稚園のみを,例えば全国には園児数が100人以下の学校法人も結構あるわけです。
 そういうところも含めた機関設定であるという認識で進めるのか,その幼稚園のみを設定する,小さいところには多少そこは考慮するということも共通認識としてあるのか,そこをはっきりしておかないと,私もそこのところはどういうふうな発言をしていいのかも含めるところがあるので,共通認識として幼稚園法人のみも対象になるような機関設計という前提でいくのかどうかだけは,皆様と共通認識をしたいというのがあります。別に今のこの進めているのに水を差すわけではないし,方向性としては私も同意していますので,そこのところを少し確認したいと思いまして意見を言わせていただきました。
【増田座長】
 今の件については,そういう規模など問わずの話だと思いますけれども,今回の議論は,学校法人のガバナンスということでガバナンスの基本形を議論するということだと思います。規模が大きいからとか,小さいからとかは,その後議論する話だと思います。制度上どう扱っていくか。それこそ前も少しお話ししたかもしれないけれども,トヨタという会社と町の八百屋さんと同じようなガバナンスを求めるというようなことは当然できないわけなので,それはこれから議論する話だと思います。
 ガバナンスの基本をここで議論し,適用についてこれからどのようにしていくか,会社でも大中小ありますし,上場会社とそうでない未上場会社もあります。公益法人でも規模によって適用が違います。そういう意味では,今後議論すべき話だと思いますけれども,とりあえず今は学校法人ガバナンスの基本の原則を考えていこうというのがこの会議だと思いますが,いかがでしょうか。
【酒井委員】
 そのような,確かに規模感によって理事の構成,評議員の構成等に違いが出てくるということはあると思いますけれども,今回の改革会議は私立学校法の改正を見据えたもので,私立学校には御存じのとおり幼稚園等も含まれております。それから,有識者会議で問題事例についての発表を頂いたときに,実は幼稚園においてかなり大きな問題が発生した事例もあります。ですから,やはりガバナンスの基本というのは,前回,冨山氏が言われたように基本は,はっきり言ってどんな規模でも同じ面がありますので,ただ,確かに評議員の数など,そういう面になってくると小規模学校には非常に負担になる可能性がありますので,そこはまたいろいろな配慮が必要になるかもしれませんが,議論としては,基本は学校のガバナンスは全て共通に考えるのがいいと思います。
【増田座長】
 私も酒井委員と全く同じ意見です。
 そういう前提で,それでは,議論を進めるということでよろしいですね。それでは,そういうことにさせていただきます。
 それでは,本日の,今,八田委員,松本委員からもおまとめ頂きました論点整理に基づきましてご説明いただきましたが,まず3番目の評議員会のここのところについて御議論を頂きたいと思います。これについて先ほどの御説明も含めて御質問,御意見を頂ければと思います。最初のこの評議員会の①のところ,役割,学校法人の最高監督機関,学校法人の運営に関する重要事項の承認を行う。これについてどなたか御意見ございますか。
【酒井委員】
 この承認について,②にも承認という言葉があって,確かに有識者会議の意見書では承認という形になっているのですが,実は議決そのものと承認というのは法的に違う概念で,承認というのは,例えば理事会が決めたことを承認したり,独自的な権限ではなくて,それを同意したりするという権限なわけで,ただ,恐らく社団法人などの定款を見ますと,評議員の権限として寄附行為変更,定款変更などは定められておりますので,恐らく法的なことを詰めていくときには,どれが承認事項で,どれが議決事項なのか,特に発議ができるかできないかという面でも大分違ってきますので,そこは恐らく今後更に細かい議論をしていくときには承認,同意と議決ということについて議論した方がいいのかもしれません。とりあえず関与という形であれば,これでいいと思うのですけれども,関与の在り方になると結構いろいろな議論は出てくると思います。
【増田座長】
 今の実際制度上ある評議員会というのは諮問委員会みたいな感じで決議機関ではないです。だから,そういう意味では議決機関であるというふうにしないといけないのかなという感じもするのですけれども,この点についていかがでしょうか。
【野村委員】
 今の件なのですけれども,実は株主総会は,取締役会を設置している株主総会の場合には,万能機関ではなくて取締役会がこれを話し合ってくれと言ったことについて話し合うという制度になっているのです。これは本来,株主の方が何でも決められるという万能機関性を前提としながら,所有と経営が分離しているということを前提に,経営者の方に権限集中させた結果,こういういびつな形になっています。これを株主総会のアナロジーで考えると,これが何か理念形のように思ってしまう可能性がありますが,取締役会で決めたことしか話し合わせないというのは,むしろ例外的な扱いになっていますので,評議員の方はやはり議決機関として,更に提案もできるという形にした方が良いと思います。
 ただ,議決する内容ですけれども,万能機関というわけにはやはりいかないと思いますので,例えば今列挙されている事項について,例えば理事会サイドの方から上がってきた原案に対して,全く異なる内容のものを提案し,そこで並立した形でみんなで審議して,こっちがいい,あっちがいいということが決議できるような,そういう機関にした方がいいのではないかなと思います。株主総会とアナロジーにすると,今の現行の株主総会を何か条文上持ってきてしまいますと,株主総会の権限,実は非常に狭くなっているのです。ここのところは少し注意を要するところだと思いますので,是非今のような発議が,提案もできるという形にしていただければと思います。
【久保利委員】
 基本的には,これは議決権があるのだということを前提に考えていくと,承認だけというつもりはもちろん,この確認のところにもそういうふうに限定するという意味は多分ないのだろうと思います。ですから,逆に言うと株主総会とアナロジーというのは,分かりやすくするためにアナロジーを使っているのですけれども,アナロジーが原則を引っ張り回すようなことになったら,それは逆なので,ここはやはり発議もできるし,議決もできるし,同意もできるという意味で承認ができるというふうに幅広く理解をしてお進めになったらよろしいのではないでしょうか。大規模とか,小規模とかいろいろなのがありますけれども,とにかく原則は発議して,議決して,それをしっかりとやらせる,そういう組織ですよというふうに私は理解をすべきだろうと思っています。
【安西委員】
 2件ありまして,1件は評議員会が決めることのできる事項をどこまでにするか。特に教学の問題については,結構,曖昧というのか,文章にならないところもありまして,例えば大学で言えば個々の学生の卒業を認めるかどうか誰が決めるのか。あるいはもっと細かく言うと,ある授業の単位を認定するのは誰が決めるのかというと,評議員会が全部決めるということには,なかなかそうはいきません。それが教学の自治ということの問題で,このことについて先ほどありましたように,学長が理事になる,あるいは校長理事というのでしょうか,逆に先ほど仰られたように,理事の中から校長ないし学長を選任する。後者の場合には教学の自治ということをきちんと考えながら,どこで線を引くかということを考えないと,やはり学校法人の教育に関わっている機関の特徴というものを捕まえられないのではないでしょうか。多少細かいレベルになるというふうに聞こえるかもしれませんけれども,大事なところだと思います。
