「全国学生調査」に関する有識者会議(第14回)議事録

1.日時

令和8年2月13日(金曜日)14時00分~16時00分

2.議題

  1. 座長の選任等について
  2. 実施令和8年度「全国学生調査」のについて
  3. その他

3.出席者

委員

太田寛行座長
安孫子尋美、尾澤重知、葛城浩一、赤土豪一、畑野快、濱中義隆、福留東土、藤原宏司、森朋子の各委員

文部科学省

(事務局)石橋大学振興課長、松井大学振興課課長補佐ほか

4.議事録

1.座長の選任等について
委員の互選により太田委員が座長に選任された。また、事務局から、資料1「全国学生調査に関する有識者会議」運営要領(案)について説明があり、原案のとおり決定された。また、運営要領に基づき、この時点から会議が公開された。
 
2.令和8年度「全国学生調査」の実施について
 
【太田座長】 運営要領第2条に基づき、ここからは公開として進めます。
 それでは、議事の2つ目に入ります。令和8年度「全国学生調査」の実施についてです。事務局から説明をお願いします。
 
【松井大学振興課課長補佐】 事務局より、まず資料2に基づき全国学生調査の概要について御説明した後、本日御議論いただく資料3「令和8年度「全国学生調査」実施要領(案)」について御説明いたします。今回は最初の会議でございますので、改めて全国学生調査の内容について、資料2に基づき御説明いたします。
 まず、青枠の概要を御覧いただければと思いますが、本調査は国が実施主体となる調査です。国として、全国共通の質問項目により、学生の目線から大学教育や学びの実態を把握するための調査を実施するものです。大学・短期大学の学生を対象に、大学での学習内容や経験、大学教育を通じて身に付いた知識・能力、大学での学びに関する意識等について調査を行い、その結果を各大学の教育改善、社会の大学教育に対する理解促進、国の政策立案の基礎資料として活用することを目的としております。これまで4回の試行実施を行い、調査方法や質問項目等の調査設計を整理した上で、令和7年度から本格実施として開始しております。
 続いて、本調査が開始された背景についてです。冒頭、石橋課長からの説明にもありましたとおり、平成30年のグランドデザイン答申を契機として、国は全国的な学生調査等を通じて整理し、比較できるよう一覧化して広報すべきとの提言がございました。これを契機として、検討が開始されたものです。
 また、本調査の目的としては、各大学がフィードバックされた調査結果をIRやFD・SD活動、自己点検・評価等に活用し、自大学の教育活動の改善・促進につなげることが挙げられます。さらに、大学進学希望者やその保護者、地域社会や産業界、海外の留学関係者等が、学生の学修成果や大学全体の教育成果に対する理解を深めること、国が今後の政策立案の基礎資料として活用すること、また、学生一人一人が調査を通じて自らの学修や大学生活を振り返り、卒業後の社会における自らの姿を考える契機とすることを目的としております。
 以上が調査の概略です。詳細については、後ほど実施要領の説明の際に御説明いたします。
 全国学生調査については、中央教育審議会においても指摘がなされています。昨年2月の「知の総和」答申では、情報公表の推進の観点から、学生目線から大学教育や学びの実態を把握するため、国が試行している「全国学生調査」について、学生の学修成果に関する情報を他大学・学部間でベンチマークできるという利点を十分に生かす形で、その調査結果を教育の質の向上に向けて積極的に活用することも重要であると示されています。
 具体的な方策としては、全国学生調査の全校参加に向け、参加等に関するインセンティブの設定を行うとともに、円滑な調査の実施に向けて体制の整備を進めること、また各高等教育機関におけるIR等を通じた自己点検評価や認証評価において全国学生調査の結果の活用を促進するために周知等を行います。
 また、先ほど森委員からもご指摘がありましたが、大学分科会質向上・質保証システム部会のワーキングにおける昨年8月の議論整理では、新たな評価制度の基本的枠組みの中で、評価の基準・項目の区分に関し、間接評価については、本格実施する全国学生調査の枠組みを通じて、「新たな評価」の趣旨に即した質問項目を設定し、把握した内容を活用していくべきと示されています。
 全国学生調査の結果の活用策としては、結果公表の同意が得られた大学の調査結果について、令和8年度調査結果の公表から実施しております。全国共通の質問項目により、学生目線から大学教育や学びの実態を他大学と比較することで、各大学が自大学の学生の実態や意識を把握し、他大学との比較を踏まえた教育改善に活用することを想定しております。また、大学進学希望者やその保護者、地域社会、産業界、海外の留学生等に対する大学教育への理解促進にも活用することを予定しております。
 下段左側は、ポジティブリストのイメージです。学部ごとに上位順に一覧化したものを公表するものであり、ポジティブリスト自体は令和6年度調査結果の公表から実施しております。
