大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議(第2回)議事録

1.日時

令和2年4月17日(金曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省15階特別会議室

3.議題

  1. 今後の進め方等について
  2. 委員からの意見発表
  3. 自由討議
  4. その他

4.出席者

委員

(有識者委員)圓月主査、川嶋委員、髙井委員、垂見委員、井上委員、石崎委員、明比委員、西郡委員、星野委員、牧田委員、巳波委員、柴原委員、柴田委員

文部科学省

伯井高等教育局長、森田文部科学戦略官、角田文部科学戦略官、西田大学振興課長、前田大学入試室長 他

5.議事録

【小川大学振興課専門官】
 圓月先生,時間になりましたので,進行をお願いいたします。
【圓月主査】
 承知しました。定刻となりましたので,ただいまより第2回大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議を開催いたします。
 本日の運営形態及び出席者等について事務局から御報告をお願いいたします。
【前田大学入試室長】
 本日の会議でございますけれども,大学入試室長,前田でございます。どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます。本日の会議,新型コロナウイルスの感染拡大の状況を踏まえまして,ウェブ会議での形にさせていただいております。委員の先生方におかれましては,本日御出席をいただきまして,誠にありがとうございます。
 この協力者会議につきましては,原則として公開で行うこととしておりまして,今回,ライブ配信での公開とさせていただこうと思いまして,後日,議事録につきましてはホームページに掲載することといたしたいと思いますが,そのような進行をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは,第1回目の会議に御欠席であった先生を御紹介させていただければと思います。
 柴田洋三郎先生,公立大学法人福岡県立大学理事長・学長先生でございます。よろしくお願いいたします。
【柴田委員】
 よろしくお願いいたします。
【前田大学入試室長】
 続きまして,柴原宏一先生,前茨城県教育委員会教育長,この4月から茨城大学の特命教授に就かれておられます。よろしくお願いします。
【柴原委員】
 よろしくお願いします。
【前田大学入試室長】
 本日,田中先生,長塚先生が御欠席です。今回の議事,遠隔ということでございますので,ライブ配信を円滑に行わせていただく観点から,御発言に当たっては,なるべくはっきり,それから,ゆっくり御発言を頂ければと思っております。それから,発言のたびにお名前をおっしゃっていただければと思います。また,資料を参照する際に当たりましては,資料番号,ページ番号,該当箇所をお示しいただければと思います。
 また,御発言に当たりましては,先生方の画面上,右下でしょうか,「手を挙げる」というボタンがあろうかと思います。それを押していただきますと,こういう形に今なりましたね。それで,発言終了後はマイクをミュートにしていただきまして,そういった大変事細かなことでございますけども,御配慮いただければありがたいと思っております。大変恐縮でございますけども,御理解のほどよろしくお願いします。
 圓月先生,お願いいたします。
【圓月主査】
 それでは,議事に入らせていただきます。
 まず,議題1です。事務局より資料の説明をお願いいたします。
【前田大学入試室長】
 先生方,お手元資料1,資料2-1,資料2-2を御覧いただければと思います。
 まず資料1でございますけども,こちら,前回の会議で,この会議の位置づけと申しますか,スケジュール感について,宿題として事務局が預かってございました。
 それで,1枚目,本協力者会議の位置づけと多面的・総合的な評価のスケジュールでございます。資料の紫色の部分が, 2019年度のところでございますけれども,3月から2020年度の12月ということで,枠囲みがこの協力者会議でございます。本日,大学のサイドの先生方,それから次回以降,ほかの先生方によって意見発表をお願いさせていただきまして,一度,検討事項全体につきまして論点整理をさせていただければと思っております。その後,特に詳細に詰めていくべき論点につきましては,優先順位をつけて議論させていただければと思ってございます。
 この資料の中ほどでございますけども,2021年度の夏頃と書いてあるところでございます。これは,新学習指導要領に対応した実施要項の見直しに係る予告ということでございます。従来より,今回の新学習指導要領で教科科目が変わるものでございますので,その場合には,大学に対して2年前にこうなりますよという予告をする必要がございます。したがいまして,その1年前には文部科学省から,どういうふうに大学入学選抜が変わるのかということを予告する必要がございます。それで今,2021年度夏頃というところに枠囲みが入っているということでございます。
 その後,「反映」と書いてありますけども,先生方の御議論が令和7年度の選抜実施要項にどういうふうに取り組んでいくかということを御議論いただきまして,それから,ここはAO,推薦入試,一般入試とございますけども,もう一つ,調査書の様式でございます。こちらにつきましても,新しく指導要録が変わりましたので,指導要領の下での調査書の様式をどのようにするかということが,これも御議論いただきたい点でございます。
 それから,もう一つが調査書の電子化でございますけれども,一番下に,「調査書の電子化に関する調査研究(委託事業)」というのがございます。これは今日,巳波先生から御説明いただくことになろうかと思ってございますけども,ここにJAPAN e-Portfolioを統合するという委託研究事業,今はあのようになっておりますが,この会議の御議論を踏まえまして,方法,システムあるいは時期などについてどうするかと。去年の2月の大学入学者選抜の協議におきましては,2022年度に実施される全ての大学の全ての入試区分におきまして原則として電子調査書を用いることとすること,原則としてということでございますけども,うたわれてございますので,今,2022年のところに「電子調査書の導入・活用」というのを置かせていただいている状況でございます。こちら,資料1でございまして,資料2-1を御覧いただければと思います。
 資料2-1は,調査書の見直しのポイントを改めてまとめさせていただいたものでございます。すなわち,もう今年の秋のAO,推薦入試,それから来年の一般入試から適用されるものでございますけれども,特に見直しのポイントといたしましては,「『指導上参考となる諸事項』の見直し」ということで,記載欄を拡充しまして,マル1からマル6,そちらにございますような項目ごとに記載するように分割をしてございます。
 それから,その分割の中に,共通の留意事項として,部活動,ボランティア活動の取組でございますとか資格検定の内容,あるいはスコア,各種大会やコンクール等の内容,時期等について記載をいただくように変更させていただいております。
 また,もう一つが大学が指定する特定の分野において特に優れた学習成果を上げたことを調査書の備考欄に記載することも見直しということでポイントとして挙げさせていただいております。また,調査書の見直しについてのマル2,こちらに前回の資料でもお示しましたけれども,実際の様式を右のほうに示させていただいておりますけども,こちらの様式につきましては,調査書の両面1面,これまで両面1面ですという制限がございましたけども,これを撤廃し,弾力的に記載というのが平成29年7月に予告させていただいた調査書の内容でございます。こちらについて,指導要録を踏まえ,そして,新しい学習指導要領,それから教員の働き方改革というような観点から,令和7年度の入試に向けて調査書をどう見直していくのかということでございます。
 それから,もう一つが資料2-2でございますけども,これ,多面的・総合的な評価に関する入学者選抜実施要綱,文部科学省の通知でさせていただいておりますけども,一覧でお示ししたものでございます。
 1つが,第1,基本方針のところでございますけども,改めて申し上げますと,大学入学者選抜は,各大学がそれぞれの教育理念に基づき,生徒が高等学校段階までに身につけた力を,大学において発展・向上させ,社会へ送り出すという大学教育の一貫したプロセスを前提として,各大学が卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー),教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)を踏まえ定める入学者受入れ方針(アドミッション・ポリシー)に基づき,大学への入り口段階で入学者に求める力を多面的・総合的に評価・判定することを役割とするものである。こうしたことを踏まえまして,入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に評価・判定することが基本方針でございます。
 この多面的・総合的に能力・意欲・適性等を評価するため,判定するための方法といたしまして,平成29年7月に,ここで示しておるのが中ほどの枠囲みでございます。一般入試,推薦,AOとそれぞれ分かれておりますけども,一般入試につきましては,筆記試験に加えまして,主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度をより積極的に評価するため,調査書や志願者本人が記載する資料の積極的な活用を促すということ。そして,その調査書以外の志願者本人が記載する資料の中身につきましては,その下の太文字のところでございますけども,活動報告書でございますとか大学入学希望理由書,学修計画書といったものが資料として挙げてございます。
 また,AO入試につきましては,1つはこれまで,「知識・技能の修得状況において過度に重点をおいた選抜とせず」という記載がございましたけれども,これを削除いたしまして,調査書の出願書類に加えまして,各大学が実施する評価方法,または,大学入学共通テストのうち,少なくともいずれか1つの活用を必須化するとしてございます。この各大学が実施する評価方法につきましては,小論文でございますとかプレゼンテーション,あるいは口頭試問,資格・検定試験の成績ということを例示で挙げてございます。
 それから,推薦入試につきましても,これもAO入試と同様,学力の判定を免除するということではなくて,プラスアルファとして,評価方法または大学入学共通テスト,少なくともいずれか1つの活用を必須化する。それから,推薦書の中におきましては,知識・技能,思考力・判断力・表現力,主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度に関する評価を記載することを必須化することになってございます。
 こうした調査書,受験生本人が記載する資料でございますけれども,これは大学入試で評価する上におきまして,その資料の真正性でございますとか客観性,それから,高等学校教員の関与の在り方でございますとか,合否判定における評価の重みづけにつきまして,改めて受験生,保護者,社会からの理解が得られるような考え方の整理,それに基づく大学の取組はどういうものがあるかということで,そのため,例えば,推薦,AO,一般入試,選抜方法も様々ございますので,それぞれの選抜区分の中でどういう活用方法があるのか,経済的な条件に左右されずに等しく評価を受けることとするためには何に留意すべきなのか,あるいは,個人情報であります受験生のデータがございますけれども,そういったものをどういう形で入試で活用するのが適当なのかということについて,本協力者会議で検討を行っていただきたいということでございます。
 資料は,そういう趣旨で今回お示しさせていただいております。前回の繰り返し部分もございましたけれども,私からの説明は以上でございます。
 圓月先生,お願いします。
【圓月主査】
 ありがとうございました。ただいまの説明について,何か御質問や御意見等ございましたら,「手を挙げる」のボタンを押して御発言いただければと思います。よろしくお願いします。
 川嶋委員,よろしくお願いいたします。
【川嶋委員】
 2点ほど,今の御説明について確認をさせてください。
 1点目は,最初のスケジュールのところに関してですが,昨年度までは,この多面的な評価に関する議論というのは,改善協議の下にワーキンググループとして設置されていましたので,そこでの議論がそのまま改善協議に報告されて,入試選抜要項等に反映されるという仕組みになっていたと思うのですが,今回からこの会議は改善協議とは独立した会議体になりまして,この資料1にありますように,来年反映すると書かれているのですが,逆に,改善協議からの意見はここにどういうふうに反映されるのかというのが1点目の確認事項であります。
