大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議(第10回)議事録

1.日時

令和3年2月12日(金曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省13F3会議室

3.議題

  1. 調査書の電子化について
  2. 審議のまとめ(骨子案)について
  3. その他

4.出席者

委員

(有識者委員)圓月主査、川嶋委員、髙井委員、井上委員、石崎委員、西郡委員、星野委員、巳波委員、柴田委員、柴原委員、田中委員、長塚委員、牧田委員、明比委員、垂見委員、髙田委員

文部科学省

西田大学振興課長、前田大学入試室長 他

5.議事録

【圓月主査】
 それでは,定刻となりましたので,ただいまより第10回大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議を開催いたします。
 本日の運営形態及び出席者等について,事務局から御報告をお願いいたします。小川専門官,よろしくお願いいたします。
【小川大学振興課専門官】
 事務局の小川でございます。本日の会議につきましても,ウェブ会議の形で開催をさせていただきます。委員の皆様におかれましては御多忙の中,遠隔での御出席をいただきまして,誠にありがとうございます。
 本日も傍聴者,報道関係者の入室は認めておりませんが,現在YouTubeでライブ配信をしております。また,議事録は後日ホームページに掲載することとしたいと思います。
 以上のような方針でよろしいでしょうか。ありがとうございます。
【圓月主査】
 ありがとうございます。
【小川大学振興課専門官】
 本日は全員の委員の先生が出席でございます。
 議事に入る前の連絡事項でございます。こちらも繰り返しで恐縮ですけれども,聞き取りやすいようはっきり御発言いただくようお願いいたします。発言の都度お名前をおっしゃっていただく,資料を参照する際は該当箇所などを分かりやすくお示しいただくなどの配慮をいただくようお願いいたします。また,発言を希望される場合は挙手ボタンを押していただく,指名された場合はミュートを解除してから発言していただくなどお願いいたします。
 なお,本日は事務局に初等中等教育局教育課程課も参加しております。
 以上でございます。
【圓月主査】
 それでは,議事に入ります。本日は,最初に調査書の電子化について審議を行いたいと思います。前回の会議の際,私から,政府全体のデジタル化の動き等にも柔軟に対応していけるように,複数の実装方法等を検討するのがよいのではないかと提案させていただき,御了承をいただきました。本日の会議では,複数の実装方法の検討も含めた電子調査書システムの概要について,巳波委員から意見発表がございます。
 まず,事務局から資料の説明をお願いいたします。
【小川大学振興課専門官】
 事務局でございます。まず先に事務局から,参考資料1に基づきまして,今週の火曜日,2月9日付で閣議決定されましたデジタル改革関連法案の概要について説明いたします。
 参考資料1の1枚目からになりますけれども,こちらの法案は全体では6本の法案でございますけれども,そのうち3本の法案の概要について説明をいたします。これらの法案は今後国会で審議され,9月1日の施行を目指すというスケジュールになっております。
 1枚目,青い資料,デジタル社会形成基本法案の概要でございますけれども,こちらはデジタル社会の形成に関しまして,基本理念,施策の策定に係る基本方針,国,地方公共団体,事業者の責務,デジタル庁の設置などを定めるものでございます。
 2ポツの基本理念のところですけれども,ゆとりと豊かさを実感できる国民生活,安全で安心して暮らせる社会の実現,利用の機会等の格差の是正,個人及び法人の権利利益の保護等が規定されております。
 4ポツのところ,施策の策定に係る基本方針ですけれども,多様な主体による情報の円滑な流通の確保(データの標準化等),アクセシビリティの確保,人材の育成,生産性や利便性の向上,国民による国及び自治体が保有する情報の活用,公的基礎情報データベースの整備,サイバーセキュリティの確保,個人情報の保護等のために必要な措置を講じると規定されております。
 デジタル庁の設置につきましては,2ページ目の赤い資料で説明をいたします。
 2ポツにデジタル庁の所掌事務が規定されておりますけれども,今後調査書の電子化が関連してくる可能性がある事柄といたしまして,(2)の分担管理事務の,下から2番目のポツですけれども,国・地方公共団体・準公共部門の民間事業者の情報システムの整備・管理に関する基本的な方針の作成及び推進とあります。こちらにつきましては,ここで準公共部門の中には,例えば医療分野であるとか防災分野,あるいは教育分野などが想定されておりますけれども,今後システムを整備するに当たりましては,デジタル庁と協働して進めていくことが必要になる可能性があるというものでございます。
 最後,3ページ目,緑の資料ですが,こちらはデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案の概要でございます。関係法律の改正のうち大きなものとして,一番上の個人情報保護制度の見直しというものがございます。データの利活用に当たりましては,個人情報の法的な定義が民間と公的部門で異なることや,自治体ごとに個人情報保護条例の規定や運用が異なるといった支障が生じているという指摘がございますけれども,国・独立行政法人・民間事業者と法律の対象ごとに異なる3本の法律であったのを,1本の法律にすると。あるいは,自治体の全国的な共通ルールを策定するなどを行うこととなっております。
 説明については以上でございます。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは,巳波委員より意見発表をお願いいたします。20分程度の時間を準備しておりますので,よろしくお願いいたします。
【巳波委員】
 巳波です。よろしくお願いいたします。資料1-1を御覧になられますでしょうか。画面共有はされますでしょうか。特にないでしょうか。
【小川大学振興課専門官】
 すみません。画面共有はなしでございます。
【巳波委員】
 分かりました。では,お手元の資料1-1と1-2を御覧ください。それに沿って御説明いたします。まず,資料1-1から御説明いたしますので,よろしくお願いいたします。
 これまでに資料1-1と1-2,それと参考動画をお送りして,御覧になっているかと思いますけれども,それにつきましても概要を御説明いたします。
 まず,資料1-1ですけれども,調査書活用のための電子調査書システムの概要ということで,これまで委託事業で検討してまいりましたものを簡単にまとめたものでございます。時間の都合上,詳細までは御説明できませんが,御了承ください。
 3ページ目を御覧ください。右下のところに14分の3と書いておりますけれども,電子調査書システム全体の概要が書かれております。この電子調査書システムは,これは概念図でございます。高等学校と電子調査書システム,大学と,大きく3者があります。そして,高等学校と大学をネットワークで電子的につなぐものが電子調査書システムという位置づけでございます。
 どういう機能を持っているかというところですけれども,まず高校生が大学に出願をします。その場合は,大学提出用データというものを作らなければなりません。これは出願に必要な受験生の個人情報に加え,志望理由書や成果証明書など,大学ごとの求めに応じて用意するものでございます。しかし,これらの情報は現在ではすべて電子的に用意できるものですので,これを電子的に大学提出用データとしてまとめたものでございます。
 一方,高校の教員のほうは,電子調査書を作成いたします。これは現在でも多くの高校が様々な企業の校務システムを利用されているかと思いますけれども,そういうものを用いて調査書を作ります。それを電子調査書として電子調査書システムにアップロードする。それと大学提出用データをひもづけます。ここは調査書の中身は,もちろん生徒は見ることができませんので,ここで生徒に示されるのはコード,番号だけです。それをひもづけることによって,ひもづけられた大学提出用データを大学に送るということになります。そうすると大学は,そのコード,番号に基づいて,大学提出用データと電子調査書データを受け取る,ネットワークを介して電子的に受け取るという形になります。これが電子調査書システムの概要,流れでございます。
 先ほどの3ページのものは全体的な概要でして,その実現方法には様々なものがございます。実現のためには,様々な技術の組合せがあるのですけれども,ここでは代表的なものと考えられるものを4つ御紹介したいと思います。
 まず一つは,このA案と書いてあるものですけれども,各大学で出願システム,電子調査書受付システムを開発して用意します。まず受験生は大学提出用データを用意します。それを高校に送ります。高校は受験生から送られた大学出願用データ,大学提出用データと電子調査書を併せて,各大学の出願システム,電子調査書受付システムに高校が入力していく,高校の先生方が入力していくというものでございます。いろいろ今,お考えになっているところもあるかと思いますが,この辺りのメリット・デメリットは後でまたまとめて御紹介しますので,ここではこういう実現形態もあるということで御理解ください。これは受験生から高校に送って,高校から各大学に送るという流れ,システム構成でございます。
 次,5ページ目のB案は,今度は各大学が出願システム,電子調査書受付システムをつくるというのは同じなんですけれども,高校が電子調査書を受験生に送る,生徒に送る。そして,各生徒が各大学の出願システムとか,電子調査書受付システムにアップロードする,提出するという流れでございます。この場合は電子調査書を暗号化しておかなければなりませんので,その暗号化を解除するためのパスワードを大学に送付することが必要となります。これも公開鍵暗号とかを用いることもできますが,取りあえずここではこのように書いております。
 C案,6ページを御覧ください。これはアプリを用意しておいて,受験生はそのアプリにデータをアップロードするというか,送るという形になります。高校も同じようなアプリに電子調査書を送るという形になります。送られたデータは民間事業者のクラウドに暗号化された形で保管されることになります。そして,各大学は必要な情報をクラウドからダウンロードするというものでございます。これはアプリを介して受験生・高校・大学間でデータがやり取りされるというものです。ただ,データをどこで保管するのかという問題はありますが,ここでは民間事業者の様々なクラウドを利用するという方法を取っております。それがC案でございます。
 D案ですけれども,さらに詳しい実装方法の違いで2つに分けております。これは電子調査書システムという概念的に一つのものを用意いたしまして,そこに受験生や高校がデータをアップロードする。出願用データまたは電子調査書データをアップロードする。それを各大学が同じシステムからダウンロードするという形になっております。
 D1案のほうは,複数のデータセンタに分散化して実現するものです。これも一つのパソコンの中に全部入っているというものではなく,また一つのサーバーの筐体の中に入っているというわけではなく,セキュリティまたは災害に対しての強度を保つために,複数のデータセンタに分散化するなり,様々な対策を取った上で実現するというものでございます。
 D2のほうは,ブロックチェーンで実現するというものでございます。8ページにD2があります。このブロックチェーンというのは,御存じの方も多いと思いますけれども,改ざん困難性など,様々なよい性質を持っております。そういうものを利用して公的な文書を安全にやり取りするための一つの方法でございます。
 9ページを御覧ください。表の形でまとまっております。見にくいとは思いますけれども,御説明いたします。A案からD案まで,D1・D2案はまとめておりますが,大きく4つの案がございます。縦軸といいますか,行のほうは,各メンバーのメリット・デメリットについてまとめております。
 まず1行目のところを御覧ください。高等学校・受験生の費用・稼働負担のところでございます。これはA案・B案につきましては,大学ごとに出願しないといけないということですので,高校生,受験生がデータを提出するか,または高校がデータを提出するかに関わらず,どちらにせよ高校側の大きな負担となるかと考えられます。
 C案・D案も続けていきますけれども,C案につきましては,別の問題がございます。民間事業者のクラウドの利用料は誰がどのように負担するのか,またアプリ開発ですね。アプリがあればいいと言うのは簡単なんですが,このアプリ開発を誰が負担するのかという問題がございます。また,責任所在が不明瞭になるという可能性があります。
