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国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議(第1回)議事録

1.日時

令和2年2月21日(金曜日)9時00分~11時00分

2.場所

文部科学省15階 15F特別会議室

3.議題

  1. 検討会議の議事運営等について
  2. 国立大学改革の変遷と現行制度について
  3. 意見聴取及び自由討議
  4. その他

4.出席者

委員

金丸座長、濵口委員、上山委員、大野委員、五神委員、小林委員、篠原委員、冨山委員、星委員、松本委員、山極委員

文部科学省

伯井高等教育局長、玉上審議官(高等教育及び高大接続担当)、森審議官(高等教育及び科学技術政策連携担当)、淵上国立大学法人支援課長、生田高等教育局視学官、浅原国立大学戦略室長

5.議事録

【生田高等教育局視学官】 定刻となりましたので,ただいまより第1回国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議を開催いたします。本日は御多忙の中,御参集いただきまして誠にありがとうございます。会議の冒頭につきましては,私,高等教育局の生田が進行させていただきます。
なお,この検討会議は,原則として公開で行うこととしております。取材,傍聴の方がいらっしゃいますこと,及びカメラによる撮影があり得ることをあらかじめ御了承ください。
それでは,会議の開催に当たりまして,高等教育局長の伯井より一言挨拶申し上げます。
【伯井高等教育局長】 皆さん,おはようございます。文部科学省高等教育局長の伯井でございます。このたびは金丸先生に座長をお願いするということで,快くお引き受けいただいておりますが,金丸座長をはじめ委員の皆様方におかれましては,大変お忙しいところ,国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議の委員をお引き受けいただきまして誠にありがとうございます。
この会議の設置の趣旨を簡単に御説明いたします。国立大学は,昭和24年の学制改革以来,約70年間が経過しております。その間,平成16年の法人化を経て様々な改革が進められ,地域の社会経済,文化,医療,福祉などの拠点として地域の特色を生かしつつ,人材育成を図る,あるいは高度な研究を推進することで我が国全体の均衡ある発展に大きく貢献してきたところでございます。
一方,国立大学を取り巻く社会の状況を見ると,急速なグローバル化,激しい国際競争激化の中で大きな転換期にございます。国立大学はその貴重な知的資源を最大限活用し,今まで以上に機能を拡張して,Society5.0社会の到来に対応する世界に伍する教育研究を展開することで,社会変革の原動力として役割を更に担っていただくことがこれまで以上に期待されております。
そうした状況の中,昨年6月の閣議決定,骨太方針2019におきまして,イノベーションの創出の中核としての国立大学法人は,世界の先進大学並みの独立した個性的かつ戦略的大学経営を可能とする大胆な改革を可及的速やかに断行すると規定されておりますが,正に国立大学が社会変革のエンジンとして我が国の成長に大きく貢献するために,待ったなしの改革が急務であると考えている次第でございます。
本検討会議では,こうした大変革時代の知識集約型社会で,より一層国立大学に寄せられた大きな期待に応えるべく,どのように国立大学法人制度に則り自立した真の経営体となるか,また学修者本位の世界水準の教育の提供に向けた機能をいかに発揮していくべきかなど,国立大学を取り巻くこれまでの経緯や課題を踏まえ,改めてそのことを検討していただきたいと考えております。
今後の検討会議の進め方ですけれども,この会議の最終取りまとめは年内ということをお願いしたいと考えておりますが,ある程度検討が熟してきた事柄につきましては,その最終取りまとめを待つことなく,順次施策として実現させていくことができればとも考えております。
また,今国立大学は,第4期の中期目標期間に向けて,国立大学の在り方を考える時期に来ております。そういったことにも確実にこの検討会議の審議の状況を反映するため検討すると,また必要なものは制度改正ということも視野に入れながら,着実に改革を前に進めていきたいと考えております。
今回,先生方にお集まりいただき,忌憚のない御意見を賜りまして,よりよい形で国立大学の自立的経営の実現を図ることができればと思っておりますので,どうか活発な御議論をお願いいたしまして,私からこの会議の設立の趣旨等を踏まえた御挨拶とさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。
【生田高等教育局視学官】 ありがとうございました。それでは,本会議の委員を御紹介いたします。お手元の資料1を御覧ください。こちらは本会議の設置要項でございますが,この3ページ目,別紙にございます委員名簿をもって御紹介に代えさせていただきたいと思います。
なお,本日御欠席の連絡をいただいておりますのは,曄道委員,松尾委員,宮内委員,柳川委員でございます。よって,委員15名中11名の御出席で本日は開催をさせていただいております。
続きまして,本会議の座長でございますけれども,文部科学省からあらかじめ金丸委員に座長をお願いしておりまして,大変ありがたく御了解いただいておりますので,何とぞよろしくお願いいたします。
それでは,ここからは金丸座長にバトンタッチいたしまして,御挨拶いただきますとともに,以後の進行をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【金丸座長】 座ったまま失礼いたします。座長を拝命いたしましたフューチャーの金丸でございます。これまで,規制改革会議と未来投資会議等で教育や人材の分野を担当しておりまして,そういう意味では,日頃から文科省の皆様とは接点があるということ,また,私は2人で起業いたしまして,現在では2,000名を超える陣容にはなりましたけど,その都度,人材の採用とか,あるいは人材の育成とかにつきましては,スタートアップですから自ら携わってまいりました。その間,国内の大学生の人材の採用,大体会社が小さいときは余り新卒の優秀な方に来ていただけないものですから,海外に目を向けまして,留学生を自ら出向いて採用してきたこともございます。そういう自分の経験も踏まえながら,今回,閣議決定の方針に従いまして,皆様とともに活発な議論を通じて取りまとめを行ってまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,これから私が進行をさせていただきます。
まず,議題1でございます。本検討会議の運営等について,事務局より説明をお願いいたします。
【生田高等教育局視学官】 それでは,お手元の資料1,資料2を併せて説明させていただきます。
まず,資料1でございますけれども,こちらは検討会議の設置紙でございます。骨太の方針,先ほど局長の伯井からの挨拶にもありましたように,この骨太の方針2019に基づきまして,その中で世界の先進大学並みの独立した個性的かつ戦略的な大学経営を可能とする大胆な改革ということがうたわれております。まさに今,国立大学が社会変革のエンジンとして,我が国の成長に大きく寄与するために待ったなしの改革が必要ではないかと,そういう思いでこの検討会議を高等教育局の元に設置しているものでございます。
検討事項でございますけれども,大きく分けて4点ございます。1点目は,国立大学法人と国との関係性,資料では自律的契約関係と書いてございますが,これは骨太の方針に記載された言葉でございます。この自律的契約関係が1つ目の論点でございます。
2つ目は,戦略的な大学経営,いわゆるガバナンスについての検討を行っていきたいと思っております。この中には,マル6にございますような様々な評価の簡素化も論点として含まれております。
3つ目の論点は,経営基盤の強化という観点からの規制緩和,こちらについても取り上げていきたいと思っております。
本日も一部報道されておりましたが,授業料や定員の自由化の是非ですとか,長期借入,大学債の発行等々,様々な財源確保策について検討してまいりたいと思っております。
4つ目の論点は,世界最高水準の教育研究環境の実現方策です。こちらは様々な課題があるかと思いますが,出てきた論点ごとに検討してまいりたいと思っております。
なお,この会議は,3の実施方法の(2)にございますように,必要に応じて有識者の方に参画いただき,ヒアリング形式を取ることも可能です。
4の実施期間でございますが,本日から令和3年3月31日まで,基本的には会議としては年内の取りまとめを目途としておりまして,月1回ペースで議論を進めてまいりたいと思っております。また,年内の取りまとめを待たずに,冒頭の挨拶にもございましたように,検討事項が取りまとめられ次第,できるものから速やかに制度改正等を進めてまいりたいと思っております。
続いて資料2でございます。こちらは本検討会議の運営要領の案でございます。
まず,第1条,座長のところにございますように,座長が不在の場合,委員のうちから座長があらかじめ指名する者が,その職務を代理するという規定を置いております。
そして,第2条,第4条,第5条,それぞれ議事,会議資料,議事録の公開規定でございます。基本的に本検討会議は原則公開で,所要の理由がある場合にのみ非公開,非公開とする場合は,第5条にございますように,非公開とした部分について議事要旨を作成し,これを公開するという形で規定をしております。
説明は以上でございます。
【金丸座長】 それでは,ただいまの御説明について御質問等があればお願いいたします。星委員,お願いします。
【星委員】 今,金丸座長が取りまとめとおっしゃいましたけれども,取りまとめというのはどういう形で行われるのでしょうか。何かレポートを書くとか,そういうアウトプットがこの会議から出てくるということですか。
【金丸座長】 そういうつもりでおります。
【星委員】 それが今年末であると。
【金丸座長】 はい。アウトプットを出すものだと思っております。
【星委員】 あと,もしかしたら僕だけかもしれませんが,最初の骨太の方針2019から引用されているところで分からない点があります。その辺の理解というのは,今質問していいのでしょうか。分からないところとか,あるいはどこかを見れば説明があるとか……。
【金丸座長】 分からないところは,私も含めていっぱいあると思います。
【星委員】 今聞いてもよろしいでしょうか。3つ,簡単に,クラリファイングクエスチョンだと思うのですが。
【淵上国立大学法人支援課長】 制度的な説明をいたしますので,その時に御質問いただいてもいいと思います。