 それから,2点目は,資料2-1の下の部分で,改正案では分量が撤廃されたというか,従来は1枚物で表,裏だけに限られていたのが,今回はここに書いてあります,「調査書の両面1面の制限を撤廃し弾力的に記載」と書いてあるのですが,そうしますと,弾力化,柔軟化には違いないのですが,逆に記載内容が非常に多様化したり,あるいは高校の先生方も何をどこまで書けばいいのかということに戸惑いを持たれたりするのではないかと思います。
 したがって,高校の先生方の負担増につながったり,あるいは先生方の書く力,力量にも依存して,内容が非常にばらつく,多様化してくることになろうかと思います。そういうものが大学に出てきますと,なかなか公平・公正に評価できないということも起こり得ますので,今後の議論かと思うんですが,今は改正案となっていますので,今後,本会議で新しい調査書の記載内容とか分量,こういったものについての統一的な見解をぜひ出すべきではないかというのが私の2つ目の質問で,この点については文書で今日出されております長塚先生からもそのような御意見が出ておりますので,その点も今後議論していただければと思います。
 以上です。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。2点,御意見を頂いたと理解しております。資料1の2021年度の反映ということですけれども,どのような形を考えておられるのか,室長から何か補足説明していただける点はございますでしょうか。
【前田大学入試室長】
 ありがとうございます,川嶋先生。資料1の改善協議でございますけども,改善協議とは別に,この協力者会議はございますけれども,これは「協力者会議の位置付けと」というタイトルにしてございますので,ここには改善協議というのは出てこないわけでございます。ただ,協力者会議で出された御意見を踏まえ,そして改善協議での御議論も踏まえて要綱を考えていきたいというのが趣旨でございます。
 それから,もう一つ,調査書,まさに御指摘のとおり,教員の働き方改革でございますとか指導要録の中に,通知の中には,入学者選抜において簡素化というようなこともうたわれてございますので,まさに先生おっしゃるように,分量,それから,どこまで求めるのかというような統一的なことについては,先生方の中で御議論いただきまして,私ども,それを受け止めまして,調査書の中身についてどうするかということをお示ししていきたいと思っております。
【川嶋委員】
 ありがとうございました。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。2番目の問題につきましては,これまでもいろいろと議論になっておりまして,制限を撤廃するというのは簡素化の方向にということなんですが,高校のほうではむしろ複雑で拡大されていくのではないかという懸念を生んでいるということを十分理解しておりますので,今後の議論の中でも反映していきたいと思っております。
 ほかに何か御質問ございますでしょうか。柴田委員から手が挙がったということでよろしいでしょうか。
【柴田委員】
 柴田でございます。先ほどの川嶋先生の御説明,お問合せについて,私も前のワーキンググループの委員をしておりましたけども,当初のミッションは,たしか調査書の電子化についてのワーキンググループということで,改善協議の場の下に設けられたという具合に理解しておりますが,途中から,ほかのミッションも加わって,e-Portfolioなんかも加わったと,そういう経緯でございまして,ワーキンググループの構成員としては,主体性等の議論というのはあまり記憶に残ってないというところでございますので,確認させていただければと思います。
 以上です。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。その点もいろいろと議論があり,ほかの問題とも関連していることがだんだん明らかになってきたという経緯がございます。今後また,いろいろと御意見を寄せていただければうれしく思います。
 ほかには何かございますでしょうか。「手を挙げる」のところが一覧でちょっと見にくいんですけれども,よろしいでしょうか。
 それでは,次に,議題2に関しまして,本日は大学側の委員より意見発表をしていただきます。
 その前に,本日御欠席の長塚委員より書面での意見提出を頂戴しておりますので,事務局から簡単に御説明いただけますでしょうか。
【前田大学入試室長】
 分かりました。今日,長塚先生御欠席でございますけれども,前回お話しできなかったこと,それから,今回の会議に臨みまして意見を出されたいということで今日頂いております。
 簡単に御紹介させていただければと思いますけども,1ポツとして,「電子的方策に関する前提」というのがございます。ここに,生徒の資質・能力を多面的・総合的に評価し,育成することは不可欠であるということを述べられた上で,デジタル技術の進展によりまして,生徒の資質・能力,これを多面的・総合的に評価することについては可能であると。むしろ,電子的方策を用いずに多面的・総合的な評価,育成を図ることは困難ではないかという御意見でございます。
 ただ,一般入試につきましては,その選抜区分の趣旨が基本的に多面的・総合的評価を前提としていない入試の仕組みであるとしまして,たとえ電子的方策を用いても主体性等の評価を反映することはあまり期待できないという御意見でございます。
 最後に,募集人員の多くの割合をAO入試に移行させるということで,多面的・総合的な評価を実現すべきではないかという御意見でございます。
 2つ目が,「電子的方策に関する課題」といたしまして,生徒の成績情報,電子調査書システムにおける情報につきましては,高校から大学に提出するに当たって,その情報管理,これは完全に安全性が確保されているべきであるという御意見でございます。ついては,電子情報の授受を扱う担い手につきましては,そのデータベースを持たずに,直接高校から大学に提出するという仕組みであることが肝要だという御意見でございます。また,新たな調査書の記載事項につきましては,各高等学校の教員による資質・能力の評価に関する事項に極力限定すべきであるという御意見でございます。
 最後に,生徒の諸活動につきましては,高校をかまさずに,電子的方策で生徒自身が自己申告すべきこととして,生徒自身にエビデンスを求め,その成果としての資質・能力を各大学において丁寧に評価することが適切ではないかという御意見を頂いております。
 以上でございます。
【圓月主査】
 ありがとうございました。長塚委員の御意見は,委員全員で情報共有をさせていただいたということにとどめさせていただきたいと思います。
 それでは,まず初めに,柴田委員から御発表をお願いできるでしょうか。
【柴田委員】
 柴田でございます。私,前回のこの会議に出席がかないませんでしたので,最初の感想というようなものを今回出させていただければと思います。お時間は10分でしょうか,20分,どれぐらい……。
【圓月主査】
 20分と聞いております。それでよろしかったですね。
【柴田委員】
 はい,承知しました。それでは,資料5の「多面的・総合的選抜に関する一考察」としまして,私が以前から考えていることを御披瀝させていただければと思います。
 今回の入試改革,御承知のように高大システム改革というもので進んできておりますけれども,焦点は主に,大学入試共通テスト,新テストに興味・関心が集中しておりますけども,我々としましては,この会議のテーマであります多面的・総合的選抜をどう開発するかということが大学人にとっては一番大切なんではないかと以前から考えておりまして,この会議に参加させていただくのは大変光栄に存じております。
 ということで,大学にとりまして,大学入試というのは選抜機能というのがございますけれども,大学教育にとりましては,そこに書いてありますように,学力把握をしっかりやるのが大前提でございました。ところが,以前,昭和の時代は狭き門ということで,受験者のレベルが高いところで維持されていたわけでございますけれども,少子化が進行し大学も増えて,全入時代ということになりまして,特に学力の低下に悩む大学が出てきたということでございます。これはもう10年以上前のお話になりまして,学力保障が課題になっております。
 大学も手をこまねいていたわけではございませんで,いろいろ研究会等,文科省の支援で進めてきておりまして,一応の結論といたしましては,そこにございますように,北海道大学の佐々木先生を主査にした,20人以上,高校,大学,産業界等々が加わった大きなグループでまとめたものがございます。これは,佐々木先生が個人的に,「大学入試の終焉 高大接続テストによる再生」という本におまとめになっておられるわけですが,これはあくまでも佐々木先生の個人的な思いという具合に私は受け止めております。
 その後,いろいろな大学改革が進んできておりまして,御承知のように,高大接続改革実行プランというのが策定されました。これ,3つの要素から成っておりまして,主に関心の非常に高い新テストと,この会議の主なテーマであります大学入学選抜の実施要綱の見直し等を含んだ選抜方法に関すること,それから,もう一つ,あまり注目されなくなっておりますけども,高校生のための学びの基礎診断という,この3つの要素があったように理解しております。
 このテストに関しましては,日本では従来は集団準拠型というのがございましたけれども,諸外国におきましては,基準レベルへの到達度を判定する目的準拠型というのが一般的であろうという具合に理解しております。さはさりながら,今回はそこは外しまして,この実施要綱のルールの見直しに焦点を当てますと,従来,日本の入試というのは,公平・公正ということで1点刻みで総合点順位になっておりました。今回の新テストでの混乱等々にも関係することでございますけれども,この1点刻みの公平・公正という入試風土はなかなか根強いものがございまして,世間の方々はそういう目で入試を見ているということでございましょう。
 ところが,大学での入学後の追跡調査というのが一部の大学で行われておりますけれども,この点数合計順位による学力把握機能はさほど強くないということが言われておりまして,後ほど,参考資料として,1番,2番に掲げておりますけれども,後年度の専門科目の成績は,むしろ入学初年次科目や高校の成績と強い相関があるということが統計学的に分かっております。
 今のは大体一般入試が主体でございましたけれども,その点でAO選抜というのは,大学教育の改革とも連動した,ある意味,私はこれ,入試特区としていろんなことが試行的に行われていると思いますけれども,教授会から独立したAOの専門家集団が形成されつつあるのではないかと見ておりまして,このグループでは多様な選考基準を明示した上で,合計点順位に代わるいろんな,我々が関与したものを御紹介すると,多次元マトリックスの判定等々,多面的な選考法を,ある意味,草の根的に案出して実施している状況がございます。
 ところで,新しいルールでは,一般入試にも学力3要素に基づく,この多面的・総合的な選抜が求められておりまして,これは大学にとりまして非常に大きな問題でございます。と申しますのは,3要素のうち,知識・技能,理解力・判断力・表現力というのは,個別試験や新テストで把握がある程度可能でしょうけれども,「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」という評価,これはどうしたものかというのが,後ほど参考資料の公立大学協会でのアンケート調査もございますけれども,かなり試行錯誤というところでございまして,高校の調査書,ポートフォリオに加えて,AOで蓄積されたノウハウ等を活用した新たな選抜システムの開発普及が求められているところでございます。
 この新しいテストについては世間の関心が非常に高うございまして,我々としましては,令和24年度からの高等学校学習指導要領の改訂に向けて入試改革をさらに進めていかなければいけない。そのときに,受験生に対しては主体性を求めておりますけれども,今後は大学,高校に対しても,主体的に抜本的な選抜・教育改革に取り組む必要があるのではないかと考えている次第でございまして,ぜひそういうものが本会議で提案できればと思っております。
 参考までに参考資料を御紹介いたしますと,1番目は私どもが調査したものでございまして,専攻教育の成績に相関するのは全学教育の成績,高校の成績,最後に入学試験の成績であるという結果が出ております。これに対しまして,テストの専門の方々からの御指摘では,それには選抜効果やスリット効果もある,それから,志願者の予備選択もあって,志願者層がある程度固定していると。それから,国公立では分離分割方式である程度の選抜ができているから,入試成績というのはあまり反映されないという御指摘もございます。
 さはさりながら,全学教育には専門教育の弁別機能がございますので,入学後の初年次教育の重要性,前期の重要性が非常に強く指摘されているところでございまして,これに関連して,現在のコロナによる入学したての学生に対する教育が混乱しておりますけれども,大変憂慮すべき状況と懸念するところでございます。
 それから,高校の成績にも,何となく上方圧力,下方圧力がありまして,これは入試成績とは関連しないということで,改めて高大接続の重要性が指摘されているところでございます。