 一方,D案につきましては,これは一つのシステム,公的な一元的な組織が運営するという形になりますので,そういう意味では責任所在は明確でありますし,負担は大きく軽減されるのではないかと思います。また、使うところが一つだけに限定されているので,あちらこちらにデータを提出するということもないので,分かりやすい形となっているかと思います。
 次に2行目,大学の観点から見てみると,A案・B案は大学個別にシステムを用意しなければならないため、大学側の負担がかなり大きいということになります。C案・D案につきましては,大学は直接は負担することはないかもしれませんが,C案のほうでは,アプリとかクラウドの利用料は誰がどう負担するのか,ここがなかなか難しいところかと思います。D案につきましては,これは一つのセンターといいますか,組織が全部管理しますので,その意味では,大学が個別に負担することはなくなると思われます。
 リスクに関しましてですけれども,A案・B案につきましては,送り間違いとか取り違えする危険性は拭えません。C案につきましては,アプリでシステム上チェックできますので,その点につきましてはリスクは軽減される。D案のほうも,システム上でのチェックがありますので,その点では軽減されると思われます。
 一元的な運営管理組織の必要性につきましては,A案・B案につきましては,なくても大丈夫かと思いますが,C案はそもそもアプリを誰がどのように開発するのか,ここはやはり一元的な組織が必要になるのではないかなと考えております。D案はもともと必要なもの,そこの組織が運営するというものですので,ここはあるということになります。
 大きく4つの実現方法と,それぞれのメリット・デメリットにつきましてまとめたものが,こことなっております。
 その次,10ページ,11ページと続いておりますけれども,この辺りはテクニカルな話ですので,ここでは割愛させていただきますけれども,複数のデータセンタで分散化して実現するか,またはブロックチェーンで実現するかというものでございます。この辺りは,D1案のほうは既に枯れた技術といいますか,一般的な技術を用いることができますので,すぐに実現することが可能です。本学が委託事業で特に詳細なところまで実現方法を検討してきた電子調査書システムは,このD1案に基づくものでございます。
 D2案のほうは12ページでありますが,これはブロックチェーンを利用したものです。これにつきましては,まだ実装して動作テストをしているわけではありませんので,もしこの方法を実現するとなると,実際に実装して動作検証をする必要はまだ残っているかとは思いますが,こういうやり方もあるし,一般的にはこういうやり方で開発されている類似のシステムもございますので,実現可能かなと考えております。
 ここまでが,今まで委託事業で検討しておりましたものでございますが,このD1案に基づいて実際に検証用システムを開発して,動作検証を行いました。それにつきまして簡単に御説明いたします。資料1-1では,別資料を見てくださいと一番最後のページに書いておりますが,資料1-2を御覧ください。別途お送りした参考動画もありますが,ここではパワーポイントでまとめたものになっております。これも大部ですので,かいつまんでポイントだけ御説明いたします。電子調査書システムの操作イメージです。実際にこのようなものをつくりましたが,何人かの先生方には実際に使っていただきました。
 まず,生徒がどのようにこのシステムを利用するのかというところのイメージを御説明いたします。2ページ以降ですけれども,最初,ログインのところとかは,この辺りは普通のシステム利用と同じです。本人認証したりするところでございます。
 ポイントは8ページ,9ページあたりですね。電子調査書の提出が必要な大学でありましたら,調査書を提出する大学名を選ぶというところでございます。そうすると,大学への提出が可能となります。
 11ページのところにイラストがありますけれども,高校への調査書発行依頼というところですが,出願提出用データの準備ができたら,この電子調査書を先生に用意してくださいとお願いする。そうすると,先生が用意して,電子調査書をアップロードするわけですね。そうすると,電子調査書をひもづけられる形になります。それが12ページ以降ですけれども,ここでは13,14,15ページあたりを御覧ください。電子調査書が用意されると,その電子調査書をひもづけることができますので,それを選択してひもづけて,アップロードできる形となります。生徒がやるのはこれだけでございます。
 なので,ウェブ出願の場合はデータを各大学のウェブ出願システムに送ればいいだけですし,そうでない場合も,郵送で送ると各大学はQRコードを読んで,電子的なデータを各大学でダウンロードできるようになります。生徒がやるのは,先生に調査書を書いてくださいと依頼し、先生に電子調査書をアップロードしてもらって,あとは自分で出願データを用意して,出願大学を選んでボタンを押すだけと。それだけの簡単な作業になります。
 続きまして,大学編のところです。20ページ以降を御覧ください。大学がやるのは,はっきり言ってダウンロードするだけではあります。ウェブ出願システムやQRコードによるダウンロードによって電子データを受け取ります。受け取った後にできることについては,28ページ以降を御覧ください。28ページに書いてあるように,各生徒さんの調査書を選んで中身を閲覧することもできます。30ページに書かれておりますけれども,電子調査書はXML形式で,全部共通のフォーマットで用意されますので,調査書データファイル(XML形式)のダウンロードも可能です。
 その後,各大学で使いやすいように,各大学で自由に加工されてもいいし,そのまま利用されてもいいですし,可搬性の高いような,汎用性の高いような使い勝手のものにしております。そういうデータ形式にしております。志願者の調査書をダウンロードして,その後の判定,主体性評価をするなり,合否判定などに使うことができるようになります。
 34ページを御覧ください。電子調査書システムのメリットですけれども,これまでは紙で受け取って,それを電子的に入力する必要がありましたけれども,その作業は一切なくなりますので,大学はデータをダウンロードして,それもXML形式だったりするので,自由に比較的簡単に加工できる形となっております。かなり稼働が削減できると思われます。
 次,高校のところです。先生編というのは高校の先生のことです。37ページを御覧ください。
 まず,ここでは一つの校務システムを例として挙げておりますが,様々な校務システムで同様のことが可能かと思われます。校務システムは,使っていらっしゃるところも多いかと思います,
校務システム上で指導要録を作り,電子調査書を出力するというボタンを押せば,電子調査書が統一的なフォーマットで出力される形となります。電子調査書のXML形式を共通で決めておけば,校務システム事業者に寄らず,どの校務システムからでも同じXML形式の電子調査書が出力できるようになります。
校務システムを使っていない場合でも,一般公開する共通XML形式で出力するものであれば対応可能です。
 45ページは,これは先ほどの高校の生徒さんとのつながりなんですけれども,生徒さんから調査書を出してと頼まれれば,その後,調査書を先ほどの要領で出力して,そして電子調査書システムに登録するという形となります。それは先ほどと同様に,システムに入っていただいて,そして52ページあたりから御覧ください。当該の学生を選んで,その生徒の調査書をその生徒にひもづけるという作業を行います。それも,54ページあたり,ファイルを選んで,確かにその生徒かどうかを確認して,55ページ,確認して,ボタンを押して登録するという,これだけの作業でございます。先生が行うのはこれだけになります。
 61ページを御覧ください。出願直前に作業が集中したのですけれども,これからこのシステムを利用すると,ふだんは校務システムなどを用いて生徒さんの情報を蓄積しておき,必要な時期になれば,電子調査書システム出力という形のボタンを押せば,そこで決められた形のフォーマットで電子調査書が出力されて,それを電子調査書システムにひもづける作業をボタン一つで行うだけですむようになりますので,高校現場にとっても大きな稼働削減につながるのではないかと考えております。
 これが電子調査書システムの実際の使用イメージでございます。このようなものを作り,動作検証を行って,様々な委員の方にも実際に御利用いただいて,動作イメージをご理解いただいたものでございます。
 ちょっと長くなって申し訳ないですけれども,私からの説明は以上となります。御質問などがありましたら,よろしくお願いいたします。
【圓月主査】
 巳波委員,どうもありがとうございました。非常によく準備された報告をしていただき,勉強になりました。
 何か御質問,御意見等がございましたら,御自由によろしくお願い申し上げます。
 それでは星野委員,よろしくお願いいたします。
【星野委員】
 長崎大学,星野でございます。丁寧な御説明,ありがとうございました。あと,ビデオも拝見させていただきました。よく理解ができました。
 それで,生徒編の一番最初のところなんですけれども,生徒が最初にログインID・パスワードを入力とあるんですが,そもそもの登録というのは,生徒自身がこの電子調査書システムに登録するということでしょうか。
【巳波委員】  
 御質問ありがとうございました。このIDとパスワードの登録のところにつきましては,ここでは割愛いたしましたけれども,様々なやり方が考えられます。まず高校で用意して,それで各生徒に渡すというやり方,また生徒のほうで用意して,それを先生に伝え,先生が承認するというやり方,様々なやり方がございます。いろいろなやり方を全てこの場でご説明するのもなんなので,ここでは割愛いたしましたけれども,ここの方法についても詳細に検討いたしました。これと決まっているわけではありません。いろいろなやり方があるかと思います。
【星野委員】
 ありがとうございます。
【圓月主査】
 ありがとうございます。星野委員,何かございましたら。
【星野委員】
 もう一つよろしいでしょうか。
【圓月主査】
 結構です。
【星野委員】
 高等学校の成績が電子調査書システムになる,電子化された調査書になるときに,コードで教科名とか科目名が対応しているというお話だったと思うんですが,高校が独自に設けた科目等については,これはコードが割り振られても,科目名が分からないと大学側では内容が分からないと思うんですが,そういうものはどのようになるんでしょうか。
【巳波委員】
 高校独自に決めた科目の扱いについては,現時点では,このようにするというのを決めているわけではございません。その辺りは自由に,柔軟に対応できるものですので,基本的なものは用意しておいて,その後の部分は,例えば高校で独自に決める科目という部分をつくっておいて,そこに自由に入れていただくという形になるかと思われます。
【星野委員】
 ありがとうございました。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは,井上委員が手を挙げてくださっておると理解しておりますので,よろしくお願いいたします。
【井上委員】
 井上でございます。ただいまの星野委員の御質問に関して,学校設定教科があるという話でしたので,それについて,ちょっとお話をさせていただきたいと思います。
 私どもは高校で使われる統合型の校務支援システムの標準化を行っておりまして,今回採用いただいている教科コードというのは,我々のほうで準備したものをお使いいただいていると理解をしております。その中での学校設定教科の考え方ですけれども,学校設定教科という項目は用意されています。それはコード番号として当てはめておりますけれども,その下に実は自由記述の欄が設けてありまして,各学校で教科設定したものに関しては,こういう教科をつくりましたという教科名を別に入れていただくという設定にしておりますので,それを表示するかしないかというのは,またシステムでの話になるかと思いますけれども,一応,学校設定教科は枠としてはあって,項目を入力する枠は用意されていると。そういう御理解をいただければいいかと思います。
【圓月主査】  
 ありがとうございました。貴重な補足をしていただき,ありがとうございます。
 石崎委員がその次に手を挙げてくださっているでしょうか。その後,明比委員にお願いします。
 まず,石崎委員からよろしくお願いします。
【石崎委員】
 石崎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 巳波先生にお伺いすることじゃないのかもしれないんですけれども,今,多分,出願と一体となったシステムになっていて,例えばD案にしてもA案にしても,受験生が出願を決めてから,調査書をここの大学へ送るという形になると思うんですね。
 現状は今,どうやっているかというと,例えば12月の段階で高校生,受験生が,「私は10校受けるから,宛名のない調査書を10通下さい」と言って,それを10通もらっておいて,大学入学共通テストが終わってから,どこの大学に出願するって,送っているわけです。