 それから,第2点は事実関係で申し訳ありませんけれども,私学法の中に理事会が評議員会で最終承認できると決めた事項については,評議員会が最終的な承認することができる条項はあったのではないでしょうか。そういう覚えがあります。ですから,全くただ評議員会が諮問機関であるというだけの条文になっているわけではないと思います。これは今,2番目に申し上げたことは付け加えの事実関係を申し上げただけですので,大事なことは最初の方の教学の自治ということを公益社団や財団,社会福祉法人とまた少し違う側面があるということは申し上げておければと思います。
【松本委員】
 確認です。今,評議員会の役割について,学校法人の最高監督機関で,その承認を行うというふうにしましたが,今の御意見を頂いて,学校法人の最高議決機関とし,更に学校法人の運営に関する重要事項の発議,議決,承認を含むというふうな内容に改めると受け取っていいのでしょうか。
【野村委員】
 今の議論は,まず安西委員の意見もありましたように,法定決議事項というのは,まず前提です。何でもかんでもできる機関というわけではありませんので,これとこれについては評議員会がやるのが望ましいというものを抽出した上で,その議決事項に関しては,これまで諮問機関となっていたり,あるいは例外的に,今,安西委員がおっしゃられたような,これを承認したりする手続があったものをより一歩進めて,みんなで審議して議決をします。そのときには,その場で提案,いわゆる動議が出たら,動議についての取扱いもするし,事前に議案の提案があれば,その議案提案されたものについて質疑をするというような形で,会議体としてしっかり運営するということは前提だと思います。ただ,その前提,何でもかんでも話し合うという,そういう意味での万能機関性というのはないのだろうと思いますので,そこだけは確認しておいてもいいのではないかなと思います。
【松本委員】
 分かりました。そうすると,今,私学法41条で評議員会を置くとなっています。42条では次に掲げる事項については理事長においてあらかじめ評議員会の意見を聞かなければならないという設計になっていますが,そこに議決する,意見を聞くべき―意見を聞くのではなくて議決とか,発議とかというので例示するという形にすればいいという理解でいいでしょうか。
【野村委員】
 法制上の問題については,後で文言のことは説明いたしますけれども,そういうことではなくて,この条文ですと理事会がもう決めているのです。既に理事会が決めていることについて承認を求めているわけですから,これとは大分コンセプトが違います。基本的に,これとこの事項については評議員会が決定する事項なのだということをくくり出して,そこで評議員会で審議をして決めるということですから,理事会が全くその案として持っていないものであっても,そういった内容のものが望ましいというふうに決定すれば,それが学校運営の基本方針として定まるという,そういうことになるのではないかなと思います。
【久保利委員】
 正にこの最高監督機関ということの意味をどこまで広げるかということだと思います。そういう点では,諮問委員会ではないのだよということをはっきり言いたいがために,多分,監督機関や議決機関などというふうに言っているわけですけれども,正に今,野村委員がおっしゃるとおり,何でもかんでも議決できるのかとか,単位のことまで全部評議員会が,あなたは卒業を認めないとか,そういうことまでできるのかどうかというのは,これは別問題だというふうに私も理解しています。
 だから,そういう点では,監督機関であると同時に,いわば議決機関でもあります。ただし,テーマは一定のことで絞りはかけます。そのときに諮問委員会という,その立場はまずいです,これはやめましょうよということは,私は大方のコンセンサスなのかなと思っていて,今,松本委員がおっしゃった発議や議決,これはもちろんテーマによりますけれども,それは当然,評議員会には認められるべきものだと,こういうふうに私は理解をしております。
【増田座長】
 そうすると,次の決議機関といいますか,決議できる事項になってくるのだと思いますけれども,権限のところに入っていますけれども,それについても御議論頂きたいと思いますけれども,いかがでしょうか。役割については,今ほど議論されていますので,決議も発議もできるということですけれども,内容によって決議するということを決めなければいけないものも出てくると思うのです。今のこの権限というところがありますけれども,理事の選任,監事の選任・解任,会計監査人の問題もそうです。法人運営の重要事項,評議員の報酬,これもそうですけれども,ここに書いてある合併の話や,それから,重要な借入金等も入ると思うのですけれども,こういうものについての権限をどこまで決議事項に入れるかという問題が出てくると思うのです。こういったことも含めて御議論頂きますけれども,いかがでしょうか。
【戸張委員】
 学校法人ですから,予算を前提に予算に決められたもので行動するのが通常の経営なので,予算の承認など,そういったものの扱いをきちんと,もし重要事項ということであれば入れるというのも一つの考えかなと思いますけれども,その辺のところについては,まだ決まっていません。ただ,予算が非常に重要なので,予算の扱いをしっかりと決めた方がいいかなと思っています。
【酒井委員】
 今おっしゃられた予算についても,私はそのとおりだと思います。予算も中を見ていきますと,例えば中期計画,あるいは事業計画,予算,借入金,あるいは重要な資産の処分,こういったものは恐らく評議員会で決議すべき事項だと思います。ちなみに,慶應義塾の規約を見ると,これは全部評議員会の議決事項としています。そのほか,当然,議決事項になるべきものとしては寄附行為の変更,これは専権事項だと思います。それから,人事です。それから,役員の報酬関係,これはお手盛りを防ぐためにも評議員会が行った方がいいですし,あるいはあとキャンパスの移転,大きな事業の処分や取得,これも評議員会の事項。さらに合併,解散など,こういったものも事項になってくると思います。
【増田座長】
 あと,重要な保証とか投資も入りますよね。これはここで出ましたけれども。
【酒井委員】
 駒澤大学かどこかで大変なことが起きたことはありますので,それは多分,付議基準というのですか,どの程度のインパクトがある取引については付議するみたいなものは,これは多分,学内の規律に任せることになると思いますけれども。
【安西委員】
 今,戸張委員,また,酒井委員のおっしゃったとおりだと思います。今言われたことは全て評議員会の議決事項であるべきだと思います。学校法人にとっては非常に重要な課題だと思いますので,そのことだけ申し上げておければと思います。
【相原私学行政課課長補佐】
 先生方から幾つか御意見を頂きましたが,少し混線があるように思いましたので申し上げると,今,手元に私は,例えば社会福祉法を見ているのですが,会社法なども同じになっていますが,例えば重要な財産の処分,多額の借財,あるいは事務所,重要な組織の設置,廃止,あるいは会社などでも重要な使用人の人事というのもあったと思いますが,そういった事項は,その株主総会の決定事項ということで定められているのではなくて,むしろ,法令上は取締役会から代表取締役や業務執行取締役に委任できない事項というようなことで規定されていた事項ではないかなと思うのです。
【野村委員】
