令和3年度国立大学法人会計基準等検討会議(第4回) 議事要旨

1.日時

令和3年11月29日(月曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 中央合同庁舎7号館東館15階 15F特別会議室 ※WEB会議

3.議題

  1. 国立大学法人会計基準の見直しについて
  2. その他

4.出席者

委員

樫谷隆夫主査、植草茂樹委員、江戸川泰路委員、加用利彦委員、野々村愼一委員、水田健輔委員
(有識者)木村彰吾名古屋大学理事・副学長

文部科学省

森田大臣官房審議官、堀野国立大学法人支援課長、轟高等教育局視学官、星国立大学法人支援課課長補佐、東條国立大学法人支援課専門官

オブザーバー

日本公認会計士協会
 

5.議事要旨

<議題 国立大学法人会計基準の改訂>

(事務局)
 資料1に基づき、預金(資産)の特定化について説明。
 
(委員)
 資料2に基づき、減価償却引当特定資産の検討課題について、補足したい。
 事務局の説明にあったとおり、損益の状況にかかわらず、決算上の収支差額を基礎として法人の判断で資金の留保を行うことが可能となった点が大きな特徴である。
 将来更新予定の施設設備のために資金を積み立てることから、施設設備の整備計画を明確にする必要があるのではないか。また、当年度の減価償却費が特定資産の繰入額の上限になるが、現在、受託研究費を財源として取得した資産はプロジェクト期間で減価償却することが多い。その場合、減価償却期間が資産の使用実態と異なることになるため、通常の耐用年数での減価償却に戻すことも検討する必要がある。
 将来の施設設備の整備計画について、大学のインフラ長寿命化計画や設備マスタープランが参考資料となる。資料2の3ページのようにインフラ長寿命化計画において自己財源による整備計画を出している大学もある。一方、設備マスタープランは、インフラ長寿命化計画に比べ、財源を明示していないケースが多い。
 現在、文部科学省の大学等における研究設備・機器の共用化のためのガイドライン等の策定に関する検討会において、設備をどのように更新・整備していくか、財源はどのように手当てするかを可視化するために設備整備計画を作成すべきだという議論がある。同様に設備マスタープランにおいても、更新予定の設備の稼働状況を把握するとともに、設備整備に充てる財源を可視化させる動きがある。
 令和4年2月頃に文科省としてガイドラインを発出する予定で進めているということなので、会計基準の改訂との連動を考える必要があるのではないか。
 
(主査)
 減価償却引当特定資産の仕組みを導入するに当たり、大学の施設や設備の更新計画と特定資産の積立計画を連動できないかという意見だと理解した。
 
(委員)
 ご理解のとおりである。
 
(有識者)
 特定資産の仕組みは大学にとって大変ありがたい制度である。国大会計基準第84の特定償却資産の更新についても減価償却引当特定資産から支出可能なのか。また、設備の撤去費等についても支出可能なのか。
 
(事務局)
 国大会計基準第84の特定償却資産の更新についても、支出可能と考えている。
 減価償却引当特定資産の使途として設備の撤去費等まで認められるかどうかについては現在協議中である。
 
(委員)
 まず、この特定資産制度が認められたことは大学にとって非常に良かったと思う。
法人等債の発行で資金を調達して設備を購入した場合、購入設備の将来の取替更新を目的とした減価償却引当特定資産と、購入財源である法人等債の償還のための法人等債引当特定資産のいずれにも減価償却費相当額を積み立てられることになるが、概念上、同時に積み立てることは可能なのか。
また、そもそもどういった金額が減価償却引当特定資産、あるいは法人等債引当特定資産になるのか。
 
(事務局)
 法人等債を財源に取得した固定資産について、減価償却引当特定資産と法人等債引当特定資産とを同時に積み立てていくこともキャッシュさえあれば理論的には可能である。
特定資産の金額は文科省指定の様式で計算することになる。基本的には目的積立金の計算方法をベースに総収入から総支出を差し引いた現金余剰金に対して、まず特定資産への繰入額を控除し、残りの金額を目的積立金として承認申請していただくことになる。それぞれの特定資産の繰入額を個別に計算することは予定していない。
 
(委員)
 法人等債の発行時点には、償還後の設備更新計画を立てていないと思われる。実務的には法人等債引当特定資産を先に積み立て始め、具体的な設備の更新計画が出来上がってから、さらに減価償却引当特定資産も積み立てていく形になるのではないか。
 