 ところが,今度のシステムだと,大学入学共通テストが終わってから出願先を決めて,その後,このシステムは今の御説明だと,高校のほうでこの大学へという登録作業を行うような感じに受け止められるんですけれども,そうすると,かなり日程的に厳しくなるんじゃないかな,大学入学共通テストが終わってからの作業に全部なっちゃうのかなという心配があるのが1点です。
 もう1点お伺いしたいのは,例えばD案のようなシステムをつくったときに,全部の大学がこれに参加してくれるのかどうかということなんですね。要するに,短大も含めてになるとは思うんですけれども,こっちの大学はシステムを使わないから紙でくれとか,こっちの大学は独自のシステムで出してくれとか,そういうことにならないように,全大学が短大も含めて,もしくは専門学校も含めて参加できるようなシステムを目指すのかどうかということで,システム上,制約という意味では巳波先生にお返事いただく部分もあるかと思うんですが,教えていただければと思います。
【巳波委員】
 石崎先生,どうもありがとうございます。まず1点目ですけれども,事前にたくさん用意しておくのがよいのかどうか,そういう調査書の発行の仕方が適切かどうかというところにつきましては,私はよく分かりませんが,受験生がこの大学のための調査書を欲しいと言ってきてから発行するというのが本来の流れかなというイメージを私は思っております。
 ただ,現在の状況でそのようにやると,先生方は確かに大変でしょう。しかし,この電子調査書システムでは,データの中身は指導要録などに基づいて普段から用意していることになります。生徒から依頼されて電子調査書を渡す際には,発行ボタンを押すだけになりますので,そういう意味では,集中するといってもボタンを押すのが集中するだけになりますので,先生の御負担的には,むしろ減るのではないかなと,また平滑化されるのではないかなと考えているところではございます。
 2点目は,紙の大学と電子の大学が混ざると高校が大変だとのご指摘かと思います。まさにそのとおりでございますので,ここは電子化を行うなら全大学等で一斉に進めるよう文科省さんが音頭を取って進めていただくような形を取らないと,バラバラに進めるとなると高校側の負担が増大すると私は思っております。
 以上です。ありがとうございます。
【圓月主査】
 よろしいでしょうか。
 それでは,明比委員,よろしくお願いします。その後,髙井委員にお願いいたします。
【明比委員】
 神奈川大学の明比です。詳細な説明をありがとうございました。
 大学側としてお伺いしたいんですが,A案の場合は高校から電子調査書が各大学に送られてくる。この場合は電子調査書を開ける鍵というのは特に書かれていないので,これはそのまま大学で受け取ったら,すぐ開くのか。
 B案のほうは,受験生が各大学に出願書類と電子調査書の送信というか,送るということで,こちらは暗号化解除,パスワードの送付というのがあります。これは,例えば神奈川大学に複数の高校から来た場合は,複数の高校のパスワードがあるのか,あるいはまとまったパスワードで,一つのパスワードで開けられるのかですね。
 C案の場合は,これは民間事業者のクラウドなので,多分,各大学に開ける鍵というのが一つ割り当てられるのだろうと思っているんですが,D案も多分そうだと思います。これはいかがでしょうか。要するに,開けるときに,受け取ったほうの大学が開けるときの作業として,どういう形になるのかというのを教えていただければと思います。
【巳波委員】
 明比先生,どうもありがとうございます。まさにそこが大学側の負担に関わるところではございますので,重要なところだと考えております。
 それから,暗号化は非常にセキュリティ的なリスク管理の点で大事ですので,暗号化はやはりしなければならないというところです。A案のほうですけれども,すぐ開けられるのかというところですが,送付の部分は暗号化されたコネクションを使って送りますので,調査書自体は必ずしも暗号化しなくても大丈夫かなと思っております。ただ,暗号化されないファイルがやり取りされるのは,やはり気持ち悪いところでありますので,暗号化しておいたほうがいいかなという気はしますけれども,ここでは特に暗号化しなくても大丈夫かなと。送り先が一つの大学に限定されておりますので,特に問題ないかなと考えております。
 B案につきましては,パスワードはばらばらです。というのは,同じパスワードだったら,取り違えなどがあった場合,他の人に開けられてしまうからです。だから,はっきり言ってB案のやり方では,大学の負担がとんでもないことになるので,このやり方では無理だろうと。また,パスワードの誤送付や取り違えが発生して機能しないだろうと考えております。
 C案・D案では公開鍵暗号を用いる方法というのを書きましたけれども,実はB案のほうでもそちらを用いることはできるんですが,公開鍵暗号を使う方法が最も楽かなと考えております。これは大学ごとのパスワード,復号鍵になりますので,受け取った大学は同じ一つのパスワード,復号鍵で,いろいろな高校から来た電子調査書を開けることは可能となります。大学の一つの復号鍵で開けることができるようになります。そのため,公開鍵暗号を使うのが一番適切じゃないかなと考えております。
【明比委員】
 ありがとうございました。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。
 それではその次,髙井委員,よろしくお願いします。あと,柴原委員,柴田委員も手を挙げてくださっているので,その後に御意見を承ります。
 まず,髙井委員からよろしくお願いします。
【髙井委員】
 埼玉県,髙井でございます。巳波先生,御説明ありがとうございました。非常に分かりやすい御説明でした。ありがとうございます。
 私からの質問なんですが,これは直接巳波先生にお伺いすることなのか悩ましいところなんですが,先ほどの石崎委員からの御質問と関連する内容かなとも思います。実際にこういう形で取りまとめいただいて,実装に向けて今,進めているわけなんですが,この後の議論とも思いますが,実際にこれはどのくらいを目途に進められているものなのかお伺いできればと思います。よろしくお願いします。
【巳波委員】
 巳波ですけれども,これは文科省からお答えいただいたほうがいいかなと思います。2021年4月から,導入としては2022年度から実際に使えるようなものを目指してシステムの検討をしてまいりました。仕様策定,詳細設計,検証は既に行っており,それらは委託事業の成果となりますので,それに基づいて今後どう進めていくかにつきましては,文科省にお任せしたいと思います。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。ちなみに,その問題に関しましては,本日の議題の2の審議のまとめのところでも,また議論があると思いますので,必要ならば,そのときに文科省からも補足説明をいただければと思っております。
 そういうことで髙井委員,よろしいでしょうか。
【髙井委員】
 結構でございます。ありがとうございます。
【圓月主査】
 それでは柴原委員,よろしくお願いいたします。
【柴原委員】
 柴原でございます。質問は2つございまして,一つは髙井委員と同じ意見なんですけれども,石崎委員もおっしゃったように,大学・短大がばらばらでは高校はとてもやり切れないと思うんですね。ですから,前回のポートフォリオの件もありますので,幾らいいシステムをつくっても,文科省で大学・短大にどこまで導入を勧めてくださるのか,そこが一つの大きなポイントだと思っていますので,その工程について後ほど事務局からいただきたいと思っています。
 もう一つは,高校側にしてみますと,校務システムを前回お話ししましたけれども,全部の高校で導入されているのかどうか,その辺の分かる情報を知らせてほしいと思います。
 以上です。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは巳波委員,よろしくお願いします。1つ目の質問に関しましては,また後ほどということで,補足があればよろしくお願いいたします。
【巳波委員】
 1つ目は工程の話ですので,これは文科省さんにお任せしたいと思いますが,2つ目のところ,校務システムにつきましては,実際のデータは,どれくらい導入されているか,何校かというのは今すぐ出ませんけれども,ただ,この電子調査書システムの開発に当たりまして,様々な校務システムさんと協力しながら,どういうフォーマットがいいのかということは議論してきたところでございます。そういう意味では,様々な校務システムと連携ができる形となっております。
 またそれから,校務システムを使われていないところもあるのは,もちろん理解しておりますので,電子調査書システムに簡単な入力用のフォームを用意する,またはテンプレートを用意する,エクセルみたいなものでテンプレートを用意しておいて,そこに各高校で入力していただけると,電子調査書システムにすぐそのままアップロードできるような,ある種,別のルートというのも,簡易なものですが用意するべきだと考えて,簡単なものはつくったところでございます。
【柴原委員】
 ありがとうございました。
【圓月主査】
 ありがとうございました。
 それでは,その後,長塚委員,井上委員も手を挙げていただいていることを認識しております。まず柴田委員からよろしくお願いいたします。
【柴田委員】
 福岡県立大学の柴田でございます。巳波先生,大変分かりやすい資料を出していただいて,大学サイドも大分理解が深まりました。
 まず,大学サイドから申しまして,先ほどAからDまでの案がございましたけれども,A案の場合,これは現役生あるいは高校卒業生を想定しておられるので,大学としてはそれ以外の受験生,高卒程度認定試験の受験生等もあるので,この方々にどう対応するかという問題があるので,その辺りが外れてしまうんじゃないかなという気がしております。
 それからもう一つ,そうなると電子出願システムということになるんだと思うんですけれども,これだと出願時の資料と一体化しているんですが,実を申しますと現在,ウェブ出願システムの中で,調査書以外に国公立で郵送提出しているのに,共通テストの受験番号による成績請求票というのが一般入試ではございます。これがなかなか悩ましいんですけれども,受験番号だけのデータではなくて,受験区分ですね。前期1枚,後期1枚,中期1枚という具合に入試センターは配付しているわけです。だから,これを紛失したら再発行してもらって,わざわざそれを貼って提出しているという状況になっております。
 これも,もし電子調査書システムに出願時資料等々入れていただけるんだったら,この開発というのも併せてやらないといけないのではないかなと思っておりまして,これが現状のままであると,大学にとっても,受験生にとってもあまりメリットがないようなことになりかねないというところでございます。
 大学サイドとしては,差し当たってそういうことを感じました。何か御示唆いただければ幸いです。
 以上です。
【巳波委員】
 ありがとうございました。今の御質問というのは,共通テストの連携の話ということでよろしいでしょうか。
【柴田委員】
 はい,それでも結構です。何かお知恵がありましたらよろしくお願いいたします。
【巳波委員】
 分かりました。ありがとうございます。
 共通テストのシステムとの連携,また番号の連携とかは,システム間の話ですので,この辺は共通で使ったほうがいいということになりましたら,システム間連携する機能を付加すること自体は,技術的には簡単にできます。電子的なシステムがあればそのようなことに容易に対応できる,融通が利くようになります。ご要望があれば,そのように機能追加することもできるかと思っております。【柴田委員】 御配慮いただければ幸いだというところです。
 それから,Aはちょっと無理なんじゃないかなと大学サイドでは考えているんですけれども,いかがでございましょうか。
【巳波委員】  
 ここではニュートラルにA案からD案まで出しましたけれども,A案とかB案は実質的には無理ではないかなとは思っております。C案につきましても,いろいろ考えましたけれども,やはり責任所在の不明確さ,それからアプリ開発とかクラウド利用料をどのように負担するのか,この辺りがどうもブレークスルーできませんで,C案は難しいのではないかなとは考えております。個人的な感想ではありますけれども。
【柴田委員】
 ありがとうございました。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは,あと長塚委員と井上委員が手を挙げてくださっております。次の議題もございますので,もし御質問がある場合には早めに手を挙げておいていただければ幸いです。よろしくお願い申し上げます。
 それでは長塚委員,よろしくお願いします。
【長塚委員】
