商船系大学における海事人材育成に関する懇談会(第3回)議事概要

1.日時

令和3年9月17日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 商船系大学における海事人材育成について
  2. 作業部会について
  3. その他

4.出席者

委員

竹内俊郎座長、庄司るり委員、内田誠委員、乾眞委員、春名史久委員、塩川達大委員

オブザーバー

国立高等専門学校機構、内閣府総合海洋政策推進事務局、日本船主協会

5.議事概要

(1) 商船系大学における海事人材について
 

【竹内座長】
○本日は議題の前に、前回の会議の中での国土交通省春名委員、海技教育機構乾委員に対する質問への回答をお願いしたい。

【春名委員】
○海技教育機構法について、旧航海訓練所と旧海技教育機構が統合する前後では教育対象の記載ぶりが変わっているが、その趣旨や意図について国土交通省海技課としてどのように認識しているのかという点について、海技教育機構(以下「JMETS」という。)の教育対象として指す範囲は統合前も後も船員、船員であった者、船員となろうとする者ということに変わりはないが、船員となろうとする者のみを対象としていた航海訓練所との統合によって、統合後のJMETSの教育対象は船員となろうとする者が大半を占めることとなり、船員となろうとする者を先に規定して、船員(船員であった者を含む)を後に規定することとした。つまり、この法律での記載ぶりが修正された理由は、法人の統合によってJMETSの教育対象の中で船員となろうとする者の割合が増えたためということである。
○次に、船員養成の改革に関する検討会での各委員からは、実習生数を減らして現状に合わせるのではなく、JMETSの教官の数を増やす、練習船数を増やす等を、国土交通省にサポートいただきたいという趣旨の意見が多かったのではないか、つまり、リソースを増やす努力ができないかという観点からの意見であったのではないかという点について、本検討会では、教官を増やすべき等の意見もあり、また、特に多科、多人数配乗に関する意見として、海技資格を必要としない者について、必修としている1年間の乗船実習がなくても卒業できる選択肢を設けるべきであり、これに対しては様々な意見が出たが、多科・多人数配乗を解消する議論には至っていないと承知している。いずれにせよ、JMETSのリソースを増やせないのかという点については、国の厳しい財政状況の中、独立行政法人であるJMETSが直面する財政状況は極めて厳しいと言わざるを得ない。毎年度、運営費交付金は削減の一途であり、独法となった平成13年度と比較すると、約34%の運営費交付金が削減されている。それに対して、自己収入を19倍に上げる努力をしているものの、交付金と自己収入を合わせた収入は約23%減少しているという状況である。このような状況の中、練習船隻数や教官数を増やすという解決策は中々現実的なものとして難しいところがある。
○しかしながら、国土交通省及びJMETSとしてもリソースの有効活用に資する取組を積極的に進めており、例えば、陸上機関科の実習可能施設を整備して、練習船の機関科実習の一部をシフトすることで、練習船の乗船実習の枠を空けるといった検討を進めている。また、海技短大では、従前、航海・機関の両様教育であったものを航海又は機関のいずれかに絞った単科教育とすることで、乗船履歴短縮ということを目指すという検討もしており、これも多科配乗解消にも資する取組であると考えている。しかし、こうした取組だけではどうしても限界があると考えている。本懇談会においてはJMETSの実習環境が多科、多人数配乗となっているという現状の解消のため、JMETS、大学、産業界それぞれ何ができるのか、現実的に取り得る方策を真摯に協議していくことを望んでいる。
○次に、国土交通省海技課として海事人材あるいは海事人材育成をどのような定義として捉えているのかという点について、海事人材に誰が含まれるか、どういう能力を持った人が必要かといった話については極めて重要な論点であるが、確固たる結論、回答というのは存在しないと考えている。海洋人材に関しては、総合海洋政策本部において、今年度、海洋人材の育成に関するプロジェクトチーム(以下、「PT」という。)を立ち上げていると思うが、海洋人材に求められる能力について、総合海洋政策推進事務局からもコメントいただければと思う。
○次に、「効果的、効率的な乗船実習」の定義について、何をもって効果的、効率的と考えているのかということについて。最終的に海技士資格を取らない、あるいは船員にならない者が乗船実習を経験することは無駄である、非効率で効果は無いと言い切れるのかという質問であったと認識している。この点については、多科、多人数配乗というのは外航、内航、それぞれに進む学生にとって教育効果が落ちることになるものと考えている。JMETSの教官、練習船という限られたリソースの中で、多科、多人数配乗が改善され、学生にとって教育効果を高めることが効果的、効率的ということであると考えている。
○なお、海技教育機構法上、海技資格を取得もしないし、船員になろうともしていない者は、本来的にはJMETSの航海訓練の対象ではないものと考えている。最終的に海技資格を取らない、あるいは船員にならない者が乗船実習を経験することが、全くもって無駄、効果がないということは言えないとは思うが、少なくともJMETSにとって効果的、効率的というのは限られたリソースの下、質の高い船員を養成する環境が整備された中で、より多くの人に対し乗船実習を実施することであると考えている。仮に最終的に海技資格を取らない、あるいは、船員にならない人の枠を他の海技資格を取ろうとする人にあてがうことができる可能性があるのであれば、より効果的、効率的になると考える。また、多科、多人数配乗を解消することで、より改善された環境を実習生に提供できる可能性があるのであれば、より効果的、効率的になるのではないかと考えている。
○なお、乗船実習を経験することで、船員志向がなかった学生が船員を志すモチベーションの向上に繋がるのではないかという問題意識について、理解するところではあるが、他方、それを実現するために、例えば商船系大学の校内練習船を用いてということは難しいのか、校内練習船以外にもこうしたモチベーション向上につながる方法は考えられないのか、率直なお考えをお聞かせいただきたい。

