大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議(第1回)議事録

1.日時

令和2年3月19日(木曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省東館3階講堂

3.議題

  1. 協力者会議の議事運営等について
  2. これまでの経緯について
  3. 自由討論
  4. その他

4.出席者

委員

(有識者委員)圓月主査、川嶋委員、髙井委員、垂見委員、長塚委員、井上委員、石崎委員、明比委員、西郡委員、星野委員、牧田委員、巳波委員

文部科学省

伯井高等教育局長、玉上大臣官房審議官(高等教育局及び高大接続担当)、森田文部科学戦略官、角田科学技術・学術政策局統括官、滝波教育課程課長、西田大学振興課長、塩川参事官(高等学校担当)、桐生学びの先端技術活用推進室長、前田大学入試室長 他

5.議事録

【加藤大学振興課専門官】
 失礼します。それでは,定刻となりましたので,ただいまより第1回大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議を開催いたします。本日は,御多忙の中,御参集いただき,誠にありがとうございます。
 初回でございますので,出席者の御紹介までは,私,高等教育局専門官の加藤が進行させていただきます。その後,圓月主査にお願いをいたしたく存じます。
 なお,この協力者会議は,原則として公開で行うこととしております。当初予定では,取材,傍聴の方,カメラによる撮影がある予定でございましたが,御存じのとおり,新型コロナウイルスの感染拡大防止のため,本日は,傍聴者の入室は認めず,ライブ配信での公開と,後日議事録をホームページに掲載することとしたいと思いますが,よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは,よろしくお願いいたします。
 それでは,会議の開催に当たり,伯井高等教育局長から御挨拶を頂きたいと存じます。よろしくお願いいたします。
【伯井高等教育局長】
 皆さん,こんにちは。高等教育局長をしています伯井と申します。大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議の開催に当たりまして,御挨拶申し上げます。
 まず圓月先生におかれましては,主査を快くお引き受けいただきまして,ありがとうございます。また,委員の皆様方におかれましては,大変御多忙のところ,この協力者会議の委員をお引き受けいただきまして,ありがとうございます。心より御礼申し上げます。
 大学入試におきまして,学力の3要素の1つでございます主体性を持って多様な人々と協働として学ぶ態度を評価することについては,これまで高大接続システム改革会議の最終報告等を踏まえまして,筆記試験に加えまして,調査書や受験者本人が記載する資料等の活用を各大学に求めてきたところであります。他方,昨年12月のいわゆる学校の働き方改革法の成立を受けた教員の負担軽減といった観点,あるいは新学習指導要領下での指導要録の見直しを踏まえ,令和6年度に実施される新学習指導要領に対応した最初の入試に向けた調査書あるいは受験者本人が記載する様々な資料の在り方などについて検討するということが求められるわけでございます。
 もとより各大学の入学者選抜は,それぞれの入学者受け入れ方針に基づきまして実施するものでございます。具体的な方法については各大学の自主的な判断に委ねられているというものでございます。したがいまして,主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度を各大学の入試でどう評価するかについては各大学で判断されることでございます。
 しかしながら,調査書あるいは受験生本人が記載する資料を大学入試で評価するという以上,その資料についての真正性であったり,客観性の確保,あるいは高校教員の関与の在り方,合否判定における評価の重み付けなどにつきまして,受験生,保護者あるいは社会全体から理解が得られるような考え方の整理,それに基づく各大学の取組ということが必要と考えられるわけでございます。
 そのためには,例えば推薦,AO,一般入試という選抜方法が複数ある中で,どの選抜区分でどのように活用するのがなじむのか,どのような活用の方法があるのか,あるいは経済的条件などに左右されず,等しく多面的な評価の機会を得ることができるようにするためにはどういったことに留意すべきなのか。あるいは,個人情報でもある受験生の学びや活動記録のデータをどのような形で入試で活用するか,それをデータベース化して活用する,促進するといったことの是非などについても,改めて本協力者会議において検討いただきたいと考えている次第でございます。
 最後でございますが,委員の皆様方の御協力に改めて感謝申し上げるとともに,精力的な御議論,活発な御議論をお願いいたしまして,私からの挨拶とさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。
【加藤大学振興課専門官】
 どうもありがとうございました。
 それでは,私から,本日御出席の委員の皆様を御紹介させていただきます。資料1をごらんください。本協力者会議の設置要項と,その2枚目に委員の皆様の名簿がございます。
 まず初めに,本協力者会議の主査であります,同志社大学学長補佐の圓月勝博先生です。
【圓月主査】
 圓月と申します。よろしくお願い申し上げます。
【加藤大学振興課専門官】
 それでは,座席の順番に進めたいと思います。
 神奈川大学事務局長・理事で,日本私立大学協会大学教務研究委員会副委員長をされております,明比卓委員でございます。
【明比委員】
 よろしくお願いいたします。
【加藤大学振興課専門官】
 東京都立世田谷泉高等学校統括校長で,全国高等学校長協会大学入試対策委員会委員長の石崎規生委員でございます。
【石崎委員】
 石崎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【加藤大学振興課専門官】
 株式会社JMC主席エキスパートで,総務省地域情報化アドバイザーの井上義裕委員でございます。
【井上委員】
 井上でございます。よろしくお願いいたします。
【加藤大学振興課専門官】
 大阪大学高等教育・入試研究開発センター長の川嶋太津夫委員でございます。
【川嶋委員】
 川嶋です。どうかよろしくお願いします。
【加藤大学振興課専門官】
 埼玉県立狭山工業高等学校主幹教諭の髙井潤委員でございます。
【髙井委員】
 髙井でございます。よろしくお願いいたします。
【加藤大学振興課専門官】
 武蔵大学社会学部教授の垂見裕子委員でございます。
【垂見委員】
 垂見です。よろしくお願いいたします。
【加藤大学振興課専門官】
 順天中学校高等学校長で,日本私立中学高等学校連合会常任理事の長塚篤夫委員でございます。
【長塚委員】
 よろしくお願いいたします。
【加藤大学振興課専門官】
 佐賀大学アドミッションセンター長の西郡大委員でございます。
【西郡委員】
 よろしくお願いします。
【加藤大学振興課専門官】
 長崎大学教授,一般社団法人国立大学協会入試委員会専門委員の星野由雅委員でございます。
【星野委員】
 星野です。よろしくお願いいたします。
【加藤大学振興課専門官】
 一般社団法人全国高等学校PTA連合会会長,牧田和樹委員でございます。
【牧田委員】
 牧田です。よろしくお願いいたします。
【加藤大学振興課専門官】
 関西学院大学学長補佐の巳波弘佳委員でございます。
【巳波委員】
 巳波と申します。よろしくお願いいたします。
【加藤大学振興課専門官】
 大変恐縮でございますが,本日御欠席の委員の御紹介につきましては,お手元にお配りいたしました委員名簿をもって代えさせていただきます。
 次に,文部科学省側の出席者を紹介させていただきます。
 玉上晃大臣官房審議官です。
【玉上大臣官房審議官】
 よろしくお願いいたします。
【加藤大学振興課専門官】
 森田正信文部科学戦略官です。
【森田文部科学戦略官】
 よろしくお願いします。
【加藤大学振興課専門官】
 その他,高等教育局及び初等中等教育局の関係官が同席しております。事務局の紹介は以上でございます。
 それでは,圓月主査から御挨拶を頂きたいと存じます。圓月主査,よろしくお願いします。
【圓月主査】
 ただいま御紹介にあずかりました圓月と申します。ほかにもっと適任の方がたくさんおられるんですけれども,少しでもお手伝いできればということで,僭越ながら主査を引き受けさせていただきました。またよろしくお願い申し上げます。
 この会議につきましては,これまで調査書の電子化についてのワーキンググループで議論を積み重ねてきましたけれども,それを更に発展させるということを目的にしております。調査書というのは,皆さんよく御存じかと思いますけれども,紙ベースで非常に膨大な量がある一時期に高校から大学の方に送られてまいります。高校の先生方には非常に大きな負担をお掛けし,また,受け取る大学の方でも,いろいろ工夫はしておりますけれども,多くの量がございますので,その活用方法については今のところ限界があるというふうなことがございます。
 ペーパーレス化の時代の中で,この調査書というものは少し時代から取り残された感があるかなと思っております。ここであらためてSDGsやSociety5.0に言及するまでもなく,現代社会の課題として,限られた自然資源の活用と,そして,ICT等を利用した情報の新たな活用方法を考えていくということは非常に重要なことだと思いますので,これを機会に調査書を電子化し,そして,高大接続改善などにも役立つような新たな情報活用の在り方を考えてみるべきではないかということで議論を進めてまいりました。
 この多面的評価は,学校教育法に基づいた学力の3要素を踏まえたものです。もちろん知識・技能は非常に重要なものでもありますし,思考力・判断力・表現力という第2の要素も非常に重要ですけれども,もう一つ,3つ目の要素として主体性・協働性・多様性というふうに言われておりますけれども,そういうものなんかも積極的に評価し,若者の学習意欲をかき立てていくということができないかというのがございます。
 ただし,主体性あるいは協働性・多様性というものはなかなか数値化できるものではない,定量化できるものではないので,どのように評価するべきかについては,評価論の立場からもいろいろな御意見があるかというふうに思っております。ワーキンググループで議論を進めておりましてやはり非常に多岐にわたる問題があることが分かりましたので,新たにまた御見識ある委員の方々に加わっていただき,更に議論を深めたいと思っております。
 また,先ほど伯井高等教育局長の方からも言及がございましたけれども,今もう一つ,学校の働き方改革が非常に重要なものになっております。調査書も,先ほども申しましたとおり,多大な御苦労を高校の先生方に掛けておりますので,うまくやれば,働き方改革に貢献できるものではないかと思っております。ただし,ワーキンググループの中でも,ともすると,また業務の煩雑化を引き起こすようなことはないかという不安も表明されておりました。また,この不安を払拭する情報発信の努力が少し足りないのではないかというふうな御意見もワーキンググループの中でございました。
 それも踏まえまして,これを契機として公開で議論を続けていき,そして,情報発信の努力に努めながら,幅広い御意見を頂き,時には御批判にも謙虚に耳を傾けながら,この多面的評価についての議論を深めていきたいという趣旨でこの会議が設置されたものと理解しております。
 雑駁ではございますけれども,このような本会議の設置の経緯と目的を御理解の上,建設的な御意見を頂きたいというふうなことで,そのことをお願いして主査の御挨拶に代えさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【加藤大学振興課専門官】
 ありがとうございました。
 本日は,伯井局長,玉上審議官におかれましては,公務のため,途中退席させていただきます。
 それでは,これからの進行は圓月主査にお願いしたいと思います。圓月主査,よろしくお願いいたします。
【圓月主査】
 それでは,これからは私が進行を行います。
 それではさっそくですが,議事に入りたいと思います。まず議題1でございます。本協力者会議の運営等について,事務局の方から説明をお願いしたいと思います。それでは,加藤専門官,資料1と2を使って御説明いただけるということで,よろしくお願い申し上げます。
【加藤大学振興課専門官】
 資料1と2の説明の前に,本日御用意させていただきました資料は,議事次第のとおりでございます。初回ということもあり,多くの資料を用意させていただいております。不足等ございましたら,事務局までお申し付けください。
 それではまず,資料1をごらんください。先ほど御紹介申し上げました,本協力者会議の設置についてという,高等教育局長決定でございます。
 趣旨として,大学入学者選抜において主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度を評価することについては,筆記試験に加え,調査書や志願者本人が記載する資料等の積極的な活用を各大学に求めてきたところです。他方,昨年12月に学校の働き方改革の法案が成立したことを受けた教員の負担軽減の観点や,新学習指導要領下での指導要録の見直しを踏まえ,令和6年度に実施される新学習指導要領に対応した最初の個別入試に向けた調査書の在り方については,新たに検討することが必要となっております。
 このため,大学入学者選抜における多面的な評価に関する具体的な内容や手法等について,高等学校関係者,大学関係者,有識者,保護者,関係者から成る協力者会議を設置し,総合的な検討を行うことということで,検討事項が大きく4点ございます。1点目が,大学入学者選抜における多面的な評価の内容や手法に関する事項,2点目として,調査書の在り方及び電子化手法に関する事項,3点目として,調査書や志願者本人記載資料の活用及び大学への情報提供の在り方に関する事項,4点目として,その他審議が必要とされる事項です。