 これが先ほど私が申し上げたことです。295条第1項は万能機関で,会社法上,何でも決められるということになっていまして,株主総会。取締役会設置会社は,これは所有と経営が分離しているということを前提にして,株主総会の権限を極端に縮小しまして,法定決議事項及び定款決議事項に限り決議することができるという,これは一定の政策です。株主総会に何でも任せると,本当にこれ,株主はたくさんいますので,極めて無責任な人たちが会社の経営にでたらめなことを言いに来るということがあるので,むしろ,経営者に委ねた方が合理的であるという前提に立って,そうだとすると慎重に決議をさせるために取締役会で決めて,社長には任せない,こういうふうに法制化されているだけなのです。アプリオリに,その例えば重要な財産の処分や,重要な使用人の決定など,そういうものが,取締役会がやるべきものだと決めているわけではないです。本来は295条第1項の方を見ていただきますと,また,これは万能機関ということになっていて,何でもできるという前提になっていますので,こっちが原則でございます。
【石井委員】
 先ほど私もやはり監督をするために必要な事項というところをまず重要事項として決めていく必要があるのかなと思っていて,そういう意味で,余り広くなり過ぎてしまうと,結局,評議員になる人がどこまで学内の事情に詳しくて,そこにアップデートできるかというところの問題もあると思いますし,ある程度のところはやはり理事会の方に任せていく事項というのも必要なのではないかとは思っています。ただ,それこそここに出ている内容であるとか,あとは役員,理事そのものの報酬ですか,やはりお金の問題など,その辺については評議員会の方で判断していくような形にはなると思うのですけれども,全てとなってしまうと評議員の,今度,きちんとした意思決定がどこまでなされるかという部分では難しいのかなと感じたところです。
【野村委員】
 会社法の授業みたいになってしまって申し訳ないのですけれども,実は私ももちろん申し上げたように,295条第1項のように万能機関で何でも決められるというのは駄目だと思います。これは安西委員が最初にお話しされたように,教学が決めるべき事柄など,非常に重要な問題があって,ここに手を突っ込まれると学問の自由が侵害されますので,ここはやはりどう考えても経営に関することなのです。学校運営の基本に関わる,経営に関わる重要な事項について絞っていくという発想だと思います。その上で,実は株主総会と取締役会の関係って,原則は併存です。通常何事もなければ,取締役会で取締役会内ですけれども,取締役不設置の会社の場合は,普通,取締役の多数決によって業務運営を行っているのです。それが駄目なときに,いつでも上書きできるという権限を株主総会に与えているという,こういう構造になっています。これが原則です。
 ですから,必ずそっちで決めなければいけないというわけではなくて,問題がなければ普通に運営していけばいいという話なのですが,いつでも株主総会でひっくり返せるという,そういう制度設計になっています。ですから,ここでも評議員会は,これとこの事項については,基本的に質疑をして何事もなければ普通は執行者の決定に同意することになるのだと思いますけれども,これがおかしいといった場合には,自らの責任の下に,これは次に出てきますが,善管注意義務を負いますので不用意なことは決められませんから,自分たちが責任を負うと覚悟を持ったことについては,自分の責任でストップをかけるという,そういう権限を評議員会に与えるという,こういう制度ではないかと思います。ですから,株主の場合は,善管注意義務はないので,だから,むしろ無責任になるという前提なのですが,これは責任ある機関が併存するという仕組みで権限を決めていけばいいのではないかなと思いますので,これでよろしいのではないかなと思います。
【岡田委員】
 私も皆さんの議論に,野村委員の議論にも賛成でございまして,繰り返しになりますけれども,ここで権限として②で挙げられている事項は,いずれも最低限,これは評議員会で決めなければいけないのではないかなという感じがいたします。したがって,法律で決めるのかどうかは法律で。私学法で決めるとしたら,限定列挙というのですか,ここの部分は最低限評議員会で決めること,そのほかは現場で,そのほかにも学校でいろいろ重要事項があるかもしれませんので,それは決めていくというようなやり方がよろしいのではないかなと思いました。
【西村委員】
 私も今議論がなされている方向に賛成ですが,評議員会は主に教学の自治より経営に関わる事項に絞っていくということにおいて,学校法人の場合,切り分けは結構難しくて,どういうふうに切り分けるかを議論する必要があると思います。キャンパス移転や,新学部の創設や既存の学部の廃止など,それらと経営が一体化していますので,どうやって切り分けてかつ教学の自治も担保できるか,項目ごとに見ていくことが大切だと思います。
【増田座長】
 権限については,今ほどの議論で大体そういう形でいいのではないかということですが,それに伴う義務・責任,③のところについてですけれども,これについては,いかがでしょうか。
【野村委員】
 ここが一番難しいところだと思うのです。といいますのは,株主の場合は,先ほど申し上げたように義務は負っていません。ですから,誰からも損害賠償責任を求められるわけではなく,会社の経営がうまくいかなくなれば株価が下がって自分が損をするという,こういう枠組みで議論をしているわけですが,今回の評議員の方々は懐が痛まないという可能性ももちろんあるわけなので,何かいろいろな意味で権力闘争に巻き込まれたり,あるいは自分の名誉を得るために,そちらの目的が,インセンティブが全然違うところに置かれてしまったりというようなことが出てきますので,きちっとした規律付けが必要だと思います。
 ですから,会社との間では委任契約を結んでいるということを前提に善管注意義務を負うって,これは,ここまでは法制上問題ないのですけれども,それをどうやってエンフォースするかという問題でありまして,義務違反があっても,結局のところ,誰からも追及されない形だとすると絵に描いた餅になりますので,この義務違反に対して誰がどういう形で責任を追及していくのかということをしっかりと定めないといけないと思います。一種の株主代表訴訟と同じような形で,その評議員会の中で責任追及という委員会のようなものがあるのかどうか分かりませんが,そういうところがその評議員の中で,そういった自分の私利私欲のために学校運営をゆがめたというような事実があったような場合については,責任追及ができるという何らかの制度的な設計が必要になるのではないかなと思います。
【増田座長】
 野村委員,そういう意味では善管注意義務だけではなく,損害賠償の責任や追及がしっかりとできるような仕組みが必要だということですよね。
【野村委員】
 おっしゃるとおりです。善管注意義務を負うのは,原理上委任契約を結ぶはずですので,法制上はそうなるはずですから,善管注意義務は負っているという前提だと思います。そこで基本的には,それに対して責任を追及するのは,法人自体が損害賠償請求権を持っているということにはなりますけれども,代表訴訟が必要なのは,結局,絵に描いた餅で誰も追及しないからなのです。ですから,そういった提訴しないという,提訴懈怠可能性というものに対する何らかの配慮から責任追及がいつもあるのだという,その危機感をしっかりと持っていただいた上で真剣に議論に参加していただけるような仕組みづくりが必要だと思います。
【酒井委員】
 今仰られたことに若干補足しますと,評議員が善管注意義務を負うからといって,余り恐れるに足りることではなくて,最高裁の判例に照らしても,意思決定の過程に著しい合理性がないことや,そういう著しい合理性がなければ普通は経営判断の範囲内ということで,何か責任を負うということはなくて,基本的には違法的なものに踏み込んでしまったような場合はアウトですけれども,善管注意義務だからといって何か意思決定に萎縮するということは余りないと思います。
【増田座長】
 例えば巨額の金融上の投資をして大分損を出したなんていうのは,意思決定ですよね。だから,その辺のところの歯止めというのはどうするのがいいのでしょうか。
【酒井委員】
