商船系大学における海事人材育成に関する懇談会(第1回)議事概要

1.日時

令和3年7月2日(金曜日) 10時00分~11時35分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 議事運営等について
  2. 商船系大学における海事人材育成について
  3. その他

4.出席者

委員

(委員)竹内俊郎委員、庄司るり委員、内田誠委員、乾眞委員、春名史久委員、塩川達大委員
(ゲストスピーカー)内藤総合海洋政策本部参与会議参与・日本船主協会前会長

オブザーバー

国立高等専門学校機構、内閣府総合海洋政策推進事務局、日本船主協会

5.議事概要

(1)議事運営について

・竹内委員が座長として選任された。
・商船系大学における海事人材育成に関する懇談会運営規則が資料2(PDF:56KB)の原案どおり了承された。運営規則第1条に基づき、座長代理は庄司委員が指名された。
・運営規則第2条に基づき以降会議が公開された。

(2)商船系大学における海事人材育成について

【内藤参与】
○本日は、海運業と海事人材育成について産業界が考えている内容として、総合海洋政策本部参与会議における日本船主協会からの提言を説明する。
○日本は四方を海に囲まれている。貿易量の99%は海上輸送で運ばれており、外航の日本人船員はこの海運業を支える人材として経済安全保障の確保に貢献する外航海運業の国際競争力を支えるという役割は今も昔も変わっていない。一方で、日本人外航船員に求められている職務の質とその人数は時代と共に変わってきている。
○人数の点では、1974年当時5万人以上いたが、現在は2174人(2019年)と激減している。高度成長期末期の1970年、2商船大学の定員数の内85%が外航関連企業に就職していたが、現在(2~5年の平均)では33%となっている。1986年のプラザ合意以降、急激に円高が進み、厳しい経済状況が続いたことで結果として日本人船員数を減じざるを得なかった。
○質の点では、船を動かすいわゆる船員という役割から海技者という役割に変わりつつある。海技者とは船員のうち海技免許を有する職員であり、船員としてだけではなく船員経験を生かして陸上で活躍する者という定義をしている。船員経験に裏付けされたノウハウを有し、経営的なセンス、視点に応えられる人材、一企業を超えて日本の海事クラスターの新しいニーズを担える人材と考えている。
○新しいニーズとは、本社で経営と運営の一役を担う役割であり、具体的にはマネージメント(安全運航管理、船舶管理、営業支援、経営)、デジタライゼーション(自律運航船やAIを活用した事故抑制)、環境対策(ゼロエミッション船の開発)、洋上風力、海洋資源開発への対応、また、国際会議への参画でルールメーカーとしての役割を担う人材である。このように、海技者は海運産業を担う中核として大変重要なポジションとなってきている。国際競争力を高め、海洋産業競争力を強化する差別化を生む源泉は技術であり、産業界としては、質の高い海技者に働いてもらうことは経営観点から非常に大事なことである。
○こういった新しいニーズに応える人材の育成が求められており、商船系の2大学・海技大学校には新しい需要期で活躍できる人材の育成をお願いしたく、商船系の2大学5高専、海技教育機構には全体最適の下でそれぞれの役割、連携を見直し、また、経営視点での効率化の検討をお願いしたい。
○大学には多様化した海運業界のニーズに応える質の高い教育をお願いしたい。乗船実習教育では4年間の中で海技教育機構が担っている6か月の乗船教育についての見直しが必要ではないか。
○海技教育機構には効率的な運営により技量の向上を図ることをお願いしたい。乗船実習教育は社船実習6か月を除き海技教育機構に集約、外航用練習船は1隻に集約してはどうか。最終目的の異なるメンバーでの多科教育を回避することが重要であり、多科教育を回避することで、質の向上、技量の向上が図れるのではないかと考えている。
○海技教育機構での各大学・高等専門学校の乗船実習期間は、各校のカリキュラムの要請に従ったばらばらな時期に乗船している。結果として、一つの練習船に多様なレベルの学生が同時に乗って乗船研修を受けている。一方で、現在、乗船実習を受け入れている海技教育機構側としては限られた一定のキャパシティの中で実施しているため、乗船タイミングを調整して効率化することでより高いレベルの教育が期待できるのではないか。
○海事産業が魅力ある産業になって欲しいと考えている。若い人が大学や海事教育機構を経て産業界で活躍していただき、素晴らしい産業となることが望みである。この場で皆様が一同で議論して頂くことに感謝すると共に良い形で結論が出ることを期待する。

