「全国学生調査」に関する有識者会議(第3回)議事録

1.日時

令和2年12月10日(木曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省東館3階3F2特別会議室(※Web会議)

3.議題

  1. 「全国学生調査」の本格実施及び令和3年度試行実施に向けた意見交換
  2. その他

4.出席者

委員

河田悌一座長
奥明子,岸本強,小林浩,小林雅之,清水一彦,高橋哲也,田中愛治,千葉吉裕,服部泰直,両角亜希子,山田礼子の各委員

文部科学省

 淵上高等教育企画課長,奥井高等教育企画課課長補佐ほか

オブザーバー

 濱中  義隆氏

 

5.議事録

【河田座長】 おはようございます。 今回は第3回の「全国学生調査」に関する有識者会議に皆さまお忙しい中,御出席くださいまして本当にありがとうございます。
今日も新型コロナ感染症対策のため,ウェブ会議とし,その様子をYouTubeでライブ配信いたしますので,よろしくお願いいたします。
議事に入ります前に,事務局の大和田高等教育政策室係長から連絡事項をお伝えします。

【大和田高等教育政策室企画審議係長】 事務局でございます。
本日はウェブ会議及びライブ配信を円滑に行う観点から御発言の際はお名前の横の手のマークのボタンを押していただき,指名されましたらお名前をおっしゃってから御発言いただきたいこと。また,御発言後は同じ手のマークのボタンを押して,表示を消していただきますようお願いいたします。また,発言時以外は,マイクをミュートにしていただくことなどを御配慮いただけますと,有り難く存じます。
会議中,不都合が生じることもあるかと思いますが,御協力のほどよろしくお願い申し上げます。会議資料につきましては,議事次第に記載のとおり,事前にメールにてお送りしておりますので,御確認願います。事務局からは以上でございます。

【河田座長】 ありがとうございました。それでは議事に入らせていただきます。
本日は,これまで2度の議論を踏まえながら,「全国学生調査」の本格実施,また2回目の試行実施の調査設計について,具体化して議論を進めていきたいと考えております。
まず,これまでの2回の本会議における主な御意見の概要,を踏まえながら,本格実施に向けた七つの論点について,今後の方向性が整理されていますので,それにつきまして,事務局の奥井高等教育企画課課長補佐から御説明を頂きたいと思います。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 高等教育企画課の奥井でございます。よろしくお願いいたします。資料1と資料2に基づきまして,御説明いたします。
資料1は本会議における主な意見を取りまとめたものでございます。黄色を付してあるものが,第2回で頂いた御意見を整理したものでございます。
論点ごとに整理させていただいております。論点1の調査の目的として,この調査を大学も産業界側も意識が変わるきっかけにしたらいいのではないかといった御意見がございました。
また,論点2の調査対象・方法について,2ページ目でございます。対象学年については,前回は3年生でしたが,4年生の意見を聞いてもいいのではないか,又は,複数の学年という選択肢もあるという御意見。短期大学については2年生がいいのではないかという御意見。また,実施時期は前回試行実施と大体同時期でもよいのではないかといった御意見がございました。
論点4の質問項目について,後ほど集中的に御意見を頂きたいと思っておりますので,御紹介は省略させていただきます。
論点5の公表内容・方法について,調査結果を出すときには,単なる数字の羅列ではなく,大学の個性や特色がしっかりと分かるような形で公表する必要があるのではないかという御意見。また,公表の基準についても,どのような回答率,回答数がいいのかといった御意見を頂きました。公表の基準についても,本日,第1回の試行実施の分析を踏まえた御提案をさせていただきたいと思っております。
論点6の既存の学生調査との整理等について,学生あるいは大学側の負担感もありますので,本調査あるいは別の調査の意義も踏まえた形で,うまく整理できるといいのではないかといった御意見がありました。
続いて資料2でございます。前回,事務局案としてお示しした本格実施に向けた論点と今後の方向性の変更点を赤字にしておりますので,それについて御説明させていただきます。
まず論点1でございます。点線囲いの部分は議論のまとめでございますが,本有識者会議において議論した本格実施に向けた方向性を,このような形で報告資料としてまとめていくことをイメージしてございます。語尾を今までは疑問形で書いておりましたけれども,「重要である」のように断定の形で全体的に書き改めております。
二つ目のポツでは,我が国の大学に対する社会の理解を深めるという観点から,この調査を一つの契機として,各大学の特色や強みを生かした教育研究活動を積極的に発信していくことが必要であるということを追記しております。
続きまして,2ページ目,論点2の調査対象と方法について,一つ目のポツ,試行実施の間は短期大学を含めた全大学に対して参加の意向調査を行い,意向があった大学を調査対象とする。本格実施の際には,全大学が参加できるような調査設計となるよう改善を図るということを整理しております。
また,二つ目のポツは,調査対象の学年,実施時期についてです。第2回の試行実施では,大学は2年生と最終学年の学生を全員,最終学年は4年生,医療系であれば6年生という考え方でございます。新たに対象とする短期大学は,最終学年の学生全員を対象とするということを考えてございます。最終学年の回答率がどのような状況になるかは,第2回の試行実施で明らかになるかと思いますので,この第2回の試行実施の結果も踏まえて本格実施の対象学年について検討していきたいと考えております。
また,実施時期については,第1回試行実施と同時期の11月頃を考えてございます。対象学年や実施時期につきましては,来年度の試行実施も踏まえ,より適切なものを設計していきたいと考えてございます。
続きまして,3ページ目を御覧ください。調査方法については,学生に対して分かりやすく周知するための方法を,大学へ例示する,質問項目を確定する前に,大学,短期大学,また学生団体の声を聞く機会を設けるということを整理しております。そういった機会を設ける際には,本会議の委員の大学の学生さんにも御協力をお願いできればと考えてございます。
続きまして論点3の回答方法については,大きな変更点はございませんので,省略させていただきます。
論点4の質問項目については,後ほど資料4をお示しして御説明させていただきます。
論点5の公表内容・方法については,議論のまとめを御覧ください。公表方法は,試行実施の段階では例えば学部分野別と学部規模別の組合せというような形で,第1回の試行実施と同様の公表方法を維持するということをお示ししております。
また,集計をする際の基準については,5ページ目を御覧ください。第1回の試行実施では,回答率10%以上かつ有効回答者数が30以上という条件を付しておりましたが,今回は割合にとらわれず,有効回答数に着目してはどうかということを御提案させていただいております。この考え方については,後ほど資料3に基づき,御説明させていただきます。
また,丸3の公表単位についてです。試行実施の段階では全体の集計をお示しするということを考えてございますが,本格実施では各大学の学部単位で調査結果を公表すること,その際,結果の数値の羅列だけではなく,本調査の結果の見方等と併せて,結果に関する各大学の取組を記載することで,単なる順位づけではなく,各大学の強みや特色の発信につながるよう,特段の工夫を行うこととする。また,実際の公表に当たっては,試行実施の結果も踏まえながら検討をしていくということを整理してございます。なお,試行実施の段階においても,各大学の自主的な公表は認めることとしております。
次に論点6の既存の学生調査との整理・調整についてです。ここは少し中期的な課題になるかと思いますが,本格実施に移行する段階では例えば既存の調査の質問項目を全国学生調査の項目に置き換えて実施していただくことなどによって,全国共通性を確保しながら,調査負担を減らす方法も検討するということを整理させていただいております。
最後に論点7の調査の実施主体については,基本的には文部科学省が実施することとし,この全国学生調査が定着した段階で,どのようなやり方があるかを検討するということで,長期的な論点として,整理させていただいております。説明は以上でございます。

【河田座長】 ありがとうございます。それでは,今日御議論いただきたい点の,一つ目は,第2回試行実施の質問項目について,二つ目として,集計,公表の基準があると考えます。その他の論点については,最後にまとめて議論する時間を取りたいと存じますので,まず,集計基準について議論をしていきたいと考えます。
それでは事務局から,資料3について,御説明願いたいと思います。よろしくお願いいたします。