【乾委員】
○「効果的、効率的な乗船実習」の定義については、国土交通省の見解どおりである。
○船員にならない者が乗船実習を経験することについては、一定程度の効果があると考える。しかしながら、この配乗状況にあって、多科配乗の解消を目的とした検討が進められている中、その効果と必要性については十分に検討の余地があると考えている。

【春名委員】
○JMETSの第三者委員会については、乗船実習における中立、公平性の確保、関係機関のニーズの把握、教育訓練対応の改善などを協議するための一つの案として、平成26年11月の当時の航海訓練所の統合に関する懇談会で提案されたものである。その後、統合後の中期計画の策定を議論していく中で、別の方法で実施することとなり、現在、JMETSでは乗船実習における中立、公平性の確保のため、配乗に特化した教育機関との「練習船への配乗に関する意見交換会」を年1回開催しているほか、「海技系大学・海技教育機構、第三者協議会」、「商船高専との連絡会議」、また、業界団体、関係船社等との意見交換会を開催し、関係機関のニーズの把握、訓練内容の改善などを協議しているものと承知している。

【乾委員】
○JMETS内部には学識有識者、外航・内航の事業者及び弁護士をメンバーとした内部評価委員会を設置している。内部評価委員会では、実習生配乗に関しても意見をいただきながら客観的な視点で検討いただいている。

【竹内座長】
○先程、春名委員から海事・海洋人材について説明いただいたが、内閣府総合海洋政策推進事務局からもコメントをお願いしたい。

【オブザーバー:内閣府総合海洋政策推進事務局(久保寺参事官)】
○前回も申し上げたとおり、当方で設置しているPTのきっかけとなったものは外航であるが、それは国際競争力の観点からである。しかしながら、多科配乗の話はもちろん、内航を抜きにして話はできないことから、外航だけ改善できれば良いというつもりは全くない。

【内田委員】
○旧航海訓練所の対象者は船員になろうとする者のみであったが、統合後は船員になろうとする者の比率が大きくなったことから、表現としてはそれが先に出たということはよく理解した。一方で、効果的、効率的の説明の中で、国土交通省からの説明では資格取得をしようとしない者は基本対象とならないという説明であったが、辻褄が合わないのではないかと思う。旧航海訓練所は船員になろうとする者を対象とし、結果として資格取得をしない者も十分に教育訓練の対象としてきた。かつ、統合後の機構法の書き出しにもそのように明記してあるにも関わらず、基本対象とならない、したがって効率的ではないというような説明ぶりは矛盾しているのではないか。もう一点、第三者委員会を別の方法でという説明は一定程度理解するが、現状は当事者のみの閉じた場であり、教育機関である三者協議会の当事者のみ、そして内部評価も内航、外航業界が入っているというのも当事者のみである。すなわち、統合時の当時に議論された完全な第三者委員会、外部の有識者というのは含まれていない状況であるということは指摘しておきたい。