資料3(PDF:5,650KB)に基づき、庄司委員からご説明。

○資料4(1/2_PDF:6,735KB)(2/2_PDF:7,497KB)に基づき、内田委員からご説明。

○以下、自由討議。

【国土交通省事務局】
○日本の外航海運事業者が競争力を持って持続的に発展していくため海技者教育の変化が必要と承知している。業界ニーズに沿ったより質の高い海技者教育を実践できるよう国土交通省海事局も協力して参りたい。国としては船員養成について教育の質の向上を図り、もって安定かつ安全な海上輸送の確保を図ることが重要と考えている。教育の質の向上、そして優秀な外航日本人船員を育成することが我が国の外航海運業の国際競争力強化に資するものと考えている。

【内藤参与】
○両大学の説明により、大学が多様化したニーズに応える質の高い教育に向けて取り組まれているとのことで、私も認識を新たにした。
○一方、乗船実習教育については全体最適の下で、最終的には海技教育機構の効率的な運営によって技量の向上を図るという方向に向けて、国土交通省には今後とも多科教育の回避のための検討をお願いしたい。これが最重要と認識している。その際には、文部科学省、両大学にもご協力をお願いしたい。

【乾委員】
○両大学と同様に長い歴史の中で、旧航海訓練所時代を含め海技教育機構も形を変え改革にも着手してきた。両大学と同じく、練習船実習にとっても一つの大きな転機は独立行政法人化であったと理解している。海技教育機構においても練習船実習の使命は船員教育の一翼を担うといったものから、海技者養成つまり職業訓練的な位置づけへ移行していっている。
○海技教育機構の練習船では現在3級4級6級海技士養成に係る乗船実習を実施し、より業界ニーズを意識した改革に取り組んでいる。海技者養成の視点に立てばより実践的かつ効果的な実習を提供しなければならない状況である。このような状況にあって、大学の座学教育と練習船実習を切り離すというような業界のご意見に対して、海技教育機構は応えるべきものと認識している。海技教育機構の練習船では海技免状が必要な学生のみを受け入れることで、多科配乗の解消、あるいは多人数配乗の緩和にも繋がるものと期待している。

【庄司委員】
○産業界からのニーズ、海技教育機構の役割の変化等々、社会の変化とともに様々あると理解している。大学としては人材育成、教育の中で何が効果的か、全体最適というのを見ながら教育としてどこまで協力していけるか皆様と検討していきたい。

【内田委員】
○多科教育の回避により質の高い実習が必要であること、魅力ある産業にしていくことはある意味同感である。しかしながら、それを具体化、現実化する最も良い方法が乗船実習の切り離しなのかどうかはまだ理解に至っていない。例えば見直すことでデメリットは生じるが、デメリットを克服する、それを上回る効果があるという観点での議論がなく進むことは非常にリスクが高いと考えており、ぜひ色々なご説明を伺いたい。

【オブザーバー:日本船主協会(赤峯日本船主協会前副会長・日本海洋科学代表取締役社長)】
○ニーズの変化、海技教育機構の練習船の減少により、非常に限られたリソースになっている。そのため多科配乗になり効率の悪い形になっている。優秀な外航日本人海技者を養成するため、学力や最終目的の異なるメンバーでの現行の乗船実習を回避すべく海技教育機構と大学の意見集約をすることにより乗船実習教育の見直しをお願いしたいということが日本船主協会からの提言の趣旨。
○例えば両大学とも乗船実習の最後の3か月は卒業前の3か月であり、サンドイッチ教育の効果はないと考えており、この3か月は卒業後に出せるのではないか。それ以外の3か月の実習の時期や期間についても両大学で考え方が異なっていると認識しており、ぜひ意見交換させていただきたい。
○船のことを全く知らない一般大学の卒業生が大手船社に入り、その後2年間で船員になるための座学と実習を終えて、立派にその船社の中核分野を担っており、船長にまでなっている。そのような状況を踏まえると、在学期間中にどこまで乗船実習が必要かというところも論点としても良いのではないかと考えている。

【オブザーバー:内閣府総合海洋政策推進事務局】
○内藤参与が言及された大元の文書、参与会議の意見書とその中で議論されているプロジェクトチームの報告書は先月29日に海洋本部長である総理に手交し、その後、官邸のホームページでご覧いただける状態となっているので参考としてご紹介する。
<参考:総合海洋政策本部参与会議意見書の菅総理への手交について>
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kaiyou/sanyo/20210629/index.html(首相官邸ホームページが別ウィンドウで開きます)

【竹内座長】
○次回は本日の議論も踏まえ、国土交通省から海事人材育成について、また海技教育機構から船員養成の現状について、春名委員、乾委員よりご説明をいただきたい。また第3回以降で海事人材を目指す学生からヒアリングを実施したく、事務局で調整をお願いしたい。

(3)その他
【文部科学省事務局】
○次回の懇談会は7月30日金曜日10時から12時を予定。

お問合せ先

高等教育局専門教育課
電話番号:03-5253-4111(内線2485,2502)

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