大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議(第3回)議事録

1.日時

令和2年5月20日(水曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省15階特別会議室

3.議題

  1. 委員からの意見発表
  2. 自由討議
  3. その他

4.出席者

委員

(有識者委員)圓月主査、川嶋委員、髙井委員、垂見委員、井上委員、石崎委員、明比委員、西郡委員、星野委員、牧田委員、巳波委員、柴田委員、柴原委員、高田委員、田中委員、長塚委員
 

文部科学省

森田文部科学戦略官、西田大学振興課長、前田大学入試室長 他

5.議事録

【圓月主査】
 それでは,ほぼ定刻になりました。皆さんもおそろいということですので,ただいまより第3回大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議を開催したいと思います。
 本日の運営形態及び出席者等について,事務局から御報告をお願いいたします。
【小川大学振興課専門官】
  事務局でございます。本日の会議は,新型コロナウイルスの感染拡大の状況を踏まえまして,前回と同様にウェブ会議の形で開催をさせていただきます。委員の皆様におかれましては,御多忙の中,遠隔で御出席いただきまして誠にありがとうございます。音声など不都合ございませんでしょうか。 
 こちらの協力者会議は,原則として公開で行うこととしておりますけれども,今回は取材,傍聴の方については入室をしないということで対応させていただきます。ただし、ライブ配信での配信を行うことと しております。また、後日,議事録をホームページに掲載することとしたいと思いますが,それでよろしいでしょうか。
 まず,田中厚一委員・日本私立短期大学協会の副会長で,帯広大谷短期大学の学長でございます。
【田中委員】
 田中です。御迷惑かけました。よろしくお願いいたします。
【小川大学振興課専門官】
 また,柴原委員は3月末で茨城県教育委員会教育長を退職されまして,全国都道府県教育委員会連合会より,新たに髙田委員を推薦いただきましたので,紹介させていただきます。髙田直芳委員・埼玉県教育委員会の教育長でございます。
【髙田委員】
 髙田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【圓月主査】
  よろしくお願いいたします。
【小川大学振興課専門官】
 柴原委員におかれましては,引き続き有識者として,本協力者会議に参画いただきます。更新した委員の名簿につきましては,参考資料2の2ページ目でございますので,御参照いただければと思います。本日は,全ての委員が出席でございます。
 議事に入る前に,連絡事項がございます。議事のライブ配信等を円滑に行う観点から,御発言に当たりましては,インターネットでも聞き取りやすいよう,ゆっくりはっきり御発言いただくようお願いいたします。発言のたび,お名前をおっしゃっていただくようお願いいたします。資料を参照する際は,資料番号,ページ番号,ページ内の該当箇所などを分かりやすくお示しいただくようお願いいたします。
  発言に当たりましては,「手を挙げる」ボタンを押していただきまして,発言終了後はマイクをミュートにしていただいて,「手を下ろす」ボタンを押していただくなどの配慮をいただけるとありがたく存じます。細かいことで恐縮でございますが,よろしくお願いいたします。以上でございます。
【圓月主査】
 それでは,圓月です。改めてよろしくお願い申し上げます。
 議事に入る前に,5月14日付けで文部科学省から発出された高等学校等の臨時休業等に配慮した令和3年度入試における総合型選抜及び学校推薦型選抜の実施に関する通知について,事務局から説明をお願いしたいと思います。
 前田室長,よろしくお願いいたします。
【前田大学入試室長】
 ありがとうございます。大学入試室長の前田でございます。本日,どうぞよろしくお願いいたします。
 お手元,参考資料3,先生方,御覧いただければと思いますけれども,タイトルが「高等学校等の臨時休業の実施等に配慮した令和3年度大学入学者選抜における総合型選抜及び学校推薦型選抜の実施について(通知)」というものでございます。こちらから御覧いただければと思いますけれども,現状の御報告でございますけれども,まず一般入試を含む入試全般につきまして,新型コロナウイルスによる臨時休業が長期化する中,来年度の入試において,こうした状況が多くの受験生にとって不利益にならないように,文部科学省としても受験生の立場に立った配慮措置を講じていくということが重要と考えております。今後も高校・大学関係団体と十分相談して対応することを考えております。
 その上で,当面,特に9月以降に出願が始まりますAO入試,それから,11月以降に出願が始まります推薦入試といった選抜区分につきましては,受験生が大きな影響を受けることとなりますことから,現時点において入学者選抜を実施する大学に御配慮をお願いしたい事項につきまして,これまで高校・大学団体の皆様方から御意見を頂きまして,こちらの参考資料3にございますとおり,5月14日付けでAO推薦入試における配慮事項について通知をいたしました。
 具体的な配慮事項といたしましては,参考資料3の1枚おめくりいたしますと,記といたしまして,1から7ございます。主なところを御紹介させていただこうと思いますけれども,1つ目として,中止・延期となりました大会,資格,それから検定試験等に参加できずに,結果を記載できないということをもって不利益を被ることがないように,それまでの成果獲得に向けました努力のプロセスや,大学で学ぼうとする意欲を多面的・総合的に評価していただきたいということでございます。
  それから,2つ目としまして,調査書につきましては,これは出席日数でございますとか,特別活動の記録,指導上参考となる諸事項の記載が少ないということなどをもって不利益を被ることがないようにお願いしたいということでございます。
  3つ目としまして,新型コロナウイルスの感染の拡大防止に留意しつつ,例えば,ICTを活用したオンラインによる個別面接でございますとかプレゼンテーション,それから,入学後の学修計画書等の提出を取り入れた多様な選抜方法の工夫が考えられるということでございます。
 また,4つ目としまして,募集要項を公表する際には,募集要項に記載されている選抜方法とは異なる方法で選抜を実施する可能性がある場合には,その旨を明記していただきたいということと,変更がある場合には早期に決定をいただきまして,周知をお願いしたいということについて,各大学にはお願いをさせていただいているところでございます。
 また,そもそも来年の入試時期についてどうなのかということでございますけれども,これにつきましては,毎年例年6月に定めます,大学入学選抜実施要項において周知する予定でございます。その中で,受験生の立場に立って慎重に検討する必要があると考えておりまして,引き続き高校・大学関係者と十分相談しながら,臨時休業の状況に応じて適切に対応してまいりたいと考えております。
  私からは以上でございます。
【圓月主査】
 圓月です。それでは,議事に入らせていただきます。
 まず,議題1です。本日は,高校側の委員より意見発表をいただきたいと思います。まず初めに,石崎委員からお願いいたします。
【石崎委員】
 石崎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。資料1を御覧いただければと思います。今日は限られた時間の中で3点お話しさせていただければと思いますが,調査書電子化の課題,それから多面的評価の課題,この2点につきましては,できるだけ現場の校長先生方の生の声をお届けさせていただきたいと思いまして,昨年の7月に実施しました。私ども全国高等学校長協会で毎年行っている大学入試アンケートの中から頂いた意見を御紹介させていただければ思っております。
 それから,あと3点目は,調査書の記載事項というのが実際どうなってるのか,これについて調査書の記載事項が本当に差異なく書けるのかとか,調査書の記載事項によって不利益を被るようなことがないのかなどという課題が出てきますが,そうしたことへの参考にも思いまして,お話しさせていただければと思います。その後,私なりのまとめをさせていただきたいと考えているところです。
 では,早速でございますが,資料の方を御覧ください。今,1番のアウトラインのお話をさせて頂いたところですが,2番の調査書電子化の課題というところについて,まず(1)としまして,調査書電子化を進めるに当たって,環境整備に必要なことは何でしょうかというようなことで,自由意見を頂きました。自由意見なので書いても書かなくてもいい項目ですが,全国470校,各県10校を対象にしたアンケートで,頂いた意見を分類いたしまして,概ね例えばシステム関係の意見が103あったというような形の表にしてございます。
 御覧いただければ分かりますように,一番多かったのが,やはり調査書の電子化を進めるためのシステム関係の意見でございます。まず,そのシステム自体が,学校間でばらついていては困るというのはこれまでにもさんざん重ねられてきた意見で,システムの全国的な統一が必要ではないかということです。それから,実際今,各学校でe-ポートフォリオなんかを使っている学校が多いというのも,これまで議論されてきたことですが,そういったシステムの中で,生徒がシステムに入力するというようなことをうたってるシステムがあります。そのことに対して,それぞれの項目に対して教員に署名や認証を求めるのはなかなか厳しいというような働き方に関する意見も出ております。
 それから,学校によってで,進路先が多様であったり,学ぶ内容が多様であったりとかということで,学校の状況に合わせて対応できるソフトが必要ではないかという意見があります。それから,システム導入に当たっては,財政的な措置も必要ですし,それから,システムを保持・運営するための,学校に機械があるわけですから,それを運営できるような技術・能力を備えた職員の育成も課題になってくるといった意見を頂いております。
  ページをめくっていただきまして,システムを使うと簡単になるという方も多いんですけれども,そうではなくてシステムを使うことで,かえって手間になるんじゃないかというような不安を持っていらっしゃる方もまだまだいるということで,働き方の改革の観点から,記録作成する手間などについても簡素化してほしいというような,システムに関する不安や意見が一番多く寄せられています。
 2つ目の丸でございますが,これはICT環境の整備ということで,主に生徒側の環境整備に関する意見だと思います。こうしたe-ポートフォリオシステムだとかと連動した調査書システムを想定してますが,生徒が入力する,そういう環境が整えられるのかといった意見です。それから,それに伴って,生徒がそういう機器を使うに当たっての生徒指導上の問題ですとか,生徒を指導するに当たって,大学進学だけではない学校については,大学に進学する生徒,就職する生徒,専門学校を希望する生徒などが混在する場合の指導の難しさとか,そういった意見が寄せられております。
 それから,3番目に多かったのはやはりセキュリティーに関することで,これは本当に個人情報の塊ですから,本当にセキュリティー面できちんと管理できるのだろうかという意見です。特に誰が責任とるのかというようなところも非常に難しい問題だと思いますが,管理責任の所在の明確化ということも課題であるというような意見が多く寄せられております。