【金丸座長】 では,先に進めてから,疑問があればお願いします。それでは,資料1と2のところについてはよろしいでしょうか。
それでは,資料2の運営要領につきましては,案のとおり御承認いただいたとさせていただきます。
次に,先ほどの運営要領の説明にもございましたが,座長代理を決めさせていただきたいと思います。座長代理については,濵口委員にお願いしたいと思っておりますが,よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【金丸座長】 それでは,濵口委員,よろしくお願いいたします。
次に議題2につきまして,事務局よりこれまでの経緯や検討スケジュール,本会議の検討事項等について説明をお願いいたします。
【淵上国立大学法人支援課長】 国立大学法人支援課長の淵上でございます。資料3に基づきまして,国立大学の変遷と現行制度について,10分程度で御説明をさせていただきたいと思います。
資料1ページ目でございます。国立大学の役割ということで,今回の検討の大前提となることを示させていただいております。
2ページ目でございます。国立大学の役割や期待される機能ということで,まずは変わらず求められている役割,機能というものがあると思いますけれども,全国に配置されております公共材として高等教育の機会均等の要請に応えるということ,あるいは我が国全体の均衡ある発展に貢献するということ,また持続可能でインクルーシブな経済社会システムの実現に寄与するんだと,こういったことは不変の役割,機能としてあるのだと思います。
従いまして,これを支える国のインフラ基盤として,国は国立大学を確実に支援する,これがまず大前提だろうと思います。
これに加えて,下段でございますが,知識集約型社会における拡張された役割,機能というものがあると考えております。デジタル革命の進展によりモノ中心からコト中心の経済へと加速度的に変化する中で,我が国最大かつ最先端の知のインフラとしての国立大学がその役割を最大限活用していくということでございます。
成長戦略にも書かれておりますが,大学は,知識集約型社会における付加価値の源泉となる多様な知見を有しております。大学の役割を拡張し,変革の原動力として,その知見を活用するということでございます。
資料右側にまいりまして,拡張された機能に対応すべく,自ら稼ぐ力を持ち,学修者本位の世界水準の教育提供に向けた機能強化が急務であると,このような問題意識で検討させていただきたいと考えております。
3ページ目からは,国立大学法人制度を巡る変遷でございます。平成16年に国立大学は法人化いたしましたが,平成16年から21年までの第1期中期目標期間は,新たな法人制度の始動期,第2期の22年から27年までの6年間は,法人化の長所を生かした改革を本格化した時期と捉えてございます。この間,国立大学法人における運営から経営へという視点も示させていただいております。
そして,現在は,平成28年から令和3年までの第3期の中期目標期間でございますけれども,社会変革のエンジンとして知の創出機能を最大化し,高付加価値を生み出す国立大学へということで,運営費交付金の3つの重点支援の枠組みを創設したり,指定国立大学法人制度を創設することで,それぞれの機能を強化する取組を進めているところでございます。
4ページ目が平成16年当時の国立大学法人化の基本的な考え方でございます。下段にございますように,民間的発想,あるいは学外者の参画,能力主義の人事,第三者評価,こういったものが基本的な設計図になっているところでございます。
6ページからはガバナンスについての基本構造でございます。
8ページを御覧ください。2004年,平成16年の国立大学の法人化前後のガバナンス体制を記載してございますが,下の図が法人化後の現在のガバナンスの基本的な組織でございます。中央に学長と書いてございますけれども,学長は法人の意思決定を行う者として位置付けられております。そして,これを支える役員会がございます。また,経営に関する重要事項を審議する機関として経営協議会が,教育研究に関する重要事項を審議する機関として教育研究評議会が設けられております。また,学長の選考につきましては,経営協議会と教育研究評議会から同数で選出されます学長選考会議で,学長の選考を行ったり,あるいは学長が行う職務をチェックする,といったことが行われております。また,法人全体の業務を監査するという観点から,各大学には監事が置かれております。
これが大学全体のガバナンス体制でございますが,このうち学長選考会議,経営協議会,監事については,一定数の学外者を置くと,こういう構成になってございます。
10ページを御覧ください。学長の選考につきましては,今申し上げましたように,学長選考会議の権限において行われますが,各大学においては,意向投票というものを行っている実態もございます。ただ,この意向投票はあくまで学長選考会議がその権限において行うことを前提としており,国立大学では意向投票を行わないところもございますし,実際に実施していないところ,あるいは意向投票の結果でない者を選出するといったこともございます。その実施状況は右下のグラフのとおりでございます。
12ページを御覧ください。昨年の国立大学法人法の改正によりまして,ガバナンス体制の学長の位置付け,役割を改正した部分がございます。法人化当初は,学長は教学と経営,両方を担うということで,学長が法人の長であり,また大学の長であるということを大前提としておりました。これが昨年の法改正で,一法人複数大学を置く場合,あるいは一法人一大学の場合でも,学長の職務のうち教学と経営の機能を分離することが可能となりました。
下の図にございますが,右側のDが法人の長と大学の長が一体である一法人一大学で,これが現在,基本形として行われております。他方,左側にございますA,B,Cのように,一法人複数大学の場合,あるいは一法人一大学の場合でEのようなことも可能となっている状況でございます。
次に 15ページでございます。今申し上げました一法人複数大学の動きですけれども,15ページの1番にございます岐阜大学,名古屋大学の統合が法律改正を経まして,この4月1日から統合されるということが決定しております。
また,このほかにも2番,3番,4番の地域で法人の統合に向けた検討が行われているという状況でございます。
それから,16ページでございますが,国立大学の枠組みを越え,さらに国公私の枠組みを越えて大学の機能の分担あるいは連携というものを可能にする制度の検討が行われております。これは大学等連携推進法人制度というものでございまして,図の一番下にございますが,国立大学や公立大学,私立大学がそれぞれ社員として参画をする形でネットワーク機構というものを設けることができないかということで,現在,中央教育審議会で検討いただいているところでございます。次年度中に制度化する予定で議論が進められております。
17ページ以降は,諸外国のガバナンス体制あるいは学長選考プロセスについて記載をしてございます。説明は割愛させていただきますが,17ページがアメリカ,18ページがフランス,19ページがイギリス,20ページがドイツということで,主な国のプロセスなどについて記載しております。
それから,21ページでございますが,先ほど第3期で指定国立大学法人制度というものを設けたということを申し上げましたけれども,現在,21ページの右下にございます東北大学,東京大学,京都大学,東京工業大学,名古屋大学,大阪大学,一橋大学の7大学が指定国立大学法人として指定をされております。
資料左側に記載がございますように,指定国立大学法人に関する特例として,出資の対象範囲の拡大や,役職員の報酬,給与に関する特例,余裕金の運用の特例がございます。
続きまして,22ページからが国立大学の経営マネジメントについてでございます。
23ページを御覧ください。財務会計マネジメントの欄でございます。法人化により,運営費交付金を各法人に交付するという仕組みになっておりますが,この運営費交付金は,費目の別なく渡し切りということで,各法人の裁量に基づく運営が可能となる交付金の性格を持っております。
また,財源の多様化ということで,授業料につきましては,制度設計当初は,文部科学省において標準額を定めた上で,各法人の裁量で110%まで,2007年には上限120%まで設定可能という制度になっているところでございます。
なお,授業料ですとか,あるいは寄附金,研究費,間接経費など,各大学が外部資金を獲得することがございますけれども,これは交付金に影響させないという仕組みになっております。
その他,寄附を促進する税制優遇措置も随時行っておりますし,資産の運用の緩和ですとか,外部資金獲得等に係る共通指標を導入しているということがございます。
人事給与マネジメントにつきましては,法人化で非公務員型になりましたので,人事・給与システムは各法人の責任で様々な仕組みを導入可能となっております。
指定国立大学法人については,先ほど申し上げました国際的に卓越した人材確保などについての特例が定められております。
24ページでございますが,授業料につきましては,先ほど申し上げましたが,国として標準額を定めてございます。学部,大学院については,基本が53万5,800円で,これを120%まで法人の裁量で上げることができるということでございます。この改定については,交付金に影響しないという仕組みになっております。
25ページが,授業料の設定状況でございます。中段の5大学が,学部,学士課程を含めた標準授業料を上回る額を設定している大学でございますが,標準額を下回る額を設定している大学も4大学ございます。
26ページは諸外国との比較になります。米ドル換算で,自国学生,また外国人学生に対してそれぞれ学士課程レベル,修士課程レベル,博士課程レベルでどれだけの授業料を徴収しているかということをOECDのデータから掲載をさせていただいてございます。我が国のものが米ドル換算で5,234ドル相当ということになっておりますが,下にございますようなアメリカ,イギリスなどでは,我が国より高い額が設定されております。なお,これは国公立の教育機関ということを前提に調べられておりますので,私立はこれとはまた別の形になっているかと思います。
27ページは入学定員の推移でございます。左側の軸が人数で,8万人から始まっております。一番下のグリーンの棒が学部生,その上が修士,専門職学位課程,博士という数になってございます。基本的に学部学生につきましては,国立大学の場合,18歳人口の減少などを踏まえまして,抑制的に対応するということでございまして,平成6年度に10万人余りだったものが,令和元年時点では約9万5,000人になっております。修士につきましては,必要性に応じて拡大するということがございまして,平成6年当時2万3,000人ぐらいであったものが現在は4万1,000人になっております。博士につきましては,平成16年頃が約1万4,000人でございましたが,現在は1万3,000人余りということになっている状況でございます。
