「全国学生調査」に関する有識者会議(第2回)議事録

1.日時

令和2年10月21日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省東館15階15F特別会議室(※Web会議)

3.出席者

委員

河田悌一座長
奥明子,岸本強,小林浩,小林雅之,清水一彦,高橋哲也,千葉吉裕,服部泰直,本山和夫,山田礼子の各委員
 

文部科学省

 淵上高等教育企画課長,奥井高等教育企画課課長補佐ほか

オブザーバー

 濱中  義隆氏

 

4.議事録

【河田座長】 所定の時刻になりましたので,第2回の「全国学生調査」に関する有識者会議を開かせていただきます。御多忙の中,御出席いただきましてありがとうございます。本日は新型コロナウイルス感染症対策ということでウェブ会議にさせていただきます。そしてその様子を前回同様,ライブで配信いたします。
議事に入ります前に,まず事務局,奥井課長補佐から連絡事項をお願いいたします。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 事務局でございます。
本日,田中委員と両角委員は欠席でございます。
ウェブ会議を円滑に行う観点から,御発言の際は「挙手」のボタンを押していただいて,座長より指名をされましたらお名前をおっしゃっていただき,御発言をお願いします。また,発言後にもう一度挙手のボタンを押していただくと手が下がりますので,併せて御確認をお願いします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただき,ハウリングが起きないよう御協力いただけますと幸いでございます。いろいろ御不便があるかと思いますけれども,よろしくお願いいたします。

【河田座長】 ありがとうございます。
それでは,今日の議題は前回に引き続いて意見交換とその他であります。配付資料は,前回の主な意見をうまくまとめていただいたものです。それから資料2が,それに対する今後の方向性ということで,事務局案ができております。参考資料も三つほどございます。それでは始めたいと存じます。
今日は本格的な実施に向けての検討ということで,議論を行っていきたいと思います。それでは,来年度の実施予定の第2回試行実施をどのようにしていけばいいのかということで,議論を行っていきたいと思います。前回出していただいた意見を七つの論点にうまくまとめていただいておりますので,それを基にしながら各7項目について,出された御意見が多いところは時間をかけて,短いところは短くいたしたいと思います。
それでは,奥井課長補佐から資料説明をお願いいたします。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 資料1,資料2に基づき御説明いたします。
まず資料1を御覧ください。既に議事録は御確認いただいているかと思いますが,前回の御意見をまとめたものが資料1でございます。幾つか御紹介をさせていただきます。
論点1のこの調査の目的については,二つ目のポツで,社会の理解を求めることは非常に大切であること。ただ,産業界・経済界など社会が求める学生像も理解して,大学がこういう教育をし,こういう成果があって,学生が成長しているのだということをしっかり発信していくことが重要であるという御意見。また,調査の回答率を上げるためには,協力者である学生にこの目的を明確に示すことが必要ではないかといった御意見。
論点2の調査対象・方法については,短期大学を調査対象とする場合に,例えば対象学年は2年生,時期は秋頃がよいのではないかといった御意見。また,三つ目のポツですけれども,授業アンケートの事例として,授業の前後で授業評価をしてもらうと回答率は高いといったことですとか,あるいは匿名化されることで安心して意見が言えるといったものも紹介されております。また四つ目のポツで,フェイスシートがない調査で結果がこうであるといったものでは,他大学と比較することはできるけれども,自大学の教育改善に生かすことが難しいといった御意見。
論点3の回答方法については,一つ目のポツで,全員にチラシを配って,見た人がこれに答えるときに生じる問題としてセルフ・セレクション・バイアスと言われるものがあるが,これをどう解決していくのかといった御意見。
2ページ目に行きまして,論点4の質問項目については,全国共通の質問項目とすることで,経年比較を考えた場合は,同一の質問項目で調査を続けていくことがよいのではないかといった御意見。四つ目のポツで,現在の質問項目は対面授業を前提として設計されていると思われるが,今回のコロナ禍を受けたハイブリッド方式が広がっていく中で質問項目を見直すことも必要ではないか。また,その下ですけれども,大学側の視点での質問項目が強過ぎるので,学生像,学生の考えなどについて社会に説明できる,いわゆる学生の成長実感に関する質問項目も必要ではないかといった御意見。最後のポツで,本当に良い教育をやっている大学がこの学生調査で適切な評価を受けられるようにすべきといった御意見がございました。
論点5の公表内容・方法については,社会的に見ても学生視点での情報が少ないといった御意見。3ページ目に行きまして,一番上のポツ,この学生調査によってランキングすることが目的ではなく,むしろ全ての大学を一つの指標の下で表すことができなくなっている中で,様々な視点での情報発信が必要ではないかといった御意見。その下のポツで,高校生が自ら何を学びたいのか,学んだことを将来にどう役立てるのかといった主体性を持たなければ,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」でも言われている「学修者本位の教育への転換」は進まないと。そういった保護者や受験生への説明責任という視点を持った調査とすることが必要ではないかといった御意見。最後のポツで,第1回試行実施では各大学にも個別の結果の公表は控えてもらうことにしたが,自大学の特徴や強みについて発信することは当然であり,試行実施の段階から大学が自ら公表することはよいのではないかといった御意見。
最後に論点6の既存の学生調査との整理等については,一番下のポツで,大学によって,学生は11月頃に同じような調査を三つぐらい回答しなければならず,学生の負担が大きいといった御意見。こういった全国共通の調査と大学独自の調査をどう組み合わせていくのかについても考える必要があるのではないかといった御意見がございました。
こういった御意見を踏まえまして,前回七つの論点をお示ししておりますが,その論点について少し具体的に整理したものが資料2でございます。
資料2の1ページ目を御覧ください。まず論点1のこの点線で囲ってあるものが今回お示しする内容でございます。
まず丸1,この目的について各大学の教育改善に生かすということですけれども,実際,前回の試行実施でも学内の教務委員会などで活用したという声がございます。また,学生一人一人から率直な意見を寄せていただいておりますので,大学が自大学の学生の意識や実態を把握する方法の一つとしてこの調査を活用し,教育改善に生かしてもらうことは目的になり得るのではないかということ。
また,社会の理解を深めるという観点ですけれども,各大学における学生の学修成果や大学全体の教育成果に関心を持ってもらうと。これは各大学でやることももちろん必要ですけれども,国としてしっかりその理解を深めてもらうことを目的とするのも必要ではないかということ。
次に,国による政策立案に関して,1回だけの調査では難しいところがございますが,継続的に実施し,経年的にデータを積み上げていくことにより,施策の検討の際の資料として期待されると考えております。
前回の資料でお示ししていない目的として,学生自身がこれまでの学びや大学生活を振り返ることができたと,第1回試行実施の自由記述の中でも数多く頂いております。そういった学生目線からの本調査の意義を目的に加えてはどうかということが,新しい観点でございます。
最後に,第2回試行実施では,今回の新型コロナの影響,その前と後の変化を見ることも追加的な目的としてはどうかというものを挙げております。
続いて2ページ目を御覧ください。論点2の調査対象・方法についてです。
まず,調査対象大学ですが,試行実施の期間につきましては,短期大学を含めた全大学に参加の意向確認を行い,意向があった大学を調査対象としてはどうかと。また,参加意向のなかった大学に対しては,状況を聞き取り,本格実施の際に全大学が参加できるような調査設計となるよう改善を進めていくこととしてはどうかということ。
次に丸2と丸3で,対象学年,実施時期につきましては,ここはなかなか難しいところでございますが,第2回の試行実施では,例えば学部では複数学年,前回は3年生でしたけれども,今回は2年生と4年生ですとか3年生と4年生,そういった複数学年を対象とすること。また,短期大学は最終学年の1年間を対象とすること。また,実施時期,前回は11月から12月にかけて行いましたけれども,例えばそれと違う時期,春学期に試行することも考えられるのではないかということ。
最後に丸4の調査方法につきましては,各大学から学生に対して調査をアナウンスしてもらうのですが,学生に対して本調査を周知する際に,講義等でのアナウンスと併せて,メール等で直接依頼する形を全体的に用いてはどうか。また,そのメールの内容につきましても,学生が見て是非答えたいと思っていただけるような文章とすることが必要であるということを書いております。
3ページ目を御覧ください。今回,学生にとっての調査の意識や学生がどうしたら答えてくれるのか,どういうことを知りたいのかということを,例えば第1回試行実施の参加大学の学生や,あるいは学生団体の学生の皆さんからも意見を聞いた上で,制度設計を考えてはどうかということ。最後にチラシ,これは技術的な話になるのですが,チラシの効果が実は明確ではないと考えており,費用対効果の観点から例えばチラシは印刷して送らずに,データのみの送付としてはどうかということ。
続きまして,論点3の回答方法についてです。これは試行実施では特段の問題はなかったかと認識しております。回答方法につきましては,文部科学省が学生個人と結びつく情報,例えば学籍番号等を収集・保有することにはやはり管理上の課題があるということですとか,あるいは匿名だったことによって自由な回答が得られたというような結果がありますので,引き続き同じような方法を採ってはどうかと考えております。
続きまして,4ページ目を御覧ください。論点4の質問項目につきましては,比較的学生の回答時間が短めだったこともありますので,50問程度の選択式であれば10分程度で回答できるのではないかということ。その質問項目を考えるに当たっては,恒常的,共通的に把握する必要があると考えられるものに厳選することが必要であるということ。第2回試行実施では,コロナ禍を踏まえた質問項目を設けてはどうかというものを書いております。
また,質問項目の具体的なところでございますが,第1回試行実施でなかったものとして,学生の意識に関して,学修意欲に関することですとか,学生自らの目的意識に関すること,大学での学びによる成長実感に関することなどについて盛り込んではどうかということ。また,短期大学を対象とするに当たり,質問項目を共通のものとするのか,あるいは特有の質問項目を設けるか,そういうものは検討が必要であろうと考えております。
論点5の公表方法についてです。試行実施の期間については,第1回試行実施と同様の集計,あるいはクロスをした集計の公表を維持してはどうかということ。また,学部単位での集計をする場合には,第2回試行実施では,例えば有効回答数が30以上で,かつ有効回答率を20%あるいは30%以上ということが考えられるのではないかということ。
5ページ目を御覧いただきまして,仮にこの有効回答率の基準の10%を20%以上とした場合,第1回試行実施ですと44%,有効回答率を30%以上とした場合は56%がその基準を満たさないことになり,約半数がその基準を満たさないという結果になります。いずれにしても回答率を高めることは必要であり,回答率を高めるため工夫も大きな論点になろうかと思います。
また最後のポツですけれども,公表方法として大学・学部単位の公表についてですが,本格実施では大学・学部単位で調査結果を公表することとしてはどうか。ただその際,本調査の考え方や各質問項目の結果の見方等を併せて記載することで,単なる順位づけとならないよう特段の工夫を行うこととしてはどうか。また,その公表に当たってどう進めるかは今後も検討が必要であると考えておりますが,この試行実施の段階で公表の仕方を考えるという観点から,まずは大学の自主的な公表を認めることとしてはどうかということを挙げております。
論点6の既存の学生調査との整理・調整についてです。これは中長期的な議論になるかと思いますが,大学独自の調査等につきましては,試行実施を経て制度設計が固まり,本格実施に移行する段階で,関係機関とも調整を行って,例えば質問項目の共有を検討してはどうかということ。
最後に論点7の調査の実施主体についてですが,当面の間は文部科学省が主体となって実施してはどうかということを挙げております。
少し網羅的になりましたけれども,説明は以上でございます。御審議をお願いいたします。