【本間技術参与】 それでは,事務局の本間から,資料3について御説明申し上げます。2ページ目を御覧ください。 まず,第1回試行調査における設問内容と回答状況について,改めてまとめております。ページ左側を御覧ください。令和元年度試行の全国学生調査は,大問5つ,計36項目の設問から構成されておりました。
問1,問2,問4は,授業や経験,その役立ちについての内容で,主に4段階評価のアンケートとなっております。問3については,学生の生活時間を時間枠別で,問5は,受けた授業形態を割合評価で調査しております。
内容は,背景色を分けてお示ししているとおり,大学側の努力をどのように感じているかについてと,その結果としての学生自身の経験や意識がどの程度であったかを調査しております。いわゆる大学教育における刺激と反応の両方に焦点を当てたものになっております。
学生の具体的な回答内容の分析を通じて得られる傾向については,3ページ目で詳しく御説明させていただきたいと思います。ページ右側上段を御覧ください。本年6月のプレスリリース時と同様の内容ですが,本試行調査では,学生の回答状況に大きくばらつきがあったため,対象大学や学部など全てを満遍なく調査できておりません。データの代表性を確保するため,試行調査では,学部単位で有効回答数が30以上,かつ有効回答数が10%以上であること,又は有効回答率が50%以上であることを,集計基準の条件として設定いたしました。その結果,集計基準を満たしたのは,420大学,計10万人強であり有効回答率は37%だったという結果になっております。
ページ右側の中段のヒストグラムは,その集計基準合致学部の数を学部規模別にまとめたものです。ボリュームゾーンが100人から300人程度の部分にあることが見て取れるかと思います。
大局的な傾向といたしましては,下段に示しましたとおり,学部規模が小さいほど回答率が高く,また,学部規模が大きくなるにつれて回答率が低くなっているということでございます 3ページ目を御覧ください。ここでは本試行調査の回答データから,どのようなことが読み解けたのかをまとめたものでございます。
具体的な作業といたしましては,約10万2,000人分のアンケート調査に基づき,調査における36項目同士の相関傾向を分析いたしました。
先にページ右側上段を御覧ください。赤から青への濃淡を添えて示した表は,今申し上げた全36項目間の相関行列となります。ここからは二つの大局的な傾向を読み解くことができます。
まず,各設問項目同士は,こちらの表でほとんどが青であることからもお分かりいただけますとおり,そのほとんどが正の相関関係であることが判明いたしました。負の相関関係は,講義形態の割合に調査した,問5の一部のみにとどまっております。
もう一つ,重要な傾向といたしまして,問1,問2,問4は,大問を超えても互いに相関が強い一方で,生活時間について調査した問3,講義形態について調査した問5は,ほかの設問と無相関の傾向が見られました。引き続き分析は続ける必要がございますが,現段階では,学生の生活時間や,大学の講義形態が学生意識に与えている影響というものは確認されていません。
それでは,ページ左側を御覧ください。ここでは顕著な相関関係が見られました,問1,問2,問4を対象にした分析をより詳細に行いました。具体的には,各項目のうち,相関関係がプラスマイナス0.4を超える項目間について線を結ぶことによって可視化を行ったものです。
先ほど,アンケート内容が,大きく分けて,大学努力と学生意識の二つに大別できると申し上げました。そこで,左側に大学努力,右側に学生意識に関する項目を配置し,両者の対応関係が見やすいようにいたしました。なお,細い線が0.4以上0.6未満の相関関係,太い線が0.6以上の相関関係となっております。
この図から,茶色の点線で示しました,核となる設問関係が存在することが確認できます。例えば,学生意識全体へ大きく影響を与える大学努力は,問1-1,授業意義の説明と,問1-2,授業の教え方の工夫だという,自然な知見が得られます。ただし,授業意義の説明と教え方の工夫以外の項目が学生意識へ影響を与えないというわけではございません。TAやレポート返却,質疑応答の機会というものは,授業意義あるいは教え方を支えている構造というものが確認できます。丁寧な授業努力は学生意識へプラスの効果をもたらすということがここで確実に確認できます。
学生意識の方に目を転じていただきますと,大問4が主に各項目として並んでおり,かつ,それぞれが高い相関関係にあることが見て取れます。ただし,その中でも,外国語,統計,人々と協働する力,異文化理解という項目については,やや独立しているという傾向が確認できました。現状では,主に授業と学生能力との関係が強く出ておりますが,今後,設問を修正していくことにより,より多角的な観点から学生意識が調査できるのではないかと期待されます。項目検討の御参考になれば幸いです。
ページ右側中段を御覧ください。飽くまで参考分析とはなりますが,各国立大学のおおよその偏差値を民間インターネットサイトより収集した上で,それらと設問平均値との相関を分析いたしました。ここで,学生の知識・能力の習得に関する問4に着目いたしますと,ほとんどが無相関であることが判明いたしました。このような学生調査のときには,どうしても高偏差値の学生ほど意外に自己評価が厳しいということが懸念されますが,少なくとも今回の調査の範囲ではそのような傾向は確認できていなかったということは好ましいように思われます。
以上が試行調査アンケートデータの相関分析から得られた知見となります。
4ページ目を御覧ください。ここからは,データの代表性を確保するための新しい集計基準の御提案をさせていただきたく考えています。
具体的には,左上に水色の枠で示しましたような,新しい集計基準を御提案させていただきたく思います。大きな変更点としましては,有効回答率が10%以上という試行調査での条件を廃止し,対象学部・学年の学生数に応じて,60人以上80人未満ならば有効回答者数が30人以上,80人以上200人未満ならば40以上,200人以上600人未満ならば50以上,600人以上ならば60以上という具合に,有効回答者数を段階的に設定いたしました。なお,60人未満の小規模学部・学年を想定した有効回答率が50%以上という基準は,試行調査のときから変更ございません。こちらを御提案させていただく根拠といたしまして,統計理論に基づく分析と,数値シミュレーションの二つを実施いたしましたので,そちらについて,補足説明させていただきます。
まず,ページ左側にお示ししました統計分析から明らかになるポイントについてです。ここで,統計理論として具体的に検討いたしました内容は,標本平均の安定性について議論するための母平均の信頼区間について分析を行いました。このようなアンケート調査において,ある程度のデータが必要不可欠な理由は,調査結果を安定させるということにございますが,その揺らぎ幅に関する理論式から,対象学生数に応じて必要な有効回答者数を計算することができます。
そちらをグラフでお示ししましたのが,左下のグラフ,紫色の線となります。ここでお示ししましたのは,信頼区間幅がプラスマイナス0.2となる曲線ですけれども,おおよそ60人程度に収束するような曲線となっており,一定以上の回答学生数が得られれば,学部規模によらず,データが安定するということを意味しております。
黒い線でお示しした現行基準では,回答率10%を下限として必要な回答学生数が上昇し続けており,理論的なグラフと大きく異なっていることから,有効回答率10%以上という制約は不要ではないかという御提案をした次第です。
これに対し,今回御提案させていただく集計基準では,段階的に必要な回答学生数を設定しており,理論式における緩やかな上昇を適切に再現しております。なお,必要な回答学生数のバランスを勘案いたしますと,この推計値プラスマイナス0.2程度の誤差が生じる可能性はどうしても否定できず,結果の公表に当たっては,この誤差への言及も必要だと認識しております。必要な回答学生数と誤差とのバランスについては,5ページ目,参考資料にまとめてございますので,必要に応じ御参照ください。
以上の統計理論の正確性については,具体的な数値シミュレーションでも併せて検証しております。ここでは,実際の10万人のデータから各設問について仮想回答を,実際に学部規模で準備した上で,ランダムに抽出するという繰り返し実験を行い,調査の揺れが,先ほどの理論的な信頼区間内に収まるということを確認いたしました。一例として,900人規模の大規模学部におけるデータの揺れを検証いたしましたが,回答率が7%程度で,10%未満でも安定しているということが確認できます。
ページ右上は,仮に,第1回試行調査で,提案基準を適用した場合の回答状況の集計となっております。現行基準と比較していただきますとお分かりいただけますとおり,提案基準は現行よりもやや厳しい基準となります。すなわち,提案基準では,特に100人から300人程度の学部・学年におけるボリュームゾーンにおける回答率を上げることが重要であることが考えられております。資料の説明は以上となります。

