令和3年度国立大学法人会計基準等検討会議(第2回) 議事要旨

1.日時

令和3年6月25日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 中央合同庁舎7号館東館14階 14R会議室 ※WEB会議

3.議題

  1. 国立大学法人会計基準の見直しについて
  2. その他

4.出席者

委員

樫谷隆夫主査、植草茂樹委員、江戸川泰路委員、加用利彦委員、野々村愼一委員、水田健輔委員

文部科学省

川中大臣官房審議官、堀野国立大学法人支援課長、生田高等教育局視学官、星国立大学法人支援課課長補佐、川辺国立大学法人支援課専門官

オブザーバー

日本公認会計士協会
 

5.議事要旨

<議題 国立大学法人会計基準の見直し>

(事務局)
資料1及び資料2に基づき、財務報告に関する基本的な指針と事業報告書記載事項の改正案について説明。
 
(委員)
事業報告書だけでなく附属明細書や決算報告書においても、今まで何度か改正資料があったと思うが、関係性や枠組みといった全体像を補足説明していただきたい。
 
(事務局)
国立大学の財務諸表は、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書、利益処分案、附属明細書、そして今回廃止予定である国立大学法人等業務実施コスト計算からなっている。添付書類として事業報告書を作成することを法令で義務づけており、財務諸表とあわせて文科省へ提出を求め、ホームページ等に掲載することになっている。
関係性を整理すると、財務情報については貸借対照表や附属明細書で開示し、それ以外の非財務情報については基本的に事業報告書で開示して、セットとして財務報告とする理解である。ただ、今年度の状況を説明する場合に、必要な部分の貸借対照表の要約や経年比較といったものを事業報告書に記載する整理となっている。
 
(主査)
基本的な指針に基づいて、会計基準や事業報告書を具体的に作成することになるので、これが制度設計のガイドラインということになる。逆にこの指針が固まらないと事業報告書も会計基準も整理できないことになる。
 
(委員)
独立行政法人との事業報告書の比較表で「業務の成果と使用した資源との対比」という項目が独法にはあるが、国立大学の今回の改正案では削られており、予算と決算の対比だけになっているような印象を受けた。
対して、基本的な指針案の業績の適正な評価に関する情報では、独法をベースとした表現が残っていると思われる。インプット情報やアウトプット、アウトカムといった、大学にとって記載が難しい内容が書かれているが、そこは事業報告書に載せないという理解でよいか。
 
(事務局)
独法ではセグメント情報の内容と事業の評価の単位を一致させており、事業の項目を書いて、そのセグメントに要した費用を書くという整理だが、現時点で国立大学法人の評価は、そのような単位での評価は想定されていない点がある。
ただ、目標として掲げている内容に対してどのような成果があって、それに対してどれぐらい費用を要したかを書く方が望ましいとは思われるので、数値が測れるものは、Ⅳの2の「事業の状況及び成果」に併せて記載することを現時点ではイメージしている。
 
(委員)
独立項目ではなく事業の概要部分で書くということだが、独法とは異なり、年度評価が今回廃止されるということで、その意味では評価の情報というのは、特に評価委員会等に報告することが一番の目的になると思われる。年度評価が廃止されることと事業報告書は毎年作り、その中に評価情報を記載しなければいけないということは整合性がとれていないように思われるがどのような認識か。
 
(事務局)
独法のように毎年度の自己評価を書くことは想定していない。ただ、年度評価が廃止になったとは言っても、大学で毎年どのような事業を実施したかという情報については開示をしていくべきだと思われるので、年度評価という意味ではなく、状況報告といった意味で事業報告書に書くことを想定している。
 
(委員)
アウトカムまで意識して書くのは大学にとっては大変だろうというのが正直なところであり、何かメッセージを出せるといいと思う。
 
(委員)
現行の事業報告書における記載内容と改正案の比較は分かりやすく示されているが、今回の改正内容が独法における現行の事業報告とどういう関係性にあるのか。資料2の右側にある独法の参考部分では単に項目を羅列しただけで左側の改正案とリンクしていないため、分かりにくいので意図を教えてほしい。また、改正の趣旨についても改めて確認をしたい。
 