 恐れ入ります。長塚です。3者に分けた御説明をいただいたので,非常に分かりやすかったんでございますが,2つほどお尋ねいたします。まず,調査書を作成する時期が12月末から1月以降にかけて集中するという話ではあったんですが,例えば推薦型選抜とか総合型選抜のところで用いるには,もっと早い段階で使うわけですが,推薦書なども調査書同様に秘匿性のあるもので,言わば書類を厳封して出すような形になるわけですが,こういうものも調査書同様に提出ができるのか。つまり,生徒の大学志望理由書とか,活動成果の報告書とかも出せるということだったんですが,これと併せて厳封した形のものは出せるのかということ。
 併せて加えれば,例えば外部検定試験の結果などを通知する場合に,幾つか方法はあると思うんですが,これも各団体から証明されたものを,生徒が触れずに,共通テストの枠組みで考えられていたものと同様に出せるのか,その辺のことをお聞きしたいのが1点目。
 2点目は,A案からD案まである中で,巳波先生のところでD1に絞って開発されたということですが,最初の段階でAとかBとかは難しいということを検討された上で,Dということで進めておられたのか,この2点について伺えればと思います。
【巳波委員】
 長塚先生,どうもありがとうございます。
 まず1点目の御質問ですけれども,推薦書なども扱うことができるかというところかと思いますが,機能的には可能です。これまで開発してきたものは電子調査書でしたので,そこにつきましての機能開発は正直なところしておりませんが,こういうシステムができれば,ここに推薦書も同様にできないかという話があった場合は,追加することは技術的には容易にできるかと思います。ということで,先生,可能であります。今回の委託事業の成果としては,そこまでの設計はしていませんがというところであります。
 そういう意味では,このようなものを一回実現すると,その後に様々な要望に対応できるということで,まず電子化,デジタル化ということが重要だなと考えております。
 2点目の御質問ですけれども,本事業を開始した時に,A案からD2案まで含めて様々な案を検討いたしました。その上で,まずD1案で開発するのがいいだろうということで検討してきたところでございます。新しい技術を用いるということももちろん考えましたし,私は個人的にはそういう研究者でもございますので,ブロックチェーンを用いるのは楽しいんじゃないかなとか思ったりもするんですけれども,やはりこれは実際に導入するべきものですので,不安定さがあってはいけないということで,安定なシステムということで,D1案をまず導入する。その後,技術的に安定が確認されたら,D2案とか,また別の案とかにも変更していくという流れで,まずD1案で切り込んでいくのがよかろうと判断した次第でございます。
【圓月主査】
 ありがとうございました。
 それでは,お待たせしました。井上委員,よろしくお願いいたします。
【井上委員】
 井上でございます。先ほど委員の方々から出た質問に,少し私から回答できるものはお答えしたいと思っております。
 まず,高校への導入率ですけれども,文部科学省さんが持っていらっしゃるデータは昨年3月現在のデータですので,ちょっと古いかと思いますから,私のほうで感覚的につかんでいる,業者で導入したレベルでの話を少しさせていただきたいと思いますが,高校の校務支援システムに関しては,都道府県単位で入れるというのが標準になってきております。それで,遅れておりました東京都も,もう導入が決まって動き出しておりますし,長野だとか,秋田だとか,栃木だとかというのも,今年度採択があって進み始めております。それと新潟,それから一番遅れておりました富山も,今検討が始まっていると聞いております。
 ですから,それが順調にいきますと,これはあくまで公立に限りますが,2年後には47都道府県,ほぼ高校に関しては行き渡るのではないかなと思っている。これはあくまで順調にいっての話ですから,あれですけれども,その頃には公立高校に関しては,ほぼ行き渡るのではないかなという想定をしております。
 あと,調査書に関して少し話をさせていただきたいんですが,標準であることというのがあったと思います。今,ここでお話されている調査書というのは,あくまで大学入試のための調査書です。高校側で用意しなきゃいけないのは,大学入試だけではなくて,専門学校もあれば,ほかにもあるわけですね。ですから,今我々がやっている校務支援システムの標準化の中では,大学入試だけに向けての調査書の標準化というのは,実はまだ手をつけておりません。実際に運用が決まって正式に話が始まれば,いつでも対応できる準備はしておりますけれども,現時点で大学だけのための調査書の標準化というのは,実はまだ手をつけておりません。これが決まれば動き出したいと考えているところです。
 それと,先ほどお話がありましたIDですけれども,生徒IDに関しましては,正直申し上げて,大学関係だけで決めていただきたくないなとは思っております。これは何度も申し上げているんですが,既に国では健康情報をマイナポータルで閲覧できるようにするという事業が動き始めておりまして,学校の健康診断の情報もマイナポータルで閲覧できるようにしなきゃいけないということで,既にこれでIDがまた個別に振られるような話が起こってきております。
 我々校務支援システムをやっている側からすると,IDがあちこちでいっぱい出てきてしまったら,これはとんでもないことになってしまうので,今はマイナンバーの活用のところでもいろいろ国として動き始めていますので,そこら辺のところをよくウオッチしながら,ぜひ統一した学習者IDというか,生徒ナンバーというか,個人IDというか,それを使えるようにしていただきたいなと思っております。それはぜひ文科省さんのほうで,文科省の庁内でも統一していただきたいし,大学だけで進めることがぜひないようにお願いしたいなと思っております。
 以上でございます。
【圓月主査】
 ありがとうございました。最新の動向も含めて,非常に貴重な補足意見をいただいたものと思っております。
 巳波委員から何か補足していただける点とか,逆に質問とか,何かございますか。
【巳波委員】
 井上先生,ありがとうございました。まさにそのとおりでございます。ID・パスワードはまさにそれで,いろいろなもので共通できるものをすべきだと私も個人的に思っております。ありがとうございます。
【圓月主査】
 どうもありがとうございます。
 それでは,星野委員から手が挙がっておりますので,御質問いただきます。もしよろしければ,この星野委員の御質問を最後に,次の議題に移りたいと思っております。
 星野委員,よろしくお願い申し上げます。
【星野委員】
 星野でございます。私からの質問というよりも,先ほどの長塚委員からの後半の質問の中で,外部検定試験の結果もこのシステムに乗せて,生徒を経ずに直接大学に送るということは考えられるんでしょうかというのがあったと思うんですが,この点についてはいかがでしょうか。大学入試センターのほうでは頓挫しましたけれども,英語の民間の検定試験の結果というのを大学側に送るシステムというのを構築はされているんですが,その辺とのすり合わせというか,その辺についても何かお考えがあれば,お聞かせいただければと思います。
【巳波委員】
 これは私からのほうがよろしいですか。長塚先生のほうなんですかね。私かな。すいません。
【圓月主査】
 巳波委員から,取りあえず。
【巳波委員】
 外部検定の話,先ほど言わなかったかもしれませんが,様々な外部検定の情報も,このシステム内に取り込めるようなことは検討しておりました。それは相手方のシステムとの連携の話になりますので,乗っていただければすぐ連携できるような,APIといいますか,コネクションをつくる部分は,技術的にはそのような機能はすぐに追加で設計できますので,つなげていけるかなと思っております。
【圓月主査】
 ありがとうございます。
 長塚委員,何か補足はございますか。
【長塚委員】
 いえ。先ほどそのように私も勝手に理解をしておりました。ありがとうございます。
【圓月主査】
 ありがとうございます。非常に活発な,また建設的な御質問をたくさんいただき,巳波先生にも非常に的確に答えていただき,ありがとうございました。いろいろ質問や,細かい点については御意見等も尽きないかと思っておりますけれども,次の議題もございます。またお気づきの点があれば,次の議題,審議のまとめの中でも,先ほど話題になった工程,スケジュールの部分も含めて,いろいろと御意見をいただくことになると思いますので,取りあえず1つ目の議題はここで終わりとさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
【巳波委員】
 巳波ですけれども,最後に一言だけ,簡単ですけれども。
 デジタル化社会の推進のために,電子調査書のシステムを検討してまいりましたけれども,委託事業はこの3月で一段落つきます。この後どうなるかは文科省さんのお考えだと思いますけれども,今回検討したものが今後の高大連携,高大接続改革の役に立つことを願っております。また、期待しております。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。また,委託事業も本当に御苦労さまでございました。
 それでは,2つ目の議題として,審議のまとめ(骨子案)について審議を行いたいと思っております。この審議のまとめ(骨子案)は,これまでの議論を踏まえて,川嶋副主査,そして私,事務局にて整理をさせていただいたものでございます。
 議事に入る前に,前回の会議終了後,西郡委員から意見が提出されておりますので,西郡委員からその内容について御説明をいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。資料の提出を既にしていただいておりますね。
【西郡委員】  
 西郡です。委員提出資料というものを御覧ください。ファイル番号では16番と書いてあるものです。
 これまで多面的評価がどうあるべきかという議論を中心に行ってきたと思いますけれども,実際こうした評価を行うのは大学でありますし,入試改革を検討して動かしていくのも大学なわけです。実際,私はその現場に関わっていますので,現場の視点から今回,多面的・総合的評価を実現するための体制と専門性を持った人材育成の必要性について,審議のまとめの前に時間を取って恐縮でありますけれども,意見を述べさせていただきたいと思います。
 資料に沿ってポイントだけ説明させていただきたいわけですけれども,これまでの体制についてということで,2000年以前から入試改革が主張されるたびに,大学のアドミッション機能強化というものの重要性が主張されてきました。高大接続答申でも同様な主張がされたわけですけれども,その後に予算措置などによって,複数の大学にはアドミッション部門等が設置されるなどしました。
 また,入試を担当するアドミッション・オフィサーと呼ばれたりしますけれども,そういった育成にも注目が集まって,様々な研究で,全国レベルの研究連絡会等でも議論のテーマとなりましたし,川嶋先生がいらっしゃる大阪大学とか,九州大学や大学入試センターでも,アドミッション・オフィサー育成のプログラムなども開発されています。ですけれども,それらは全体の一部にすぎないところがあって,必ずしも全体を見れば十分ではないということが言えると思います。
 そうしたところで,専門性を持つ人材って,どういったことなのかということを,少しイメージを持っていただくために説明させていただきますが,(2)でございます。多面的評価等でよく用いられる手法として,書類審査とか面接評価,様々な手法がありますけれども,こういったものを実際導入して動かしていくためには,効果的なルーブリックとか,評価者のトレーニングとか,様々なことを検討しなければいけません。そうしたときには,テストとか選抜に関する専門的な知識とかスキルとか,そういったものが必要ですし,建設的に学内で議論を進めていこうとすれば,そういった枠組みというものは必ず求められるというところがあります。
 丸2のところでもありますけれども,学内で議論する際に,高大接続改革とか入試改革というのが文科省の方針という論拠だけでは,必ずしも合理的な説明ができないというところがあります。ですので,高大接続改革にとどまらない高等教育関連の政策を読み解くとともに,それぞれの大学の課題を解決できるような改革案というものを企画しなければ,実際には入試改革は進まないというところがあります。
 そして,最後の丸3なんですけれども,今後18歳人口の減少が加速する中で,志願者確保というのは国公私立大学に関わらず,非常に大学にとって重要な課題です。そうなったときに,受験生とか高校に受け入れられなければ,その入試制度というものは成立しないということを考えますと,実際に入試改革を行う前に,各高校の先生方とか,そういった関係者たちと入念なすり合わせを行っておかなければ,大学にとって非常に困難な状況が生じてしまうということで,高校教育に関する基本的な知識とか,その実態とかというものを理解しておく必要がありますし,関係者とのコミュニケーションというものが求められます。こういったところで,非常に専門性というものが重要になってくると思われます。