 それから,システム上の問題というよりは,電子調査書の様式の問題になるかと思いますが,提出書類を削減して,様式を統一する。これは大学ごとに様々な項目を求められても,学校の中で,その調査書を発行するに当たって混乱が生じるというような形の不安だと思います。それに対してどうすればいいのかということですが,学校が作成する書類はできるだけ簡素な統一した内容にして,それ以外のものは生徒自身が大学に直接報告できるような,そういう形にできないだろうかといった意見がされて出されております。同じ観点から,大学ごとに評価したいものがあるならば,生徒用の応募書類等で,自分で集めていただきたいというような形で,これもあくまで生徒に不利益がないようにという意味での心配から出ていることだと思います。
 それから,その次の〇でございますが,大学でどう使うのかが分からない,こういったことが非常に不安を呼んで,課題になっているということだと思います。どういう活用をするのか,どんな項目を使うのかが分かれば,それに対応してもちろんやることになると思いますが,まずはどのように活用するのかを明確にしてほしいというような意見を多く頂いているということです。
 それから,先ほども出ましたが,人的なサポートがやっぱり必要だろうということについて,それについて意見を寄せるという方も多くいらっしゃいまして,教員が機器を管理するのは難しい部分,それから,負担になる部分というのがあるので,支援員等の配置を進めていただけないだろうかという意見も寄せられているところです。
 あとはバラバラにシステムをつくるのではなくて,国による統一的な統合型システムを求める声ですとか,それから,研修が必要というところでは,教員が,さあ一斉に使ってくださいと言ってもなかなか使うのが難しいというところで,研修時間を確保するとか,そういったことが必要になるんではないかというような意見が寄せられています。
 (2)でございますが,これは昨年の7月にやったアンケートですが,昨年度から電子調査書が一部で施行されるということで,始まるに当たって意見を求めたところです。セキュリティーや環境整備については同じような意見なんですけれども,2つ目の丸のところで,始まったはいいけれども,情報が不足している,具体的な情報が不足しているし,どういった選抜に活用されるのかが知りたいといったような意見が寄せられておりました。
 それから,統一のシステム,統一様式,教員の負担増というところは今の意見,環境整備と同じような課題ですけれども,一番下のところになりますが,実際に始まるに当たって課題に感じるところというのが,ミスを防ぐためのチェック体制ということで,いざ書類を発行するとなると,前にもお話ししたんですけれども,学校として文書を出すに当たって,チェック体制をどういうふうに確保していくのかといったようなことが気になる内容になっております。
 ページめくっていただいて,あとは実際に始まるに当たって,これもこれまで課題に挙げられてきたことではあるんですけれども,紙媒体と電子媒体が一斉に移行しない限りは,混在するような形になりますよね。これは高校の側で混在するのも困るし,大学の側で混在するのも困ると思いますが,とにかく高校側としても,この大学には紙で出すとか,この大学には電子で出すとか,それから,既卒生の分は紙で出し,在校生の分は電子で出すとかといったような混在を,非常にやっぱりミスという観点から,懸念する声が寄せられているということです。
 そういった意味で,その次の〇になりますが,全面実施時期はやはり見直すべきではないかという意見です。一斉に準備ができてからスタートするべきだという意見です。次の,移行期間を設けて紙と電子を併用するというのは,前の意見と何か矛盾するような気がするんですけれども,そうではなくて,これは準備が間に合った学校は全部電子で出し,まだ準備ができてない学校は,全部紙で出させてくれという,高校側の視点ですけれども,とにかく学校の中で電子と紙が混在することは避けたいということだと思います。
 あとは,やはり実際に始めるに当たって,ICT環境の問題ですとか,それから,学校が何を書いたかによって合否の結果が違ってくるということに対する不安というのは,ずっと残っているのかなと思います。
 3番目に,一般選抜において調査書を大学が扱うことについてどう思うかということです。これについては,一番多かったのが,どう利用するんだろうかということについて,明らかにしてほしいという意見です。一般選抜でどう使うのかというところがなかなかこれまでなかったことなので,イメージできてないし,それによって,こちらが――こちらがというか高校側が書いたことによって,生徒が不利益を受けるということを,とにかく心配しているということだと思います。大学がまず,その調査書の利用方法や評価結果を明確に示してほしい。それから,大学がその情報を本当に適切に判断,審査できるのだろうかというような,そういったことに対する不安というのも出てきています。
 それから,ページめくっていただきまして2つ目の〇ですが,次に多かったのが,やはり入試である以上,公平性の確保,それから,調査書が一般選抜でどのように点数化されるのだろうかということに対する不安の声でございます。これについてもやはり調査書の,どう評価してるのかという評価基準の公平性を担保してほしい,そして,その基準を公開してほしいというような意見ですとか,それから,調査書が旧様式,古い様式で提出される既卒生に対して不利益がないんだろうかといったような,そういった部分の公平性の確保というところに対する不安の声というのが多く寄せられたということです。
 それから,その次に,これも一般選抜で使うのだったら,情報を早く示してほしいという意見です。これもそのための準備が必要,記載項目の準備が必要だという意味もありますが,情報を早めに,大学の入試要項として実際のところを示してもらいたいという意見だと思います。
 それから,その次に多かったのは,やるのだったら積極的に活用してほしいという積極的な意見も結構寄せられており,全ての大学できちんと活用されることを望むとか,透明性を持って活用してほしいとか,逆に活用するにしても,主観的な要素が含まれている部分があるだろうから,最小限の利用にとどめてほしいという意見もありますけれども,活用に対する期待の声というのもあるところだと思います。
 その次は,やっぱり実際に一般選抜で使うとなると業務量が一層増大するのではないかという意見です。大学ごとに調査書を変えなければならないという事態は避けてもらいたいということです。
 それから,その次に,不要・形骸化というちょっと言葉は厳しい言葉ですけれども,本当に使うのだろうか,使うのだったら,大学が自分たちでやはり情報を集めて評価してほしいというような意見ですとか,受験生が非常に多いような私大なんかでは,本当に使うのか,それよりは学力のみでいいんじゃないかといった意見も寄せられているところです。大学が知りたい情報は,大学が自分で集めるというようなことをして,調査書は一本化して最小限にとどめるというような意見があるということです。
 3番目は少し話が違いますが,多面的な評価の課題というところで,次にお話しさせていただければと思います。電子調査書は多面的な評価を進める上での1つだと理解しておるんですが,多面的な評価を実際に進める上での課題という視点に立ちますと,活用方法については前と同じような意見になりますが,高校のときに取り組んだ活動そのものから不公平が生まれないかだとか,その活動をどのように評価するのかとかいったようなことに対する不安の声が寄せられているところでございます。
  ページをめくっていただきますと,やっぱり多面的な評価をされるような活動においては,高校による差というんですか,高校側のマンパワーの差ですとか,公立校と私立高校の差とかというようなことが危惧されております。様々な活動を提供できる学校と提供できない学校もあるだろうし,環境によって,その生徒に不公平が生まれるようなことが懸念されないだろうかという心配の声だと思います。
  それから,多忙化についてはいつも出てきますが,特に多面的な評価という部分で視点を持ちますと,学校の中の活動はもちろん教員が把握していますが,それ以外も含めて,例えば郊外の活動も含めて,全部担任が掌握し切れるんだろうかとか,評価が難しい面も出てくるんじゃないだろうかとか,労力をかけた効果があるのかとかいったような不安もあるというところだと思います。
  それから,客観性と公平性というところに移りますが,これも先ほどちょっとお話しした,高校間の様々な面での格差に対する不安の声ですとか,記録をどうやって公平につけていくのかですとか,ICT環境によって公平性が保たれなくなることがないだろうかですとか,大学側が,自身で公平・公正に評価をしてもらいたいとか,調査書の作成者の力量差が生徒の評価につながらないようにしてほしいといったような声が寄せられています。
  特に地域格差,それから経済格差という,教育格差に対するアンケートということで,(2)のところで,新しい大学入試全体に対して行ったアンケートですが,新しい大学入試に対して,家庭の経済力の差が影響を及ぼすと思うかというような問いに対しては,「そう思う」と「ある程度そう思う」で,95%以上を占めていると。特に地域別に見ると,関東だとか近畿だとかという大都市圏では「そう思う」というのが50%を下回っているのに対して,それ以外の地区で「そう思う」という答えが60%程度と多くなってるということで,やはり地方の方が心配の声が大きいということです。それは地域の差についても同じで,地域別に見ると,関東と関西は地域の差は余りないんじゃないかということで,35%程度となっていますが,全体で見るとやっぱり地域の差が影響を及ぼすんじゃないかというところで「ある程度そう思う」と合わせると94%が地域差もあるんじゃないかという回答で,非常に経済格差,地域格差に対する懸念というのが,この新しい大学入試では大きいんだということは認識しておかなければいけないと思っております。
  3番目に移りますが,調査書記載事項について,実際にというところで,調査書の記載事項によって差異が生まれないか,不公平が生まれないかという視点から,調査書は本当にみんなが同じことを書けるのだろうかということをちょっとお話ししておきたいと思います。そもそも調査書というのは,大学入学選抜実施要項において,調査書は生徒指導要録に基づいて作成するというふうに定められています。これはこれまでもさんざん確認してきたことですけれども,ではその元になる指導要録はどのように作られているのかということですけども,指導要録の様式というのは,実は設置者が定めるとなっています。だから,指導要録というのは文部科学省で参考様式というのが示されてるんですけれども,後の委員の先生方の御説明の中でもきっと出てくると思うんで,私のところでは様式の中身の話は飛ばさせていただきますが,様式はとにかく設置者が定める,逆に言うと設置者ごとに様式が異なるかもしれないし,記載事項も異なるかもしれないということです。
  例えば,(3)のところである自治体の記載内容例というのを書いてみました。私たちの中で一番問題になっている,総合所見及び指導上参考となる諸事項にどんなことが書かれているのかというのをここに書かせていただいております。実際の記入例としてどんなことが書かれてるのかという例ですけれども,例えば,「日本史への興味関心が強く,特に中世史に関しては理解が深い」みたいなところを調査書の様式に落とし込むことになるわけです。だから,その調査書の様式と指導要録の様式とは必ずしも完全に対応していなくて,指導要録の様式に書かれているところから調査の項目に当てはまる内容を入れているということで,特に今度の新しい調査書の様式では,ここのところが少し細かくなったんで,何らかの形で分割して入れていかなくちゃいけないという状況になっているということです。