 これも意思決定そのものの不合理性と意思決定の手続。
【増田座長】
 プロセスの方。
【酒井委員】
 プロセスをしっかりとやっていれば,それはやはり当たるか外れるかで,結果責任ではないですから,そのプロセスをしっかりと踏まえてやっていれば,そこは問題はないと思います。だから,大きな大学のキャンパス移転なども,あらゆる精査をしてデューデリジェンスというのですか,いろいろ調査をした上で決定して,結果,学生が来なくなりましたよといって,それで責任を問われることはないので,そこは御心配は要らないと思います。
【石井委員】
 野村委員がおっしゃっていた代表訴訟的なものというのは,評議員に対しての責任追及という意味でおっしゃっていたのでしょうか。
【野村委員】
 そうです。
【石井委員】
 それはどなたがどういう形でやるようなイメージでしょうか。
【野村委員】
 そこはほかに例がないので,基本的に。例えばアメリカでいきますと,代表訴訟というのを起こす前に会社が訴訟を起こすかどうかということを決める訴訟委員会というのが委員会設置会社の中にあるのです。これと同じように評議員会というところの中にもともと今正に酒井委員がおっしゃられたような著しく不合理な決定を行ったということが疑われる事象が起こった場合について,これを責任追及するかどうかということを判断する委員会みたいなものがあって,その委員会が場合によっては代表訴訟的な形で会社に代位して請求するという,法定訴訟担当の形で代位請求の形を取るということではないかなと思います。もちろん,法人自体が責任追及するということであれば,法人の代表者が追及すればいいのですけれども,そこは提訴懈怠可能性が生じている場合について,提訴懈怠を回避するための制度としてそういう制度を設けておく必要があるのではないという,そういう趣旨でございます。
【石井委員】
 分かりました。
【増田座長】
 特に御意見がなければ,次のところへ行きたいと思います。評議員の適格基準,④のところです。ここのところはいろいろあるので,皆さんの御意見を是非とも伺いたいと思います。ここはちょうど適格基準の中でどういうふうな,ネガティブ方式にするかとか,ポジティブな要件だとか,ここに挙げていただいたのがいろいろ出ていまして,それに基づいて評議員の選任方式を考えていくのだと思いますけれども,この点について皆さんから御意見を頂きたいと思います。
【岡田委員】
 このネガティブ方式,ポジティブ方式というのは大変いいアイディアだと思います。そのネガティブ方式のところで2点ほどあるのですが,一つは使用人を禁止とするのか,あるいは上限規制をする。ただし,議決権除斥という案なのですけれども,私は,これは評議員に現職の教職員が入った場合に理事会との関係からいって,ヒエラルキーの関係で,ある意味では評議員の方がプレッシャーを受けるというか,何らかの圧力を受ける可能性がないとも限らないと思いますので,つまり,私の理解では,これは禁止にすべきではないかと思います。
 それからもう一つは,このネガティブリストの中で「理事(ただし元理事は可能)」とか,「使用人(ただしOB・OGは可能)」,これで基本的な考え方はいいと思うのですが,では,例えば去年まで理事をやっていた方がすぐ評議員になるとか,教職員も間を空けずしてすぐなるというのは,何か大丈夫かなという気はします。自らやってきた理事の方の自分の行動が評議員になって,そこでまたそれを監督するという立場になること,一般の企業で言うと独立性の問題とかいろいろ言うのですが,それとは少し話が違うかもしれませんけれども,私としては,この辺がどうしたらいいかという,何年か空けるとか,引っかかったところであります。
【安西委員】
 ガバナンスの法的な骨格を作る場だと思うので,こういう申し上げ方は少し細かいかもしれませんけれども,現実問題としては評議員会のサイズによるのではないかとも思うのです。評議員の数が少ない中で現職の教職員が大半を占めてしまうと,今,岡田委員の言われたようなプレッシャーがかかるということはあるかと思いますけれども,一方で評議員が非常に多い中で一部教職員という場合には,やはりその学内のいろいろな情報が評議員に伝わりにくい,そういう中での決定を行う最終的な諮問機関ではなくて決定機関として,そのヒエラルキーを循環してしまうようなところがあるので,法律の専門家はどう思われるかとは思うのですけれども,現実問題としては,私は評議員の数が多い場合には,評議員の方々が情報を十分,最終的な決定機関になるときに最終的決定を行うための情報を十分持っていることが大事だと思うのです。それができるかどうかということについて,現職を完全に外した場合には疑問のところがございますので,一応,申し上げておければと思います。
【野村委員】
 安西委員のおっしゃられたことはよく理解できるのですが,やはりガバナンスの基本の形という点でいきますと,やはり理事を選ぶ人の中に理事の部下がいるというのは論理的にはあり得ない事柄でありまして,結局,理事が人事を持っています。そうすると,現在の事務職員の方,あるいは教員などが最後は人事でいじめられるかもしれないから,どんなに暴走している理事長であっても解任の発議はしないとか,解任には賛成しないとなってしまいますので,ここはやはり,まずは型としては岡田委員がおっしゃったように使用人が,その理事の選任・解任に関わる方に入っているというのは不自然かなという気がいたします。
 ただ,実害として,今出てまいりましたように,今度は,全くとんちんかんな議論がなされる危険性というのはもちろんあるわけなので,そこをどう担保していくかということは必要ですから,例えば重要な決定を行うときにはきちっとしたヒアリングをするなど,そういった手続が本当は求められていくのだろうと思います。
 これをどういうふうに法制上規律するかは分かりませんが,先ほど実は善管注意義務のところで議論がありましたように,プロセスのところは経営判断の原則,アパマンホールディングス事件,最高裁の判例が変な判決を出しているので微妙なのですけれども,伝統的な議論はやはりプロセスの部分は従来どおりの善管注意義務を負っていますので,通常のその役員であれば果たしたであろう,相当以上の注意を果たしているということが必要なので,その決定プロセスの中で会社の,学校の事情も何も聞かないでいいかげんな決定を行うということは,本来,善管注意義務違反になり得る問題なのだということを議論の枠組みとしては置いておいた方がいいかなとは思います。それをどう担保するかという問題は,構成員問題ではなくて手続上のプロセスの問題として整理するのがいいのではないかなと思います。
【増田座長】
 ですから,少なくとも現職の従業員がなるとか,そういうことは駄目ですよね。利益相反といいますか,利害関係が当然出てきてしまうわけだから,それはあり得ないということですよね。ただ,辞めた後,それでは,いつならいいのかなど,そういった問題はありますよね。理事なり役職員を辞めた後,OG,OBの問題ですね。
【野村委員】
 情報提供だけですけれども,現在,しがらみをどうすれば断ち切れるのかという問題は,ほかのところでもあって,例えば社外取締役の要件を決めるときに,過去に例えば取締役であった人が後になってから社外取締役となれるのかどうかというような,こういう議論をするときに年季が明ける期間というのを議論してきたわけです。
 かつては5年だったのです。昔は,社外監査役の要件のときは5年という区切りをやっていたのですが,実は過去に一度もなったことがないという厳格な要件に一旦変えたのです。これは平成13年の12月の改正のときに議員立法で,そこを削除してしまったものですから,おかしな状況が起こりまして,もう1回年季が明ける期間を復活させたのです。平成26年の会社法改正のときです。そのときにまた5年に戻すと前の立法がおかしかったことになるものですから,一応,10年という形で年季が明ける期間を今設けています。