【河田座長】 ありがとうございました。本間技術参与から,きちんとした根拠を示しながら御説明いただきました。何か御意見,御質問がありましたら,手のマークを押していただきたいと思います。それでは清水委員,どうぞ御発言ください。

【清水委員】 ありがとうございました。大変分かりやすく,明快に分析されていると思います。3ページの分析ですが,前回の試行実施では,学生意識に大きな影響を与えているのは,授業意義の説明と教え方の工夫という結果でした。私はこれは非常に重要な結果だと思っています。授業意義の説明というのは,制度的にはシラバスのことで,教え方の工夫は,FDということになります。ですから,前回の調査結果から,制度としてはシラバスとFDが重要であるということが導かれるのではないかと感じました。以上です。

【河田座長】 教え方すなわちFD,そして授業の意義をきちんとシラバスで書くということが大事だということですね。両角委員,どうぞお願いいたします。

【両角委員】 ありがとうございます。 問1,問2,問4が互いに相関があり,問3,問5の相関がないというのも,今まで分析してきた結果と整合的で,大変分かりやすい整理だと思いました。集計基準の提案も,私はこちらでいいと思いました。御指摘のように,100人から300人程度の学部では,やや少ないのではないかという気になっていましたので,今回こうやって示していただいて,前回試行実施の有効回答率10%というところの説得力がないなと思って聞いておりました。感想ですが,以上です。ありがとうございます。

【河田座長】 田中委員,いかがでしょうか。

【田中委員】 ありがとうございます。非常に興味深い分析をしていただいて,勉強になりました。データの公表の際,資料3の3ページ目に授業の意義と,学生の物の見方,分析力や文章力,授業の工夫とが,学生の意識に相関が高いということを言っていただくことは大学にとっても非常に有効でありますし,社会,企業の方々にとっても,どういうことが求められているかということは分かると思います。
メディアの報道の仕方についても前々から日本私立大学連盟の中で,各大学の学長が心配されていましたが,満足している学生の割合を大学ごとに報道されてしまうと,それが大学の質のランキングのようなことになってしまうという懸念がありました。公表の際もただ数値を出すのではなくて,どういうことをすると学生はどう反応するかということを示していただくということは有効だと思いました。
大学が自らを,評価し,自分たちの弱点を見るということは大事だと思います。ですから,全国的な傾向を示す傍らで,各大学の傾向を個別にお伝えいただくと,大学は自らの弱点が分かると思いますので,大学が自ら反省して,改良していくためには非常にいいと思います。単に数字で全国の大学を並べてしまう形の公表だと,第二の偏差値や人気投票のようになってしまう気がしておりますので,資料3の3ページ目の分析というのは非常に意義が深いと感じました。
また,問5の授業のサイズが,ほかの項目と相関がほとんどないということは,大規模授業であると意味がないとか,小規模だといいということは必ずしも関係がないということを示しており,世の中のステレオタイプのイメージとまた異なると思います。またそのことは大学にとって学ぶ点であると思いますので,このような発見を出していただくということが重要だと拝聴していて感じました。以上でございます。

【河田座長】 ありがとうございます。小林浩委員はこれまでお仕事で多くのアンケートをなさってこられたと思いますが,いかがでしょうか。

【小林(浩)委員】 ありがとうございます。特に3ページの分析が非常に印象的で,今まではグラフにして,単純に公表されていましたけれども,これも大学側にフィードバックすることで,大学側の意識が変わって,回収率にまで影響してくるのではないかと思います。
これを分析する際には,全国平均と自大学がどう違うのか,あるいは,学部別に見たときに他学部とどう違うかを,エビデンスベースで対話できるというのが非常に大きいと思います。
この調査は,回収数,私どもの調査でエヌ数と言いますが,どれだけエヌ数が確保できるかがポイントになりますので,こういったことを注視しながら大学側の意識を高めていくところにも使えると思います。是非これを大学側にフィードバックをしていただきたいと思います。

【河田座長】 ありがとうございます。それでは千葉委員,どうぞ御発言ください。

【千葉委員】 心配なところが,問3と問5のところの相関がないということです。相関がない理由がもともと関係ない内容であればいいのですが,問うている内容は本来相関がある内容であるという気がしてなりません。そうすると,質問内容として適切だったかということを検討しておかないと,数字だけが独り歩きしてしまうように思います。
質問項目が,本来一つ一つの授業で聞くべき内容を漠然と大学教育という形で聞いているので,回答する学生側が,的確に回答していないために相関がなかったのではないかということを検討しておかないと,結果だけが独り歩きしてしまう可能性があるので,考えていただいた方がいいと思いました。以上です。

【河田座長】 ありがとうございます。高橋委員,どうぞお願いいたします。

【高橋委員】 高橋です。幾つか確認させていただきたいのですが,4ページ目の提案のところで,今回は統計学をつかって信頼区間の幅の理論値を計算したのが,30,40,50,60という数字になっているということでよろしいですよね。

【本間技術参与】 事務局より補足申し上げます。こちらの紫色の理論値は,基本的には回答数を増やせば増やすほどに,それぞれの学部規模に応じて,だんだんと誤差が縮まっていきまして,最後,プラスマイナス0.2までなる,ちょうど0.2程度になる回答数が何かというものを計算したものとなっております。

【高橋委員】 ということは,今,30,40,50,60はそれで計算したということですよね。

【本間技術参与】 そうでございます。

【高橋委員】 それから,数値シミュレーションの全個票データに基づき学部全員が回答した場合の仮想回答というのは,どのように準備されたのですか。

【本間技術参与】 それぞれの回答の回答率,よかった,あるいは悪かったというものの割合から,それぞれの設問について,90人だったら90個のデータをつくった上で,その90個のデータから,例えば30人を抽出するという実験を繰り返し行って検証いたしました。

【高橋委員】 要するに,90個のデータをつくる部分には元のデータの回答割合に対してそのまま90個にしたということですね。

【本間技術参与】 もともとのデータを使っております。

【高橋委員】 分かりました。ありがとうございます。このような根拠があることは非常にいいことだと思いますがボリュームゾーンの回答率がかなり厳しくなっているので,今後の試行でかなり大きな課題であると思いました。
また,3ページは,今回このように分析していただいたのが大変重要なことだと思いますが,1回の調査で何かを言うのではなくて,千葉委員がおっしゃったように,聞き方によっても様々なことが出てきますので,かなり慎重にやっていただかないといけないなと思っております。以上です。