  ここにどういうことを書くのかというのは,この1から7が例として記載事項として挙げられているんですけれども,(4)のところで,調査書の記載事項が統一できるのかというところで,例えばこんなものはどうするのだろうか。例えば,個人で参加する〇〇オリンピックですとか,学校外で活動してるサッカークラブのユースチームや,水泳,体操のクラブチームですとか,個人でやっているヨットだとか乗馬だとかフィギュアスケート,劇団,合唱団ですとか,それから,海外留学でも,長期休業中に短期で海外留学に行きましたとか,ホームステイしましたとか,個人的な音楽コンクール世界1位とかというのがあったり,学校で学ばないイタリア語とかスペイン語だとか,そういうような語学の資格だとか,こういったものが調査書に記載されるのかというと,特技として記載する学校もあるかもしれませんけれども,大体は多分記載しないところが多いと思うんですね。
  じゃあ記載するかしないかはどこで分けるのかというと,やはりその学校の教育課程上の活動として行ったものかどうか,指導上参考となる諸事項かどうかというような,そういった観点から記載の有無が判断されると思うんですね。ただ,それも先ほど申し上げたように,つくり上は記載するかしないかは設置者の方で定めることなんで,そういった記載事項というのを,そもそも調査書の方の様式で指定する仕組みにはなっていないんじゃないかということで,記載事項の統一ができるのかというところに対する非常な不安が1つあるということです。
  時間もちょっとなくなってきたので最後のまとめですけれども,私の個人的なというか,私ども高校側で話をするときに,入学試験で一番重視することはなんだろうかということを話すことがありますが,やはり入学試験である以上は,公平・公正ということが最優先であり,大学と受験生との信頼関係というのがなくては入試は成り立たないというのが大前提だと考えております。
  その上で,多面的評価と調査書電子化の課題について4つ挙げさせていただいたんですが,今までの意見の総まとめみたいな形になるんですが,やはり大学が何をどのように評価するのかということを,まず明らかにしていただきたい。その上で,調査書は必要最小限の共通事項にして公平性を保ち,指導要録をベースにして,記載者による差異を生まないということ。それから,不必要な個人情報は収集すべきではないと考えます。そして,大学が本当に必要なものは,教育課程外の活動などは自ら集めるべきではないかいうことが第1点でございます。
  それから,2点目としては,システムに対する不安です。これだけの膨大な情報を集めることに対して,やはりセキュリティーには絶対はないと私は思います。何かあったとき,誰が責任をとるのかということが不明確なまま,責任とればいいというものでもないですが,データを一元的に管理・集約するリスクというのは余りにも大き過ぎるのではないだろうかと。調査書データを一元的に1つのサーバーでとか,そういうテクニカルな問題じゃなくて,1つのところで管理・集約するのはリスクが大き過ぎるのではないかということです。
  3番目に,このことが生徒・教員の負担を増大させることにならないだろうかということです。教員の働き方改革に逆行するような記載事項の増大ですとか,例えば,1回目の会議で御紹介いただいたJePの学びのデータは項目数が800以上あるというお話でございまして,これまでにもお話し申し上げてきましたけれども,全項目を有無も含めて点検するというのは膨大な仕事になります。そして,その記載事実というものを証明することですとか,システムを管理すること,さらにJePと書きましたけれども,そういったe-ポートフォリオへデータを記録するために,生徒にどうやるかという指導も必要になってきます。また,生徒の側にとっても,ICT環境整備の負担というのがありまして,自分のパソコンを使って家で入力しなさいとかやっているところもあれば,通信料もかかるでしょうし,場合によってはe-ポートフォリオの利用料が発生するようなところもあるかもしれません。そういった生徒側にも負担を増大させないだろうかという課題がございます。
  4つ目が最後,多面的評価全般に関わるところとして,教育格差拡大への懸念です。経済格差,地域格差についてもお話ししましたけど,それ以外にも家庭環境ですとか学習環境もあるかと思います。ちょっと聞いた話レベルで申し訳ないですけれども,例えば韓国では,高校生が大学の教授と一緒に論文を書いて,それが大学入試で評価される例があるなんていう話も聞いたことがありますけれども,日本ももしそんなことになれば,やはりそういうチャンス得られる子と得られない子といったような,やはり学習環境の差異というものも生まれてくるかもしれないなという懸念も持っているとこでございます。
 ちょっと駆け足でお話をさせていただきましたが,そうしたところから,なかなかこういった課題をどう解決するのかという解決策まで提示できなくて申し訳ないんですけれども,非常に高校側が懸念していることというような視点からお話をさせていただきました。
 私からは以上でございます。
【圓月主査】
 圓月です。どうもありがとうございました。貴重な資料に基づく重要な報告を頂いたものと喜んでおります。
 それでは,御質問がございましたら,先ほど申しましたとおり,Zoomの挙手のマークを押していただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。質問等は,できるだけ簡潔にお願い申し上げます。
 それでは,牧田委員から手が挙がりましたので,よろしくお願いします。
【牧田委員】
 牧田です。よろしくお願いいたします。1点,ちょっと分からないところといいますか,教員の皆さん方の世界でこの辺はどういうふうに扱われているのかなということが分からないので教えていただきたいんですけれども,調査書の作成というのは,本来教員の皆さんのお仕事であるべきなのかどうか,調査書を作成するスキルというのが,本来教員に求められることなのかどうか。あるいは,それが求められるとすれば,それは本来どこでそのスキルを身に付けていくべきなのかということが,実際高校の現場ではどのように先生方に浸透しているといいますか,身に付けていただいているのかなというのをお聞きしたいと思います。
 というのは,何度も出てきました,やっぱり公正さというのが大事だと思っていまして,当然それは受け取るというか,前々回でしたかに申し上げましたけど,読み手も公正でなければいけませんけれども,実は書き手も力量差があってはいけないんだろうということを,今ちょっとお話を聞いていて思っていたので,そのあたりを教えていただければと思います。
【石崎委員】
 調査書は学校で作るべきものなのかというお話なんですけれども,一応公文書として公立学校の場合は発行されている文書ということで,学校として発行されているものでございます。教員のスキルはどうかという話なんですけれども,調査書を発行するときに,例えば私どものような都立学校の例で言うと,発行に当たっては,担任の先生が個人的に書いて判子を押して出すということではなくて,校内に調査書発行委員会みたいな委員会があって,実際のまず第一次的な書類は担任の先生が作るにしても,それに対して,記載事項の誤りがないかどうかといったようなことを,そういった委員会ですとか進路指導部ですとか,そういったところで一つ一つ確認し,点検し,それで発行のプロセスを経て生徒に渡るというような仕組みになっていますので,教員が個人的に何か書いて,何か生徒の差異があるというよりは,先ほどお話ししたように学校間でその仕組みが異なるという心配はあるかもしれないと思っています。
 特に公立学校と私立学校なんかでは,そういった差異が場合によってはあるかもしれないですし,丁寧にいっぱい書いてくれる学校もあれば,あんまり言葉は適当じゃないかもしれませんけれども,「特記事項なし」みたいな形で欄を埋めてしまう学校もあるかもしれません。そういったことでお答えになっていますでしょうか。
【牧田委員】
 はい。ありがとうございました。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは,川嶋委員,手を挙げていただいておりますので,よろしくお願いいたします。
【川嶋委員】
 石崎先生,ありがとうございました。お聞きしてて,改めて高校は多様だなということを実感しました。例えば,積極的に調査書の利用をしてもらいたいという御意見もあれば,最小限で利用してくださいという御意見もあると。
 そこで1つ確認なんですが,別なところで,たしか470校の抽出方法については,進学校,進路多様校,それから専門高校という形でカテゴリーを分けて,各都道府県から10校ずつ選ばれたとお聞きした記憶があるんですが,設置者別にはどうなっていますか。公立と私立も入ってのことなんでしょうか。
【石崎委員】
 私立も中には入っていますけれども,特に私立を何割にしてほしいという指定はかけていませんで,そこは都道府県によって私学が多い地域もあれば,全然ない地域もあるし,組織が別の地域もあったりするものですから,一応アンケートのとり方としては,各都道府県10校で,10校の中に進学を主とする学校が5校,進路が多様な学校が3校,そして専門学科等の学校が2校というような形になっております。
【川嶋委員】
 ありがとうございます。それで設置者別のブレークダウンというのは分析されているんでしょうか。これまで別の会議でも分かったことですが現在のオンライン授業についての状況も地域差だけでなく,公立高校の置かれた状況と,私立高校が置かれた状況がかなり異なっているという印象を私は持っています。それで改めて設置者別の意見集約というのは分析されているのかお聞きしているわけです。もしそういうのがおありであれば是非,今日とは限りませんけれども,お知らせいただきたいというふうに思います。
【石崎委員】
 ありがとうございます。設置者別にはやっていないです。地域別と,それから,今お話しした校種,3種別によって分類して分析した形のアンケートになっております。
【川嶋委員】
 ありがとうございました。以上です。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは,巳波委員と星野委員から手が挙がっておりますので,お二人から御意見,御質問を頂いて,次の発表に移りたいと思います。それでは,巳波委員からよろしくお願い申し上げます。
【巳波委員】
 石崎先生,様々な論点を示していただきましてどうもありがとうございます。大変参考になりました。
 8ページ目に,システムの安全性についてのことを記述されております。セキュリティーに絶対はない,誰が責任をとるのかというところがありますけれども,まさにここは重要なところだと思っております。この場合,責任自体が分散する方が,セキュリティーの観点からは大変危険だと思っております。その意味では,一元的な組織・体制があって,そこが責任を持って管理するという体制がいいのではないかなと考えております。
 そこで,これは石崎先生だけではなくて皆様全員で共有した方がいい話かもしれないんですけれども,責任を持つ組織・体制の話と,システム・技術の話はちょっと分けて議論した方がいいんじゃないかなと思っております。それは一元的に管理・集約するというのは,別に1つのサーバーの中に全データを入れるとかいうわけではなくて,技術的には分散管理することももちろん可能です。なので,技術的な話と,組織・体制の話は分けて議論した方がいいのではないかなと考えております。ちょっとこのあたり,混乱しそうなのでコメントといたしました。以上です。ありがとうございました。
【石崎委員】
 ありがとうございます。よろしいですか。私もここに書いたのは,テクニカルなことではなくて,組織的な問題としてどこが一元的に管理して大丈夫なのかという,そういう意見でございます。