 さらに,今回の意見のまとめということを示していますけれども,新しい入試制度を企画して動かすためには,先ほど申しましたように,テストとか選抜に関する専門性に加えて,政策とか,そういったものを解釈する力,そして学内の各学部の先生方との折衝力とか,高校そして受験生とのコミュニケーションといった多岐にわたる専門性というものが,どうしても必要になってきます。
 こうしたときに,思いつきとか,そういったものに近いアイデアだけで改革を行ってしまいますと,どうしても高校教育に悪影響をもたらす可能性というのもあるわけです。また,入試改革とかを担当する先生の中には,ローテーションで回ってきて,たまたまそれを担当するという方々もいます。これは教員に限らず,事務職員の方も該当すると思いますけれども,そうした中で入試改革を進めていきますと,どうしても継続性というところで,なかなか蓄積されたノウハウというものが引き継がれないというところもあるわけです。
 これまで大学入試改革に関しては,学力試験一辺倒からの脱却として,多面的評価とか入試の多様化ということが,非常に何度も同じような議論が繰り返されてきたわけですけれども,エビデンスに基づく建設的な議論というものを行うためには,継続性というものをしっかりと考えていかなければいけないと思います。
 最後に,一番言いたいことなんですけれども,多面的・総合的評価を各大学の個別選抜改革の柱として進めるのであれば,そのあるべき姿の検討だけではなくて,それを実際に動かす体制とか人材の育成・維持といったことにも目を向けて議論を進めなければ,また何年か後に同じような議論を繰り返してしまうのではないかということがありますので,この点に関して,今回,意見を述べさせていただきました。
 以上です。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。
 今の西郡委員の御報告,御説明について,御質問や御意見等ございますでしょうか。
 星野委員,手を挙げていただいているでしょうか。よろしくお願いいたします。
【星野委員】
 星野でございます。ただいまの西郡先生の御意見,私もごもっともだと思っております。私どもの大学では幸い,アドミッション部門の教員が何人かおり,そのような入試改革に向けて,いろいろ手を打つことができておりますけれども,そういう大学は非常に限られていると思います。特に私立の大学さんは,人材の育成の観点からも非常に困難を抱えておられるのではないかと思います。
 その辺は,国公私立を限らず育成を図るということと,国に対しては,やはり財政的な援助といいますか,そのための措置というものを求めるということ,もしまとめの中に入れば,そのようなことも入れていただきたいなと思っております。
 以上です。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。
 西郡委員から何かお答え,あるいは補足していただける点というのはございますか。
【西郡委員】
 まさに今,星野先生がおっしゃっていただきましたように,全ての大学にアドミッション機能を全部充実させるというのは,なかなか難しいかもしれませんけれども,そこで改革とかに従事するスタッフの方々を支援するような仕組みとか,そういったものが必要ではないかと思います。
【圓月主査】  
 ありがとうございました。
 それでは,柴田委員も手を挙げていただいていると認識しております。よろしくお願いいたします。
【柴田委員】
 福岡県立大学の柴田でございます。西郡先生,大変貴重な御提言をありがとうございます。私も,入試改革に長年携わってきておりまして,おっしゃるとおり,そういうことを実感しています。
 ところで一方,先生のところのように大胆な改革が実現できている大学と,そうでない大学があるのは,先生もお分かりだと思うんですが,どこが違うのかというところ,実を申しますと,入試の在り方委員会で,長年入試改革等々に携わっている倉元先生の御発表がありましたので,そのときに倉元先生が,ぜひ入試学というのを確立したいということをおっしゃっておられたんですが,私の個人的な意見で全くそれに同感なんですけれども,アドミッションセンターとかアドミッション・オフィスというのが日本で設立されてから20年,30年たっているんですが,なかなか入試学会というようなものが確立されないのは何なんでしょうかねというのをお尋ねしたら,倉元先生は,入学者選抜というのが秘匿事項といいますか,個人情報そのものですから,秘匿事項でなかなか公開されずに研究が進まないというのが一つあるのではないかとおっしゃられておりました。
 確かにそれはそうなんだと思いますし,もう一つ,以前から感じているのは,日本の大学における入学者選抜というのは,現在では誤解に基づいていると思うんですけれども,学校教育法で教授会の専権事項であるという,そういう意識が非常に強うございまして,これを払底しない限り,いろいろな改革,先生のところのような大胆な改革が実現できている大学もありますし,多くの大学ではいろいろな提案を出すけれども,なかなか実現しないという状況,それから,1点刻みの公平・公正の選抜というのを社会的にも非常に強い圧力という,入試文化といいますか,入試風土というのもあると思っております。
 それから,国立大学のアドミッションセンターでの研究会,研修会というのがございますが,この辺りも皆さん情報交換を盛んにやっておられるんですが,なかなかそれが実際の入学者選抜の改革には,ダイレクトにはつながらない。そういうのもあって,もうちょっとこれは時間がかかる,ぱっと一時に実現するようなものでもないような気が,私はちょっと年取っているから絶望的になっているのかもしれないんですけれども,西郡先生のような若い方にぜひ推進していただければいいと思いますが,30年ぐらいこれに携わってきている実感としては,そういうある意味での挫折感というのを感じている次第でございます。
 以上でございます。
【圓月主査】
 ありがとうございました。豊かな経験に基づいた非常に貴重な御意見かと思っております。
 西郡委員から何か御意見とかございますか。
【西郡委員】
 柴田先生に,非常に重い意見として承ることになると思いますけれども,ゼロから育成していくというのは,倉元先生が言われるように,非常に難しい面があると思いますので,どうしても今,関わっている人がOJT的に,相談相手というのがいないんですね。いろいろこれを相談したいけれども,誰に相談していいのか分からないということで,知っている関係者とかには相談できるけれども,そういったところをできるだけ情報を共有して,ノウハウを蓄積して,いろいろと全体として,しっかりと専門性を伸ばしていけるような環境ができればいいのではないかと思っています。
【圓月主査】
 ありがとうございました。
 それでは,ほかにもいろいろ御質問もあるかと思いますけれども,時間にも制約がございます。2つ目の議題につきまして,審議に入りたいと思います。
 今回も項目ごとに順番に審議していきたいと思います。まず,1番目の「はじめに」,文科省の言い方で1ポツの「はじめに」,2ポツの「大学入学者選抜における多面的・総合的な評価について」,審議を行いたいと思っております。今回は特に事務局から説明なしということでよろしいでしょうか。
【小川大学振興課専門官】
 先ほどの調査書の電子化の今後の工程の件も含めまして,事務局から資料の説明をさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
【圓月主査】
 それでは,よろしくお願い申し上げます。
【小川大学振興課専門官】
 それでは,事務局から資料3,審議のまとめ(骨子案)について説明をいたします。これは先ほど圓月主査からもお話がありましたけれども,主査,副主査,事務局とで,これまでの意見を踏まえて整理をしたものでございます。
 1ページ目,1ポツ,「はじめに」でございますけれども,各大学の入学者選抜において,学力の3要素を多面的・総合的に評価するものに改善するために,多様な取組が進められているところであると。新学習指導要領下での指導要録の見直しを踏まえるとともに,教員の負担軽減の観点にも配慮しながら,調査書の在り方等について,新たに検討を行う必要があるとしております。
 1ページ目,2ポツ,(1)大学入学者選抜における多面的・総合的な評価の在り方について,最初にまず評価を行う意義を明確にしております。志願者の大学入学後の学びについての理解を深め,志願者と大学との相互選択を促進し,入学後の教育につなげて留年や退学を回避させることが可能となると書いております。引き続き学力の3要素を多面的・総合的に評価するものに改善することが重要であるとしております。
 評価を行うに当たっての留意事項でございますけれども,現状として,総合型選抜では志願者本人が記載する資料や面接,学校推薦型選抜では調査書,推薦書を主たる評価資料にしつつも,「知識・技能」,「思考力・判断力・表現力等」も適切に評価するために,各大学が実施する評価方法または大学入学共通テストのうちの少なくともいずれか一つを活用することを必須としております。多面的・総合的な評価を丁寧に時間をかけて行う点において,総合型選抜・学校推薦型選抜は一層重要な役割を有することが期待されるとしております。
 最後の下のポツ,一般選抜については,大学の規模や設置形態,学部・学科等によっては,志願者や入試業務の制約から,「知識・技能」,「思考力・判断力・表現力等」の評価に比重を置きまして,学力検査などが中心の評価方法となることも想定されますが,その場合であっても,例えば,これは会議で西郡先生から発表いただいた佐賀大学の事例ですけれども,志願者に高等学校での活動・実績を通して身につけた能力・スキルや経験が入学後の学習にどう活かせるか等を簡潔に記載した資料の提出を求めて,選抜の一部として活用している事例があり,このような事例を参考として取り組むことなどが考えられる。
 2つ目の項目ですけれども,評価を行うに当たっての学力の3要素の重みづけは,各大学のアドミッション・ポリシーや選抜区分によって,志願者のどういう能力を評価したいのかにより異なり,また評価方法も様々であると。仮に全ての選抜区分で学力の3要素を同程度の重みづけで評価しようとすれば,かえって各選抜区分の特性が失われて,選抜が画一化するおそれがある。
 このため,各大学においては,各選抜区分の特性に応じた形で工夫を凝らしながら,それぞれの実情に合った方策から取り組むことが重要であり,その際,各大学は志願者のどういう学力を,どの資料を用いて,どのような方法で評価するのかを,これまで以上に明確にした上で,公表することが必要であるとしております。
 なお,選抜区分の特性においては,現行の大学入学者選抜実施要項において分かりにくい表記となっていることから,今後「大学入学者選抜方法の改善に関する協議」において検討がなされることを期待したいとしております。
 (2)志願者の「主体性を持ち,多様な人々と協働しつつ学習する態度」を評価することについて,まず評価することの考え方でございますが,2ページ目の最後のポツ,主体性・多様性・協働性という要素に分けて,それぞれを評価したり,「主体性を持ち,多様な人々と協働しつつ学習する態度」のみを取り出して評価する選抜を推進するというよりも,「知識・技能」,「思考力・判断力・表現力等」と合わせて,多面的・総合的な評価を推進することを明確にするとしております。
 次のポツですけれども,評価しようとする主体性については,ふだんの学習場面での態度もあれば,学校の教育活動外での態度を含む場合もありますけれども,各大学は評価しようとする主体性について,それを定義して明らかにする必要があるとしております。
 次のポツですけれども,評価する場合,高校生にとって過度な動機づけになり,逆に主体性を損なうおそれがあるのではないか等の懸念を払拭するために,活動の成績や結果だけでなく,生徒が様々な活動に取り組んだ目的と,達成するまでの過程も併せて評価することが重要としております。
 調査書や志願者本人記載資料の活用について,高等学校で大学に提供できる個々の生徒の主体性とは,基本的にはふだんの学習の場面での態度であることから,学校の教育活動外の活動に取り組んだ事実や成果については,原則として志願者本人が大学の求めに応じて,志願者本人記載資料やポートフォリオなどにより直接大学に提出することが適当であるとしております。
 続いて,(3)志願者が経済的な条件等に左右されず等しく多面的・総合的な評価の機会を得ることができるような評価の方法等について。こちらの2つ目のポツですけれども,各大学において志願者が経済的な条件や地理的な条件等に左右されない評価の方法について検討するに当たりましては,それぞれの大学の規模,設置形態,学問領域,地域性,建学の精神等々によって評価基準に関する考え方が異なることが想定されると。