(事務局)
改正案を現行の国大のものと独法のもの、どちらに合わせるかというところで、今回は現行の国大に合わせる形で提示している。
財務報告で開示していくべき内容については、独法の基本的な指針案を参考に、国大にも取り入れた方がいいものを取り入れていく方向で作成している。ただ、評価において独法は事業の目的があり、それに合わせてセグメントを設定し、予算決算で評価するという整理としているが、国立大学ではそれぞれ個別の内容等で評価していく部分があるため、独法と完全には合わせることはできない。ビジョンや計画等に基づいて実施した内容や要したコスト情報も入れてほしい思いがある。一方で、予算上の区分等が整理されていないところもあるので、独法の理念も取り入れながら、できるところからやっていければと考えている。アウトプットについて、どのような教育研究の指標があるかを、文科省の中でも国大協の協力を得ながら整理した。一方、現時点でアウトカムについては整理がなく、指標の問題等もあるので、理念としては入れているが、どのような指標があるかについては今後の検討課題だと考えている。資料のつくりについても、再度検討させていただきたい。
 
(委員)
独法の項目を国大の改正案に合うように順番を入れ替えることで参照しやすくなり、独法に合わせて改正をした趣旨が伝わりやすくはなると思う。国大では独法よりも細かく要望している部分があるため、その辺りは詳細な解説を加えた方がよいのではないか。
 
(事務局)
独法の項目を国立大学法人の改正案に合わせた資料を作成する。また、事業報告書の実際の記載内容については、従来から事業報告書の例を事務連絡等で出しているので、書くべき項目の説明は別途で出すことになる。
 
(主査)
独法における成果は分かりやすいが、大学では学長がどのようなマネジメントをすればいいのか、本当に難しいところである。教育などは数十年後にしか成果が出てこないものであるが、学長の任期の間で何か成果を上げなければいけないという中で、事業報告書の「はじめに」の部分で大学の運営方針等を学長がしっかり書くことが望ましい。
 
(委員)
国立大学で年度評価を廃止するということなので、任意開示に近いものになるかと思われる。説明責任を果たすということは必要だが、独法から取り入れているが故に、細かい表現になっていることに違和感があるので、何が目的なのか大学が誤解しないように工夫しなければならないのではないか。
 
(主査)
大学に関心ある人も全てについて関心あるわけではなく、全体観に関心ある人もいれば、細部に関心がある人もいてそれぞれだと思う。大事なのは概観性ではないか。
 
(委員)
事業報告書については、法令でも定められていて、無くなることはないかもしれないが、役割自体が変化している中で、この事業報告書に一生懸命記載しても、多くの人はあまり見ないと思われる。それよりも、例えば、統合報告書で非財務の情報も含めて、未来像などをトータルに語っていくほうが読み手も理解もしやすく、大学側もアピールしやすいということならば、もう少し未来に向けて、どうディスクロージャーを推進していくかに整理の力点を置くほうが有益ではないか。

(主査)
いずれにしても、学長として、どのような大学にしたいという思いを打ち出すことが一番大事だと思っている。それに必要なものを概括的にわかるようにして、細かい情報についてはどこに書いてあるかが分かればいいと思う。

(委員)
今回の記載項目は必須事項なのか。もしくは任意事項で、例えば、統合報告書に書いてあればそれで済むのか。
 
(事務局)
基本的な指針に書いてある事項の全てを事業報告書に盛り込まなければいけないということではないが、事業報告書の記載項目としては統一的なものとして示す予定である。ただ、6月に提出する法定書類であるため、統合報告書的なイメージというよりも、財務諸表だけでは説明できない事項を説明することを想定しており、分厚いものや作り込んだものを想定してはいない。
 
(委員)
大学では自主的な開示が進んでいるので、事業報告書は最低限にして、自主的な開示物に記載を譲っていくという全体的な方向性であれば賛成である。
 
(主査)
本日の議論を踏まえて、基本的な指針を最終案として決定する。なお、御意見の反映内容については、主査に一任いただきたい。
それでは、次のセグメント情報の開示についてご議論いただきたい。
 
(事務局)
資料3-1及び資料3-2に基づいてセグメント情報の開示について説明。
 
(委員)
文科省が義務づけようとしている中で、マネジメントアプローチを大前提としているが、例えば、キャンパスごとにマネジメントしている大学はキャンパスごと分けるといった開示があり得るのか、教えていただきたい。
 
(事務局)
根底にマネジメントアプローチがあるのはそのとおりである。ただ、大学全体でマネジメントをしているから学部ごとには分けないといった整理を容認することは想定していない。大学全体でマネジメントをしている場合であっても、基本的には学部・研究科の単位に分けていただくが、分けるに当たって、大学のマネジメント状況を踏まえた変更を妨げはしない。また、大学で教育組織と研究組織を別に設けている場合には、それぞれ個別のセグメントとして取り扱うことも差し支えないと書いているが、それぞれ別のセグメントとしてマネジメントをしている場合に、それをわざわざ合算することを求めるのではなく、別々のまま開示することも認めることを考えている。
 