28ページは財源の多様化の仕組みでございますが,2004年の法人化以降,出資範囲の拡大ですとか,あるいは税制改正など,各種の取組を行っているという状況でございます。
30ページを御覧ください。長期借入金,債券発行の現在の仕組みについて御説明させていただきます。
現在,各国立大学法人が長期借入,債券発行をしようとした場合には,国,文部科学大臣の償還計画などの認可を受けまして,資金調達を市場から行うということになってございます。これを行うことができる場合というのが政令で決まっておりまして,対象事業は右の枠内にあるものに限られております。附属病院を設置する場合,施設を移転する場合,その他,土地等を用いて行われる業務の収入で償還することができる見込みがあるということで,学生宿舎等々の場合に認めることができるということが現在の仕組みとなってございます。これは当該借入あるいは債券の発行によって建てました建物が果実を生んで,その果実で償還することができるということが見込まれる場合に限り,現状は認めているところでございます。
31ページは,現行制度の国立大学法人その他の関係法人が出資可能な範囲をまとめたものでございます。現在,国立大学法人が出資できる範囲としては,承認TLO,ベンチャーキャピタル,また指定国立大学法人については,コンサル業務ですとか研修業務に関する大学発ベンチャーに対して直接出資が可能,こういう仕組みになっているところでございます。
38ページからが国立大学法人の評価の仕組みでございます。39ページを御覧ください。
現在,国立大学に関しましては,幾つかの評価が複層的に実施されているという状況がございます。39ページの上2つ,国立大学法人評価と認証評価は,法律に基づく評価システムでございます。国立大学は,法人化によりまして中期目標,中期計画を定めることになっておりますが,国立大学法人評価は,その達成状況を評価するために行われているもので,毎年度の業務運営の達成状況の評価と,教育研究につきましては,4年目と6年目終了時に評価をするというスキームで動いております。
また,認証評価につきましては,国公私を通じて全ての大学が,文科大臣が認証した評価機関の評価を7年以内ごとに受けるというスキームになってございます。
3点目は,予算の関係で運営費交付金の配分にあたり,評価を行っているということでございますが,重点支援評価と客観・共通指標による評価の二本立てで行っております。
重点支援評価につきましては,各国立大学法人が立てておりますKPIに基づきまして,そのKPIの達成状況を踏まえて交付金に反映させるという仕組みになってございますし,また成果に係る客観・共通指標については,各大学共通の指標を定めまして,実績状況を相対的に把握して配分に反映させる,という仕組みになってございます。
以上,大変早口でございましたけれども,現在の国立大学に関するスキーム,あるいはこれまでの変遷について御紹介させていただきました。
【金丸座長】 ありがとうございます。それでは,本日は第1回会議でございますので,議題3として有識者の皆様方において自由討論を行いたいと思います。
国立大学を取り巻く課題やその解決に向けた御提案,さらには国立大学に対する期待や要望などについて御意見を頂きたいと思います。
なお,国立大学の学長をお務めの3名の委員の方々には,後ほど現場のお立場からの御意見を頂きますので,よろしくお願いいたします。
それでは,お一人5,6分程度で座席の順番に御発言いただきたいと思います。上山委員からお願いいたします。
【上山委員】 突然の御指名で,こういう話は聞いていませんでしたが,思っていることをまず申し上げますと,国立大学という制度そのものの転換点を我々は考えるべき時期に来ていると思っております。明治以来,国立大学は,広く理念としては,最初に書かれておりますように,あまねくどの地域に生まれていても同じようなクオリティーのある教育を受けることができる,教育の機会均等を与えることができる,きちんと担保された質の高い教育と研究の機会を与える,そういう理念で各県に一つ国立大学ができてきた,こういう背景があったと思います。
これは,我が国が高等教育というメカニズムを通して国家が発展していく礎になった極めて重要な公共的インフラを作り上げてきた制度であったと考えております。そのことによって,明治以来,あるいはまた昭和に入り,敗戦の後も我が国における高度な人材の輩出と研究のシーズの輩出という点で高く貢献をしてきたと思っておりますが,その理念が果たして今の時点で,このままでいいのかという問題意識を基本的には持っております。
すなわち,各県に一つ置いた国立大学がその地域における人たちに対する教育の機会の均等という形だけで国立大学という制度が果たし得る役割がこのままでいいのかという問題意識であります。
というのは,国が発展していく,開発途上にあるような国においては,そのような一元的な,普遍的な教育の機会の均等ということの役割は果たしたかもしれませんが,今,非常に先鋭な教育と研究の在り方を求められている大学と,各地域において,その地域の教育と研究とのハブになっているような大学とは明確に役割が違ってきているだろうし,そのことを踏まえた上で,それぞれの地域に応じた,あるいはそれぞれの拠点に応じた国立大学の在り方をガバナンスの問題として取り上げるべき時期に来ていると思っております。
このような理念のある種の強さが逆に言うと,地方の国立大学の手足を縛っている,あるいは発展を縛っているし,その地域における国立大学の役割にある種の制約を課しているんじゃないかという問題意識を持っております。
したがって,本格的に大学のある種のクラシフィケーションをきちんと行い,それに応じたガバナンスの在り方を考えて,それをサポートできる制度へと転換していく時期に来ている,これは非常に大きな意味での高等教育の転換点だろうという問題意識を基本的には持っているということでございます。
これが一つと,それから,この間,国立大学について,また大学全体についても様々な形で発言をしてきましたけれども,学長の選考の在り方,大学内におけるガバナンス制度の在り方に関して,きちんとした方向性を出すべき時期に来ていると思っております。先日もある大学の学長選挙に伴う様々な情報を頂きましたけれども,相変わらず,学長を票で選ぶ,その際に,学内において極めて政治的な形で選挙活動が行われているということで,そこに関わった人たちも苦しんでいるし,そしてまた,そのことによって,本来は学問という極めて中立的で,かつ自律的であるところに,やたらに政治的な動きが生まれてきている。このことを重大な問題だと今でも思っております。
その意味で,果たしてどういうような選考の在り方が正しいのかということを本格的に考え,大学人の間で新しいタイプのリーダーの選定の仕方についてのコンセンサスを作っていく必要があるだろうと,これももう一つの問題意識として持っております。そのことが一番最初に申し上げましたような多様で,そして各地域に応じた個性のある,かつ自律的な大学の在り方,制度の見直しということにもやがてはつながっていくでありましょうし,そのことをこういう会議をもって,ある種の大学人,またそれを支える産業界の人たちとのコンセンサスの形で表現できていければ,この会議の意味があるだろうと思っております。
以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。それでは,小林委員,お願いします。
【小林委員】 大学に関する専門的な知識はあまりないのですが,現在,二つの国立大学の経営協議会,評議委員,そして総合科学技術・イノベーション会議の議員を務めております。自分はこれまで経営者として十数年携わってきたのですが,その経験との対比で一言申し上げたいと思います。50年前にフリードマンは,資本主義社会における株式会社はシェアホルダーのためにあるのだ,全てはマーケットの株主のためにあるのだということを言いました。その後もそのフォーメーションのようなことが行われて,誰に裁かれるのかという意味では,裁く人は株主だという考え方でした。
ここへ来まして,アメリカのビジネスラウンドテーブル約190社がある宣言をしました。これはステークホルダーズ・キャピタリズムというか,働き手もいれば,お客様もいる。社会,うっかりすると地球,CO2の削減を含めた,そういうステークホルダーズ全体を見た経営をするのが会社,法人であるという考え方ですが,アメリカでさえそういう動きも出てきました。資本主義社会において,会社そのものもそういう意味での定義なりが,相当揺れている中で,大学というのは一体誰に裁かれ,何のために存在するのかということを考えるべきです。今回の会議の名前に「戦略的経営」という言葉が使われているので,大学のガバナンスがどうあるべきかを考えるのがまずは重要ではないかと思います。
私の考えとしては,企業体というのは,儲ける軸,社会にイノベーションを創出する軸,そしてESGとかSDGsと言われている社会に対してのサステナビリティを提供する軸,そういう3つの大きな柱から成り立っていると思います。そういう意味では,大学も明らかに経営というファイナンスの部分,そして創発的研究,あるいは大学ベンチャーを含めた,産官学も含めた新しいクリエイティブなファンクション,そしてもう一つは国家の持続可能性のための教育という部分,この3つが大きな柱になると思います。大学の経営については,私が知る限り,いつ見ても会計制度がよく分からないというか,大学病院というのはまた別会計のようになっていますし,そもそも儲かっているのか儲かっていないのかも,非常に見にくいというのがあります。上山先生のところでもPEAKSという場で検討はされているのですが,こういうところと連携して,もう少し分かりやすいといいますか,企業のようなBS,PL,キャッシュフローによって定量的に把握する。このあたりもひとつ重要なポイントではないかと思います。研究等の創発的な部分は,指定国立大学の中でも,先ほど上山さんがおっしゃった通り,クラシフィケーションが重要だと思います。大学の個性がない限り,創発的研究なり大学のベンチャーというのはそう簡単にできない。そういうエートスというか風土が必要ではないかと思います。
もう一つは教育です。これも当然,かなりの個性が必要だと思うのですが,大学院学生との関係性では,産学官の間をもっとオープンに行き来できる形はないのかなという,そんな思いは持っています。