 また、右側の教学IRレポートの提供については、調査結果をまとめた教学IRレポートを作成し、参加大学にフィードバックしております。
 続いて、令和7年度の全国学生調査の質問項目の一覧です。全体で選択式33問、記述式1問の計34問で構成されております。
また、こちらは周知資料として活用しているものの紹介です。全国学生調査の認知度を高め、参加率や回答率を向上させることが非常に重要な課題であるため、大学や学生に対してこのような周知を行っており、今後も周知活動に力を入れていきたいと考えております。
 以上が学生調査の概要です。
 続いて、資料3、本日御議論いただく「令和8年度「全国学生調査」の実施要領(案)」について、ポイントを御説明いたします。
 一番上の基本方針ですが、「本調査は、学修の主体である学生の視点から、大学教育や学びの実態を把握し、その結果を各大学の教育改善に生かすとともに、我が国の大学に対する社会の理解を深める一助とすることを目的とする」としております。全体的な調査設計としては、基本的には令和7年度調査を踏襲する予定です。
 続いて調査対象ですが、参加意向のあった大学(短期大学を含む)に在籍する学部(短期大学の場合は学科)の2年生及び最終学年生を対象とします。
 調査実施時期は、令和8年10月頃から令和9年3月末までとし、このうち各大学において1か月程度の実施期間を設定することを推奨します。ただし、後ほど御説明する調査方法2の場合は、各大学の判断により令和8年4月から令和9年3月末までの期間で設定することも可能としています。なお、令和8年度調査に関する「意向等確認調査」については、6月頃に別途大学に連絡する予定です。
 調査方法は1種類あり、1文部科学省が実施するインターネット(WEB)調査(文部科学省が指定するURLに学生が直接回答するもの)、2参加大学が実施する学生調査に全国学生調査の質問項目を併せて実施する方法のいずれかを選択する形となります。
 質問項目については、当面、令和7年度調査の質問項目(選択式33問、自由記述1問)を原則変更しない予定です。令和8年度調査では、別紙のとおり一部文言の修正を行いますが、内容の変更を伴うものではありません。
 調査結果の取扱いとして、文部科学省のホームページで公表する予定のものは3点です。1つ目はポジティブリストで、集計基準に合致した参加大学の学部(学科)のうち、問1から4の各質問項目において肯定的な回答割合が高かった学部(学科)を分野別に上位順(一定数の母集団が得られることが前提)で一覧化し、併せて当該大学・短期大学の教育方法や教育改善の取組を公表する予定です。
 2つ目は、全体のグラフやレーダーチャート等の視覚資料です。
 3つ目は、意向等確認調査において「結果公表の同意」が得られた大学の回答全体の集計結果(参加大学の学部ごとに全ての質問項目における選択肢の回答結果)を公表するものです。令和6年度の直近の公表では、ポジティブリストのみ大学学部別の公表でしたが、令和7年度からは結果公表に同意した全ての大学について学部単位での結果公表を予定しております。
 また、参加大学への提供内容として、参加大学ごとのグラフやレーダーチャート等の視覚資料、当該大学に在籍する学生の回答を一覧化した資料など、調査結果の分析に活用できる資料を提供する予定です。
 続いて、参加に係るインセンティブの設定について御説明いたします。参加率向上を目的として、大学教育再生戦略推進費(再推費)については、令和9年度の再推費に係る申請・採択等において本調査への参加や結果公表を要件とすることを予定しており、具体的な内容は今後、各事業の公募要領等において示す予定です。イメージとしては、全国学生調査に参加及び結果の公表への同意が、再推費の公募に応募するための要件となるものです。
 また、私学助成については、私立大学等経常費補助金において教育の質に係る客観的指標の一つとして全国学生調査の調査項目(学生の大学での学修内容や経験、大学教育を通じて身についた知識・能力、大学での学びに関する意識等)について調査の実施及び結果公表していることを指標の一つとしており、令和8年度においても引き続き「全国学生調査」への参加及び結果公表の観点を指標に組み込むことを予定です。具体的な内容については、今後文部科学省からお知らせする予定です。
 説明は以上です。
 別紙1は、令和8年度の全国学生調査の質問項目で、基本的には令和7年度調査と同様です。留意事項として、赤字で示しているとおり二重回答がないよう「お一人1回の回答を厳守でお願いします」という文言を追記しています。システム上、同一端末では複数回答できない仕組みになっていますが、端末を変更すると回答できてしまう場合があり、場合によっては、一部の大学・学部で回答率が100%を超える事象が見られるため、注意喚起を行うものです。
 また、参考として別紙2を今年度から新たに追加しており、令和7年度調査の際に大学から多く寄せられた問合せをQ&Aとして整理し、大学へ事前に周知する予定です。
 以上で資料の説明を終わります。よろしくお願いいたします。
 