【巳波委員】
 ありがとうございました。
【圓月主査】
 ありがとうございました。これもこれからまた検討の部分がテーマになるかと思っております。
 それでは,星野委員から御質問をお願いいたします。
【星野委員】
 石崎先生,ありがとうございました。大変よく高校側のことが理解できました。それで私の方でちょっと確認といいますか,お聞きしたいのは,先生も書かれております8ページのところの,調査書は必要最小限の共通事項にということで,これは入試区分を別に限らず,共通事項を設定して,統一の様式にしていこうということでよろしいでしょうか。例えば,推薦入試では,先ほど先生がお示しされていた指導要録の記載内容の総合所見とか指導上参考となる諸事項のところで,推薦入試とか,今度総合選抜となりますけれども,そういう中では,いわゆる学校の教育課程の中の特別活動ですね,こういうようなものについても,これまでも我々は評価をしてきたわけです。調査書とか,もちろん学校からの推薦書とか,それから,受験者が提出する書類とかを通じてですね。その中でも,特別活動に関することについては調査書の記載内容とかを参考にさせていただいたりもしていたんですけれども,そういうものも含めて,共通事項としてこれからどうしていくかという考え方ということでよろしいでしょうか。
【石崎委員】
 よろしいでしょうか。調査書でこれまで書かれてきたことというのは,比較的客観的な事実が多いと思うんですね。そうした客観的な事実は残るとは思うんですよ。ただ,それは結局,大学が何を求めているのかということと非常に関連する問題でございまして,大学がそれ以上,例えば特別活動について何を求めているのか。調査書で,例えば1年生のときに何部に属していたとか,2年生のとき何委員をやっていたとかということだけ事実を書く学校もあれば,細かく活動の内容に踏み込んで書く学校もあると思うんですね。そうしたときに,結局大学がその書きぶりをどのように評価するのかということが明らかになってなければ,事実だけを書いた学校の受験生は,場合によっては不利益を被ってしまうというようなことも起こるかもしれません。
 そうしたときに,じゃあやっぱり調査書に記載の差異を生まないためにはどうするのかといったら,記載事項は最小限にして,本当に大学が求めるものがあるのであれば,例えば,こうしたことを書いてくださいというようなことは事前に明記しておくことが大事なんじゃないかなと思います。ちょっとお答えになっているか分からないんですけれども。
【星野委員】
 ありがとうございました。よく分かりました。
【圓月主査】
 ありがとうございました。多面的評価における多面性と共通性の問題というのは,これからもやはり高校と大学の対話を続けながら,成熟させていかなければいけない課題だというふうに思っております。
 急かすようではありますけれども,あとお二人の方から発表いただくことになっておりますので,次に移らせていただきます。それでは,次は,柴原委員から御報告をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【柴原委員】
 柴原でございます。ちょっと回線の細いところにおりますので,音声大丈夫でしょうか。
 私の方からは,最初のスライドにありますように,2点についてお話をさせていただきます。1点は,調査書作成の現状,そして課題。2つ目が,主体的評価についての課題でございます。
 まず,スライド番号1番を御覧ください。これは前回配付いただいた資料を載せました。下の方に赤で囲ってございますけども,調査書の様式という欄がございます。そこについて,2020年度から現行学習指導要領下での調査書の活用とございます。さらに,2024年度から,また1つやられる予定でございます。
 次のスライド2を御覧ください。今年から使用が始まります調査書につきましては,平成29年後に出されました入学選抜予告,その予告に基づいて様式が定められております。
 スライドの3番でございますが,来年度,また新しい予告が出ることになっております。その新しい予告に基づいて,新学習指導要領下での調査書の様式が指定されることが予定されております。私たちの協力者会議が,スライドの4番でございますけれども,私たちの位置付けは,来年度出る予告へ意見を反映させる,そういう立場に今あるわけです。ですから,現在,今年から使われる調査書については,ここの意見というのは直接は多分反映されない,そういうことでよろしいかと思います。
 そういう中で,スライドの5番ですけども,現場の高校にとって今困っていることは何かといいますと,現行の学習指導要領に基づきまして,現行の生徒指導要録が決められております。現在の調査書については,現行の生徒指導要録に基づいて,先ほど委員からお話がありましたように,転記する形で作成してまいりました。しかし今年度から,指導要録の様式は変わらないままに,調査書の様式だけが変わったわけです。ですから,現場にとってみると,そこで1つ混乱が起こります。
 下の方に今後の予定を載せておきましたが,1年生,2年生,3年生,それぞれ何年度にどの学習指導要領を使うかということを,簡単に載せさせていただきました。そういう中で2020年度,現行の学習指導要領における生徒指導要録を踏まえて調査書を作るわけですから,現場の教員にとっては様々な試みがございます。
 では,スライド6番をおめくりください。6番ですが,調査書の様式が改善された経緯でございますが,平成29年度の予告の中に様々な文章を書いてございますけれども,上に書きました赤いところ,一人一人が積み上げてきた大学入学前の学習や,多様な活動等に関する評価の充実を図る。併せてその評価が,大学教育に十分に生かされるようにする必要があるために改善するんだということで,調査書の様式の見直し,推薦書の見直し,あとそのほか2つがそこに書かれてるわけでございます。
 それを踏まえてどんなふうに変わるか,簡単に目で御覧いただきます。まず7ページを御覧ください。右側が,昨年度まで使われていた調査書の様式,左側は今年から使い始められる様式でございます。1ページ目では,大した変更はございません。
 スライドの8ページを御覧ください。右側が現行の様式,左側が改善様式,赤いところが対応する部分です。右側の現行,今までので言いますと,指導上参考となるものにつきましては,1つの学年に枠が3つしかございません。1つの学年について枠が3つ,その狭い枠の中に,例えば一番左側に(1),(2)とありますように,幾つかの項目を書く形で,現在の調査書ができております。しかし,今度新しい様式の場合,左を御覧ください。第1学年にありますように,1つの項目について,枠が1つになっております。ですから,今まで一緒に書いていた内容をそれぞれ分けて書く必要が,今後出てまいりました。さらに,下に青い枠がございます。現在の青い枠の欄,それが新しい様式ではどうなるかというと,9ページを御覧ください。こんなふうに枠が大きくなります。
 その上にこう書いてあるんです。別に書きましたが,調査書の様式について,枠の制限を撤廃して弾力的に引き下げる,つまりたくさん書けるようにしましょうという意図です。これは非常にいいこともある反面,現場の教員にしてみると,たくさん書かなくちゃいけないのかという意識にもつながりかねない,そういう様式の変更が今年から行われます。
 先ほど示しました赤い枠に書く内容,この6項目についてはそれぞれ記載をすることになっております。それから,青い部分については,大学が指定する特定の分野について,特に優れた学習成果を記載することができるとなっております。現場で調査書を作成する者にとりまして,大学が指定することが各大学それぞれ違いますと,調査書も生徒が受験する分だけ種類を作ることになるのか,そういう不安も正直ございます。
 そういう中で,今,次の11ページを御覧いただきますと,さっき言いました赤いところですけれども,現在,枠について,それぞれ小さな枠が大きくなる。それが視覚的に分かると思います。
 教員が何を考えてるかと言いますと,12ページでございます。今まで学業だけでできていた調査書が,生徒を多面的に評価するために書く欄が増えた,これはいいとプラスに評価する教員もおります。それから,3番でございますけども,現行の指導要録だけでは,なかなか今度の調査書は対応が不十分だという不安を抱えている教員もおります。
 4番目にありますように,記入欄が弾力化されて,幾らでも書けるわけです。そのことによって,その生徒のことを全て記載できる,これはすごくいいことだと,そういう意見もございました。
 その一方で,5番ですけれども,生徒の学校の中での活動歴はある程度把握はできますけれども,学校の外での活動歴まで,どこまで把握できるんだという不安を教員は持っています。ボランティアなどは学校の外で行われていますので,学校の中だけでは分からない。しかも,調査書に活動期間を含めて書きなさいと今回指示がございますので,そういう細かいところまで,教員は把握する必要が今度は出てまいります。
 さらに,さっき委員もおっしゃってましたが6番目,調査者は公文書として現在作成しております。記載者の印鑑,そして,校長の職印,学校から出す場合,番号をとってきちんと一通一通どこへ出したかを記録を残しています。そういう調査書をこれから作成する上で,これは枚数が増えるわけです。その枚数が増えることによる不安,そういうことも教員たちは抱えております。
 7番にありますように,先ほども質問が出ましたが,調査書は担任が作成をしております。ですから,記載事項が増えることによって負担が増えるんじゃないか,そういう不安もございます。
 13ページですけれども,先ほどの備考欄,大きく増える欄でございますが,そこの表現について,こういう不安を考えています。
 14ページを御覧ください。大学が指定したことを記載するわけですから,同じ系統の学部・学科でも大学によって求められることが違う場合は,その都度全部作らざるを得ない。そう考えると,2番にありますように,出願直前に作成できるか,そこは不安だというのが2番です。
 それから,記載者が,大学の募集要項をしっかり読み込んで,大学が何を求めているか,そこをきちんと理解しないと書けないんじゃないかという不安もございます。
 それから,4番目,過年度生につきましては,その生徒を知っている教員が少なくなってしまう可能性もございますので,そういうときに大学が求めることを細かく書けるのかという不安もございます。
 それから5番目,私たち教員としては,何とか合格してほしいということからたくさん書く傾向が若干ございます。そういうことがもっともっと助長されるんじゃないかという不安がございます。それは現場の教員の今の不安です。どうすればいいかと,15ページでございますが,前回の資料を出させていただきましたが,何らかの形で電子化をせざるを得ない。電子化をしないと,情報を集めること自体が難しくなるんじゃないかと考えております。
 情報を電子化したときの不安を,16ページに載せさせていただきました。1番は,e-ポートフォリオ本来は,生徒の成長を促すためのものだという意見ですけれども,2番,3番,4番,5番,そういうことを教員は不安に思っています。特に5番ですけれども,現在調査書は発行したものを生徒が出願書類と一緒に大学へ送付しています。しかし,電子化に伴って,学校が調査書のデータを大学へ送信となりますと,高校にとってみたら大きな負担が増える,そういう意味でございます。
 それから,話題を変えまして,17ページです。主体性に関する評価ですけれども,1番目,これは現場の方々と話をしていて問題だと思ったのが,言葉の理解にまだまだ曖昧さが残っています。主体性等の評価というときに何を意味するか。黒丸2つ付けましたが,2つ目の理解をしている方がいらっしゃいました。身近な大学の先生でも,なかなか2つの丸が一致しませんでした。そういう中で,きちんとした理解がないままに進めていいのかという不安がございます。それから,主体性等の評価の場合には,能力が評価できる部分と,それから,資質の部分がございますので,それをどう評価するのか。そのことが難しいんじゃないかという懸念がございます。