 ただ,10年は長過ぎるというのが実際で,海外の事例では大体年季が明けるのは2年から3年という,そういうようなところが一般的であります。ですから,2,2年とか,そういうような形で過去の人との関係というのは,ある程度切れるという,それが世界の一つの基準かとは思いますが,過去の法制上の問題からいけば5年という,そういったようなものもあってしかるべきかなと思います。
【八田委員】
 今,野村委員のお話を伺って思うのですけれども,こういった規則の中で数字基準を出してくるという場合,絶対的な理論的根拠って基本的にないのですね。私の言葉で言うならば,えいやの世界で決めてくる。ただ,民主主義ですから,それに一定の合理性を付着させているだけであって,そうすると,この何年かという年限は別途この評議員の就任期間とも考えなければいけない。それが2年なのか1年なのか,4年なのか,それによってやはり年季明けの期間というのは来ると思います。ただ,そうすると分からないですが,基本的には,冷却期間ということで1期は絶対に携わらないというならば,評議員の任期が4年ならば4年がクーリングオフの期間だろうということになります。そんな感じで考えてもいいのではないのかなと思います。この議論は,もう詰めていっても答えは出ないと思いますので,最終的には,増田座長がお決めになればいいのではないかと思います。
【久保利委員】
 根本的に今何を議論しているのかというと,多分,評議員の方々の独立性というのをどうやったら担保できるかというのでネガティブだったり,ポジティブだったりいろいろ考えていて,その中でこういう人は不適格だねというのは,独立性に懸念が出てくるということで何年ならいいかということまで含めて今議論をしているわけなのですけれども,根本は,要するに独立性の高い,そういう評議員を入れるということが一番大事なのだとすれば,そうすると立場上あり得ないような,先ほどの教職員であるとか,そういうような人,あるいは理事であるとか,そういうのはもう明らかになると思いますけれども,多分,細かい話になって,それが何年前ならいいかとか云々というのは,基本的には立法するときの覚悟だと思うのです。
 要するに社外性,独立性というのと情報アクセス性というのか,この情報を持っているかどうかというのはトレードオフの関係に決まっているので,独立性の高い人を選ぼうと思えば,情報過疎の人たちになるというのは,当たり前です。問題は,情報過疎をどうやって,それをフォローするかというので内部統制であるとか,その具体的な情報をどうやって集めるかという事務局の問題とか,どこでも社外取締役に情報提供するためには,どうしたらよいかということを工夫してきたわけなので,私は,ここで一番大事なのは独立性のある,そういう評議員を確保することです。
 その人に足りないであろう,先ほど安西委員がおっしゃったような情報にやや欠けるところがあるというのは,逆にどうやって情報をしっかり提供できるようなシステムが作れるかという別の問題だと。そこで情報をいっぱい持っていますよという人は必ず独立性がないに決まっていて,利益相反しているに決まっているわけですから,そこははっきり議論の枠としては,座長にお願いしたいのは,切り分けて議論をしていくということが今やっている議論としては必要なのではないか。情報のことはまた別途考える。どうやったら情報がしっかりと入ってくるか。ここの辺りの連携は少し別のテーマとして考えたらどうでしょうかという気がします。
【増田座長】
 独立性の高い人を選ぶということですね。それが原則ですよね。それに対して具体的に出てくるものがありますけれども,ただ,先ほど少し話していた,こういう人は絶対駄目だというのは確かにあります。法律上も駄目だというのを決めておかなければいけないのではないかと思うのです。そういう意味では,先ほどのネガティブリストがありましたけれども,現職の教職員の方や,現職の役職員の方がなるというのはやはり,利益相反といいますか,そういう意味では外から見るとどうしても独立性に当然欠けるのではないかとみなされますよね。そういう意味では入れられないとなると思うのです。これは法律上やはり手当てする必要があるのだと思います。
【戸張委員】
 全く久保利委員のその独立性という考え方に非常に同意いたします。その中でやはりここに書いてある関連法人との関係についても煮詰めて,その関連法人というのが例えば同じグループの似たようなところの,別の学校法人や,一つの宗教法人の関連の関連法人というアプローチと,それから,役員の方が代表者になっている別の,そこの従業員など,いろいろな縛りがあるので,ここで全て決める必要はないとは思っていますけれども,この関連法人との関係というのが隠れみのになる可能性があるので,そこについてはしっかりと独立性というところから,関連法人に関する直接ではない,間接的な独立性が阻害されているような人たちについても,法律化するときには考える必要があるかなと思います。
【増田座長】
 その後の方の議論に入っていきたいと思いますけれども,評議員の選任方式,選任・解任,それから,任期,この辺のところを一緒にやったらいいかなと思うのですが,3ページになりますけれども,これについて,いかがでしょうか。現在の理事会,理事による選任は法的に無効とするとか,例えば独立の評議員選定委員会の設置を義務付けるかとか,それから,解任についても理事会,理事による解任は無効とする。評議員の監督については,相互監視として評議員の解任事由を決めて,評議員会に解任権限を与えて所轄庁の解任勧告の対象とするとか,こんなようものが例として挙がっていますけれども,これについていかがでしょうか。
 任期なども影響すると思うのだけれども,任期は今決めていないわけですけれども,例えばほかの公益法人等と同じようにして1期2年とか,重任はもちろんできるわけですけれども,それに伴って理事だけではなくて監事の方もそれ以上の任期にするとか,その辺のところも一緒に議論していただくといいかなと思うのですが,いかがでしょうか。
【野村委員】
 現実に例えば今までのように理事会のようなところでリストを作って,この方々にお願いしましょうというのは,一種の諮問機関をお願いするイメージでしたので,今後作っていく評議員会の選任プロセスにはなじまないと思います。むしろ,理事を選ぶ人,あるいは理事を解任する人ということになるわけですので,その人たちが選ばれるプロセスに理事が関与するというのはおかしいだろうなとは思います。
 では,どうなるのかということなのですが,例えば立候補制みたいな形になりますと,世の中にはやはりどうしてもいろいろと働いてきて,結構,リタイアされて,いろいろな社会貢献活動をしたいなと思ったり,あるいは人生にちょっとした名誉が欲しいなと思ったりしたような人たちが学校法人の評議員っていいよねってなってしまう可能性があるわけです。こういう方が望ましいかというと,今,我々が考えているような評議員会としては,そういう方ではなくて,やはりしっかりと学校経営について責任を持って議論していただける方ということになるので,適格性が非常に重要なのだろうなと思うのです。この適格な形をどうやってノミネートするのかというところを決めなければいけませんので,私はノミネートする委員会のようなものがまず必要なのかなとは思います。
 この方々が,見識のある方々がある程度の人を集めてくるというような感じで評議員会というものを組成しなければいけないので,最初はどうなるかという問題はありますけれども,一旦できてしまった場合には,その評議員会の中に指名委員会のようなものを設置して,そこが次の評議員のノミネート,提案をして,評議員会でもちろん,それを全面的に引っくり返せる状況,提案は提案だけれども,望ましくないというのであればバツが付けられるというような何かそういう緊張関係のあるプロセスをそこに設定しないといけないのではないかなと思います。