【河田座長】 ありがとうございます。
今,奥井課長補佐から御説明がありましたように,非常にうまくまとめていただいていますので,分かりやすいかと思います。
それではこの論点1から7まで,それらを一つずつ討論していきたいと考えます。具体的案もありましたので,特に論点1では,全国の学生調査の目的について三つほど意見が出ておりましたけれども,これにつきまして委員の皆さんの御意見を伺えればと存じます。
山田礼子委員,いかがでしょうか。

【山田委員】 全国学生調査の目的についてはこのとおりかなと思います。ただ,ほかのところにも関係してくるところでもあるのですけれども,産業界等にも分かるようにということであります。これはそのとおりだと思うのですけれども,その目的というときに,多分産業界との調整みたいなところが必要かなと,私自身は資料を見ていて思ったところなんです。
つまりどういうことかといいますと,日本経済団体連合会の調査などがありますが,あそこを見ている限り,大学の学生に期待するところは,やはり以前から指摘されてきたような非常に抽象的な項目になっていて,大学の方が今回試行実施でも行ったこと,これからも行っていくことは,目的にも書かれているように,やはり大学での学びというところ,それを教育改善に生かすことということがあるのですけれども,日本経済団体連合会の調査で期待されているところは,必ずしも学びというよりはもっと大学全体としての人との交流,学生同士の付き合い,あるいは授業外学習,つまりサークルなどの効果なども入っているんですね。
私どもはそれに実は非常に問題意識を持っていて,現在,関西経済連合会といいますか,生産性本部と企業の方たちと一緒に共同研究をしているのですが,それから見ても,かなりずれがあるので,本当にどういうところを産業界が大学に期待しているかということを聞いた上でなければ,少し難しいかと思います。
その共同研究の中で分かってきたことは,理工系の分野においては学びというものをしっかりと産業界は期待しているのですが,社会科学や文系に関して,そこは抽象的になっています。だから,実際に大学がここまで教育改革をしようとして,学びを生かそうとしているところが余り評価されていないところが現実として,現時点でもあるので,そこをやはり調整して,目的として反映したらどうかと思います。

【河田座長】 ありがとうございます。ほかの委員はいかがでしょうか。国立大学の立場から服部委員はいかがでしょうか。何かございませんか。

【服部委員】今,山田委員の話を聞いて,改めて産業界が求める学生の人材像と,大学側が考えているずれは結構大きいと感じています。
本日の資料の日本経済団体連合会の2018年度新卒採用に関するアンケート調査結果の最後のページですが,選考に当たって特に重視した点ということで,大学側として見てほしいのは履修履歴であったり,学業成績であったり,語学力であったり,留学経験だと思います。大学ではこれらを意識した教育をしていて,こういう学生を育てていますよということを主張していると思っているのですが,実際の採用を見ると,私たちが意識して教育しているところを企業側は余り気にしていないということですね。 一方で,同じ資料の3ページ目の一番下,(2)面接時における履修履歴の取扱いで見ると,

【河田座長】 参考資料2ですね。

【服部委員】 すみません。そこでは,上記項目について「かなり重視した」とか「やや重視した」との回答が結構多いです。この回答と先ほど述べましたところとが矛盾しているように感じます。そこのところについて産業界の方とも話をさせていただきたいと思います。
山田委員の話を聞いていて,理工系の人材についてはある程度大学での学びを企業の方は期待しているという話であったのですけれども,そこで企業の方が求めているのは,恐らく理工学系のスキルについての期待かと思います。国内に比べて外国の企業の方が理工学系出身の方が経営のトップになることが多い印象があります。国内では,人文社会学系,理工学系の求める人材の違いが明確になりすぎているのではないかと思います。
前回も言いましたが,産業界の求める人材像を把握しながら大学側も教育に反映させていくのだけれども,求める人材像については常に産業界の意識も変えるし,また大学の意識も変えていくことが必要と思います。この調査をそのきっかけにしたいと思います。 以上です。

【河田座長】 ありがとうございます。それについて長く実業の世界で活躍されてきた本山委員から何かございましょうか。いま述べられた産業界からの要求や企業のトップの座におられる方に関して,いかがでしょうか。

【本山委員】 産業界で求める人材は,やはり教育,あるいはスキル以外のファクターもすごく多い中で,産業界で求められる部分があるのではないかと思います。一つのスキルがあってそのスキルを持っている人間しか採らないという部分はあるかもしれないけれども,全体像からいったら,やはり課題解決能力だとか,それから問題発見力だとか,そういう普遍的な解決する力を企業は求めているのではないかと私は思います。
だから勉強しているかいないか,もちろん勉強していることが必要条件だと私は思いますけれども,そういう条件で採用していくことと思います。
それと,理科系,文科系ということで経営者層が人文社会科学系の人間が多いというお話がありましたけれども,それはたまたま財務系とか一般経営の経営企画だとかに人文社会系の人間が配属されているからかなと思います。技術部門の人間だって経営の中枢として生かしていこうというところは,技術者でも経営の中枢を担うのではないかと思います。
それは企業が求めているのは何かによって変わってくるのであって,経営者,人文社会系が経営に適しているかといったら全然そんなことはなくて,最近は結構科学技術系の人間が経営者になっている,私も含めてですね。

【河田座長】 そうですね,本山委員も理系の御出身ですものね。

【本山委員】 要するに,なっているケースが私は多いのではないかと思います。
ただ,技術系の人間が不利なのは,スタートして入っていって,やはり経営トップになるというのは技術部門のトップですよね。技術部門のトップとそのほか経営管理だとか経理だとか財務だとか人事だとか,そういうセクションの方が幅が広いですよね。それは文科系の人間が多いですよね。そういう選択肢の中で役員になってくると,部門が多いところの方が有利になっていく部分はあるかなという感じがしますけれども。余り文科・理科というのは関係ないと。企業から求めるのは普遍的なものを求めているということで,私はよろしいのではないかと思います。
調査の目的のところですけれども,私どもとしては,学修に対する調査はよろしいのですけれども,大学としてはやはり教育だけではなくて研究部門もあるわけなので,研究に対する学生の評価というか,学校に対する評価,研究に与えられた施設も含めた評価ですね,あるいは教育に対する指導の評価というか,その辺の研究部分に対する評価というか,その辺の調査ももうちょっとウエイトを上げていく必要があるのではないかと。大学本来というのは,教育の場ではなくて研究の場であると私は思うのですけれども。その辺のところももう少し目的の中に教育研究の場という,研究というところもニュアンスとして増やしていく必要が私はあるのではないかと考えております。

