国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議(第11回)議事録

1.日時

令和2年12月23日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室 ※WEB会議

3.議題

  1. 最終とりまとめ(案)について
  2. 今後に向けて
  3. その他

4.出席者

委員

金丸座長、上山委員、大野委員、五神委員、小林委員、篠原委員、曄道委員、冨山委員、星委員、松尾委員、松本委員、湊委員、柳川委員

文部科学省

伯井高等教育局長、川中審議官(高等教育及び高大接続担当)、堀野国立大学法人支援課長、生田高等教育局視学官、他

5.議事録

【生田高等教育局視学官】 それでは,定刻となりましたので,ただいまより第11回国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議を開催いたします。本日が最終回となりますが,いつものとおりウェブ会議方式での開催となっております。
委員の皆様方にお忙しいところ御参加いただき,誠にありがとうございます。
音声確認しておりますが,現時点でこちらの声は聞こえておりますでしょうか。
本日の議事は,議事次第に書いてあるとおりでございます。本日は,この様子につきまして,YouTubeでライブ配信しており,傍聴者,報道関係者の入室は認めておりません。
事務局からのいつものお願いでございますけれども,ウェブ会議を円滑に行う観点から,御発言に当たりましては,聞き取りやすいようはっきり御発言いただきたいと思います。また,御発言時以外はマイクをミュートにしていただきたいと思っております。また,御発言に当たりましては,カメラに映りやすいように手を振っていただければと思っております。そして,資料を参照する場合は資料番号,ページ番号,ページ内の行数などを分かりやすくお示しいただければと思います。
最後に,できるだけ多くの委員の皆様から御発言いただきたいと思っておりますので,お一人の委員の方の御発言は二,三分程度にとどめていただくなどの御配慮をいただけるとありがたく存じております。御理解のほど,よろしくお願いいたします。
それでは,金丸座長,進行のほど,よろしくお願いいたします。
【金丸座長】 ありがとうございます。では,本日もよろしくお願いいたします。
本日の会議は,濵口委員,宮内委員から欠席の御連絡をいただきましたので,委員15名中13名の御出席で開催いたします。
それでは,早速議事に入ります。
本検討会議は,前回予告していましたように本日が最終回となります。2月からほぼ1年間,毎月皆様と顔を合わせて,様々なテーマについて熱心に議論をさせていただきました。あっという間に時間が過ぎてしまいました。これまで本当にありがとうございました。
さて,本日は最終取りまとめについて議論させていただきます。本検討会議の集大成となる,実りある議論ができればと存じます。
それでは,まず,事務局から御説明をお願いいたします。
【生田高等教育局視学官】 失礼いたします。本日,資料1-1,1-2,2つ同じ内容になっていますが,資料1-1は見え消しを反映したきれい版になっております。資料1-2の方は9月末に発表しております中間取りまとめからの見え消しという形で同じ体裁のものを2つ,本日資料として用意させていただいております。基本的に資料1-1を用いながら説明させていただきますが,適宜資料1-2でどの辺が変わったのかを御確認いただければというふうに思ってございます。
それでは,資料1-1を冒頭から説明させていただきます。まず,おめくりいただきますと目次を今回,最終取りまとめをまとめるに当たりまして付けさせていただいております。これをもって全体像が少し分かるかなと思っております。今回,最終取りまとめをまとめていくに当たりまして,基本的には中間取りまとめをベースとしながら,中間取りまとめを取りまとめた以降の第9回,第10回で御議論いただいた内容を追加していく形で取りまとめをさせていただいております。
具体的に申し上げますと,目次番号で言うと2の(4)エンゲージメントの在り方,これは第9回のアジェンダでございました。同様に(7)人事給与マネジメント,これは第10回,そして(8)が第10回,そして3の(3)定員管理等の柔軟化,この一部の部分が第9回に御議論いただいた内容として追加を今回させていただいております。
この2の構成としてこの順番にさせていただいた内容としては,やはりまず自律的契約関係を定義するために中期目標・中期計画評価,そして国との関係だけではなく,多様なステークホルダーとの関係という意味でエンゲージメント,そして法人の中のガバナンスという意味での内部統制,そしてより具体的な制度という意味での会計制度・基準,そして人事給与マネジメント,最後の(8)で今後に向けた課題といった,そういった並びで今回(4)(7)(8)を追加させていただいた次第でございます。
それでは,本文の方に入ってまいります。「はじめに」のところ,ここは資料1-2を見ていただくと分かるように幾つか直っていますが,語句の並び,もしくは分かりやすさ,そういった観点からの修正のみでございますので説明は割愛させていただきます。
続いて,2ページ目,真ん中よりちょっと下,21行目に「国立大学法人に期待する役割や機能」というもの,このパートにつきましては,中間まとめでは一切書いていなかったところを,最終取りまとめの中で大きく追加させていただいた内容でございます。これは,国と法人との関係を議論する前に,国自身が国立大学法人を国の戦略としてどのように位置付けているのか,こういったスタンスをきちっと示すべきではないか,このような御意見があったことを踏まえて大きくパートを追加させていただいた次第でございます。
内容としましては,まず,最初の方につきましては,28行目に「普遍的な使命」と書いてございますが,要は世界最高水準の教育研究の先導,それから学問分野の継承・発展,全国的な高等教育の機会均等の確保,こういった普遍的な使命というのは今後も確実に受け継がれるべきものであると言った上で,世界の情勢を振り返って,30行目以降に少し書かせていただいておりますけれども,DXの加速への投資ですとか,グリーン・リカバリーなどの公共的な価値への投資,こういった動きが活発化する中で我が国を振り返ってみますと,3ページ目に行っていただきまして7行目,企業による公共的な価値への投資,これがESG投資等が増えていく中で少しずつは大きくなっているものの,経済社会のメカニズムを大きく転換する駆動力までにはなり得ていないのではないか,このような状況・背景を踏まえて,「我が国の持続可能な成長戦略の切り札」という形で10行目に書かせていただいておりますが,全ての都道府県に整備され,公共財として知的資産を集積させてきた国立大学法人を,ネットワーク・ハブの基盤インフラとして位置付けて,機能を拡張させて経営体へと転換させ,経済社会メカニズムを転換する駆動力として最大限活用していくことが不可欠ではないかといった形でまとめさせていただいております。
また15行目以降,例えばということで,日本列島全体のDXを進める上でのインフラ基盤ですとか,19行目,Society5.0の実装・展開に向けてグリーン・リカバリーの開発実験場としての役割,そういったことでネットワーク化により集積されている法人,これをシステム群として活用することも考えられる,このような記載をさせていただいたところでございます。
続けてその下の「新たな国立大学法人と国との関係」,この内容については特段中間取りまとめから変わってございません。冒頭の書き出しの部分について,「第4期中期目標期間を,国立大学法人の機能を拡張し,真の経営体へと転換を図る移行期間と位置付け」といった文言を26行目,27行目に少し追加させていただいた次第でございます。
また,4ページ目に行っていただきまして,この辺は大きく変わっていませんが,少し分かりやすくという観点から,15行目の「その関係性を『自律』的なものにすることを企図しており」,17行目の「『自立』することを表現しているものではない」ここに鍵括弧をそれぞれ付けさせていただいたというのが中間取りまとめからの変更となっております。