 2枚目が本協力者会議の委員の名簿になります。
 続いて,資料2をごらんください。本協力者会議の運営についての案をお配りしております。
 まず,会議に主査を置く。主査は,必要に応じて,副主査を指名することができる。副主査は主査に事故があるときはその職務を代理するということで,後ほど圓月主査から御指名をいただきたいと思っております。
 それから,議事の公開。先ほど申し上げたとおり,原則公開とし,会議の円滑な実施に影響が生じるものとして主査が適当であると認めた場合には,全部又は一部を非公開とすることができるとしてあります。
 それから,会議資料の公開ということで,配布資料も原則公開とし,上記と同様の場合には,資料の全部又は一部を非公開とすることができるとしてあります。
 最後に,議事録の公開でございます。会議の議事録を作成し,公開するものとし,上記2により会議が非公開となった場合は非公開とし,内容に応じて議事要旨を議事録に代えることができると,このような案になってございます。
 説明は以上です。
 すみません,資料2について少し補足がございます。新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から,まず先ほど御了承いただいたとおり,一般の傍聴は当面取りやめ,代わりにライブ配信での公開といたしますが,報道関係者は従来どおり,カメラ,ペンともに入場しております。
 また,各委員の座席,報道関係者の皆様の座席は,隣から1メートル程度離すとともに,マイクは座席に備え付けのアルコール消毒済みのものを御使用いただくこととしております。マイクの具合が悪い場合には,事務局がハンドマイクをお持ちしますが,これもその都度消毒いたします。机やお手元のタブレットや筆記用具は,全て消毒済みとなっております。
 さらに,会議室の後方のドアは換気のため終始開けたままにしておき,会議中盤には全てのドアを10分程度開けさせていただき,換気を行いたいと考えております。
 また,議事のライブ配信を円滑に行う観点から,御発言に当たっては,ネットでも聞き取りやすいように御配慮いただく,御発言の都度,お名前をおっしゃっていただく,資料を参照する際は,資料番号,ページ番号,ページ内の該当箇所などを分かりやすくお示ししていただくなど御配慮いただけると有り難く存じます。細かいことで恐縮でございますが,御理解のほどよろしくお願いします。
【圓月主査】
 ただいまの御説明について,何か御質問や御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは次に,先ほど加藤専門官の方からも御確認いただきましたけれども,私がやむを得ず不在となる場合などにつきまして,副主査を決めることができると規定の方では決まっております。そこで,副主査につきましては,中教審大学分科会の各種部会の委員等を務め,御経験と御見識が豊かな川嶋委員に副主査をお願いしたいと思いますけれども,よろしいでしょうか。
 (「異議なし」の声あり)
【圓月主査】
 それでは,御了承頂いたものとさせていただきます。
 それでは,川嶋委員,こちら側によろしくお願い申し上げます。
 よろしくお願いいたします。
 それでは,動いていただいてすぐにで恐縮なんですけれども,川嶋副主査の方から御挨拶を少し頂きたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。
【川嶋副主査】
 副主査を拝命しました川嶋です。運営の規定にもありましたように,主査の圓月先生に事故あるときは等と書いてありますので,圓月先生におかれましては,是非事故等あるいは病気等ないようお過ごしされることを祈りつつ,主査の本会議の円滑なる運営の補助をしたいと思っておりますので,よろしくお願いしたいと思います。
【圓月主査】
 どうもありがとうございます。事故のないようにできるだけ気を付けたいと思います。
 それでは次に,議題2に関しまして,事務局より,これまでの経緯等について説明をお願いしたいと思います。こちらは前田室長から御説明いただきたいと思います。資料3から11まで,たくさんございますけれども,順番に御説明いただけるものと思っております。よろしくお願いします。
【前田大学入試室長】
 ありがとうございます。大学入試室長の前田でございます。よろしくお願いいたします。
 本日,第1回目ということでございますので,資料が大部ではございますけれども,少しまとまったお時間を頂戴いたしまして,御説明させていただければと思います。
 先ほど資料1についても説明がございましたけれども,2の検討事項が1から4ございますけれども,これを今後どうするのかということの御議論でございますが,これまでこの多面的な評価に関してどういう議論の経緯があるのかということについて,資料3以降で御説明させていただきたいと思います。
 資料3をごらんいただければと思います。資料3は,これは議論の経緯ということでございますので,これ以降,資料3を横に,大変恐縮でございますけれども,照らし合わせながら御説明させていただければと思います。
 資料3は,平成26年から中央教育審議会での答申,それから,27年1月の高大接続改革プラン,高大接続システム改革会議の最終報告を踏まえまして,28年10月に主体性分野に関する委託事業,これは文科省の委託事業でございますけれども,ここに,関西学院大学様を中心としてJAPAN e-Portfolioの開発をしていただいたということでございます。
 その後,平成27年7月に,いつも我々,予告ということで2年前に,大学がこういうふうに入試が変わりますよということを外に,皆さん方に知らせる必要がございますから,更にその1年前に予告をするわけでございますけれども,平成33年度,すなわち,来年令和3年度の選抜要項の見直し予告をしてございます。
 それから,去年の3月には初等中等教育局の方より,学習評価及び指導要録の改善の通知がされておって,それが4月にはJAPAN e-Portfolioの運用が開始され,そして,先ほど圓月主査からも御紹介がありましたけれども,調査書の電子化の調査研究を今行っていただいているところでございます。
 資料4をごらんいただければと思います。今,資料4は,中教審答申,それから,高大接続改革プラン,それから,システム改革会議の最終報告を踏まえて,入学者選抜実施要項がどういうふうに変遷してきたかをまとめた資料でございます。
 左肩が条文・答申等となってございます。まず平成19年に学校教育法が改正されまして,その中に,30条2項でございますけれども,「基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的に学習の取り組む態度を養うことに,特に意を用いなければならない」ということで,高等学校にもこれを準用しているという規定でございます。
 これを受けまして,大学入学者選抜実施要項におきまして,第1の基本方針の青字でございますけれども,青字は基本的には前回の選抜要項からの変更点ということになってございます。この青字のところにつきまして,「能力・適性等の判定に当たっては,高等学校段階で育成される学力の重要な要素(基礎的・基本的な知識・技能,思考力・判断力・表現力等,学習意欲)を適切に把握するよう十分留意する。なお,高等学校の学科ごとの特性にも配慮する」という規定が入ってございます。
 それから,入試方法で,一般入試,それから,アドミッション・オフィス入試,AO入試と言われているものでございますけれども,それから,推薦入試がございますが,AO入試の項のところ,2の(1)のマル3番に「大学教育を受けるために必要な基礎学力の状況を把握するため,以下のア~エのうち少なくとも1つを行い,その旨を募集要項に明記するということ」で,特に知識及び技能を習得させるという観点からこの文言がこちらに入っているということでございます。それから,マル4番にも「調査書を積極的に活用することが望ましい」ということが入ってございます。
 推薦入試におきましても,(2)のマル1でございますけれども,高等学校の教科の評定平均値を出願要件や合否判定に用いる。それから,マル2番と致しまして,推薦書・調査書だけでは判定が困難な場合には,上記(1)3のア~ウの措置の少なくとも1つを講ずることが望ましいということが入ってございます。
 それから,調査書につきましては,3番目として,「各大学は,資格・検定試験の成績等のほか,弁論大会やボランティア活動の実績等を入学者選抜に用いる場合には,調査書への記載方法等を募集要項にできる限り具体的に記載する」というような,そういった選抜実施要項の規定がなされてございます。
 続きまして,2ページ目でございます。左肩に中教審の答申が平成26年12月22日ということで,高大接続改革の答申でございます。1番目の我が国の未来を見据えた高大接続改革の「しかしながら」以降の段落でございますけれども,我が国が成熟社会を迎え,知識量のみを問う従来型の学力や,主体的な思考力を伴わない協調性はますます通用性に乏しくなる中,現状の高等学校教育,大学教育,大学入学者選抜は,知識の暗記・再生に偏りがちで,思考力・判断力・表現力や,主体性を持って多様な人々と協働する態度など,真の学力が十分に育成・評価されていないという御指摘。
 それから,2ポツとして,各大学が個別に行う入学者選抜については,学力の3要素を踏まえた多面的な選抜方法をとる。それから,各大学の個別選抜改革におきましては,多元的な評価に対応した具体的な手法として,様々な学習過程や成果の記録等を蓄積して学習状況を把握するポートフォリオ評価等が着実に開発されていると。具体例を蓄積し共有し,新たな手法も研究・開発していく必要があるという答申でございます。
 それから,27年1月16日の高大接続改実行プランにおきましても,「学力の三要素(「知識・技能」,「思考力・判断力・表現力」,「主体性・多様性・協働性」)を踏まえた多面的・総合的な選抜方法をとることを促進すると。
 この2つの報告書踏まえまして,右側でございますけれども,また大学入学者選抜実施要項を28年度に変更してございます。基本方針の中に,それぞれ大学において学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)と,それから,教育過程編成・実施の方針,それから,入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)に基づいて,大学への入り口段階で入学者に求める力を多面的・総合的に評価すること,それが入試の役割であるということを改めて定義付けております。
 それから,マル1,マル2,マル3として3要素について規定してございます。基礎的・基本的な知識・技能,それから,思考力・判断力・判断力,主体性・多様性・協働性と,こういった3つの要素をそれぞれ適切に把握するよう十分留意するということがうたわれてございます。
 それから,入試方法でございますけれども,一般入試の1番でございますが,ここは実は22年のときにも一般入試の規定がございますけれども,そこと比較してこの28年の選抜要項で新しく加わったところが青字になってございます。集団討論,プレゼンテーション,それから,活動報告書,大学入学希望理由書,学修計画書,資格・検定試験等の成績といった,その他大学が適当と認める資料によって入学選抜を行いまして,入学志願者の能力,適性のほかに意欲ということがこのときに入ってございます。それから,前回は「合理的に判定」でございましたけれども,「多面的・総合的に評価・判定」という文言に変わりまして,今現状,これが一般入試の選抜要項における位置付けとなってございます。
 それから,調査書につきましては,以前のバージョンですと,各大学は,入学者の選抜に当たって調査書を十分に活用することが望ましいという,「望ましい」という表現がございましたけれども,それがなくなりまして,「活用する」というような表記に変わってございます。
 それから,3ページ目をおめくりいただければと思います。こちらに,今度,高大接続システム改革の最終報告でございます。左肩,丸の2番の2つ目の丸でございますけれども,受験者が学力の3要素に対応する諸能力や経験をどの程度持っているか,当該大学の教育課程編成・実施の方針に沿った教育を受け卒業認定・学位授与の方針を体現する学生として卒業し社会で良き人生を歩むことができる潜在力を持っているかどうか,これをそれぞれの大学がアドミッション・ポリシーに基づいて判定すること。そのアドミッション・ポリシーと,それから,入学者受入方針,教育課程の編成・実施方針に沿いまして,それぞれの能力・経験を多面的・総合的に評価する選抜に改革する。
 それからもう一つが,AO推薦入試につきましては,いわゆる学力不問とやゆされるような状況も生じており,学力の3要素の評価を適切に行うことが必要であるというようなことが提言されてございます。
 それから,(2)の個別大学における入学者選抜改革につきましては,入学者にどのような能力を求めるのか,それを具体的な方法で評価する。それをアドミッション・ポリシーにおいて明確にするということで,例えばと致しまして,調査書とか活動報告書,それから,エッセイ,推薦書,面接等が例示として挙げられてございます。それから,調査書や大学入学希望理由書,面接などの多様な評価方法を工夫しつつ,主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度についての評価を重視すべきだということがうたわれております。それから,国においては,調査書の在り方を見直すとともに,提出書類のより積極的な活用を促すことが必要。