【河田座長】 ありがとうございました。その調整が必要かどうか,あるいは教育研究の「研究」という言葉をどのように入れていくのか。調査対象の学生が2年生あるいは短期大学生の場合,それをどういうふうに理解させるのか,いろいろ問題はあるかと思います。 清水委員,どうぞ。

【清水委員】 論点1のところで少し申し上げたいと思いまして。
第一義的には学修者本位の教育への転換を目指すということで,学生の学びの実態把握でいいと思うのですが,丸2の「我が国の大学に対する社会の理解を深める」という,ここに私は大きな意味を持っております。
といいますのは,日本の誇れるものは,先進国の中でトップにあるのは卒業率が高いということと,就職率が高いということです。卒業率が高いということをプラスに評価したいですね。先ほど研究の話もありましたけれども,卒業研究ゼミとか卒業論文ゼミとか,これらは先生方の教育研究指導の優秀性というのがあります。そういうものがあって卒業率が高いというものに結びついていますので,これを社会とか国際的に発信すべきだと思っております。
また,就職率も高いというのは,教職員は共にきめ細かい個別の対応も含めて指導しているからだと思います。そうした現場でのプラスの面がこういう調査で浮かび上がれば,卒業率,就職率の世界的レベルがしっかりと見えてくると思います。そういう意味で,この社会というのは国際社会も含めて発信するというところを含めていただければと思います。

【河田座長】 ありがとうございました。
それではその次,論点2にお話を進めたいと思います。調査対象・方法についてということで,既に意見が五つ出ておりますので,更に御意見をお願いいたします。
小林浩委員,どうぞ。

【小林(浩)委員】 御説明ありがとうございます。
この実施時期ですけれども,大学3年生の11月ということなのですが,恐らく当初の目的によっていつ調査をするかが変わってくると思います。外から見ていると,少し大学3年生の11月は中途半端な感じがするのですけれども,そもそもどうして3年生の11月となったのかという最初のところをお聞きしたい。
加えて,例えば日本の政策に生かすとすれば,海外との比較とかそういったことをしたときに,いつの時点の教育成果,あるいは学修成果みたいなものの実感を測っていくと国際比較ができて,日本の教育政策に資するものになるのかという観点からしたときに,いつ頃が望ましいのか,文部科学省から御回答いただきたいのですが。

【河田座長】 分かりました。それについては,事務局から御回答を申します。

【奥井高等教育企画課課長補佐】
まず,第1回試行実施で3年生の11月頃にしたのは,昨年度の検討会議でも議論していただき,学びの集大成という観点で4年生がいいのではないかという意見も出ておりました。ただ実際に大学の現場を見渡したときに,学部4年生が大学にいないケースも想定されるという御意見がありまして,実際に調査を行う際に学生さんにアナウンスしていく手法として難しいのではないかという御意見もありました。
総合的に勘案した上で,全学年でやってみるという考え方もあるのですけれども,いろいろな予算的な状況もあって,まずは試行の1回目は3年生を対象としようと。では3年生を対象として,時期として実際に専門の教育に入って前半の方だとなかなか授業の経験とか身に付けた力という質問項目に対して回答することは難しいだろうということで,できるだけ後ろの方にしていると。あと一番大きな制約として,実際この調査の回答をシステム的にやるものの,いわゆる委託事業の年度的な制約などもあって,本来は3月とかにできればという考え方もあるかもしれませんが,そういった委託事業期間の関係で,この11月,12月という時期で学生調査を実施したということでございます。
諸外国のケースですけれども,山田委員や小林委員の方がお詳しいかと思うのですが,例えば全学生にやっているような国や,高学年に調査をしているといったものもあるかと思います。あとは直近ですとタイムズ・ハイアー・エデュケーションが学生調査みたいなものをしておりますけれども,それも基本は抽出して大学に,そこは多分対象学年は縛っているのか分からないですけれども,抽出している調査もあるということは承知しているところでございます。
そこで,今後はそういった3月にできるかという技術的な課題などもあるのですが,できるだけ1番最適な時期に回答を頂くことを考えると,個人的には4年生を対象にすることも必要なのではないかと思っています。以上です。

【小林(浩)委員】 ありがとうございます。やはりせっかく投資をして調査するのと,あと,学生にもいろいろ負荷をかけるので,この目的を達成するためにいつが最適なのかと。いろいろな制約があるのは分かるのですが,そこから議論ができればと思っております。

【河田座長】 ありがとうございます。高橋委員,どうぞ。

【高橋委員】 少し補足させていただきたいと思います。
IRコンソーシアムでも上級生調査は基本的に3年生の11月,12月にやっています。なぜかというと,これは目的によるのですが,学生の学修実態を把握しようとすると,日本の場合は4年生になると卒業研究しかないというのが学生のある意味で理想的な状況とされていまして,おまけにそこに就職活動等も絡んできて,学修の状況を1週間でどういうふうに聞いていこうと思うと,4年生はなかなか適さないというのが現実としてあります。
ただ,大学の4年間で何が身についたかということを聞くのだとすると,やはり卒業研究は非常に大きなファクターでもあるので,その辺りは4年生で聞く方がよいのかなということはあるのですけれども。やはり質問項目に応じて聞くべき場所も変わってくるというのが実態かと思います。
補足は以上です。

【河田座長】 ありがとうございます。奥明子委員,どうぞ。

【奥委員】 短期大学からです。調査対象に加えていただけるかどうかはこれからの検討かと思うのですけれども,今,短期大学では日本私立短期大学協会が4年に1度,学生調査,生活調査をしておりまして,対象は2年生となっております。
大学基準協会は毎年なのですけれども,これは1年と2年で11月に全員がアンケート対象となっています。というのは,大学基準協会は春の時期に学生数に応じて1人150円を徴収して,学生分を秋に送って11月から12月に採るということで,これは1年生と2年生全員となっています。これは多分,1年と2年のとる較ができるようにということで2学年になっているかと思います。
日本学生支援機構はランダムに11月以降ということでアンケート調査が来ておりまして,大体平均して秋,11月以降ぐらいになっているのですけれども,これはほぼ4月からどういう勉強をして,どういうふうに自分が考えているかということになるかと思います。
ただ,今後,国の全国学生調査を短期大学でいつの時期がいいかとなった場合には,少し検討をする必要があると思います。
それからやり方なのですけれども,私の大学は,授業評価アンケートはスマートフォンで全学生から採っているのですけれども,これは前期・後期,授業の最後に全部採っておりますので,大体パーセンテージはかなりいいんです。ただ,その採り方も問題ですし,また項目もこれから検討になるかと思うのですけれども,できる学生とできない学生の差が相当出てきていますので,内容はよく吟味した方がいいと思います。また,項目の内容のところでお話しさせていただきます。
以上,方法のところを申し上げました。

【河田座長】 ありがとうございます。山田委員,どうぞ御発言ください。

【山田委員】 補足なのですけれども,国際比較という点で言えば,小林委員からも後で補足していただけばいいと思うのですけれども,アメリカとの比較はNSSEとかUCLAの調査がありまして,私どもはかつてUCLAとも日韓米で調査をしてということがございましたが,時期といいますか学年が全く合わないです。
まず,調査があるのは新入生調査とシニア,4年生調査なんです。その4年生調査も8月の末から始まりますから,11月ぐらいに行うのか少し時期は大学によって違うのですけれども。先ほど高橋委員がおっしゃったように,4年生までしっかり授業がありますから,私どもが3年生で行う項目がそのまま4年生で使われているような感じになるんです。でも,日本の4年生はそれこそ卒業論文や卒業研究というようになってきて,授業時間などが把握できなくなったりしますので,私どもが3年生の11月,12月に行ったものと,UCLAの4年生を比較したりして,そこ自体が少しずれているなというところもあります。