【河田座長】 ありがとうございました。
次に,質問項目についての議論に進みたいと思います。委員の皆さまより非常にたくさんの御提案を頂き,ありがとうございます。それを事務局で資料4としてまとめておりますので,それについて,奥井課長補佐から御説明いただきます。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 高等教育企画課の奥井でございます。資料4に基づきまして,御説明させていただきます。
まず,事前に質問項目について御意見を頂戴いたしまして,誠にありがとうございます。委員の皆さまからの御意見を踏まえて,事務局で文言の工夫や同種の御意見をまとめるなどの整理をさせていただき,たたき台としてお示ししております。
まず問1はいわゆる授業のことを聞いているものでございます。前回試行実施からの追加又は修正を,赤字で設問の右側に付記しております。
2番は授業内容やその分野を学びたいという意欲が湧く内容だった,いわゆる知的好奇心がかき立てられたものかどうかという問いを追加してはどうかという御提案。また,4番は予習・復習など自主学習がしやすいように工夫されていた。又は自主学習を促すようなシラバスであったかというものを追加してはどうかという御提案でございます。
7番は前回の試行実施からの修正で,「適切なコメントが付されて課題などの提出物が返却された」という設問の語順を入れ替え,「課題等の提出物に適切なコメントが付されて返却された」と,しっかりコメントがあって返却されたかということに重きを置いた形で修正をしております。
問1は,小問10問という整理になっています。
次に,問2でございます。これは大学に入ってからの経験を問う設問でございます。14番は他の学生と一緒に学習する機会があったかという問を追加してはどうかというもの。これは,授業以外で学生と協働するような場を想定してございます。
次に18番は,海外留学・海外研修3か月未満,いわゆる短期の外国での経験というものを追加してはどうかという御提案でございます。
問2は,小問10問という整理になっております。
続きまして,2ページ目の問3でございます。これは前回では問4としてお示ししたもので大問を少し修正しております。前回は,「次の知識や能力を身につけるためにあなたが受けた大学教育は役に立っていると思いますか」という,役に立っているかという聞き方をしておりましたが,「大学教育を通じて次のような知識や能力が身についたかどうか」という聞き方に修正をしてございます。
小問では,23番の文献・資料に,数量データということを追加したもの。また,27番は,前回の試行実施では統計数理という聞き方をしておりましたが,統計やデータサイエンスに修正したもの。29番は,答えのない問題を自分の頭で考え抜く力というものを追加してはどうかという御提案です。30番は,多様な人々の理解を得ながら,というように修正したものでございます。最後に33番は,様々な知識やスキルを組み合わせて一つのもの(価値)を創り出す力,といったものを追加してはどうかという御提案でございます
問3は,小問13問という整理になっております。
続きまして,問4でございます。これは前回の試行実施ではなかった大問で,授業あるいは授業外での経験のほかに,大学全体を通した学びについての質問項目を追加してはどうかという御提案でございます。これまでの大学での学び全体を振り返って,次の項目についてどのように思いますかということで,4段階の選択肢を用意してございます。
この内容につきましては前回試行実施で学生さんから自由記述でいろいろ御意見を頂いているものも少し参考にして,学生自身が知りたいという内容も盛り込んでおります。
小問として34番は,具体的な目標・目的を持って主体的に学んでいるのかどうかを学生自身に問いかけるものです。35番は,大学が卒業までに学生へ求める力,ディプロマ・ポリシーを理解しているのかどうか。36番は,簡潔には大学教育に満足しているのかという設問になるのかもしれませんが,授業アンケートの回答を通じて大学教育がよくなっているのかどうか。37番は,大学全体で学生を成長させようという熱意を感じる,あるいは教員がしっかり教育に向き合っているというような内容。38番は,大学での学びによって成長を実感しているか,少し漠然としておりますけれども,成長実感みたいなものを問うてはどうかというもの。39番は,卒業後に社会で活躍する具体的なイメージを持てているかどうか。最後に40番は,卒業後も主体的に学び続けていくことの大切さを感じているか,生涯学び続ける力や意識を持っているかどうかを問うものでございます。少し文章がこなれていないかもしれませんが,こういった新たな問いも追加してはどうかという御提案でございます。
問4は,小問7問という整理になっております。
続きまして,3ページ目を御覧ください。問5は授業期間の平均的な生活時間を聞くものでございます。前回の試行実施では,生活時間について当てはまる時間数を選択してくださいという聞き方をしておりましたが,それぞれどのくらいですかということで少し学生さんが答えやすいような設問に修正をしております。43番は,前回の試行実施では授業以外の学習という聞き方をしておりましたが,授業以外というと少し分かりにくいだろうということで,予習・復習・課題以外の学習というような書き方に修正をしてございます。
問6は令和3年度限りで想定しているコロナ禍での学生の学びに関する質問ということで,複数の委員から,例えば授業形態のメリット・デメリット,オンラインの学習効果や対面とオンライン授業の割合などの質問項目の御提案も頂いておりますが,様々な状況の変化もあり具体的な設問を今の段階で御提案できておりませんので,本日もう少し幅広い御意見を頂戴できればなと考えてございます。
問7,問8は,学生さんからの自由記述です。前回の試行実施では100字以内という制限をかけておりましたが,学生さんから「100字だと足りない」という御意見もかなり頂戴しておりますので,ここは字数制限を外す,場合によっては,もっと文字数を増やしたいと考えてございます。
最後になりますが,前回の試行実施で授業形態の割合について聞いていたものにつきましては,学生さんから「非常に答えにくい」という意見が多数あったことも踏まえ,第2回の試行実施では外してもいいのではないかという御提案をしてございます。
また,短期大学も第2回試行実施では対象とする予定ですが,質問項目は同じものにするということを想定してございます。先ほど資料3で御説明しました,第1回試行実施の分析を踏まえて,大学の努力の設問ですとか学生の意識に関する設問のバランスみたいなものについても留意した上で,幅広い御意見を頂戴できればと思っております。
質問項目につきましては,本日の会議で決めるものではなく,御意見を頂きながら更に整理していきたいと考えてございます。また,今のところ50問を超える設問になっておりますので優先度が高いものや全国共通で聞くべきものはこういうところだという御意見もいただければ幸いでございます。説明は以上でございます。

【河田座長】 ありがとうございました。今朝,NHKの「おはよう日本」を見ていましたら,茨城大学の島田先生という方が,コロナ時代の大学の遠隔授業について遠隔授業の方が理解度が上がったという声もかなり多かったということを報告しておられました。自分だけが分かっていないのではないか,チャットで質問がしづらい等,の不安感も調査では出ているそうですので,今年限りの質問ですが,コロナ禍の学びの実態についても,参考になる調査が出てきているのではないかと考えております。
では,委員の皆さまから是非御意見を頂きたいと思います。山田委員,どうぞ。

【山田委員】 ありがとうございます。問2に関して,実際の令和3年度に試行実施で,大学4年生と大学2年生を想定しているとすれば,17番,18番の海外留学・研修を4年生は経験しているということはあり得ると思いますが,2年生の場合,コロナが終息もしていないかもしれないということを考えると,1年生のときに経験することはほぼないでしょうし,2年生になってもどうかというので,回答しにくいのではないかと思うところです。
むしろ,海外留学に関しては多くの大学で,いわゆるCOILというようなものに近いかと思いますが,オンライン上で海外の大学との交流を開発して,学生がバーチャルで経験しているということが多くなっているように思います。ですから,海外留学については,2年生の経験する割合が非常に低くなってくる部分であると思うので,少し工夫が要ると感じたところです。
また,問3の33番の「様々な知識やスキルを組み合わせて一つのもの(価値)を創り出す力」というところを最初に読んだとき,非常に高次なものだと思いました。なるほどと思ったのですが,実際に大学の学部生で,価値を創り出すまでを授業で経験するのはなかなか難しいなと思いました。この文言だけで考えたときに,なかなか学生は回答しにくい項目だと思ったところです。実際にバリューを創り出すというのは,なかなか難しいのかなと思ったところですのでここは文言の修正が要ると思います。
次,問4の34番については,実は私どもは同じような項目を国際比較研究で韓国や米国と行ってきており,34番のような項目は,日本と比べると韓国が大変高くなっております。それを韓国の先生とも一緒に分析したところ,具体的な目標や目的というのが,必ずしも大学だけではなく,自分の将来設計とか就職との関係から,ダブルスクール,や語学等の主体的な学びに関係してくるので,非常に高くなるという傾向があります。ですから,この辺りを,自分が学んでいる分野や共通教養教育も含めた,誤解しないような文言の工夫が要ると思いました。
コロナ禍の設問については先ほど申し上げた部分も含めて,今後私も考えてみたいと思います。以上です。

【河田座長】 ありがとうございます。田中委員,どうぞ御発言ください。

【田中委員】 田中でございます。山田委員がおっしゃっていたことと関係しますが,今年度が,やはりコロナでほとんど海外との動きが取れないということがございますので問2の17番と18番については,問6のコロナ関係の質問に移していただいた方がよろしいと思います。
若しくは,経験ではなくて,今後,海外留学や海外研修をしたいと思っているかという意識を聞いていただいた方がよろしいと思います。 もう一つは,今年度の1年生は,大都市圏の大学と大都市圏でない大学で相当の差があると思います。大都市圏の大規模大学はほとんどの授業がオンラインとなっており,後期になって若干対面が始まっているものの,やはり7,8割はオンラインという場合が多いわけです。そのため,今の1年生は,ほかの学年と相当違う意識を持っていると思います。
ですから,来年度の2年生と4年生に聞くということであるならば,来年度の2年生は,特に大都市圏の大学においてはキャンパスをほとんど見ないで1年間過ごしたという学生がかなり多い学年です。そうすると,それなりの質問が,問6で出てくる必要があるのではないか。学年によって違うので,後から学年別に分析して済むかというと,それでは済まないのではないか。大学によって,質問の仕方によっては,質問の意味するところが変わるのではないかという懸念はございます。従いまして,特に問6のところでは工夫していただく必要があると思いました。以上でございます。