 それから,AO入試,推薦入試につきましては,学力の3要素に関する表記を推薦書の中できっちり記載することを必須として,提出書類の在り方を改善してほしいということ。それから,一般入試につきましては,主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度をより適切に評価するため,調査書や学習活動の履歴,学修計画書,そういった資料の積極的な活用を重視するということが提言されてございます。
 それから,調査書の見直しにつきまして,4ページでございます。これは次期学習指導要領に基づく指導要録の見直し,これを踏まえて,まさに学習評価の観点別評価が入ってきてございますけれども,そういったことも踏まえながら調査書の様式を見直す。それから,現行調査書の指導上参考となる諸事項,これは後ほど御紹介させていただきたいと思いますけれども,この欄を拡充して,より多様で具体的な内容が記載されるようにすること。それから,一番最後のポツでございますけれども,評定平均値でございます。調査書に,今,評定平均値という言い方はしてございませんけれども,評定平均値につきまして,その値のみを評価することで,生徒の多様な能力や個性の評価を妨げているという指摘がある。この在り方について検討することが必要だということが提言されてございます。
 それから,最後に,本人が提出する書類の多様化,内容の充実でございます。そもそもなぜ本人が記載する提出書類を求めるのかということにつきましては,1つ目の丸でございますけれども,このことにより大学に対してより多面的な情報が提供されるとともに,本人が大学で学ぶ目的を見つめ直し,自らの進路について主体的に考える機会が増え,大学での学修への意欲を高めることにつながる。生徒一人一人が自らを振り返り,こうした提出書類に十分な記述を行うことができるよう,高等学校教育において適切な指導が行われることが望まれるということを提言されてございます。この本人提出のものにつきましては,活動報告書,それから,大学入学希望理由書,学修計画書に関するプレゼンテーションがうたわれてございます。
 大変恐縮でございますが,3ページ目にお戻りいただきますと,選抜実施要項,今,予告ということで通知させていただいておりますけれども,これは令和3年度から適用される予告の通知でございます。そこに1つ目の丸で,学力の3要素,知識・技能,思考力・判断力・表現力,主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度,これを多面的・総合的に評価するものへと改善する。それから,一般入試,AO入試,推薦入試の在り方を見直して,新たなルールを構築するということを予告してございます。
 AO入試につきましては2つに分かれておりまして,1つが,これまでの実施要項上は,「知識・技能の修得状況に過度に重点を置いた選抜とせず」という表記がございましたけれども,これを削除する。それから,調査書等の出願書類だけじゃなくて,いろいろな評価方法あるいは大学入学共通テストのいずれかの活用を必須化するということでございます。
 それから,推薦入試につきましても,「学力検査を免除し」という記載を削除いたしまして,調査書,推薦書の出願書類だけではなく,各大学が実施する評価方法又は大学入学共通テストのうちいずれか1つを必須化する。それから,推薦書の中にも学力の3要素に関する評価を記載して,大学が選抜に当たりこれらを活用することを必須化するということでございます。
 それから,一般入試でございますけれども,筆記試験に加えまして,主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度をより積極的に評価するため,調査書や志願者本人が記載する資料,これを積極的に活用するということでございます。
 それから,4ページ目でございますが,調査書の見直しでございます。現行調査書の指導上参考となる諸事項というのが,マル1番からマル6の欄がございまして,これは記載する案を分割するということで具体的な内容を記載するようにするということがここで予告されてございます。後ほど調査書については御説明させていただければと思います。
 それから,調査書の様式につきましては,丸の4番目でございますけれども,現行では表裏両面1枚でございましたけれども,この制限を撤廃してより弾力的に記載ということで,そういう予告をしてございます。
 それから,評定平均値でございます。評定平均値につきましては,教科科目の評定を量的に単純平均したものである。こうした値のみが重視されることは,調査書に個別に記載される各教科・科目の評価,その他の要素などのきめ細かな評価の軽視につながるとの指摘もある。この数値は飽くまでも高等学校の学習成績を全体的に把握する上での1つの目安であるということに留意する必要があるということで,平成32年度の入試の調査書の中からは既にもう評定平均値という呼び名を学習成績の状況というふうに改めるということでございます。それから,これから御議論いただくことになる,次期学習指導要領に基づく指導要録の見直しを踏まえて,この評定平均値の記載についてどのような考え方で見直していくことが必要かということを検討する必要があるということを言われてございます。
 それから,最後に5ページ目でございます。こちらは活用の在り方ということで,調査書や志願者本人の記載する資料,これをどういうふうに活用するかというのは,これは各大学の募集要項に明記していただきたいということでございます。
 それから,推薦書の見直し,それから,志願者本人の記載する資料,特に志願者本人の記載する資料のところでございますけれども,マル1番として,活動報告書,これを活用する際には,以下のような内容の記載を求めるということで,総合学習で取り組んだ課題研究とか,生徒会活動,部活動,ボランティア活動等,それから,資格・検定,コンクール,留学・海外経験というようなことが記載されてございます。それから,大学入学希望理由書,それから,学修計画書を活用する際には,本人が入学を希望する理由,それから,何を学びたいかということをしっかり目標等を記載させてほしいということでございます。
 それから,最後に,活動報告書,入学希望理由書,こういったものを活用する際には,特に総合型選抜,これは今でいうAO入試でございます。それから,学校推薦型,これは推薦入試でございますけれども,こういった資料に関するプレゼンテーションなどによって積極的に活用するということが言われてございます。
 これが資料4の学力の3要素に関連する報告書と今の選抜実施要項との関係を整理したものでございます。
 続きまして,資料5でございます。これは入学者選抜改革推進委託事業ということで,JAPAN e-Portfolioの開発に至るまでの事業の流れでございます。大変恐縮でございますが,資料8も併せて御説明させていただければと思いますので,2つ御用意いただければと思ってございます。
 1つ目,資料5でございますけれども,ここに背景・課題として,思考力や主体性を十分把握,評価することが必要だということが言われております。事業概要として,マル2番のところで,主体性等をより適切に評価する面接等の手法に関する研究・開発ということで,実施区分として1件,面接や書類審査等,教科・科目によらない評価手法ということで,委託事業として公募したところでございます。
 次のページをおめくりいただきますと,実際にこれを行っていただきましたのが,関西学院大学を中心とするグループでございます。本事業では,個別大学の入学選抜において,思考力・判断力・表現力や主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度に関する評価がより重視されることになるよう,面接・調査書等に関する評価手法の開発に取り組むということで,こういった大学様にお入りいただいて調査研究を進めていただいたということでございます。
 それで出来上がりましたのが次のページのJAPAN e-Portfolioでございますけれども,こちらのポンチ絵がございます。これは今既に,資料8にもございますように,一般社団法人教育情報管理機構の方で運営が行われているものでございます。左から右にかけて,高校,それから,出願,大学,入試,大学教育という図になってございます。
 最初に,使い方でございますけれども,「JAPAN e-Portfolio」のサイトに生徒はIDが付与されてございますので,学びのデータの記録を知る。その前に教員の方からIDの発行申請をする必要がありますが,そのIDを活用して生徒さんの方から自分で打ち込むということでございます。その打ち込まれた内容について,入力内容の閲覧・承認が教員に求められてございます。ただし,承認は調査書記載の項目等に限定されてございます。それから,教員の方では,生徒の学びのデータの参照・把握ということで,このJAPAN e-Portfolioに期待される機能と致しましては,調査書,指導要録の作成に活用が期待されるということが書かれてございます。
 学びのデータでございますけれども,カテゴリーとして,「探究活動」,「生徒会・委員会」というのがございますけれども,資料8の方に「JAPAN e-Portfolioについて」と題する資料を1枚おめくりいただきますと,データ項目数と内容が記載されておりまして,JAPAN e-Portfolioに今あるデータ項目数は合計801項目。探求活動とか生徒会活動,それから,スポーツとか,留学・海外経験という,項目ごとに内容が分かれてございますけれども,このうち,教員承認必須事項が158項目ということになってございます。
 生徒さんはそれぞれの項目ごとに自分が取り組んだことをここに打ち込むということで,その打ち込まれたものについて,大学の方でデータ,探求活動,課外活動を,入試に活用するというところはここから引き出すという,そういう仕組みでございます。これプラス,大学ごとには,志望理由書,活動報告書等を大学によっては生徒さんに求めて,それから,調査書も提出してもらって,あるいはセンター試験の結果のデータということで総合的に判定するという仕組みになってございます。その後,大学教育の方にもこういった学びのデータを初年次教育に活用して,それが結局また入試に戻ってきまして,入試の基準,評価手法についての検証に使うということで,こういう目的でJAPAN e-Portfolioは作られたものでございます。
 それから,次のページをおめくりいただきますと,JAPAN e-Portfolioと,民間高校という,これは民間の事業者がやっているポートフォリオがございまして,その関係を示した図でございます。この民間事業者の高校ポートフォリオは,これはJAPAN e-Portfolioが出来る前から,学びの振り返りとかデータを蓄積するというサービスを提供しておる事業でございます。ここでのデータは,JAPAN e-Portfolioに特に入らなくても,民間の事業者の中からデータ連係して,こちらに移行されるという仕組みでございます。ですので,JAPAN e-Portfolioから出願システムとして入試の方に活用されるという,そういう図でございます。ですから,今,民間事業者の高校ポートフォリオから直接入試に活用するというよりも,JAPAN e-Portfolioを通して出願するという仕組みになっておるところでございます。これが資料5と資料8でございます。
 続きまして,資料6-1でございます。これは先ほど御説明したことと重複いたしますので,簡潔に御紹介したいと思います。これは予告の関連部分の抜粋,多面的・総合的な評価の抜粋でございます。調査書が,新旧対照表ということで横の比になっているものが先生方のお手元にあるかと思いますけれども,それをごらんいただきながらと思ってございます。
 新たなルールの見直しにつきましては,AO入試の課題の改善とか,推薦入試,先ほど資料4で御紹介させていただきましたので,ここは割愛させていただければと思います。
 特に調査書の新旧対照表のところをごらんいただければと思います。1枚目のところに評定平均値ということで,各教科の学習成績の状況がございます。ここに,旧,一番最初ですと,これは「全体の評定平均値」という表記でございましたけれども,これを「全体の学習成績の状況」という表記に改めてございます。これはそれぞれの教科・科目の評定を量的に単純平均したものでございますけれども,これがきめ細かな評価の軽視につながるという指摘がありましたので,名称については今こういう形で学習成績の状況というふうに変えてございますけれども,実はこの計算式につきましては,単純にそれぞれの教科ごとの評定数と,それから,評定,これを割り算しまして出しているというのが現状でございます。ですので,単位数とかの加重平均というのは考慮されていないという計算になってございまして,この辺りについても今後御議論いただければと思ってございます。
 それから,この調査書の中で特に新旧対照表の次のページをおめくりいただきますと,7の指導上参考となる諸事項というのがございます。これは現行調査書ですと,(1)から(5)番ということで,学習における特徴等からその他ということになっていますが,これまでのいろいろな答申や報告書を踏まえまして,更に分割をして細かく記載いただくような,そういう作りになってございます。ですので,これは更に項目ごとに注意書きを付させていただいておりまして,それから,枚数制限が表裏1枚とかがないということでございますので,高校の先生方にここの欄を基本的にはたくさん書いていただくというようなそういう様式を今示しているというところでございます。この辺り,教員の働き方改革と,それから,指導要録の改善がございましたので,どういうふうにここを考えていくのかということを,これも1つの御議論いただきたいというところでございます。
 資料6-2をごらんいただければと思います。資料6-2は,これまでのいろいろな入学者選抜要項の通知とか報告書を踏まえて,今,多面的な評価に関する取組事例,どのようなことを大学でされているのかという資料でございます。