それと,戦略的経営ですから,やはり学長なり理事長の重要性というのは申し上げるまでもありません。これは2004年あるいは2014年の改定で非常にそこはフォーカスされているかもしれませんが,先ほど挙げられた意向投票の問題,あるいは各学部の代表と最終的な経営者としての学長,理事長との関係,このあたりの形も再考していく必要があるかと思います。企業から見ますと,指名委員会等設置会社のような,そういうガバナンスを持った会社には,指名委員会と同時に報酬委員会というのが明確にあります。先ほど国立大学の報酬,20%ぐらいの自由度はあるというお話ですけれども,もう少し自由度を入れた大学自身の報酬委員会,これに当然,学外委員もたくさん入れた中で議論するというのは非常に有効ではないでしょうか。ただ,報酬そのものをどう評価するかという,このあたりの仕掛けも大いに議論をすべきことではないかと思います。
最後に,国大協,CSTI,PEAKSなど様々な組織体や会議体がありますが,そういった場で相当議論されている内容を何回も蒸し返す必要はないと思います。やはりここはどこがディスカッションポイントかを明確にしてやっていくと効率がいいのではないかと思います。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。では,篠原委員お願いします。
【篠原委員】 まず,一般論として気になるのは,これまでの改革を含めて,今見えている課題に対してどう解決していくかを様々な手を打ってきていると思いますけれども,企業では, 10年後,20年後の企業の姿を描いて,そこに向かってどう進んでいくべきかを考えています。昨日もCSTI木曜会合で申し上げたとおり,指定国立大学の10年後,20年後は一体どういう大学になっているべきなのだろうという,ビジョンを各大学や文科省でお持ちでしょうし,今のままでいくと,例えばホラーシナリオとしてこんなことがあるから,それをバックキャストして,今何に手を打たなければならないのかというような,中長期的な視点で取り組んでいただかないと難しい気がしております。
というのは,大学改革というのはステークホルダーが多いものですから,何か変えようと思うと,改革に時間が掛かると思います。そうなると,今の課題に手を打ったところで,次にまた新しい課題が出てきて,自転車操業のようになりかねないという思いがあるものですから,今何をしなければならないかということに加えて,将来ビジョンを描いた上でどうしていくべきか,ということを議論できるタイミングがあるといいなと思っています。
もう一方で,過去を振り返ったときに,先ほども御紹介いただいた様々な改革がどうだったのか。どうだったのかというのは,よかったか,悪かったかということだけではないです。一例で言うと,人事給与を自由にできるように可能化しました。必要性を感じたから可能化したはずですけれども,義務化しなかった。義務化しなかったということは,できないかもしれないので義務化しなかったと思っています。実際に,人事給与を可能化したことによって,どのぐらい給与のばらつきができているのか。いろいろ話を聞いていると,余りできてないと思っています。
だとすると,可能化すべきだという必要性を感じたのに,それができてないとしたら,更にどうするかということに手を打っていかないと,過去に改革として決めたことが,その振り返りなしにどんどん次が積み上げられてしまい,非常におかしいのではないかなと思っています。また,小林会長はお詳しいでしょうけれども,例えば経営協議会を考えた場合に,これは会社で言うと取締役会ですけれども,開催すればいいのではなくて,実効性が問われるわけです。コーポレートガバナンスで一番言われていまして,私も会社の取締役会議長としていかに実効性を高めるかということに頭を悩ませていますけれども,本当に大学の経営協議会が実効性ある形でなされているのかどうかをしっかり見ていく必要があると思っております。
あと,大学を卒業した学生を受け入れる立場から申し上げますと,1つは,何を望んでいるかというと,基礎学力の向上と考える力の向上。足りてないと思っています。こういう場で議論になるのがトップ層をどうよくするかですけれども,トップ層だけではなくて,それ以外の教育レベルをどうやって上げていくかということについても忘れてはいけないと思います。あともう一つは,今回の件でイノベーションの中核というお話がありました。産業界から見ても大学がイノベーションの中核になることを非常に期待しています。
期待している理由は二つあって,一つは,大学が持っている優れた研究能力です。もう一つの理由は,日本の産業界の場合には,どうしても過去の歴史とか財閥の関係とかいろいろあるものですから,サイロになりやすいです。自分たちの中だけで何とかしようとしがちです。ですが,大学というのは,人文系含めて多様な人たちの集まりなので,もっと領域をまたいだコラボレーションというのができると。そこに一番期待をしています。
ただ,正直申し上げますと,大学の偉い人が決めた施策としての学際的な研究開発というのはありますけれども,自発的な形で先生方がいろいろ交わって何かが生まれることが少なくて,企業よりもサイロになっているのではないかという疑いを持っています。私の誤解かもしれませんけれども,先生方のトップ層のリーダーシップがあれば,いろんな学際領域をやるのでしょうけれども,放っておくとみんな自分の小さなサイロ,下手すると企業よりももっと小さいサイロにはまりがちではないかと思っています。
今回,規制等を議論するのだと思いますけれども,今回対象となっている指定国立大学は,非常に進んだ優れた大学ですので,極端なことを言うと,指定国立大学に掛かっている規制を取り除いても大丈夫ではないかと。取った上で,その結果を見ながら,ほかの大学をどうしていくのかという議論をしないと,大きく変わっていかないのではないかと思っております。
この間も評価についてある会で聞いたときに,評価に合わせるために大学がどう振る舞うべきかという話になっており,本末転倒ですよね。大学改革というのは時間が掛かるので,しばらく評価しないということもあり得るのではないかと思っています。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。では,冨山さん,お願いします。
【冨山委員】 先ほど上山さんが言われた話,いろいろあるじゃんと。その話を昔, G型とL型と言いましたら大炎上いたしまして,全大学人の敵と言われた時代がございまして,ただあの時に言いたかったのは,Gが上でLが下ということではなくて,いろいろあっていいじゃん,ということなんですよね。国立大学の定員は,基本的には昔より大きくなっていますし,大学に相当な人数が行くわけで。明治の頃は大学に進学した人は何%ですか。数%しかいなかったわけです。ある種,全社会向けに,多様な学生を引き受ける時代になっているわけですから,多様性があるべきだというのが基本的なメッセージで,分かりやすくGとLと言ったら,要は偏差値を固定化する気かみたいなことを言われて大変心外ではあったのですが,一石を投じられたかなと思っております。ちょっと炎上商法ですけど。
今回の問題意識としては,先ほど小林さんが言われたように,大学という機関といいましょうか,一種の法人といいましょうか,社会的実在なんですね。社会的な主体性を持った実在がどういう責任を誰に負うのかという基本理念,それをもう一度見直した方がいいような気がしています。曖昧になっているのだと思います。
国家であれば,これは憲法に書いてあるとおりで,人権規定と統治機構があるわけですけど,要は名宛人は国民なんですよね。国民の福利のために国家という機関がどう機能するかということで,その実現手段として,日本の場合には議会制民主主義という形を取っているわけです。
ちなみに,議会制民主主義というのは,当然に全国民が投票権を持っているわけではなくて,今は18歳以上の成人男女しか持ってない,そういう仕組みになっています。これはさすがに2歳,3歳の子供は投票所に行かないからということだと思いますけれども,そういうことだと思います。逆に,選挙違反したら投票できなくなる,そういう制限がありますよね。
それから,企業の場合は,名宛人は先ほど小林さんが言われたように,私はもともと株主のためだけにあるとは思っておりません。当たり前ですけど,株主を通じて代表とする社会全体に対して責任を負う主体で,フリードマンが言ったのは,それをやるためには株主の価値最大化だろうというのが正確な言い方です。ただ,実はそう単純ではないということが最近分かってきたのですけど,そういうことであります。
ただ,企業の場合には,実現手段としてのガバナンスは資本民主制の議院内閣制なんですね。要は,投票権を持っているのは株主ということになっています。ただ,投票権が株主だけにあるからといって,実は法律用語で株主の議決権というのは共益権と言われていて,要するに自益権ではありません。皆さんのために行使する権限と位置付けられています。ですから,本来,株主も,もっと言えば株主から選ばれた取締役というのは,国で言うと国会議員ですから,憲法に国会議員は全国民の代表と書いてあるんですね。自分の選挙区の投票してくれた人のための代表ではないのです。最近,それっぽい人が増えていますが,要するに,全国民ということは,今の選挙民じゃなくて,未来の選挙民,これから生まれ出るであろう日本国民も含めて代表と言っているわけでありまして,そういう意味では,まさに持続性という問題が問われるわけです。ですから,私は一番根本的な議論をまず整理した方がいい。それがいろんなガバナンス論につながってくるという感じは持っています。
それからあと,内部的なガバナンスで言いますと,今篠原委員が言われたとおりで,私も大学の改革というか,東京大学が最初にTLOを作った,CASTIを作ったときに主体的に関わっていたものですから,もう20年前ですけど,つくづく,この20年間の産学連携,東大に関しては比較的近くで見ていて,確かに時間が掛かるんですね,全てのことに。逆に,時間を掛けなきゃいけないタイプの組織であることも事実です。としますと,例えばですけど,学長が時間軸でどこまで何ができるかという課題があるような気がしています。逆に,これはデータがあったら知りたいのですが,単純に日米比較はできませんけれども,私はスタンフォードの卒業生なものですから,スタンフォードは学長の在職期間が長いですよね。ヘネシーは多分17年か18年やりましたよね。昔,ケネディも十何年かやっていたはずで,あのくらいやらないと,3倍から4倍,日本の企業とは違う。例えば日本の会社の経営者が5年やるとすると,大学で言うと10年から15年ぐらい時間が必要な感覚だと思います。日本企業は,最近短いと言われているんですよね。多分,小林さんは,三菱ケミカルの事実上のトップをかなり長くやっておられると思いますが,それだけやっているだけの改革を進めておられるので,ここは個人的に気になっています。