【増田座長】
 選考委員会というか,ノミネーティング委員会を作って,それで最初は始まって,評議員が選ばれた後は,今度,評議員会の中でノミネーティング委員会を作ってやるか,それとは別に作るか,指名委員会のようなものを作るかという話ですね。
【安西委員】
 野村委員のおっしゃるとおりで,最終的な決定機関ということになりますと,きちんと適格性といいましょうか,私立学校を我が事として発展させていきたい,社会の公器として発展させていきたいと心から思っている方々に評議員になってもらいたいので,それを念頭に置いた評議員の推薦委員会があるべきだと思います。
【岡田委員】
 この評議員の選任方式のところの,例えばということなので,これに限らないと思うのですが,独立の評議員選定委員会の設置の義務付けというところは,私もそれは正しいとは思うのですけれども,「独立の」というのは,先ほどから話に出ているように大変難しいところだという気がします。したがって,少なくともその選定委員会で評議員を選ぶときに,少なくとも資質だとか,評議員としての資質とか専門性とか,あるいは人格も含めて何らかの項目を決めておく。これは法律で決めるのか,あるいはソフトロー的なもので決めるのかは別として,そういうものをしっかりとしておいて,評議員選定委員会は,それをベースにして人選をするというような,何か尺度があった方がいいような気はします。
 それであっても,独立の評議員選定委員会を決めたとしても,今の例えば学長の友達や,直接お金の関係も何もない人が来たけれども,どうもおかしいところがあるよという人が選定委員になってしまう可能性もありますので,むしろ,ここは余り厳しく言うよりは,その後の解任のところに入っていますけれども,評議員の監督や,相互監視というところをどういうふうに充実させていくかという方が,私は大事なのかなとも思います。話がそっちに行くのを許していただければ,相互監視といっても,大変難しいかもしれませんが,よく会社でも取締役会の実効性評価などをやっていますけれども,そういうものの中でしっかりした,相互に評価をし合うという体制を作るということと,それを公開するというか,開示をする。開示をしたものは,これは是非とも文科省も,それによく関与して,しっかりとしたプロセスで相互監視ができているかということを見ていただきたいと思います。
【八田委員】
 前回からも議論になっていまして,今回の建て付けの中に評議員会の位置付けが非常に重要性を増してきています。それから,今日,御提示しているこの資料の最後のポンチ絵の中でも,文章にもありますけれども,理事も監事も会計監査人もみんな選任・解任を評議員会の方でつかさどる,こういう流れになっているということです。では,評議員会の評議員はどうするのか,こういう鶏と卵的な発想がいつも出るのですけれども,これはもう基本的に評議員会の中では互いを相互監視する取締役会の制度に似ているかもしれません。選定するときが一番問題であって,それをどうするかということで今日の論点のメモには独立の評議員選定委員会,これは他の関連,非営利的な組織を見ますと,これについての規定を持っているのは,多分,ゼロだと思うのです。
 したがって,そこのところはどうも曖昧模糊になっています。それはやはり今回のこの改革会議においては,一定の方向性ないしは確定的な結論を持つべきではないのかということで,私も手元にある幾つかの財団,社団の定款を見てみました。そうしましたら,これはある極めて独立性を旨とする一般財団のところに,こういうような評議員会選定委員会というのがありまして,このメンバー構成は,当然,考えていく段階によって違うのでしょうけれども,ここでは一応,監事,1名,まず入る。それから,評議員も,これはゼロのときは,スタートのときはないと思いますけれども,一応,現行の流れでいくならば,評議員の方も1名入る。そして,別枠で全く評議員にも,将来的に監事にも理事にもならない,しかし,一応,公益的な責任が負える方で構成される。社外の方です。こういうので一応選定していくというのがありましたので,こういう考え方は一つ受け入れられるのではないのかなと思います。それは一歩進んだ学校法人制度の改革になるのではないかということで,一例として御提示させていただきました。
 問題は,では,彼らが誤った選択をして,誤った評議員を選んでしまった場合どうなるのだろうかということです。この選定委員会は何の義務もないのだろうか,責任も問われないのだろうか。ここのところは答えがないのですけれども,恐らくなぜこの方たちが選定されたのかということ,先ほどの岡田委員と同じように,やはり私は一つの規律付けとしてディスクローズをするということ,しっかりと選定の理由等を開示する。こうこうこういう適格性とこうこうこういうことで選ばれたのですよと。後日,その方が違った形でそれを裏切るようなことがあった場合には,そのディスクロージャー事案を基にして評議員選定委員の責任を問う,こんなことがあるのかなということで,案として御提示させていただいた次第です。
【増田座長】
 確かに選考する側の適格性の問題ももちろんあるわけですけれども,選考の基準だとか,そういうこともしっかりと開示していくというのも非常に大事だと思います。
【酒井委員】
 私も今,八田委員の御発言を受けて,私も幾つか財団に関わっているのですが,そのうちの一つは,評議員選定委員会を持っていまして,ここでは選定委員会は現行の評議員,これは現象的にはいないのですけれども,評議員,監事,それから,事務局職員1名と外部有識者2名の計5名でやるということになっていまして,例えば事務局職員は評議員にはなれないものの,評議員を選ぶことは可能なのかなという感じもしますが,こういった枠組みが一つ考えられると思うのですが,いずれにしても,我々有識者会議のときに議論していたのは,そんな格好いいことを,選定委員や,その後選ばれる評議員,これの人材確保が大変であって,ですから,おおむねこの評議員会強化に対する批判の本音というのは,そんな評議員を確保できるのかと。
 確かに,会社でも今,社外役員をガバナンスコードで求められているのですが,この会社でさえ,一部上場でさえ確保に非常に苦労しているというのが実情です。ですから,あとは制度設計の問題ですけれども,こういった選定委員会というのは,望ましい姿ですし,姿であることは間違いないので,ただ,これらはかなり定款等で各法人の自主性に委ねられる部分もあるので,将来的な制度設計としては,こういったものはむしろ,その法定事項よりもソフトロー的なものに落として,それをガバナンスコードでコンプライ・オア・エクスプレインという形でだんだんと充実させていくというやり方が一つあるのかなと思いました。
【野村委員】
 まず,選任に関して,先ほど八田委員がおっしゃられたように,委員会を作っても,その委員が間違って選任してしまった場合の問題って常に金太郎あめのようにどんどん同じことが繰り返されていく議論になるのですけれども,ただ,実態として考えてみますと,例えば変な人を選んだ,そうすると当然解任の話になるのです。それで解任訴訟などが起こって,解任の決議が起こって,そうすると選ばれた人が,例えば自分が解任されるのはおかしいといって地位確認訴訟など起こってごちゃごちゃになるのです。ゴタゴタになって最終的に決着したときに,元をただしてみたら,最初のノミネートがおかしかったとなったら,当然,損害賠償を求められてしかるべきなのです。