【太田座長】 御説明ありがとうございました。ただいま事務局から説明がありましたとおり、令和8年度「全国学生調査」実施要領(案)について御確認いただきたいと思います。御質問、御意見のある方は、挙手の上、御発言をお願いします。
 
【濱中委員】 これはまだ案なので変更は可能という理解でよろしいでしょうか。また、本資料は6月の意向調査の際に大学にも送付されるものなのでしょうか。
 
【松井大学振興課課長補佐】 本日御議論いただき、決定された後、実施要領は3月中旬頃に大学へ通知及び文部科学省HPにおいて公表する予定です。その後、6月頃に参加意向等調査を大学に通知する予定です。
 
【濱中委員】 いずれにしても事務連絡の書類として大学に発出されるという理解でよろしいですね。
 3ページのポジティブリストの2行目に「回答割合が高かった学部(学科)を分野別に上位順(一定数の母集団が得られることが前提)」ありますが、「一定数の母集団」という表現は適切ではないかと思います。例えば、「一定数以上の有効回答者数が得られることが前提」といった表現に修正したほうがよいのではないでしょうか。母集団は恐らく分母を指しているのだと思いますが、分母と母集団は異なる概念ですので、文言はより厳密にしておいたほうがよいと思います。
 
【松井大学振興課課長補佐】 ありがとうございます。ご指摘を踏まえ、訂正させていただきます。
 
【太田座長】 文言についてのご指摘、ありがとうございました。
 続きまして、葛城委員お願いします。
 
【葛城委員】 3点お尋ねします。
 まず1点目は、調査の実施時期についてです。10月頃から3月末までと、かなり幅をもたせた設定となっていますが、10月に実施する場合と3月に実施する場合では、結果に相当の差が生じる可能性がでてくるのではないかと予想されます。この幅を設けている意図についてお聞かせください。
 3点目です。令和8年度実施分の調査項目については、令和7年度を踏襲するとのことでしたが、中長期的に見た場合、先ほど説明のあった新たな認証評価との関係では、どの時期から質問項目の見直しが必要になるのかを見据えて検討を進めていく必要があるのではないかと思います。この点について、いつ頃からの見直しを想定しているのかお聞かせください。
 最後に、回答率の問題についてです。既に課題として認識されているとのことですが、その対応策の一つとして調査方法2が示されていると理解しています。この方法の具体的な内容や実施のイメージについて共有いただければと思います。
 