そして,5ページ目に行っていただきまして「評価の在り方」,ここも内容は変わってございません。ただ,委員からの御意見として,今までやっている評価に更に加えてといったニュアンスが誤解を与える表現があるのではないかという御意見があったことで,29行目のところでございますけれども,「ガバナンス・コードへの適合状況等の積極的な公表」,これはあくまで評価ではなくて情報発信でございますので,情報発信を行うとともに,自己評価の充実・強化を図るといった形に少し記載を修正させていただいた次第でございます。
続いて,6ページ目に行っていただきまして「エンゲージメントの在り方」,これは正に第9回に御議論いただいたことを(4)として追加させていただいた内容でございます。
こちらについては,エンゲージメントの定義はもう少し前の部分で既に書かれておりますが,いわゆる多様なステークホルダーからの信頼を獲得していく,そして獲得したステークホルダーに関する情報を大学経営に活用すべきである,そのようなことを14,15行目に書かせていただくとともに,16行目からは,特にここで御議論いただいた学生目線,その部分について,学生を長期的に利害を共有するステークホルダーと位置付け,「法人は,学生の学修経験や有用性の満足度や身に付いた能力についての自己認識,さらには卒業後,学生の能力が社会でどのように評価されているかなどの長期的な視点も含めて調査・分析・検証し,その結果を教育課程や入学者選抜などの改善に繋げるのみならず,比較可能な形で情報公開を充実させ,新たな学生獲得や卒業者からの寄附金拡大などに効果的に繋げていくことが必要」といった記載をさせていただいております。
また,国の役割としては,基本的にステークホルダーとの関係構築の具体については法人の自律性に委ね,そのプロセスの透明性等々の観点からのモニタリングにとどめるべきであるといった記載をここではさせていただいております。
続いて,7ページ目に行っていただきまして「牽制機能の可視化」でございます。5行目から始まるところでございますけれども,「執行部と教員組織とが分業しつつ協力して大学の運営に当たる,米国の多くの大学で行われているシェアードガバナンスの形にも見える」といった文言を追加させていただいておりまして,これは比較対照としてこれを書かせていただいて,一方で,国立大学法人の場合はこれに見えるものも,実は「学長が執行部のみならず,教員組織の代表による教育研究評議会の長でもある点が異なっている」,このような文言をこの部分はパートとして追加させていただいております。
また,少し飛んでいただいて8ページ目から(7)として「人事給与マネジメント」のパートを,第10回の議論を踏まえて新たに追加させていただきました。8ページ目,9ページ目にまたがる部分でございますけれども,人事給与マネジメントを,まず国立大学の時代から法人化で様々な給与体系,勤務時間体系を展開することが可能となって,クロアポなどの活用拡大が図られている一方で,やはり人事給与というものが構造的なものであり,その改革には長期の時間軸が求められることから,依然,道半ばであり,若手研究者の安定的なポスト確保のほか,外部資金をうまく経営体として活用する,それによって高額な給与,そして他大学から優れた教員を戦略的にリクルートするといった取組は,十分に進んでいるとは言い難い,というふうに書かせていただいております。
「このため」ということで,経営体としての「国立大学法人は,外部資金の戦略的活用により若手研究者へポストを提供するとともに,シニア教員の職務や役割を見直すことで給与を一定割合減額するなど,教育研究の一層の活性化や全世代の活躍促進に向けて,組織全体としての人事給与マネジメントに取り組むべきである」といった形でまとめさせていただいております。
また,教員のみならず,法人経営を支える上で欠かせない職員について,次のパートで書かせていただいていて,12行目以降,高度技術職員やURAなど高度な専門スキルや能力に応じた専門職を配置するとともに博士の活用,例えば処遇の抜本的改善,こういったこともここで書かせていただいております。また,公務員準拠ですとか年功序列によらない給与制度の導入,そして最後18行目,「国や企業等との対等な人事交流を積極的に進めていくべきである」といった形でまとめさせていただいております。
続く(8),こちらの部分が第10回,つい1か月前でございますけれども御議論いただいた内容,特に第2弾,この最終取りまとめの後の話に関わる部分でございますけれども,「高い自律性と厳しい結果責任を求める新たな法的枠組み」といったものを新しく追加させていただいております。国立大学法人が国から負託される役割に加えて,多様なステークホルダーとの関係性によって真の経営体に変わっていく,そうするとステークホルダーの多元化が進むことで,一層高い自律性が求められるのではないかと。
ただ,そういった転換の度合いとかスピード,これは当然ながら法人の設立の背景ですとか活動規模によって大きく差異が生じる,だから企業のコーポレートガバナンスの事例,第10回でもお話がございましたが,国立大学法人についても法人が自らの特性に適したガバナンスを選択できるよう,複数の選択肢を示すことについて検討すべきであるといった形でまとめております。
「また」以降でございます。世界最高水準の研究を牽引し,イノベーションによる価値創造を先導するフロントランナーとなる大学の抜本的強化,これが急務である中において,従来のプロセス管理型ではなく,結果管理型による,より高い自律性と厳しい結果責任とが要求される。
そして,次の10ページ目に行っていただいて,そういう「法人については,大きな経営自由度や裁量的経営資源を持たせることと併せて,社会変革の駆動力として戦略的な変容力を発揮するに相応しいガバナンスを適用することが不可欠である」といった形でまとめております。
そして,ここでファンドの話が登場いたしまして,正についこの間でございますけれども12月に閣議決定された経済対策において,「大学ファンドが創設されることとなったが,この大学ファンドは,ガバナンスを含めこのような抜本的強化を行う国立大学法人に対して行い,大幅な機能拡張にレバレッジを効かせる支援として大いに活用できる」といった形で書いております。
「したがって,国は」でございますけれども,法人が「激動の時代において学内の経営資源の再配分や,戦略的な新陳代謝を迅速に行えるようなガバナンスの在り方やその実行性を高める方策について,検討することが必要である」ということで,これが正に第2弾の検討の内容でございますが,具体的にはということで,第10回目で委員の皆様からいただいた意見を少しここにも記載させていただいておりまして,「学長の上位に重要な意思決定等を行う強力な会議体を設けるなどにより,経営監視と執行との責任分担を図り,学長の強い経営リーダーシップを実質化させるとともに,ステークホルダーガバナンス理念に立脚したモニタリング機能や徹底した情報公開を担保させ,外部資金の獲得増等を実現すべく,第2弾の大学改革の方向性として,新た法的枠組みの検討を行っていくべき」といった形でまとめております。
いずれにしましても,こういった新たな法的枠組みの検討は,正に「公共を担う経営体」といった,これは本当に今までにない特異性を持つ国立大学法人にふさわしい類のない新たなガバナンスモデルでございますので,何かを真似するということではなく創り出していくことが求められることから,法律専門家等の協力も得ながら,ハードロー,ソフトロー,このバランスも含めて,検討することが肝要であるといった形でまとめさせていただいております。
10ページ目以降は,大きく変わっているところがあまりございません。
少し飛んでいただいて,12ページ目に参ります。こちらが「定員管理等の柔軟化」でございます。こちらは,第9回目で18歳人口の減少を踏まえた中での定員の考え方を御議論いただきました。その内容について少し追加させていただいた次第でございます。
先に「学部・学科等の再編等」の最後のところ,21行目,22行目辺り,ここにも少し追記させていただいていて,「DXやSociety5.0への変革期における新たな時代に求められる人材像を見極め,グローバル時代を牽引するイノベーションの担い手を輩出すべく,学部・学科のみならず研究科・専攻についても,時宜を得た戦略的な組織再編や,伝統的な文系・理系の枠を横断する学際融合の新たな組織の設置を迅速に行うために必要な方策について,国及び国立大学法人は検討を行うことが必要である」というのを追記した上で,「収容定員の総数」のところについては29行目から始まりますが,18歳人口の減少,こういったことを踏まえて32行目,学生の多面的な変化をしっかりスピーディーに捉え,時代のニーズに応じた入学選抜やカリキュラムを展開するとともに,34行目に行きまして,大学間の連携を推進していくことが重要であるというようにまとめております。