 それから,3番目,これは読んだとおりでございますが,多様な人々と協働して学ぶ態度というのはどういうふうに,何を根拠に評価していいのか,高校の教師としてすごく迷うところでございます。
 18ページにいきますけれども,大学が,高校の教員が迷っている主体性等の評価について,どんなふうに判断されるのか是非教えてほしいし,今回の修正を考えたときには,総合選抜型とか,そういうものを増やす方が理に適っているんじゃないか,そういう意見もございました。
 それから,19ページですが,新学習指導要領に基づく生徒指導要録の案が出ました。先ほど委員から御説明がございましたけれども,新しい指導要録の案のところに,3の(5)でございますけれども,記述の簡素化という欄がございます。ですから,現行の指導要録よりも簡素化される案が示されております。
 20ページでございます。様式1の裏表がそれぞれ客観的な事実等に,様式2の表裏は客観的な事実ですから,様式2の裏,ここをもとに教員は調査書の様々な所見を作るわけです。
 そして,21ページに行きまして,裏面,具体的にこういうのがあるんですが,こういうことをもとに調査書,推薦書の記載が十分できるかということも,教員が不安に思っています。
 そうしますと,22ページに行きますけれども,「学力の3要素」を多面的・総合的に評価するという現在の大学入試選抜の流れの中で,多面的に評価するためには情報が必要です。その情報として調査書が位置付けられているわけですが,生徒指導要録の記述が簡素化されたときに,調査書だけその様式が増えるということはあり得ないと思っています。調査書の様式は簡素化されるんだと思います。そうすると,どこから情報を持ってくるか,どうやって集めるかという問題が多分出てまいります。さらに,今の入試選抜の1つの目的である大学入学後の教育に十分に生かすにはどうすればいいか,そう考えたときには,おのずと調査書,推薦書だけではなくて,入試選抜全体の電子化を考えて,そして高校の教員の負担も減らすし,そして,大学側も得たデータを入学後の教育に生かす,そういう仕組みを真剣に考えざるを得ないと考えております。
 そういう中で,私といたしましては,やはり調査書の電子化,そして,e-ポートフォリオ,そういう仕組みをきちんと作って,そして誰もが安心できる形で進めていくのが,多面的な評価には必要になってくるんじゃないか,そんなふうに考えております。
 以上,駆け足でございますが,意見にいたします。
【圓月主査】
 圓月です。柴原委員,どうもありがとうございました。貴重な御発表を頂いたものと思っております。
 それでは,御質問がございましたら,先ほどと同じように挙手のマークを押していただければと思います。よろしくお願い申し上げます。
 それでは,柴田委員から手が挙がりましたので,よろしくお願いいたします。
【柴田委員】
 柴田でございます。柴原先生,大変要領を得た御説明ありがとうございました。大変よく整理がつきました。
 特にお聞きしたいのは17ページでございまして,主体性等の評価の理解に個人差があるのではないかという御指摘,私も大変参考になりましたが,私が個人的に理解していたのは,主体性を持って多様な人々とということが主体性であろうという具合に考えていたんですが,先生,その下の方に,学力の3要素トータルが主体性等という具合で,私はこれは多面的な評価の方じゃないかというふうに整理していたんですけれども,こういう御意見は高校の先生方に主流なんでしょうか。
【柴原委員】
 いえ,主流というわけじゃなくて,要するに今回の予告をきちんと読み込んでいれば,多分誤解はあり得ないと思うんですね。ですから,予告をきちんと読んでなくて,文字面だけ見ていて誤解しているんだと思っています。例えば,主体性等の評価といったときに,高校も大学も一番悩むのは,主体性というのは,自分が何かしようという実態があるでしょうから,ある程度判断できるかもしれません。でも,そこに多様な人々と協働して学ぶ態度を主体性等といったときに,今,私たちが大学に出している調査書,そして推薦書等からどんなふうに判断するのかなというのが多分きちんと示されることが,高校にとっても安心だし,大学にとっても求められると思うんですね。
 ですから,この2つの黒丸のうち,上の黒丸の主体性等でよろしいんですけれども,きちっと読み込んでいない一部の教員の中にはまだまだ理解不足がいるので,そこは私たちがきちんと理解を深める努力は必要かなという感じがいたしました。以上です。
【柴田委員】
  どうもありがとうございます。我々も今後,この点を心して検討を進めていきたいと思います。どうもありがとうございました。
【柴原委員】
 ありがとうございました。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。それでは,川嶋委員から手が挙がりましたので,川嶋委員,よろしくお願い申し上げます。
【川嶋委員】
 川嶋です。1点申し上げたいと思いますが,先ほどの石崎委員の御報告も含めて,やはり高校側の方は,中教審の初中部会の評価のところでも言われているように働き方改革等を踏まえて,それから,教員がなかなか校外の生徒の活動まで把握しきれないということで,調査書に書く内容については,校内の諸活動である学習,それからクラブ活動,生徒会等に限定する。言ってみれば韓国の調査書である学生生活記録簿のように,高校側としてはかなり限定的に考えている一方で,大学側の方は多面的評価をしなければいけないということで,実際できるかどうかは別にしても,できるだけいろんな情報が欲しいという,少し――少しというか,かなり高校側と大学側の目指している方向性が違うということで,是非この会議でその辺の調整が必要だと思います。もう1点,柴原委員ではなくて巳波委員にお聞きしたいんですが,委託事業で調査書の電子化の送受信システムを設計されている際には,今,柴原委員が御懸念になっていたような,大学ごとに別々の調査書を作ってそれぞれの大学に送付するという前提なのか,それとも生徒1人には1枚しか調査書を作成せず,それを各大学が受け取るという設計なのか,どういう設計を前提とされているのかということをお聞きしたいと思います。
【巳波委員】
 じゃあ御指名ですので,巳波から。
【圓月主査】
 巳波先生から答えていただいた方が流れがいいと思います。そのあと柴原先生からコメントがありましたらいただきます。
【巳波委員】
 分かりました。どちらも対応できるようにはしております。お一つの調査書を複数の大学に同じように使い回すと言うと何なんですけれども,使うこともできますし,一つ一つ別の調査書を作ることも可能な,両方可能なようにシステム的には設計しております。
【川嶋委員】
 すみません,川嶋です。ちょっと柴原先生のお答えの前話させてください。現行の調査書は,建前としては同じ調査書が志願先の大学に送付されるということですよね。志願先に応じて調査書の内容が変わっているということは,建前的にはあり得ないということだと思います。巳波委員のお答えでは,システム上は両方対応できるということでしたけれども,現行の調査書の在り方との,今後新しい調査書が電子化された場合の考え方の整合性の検討をしていく必要があるんじゃないかということです。ありがとうございました。
【圓月主査】
 柴原委員,よろしくお願い申し上げます。
【柴原委員】
 現行の調査書ですと,備考欄とございますけれども,その備考欄にこんなことを書いてくれと指示のある大学もございます。その場合には,その大学の指示に基づいて書くことがございますが,一般的には特記事項なしというのが多いかなという感じがしています。ですから,1枚の調査書をコピーして,複数の大学に出すというのが多分現状多いんじゃないかなという感じがしています。
 今年から始まる様式につきましては,備考欄にわざわざ大学が指定する特定の分野において特に優れた学習成果を上げたことを記載することができると書かれております。ですから,大学がそこに,こんなことを書いてくれというのがたくさん指定されますと,高校としてみたら,それに応じたものを作らざるを得ないんじゃないかなという感じがしております。
 それから,最初に川嶋委員おっしゃいましたように,多面的に評価することは,子供たちにとってすごく大事なすごくいいことだと思っています。私たち高校教員の負担は増えるかもしれませんが,最終的に子供たちが自分がやったことを評価され,それが大学に入って,その学習に生かされれば,そんないいことはないと思うんですね。そのために様々なハードルは越えなくちゃいけませんけれども,それを私たちは工夫をして何とかする立場なんじゃないかなと理解しています。以上です。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。ほかに御質問はございますでしょうか。そうしたら,巳波委員の方からご発言をいただきます。
【巳波委員】
 済みません,ありがとうございます。16ページのところで,調査書データを高校が大学に送信することになった場合は負担が増えるということを記述されておりました。現在開発しております電子調査システムでは,高校が提出するのではなくて,生徒が提出する形となっております。つまり,先生が調査書データをアップロードしてくれると,それを添付して高校生が,生徒自身が大学に提出するという形となっております。そのときに正しく出願先の大学に行くものかどうかの自動的なチェック機能も含まれておりますので,そういう意味では,高校の先生方の負担は逆に下がるんじゃないかなというふうには考えております。以上,コメントです。ありがとうございます。
【柴原委員】
 ありがとうございます。
【圓月主査】
 何かほかには御意見がございますでしょうか。
 調査書をどのように書くか,またどういうふうな形で提出するかとかに関しましては,川嶋委員から,やはりこの会議の中でさらに議論を重ねていくべきじゃないかという御提言もありました。それも重く受けとめながら,また議論を続けていきたいと思っております。
 それでは,柴原委員,どうもありがとうございました。
【柴原委員】
 ありがとうございました。
【圓月主査】
 それでは,その次に,長塚委員から御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
【長塚委員】
 長塚です。私,前回欠席だったのですが,その際,書面意見を出させていただいております。前田入試室長さんから要点を御紹介いただいたようなんですが,今回はその書面意見に沿って説明をさせていただければと考えております。よろしくお願いいたします。
 ところで,この会議の趣旨は,大学入学者選抜における多面的評価の在り方について,特に調査書の電子化方策などを論議することと承知しています。そこで私からの意見は,大きく2点。電子化方策に関する前提と,同じく電子化方策に関する課題についてです。
 そこで,まずスライド1の電子化方策に関する前提です。要点はアンダーラインのとおりで,1つ目は今日,生徒の資質・能力を多面的・総合的に評価して育成するということが不可欠になっているということ。そのため多くの情報を必要としますから,2つ目に,電子的方策を用いずに,資質・能力の多面的・総合的な評価,あるいは育成というのを図るのは困難であるということ。そして,多くの情報を用いた入試をするために,3つ目に,入試の形態の多くを一般入試からAO入試(総合型選抜)に移行する必要があるというふうに考えております。