【河田座長】 なるほど。様々な問題があるかと思います。
それでは,先ほどお名前が出ました小林雅之委員,是非,補足で御説明いただければと存じます。

【小林(雅)委員】
この問題は様々に議論いたしまして,11月に三つの調査が重なっていることも前回申し上げましたし,なかなか難しいのですけれども,前回の試行調査では,今のところ,この時期しかないというのが結論だったわけです。小林浩委員の言うのも非常によく分かるのですけれども,もう一回検討し直していいと思いますが,なかなか11月以外にやるのは難しい。
学年の問題につきましても様々に議論があったのですけれども,大学教育全体の評価ということになると4年生の方が望ましいというのは言うまでもないのですが,それだけが目的ではなくて,やはりいろいろな大学の学生の実態を調べることになると3年生の方がいいのではないかという意見の方で実施したわけです。けれども,これは試行ですから変えていいと思います。例えば4年生を調査することがあってもいいと思います。
それから,方法として抽出調査か全数調査かということも非常に多くの議論があったわけですけれども,これはこの調査の目的として各大学が使えることを考えますと,やはり抽出では難しいということがあります。というのは,小規模の大学では抽出ですと非常にサンプル数が小さくなってしまって,各大学が有効に活用することが非常に難しくなる問題があります。ですから全数調査でやる方が望ましいと思っていまして,今まではそれでやってきたわけです。
もう一つ,短期大学の問題も是非短期大学調査ということでもやっていった方がいいと思いますけれども,これも予算制約とか,先ほど事務局からありましたが,そういうことを考えますと,毎年同じように同じ調査を実施する必要があるのかということを考える必要があるかと思います。つまり,項目によっては毎年しなくてもほとんど同じというものが多いのです。各大学からすると経年の変化を見たいというのは非常によく分かりますけれども,毎年実施する必要があるのか。例えば,学年を変えるとか,4年制大学と短期大学を交互に実施するとか,そういう方法も検討されてもいいのではないかと思います。以上です。

【河田座長】 ありがとうございます。それでは岸本委員,どうぞ。

【岸本委員】 公立短期大学協会から参加しています岸本です。 今回,短期大学の方もこの議論の対象にしていただいておりますことを感謝申し上げます。前回のところでも短期大学でもし参加させていただくのであれば,やはり1年生の前期・後期,また2年生の前期,3学年であればもう少しプラスになりますけれども,全般的に総合的に判断ができる最終学年がやはり望ましいのではないかと思っています。ということで,また時期は秋ということも前回発言させていただきました。
要は,私のところは短期大学部も4年制の学部もあるのですけれども,現在の質問項目を見ましたら,大学に入ってから受けた授業という項目とか,現在の授業期間中というような表現も設問にありまして,もし対象を変えるのであればこのようなところも少し操作していかなればならないのではないかと感じています。以上です。

【河田座長】 ありがとうございます。服部委員,どうぞ。

【服部委員】 1年の中で調査をいつ行うかについては,いろいろな制約で11月ということであればそうなのかなと思って伺っていました。
対象学年については後の質問項目にも関わってきますが,今,教育成果をどのように可視化していくかが大きな課題になっていて,難しい問題です。一つの示し方として,学生自身がどう感じているかというのは大切な要素と思っています。
先ほどの話にもありましたように,国内の大学における卒業研究は教育効果の高いアクティブラーニングと考えられます。卒業研究を通じて学生が成長していることは多くの教員が実感していることと思います。この観点から,できれば教育成果の可視化という意味でも,4年生に聞いてみたいと思います。本日の資料で文部科学省から2年生・4年生又は3年生・4年生ということで御提案いただいておりますけれども私としては御提案のいずれでも結構ですが,4年生の意見・実感を聞いてみたいと感じています。以上です。

【河田座長】 そのとおりですね。やはり大学における教育成果がどういう形で見えるかという教育の可視化が,現在,問われる時代ですので,4年生も必要かなと感じております。 ありがとうございました。是非とも学生諸君の声を聞くことも必要でありましょうから,委員の皆様方の大学で御協力いただけることが非常に有り難いと考えております。ということで,意見をどういうふうに聴取して,どういう形で吸収していったらいいのかを調整しながら,是非,御協力いただける大学がございましたら,事務局までお知らせいただきたいと存じます。
それでは続きまして論点3,回答方法について,御意見を伺いたいと思います。これはたしか一つしか意見が出ておりませんでしたけれども,いかがでしょうか。チラシを配ってやった場合はどうかということで,そうした場合,やはり問題があるということでした。
高橋委員,どうぞお願いいたします。

【高橋委員】 論点3のところで英語表記の話があるのですが,英語表記はやるべきだと思うのですけれども,ただ予算的に文部科学省的には大丈夫なのかと。ほぼ倍に労力というかコストがかかるのではないかと思うのですけれども。いかがでしょうか。

【河田座長】 英語表記については,どうですか。文部科学省としては。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 現時点での試算ですと,大丈夫かなという状況で提案もさせていただいております。

【河田座長】 是非これはプッシュして,お金をつけていただきたいと思っています。今のところは大丈夫だということですので,よろしゅうございますか。
あと何かございませんでしょうか。清水委員,どうぞ。

【清水委員】 この回答方法については匿名ということでお願いしたい。また英語表記もあったらいい。この案は賛成です。

【河田座長】 では,その次の第4論点ということで,質問の項目について討議していきたいと存じます。これについては既にたくさんの御意見を頂いております。先ほど事務局から御説明があったと思いますが,役に立っているかということ云々(うんぬん),イメージが難しかったとか,今回は是非,新型コロナ禍のことで,時間的にコロナの前と後でどう大学教育が変わったかとか,自分の考え方がいかに変わったかとか,その辺をやはり聞いていくことができれば,今回の試行実施は非常に有意義な調査になると個人的にも考えておりますし,先ほどから問題になっている大学側の説明が必ずしも上手でない,だけどそれをきちっと説明する責任とか,既にたくさんの論点を頂いておりますけれども,更に何か御意見がございますか。高橋委員,どうぞ。

【高橋委員】 これは論点6にも絡むのですが,これは試行実施といえども,多分あと1回しかできないので,この後,本格実施の質問項目を考えたときに,一度決めるとそう簡単には変えられないと思います。経年等を採っていこうということを考えると。あと,各大学がそれを使っていこうと思えば,そう簡単に変えられないと思います。やはりできるだけ必要最低限に限っていただきたい。ただ,今回コロナの部分は追加で採ることはあってもいいと思うのですが,本格実施に使うという観点で考えると,必要最低限に限るというのが必要かなと思っております。
今回は試行なので,前回のものと合わせて最終的にこの2回の部分からどう選んでいくかということになると思います。そういう観点でお願いしたいと思います。
それから,論点6であるのですけれども,各大学は恐らくこの後は,もし文部科学省がやったときに自大学独自の項目を付け加えて一緒にやって,文部科学省の分だけはその中から抽出して送るとかいう形をしないと,先ほどの三つ調査するとかいう問題が解決しなくなります。一つやってそれをそれぞれのところで使えるような形を考えたときも,やはり質問項目は余り文部科学省の中で大きくならない方がいいかなと思いますので,今回上がったような50項目ぐらいが上限ではないかと個人的には思っております。
以上です。

【河田座長】 なるほど。そういうことも可能ですよね。自分たちの大学として聞きたいこともプラスして聞くということですね。ほかにいかがでしょうか。小林雅之委員,どうぞ。

【小林(雅)委員】 私も匿名というのは,全国調査でやる以上はこれでしかないと思っていまして,各大学が実施する場合にはその学部データと結びつけた方が調査としてはいいわけですけれども,全国で実施するとなると,それはとてもできる話ではないと思っておりますので,当面はこれで実施するしかないと思っております。
それからもう一つ,これは質問ですけれども,「三つのポリシー」のことを聞くということに意見があったということで,資料1でも「『三つのポリシー』に基づいた教育が各大学でしっかりと行われているか,学生に行き届いているかという観点からの質問を設けてはどうか」という意見があって,資料2にもそういうことが入っているわけです。これはもう少しどういうことを意図しているかを前回このことを意見表明された委員の方がいらっしゃったらお伺いしたいのですけれども。
というのは,学生は「三つのポリシー」というのは言葉自体も全く知らないと思いますので,そのまま「三つのポリシー」がどういうものかとか聞かれても,学生は答えようがないし,そういうことが分かるだけだと思います。それから「三つのポリシー」は各大学で違うわけですから「三つのポリシー」になっているので,そういう意味では全国調査で同じ質問として聞けないですね。ですからその辺り,もう少し質問の意図について教えていただければと思うのですが,いかがでしょうか。

【河田座長】 これは私も言ったと思うのですが,一応「三つのポリシー」が法令化されて,それが一体どれぐらい各大学の中で定着し進んでいるのか。これは中央教育審議会でもたしか問題になっていたと思うので,質問の仕方が非常に難しいのは確かです。「三つのポリシー」といっても,教員でも知らない人がおられましょう。だから質問の出し方は難しいと思いますけれど,どういう動機で大学は入学させようとしているかとか,あるいはカリキュラムがきちっと組まれているのかとか,何かその辺は質問の三つ全部を聞かなくてもできるのではないかと思っておりますが,適当な質問方法があれば助言いただければと存じます。奥委員,どうぞ御発言ください。