また,「加えて」でございますけれども38行目,生産性の高い高度人材層,これを知識集約型社会への転換期では厚くする必要がある,だからこそ国立大学が知のインフラ基盤として果たすべき役割は増大するのではないかということで,39行目,「収容定員を入口段階の18歳人口との関係のみで決めるのは,必ずしも合理的であるとは言えない」という形で書かせていただいております。
そして13ページ目の6行目からは,地方の話にも少し入ってまいりますが,国は,国立大学が地域経済の活性化の要として,STEAM人材の育成など学部・大学院を通じた教育研究の質の向上,それから,地域の特性やニーズを踏まえた質の高い人材育成やイノベーションの創出による地域の産業・雇用創出,外部資金の獲得などについて計画性・透明性を持って,不断の改革に取り組むような場合に限り特例的に学部の収容定員の増を認めるべきである。ここらの辺の記載は,内閣官房の方で行われておりますまち・ひと・しごとの創生会議でも御議論いただいておりますので,そちらの検討状況も踏まえつつ,このような記載をさせていただいているところでございます。
続いて,13ページ目の16行目からは,こちらについては,今度は社会人学生とか留学生の部分に関する記載でございまして,スキルアップデートが常に要求される社会人学生,さらには人材獲得競争下で糾合する優秀な留学生,こういう集う学生のダイバーシティ確保を念頭に置いた収容定員の全体像を構想していくことが求められる,といった形でこのパートはまとめさせていただいているところでございます。
そして,以降で大きく変わっているところはなくて,最後の「終わりに」,14ページ,15ページ目にまたがる部分でございます。この「終わりに」のところも,もともと中間取りまとめでは今後の検討に向けてということで少し書いていたんですけれども,それに付け加える形で今回記載させていただきました。
15ページ目の29行目の「最後に」のパートからでございます。「最後に,国立大学法人は,知識集約型社会への移行段階において,社会との共創によりイノベーションのスパイラルを起こして社会の新陳代謝を促すことが期待されている。それに留まらず,コロナ禍におけるグローバルな経済社会メカニズムの変革期の中,特に公共財としての位置付けを持った経営体というその組織の特異性を最大限に発揮して,我が国全体の成長戦略を支える生命線としての使命が課されていると言っても過言ではない」,これは冒頭の部分で,国が国立大学法人に求める役割を追記しておりますが,それに呼応するパートでございます。
35行目から,「だからこそ,本検討会議では,国立大学法人が~いち早く社会変革を駆動する経営体へと転換するべく議論を進め,第1弾としての結論をここに取りまとめた。本検討会議としては,まずは国及び国立大学法人に対して,本最終取りまとめで提言した改革が,第4期中期目標期間が開始する令和4年4月には――16ページ目に行っていただいて――具体化されて実を結ぶよう,着実に必要な取組が遂行されることを求める」ということで,ある程度時限を明確にした上でスピード感を持って,単に報告書をまとめて終わりではないといったことをここでは示しております。
そして,16ページの4行目からが第2弾,先ほどの(8)のところで述べた内容でございますけれども,「全国の知のネットワーク・ハブである公共財としての国立大学法人が,組織の新陳代謝やリソースの戦略的再配分を可能とする高い経営力の実行性を一層高めるとともに,ステークホルダーへの徹底した情報公開と厳しいモニタリングを経て,我が国に眠っている資金を動かすことで新たな資金を呼び込み,更にそれを循環させることで社会変革をもたらすべく,さらなる大学改革の検討が必要である」といったことで,第2弾についてここで記しております。
これについて,「国が,ガバナンスを含め抜本的強化を行う国立大学法人に対して支援を行う大学ファンドの創設の動向も踏まえつつ,世界に類のない『公共を担う経営体』に相応しい新たな法的枠組みの在り方について,法律的な見地も含めて大胆な検討に早急に着手し,令和3年度中に結論を出し」ということで,ここも時限を明記させていただくことでスピード感を持った対応ということを考えているところでございます。「大学経営のニューノーマルを日本発モデルとして一刻も早く創り出すことを期待する」といった形でまとめております。
最後,15行目からは,改革が目的というよりは,改革それ自体が目的ではなくて,改革により何を解決し,何を目指すのかについて関係者でちゃんと共通認識を持つことが重要である,当日委員の方からもこういった御発言ありましたので,これを記載しております。そして最後,「唯一無二の公共的価値を持つ経営体として,時代の大きな転換点において社会変革を駆動する大きな力となるために,思い切った変革が実行できるかどうかが,日本の未来を左右するであろう」ということで結んでおります。
少し長くなりましたが,最終取りまとめの案として,一度委員の方からいただいた御意見や,これまでの会議当日の御意見,そういった部分を踏まえて中間取りまとめに対して追記していくという形で原案を作成させていただきました。
説明は以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございました。
それでは,自由討論を行いたいと思います。発言を希望される方は,カメラに写りやすいように手を挙げていただきますようお願いいたします。発言終了後はマイクをミュートにしていただけますか。よろしくお願いします。
それでは,松本委員,お願いいたします。
【松本委員】 取りまとめ,ありがとうございます。お疲れさまでした。
確認をさせてください。そもそもこの検討会議の設置紙に「指定国立大学が先導して」に自律的契約関係がつながっています。最終まとめでは,社会変革を駆動する真の経営体になれといっています。どこの大学に対して言っているかは,もう一回確認させてください。
それから,自律的契約関係を結んだところが今度創設される大学ファンドを使うことができるという受け取り方でいいんでしょうか,お願いします。
【生田高等教育局視学官】 ありがとうございます。じゃあ,事務局から回答させていたします。
【金丸座長】 お願いします。
【生田高等教育局視学官】 まず,1点目の「指定国立大学が先導し」というふうに,確かに本体の19ページ目に設置紙も付けさせていただいております。そのように書かれてはおりますが,今回取りまとめをさせていただいております内容につきましては,基本的に指定国立大学法人に限定した議論ではなくて,全体の国立大学法人の底上げも図った上での御提言をしていただいたというふうに考えてございます。
自律的契約関係というものの定義は,一応最終取りまとめの4ページ目のところ,「国との関係性における新たな枠組み(「自律的契約関係」)を構築すべきである」というところから始まっておりまして,それの具体論が,(2)「中期目標・中期計画の在り方」で記載させていただいた次第でございます。ですので,自律的契約関係に見直していくのは,指定国立大学法人のみならず全ての国立大学法人を想定しておりますが,第2弾で先ほど少し言及させていただいておりますさらなる大学改革,そしてそこにファンドをある意味レバレッジを効かせて活用する,そういった法人というのは必ずしも全ての大学を対象としたものではございませんし,更に申し上げるとガバナンスの在り方についても,だからこそ1つではなくて,選択できるような形で今後検討することが必要であるといった形で最終取りまとめでも言及させていただいた次第でございます。
以上でございます。
【金丸座長】 松本委員,よろしいですか。
【松本委員】 要するに,今回のこの最終取りまとめは86の国立大学全てに対してのものであって,自律的契約関係も全ての国立大学が対象で,ただ,さらなる大学改革をやるところが,最終まとめで突然出てきた大学ファンドにたどり着けるという理解でいいですか。