 1枚目がお茶の水女子大学,これはAO入試でございます。これは第1次選考と,それから,第2次選考ということで,セミナーを受講していただいてレポートを作って,それから,グループ討論,個別に面接ということで評価していくというようなことをされておる入試でございます。志望理由書とか活動報告書,調査書を複合的に使って入試をされているという,そういう事例でございます。
 それから,追手門学院大学様のアサーティブ入試でございます。これはグループディスカッションで主体性,協調性を評価して,それと基礎学力,これで合否を判定するということでございます。
 それから,立命館アジア太平洋大学につきましては,これにつきましても,活動実績アピールということで,志望理由書,それから,活動実績報告書,それから,エッセイを求めて,あとは個人面接を行っていて,多面的に評価している事例でございます。
 次,推薦入試でございますけれども,昭和女子大学でございます。これは小論文と面接を課して,出願書類の中に,自己報告書を求められているものでございます。自己報告書の記載の中に,知識・技能,それから,高等学校入学以降の役員・賞歴について書類選考の際に加点評価するというような事例でございます。それから,小論文を課すのと,それから,面接をしているという事例でございます。
 それから,関西学院大学様におかれましては,これはスーパーグローバルハイスクールの推薦入試ということで,スーパーグローバル大学事業の接続を促進するための推薦入試。書類審査,それから,面接,プレゼンテーション審査を行っているという,そういう推薦入試でございます。
 それから続きまして,一般入試でございますけれども,佐賀大学でございます。西郷先生おられますけれども,これは一般入試で前期・後期,特色加点申請ということで,志願者の主体的な活動や実績を軸にした書類審査。活動実績は問わないということで,当初配点とは別に加点するという形式でございます。活用につきましては,ボーダーライン層について理工学部では合格ボーダー層を評価すると,そういう試験,入試でございます。
 それから,豊田工業大学の一般入試,これは面接試験で,1次試験を合格した者に対して調査書の内容に基づいて総合的に面接を加味して評価するといった入試でございます。
 それから,筑波大学の一般入試,これは令和3年度から,すなわち,来年からの試験でございます。調査書を中心に評価するということで,評価方針の中で,証明書の提出は求めないとか,特別な資格の提示を強いるものではないとか,あと,文章の表現や量は関係ないというようなことで,調査書を中心に評価項目・基準を設けられて評価するという,そういう入試でございます。
 それから,最後,早稲田大学でございます。これは入試というより入学後に活用するということで,全学,出願要件として,主体性・多様性・協働性に対する経験の記入ということで,そういったものを100文字以上500文字以内で文章にして提出してほしいというような,そういった取組をされているところでございます。
 それから,資料6-3でございます。調査書の電子化の進め方で,これまで,去年の2月でございますけれども,高校・大学の関係者の皆さん方で協議の中で,こういった形で合意というか,決められたことがございます。
 1枚目の6-3の背景のところの4つ目の丸でございますけれども,受験生が多くて,かつ限られた期間で評価を行う一般選抜においては,紙媒体の調査書を活用した入学選抜を行うことは困難との指摘があり,高校・大学関係団体からは,調査書の電子化に向けた要望が寄せられたところであるということです。
 これを踏まえまして,2ページ目の丸の3番でございますけれども,文科省の方で今,委託事業ということで,2年間のシステムモデルを,これも関西学院大学さんでございますけれども,お願いしてやっていただいたところでございます。
 電子化の進め方につきましては,4番でございますけれども,目標,ターゲットの年としては2022年度に実施される全ての大学の全ての入試区分において原則として電子調査書を用いるということを目指すとするというふうにされてございます。
 続きまして,資料7-1でございます。これは学習評価・指導要録の改善ということで,去年の3月に初等中等教育局の方から示された通知でございます。資料7-1は資料7-2の概要ということでございますので,この概要をまずごらんいただければと思います。
 学習評価についての基本的な考え方と致しまして,2つ目でございますけれども,評価の結果が児童生徒の具体的な学習改善につながっていないということとか,教師によって評価の方針が異なる,評価のための記録に労力を割かれるという課題が指摘されていると。これに応えるために,学校における働き方改革を踏まえて,児童生徒の学習改善につながるものにする,それから,教師の指導改善につながるものにする,慣行として行われてきたことでも,必要性・妥当性が認められないものは見直していくという3点,これを基本的な考え方として見直しがされてございます。
 改善点と致しましては,資質・能力の3つの柱で整理した学習指導要領,これを踏まえて,学習状況観点,これは3観点ございますけれども,知識・技能,思考・判断・表現,主体的な学習に取り組む態度の3観点で評価するということでございます。それから,高等学校の観点別学習状況評価を充実し,それから,指導要録の文章記述は,これは大幅に簡素化するということが通知されてございます。
 次のページをおめくりいただきますと,構造でございますけれども,観点別学習評価の観点として,先ほど申し上げました3つ,知識・技能,思考・判断・表現,主体的に学習に取り組む態度,これをA,B,Cの3段階で評価するということになってございます。評定につきましては5段階評価ということでございますけれども,観点別評価というものが,指導要録の参考様式がお手元にあろうかと思います。別にとじてあるものでございますけれども,高等学校の普通科全日制のものを例としてお示しさせていただいております。そちらの様式2,指導に関する記録というところで,各教科・科目の学習の記録,表があるかと思いますけれども,そこに第1学年,第2学年,第3学年とございますが,評定のところに新しく左肩に観点別学習状況という欄を設けていると。この中に知識・技能,思考・判断・表現,主体的な学習に取り組む態度の3つごとにA,B,C,例えばA,A,AとかA,C,Bとかいう形で付けていくということになってございます。
 それから,指導要録の右の方にも,特別活動の記録と総合所見及び指導上参考になる諸事項というのがございますけれども,こちらは今,資料7-1でお示ししているポンチ絵の5ページ目をごらんいただければと思います。最後のページでございますけれども,参考様式の主な改善点ということです。特別活動の記録につきましては,従来の文章記述を改めて,各活動,学校行事ごとに,十分満足できるという状況である場合にはマルを記入するという,そういう改定がなされております。それから,総合所見・指導上参考になる諸事項につきましても,要点を箇条書きするということで,記載事項を必要最小限にするということがうたわれてございます。
 それから,1つ,すみません,ちょっと御紹介させていただきますが,資料7-2の通知の中に,実は7ページ目でございますけれども,(2)の大学入学者選抜の改善についてというところで記載がございます。これは2つ,検討してほしいという留意事項が示されてございます。1つが,各大学において,特に学校外で行う多様な活動については,調査書に過度に依存することなく,それぞれのアドミッション・ポリシーに基づいて,生徒一人一人の多面的・多角的な評価が行えるよう,調査書や志願者本人の記載資料,申告等を適切に組み合わせるなどの利用方法を検討する。もう一つが,学校における働き方改革の観点から,指導要録を基に作成される調査書についても,観点別学習状況の評価の活用も含めて,入試で必要となる情報を整理した上で検討することというような,そういった留意事項が示されているところでございます。
 それから,おめくりいただきますと,8ページの次の別紙3ということで高等学校及び特別支援学校高等部の指導要録に関する事項というところがございます。こちらの6ページ目になりますが,6ページ目に,3番が特別活動の記録で,5番が総合所見・指導上参考になる諸事項でございます。特に5番の総合所見・指導上参考になる諸事項のところに,先ほど申し上げました,箇条書きで端的に記述するという中に,特にマル7,すなわち,生徒の特徴・特技,部活動,ボランティア活動,社会奉仕体験活動,それから,表彰を受けた行為等,こういったものについては,今後の学習指導を進めていく上で必要な情報に精選して記述するということが書かれてございます。指導要録をベースに調査書を作るということでございますので,この辺の御紹介をさせていただいたところでございます。
 それから,資料9でございます。資料9は,調査書に関する調査研究事業でございます。こちらは2年間の事業ということで,今も事業に取り組まれておるところでございますけれども,電子調査書,これは主体性等をより適切に評価するために,調査書を電子化するということです。
 事業概要としては,真ん中に,電子調査書授受システムということで,これが関西学院大学様から提案いただいている事業の中身でございます。システムを作りまして,高校側からサーバーを経由にて調査書が送信される。それを大学側はシステムの中から抽出しまして,それで受領するというような仕組みを調査研究事業として今進められているところでございます。
 その図でございますけれども,1枚おめくりいただきますと,システムのイメージがございます。今,調査委任事業の中でこういうイメージだというふうに委託大学様の方から示されておるのはこの図でございます。一番最初に,これは調査書データとe-Portfolio,学びの成果が一体化しているイメージでございます。高校生が学びの記録を,左から下でございますけれども,それをまずこのシステムにアップロードする。それを高校教員がダウンロードをして,指導要録,電子調査書を作成して,そして,さらにまたアップロードをする。そのアップロードされたものが大学の方にダウンロードされて調査書が提出されると,そういう仕組みでございますけれども,今,こういった仕組みの在り方についても1つの検討事項として御議論いただければと思います。
 それから,最後,資料10でございます。大変長く恐縮でございます。今こういった経緯を御説明させていただきましたけれども,主な検討事項として,資料1の方には大きな検討事項を示させていただいておりますけれども,これを少しブレークダウンして,例えばこういう検討事項例があるのではないかということでお示ししているものでございます。
 1つ目の多面的評価の内容や手法については,1つは,学力の3要素を評価するに当たっては,一般,AO,推薦,それぞれの選抜区分ごとに求められるものの評価の在り方についてどう考えるか。その際,特に主体性等を入試で評価することの意義についてどう考えるか。それから,高校・保護者が期待する多面的評価というのはどういうものかということが1つ目の1ポツでございます。
 それから,2ポツ目につきましては,調査書の在り方,電子化手法に関する事項と致しまして,指導要録の改定,働き方改革の教員の負担軽減ということを踏まえた調査書の内容についてどう考えるか。その際,観点別学習状況評価,それから,指導上参考になる諸事項,1番から7番がございますけれども,今その欄を拡充しているところについてどう考えるか。それから,評定平均値の記載について,今,学習成績の状況という表記でございますけれども,計算方式につきましては単純計算をしておりますけれども,これについてどう考えるか。それから,調査書の電子化としてどこまでの仕組みを求めるのか。その際,データの集積・管理,個人情報の保護の在り方,管理の主体についてどう考えるか。特に一元管理の利便性と,それから,課題についてどう考えるか。
 それから,3つ目としては,調査書や志願者本人記載資料の活用と,それを大学に提供するその在り方の事項でございます。調査書の活用の留意点と,特に大規模大学においての調査書の活用の課題,それから,高校側の調査書の活用に関する期待。それから,3つ目の丸としては,志願者本人記載資料の内容を合否判定の資料として活用する場合の基本的な考え方。これは活動報告書とか入学希望理由書,e-Portfolioも入ると思いますけれども,こういったものを活用する場合の基本的考え方,入試という選抜行為における基本的な考え方になろうかと思いますけれども,それについてどう考えるか。その中で特に経済的条件に左右されずに等しく多面的な評価の機会を得ることができるような手法をどう考えるか。最後に,3つ目としては,JAPAN e-Portfolioで今データ集積を行っていますけれども,これの管理,それから,個人情報の在り方と,それから,管理の主体についてどう考えるか。特に一元管理の利便性と課題。それから,先ほど御紹介させていただきました民間事業者での高校ポートフォリオ,これの入試での活用についてはどう考えるかといったような,これが主な検討事項,あくまでも例でございますけれども,事務局の方でお示しさせていただいているものでございます。
 それから,最後,資料11-1について,これは御参考資料として,去年の3月でございますけれども,私どもの委託事業の方で主体性評価についてどういう評価方法がありますかというようなことで,これは主体性評価だけではなく,ほかにも項目がございますけれども,その部分だけ抜粋してございます。どういうやり方をされるおつもりかということで調査したものが概要版としてございますので,御参照いただければと思います。
 ただ,去年の3月の状況の調査でございますので,できればもう少し最新の状況をデータとしてこの会議でもお示ししたいと思っておりますので,資料11-2として,調査書以外の資料の活用についてどういうものを予定されていますかということで調査をさせていただければと思ってございますので,今回併せて資料11-2としてお示ししてございます。
 大変長くて恐縮でございますけれども,事務局からは以上でございます。よろしくお願いいたします。
【圓月主査】