 ですから,それはやはり,その方々は委任契約を結んでしっかりとこの職務に就くという形になりますので,それが著しく,例えば明らかに不祥事を起こした人を推挙していたとか,そういう問題が起こった場合については,それは調査不足とかいうことが原因だったときには,何らかの最終的な責任はあるのだということは,社会的制度としてはあると思います。別に法令に書く必要はないと思いますけれども,そういう制度になっているのだろうなとは思います。
 他方で,今,解任のところの議論のところに関わってしまうのですけれども,解任は今のところ,イメージとしては,相互監視を行って,不適格な人がいた場合には,この解任をするということなのですが,この部分については実際,多勢に無勢で多数決ということになると,解任されるべき人が解任できないという問題が起こるわけです。そこで今回の御議論の中には,監督官庁である文科省のところから解任の勧告,これは私も前にこの有識者会議のときに,こういう権限があるのではないですかと発言しましたので,それはそれでもいいとは思うのですが,それに加えてやはり裁判所を通じて解任の訴えというのもあってもいいような気もしますので,司法的な解決というのも,残しておいてもいいのではないかなと思います。
 要件は明確に書いてもいいと思います。例えば財産上の不正な行為等があった場合とか,そういった幾つか,いわゆる横領みたいなものに関わっているとか,それに加担しているとか,そういったようなものがあったにもかかわらず,解任がなされなかった場合については,裁判所に訴え出れば,裁判所が解任をするというような手続があってもいいのではないかなと思います。
【増田座長】
 そのとおりですね。
 次に人数の問題などは,理事と兼任を認めているから,理事の定数の倍を超える数というふうな法律になっていますけれども,この辺のところは,いかがでしょうか。人数については全然議論していませんけれども,実態の評議員数は二十何人だと,データ集を見ますと出ています。だから,ある程度人数は絞られてはいるのですが。
【久保利委員】
 基本的に人数の問題や,先ほどから人がいないのではないかという議論,結局,それは評議員会が,きちんとした人が適切に選ばれて非常に適切な行動をとるというモデルがないものですから,それが学校法人にとってどんなメリットがあるのか,こんないいことがあるということを,恐らくみんな分からないのです。社外取締役にしたって,もう20年来一生懸命,社外取締役を増やすようにやってきて,やっと最近では,うちに来るような社外取締役さん,いませんと言っていると,あの会社はやっぱり駄目だというふうにみんなが思うようになるので,そうすると,やれ女性の取締役もおりますよ,こんな人もいますよ,多様性もありますよ,こういうふうにみんななっているのです。
 だから,私は,この法律が一つできたから,急に日本中の大学が世界最高級の大学になるとは思っていませんけれども,ただ,そのよすがというか,そういう道筋を作っていく。これをしなければ日本の大学が本当に世界で競争力を持つような大学にはなり得ない。それは評議員にどんな人をしっかりと選んで持ってこられるかということにかかっているのですというメッセージをやはり文科省から,それ以外からもみんな出していくべきだと思います。それができるか,できないかというのを,SNSを使っても何を使ってもいいですけれども,いい大学なのか,よくない大学なのかというのをガバナンスランキングなどを作って,その一つの指標として評議員会にどんな人がいるのか,これがみんなの注目を集める。
 そうなってきたらこうだね,ガバナンス効いているねということになると,新規入学者が増えてくるとか,要するに慶應とか早稲田とか決まった,中央とか,そういうところは別にしても,その次の段階にいるような学校が何とかもう少し上のランクに行けるかということになって競争が始まる。そういう意味で私は,いい学校を作るためにガバナンスが大事で,そのためには評議員にいい人を選ばなければいけない。そうすると,OBばかり考えていてもいけないかもしれませんし,逆にもう少し違うところで,むしろ,自分たちとは直接縁のない人たちをスカウトしてこよう。
 そういうことになると,この学校の評議員になると,こんないいことがありますよと。そのことによってあなたのプレステージが上がるのですよと。学校法人と評議員になる人双方に何かそういう道筋ができて動き始めると,これはすごく成功する運動になるのではないかなと私は思っているので,ここは諦めないで,人がいないとか云々という話ではなくて,人を持ってこないと本学は潰れますよと,こういう危機感の中で,今この改革を作っているわけですから,そこを是非何とかしたいなと思います。そのためにはやはりいい人をしっかりと選べるような,変なボスとか,悪い形の因習で選ぶのではなくて,そういう人を選べるような,そういう選定委員会を作る競争が始まるということが,安西委員もそうだし,野村委員にもそうだ,みんなリーダーシップをとっていただいて,どうだ,うちのこの選定方式,いいだろうというのを,公益法人まで行かなくても,学校法人の中でいい学校法人というモデルができてくると,私はとてもいい方向に動くと思います。
【増田座長】
 ベストプラクティス,それが出てくるのが一番いいですね。
【八田委員】
 私は,人数,員数の問題で,先ほど増田座長が仰られたように,私学法では理事の2倍,これは理事評議員を入れているからそうなっているわけであって,このこと自体がもう論外なのであって,これは全く初期化しなければいけません。そうすると,会社法などもそうですけれども,取締役会の議論と同等に最低員数を決めるべきなのだろうと思います。かつて日本の株式会社も取締役がほとんどガバナンス機能を効かせていないということがあって,言うならばお飾り的な取締役で人数だけ,特に金融機関は山のようにいたわけです。それが合併してしまうと,場合によっては3桁の取締役がいるなんていう銀行もありました。それは話になりません。やはり実質的な議論をする。そして,そんなに開催回数が多いわけではないですから,決め方としては最低員数,これも戸張委員がおっしゃっているようにいろいろな規模の法人がありますから,上限を決めるというのはなくて,最低員数を決めて,あとは寄附行為の中で議論していくという流れになると思います。
 そうすると,事務局から提示頂いている社会福祉法人の場合には理事の定員を超える数,あるいは公益財団法人の場合3人以上とあります。私は,分かりませんけれども,先ほどの選定委員会等々の議論をしていくならば,やはり最低5から7人ぐらいなのかなと思います。これは細かい話ですけれども,評議員会を議決機関に持っていくのであれば,必ずその員数は奇数で選定すべきだと思います。決定をするときに偶数ではなくて,ただ,そのときに議長が1票持つか持たないか,また議論が分かれるところですけれども,日本の場合はいろいろな委員会を見てみると,ほとんど偶数です。そして,例えば4名で,2対2で分かれるとどうなるのですかというと,議長決裁だというわけです。こんなばかげた議論はほとんど国際標準にはない話ですので,実際の員数は何名以上かつ奇数で設定すべきということぐらいは言えるのかなという気がします。
【増田座長】
 確かに人数は余り多過ぎてしまうと議論にならないですね。20人,30人になってくると,ほとんど議論ができないので,今,会社でも取締役会のメンバーは少なくしてきています。10人とか,その辺に絞ってきていますので,そういう意味では,ある程度人数は絞るように最低人数を決めるぐらいが一番いいのかなという感じはします。
【酒井委員】
 八田委員のフォローをさせていただくと,私も余り多いと選任する方の負担がかなり大きくなってしまいますので,本当に監督のために必要な人数ということでしていただくのがいいかなと思います。