【星委員】 スタンフォードは,145年で11人目です。
【冨山委員】 だから,12,3年。そこは知りたいなという感じがしています。しかるべき適任の人はできるだけ長くやっていただいた方がいいし,だめだったら途中で替わってもらった方がいいと思うんですけれども,そこは問題意識として持っています。
それからもう1点,これは逆にクイズというかチャレンジなんですけど,自分が卒業した東京大学法学部法律学科は前から必要ないと思っています。すみません,これでまた炎上するかもしれない。例えばなんですけど,現状の大学のガバナンスで,良し悪しは別ですが,もし廃止するとした場合,これは現実的に可能なのでしょうか,今の大学のガバナンスで。私は不可能のような気がしていて,中身を変えてもいいのですが,これは要するに,社会の変遷に伴って戦略的自由度を持っているということは,そういうポートフォリオを転換していくということに等しいので,別に10年掛かってもいいんですよ。できないとすると,相当大変な感じが正直しています。
多分,転換というのは,今後,要するに戦略性というのは,再生と多様性の問題なので,ということは,10年後に国立大学,指定国立大学も,東大も京大もすごく違った姿になって,それぞれ輝いているというのが私は美しい世界だと思っていますが,そうなると,現実的には自由度がないとそうならないわけです。要は旧帝国大学もやや東大のカーボンコピー的に始まったわけですから,そんな感じがしています。
最後に評価の議論ですが,私も篠原さんに近くて,幾つかの大学で教えているので評価される側にいるのですが,なかなか窮屈で細かくて,あれをやっていると多様性を失われるようになった感じが正直しています。
とりあえず,今日のところはこんなところです。ありがとうございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。では,濵口委員,お願いします。
【濵口委員】 初めに,座長代理に御指名いただきましてありがとうございます。過分な評価を頂きまして恐縮でございます。
私,大学を5年前に卒業しましたが,今現職の総長の先生方に御同情申し上げます。すごい作業をこれからやっていかなきゃいけないだろうというのが肌で感じる時代に入ってきていると思いますが,その一番目は,2018年問題というのが私たちの頃にも言われていまして,それがリアルになってきて,この10年以内に恐らく,このままでいけば大学全入時代へ入ってくる。ですから,システム崩壊が起こりかねないようなフェーズに入っていることは,リアルな現実,近未来だろうと。その中でどういう次の形を作っていくかは,先生方の肩に懸かっております。私は卒業できてよかったなというのがあるんですけど,本当に大変な時代だなと。
一方で,日本は少子高齢化で非常に厳しい状況がありますが,それはあくまでも国内の問題。国外に目を転じますと,例えばEUはホライズン・ヨーロッパというのが2021年から研究費,始まりますが,全体予算は10兆円なんですね。これはEU全体だけ投資しているお金で,その下に,例えばドイツは連邦政府の予算があって,州政府の予算があって,企業の投資がものすごい力で大学に入っている。その中で大学が動いていて,大学が地域の核あるいは国の核として動いている姿がある。そういう国と我々は競争していかなきゃいけない。イノベーション,イノベーションと言っていますけれども,我々は明治以来のいろんな形を背負ったままで,このままで大競争時代に突入していかなきゃいけないという状況があると思います。
先々週,NSFの70周年に参加してきたんですけど,アメリカも反省期に入っております。それは,一つは,NSFのボードメンバーがいみじくも発言していましたけど,2020年には中国の科学技術予算がアメリカを抜きますと。NSFというのは非常に中立的な組織だと私は思っていましたが,今,危機感があらわになっております。その中でいろんな議論があり,ヨーロッパ,アメリカ,中国を見ているだけではなくて,実はASEANも非常に活力を上げておりまして,我々の分析でいくと,ASEANのメジャーな3国だけで,恐らく近未来には日本の業績を抜いてくるだろうと。日本と大きな違いは,大学のシステムと同じなんですけど,ASEANはヨーロッパ以上に国際共同研究をどんどん展開していると。そういう状況が海外ではずっと展開しております。
その中でNSFに戻りますと,改めて思ったのは,歴代の長官が来ておられたんですけど,数代前の長官が実はシンガポールの南洋大学の学長なんですね。シンガポールはどんどんアメリカから人材を輸入しては改革をしている。そういう大胆な組織改変をやって伸びているところと我々は対等に競争していかなきゃいけない時代に入っているんですね。その中で,我々,明治以来引きずってきている組織形態,国民への平等な教育の提供と併せてどういう形を作っていくかという,すごく難しい問題を解いていかなきゃいけないフェーズに入っていると思います。
NSFでもう一つ議論があったのは,リサーチ・インテグリティの問題であります。リサーチ・インテグリティ,中国との競争の中でかなり議論が激しい状態になっていますが,一番コアになっているのは,彼らが言っていたのはトラストだと。どの人をとらえて聞いてみても,みんなトラストが大事なのだと。トラストというのは相互の信頼だと。片方だけじゃないと。今我々が問われているのは,国民への機会均等の高等教育の提供と,もう一つは,近未来の日本の活力を先端的な大学が核になってどうやって作っていくかという問題と非常に矛盾した難しい問題を解いていかなければならない。しかも,資金源が極めて少ない。例えばアメリカの州立大学は大体1兆円ぐらいの予算で動いています。別にスタンフォードやハーバードと比較しなくても,中規模で1兆円なんですけど,日本の国立大学は運営費交付金が100億円以下のものが60%です。こんなので競争できないねと。竹やりでロケットと競争するようなもので,そもそも無理なことを今やっているんじゃないか。そこのリアリティをもって近未来の設計をどうするかというのを今問われているのではないか。
トラストということに戻りますと,今国民に対して我々はきちっとした説明責任を果たさなきゃいけないし,信頼も取っていかなきゃなりませんけど,もう一方で,10年後の我々が消えた後の人たちに信頼される未来像をきちっと描けるかどうか,今かなり問われているのではないかと。ですから,この会議はとても大事な会議だと思っていますので,しっかり議論させていただきたいなと思っています。
【金丸座長】 ありがとうございます。それでは,星委員,お願いします。
【星委員】 星です。よろしくお願いします。私,去年の9月に東大に赴任したばかりでして,国立大学法人の仕組みというのは勉強中です。先ほど報告いただいた資料3などは非常に役に立って,非常に勉強になりますが,まだ分からないところもいっぱいありますので,後でこの会議で質問していきたいと思います。
先ほどちょっと申し上げましたが,最初の趣旨のところでも分からないところがいっぱいあります。例えば「世界の先進大学並みの独立した」というのがあるんですけれども,「独立」というのはどういう意味なのかというのがよく分からない。その後に「自律的契約関係」というのがあるので,「自律的」というのもよく分からないですけれども,「国との自律的契約関係」というのはあるので,国からの独立ということを言っているのかなとは思いますが,その辺どこかで教えていただければと思っています。
それから,「自由かつ公正な競争」とありますけれども,「競争」の範囲です。どこと競争していくのか。日本の中で,公立大学の中で競争していく,その中で自由な公正な競争を担保するという話なのか,それとも私立大学も含めた日本のところで競争していくのか,それとも私立大学じゃなくて,海外も含めて公立大学の中で競争していくのか,それとも全世界で競争していくのか,濵口先生の話は全世界で戦っていかなきゃいけないという話だったと思うんですけれども,どの辺の競争を考えているのか,明らかにしなければばらないと思います。
僕の今までの経歴というのが僕がこれから話すことにいろいろ影響を与えると思いますので,ちょっと言っておきますと,東大に来る前まではスタンフォードに7年間,その前はUCSDに20年以上いまして,UCSDではファカルティということだけじゃなくて,アドミニストレーションの役割というのもちょっと経験させてもらったこともありますし,ファカルティの中でもリーダーシップのポジションというのをやったことがありますので,その辺から役に立つことが言えるのではないかと思っています。
ここで資料に戻りますが,ちょうど僕が今日指摘しようと思ったところと関連する資料がありました。アメリカの大学のガバナンスという表が17ページにありますが,これを見ると,僕が理解しているアメリカの大学,いっぱいありますから,どこの大学かによってかなり違うと思うんですけれども,僕がいた大学で少なくとも僕が理解できたガバナンスの仕組みとはちょっと違うという感じがします。
福留さんの論文が引用されていましたが,これもちょっと前の論文だということもありますけれども,福留さんの理解も,福留さんと僕が話した感じはこれとちょっと違うんじゃないかなと思います。どこが違うかというと,ここだと理事会というのに権限があって,そこが学長を任命してどうこうする,そういう形になっています。ボードがあって,それがCEOを任命して,CEOが経営をやる,そんな感じになっています。それに近い大学もあるのかもしれないですけれども,アメリカのトップリサーチユニバーシティーのほとんどはコーガバナンスという形態を取っていると思うんですね。
コーガバナンスというのは,ファカルティセネットとかアカデミックセネットというのがあって,それはファカルティの代表で,その代表というのは基本的に選挙で選ばれるというのがありまして,それと学長というのは経営の方,アドミニストレーションの方で,それは学長の選任コミッティーみたいなものを作って,そこで選ぶわけですけれども,そこが両方ガバナンスに影響を与えます。経営の方,事務的なことというのは経営が担当して,カリキュラムの内容とかはファカルティがやる。そういう分業はありますけれども,大学全体のことをお互いに牽制しながら,協力しながら決めていく,そういう形になっていると思います。
そういう意味で,普通の会社とはちょっと違っていますし,日本の大学の,今変わりつつあるみたいですけれども,学長が全部やるというのとも,理事長を置いてその下に学長を持ってくるというのとも,どちらとも違った形で,アメリカの少なくともリサーチユニバーシティーのガバナンスというのは行われているかなと思います。その辺のところを理解するのが重要かと思います。
加えて,一言だけ選挙について言いますと,上山さんがおっしゃったように,日本の学長というのは伝統的に選挙で選ばれていて,選挙の在り方が問題だということ,それは,そうだとすればそのとおりでしょうが,ただ冨山さんがおっしゃったことにも関わるんですけれども,選挙の制度自体というのは非常に重要だと思います。アメリカでは,ファカルティ・セネートの長は選挙で選んでいるので,ファカルティの意向を反映してガバナンスに参加することになるのは当然ですが,学長もファカルティの意向を全く無視して選んだりはしません。そんなことをしたら大変で,大学とか全然動かなくなります。ですから,学長選挙というのは,アメリカではやらないところが多いですけれども,何とかファカルティの意向を反映させようとする仕組みはあります。その意味で,日本の選挙制度というのは,制度としては非常にいいものだということも言うことができると思うんですね。アメリカから見てうらやましいような気はしますが,制度自体はよくても,在り方,やり方に何か問題があるとすれば,それは改革をしなきゃいけない。ただ,そのときに選挙を全部やめてしまおうとか,そういう極端に走るのは問題だと思います。
【金丸座長】 ありがとうございます。それでは,松本委員,お願いします。
【松本委員】 時間をくださってありがとうございます。私は法人化の理念自身には共感しています。ただ,この法人化の理念を制度と運用に落とし込むときにどうやらねじれてしまったのだなということを今までの国会答弁などを読みながら感じています。
その中で何度も当時の遠山大臣がおっしゃっていました。自主性,自立性と自己責任の元で,これまで以上に創意工夫を重ねながら,教育研究の高度化や個性豊かな大学作りに取り組むことを可能とする制度,つまり,自由にしましょう,それが法人化だったはずです。残念ながら,理念を支える制度を設計し,運用を始めるときに逆行するような現実を生んでしまった。大学改革だったにも関わらず,単なる行革になってしまったと私には見えます。
当時の国会答弁の中にも,文科省の内部組織,出先機関から独立した法人になる,国と大学の関係を,在り方を大きく見直すと書かれていたのに,結局,当時から文部科学省からの出向は今に至るまで変わっていないというところも,ますます手足を縛るようになってしまった一因ではないかと考えています。
制度と運用がねじれてしまったために,理念と逆行する方向に来てしまった。そこに大学に対する不信感が絡まって,ますます大学の手足を縛るようになってしまったと私は十数年の大学の取材も通して実感しています。