 御丁寧な説明をどうもありがとうございました。後ほど委員にはお一人ずつ御発言いただきますけれども,今の説明の中で事実確認等の御質問等がございましたら,簡単によろしくお願いいたします。何かございますでしょうか。
 ございますか。
【牧田委員】
 牧田です。2点教えていただきたいのですけれども,すみません,この会議は初めてなので,現状,調査書等資料がどのように今大学で活用されているのかといいますか,つまり,活用の実態を教えていただきたい。
 それから,今この議論を進める上で,大学入試において多面的評価をすることで,大学というのは今,何を得ようとしているのか,この2点を議論する前に教えていただければと思います。
【圓月主査】
 難しい質問ですけれども,室長の方から何かございますでしょうか。
【前田大学入試室長】
 ありがとうございます。大学入試室長でございます。
 1点目の,調査書を今,大学でどのように活用されているのかということでございますけれども,これは入試を受ける際,調査書は提出することになってございますので,それは各大学で,私どもとしては,これまでの提言等を踏まえて,調査書については評価する際にきっちり活用してほしい,「活用することが望ましい」という表現から,「活用する」ということまで書いてございますので,それぞれの大学の方で入試の判定のときに活用していただいているものだと思っておりますが,実態につきましては,大規模大学とか,それから,規模が大学でいろいろまちまちでございますので,どういったふうに活用,実際の判定をするときに評価の重み付けをしているかというところについては今,私どもの方でそういった調査資料等は持ち合わせていませんが,調査書を活用するということについては,各大学の入学者選抜でやることになっているということでございます。
 それからもう一つ,多面的な評価をすることで何を得ようとしているかということでございます。資料4を,大変恐縮でございますけれども,もう一度お手元に御準備いただければと思います。4ページ目でございますけれども,多面的な評価で,面接とかいろいろな資料を出して,筆記試験に加えて,例えば一般入試だと行われることになると思いますけれども,資料4の一番下の本人が記載する提出書類の多様化や内容の充実のところで,こういった提出書類の多様化や内容の充実を図ると。このことによって,大学にとっては,受験生本人が大学で学ぶ目的を見つめ直して,自らの進路について主体的に考える機会が増え,大学での学修の意欲を高めることにつながるということが提言されてございますので,いわばそういったことを求めることによって,受験生本人がこの大学に入って何を学びたいのか,どういうことをしたいのかということを自ら主体的に考えて,それに向けての高校における勉強と活動をやることを促す,そういった効果があるということで位置付けられているものだと理解をしているところでございます。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。ちょっと抽象的な答えで。
【川嶋副主査】
 調査書の電子化の話が出ているので,その前提となる学習指導要録も電子化するということでよろしいのでしょうか。
【圓月主査】
 井上委員。
【井上委員】
 JMCの井上でございます。指導要録に関しては,一応電子化してもいいという表現が出ているだけで,完全に電子化が認められているわけではないんです。一応,電子化して保存しても構わないというのが文科省から通知が出ている。ですから,我々が今やっていることは,一応,校務支援システムを入れていただいたら,電子化できるというところまでです。
 大きな問題は,ちょっと余計な話になるんですが,ネットワーク関係にも絡むので少し話をさせていただくと,電子化をしてどこに置くかというのが問題になります。というのは,法律にはどう書かれているかというと,学校で保存すべきものに指導要録が入っています。ということは,学校で保存しろと書かれているんです。例えばクラウドのサーバーに置いたときに,それは学校のものなのかという判断が,これは自治体によって分かれています。サーバーのフォルダーは学校だというふうに認めていただいた自治体さんはそこに置いても構わないけれども,認めないところは,しょうがない,学校に置くしかない。電子化しても結局,学校に置いておかなければいけないということが起こったりしていますので,そこら辺も電子化に関しては,解釈をちゃんとしていかないとうまくいかないかなというふうには思っております。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。御意見いろいろなものを頂いて自由討論に既に入りかけているような気もいたしますので,あと,事実確認につきましては何かございますか。簡潔にお願いいたします。
【星野委員】
 星野でございます。伯井高等教育局長とか,それから,この協力者会議の趣旨のところにもあったんですけれども,令和6年度からの新しい学習指導要領に沿った形での調査書についていろいろ検討するということなんですけれども,一方で,これまでワーキングの方で検討してきたものの中に,先ほど前田室長からの御説明にもございましたが,資料6-3の2ページ目のところに,原則として電子調査書を用いることを目指すというのが2022年度からというふうになっているんです。これは現行の学習指導要領に沿った形でのものではありますけれども,調査書の様式についてはマイナーチェンジしたものについてということだと思うんですけれども,スケジュールがどういう位置付けにそれぞれなるのかというのが明確でないような気がするんです。つまり,一方で22年度から調査書の電子化は原則行うと。それを進めつつ,新しい学習指導要領に沿った形の調査書についての検討も行うということのスケジュールという理解でよろしいんでしょうか。
【圓月主査】
 室長,いかがでしょうか。
【前田大学入試室長】
 先生,今御指摘ありましたように,資料6-3の中で,これは去年の改善協議でこういった形で進め方が取りまとめられておりますけれども,おっしゃるとおり,2022年度に原則として電子調査書を用いることを目指すと。これはまさに現行の調査書でございます。
 その調査書についての,どういう形でシステム化するかということがまさに2022年度に向けてどうするかということで,あと,私は先ほど,検討項目,協力者会議の中でもうたわれておりますような,新学習指導要領に基づく調査書については中身をまずどうすべきかということがございますので,様式を今の様式ではなくて,新学習指導要領と教員の働き方改革を踏まえたものに変えるということであれば,それはまた新しい,今とは違う調査書ということになります。
 ただ,電子化する仕組みとしては,これは今の調査書を用いた上で,どういう電子化の仕組みがあるかということをこの協力者会議で御議論いただきたいと思っておりまして,それが2022年度に向けてできるかどうかということが1つあると思います。これまでの電子調査書等ワーキンググループの中でも,なかなか調査書の項目が多岐にわたるということでございましたので,そういったことが働き方改革の中でどうかということもございますので,そういったことを整理しながら,電子化の時期にはこの会議の中でも御議論いただければと思っておるところでございます。
【圓月主査】
 ありがとうございました。
 今御指摘いただいたのは全て重要な論点で,多分前田室長だけが答えられるという問題でもないところが。大学の活用実態の問題,それから,指導要録と調査書の電子化との関係につきましては,ワーキンググループでも話題になっておりまして,もう少し整理する必要があるだろうなというふうなことを確認しております。また,最後のスケジュールに関しましても,こういう形でワーキンググループの方でも一応お認めいただいていますけれども,いろいろな情勢が変わっていった中でどういうふうにこれを実現していくかというのもまた大きな問題になるかと思っています。
 全て……,はい,どうぞ,前田室長。
【前田大学入試室長】
 すみません,先ほど牧田先生から御指摘いただいた,多面的な評価というのは大学にとってどういう意義があるのかということで,これまでの提言のところしか私,申し上げられなかったのですが,実は資料10の検討事項例の中に事務局として書かせていただいている中に,1番目の多面的な評価の内容・手法に関する事項の中の2つ目の丸で,その際,特に主体性等を入試で評価することの意義についてどう考えるかということでございます。
 したがいまして,これまでの提言や選抜実施要項を踏まえて各大学の方で多面的評価をいろいろな組み合わせでやられて,その中に主体性評価も入っておると思うんですけれども,そこと今後,この協力者会議を立ち上げた趣旨としましては,そういったものに対するまさに高校・保護者の期待はどういうものであるのか,それから,選抜区分ごとにどういう評価の在り方が考えられるかということを更に議論を深めたいということでございます。
 ですので,先ほど牧田先生からの御質問に十分答え切れていないのは,まさに1つの論点がここに,特に主体性等を入試で評価する意義についてどう考えるかということで,御議論いただきたい点であることを補足させていただければと思います。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。ちなみに,資料11-1のところも貴重な資料ですけれども,先ほどもありましたとおり,最新のものではないということで,それも含めて最新情報なども調査したいという御提案もあったということをお含みおきいただいたらと思っております。
 それでは,限られた時間になっておりますので,そういうふうなお気付きになった論点等も含めて自由討論の方に移らせていただきたいと思っております。時間の制限がございますので,大変失礼なんですけれども,お一人3分程度の御発言ということで,本日の会議の中で特に取り上げていただきたい点,あるいはなかった点でも結構ですので,御意見を賜れればと思っております。
 これも非常に機械的で失礼なんですけれども,こちらの垂見先生の方から順番に3分程度の御発言を頂ければと思っております。よろしくお願いします。
【垂見委員】
 武蔵大学の垂見です。私は本会議はきょうからでして,主体性の評価とか調査書の電子化などは少し専門外で,これからいろいろ学ばなければなと感じている次第です。
 ただ,私は教育社会学を専門としていまして,教育格差を研究テーマとしていますので,その点から1点意見を述べさせていただきたいと思います。主体性を評価する入試システムにおいては,何度か出ていましたけれども,経済的に不利な子供にも開かれた入試制度である,もっと強く言えば,貧困層が排除されないような手立てが組み込まれているということが重要であるかなと感じます。まず問題点の方から述べて,それから,具体的な提言というふうにお話ししたいと思います。
 問題点の方ですが,私は例えば学力格差などを研究していますので,貧困家庭の子供とか,一人親家庭の子供の学習支援をしているNPOなどとも一緒に仕事などをしています。その中で,学力格差も問題なんですが,繰り返し述べられているのが,やはり体験格差でございます。やはり家庭状況が厳しい状況の子供は,なかなか様々な体験,まさにここに挙げられているような部活動とか留学とか地域でのボランティア,習い事もそうですけれども,そういったことをなかなかする時間あるいはお金がないといったような状況でございます。そういった体験がないから,コミュニケーション能力が低かったり,あるいは成功経験がないので自己肯定感が低い。つまりは,そういった経験がないから,なかなか主体性を育てる,あるいは主体性を伸ばす機会が少ない,そういった現状にあるというのが実態であるかと思います。
 もう一点,少し観点を広げて,例えば米国のように主体性を大学入試で評価することを中心的に,パーソナルステートメントなどで主体性を昔から評価しているような国では,やはり家庭状況の非常に恵まれた層というのは,親が様々な情報であったりネットワークを使って,早くからボランティアとかインターンとかディベート部とか様々な経験を子供に計画的に積ませた上で入試に参加している。そういった質的研究ですが,米国の方でも研究の蓄積があるかと思います。
 つまり,一番言いたいところは,こういった主体性を評価するということによって,さまざまな体験を積む機会が乏しい貧困家庭やひとり親家庭の子どもが排除されてしまう,そういった恐れがあるのではないかということです。
 主体性の評価の在り方をもう少し私の方が勉強する必要はあるのですが,今感じている具体的な提言としてまず1点は,もし主体性を評価するのであれば,やはり同時にその子供の家庭背景に関する項目,これがポートフォリオなのか調査書なのかまだ分かりませんけれども,家庭背景に関する項目も尋ねておく必要があるのではないか。具体的には,例えば高校で就学支援金を受給しているのか,ないのか,就学支援金でもランクがありますが,どのランクなのか。あるいは,一人親家庭なのか否なのか。それを聞くことによって,一種のアファーマティブアクションになると思うのですが,そういった状況の子供はそもそも主体性を育てる機会が少ない,そこに部活動とか留学を求めるのは非常に酷なのではないだろうとかということで,一種のアファーマティブアクションにつながるようなために家庭背景を項目として聞いておく。ポイント加点になるかちょっと分かりませんけれども,そういった活動がなくてもやむを得ないと判断できる項目を1つ聞いておく必要があると痛切に感じます。
 もう一点は,今挙がっている部活動とか留学とか生徒会の活動等もですけれども,例えば貧困層の子供であれば,アルバイトを必然性からしている場合,当然多くの進学校では禁止されていますけれども,学校によっては許可制をとっている。そういった許可を受けた上でアルバイトをしている場合,そこで例えば何をやっているのか。あるいはもっと現実的なものでは,家庭への貢献です。必然性から兄弟の世話等をしていることも考えられますけれども,貧困層の子供が現実的に可能な社会貢献だったり,主体性活動は何なのか,そういった項目も織り込むというのも2つ目の案としてあるかと思います。