【庄司委員】
○多科、多人数が課題として挙げられているが、多人数という部分が課題であることは理解しがたい。確かに乗船人数は多いかもしれないが、練習船の定員内の人数で実施されている。これまで練習船の定員を充足するため、JMETSで受け入れ人数を増やしてきたということもあると認識している。前回の会議での実習生乗船率の推移のグラフを見ても、多人数とは言えないのではないかということは指摘しておきたい。

【竹内座長】
○それでは議事に入りたいと思う。本日は、商船系大学における今後の海事人材育成のあり方を検討するに当たり、東京海洋大学、神戸大学の学生にアンケートを実施していただいたことから、両大学の委員から紹介いただきたい。

資料1(PDF:1.87MB)に基づき、庄司委員から学生アンケート結果のご説明。

資料2(PDF:2.51MB)に基づき、内田委員から学生アンケート結果のご説明。

○以下、自由討議。

【竹内座長】
○只今、両大学からアンケート結果の説明をいただいたが、非常に結果が似ている印象を受けた。JMETSに質問であるが、課題として挙がっている多科配乗について、両大学の学生はあまり気にしていないのではないかという結果がでているが、例えば、一緒に同乗している高専や海技学校の学生はどのように感じているのか。この点について、JMETSでアンケートを取ったということや、話を聞いているなどがあれば教えていただきたい。

【乾委員】
○多科配乗に対して学生が肯定的に捉えていただいているという点は、ユーザーたる学生に対して不利益を被らない形でしっかりとした練習船実習を提供できた成果であると捉えている。一方で、教官サイドからは多科配乗による負担増が故に、本来のパフォーマンスが十分に発揮できていない懸念もある。
○大学生と混乗している高専生、あるいは、海上技術短期大学校の学生から見た感想は、若干異なるのではないかと思量する。

【竹内座長】
○具体的に高専生や海上技術短期大学校の学生にアンケートを実施したことはあるのか。

【乾委員】
○JMETSでは乗船実習全体に対する内容のアンケートを行っているが、多科配乗に特化したものはない。しかしながら、全体アンケートの個別感想としては「実習生数が少ない方が、実習環境が良い」との意見もある。
○他方、青雲丸事案を受けた第三者委員による再発防止に向けた指摘事項の一つに、多科配乗の解消について言及されている。

【竹内座長】
○もう一点、今回のアンケートでJMETSの教官に対する率直な意見など、学生から乗船実習に関する多くの意見をいただいた。JMETSとして、こうした学生の声を受け止めていただき、乗船実習の工夫改善を進めていただきたいと考えている。

【庄司委員】
○効率的・効果的な乗船実習のために何が一番問題なのか、それは多科配乗だけの問題であるのか。それらの問題を解消するためにはどのような工夫ができるのか。例えば実習時期の場合、大学の方の実習時期をずらすのか、大学の実習を均すような形で、1年生を複数月に分けて人数を均等に減らすなども考えられるかもしれない。または、神戸大学のアンケートにも意見があったが、大学とJMETSで教えている内容についてもっと精査をして、より効果の高いものにするとか、そういうことがまだまだできると考えている。
○アンケート結果にもあったが、JMETSの練習船で実習を行っている期間に、船社からJMETSの教官として出向されている方が必ずしもJMETSの実習について肯定的でない話を学生に伝えている事例があると聞いている。今回のアンケートに限らず、我々が通常学生と話をしたり、就職指導で話をする際などに、かなりの頻度で出てくる話題になっている。教育の質を高めるという観点から、こういう話題が生まれることがないよう、JMETSと船社の間でしっかりと協力をお願いしたい。

【内田委員】
○庄司委員の発言に関して、JMETSの乗船実習では行うが、実務、いわゆるプロの船員となって働く場合にはあまり必要ないなどということを学生に指導しているような場合もあると聞いており、これは改善が必要であると考えている。一方、いわゆる多科配乗は、練習船が5隻と限られていること、そして、あれもこれもやらないといけないということで、現場の努力で、今かろうじてこなされているというところかと思う。
○一方、練習船5隻のうち、2隻か3隻、特に汽船には機関系も航海系もシミュレーターが設置されていると思う。それは当該船舶に関するシミュレーターであることから、一定の効果があるということは理解するが、このような厳しい議論をしていかなければならない時に、本当にシミュレーターでの教育訓練を練習船上で行わなければならないのか。あるいは講義に関しても、陸上での講義と練習船内での講義を整理するなど、工夫できる余地はいくらでも残っているのではないかと考えている。