 望むべくは,選抜のシステムと教育カリキュラムが連携したものが望ましいのではないかと考えておりまして,我々としましても,後ほど,3番目の参考資料ですけれども,「21世紀プログラム」というようなものを17年運営した経験もあるというところでございます。
 2番目は,これは大阪市立大学での追跡研究でございまして,かなり最近の事例ですけれども,1年次前期と4年間総合とのGPAの密接な関係があると。特に入学後半年間の学修がその後に大きく影響して,前期での不振は挽回が困難であるということでございまして,重ねて,今,コロナにより新入生への教育がなかなか取りかかれないというのは憂慮すべきところではないかと思っております。
 それで,2年次以降にも,少数学生が学業不振に陥ることもございますけれども,高校での学びのスタイルが大学での成績に影響を与えていることが非常に大きいのではないかと。したがいまして,高校での学びや動機づけなどの実態把握,これ,ポートフォリオとか調査書なんかでできる限り把握するということでございましょうけれども,それと連動した大学教育の改善が求められているのではないかということでございます。
 3番目はそれに関連いたしまして,述べましたけれども,既に総合的かつ多面的な評価に基づく入学選抜と入学後の教育プログラムを連関した21世紀プログラムというのを17年間運営しておりまして,この分析からも改めてそういうことが示唆されるわけでございまして,できますれば,ポートフォリオという高校の修学記録というものは,入学者選抜にとどまらず大学においても,高校と連動した学びの把握の有効性が望まれるということで,改めてこれから議論になりますけれども,高校におけるポートフォリオを大学に入っても,学生の成長過程の把握と修学・進路指導,すなわち,高大一貫ポートフォリオというものが考案できないかと考えるところでございます。
 残りのお時間,お許しいただければ,引き続きまして,参考資料で,公立大学協会でまとめました多面的評価に関する会員校での取組状況を3年間追跡したものがございますので御覧いただければと思います。
 調査項目が年度ごとに異なっておりますので比較するのは難しゅうございますけれども,まず,調査書活用の現状でございますが,平成29年の調査では,あまり具体的なことは,皆さん,まだ立案しておられませんでした。30年度になりますと,調査書の点数化を考える,あるいは面接試験等における参考資料に活用するというような大学が出てきております。それにつきましても,一方では,国からの指針等を待っているというような待ちの姿勢にもなっておりました。それが令和元年,昨年になりますと,調査書を合否判定に活用するという大学が大分増えてきておりますが,一方では,面接時の参考資料として活用する,そういう具合に方針を決めた大学も出てきているところでございます。
 下の課題の欄に書いておりますけれども,やはり調査書の公平かつ客観的評価の取扱い,従来からこれは校内尺度として見るべきではないかというのが多くの大学で指摘されているところですけれども,これの取扱いについて,大学では非常に戸惑っているというのが現状ではないかと思っております。
 それから,もう一つの指摘として,現役生はそうなのでしょうけれども,浪人生に対して,あるいは国外からの受験生に対してどのように取り扱うかというのも1つの問題点であろうという御指摘がございました。
 次が「大学の視点から見た主体性等評価の課題」について,こちらももっと大きな問題ですけれども,主な大学の取組としましては,3年前はほとんど検討できている大学が少のうございましたが,30年度になりますと,面接試験において主体的な評価を行う,あるいは調査書以外にも,学修計画書,自己PR書等によって主体性の評価を行うというような取組を進めてきているようでございますし,このときになりますと,下のほうにございますように,指定校推薦でJAPAN e-Portfolioを活用して,情報収集をしてみようというような取組も始まっているようでございました。
 昨年になりますと,主に面接や調査書等で何とか主体性の評価ができないかという大学が60%ぐらい出ておりまして,一方では,入試区分において主体性の評価については様々であるけれども,どこかに落ち着かせなければいけないというようなスタンスの大学もあるということでございます。
 一方では,点数化して評価する大学というのはやはり10%以下でございまして,まだ主体性の評価について非常に戸惑いがあるというところでございます。それから,JAPAN e-Portfolioの活用については,他大学の動向を見ながら検討するということで,まだ公立大学の加盟校におきましては,主体性の評価あるいは調査書の活用は大きな流れの方向性としては見えないところでございます。ぜひ今後,この会におきまして,多面的・総合的な評価についてのコンセンサスのようなものができまして,推薦あるいは総合選抜だけではなくて,一般入試にどう取り入れていくのかというガイドラインのようなものができればと祈っている次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【圓月主査】
 柴田委員,どうもありがとうございました。ただいまの御説明について,何か御質問や御意見等ございましたら,また,「手を挙げる」のマークを押していただきたいと思います。よろしくお願いします。
 それでは,牧田委員,よろしくお願い申し上げます。
【牧田委員】
 牧田です。入試に関しては全く素人なものですから,用語を教えていただきたいのですけれども,2ページ目の資料で,参考資料のところで,専攻教育の成績に相関するのは,全学教育,高校成績,入試成績と書いてあるのですけれども,この全学教育というのは何を指すのでしょうか。
【柴田委員】
 どうも失礼しました。いろんな呼び方がございますけれども,以前の教養課程とか,一般教養とか一般教育とか言われておりますね。そういう具合に,専門課程に入る前の教育を,ある大学では「全学共通教育」等々と呼んでいるというところでございまして,イメージとしては,教養教育と申しますか,教養教育についても3つぐらい要素があると言われておりますけども,その段階の教育です。
 それから,大阪市立大学の定義では,1年次前期という具合に期間で分けておりますけども,そういうところで,大学によってはカリキュラムによっていろいろ違うところでございましょう。お分かりいただけたでしょうか。
【牧田委員】
 はい。ありがとうございました。よく分かりました。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。それでは,ほかに御質問や御意見ございますでしょうか。
 それでは,垂見委員。
【垂見委員】
 武蔵大学の垂見です。どうもありがとうございました。大変興味深く聞かせていただきました。質問なのですが,今,コメントがあったところなのですが,専攻教育の成績が入試成績と相関があまり高くない。それに対して,高校成績のほうがより高く,全学教育が最も相関が高いというお話だったのですが,入試成績が高くないこと以上に,全学教育と専攻教育の成績の相関が一番高かったというところが興味深かったのですが,全学教育が何の指標と理解すればいいのか。1つは,初年次に大学が行う教育こそが重要であるとも取れますし,あるいは,入ったときの学生の学習意欲こそが,その後の4年後の学びに根っことなっていると捉えられると思うのですが,3つの中で一番高かった全学教育が何の指標と理解できますか。
【柴田委員】
 ありがとうございます。大変重要な御指摘でございまして,我々も,その点についてはっきりした結論を得ているわけではございませんけれども,いろんなファクターがあるのではないかと思います。私どもも,最初にこのデータが出たときには,理系の学部ではこういうことは当然あるだろうなと思ったわけでございます。数学とか物理とかの積み上げの上に,それぞれの理系の学問は成り立っているわけでございますので,理系だと当然あるだろうなと思っておりましたところ,文系でも全く同じ傾向が見られたわけでございまして,これは,先ほども申しましたけれども,初年次教育というのが,何か学びの姿勢というようなものを樹立するのに非常に大きな役割を果たしているのではないか。それから,その学びのスタンスというのは高校時代からつながっているのではないかと。その意味では,特に一般入試におきます入学試験というのは,ある1時点,1日,2日の間での学力を見ているところもございますので,それに対して,高校3年間の積み上げ,あるいは,それの継続のスタンスとして,入学しての1年目の姿勢,先生,先ほど御指摘いただきました学びの姿勢,そういうものが後年,非常に大きな影響を及ぼすのではないかということで,改めてこの初年次教育,鉄は熱いうちに打てということとは少し違うかもしれませんけれども,そういうことで,初年次教育の重要性というのは,ほぼ,どこの大学でも共有されている理念になってきているのではないかというところでございます。お答えになったかどうか分かりませんけれども,これは非常に重要な問題だと思って,引き続き大きなテーマとして,いろんな方々で分析されているところだと思っております。
 以上でございます。
【垂見委員】
 ありがとうございました。
【圓月主査】
 ありがとうございました。それでは,手を挙げていただいた順番ということで,川嶋委員,よろしくお願い申し上げます。
【川嶋委員】
 ありがとうございます。柴田先生とは,この佐々木先生のプロジェクトを御一緒させていただいたので,いろいろ共感するところはございますし,また,日経新聞の教育欄でご意見はすでに読ませていただきました。
 1点は今の議論に関係しますけれども,やはりアドミッション・ポリシーと入ってからの教育,カリキュラム・ポリシー,特に学習方法のところとの関係性というのはやはりこれから重要視されていくのではないかと私は思っています。APとCPの関連性ですね。
 もう1点お聞きしたいのは,1ページ目から2ページ目にかけて,各大学が主体的に入試改革をしていきなさいという,それはそのとおりだと私も思うのですが,長塚委員のペーパーにもありましたが,一般選抜で多面的・総合的な評価をしていくためには,長塚委員は,定員をAO入試に振り替えて,時間をかけてという御提案をされていますけれども,21世紀プログラムも定員が非常に少ない中で可能になったわけですけれども,柴田先生,一般選抜でも多面的・総合的に評価をするために,具体的にどういう仕掛けといいますか,取組が必要なのかということについて,先生なりの腹案がおありだと思いますので,ぜひそれをお聞きしたいと思います。
【柴田委員】
 川嶋先生,どうもありがとうございました。最初のほう,アドミッション・ポリシーとカリキュラム・ポリシー,まさにそのとおりだと思います。どういう教育をするからどういう選抜をやるんだということを大学で主体的に明示して,社会的な理解を得た上で思い切った選抜をすることがやっぱりこれから求められていくべきであろうと思っているところでございます。
 2番目の一般選抜にどう導入するかというところでございまして,もう先生御承知のように,AOというのは非常に少人数で,特区のような,手をかけ暇をかけて選抜しているので成り立っているというようなことがございますけれども,諸外国ではこれが一般的な選抜方法となっているのは,先生もつとに御承知のとおりでございます。
 ということで,1点刻みでやるとなかなか難しゅうございますので,私は段階的評価を積み重ねていって,いろんな評価指標をアルゴリズムでシステミックに提示した上で分析していくと,かなりのボリュームの方々を多面的に評価,それから,選抜が可能ではないかという具合に,21世紀プログラムはあまりにも少数ですけれども,ボリュームが大きくなっても可能なのではないかという具合に感じております。
 したがいまして,1点刻みでやるのが,本当に公平・公正なのかというのは,先生も同じようなお考えかもしれませんけれども,今回,先ほども発言させていただきましたけれども,以前のワーキンググループでは,調査書の電子化ということが検討されておりました。電子化で,その記載内容等,AIと言うと言い過ぎますけれども,テクニカルにキーワードとか,そういうものでスクリーニングしたような,ある程度の段階的評価を大まかにやって,それをさらにほかの指標と組み合わせてやれば,客観性が担保できた上で,選抜,順位づけが可能なのではないかと考えておりますし,最初に述べたように,選抜機能と学力把握,3要素のうちの主体性の把握等々もできるのではないかと思っております。これに踏み切るかどうかというのは,個々の大学の主体性にかかっているのではないかと感じております。お答えになったかどうか分かりませんけれども,そのうち,ゆっくりと議論させていただければと思っております。どうも失礼しました。
【川嶋委員】
 ありがとうございます。最後のほうにおっしゃった,調査書をAI等で分析して,ある程度の段階評価をした上で,最終的には様々な観点を加味しながら教員なり職員が評価するということについては,実は、私が所属しています大阪大学高等教育・入試研究開発センターでも,今,過去4年間分の調査書を,研究として,試行的にですが,AIにかけて分析しているところですので,こういう動きが各大学でも行われて,その成果を共有できればいいのかなと,今のお話を聞いていて感じました。ありがとうございました。