【河田座長】 ありがとうございました。服部委員,どうぞお願いいたします。

【服部委員】 ありがとうございます。せっかく調査をしていただけるのであれば,第一として学生の状況を知りたいということがあります。それを受けて大学の教育も変えていきたいと思います。教育の内容・方法を変えていくということに関しては,なかなか学部の先生まで徹底できないこともありますので,このような機会も通じて,学生の意識を知りたいと思い,追加の質問を提案させていただきました。 先ほど山田委員から御指摘いただきました問3の33番ですが,これはいわゆるSTEAM教育も含めたデザイン力の話です。この質問を来年度試行すると,恐らく低い数値が出てくると想像 予想します。デザイン力については,その重要性の理解は進みつつありますが,大学全体で共有できていないように思います。例えば,早稲田大学では,文系学部の入学試験に数学を加えるなど文系と理系との融合,異分野を組み合わせるという取り組みを行っていますが,なかなかできてない大学もある。 まずは,デザイン力が大切だということを学生に意識してもらう。また,教員もこの設問を通して意識していただきたいという思いもありました。今後,日本の高等教育を考えていく上で大切な項目だと思っています。一方で山田委員がおっしゃるように,新しい価値を4年間で作れるかというとそれは難しいと思います。大切なことは,既存の異なるモノやコトを結びつけて,何か新しいものをつくっていくという思考を持つ学生を育てることだと思いますので,その趣旨に添った設問にしていただければ有り難いです。
また,海外留学については,田中委員や山田委員がおっしゃったとおりだと思いますし,コロナ禍に関する質問についても,今後,アフターコロナになったときに,以前の状態に完全に戻ることはないだろうと,皆さん思っておられるわけです。オンライン授業については河田座長に御紹介いただいたように,当初我々が考えていたより教育効果があるということが分かったわけです。しかし,やはり対面にかなわないところもある。ですので,今後ハイブリッドで授業を実施していくときの教育の方向性を定める上でも,現在実施されている教育やオンライン授業についてどのように考えているか,学生の声を聞かせていただくことは重要と思っています。この項目はつくっていただきたいです。
また,少し戻りますけども,資料3の4ページ目の御提案で,対象学部・学生の人数によっての有効回答数の提案についてはリーズナブルで結構と思いますが,ランダムに選んだ学生というのが前提です。少し心配なのは,例えば60人以上80人未満のときの有効回答者数が30人で,大学の方で,調べてみたらまだ20人しか回答していない。でも,何とか調査を有効にしたいとの思いで,10人に個別に声をかけていくということもあり得るわけですね。そうしたときに,前提となる無作為ということが崩れる心配があります。
もっと極端なことを考えると,50人ぐらい,大学にとって“良い”学生に声をかけて回答させる。例えば,この調査結果を公表したときに,大学ランキング等にこの調査が使われると,そういうことを考えたくなる大学も出てくるという懸念もあります。また,国立大学に関しては,運営費交付金の配分への影響も懸念されますので,この基準については,公表されたときの影響等を含めて慎重な検討が必要かと思います。以上です。

【河田座長】 性悪説で見れば,そのような大学もあるかもしれないと私も思いますけれど,なかなか難しいところかと思います。奥委員,御発言をお願いいたします。

【奥委員】 質問4について,とても思う,まあ思う,余り思わない,思わないという選択肢がありますが,これまでの大学の学び全体を振り返ってというところで,思わないという選択肢が多かった大学は,その大学の否定にもつながっていかないかという懸念はございます。選択肢の文言が,例えば余り思わない,改善してほしいと思う等,柔らかな文章の方が取りつきやすいと思うのですが,その辺の御検討もお願いいたしたいです。
また,海外留学で短期大学は,3か月以上1年というのはなかなかきつく,私の短期大学でも,短期大学主催の3か月未満の夏季短期留学として,オーストラリアに行っていますが,今年はやはりコロナの関係で実施することができませんでした。令和3年度に限って言えば,17番,18番の設問については少し考えた方がいいと思いますし,コロナ禍の中でという観点も入れてもよろしいのかと思いました。
令和3年度限りの質問項目ということであれば,オンライン授業のメリット,デメリットというのも,質問項目あるいは自由記述として入れてもいいのではないかという気はいたしました。オンラインのよさというのもありますけれども,やはり対面がいいという学生も半数以上おりましたので,メリット,デメリットを,自由記述にしても書かせる設問を取った方がいいのかなと思いました。
私の短期大学は個々に,入学時の学生アンケートを採っていますし,また,同じ学生の卒業時のアンケートも採っていますが,改善してほしいという点ということであればいいのですけども,この学校を勧めたくない点という質問項目をつくった教員がいまして,その質問項目はやめた方がいいということで,結局やめることになりました。やはり質問項目によって,受けとり方が変わってくることもあると思いますので,特に問4はもう少し検討する必要があると思いました。以上です。

【河田座長】 ありがとうございました。高橋委員,どうぞ御発言ください。

【高橋委員】 まず,問3の23番の「文献・資料・数量データを収集・分析する力」について,文献・資料を収集・分析する力と,数量データを分析する力は,かなり異なる能力を聞いているので,これはダブルバレルで質問項目としては余りよくないと思います。
だから,数量データは27番で見ることにして,文献・資料を収集・分析する力としておいた方が,学生は答えやすいかなと思います。文献・資料を収集・分析はできるけど,数量データの分析は,余り得意ではないという学生とかが答えにくいと思いますので,その方がいいと思います。
また,コロナ禍の設問は随分考えたのですが,例えば11月に施行実施するとしても,来年度の状況が今,全く分からないので,この項目を現段階で考えるのは非常に難しいと思いました。 あとは,対象学年についてですが,皆さんの御意見のとおり来年度の2年生は非常に特殊な学年だと思います。今まで全く大学教育を受けてない学生に,大学も全くやったことがない教育を行った学年なので,その学年を対象とするのは非常に注意しないと難しいという気がしています。
今回は2年生と4年生に対して同じ質問項目で実施すると聞いていますが,同じ項目で実施していいのかも含めて考えないといけないと,今の議論を聞いていて思いました。
先ほどの服部委員の御発言で資料3の30人の回答だったら集められるという話について,前回試行実施の実施方法は,基本的に学生に大学の方からURLを周知して,学生が自分のスマホで答えるということなので,大学がきちんとその対象学生全員にURLを伝えるということを義務づけると,大学側で特定の学生に強制できないと思いますので,そこまで心配しなくても大丈夫だと思いました。以上です。

【河田座長】 ありがとうございました。それでは,濱中先生,どうぞ。

【濱中オブザーバー】 濱中でございます。細かい文言はいろいろこれから修正があると思いますが,試行調査のときから一番大きく変わっているのは問3です。昨年度試行実施では「大学教育が役に立っているか」という形で尋ねていて,学生さんから「回答しづらい」,委員の先生からも,「役立っていないだと全否定になる」等の御意見があって,「身についたと思いますか」に変更されたのだと思うのですが,実は,基になった国立教育政策研究所や東京大学の調査でも,「役に立ったか」と,「身についているか,自分の能力が十分か」というのを両方尋ねていますが,回答傾向は結構異なります。
「役に立っているか」というのは,先ほどの事務局まとめでは「学生意識」になっていて,学生の意識であることは間違いないですが,やはりそこには授業に対する学生の評価が入っているのです。一方,「自分の能力が十分か」というのは能力の自己評価で今現在自分がどうであるかという,学生個人の特性を尋ねる質問になっていて,ゆえにかなり結果が変わります。そこのところを考えて,去年は役に立っているかという質問の方を採用したのですが,本当にこれを「身についたと思っていますか」に変更して大丈夫なのか。更に申し上げると,自分の能力に対する自己評価の方は更に項目間の相関が高くなります。
主成分分析と呼ばれる方法を使うと,恐らく外国語以外はほぼ一主成分にまとまってしまって非常に相関が高くなるという結果になることが予想されます。もう一つ,さりげなく変わっているのが,去年は「大学教育が役に立っているか」だったのが,「大学での学びを通じて」に修正されています。大学での学びの方が恐らく広い範囲を捉えますので,大学が授業やプログラムを通じて提供したもの以外に,学生生活全般を通して身についたかという質問にして本当によいのか。自身が所属する大学に対する評価を学生から聴取するという目的からすると,少し乖離(かいり)してしまうというか,教育以外を含んだ学生生活全般を尋ねることになってしまうので,本当にそれでいいのかというところも少し議論が必要だと思います。以上でございます。