 それからもう一つ,評議員の資質の問題で,これは私,久保利委員が言われた夢のあることには,大好きで大賛成なのですが,実際に既に評議員会が議決機関として機能している一般財団,社団法人を見ても,評議員会が何らかのリーダーシップを取って運営をリードするというパターンは,私の知る限りはないのではないかなと思います。
 多分,学校法人においてもそういうようなことというのは,なかなか生まれてこないのかなという感じがしまして,では,どういう資質が必要なのかというと,まず第一に健全な常識を持っている人,それから,教育,あるいは研究部門について知見のある方,あるいは産学共同をこれから進めていくことなので,経営に関するスキルのある方,それから,法律や財務,そういったガバナンスについての専門性のある人など,こういう人で健全の常識のある人ということになるのではないかと思います。
 なぜかというと,評議員会は1年に1,2回しかやりませんので,日々の業務執行,決定,大学の経営決定にはほとんど関わってこないので,そんなような資質のある人が比較的少人数集まればいいのかなという感じはしています。任期の点については,一般的に言うとやはり理事よりも長い方が好ましくて,ただ,これも恐らく定款で決めるべき話だとは思いますが,一つの典型的なものとしては理事2年,評議員4年とか,ただ,これも定款事項かなという感じはします。
【松本委員】
 酒井委員と,その他の方にお尋ねします。資質を法律に設けるという考え方でしょうか。例えばこういった資質について国立大学法人法12条では,「学長について,人格は高潔で,学識は優れ,かつ大学における教育研究活動を適切かつ効果的に運営することができる能力を有する者」という文言があります。法律に落とすと,どうしてもこういうふうになってしまうようです。これを書くことが何の意味があるのかというのを常々感じておりまして,それについて確認させていただけないでしょうか。
【戸張委員】
 その資質という点なのですけれども,先ほどの委員の話もあったように常識的なというところが非常に重要だと思います。私も大学の経営者の方とお会いするとき,経営が苦しい大学,定員割れしていて,その理事長とかが全く危機意識がないとか,問題認識が全然足りていない。本当にこのままだと駄目になるというのが分かっているのですかみたいなことをこちらが言いたくなるような理事長が正直言っていらっしゃるのです。
 そういうときにやはり評議員はいろいろと権限とかいうよりも,私は,現実的には,あなたでは駄目だよというふうな,そこは理事長をしっかりとした人にするという,常識的な意味でですよ。というふうな意味も非常に,特に定員割れしているところの大学が本当に生き残るためには必要だなというところなので,先ほど委員の方,常識的なところで選ばれる,もちろんそれぞれのジャンルの専門分野があるというのもいいことだと思いますけれども,常識的なところというのが最低限の担保かなと思います。
【酒井委員】
 私は余り法律にそれを書き込むことは念頭にはなかったのですが,一つ考えたのは,今度新しく,今年改定になりましたコーポレートガバナンスコードの原則の中で,役員の任命に当たってはジェンダー等の多様性,スキルの観点を含め,これらの委員会の適切関与,助言を得るべきであるということで,実際には各取締役のスキルマトリックス,この人はどの専門家か,この人はどの専門家かというスキルマトリックスを開示することになっているのです。私は何かそういうようなソフトローのところから始めていって,それが定着してくれば,また必要な資質というのが将来法的事項になってくるかもしれませんけれども,当初からそこまで法定事項にするということは念頭にはありませんでした。
【野村委員】
 私は少し意見が違いまして,いわゆる取締役の場合では,フィット・アンド・プロパー条項というのは,例えば銀行法などにも書いてありまして,あるいはこういう今の私学法人など,いろいろなところに書いてあるのですけれども,これ,何でフィット・アンド・プロパーがあるかというと,これは行政庁が監督するときの根拠なのです。ですから,法に基づいて行政をやらなければいけませんので,あなたが気に食わないから解任勧告しますよということはできませんので,基本的にまず法令事項として,こういった抽象的なものであったとしても書いておかないと行政は動けません。だから,これは必ず書かなければいけないことだと思います。
 ただ,その上でどうしても抽象的なものになりますので,それを書いても余り,それで本当の実のある議論にはならないのです。酒井委員がおっしゃったとおりで,それが本当に選任の健全性を確保するものにはなりませんので,実際はスキルマトリックスをきちっと決めて,当校の建学の精神からいけば,こういったような人たちが望ましい。あるいは今我々が目指すべき方向感からいけば,例えばA大学ではまだ国際性の部分に弱みがあるから,国際性の豊かな人を評議員として入れていくことにしますみたいなことを方針として立てていく,これはもう本当にそれぞれのところで決めていくことなので,法令事項ではないと思います。ただ,全く書かないということになると文科省が動けなくなってしまいますので,そこは書いていただく必要はあるかなと思います。
 最後に1点だけ,これも前回でも議論はあるのですけれども,こういったようなプロセスの透明性をどうやって確保するのかという問題があると思うのです。いろいろな委員会で決めましたといって,じゃあ,ブラックボックスとなると,結局のところは,表向きは何とか委員会がやっているように見えながらも,実態は理事長の息のかかった人が選ばれるプロセス,いわゆる隠れみのになるということもあると思います。気に食わない人を難癖つけて辞めさせるプロセスみたいなことが,きれいな委員会の名の下で行われてしまうというようなことも起こりかねませんので,どうやって透明性を確保するのかというところの議論も少し深めた方がいいかなと思います。これはディスクローズの話が後でまた議論されると思うのですけれども,選任や解任のプロセスの透明性の確保というのも論点として一応,挙げておいていただければと思います。よろしくお願いします。
【西村委員】
 評議員会のテーマとして次回以降出てくるのかもしれないですが,実効性をどう担保するのかという点が懸念されるところです。公益法人の認定等に関わらせていただきましたが,先ほど酒井先生がおっしゃられたように,評議員会がある一般財団法人でも不祥事を見抜くことができているわけではなく,十分に機能しているとは言えません。評議員会が年に1,2回開かれ,回数も少ないということになると,どうやって評議員の方たちがモチベーションを持つのか,問題がありそうだと思ってもそうした意見を言おうとするのかなど,実効性の面についても議論,論点にしていただきたいと思います。
【増田座長】
 そうですね。実効性を上げていくというのはなかなか大変で,先ほどもありましたように中長期の時間がかかるかもしれませんけれども,一定の意見を出した方がいいと思います。
【西村委員】
 適切かどうか分りませんが,評議員会を公開にすることもあるのか,株主総会も公開になっていますから,そうした新しいことも考えていった方がいいと思います。
【松本委員】
 一つだけ,参考までにカリフォルニア大学の最高議決機関の理事会は,テレビでの中継もあると聞いています。
 
<議題2 その他>
・事務局(相原私学行政課課長補佐)より,次回は9月9日(木)10時~12時に開催するとの案内があった。

―― 了 ――

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高等教育局私学部私学行政課

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