国立大学だけが悪いわけではない。国立大学はやっているところはやっているけれども,そのやっているところの成果を受け入れない産業界の問題も絡まっています。ですから,国立大学の首を絞めるんだったら,同じだけの力で産業界も絞め上げてもらいたいというのが私の偽らざる意見です。
もう一つ,国立大学と国との関係,特に文科省との関係の中でしょっちゅう出てくるのが,先ほど星先生も御指摘になった自律的契約関係のところです。大臣が付与する中期目標で大臣が認可する中期計画,それに沿って中期期間を実行していくという形になっています。でも,そもそも何でこんな変なことをすることになったのか。自主,自律,自分でやりなさいよと言っていながら,なぜそれと矛盾するようなことをやることになったかということについて,当時の遠山大臣は国会で答弁しています。「国による財源措置の根拠が薄弱になる」,「大事なことは国立大学が活性化し,国民の期待する教育研究,社会貢献というものをしっかりやっていただく」と。国からお金を出すためのツールとして中期目標,中期計画を作ったんだということを答弁されています。だとすると,中期目標,中期計画の在り方自身が間違っていたということになります。
自律的契約関係とするのであれば,ここからは産業界の方がお詳しいのですが。小林さん,ちょっと教えてください。もし,契約をした相手にお金を出して,契約した相手が契約内容に沿ったことができなかったらどうなりますか。
【小林委員】 それは当然,話し合いをやるか,裁判をやるか,違約金を取るか,何らかの形で決着はしますよね。ずるずるとはいかない。
【松本委員】 そうですね。中期目標中期計画が契約とは違って,そこにペナルティーも何もない。当然です。ペナルティーが付けられるような中期目標,中期計画になっていないんです。私は国立大学法人評価委員もやっていましたが,あの抽象的な文言で何を見たらいいのか。何ができている,何ができてないと言ったらいいのか。数値目標を挙げていたとしても,その数値が一体何を意味しているのかもさっぱり分からないです。それで評価のために手足を縛って,大量の書類を出させている。大変な時間と紙のロスなんです。それで大学に働けと言われたって働ける訳がないんです。
だから,先ほど上山先生,それから冨山さん,篠原さんもおっしゃったけれども,まず一度規制を取っ払って,手足を自由にしてみたらどうだろう。それをやったところから再度,今の国立大学法人化の何が失敗だったのか,何が成功だったかということをきちんと精査しない限り,いつまでたっても「国立大学はだめだ」から抜けられない。15年以上掛けて「国立大学はだめだ」と言われ続けた。すごく不毛です。大学の先生,職員の皆さんがとても気の毒になります。やはりまず文科省と大学の関係を根本から見直すときに来ていると考えた方がいいのではないでしょうか。
もう一つ,議事,検討事項についても申し上げます。ここにたくさん掲げられてありますが,法人化以前の問題をそのまま引きずっていて,法人化が契機となって出てきてしまった問題と,法人化によって引き起こされた問題と2つに分けることができると見ています。例えば自律的契約関係の再定義であるとか,文部科学省職員現役出向等の今後の在り方,財務運営の中長期的な安定性の在り方,学長の選考の方法も文部科学省と大学との関係に由来すると考えています。授業料,学生定員の自由化,これもそうです。大学を縛るのは国の役割だとなっていた,そこからスタートしています。
ちなみに,学長の選考を大学がするようになったのは,そもそも戸水事件や澤柳事件,滝川事件などで,当時の文部省が人事に口をはさんできたことに対する反発からとされています。そこから大学の方々が自分たちで人事を動かせることに気づき,そこから発展し,学長選考も自分たちで行いたいと考えたとされています。
そういったことも考えると,国立大学と国との在り方というのを見直すところからこの議論は始まるのではないか。つまり,自律的契約関係というのがこの議論のスタートであり,ゴールであると考えています。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。それでは,時間も過ぎていますが,国立大学の学長をお務めの3名の委員の方々に,現場のお立場から戦略的な大学経営の実現に向けた規制緩和に関わる要望事項等を御発表いただきますようお願いいたします。発表は時間の都合上,一人10分程度でお願いいたします。
まずは,東北大学長の大野委員からお願いいたします。
【大野委員】 東北大学の大野です。お手元の資料にありますように,戦略的経営実現の観点から具体的な事項をお示しするために,シンプルなものを作ってまいりました。この資料の背景には,今皆様から御発言があったことも隠れています。
資料2ページ目を御覧ください。留学生の定員を現行の定員の枠外に出してほしいという要望になっております。ここでは,我々東北大学が世界を相手に戦っておりません。本学は,世界に伍していく研究大学として指定国立大学法人に指定されています。世界のほとんどの研究大学には学部がない大学はないと思います。学部も含めての研究大学であり,我々の大学を卒業する学生は日本人であるか否かを問わず世界で活躍してほしい,そのための学ぶ環境を学部段階から提供したい。入学した1年生のときから優秀な国内外の学生が切磋琢磨するグローバルな環境で,なるほど,これが私たちの進む道だと思える環境を提供しないと申し訳ないと思っています。
一方で,比較的規模が大きい国立大学の学部の留学生比率は,約2%に留まっています。どうして増やせないかというと,我々は国立大学であり,日本人の学生に対して教育を提供する役割があります。留学生を増やすことは,日本人を減らすメッセージに受け取られるため,国立大学として必ずしも適切ではありません。留学生を定員の枠外へ出すに当たって,その部分に定員管理を新たに適用すべきと思われるかもしれませんが,これは世界における人材獲得競争ですから,一定の人数を入学させたいとした場合,何人に合格通知を出して,歩留りがどの程度になるかも踏まえ,実際の入学者数を想定して合格通知を出すことになります。もちろん学力も見ながらです。そのような中で定員を守ることは大変難しい。併せてお願いしたいのは,留学生の分に関しての授業料の自由化です。
こうすることで,奨学金を支給する割合を算出し,授業料全額を徴収する学生とのバランスを考慮した形で一つの学年を組成したいのです。アメリカの大学は実際にそうしているわけですが,現行,我々国立大学には定員があり,授業料も定額で,競争ができていません。留学生の質について御質問いただくことがありますが,我々の場合には,SATというアメリカの試験において,1科目800点満点で3科目を課しています。上位の20%は2,400点,つまり全科目満点でした。そういう学生を我々のところへ入学させるのか,あるいはMITに取られたとか,シンガポール国立大学に勝ったとか,そういうことが行われています。ですので,定員や授業料を緩和することで,我々が自らの経験を通して世界における人材獲得の第一歩を踏み出すことができると考えています。
将来的には,日本の大学を出て,海外で活躍する人たちが増え,我々が築いたネットワークが世界に広がってグローバルな社会において,我が国のウェルビーイングに大きく貢献できると考えます。もちろん,そこに至るまでには10年,或いは20年掛かるかと思いますが,今から進めたいということが2ページ目の意味するところです。
資料3ページ目は,出資子会社の業務を拡大したいという内容です。現状,指定国立大学の出資子会社の業務はコンサルティングに限られています。私どもも「東北大学ナレッジキャスト」という子会社を設立して活動中です。コンサルティングに加え,教育研究等の支援,あるいは社会共創についても業務を拡大したいと考えています。社会共創については,少なくともその一部は,政府が現在検討している「出島」と言われているもので実現しそうな気配もあります。
教育支援等に拡げたい理由の一つに,入学試験の問題作成があります。現在,大学の教員が,非常に多くの労力と時間をこれに費やしています。一方,例えばアメリカの大学ではアドミッションオフィスが入学者選抜を実施しますので,教員がそこに時間を費やすことはありません。日本の場合,ここに多大なエフォートを割いています。この積み重ねてきた我々のエキスパーティーズを,例えば記述式の問題の作成に戸惑っている大学に対してシェアする形にできればと考えています。現在,これを行うには,他大学に非常勤講師で雇われるため,エキスパーティーズに見合った収入にはなりにくい構造ですし,定年を迎えた先生方をキープすることも困難です。エキスパーティーズを適正に評価して,我々の積み上げた入学試験の在り方で社会に貢献するには,教育研究等支援の業務への拡大が必要と考えています。
次に,資料4ページ目ですが,共同研究の間接経費の運用に関して,現在はルールとして実務指針があります。例えば3年の共同研究を実施する場合,直接経費に加えて間接経費を負担いただいていますが,この間接経費は必ず共同研究の期間内に使用しなければならない仕組みになっています。実務指針に明記されていることから,監査法人からも指摘されかねないため,厳守しています。
一方で,資料にあるように,我々としては,研究教育環境に必要な,例えば設備の更新などのために,間接経費を積み立てたいと考えています。資料には減価償却費相当と書きました。建物や,エアコンでも良いのですが,間接経費を積み立てて,最後に皆さんが使用されたエアコンを更新することすら現行制度ではできません。
これは細かい話のように聞こえますが,実際には大きな問題が背景にあります。後ほど五神総長からもお話があるのかもしれませんが,減価償却という概念は国立大学法人制度の中にありません。形式上そういう言葉が出てきますが,例えば内部留保で自分たちの力で新しい建物を建てることは,国立大学法人制度が始まった時点から想定されていません。大きな制度的問題です。経営体と言ったときに,国立大学法人が発足した15年前とは違った環境となっている現状において,自力で進めるには,こうした小さな点から改善しなければなりません。施設整備をどう進めていくのかは重要な論点かと考えます。
最後になりますが,5ページ目の評価については,非常に苦労しています。新たなことをスピード感をもって進めなければならない中で,事務職員,そして教員の中のベスト・アンド・ブライテストが評価に従事しています。私としてはすごく悔しく感じています。この点も負担が軽減されれば,さらに様々なことが実現できると考えております。順次,施策として実現していただける今回の会議に期待しております。
以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。それでは,五神委員,お願いします。
【五神委員】 時間が大分押しているようなので,山極先生の時間を奪わないように,できれば10分きっちり守りたいと思います。
今日は,産業界の方からも大事な問題がたくさん提起されています。ただ,お残りになっている2人の産業界の方はどちらかというと,標準的な産業界の代表の方よりもはるかに前を走っているマインドセットをお持ちなので,そういう意味で産学の話はまた別途,時間があれば御説明したいと思います。
表紙のタイトルに「大学の役割を拡張し,変革の原動力とするには」と記載してありますが,これは2019年の成長戦略実行計画に書き込まれた「大学は,知識集約型社会における付加価値の源泉となる多様な知を有しており,大学の役割を拡張し,変革の原動力として活用する」という文言から引用したものです。
この文言を活用すべきことは様々な機会に何度も申し上げてきたところですが,今日は文科省の説明で「役割を拡張する」ということを前面に出していただいた資料が出てきたので,非常に嬉しく思っています。
2ページの国立大学をめぐる動向のところを御覧ください。東京大学は今年で創立142周年です。終戦を境におよそ70年で区切ると,明治の最初に東京大学をどう作ったかというのが第1期の70年で,戦後の新制大学をどう作るかというのが第2期の70年ということができます。これからの第3期の70年はそれに匹敵するか,それ以上のタイミングになっていることは間違いありません。そのときに,2期のときに行ってきた諸改革のよい部分をくみ上げながら,そのときの思想にこだわらず,冷徹に現時点でのその価値を見極めて活用するという思想が大事です。
そういう意味で見ると,法人化は2期の途中で起こっているので,そのときの制度設計は現代の変革に適合するものではないと考えるべきです。法人化への転換時点では,国立大学だったときと生活が変わらないようにという配慮も必要で,それが制度にも反映されていました。冨山さんのおっしゃったことは非常に重要な点で,戦後の学制改革のときには高等教育の民主化を進めるべく,全国津々浦々に大学を作るという施策が進められました。戦前の反省から,平和で民主的な文化国家を担う人材となるための教育を受ける機会を全国均等に作りましょうという方針があったわけです。ただ,それを急いで作る必要があったこと,そして当時は非常に貧乏だったので,例えば旧制中学のレベルであった師範学校から大学に格上げしたところもあるわけです。その当時の資源配分の不均衡は今でも残っているはずです。