【柴田委員】
 ぜひそういうものを先生のところでも開発していただければ,周りの大学に対する影響は非常に大きいのではないかと思います。よろしくお願いいたします。
【圓月主査】
 どうもありがとうございます。実りのある議論をしていただいて喜んでおりますけれども,時間の関係もございますので,手が挙がっている柴原先生にご発言をお願いし,できるだけ簡潔にやり取りをしていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【柴原委員】
 柴田先生,ありがとうございました。私も前回欠席しましたので,今,先生のお話を聞いていて,1点刻みは公平だという考え方,日本では非常に根強いものがあると思います。公正さと公平さは違うと思っていまして,公正というのは制度をきちんと運用するだけで担保できると思うんですが,公平性というのはまた,いろんな議論があって,そう簡単にいかないと思うんです。その意味で,1点刻みというのは一番分かりやすい客観指数だと思うんですが,私たちみたいに高校で長いこと教員をしている者につきましては,学力の3要素ってございますよね。そのことを大学側がどのように判断してくださるかというのはすごく興味・関心のあることで,高校で学力の3要素をもっと重要視しようと思っていても,入試になってしまうと1点刻みになってしまう。そこで私たちもジレンマを感じています。そういう意味で,柴田先生のようなお考えの方が,大学の先生方で今増えつつあるのかとか,その辺だけ教えていただけますか。
【柴田委員】
 私,門前の小僧で入試に関係して二十数年たちますけれども,だんだんと増えてきているのではないかと思っております。特に受験戦争といいますか,そういうものが激烈なときには,1点刻みで採っても,それなりの子が上のほうで採れていた大学が多かったと思いますけれども,現在,少子化ですし,それから大学の門も広くなっておりますので,一部の大学においては,そういうことでもほとんど有効ではないんではないかと。
 今回申し上げましたのは,1点刻みで採った中でも,いろんな学力,結果的なその大学の修学能力というのにはあまり役に立たないというのが指摘されているところではないかと思いますし,私の個人的な経験から言いますと,私,受験が非常に激烈なところから受験生が入ってきている学部で教員をやっていたんですけれども,入ってきた途端に意欲をなくすとか,ゴムが伸びたような子をたくさん見ておりまして,学力だけで選抜するというのは,公平・公正と言いながら本当に有効なのかなというのはつくづく思っておりますし,周りの同僚もそういう気持ちでございました。
 ただ,それを,先ほどの川嶋先生のような,いろんな試行をやるというのは,現在の国公立大学ではなかなか難しいところがございましたので,風穴を開けるように,先ほどAO入試という,特区入試というのを続けておりまして,これが有効であろうという実感を持った次第でございますし,21世紀プログラム,先ほど川嶋先生,非常に少人数だと言っていましたけれども,これを導入した大学では,最近新しい学部を作って,入試定員を増やして,こういう教育を増やしたというような実績もございます。
 だから,やはり各大学,主体性を持って,思い切って入試改革を遂行されれば,各大学における教育も随分と質が変わってくるのではないかなという具合な実感でございます。これから,いろんなそういう思いを持っている方がどんどん増えていけば,日本の大学教育,ひいては高校の対応もお変わりになるんじゃないかと期待している次第でございます。全くお答えになっておりませんけれども,ぜひそうあってほしいなという期待でございます。
 以上でございます。
【柴原委員】
 ありがとうございました。そういう先生が増えることを私も期待しています。ありがとうございました。
【圓月主査】
 どうもありがとうございます。高校と大学との対話がまた深まっていくということも常に重要なことかと思っております。
 それでは,時間も予定もございますので,次に西郡委員から御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
【西郡委員】
 佐賀大学の西郡です。資料5に沿って説明させていただきます。右上にスライド番号がありますので,番号を申し上げるときは右上のスライド番号を御確認ください。
 それでは,早速,スライドの2なんですけれども,「個別選抜における多面的・総合的評価の課題」というところですけれども,左の青いやつが学力の3要素です。やはり最も評価が難しい組合せというのは,これまでも出てきましたように,「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」,これがやはり評価を行う上では非常に難しい能力の面であろうと。
 右側が3つの選抜区分ですけれども,どの選抜区分において,この主体性を評価するのが一番難しいかというと,先ほどから話に上がっていますように,一般選抜において行うことがやはり難しいであろうと。このように一般選抜で主体性等を評価するのは非常に難しいというのは,もう誰が考えても明らかなことでありますが,その中で何ができるのかということを検討して,今,佐賀大学では多面的・総合的評価として,一般入試でもそういった部分を展開していますので,その取組を事例として本日は紹介したいと思います。
 3ページを御覧ください。「一般入試における主体性等評価の課題」ということですけれども,やはり丁寧に評価しようということを考えれば,面接試験とか集団討論とか対面型の評価が一般的な方法だと言えます。ですけれども,一般入試,一般選抜においてこれを実施しようとすれば,当然,評価期間が十分に確保できないという面がありますし,受験者数が多い募集区分においては,こういった評価を実施するのはやはり現実的な枠組みでは難しいであろう。そうなったときに,書類審査は現実的な方法の1つだと考えます。そういった意味で,調査書であるとか志願者本人が記載する資料の提出が考えられるのではないかと思います。
 この書類審査というところに今日は注目したいわけですけれども,4枚目のスライドに行きまして,佐賀大学ではということですが,佐賀大学では,大体の大学概要をそこに示していますけれども,6つの学部がございます。大体6,000名規模の大学の事例です。
 スライドの5に移っていただきますと,今申しました6つの学部において,2021年度に向けて,一般入試においても主体性等の評価を行うという予告をしております。一般入試で行いますので,AOや推薦も含めて,全ての入試区分において学力の3要素というものを評価しようというようなスタンスでございます。
 既に医学部においては,面接試験や調査書ということで全ての入試区分で従来から実施をしておりますが,そのほかの学部として,理工学部と農学部において2019年度より,特色加点制度という書類審査を導入して実施して,この前の入試で2年が過ぎました。これにつきましては,主体性の評価と書いておりますけれども,やはり一般選抜ですので,センター試験,個別学力検査を中心とした学力を前提として,それにプラス主体性等を評価するのが基本コンセプトでございます。
 6ページ,6枚目のスライドになりますけれども,では,特色加点制度というのは何なのかということでありますが,当初の配点,共通テストと個別学力検査の配点とは別に加点で評価します。申請するかしないかは受験生の任意ということでございます。どういったことを書かせるのかといいますと,高校時代,あるいは浪人している子であれば浪人時代も含めて構いませんけれども,受験するまでに頑張ってきた活動・実績,そういったものを中心に申請してもらう。そういった情報を,1から5の項目のところで書いてもらいますが,それにプラスしてアドミッション・ポリシーや入学後の学習との関連性というものを記述してもらいます。
 ここでは,申請する実績や活動,上の部分で申請するものとして,身につけた能力とかスキル,経験などが入学後の学習や活動にどのように生かせるのか,そういったことを400字以内で書いてもらうようにしています。現在,理工学部と農学部で実施しておりますが,最大加点は,理工学部の前期日程で30点,後期日程で30点,比率で言いますと大体2%から3%程度です。農学部は,最大50点の加点ということで5%程度というような配点の割合でございます。
 スライドの7を御覧いただきたいと思いますが,やはり一般選抜ですと受験者数が非常に多くなるということで,全員を評価するのはかなり現実的には難しい面があります。そういったこともありまして,合格ボーダー層に注目した評価を実施しております。ここに描いてある絵ですけれども,合計点の低いほうから高いほうまで,仮に学力検査の得点だけで並べた場合,合格ボーダー層というのがどうしても出てきます。こういった部分で,数点差で合否が分かれるわけですけれども,1点差であったり0.1点差であったり,そういった形で合否が分かれているわけです。
 ですが,この数点差に学力の明確な順序性があるかというと,必ずしもそうであるとは言えないということがあります。であれば,違った側面を評価してはどうかということで,先ほどの特色加点という書類審査をここで活用しているというお話です。
 次の8枚目のスライドを御覧いただきたいんですけれども,ここの共通テスト500点,個別学力検査450点,そして特色加点最大50点というような形の絵がありますけれども,ボーダー層評価といいましても,結局,ボーダーだけではなくて全員を書類審査しても合否の結果は変わらないというような絵です。
 左下の絵のところにありますけれども,仮に特色加点の書類審査を全員採点して,得点順を並べたとします。そうすると,高得点の人たちは,書類審査がゼロ点でも合格となる受験者層です。一方で特色加点が満点だったとした,ここで言えば50点の満点だったとしても不合格となる受験者層があります。こういった人たちがいる一方で,特色加点のこの50点の配点によって,その採点結果によって影響を受けるところがこのボーダー層になるわけです。
 そうであれば,合否に影響がある層だけを抽出して丁寧な評価をすれば,一般入試においても評価が可能であるという考え方になります。ですので,実際には上の特色加点がゼロ点であっても合格となる受験者層に関しては書類審査を免除する。一方で,下の特色加点が満点であっても不合格となる受験者層は特色加点の採点対象外ということで,ボーダー層を丁寧に見てあげるということです。繰り返しになりますけれども,ボーダー層だけを限定して採点していますけれども,全員採点した結果と合否結果は変わらないというような仕組みになっています。
 次のページを御覧ください。9枚目のスライドです。実はこの採点といいましょうか,評価を考える上で最初に検討したのはこういったイメージでした。例えば,成果を伴う実績,化学オリンピックとか研究発表の受賞とか,第三者が評価する客観的な成果と,一方で青いほうですけれども,受験生の主体的な取組,活動,成果が伴わないもの,こういったものを区別して,自分が志望する専門分野と関係するもの,関係しないもの,そういったものを分けた上で,世界,全国,ブロックみたいな形でレベルを分けて点数を行えば,ある程度,明確な基準で評価できると考えてはいたんですが,右の上のほうにありますように,仮にこういった枠組みをつくろうと思った際に明確な根拠と基準を持って,高校生の多種多様な活動を格付することはほぼ不可能と判断したわけです。この考え方は少し難しいであろう。特に一般入試においては,そういったところが難しいであろうということがありました。
 スライドの10を見ていただきたいんですけれども,もう一つの懸念として,過度な動機づけは避けたいというところがありました。この絵はどういったことを意味しているのかといいますと,大学入試において主体的な活動とか実績,特に成果を評価しますよと言いますと,高校生活の活動が活性化して,いろんな活動に高校生が取り組むと,そして,自分たちが取り組んだものを大学入試でアピールするというのは健全な形かもしれませんが,仮に大学入試でこういった形で評価しますよと言った場合には,当然,高校生たちも自分が行きたい大学に合格したいわけですので,下のほうにありますように,何が入試に有利なのかとか,入試に有利な活動や資格を優先的にやろうと考える生徒さんもいるかもしれませんし,場合によっては,高校の熱心な先生方もそんな活動や実績じゃ主体的だと評価してくれないぞと言うようなこともあるかもしれません。このように過度な動機づけに入試制度が機能すると,逆に主体性を損なう危険性がある。そうではなくて,日常的な高校生活の範囲内で頑張ろうと思える程度の適度な動機づけとして,こういった制度を位置づけることが必要ではないかということであります。