【金丸座長】 文部科学省,どうでしょうか。
【生田高等教育局視学官】 改革をしたからファンドというよりは,そもそもこの検討会議はファンドがあろうがなかろうが,ずっと議論をしてまいりました。そして,さらなる改革というのは,ページ番号で申し上げますと9ページ目にございますように世界最高水準の研究を牽引する,そしてイノベーションによって価値創造を先導するフロントランナーとなる,こういった大学をつくらなきゃいけないということでファンドは創生されたと理解しておりまして,逆にそういった大学にはそれ相応のガバナンスなり,そういったものを求めていくことが必要じゃないかということで,第2弾の検討というのはもう少しフォーカスが絞られたものになるというふうに理解しております。
【松本委員】 分かりました。ありがとうございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,星委員,お願いいたします。
【星委員】 どうもありがとうございます。まとめ,御苦労さまでございました。
5点だけ,ちょっと細かいところも含んでいますが,重要だと思う論点があるので指摘したいと思います。
1つは6ページ目の14行目から15行目で,エンゲージメントで得た情報を活用するという話ですけが,これを例えば大学生の親の視点から読むと,そういった情報というのはプライベートなものも含んでいるわけで,それがどういうふうに活用されるのかというのはすごく心配だと思うんです。そういう情報を使うというのは言うまでもない,それは正しいと思うんですが,言うまでもないというんだったら言わなくていいか,あるいは言うとすれば,心配する人のために「プライバシーの保護に十分に配慮した上で」とか入れた方がいいのではないかと思います。
それから,10ページの14行目から16行目です。「国立大学法人に相応しい,これまでに類のない新たなガバナンスモデルを創り出していくことが求められる」という箇所ですが,「これまでに類のない」というのが適切なのか疑問です。今までと違ったガバナンスモデルを創り出すというのは分かるんですが,それが結果としてこれまでに類のないものになるのか,それとも似たようなものになるか,例えばコーポレートガバナンスのベストプラクティスに近いようなものになるのか,それは今の段階では分からないことだと思うので,「これまでに類のない」ものになると決めつける必要はないと思います。ですから,ただ「新たなガバナンスモデル」ということでいいんじゃないかと思います。
それから,12ページ目の23行目から25行目にかけて。「グローバル時代を経営するイノベーションの担い手を輩出するべく,学部・学科のみならず研究科・専攻についても,時宜を得た戦略的な組織再編や,伝統的な文系・理系の枠を横断する学際融合の新たな組織の設置」とありますけれども,この伝統的な云々というところで,これは今既にやられているところが多いんじゃないかと思います。最近,東京大学の中でいろいろな連携プログラムとかを勉強する機会があったのですが,「文系・理系の枠を横断する」とか,「学際融合」とかいうのはもう既にいろいろ行われてきて,それであまり成功していないところも多いという印象を持っています。「文系・理系の枠を横断する」というのは,もう既に文系・理系の枠を最初から認めているということで,そうではなくて,文理の区別をそもそもしないとか,学際の前の学ということをそもそも今までどおりに定義しないとか,そういうことが重要だと思います。ここでは「文系・理系の枠を横断する」とは言わないで,それこそ「これまでに類のない」教育体系が必要となったときに,それを可能にする方策を検討する必要があるというふうに,「これまでに類のない」というのはここで使うべきだと思います。
それから,4番目は12ページから13ページにかけての議論です。これを地方の高校生の側から読んでみると,東京一極集中の是正とかということで,自分たち地方の高校生が東京の大学に行くというのは歓迎されていないと思ってしまう人は結構いると思います。東京の大学での地方高校の出身者の割合が減っているという点は,この前データを出させていただきました。そうしたダイバーシティが欠けているという状況を考えると問題があると思います。ここでは留学生とか,社会人とかは明示的に歓迎されているのに,地方高校の出身者が東京で学ぶというのは歓迎されていないので,この書き方はまずいのではないか。そういうことを言っているのではないということをはっきり言っておいた方がいいと思います。
それから,ダイバーシティを片仮名で書いたときに,見え消し版では「ダイバシティ」と書いてありますけども,多分真ん中に線が入る方が普通なのではないかと思います。
それから,最後の5番目はファンドの話ですが,大学ファンドというのをこの検討会議の最終報告書に入れる必要があるのか疑問です。入れるとすればファンドのガバナンスというのも大事だと思います。いまの版ではそこまでは議論していない。ですから,ファンドの話をこの最終取りまとめに入れるかどうかは,議論の余地があると思います。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。
概ね星委員が指摘をいただいた意図にもともとは近い形で書いていたと思われますので,今いただいた御意見をできるだけ反映する形で誤解のない表現に修文はさせていただきたいと思います。もちろん事務局とも相談しますが,生田さん,どうですか。
大学のファンドのところは,もちろん私たちのこの検討会議の主要なテーマではもともとはなくて,他の会議体で御検討いただいていて,ただ今回の閣議決定のタイミングと合っているものですし,それからこの大学改革の議論のベースになるところに資金というのはやっぱり重要な要素だったものですから,他の会議体,政府全体の動きとの連携上,この最終案には盛り込ませていただきました。大学ファンドのファンド自身のガバナンスというのは,それはもちろん重要な課題でしょうけれども,それは多分,今後大学ファンドの検討をしてくださる会議体で健全に議論していただけるんじゃないかなと,このような理解でいます。
生田さん,何か補足はありますか。
【生田高等教育局視学官】 ありがとうございます。
幾つか,確かに誤解のないような表現ぶりへの修正といったことは承りましたので,また相談させていただきながら考えたいと思います。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,ほかにどなたか御意見のある方はいらっしゃいますでしょうか。
【篠原委員】 すみません,篠原ですけども,よろしいでしょうか。
【金丸座長】 篠原さん,お願いいたします。
【篠原委員】 細かな話なので,御採用いただかなくてもよいですが,3ページ目の13行目について,「新しい価値を共創させるべく機能を拡張させて経営体へ転換させ」とありますが,この拡張させて経営体へ転換させるというのがかよく分からないので,「拡張した経営体へ転換させ」というようにするか,もしくは「拡張させて」だけでいいのではというのが1点目です。
次に,同じ3ページ目の18行目のところでグリーンのことを書いていて,それで国立大学法人をシステム群とするということが書かれていますが,この国立大学をシステム群として活用することがグリーンだけを目的にしているようにも読み取れるので,そういう意図ではないのだったら,ここは順番をひっくり返して「システム群として活用して,例えばグリーンとか,こんなことに使っていける」とした方が一般化できるのではないかと思いました。
3点目ですが,同じ3ページ目の28行目に「社会からの相応の支援を得る」というようなことで支援だけを書かれているのですが,「社会からの相応の信頼と支援を得る」というような形で,「信頼」という言葉がここにあった方がいいのではないかという気がいたしました。
それと6ページ目で,これは先ほど星先生がおっしゃったこととも絡むのですが,14行目のところでステークホルダーに関する情報ということで,先ほど星先生から余計な心配をさせないために個人情報のことを書いておいた方がいいということをおっしゃったのはそのとおりなのですが,企業の立場で見ると,獲得した企業に関する情報を使うのかとも読み取れます。それはきっと違って,企業から得た情報を使うということだと思います。ですから,「ステークホルダーから獲得した情報を個人情報にも配意しながら」というような形の方がいいのではないかと思いました。