 いずれにせよ,経済的に不利な子供が排除されるような主体性を評価するシステムにならないような何か手立て,方策が必要なのではないかと感じます。
 以上です。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。非常に重要な論点かと思います。
 それでは,髙井委員,御意見頂けますでしょうか。
【髙井委員】
 失礼いたします。埼玉県立狭山工業高校の髙井と申します。私は昨年度まで埼玉県教育委員会事務局におりまして,実際に学校のインフラ整備を担当させていただいておりました。その観点からこちらで今委員としてお世話になっているところです。
 今お話を伺っているところで,先ほど星野委員からもお話がありましたけれども,やはりスケジュールを整理するというところをしていただくのが現場として非常に重要かなと思っております。その中で,やはりシステム的な問題,こちらについては,本会議で校務支援システム関係の委員の先生もいらっしゃっておりますけれども,実際にシステムをどのタイミングで開発を始めていったらいいのか,実際に構築するJAPAN e-Portfolioとつなげるところはいつからスタートするのかとか,そういった具体的なものが県教委に実際に情報がいつ入るのか,その辺もしっかりとしていかなければいけない。
 なおかつ,教育委員会,また,学校に対してですけれども,何をどの程度子供たちに入力させていくのかという指導の面,その辺も先生方は非常に不安に思っているというところがありますので,その点についても,「これを書けば大丈夫です」ということはなかなか言えないにしても,こういったものをこの程度ということをある程度お示しできるようなこともあった方がいいのかなと思います。
 あともう一点ですけれども,調査書と指導要録の関係性というようなことで今日もお話を頂いたところです。本会議は,大学入学者選抜に関する会議ということですが,指導要録と関連付ける部分では,就職用の調査書もあります。基本的には指導要録から調査書に反映させるときに,進学用と就職用という2種類の調査書がございますので,その辺も含めて指導要録をどうするのかということも御議論いただきたいと思います。実際にシステム側に反映する内容ですので,ここで議論することではないかもしれませんが,現場としてそういったところは必要だと思います。是非その点を整理していただければなと思いました。以上です。
【圓月主査】
 こちらも適切な御意見で,ありがとうございます。先ほどの高校の不安を払拭する努力をするという点でいうと,やはりスケジュールを明確にするということなんかも必要になってくるかと思います。また,高大接続をやっていると,ともすると,高校生が皆さん大学進学を目指しておられるということを前提にしがちなんですけれども,大学進学率50%ですので,50%の方は大学以外の進路に進まれる方なんかもおられるということもくれぐれも忘れないようにしなければならないと思っております。ありがとうございました。
 そしたら,井上委員,よろしくお願いいたします。
【井上委員】
 JMCの井上でございます。よろしくお願いいたします。私の位置付けとしては,高校側で使われている校務支援システムの標準化を推進しております。標準化というのはどういうことかといいますと,分かりやすく言うと,子供が転校します。転校するときには,指導要録とか健康診断表のデータを移さなければいけないんです。今は紙で移動しています。ですけれども,それを電子化できるようにしましょうということで,システムが違ったとしてもデータ移行をできるようにしましょうという,そういう標準化をしております。ですから,APPLICという団体でそれをやっているんですけれども,私どもが標準化した仕様に沿った校務支援システムを使っていただければ,どの校務支援システムであったとしてもそれができるようにしましょうという標準化をしております。
 ですから,今回の調査書のこともかなり影響を受けます。というのは,標準化しておりますので,調査書を出すことに当たってもやっぱり標準仕様として組み込まなければいけなくなりますので,それで,どの校務支援システムを使っていただいても同じようなことができるようにしないといけませんから非常に影響があるので,今スケジュールという話がありましたけれども,できるだけ早くいただかないとシステム改修ができないので,そこら辺は是非御検討いただきたいなというのは思っております。
 それと,きょうは時間が限られておりますので,急いでお話しさせていただきます。大学出願システム,JAPAN e-Portfolioの中で,やっぱり個人の調査書のデータ,それをマッチングさせるためにはIDが必要になります。共通IDが絶対必要になるはずなんですが,その共通IDが,我々の希望としては,大学入試だけのIDというのは避けていただきたいなと思っています。
 というのは,我々,APPLICという団体でやっているんですけれども,そこは地域情報プラットフォームといいまして,自治体業務,住民票を異動したときに自動的に移動できますよね。あれの標準化を全部やっているんです。ですから,その中に所属していますので,実は6歳になったら就学通知が出ます。学齢簿が作られます。その学齢簿の情報を実は取り込めるようにしているんです。ということは,住民基本台帳のデータを持ってこられるようにしていて,それが小中高と実は連携できるように仕組みとしてはもう既に作ってあります。
 ですから,最初に入学の段階にIDを振って,そのIDを頂ければ,別に大学でなくても全部使える。そうすると,大学入試の人だけではなくて,学習者全員がその共通IDをもって運用できる。その小中高のIDに関しては,実は文科省さんの中の別の部門で検討されているというふうに伺っております。別の事業でスマートスクールというので,校務システムと学習系と連携をするという事業がありまして,そこで検討されていると伺っておりますので,1人の生徒に対するIDが複数提示されるようなことがなくて是非1つで済むように,文科省さんの中で調整をいただきたいなと思っております。それができれば,新たにここで発行する必要なく全部できるようになるのではないかと。是非そこら辺御検討いただきたいなと思っております。
 それと,時間がないので申し訳ないんですが,今ここで示されている図,例えば資料9の2ページ目にある,最後のシステムのイメージ,電子化,システムのイメージがあるんですけれども,高等学校の中で校務支援システムから指導要録を作って,それで調査書が出来ますよ,それがアップロードできますという,そういう絵が描かれているんですけれども,実はこれは単純にはいきません。
 文部科学省さんが示されている教育情報のセキュリティ・ポリシーのガイドラインがありまして,そこでネットワークに関してはかなり厳しく制限されております。学校の中では,インターネットに接続できる生徒用のネットワークと,それから,校務用のネットワークは分けなさいということになっています。その校務用のネットワークの中でも,例えば先生が授業の準備のためにインターネットを活用したりだとかする場合のネットワークと,校務支援システム,要は,センシティブな情報を扱うようなネットワークは完璧に分けなさいということになっていて,センシティブな情報を扱うところはインターネット接続は基本的にだめですとなっているんです。クラウドにデータを置くことは許されているので,完璧に100%だめということではないんですが,普通のインターネット接続はだめなんです。
 そうすると,ここで書いてある,簡単にアップロードと書かれていますが,それはできません。一回外へ出してからでないとできない。その運用だとかどういう手順でやるのかとか,これはネットワークのポリシーにも関わりますし,もし教育委員会さんでやるとすれば,システム改修,それから,結構費用も掛かる話になりますので,これはどういう手順なのかとか,どういう運用が適正なのかというのをちゃんと示してあげないと,こうしてくださいと言うだけでは現場は動かないというのがありますので,是非御検討いただきたいなと思っています。
 ほかにもあるんですけれども,時間がありませんので,これで終わらせていただきます。ありがとうございます。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。簡潔にまとめていただいて,感謝いたします。システム開発の点でもやっぱりスケジュールが重要になるでしょうし,こういうテクニカルな,御専門家の方からの御意見を頂けるのは非常に貴重なことだと思っています。最後の点に関しては,また後ほど巳波委員の方からもレスポンスがあるかも分かりませんので,またよろしくお願いいたします。
 そしたら,石崎委員からよろしくお願いします。
【石崎委員】
 石崎でございます。よろしくお願いいたします。論点というところで,私,2つお話しさせていただきたいんですけれども,1つは,これまで電子調査書ワーキングということで,調査書に何を載せるかというようなところが中心に話し合われてきたと思うんですけれども,調査書に何を載せるかということと,多面的評価に何をどう使うかというところは,分けて議論していただきたいなと思っています。これまでは,多面的評価に使えるだろうから,電子調査書にするから何でもかんでも電子調査書に載せてしまえということで,何百項目にもわたるような案が示されたりというようなこともあったと思うんですけれども,やっぱり調査書に載せるべきものと,大学の多面的評価で何を使うかというところは若干切り離して考えなければいけないだろうなと思っています。
 例えば高等学校で部活動をやっていれば,部活動を載せるところがありますよね。だけども,例えばJリーグの下部組織のクラブチームでサッカーをやっているとか,スポーツクラブに所属して水泳や体操の大会に出ているとかというようなのは多分調査書に載らないんです。例えば学校の英語の指導と関連付けて,英語検定をみんな受けなさいというような指導をしていれば,多分英語検定の取得については調査書に載せます。だけども,個人で海外の大学を受けようと思ってIELTSを受けたとかTOEFLを受けたとかといったら載せない学校もあるでしょうし,ましてやイタリア語だとかスペイン語だとかそういうものの検定を受けていても多分載せません。同じボランティア活動をやっていても,学校の教育活動の中で保育園や老人施設に行ってボランティアをやれば書くのもあるでしょうけれども,個人でやっていれば載らないです。子供のときからピアノやバイオリンを習っていて国際コンクールに出ても,調査書には載りません。だから,調査書に何を載せて,何を載せないのかというところは,不公平のないように考えないといけないと思うんです。
 では,調査書に載せるものは何が基準になっているのかといえば,先ほどから話題に出ている,やっぱり指導要録に記載されるべきことが調査書に載せられる。そこのところをまず押さえておいていただきたいと思うんです。では,指導要録に載っているものを基にするんだったら,大学入試で使う調査書に,これを載せてくれ,あれを載せてくれとここで決められるのかという話なんですけれども,指導要録そのものは,文部科学省は参考例を示しているだけで,指導要録に載せるものは設置者が決めることになっているはずなんです。ですから,指導要録にこれが載っているはずだから載せてくれというのは,この場で調査書を決めることで決められる問題ではないんです。
 だから,そこら辺のすり合わせをよくして,調査書に載せるべきもの,それから,大学入試で多面的評価として使うから,それをどういう形で受験生なり,ほかのところから情報を収集するのかというところは分けて考えなければいけないし,何でもかんでも調査書に載せてくれ,高校でオーソライズしてくれというのはやっぱり無理があると考えております。そこのところをやっぱり生徒間で不利が起こらないようにするためには,調査書は指導要録に基づいて作成する,指導要録は設置者が定めるという,そこのところを押さえておく必要があると考えております。
 2点目なんですけれども,これは今,髙井先生とかからも話が出たんですけれども,この場で議論することが,調査書もそうなんですけれども,大学入試で使うものだけなのかと。もちろんこの会議は,「大学入試における」ですから,前回の電子調査書のときにも同じことを申し上げたんですけれども,大学入試で使うものについて議論するんですとそのときも言われましたけれども,ただ,高校は,先ほどからお話が出ているように,大学入試だけで回っているものではありませんから,指導要録を作るにしても,調査書を作るにしても,やっぱり大学入試のシステムだけを検討されても回らないんです。
 だから,そこのところは,高等学校が,先ほどから負担軽減とかいうお話も出ていますけれども,どういう形でより良いシステムを作ればいいのかといったときに,大学入試のことだけを考えてシステムを作るということは高校側にとっては有り難い話ではないというところで,是非そうしたところにも視野を広げながらここでの議論を進めていただけると有り難いなと思っています。
 指導要録の記載事項は必要最小限にというところと,指導上参考になるところは細分化しましたというように,やっぱり若干矛盾が感じられるんです。だから,そういったところも整理しながら議論を進めていただければと思います。
 以上です。
【圓月主査】
 ありがとうございました。調査書がシームレスに多面的評価の向上につながるというふうな図式もないわけではないんですけれども,それはやはりもう少し整理して深めていく必要があるでしょうし,指導要録の位置付けに関しても,やっぱり高校さんは高校さんで自立した教育プログラムをお持ちですので,そちらもやはりリスペクトしていかないと,高大接続が本当にうまくいかないんじゃないかなと思っています。
 そうしたら,明比委員,よろしくお願いします。
【明比委員】