【河田座長】 ありがとうございました。それでは,小林雅之委員,お願いいたします。

【小林(雅)委員】 ありがとうございます。先ほど高橋委員がおっしゃったダブルバレルの質問というのは私も全く同じことを感じています。
また,問1の4番は二つの案が出されていて,「自主学習がしやすいように工夫されていた」というのと,又はシラバスという部分で,シラバスの方が具体的でいいですが,非常に包括性がなくなってしまいます。このような場合にどこの範囲で考えるかというのは非常に重要で,学生は直感的に答えますので,シラバスだと分かりやすいですが,シラバスのことしか分からないということになりますので,その辺りは,目的をどう考えるか,シラバスのことを聞きたいのであればシラバスでいいですけれど,それだけでいいのかということを非常に感じます。
それから,濱中先生のコメントはもっともですが,私は,身についたに変えた方がいいというふうに意見として申し上げました。これは今回の対象は4年生ですので,2年生にとっては少し問題があると思いますけど,やはり自己評価という形で聞いておいた方が学生も答えやすいし,「役に立った」という言い方がどの程度信頼できるかというところは,今までの分析からすると少し疑問がある。「身についた」で1回やってみて,それからまた分析して考えればいいと思いました。
また,多くの委員がおっしゃっているコロナの問題は,オンライン授業ということで捉えられていますが,オンライン授業といっても例えばZoom等を用いた対面授業に近いような双方向授業からオンデマンド方式でやっている授業まで様々にあって,デメリットをきちんと見るのは非常に重要だと思いますが,本当に学生にとってどうなっているのかは調査して細かく見ないと分からないと思います。文部科学省の方でも調査されていますけれど,これは機関調査なので,学生の一人一人の反応までは押さえられていないのですね。ですから,文部科学省の調査を基本にしながら,もう少しきめの細かな調査をすることが必要だろうと思っています。以上です。

【河田座長】 ありがとうございました。両角委員,どうぞ御発言ください。

【両角委員】 ありがとうございます。もう既に何人かの委員がおっしゃいましたが,重要なので重ねて申し上げます。
一つは,本当に2年生を対象に試行実施するというのは決定でしょうかという確認でして,2年と4年で今後やっていきたいという意図は分かりますが,最初からほとんど対面がなく始まった2年生の分析の解釈などが難しいというところは懸念をしています。
二つ目は,先ほど高橋委員がおっしゃった,この数量的能力とかデータセンスのところも全く同感で,23番の方は削った方がいいと私も思いました。
さらに,問3の濱中先生と小林委員がおっしゃったところについて,私も確かに,東京大学でやっている調査だと,「授業が役に立ったか」と「自分の実力が十分か不十分か」で全く違う傾向があるのは承知しているのですが,今回,身についたかどうかで1回チャレンジしてもいいと思いました。身についたかどうかで,先ほどの傾向とどう変わるのか,例えば,相関の高さも,授業がどう役に立ったかという聞き方をしているからすごく高かったという面もあるので,学習成果を見るという主観的なものですけれど,身についたという聞き方がいいのかなと思いました。
33番については,服部委員がおっしゃった意図も分かりますが,私もやはり若干高度な気がしまして,価値をというところまでがちょっと行き過ぎなのではないかと思います。例えば卒業研究や卒業論文は,様々な知識,スキルや学んだことを,統合して発揮するというプロセスだと思いますが,そういった統合力をつくるというところで,「一つの価値を創り出す」まで行くと,教員でもなかなかできていない人が多いことを学生に聞くのかという感じがいたしました。
また,問4は,これまでの大学での学び全体を振り返ってということで,アルバイトやサークルなど,いろいろなものを全部含むイメージで捉えているのかと。学生本人がサークルやアルバイトの時間をどこまで見ているのかを留意する必要がありますが,私自身はこの新しい問4はすごくいい設問だと思いました。
基本的にはいいと思いますが,39番の「卒業後に社会で活躍する具体的なイメージを持てている」というので,どこまでそれを持てているのか。具体的なイメージはないけれどやれそうだ,あるいは,大学教育を通じて社会や現実の在り方への理解が深まってきている,といったものの方が大事なのか等,この辺りの細かい設問は,今後も検討していくと思いますが,若干気になりました。
一つ戻りますと,問1の4番ですが,学習時間とか,元の問3と問1,2,4の関連がないというのは,そもそも予習や復習など,例えば授業外の学習をするようにといったことが求められてないからやらないという意味で,しやすいものになっていることと,やることが求められたということは違う気がしています。具体的に授業外にどれくらい課題をやるように言われてたかを聞いてもよいのかなと思いました。
あとは,コロナについては,先ほどの高橋委員や小林委員の意見と同じで,なかなか今,想像するのが難しいということと,かなり細かいところまで聞いていかないと,メリット,デメリットと言っていることの解釈ができないので,今回どこまでやるのかについては,もう少し考えてもいいというか,本当にやるとしたらかなり聞かないと,余り意味のある調査にならないのではないかと思いました。以上です。

【河田座長】 ありがとうございます。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 事務局でございます。今,複数の委員から対象学年どうするかという御意見が多く出ていると思います。後ほどまた,資料2の論点2の対象学年や時期で,改めて御意見を頂戴できればと思っております。2年生を対象で実施ということで提案しておりますが,まだ決定したものではないということを補足させていただきます。

【河田座長】 それでは,小林浩委員,どうぞ御発言を願います。

【小林(浩)委員】 2点あります。1点目は先日来話題になっているディプロマ・ポリシーについて,今回問4の35番に大学が卒業までに学生に求める力を理解しているとなっていますが,これは少し悩みどころで,問2で,大学に入ってからの経験ということで,大学から学生に求める力を提示されたとか説明されたという設問を入れておいた方がいいと思いました。それが先ほどの分析の結果の授業の意義というところとつながっているということであれば,そういった説明が最初にあってしかるべきと思った次第でございます。
2点目は,問3の役立つ力,身につく力ですが,社会や企業から見たときに,役立ったかどうかというのはやっぱり社会に出てから役立ったかどうかを判断すると見てしまいますので,統計上の問題はあるかもしれませんが,「身についたかどうか」の方が学生の主観的な点で結構ですし,やはり学習成果を見ていく方がいいのではないかと思っております。以上でございます。

【河田座長】 ありがとうございます。岸本委員,どうぞ御発言ください。

【岸本委員】 ありがとうございます。まず,短期大学の立場として,海外研修のことを前回お話しさせていただき,その点については委員の皆さま方が既に話されているとおりだと思います。私の短期大学も,今回も昨年も機会を逃してしまい,学生にとっては非常に残念なことでもありました。そういった意味で,コロナ関係のところでも結構ですので,別項目で,せめて意欲ぐらいのことについては触れていただいてもいいのかなと思っています。
それから,問4の36番ですけれども,大学教育がよくなっているという表現が非常に学生にとって分かりにくいと思います。例えば,改善につながっているとか反映されているとか,あるいは,この授業アンケートの回答が有効と思っているなど,の表現の工夫があってもいいと感じました。
もう1点,33番ですけれども,これは少しハードルが高く,難しい,学生がどのように判断して回答していいのか,かなり迷うのではないかと感じました。ただ,全体的な項目としては,大学4年生での回答,短期大学での回答,それぞれ特徴は出るかと思いますが,共通でいいのかなと感じました。
最後に,これまでの試行と今回はかなり状況が違うため,前回の回答との比較というのは非常に難しいのかなと思っています。先ほどの資料3についての御説明は,非常に参考になりました。以上です。

