令和3年度国立大学法人会計基準等検討会議(第5回) 議事要旨

1.日時

令和4年2月10日(木曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 中央合同庁舎7号館東館3階 3F特別会議室 ※WEB会議

3.議題

  1. 国立大学法人会計基準の見直しについて
  2. その他

4.出席者

委員

樫谷隆夫主査、植草茂樹委員、加用利彦委員、野々村愼一委員、水田健輔委員
(有識者)木村彰吾名古屋大学理事・副学長

文部科学省

堀野国立大学法人支援課長、轟高等教育局視学官、大江国立大学法人支援課企画官、星国立大学法人支援課課長補佐、東條国立大学法人支援課専門官

オブザーバー

日本公認会計士協会
 

5.議事要旨

<議題 国立大学法人会計基準の改訂>

(事務局)
資料1-1~1-4に基づき、会計基準の改訂及び改訂理由のまとめについて説明。
 
(委員)
会計基準第22の利益の定義において、費用に対応する積立金の取崩額という記載がある。この積立金は目的積立金を指していると思われるが、積立金という表記で良いのか。
 
(事務局)
目的積立金を意味しているが、「国立大学法人の財務報告に関する基本的な指針」に合わせて積立金と表記している。
 
(事務局)
資料2に基づき、新株予約権の評価に係る時価算定基準の適用について説明。
 
(主査)
資料2の1ページ目にある「国立大学法人及び大学共同利用機関法人が株式及び新株予約権を取得する場合の取扱いについて(通知)」の取扱いを、変更する必要があるかどうかも含めて検討するのか。
 
(事務局)
そのとおり。
 
(主査)
時価の把握は難しい場合が多いと思われるが、現在の実務では備忘価額で資産計上することが多いのか。
 
(事務局)
そのとおり。
 
(主査)
現状、企業会計においても非公開会社の新株予約権の評価方法が定まっていないため、通知の取扱いを今の時点で変更する必要はないのではないか。
 
(事務局)
資料3に基づき、受託研究等の収益に係る収益認識基準の適用について説明。
 
(有識者)
収益認識基準に照らして契約最終年度に一括して収益を計上すべきという考え方も理解できるが、そうすると契約最終年度以外の研究活動の状況が見えづらくなる。大学の毎年の活動状況を示すため、費用化額を限度として収益化する従前の会計処理を継続する方が良いのではないか。
 
(委員)
「知の価値」に相当する対価については、受託研究以外の用途にも使用していると思われる。仮に「知の価値」分を契約最終年度に収益化することにした場合、受託研究以外の用途に使用した費用化額が各年度の赤字要因になるのではないか。
 
(事務局)
「知の価値」分については、大学の管理方法や契約上の取扱いが様々であるため、現状、統一的な処理を示すことができない状況である。
 
(主査)
「知の価値」分は、直接経費と切り離して、間接的な経費に使用されることになるのか。
 
(事務局)
相手方との契約の範囲内で各大学の判断で決められる。
 
(委員)
受託研究契約ごとに「知の価値」分をプロジェクト管理している場合と、複数の契約の「知の価値」分をまとめて一括管理している場合が考えられる。「知の価値」分をプロジェクト管理している場合は費用化額を限度として収益化し、まとめて管理している場合は直接経費の執行額に一定割合を掛けて収益化することも考えられるのではないか。
同様に複数年度契約の間接経費についても、費用化額を限度として収益化する、あるいは直接経費の執行額に一定割合を掛けて収益化する等、大学によって会計処理が異なると思われる。これらの処理について統一する必要はあるか。
 
(オブザーバー)
現行の会計基準や実務指針の枠内で、それぞれの大学が実態に応じた会計処理を行っていると思われるため、実務指針等で統一的な処理を決めるのは時期尚早ではないか。
 
(主査)
間接経費については、従前の通り実務指針の枠内でそれぞれの法人が実態に応じた処理を行う形で問題ない。
直接経費についても、将来的に「知の価値」分として大きな利益が含まれるようになれば、企業会計同様、完成基準を採用することもあり得るが、そういった契約事例が少ない現状においては従前の会計処理を変更する必要はないのではないか。
 