【松井大学振興課課長補佐】 調査期間に幅を設けている理由についてですが、大学ごとに調査を実施しやすい時期が異なるため、できるだけ実施時期の選択肢を広げることを意図としております。
また、最終学年は3月の卒業式、2年生は定期試験の時期など、大学ごとに回答率を高めるための戦略的な時期があると伺っており、その趣旨で幅を設けております。
御指摘のとおり、実施時期によって回答に多少のずれが生じる可能性はありますが、現時点では幅を持たせることを優先しております。
 
【葛城委員】 もう少し調査期間の幅を縮めることは検討されていないでしょうか。特に最終学年については、学生が卒業するまでにどれだけ学修成果を得たかという点に関わるため、実施時期は後ろに寄せた方が適切と思われます。10月に実施するのは早すぎるのではないかという懸念もありますので、実施時期について再検討の余地があるかどうかも併せてお聞かせください。
 
【石橋大学振興課長】 ご質問の2点について、併せて御回答いたします。
 まず、新たな評価についてですが、葛城委員にも御参画いただき議論を進めているところであり、早期に実施する場合の具体的な時期については現時点ではまだ議論中で、日程を確定できておりません。ただし、新たな評価に用いる学生調査は、少なくとも評価開始の前年に行われるものでなければならないため、その時点の学生調査項目には、新しい内容を組み込む必要があると考えております。
 その上で、このタイミングに到達した際には、調査時期について再検討が必要になると考えております。先ほど松井から説明のあったワーキングでは、間接評価において学生調査を活用すべきという議論があり、学生が自身の学修の伸びをどのように認識したかを把握することが重要とされています。そのため、どの時期に調査を実施するのが最も有効かについては、本委員会で御議論いただいた上で設定する必要があります。
現時点では、大学への混乱を避けるため、当面は現行の期間で実施しつつ運用を行っていきたいと考えております。
 
【松井大学振興課課長補佐】 回答率を上げるための調査方法2に関する具体的な対応策についての御質問だったかと思います。
 国の調査開始前から、大学独自の学生調査を実施している大学は多数あると伺っております。大学によっては、全国学生調査のみを実施する場合や、既存の大学独自調査と全国学生調査の両方を実施する場合など、状況はさまざまであるとのことです。
こうした状況を踏まえ、できるだけ回答率を向上させるために、大学独自の調査と全国学生調査を一本化して実施することが望ましいとの御意見を受け、調査方法2が設定されました。
 イメージとしては、学生が回答する際に、大学独自調査の質問の後に全国学生調査の質問が続く形が一般的な方法と聞いています。大学独自調査の中に全国学生調査の質問を組み込むことも可能としています。
実態としては、調査方法2が増えることも想定されましたが、令和7年度の状況は、現時点で6~7割の大学が調査方法1を選択しているという状況です。
 
【濱中委員】 補足いたします。調査方法2は、全国学生調査の質問項目については、該当する項目のみを各大学が独自調査から切り出し、委託先の業者にローデータを提出した上で集計するという方法になります。
4回目の試行実施の際には、大学独自調査と全国学生調査の集計結果の差異について内部で確認を行いました。結果として、回収率は大学独自調査の方が圧倒的に高い一方で、回答傾向にはほとんど差が見られなかったため、両者を合わせて集計しても問題ないと確認しております。
 
【太田座長】 葛城委員、よろしいですか。
 
【葛城委員】 はい。
 
【太田座長】 ありがとうございました。
 そのほかに御意見、御質問ございますか。赤土委員お願いします。
 
【赤土委員】 先ほど回答率とインセンティブの話が出ていましたが、過去に議論済みであれば恐縮ですが、学生が回答したくなる動機付けという点も重要な要素だと思っております。先生方が依頼しても、学生自身が回答する理由やモチベーションがなければ十分な回収は期待できません。
 具体例としては、金銭的なインセンティブは難しいとしても、チラシや周知資料では学生目線に立つことが大切だと思います。「大学を変えたい」「未来につながる」といった表現は、学生にとってやや遠い印象があるかもしれません。全国学生調査が自己分析や振り返りの時間として位置付けられることを明示するなど、学生にとって意味のある形で伝える工夫が考えられるのではないでしょうか。
 また、解釈の揃え方も重要です。先生方だけでなく、大学にも統一した理解で伝えることが望ましいと思います。
さらに、チラシのデザインやQRコードを経由した回答画面についても工夫の余地があります。拝見できていないのですが、回答時間の短縮や操作性を重視することで、学生がよりスムーズに回答できる環境を作ることが可能です。
こうした工夫については、自分の専門分野としてお力になれるかと思っております。
 