本当に細かな話ですみません。以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。検討させてください。篠原委員のおっしゃりたいことは理解できましたので,修文を考えたいと思います。ありがとうございます。
それでは,ほかにどなたかいらっしゃいますでしょうか。じゃあ,五神委員,お願いしします。
【五神委員】 五神です。資料1-4を提出しておりますので,その中で重要と思われるところだけ述べたいと思います。
まず,この最終取りまとめ(案)についてこれまで私もいろいろなお願いをしましたが,かなり適切に反映していただいているというのが全体的な感想でありまして,金丸座長及び担当の生田さんはじめ皆さんの御尽力に敬意を表します。
最初のところに書いた「真の経営体」になるための先行投資の確保と大学債の使途拡大は,極めて重要なところです。今回の文書で「第2弾の改革」というのが出てきて,先送りなのかなと思って心配しましたが,最後のところに第2弾を令和3年度末までにという区切りも明記されています。是非,この記載通り,第2弾の改革についても令和3年度末までに実現いただけるよう,よろしくお願いいたします。
2015年4月に総長に就任し,ちょうどこの3月で6年の任期が終わるわけですが,総長就任後すぐの6月に「国立大学経営力戦略」という文部科学省の文書で,運営費交付金依存体質から脱却して自律した経営体になりなさい,運営から経営へというメッセージが出ました。総長になってすぐでしたのでそれを真っ向から受け止めて,この6年,どうやって経営体になるかを実践してきました。企業の方なら当たり前のことだと思いますが,経営体になるためには,足元のキャッシュフローをきちんとマネジメントしてステークホルダーからの信頼を獲得しながら,中期長期のビジョンを出してより広く投資・サポートを集めてくるということになるのだと思います。ここで,実はそのキャッシュフローのマネジメントが国立大学法人の運営の中に全く組み込まれていなかったということを,コロナ禍になってすぐに目の当たりにしました。
そういう意味で,大学債の発行は,単に先行投資資金であるということにとどまらず,大学が自由に動かせる資金を用意するという意味でも極めて重要です。このコロナ禍の中で,空調や換気設備などを急いで整備しないと,今までの施設が価値のないものになってしまうという状況に陥りましたので,大学の裁量で使えるまとまった規模の資金が非常に重要になりました。この会議の成果としてタイムリーに債券を発行でき,私としてはものすごく助かっていますので,債券発行がこの会議の最大の成果だと私は位置付けています。
資料にも書きましたように,債券発行は,資金循環を好転させるという効果を期待してソーシャルボンドとして出したということも大変重要な成果でもあるのですが,キャッシュフローのマネジメントを行う中で自由な資金をある程度手元に持っておく資金調達という機能も極めて重要です。その点については,使途が限定されていることの制約がかなり大きいと感じています。ここを遅滞なく法改正につなげていただかないと,せっかく債券をコーポレートファイナンス型で出せるようになったのに道半ばで終わってしまいかねません。是非,少なくとも第2弾と呼ばれるところまでにはきちんと進めていただかないと,私の努力がほとんど意味のないものになってしまうと思うので,そこは大事だということを申し上げておきたいと思います。
もう一点は中期目標の大綱についてです。これは4ページ,5ページのところに書かれていることですが,本検討会議の最終取りまとめは,86の国立大学全体に対するものという位置付けだということでしたので,国立大学法人の中期目標大綱の策定に向けた検討がこれから本格化する中で,このまとめの中身をきちんと反映していただくように是非進めていただきたいと思います。その中で大事なことは,国そのものが経営体としてまず経営戦略を掲げ,それを受けた形で,各国立大学法人は何をすべきか,各大学の個性をどう生かしていくのかを検討するという形も必要です。国の経営戦略,つまり2050年のゼロエミッション宣言というのを菅首相が出して,国際的にも大変歓迎されているわけですが,その実現は簡単ではなく,知を最大活用しなければいけません。そのために国立大学は何をすべきなのか。
先日,東京大学が主催した東京フォーラムでも,目標が2050年というのでは遅過ぎる,カーボンニュートラルに向けて2030年までに二酸化炭素を50%削減しなければ,人間は地球システムをコントロールできなくなってしまうというのが環境学者たちのメッセージでした。そうすると,第4期中期目標・計画期間中に大学がどういうことをしなければいけないかというのはかなり具体化しています。しかも世の中,世界全体の資金循環もカーボンニュートラルに向かうことは明確なので,国家の経営戦略を述べることは難しくありません。その中で大学群をどう生かすかということを書いていただければよいわけです。この最終取りまとめで書いたものが大綱の前書きにあたる部分にきちんとトランスファーできれば,それは非常に分かりやすいものになるし,その下で各大学が何をすればいいかということが明確化すると思うので,是非このまとめを大綱の中にもきちんと使っていただきたいと思います。
そのほか,2点を書いてありまして,星先生の先ほどの御発言と関係している文系・理系の話などもありますが,そこはお読みいただければと思います。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,五神総長の大きな御要望であったんですけれども,文部科学省,これは堀野課長からお答えいただいた方がよろしいでしょうか。
【堀野国立大学法人支援課長】 法人支援課長の堀野でございます。
五神総長から御意見いただきました,今回,正に大学債の発行につきましては,東京大学におきまして五神総長のイニシアティブによっていち早くこの新しい手段を活用いただいて,これは単なる資金調達の趣旨にとどまらず,ソーシャルボンドとしての市場にも大きな反響がもたらされているということで,文部科学省としても,この先行投資資金が経営体として最大限に活用されて資金の好循環をもたらすと,そしてこうしたことが他大学へも横展開されていくということを願っております。
このたび御要望いただきましたさらなる発行債券の使途の拡大につきまして,その重要性については我々も理解しておりまして,最終取りまとめの中でも言及されている第2弾の高い自律性と厳しい結果責任を求めることとなる公共を担う経営体にふさわしい新たな法的枠組みの検討というところを経まして,着実に前に進めていきたいと考えております。
また,今後とも第1号として債券発行を行った東京大学には,その効果の可視化ですとか情報発信等についても引き続き御協力いただければと考えております。
また,中期目標大綱については現在策定作業を進めておりますけれども,今後国立大学法人評価委員会にも御意見を伺いますし,また本日いただいた御意見も含めて大学の皆様とこれから双方向の対話をしっかり行いながら,来年6月に向けて策定を進めてまいりたいと考えておりますので,引き続きよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【金丸座長】 それでは,第2弾の検討で,今の五神総長の御要望が是非採用されて生かされることを願っております。
私自身も,会社を経営してまいったプロセスで資金を金融機関から調達したり,それは借入れだったり,あるいはエクイティで増資をしたりとあるんですけども,30年前に会社をつくった際,日本全体がハードウェア志向で,お金の使い道については目に見えるハードウェアに投資すれば回収可能なリスクが減ると思われているのか分かりませんが,私たちが会社をつくったときも全く不要な社員寮を造れとか,我々はソフトウェアカンパニーですから,高度な人材をもっと採用してソフトウェアをつくろうと思っているのに,社員寮を造るお金だったら貸すというのが30年前でした。おそらく,大学を取り巻く環境はまだ変化し切れていないのではないかと思います。
もっとも,今回は大学改革で,大学御自身も大きく変わっていただくということが今の資金使途拡大とはペアになると思うんですが,引き続き私も貢献してまいりたいと思います。