【竹内座長】
○乗船実習が実際の現場と違うという点について、大学は教育機関として、色々な実験、実習でも、アナログとデジタルがあり、今はどんどんデジタルに進んでいるが、その中身を理解するためには、基本的な、昔からの機械設備を使わないとわからないこともある。同じような内容であっても、それが逆に教育効果を高めるということもあることから、非常に難しい問題であると考えている。そこで大学ではファカルティ・ディベロップメントでやっているが、JMETSにおいても、学外の方も入りながら、お互いにセッションして深め合っていくということが必要ではないかと感じた。

【オブザーバー:日本船主協会(赤峯日本船主協会前副会長・日本海洋科学代表取締役社長)】
○私は過去に日本郵船で採用に関わってきたが、その時の印象と今日のアンケート結果を比較すると違和感というか、異なっている印象であった。私が採用に関わった当時は、学生の就職活動は3年生の後半からであり、一般大学の学生になぜ日本郵船を志望したかと質問したところ、3年生の就職活動の際に色々と調べたところ、面白そうな業務があるから志望したと言っていた。これは恐らく、大手3社は皆同じではないかと考えている。現在の採用は4年生の初めから行うことになるが、そのようなスケジュールであれば、12か月の乗船実習のうち9か月は4年生の終わりから卒業後の乗船実習科で行うことから、実際、学部段階で実施しているのは、3か月間である。そうすると、このサンドイッチ教育というのは、学部2年生と3年生の3か月の乗船実習を示していると思っているが、それも含めて、今回のアンケート結果は意外であったというのが正直な感想である。
○先程、高専の学生や他の学生からも話を聞いてみる必要があるとの意見もあったが、私の在籍した日本郵船の採用の半分を占めている一般大学の卒業生も乗船実習を受けている。6か月間はJMETSの船で実習を行っているが、その際のがっかり度というのは結構あるようで、それはJMETSの教官の話というよりも他の学生のモチベーションの問題である。要は海技免許を取らない学生と一緒に乗船実習で教育を受けていることに対する思いがあるのではないか。これも全てが正しいとは思わないが、様々な角度から見ていただくと様々な意見が聞けるのではないかと考えている。

【乾委員】
○アンケート結果は貴重なデータであると考えている。竹内座長ご指摘のとおり、自由意見の中にはJMETS練習船で改善すべき点もあるので、現場にフィードバックしていきたい。
○アンケートの回答率が5割から6割ということだが、このようなアンケート調査に協力してくれる学生というのは一般的に志向性が高く、積極的な学生が多いのではないか。むしろアンケートに答えない学生は無関心か否定的で、そういった学生に対する分析や比較検証などについても、継続して調査いただきたい。
○アンケートには、低学年時の短期実習について良い影響がある、あるいは役に立ったという肯定的な意見をいただいている。これはJMETS練習船としても有難い結果であるが、何が役に立ったのかということを考えると、船内生活を通じて協調性や規律が身に着いたという自己評価ではないかと考える。一方、JMETS練習船の本来の目的である「必要な海技技術等を教授する」といった点では、専門の海技教育をある程度受けた学生に対して専門的な実習・実技を実施した方が効果的である。アンケートの中には「高学年になれば指導が厳しくなる」との感想も見られるが、1年生の実習ではいかに船に興味を持ってもらえるかという点に力点を置いた実習や指導になってしまう。同じ1か月の実習期間であっても、効果的な実習とは何か、乗船実習の目的は何かという視点に立って、短期実習の意味合いというものも今後検討していく必要があると感じた。

【オブザーバー:日本船主協会(井上副会長)】
○庄司委員、内田委員に説明いただいた、学生アンケートの結果は大変参考になった。もちろん全てではないでしょうが、実際に生の学生の声を聞けたということで大変有難く、今後の参考にさせていただきたいと考えている。

【オブザーバー:内閣府総合海洋政策推進事務局(久保寺参事官)】
○赤峯氏からはアンケート結果が意外だったという発言もあったが、私の印象として、学生はこのような意見なんだろうと感じていた。一点感想であるが、乗船教育で実習内容等が理解できたかどうかということは学生に聞くことが一番良いと思うが、教育の質という難しい話は、むしろ卒業して例えば10年後とか、社会に出てから身に染みてくるような部分かと思っている。そのような観点から見ると、果たして今の多科配乗はどのように映るのか、別の見え方も出るのではないかと思ったところである。