(オブザーバー)
収益認識基準に照らして考えるのであれば、資料3の3ページ目にある5つのステップを踏まえ、履行義務がどのように充足されるかという観点で考えるべきではないか。
一方、大学の毎年の活動状況を示すために、費用化額を限度として収益化する処理を行うのであれば、収益認識基準を適用しているとは説明しづらいため、国大固有の処理として実務指針に明示するべきではないか。
また、資料3の6ページ目にある受託研究費を財源に取得した固定資産の減価償却にかかる会計処理について、これまで研究契約期間で減価償却することにより契約終了日までに固定資産取得額相当の減価償却費を発生させ、受託研究収益と均衡させてきた。しかし、資産見返勘定の廃止により損益均衡会計を見直した以上、受託研究費を財源に取得した固定資産についても、他の財源同様、法定耐用年数での減価償却に見直すべきではないか。
仮に受託研究費を財源に取得した固定資産について、法定耐用年数で減価償却した場合、研究契約期間よりも法定耐用年数の方が長ければ、研究契約期間終了時には一旦収益化額が費用化額を上回るが、その後、法定耐用年数にわたって資産を償却すれば、最終的には損益が均衡していくことになる。実務的には受託研究費を財源に取得した固定資産であっても、研究契約期間終了後すぐに使用されなくなるケースは少ないと思われるため、他の財源と整合を取った処理を検討すべきではないか。
 
(委員)
受託研究費を財源に他の研究に使用できる固定資産を取得し、その法定耐用年数が研究契約期間よりも長い場合、研究契約期間を超えた部分は利益と捉えることもできるのではないか。
 
(委員)
受託研究契約が延長されるケースもある中、取得財源や研究契約期間によって固定資産の耐用年数が変わると、事務処理のミスにもつながるのではないか。その受託研究以外にも使用できる資産の耐用年数については、事務処理の統一性の観点からも見直すべきではないか。
 
(委員)
今後、受託研究契約によって利益が発生するケースが増えれば、収益認識基準を適用することを検討する必要があるが、現状、そういったケースはほとんどないため、大学の毎年の活動量を示すという意味で、費用化額を限度として収益化する処理の方が適しているのではないか。
 
(委員)
金融商品に係る取引やリース取引等、民間企業でも収益認識基準が適用されない契約形態がある。国大においても、どの段階で収益認識基準を本格的に適用していくかを検討しても良いのではないか。
 
(事務局)
国大会計基準は、基本的に企業会計原則に準拠するという前提があるため、収益認識基準の適用を検討せざるを得ないが、どこまで適用するのかについては適切に判断すべきだと考えている。
 
(事務局)
今回の議論で、受託研究収益を契約最終年度に一括計上すべきという意見はなかったことから、大学の毎年の活動状況を示すため、直接経費については費用化額を限度として収益化する処理とする。受託研究費を財源として取得した固定資産の減価償却については、再度検討することとする。
 
(委員)
受託研究費を財源として取得した固定資産の減価償却については、会計基準ではなく実務指針として、文科省と日本公認会計士協会の協議で決定することになるのか。
 
(オブザーバー)
そのとおり。
 
(事務局)
資料4に基づき、入学金収益に係る収益認識基準の適用について説明。
 
(オブザーバー)
入学金収益の処理は実務指針で示すことになるが、実務指針において収益認識基準を適用すると記載してしまうと、私大や学習塾、海外の大学等の処理との整合性が取れなくなる恐れがある。どのような結論であれ、国大固有の処理として示す方が良いのではないか。
 
(事務局)
資料4の結論の中では、収益認識基準を適用せず、国大固有の処理として、入学許可時に一括で収益計上する案が最も近いと思われる。その場合、民間事業者の入学金の性質とは異なるため、実務指針では国大としての入学金の考え方を示すことになる。
 
(委員)
私大や学習塾、海外の大学等においては、同じ入学金といっても、入学手続きにかかる費用相当として金額を設定している法人もあれば、入学後のサービス提供にかかる費用相当も含めて金額を設定している法人もあると思われる。必ずしも国大が学習塾等と会計処理を統一する必要はないのではないか。
国大の入学金は一律であり、その金額が入学許可にかかる対価や入学手続きにかかる費用相当として設定されているのであれば、入学許可時に一括計上することになるのではないか。
 