五神総長,よろしいでしょうか。
【五神委員】 是非よろしくお願いします。正に金丸座長のおっしゃるとおりでありまして,大学の価値というのは無形の価値をいかに適切に値づけしていくかというところが重要です。大学債の使途拡大は極めて重要な点で,もちろん大学もそれに応えるように改革を進めることもペアで進めたいと思います。是非よろしくお願いいたします。
【金丸座長】 ありがとうございました。
それでは,ほかの委員の方,御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
ありがとうございました。本日は,最終取りまとめ(案)について御議論いただいたところでございます。幾つかの修文の御要請とかを承ったわけでございますけれども,大まかには結論が見えてまいったのではないかと思っております。いただいた修文のほとんどは誤解のないようにとか,あるいは文章の分かりやすさ等についての御指摘があったものですから,その辺の修文につきましては,できれば座長の私に一任していただければ幸いでございますが,いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。
                            (「異議なし」の声あり)
【金丸座長】 ありがとうございました。それでは,そのように対応させていただきます。最終セット版につきましては,年内に委員の皆様に共有させていただくとともに,ホームページにて公開することといたします。
それでは,議事2に移ります。2つ目の議題は「今後に向けて」でございます。本日,最終取りまとめ(案)について熱心に御議論いただき,ほぼ確定版とすることができました。
今後,報告書の「終わりに」に書いてございますように,戦略的な大学経営の実現に向けて,本検討会議で提言した改革が,第4期中期目標期間が開始される令和4年4月には具体化されて実を結ぶよう,必要な取組を実行していただくことが,まず重要だと思います。
その上で,本検討会議では導入部分のみしか議論し切れなかった第2弾の大学改革について,政府には引き続き検討を求めることとしたいと考えます。つきましては,残りの時間で,今後更に検討を深めるべき観点や新たな論点など,第2弾の検討に向けての展望や申し送り事項などについて,委員皆様から自由に思いの丈を一言ずつ述べていただく時間としたいと思います。
それでは,国立大学法人のステークホルダー側の声をしっかり時間を取って聞く趣旨から,国立大学法人の3総長からの御発言については最後とし,ほかの委員からの御発言を伺いたいと思います。
それでは,小林委員,お願いいたします。
【小林委員】 第1弾は非常にきれいにまとまったと思うんですが,そうはいっても,まだ「公共を担う経営体」という非常に定性的,理念的な部分から始まっているわけです。先ほど星先生から,ファンドのガバナンス論も含めて,大学10兆円ファンドを今回書き込んでおくべきかどうかという問題提起がございましたけれども,これは先ほどの金丸さんのお答えのように,やはり明確に今回の第1弾に書いておいて,その上で第2弾に向けて具体的な議論を進めていくべきなのだと思います。今後は10兆円ファンドのみならず,例えば2050年カーボンニュートラルを目指す2兆円ファンド等々も視野に入れながら,単に文教行政の枠,あるいは大学人の枠内のアジェンダとしてではなくて,トータルな国家戦略的な議論として,コーポレートガバナンスも1つの重要な参考例としつつ,公認会計士とか,マーケットの専門家,弁護士等も含めた形で,具体的,定量的に制度論を深めていく方向を志向すべきかと思います。
コーポレートガバナンスの議論ですと,資本効率とかキャッシュフローといった成果指標も,あるいは株主を筆頭とするステークホルダーの位置づけも明快に定義づけられているので,あとは「執行と監督をより明快に区分すべきだ」とか「取締役会をより多様にすべきだ」というように,かなり論点の軸は分かりやすいのですが,大きな方向性としては,先ほども議論がありました有形資産から無形資産へのシフト,例えばアメリカですと1995年,2000年あたりから既に有形資産への投資と無形資産への投資が逆転して,今や8割,9割がいわばGAFA的な無形資産への投資になっている中で,それら無形資産も含めて何をクライテリア,主軸のメトリックにするかという論点が浮上してきています。大学ガバナンスの議論に当たっては,こういうトレンドをやはりきちっと整理して,そもそも報告,監視,監査をどういうやり方にしていくのか,あるいは先ほどの無形資産等を含めて,非財務的な要素も包含した各種報告において,どんな項目をどういう形でまとめて,誰に対して発信するのかというような具体的な論点をしっかり詰めていかなければなりません。コーポレートガバナンスならば第一義的にマーケットに向けて発信すればよいのですが,国立大学の場合は,政府というより国民全体に対して説明責任を果たしていくことが求められるので,各種の事務負担は重くなるかもしれませんけれども,やはり経営の自律性と正に裏返しの責務として,まずは企業における有価証券報告書に相当するようなレポーティングパッケージのスタイルを具体的に議論する必要があるのではないかなと思います。
あとは,今回の第1弾は国立大学のみとはいえ86大学を対象にした議論でしたが,第2弾では,かなりファンドも意識しながら,相当世界最高水準的なところに絞っていく必要性も出てくると思います。国立大学,指定国立大学,あるいは国立研究開発法人,大学共同利用機関法人等々,アカデミアそのものの中にいろいろな類型が存在しているわけですが,私立大学も公立大学も含めて,今どこを議論していて,その類型はどういう期待の下に存在しているのかという,マッピングというかポジショニングも要るのではないかなという気がいたします。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,どなたか御発言をお願いいたします。冨山さん,いかがでしょうか。
【冨山委員】 ありがとうございます。
もう今,小林さんが言われたこととほとんどかぶるのであまりないんですけど,一応コーポレートガバナンスコードと会社法改正のときにかなり原作をやっていたものですから,あれはかなり大変な作業でした。ぶっちゃけで相当大変なのと,それから当然会社よりもある意味ではマルチゴールというか,要はゴールが比較的に複線化するので,そういう意味でも難しい作業になると思うので,そこはできるだけ早い段階からしかるべきメンバーで,相当今度は具体的制度設計に入っていかざるを得ないと思うんで,相当の工数を割いてそれをつくり込むということが大事になりますし,それからあとは,その中で今のうちから考えておいた方がいいのは,法改正に関わらせる部分と,それからソフトロー的に関わらせる部分を上手に分けておかないと,これを全部法改正,政省令改正でやろうとすると逆にすごい大変になっちゃって,かつ後で融通が利かなくので,そういった意味でいうと,要は制度の構成ですね,ハードローとソフトローの,その構成のデザインも非常に上手に考える必要があるんだろうと思っています。
ですので,あと10兆円の例のファンドとの関係性でいうと,私も10兆円のファンドにいい意味でピン留めするという効果もあるので,やっぱりここでは一言言っておいた方がいいのではないかと思っています。
並行して,地方大学のやつの作業の議論を,何人かこのメンバーと重なっていますけどもやってきた感じで言うと,大学単位で単純にくくっちゃうのも,実はちょっと危険なところがあって,大学の中でもある学部とかある学科は非常に優れた地方大学もあるわけです。そうしたら,多分そういう地方大学が例えば10兆円ファンドにチャレンジしてもいいわけで,ですから,当然大事なことは大学の規模よりも,ある意味では質が問われますし,正に今日出ている無形資産の時代というのは質の勝負になっていくわけですから,そういった意味合いで,基本的な思想としてそういったものを今回のアウトプットでも共有していくということは,私は全く賛成で,結構なことではないかと思っております。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,柳川委員,お願いいたします。