【竹内座長】
○今の10年後に聞いてはどうかというのは非常に重要な点で、今、大学においては教育の質保証ということを学部教育等で取り組んでいるところである。例えば、卒業生のアンケート調査などを実施して、その結果をしっかりと検証し、今後の教育に役立たせる必要があると言われている。そういう意味で、今のような内容を加味したヒアリングあるいはアンケートを実施して、更に深めていくということは非常に重要であると思う。

【庄司委員】
○アンケートの母数について、全学生を対象としたが、実は3年生、4年生の中には留年生が多くいる。特に今年の4年生は多い状況だが、留年生は比較的船舶職員以外を目指す学生が多く、今回のアンケートでは「船舶職員養成に関するアンケート」としたことで、そういう学生からの回答が少なかったのではないかと考えている。本学は定期試験が始まった9月6日から11日の間で学生に回答いただいたが、大学の一般的なアンケート調査を見ても、60%の回答率はかなり高いものであり、学生の声を把握できていると考えている。
○卒業生アンケートについて、最近、個人情報の関係で、卒業後の学生の状況を追跡していくということが非常に難しくなっている。これについては、ぜひとも日本船主協会の方から各船社に働きかけて、アンケートなどを実施いただき、船社でどのようなキャリアパスがあるのか、あるいは離職率や定職率も含めて是非とも大学の方にフィードバックをいただけると、今後の教育を考えていく上で本当に役に立つエビデンスになると考えている。

【竹内座長】
○今、庄司委員から日本船主協会の方に依頼というか提案があったが、そのようなことは可能でしょうか。

【オブザーバー:日本船主協会(井上副会長)】
○難しいところもあるかもしれないが、今後検討させていただく。

【竹内座長】
○その場合は当然、大学からもサポートしながら一緒に考えていくような形にすることで、より良い議論ができるのではないかと思う。

【オブザーバー:日本船主協会(赤峯日本船主協会前副会長・日本海洋科学代表取締役社長)】
○井上副会長の発言に関して、各船社からは各学校の就職担当者にはかなり詳しく説明もしており、学生を集めての説明会もやっていると思う。これについて、日本船主協会が一つにまとまってどこまで話ができるかというところが恐らく、井上副会長の懸念であり、当然、競合になる企業であるため、どこまで協力を得られるのかというのが発言の趣旨かと思う。少なくとも個別にはかなり詳しく説明させていただいていると理解している。

【内田委員】
○赤峯氏の発言に関して、今回の学生アンケート結果に関して、他の方々からはなるほどという意見も聞かれたが、赤峯氏が感じた違和感とはどのような違和感なのか教えていただきたい。また、この議論の根底にあるものだと思うが、赤峯氏は常に一般大学を卒業して船社に就職して海技免許を取得する新3級と比較されるが、新3級は船社に就職した後にJMETSで乗船実習を受けており、商船系大学の学生とは置かれている状況が全く異なっている。商船系大学における状況、例えば、入学時、学科コース配属時、4年生の就職活動時、乗船実習科進学時など様々な段階がある中で、その違いを少しでも理解しようと努めていただかなければ、議論は前に進まないのではないかと危惧している。

【オブザーバー:日本船主協会(赤峯日本船主協会前副会長・日本海洋科学代表取締役社長)】
○失礼なことを申し上げたかもしれないが、印象が異なると発言したのは、アンケート結果であることから、その逐条、逐条について私はこう思っていると申し上げてもあまり意味がないと思い、過去に採用面接等をやってきた経験から、両大学の学生からも話を聞いており、その時の印象と若干異なっていたということを申し上げた。しかしながら、日本郵船を4年前に退任しており、当時と今回のアンケート結果を比較することもできないことから、単に感想として申し上げたところである。
○また、一般大学と比較しているわけではないが、先程申し上げたように、私達が学生であった40年以上前は、船に乗りたいから商船大学に進学したが、今はそうではないということに一番違和感があった。少なくとも日本郵船に採用面接にくる学生に話を聞くと、両大学とも入学時点で船乗りを目指しているという学生はほとんどいなかった。特に機関士についてはほぼゼロであると認識している。であれば、一般大学の3年生の時に就職先を探すこととあまり変わりはないと申し上げただけで、一般大学が全てだとは思ってない。一般大学の卒業生に海技免許を取得させるには船社の費用負担になるので、商船系大学の学生の多くが船員になってくれるのであれば有難い。しかしながら、中々そうなっていないところが悩ましいと感じている。
○私が採用面接をしていた当時、商船系大学の学生は奪い合いであったが、一般大学からも多くの学生が受けにきており、モチベーションが高いと感じた。やはりモチベーションが違う者が同じ乗船実習を受けているのは、教育的によろしくないと申し上げているだけであり、誤解のないようにお願いしたい。