 そこで,それらの前提の現状について,少し確認をしたいと思います。まず,スライドの2です。これは多面的・総合的な大学入試について,文科省が当初示していたイメージ図です。学力3要素に対する評価方策がいろいろあるということを分かりやすく示していると思います。ところが,このマル1の大学入学共通テストに係る記述式問題とか,あるいは英語の外部検定のことに論議が集中して,結局のところ,それらはマル2の個別試験で行うとか,あるいはマル3の資料として直接提出するという,いわば従来の方式でいくことになったわけです。そして,今改めて検討されています。しかし,このマル3の調査書の改善の利用がどう進むのか,とりわけ主体性等の評価方策については,まだ不透明なままです。大学の方でも,どのように調査書などを活用するか,まだ決めかねているのではないでしょうか。当初はこの調査書の電子化方策によって,主体性等の評価がしやすくなるのではないかと思われていましたが,今後2年間は従来どおりの紙ベースですから,調査書による多面的評価はしにくいかもしれません。さらに今年は,高校も大学も臨時休校などが続いています。冒頭に御紹介がありましたが,この間の事情について考慮を要請する通知が,5月14日付けで文科省から発出されたのはよかったと思います。
 次に,スライドの3ですが,入試区分の割合は変化するでしょうか。推薦,AO入試による入学者が私立大は半数を超えていますが,国立大はまだ十分とは言えません。国立大学協会による方針だったと思いますが,多面的評価をするために,推薦やAO入試の割合を3割にするという目標は,今後どの程度進むのでしょうか。
 そこで改めて注目したいのは,国大協が個別入試における面接や調査書等の活用は実施段階だと言っていたことです。前回の会議では,公立大学の様子を柴田先生が御報告されましたけれども,その資料を拝見しても,主体性等を見るには面接が必要で,その際,調査書も参考にするといった意見が多かったように思います。医学部の場合には一般入試でも面接は必須になっていると思いますが,高校入試で,あるいは就職試験でも,面接のない選考は考えにくいもので,とりわけ主体性等を見るというのであれば,一般入試でも面接をする,そういう対応は大変であっても望ましいのではないかと思われます。そうすると一般入試であっても,それはAO(総合型選抜)入試に近づいていくことを意味しているわけです。もちろん従来の,学力検査をしないAO入試という意味ではありません。
 スライドの4は,それらのことをさらに詳しく確認したく,取り上げたものです。もう1年以上前の時点での調査結果になりますので,令和3年度の入試について,方針をまだ決めかねている大学が多かったのは仕方ありません。それでも左側の一般入試について,調査書も利用するとしている大学がやはり多いこと,それから,面接も考えている大学が多いことが見て取れます。もっとも,例えば医学部だけが面接をするということだけであっても,ここでは1校としてカウントされていると思いますので,一般入試の受験生のどれほどに適用されるのかは分かりません。
 一方,右側のAO入試では,面接や調査書が順当に用いられようとしています。しかし,生徒本人による活動報告書が意外なほど考えられてないようです。これは少し残念で,下の方にあるポートフォリオの活用などがごくわずかであることと共通するものです。特にAOでは,判定のための生きた情報は,高校教師からよりも,生徒本人から得るべきと考えます。
 さて,次にスライド5の大きく2つ目で,電子的方策に関する課題についてです。今まで述べた電子的方策の前提では,多面的・総合的評価が必要であること,そのためには生徒の様々な情報が必要であり,電子化が欠かせないこと。そして,それらを総合的に判定するには,面接なども行う総合型選抜でなければできないということを申し上げました。
 次に,それらの前提のもとで,本会議の眼目でもあり,また研究開発中である調査書などの電子化方策に関して,その課題について述べたいと思います。具体的にはアンダーラインのとおり,1つ目は,電子情報の授受システムの安全性について。2つ目は,調査書の記載事項,とりわけ新学習指導要領に対応する新規の調査書の記載事項について。そして,最後の3つ目に,生徒自身からの情報を重視する必要性についてです。
 そこで,まずスライド6です。前回,関西学院大学の巳波先生から,JePをもとにといいますか,JePと統合的に開発されている電子調査書システムについて,詳しく御説明がございました。私からは高校現場から見えているといいますか,あくまでも私からかもしれませんが,高大間の入試業務で,電子化がどのように展開されつつあるかを確認したく,このようなイメージ図にしてみました。
 まず,出願については,様々な民間システムを用いて,多くの大学で既に電子化が稼働していると理解しています。さらには同じく前回,西郡先生から御報告いただいた佐賀大学では,JBSシステムによって,単に出願情報というより,生徒のポートフォリオ的な活動情報を入試に活用しておられます。そしてまだ一部ですが,JePを活用する大学も既にあるわけです。
 ところでこのイメージ図では,この調査書等について,先ほども話題になりましたが,高校から大学に提出するような描き方になってしまいましたが,高校は生徒に対して発行して,生徒自身から大学に提出することになるわけです。その点,巳波先生から御説明のありましたシステムでは対応されておりました。その上でなお,授受システムについては,安全性の確保が極めて大切だと考えています。何より調査書については,各高校の校務システムで,指導要録などによって既に電子的に作成しています。ついては,そのままのフォームで電子的に発行されて,安全に大学に提出されることが基本であると理解しています。ですから,調査書の各項目のコーディングがあればそれで十分といいますか,シンプルなシステムにしていただくこと,そして,その授受システムにはデータを蓄積しないようにすることが,専門的には難しいと言われそうですけれども,肝要だと思います。
 次に,スライドの7です。そもそも調査書の記載といいますか,入力事項についての確認です。とは言いましても,本格的に電子化される次の段階の調査書というより,まずはこの夏過ぎから始まる入試で用いられる調査書の確認です。柴原先生からも御説明があったのですけれども,3年前の予告ということで,文科省から出されている様式です。予告という表現は,この夏頃には,例年ですと6月初旬には実施要項が確定するというので仕方ないのでございますけども,この調査書に対応すべく,各高校では準備しています。この予告が出てから,指導要録の指導上参考となる事項の欄は,既に校務システムを変更済みであると思います。その記載内容は,具体的には,先ほど石崎先生からも幾つか記入例を御紹介いただきましたが,そもそも端的にという方針が出ていますので,例えば留学,海外経験などという事項が今回新しく加わっていますけれども,その期間と行き先,現地での成績などを簡単に記載するようなことが考えられます。つまり,全体としての枚数制限がないとしても,多くは書けないと思います。
 一方,枚数制限がないということでは,大学や学部ごとに異なる内容を求められるのは,実は相当に大変です。それは,推薦やAOに限定していただけたらありがたいなというふうに思います。もっとも推薦書への記載を求めるという方法もあるでしょうし,生徒自身の活動報告書なども,もっと活用していただきたいものでございます。それでもこの新しい調査書は,今までのように裏表の両面1枚という構成にはなっていません。まだ紙ベースですから,ホチキスでとめるなどして間違わないように発行しなければなりませんし,大学の入試業務上でも,相当煩雑になる気がします。
 次に,スライドの8ですが,次期学習指導要領は,高校では2年後から学年進行で始まるわけです。と同時に,新指導要録になりますので,調査書もまたそれに対応する必要があるわけです。次期学習指導要領は,資質・能力の3観点について評価をすることをベースに構成されています。ですから,主体性に関しては,全ての教科目の学習評価の一観点として,主体的に学ぶ態度として指導要録に記載されることになっています。大学入試における学力3要素目というと,主体的に多様な人々と協働して学ぶ態度と表現されていますが,学習評価の観点では,主体的に学ぶ態度であり,学校教育法で言うところの学力3要素に近いものになっています。なお,ここでの評価は目標準拠であって,共通テストのような集団準拠の相対評価ではないことも強調されています。
 スライドの9は,新指導要録の参考様式について,具体的なポイントを表示してみました。このように,科目別に3観点について,A,B,Cで評価することになっています。一方特別活動については,何をしていたかというよりも,各学校が重視する観点についての評価で優れている場合〇を付す程度です。また,指導上参考になる事項について,これはこのように学年別の大きな空欄があるだけで,現在の参考様式のように3区分,あるいは新調査書では6区分に今回分かれるわけですが,そういう区分で記載するのではなくて,全体的に要点を箇条書きにするなど,記載事項を最小限度にすることとしています。資質・能力ベースの評価であることが大きな変化ですけれども,教科目の観点別評価だけでも相当な仕事量になります。今回改まる調査書では,指導上参考となる事項が6区分ですが,このままの調査書を使うとすると,新しい指導要録もそれに合わせるようなことになりかねないわけです。ですから,指導要録以外の生徒の情報については,やはり生徒自身の活動報告書や,それらを電子化した生徒のポートフォリオなどにより,生徒自身が提出することも必要になると考えるわけです。
 そのまとめが最後のスライド10です。新学習指導要領と大学入試との関係について,文科省から現在示されているのは,入学者選抜でどのような情報を扱うのかよく検討してほしいということ。調査書だけに頼るのではなくて,志願者生徒本人の報告書なども用いるべきではないかというわけです。
 そこで私は,下欄に記したのでございますが,1点目は,これからの大学入試は,資質・能力についての多面的評価をすべきであること。2点目は,総合型選抜などの丁寧な入試を行う際には観点別評価も意味を持つわけですが,現在の一般入試では,さらなる形骸化を招く恐れがあるということ。そして3点目に,教科目の学習活動だけでなくて,特別活動などを通して,各高等学校が育成する生徒の資質・能力について,各大学が受入方針で求める資質能力であるかを見きわめるマッチングが,これからの多面的評価をする大学入試・高大接続ではないかと考えております。
 以上でございます。
【圓月主査】
 圓月です。長塚委員,どうもありがとうございました。これまでの議論の経緯と,具体的な問題点などについての貴重な御指摘があったものと感謝しております。
 それでは,委員の方から質問や御意見ございましたら挙手のマークを押していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。では,星野委員,よろしくお願い申し上げます。
【星野委員】
 星野でございます。長塚先生,丁寧な御説明ありがとうございました。私,国立大学の方から,大学協会の方から出ておりますので,少し長塚先生の方で御紹介がありました件について,私の知っている範囲でお答えをさせていただきたいと思います。
【長塚委員】
 ありがとうございます。
【星野委員】