 神奈川大学の明比です。大学側として,先ほど牧田先生の方から,調査書は大学でどのように使われているのかというような御質問もありましたけれども,AO入試とか推薦系入試,いわゆる面接試験をやるような入試においては,調査書は細かく見られるので活用はかなりできるのだと思うのですが,一般入試,特に本学でも何万人という志願がある一般入試,学力型試験において,一人一人の調査書を全部見ているかというと,そこまでの活用は実際はできていないというのが現状です。
 そういったこともあって,恐らく調査書を電子化にして,システムで評価できるような仕組みを作るというのが目的なんだろうと思うのですが,ただその中で,今まで大学入試では,知識あるいは技能,思考力・判断力,そこらは筆記型試験では恐らく評価ができたのですが,やっぱり一番問題になるのは,資料10にもありますように,主体性を入試で評価するという部分。主体性というのも人によって捉え方は大分違うかと思うのですけれども,何をもって主体性なのかということと,それから,調査書の方に結果は多分書かれるのだと思います。例えば生徒会の会長をやった,あるいは何々部で大会に出てどうなったかというような結果は分かるとしても,一番重要なのは,何でそういうことをやったのかという目的と,それを達成するまでの過程だと思うのです。
 そこを,入試,特に一般入試においてそこまでを評価できるかというと,御存じのように,筆記試験,入試が終わった後,採点をして結果を出すまでにかなり短期間でやらなければいけないというところもあります。特に私立大学は早く合格を出すというところが1つの合格者獲得のための使命でもあるという部分もありまして,なるべく早く結果を出してあげるというのが重要なポイントになるのですが,そこに先ほど言った主体性を細かく見るすべというのがなかなか難しいのではないかと。恐らく高校側でもそこまで細かくは,いわゆる過程を細かく書くことは多分できないのではないかと。そこを,JAPAN e-Portfolioとかを使って評価できるだろうということもあるのですが,ただ,JAPAN e-Portfolioの方も,生徒さん自身で書く内容ですので,信憑性といいますか,どこまで信頼できるのかというところも議論が必要なのではないかと思います。
 そういった意味で,やっぱり主体性を入試で評価することの意義,どうやって主体性を評価するのか。これも多分大学によってもかなりばらばらになってくる。恐らく調査書の中身を評価する場合には,文部科学省さんの方では,各々の大学で評価基準を決めてくれという形になるのだと思うのです。そうなった場合に,特にこの主体性というのが本当に公平・公正な入試の評価につながるのかどうかというところが私は疑問があるところです。
 あと,それともう一つ,先ほどシステムのお話もあったかと思いますが,受け取る大学側も今そういうシステムはありませんので,受け取る大学側もそのシステムを構築しなければなりません。スケジュールのお話もありましたが,前の調査書のワーキングでは,2022年から調査書の電子化をやるということでしたが,こちらの資料1の方では令和6年に実施される新学習指導要領に対応した最初の個別入試に向けたというふうにあって,2022年に電子化したものをシステムを組んで,当然中身がまた変わるわけですから,そこでまた変更しなければならないということであれば,最初から変更が分かっているのであれば,2022年からの導入というのは見送るべきなんじゃないかというような勝手な思いで今聞いていたのですが,そういった点も今後問題があるのではないかと思います。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。最初の部分は,牧田委員の先ほどのご質問に答えていただいた面もあると思います。実際に先ほど前田室長の方から,大学の規模というのが影響あるというのもありましたけれども,もう一つはやはり入試区分によってかなり扱いが違ってくるというのがあるので,一概に答えるというのが非常に難しいという実態はございます。
 主体性評価自体の是非を,あるいはその妥当性というふうなものなんかを問うというのもやっぱり大事なことかと思います。
 システム構築に関しましては,高校にも大学にも,これは学校の間でも格差があるというか,その部分もやっぱり配慮していかないと,なかなか一律には進みにくいのかなということも確認しておきたいと思います。
 それでは,巳波委員。こちら側にずっと回って,巳波委員の方でよろしくお願いします。
【巳波委員】
 関西学院大学の巳波と申します。本大学は,電子調査書の委託事業をやっておりまして,現在も継続しているところでございます。この委託事業を始めるに当たって様々なことを考えましたけれども,制約条件などもいろいろ考えていると,ほとんど実行不可能ではないかと思えるほどの難しい問題だなということが分かってきたところではございますが,その中でも,高大接続改革を何とか一歩でも進めなければならないという思いで,実行可能解を探しているというのが現在のところでございます。
 また,我々の方でも,電子調査書の意義は何だろうかということもやっぱり考え,見直しました。これはまず多面的な評価が重要であろうというところでございます。これまでペーパー試験一本だけで学生を評価していたわけですけれども,やはりそういう入試もあってもいいのかもしれませんが,それだけじゃなく,生徒のスキルは多様なものでございます。そういう多様な能力に光を当てて見出す,拾い出してあげるという,そういうことはやはり大事ではないかというところが根本にあるのではないかと考えました。
 そういうためには,では,現在の調査書で十分なのかと。調査書の情報だけでは,先ほどもちょっと出ていましたけれども,やはり結果しか載せていないと。それだけで判断するのでは,これも垂見先生からも出ましたけれども,やっぱり格差の話は避けて通ることはできなくなる。例えば留学経験があるか,ないかだけで判断することになれば,それはかなり難しい問題になるだろうと。
 であれば,ほかの情報が必要であろうと。調査書プラスアルファでないと,なかなか情報が判断できない。であれば,それを先生,高校の教員に書かせればいいんじゃないかということは,これはもう絶対無理でございます。稼働の観点から,コストの観点からも絶対無理でございます。であれば,生徒が自主的に入力し蓄積しているようなe-Portfolioと調査書とを組み合わせた情報を流通させる,授受するような仕掛けであれば,何とか実行可能ではないかと考えました。そのために,今回の,現在検討しているのは,e-Portfolioのポートフォリオ機能と調査書機能を合体させたものを電子的にやりとりするというようなものを想定しているところでございます。
 では,これがこれで十分なのかというと,やはり先ほども御指摘ありましたけれども,ネットワーク的にそのままでは送れないということもまさにあります。だから,セキュリティガイドラインなども何らか緩和するなり,何か対策が必要ではないかと考えておりますが,こういう一見実行不可能だと思うところでも,何とか解決,落としどころが見付かるんじゃないかと思って検討しているところでございます。
 最後に,電子調査書システムですけれども,これがもし実現したとすると,これはやはり公的な組織が一元的に運営するような形でなければならないと思っております。調査書データ,また,個人のデータですから,一民間企業,また複数の民間企業が運営するものではなくて,やはり公的な機関が運営すべきものだろうと考えております。これも複数あってはまずくて,複数あると,システム開発の話も最後にちょっと出ましたけれども,大学も高校も複数のシステムに対応するために開発費用がまた膨らんでしまう。そういうためにやはり公的な組織が一元的に運営するということが必要ではないだろうかと。
 こういうふうに様々な制約条件の中から考えてきているところでございます。また皆様からもいろいろ御意見頂きまして,より良いものを提案していければと考えておりますので,よろしくお願いいたします。
【圓月主査】
 どうもありがとうございます。巳波先生には,委員としてだけではなく,委託事業の責任者としても本当に御苦労いただいていて,またいろいろな点でよろしくお願いいたします。
 それでは,牧田委員の方からよろしくお願いいたします。
【牧田委員】
 牧田です。私もともと門外漢なので,説明等をいろいろ拝聴して,皆さんの御意見もお聞きして直感的に思ったことを,今日のところは時間もないので幾つか述べさせていただきたいと思います。
 こだわるようですけれども,本当に大学入試で調査書とか子供たちがするいろいろな資料というのは,本当に活用されるのかなというのがどうも引っ掛かります。もちろん今,AOだとか推薦入試ということに非常に有効だということも理解はしていますけれども,一般入試においては,恐らく活用されていないのだろうなということは分かるわけで,先ほど前田さんも難しいお答えを頂いたわけですけれども,そこが私は大前提にあるので,まずは受験にとって本当に調査書がどういうふうに活用されるべきなのか,ということを考えなければならないというのが1つでした。
 それで,もしそれが活用されるのであればどんな問題があるかということで,浮かんだことが実は2つあります。
 1つは,人が人を評価するということは,これは非常に難しいことであります。当然それが間接的に誰かの記述によってまた評価をされるということであれば,そこに1つのバイアスが掛かるわけであります。だから,人の手を通れば通るほど難しくなっていくわけでありますし,そして,それを今度は読み込む,要するに,書く人と読む人がいるわけで,書く人と読む人の力量の差によってどう解釈されるかという問題が必ず出てくると思います。そういった意味で,人が人を評価するというのは難しいのだろうと思います。
 それから,もう一つは,そもそもe-Portfolioみたいなものを導入したときに,すべての高校生が入力するのかということが懸念としてあります。真面目な子供はやるでしょうけれども,不真面目な子供は,恐らく友達のものをそのまま写したりとか,いろいろな方法でそれをすり抜けていくのだろうと思います。
 それから,この延長線上で一番怖いのは,先ほどアメリカのエリートの話が出ましたけれども,大学の入試のために,それを入力するがために,自分たちの高校生活の自由度を自分たちで奪ってしまうということが十分考えられるわけです。ポートフォリオに入力できるような生活を送らなければいけない,勉強しなければいけないということをやっていくことが,果たして今の高校生たちにとって,それがベストな選択なのかどうかというのは考える必要があるのだろうと思います。
 以上です。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。調査書に対する疑問というふうなものを非常に簡潔に述べていただいたものだと思っております。是非それも受け止めながら,これから議論を進めていきたいと思います。
 それではその次,星野委員からですけれども,ちょっと時間が迫ってきましたので,3分以内ぐらいということでよろしくお願いします。
【星野委員】
 星野でございます。私は,国立大学の方で入試担当を四,五年行っておりまして,その経験も踏まえてこの協力者会議で貢献できればと思っております。
 1つは,検討事項の中にも挙げられておりますけれども,先ほどからも少し話題に上がっておりますが,入試区分が,今でいえばAO,推薦,そして,一般とございますのは,これは大学が多様な人材を求めているということのあかしだと考えております。それは障害のある方も含めてでございます。そうすることによって,大学の中で活性化を図るということが1つ大きな眼目になっているということです。したがって,それぞれの入試区分で公正に,そして,それぞれの入試区分の中では公平に入試が行われるということが求められているんだろうと思いますけれども,区分が違うと必ずしも公平でない形になっているというのが,現実,現在もそうだというふうに考えております。
 例えば経済的な困窮のために体験活動ができないというような方が受験をされるといった場合には,そういうことの評価に重きを置いていない入試区分の方で,大学の方で受験できるのではないかというふうに考えはいたします。もちろんそういう体験をしなくていいのかということではないんですけれども,そういうことができる支援はもちろんする必要があるとは思いますけれども,必ずしも公平というところは,なかなか全ての受験者に対しての公平というのは実現は難しい面があるのではないかなと考えております。
 それからもう一つ,主体性についてなんですが,これもよくそういった体験活動に重きを置いた主体性の評価という見方もあるかとは思うんですけれども,我々といいますか,恐らく多くの大学で求めている学生というのは,やはり学習に対する主体性。それは高等学校でのふだんの授業の中あるいは授業を通じた学習への取組,そういうものに対してのやはり主体性がちゃんと備わっているという学生を求めているのではないかと考えております。
 例えば現在の調査書の中の評定値の中にも実は観点ごとの評価の内容も織り込まれているというふうに,これは高校の先生方へのインタビュー等を通じて伺っております。超難関大学は分かりませんけれども,中堅以下ぐらいの大学でありますと,評定値と大学入学後の2年生ぐらいまでの成績,GPAについては正の相関が見出されている大学が結構ございます。それは高校のレベルによりません。いわゆる偏差値が低位の高校出身者であっても,ちゃんと評定平均値とかが高い学生については,大学入学後も成績は良好であるというような,もちろん例外というところはありますけれども,大体がそういうような傾向が見られているというようなこともございます。今度,新しい学習指導要領ではこの観点別の評価がより見える形になってくるというようなところになってまいりますので,それは大学としては歓迎したいなというふうには考えております。
 したがって,今後,調査書の電子化を進めていくといったとき,先ほどからスケジュールの話もございますけれども,新しい学習指導要領に沿った形の指導要録からの調査書への落とし込みというようなところでは,そういうようなところも考慮に入れて議論していただければなと考えております。