 次のスライド11を御覧いただきたいんですけれども,こういったことを踏まえて,我々が目指すことにした評価の考え方としては,様々な活動・実績を前提とした評価ということであります。今回は理工学部と農学部ということで理系の分野になりますけれども,そういった分野と関連が深い活動・実績と全く関連がない活動・実績というものが考えられます。上のほうの関連が深いものにつきましては,例えば数学オリンピックとかそういったもの,実績の成果自体が評価できるもの,これはこれで評価できる,加点できるだろうと言うことができます。ですけれども,こういった申請というのはほぼありません。実績は普通のレベルというものが多いのが実態です。そうであれば,結果よりもプロセスであるとかアドミッション・ポリシーとの整合性,そういった部分を評価してあげることになります。
 一方で,志望分野と関係がない活動・実績。高校時代は体育系,野球とかサッカーの部活動でしっかり頑張ってきた,こういった子たちが出願の際に何も申請できないということは,一般入試ですので避けたいという思惑がありました。であれば,どういった評価が可能かといいますと,例えば高校の部活動で身につけた能力やスキルとして,練習に継続的に休まずに取り組んだ,自分には継続性があるんだとか,自分でいろいろと練習メニューを考えて,その練習メニューがうまく機能して,試合に勝てるような企画力がある,そういったことを自分で気づいてもらう。
 一方で,大学が入学後の学びとして示していることとして,問題解決型学習であるとかチーム学習をしますというふうに,いろんなところで情報を出しています。そういったところに,自分の継続力や企画力は生かせますということをしっかり言語化してアピールしてもらうというような形で評価できるのではないかということです。
 12のスライドに移りますけれども,実は評価という面よりも,こちらのほうが我々としては重要視しているところでありまして,申請書を自ら作るということ,これを通したミスマッチの解消を期待しています。大学が,先ほど申しましたように,申請する実績や活動を通して身につけた能力や経験がどのように生かせるかを書いてくださいねと示します。そうすると,それに基づいて,受験生はこれまでの自分が取り組んできた活動とか実績,これを振り返る機会があるわけです。
 そこで,自分が取り組んできたことをしっかり効果的にアピールするためには,大学や学部がどんなことを求めているのかとか,どんな学びをしているのかということを理解しなければ,自分が取り組んできたことを効果的にアピールできません。つまり,右下にありますように,高校までの自分と大学で求められていること,ここを出願前にすり合わせてほしいというところであります。
 これの理由なんですけれども,例えばセンター試験の得点だけで,佐賀大学の理工学部にこの点数ぐらいだったら合格できそうだな。センター試験の得点だけで出願して,実は学びたい内容と全然違っていた。それによって,場合によっては休学であったり退学をしてしまう学生もいないわけではありません。そうであれば,そうしたことではなくて,自らそういった申請書作成を通して,自分の進路を見詰め直してほしいということを通して,入学後のミスマッチを解消したいという思惑があります。
 スライドの13になります。では,受験生にどういった説明をしているのかと言いますと,やはり高校生によっては,自分には何も申請する活動や実績がないからもう駄目だと考える受験生も少なくありません。ですが,そうではあっても,まずは申請することを推奨しています。自分が積極的に取り組んだものであれば,その分野とか範囲は問わないということであります。
 2つ目に,アドミッション・ポリシーや入学校の学習内容についてしっかり理解する,そこを期待していますよということにしています。ですので,何を求めているのかということを意識した記述になってなければ加点の対象とはなりません。自分が進もうとする進路についてしっかりと理解してほしいというところが大きな狙いです。
 3にありますけれども,申請しなくても主体性がないということで減点にはなりません。共通テストと個別試験で自分はしっかり点数が取れると判断するのであれば,それはそれで,そのまま出さなくても構いません。
 4つ目に,文章のうまい下手,これが採点に影響するんじゃないのかということがよく言われるんですけれども,うまい下手ということよりも,説得力のあるエビデンス,根拠資料であったり,具体的にしっかり自分がアピールしたいことを書くというところをしっかりとやってほしいということを説明しているわけです。
 14枚目のスライドに移りたいと思います。このような形で制度設計をしているわけですけれども,ただ,迅速で,かつ効率的な評価環境がなければ,実際には不可能だと思っています。今,インターネット出願が普及することに伴いまして,いろんな志願情報は電子化されています。その中で,志望理由であるとか活動・実績であるとか,そういったものを受験生に出願時に入力してもらいます。入力してきて,入ってきた志望理由とか,そういったものを,書類審査採点システムというJ-Bridge System,これは河合塾さんと共同で開発して,今,動いているものなんですけれども,そういったシステムを利用して評価を行っています。
 これのメリットなんですけれども,評価の準備,特に事務職員の方の事務作業がかなり効率化,短期化されます。さらに,評価者,採点する教員にとっても,いろんな選考資料の効果的な画面表示であったり,資料や評価結果の検索とか抽出,並び替え,こういったものが可能になります。さらに,受験生にとっては,これまではいろんな根拠資料として,賞状のコピーとか,そういったものだけしか紙では出せなかったものが,動画であるとか写真であるとか,そういった形で,いろいろと根拠資料の情報量も増えるというようなメリットがあります。
 こういった評価の環境の仕組みがなければ,調査書が電子化されたとしても,大学のほうで評価するのはなかなか難しいのではないかと思っています。調査書が電子化されれば,私たちとしては,受験生本人が申請してきた情報に,調査書のいろんな項目を加えることによって,受験生はこういった申請をしているけれども,高校の先生たちはどういうふうに見ているんだろうということで,総合的に評価というものを実現することができるんじゃないのかと考えています。
 次のスライドが,このシステムのイメージなんですけれども,受験生から見た画面イメージです。受験生が入力するものは,大学が指定したものを入力していってもらいます。その際に,根拠資料の登録というのがありますが,スライドの16が添付ファイルです。様々な課題研究とかに取り組んだ受験生は,例えば,自分が作った論文でありましたり,ポスター発表したのであればポスター発表の資料であったり,そういったものを添付することができます。
 次の17のスライドです。こちらは動画を根拠資料にしたい場合なんですけれども,動画の場合は,YouTubeとかのサイトを利用して,そこのURLを貼ってもらいます。ですので,グループでいろんな取組をしても,自分がどこでどんな役割を担っているのかということも含めて,プレゼンテーションの様子とかそういったものを,ここにリンクを貼ることができます。
 スライドの18は,いろんな活動・実績の概要であるとか,アドミッション・ポリシーとの関連性,大学が書かせたいことをこちらに書いてもらいます。
 19のスライドになりますが,こちらが大学の採点者が見る画面のイメージです。実際に入力されたものは,パソコン上でこのような形で見えます。これまでの紙で行っていた書類審査をパソコン上でやるというようなイメージなんですけれども,このような形で今,採点を行っています。
 その下のスライド20が採点をする画面なんですけれども,例えば5点満点で評価する場合は,そこのチェックボックスに点数をチェックする。下にルーブリックというのがありますけれども,それぞれ評価基準というものをここに書いておいて,その評価基準に基づいて採点を行っていくというような形であります。
 どのような観点と採点を実際行っているのかと言いますと,理工学部と農学部の場合は,スライドの21になりますけれども,専門分野に対する強い興味・関心及び主体的に学び続けようとする意欲と態度,そして,自ら学びを深めようとする行動や姿勢を通して,本学部の教育・研究活動を活性化できる可能性,この2つの観点から総合的・定性的に採点をするということですので,丸々検定何級だと何点とか,何々コンクール金賞だと何点というような評価は行っておりません。
 そこで,スライドの22になるわけですけれども,どこまで細かく点数化できるかということを考えた場合に,このような形で考えられるんじゃないかと思います。例えば3人の採点者がいて,3人の採点者がみんないいねと思うようなAの評価,一方で,3人の採点者がみんな,これはちょっとまずいんじゃないのかというふうな低く評価する評価,このAとCという識別はそんなに難しくはないと思います。ですが,多くの受験生が該当するBの部分,明確な根拠や理由をもって細かい点数化が難しいところ,ここは大きな差がつかないところになります。
 そういったことがありますので,この評価としては,AとCの部分をしっかりと識別した上で,Bについてはあまり大きな点数差はつけないというようなところです。AとCの識別さえしっかりできればいいという考え方がございます。
 次のスライド23を御覧いただきたいと思いますが,システムを使うと,こういったことができます。例えば採点者が3名いて,上の4,3,2,1というのが点数なんですけれども,4をつけた人が2人,1をつけた人が1名と大きく判断が分かれた場合,こうした場合は自動的に,この3人の採点者で協議しましょうというような協議フラグを立てることができます。このような形で,採点の信頼性も担保することが可能だと考えています。
 24が本試験で実施して分かったことなんですけれども,申請内容については,大半が一般的な高校生活の活動や実績です。実際,評価をして合否が入れ替わったのは,主として申請をしなかった人。申請をしなかった場合は加点がされませんので,そこはゼロ点となります。そこが逆転不合格となっています。
 3つ目に,大学が求めていることに応えられていない申請もやはり一定数ありました。400文字程度の指定に対して10文字程度の文章とか,アドミッション・ポリシーとか学ぶ内容を全く無視して書いている文章,こういったものは加点の対象にはならないというようなところです。
 多様な添付資料がある一方で,添付なしというのも多々ありますし,最後に,書類審査採点システムの利用についてですけれども,丁寧に評価しても長時間を要せず採点が終えられましたし,事務作業は短時間で終えることが可能というようなことで,これによって一般入試の評価が実現できたということです。
 25ページになりますが,実施結果どうだったのかといいますと,やはりこういった書類を一般入試の出願前に本人に書かせますと負担がかかりますので,志願倍率が落ちるんじゃないのかと考えていたわけです。大学にとっては非常に重要なところですが,そういったことによる志願倍率の低下は見られませんでした。どれぐらいの人が申請してきたのかといいますと,初年度が2019年度入試なんですけれども,理工学部では前期日程で55%の申請率だったものが2年目だと68%まで上がりました。
 スライドの26が農学部なんですけれども,農学部も同様に志願倍率の低下は見られない。申請率も,1年目と比べて2年目は前期日程だと73%まで上がってきているということで,徐々に申請する受験生も増えてきている状況です。
 時間も参りましたので,最後になりますが,スライドの27で,1年たちましたので追跡調査をした結果でございます。特色加点を申請した人としなかった人を分けて比較した場合,入学手続率,2年分を示していますけれども,書いた人たちのほうがやはり入学手続率が高いというところが分かっています。さらに1年たったGPA,学業成績についても,申請を書いた人のほうが書いてない人よりも成績は良好である。アドミッション・ポリシーについても同様です。そして,入学者アンケートで入学前の行動とか考え方についても聞いていますけれども,そこに自律性,他律性,自制心,自己主張,リーダー性とありますが,自律性とリーダー性についての平均値は申請者のほうが高かったというところが分かっています。そうであれば,合格ボーダー層で未申請者よりも申請者を採ったほうが大学にとってアドミッション・ポリシーに沿った人材を採れることになるのではないかと考えています。
 最後の28のスライドなんですけれども,成績開示に関しましては,やはりどういった評価がなされたのかということをしっかりと伝えなければいけないということで,A,B,C,Dということで段階評価で成績を開示しております。
 駆け足になりましたけれども,以上でございます。
【圓月主査】
 西郡委員,どうもありがとうございました。非常に興味深い事例で,いろんな御質問あるかと思います。それでは,柴田委員の手が挙がりましたので,柴田委員,よろしくお願い申し上げます。
【柴田委員】
 先生の取り組み,個人的に以前より関心を持って見ておりました。その中で申請する人は過半数ですけれども,申請しないという選択をされた方が想像がつかないんですけども,どういう特色がおありなんでしょうか。
【西郡委員】