【太田座長】 ありがとうございます。調査も学修者本位で実施する必要があることが理解できました。大切な視点だと思います。
 続きまして、畑野委員、お願いします。
 
【畑野委員】 まず1点目ですが、新たな評価の観点から現行の調査項目について改善の必要があると考えられます。その理由と、今後特にどの項目を変更すべきかについて教えていただきたいという点です。
 もう1点は、赤土委員のご指摘にも関連しますが、学生がチラシを見ても回答率が上がらない現状についてです。本学で紙媒体にて調査を行った際には回収率は高かったものの、オンライン化した途端に回収率が低下しました。学生へのインセンティブのみでは十分に機能しない可能性があり、大学自体が回答を促す仕組み(義務化のレベルを含む)を考えなければ、回収率は向上しにくいのではないかと考えています。
この観点では、大学教育再生戦略推進費などの金銭的インセンティブは有効ですが、最終的には各大学が回答率向上の責任を持つ必要があるというのが感想です。
 
【太田座長】 ありがとうございました。今後、回収率の問題や各大学の工夫などについて、活発に意見交換できればと思います。
 続きまして、安孫子委員、お願いします。
 
【安孫子委員】 私は学生調査の本丸の設問について、意見を述べさせていただきます。
 令和7年度の設問と比較すると、学生の満足度調査から行動変容に接続できる接合設問への改善が進んでいると思います。ただ、さらに踏み込んだ設問にする余地があると考えます。
 具体的には、問1については現状の設問が形式的な要素に偏っている印象があります。企業が求める「覚える力」だけでなく、これからの「考える力」や「実践する力」を測定できる設問に改善することが望ましいと考えています。例えば、「正解のない問いにどれだけ取り組みましたか」「失敗や試行錯誤を前提にして取り組んだ経験がありますか」といった、より踏み込んだ設問にすると有用です。
また、問3についても、主観的評価に偏りがあるため、具体的な行動や経験を引き出す設問が望ましいです。例えば、3-8や3-9では、「自ら課題を設定した経験があるか」や「異なる立場の人との対立を乗り越えた経験があるか」といった設問を追加することで、大学が目指す理想の学生像に対する現状把握が可能になると考えます。
 こういった観点を踏まえ、コンピテンシーも含めて「どのような学生を育成したいか」という観点を設問に反映させることが望ましいと思います。
 
【太田座長】 ありがとうございます。いただいた御意見については、後ほどこちらでも改めて検討させていただきます。
 続きまして、藤原委員、お願いします。
 
【藤原委員】 私からは2点あります。
 まず、7番のインセンティブ設定について確認です。調査への参加と結果公表への同意が要件であり、学生のアンケートの点数が高くない場合にペナルティーが発生することは一切ないことを明確にしておく必要があります。20年ほど前、イギリスで実施されたアンケート(NSS)では、教授が「良い回答をしないと大学のランクが下がる」と学生に指示したことで問題となった事例があります。こうした事態を避けるためにも、インセンティブはあくまで「参加と結果公表への同意」に限ること、結果による評価は関係ないことを明記すべきです。そうでなければ、学生や大学側がランキング向上を意識して回答する危険があります。
 次にポジティブリストについてです。いくつかのデータを基に簡単なシミュレーションを行ったところ、1位と15位の信頼区間がほぼ同じである例がありました。このことから、このデータで順位付けること自体が統計的に妥当か疑問です。大学名は伏せますが、全て4点で全国1位となっているケースもあります。ポジティブリストの設計が周知されれば、全国の大学から「本当に妥当なのか」と疑問が出る可能性があり、私はそこに危惧を感じております。
 さらに、トップ15%に入る大学と入らない大学を統計的に区別できるかという点も問題です。たまたま入った、あるいは漏れた可能性もあり、この点を踏まえると、ポジティブリストは再検討した方がよいと考えます。本日確認したデータと計算結果を基に、以上の点を共有いたします。
 