(委員)
マネジメントアプローチの要素は残す必要があると思う。横比較するということで学部を全部一律に扱うこともあるだろうが、各大学がどのようなマネジメントをしているかの表現のほうが重要であり、自主性をきちんとステークホルダーに伝えるというのがミッションではないか。
 
(委員)
統合報告書では、例えば、部局別に円グラフを作るなど、色々な開示の方法が出てきている。そういう意味では、今回、財務諸表で義務づけをすること自体に異論があるわけではないが、説明の工夫について統合報告書とセットで考えていく必要があると思っている。
 
(委員)
大学内で予算を配賦した後の使い方に不透明な部分があるため、セグメント開示をすることでどのような目的を達成するのかを明らかにする必要があるのではないか。ただ、非常に細かいものとなってしまうことや、マネジメントアプローチが本来の姿にも関わらず横比較をするために強制的な枠組みをはめると言った矛盾が生じているので、しっかり整理をしないと、逆に使えないものになってしまう。
一般の民間企業で10以上のセグメントを出しているところはほとんどないが、社内ではさらに細かい区分で当然管理しており、縦横で比較して収益性などを見ているが、セグメント情報として出す際には、どう説明するかに焦点を絞って、ある程度まとめているという整理を行っている。
 
(事務局)
セグメントの区分については、様々な会議でも話題に上がっており、中央教育審議会が取りまとめたいわゆるグランドデザイン答申においても、どのように教育経費が発生しているかも開示していくべきと述べている。少なくとも学生に関わる学部・研究科の部分については、個別開示を進めたほうが良いのではないかという流れがある。マネジメントアプローチについては、どう文章として表したらいいのかという部分はあるが、例えば、A学部とB学部があって、その上に1つの大学院がある場合、その大学院を2つに分けて、A学部系統とB学部系統に分けることはイメージしていない。大学のマネジメントの中で学部それぞれと大学院とは別だということであれば、それぞれのセグメントで出すことを考えている。ただ、纏まって一つとしているので出さないという扱いを容認することは想定しておらず、何らか按分の形にはなってしまうと思うが、最低限開示してもらうことを考えている。
 
(委員)
開示の必要性については理解するが、ディスクロージャーとして考えたときに、あまりに細かくなりすぎるのはどうかといった疑念はある。

(事務局)
国立大学は税金を原資としているので、企業よりも丁寧に説明するべきではある。例えば、共同利用・共同研究拠点等が数多くある大学は、セグメント数が少し多くなってしまうこともあるが、一般的な規模の大学であれば、開示するセグメント数が細かくなり過ぎるといったことにはならないと考えている。
 
(委員)
説明責任を果たすために作るものであり、書類の量がかえって多くなる修正については理解が得られないと思われる。ある程度、マネジメントアプローチといった部分を共有して、大学間比較するために部局別の情報が必要だと考えているわけではないことだけ、この委員会で共有できればと思う。
 
(委員)
マネジメントアプローチという言葉を国立大学に当てはめたときに、何を意味してその言葉を使っているかを統一した方がよいと思う。部局とは一体何なのか。事務局の説明でも予算単位という言葉が出たが、各大学がマネジメントする予算単位が部局だと考えると、部局が大学のマネジメントの最小単位になると思う。だから、部局別に開示をさせるというのが出発点となるのだが、いくつかの予算単位や部局をまとめ、固まりとしてマネジメントをするという実務が存在していないのではないか。ROIなどの指標がセグメント情報により出せることになるが、キャッシュ・フローと投資というものを紐付けてマネジメントしている単位があるのかを議論のポイントにするべきで、その上でマネジメントアプローチにふさわしい型が示せないのであれば、部局ほど細かい必要はないが、これぐらいのレベル感を文部科学省として求めたいという最終的な落としどころを決めるべきだと思う。

(事務局)
もともと企業会計のセグメントでマネジメントアプローチの概念が入ったときに国立大学に明確に入れなかったのは、国立大学においては、基本的に学部等に学部長がいて、学部単位でマネジメントをしている大学が多かったため、従来のセグメントについての考え方を変更するほどではないと考えて明記されていない部分がある。
部局という言葉を会計基準に入れるべきかという部分はあるが、予算単位という言葉であれば、ある程度使うことも可能かと思うので、書き方についてはまた検討していく。公表の方法としてはもちろん財務レポート等もあるが、財務レポート等の開示を大学に義務づけることは難しく、会計基準のセグメント情報で開示することが一番いいのだろうということで今回の案となっている。
 