そういう不均衡の中で,大学は自立化を目指せと言われています。ここで,法人化のときの思想で重要だと思うのは一律化を目指したのではないということです。つまり,戦後の学制改革は,とにかく均等にしようということが大事だったので,全国一律で大学を設置するという方針だったわけです。しかし,法人化のときには,各大学の多様性を尊重し,個性を活かす仕組みになっています。それが法人化後15年を経過する中で,一律化を促すような圧力が高まっているのです。
しかし,もっと致命的な問題は,経営を自立化するにあたっての資源が与えられていないということです。自立化すると,最後の責任は国ではなく,法人の長が持つわけですから,大学にとっての管理責任がものすごく大きくなるわけです。これは人件費についてもそうです。しかし,退職金は国に預かってもらったままとか,いろんなところで中途半端な仕組みです。施設の維持について見ると,先ほど大野先生からもありましたように,減価償却費を財務諸表に明示してしまうと全大学が赤字になってしまうので,その部分は国の責任であるとして損益外で表示する仕組みになっています。ただ,法人化のときに出資を受けた建物は,資料にもあるように,土光臨調の頃以来の行革の流れの中で非常に老朽化していました。維持費が民間相当に計上されていなかったために,非常に老朽化した建物をそのまま出資を受けたわけです。東京大学で各建物の面積ベースで新営単価と簿価とを比較すると,施設整備で民間の平均的な維持管理に本来必要な投資総額の積分値と比較した投入不足分はざっとマイナス5,000億円です。それをコンペンセイトするのに十分な施設補助金は措置されていません。その結果,管理責任を果たすために,例えば運営費交付金とか別の目的として措置されていたお金を施設整備に回さざるを得ないという状況があります。
そのような状況下で経営体になれと言われて,その意味することが運営費交付金依存体質からの脱却ということであれば,唯一あり得る方策は財源を拡大していくことしかありません。そもそも足りていない今の運営費や施設整備費補助金を減らすというのはとんでもない話であって,税金投入額に何倍のレバレッジをかけるかということを伸ばすように促していくべきです。授業料収入と病院診療報酬以外に収入源がないという状況の中では,それはやる前から不可能なのです。
しかし,私は今,産業構造自身が大きく知識集約型に変わったということを実感していたので,これは千載一遇のチャンスであると考えています。金丸さんと一緒に参加している未来投資会議でも議論している,日本が世界に先駆けて打ち出したSociety5.0は,最初はコンセプトが必ずしも明確でなかったのですが,議論を進める中で,デジタル革新を活用したインクルーシブな良い社会であると内容が固まってきました。これは,今年のダボス会議で議論になったステークホルダー資本主義,日本の「三方良し」とほぼ同じですが,これに移行するという大きな流れにも呼応しています。そうすると,産と学を分けて考える必要は必ずしもなくなってきて,経済循環の中で大学が,新しい経済体制を支える主要なメンバーになり得るはずです。その流れをどうやって引き込むかが大学改革の要諦であると考えたわけです。
大学改革の議論について,3ページに書きましたが,そういう意味で知識集約型社会というのがどういう産業構造になるか,実は産業界の方たちも模索しているところで見えてないわけです。だから,それを一緒に作っていく中で,大学という,全国津々浦々にあるアセットをどう使うかが重要になってきます。デジタル革新を使っても,自然に地方と都市の格差がなくなるわけではありません。むしろ,都市集中の方がよいという方向性もありえます。でも,そうではなくて,国の意志として,国土を存分に使いましょうというのを示す必要があるのです。これに反対する政治家はおらず,国民もそれを望んでいます。それをどうやって効果的に進めていくかというときに,大学の価値は極めて高いのです。例えば知識集約型社会において,情報インフラは重要ですが,大学群が利用している学術情報ネットワークであるSINET5は日本の中では最高品質のものであることはまず間違いありません。リアルタイムビッグデータ時代に備えたときに,ほかに使えるアセットはないわけです。ですから,大学というのは,18歳の人を育てて産業界に送り出すだけの場であるという過去の発想はもはや捨てて,改革の方向を議論する方が早いのです。
4ページは,大学改革の先例として,東大がそういう視点でこの5年間やってきたことを幾つか書いてあります。ここで詳細は述べませんが,先ほど星先生から御指摘があったように,コーガバナンスという考え方は基本中の基本でありまして,大学において教育研究の価値を出すのは現場ですから,彼らが意欲的に取り組まないような活動は絶対成功しないわけです。大きなグランドビジョンを学長が掲げたとしても,それが共感性のあるものでなければ実効性がないということと,構成員が毎日のめり込んで真剣に取り組んでいる研究について,学長はその価値を尊重し,尊敬することが前提として必要だと思います。私も,多くの構成員と会ってきましたが,どの研究も非常におもしろいと実感しています。
そういう意味では,コーガバナンスは基本です。それをやるためには,徹底的に運営を透明化することが必要です。透明化をやらないと,例えば若手雇用が減ってしまうというのはその最たるものです。各部局に人員,ポストを配置して,それがどうなっているかお互いに分からない状態では全学としてのスケールメリットを生かせず,結果として予備的なポストを空けながら回していくことになるので,若手ポストはどんどん減っていくわけです。全部ふたを開けて,隣の部局が何人いるのか,幾らもらっているのか全部分かってしまえば,スケールメリットが生かせます。
それをやるのは非常に勇気の要る決断でした。なぜかというと,部局に配分されている資源は決して平等ではないからです。国立大学時代は部局ごとに予算やポストが文部科学省から直接配分されていたので,平等でないのは当たり前の話ではあります。しかし,そうであるが故に,いまだにそのふたを開けていない大学が多いのではないでしょうか。それをやることによって,東大では若手ポストを200以上作ることに成功しました。
さらに,大学と企業とで組織対組織の連携を進めることによって,例えばダイキンとは10年100億,ソフトバンクとは10年200億規模の事業を実施します。これは従来の,経費が幾ら掛かるかという必要経費の積み上げによって額が決まっていた産学共同研究とは全然違う,パラダイムシフトした連携の仕方です。つまり,課題を解決することや長期のビジョンづくりに東大が貢献することが企業にとっては莫大な価値があるということなのです。ただ,必要経費の積み上げという,単純な話ではない中で,きちんとした契約書を書くことは必要です。
もう一つは,例えばTSMC,半導体のメガファウンドリーとやったことは,デジタル革新を環境負荷を増やさずにエコに進めるには半導体チップの高度化は極めて重要になりますが,日本はその最終チップを作れない国になってしまいました。Society5.0はデジタル技術が基本ですから,そこがエコ,省エネでなければ困るわけです。実際,デジタル革新によって1人当たりのエネルギー使用量がどんどん増えています。これを改善するには先進半導体の研究・試作を進めなければいけないわけですが,TSMCは,アップルのような大手顧客の受注だけで手いっぱいで,相当なキャパシティのあるマーケットを持っていないと試作製造してもらえません。しかし,最先端半導体チップの作成に際しては,最先端の物理や化学の知見が求められる場面も少なくありません。そうした知見を提供できる東大との連携の中でゲートウエイを作ることで,日本の会社が試作,製造ができるスキームを作ろうとしています。さらに,そのゲートウエイのいわば「通行料」という形で大学にお金が入るという,今までにない経営モデルです。IBMの量子コンピューターでも同様の取組を進めています。
時間が残り少ないところですが,5ページを見ていただいて,今日,絶対言わなければいけないことで,大事なことはスピード感,規模感です。そのために運営費交付金を上げてほしいという議論をしたのでは100年掛かってしまう。しかしながら,今日本にはお金はあるのです。つまり,民間,例えば個人金融資産は1,800兆以上あるし,民間企業の内部留保も四百数十兆あります。その資金を投資して,お金を動かす経済を作る必要があります。その中で一番規模感があり,かつタイムリーだと思うのは大規模な長期大学債です。6ページにイギリスの例があります。日本であれば,イギリスよりももっと低利で出せます。7ページに,今が大学債発行のチャンスということを書いていますが,第4期の中期計画を待っていてはタイムリーではなくなります。資料に書いたとおり,発行するのであれば今年が一番タイミングがいいのです。
経営体へと変革するためには資金が必要ですが,そのための初期投資,先行投資資金は誰も用意してくれませんでした。私たちはこうした取組によって,規模感のある形で資金を獲得し,変革を進めていければと思っています。
資料3の29ページで御説明いただきましたが,今のままではそれはできません。プロジェクトファイナンス的な,建物を建てて,その家賃で返済するような場合にしか債券を発行できないことになっています。そうではなくて,大学全体の信用で大規模なお金を調達できるように政令改正をしてもらう必要があって,この作業を急いでいただかなければいけません。これをすぐにやっていただければ,今進めている東京大学の改革をサステナブルにすることができます。お金なしでサステナブルにすることは不可能です。
9ページは,個人資産の1,800兆も大事だということで,その寄附を促すような新制度の提案です。すでに寄附税制を変えていただくことで成果が出ています。具体的には,評価性資産,つまり株式や不動産を寄附しやすくなるよう制度改正してくださったおかげで,9ページの右上にあるように,制度を活用して株を寄附していただいて,その配当でフローマネーを得,人文社会系の研究支援に使っています。
10ページの絵は後で見ていただいて,11ページで,まず大事なところは,大規模な先行投資資金を今調達するべきです。これにより,社会変革を駆動します。社会変革の中には,当然のことながら産業界も含まれています。それをなぜ大学からやるのがいいかというと,公的部門の財政制約が厳しい日本において,変革後の大学は,公共的なサービスの質を上げるために市場と対話しながらお金を動かすモデルを作る模範例になるだろうと思うからです。これは企業にとってもステークホルダー資本主義に移行しようとする中でプラスになるでしょう。大規模な公共サービスとしては,例えば区役所が税金を原資に自ら市民にサービスするよりも,NPOやNGOが事業として実施する方が良質で効率的なサービスを提供できる可能性があります。日本はNPO,NGOはボランティア団体のような位置付けになっていて,職員の給与も低水準に抑えられてしまっていますが,アメリカでは大きな経済体として動いている実例があります。この模範モデルとして国立大学は非常によい例になるので,私たちは社会変革が駆動できるというモデルを掲げていて,実際にそれができそうなところまで来ています。それを,サステナブルな形で拡大するには,大規模大学債発行が急務になったというのが今日のポイントです。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。大変お待たせしました。山極委員,お願いいたします。
【山極委員】 シリコンバレーができたのは1971年。そのときにアメリカの大学,スタンフォードが核になって新しい産業形態ができ,企業の中央研究所,リニアモデルがどんどんなくなりました。リニアモデルというのは,企業が基礎研究から製品開発,市場まで全部抱え込むという方式です。新しく分業体制ができた。大学発のベンチャーがぼこぼこできて,それを支える制度が1980年にはバイドール法,1982年にはSBIR,次々打ったわけですね。だから,アメリカはこれだけベンチャーが優勢になるような産業体制ができた。
ところが,日本は1995年のバブル崩壊まで企業がリニアモデルを手放さなかったわけですね。その結果,何が起こったかというと,企業は大学に人材育成以外の期待をしなかったわけです。修士課程までの学生が欲しいということをいまだに言い続ける体制ができてしまった。これは日本の企業文化です。もう一方で,大学は産学連携なんかとんでもないと。産業界に行く研究者は二流だ,みたいな文化ができてしまった。これはまさにバブル時代の企業の男性優先社会の負の遺産なんですが,その成功体験にいまだに酔っているわけですね。それが負の影響をいまだに及ぼしている。