【太田座長】 御指摘ありがとうございました。
 それでは、福留委員、お願いいたします。
 
【福留委員】 具体的な議論のほうに入っているようですので、少し発言をさせていただきます。
 東京大学も、昨年度から文部科学省の調査に参加しており、各大学がどのように調査を実施しているのかという立場や現状の共有、意見も含めて御報告いたします。本学では、文部科学省の調査と大学独自の調査の両方を行っており、現時点では分けて実施しています。大学独自調査はこれまで力を入れて実施してきた経緯があり、学生へのリマインドを繰り返すことで回収率の向上に努めています。一方、文部科学省の調査は年1回の回答を学生に求める形式のため、実施はしていますが回収率は低い状況が続いています。
 ただ、良し悪しは別として、インセンティブと結びつけることも可能であり、今後ほぼすべての大学が参加することになると思われます。そのため、全国的な調査をどのように活用するかが重要なポイントです。一方で、各大学の文脈に即した質問項目や解釈があるかどうかも、具体的な改善に生かす上で極めて重要です。漠然とした問いでは、活用のモチベーションが上がらず、実際に使いにくくなる可能性があります。
先ほど、調査方法が2つあるという説明もありましたが、両方をうまくつなげていく必要があると考えています。もし両方を一つに統合するのであれば、調査方法2のような形を検討する必要があるかと思います。
 また、各大学で調査を行う際の課題として、分析まで行おうとすると多くのコストがかかります。全国学生調査を活用して効率化できれば、各大学にとってメリットがあると考えられます。実際に運用してみると細かい課題も出てくるため、柔軟な設計が可能であれば大学側にとっても有益です。
このように、全国学生調査としての性格と各大学の教育現場での活用をどう接続させるかをうまくバランスさせることが重要であり、この点を問題意識として今後の議論に反映させたいと思います。
 
【太田座長】 ありがとうございました。個々の大学の取組と、それを全国的に横につなぎ連携しながら、学生をどのように育てていくかという両方の観点をうまく組み合わせていくことが重要だと思います。
 他に御意見ございますか。
 
【尾澤委員】 二重回答がないように赤字で加えていただいた部分については、工夫をいただいたことで、トラブル防止につながるのではないかと思います。一方で、技術的な脆弱性がやや残る点や、ポジティブリストの扱いについて少し気になる部分があります。
 私自身、ポジティブリストに自分の学部が掲載されている箇所を学生に見せたことがあります。情報系の学生が多いのですが、その際に「次は絶対に1番を狙うぞ」といった雰囲気が生まれてしまいました。そうなると、弱い部分を狙われるリスクがあるのではないかと感じています。
この点については、大学独自で実施することで、二重匿名化、すなわち1人1回の回答をコントロールすることが可能になるのではないかと思います。予算面で大きな負担が生じるとは思いますが、何らかの形で検討いただけるとありがたいです。
 