【河田座長】 ありがとうございました。最後に,清水委員,どうぞ。

【清水委員】 ありがとうございます。私は3ページの米印の項目を,来年度はしないということに賛成です。先ほどもお話が出ましたが,東海大学の教育センターでの20年以上にわたる授業評価のビッグデータの分析や慶応大学のSFCの授業評価の長年の蓄積の分析結果によると,学生による授業評価は信頼できる,クラスサイズによる影響はないということが言われています。講義の形態は,講義よりか演習,演習よりかゼミの方がいいというのは,もう長年のデータ結果が出ていますので,これはもう聞く必要はないと思います。
むしろ影響を与えたのは何かというと,一つは時間割です。例えば1限とか6限の学びでの評価は落ちています。ですから,この調査を教育改善とか政策立案に結びつけるためには,このような過密なその時間割等も浮き彫りにした方がいいと思います。
もう一つは教員です。教員は,若手や55歳以上の教員は授業評価が高くなりますが,その間の先生の授業評価は下がるという結果が出ています。つまり教員による影響は非常に大きい。教員の年齢をどのような形で浮き彫りにさせるかというと難しいですが,それは文部科学省で検討していただきたい。問4は学び全体を振り返ってどう思うかという,割とプラスの面が書いてありますが,非常に過密な時間割だった,あるいは教員の年齢バランスが悪かった等,少しネガティブな項目を入れたらどうかと思いました。以上です。

【河田座長】 今の清水委員がおっしゃった,若手や55歳以上の教員に対する評価が非常に高くて,中間層は低くなる等,教員の年齢差やバランスについて,どのような質問の仕方がいいかお考えがあれば,教えていただければと思います。

【清水委員】 そうですね。東海大学で毎年ベストティーチャーになる人を,曜日や時限の,時間割によっていろいろ位置を変えてやったことがあります。ベストティーチャーでも,その曜日あるいは時限によって授業評価の結果が違うという面白いデータもあります。
ですから,日本の過密時間割では1限や6限に組み込まざるを得ない。そういうものを今後の教育改善に活(い)かすためには,時間割や先ほど申し上げた教員の年齢ですね。多くの大学では若い先生が教養教育を担当したり,中堅の一番研究に脂が乗っている先生に多くの教育負担がかかったりしています。そうした現実を反映した結果だと思います。

【河田座長】 ありがとうございます。それでは最後に,千葉委員どうぞ御発言ください。

【千葉委員】 簡潔に4点申し上げます。
1点目は,アンケートは経年で積み重ねたデータになっていくので,経年の視点,考えを入れておかないといけないなというふうに思っています。だから,今年コロナだからということで項目を変えるのではなく,今年変わったデータが出れば,コロナの影響という解釈はできると思います。
2点目は,ネガティブなデータが出ることも認めながらアンケートを採らなくてはいけないだろうなと思っています。
3点目が,19番の,自分と異なる国という表現が,今,国籍,在留資格が様々なので,配慮した言葉にしなくてはいけないと思います。
4点目は選択肢に関してですが,「非常に」という言葉に対して,最後のところは「全く」や「ほとんど」という言葉を入れるべきではないかと思いました。

【河田座長】 ありがとうございました。今日もまたたくさんの有益な御意見を頂きました。今日の御意見を踏まえながら,事務局で質問項目を再度整理させていただき,改めてまた御確認いただきたいと思っております。
それでは,その他の論点,論点2の調査対象・方法,論点5の公表の内容・方法について御意見をいただければと思います。山田委員,どうぞ御発言ください。

【山田委員】 すみません。論点3の回答方法についての議論のまとめの2について,外国人留学生や諸外国の調査との比較を念頭に,英語表現を行うこととするとございます。これは留学生を対象にということも意識していて,よろしいかと思いますが,諸外国の調査との比較をする際に難しい問題があって,私自身も解決できてないところですが,例えば中国や米国と同じ項目で意識の部分を調査した場合,日本人の学生はやはり,全体的に20%ぐらい低く自己評価します。これは私どもの大学で社会心理学を専門にされている先生にもお聞きしたとき,やはり日本人の成人も同じ傾向が出てくるところです。
つまり,1,2,3,4というような項目で答えた場合,あるいは5というのを入れた場合,米国や中国人の学生は,5をマークする傾向がかなりございます。日本人は,高くても4です。これは私の課題でもございますから,自分のゼミ生20人に,どこにマークするかということを聞いたときに,やはりほとんどの学生はやっぱり4,3のところに行ってしまうと答えました。その理由を尋ねると,日本人的な文化価値もあるのですが,どうしても,次はもっとこうしなければいけないというような発想から減点主義で自分を評価してしまうということを20人中15人が答えました。
ですから,例えば英語で公表されたときに,その辺りの説明はしておくべきかと思っていて,それが,日本は米国や中国と比べると低いというような独り歩きしないための数値も,最初から視野に入れておいた方がいいと思っています。

【河田座長】 そうですね。ユニセフの「子供の幸福度に関する調査」という調査があって,たしか38か国中,日本は37番目というブービー賞ぐらいのほぼ最下位でした。やはり山田先生の言われる傾向はあると私も考えます。私は1980年に2歳,4歳,6歳の子供を連れて,在外研究でアメリカのイェール大学に行ったときに,年配の女性で保育園と小学校の両方のアドバイザーの方がおられて,日本人の親は子供を,駄目だ駄目だと言って育てる,とおっしゃっていました。例えば2年間ピアノをやっていて,かなり弾(ひ)けているのに,「2年間やっているけど,ここまでしかできない」と言う。だけど,アメリカ人の親は「うちの子は,2か月でもこんな上手に弾(ひ)けるのですよ」,と褒めて表現する。だから,アメリカで子供を育てていくには,絶対に低く低く言ってはいけないと。褒めて褒めて育てなさいという助言をしてくださいました。
日本では小中高校時代からずっと,余り褒められないで大学に進学している学生が多いですから,今,山田委員がおっしゃったように,評価が3とか4が多くて,5はなかなかつけないという傾向も出てくるかと推察します。私は,大学生活で幸福度をどの程度感じているかという質問項目をどこかに入れてほしいと思っているぐらいでございます。小林浩委員,御意見をどうぞ。

【小林(浩)委員】 ありがとうございます。今日の参考資料にも入っていますが,11月25日の中央教育審議会の質保証システム部会で,かなりこの学生調査の話題が出ておりました。この会議は,質保証の国際通用性というテーマで議論が進められたのですが,その中で,イギリスの,ナショナル・スチューデント・サーベイが紹介されて,日本でもこのような形で,質保証の一つとして学生調査を使っていきたいというような意見が複数の委員から出ておりました。これも各大学,ばらばらにやっているものをきちんと,全国の共通項目と大学の独自項目を設けて,間接評価も含めた形で,質保証の一つとして学生調査を使っていこうという議論が出ていましたので,今回の話にうまくつなげられればと思っております。以上でございます。

【河田座長】 ありがとうございました。現在,中央教育審議会には質保証システム部会という部会があって,日本学生支援機構の吉岡知哉理事長を部会長として議論が進められていますので,今,小林委員がおっしゃったように,その部会とも連携しながら議論を進めていきたいと思っております。それでは,田中委員,どうぞ。