【内田委員】
○現状を踏まえて、赤峯氏の発言にあるような30年前、40年前と比較することに意味はないのではないかと思う。

【国土交通省事務局】
○学生アンケート結果で一番違和感を持ったのが、学生からの意見として、多科配乗の影響があまりないということで、そのことにとても驚いた。程度にもよると思うが、やはり両大学の学生はトップガンだと思っている。これから国際、世界に打ち勝っていこうとする外航船員を目指す学生が、自分達が乗る船、周囲の学生達にも同じような意識であって欲しいと思うのではないかと思っていた。それが多科配乗で様々な科があって、同じような目的であれば問題ないと思うが、恐らく様々な学科が混ざると、あまり船に乗りたくないという学生もいることから、そのような意識の学生が周りにいるとやりづらいのではないかと思っていたので、影響がないという結果は意外だった。
○一方で、JMETSの乗船実習の中で、様々な学生集団に置かれることで馴れ合いとなり、学生の高い志が低下してはならないとも思い、程度問題もあるが、できる限り良い環境での実習訓練を目指して、今後も議論していきたいと考えている。

【オブザーバー:内閣府総合海洋政策推進事務局(久保寺参事官)】
○学生アンケートの中で、学生から乗船実習の期間の長さについて、もう少し短くても良かったなど、期間については何か情報があれば教えてほしい。

【庄司委員】
○一部、自由記述のコメントの中で、件数としてはあまり多くはないが、乗船実習期間を短くして欲しいというコメントがあった。資格取得のために1年間必要となっていることから、学生に普通に聞いても期間そのものに関する意見等は出てこないのではないかと思う。一点補足すると、本学も神戸大学も夏季休暇中に実習に行っていることから、夏休みが欲しい等の意見も見られた。

【内田委員】
○今回のアンケートでは、実習の通算12か月の長い短いについては質問していない。自由コメント欄で積極的に表現した学生も結果的にいなかった。しかしながら、本学の場合、1か月の乗船実習については、今の2年生までは1単位しか与えていないので、それが少ないという意見はあった。

【庄司委員】
○もう一点、新型コロナウイルス感染症による影響で、特例として1か月の期間が2週間の実習になってしまった学生からは、2週間では短すぎるという意見はあった。

【竹内座長】
○乗船実習の期間については、免許制度のこともあるので、短くしようといっても、なかなか難しいのではないか。

【庄司委員】
○例えば、船舶職員法とSTCWを変更していただければ可能であると考えている。

【内田委員】
○今の指摘について、それこそが一つ大事な論点ではなないかと思う。かなり前のことであるが、機関系の3か月は陸上での工場実習であったという例がある。場合によっては、主管庁の国土交通省が法律等対応する必要があるが、IMOへの説明責任を果たしつつ、一部の実習を本船上ではなく、別の場所で行うということは、まだまだ検討の余地があるのではないかと考えている。

【竹内座長】
○どちらかというと、今後は質を高めようということが世界的に行われていることから、短くすることは難しいかもしれないが、議論の対象として、更に海事教育の質を高めるためにはどうすべきかということで、いわゆる中長期的な方向性というところで議論をしてはいかがかと思う。

【竹内座長】
○これまでの議論は改めて作業部会の方で進めることになると思うので、よろしくお願いしたい。

(2) 作業部会について
【竹内座長】
○それでは議題2について。前回の懇談会で多科配乗の緩和、解消、今もいくつか議論が出たが、これについて、作業部会で具体的な検討を進めてはどうかという意見があったところである。作業部会について(案)について、事務局から説明をお願いしたい。

資料3(PDF:54.1KB)に基づき、事務局から作業部会について(案)を説明し、原案のとおり決定。

(3)その他
【文部科学省事務局】
○作業部会について本日了承をいただいたことから、資料3のとおり、実務担当の方の推薦をお願いした上で進めていきたいと考えている。詳細については別途ご連絡させていただく。次回の懇談会については作業部会の状況を見ながら開催を調整することとしたい。
 

お問合せ先

高等教育局専門教育課
電話番号:03-5253-4111(内線2485,2502)

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