【柳川委員】 ありがとうございます。この報告書の取りまとめは,金丸座長はじめ事務局の方に大変な御尽力をいただいて,立派なものができたと思っております。感謝申し上げます。
それで,もともとこの報告書の問題意識は,やはりグローバルな大きな変化の中でスピード感を持って改革をやっていくということが圧倒的な大きな問題意識だったのだと思います。ですので,次の議論においてもやはりこのスピード感を持って改革していくというところは忘れないで,さらなるスピードアップが求められるということだと思います。
その点では,やはり未来志向でというんでしょうか,過去のいろいろな経緯もあるんで,そこは大事にはしなきゃいけないんですけれども,それにあまりとらわれることなく,これからの時代に一体国立大学法人がどういう形であればいいかというところを議論して,成果を上げていくということが重要かと思っております。
その点に関していうと,今,小林委員,冨山委員からお話があったように,通常の一般企業のコーポレートガバナンスの仕組みをある種ベースにしながら新しいガバナンスの仕組みを考えるということは,私は非常に重要なことだと思っております。ここでは相当なガバナンスの在り方に関しての議論が積み重なってきていますので,それをしっかりベースにして議論していくことが大事だというふうに思っています。
とはいえ,ベースに過ぎないので,それは全く一般の民間企業と同じガバナンスでなきゃいけないという意味では全くございません。そういう意味では,国立大学法人の特殊性であるとか,今までの経緯を前提にしたガバナンスのルールというのが必要だと思いますけれども,そこは,ただしあまり特殊だということを強調しちゃうと,ここでは全く別のものをつくるということになりかねないので,できるだけ一般ルールでやって,じゃあ,どこを特殊型としなきゃいけないのかというくくり出しの議論をしていく必要があるんだろうというふうに思っております。
それに関連すると,公共財とか公共的役割というのは非常に重要なんですけれども,あまりこれを強調し過ぎると,結局ここにいろいろな目的とか,いろいろな人のいろいろな要求とかどんどん,どんどん入ってきてしまうので,一体公共的な役割とは何かというところは少ししっかり定義した上で考えていく必要があるかなと,そうでないと,絶えず結局何を目的にしているか分からなくなっちゃうような形になりかねないというふうに思っております。
細かい点で言うと,冨山委員がお話しになったようなところでソフトローとハードローの区別というのは,私も非常に重要だと思っています。もう少し言えば,結局今の新しい枠組みの方向性の下で,ソフトローの方をどうやってつくっていくのかと,そこは大学側の積極的な関与がない限りなかなか組み立てられない部分がありますので,大学側がどういうふうに変わっていって,どういうふうに自主的にルールを回していくのかというところとソフトローというのは相当密接不可分のところにあるので,大学側がどういうふうに変わっていく,どういう方向性で変わっていこうとしているかというのが一つ大きなポイントになってくるかと思います。
それから,自由度を高めるという意味では,冨山委員のお話にあったことをちょっと敷衍すると,大学1個全体を1個の主体として考えると動きが悪いというのは,なかなか,特に大きな大学であればそういうことだと思うので,ある種そこは1つのグループ経営の持ち株会社のような形のイメージをして,その下にいろいろな組織体がぶら下がっていて,それぞれにかなり自由度があるという構想の前提の方が多分動きやすいんだろうなというのは,大学の中にいて実感するところでございますので,その点も是非参考にしていただければと思います。
以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。
上山委員,お願いいたします。
【上山委員】 ありがとうございます。今回のまとめ,非常にきれいに修文も含めてやっていただきまして,まずは感謝を申し上げます。
今回の検討会議というのは,大学の自律的な経営ということをどういう形で担保するかという問題意識から始まっていて,必然的に現在の国立大学に対する様々な規制をどうするのかということに話が行ったわけであります。ですから,恐らく次の第2弾ではどういう規制改革を行っていくのかということも相当程度議論になるとは思いますけれども,規制を取っ払っていけばいくほど大学が,今の国立大学という枠組みの中でできるのかどうかということも恐らくは議論になるだろうと,そういう予感はしております。
例えば大学債の問題もそうですし,あるいは出資の問題もそうですが,できる限り規制を取っ払っていくという方向性は正しいとはいうものの,それによってこれまでの文部科学行政の中との関係の中でどういう立ち位置をつくっていくのかということは,かなり大きな問題になるだろうと思います。とりわけ,例えば私立大学との関係も含めて非常に難しい問題が出てくるだろうというふうに思っております。
大学という組織は,非常に複雑なステークホルダーがいるために,ある意味で経営的にはもっとも難しい。これは当然なんだと思うんです,大学経営ということの視点からすると。大学を組織として守るということは,大学の中での事務的な対応も含めて本当に難しい。この問題を文部科学省は相当程度努力してやってくださってきて,ある種大学というシステムを守ることをマネジメントとしてやってきたという歴史があると思うんです。したがって,規制改革をして,攻めの経営を行っていくことを大学に求めるということであれば,一方でその攻めに対して守るサイドの経営ということも,かなりのところは大学に求められていくだろうと,特にマネジメントの面から求められていくだろうという気がいたします。そういう大学が一体何校あるのかということも,恐らくは議論になるんだろうと思います。全ての86大学がそれをすることができるのかというと,これは,私は個人的には大きなクエスチョンだと思っています。
ですから,今回の報告書の中で10兆円の大学ファンドについて言及してくださったのは大変ありがたいことで,あの10兆円の基金というのは世界に伍する研究大学をつくるためという,最初の基本的な枠組みがあるわけです。それを,どういう大学がどういうマネジメントの中で可能であるかについては,今後内閣府の方でかなり議論させていただきたいと思っております。来年の早い段階で10兆円基金についての検討会を始め,それが,今回の検討会議の報告書を受けて,大学の中でどのような可能性があるかについては,半年ぐらいかけて議論していくということになろうかと思いますが,その際に気を付けなければいけないのは,これまでずっと大学・高等教育に関する文部科学行政を担ってこられた高等局との連携を密にしながら大学ファンドに関する政策,突出した大学のみならず,様々な地方大学も含めたところに大きな波及が及ぶ可能性があるということを念頭に置いて,文部科学行政と密接な議論を重ねながら進めていければいいかなと個人的には思っております。その意味で,今回の報告書を頂いて,その上での大学10兆円ファンドを考えるという道筋は,個人的には正しい方向ではないかなと思っております。
以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,曄道委員,お願いいたします。
【曄道委員】 どうもありがとうございます。今回の取りまとめ,本当にありがとうございました。大変整理されたものになったというふうに思います。
一方で,私自身は私立大学に所属していることもありますので,この国立大学法人の自由度が上がっていくことに対して,私の耳にも民業圧迫といったような表現でのいろいろな指摘も入ってきています。ちょっと私としては複雑な立場にいながら,この検討に加わらせていただきました。
私は,個人的には今回のような国立大学法人の国との自律的な関係が整理された上で,まだ部分的であるかもしれませんけれども戦略的な経営ということが少しずつ実現されていくということは,これはすなわち日本の高等教育全体の,具体的な言葉で言えば世界に伍するということかもしれませんけれども底上げにつながっていくという期待があります。
そうなりますと,やはり次のステップの中で一つ御検討,御留意いただきたいことは,日本の高等教育の発展の中で今回のような検討がどういう位置付けにあるのかということをしっかりと説明を果たしていくということも,これからの国立大学法人の位置付けをより社会の中で明確にし,かつ理解してもらうものにしていく上で重要ではないかなと思いますので,是非その検討を次のステップではお願いをしたいなと思うものです。