 以上です。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。ここ20年ぐらいでしょうかね,大学改革の中で入試の多様化というのがずっとあって,多様性と公平性みたいなものをどういうふうに両立させるか。入試を議論しているとき,公平性,公正性,公益性が問題になりますが,それぞれ重なるんですけれども,どれが一番重要なのかというのもまた難しい問題かなと思いますけれども,是非考えていきたいなと思っています。
 そうしたら,西郡委員,よろしくお願いします。
【西郡委員】
 佐賀大学の西郡です。私は実際,大学のアドミッションセンターで入試の設計に関わっています。その立場から少し意見を述べさせていただきます。
 実際,一般入試におきましても,主体性評価ということで今実施をしておりますが,多くの大学でこういった入試をいろいろと進めていく上で今一番大きな課題になっているのが,多面的な評価を一般入試まで含めて全ての入試で実施することで何が良くなるのかということを学内で上手に説明できる人はどれぐらいいるかと。理念は分かるんですけれども,理念を説明してもなかなか理解を得られない。
 普通の入試改革ですと,それぞれの大学,学部で具体的な課題があって,その課題を解決するためにいろいろな入試改善を行うわけです。そうすると,達成のイメージがしっかりと共有できて,何をすべきかというのが明確になるわけですが,今,実際多くの大学では,高大接続改革の流れの中で政策的に進められているからしっかりと入れていきましょうということで理解を得ているところは多いのではないかと思います。こういったことを考えれば,実際にこういった会議で検討すべきこととして,多面的総合的評価を導入することで具体的に何が良くなるのかとか,どういったところに次,展開できるのかとか,そういったことを共有すべき理解として議論する必要があるのかなと思います。
 もう一つは,この会議で議論を進めていく上で私がまだ理解できていないところが,何を前提にスタート地点として議論をするのかというのがまだ分かっていません。例えば主体性の意義をここでずっと議論していくと,そもそも主体性を評価するべきなのかというところまで戻りかねないと。そういったところまで前提なしで議論を進めていくべきなのか,それとも,しっかりと電子調査書とかそういったものを作っていく,そのために建設的にどんなことが考えられるのかということを議論すべきなのかというところがまだ私自身理解できていないところがありますので,そういったところを整理して今後議論を進めていければと思います。
 以上です。
【圓月主査】
 こちらも非常に重要な御指摘を簡潔にまとめていただいてありがとうございました。私の主査としての責任もあるんですけれども,論点がこれまでこのワーキンググループでも拡散していたところもあるので,論点をもう少し整理しながら議論を進めていくために,次回からは準備させていただきたいと思っています。
 そうしたら,長塚委員の方から。
【長塚委員】
 長塚でございます。私は高校の方から実務的な視点で3点ほど申し上げたいと思います。
 まずは,指導要録と指導要録等に基づいて作成する調査書というのは項目内容が必ずしも同じになっていないんです。例えば指導上参考となる諸事項というのは,指導要録の参考様式では大枠の記載欄があるだけです。調査書には今回新たに6区分で書くようになったんですけれども,もともと要録の情報では十分でないものを調査書に書く必要があるとなると,これは要録じゃないところから持ってきて調査書に書くということにならざるを得ない,そういう課題があったわけです。
 ただ,今回の調査書の改定というのは,指導要録の項目の順番に合わせるような改定をするということが趣旨だったわけで,それはそれでいいんですが,次の指導要録も,これも参考様式とはいえ,調査書がどういうふうになるかによって各学校における要録の作り方も変わっていかざるを得ない,そういう関係性があるということです。
 ところで要録の記録情報を充実させて調査書に盛り込むというのは,そこで必要だったのは,例えばJAPAN e-Portfolioの生徒の活動の記録などを参考にするということだったわけですけれども,そもそも指導要録で教員が把握している以外の詳しいものは,JAPAN e-Portfolioなどを用いて,あるいは生徒の活動報告書を電子化するような形によって各大学が得られれば,それにこしたことはないわけです。必ずしも調査書に落とし込むことは必要ないのではないか,むしろ生徒の活動の詳しい内容を知りたいのであれば,そういう方策は調査書以外でやる方が望ましいと思います。これが1点目です。
 しかし,それにしても,例えば必須の活動ではない部活動などの活動から主体性を見極めたいというのであれば,これは生徒の幅広い意味での主体的に活動する力があるかどうかというような意味合いになります。部活動だけではないかもしれませんが。
 そうしますと,2点目として,学力3要素で求めている3要素目というのは学びに向かう態度ということですから,その意味での主体性ですので,ここはかなり違っているところから議論が始まっていると言わざるを得ないわけです。ですから本来,主体性について,学びに向かうというところだけで言うのであれば,調査書の教科・科目等の記録などで把握することができるだろうと思います。というのも次期指導要領では,教科目における探究とか,あるいは観点別評価が求められているからです。
 そこで,実は2年後の2022年から,新指導要領による高校1年生の学習が始まりますから,観点別評価による要録作成をしておかないと,その3年後の調査書に反映できないということになります。ですから2年後までの間に調査書がどのようになるのか,観点別評価を求めるのかどうかということをここで明確にしていただかないと困ります。ともすると,高校の現場では3観点別評価を反映した指導要録の作成が始まらないというんでしょうか,それに向けてしっかりと動けないということにならざるを得ないわけです。調査書によって規定されてしまうということがあるので,これは非常に重要な議論になるだろうと思っております。しかし,3観点で評価し,そこで学びに向かう主体的な力,学びに向かう態度がしっかりと把握されていくことは,私は必要だろうと思っています。
 そして,3点目ですが,調査書の電子化ですけれども,これは一般入試でやはり短期間に評価しなければならないということのために電子化が有用であるというような議論から始まったと思うんです。そういう意味では確かに有用なんですが,機械的に調査書から得られる情報だけで本当に主体性等を見ることができるかどうかということはやはり疑問があるだろうと思います。それはむしろAO,推薦などの入試の仕組みをもっと充実させる,あるいはその割合を充実させることの方が大事で,やはり一般入試が主であるという前提で始まっている限り,多面的・総合的な評価をするということがなかなか進まない,成り立たないのではないでしょうか。大切なのは,入試の仕組みの在りようをもう一度きちんと多面的・総合的に評価できるものにするという,ここの議論が必要ではないか,そんな思いがいたします。
 以上でございます。
【圓月主査】
 高校から見た貴重な御意見だと思います。高校側から発言いただいた方の中には,やはり指導要録と調査書との関係を明確にする必要性,そして,今,長塚委員の方からは,観点別評価との関係もやはり明確にしないと現場が混乱するだろうという御指摘なので,是非これは論点として今後も議論を深めていきたいと思います。
【石崎委員】
 すみません,1個だけ今のところで確認したいことがあるんです。石崎です。資料6-4の20ページを見ていただきたいんです。左下の12というところにあると思うんですけれども,「指導上参考となる諸事項」の欄には,指導要録の同欄の記載事項のうち以下のとおり記載することと書いてあるので,長塚委員おっしゃられるように,現実として指導要録に載っていないことを調査書に書かれている学校もあるかもしれないんですけれども,飽くまで調査書は指導要録の同欄の記載事項のうち記載するということが選抜実施要項に書かれているというところを事実として確認しておかないと議論がずれてしまうので,そこだけ確認させてください。
【圓月主査】
 正確な御指摘ありがとうございました。それも踏まえてまた議論を次回整理したいと思っております。ありがとうございます。
 私の進行が不手際だったので,予定の時間をちょっと超えておりますけれども,あと,最後に,実は副主査の川嶋委員にまとめていただこうと思っておりましたので,時間オーバーを少しするのをお許しいただきたいと思います。川嶋委員,よろしくお願いいたします。
【川嶋副主査】
 川嶋です。これまで各委員が発言されたことと重なっておりますので,そういう意味ではまとめということになるかもしれません。
 1点目は,西郡委員からも言及がありましたが,3つの大きな検討事項の柱があるのですが,本会議の期限が年内までということを考えると,やはりどの項目からこの会議で検討を進めていくのかという優先順位を付けた上で議論を進めないと,それぞれの先生方の立ち位置によって様々な御意見が出てくると思いますので,順番,順位付けを是非していただきたいということです。
 2点目は,主体性とは何かということについても,当然,それぞれの委員の方々あるいは大学によって考え方が異なると思います。そこで,今回調査をされるということでしたけれども,調査案を少し拝見すると,主体性等の説明が多様な人々と協働しながら主体的に学ぶ態度というふうにすでに書いてあるんですが,その説明を前提とするのではなくて,各大学が主体性という,つまり,コグニティブじゃない需要,つまり,現行の調査書では右側の欄のところに書かれていることを評価するということになると思うのですが,大学としては,この右側の欄というか,主体性等で言われるところの何を評価しようとしているのかをまず聞いた方が良いと思います。星野先生の御指摘のように,学習場面での主体性なのか,ボランティアとか留学とか課外での主体性なのか,それぞれ大学のアドミッション・ポリシーによって違うと思いますので,その点も明らかにするということが必要かと思います。
 それに関連して,今後,調査書の右側の欄に何を書くべきかという点についても,実際今何が書かれているかということを検証してみないと,今後入試で活用するに際して,現在記載されていること,各大学が主体性等を評価する際に,足りないところ,使えるところなど,使えないところ,その現状をきちんと把握するということと併せて検討していかないと,委員の皆さん方のお考えの中で,こういうことを書いた方がいいんじゃないかとかいうのではなかなか現実的な議論にはならないのではないかと考えます。
 次に,主体性の評価,ノンコグニティブのところですけれども,牧田委員おっしゃったように,人が人を評価するということですので,やはり主観的な評価が入らざるを得ません。ただ,単に調査書の左側に記載されている科目の評点とかテストの点数など客観的に点数化できるだけのところで今後も入試で評価をしていっていいのか。人が人を評価するということも認めていくというふうに変えないと,今の日本の教育は大きく変わらないというのが私の個人的な見解です。
 ですから,垂見委員もおっしゃったように,家庭だけじゃなくて,どういう高校なのかという,そういう志願者の背景情報も併せて評価していくということが今後必要だろうと思います。それは,客観的に平等・公平じゃないかもしれないけれども,よく言われていますけれども,公正な評価になるのではないかと思います。
 最後に,私もやはり答申等で指摘されている、全ての入試で多面的・総合的に評価する方向にもし入試を変えていくのであれば,全ての入試のあり方をAO・推薦入試のような評価法に変えていかざるを得ない。つまり,現在の日程の中で一般入試で,調査書をたとえ電子化しても総合的に評価するというのは難しいと思います。ですから,入試日程の前倒しと言うとまた高校の先生からいろいろ御意見はあるかと思うんですけれども,時間を掛けてじっくり,丁寧に評価するというふうに変えていかないと,なかなか全ての入試区分で多面的・総合的評価に変えていくということは無理なのではないかという点では長塚委員と同じ考えでございます。
 以上です。
【圓月主査】
 さすがに適切にまとめていただいて感謝します。優先順位をしっかり付けていくというのは,今後宿題を頂いたものと思っております。また,主体性・協働性・多様性といっていますけれども,多様性を画一的に考えるということ自体ちょっと自己矛盾しているところなんかもあって,いろいろな考え方があるんだろうなということも含めた上でどういうシステムを作っていくかということが重要だと思います。先ほども牧田委員の御発言にもあったとおり,人が人を評価するというのは大変難しいことですので,それについての難しさというのを忘れないようにしながら,やはり議論を進めていきたいと思っております。
 私の不手際で10分近く予定の時間よりも長くなってしまいましたけれども,次回からは,まず委員の皆様の意見発表から始めていただき,細かい点については,私と川嶋副主査の方で調整しながら議題等を決めていくというふうにしたいと思うんですけれども,よろしいでしょうか。
 それでは,次回については御一任いただいたということで,また御報告をさせていただきます。
 最後に,事務局から何かございますでしょうか。
【加藤大学振興課専門官】
 失礼します。第2回目につきましては,委員各位の日程の調整の上,決まり次第改めて御連絡をさせていただきます。
 また,本日時間の関係で言い足りなかったこと等ある場合には,事務局までメール等で御連絡頂ければ,また次回以降,配付等させていただければと思います。
 皆様,本日は御多忙のところ,どうもありがとうございました。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。

―― 了 ――
 

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