【奥委員】 今の「三つのポリシー」に関しましては,大学が建学の精神に基づいて「三つのポリシー」をつくって,それでアドミッション・ポリシー,大学の方で入学の際のいろいろとよく理解しているというふうに,またそれを目標としている学生が受験して入れるというふうになっているわけです。私のところの短期大学は非常にこの「三つのポリシー」にこだわっておりまして,入学のときにもいろいろとそれを重視した問題を出しているのですが,それはそれぞれの大学で違うと思いますので,これは大学がそれぞれで設問すればよろしいのかなと私は思っております。
短期大学の,論点4の質問項目の件ですけれども,4年制大学と短期大学と確かに違う部分もありますが,質問項目自体はそれほど区別というか,分けなくてもよろしいのではないかと思います。というのは,答えられるところには答えるし,答えられないところはちょっと外すとか,そういうことは各自が考えてやればいいことではないかと思いますので,短期大学と4年制大学と質問項目は変えなくてもよろしいのではないかと思いますし,あるいはこれは4年制大学の方が答えてください,あるいは短期大学の方が答えてくださいと,括弧で項目のところに入れていけば解決していけるのではないかと思います。
また,内容も短期大学の場合は,入学にしてもいろいろあるわけなのですけれども,そういったものも全部4年制大学と短期大学と同じ項目にして,答えられるものは答えるというふうにして,それがまた短期大学生が見て刺激になって,4年制大学への編入とかいろいろ考える方向に行くのではないかとも考えますので,私自身はそのように考えております。

【河田座長】 ありがとうございます。岸本委員のところも4年制大学と短期大学部があるようですけれども,その辺はいかがでしょうか。

【岸本委員】 基本的には,今,奥委員がおっしゃったことでよろしいかと思います。前回試行の項目の中に海外留学についてありまして,ここでは3か月以上に限るという括弧書きがございました。長期間の海外留学ということでの意味合いがすごく強いと思います4年制大学においてさえ,この項目回答においては経験していないという回答が多くございました。短期大学であれば,この3か月以上というのはほぼ卒業できない状態になりますので,行くにしても短期に行く場合が多いように思います。 そこで,この海外留学の項目については,何を想定しているのかというところでかなり質問の意味が違ってくると思います。その経験が有用かというところであれば,短期大学生は多分有用であったというような答えが出るのではないかと思います。海外留学に関しまして3か月以上に限るという括弧書きは,短期大学には少しそぐわないのではと思っているところです。短期であってもこの設問の主旨には応えられるかなと思っているところです。以上です。

【河田座長】 ありがとうございます。山田委員,どうぞ。

【山田委員】 「三つのポリシー」に関して小林委員が全国の大学の学生さんがどう答えるかというのを懸念されているのを,私もそうかなと思っております。それで自分自身で少し自分の大学の自分の授業の学生に聞きましたところ,私の授業がそういう関係ですから知ってはいるのですけれども,他の学部の学生などはやはり分からないんですね。それでもう一つ,アドミッション・ポリシーに関しては,指定校推薦,推薦の学生たちはやはりそういう点はしっかりと理解しているのですけれども,一般入試で受ける学生はアドミッション・ポリシーはやはり余り意識していないことが分かります。
一番学生たちが難しいなと考えるのはカリキュラム・ポリシーです。これは授業一つ一つとしてやはり考えますので,その授業の編成の方針というプログラムとして学生が理解するとなると,かなり専門的なところでそれを教えてもらわない限り,理解していないところがあるかなという感じがいたしますので,これはやはり大学独自で「三つのポリシー」を聞くような項目としてした方が答えやすいかなという感じがします。
もう一つ,短期大学ですけれども,これは清水委員からも後で補足していただいたらよろしいかと思うのですが,私どもは短期大学基準協会で短期大学生調査をずっとしてまいりましたが,当初,4年制大学の項目をそのまま使っておりました。そうすると,やはり短期大学の学生が答えたときに少し合わないような項目があるので,もし短期大学にもこれが使えるということでするのであれば,少数の,短期大学の岸本委員や奥委員のところで一旦パイロットでテストしてみて,それでそれが使えるかどうかのも試してみてはいかがかなという感じがいたします。

【河田座長】 なるほど。本当にそうですね。とてもいい御意見を頂きました。清水委員,どうぞ。

【清水委員】 短期大学と4年制大学では質問項目を多少変える部分があった方が,有効だと思います。我々の調査でも項目については毎年少しずつ変えております。
もう一点この項目について言いますと,先ほどの「三つのポリシー」とか学生の意識については,実は認証評価の中で学生の意見を聞いています。今年はコロナがあって,オンラインの現地調査と各認証評価機関はなっていますが,アンケートを事前に採っており,「三つのポリシー」についてもほとんど知らないです。でも,これは知るべきだと思っています。ここの学生の意識,「三つのポリシー」とか大学が今取り組んでいることについては,学生もやはり認識したり考えたりする必要があると思います。
学生の意識項目がかなり充実してきますと,認証評価でこれが使えるようになります。認証評価で学生の意見をこういう形で全国調査でやったものを参照すれば,一々現場で学生を集めたり,生の声を聞いたりという,そういうことももちろんしてもいいのですが,それを補完できる方法になるのではないかと考えています。認証評価の現地調査における学生の意見等も視野に入れて,この項目を考えていった方がいいと思っております。
以上です。

【河田座長】 ありがとうございました。小林浩委員,どうぞ。

【小林(浩)委員】 ありがとうございます。
参考までに,私どもで高校生に昨年,アドミッション・ポリシーをちゃんと見たかどうかという調査をしていまして,清水委員がおっしゃったとおり,アドミッション・ポリシー自体が2017年から義務づけられたので,まだ浸透していない時期の学生が今,大学に入っていると思います。高校生ですと,アドミッション・ポリシーを知っていたというのが昨年で85%でして,調べたというのが51%。特に山田委員がおっしゃったように,AO推薦で入った学生は61%がアドミッション・ポリシーを自分で調べたと回答しています。
高校の先生にも調査すると,やはり6割が進路指導で使っていたと回答しています。やはり特に今,進路指導でアドミッション・ポリシーをちゃんと見ましょうというような指導が,特にAO推薦の層を中心に行われているのではないかと思います。逆に,一般入試で受験する生徒は偏差値で選ぶので,そこら辺のところを見ずに選んでいるという感じがあると思います。
そう考えると,清水委員がおっしゃったように,学生にきちんと「三つのポリシー」を認識してもらう観点で設問に入れるかどうかというのは,一つ議論があるかなというところがあると思います。
調査結果は,認証評価にも使えると思います。しかし,こうした調査を各大学でやることなのか,それともこの全国学生調査で共通でやるものなのかというところを考える必要があると思います。大学の全体のポリシーもありますし,学位プログラムごと,学部ごとにつくっているところもありますし,小林雅之委員がおっしゃったように細かさみたいなところもあるので,どちらがいいのかは議論が必要かなと思っております。以上でございます。

【河田座長】 分かりました。とても貴重な御意見で,高校生に調査されて,85%もの高校生諸君がアドミッション・ポリシーを知っているというのは驚きでございます。あと何かほかに。高橋委員,どうぞ御発言ください。

【高橋委員】 「三つのポリシー」をマネジメントすると,きちんと定めてそこを連携させてという話なのですが,学生からすると,ディプロマ・ポリシーは知っていて,それが身についたかという観点は非常に重要なのですけれども,そこ以外は正直,学生側からして,あれ要るかなと,私,個人的には思います。カリキュラムをきちんとディプロマ・ポリシーが身につくように定めるのは大学の責任であって,学生がそんなことをチェックする必要があるかというと,そういう意識の高い学生がしてくれると助かるかもしれませんけれども。学生からは,やはり大学としてどういう能力を身につけたいと思ってというのがあって,それが身についたかということは非常に重要,もう最重要だと思いますけれども,カリキュラム・ポリシー等を学生が知っていなければいけないかとかいうのは,そういうことまで聞く必要はあるのかなと思います。以上です。

【河田座長】 なるほど。分かりました。ありがとうございます。
それでは質問項目についてはこういうことで,まだまだ時間もございますので,特に短期大学の問題,4年制大学と短期大学をどうするのか,共通にして短期大学だけ答えなさいというようにするのか,その辺のことを論じていきたいと存じます。それから,調査を毎年やるべきなのか。今回は試行ですから,それはそれとしてやっておくことは必要だと思いますが,その後のことについては更に議論を重ねていきたいと思います。具体的な質問項目につきましては,次回の会議はたしか12月10日だったと思いますので,委員の皆様方から意見を出していただいて,それをまた参考にしていきたいと思っております。事務局からまた御連絡いたしますので,よろしくお願いいたします。
それでは論点5で,公表の内容・方法につきまして,前回6点ほど御意見を頂いておりますけれども,更に御意見をいただければと思います。千葉委員,どうぞ。