【太田座長】 とても大事なことだと思います。他に御意見ございますか。藤原委員、お願いします。
 
【藤原委員】 先ほどのポジティブリストに関連してお話します。現在、分野別にランキングをつけて公表していますが、私の研究分野はアメリカの教育プログラムの分類コードに基づくものです。その観点から見ると、日本の分類はやや雑であると感じます。例えば、教育学部が教育分野ではなく「その他」に分類されていたり、文学部が人文分野または「その他」に入っていたり、〇〇大学の理工学群が理学・工学分野ではなく「その他」に入っていたりします。このため、学部を比較しようとしても、実際の学部構成に即した比較ができず、ランキングの意味が薄れてしまいます。文部科学省のABCDのコーディングに従うと、正しい比較ができない可能性があるため、この点も考慮する必要があります。
もう1点、アメリカのNSSEという類似アンケートでは、ランキング付け自体に反対する声明を出しており、代わりに大学が比較したいピア校、ライバル校10校程度選んでもらい、その平均スコアと自大学のスコアを比較する方法を採用しています。こうすることで、大学は意識している大学との比較が可能となり、活用意欲も高まる可能性があります。現在は全国800校の平均と比較する形式ですが、例えば〇〇大学などでは「どこと比べればよいのか」という問題が生じます。
この点について、海外の事例を参考にしつつ、ランキングや見せ方を工夫する必要があるのではないかと思います。
 
【太田座長】 ありがとうございました。非常に勉強になる御意見だったと思います。
 ほかにご意見はございますか。よろしいでしょうか。赤土委員、お願いします。
 
【赤土委員】 高校の先生方が進路指導などで活用するイメージはございますでしょうか。その場合、ポジティブリストはまだ難しいかもしれませんが、エリア別にまとめられていると、先生方も「自分たちの地域で近い学校はここだ」と把握しやすくなり、生徒への紹介や案内がしやすくなると思います。また、各項目の特徴がわかると、面談で10~15分程度の時間でも、先生方が生徒に具体的に説明しやすくなるのではないかと思います。
 さらに、高校現場で展開する際には、「ポジティブリスト」という表現よりも、もう少し伝わりやすい表現に編集したほうが、高校現場で活用しやすくなるのではないかと考えます。
 
【濱中委員】 ポジティブリストに関して補足させていただきます。
ポジティブリストは前回の施行調査の結果公表の段になって、インパクトのある結果の示し方を出す必要があるということで作成された経緯があります。確かに統計的に有意な差があるかというと、差がない場合も多く、見る人が見ればわかる状況です。国研で行われているPIAACでは、信頼区間が重なる場合は同順位として表示しており、そうした方法も検討可能です。
ただ、次回からは基本的に大学・学部別の集計結果が公表され、多くの大学が公表に同意しているという情報もあるため、ポジティブリスト自体の意味はあまり大きくないというか、公表データを並べ替えれば事実上、すべてポジティブリストになるとも言えます。そのため、ポジティブリストの示し方に技術的にこだわるよりも、個別大学の集計結果をどのような形で公表するかの方が、今後の議論として重要になると考えます。
 分野についても十分に説明されていない点があります。各大学が自分の学部・学科がどの分野に属するかは、学校基本調査の学科小分類で分けられていますが、ポジティブリスト内では学科名まで記載されていないため、同じ学部が異なる分野として二度表示されることがあります。この点も説明の仕方に改善の余地があります。
むしろ、今後は個別大学のデータがそのまま公表されることを踏まえ、どのような形で提示するかを検討することが重要だと考えます。
 
【太田座長】 ありがとうございました。
 森委員、お願いします。
 
【森委員】 今議論されている内容については、まさにそのとおりだと思いながら伺っている中で、先ほど畑野委員からあったように、新たな評価の在り方が今後どうなるかという点は、非常に重要な観点の一つだと考えています。
1月21日にワーキンググループで公表された内容によれば、認証評価は機関別ではなく学部別で行われ、学生がどれだけ伸びたか、成長したかをディプロマポリシーに沿って評価し、その結果を段階別評価として示す予定です。そのため、現在の全国学生調査やポジティブリストなどは、今後こうした評価と融合されていくイメージです。
 学修成果の可視化には、直接的評価と間接的評価の2種類があります。そのうち、間接評価の中で全国学生調査が大きな役割を担う場合、回収率の重要性も高まります。つまり、学生のための調査というよりも、大学が教育成果を可視化するために用いる調査という位置づけにもなるため、大きなターニングポイントになると考えられます。
 今後は、ワーキンググループの議論内容も共有しつつ、調査設計を慎重に進めていきたいと思います。また、藤原委員が指摘されたように、アメリカではなく現在はイギリスのTEFの事例を参考に進めており、その調査結果についても共有できればと思います。
 