 ありがとうございます。実際入試の得点で見ても,入試得点が高いから申請しない人が多くなるとかそういったことはありません。どこの得点分布でも,同じような形の割合になっています。申請しないというのがどういった理由なのかというのを,いろんな高校に伺って聞く限り,やはり面倒くさくて書かなかったというような生徒も一定数いますし,特に後期日程の出願が少ないんですけれども,前期はほかの大学を受けていて,そこまで手が回らなかったとか,そういった形で申請しなかった人たちが分けられているようです。
【柴田委員】
 ありがとうございました。合否入替え率もさほど大きなものではないということですね。
【西郡委員】
 そうですね。数名です。
【柴田委員】
 ありがとうございます。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。ほかに,何か御質問や御意見ございますでしょうか。
 それでは,明比委員から手が挙がったと理解しております。よろしくお願い申し上げます。
【明比委員】
 ありがとうございます。非常に参考になります。スライドの10ページのところで,過度な動機づけは避けたいということで,ここに先生のほうの,そんな活動や実績じゃ主体的だと評価してくれないぞとかという絵がございますが,実際には,日常的な高校生活の範囲内で活動していた活動内容が多かったとは伺ったのですが,本当に過度な動機づけをしてきた生徒さんは全くいなかったのでしょうか。そこはどうでしょうか。
【西郡委員】
 これについては,実際指導したところまでは我々のところは追えませんので,そこの実態までは分かりませんが,恐らく,導入してまだ2年ですけれども,そこまで,高校側も過度な指導をするほどの体制は今のところ,あったとは聞いていません。今のところ,出せるものを出しているというようなことを聞いています。
【圓月主査】
 よろしいでしょうか。それでは,牧田委員からも手が挙がったと思っております。よろしくお願い申し上げます。
【牧田委員】
 ありがとうございます。牧田です。スライドの実施をされて振り返りのところが……,あれ,どこでしたっけ,すいません,なくなっちゃった。24ページですね。実施して分かったことというのがあって,2番目に合否入れ替わりは主として未申請者というところがあるわけですけれども,今回の場合は,申請するかしないかというのは選択できる土壌にあっての判断だと思うんです。お伺いしたいのは,これが今,例えばe-Portfolioなどを導入していって生徒たちにマストにしてしまうと,どのような結果が出てくると予想されますか。私見で結構ですので,参考のためにお聞きしたいと思います。
【西郡委員】
 マストにしてしまうと,やはり得点を持っている子たちというのは,ほぼ影響しないというのが分かっています。やはりそこには,高校生が自分の全く影響しないものをなぜ申請しなきゃいけないんだろうというようなところは考えるのかもしれませんし,やはり今回の得点というのは,最大で30点とか50点ですけど,加点というのはそこまで加点されません。センター試験とかの設問とかでの2問とか3問程度です。ですので,そういった書類に物すごい時間をかけるよりも,勉強して,問題を2問,3問,より解こうという主体的な判断をするんだったら,そっちのほうをやってもらっても構わないということで,我々としては,そこをマストにしたくなかったというところでございます。
【牧田委員】
 ありがとうございました。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。
 それでは,時間も迫ってきておりますので,もう一つ程度ということで,垂見委員からよろしくお願い申し上げます。
【垂見委員】
 ありがとうございました。大変参考になりました。1点お尋ねしたいのが,前回の会議でも申し上げたんですが,こういった新しいことをする際に,家庭の経済環境が厳しい子供というのは,いろんな意味でハードルが高いと思うんですけれども,1つは,このようなことを書くのに慣れていないというのと,もう一つは,そもそも,そういったプラスアルファの経験をしていないという場合が考えられると思います。今あるデータで可能か分からないんですけれども,例えば,入学した人の中で,申請者と未申請者が経済環境が違うのか,あるいは,得点で,例えば,家庭環境の厳しい子供は申請したとしても得点が低い傾向があるのか,そういった分析はされたことがあるのかというのと,することが可能なのか。
【西郡委員】
 ありがとうございます。もしできるとすると,奨学金であるとか授業料免除とか,そういったデータと組み合わせれば,そういったのが追えるかもしれませんが,まだそのデータを持ち合わせていません。今後,少し見てみたいと思います。ありがとうございます。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは,大分時間も迫ってきておりますので,次の発表に移らせていただいてよろしいでしょうか。
 それでは,次に,巳波委員からお願いいたします。よろしくお願いします。
【巳波委員】
 関西学院大学の巳波です。よろしくお願いいたします。「高大接続改革における多面的評価のための電子調査書システム」ということで説明させていただきます。
 まず,アウトラインといたしましては,必要性,これはもう言わずもがなかもしれませんが,必要性,そして,調査書活用の課題,それから大学の視点から見た課題,そして,本学が代表校として委託事業を受けております電子調査書システムの概要について御説明したいと思います。資料の右下のほうにページ番号が書いてあるので,そちらを参照してください。
 まず,多面的評価の必要性についてです。ページ番号3ページを御覧ください。これから社会構造が急速かつ大きく変革する予見困難な時代におきまして,新たな価値を創造していく力を育てることが必要です。そのためには,3つの資質・能力,つまり,知識・技能,思考力・判断力・表現力,そして学びに向かう力,これらの3つの資質・能力を多面的・総合的に評価する必要がございます。
 4ページに移りまして,しかし,現状の入試においてそれができているのだろうか,生徒の多様な能力を評価できないものだろうかというのが問題意識でございます。能力を見いだす入試,一人一人の能力を見詰める丁寧な入試への転換が必要ではないかと考えております。
 5ページに移りまして,そのための方法や素材は既にいろいろなものがございます。面接,集団討議,プレゼンテーション,そして調査書や提出書類などがございます。既に主体性等の評価は行われているわけですけれども,ここで押さえておかなければならないポイントが何点かあるかと思います。
 まず,主体性等の評価だけで合格できるという誤解があります。これはあくまでも多面的・総合的評価の一要素であって,主体性の評価だけではないということです。それから,志願者の多い一般入試では面接等を実施することは現実的に不可能ですので,電子化された調査書,提出書類を活用することが必要不可欠であるかと思われます。それから,経済環境による格差などが生じてはならない。これらが押さえるべきポイントだと考えております。
 次のページに移りまして,調査書活用の課題についてまとめております。7ページを御覧ください。志願者の少ない入試におきましては既に活用されておりますが,志願者の多い一般入試などでは活用することは現在は困難でございます。現在の調査書だけでは,学力を評価することも困難です。これは,高校によって評価にばらつきがあるため,学力評価に活用することが困難です。在校生全員がA評価とかB評価の高校も実際にございます。
 8ページに移りますが,生徒の多様な活動を通じた評価をすることも実は難しい。これは,「特に記載なし」と書かれているものであったり,同一校で全て同じ内容であったり,また,定型文例の記載となっているもの,そういう場合も多くて評価に活用することができません。
 また,所見につきましても,詳細に記載されていたといたしましても,例えば,この生徒は熱心に取り組んでいるとか,そのような主観的なものであれば評価には活用しにくい面もございます。
 また,端的な記載のため評価ができないこともあります。例えば,生徒会長をやっていたとか部長をやっていた,また,ホームステイ経験があるだけ端的に書かれていたといたしましても,それだけではなかなか評価できない。レベルが明確なコンテストや大会の記録につきましては評価は可能ではありますが,これでは一部の生徒だけに限られてしまいます。
 これらの課題をまとめたものが9ページにございます。現行の調査書の記載内容の活用における課題といたしましては,まず,具体的にどのような取組をしたのか判断することはできません。それから,ホームステイや生徒会長のようなこともありますが,生徒の経済環境や地域格差などが影響する可能性もありますし,または,コンテストの入賞経験などのこともありますので,一部の生徒だけが評価の対象になる可能性があります。また,主体性の評価だけで合格できるという誤解もまだ根強いものですから,高校教育への悪影響というものが考えられます。これらが現在の調査書活用の課題かと考えております。
 次,10ページへ行きまして,現在,調査書の見直しが進んでおりますけれども,見直し後の調査書の活用の可能性につきましてまとめました。見直し後の調査書におきましては,より多様で具体的な内容が記載されるようになるわけですけれども,その見直し後の調査書をどのようにして活用できるのかというものを,その点の課題をまとめております。
 11ページを御覧ください。紙媒体のままでしたら,志願者の少ない入試におきましては活用可能ではありますが,志願者の多い入試につきましては同様に難しい,電子化しなければ困難だと思われます。また,先ほどと同様の理由で,学力の評価も難しい。生徒の多様な活動を通じた評価につきましては,より多様で具体的な内容の記載があればできる可能性はございます。しかし,高校の先生方からの現場の声も多々お伺いしておりますけれども,これはなかなか難しいんではないかという強い声を頂いております。より多様で具体的な内容を書かなければならないということは書く分量が増えますので,先生方の働き方改革に逆行することとなってしまいます。
 また,調査書の元資料となる指導要録の簡素化が進められておりますが,そういった動きとも逆行することになる。または,経済格差,地域格差で得点化されることに対する誤解などから不安というものもあります。
 次に,12ページに移りまして,指導上参考となる諸事項の項目以外,備考欄などですが,そこに多様な学習や履歴などの記載があれば評価は可能となります。しかし,やはりこれも難しい。調査書を大学ごとに複数枚作成することは,作成業務上,極めて困難です。業務負担も増加しますし,ミスの可能性も増えます。また,大学がやるべきことを高校に押しつけているんではないかという声や,1枚に複数の要素を盛り込むことも困難である,このような声を頂いておりまして,見直し後の調査書を活用することを考えましてもなかなか難しい,また,課題は多々あると考えております。
 続きまして,大学の視点から見た課題でございます。14ページを御覧ください。まず,何をどう評価するのかというところですけれども,生徒の多様な能力の評価に当たり何をどう評価するのか。もちろん高等学校での学びにより培った資質・能力の評価でございます。その際注意しなければならないのは,一部の生徒だけが対象とならず,全ての生徒を対象に資質・能力を見るべき。また,格差にも注意しなければなりません。
 では,そのためにどのような資料が必要でしょうか。調査書だけでは評価することは困難だと思われます。これは電子化された場合ももちろんそうです。なぜならば,まず,成果物,証明資料などの添付ができません。それから,端的に記載された成果や記録の記載だけでは評価ができません。また,一部の生徒だけが対象となってしまう危険性もあります。また,成果の記録を得点化することに対する生徒や保護者からの不安の声もございます。また,次が一番大きいかと思いますが,高等学校での作成の負担などの現状を考慮すると,詳細な記載は求めることが難しいのではないかと思われます。
 次,16ページに移りまして,現状,AO入社や特別選抜入試では,詳細な活動・実績報告書や証拠を添付させて掲出させております。つまり,学びの成果とともにプロセスが記載された詳細な資料を見て判断しているわけですけれども,やはり,このような資料が必要になるだろうと考えております。しかし,生徒には作成のために大きな負担がかかるのではないかという声もございます。入試の直前に高校生活全体を振り返って資料を作成することは大きな負担になりかねません。
 これに対しまして,一方,前回の委託事業で開発いたしましたJAPAN e-Portfolioというものがある,これをうまく活用できるのではないかという考え方もございます。e-Portfolioは,主体的な学びを育むために活用されるものではありますけれども,ここには既に多くの生徒が学びの記録と資料を蓄積しております。大学出願時に提出する書類の作成に,これらの情報を活用可能ではないかと考えられています。
 17ページに移りまして,つまり,調査書と提出処理,ここには学びのプロセスが記載されたものですが,これらを電子化したもの,これらを活用すれば,成果だけではなく学びへの取組から一人一人の生徒の資質・能力を多面的・総合的に評価することは可能になると考えられます。