 こういった何らかの措置を導入する場合,その基本的な考え方として,1つ目,経済的・地理的な不利等がある志願者でも,そうした客観的事実に配慮した選抜を行うこと。2つ目,経済的・地理的な不利がある志願者でも,高い評価を得られる活動等を評価の対象にして選抜を行うことの2つの観点に基づいて,検討することが考えられるとしております。
 1個飛ばして,「また」のポツですけれども,このような措置を導入する場合は,その趣旨や方法について,社会に対して合理的な説明ができること,志願者の入学後の教育に必要な学力を確保することが前提として求められるとしております。例えば,地域枠や児童養護施設入所者を対象とした選抜などを既に行っている大学がありますけれども,そういった事例を参考にすることが考えられるとしております。
 続いて次の項目,3ポツ目,調査書の在り方及び電子化手法の在り方についてでございます。最初に,次期学習指導要領下での調査書の在り方についてでございます。1つ目のポツですが,新しい学習指導要領の下での調査書の様式は,以下に記載しておりますけれども,基本的には指導要録の様式と整合性を取る方向で見直すことが適切であるとしております。
 三角のところで示しておりますが,「特別活動の記録」と,「指導上参考となる諸事項」,上の2つについては,基本的には指導要録と同じような様式に変えてはどうかという内容になっています。「備考欄」の内容については,大学や学部ごとに異なる内容を求められるのは相当の負担であるといった意見もございまして,志願者本人が調査書以外での資料で直接大学に提出することとすると。最後,「学習成績の状況」については,現行どおり単純平均を記載して,大学の活用に委ねることとするとしております。
 続いて5ページ目でございます。(2)として,調査書における観点別学習状況の評価の取扱についてでございます。こちらについては,大学側には,教科の中で学習に向かう主体性を評価することが可能となるのではないかといった期待もあります。
 他方,高等学校における観点別学習状況の評価の取組の状況でありますとか,大学入学者選抜における観点別学習状況の活用手法が確立されていないこと等を踏まえますと,この評価を調査書に記載して入学者選抜において直ちに活用することは,慎重な対応が求められるとしております。
 例えば,評価結果を単純に点数化するなどの形式的な活用となるおそれを払拭できない,観点別学習状況の評価を適切に活用するためには,大学は各高校の運営方針,求める資質・能力,評価の考え方などを把握することが必要であるといった指摘も会議でございました。
 このため,新しい調査書の様式には,今回指導要録の参考様式に追加されました各教科・科目の観点別学習状況の項目を直ちに設けることはせずに,今後の高等学校における評価の取組の浸透や確立の状況,大学における活用ニーズや評価方法の検討の進展等を見極めつつ,条件が整い次第,可能な限り早い段階で調査書に項目を設けることを目指し,引き続き高等学校・大学関係者において検討を行うこととするとしております。
 検討に当たりましては,教育委員会,高等学校,大学等が協働して,大学入学者選抜における活用手法等について実証研究に取り組み,その成果を普及していくことなどが考えられます。
 続きまして,調査書の電子化の在り方についてですが,先ほどの議題の中で出ました今後の工程については,まず関西学院大学の委託研究のモデルを今後利用するのか,その場合,公的管理組織をどこにするのか,全ての大学はそのシステムを利用可能なのか,ほかの案などを取る場合も含めて,いろいろな課題があると認識をしております。
 加えまして,参考資料1で先ほど説明しましたが,デジタル庁の分担管理事務の中に,情報システムの整備・管理に関する基本方針の作成・推進などとありまして,現在の時点でいつまでに期限を区切ることは困難であると考えております。いずれにせよ,早期の完全な電子化というのは必要で,目指すべきだとは思っておりますが,この考え方に基づきまして整理したのが,こちらの内容でございます。
 調査書の電子化,最初のポツですけれども,速やかな完全電子化を目指すべきであると。その際,公益性を有すること,安全性を確保すること,利便性を向上させることの3つの条件が必要であるとしております。電子化に当たっては,指導要録の電子化と一体的に進める必要があるとの意見ですとか,あるいは運用開始時には,全ての高校・大学で一斉に電子化すべきと,先ほどもございましたけれども,意見がございました。
 現在の公立高等学校の統合型校務支援システムの導入状況は約79%,これは先ほど井上委員が指摘されていました昨年の3月時点でのデータになります。あるいは,大学入試における電子出願が可能な選抜区分ですけれども,一般選抜では約90%,総合型選抜では約56%,学校推薦型選抜では58%となっておりまして,こういったシステムや電子出願のさらなる導入を促進しつつ,それらと連動する形での調査書の電子化を進めていく必要があるとしております。
 最後の6ページ目でございますけれども,その際,特定の電子化のみを検討するよりも,政府全体のデジタル化の動き等にも柔軟に対応できるように様々な可能性を追求しておくことが必要であり,複数の実装方法を検討すべきであるとしております。
 資料3の説明については以上でございます。最後に,今回初めて提示する参考資料2-2について簡単に説明いたします。これは,前回,参考資料2-1で選抜要項の過去の記載の変遷を示しましたが,その際,川嶋委員から,過去の審議会答申等との関連性が分かるようにとの御指摘を踏まえて作成したものでございます。
 参考資料2-2では,過去の入試に係る主な提言を整理しておりまして,参考資料2-1の左側に,それぞれの提言が時系列でどこに該当するか,赤枠で小さく示しております。こちらの資料については,あとは適宜御確認いただけたらと思います。
 以上でございます。
【圓月主査】
 行き届いた御説明を,どうもありがとうございました。
 それでは,時間も大分押してきましたけれども,まず資料3の1ポツの「はじめに」及び2ポツの「大学入学者選抜における多面的・総合的な評価について」,御審議をいただきたいと思います。御意見等ございましたら,どなたからでも結構ですので,御発言をお願い申し上げます。
 まず,長塚委員が手を挙げていただいたと見ております。よろしくお願いいたします。
【長塚委員】
 長塚です。意見というより,事務局にお尋ねなんですが,最後のほうにありました5ページの調査書の電子化の在り方について,公立高等学校におけるシステムの導入状況は,先ほど井上委員から,昨年の3月の時点でということの結果であるということを聞いて分かったわけですが,それと,大学のほうの電子出願が可能な状況というのは,これはいつの時点でのものなのか,このような数字を載せる場合は,どのような調査で,いつの時点のものかということも併せて書いておかれたほうがいいのかなということも含めてお尋ねしたかったんですが,よろしくお願いします。
【圓月主査】
 重要な御指摘だと思います。事務局から何か補足していただける点,ございますでしょうか。
【小川大学振興課専門官】
 事務局の小川でございます。こちらの大学の電子出願の状況のデータにつきましては,あり方検討会議で行った各大学への実態調査の結果から抽出したものでございます。その調査の時点なんですけれども,調査を行ったのは昨年の夏ですが,調査の時点は昨年度選抜,令和2年度大学入学者選抜の状況ということでございます。
 以上でございます。
【長塚委員】
 ありがとうございました。
【圓月主査】
 ありがとうございました。正確な御説明,ありがとうございます。
 それでは,西郡委員及び牧田委員から手が挙がっておりますので,まず西郡委員からよろしくお願い申し上げます。
【西郡委員】
 1点確認と,意見をさせていただきます。
 まず確認なんですけれども,今回の骨子は,これまで議論されてきた全ての入試区分で多面的・総合的に評価するという考え方は引き継ぐのか,それが前提になるのかというところが非常に気になるところです。そこを確認したいという点と,もう一つは3ページの2ポツ目の中に,各大学はアドミッション・ポリシーに基づき,評価しようとする主体性云々を定義し,明らかにする必要があるとあるんですけれども,各大学で「アドミッション・ポリシーに基づき」というのは,アドミッション・ポリシーの観点からやれば,この主体性云々に関しては再定義するというところまで認めるという理解でよいのかどうかというところが,少し気になるところです。もし「アドミッション・ポリシーに基づき」という点を重視するのであれば,ここに大学の自由度というものをかなり持たせるべきではないかと私自身は考えます。
 以上です。
【圓月主査】
 ありがとうございました。まず原則的な部分で,重要な確認をしていただいたものと思っております。
 事務局から補足していただける点はございますでしょうか。
【小川大学振興課専門官】
 事務局でございます。今の西郡委員の最初の質問に関しましては,1ページ目の(1)のところで示しているように,基本的には,引き続き学力の3要素を多面的・総合的に評価するものに改善することが重要であるという意義,理念を明確にしているところでございます。
 一方で,2ページ目のところでございますけれども,こちらの3つ目のポツですが,理念は明確にしつつ,各大学においては,各選抜区分の特性に応じた形で工夫を凝らしながら,それぞれの実情に合った方策から取り組むことが重要という形にしております。
 説明は以上でございます。
【圓月主査】
 ありがとうございました。
 西郡委員,そのような説明でよろしいでしょうか。
【西郡委員】
 前提にして引き継ぐという形で,この骨子が作られているということで理解しました。
【圓月主査】
 どうもありがとうございます。
 それではお待たせしました。牧田委員,よろしくお願い申し上げます。
【牧田委員】
 牧田です。この審議のまとめを拝見しまして,まずマイナーチェンジという点では,非常によくおまとめをいただいたのではないかと思っているのですけれども,もちろんマイナーチェンジをすることは大事だと思っていますが,「はじめに」のところにもあるように,高大接続システム改革という大きなテーマがあって,そもそも高大接続の意義というのも,平成28年に最終報告が出ているわけですけれども,今の世間の状況といいますか,いろいろな流れからすると,果たしてそれも時宜を得ているのかどうかということがあると思うんですね。
 何を申し上げたいかというと,今の入試改革というのは,実はもしかすると一世一代のチャンスではないかなと思っていまして,いわゆるアドミッション・ポリシーとかカリキュラム・ポリシーとかディプロマ・ポリシーというのは,イコール何につながるかというと,大学そのものの評価,あるいはそれぞれの大学の評価といったものが,今,世間に問われるのではないかなと思っているわけです。
 つまり,大学の評価というのは一体全体何なんだろうということすら,定義されていないんですよね。では,卒業生が活躍すればいいじゃないかという人もいらっしゃいますけれども,卒業生の活躍の「活躍」って何なのというところも定義されていないんですよ。それをあえて今回は,いわゆるディプロマ・ポリシーで定義をするということである,イコールそれは,大学そのものの存在意義を明らかにするということなんだろうと思うんですね。
 では,そこに本来大学が求める学生たちを,どうやって,言い方は悪いですけれども,獲得するかというか,入学してもらうかということが,まさにアドミッション・ポリシーになっていくわけで,これが先ほど西郡先生もおっしゃったとおり,アドミッション・オフィサーはプロ野球のシステムみたいなものですよね。スカウトがいて,それこそ優秀な選手を採って,それで監督が鍛え上げて,フロントがそれをバックアップして,最後,優勝に持っていくと。
 でも,プロ野球の場合は優勝するという,まさにディプロマ・ポリシーが明確になっているからこそできるのであって,ですから,元からひっくり返すようなことを申し上げているので,申し訳ないとは思うんですけれども,いま一度,大学の意義と,それから,それぞれの大学がちゃんと存在する意義というのを見直す時期だろうと思っていますので,今回の議論とは直接は結びつかないと思いますけれども,我々の中ではこういったことを常にベースに,考え方の中に持っておかないと,幾らマイナーチェンジを繰り返していたとしても,ずっと変わらないのではないかなと実は感じているので,すいません,生意気なことを申し上げましたけれども,ずっと鬱屈として思っていたものですから,ここで意見を述べさせていただきました。ありがとうございます。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。巨視的な点からの大学論と言ってもいいような御意見をいただいたものと思っております。非常に重要な御意見で,私たちみんなが忘れてはいけないのではないかと思っております。
 事務局から補足は,何かございますでしょうか。
【小川大学振興課専門官】
 特にございません。
【圓月主査】
 ありがとうございました。