【田中委員】 田中でございます。資料3の4ページ目,数量分析のところですが,この分析というのは基本的にはランダムサンプリングの場合に出てくる議論だと思うのですね。有効回答数と理論値の考え方は,サンプルがランダムでないと,こういう結果にならないのだと思います。
それで,サンプル数が多い中でランダムに出てきたときには非常に安定するわけですけども,母集団がすごく小さいときに,サンプルが大きくなると歪(ゆが)むということもございますから,そこのところも気をつけていただく必要があると思って聞いていました。どうも文部科学省の御説明では,サンプリングの仕方は第1回と同じことをおやりになる予定だと感じております。つまり,セルフ・セレクション・バイアスがあるサンプルですよね。QRコード等を出して,興味のある学生がこれにクリックして答えなさいというやり方ですから。そうしますと,不満がある学生であるとか,逆に熱狂的に大学が好きな学生とかは,積極的に答えるわけですけれども,特に強い意見のない学生は答えないというようなサンプルになる可能性が高い。
これは,ラーニングマネジメントシステム,ムードルなどを入れている大学であれば,学生のメールアドレス全部にメールを送ることできるので,学生のメールアドレスをランダムに選んだ上で,質問票を送ると良いと思います。ただし,そうすると,今度は調査会社がその個人情報とかメールアドレスを知ってしまうということになります。それに対しては守秘義務契約を結ぶ等して,絶対に目的外利用はしないという契約を結ぶこともできると思いますが,いかがでしょうか。手間がかかっても,本来であればやっぱりランダムサンプリングを取るべきだという気はしております。
もう1点,やはり大学2年生を対象にするということが独特であるということですが,だからよくないとは言えないと思っています。令和2年度というのは非常に特殊な年でございまして,社会中がコロナ禍で非常に被害を受けている。この経験を,大学教育を全く知らない,対面教育を全く知らない学部生がオンラインでしか授業を受けてない経験をしているというのは恐らく今年しかないのですね。来年はもう少し変わるだろうと思います。高校での対面教育というのは多くて40人,若しくは30人ぐらいで授業を受けてきている。対面教育というのはそういうものだと思っている学生が,大学で対面教育を受けられないというのが今年の状況です。ですから,対面教育を300人とか500人教室で受けるということの経験がない学生が今オンラインだけ受けています。
この子たちの感覚はやはり独特のものだと思いますが,これを令和3年度に聞いておかないと,恐らく二度と聞くことはできないので,このひどい目に遭っている学生たちの気持ちを聞いておく必要はあると思います。経年の変化が大事だということは御指摘のとおりですが,それとは別の視点からこういう歴史的にもう余り起こらないようなことを調べておかないと,後でどういうネガティブなことが起こったかということもよく分からなくなると思います。ですので,質問項目が増えてでも,コロナの影響とかオンライン授業については聞いておいていただいた方がよろしいと思います。
さらに,一般の世論調査では,「非常に」とか,「全くない」という言い方はあまりしてなくて,例えば,「そう思う」,「ある程度思う」,「余りそうは思わない」,「そうは思わない」とか,「よい」,「ある程度よい」,「余りよくない」,「よくない」とか,そういう表現が多くて,「非常に良い」というような強い表現を使わないのが一般的です。その方式で,日本では社会調査の有効回答の率が上がっていると思います。日本では,ベリーグッドという言い方をすると,もう3%とか,7%切るような少ない回答率になります。ですので,私どもが世論調査をやるときのワーディングとしては,「非常に良い」は無しにして,「良い」と「どちらかといえば良い」と「どちらかといえば悪い」と「悪い」というような表現をしてまいりました。非常にテクニカルなことですが,その辺りのワーディングのことも御研究いただければと思います。

【河田座長】 ありがとうございます。やはり質問の文言は極めて大事かと思いますし,いい御意見を頂いたと存じます。
それでは,最後に先ほどお話のあった中央教育審議会大学分科会質保証システム部会について,堀家高等教育政策室長補佐から御説明をお願いいたします。

【堀家高等教育政策室室長補佐】 高等教育政策室の室長補佐の堀家でございます。今,御紹介いただきました中央教育審議会大学分科会質保証システム部会について,参考資料1と参考資料2を基に,簡単に御説明いたします。
まず,参考資料1でございます。一番上の検討の背景の部分でございますが,18歳人口の減少や産業構造など,社会・経済環境が大きく変化しているところでございます。大学教育に対する期待が高まっている中で,大学が特色を発揮し,それらの変化に対応し,大学教育の質を向上させていくことが必要になってございます。
こうした背景を踏まえまして,中央教育審議会におきまして,平成30年11月に「2040年に向けた高等計画のグランドデザイン(答申)」(以下,「グランドデザイン答申」という。)をお取りまとめいただきました。こちらの答申が現在の高等教育行政に関する各種の施策の大きな羅針盤となっている状況でございます。「グランドデザイン答申」の中では,「教育の質の保証と情報公表-「学び」の質保証の再構築」に係る具体的な方策といたしまして,全学的な教学マネジメントの確立や,学修成果の可視化と情報公表の促進と並んで,教育の質保証システムの確立について提言がございました。
また,「グランドデザイン答申」後の状況変化といたしまして,今般の新型コロナウイルスの感染症の影響というものもございます。こうしたことを受けまして,大学教育は抜本的な変化が求められ,オンライン教育をはじめとした新たな在り方に向けて大きな転換期に入っていると申し上げることができます。
このような状況を踏まえまして,大学の将来像を見据え,平成15年度以降,国の事前規制から大学セクターによる自己チェックへと大きく転換した現行の質保証の仕組みを検証するとともに,時代に即した質保証の在り方や,大学設置基準の見直し等について審議を行っていただくべく,中央教育審議会大学分科会質保証システム部会を設置しております。
具体的な議論のための検討指針といたしましては,青四角の下の部分でございますけれども,Society5.0やニューノーマルなど将来を見据えた大学像,グローバルな社会における我が国の大学の国際通用性,大学に対する社会の信頼を確保するための最低限の質保証,また,実効的かつ効率的な質保証の仕組みの在り方の四つを例示させていただきつつ,7月3日に第1回を開催して以降,関係団体や有識者の方々からのヒアリングを重ねまして,現在第5回まで開催させていただいております。
参考資料2にもございますけれども,今年度中は有識者の先生方からのヒアリングを重ねまして,来年度以降,設置基準や認証評価といった具体的な質保証システムの見直しの議論に入っていくための土台形成をしております。
これまでの議論を踏まえまして,質保証システム全体を通じた考え方,「質が保証されている大学」,大学設置基準・設置認可審査の在り方,認証評価制度の見直しと大学における内部質保証,情報公表の在り方,大学等の質保証に資する定員管理の在り方,質保証を支える人材の育成や,オンライン教育や授業内容・授業方法の進展に伴う質保証の在り方についてなどが主要な論点として上がってきております。
参考資料2の2ページ目を御覧ください。質保証システム全体を通じた考え方の中に,全国学生調査との関係で言いますと,先ほど小林委員にも御紹介いただきましたが,学修成果による質保証を実現するためにどのような方策が考えられるのかが論点として上がっております。この点に関しまして,前回の会議においても,学生調査をどのように質保証に利用していくことができるのかという観点が重要ではないのかという意見が出てきているという状況でございます。学修者本位の観点からは,質保証システムを見直していく上で,学生調査の役割は非常に重要となってくると考えてございます。
こちらの会議における議論というものは,先ほど河田座長からおっしゃっていただきましたように,質保証システム部会においても,是非しっかりと連携をさせていただいて,検討を進めていきたいと思ってございます。以上でございます。

【河田座長】 ありがとうございました。今ありましたように,質保証システム部会でも,私どものこの「全国学生調査」の活用も十分に考えられると思っていますし,来年の2月9日の火曜日に開催の中央教育審議会大学分科会において,本会議で議論しております「全国学生調査」について,私の方から御紹介させていただきたいと考えております。
それまでに,委員の皆さまの御意見を反映したものを,事務局から御連絡いたしますので,御確認のほどよろしくお願い申し上げます。
本日の議題は以上でございますが,次回の開催予定について,事務局から御説明をお願いいたします。

【大和田高等教育政策室企画審議係長】 事務局でございます。本日は大変活発な御議論を頂き,誠にありがとうございました。本日頂いた御意見は資料に適宜反映させていただき,改めて御意見をいただければと思っておりますので,その際はどうぞよろしくお願いいたします。
次回の会議につきましては,2月17日水曜日の10時から12時を予定しております。開催方法,場所等につきましては,また追って御連絡をさせていただきます。
また,本日,時間の都合上発言できなかった御意見につきましては,事事務局宛てに御連絡いただければ幸いでございます。事務局からは以上でございます。

【河田座長】 どうもありがとうございました。特に質問の文言や聞き方の問題,2年生を対象にしてよいのかどうか等,いろいろと重要な問題が出てきたと存じますので,再度案をつくって皆さまに御意見を頂き,大学分科会で,これまでの議論の経緯を御説明したいと思います。本日は有益な御議論をありがとうございました。これにて終了させていただきます。

―― 了 ――
 

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高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)