【太田座長】 ありがとうございました。
 いかがでしょうか。他にご意見はございますか。いただいた意見を踏まえ、今後どのように調整していくかについて、こちらで検討させていただきたいと思います。
 全体として、この方向でご了解いただけますでしょうか。どうぞ。
 
【石橋大学振興課長】 先生方、ありがとうございました。今回の議論の中心は、令和8年度の調査をこのやり方で実施してよいかどうかという点でした。公表の仕方やポジティブリストの在り方についても、非常に重要なご指摘をいただいたと思っております。次回のチラシについてはまだ決定ではありませんが、委員からのご意見も踏まえ、学生が回答したくなるような工夫をチラシや入り口の部分に反映させたいと考えております。その点については、会議外で委員の先生方にご相談させていただく可能性もありますので、よろしくお願いいたします。
 調査項目や質問項目については、これまでの調査の連続性を考え、令和8年度は一旦同じ項目で実施したいと考えております。ただし、新たな評価の導入に伴い、質問項目の見直しを行うタイミングが出てくると思われます。安孫子委員のご指摘もまさにその通りであり、評価で確認したいことと、学生自身が成長を測るために活用できることの両方を追求できる設計を検討したいと思います。今後は、これらをうまく統合した質問項目に改善していければと考えております。
 令和8年度の調査については、今申し上げた観点を踏まえつつ、いただいた指摘事項を修正した上で進めます。例えば藤原委員からのインセンティブに関する指摘については、参加と結果公表のみを目的としており、調査結果自体とは無関係であることを明示する形で工夫します。
以上の観点から、項目に関してはこの形で進め、公表の方法については、集計結果が出揃った段階で再度委員の皆様にご相談させていただく形で進めたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【太田座長】 石橋課長から説明がありましたが、その方向でよろしいでしょうか。
よって、令和8年度の調査については、その方向で進めさせていただきます。ありがとうございました。
 ご了解いただきましたので、令和8年度の調査の実施については、3月中旬頃に大学へ発出する方向で進めてまいります。よろしくお願いいたします。
 
3.その他
 
【太田座長】 よろしければ、次の議事に移りたいと思います。その他の議題です。
昨年9月に公表した令和6年度全国学生調査(第4回試行実施)の結果について、事務局からご報告をお願いいたします。
 
【松井大学振興課課長補佐】 事務局でございます。参考資料1、2についてご紹介いたします。委員の皆様の中には既にご覧になっている方も多いかと思いますが、昨年9月に令和6年度全国学生調査(試行実施)の結果を公表しております。
本日、参考資料として用意したのは、報道発表資料(参考資料1)とポジティブリストの資料(参考資料2)です。
次回の委員会では、現在実施している令和7年度調査の公表に向けた議論を行う予定ですので、本資料をご参考にしていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【太田座長】 ありがとうございました。
 これで、本日の議題は以上となります。
 最後に、事務局から、次回開催についてご説明をお願いいたします。
 
【松井大学振興課課長補佐】 本日は非常に活発な御議論をいただき、誠にありがとうございました。本日御発言できなかった内容がもしございましたら、後日で構いませんので、事務局まで御連絡いただきますようお願いいたします。
 また、次回の会議につきましては、令和7年度調査の結果公表に向けて、令和8年の夏(6月~7月)頃を予定しております。日程等は改めて御連絡させていただきます。
 
【石橋大学振興課長】 最後に1点よろしいでしょうか。
 
【太田座長】 どうぞ。
 
【石橋大学振興課長】 只今、松井が説明いたしました、夏頃開催予定の会議は、濱中委員のご発言もありましたポジティブリストのみならず、初めての試みとなる学部全体の公表内容についての整理、議論のポイントとなりますので、よろしくお願いいたします。
 
【太田座長】 本日は活発な御意見どうもありがとうございました。
 それでは、本日の会議を終了いたします。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

お問合せ先

高等教育局大学振興課学務係

(高等教育局大学振興課学務係)