 それでは,本当にマイナーチェンジといえばそれまでなので,またコロナ禍などで大学教育自体がいろいろ問われているところもありますので,それを考えると,非常に重い意見かと思いますが,限られた時間になりますけれども,それも踏まえた上で御意見,御質問をよろしくお願い申し上げます。
 それでは,まず星野委員,垂見委員が手を挙げてくださいました。その順番で,星野委員からよろしくお願いします。また,最後になりますが,田中委員もよろしくお願いします。
 まず星野委員,よろしくお願いいたします。
【星野委員】
 ありがとうございます。私からは,2ページ目の4ポツ目になりますが,冒頭の西郡委員からの質問と関連するかもしれないんですが,今回はこれまで設けられている現行の選抜区分を前提としてということなんですが,なお書きのところは,改めて選抜区分の定義をし直すという意味合いでしょうか。その辺,もしそうであるとすると,これから出す審議のまとめはどういう意味があることになるのかというのが,ちょっと不安になったものですから,お聞きしたいと思います。
【圓月主査】
 ありがとうございます。この区分の問題というのは,しっかりとしておいたほうがいいと思うんですけれども,事務局から補足説明いただけるでしょうか。
【小川大学振興課専門官】
 事務局でございます。こちらにつきましては,川嶋委員などから,この会議でも御指摘がございましたけれども,現在の実施要項の一般選抜,総合型選抜,学校推薦型選抜の記載内容と実態が合っていないところがあるのではないかと。実態に合う形で記載を整理したほうがいいのではないかという御意見を踏まえて,付け加えた項目でございます。新しい定義をし直すというよりは,実態に合わせる,意味をきちんと明確にするという趣旨でございます。
 以上でございます。
【星野委員】
 ありがとうございました。分かりました。
【圓月主査】
 ありがとうございます。
 それでは,その次,垂見委員に御意見をいただきます。あと,髙井委員も手を挙げてくださったので,垂見委員,田中委員,髙井委員の順番で御発言をお願いいたします。
 それでは垂見委員,よろしくお願いします。
【垂見委員】
 武蔵大学の垂見です。3ページ目の(3)について,質問とコメントです。
 何度か発言している件ですけれども,経済的な条件に左右されずという点で,今まで大きく3点,提案等があったと思うんですけれども,1点目が,経済的条件に関する項目を設定し,経済的不利がある志願者へのアファーマティブ・アクションなどを行う。2つ目が,経済的不利がある志願者でも書けるような評価項目を設定し評価する。そして3つ目が,多面的な評価の枠組みを超えて,入試全般でディスアドバンテージの人に対して新しい入試区分を設けることを,例えば在り方会議などで検討する。
 今回まとめられている資料の3ページ(3)の,まず3ポツに関しての質問なんですけれども,この中でマル1,マル2が,今述べた1点目,2点目に呼応すると思うんですが,マル1の部分,「経済的・地理的な不利等がある志願者でも,そうした客観的事実に配慮した選抜を行うこと」となっていて,かなり抽象的な表現にとどめているような気がしました。1ポツのところで,「評価をする際には,こうした課題への配慮が必要である」となっていて,3ポツでも,「こうした配慮した選抜を行うこと」と具体的な方法には触れず同じ内容になっているので,かなり1点目を抽象的なところに留めたと思うんですけれども,そうされた理由をお聞きしたいなというのが1つ目です。
 もう一つが,5ポツになると思うんですが,4ページ目です。(3)の最後のポイントになります。この5ポツの中で,「加えて,入学者選抜の公平性への配慮の観点から,総合型選抜や学校推薦型選抜等の特別選抜の一部として選抜を行うことも考えられる」となっていまして,この点が恐らく先ほど述べた3つ目の提言に対応するものかと思われます。
 ディスアドバンテージの人に対して,入試の全般の中でどこまで踏み込むのかというのは,価値の問題だと思うんですけれども,各大学が個々にそれを具現化するだけではなく,政策として議論する必要もあるのではないか,この会議を離れて例えば「在り方会議」などで検討する必要があるのではないかという意見だったと思います。今回そういった政策として議論するという点が,この5ポツには入っていないような気がするので,なぜかという点をお聞きしたいと思いました。
 以上です。
【圓月主査】
 ありがとうございました。重要な点について御質問いただいたものと思っております。
 こちらは事務局から補足説明あるいは回答をしていただけますでしょうか。
【小川大学振興課専門官】
 事務局でございます。まず1つ目の御質問に関しましては,前回の会議でお示ししていました「今後の審議における論点について(案)」というものがございまして,その中では,今の垂見委員から御指摘がありましたけれども,もう少し抽象的ではない表現の仕方をしておりましたが,今回この骨子案をまとめるに当たって主査・副主査とも相談いたしましたが,例えばアファーマティブ・アクションという言葉は前回まで使っておりましたけれども,そういった言葉を使うことに対して,この会議の中でも議論がございましたけれども,日本の入試の文化の中で抵抗感といいますか,逆差別というか,そういったことを実際に思われる方がいるということも踏まえて,少しそこの表現を控え目にしたという経緯がございます。
 2つ目のあり方検討会議のところにつきましては,今後この会議の報告をあり方検討会議にもすることになりますので,その中で,またあちらの会議と連携を図っていくことが必要だと思っております。この骨子案につきまして,そこまでは書いてはいないというものでございます。
 以上です。
【垂見委員】
 分かりました。ありがとうございます。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは,田中委員,よろしくお願い申し上げます。
【田中委員】
 帯広大谷短期大学の田中でございます。最初に,まず審議のまとめということで骨子案を読ませていただいて,非常に私の中ではすとんと落ちるところがたくさんございました。ありがとうございました。
 ただ一方で,先ほどお話しいただきましたけれども,牧田委員の巨視的な御意見も,私は非常に,目からうろこということですけれども,感銘深く聞かせていただきました。
 私は1点だけ,実はよく分からないというか,本当に細かい点で恐縮なんですけれども,5ページ目の(2)の5ポツ目のところなんですが,「検討に当たっては,教育委員会,高等学校,大学等が協働して,大学入学者選抜における観点別学習状況の活用手法等について実証研究に取り組み」云々という項目があって,私はここだけは何となく,違和感とは言いませんけれども,頭の中にすとんと落ちてこなかったんですね。それで申し訳ないんですけれども,どのようなイメージでここの表現が書かれているのかなということについてだけ教えていただければと思って,質問させていただきました。よろしくお願いいたします。
【圓月主査】
 ありがとうございました。適切な御質問をいただいたものと思っております。
 事務局から補足説明いただけるでしょうか。
【小川大学振興課専門官】
 事務局でございます。こちらの具体的な,どういう検討を行うかにつきましては,まだ現段階では将来のことを何とも確定的なことを言えるような状況ではないんですけれども,例えば委託調査研究のようなもので,そういった実証研究を行っていくということは考えられるのではないかと思っております。
 以上でございます。
【圓月主査】
 田中委員,よろしいでしょうか。
【田中委員】
 分かりました。ありがとうございました。
【圓月主査】
 ありがとうございます。
 それでは,石崎委員も手を挙げていただいておりますので,髙井委員,石崎委員の順番で御発言をお願いします。
 まず髙井委員からよろしくお願いいたします。
【髙井委員】
 ありがとうございます。今,田中委員さんが御質問された内容と,同じでございました。この骨子案を拝見していて,全体的に今後,大学入学者選抜における方向性みたいなものはこんな感じというお話があり,それを受けて,高校側はどう対応していこうか,大学はどう準備するのかという形にはなっていく中で,先ほど田中委員さんが御質問されたここの部分,「検討に当たって」はというところをどういう形でイメージされているのかまた,高校の対応,準備,大学の準備となったときに,これはいつ実施されることを想定されていますでしょうか。
 JAPAN e-Portfolioの件もありますので,その次の(3)のところでも,少し事務局さんからもお話ありましたけれども,実証といったものを,冒頭の巳波先生からの御報告も受けながら,実際に検討していくものと思っていたのですが,実証成果等を使うか使わないかも分かりませんのような印象を受けた御説明だったと受け取りました。そうだとしますと,教育委員会,高校,大学で具体的な活用方法を検討しつつ,そのシステムをどのように全国展開していくのか,それはいつなのかというところについては,ここだけ見てしまうと,一体いつの話をしているのか,現時点での方向性として,ある程度の目安について,もしお話が聞けるのであれば聞きたいところでございます。
 以上です。
【圓月主査】
 こちらも非常に重要な点についての御質問だと思っております。
 ちなみに,私の進行がまずいところもあるんですけれども,あと残り15分ぐらいになっております。今,(3)の部分にも関連性がある形で質問していただきましたので,残った時間で(3)についても御意見があればご発言ください。特に今回,巳波委員から非常に充実した報告もいただきまして,いろいろな問題意識もあるかと思いますので,残り時間は1,2,3,調査書の電子化にも触れていただいてもよいとしたいと思っております。よろしくお願いします。
 それでは,まず髙井委員の今の御質問,御意見に対して,事務局から説明いただけるでしょうか。
【小川大学振興課専門官】
 事務局でございます。今の髙井委員の御質問ですけれども,もともと調査書の電子化というのは2022年度の入試から実施をするということを目標にして,これまで進めてきておりましたけれども,現段階で申し上げられることは,ここに骨子案という形でまとめているとおり,はっきりとした時期は申し上げられないということになります。少なくとも2022年度という数字的な目標は上げづらいのかなと考えているところでございます。
 以上でございます。
【圓月主査】
 髙井委員,よろしいでしょうか。
【髙井委員】
 分かりましたというのはなかなか言いづらい部分もありましたけれども。
【圓月主査】
 そうですね。
【髙井委員】
 分かりました。
【圓月主査】
 申し訳ありません。副主査の川嶋先生なんかの御意見をいただきながら,できるだけ具体的に書きたいと思ったんですけれども,外的な状況が非常に流動的な部分が多いので,具体的な時期を今の段階で書くと,かえって混乱を引き起こさないかという判断がございます。御理解いただきたいと思っております。
 それでは,石崎委員に御意見いただきます。あと,柴原委員と星野委員も手を挙げていただいていますので,その順番でお願いいたします。
 まず,石崎委員からよろしくお願いします。
【石崎委員】
 石崎でございます。どうぞよろしくお願いします。
 同じく5ページの観点別学習状況の評価の件なんでございますが,質問と意見を一つずつ言わせていただくんですけれども,まず4ポツ目で,条件が整い次第,可能な限り早い段階で,調査書にも観点別学習状況の評価の項目を設けることを目指しましょうということが記載されているんですけれども,これは調査書が電子化されてから,どれぐらいの期間を目指されているのか,いつ頃を目途にされているのかというのが,これは多分,電子化というよりは,観点別学習状況をどう使うかという研究が進んだらという意味だと捉えているんですけれども,それがどれぐらいの期間を想定されているのかということを伺いたいのが1点目でございます。
 あと1点なんですけれども,大学入試の上で直ちに観点別学習状況の評価が使えないというのであれば,それはここに書いてあるように,直ちに項目を設けないということもやむを得ないかなとは思うんですけれども,一方で高校側の立場でいうと,観点別学習状況をこれから定着させるという意味では,入試に全く使わないよという,調査書に載せないということが,観点別学習状況を定着させる上で進める上で,入試に使わないからやらなくていいんだみたいな誤ったメッセージにならないかなということを心配しているので,これは直接入試と関係ある話ではないんですけれども,観点別学習状況の評価を進めるという上でのメッセージ性という意味では,載せないということに心配な気持ちを持っているということを,意見としてお伝えさせていただきます。
【圓月主査】
 ありがとうございました。
 まずそうしたら,前半の質問のほうにつきましては,事務局から御説明できる範囲で,よろしくお願いいたします。
【小川大学振興課専門官】