(主査)
必要性については意見が様々だが、文科省が行政としてディスクロージャーの中に入れるべきと判断するのであれば、割り切りは必要なのかもしれない。
 
(オブザーバー)
法定書類として作成する際に、期日までに求めるセグメント情報を作成できるのかという点と、会計士・監査法人がこれを期日までに監査を終えることができるのかという点を一番気にしている。大学によって決算資料の作成に、毎年苦戦するところもある。
財務諸表の提出期限は6月末だが、実質的には5月中には作成を終えないと、監査まで終えて監査報告書を出すというのは難しい。マネジメントアプローチやコストの見える化というあるべき論もあり、開示を強制する書類がない中で財務諸表は適切だという意見も当然ではあるが、作成現場の観点も持つべきである。また、セグメント情報だけが詳細になることが様々な利害関係者の意図するものなのかという観点も持って検討いただきたいというのが本音である。
 
(委員)
監査の対象部分が増えると監査自体の負担も当然増え、監査の報酬の問題も出てくる。正しい情報であることは大前提だが、果たして外部の監査まで部局別に全部開示する必要があるのかについては、義務づけるのであれば検討しなければならないのではないか。
 
(オブザーバー)
限られた人員の中で、実質、5月末までに現行の財務諸表を作るのも大学は非常に苦労していると思われる。あるべき姿という部分は理解でき、そこへ向けた検討は当然必要だと思うが、いきなり義務化というのは非常に心配である。
 
(委員)
これまでもセグメント情報は開示されており、さらに監査対象でもあった。配賦計算は考える必要があるにせよ、そもそも予算単位で分かれているものをセグメント情報に組み替えるという話なので、開示が細かくなると時間がかかり監査が間に合わなくなるという部分については理解できなかった。帰属資産をセグメント別に分けるよう要求することになるため、導入の初年度にすぐに対応できるのかという課題はあると思うので、移行期間を十分にとったほうがいいという話であれば理解できるが、安定的に回せるようになれば決算スケジュールに間に合わないということはないのではないか。
 
(オブザーバー)
全ての大学ができないと思ってはいないが、現時点でそこまで細かい情報に分ける作業をやっていない大学も当然あるので、そういった大学が本当にできるのかを不安視している。現在も6月末までに整理しているように見えるが、その過程ではギリギリの対応をしている大学もある。そのような大学が改めて配賦基準を見直すことになった場合に、すぐ十分な対応できるのかという観点である。
 
(事務局)
基本的には大学の予算単位のマネジメントというのは学部等別に行われている実態が多く、外部に公表はしていないが、情報は持っていると現時点で文科省としても認識している。文科省としては、セグメントの費用等の配賦基準を定めはするが、もし違う方法をとる場合には注記するとしており、従来からの予算管理の方法を継続できる容認規定を設けている。初年度は時間がかかると考えており、また、帰属資産については検討する必要はあるが、2年目以降は従来と比べてそこまで負担にはならないと思っている。
 
(主査)
議論いただいた内容を踏まえて、実務的な対応も含めて、日本公認会計士協会が現場を一番知っていると思うので、調整しながら実務指針の改訂に反映していきたい。
それでは次に、国立大学法人会計基準の改訂案について、議論いただきたい。
 
(事務局)
資料4に基づき、国立大学法人会計基準の改訂案について説明。
 
(主査)
意見はないようなので、本日の議論を踏まえて、日本公認会計士協会とも検討し、あらためて改訂案を提示する。

(事務局)
前回のスケジュール案では7月から8月に予備日を設けていたが、本日頂いたご意見を踏まえた改訂案等については、メール等でご確認いただくこととしたい。次回は9月から10月の間での開催を予定している。
 
(委員)
この改訂については来年の4月から適用であるが、おそらく大学も気にしていると思われる。いつどのように各大学にアナウンスするのか文科省の意向を確認したい。
 
(事務局)
今回の会計基準の報告書については、7月を目途に案として確定をする。ただ、告示等の改正内容の整理が終わっていないので、会計基準の改訂という形にはせず、案の段階で大学に一度送付する予定である。
 
(委員)
今回の改訂に関しては、システム改修が必要なほどではないと思うが、セグメントの変更は大きな影響があると思われる。事業報告書についても関係部署との調整もあるので、アナウンスできるものは早めにやってほしい。
 
(主査)
本日の議論は以上である。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課

(高等教育局国立大学法人支援課)