(主査)
本日用意した議事は以上であるが、他に何かあるか。
 
(事務局)
予定していた議事にはないが、国立大学法人等債償還引当特定資産のキャッシュ・フロー計算書における区分について意見をいただきたい。
法人等債償還引当特定資産の繰入支出、繰入収入について、財務キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローのいずれの区分に整理すべきか。
これまでの改訂案では、法人等債償還引当特定資産は、法人等債の償還のための積立や取崩の性格を有しており、償還までの期間に資金運用を行うかどうかは任意であることから、あくまで資金の調達及び返済に関連するものとして財務キャッシュ・フローと整理していた。
一方、実際は少しでも資金を増やすために、償還までの期間で資金運用を行うことが想定される。法人等債償還引当特定資産に繰り入れず、手元資金を有価証券で運用して償還する場合の有価証券の購入等は、投資キャッシュ・フローに計上されることから、同じように資金運用を行う法人等債償還引当特定資産の繰入についても投資キャッシュ・フローに計上すべきではないかという意見もある。
法人等債の償還のための積立や取崩の性格を重視して財務キャッシュ・フローと整理すべきか、あるいは資金運用という実態を重視して投資キャッシュ・フローと整理すべきか、意見をいただきたい。
 
(主査)
貸借対照表では、引当特定資産は投資その他の資産に計上されるのか。
 
(事務局)
そのとおり。
 
(主査)
他の投資その他の資産の処理との整合性も含めて検討する必要がある。
 
(委員)
学校法人会計における第3号基本金引当特定資産は、財務活動等の資金収支の区分に入っている。確かに投資活動を行うという側面はあるが、目的はあくまで法人等債の償還であるため、学校法人会計との整合性も踏まえて、財務キャッシュ・フローと整理すべきではないか。
 
(オブザーバー)
附属明細書において引当特定資産の明細が開示され、有価証券等を繰り入れたり、取り崩したりできることを考えると、法人等債の償還とは切り分けて、投資キャッシュ・フローと整理することも理解できる。
一方、学校法人会計との整合性等の観点から、財務キャッシュ・フローと整理する考え方も理解できるため、いずれの考え方を重視してキャッシュ・フロー計算書に表示すべきかを検討することになるのではないか。
仮に財務キャッシュ・フローと整理した場合に、引当特定資産を活用して法人等債を償還したとすると、引当特定資産の取崩による収入と法人等債の償還による支出が相殺され、財務キャッシュ・フローの収支がゼロと表示されることになる。それでは大学の活動を適切に表しているとは言えないのではないか。
 
(有識者)
法人等債の償還のために積み立てておく必要がある以上、引当特定資産における資金運用は、国大法第三十四条の三に基づく余裕金の運用よりもリスクの低い運用になると思われるため、両者を区別して表示する方が良いのではないか。
 
(主査)
資金運用に当たって、引当特定資産で積み立てている資金と他の余裕金を区別して運用するのか。
 
(事務局)
大学によるが、一体として運用することもあり得る。
 
(有識者)
実務的には一体として運用することもあり得るが、法人等債の発行に当たっては、財務状況や償還計画を投資家に説明する必要があるため、法人等債の償還のために積み立てている資金が投資活動に使われているという見え方は望ましくないのではないか。
 
(オブザーバー)
ここまでの議論で、財務キャッシュ・フローに計上する根拠は十分にあると思われる。引当特定資産で積極運用を行い、減損してしまった場合のリスクを意識づける意味でも、財務キャッシュ・フローと整理して良いのではないか。
 
(委員)
財務キャッシュ・フローと整理した場合、引当特定資産の取崩による収入と法人等債の償還による支出が相殺されるという意見があったが、実際には引当特定資産の取崩だけで法人等債を全額償還できる大学はないのではないか。
引当特定資産で償還しきれない部分は、リファイナンスによって償還されると考えると、両者の内訳が財務キャッシュ・フローで見える方が読み手にとって分かりやすいのではないか。
 
(主査)
本日の議論から、法人等債償還引当特定資産の繰入支出、取崩による繰入収入は、財務キャッシュ・フローに計上することとする。
 

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高等教育局国立大学法人支援課

(高等教育局国立大学法人支援課)