【千葉委員】 すみません。ここまでのところでまとめて意見を言いたいのですけれども。

【河田座長】 どうぞ。

【千葉委員】 まず,大学が置かれている状況が社会の変化によって随分変わってきていると思っています。世の中では職業能力の高度化と専門知識の専門化がどんどん進んでいる中で,それを学ぶ機関としての大学が求められていて,ゼネラリストの養成よりもスペシャリストの養成にかなりシフトしないと厳しいのではないかと思うんです。だから今,世の中で最先端の知識を学ぼうと思ったときに,前は企業内の研修で十分間に合ったものが,今はもう企業内の研修でも追いつかない状況になっている。そうすると,国内で最先端の高度なことを身につけようと思ったら,大学に頼るしかないと思うんです。
そういう中で企業の採用の方も,もう既に今年度から,ポテンシャル採用からジョブ型の採用に切り替えているわけです。今までのお話を聞いていると,昔のポテンシャル採用を中心として人材育成をつかさどる大学が何をすべきかということを議論しているけれども,今,急速にこれだけ専門化・高度化が進んでしまったときに,大学は何をすべきかというところの役割が変わってきたと思うんです。その視点に立って調査をしないといけないのではないかと思います。
そうすると,「三つのポリシー」のところにしても,これはだから大学がどういうことをやっているかというのを,学生を大学の評価者にするわけではなくて,学生の意識調査をするのが今回の目的ですから,そうすると,学生がアドミッション・ポリシーに従って入学しているのか,だからちゃんと学生が意識しながら何を大学で得たいと思って入っているのかということをしっかり確認する必要があると思うんです。
それで,ディプロマ・ポリシーだとかカリキュラム・ポリシーに関しては,学生自身がきちんと将来ビジョンを持ちながら授業を選択しているのか,選択行動が明確になっているのかという調査をしなくてはいけないと思うんです。
それで,本来だったらこれが卒業後のところで追跡調査までしなければいけない調査だと思うんです。だから,大学に意識して入って,大学が設計した講座を学生たちが理解しながらきちんと選択していて,社会で活躍できているというところを調査・追跡する。だから,何か調査の対象が学年の1点単位で調査しようと思っているけれども,それぞれの学年のところで調査する項目は別々にあるのではないかと思うんです。それをしっかり全体像をつくり上げていかないと,今までの調査と余り変わらない調査結果になるのではないかと。飽くまでもこれは学生の意識・実態を調べる調査にしないと。大学を評価する学生の立場では,それは今まで自己評価・自己点検で十分やっていると思うので,そうでない採り方を。
それから,短期大学と4年制大学の問題ですけれども,要は専門的な知識だとか高度な技術ということを考えたときに,2年間の養成でできるものと4年間かけなければいけないもの,また6年間かけなければいけないものがあるわけで,そうすると,それによって職業ごとによって調査対象は多分違ってくると思うんです。だから2年間で十分であるならば,2年間で学生が意識して知識・技能をちゃんと身につけて社会に出ていく。そういうような形にしないといけないのではないかという感じを私はするのですけれども。
主体は,大学がしっかりやっているかということを調査するようなものではなくて,大学生の意識・実態を調査し,それがちゃんと社会のニーズに合ったもので育成が進んでいるかということを調査するところにしないと,今の大学の置かれている状況の中で
は余り適切な評価にならないのではないかという気がしています。以上です。

【河田座長】 何か根本的な問題提起のように思います。今日の会議は二度目でありますが,国がきちんとこういう学生調査に乗り出したということですので,先ほど千葉委員がおっしゃったような形にすぐに組み替えられるかどうか,ということも問題になる
かと思います。でも,根源的な御提案であったと思います。その辺のことを委員の先生方はいかにお考えでしょうか。小林雅之委員,いかがでございましょうか。

【小林(雅)委員】 ありがとうございます。これについてはおっしゃることはそのとおりで,これはエンロールメントマネジメントという,IRの中でも重要な手法なのですけれども,大学が学生の成長を順番に追いかけていく。できれば入学前から,高校時から卒業後まで全てをトータルに把握するのがエンロールメントマネジメントと言われるものなのですけれども。そういう中の一つとして確かに学生調査があるというのは,おっしゃるとおりです。
ただ,本来はそれをやろうとしたら追跡調査という形で行うべきであって,今回のように一時点だけで実施する調査では,それは不可能です。ですから,問題提起としては非常に重要だと受け止めますが,これは残念ながらアメリカとかイギリスに比べて,日本ではそういった追跡調査は国レベルでは,行われずに,私たちもまあ何度かやりましたけれども,なかなか難しい。今,幾つかの大学で行われていますが,そういった別の調査での方が今のところはいいと思います。ただ,将来的にはもちろん文部科学省にこういうことは考えていただきたいと,そういう問題提起だと考えたいと思います。
以上です。

【河田座長】 ありがとうございます。山田礼子委員,その辺のことを教育学者として,外国の学生調査とも比較しながら,どのようにお考えでしょうか。

【山田委員】 私も小林委員と同じような視点で調査をずっとやってきておりますので。全国調査でする場合に,その実態をどこまで把握できるかという視点と,そしてその追跡をしながら,というようになってくると,また設計も違ってくるかと思います。
各大学で,先ほど千葉委員がおっしゃったようなことをIR関係でされているところもあるでしょうし,アメリカなんかでしたらその追跡調査もかなり難しいわけですから,移動がすごく激しいので追いかけられないということで,オバマ政権のときに決まったのは,大学ごとに,州ごとにいわゆるソーシャルセキュリティーナンバーをずっと追いかけていって,卒業後10年後にどれぐらいの年収を獲得しているかということを追跡調査,つまり学修成果の一つとしてやっているような法案が通って,そのようにやっています。
ただ,これも州ごとで,そして大学ごとで全部出すわけなのですけれども,州自体によっての年収が全然違いますから,カリフォルニア州であったりニューヨーク州とか,そういうところの年収は高いのが当たり前ですが,ミシシッピ州になると当然ながら年収が全く下がりますから,それを一律に比較できないという問題もあったりしますので,議論はずっと続いているようなところでございます。

【河田座長】 ありがとうございました。
それでは次,論点5として,公表の内容・方法について御意見を伺いたいと思います。既に,まとめていただいた資料1ですと6点ほどの御指摘がありますけれども,この点につきましていかがでございましょうか。社会的に見て学生視点の情報が少ないとか,あるいは入学の偏差値ランキングということになってはいけないとか,学修者本位の教育への転換が云々(うんぬん)とかありますけれども。これにつきまして更に御意見をいただければと思います。岸本委員,どうぞ。

【岸本委員】 ここに関しましては御提案の内容でよろしいかと思いますが,個々の大学で利用できる視点をやはり入れていただきたいと思っております。

【河田座長】 そうですね。個々の大学が利用できるということが重要だということを御指摘くださいました。清水委員,いかがですか。

【清水委員】 括弧の中の,2回目の試行の提案について,1回目を受けて,2回目はもう少しこの数字がアップすると思います。特段ここについて意見はございません。

【河田座長】 公表の単位,大学単位でやるのか,学部単位に分けるかとか。

【清水委員】 本学も1回目は指定されたパーセント以上の回答率で,学部ごとに集計結果が送られてきました。でも,それは学内には公表していません。学部長には渡しましたけれども。学部といっても,学部の中で学科によってまた専門分野が違っています。例えば学部の中に福祉と教員養成が入っているようなところがございますので,そこはもう少しきめ細かい学科レベルというようなところでの公表が効果的かと思います。

【河田座長】 効果的に見てということですか。

【清水委員】 はい。

【河田座長】 服部委員はいかがでございましょうか。この調査は全体,設置別,学部別という形で分けられているわけですけれども,いかがお考えですか。

【服部委員】 基本的にはこれで結構と思います。ただ,やはりここに書かれていますように,大学・学部間での順位づけ,我々の意図とは関係なく,報道機関等がそれぞれの解釈をして,ランクづけの方に走りかねないので,そこについてはここに記載していただいていますように,特段の工夫をしていただき,どのような公表の形がいいかは今後検討が必要と思います。
国立大学については各法人の評価結果が公表されていますが,大学のランクづけのような報道をされることもありますので,そこについては是非検討していただき,より良い公表にしていければと思っています。以上です。

【河田座長】 高橋委員,どうぞ。

【高橋委員】 ここに関しては,基本的にはやり方はこれでいいと思うのですが,回答率がやはり大きな問題かなと思います。今回でいくと20%という程度でいってもこれだけ対象にならないところが出てくるので,そこをどうやってあげるかをしっかり考えないと,調査としての有効性が問題になるかなと思います。
そこにもありますように,前回は学部単位での公表みたいなことが最初の前提にあったので,そこの公表を今回の試行ではしないということですので,その辺りをきちんと大学に伝えて,その意図も含めてしっかりと伝えた上で,積極的に参加してもらえる形をつくる必要があるかと思います。以上です。