 次の18ページに移りまして,例えば評価の例といたしましては,総合的探求に関する評価をしたいという場合では,論文や発表資料が必要不可欠となります。しかし,そういう論文や発表資料の成果だけでは評価することはなかなか難しい。なぜならば,グループで取り組んだ場合,個人人の役割,関与度合いが違う,また,高校での指導の度合いも違います。したがって,成果だけで評価することはなかなか難しいわけですけれども,学びのプロセスの記録があれば,それを活用すれば一定の評価ができる可能性もございます。
 19ページを御覧ください。成果というのは,論文,発表,コンテストなどのものですけれども,プロセスの記録というものは,研究や実験記録,参考文献,研究室の訪問記録や調査記録,フィールドスタディーの記録などでございます。例えば論文自体は非常によくできているが,そもそも本人がどこまで理解しているのか,どこをどういう関与しているのか分からない。成果だけで判断するんだったら,こういう疑問は解消されないわけですけれども,例えば,プロセスが記録されているものが参照できるのであれば,どのような文献を選んだのか,どのような調査,フィールドワークをしてきたのか,どのような振り返りをしたのかなどを見ることができますので,一定の判断が可能となります。このように,成果と学びのプロセスとを併せて評価することによって主体性などの評価が一定可能になると考えております。
 時間のこともありますので,次に,電子調査書システムの概要につきまして御説明させていただきます。22ページを御覧ください。調査書の電子化につきましては,国立大学協会様からも要望されていますように,様々なところから調査書の電子化が求められております。そして,現在進んでおります委託事業におきましても,電子調査書が効果的に評価できる環境整備及び調査書における評価の在り方の調査研究,これが進められております。
 現在,これは本学,関西学院大学が代表校として調査研究しているものでありますが,どのようなものかというものをまとめたものが24ページでございます。この電子調査書システムというものは概念的なものでありまして,例えばここに「電子調査書データ」「e-ポートフォリオデータ」というサーバーの絵が描かれておりますが,別にこれは1つの物理的なサーバーではなくて,もちろん分散データベースであったり,クラウドに暗号化して載せるものでも,技術的な実装方法はいろいろありますが,ここでは,一元的な運営主体がこういうデータをハンドリングするという,そういう概念的なイメージとしてお持ちください。
 まず,電子調査書システムがあります。まず,左のところにあります高等学校の下のほうにありますが,高校生です。高校生は日々,学びの記録と振り返りを学びの記録として記録しております。また,これは直接e-Portfolioデータとして登録したり,また,民間のe-Portfolioを既に利用しているのであれば,それらを連携させることによってe-Portfolioにデータを蓄積していきます。
 そして,高校の先生は,例えば,指導要録を作成する場合,こういうe-Portfolioのデータを閲覧,ダウンロードをするなどして指導要録の作成に役立てることができます。また,その指導要録に基づいて,電子調査書の作成をすることが可能となります。
 次に,高校生が大学に出願する場合,電子調査書システムの下側を見てください。大学提出用データ,こういうものを高校生が作成することとなります。それは出願先大学を選んだり個人情報を登録する,また,学びの記録などを選択する,e-Portfolioデータのどのデータを使うかということを選択する。また,大学が指定する情報があれば,それを入力するわけですけれども,これらの記述の際には,このe-Portfolioデータが役立つわけでございます。また,それらを活用して作ることができます。
 そして,電子調査書につきましては,高校の先生に調査書を作ってくださいと頼むと,先生が電子調査書を作成して登録いたします。その内容そのものではなくて,そのコード番号,大学出願用データにひもづける,関連づけることを行います。そして,作り上げた大学提出用データのデータコード,番号,それを大学に送付する形になります。大学がウェブ出願システムを持っている場合は電子的に,また,それがない場合は,QRコードなど,紙化したものを郵送出願する形となります。大学はそういうデータコードを受け取って,それに基づいて必要なデータをダウンロードし,評価に用いる,これが一連の流れのイメージでございます。
 25ページに移りまして,これは英国のUCASなどに相当する日本独自のシステムで,電子調査書授受機能とポートフォリオ機能,そして,そのショーケース機能,これらを融合したものでございます。
 次に,26ページを御覧ください。このように,調査書とポートフォリオ情報,ポートフォリオデータを一体化して活用することには多くのメリットがございます。
 まず,生徒の多様な活動に関する証明資料や情報が利用可能になりますので,より多くの情報に基づく多面的・総合的な評価が可能となります。これは大学にとってのメリットとなります。また,出願書類が全面電子化されることによって,入試業務の簡素化と出願ミスの減少につながります。これは,全てのものでのメリットとなるでしょう。また,ポートフォリオ機能における成果の真正さが確認できますので,入試選抜でも活用が可能となります。また,高校にとりましても,先生方の稼働を増やすことのない対応で具体的な内容を記述することへの対応も可能になりますので,これは大きなメリットとなるかと思われます。
 また,調査書や指導要録の作成に当たって,ポートフォリオ情報を参考にすることができますので,作成稼働の大幅な軽減が期待できます。また,生徒にとりましても,蓄積した情報を入試にも活用できますので,入試の直前に慌ててまとめなくても,ふだんから蓄積したものから取捨選択して整理してまとめることによって提出することができますので,生徒にとっても大きなメリットとなるかと考えられます。
 このようなシステムがもたらす効果につきましてイラストを描いておりますが,またこれは後ほど御覧ください。
 このようなシステム,既に1年かけて開発してまいりましたけれども,29ページから31ページまで,高校の先生方にデモをいたしまして,見ていただきました。そして,いろいろな声を頂いております。詳細はまた御覧ください。
 ただ,何点か申しますと,まず2点目,送付ミスが起こらないようになっているのは助かる。また,その次もありますが,調査書の記載だけでは限界がある。様々な分量を書かなきゃいけなくなると,調査書の記載だけではなかなか大変だと。この部分,ポートフォリオを活用すると助かる,望ましいというような声もございます。
 31ページの一番下にも出ておりますけれども,一元的に運用してほしい。例えば,民間なども交ざった複数の団体にまたがると経費もかかることになって,それは生徒に転嫁してしまうことになるので,また発行ミスの可能性も出てきてしまう,こういう問題もあるというような御指摘もあります。
 最後,32ページに行ってください。知識を問う入試から能力を見いだす入試,一人一人の能力を見詰める丁寧な入試に寄与するものとして電子調査書システムがあるかと思われます。生徒一人一人の学びの取組にスポットライトを当て,調査書だけでは評価されないような多様な取組から能力を評価できるようになると思われます。また,これからは生徒と大学の適合性,より重要になるかと思われますけれども,つまり,振るい落としからマッチングへという流れが主流になるかと思われますが,そのようなものにも貢献できるのではないかと思っております。
 また,より丁寧な評価をより効率的に行うためにこそICTがある,それを活用できると考えております。私自身は専門が情報科学,数学ですので,まさにICTを使って,先生方の稼働が上がってしまうことはあり得ない,むしろICTを活用して稼働を下げて,よりよい世界が広がるようにしていきたいと考えております。
 以上,簡単ながら御説明といたします。ありがとうございます。
【圓月主査】
 巳波委員,どうもありがとうございました。それでは,何か御質問や御意見ございますでしょうか。
 早速,牧田委員から手を挙げていただきましたので,牧田委員,よろしくお願い申し上げます。
【牧田委員】
 牧田です。2点お伺いをしたいと思っています。
 まず1点目は,このJAPAN e-Portfolioというのは,大前提として,生徒が日々,入力を義務づけられていると解釈をしています。そのプロセスの中で何が起きるかなということをちょっと懸念するのは,先ほどの西郡委員の資料の10ページにありましたけれども,つまり,過度な動機づけになってしまって,これが結局,子供たちの高校生活をある意味ゆがめてしまうという懸念が1つあると思っています。
 もう一つは,非常にまれな例ですけれども,高校の2年半ぐらい遊んでいて,ほとんどこういったことを入力せずに,最後の半年ぐらいで一気に大学受験に向けて勉強して,入試を突破していくという子供たちがいるのですが、そういった子供たちにとっては,このシステムはどういうふうに作用するのかなということと,加えて,浪人生は,浪人時代の学びの記録というのが,ある意味,もし高校3年間の学びの記録が評価されるのであれば,浪人時代の学びの記録だって評価されてもいいのではないかと思っています。したがいまして,この辺の日々の入力に関して3つの疑問があるので,どのようにお考えかなというのをお聞きしたいのが1点。
 2点目ですけれども,先生の資料の20ページに,JAPAN e-Portfolioへの誤解ということで,最後に,民間事業者に情報が流出してしまうのではないかという誤解がありましたけれども,いろんな機関を活用してe-Portfolioのデータを利用するということがちらちら見え隠れするものですから,公的運用機関が一元的にやっていただけるなら全く問題ないのだろうと思いますけれども,もし民間のそういう機関を利用して,そのデータをここに転用なり活用するということになりますと,最近,某社で子供たちのデータが漏れたという事件がありましたけれども,そのようなことが往々にして起きるのではないかなという懸念を持っております。この辺についてはいかがお考えかなという,この2点についてお伺いしたいと思います。
【巳波委員】
 ありがとうございました。まず,1点目につきまして,日々,e-Portfolioに入力を義務づけられていて,それが高校での学びをゆがめないかという御質問だと理解しているんですけれども,もともとe-Portfolioというものは自分の学びの振り返りであって,義務づけられるものではあるべきではないだろうと私は個人的には思っております。
 ふだんの自分の学びを振り返るために入れるべきものであって,まさに大学入試で役立つから入れるべきだとか入れろとか言われるものではないだろうと考えております。これは高校における指導の仕方によるといいますか,それに依存するものではないかと考えております。大学入試に過度に適合するようなことがあってはならないと私も考えております。
 それから,2点目,ほとんど入力していないで,最後に勉強して大学に入学するような者はどうかということですけれども,この電子調査書といいますか,今回のこのe-Portfolioの活用につきましては,e-Portfolioを活用して大学に入学するような,そういうような入試もありますし,あっていいでしょうし,また,逆に筆記試験だけで,いわゆる学力だけで入学するような,そういう入試もあってもいいと思います。それは多様な入試が用意されて,生徒は自分に適合した入試を選んで,そこで自分がよく評価されるような入試を選んで出願する形になっていくと思っております。
 次に,浪人生につきましてですが,浪人生の扱いをどうするかというのが今後の検討課題になるかと思います。浪人時代の学びというものも一定,どのように自分を変えたかというものにも関わりますので,1つあっていいものだと思いますけれども,これをどのように評価するのかというものは今後の検討課題かと思っております。
 それから,民間ポートフォリオの話がございましたけれども,民間につきましては,私といたしましては,やっぱりこれは公的な機関が一元的に運用すべきものだと考えておりまして,民間の事業者が,ましてや複数立ち上がって運営することは,これはあり得ないと思っております。それは1つ,情報流出,ほかのところに使われる危険性,それから,複数ある場合は,いわゆる窓口となるものが高校から見て複数,大学から見て複数となるので,やはりコストがかかってしまう,稼働がかかってしまうというところから,これは公的な機関が一元的に運営すべきものじゃないかと考えております。お答えになっているでしょうか。
【牧田委員】
 ありがとうございました。1点目については,こういう現実があるということもぜひ御理解いただきたいのですけれども,高校生といえども,全員が日々入力できるレベルにはないということも実態としてございますので,その辺の対応も含めて,ぜひ今後お考えいただければと思います。どうもありがとうございました。
【巳波委員】
 ありがとうございます。
【圓月主査】
 ありがとうございました。
 それでは,石崎委員が手を挙げてくださっているので,よろしくお願いします。