 1つは,先生から御指摘のありました国立大学の入試改革というところで,これは将来ビジョンのアクションプランという中に,御指摘のように推薦入試とかAO入試の募集人員の割合を,全募集人員に対して大体3割を目標に目指すというような記載がございました。令和2年度では,残念ながらまだこれは17.8%ぐらいですか,まだ3割には届いておらないというような現状ではございます。ただ,その下に,先生も御指摘にありました個別入試における面接等ですね,これも全ての大学を調べているわけではないので,割合は明確には申し上げられないんですけれども,いわゆる医学部以外の学部においても,面接を取り入れ出している学部もございます。確かに総合選抜とか推薦ほど面接に時間をかけられるというわけではございませんが,多面的な評価をする上では,やはり面接等を行って,ちゃんと資質・能力を見たいというのが,私たちの今度の入試改革におけるスタンスでございます。そういった意味では,実際の面接であるとか,その面接にかわるような手法を用いて資質・能力の評価を一般選抜の中で行っていくというような傾向は出てきつつあるというところでございます。その点については,また国大協の方でちょっと調べさせていただきまして,データとして示させていただければと考えております。
【長塚委員】
 ありがとうございます。
【圓月主査】
 長塚委員,何かコメント等はございますでしょうか。星野委員からは,補足していただいて本当にどうもありがとうございました。
【長塚委員】
 心強く思っております。一般選抜でもそのような動きがあるということ,受験生にとっても早くそういうことを理解してもらいたいなと思っております。ありがとうございます。
【圓月主査】
 ありがとうございました。
 同じく国立大学の事情にもお詳しい西郡委員の方からも手が挙がっておりますので,よろしくお願い申し上げます。
【西郡委員】
 西郡です。分かりやすく説明していただいてありがとうございました。新学習指導要領の話が先ほどから出ていますけれども,先生にお伺いしたいのが,高校の方において,主体的に学習に取り組む態度というものを,今後評価しなければいけないと。いろいろなガイドライン等出ておりますけれども,こういったものは高校側において,ある程度技術としてそういったものを評価,今,検討されているのかもしれませんけれども,しっかりと評価できる見込み,どういった状況なのかということをお聞きしたいのが1点と,仮にこれが調査書にA,A,Bとか,いろいろなパターンが出てくると思うんですが,一般入試で主体的に学習に取り組む態度,ここの部分を一般入試で評価するというふうになった際に,先生としてはどういうふうにお考えになられるのかということをお聞きしたいんですけれども。よろしくお願いします。
【長塚委員】
 そうですね,例えば,私の学校の中でもいろいろと検討していること高校の全体でどういうふうにこれが議論されているか,まとまりつつあるか,まだ調査もされていませんので定かなことは分かりません。ただ,大学入試の改革が先にあって,これは次の課題になっているので,多くの高校の先生の話を聞くと,とても手が回らない。公立学校の先生においても同じような意見のようでございます。
 しかし,指導要領の中での観点別評価というのを,高校でも今までもしていいことになっていたんですが,これからはしなければならないということになっているわけですので,大きく違ってくる。そうすると,観点別評価を我々は今まで余り考えてなかったというのが正直な実態だと思うので,基本からの手直しといいましょうか,資質・能力ベースの3観点について,特に主体的に学習に取り組む態度とは一体何なのかということを,今,本当にいろいろな学校で議論し始めようとしているところではないか,まさにそんな段階ではないかと思います。
 大学入試でこれを使われるようになればいいなと思っているんですけれども,各学校ごとに観点の基準といいいますか,どんなふうに,どんなことができるようになっている場合に,主体的に学習に取り組む態度をAとするのかBとするのかという,具体的なルーブリック基準のようなものがない限り,これは判定できないというふうに考えていますし,そういう方向に多分なるのだろうと思っています。しかし,それにしても各学校ごとにルーブリック基準は違います。そこで実は,今回の入試選抜要項の予告でも,特に学校推薦型や総合型選抜を中心に,各学校,高校ごとの運営方針を大学側が求めることができるという予告が1項目あったんです。ですから例えば,学校の運営方針というところに,本校においては主体的に取り組む態度の評価は,こういうルーブリック基準でA,B,Cの評価をしていますというようなことを示さない限り,各大学においても,このA,B,Cの評価の意味を受けとめにくいのではないか,そんなふうに思っております。
【西郡委員】
 ありがとうございました。
【圓月主査】
 ありがとうございました。
 それでは,柴田委員から手が挙がっておりますので,よろしく御質問をお願い申し上げます。
【柴田委員】
 柴田でございます。長塚先生,どうもお詳しい御説明ありがとうございました。私も今まで不明でよく分からなかったことがあって教えていただきたいんですけれども,9ページのところです。生徒の指導要録が今後変わって,観点別にA,B,C評価を行うということで,このA,B,C評価の中には,8ページを拝見しますと,主体的に学習に取り組む態度というのも評価の中に込められているという理解なんですけれども,最終的に大学への調査書として御提出いただくものの評点としては,どれが来るんでしょうか。A,B,C評価が大学の方でも把握できるんでしょうか。それとも最終的に,今,5段階評定になっておりますけれども,そういう評定値が各科目ごとに来るということになるんでしょうか。お教えいただければと思います。よろしくお願いします。
【長塚委員】
 まさにその点については,大学入学者選抜方法の改善に関する協議の協力者会議で,次の調査書をどのように設計するのかということが議論されるのかなと思っておりますが,この最後のスライドでも御紹介しましたように,文科省さんの方も観点別評価をそのまま大学入試の調査書に反映していいのか,そこはよく議論して検討してくださいという姿勢だと思うんですね。つまり,観点別評価を調査書に反映する,例えば電子的にやるということであれば,それ自体はそれほど難しいことはないと思います。校内システムでA,B,Cが記載されていれば,そのまま載せられるとは思うんですが,それを本当に調査書に反映するのかどうか,ここはこれからの議論だろうと思っています。
 ちなみに高校の指導要録上の評価について,評定をつけるかどうか,最終的にそこも随分議論になったというふうに聞いております。むしろ観点別評価だけ,3観点の評価だけが要録に記載されて,評定化はしないという,学習評価の専門家の意見が多かったけれども,大学入試でやはり評定がないと使いにくいのではないかというようなこともあって,評定も最終的につけられることになったように,私は受けとめているんですが,そんなことでよろしいでしょうか。
【柴田委員】
 はい。大変ありがとうございました。
【圓月主査】
 ありがとうございました。観点別評価の問題も,この会議においてはやはり重要な論点の1つだと思っております。
 それでは,巳波委員から手が挙がっておりますので,御質問よろしくお願い申し上げます。
【巳波委員】
 先生,ありがとうございました。大変詳しく分かりやすくまとめていただきまして感謝です。
 先生,1点確認がございます。5ページですね。データベースを持たずに高校から大学に提出する仕組みであるということが肝要と書かれておりますけれども,このデータベースを誰がどのように持つかというテクニカルな話が先生は言いたいわけではなくて,安全にデータを持つということが,管理することが大事だということが先生の主眼だと理解してよろしいでしょうか。
【長塚委員】
 はい。先ほど石崎先生との御議論の中でも,組織的な問題と,いわゆるシステム的な問題とありましたが,組織的な問題としての方が大きいのかなとは思っております。具体的な電子的なシステムの問題については,私は余りよく分かりませんので,申し訳ございませんが,そんな意見でございます。
【巳波委員】
 ありがとうございます。
【圓月主査】
 ありがとうございました。このあたりについては,技術的な問題もございますので,またいろいろと御報告などを頂けるものと思っております。
 それでは,川嶋委員からも手が挙がりましたので,よろしくお願い申し上げます。
【川嶋委員】
 川嶋です。1点だけ,現状の確認をさせてください。先ほど長塚委員のスライドの8ページの一番下に注記があって,各教科における評価は,学習指導要領に示す各教科の目標や内容に照らして学習状況を評価するもの(目標準拠評価)であると書いてあるんですが,実際には学習指導要領ではなくて,各高校が定めた目標に対する生徒の評価というふうに私は理解しているんですけれども,もし学習指導要領に準拠して達成度評価されていれば,かなり各高校の調査書に書かれている評定,あるいは評定平均値というのは同一基準上のものとして入試でも使えると思います。しかし,私の理解だと,各高校ごとに目標が違っているので,一律には使えないという理解なんですが,それでよろしいでしょうか。
【長塚委員】
 高等学校も入学者選抜があって,同様に生徒の学力のいろいろな違いもあった上での高校でございますので,そこで同じ目標で設定する,同じ基準で設定することはやはりなかなか難しいわけですので,各学校ごとになるのだろうと思います。ただ1点,資質・能力ベースといったときには,特に学ぶ意欲,学びに向かう態度というのは,これは校内でもよく議論になるんですが,学力の3要素目というのは非常に重要で,その辺を今まで以上に重視してほしいということは言えるんだろうなと思います。以上です。
【川嶋委員】
 ありがとうございました。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。ほかには長塚委員に御質問はございますでしょうか。
 それでは,一度ここで長塚委員への質疑応答を……。
【長塚委員】
 圓月先生,1つよろしいでしょうか。
【圓月主査】
 はい,どうぞ。
【長塚委員】
 先ほど巳波先生から御確認がありましたシステムの問題なんですけれども,これについてちょっと私もよく分からないながらも若干懸念しておりますのは,担い手のデータベースを持たずにというところですけれども,今,JePのシステムをもとに作られようとしている調査書の授受システムなんですけれども,JePが相当しっかりと生徒の情報を持つデータベースになっていると思うんですね。それと学校が調査書として提供するデータ,そこを余り一体化する必要はないのではないか。私は基本的に学校側の情報はできるだけシンプルに,生徒の情報は生徒からというところをより明確にしていく方が安全ではないかなと思っているということだけは,ちょっと補足したいと思います。もし巳波先生から何か御指摘,補足があれば,伺えればありがたいと思っています。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。巳波先生,何か補足コメントございますでしょうか。
【巳波委員】
 分かりました。まず安全にデータを持つということが大事であるということ,その先生のお考えはよく分かるところでございます。
 それから,電子調査書システムがたくさんのデータを持たなくてもよいのではないかというところですけれども,それは1つのサーバーに全部のデータを集めるという形だけではなくて,様々なやり方があります。ただし,データが各高校にあるという形になりますと,まずその保持をするための稼働やコストが高校側にかかってしまいます。なので,1つのところ,組織といいますか,そういうところがまとめて管理する方が効率的かつ安全ではないかというふうに考える次第でございます。集めた後,さらにそれを漏れないように一元的に管理するということは,当然大事なことだと考えております。
【長塚委員】
 ありがとうございます。
【圓月主査】
 ありがとうございました。この問題については,また改めていろいろな形で時間をとらせていただくことになるかと思っております。