【河田座長】 そうですね,国公私立大学,そして短期大学に積極的に参加してもらうことが大事だということに尽きるかと思います。あといかがでございましょうか。小林浩委員,どうぞ。

【小林(浩)委員】 先ほど,前回も出ましたけれども,序列化とかランキングみたいなことがよく懸念されていますけれども,やはり今,高校生とかにインタビューすると,こんなことを言うんですね。「MARCHぐらい行っておかなきゃ」って言うんですね。MARCHという大学はどこにもないんですけれども,保護者に聞くと「うちの子はMARCHに行ってます」って言うんですよ。MARCHという大学はないんです。
なので,やはり序列化というよりは,大学の個性とか特徴がきちんと出るような形で,単なる数字の羅列ではなくて,そのreason why,なぜこのような数字になっているのかとか,うちの大学はこんな取組をしていますよというのをセットで公表ができるようになると大学の個性がより分かりやすくなると思います。せっかく調査をするのだから,それをきちんと分かりやすく伝えるところもセットで考えていく必要があるのではないかと思います。

【河田座長】 そうですね。関西だと,関関同立とか産近甲龍とか,大学を大づかみにいわゆるグループ化する,いろいろ言葉がありますけれども,確かに。

【小林(浩)委員】 勝手にグルーピングされているので,そうでない,やはりきちんとした中身を伝えていければいいかなと思います。

【河田座長】 そうですね。小林雅之委員,それから服部委員,お願いします。小林雅之先生,どうぞ。

【小林(雅)委員】 ありがとうございます。
学部別,大学別に公表しないというのは前回やりましたので,これでいいと思いますが,最後のところ,大学の自主的な公表を認めることについては,この調査の目的を考えますと当然各大学が自主的に判断されることですので,もちろん認めるべきだと思います。
その上で,最初の方の有効回答率と公表の関係なのですが,これはここにありますようにいろいろ議論した結果10%にしたわけですけれども,20,30%にしますとますます公表基準に達しない大学が増えるという問題があります。他方で,今までの御議論にあったように,こうした結果が独り歩きすることは避けられないですね。どうしても,服部委員が言われましたように,言わばランキングは勝手につくられてしまうわけですから。そうしますと,他方で,これは有効回答率の多い大学だけを公表することで,全国の大学の傾向ではないということも言えるわけです。特に30%以上では半数が対象になりませんので。ただ,そうはいっても多分,いろいろなところで単純に「全国の大学の学生調査をしましたらこうなりました」という調査結果が出てくることは避けられない面もあります。ですから,そこをどういうふうに考えるかという問題だと思います。
ですから,これは非常に難しい問題なのですけれども,10%,20%,30%で平均の回答の傾向がどう違うか。これは是非,公表するという意味ではなくて,この委員会の参考資料として,回答の傾向が,有効回答率が10%,20%,30%の大学を対象にした場合,どのように変わるかという結果を出していただきたいと思います。
以上です。

【河田座長】 いい御提言で,そういう形での傾向を明確にすることには役に立つかと思います。それでは服部委員,どうぞ。

【服部委員】 有効回答率ですけれども,これは先ほどあった調査項目の数と関係してくると思います。やはり回答に時間がかかると,それだけ回答を避ける学生が増えてくると思います。今回の調査ではおよそ6分だったところを次回は10分程度にすることについては,し疑問を感じていて,ユーチューブだと一編が大体3分から5分ぐらいですよね。特に若い人は見て瞬間的に5秒ぐらいで見るか見ないか決めるような話も聞きますので,なるべく項目は少なめにして,回答時間を短くすることが回答率を上げることにつながるのではないかと思います。以上です。

【河田座長】 ありがとうございます。あと奥明子委員,何かございますか。

【奥委員】 公表に関しては,大学の判断で公表はする方が私はよろしいかと思います。内容によって,先ほど服部委員もおっしゃいましたけれども,見る人はピンポイントでその部分だけを見て,「あ,この大学はちょっと」というふうに,やめておこうと考える人も結構多いのではないかと思うんです。やはり学生は正直にいろいろとアンケートに答えたとしても,それが決して大学にとってプラスにつながらない,逆にマイナスにつながることもあり得ると思うんです。やはり公表に関しては相当検討が必要なのではないかなと思います。
調査項目も,余り多くすると来ただけで答えるのが面倒くさい,答えるのをやめようと考える学生も結構多くなってくると思いますので,項目の方も厳選したよろしいかと思います。以上です。

【河田座長】 ありがとうございます。公表はやるべきだと短期大学にも言っていただいたら,それは非常に有り難いのですが。

【奥委員】 公表はした方がいいと思うのですけれども,大学にやはり選ばせると。全部が全部公表するのではなくて,大学の方でうちは公表をやめますとかどちらにするかは,それぞれの大学に選んでいただいた方がよろしいのかなと思いますが,それが決していいということでなければ,また検討させていただきます。

【河田座長】 ありがとうございます。
それでは次,6番目の論点,既成の学生調査との整理・調整ということで,先ほど奥委員からも三つぐらい名前が出て参りました。既に日本私立短期大学協会でもやっているし,また大学基準協会でも,更に日本学生支援機構でも調査をなさっている,と三つの学生調査名が上がっていましたが,こんなにたくさんやっておられるんだと私は驚きました。それらの学生調査とどういう形で整理あるいは調整していくのか。その辺のことに関して,御意見がありますれば,どうぞよろしくお願いいたします。高橋委員,どうぞ。

【高橋委員】 高橋です。
そこにも挙げていただいていますけれども,大学IRコンソーシアムで学生調査をずっとやっていまして,今回はまだ試行なので,類似の質問項目等を合わせることができないので,先ほどありましたように,参加については自由であることとともに,その参加しないことの理由として,同様の調査をしているということでも参加しないでいいよというようなことを大学には伝えていただければと思っております。
前回のときに,IRコンソーシアムの加盟大学の中で両方やらなければいけないということで,学生に同じ時期に別の調査を二つ頼むようなことがありまして,その辺りは非常に学生にとって不利益なことは本来やってはいけないと思いますので,その辺りはよろしくお願いします。
あとは,本格実施のところを,来年度以降早めに決めていただければ,コンソーシアムとしては調査項目,類似項目を同じ質問項目に合わせて実施した上で,一つの調査で両方に回答できるような形にしていきたいと考えています。
そこにありますように,どうしてもこの調査は学籍番号等の個人情報が採れないので,大学がIRというか,きちんと学修成果と実際の成績とどう関係しているかみたいなところを分析しようと思う調査等はどうしても必要ですので,そういう点ではそこが二重にならないような工夫はしていただければと思っております。
以上です。

【河田座長】 高橋委員のおっしゃった,既にやっておられるコンソーシアムは何ていうコンソーシアムですか。

【高橋委員】 大学IRコンソーシアムというコンソーシアムです。今,60大学が参加していて,毎年10万人ぐらいの学生が学生調査に回答してもらっています。

【河田座長】 そうですか。ありがとうございます。 山田委員,どうぞ。

【山田委員】 高橋委員が説明しにくい点もあるかと思いますので,私,かつて大学IRコンソーシアムも同志社が発起人大学でおりましたが,今,抜けておりますので,自由な立場で発言できるのですけれども。
大学IRコンソーシアムはやはり参加大学からお金をもらって調査をしているという点がございます。ですからある意味でサービスとしても行っていて,ですからこの調査を国が行う場合,公表したり,それからできる範囲を,ある意味お金をもらって行っているところとは違う形でしないと,フリーで参加できるところの方が,ある意味で大学にとってはやはり予算から考えますといいと思いますので,その辺の調整はやはり必要かなと思っています。
これは短期大学基準協会も同じでありまして,参加費を頂いて,サービスをという形で中身を分析してお返しする形なのですけれども。こういう形で行っているのは恐らく日本とイギリスだろうと思うんです。アメリカは全くそれをしていないです。アメリカは全て大学がお金をもらって各大学に参加していただいて,サービスとしてお返ししますので,公表の部分も全体だけで出しているような感じです。だからその辺りも,やはりこれを本格実施していく上で,調整はすべき論点として考えていくところが要るのではないかと思ったりいたします。

【河田座長】 清水委員,どうぞ。

【清水委員】 特に意見はないのですが,今,短期大学基準協会で山田礼子委員や小林雅之委員の協力で毎年調査をしているのですが,参加校もある程度一定になり,参加する学生数もだんだん増えつつあります。それで今後も継続していくということになっております。協会の事業としてやっていくわけです。
この全国学生調査は学生の負担ということでは,スマートフォンで1回15分ぐらいだったらそんなに負担とは思わない。むしろ,これで学生の成長実感が明らかになるだったら,大学にとっても,あるいは日本の国にとっても,大変アピールできるものができると思います。
それよりもむしろ,各大学に毎日のようにいろいろな調査が来ています。職員が本当に閉口するぐらいです。参っていますね。答えなくてもいいよと言っても,事務職員は真面目ですから,みんな丁寧に答えてしまう。正に調査大国じゃないが,余りにも多過ぎます。この調査とは関係ないですが,こうした状況を文部科学省にお伝えしておきたいと思っております。