何でこんなことを言ったかといいますと,今私が言いたいのは,シリコンバレーの夢を日本に作ろうと思っても無理だということです。中国は深圳を作った。ロシアはスコルコボを作った。これは巨大な金を投資して,スーパースマートシティを作って,そこであらゆることをやっているわけです。こんな事業,日本はできるわけがないし,日本の政府にそんな財力があるわけではない。では一体何かやるかといったら,大学が国内では組織対組織の連携,海外では先端的研究組織との連携を通じて,その中に企業を巻き込んで子会社化して,いろんな事業を展開するという多様な方向性を作ることだと思います。これを私は,これまでシンクグローバル・アクトローカルと言っていたのを逆転させて,シンクローカル・アクトグローバルの戦略と言いたいと思います。そういうことを今これから京都大学がやろうと思っているし,現実にやり始めています。
最初のページを見ていただきたいんですが,国際化推進,現在,京都大学は59の海外拠点を持っていて,国内にも34の学外拠点があります。こういったものを利用して,特に海外では11のオンサイトラボを既に成立させています。オンサイトラボというのは,共同出資で海外にラボを作って,そこに双方の組織の研究者が入って共同研究をする。そこに企業を巻き込んで子会社化する。サンディエゴで既に実現しつつあるし,海外の資本をそこに入れて,ローカルな知恵を発揮させて,それをグローバルに拡大させようという試みです。日本では既にNTTや日立とやっていますし,そういったことを少しずつ積み重ねていくというのがこれからの国立大学の発展の形だと思っています。
つまり,これまでの資産を利用しながら,いかにローカルな積み重ねができるか。これは五神さんがおっしゃったことと通じますけれども,日本は既にローカルなところに,47都道府県に国立大学があって,国立大学同士がネットワークで結ばれている。しかも,今インターネットでグローバルに1つになっている世界ですから,グローバルな知恵というのは利用しようと思えば幾らでも利用できる。プラットフォーマーが活躍しています。それに対抗するグローバルなものを作ったってだめです。ローカルなところから攻めていかなければならないということで,今海外の大学とジョイントディグリーやダブルディグリーも増やしていますし,研究力強化で京都大学はハブになろうと思っています。高等研究院を作って,そこに世界的な研究者を招き入れて,いろんな世界の研究者とつなぐ。それから,世界的な公募をして白眉プロジェクトを拡大して,次世代の研究者を育てる。それから,OI機構を子会社化して,そこに産業界の知恵を入れて,共同で研究するとともに人材育成をする。それから,1枚めくっていただきますと,これが京都大学の海外拠点ですけれども,これを最大限に利用しようと思っています。
それと,3枚目を見ていただきますと,Kyoto iUPと称して,大野さんがおっしゃられたことに近いんですけれども,ASEANの優秀な学生をこちらが支援して学部に入れようと思っています。最初は日本語ができなくてもいい。だけど,半年間,日本語を勉強して,日本人の学生と一緒に日本語で授業を受けられるような形を取って,そして日本の企業にも,あるいは自国に帰って日本の教育を成果として還元するのにも活躍してもらおうと思っています。これはどんどん希望者が増えていまして,今年はOB会とか,京都大学のアジアにいる同窓生を利用していい学生を探索しているんですが,300人以上が応募をしているという状況です。今年は15人採りました。その数をどんどん増やしていこうと思っています。
それから,4枚目を見ていただきますと,白眉というのは10年ぐらいやっているんですけれども,世界に公募をしまして,大体20倍ぐらいの応募がありまして,その中で非常に優秀な若手の研究者が採用できています。これは5年任期なんですが,任期が終わる前にどんどん世界へ拡散していきまして,京都大学は優秀な研究者をむしろ囲い込まずに,いろんなところでハブになっていただくことがこの成果だと思っています。
5枚目は,昨年,京大オリジナルという株式会社を指定国立大学のうまみとして設立いたしましたが,既にあるTLO京都,それから京都大学イノベーションキャピタルと併せて経営し,大学発のベンチャーを育て,そしてコンサルティング事業をしながら,最初に言いましたように子会社化していく。研究でできたイノベーションのシーズを子会社化して事業化していくということをやろうと思っております。その範囲を今盛んに広げているところであります。
それから,指定国で京都大学がミッションとしてお受けしたのは,人文・社会科学の未来形発信です。これは,京都大学も京都学派という伝統もございますし,伝統にこだわることなく,特にアジアにおける人文学の未来,これは西洋の哲学と対話をしながら,まだ余り利用されていないアジアの人文学というのを未来社会にいかに実装するかということも考えつつやっていこうということで,国際シンポをやったり,国内でもシンポをやったり,政策的にも日立京大ラボで,文科省にも利用していただいていますけれども,2030年,2050年の未来を見据えた政策提言をしたりしているところでございます。
それに先立って,7ページ目ですけれども,京都大学の教員組織改革をしました。これまで部局に張り付いていた教員を学域・学系に分けて,分野別に組織し直して,これまでの古い部局の理念を乗り越えて,様々な合併,統合ができるようにしました。既に幾つかの成果が出ております。これで執行部としては非常にやりやすくなったと思っております。これからはボトムアップで,教員がどういう新しい分野を作るか,スクラップ・アンド・ビルドができるかどうかというのは勝負だと思っています。
最後のページには,これまでお二方がおっしゃられましたので,私があえて繰り返すまでもないですけれども,こういった幾つかの取組を是非お願いしたいということが書いてございます。
私からは以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。残りの時間が少なくなってまいりまして,それでは,あと5,6分ぐらいしかございませんが,どなたかから,これは言いたいと。上山委員,お願いします。
【上山委員】 星さんの方からありましたけど,コーガバナンス,シェアードガバナンスとも言うのですが,これは大学の屋台骨なんですね。セネットという評議会というのが大学のガバナンスの非常に重要ことを果たしていることは間違いないです。
ただ,学長さんに関して言うと,今冨山さん,非常にいいことをおっしゃったのは,投票というのは代表権の行使。すなわち,代表として自らがこの組織を考えたときには,いかなる方向があるかについての発言をする権限であると,ここの意識が抜けている。つまり,学長選挙において,しばしば行われているのは,どこの学部が何票取ったか,選挙後の執行部で誰が入るのか,といった話でほとんど終始している。すなわち,大学の中における小さなリソースの配分のための選挙になってしまっている。それをみれば,学問の世界に似合わない政治が入っている,政治化しているだろうという意識は非常に強いです。
さらに言うと,大学という難しい組織を6年ぐらいの任期でやるのはほぼ無理だと思います。アメリカの大学もいろいろ見ていますが,私の感覚で言うと,10年以下で辞める学長は大体何か問題がある。ケネディさん,とても親しいですけど,彼は13年やったんですね。その後,ゲルハルト・キャスパーが8年で終わりました。その後,ヘネシーが17年やりました。8年で終わったというのは意味があるわけです。言いませんけれども,何かがあるんです。つまり,それはガバナンスがどこかで効いているということに他ならない。それはボードの意思でしょうけれども。政治化している大学を学問の世界にあるべき健全な姿に戻すべきだというのが意識として非常に強いです。日本の大学を見ていると,手足を縛られて飛べとむちで打たれている,そういう姿なんですね。何もできない形になった上で,とにかくはねろと言われているという,これが国立大学の大きなところに置かれている環境じゃないですか。
そういう意味では,とりわけワールドクラスを目指すような大学に関して言うと,本当の意味での自由度を与えないといけないし,財政的にも自由度を与える意味で,今五神先生がおっしゃったみたいに,施設とかのマイナスというのは赤で見えないのですが,僕も幾つかの大学でやっていました。つまり,大学の財務諸表を全部普通の民間企業と同じような形でやると完璧に赤なんです。やればやるほど赤が積み上がっていく。つまり,減価償却で担保できる形になってないからです。五神先生は,東京大学の場合,5,000億とおっしゃいました。この数字は,今の施設を全部真っさらにしたとき,そういう前提だと理解しています。それが正しいかどうかは別にして,恐らく1,000億から2,000億ぐらいの赤の積み上げがあるわけですね。これを完璧に一気にやることは恐らく無理だと思います,幾ら公的資金を入れても。だとすると,私はもう一度,国立大学の財務会計基準を見直して,そして赤を徐々になくしていくために10年ぐらいのシナリオを考えて,少しずつそこに公的資金を入れながら,自由に働けるような環境をしていかないといけないと。さらには,大学法人評価の問題は本当にきれいにやらないといけないです。分かりやすくてシンプルで,誰もが納得できて,かつ自由度が与えられるような評価のシステム,これを作らないといけないと私は思っております。
【金丸座長】 では,1,2分で。
【五神委員】 公的資金をきちんと,そういうビジョンを持って流していくということはそのとおりだと思います。しかし,その議論はずっとやってきたのです。第5期の科学技術基本計画策定のときに大学改革も重要なイシューでした。昨日CSTIで発表する機会があったので,5年前に私が何を言ったのか調べてみました。それは私が今言いたいことと瓜二つでした。5年経っても状況はほとんど変化していないわけです。今回同じことをやったらもう取り返しが付きません。ただし,山極先生や大野先生の発表にもあったように,大学は確実に変わっているのです。「経営体になる」ということについての信頼は得つつあると言っていいと思います。
そう見たときに,公共的なサービスを真水の税金を使って,運営費や補助金で出すというモデルはとりあえず置いておいて,違う形で公共を支えるものを作らないと間に合わないのです。そういう意味で,大規模長期債を出すということは極めて重要ですが,現行の国立大学法人法の中でやろうとすると,とりあえずは施設を対象にするということになります。ただ,当面は施設のみが対象であっても,規模感のあるお金があれば,施設整備を非常にスピーディーに進められます。まずはそのために政令改正を進めていただき,その上でこの会議できちんとした議論をし,オックスフォードやケンブリッジがやっているように,土地・施設だけでなく,様々な活動に使えるような形でも長期債をきちんと出せるようにしておくことが必要です。今は,日本にとにかく動いていないお金があることはみんな分かっていて,国民も困っているわけです。未来に対する投資先として,大学がしっかりその受け皿となれれば,投資先がないからといって変な形で海外に流出するよりはるかに賢い投資になります。その仕組みの第一歩は政令改正さえ実現すれば今でもできることなので,今やらなければいけない,そういう話です。
【金丸座長】 ありがとうございます。あっという間に時間が過ぎてしまいまして,今日は第1回目の検討会議だったということもありますが,これで閉会とさせていただきたいと思います。
今日も様々な御意見を頂戴しました。星さんは本質的な素朴な疑問もぶつけていただいて,グローバルな視点の御経験なんかも言っていただいてありがたかったと思っております。
【星委員】 30秒だけお借りして,さっき独立ということが重要だと。僕の質問,よく分からなかったと思うんですけれども,松本さんに非常に正確に言ってもらって,国立大学を独立にするという話を政府の検討会議でやっているというのは不思議な感じはするんですけれども,そこが一番重要だと思うので,いろんな規制とかをどこまで取れるかというのを話すのが非常に重要だと思います。
【金丸座長】 ありがとうございます。それでは,今日頂いた御意見を論点ごとに再整理させていただいて,どんな意見が出たかということをまとめて次回までにお示ししながら,皆さんに御共有いただきたいと思います。
また,今日の検討会議におきまして,特に待ったなしの改革が急務とされている国立大学の3学長の方々から御説明,御要望のあったような内容の中で,急いでできるものは手掛けてまいるというのは伯井局長もおっしゃっていましたので,次回の会合で,できるだけ速やかにできそうな意見については集約をする方向で議論させていただきたいと思っております。
それでは,最後に事務局から何かありますか。
【生田高等教育局視学官】 次回,第2回の会議でございますけれども,3月19日木曜日の1時から3時の予定としております。ちなみに,第3回は翌月,4月24日,午前中,10時から12時で現時点では予定しております。4回目以降の会議につきましては,また決まり次第,御連絡させていただきます。本日,かなり時間が押しておりましたので,言い足りない点,たくさんあったと思います。後日,事務局宛てにメールでも送っていただければ幸いでございます。
以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。それでは,これで終了させていただきます。

―― 了 ――

 

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