 事務局でございます。石崎委員からの時期の目途という話なんですけれども,こちらも繰り返しになってしまい恐縮なんですが,現段階において具体的に何年程度という形で目途を示すことはできないのかなと思っております。今回検討いただいている調査書の様式は,令和6年度の入試から実施するものを想定して議論しているところでございますけれども,少なくともそこで使うことはしない,直ちに記載はしないということだけでございます。
 以上でございます。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。後半の御意見に関しましては,本当に巨視的な観点から,単に入試に関わるかどうかというよりも,その点で誤ったメッセージを発信しないように,ぜひ気をつけていきたいと思っております。
 石崎委員,今のでよろしいでしょうか。
【石崎委員】
 可能な限り早いと書いてあったので伺ったんですけれども,令和6年のは無理としても,7年なのか,8年なのか,10年なのかというのは聞きたかったんですけれども,可能な限り早くということは,1年でも早くという理解でいいわけですよね。
【圓月主査】
 そのように御理解いただけたらと思っております。よろしくお願いします。
 それでは,星野委員,川嶋委員,高田委員の順番で手を挙げていただいております。星野委員からよろしくお願いいたします。
【星野委員】
 星野でございます。私も石崎委員とかと同じ観点別評価のところです。それで,今お話があったように,条件が整い次第というのは,大学でどのように入試に使うかという検討というのが,成果としてちゃんと示せた状況ということが想定されるわけですけれども,そのためには,高等学校側から観点別評価のデータを頂かないと,事が進まないと思うんですが,それと,調査書の電子化のところと関係するんですが,これは巳波委員にお伺いしたいと思うんですが,例えば校務支援システムから電子調査書を生成させるといったときに,入試の段階ではそれが観点別評価のところは表記しないような形で,そして,入学が例えば決まった後,大学の求めに応じて,入学者について改めて観点別評価を含めたデータを送ってもらうというようなシステム上の配慮というか,そういうのは可能でしょうか。
【圓月主査】
 巳波委員から,よろしくお願いします。
【巳波委員】
 後半の御質問に関してですけれども,技術的には可能ではありますが,現時点ではそれを想定した設計にはなっていないので,すぐにそれができます,できるようなものですということではないんですけれども,まずこういうシステムを導入すれば,今のようなプロセスを追加して実現することは,比較的簡単かなと思っております。
【星野委員】
 ありがとうございます。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。
【星野委員】
 やはり観点別評価については,主体性だけじゃなくて,知識・技能とか,思考力・判断力・表現力も含まれたトータルの意味での学力ということが示されているわけですから,大学側でもどのように入試に使っていくかという検討を速やかに進める上でも,そのデータというものが大学側に提供されるということを,ぜひ希望したいと思います。よろしくお願いします。
【圓月主査】  
 承りました。
 それでは,川嶋委員,高田委員,柴原委員,明比委員が手を挙げていただいております。ほかにも御意見いろいろあるかと思いますけれども,時間の関係で,今,手を挙げていただいている先生までとしたいと思っております。
 それでは,川嶋委員,よろしくお願い申し上げます。
【川嶋委員】
 川嶋です。今日いろいろ御意見を伺っていて,改めて少し再確認したいことを申し上げたいと思います。
 西郡委員の最初の確認事項にも関わるんですけれども,今回は全ての入試区分,入学者選抜において,多面的・総合的評価に変えていこうということで議論が始まっています。その前提となっているのは,牧田委員がお話しになったように,変わりつつある社会に対して,今の入試も含めた大学教育の在り方はそれで十分なのかという問題意識の下で,大学入試も変えていかなければいけないということで議論が始まったということです。ということで,全ての入学者選抜において多面的・総合的評価に変えていくということが大前提だということを,今更ですが確認する必要があると思います。
 その議論の中で,調査書の電子化とか,あるいはeポートフォリオの話が出てきたのは,一般選抜では学力テストのスコア以外,なかなか使う材料がないので,調査書を電子化すると,これは入試業務の全体の省力化にもつながるけれども,とりわけ一般選抜でテストの点以外の資料として使えるのではないかという期待から,この会議での議論が始まってきたんだろうと私としては理解しております。そういう意味で,この前提を忘れないことが,この会議でも在り方会議でも,議論を進める上では非常に重要な観点だろうと思います。
 それからもう1点,観点別評価について,実は井上委員が関わっていらっしゃる指導要録の電子化ということにも関連してくるかと思うんですが,指導要録には観点別評価の欄が設けられているとお聞きしていますので,先ほどの就職者向けと進学者向けにそれぞれ調査書を作らなければいけないというお話もありましたけれども,もし指導要録というものが電子化されてしまえば,わざわざ調査書にそれぞれの目的に応じて落とす必要はなくて,大学に高校からそれをすぐに送付できるのではないかとも考えています。
 加えて,その点に関して,学校教育法施行規則では,校長は進学先の校長に指導要録を送らなければいけないとなっているらしいんですけれども,今のところ高校から大学には指導要録は送られていない。校長というのは大学の学長を含むという理解でよろしいようなので,本来ならば高校から進学した大学に指導要録が送られてくれば,こういう問題,というか,現行の紙ベースのものが送られてきてもなかなか使えないとは思いますが,入学後の教育指導,学習指導には使えるのかなと思います。
 ちなみに,大阪大学の入試課に確認したら,指導要録は来ていませんということでございました。この点も含めて,今回は取りあえず,この場ではそこまでは議論できませんけれども,そういうことも含めて今後,改善協議なのか,また別の会議体なのか分かりませんけれども,それこそ日本の教育全体をよくするためには,拙速は駄目ですけれども,かなり迅速な審議が必要なのではないかと感じている次第です。
 以上です。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。本会議の重要な点を確認していただいたものと理解しております。
 それでは,先ほども申しましたとおり,高田委員,柴原委員,明比委員の3人が手を挙げてくださっております。少し時間をオーバーするかも分かりませんけれども,せっかく御意見いただけるということですので,お伺いしたいと思います。
 高田委員,よろしくお願い申し上げます。
【高田委員】
 度々欠席をいたしまして,申し訳ありませんでした。これまでありがとうございました。私からは5ページの(3)調査書の電子化の在り方についてのところで,少し意見を述べさせていただきます。
 最初のポツにありますように,冒頭で巳波先生からもシステムの概要について御発表いただきましたけれども,調査書に記載されている事項というのは,生徒の成績あるいは出欠席の状況なども含めて,学校現場では非常に秘匿性の高い情報であります。したがって,それをやり取りするということについては,ここにも書いていただいていますけれども,安全性ということが何よりも重要だと思っておりまして,現場と大学とのやり取りの中で,あるいは生徒と大学とのやり取りの中で,失敗ですとか事故ですとか,そういうものがあってはならないと思っておりますので,この制度設計に当たりましては,公益性とともに安全性,ここにも必要だと記述がありますけれども,私はここは非常に重要だと思っておりますので,そこの点を十分踏まえた上で制度設計をしていただきたいと思います。
 夏までの間で,JAPAN e-Portfolioの件でもいろいろ議論をさせていただいたところでありますけれども,そうしたこともありますので,ぜひこのことは重々気をつけていただいて,学校現場での落とし込みが上手に円滑に進むように,制度設計をしていただければありがたいなと思います。よろしくお願いいたします。
 お願いでございます。以上でございます。
【圓月主査】
 ありがとうございます。安全性について,特に重要なものとして気をつけようということで,巳波委員も,また文科省も確認してくださったものと理解しております。それでよろしいでしょうか。
 それでは,柴原委員,よろしくお願い申し上げます。
【柴原委員】
 柴原でございます。5ページの観点別学習状況についてですけれども,私も石崎委員と全く同じ考えを持っていまして,高校の現状,大学の入試の活用方法についていろいろ課題があるので,当面は載せないといったときに,多分高校は,観点別学習が入試に関係ないという言い方をすると思います。そうすると,今回の学習指導要領の目玉である観点別学習の評価についておろそかになることを,すごく私は心配しております。
 その意味で,現状使えそうにないから書かないというんじゃなくて,例えば4ページの一番下にありますように,「学習成績の状況」を大学の活用に委ねるという表現をされていますけれども,そういう形で残すことができないかなという考えを持っています。
 以上です。
【圓月主査】
 ありがとうございました。この点も,重要な点を再確認いただいたものと理解しておりますけれども,事務局から何か補足はございますか。よろしいですか。
【小川大学振興課専門官】
 特にございません。
【圓月主査】
 重要な点として確認させていただいたということにさせていただきます。
 それでは,少し時間が過ぎておりますけれども,最後に明比委員から御意見をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
【明比委員】
 時間を過ぎた中で,すいません。先ほどから疑問をずっと持っていたもので,御質問させていただきたいと思います。
 先ほど川嶋先生からも,今後多面的評価を実施するに当たっては,調査書の電子化が重要であるというお話があったかと思います。調査書の電子化ができなければ,なかなか難しい部分も出てくるという部分で,今日,巳波先生から,電子調査書システムの実現方法のD案というのがお示しされている中で,データセンタというものが出てきています。
 それは複数のデータセンタに分散化して,データをそこに入れるというお話かと思うんですが,先ほどの安全性を確保することというものもありましたけれども,データセンタの運用あるいは管理というのは一体どこがするのかというのも,我々使うほうとしても非常に気になるところがありまして,それが民間なのか,それとも国なのかとか,誰も関与しないということはないと思うんですが,それが確立できないと,多分この調査書の電子化自体がまた頓挫してしまうんじゃないのかなという懸念がありますので,そこをどのようにお考えいただいているのかというのを,もしお分かりであれば,お聞かせいただければと思います。
【巳波委員】
 巳波ですけれども,どうもありがとうございます。私は当初から申し上げているように,公益性のある組織・団体が責任主体として運営管理するべきだと考えております。少なくとも責任主体は,まず公益性のある組織が一元的に管理するべきだろうと考えております。
【圓月主査】
 ありがとうございました。公益性と安全性の確保というものが,非常に重要なものになると理解しております。
 事務局から何か,この点に関しては補足していただける点,今の時点でございますか。
【小川大学振興課専門官】
 特にございません。
【圓月主査】
 この点も,今後この話を進めていく中で,非常に重要になると思いますので,ぜひ明確に確認しながら作業を進めていきたいと思っております。
 それでは,ほかにもいろいろ御意見あるかと思いますけれども,予定の時間が,私の不手際もございまして,またたくさんの御質問を本日はいただきましたので,5分ほど過ぎてしまいました。
 本日も長時間にわたって御審議をいただき,ありがとうございました。取りあえず,本日の議論はここで終えたいと思っております。
 最後に事務局から連絡をしていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
【小川大学振興課専門官】
 事務局でございます。次回の会議日程は,また御都合を確認の上,御連絡をさせていただきます。
 本日,時間の都合で言い足りなかったこと等がございましたら,またメール等で事務局まで御連絡をいただくようお願いいたします。
 本日は御多忙の中,誠にありがとうございました。
 以上でございます。
【圓月主査】
 それでは,どうもありがとうございました。また意見等ありましたら,事務局に寄せていただければ,それに対応させていただきます。
 それでは,ありがとうございました。
 

── 了 ──

 

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