【石崎委員】
 石崎でございます。よろしくお願いいたします。巳波先生,ありがとうございました。調査書についても,当初の課題から随分いろいろなところに配慮していただいて,分かりやすいものになっていると思います。
 4つお話ししたいんですけれども,やっぱり第1に,今,牧田委員からもお話ありましたけれども,データの安全性ということについて,今回の民間のID流出というのが報道されましたけれども,まさにJePと同じ頭文字で始まるIDだと思うんですけれども,それがやっぱり,高校生にとってはすごく不安を与えていると思います。今日お休みの長塚先生の資料にもありましたけれども,やはり調査書のデータを一元的に管理するということの危険性は拭えないと思うんですね。絶対はないと思うんですね。そうした中で,調査書の電子化ということが,データを保持することが本当に必要なのかどうかという。このシステムで言うと,24枚目のスライドに頂いたこのピンクへ塗られているところのこの部分が,本当にここでデータを保持しておく必要があるのかどうかということについては,やっぱりもう一度考えていただいたほうがいいのかなというような印象を持ちました。
 それから,2点目にお伺いしたいのは,このシステムをつくったときに,大学のほうで本当にこのニーズがあるんだろうかということなんです。先ほど,佐賀大学の御説明にもありましたけれども,どこのところでそのデータをどれだけ使うのかというのがまだ見通しがない大学がほとんどなんじゃないかと思うんです。先ほどのお話でも,全員に使うのかと思うと,やっぱり,ボーダーの少しのところで使うんだというようなことでしたし,本当に全大学が全受験生のこういうデータを必要とするのかな。一般入試で使うことを当初は目的に,何か全員が使うんじゃないかなというイメージでスタートしていたんですけれども,実際大学のほうで本当に全受験生に対してこれを使おうとしているのかどうかなというところに,必要性という意味での疑問があります。
 時間がないので急ぎますけれども,3点目は,高校の働き方改革,教員の働き方改革に御配慮いただいている部分もありがたいんですけれども,これもやっぱり先ほどの佐賀大学の例にあったように,生徒が直接大学にデータをエビデンスとともに提供すれば済む話というものが多分に感じられるんです。その辺についてはどうお考えになっているのかということ。
 4点目については,いつも申し上げていることなんですけれども,巳波先生は,これは大学入試での委託事業だからといつもおっしゃるんですけれども,やっぱり高校側としては,進学する生徒は全体の55%で,進学しない生徒も含めてこのe-Portfolioを蓄積していく意義というのをなかなか共通理解を図るのは難しいなと思っておるんですけれども,その4点について御見解などを教えていただければと思います。
【巳波委員】
 石崎先生,ありがとうございます。なかなか難しい質問ではございますが,まず1点目,データの安全性,データの流出の危険性といいますか,この辺りにつきましての御質問かと思いますけれども,スライドの24ページに書いておりますのは,これは概念的なものであって,1つの物理的なサーバーの中に全データを集めるということだけとは限りません。実装方法といたしましては,例えば分散データベースを使うとか,暗号化して様々なクラウドに置くとか,または個人で持っておくとか,実装方法としてはいろいろあるかと思いますけれども,概念的には,一元的に管理といいますか,一元的にハンドリングするような組織がないといけません。
 例えば,調査書のデータフォーマットをどうするのか,また,e-Portfolioデータをどのようにひもづけるのかとか,こういうところを統一化しておかなければ,それこそばらばらになってしまって,A大学とB大学では全く違う。また,大学から見ても,生徒から送られてくるのは,C高校とD高校では全く形式が違うとかなってしまうと問題となります。ですから,この辺り,フォーマットを合わす,または提出する方法,ダウンロードする方法,この辺りを統一化するための仕掛けが必要であろうということです。そういう意味では,1つのサーバーの中にまとめることだけが1つの実装方法でありませんので,この辺りは適切な方法を考えていく必要があるかと思われます。
 ただ,ここでは技術的な話にはなりますけれども,現在,枯れた技術といたしましては,1つのサーバーの中に入れるというものはありますので,ここから実現するのがまずは早いだろう。技術的には最先端のものを使うことも可能ではありますが,それはまだ枯れたものではありませんので,それはそれでリスクがあると考えております。
 2点目ですけれども,大学のニーズはあるかということですけれども,これは鶏と卵の関係かもしれません。ここ辺りは,大学のニーズはあると考えておりますけれども,現在,このようなシステムがないからニーズがないように見えてしまうのかもしれません。逆にこれがあれば,じゃ,使っていこうという大学も出てくると思われますし,逆に,私などは大学におりますが,大学人といたしましては,こういうものが使えるのであればぜひ見ていきたいとは思っております。
 3点目,働き方改革ですけれども,生徒が大学に直接提出すればいいのではないかということですけれども,例えば,提出の仕方というところではございます。例えば,メールで送るとかだったら,これは大学がハンドリングできない形になりますし,やっぱり何らか提出先であるとか,また,受取先であるとか,この辺りは統一化しておかなければならないだろうと思っております。ちょっと実装の話にも関わることかと思っております。
 それから,4点目,進学する生徒が50%程度ということで,進学しない生徒も多々いるということですけれども,この辺りは,調査書を大学に提出するだけではなくて,企業であったり,提出するところにもうまく使えるように拡張できたらいいかもしれません。また,e-Portfolioにつきましては,これは進学するかしないかに関わらず,学びの振り返りに使えますので,これは全ての生徒にとって有用なものではないかと考えております。
 以上,お答えになっているかどうか分かりませんけれども,よろしくお願いします。
【圓月主査】
 ありがとうございました。
【石崎委員】
 ありがとうございました。
【圓月主査】
 予定の時間になっておりますけれども,井上委員と柴田委員の手が挙がっておりますので,少し時間をオーバーして御意見をお伺いするということでよろしいでしょうか。
 それでは,井上委員,できるだけ簡潔によろしくお願いします。
【井上委員】
 ありがとうございます。私は第1回目からの参加で,その前の過程が分かってないので,ちょっととんちんかんな話をするかもしれませんが,御了解いただきたいと思うんですが,巳波先生の資料の24ページに,この図がありますけれども,この図の中で,前回,第1回目の会議の資料9の全体のイメージでは,紙での電子調査書の提出というのがありました。それに関して,文科省さんに問合せをしましたら,紙の調査書提出プラス・インターネット出願を導入してない大学という答えがありまして,ということは,全くこの電子調査書システムを利用しない大学さんがいらっしゃるということだと思います。
 ということは,せっかくこれをつくっても,大学側が使いたくなければ全然構わないということになれば,高校側とすれば,この大学には電子調査書,この大学には紙というような形で作業が複雑になるかと思うんですけども,今のところ,この電子調査書システムというのは全部の大学が利用する前提で考えられているんでしょうか。
 それともう一つなんですが,先ほどセキュリティーの話がありましたけれども,電子調査書システムと高校をつなぐ,それから,電子調査書システムと大学をつなぐ,これはインターネットで何らかの回線があるかと思いますが,今,セキュアなネットワーク回線、保障されたものがないかと思うんですけれども,今,この実際のシステムを構築されるに当たって,セキュアなネットワークはどのようなことを想定されているか,そこを教えていただけたらありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
【巳波委員】
 ありがとうございます。
 まず1点目の,全ての大学がこの電子調査書システムを使う前提かどうかというところではございますけれども,基本はそのように考えております。大学にとりましても,紙よりも電子的に受け取ったほうが稼働やコスト面からも有効ですので,やはり大学は電子調査書に対応していくことと考えられます。
 ただし,導入して最初の数年か,1年か2年はまだ対応できない大学も現実的にはあるかと思われます。ですので,そのような大学にとっても対応できるように紙でのやり取りを残していると,そのルートを残しているということであって,これが両方あるよということではなくて,暫定的な措置としてのルートでございます。
 2点目,ネットでつなぐところで,現在,セキュアな回線がないというところではございます。それは重々認識しておりまして,現時点では様々な条例の壁とかもございまして,現時点ではまだ難しいところもございます。ですので,やがてガイドラインの改正なども必要になってくるかとは思われますが,そういうようなガイドライン改正なども含めまして,これを実現していくことが必要になるんじゃないかと考えております。よろしいでしょうか。
【井上委員】
 はい。ありがとうございました。
【圓月主査】
 ありがとうございました。
 それでは,柴田委員,よろしくお願い申し上げます。
【柴田委員】
 時間を超過して恐縮ですけども,2点ほど確認なんですが,1つは,以前お尋ねしたと思いますけれども,大学入学後も継続して,これを活用できるようなシステムの展開をお考えになっておられればうれしいなというところと,もう1点は,先ほどちょっと巳波先生の御発言にございましたけれども,多面的,多様な選抜というのは,大学では既に一般入試では,学力だけで選ぶとか,推薦では多面的に選ぶとか,そういう選び方はもうやっている,これからもやるだろうというようなお話だったんですけども,我々も当初,多面的な入試というのは,いろんな選抜メニューをつくって,大学としては多様な入試をしているということと理解していたんですけれども,今回の改革というのは,入学者がどのような選抜区分で受験しても多面的に見なさいというところで非常に悩んでいるという具合に私は理解しているんですけども,巳波先生,その辺りは,先ほどの御発言はどういう趣旨だったのかを確認してみたいと思いまして,時間超過して失礼ですけども,お尋ねさせていただきました。
【巳波委員】
 ありがとうございます。
 まず1点目,大学入学後も活用できるか,できることを想定しているかというところですけれども,もちろんそれを想定しております。大学にとりましても電子的にデータが集まりますので,入手できますので,それを大学のポートフォリオのシステムと関連づけることも簡単にできます。紙でありましたら,それを大学が入力しなければならないという稼働がありますが,電子的なものであればそれをコピーするだけ,もしくはボタン1つで転用できる,そちらに入力することができますので,大学入学後の活用もこれで可能になるかと考えております。
 それから,2点目の話,これは非常に難しいところでございます。どのような入試区分でも多面的・総合的に評価しなければならないのかというところでございますけれども,これ,私が答えるというよりは文科省様が答える話になるのかなというところではございます。また,私個人的な考えといたしましては,やはり入試区分によっては,学力重視であったり,また,別の入試区分におきましては,例えばこのようなポートフォリオデータを活用した入試であったり,入試区分ごとにその重みは変わってくるんじゃないかな,そのようになるんじゃないかなとは思っております。お答えになっているかどうか分かりませんが。
【柴田委員】
 ありがとうございました。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは,まだまだ御意見あるかと思いますけれども,時間の関係もございますので,本日の第2回協力者会議はここで閉会とさせていただきたいと思います。
 次回は,高校側の委員の先生方より意見発表をしていただこうと思っております。具体的な点につきましては,副主査の川嶋先生と私で相談をさせていただいて,調整をさせていただこうと思っておりますが,そういうことでよろしいでしょうか。
 それでは,最後に事務局から連絡をよろしくお願い申し上げます。
【小川大学振興課専門官】
 事務局でございます。第3回目の日程につきましては,委員の先生方の日程を調整の上,決まり次第御連絡させていただきます。本日,時間の関係で言い足りないところがございましたら,事務局までメール等でお知らせいただくようお願いいたします。皆様,本日は御多忙のところ,ありがとうございました。
【圓月主査】
 どうもありがとうございました。全国で非常事態宣言も出ておりますので,くれぐれも御自愛をお祈り申し上げております。


―― 了 ――

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 電話番号:03-5253-4111(内線4902)