(主査)
 インフラ長寿命化計画は、通常どの程度の計画期間を想定されているのか。
 
(委員)
 インフラ長寿命化計画は建物であれば耐用年数100年を目指すといった計画のため、非常に長期の計画であると理解している。
 
(主査)
 インフラ長寿命化計画は大学の中期計画と整合性が取られるのか。
 
(事務局)
 中期計画とは一定の整合性が取られている。
 
(オブザーバー)
 資料1の1ページに新規のソフト事業等に使用可能とあるが、減価償却引当特定資産は有形固定資産だけでなく無形のものに対しても使用可能なのか。
 
(事務局)
 資料1の1ページのソフト事業等に使用可能という記載は、これまで目的積立金とならなかった留保資金は使途が決まっておらず、施設設備の更新が喫緊の課題であったとしても当座の人件費等に充てられてしまうケースがあるという、現行制度上の課題を記載している。減価償却引当特定資産は有形固定資産に限らず、ソフトウェア等の無形固定資産にも充てることは可能である。
 
(オブザーバー)
 過年度に目的積立金とならなかった留保資金について、特定資産に繰り入れて使用することは可能か。
 
(事務局)
 過年度に目的積立金とならなかった留保資金の取扱いは、現在検討中である。
 
(オブザーバー)
 減価償却引当特定資産は流動資産に振り替える必要はないが、法人等債は翌事業年度の償還額が明らかであることから、法人等債引当特定資産については1年以内に取り崩す額を流動資産に振り替えた方が良いのではないか。また、附属明細書の特定資産の明細について、勘定科目の区分を追加し、預金や有価証券のそれぞれの金額を記載する方が良いのではないか。
 
(事務局)
 特定資産を構成する資金の内訳を附属明細書に記載する場合、一度特定資産に計上した有価証券は取り崩すときまで変更できないようにするかどうかも併せて検討する必要がある。
学校法人にも同様の特定資産の制度があることから、流動資産への振替の件も含め、取扱いについて日本公認会計士協会とも協議したい。
 
(オブザーバー)
 法人の判断で特定資産へ繰入れできるということだが、誰の意思決定が必要なのか実務指針で示した方が良いのではないか。
 
(事務局)
 検討する。
 
(委員)
 第3期中期目標期間終了時の目的積立金の繰越のメルクマールにソフト事業が新たに例示されている。設備等の更新事業は減価償却引当特定資産で繰り越し、ソフト事業は目的積立金で繰り越すといった運用になっていくのではないか。
 
(主査)
 災害等、やむを得ない事情により予定外の修繕が必要になった場合、その修繕費を特定資産から支出可能か。
 
(事務局)
 突発的に修繕や取替更新等が必要になった場合に支出できる財源が必要という大学からの要望があるため、減価償却引当特定資産を修繕費に使用できるよう協議を行っている。
 
(事務局)
 資料3-1、3-2に基づき、決算報告書について説明。
 
(オブザーバー)
 科研費等の間接経費について、決算報告書では産学連携等研究収入として統一的に取り扱うということだが、損益計算書においては引き続き、雑収入と研究関連収入の選択適用とするのか。
 
(事務局)
 継続性の観点を重視するか、決算報告書上の取扱いとの整合性を重視するか、改めて日本公認会計士協会とも協議したい。
 
(委員)
 運営費交付金の前期からの繰越額を執行しても、当期の収入に含めなくても良いのか。
 
(事務局)
 当期の収入に含めていない法人もあり、どちらでも差し支えない。
 
(事務局)
 資料4-1、4-2に基づき、国立大学法人会計基準に関する改訂の状況について説明。
 
(委員)
 受託研究収益について、最近は様々な契約形態があり、必ずしも直接経費に一定割合を乗じた金額を間接経費としているとは限らないため、直接経費部分と間接経費部分で分けて処理するのは実態にそぐわないのではないか。直接経費部分にのみ収益認識会計基準を適用するのではなく、国大の特徴を捉えた収益認識の在り方を別途定める方が良いのではないか。
 
(事務局)
 国大の複数年度契約における受託研究の現行の会計処理として、大半の受託研究等においては客観的な成果の測定が困難であること、加えて受託研究等は通常大量にあることが想定されることから、事務処理上の便宜も勘案し、費用化額を限度として収益化することを原則としている。複数年度の契約であれば、最終年度にサービス成果が得られるという前提はあるものの、費用進行のような処理をしている。
 現行の独法会計基準でも複数年度の受託研究は最終年度にサービス成果が得られるという前提は同様である。その前提のもと独法は最終年度においてサービス成果を委託者に引き渡した時点で収益を一括計上し、費用は仕掛品として最終年度まで繰り延べている。
 仮に収益認識会計基準に当てはめると、一定の期間にわたり履行義務が充足される場合と一時点で履行義務が充足される場合の2とおりが考えられる。
 収益認識会計基準では、一定の期間にわたり履行義務が充足される場合の要件は、次の3つのうちいずれかを満たすこととされている。一つ目は義務を履行するにつれて委託者が便益を享受することである。二つ目は研究の価値が増加するにつれて委託者がそれを支配することである。三つ目は義務を履行することにより別の用途に転用できない資産が生じ、かつ履行が完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有していることである。
国大の受託研究においては、別の用途に転用できない研究成果が生じると言うこともでき、また履行が完了した部分にかかった費用については委託者が対価を支払うと契約書に記載されている場合が多いため、三つ目の要件に当てはまるとも考えられるのではないか。
 一方、最終年度に研究成果が得られ、委託者に引き渡すという点に着目すれば、委託者が成果を検収し、委託者に対価を請求する権利を有した時に義務を履行したと考えることもできる。これは一時点で充足される履行義務として独立行政法人の考え方である。
 