 本日は,石崎委員,そして柴原委員,長塚委員から非常によく準備された発表を頂き,しかも時間も守っていただき,ありがとうございました。
 ほぼ予定どおり進んでおりまして,15分程度時間が残っております。そこで,3人の方に総合的な質問でも結構ですし,また発表いただいた委員から,別の発表者に対しての御質問でも結構です。御質問等あれば挙手をして,よろしくお願い申し上げます。
 それでは,柴原委員からよろしくお願い申し上げます。
【柴原委員】
 大学の先生方に是非御意見を伺いたいんですけれども,主体性等の評価について,私見でも結構ですので,調査書ベースでどこまで可能とお考えなのか,ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。簡潔で,また要を得た質問かと思います。大学関係の先生,何かございましたらお願いできるでしょうか。私も一応大学関係ではあるんですが,主査が先頭を切って発言するのもいかがかなと思いますので,他の大学関係の先生にご発言をお願いします。そうしたら,星野委員はこのお答えということでよろしいでしょうか。では,星野委員からよろしくお願いします。
【星野委員】
 柴原先生,御質問ありがとうございました。大学の方で主体性評価というのが,調査書によってどこまでできるかということかと思います。現行の調査書に基づいて,これは私どもの大学の方の,これまでの入試の結果とか,それから,入学後の学生のGPAとかの追跡調査の結果からでございますけれども,評定平均値をちょっと利用をしようと考えています。と言いますのは,これは高校のレベルによらず,いわゆる学習成績概評ですね,これが丸AであるとかAであるとかという学生さんは,入学後もGPAが高いという相関が明確に出ております。これは一概に全ての大学でそのような傾向というふうなことは言えないとは思いますが,少なくとも本学においてはそのような傾向が明確に出ているというようなことで,現行の調査書であれば,学習成績概評等を利用していこうかなというふうな考えでございます。
 今度新しい学習指導要領になったときには,前々回の会議でもちょっと申し上げさせていただいたんですけれども,やはり観点別の評価というところを見させていただけないかなと考えております。ここも高校によってそれぞれ目標としているところが違って,絶対的な評価なので,相対的な評価はできないであろうというふうな,もちろんそういう考えもあるかと思いますけれども,少なくともこれまでの私どもの大学での調査の結果を勘案すれば,観点別評価の主体性のところで,恐らくA評価という学生は,入学後もきっちりと学習に向き合ってくれるだろうというふうな考え方でございます。
 それから,もう1点は,新しい学習指導要領の方で,これもちょっと期待をしているというところが,特別活動のところでございます。これも高等学校によってそれぞれ観点を設けるということになっていますので,一概に使える使えないというのはまだ早計かと思うんですけれども,新しい学習指導要領では,生徒会活動であるとかホームルームであるとか,そういうようなところでも集団の中での自分の役割とか,あるいは他者と協働して問題解決に当たるというような態度を育成するというような目標が掲げられておりますので,そこでちゃんとそういう評価というものが得られた受験生については,一定の評価をしていいのではないかなと考えております。以上です。
【柴原委員】
 ありがとうございました。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。
 手を挙げていただいた順番が前後してしまって失礼しましたが,柴田委員も手を挙げていただきましたので,よろしくお願い申し上げます。
【柴田委員】
 柴田でございます。柴原先生の御質問に関してでございます。我々も長塚先生のお話のように,AOとか推薦で主体性を面接を主にしてみるというのは今までも経験があるんですけれども,今後,我々に求められているのが,一般入試でいかにして主体性というのを測るかというので,今苦慮しておりまして,先生御質問のように,調査書がそういうものに活用できないかというところで,以前よりデータベースとして調査書がたくさん全受験生から参りますので,前回も申し上げましたけれども,キーワード等を拾い上げて,AI等でミキシングして分析ができるようなことができないかなという具合に考えている次第でございます。非常に難しい,当面の大きな課題ではないかと思っております。
 一方,一般入試で面接もやるべきではないかという御意見がありまして,私も以前,所属していた学部では面接をやっていたんですけれども,これは医学部で非常にマンパワーが多うございますので,かろうじて実施できておりまして,特に文系等でST比,スチューデント・ティーチャー・レシオが大きいところでは大変な負担になるのではないかなと懸念しておりますので,できれば調査書等がそういう主体性を含めた総合的な判定の資料になるような方法が開発いただければなと思っている次第でございます。お答えにはなっておりませんけれども,現状を御説明させていただきました。以上です。
【柴原委員】
 ありがとうございました。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。私が付け足すまでもないようですが,この問題については,アドミッション・ポリシーとの関係で大きな多様性があるので,一概に答えにくいというのもございます。また,入試業務に関しましては,入試実施から合格発表まで,特に私立大学は非常に複雑なスケジュールの中でやっておりますので,その中でどこまで対応できるかという実務的な問題もあります。でも,前向きに考えていくべき問題だというふうには思っております。
 何か補足していただける点がございましたら。よろしいでしょうか。
 そうしたら,石崎委員から挙げていただきました。石崎委員,よろしくお願い申し上げます。
【石崎委員】
 1つ確認しておきたいことがあるんですけれども,参考資料1のいわゆる予告のところの資料で,後ろから見ていただいた方が早いかと思うんですけれども,後ろの方に14番で,今話題になっていた備考の欄の記載についてのところがあると思うんですけれども,いわゆる記入上の注意事項等についている新旧対照表の表になっているものの14番のところ,お分かりになりますでしょうか。備考の欄の書き方,今,長塚先生のお話の中にも出てきたかと思うんですけれども,備考の欄はこう書いてあるんですよね。「備考」の欄には,大学の希望により当該大学の学部等に対する能力・適性等について,特に高等学校長が推薦できる生徒についてはその旨記入することとなっているんですよ。だから,ここの記載について,いわゆる一般入試で全部みんなが平等に等しく書かれるかということについては,ちょっとこの記述だと懸念があるんですけれども,この欄についてはどういうふうに捉えておけばいいんでしょうか。
【圓月主査】
 どなたが答えてくださる問題なんでしょうか。事務局で何かお考え等はございますか。このあたりの記述については,お時間をいただき,どういうふうなものなのかということをちょっと確認させていただきます。前田室長の方から手を挙げていただいているでしょうか。それでは,ちょっと差し障りのない範囲で,ご説明をお願いします。
【前田大学入試室長】
 すみません,今,石崎先生からお話がございました14の備考欄でございますけれども,先生から御紹介あったとおり,大学の希望により,能力・適性,特にこれがあるんだということを校長が推薦できる生徒についてはその旨記入するということでございますので,それは個々の生徒によってその旨記入するものがあるないということは分かれると思いますので,まさに今ここに書いてある表現どおりの理解ということで,我々としては入れているところでございます。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。御指摘の点も含めまして,関連の問題がございましたら検討させていただきます。
 ほぼ時間が参りましたけれども,あとお一人ぐらい御質問いただこうと思えばいただけると思うんですけれども。それでは,川嶋委員から,最後に手を挙げていただきましたので,最後簡潔によろしくお願い申し上げます。
【川嶋委員】
 前回もたしか少し触れさせていただきましたけれども,調査書の活用について私が務めるセンターで試行的にやっている結果によれば,先ほど主査からもお話がありましたけれども,大学がどういう人を採りたいかということが明確で,かなり具体的に定義されていると,調査書に書かれた記載内容を分析することによって,大学が採りたい人材との整合性があるかないかの判定はかなりできるのではないかということが分かりつつあります。ただ,あくまでもこれは研究ベースですし,実際に最終的にAIを使って入学者を決めるというのは,これは恐らく受け入れられないことですので,あくまでも参考程度の資料として記載内容をきちんと見ることによって,一般選抜でも活用できる可能性はあるのではないかと思います。面接の件ですけれども,柴田委員の方からお話がありましたが,もし一般選抜で面接を取り入れると,恐らく足切りが増えると思います。物理的に面接できる数は限られていますので,足切りが大量に発生するという恐れもありますので,その辺のメリット・デメリットというのも十分考慮しながら検討が必要かなと思います。以上です。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。多面的評価に関しましては,川嶋委員が先端的な御研究をなさっておられますので,それがまた実際の現場の方にどういうふうに生かせるかということも,またこれから検討していきたいと思っております。
 それでは,ほぼ予定の時間になりましたので,本日の第3回協力者会議はここで閉会とさせていただきます。次回以降の会議については,事務局の方から報告をしていただきます。その前に私から1点ご相談させていただきます。
 次回以降の本協力者会議の前身である,大学入学者選抜方法の改善に関する協議における電子調査書等ワーキンググループにおいて検討を行っておりました,JAPAN e-Portfolioの運営許可に係る審査を踏まえまして,本年3月,文部科学省より一般社団法人教育情報管理機構に対して,条件付きで運営を継続許可することを通知しておりました。このたび当該機構から,2019年度決算報告や事業報告等が提出されましたので,次回以降の本協力者会議において,改めて運営許可に係る審査を行いたいと考えております。
 細かい点につきましては,私と副主査の川嶋委員のお知恵もかりながら,事務局で調整させていただこうと思っておりますけれども,そのようなことでよろしいでしょうか。
 それでは,御了承いただいたものとさせていただきます。本日の会議終了後,機構から提出されました資料を各委員にお送りさせていただきます。
 最後に,事務局の方から御報告をよろしくお願い申し上げます。
【小川大学振興課専門官】
 事務局でございます。第4回目の日程につきましては,委員の先生方の日程を確認の上,決まり次第御連絡させていただきます。また,今後の会議の開催形態につきましては,情勢の推移を見ながら,検討させていただきます。
 本日,時間の関係で言い足りなかったことなどございます場合には,事務局までメール等で御連絡をお願いいたします。
 皆様,本日は御多忙のところ,誠にありがとうございました。以上でございます。
【圓月主査】
 どうも会議の進行に協力いただきまして,私からも御礼申し上げます。またこれからもよろしくお願い申し上げます。
 

―― 了 ――

 

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