【河田座長】 それでは最後の7番目でございますが,調査の実施主体ということで御意見を伺いたいと思います。試行実施では一応,文部科学省と国立教育政策研究所との共同実施ということでありましたけれども,今後,本格実施に向けていかがでございましょう。やはり私個人としては,国が,文部科学省が,責任を持って実施することが一つの文教政策の重要な課題だと考えるのですが。その辺に関して,率直な御意見をいただければと思います。小林雅之委員,いかがでしょうか。

【小林(雅)委員】 この問題は非常に重要な問題でありまして,そんなに簡単に答えが見つかる問題ではないと思いますので,双方いろいろなメリット・デメリットを考えて結論を出すべき問題だと考えています。
河田委員長がおっしゃったように国が主体になって責任を持つという考え方も非常に重要だと思いますけれども,逆に言いますと,国が主体になることに対して特に大学側には抵抗がある場合もあるわけです。ですからその辺りをどう考えるかということです。行政調査という意味合いが非常に強くなってきますと,特に機関を調べるわけではなくて学生を直接調べることになりますので,抵抗も出てくると思います。その辺をどう考えるかという問題があります。
一つ参考になるのは,かつては文部科学省は様々な調査を行ってきたわけで,学生生活調査も文部科学省がやってきたわけです。ところがこれが,2004年だったと思いますけれども,日本学生支援機構に移管されたわけです。こういうことが傾向としてはありますので,その辺りは国立教育政策研究所に移管することも考えられます。ですから,この調査がどのように社会的に認知されていって,どの程度の影響力を持つかということとも関係しますので,これは慎重に考えるべきです。すいません,今のところ,私はそういうことで答えは出せません。以上です。

【河田座長】 分かりました。山田委員はいかがでございましょうか。

【山田委員】 私もここはすごく難しいと思うのですけれども,国立教育政策研究所でしたら,多分調査を分析するという意味では非常にフットワークが軽いところもあるのかなと。軽いかどうかはちょっと濱中先生に聞かなければいけませんけれども。蓄積などもあるのでと思ったりするのですけれども。確かに国がすることの意味は非常に大きいものがありますので,これをイギリスなどでは国ですし,だけどアメリカは全く国は行っていなくて,大学のそういう団体が,研究所みたいなところが行いながらするという自由性もあります。ただそれも,それはそれで浸透しているわけなのですけれども。その辺りをどう考えるかということにもなってきて,研究面としての意味合いが残っているのと残らなくなるのが,どういうような捉え方になるのかなというところもやはり慎重に,私自身も小林委員と同じで,すぐに結論として出せないところです。

【河田座長】 なるほど。分かりました。
あと,ほかの先生方,何か。国立大学協会の代表であられる服部委員,その辺はいかがでしょうか。もちろん,公式な立場でなくても,個人的御意見として御発言ください。

【服部委員】 国立大学協会の代表ということではなく,個人としての意見ですが,今,小林委員と山田委員のお話を伺っていて,おっしゃるとおりかと思います。ただし,この調査の目的の3番目に,政策に生かすということがありますので,何らかの形で文部科学省に関わっていただくのが良いように思います。そうしないと,調査結果を政策で活(い)かしていくときに切れてしまうことを心配します。主体はどなたにするかということは慎重な審議が必要かと思いますが,できれば何らかの形で文部科学省には関わっていっていただければと思います。

【河田座長】 分かりました。清水委員,どうぞ。

【清水委員】 私も今,服部委員の意見に賛成です。文部科学省が毎年財務省への概算要求で頭を悩ませていますが,この学生調査の結果が翌年度の概算要求にプラスに働くような資料になることを私も期待しているのです。そういう意味で,目的の3番目ということから,文部科学省が主導してやっていった方がいいと思います。国立教育政策研究所も非常に優秀なスタッフを有し組織力がありますので,そこの協力を受ける形でいいのではないか。
以上です。

【河田座長】 分かりましてございます。
あと,ほかの御意見,何かお気づきになったこと,今日の議論全般につきましてでも結構ですので,ございますか。今の調査実施主体というのは,慎重に考えるということですが,国立教育政策研究所にお願いしてみればという意見もありましたので,最後にオブザーバーの濱中副部長から何か御意見があれば,よろしくお願いします。

【濱中オブザーバー】 実施主体については去年も議論しまして,先ほど小林委員や山田委員からあったような話だと思います。文部科学省が直接やるとやはり行政調査ということになるので,そこに研究機関として研究者が絡んでいるという形にするため,国立教育政策研究所の名前を連ねてやった方がよいのではないかということで,共同実施となった経緯があります。
ただ,国立教育政策研究所がそれによって何か組織ができたり,予算がついたりしているわけではないですし,非常に負担がありますので,なかなか実査を全部回すのは難しいので,当面やはり文部科学省と協力しながらやっていくことにせざるを得ないかなと思っております。

【河田座長】 了解です。あと事務局の方から,御意見があればどうぞお願い申します。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 本日お示しした論点整理でいろいろ御意見を頂きましてありがとうございます。次回会議に向けての整理の方向性について再度私から申し上げて,事実誤認がないかだけ確認をさせていただければと思います。
まず,目的のところは大体このとおりだけれども,出口の視点みたいなものもあってはいいのではないかという御意見があったかと思います。そこを目的にストレートに入れるかどうかは別にして,例えば設問項目の中での工夫を少し考えていきたいと思っています。
対象の学年ですけれども,第2回試行実施では,複数学年を対象とすることとし,4年生は入れようということをトライアルで行ってみる。時期は第1回試行実施と同様の11月から12月がいいのではないかという御意見が大半だったかと思います。ただし,3年生にとっては,自分の学生生活の振り返りになったという学生の声もありましたので,最終的には対象学年を1学年に絞るのか,複数学年にするかは次の試行実施も踏まえて考えてみてはどうかと思っています。
その場合ですが,大学の事務局から学生に対して周知するときに,1学年に周知する場合と例えば複数学年に周知する場合で,事務的な負担が違うのかどうか,負担が増えるのかどうかを,次回の有識者会議で,大学側の運営というか周知の観点で負担があるかなどについては,是非お聞かせいただければ有り難いと思いました。
質問項目につきましては,先ほど座長から委員の皆さまのアイデアを頂きたいという御発言がありましたし,千葉委員からも御発言ありましたように学生の意識とか意欲みたいなものが欠けているところもありますので,次回に向けて現行の質問項目の見直し案,新しい視点からの質問項目の追加案,あるいはコロナ特有の質問項目等について御提案をお願いしたく,事務局から改めて御連絡させていただきます。服部委員からも御発言ありましたように,我々も50問丸々という認識はありませんで,やはり質問項目は厳選して,本当に学生さん自身も知りたい内容ですとか,あるいは共通的に必要な質問項目を厳選していきたいと思っています。
公表については,試行実施の段階はこの集計・公表で行うにしても,本格実施に向けて第2回試行実施の回答率をどう高めるかなどは,少しまた今後の議論になると思っています。やはり単なる偏差値,グルーピングだけではない大学の姿,あるいは大学が頑張って教育に取り組んでいること,学生自身の意識みたいなものもしっかり伝えていくことが必要であると考えております。実際に各大学のデータを見ますと,同じ分野,学部名であっても大学によって質問項目ごとに回答の状況が実は違っています。地方大学でこういう特色だとうたっているところは,それが実は回答結果に表れているということもありますので,そういう結果をどのように伝えていくべきかについては引き続き御議論いただければと思っています。
回答率のところですが,有効回答率の基準としての10%と30%の回答傾向を比較することができるのかについては,例えば回答率が70%のところで,例えば10%抽出をしてみるとか,そういうところで大学の回答率に差が出るかみたいなものは,少し分析ができるのかもしれませんので,努力していきたいと思っております。以上でございます。

【河田座長】 ありがとうございました。
今日も活発な御意見,建設的な御意見,根本的な御意見が次々に出て有り難く思っております。次回の会議までに1か月半ほどありますので,何か更に御意見がございましたら,11月中旬ぐらいまでに,事務局にお出しいただければ有り難く存じます。
それでは本日はここまでにさせていただいて,次回の予定について事務局から御説明ください。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 本日も活発に御議論いただきまして,ありがとうございます。次回の会議は12月10日,木曜日,10時から12時を予定しております。開催方法等につきましてはまた追って御連絡させていただきます。また,質問項目等々の御提案につきましては,別途メールで御連絡させていただきますので,よろしくお願いいたします。
以上でございます。

【河田座長】 本当にありがとうございました。ここで終了させていただきます。

―― 了 ――
 

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