(委員)
 一定の期間にわたり履行義務が充足されていく形の共同研究はやはり少ないのではないか。国大の場合、個別の契約実態に照らして収益認識会計基準への適用を検討するのは現実的でないため、実態に即した独自の基準を定める方が良いのではないか。
 また、仮に収益認識基準を適用し、検収時に収益認識するものとして費用を仕掛品に計上する場合、人件費が仕掛品に含まれないことになり、企業会計にそぐわない会計処理になる。
 
(有識者)
 複数年度を想定した共同研究であっても、相手方の都合で単年度ごとにしか研究経費が支払われない場合もある。また、複数年度の契約であっても契約変更により、研究期間中に金額が変更となる場合もあるため、その対応も検討する必要がある。
 煩雑な会計処理によって、産学連携が阻害される可能性もあるため、可能な限り簡素な処理にした方が良いのではないか。
 
(委員)
 共同研究は予定の期間に完了できないことも多いため、検収時に収益認識し、一括で計上する方が大学の実務上は簡便なのではないか。
 現在、大学では直接経費は費用進行基準で収益計上しているが、間接経費は当年度に予算化しているため、直接経費と間接経費の収益が対応していない状態になっている。直接経費も間接経費も検収時一括計上に統一した方が良いのではないか。
 また、プロジェクト管理している人件費については、人件費を仕掛品に計上することも可能ではないか。
 
(有識者)
 国大の財務諸表の資産の部に仕掛品が現れると、産学連携先の企業への説明が煩雑になるのではないか。
 
(委員)
 検収時一括収益計上が基本にあり、前倒しで収益認識する場合は履行義務が果たされている一定の根拠が必要になるというのが、新しい収益認識会計基準の趣旨だと思われる。
 仕掛品に人件費を含むか否か、仕掛品以外の勘定科目名とするか否かという論点はあるが、検収時一括収益計上の方が会計基準の在り方として正しいのではないか。
 
(委員)
 費用進行での処理と検収時一括収益計上という二つの意見があるが、一方を原則、もう一方を例外として、どちらも認めた方がよいのではないか。
 
(事務局)
 できる限りいずれかに統一したい。
 
(委員)
 実際に費用進行で処理した場合と仕掛品での処理をした場合では、当期の収益にどのような影響があるのか。
 
(事務局)
 受託研究の大半は単年度契約であることから、各年度の収支についてはいずれの場合も影響はないが、仮に大型の複数年度契約があった場合、仕掛品として処理すると契約最終年度の収益費用規模が他の年度と比べて非常に大きくなることはあり得る。
 
(委員)
 現在、共同研究において経費に利益分を上乗せする動きが増えてきている。年度末に費用進行基準で収益計上し、さらに翌年度に利益分を収益計上する形より、検収時に一括で収益計上する方が今後の方向性にも合っているのではないか。
 
(委員)
 経費を全額執行することと研究を完了することは必ずしも一致しない。検収時に収益認識する方がよいのではないか。
 
(事務局)
 収益認識基準は令和5年度からの適用であるので、再度大学で仕掛品の管理ができるか確認した上で、改めて検討いただきたい。
 
(オブザーバー)
 本日の意見も踏まえて、日本公認会計士協会においても検討したい。
 資料4-1の授業料収益のみ、明確に顧客がいるにもかかわらず収益認識会計基準を適用しないこととなっている。適用しないとしてもその理由をどのように考えるのか。入学金も含め、国大の処理が私学のものと乖離しないか注意する必要がある。
 
(事務局)
 授業料については収益認識会計基準を適用した上で、現行の処理を踏襲するという形が正しいと考えられるので、資料を修正する。
 
(主査)
 入学金について、入学を辞退した学生にも返金義務はないと解されているとあるが、私学は返金していないのか。
 
(事務局)
 授業料は返金するが、入学金は返金しないことが一般的である。
 
(事務局)
 次回の開催は1月か2月を予定している。今回の検討会議の総括として会計基準の改訂に関する報告書について意見を頂き、確定したいと考えている。
 

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高等教育局国立大学法人支援課

(高等教育局国立大学法人支援課)