誤解が生じるといけませんので再度申し上げたいと思いますが,今回のような検討の上で様々な自由度が高まっていくことに関して,やはり日本の社会そのものがそれについて議論して実現に向けて動き,教育そのものもそうかもしれませんけれども,社会そのもののいろいろな戦略性の中で各大学組織のありようを議論していくということは,今極めて重要な段階にあるのではないかなと思います。
以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,松尾委員,お願いいたします。
【松尾委員】 今回の取りまとめ,ありがとうございました。
次に向けてという観点で言いますと,社会の中での大学の役割というのをきちんと果たしていくということは大事だと思いますけども,今回も何回か僕が発言しましたが,リソースというのが金と人ということだと思いますので,経営する人がそこを自由に使えるようにしていくということが社会に対して応えていくための重要な,必要なことではないかなというふうに思っています。
特に大学の場合,多分一般的な企業の場合もそうだと思うんですけども,今までやっていたことをやめるというのができないと新しいことを始められない,そこにリソースをかけられないということで,大学でも社会から見たときの必要性が薄くなったものをやめるということに対して,どういうふうにちゃんとやっていくのかということにも踏み込んでいくべきなのかなというふうに思います。
一方で,その話が出てくると逆に,柳川先生もおっしゃったことかもしれませんけれども,やっぱり大学っていろいろな時間軸があって,非常に長期に教育していかないといけないこと,基礎研究を継続していかないといけないこともあれば,社会の要請に応えて非常に動きが早く人材を育成していくというような面もあって,複数の時間軸が入り交じっているわけですので,そこに対してのより緻密な設計というのも同時に必要になってくるのかなというふうに思っておりまして,そういったあたりなどが議論の材料になるのかなというふうに思っております。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,松本委員,お願いいたします。
【松本委員】 本当に今回の報告書をまとめてくださったことに心から感謝します。
この報告書の中にもちょっと出ていましたが,中期目標,中期計画の在り方と,それから評価の在り方,これは根本的に見直さないと,終わったからいいとかそういう話ではなくて,これを根本的に見直して,評価というものの重圧から大学を解放しない限り,これは先ほど曄道先生がおっしゃった私立大学も国立大学もみんな潰れてしまうだろうというふうに感じています。その根底にあるのは,大学を自由にするとろくでもないことをするという不信感があるということを感じています。その信頼関係をどうやってつくるか,その第一歩にこの報告書がなればいいし,自律的契約関係というものが納税者,税金を払って大学を支えてくださる一人一人の心に届けばいいなと考えています。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,篠原委員,お願いいたします。
【篠原委員】 ありがとうございます。
この第2弾に対する期待を申し上げると,今度の第2弾というのは,ファンドをもらうような研究大学に関する議論が中心になると思うのですが,国立大学86大学,全てに網をかけるような形での議論が必要なのではないかと思っています。
網をかけるというのは言い方がよくないですが,この資料の中でもガバナンスの選択肢を決める必要があるというように書いてありますので,ガバナンスの選択肢等はなるべく早く提示して,いろいろな意見をもらった方がいいと思っています。
今日は大学の先生方が多いのでお話ししますと,実はコーポレートガバナンスコードも3種類しかないのですが,3種類で,みんな同じことをやっているかというと,実は違います。今日はここに産業界の方は私を含めて4人いらっしゃいますけども,弊社は一番レガシーな監査役会設置会社です。監査役会設置会社の中でも,自分たちのガバナンスの実効性をどうやって上げていったらいいのかということをいろいろ考えて,例えば指名委員会に替わるものをつくってみようとか,取締役会の運営方法をどうしたらいいかということを絶えず考えているので,大学の先生方に是非御理解いただきたいのは,ガバナンスの方法というのが決まったからそれで終わりではなく,その中でいかにもっと実効性を上げるような工夫をしていくかということを考えていかないといけないのです。社外取締役が何人いればいいとか,そういう話は全然違っていて,その中でいかにやっていくかということの方が大事だということを是非御理解ください。
そのような観点で言うと,ガバナンスの選択肢をしっかり決めてもらいたいということと,特にファンドを活用する大学のガバナンスについては,前に議論も出ていましたけども,例えば委員会をどういうふうにするかという具体化みたいなことや,学内の体制みたいなこともしっかり決めていただきたいと思っていますし,それに加えて,大学が選ぶミッションということもこれに書かれていますが,このミッションについても文部科学省の方で急ぎ素案をつくっていただいて,いろいろなコメントをもらうべきと思っています。中間取りまとめのときにもお話ししましたけども,ステークホルダーに対する情報開示とか,エンゲージメントということについても,急に言われてもなかなか皆さんは分からないと思うので,決して縛るものではなくて,大枠ぐらいを提示するようなこともこの第2弾の中でやっていただければいいのではないかと思っています。
とにかく,ガバナンスというのは形を合わせることが目的ではなく,形はあくまでもひな形であって,その中でいかに実効性を上げていくか,では,実効性を上げるということは何なのかということを大学の中で考えていかないといけないので,そういう観点では,今回の提言の本質を大学の経営者だけではなく,教職員の皆さんにもしっかり理解していただく必要があるので,この報告書をオープンにすればいいというだけではなく,もう少し細かな解説資料みたいなものも,場合によっては提示していただく必要があるのではないかと思っています。
私からは以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。
星委員,お願いいたします。
【星委員】 第2弾に向けてということで言いますと,第1弾というのは改革の方向性が示されたと言えると思います。それで第2弾は,それに向かって具体的な方策をデザインするという,そういう段階になると思います。
繰り返しが多くなりますが,4つだけ非常に重要だと思う点を指摘しておきます。1つは,今篠原さんもおっしゃいましたし,ほかの方もおっしゃいましたが,ガバナンスの具体的な構造です。選択肢も含めて,突っ込んだ議論をするということ。
2番目は,これは五神総長がおっしゃいましたけれども,債券で調達した資金の使途の拡張,一般的にはファイナンスに関する規制緩和,運用を含めてですけれども,そういったところを話し合っていくこと。
3番目は,定員の増減,そしてそれ以上の必要な再編というものをやりやすくするような具体策,これを議論していくこと。
最後4番目は,この検討会議であまり話に出てこなかったのが学生の教育という話。学生の教育の質,これはクラスのダイバーシティとかも含めて,それを高める仕組み。これは最終的には大学自身に任せていくという結論になるのかもしれませんが,一方で,例えば入試の仕組みとかは教育の質に関わると思いますが,それは一大学ではコントロールできない。そういったところまで踏み込んで,学生の教育の質をどうやって高めていくかという改革を,これから第2弾で検討していくべきじゃないかと思います。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,大変お待たせしました。3総長の方々に御意見を賜りたいと思います。
今日は最初に湊委員,お願いいたします。
【湊委員】 ありがとうございます。
私は主に最後の方からの参加ということでしたけれども,随分勉強させていただきまして,大変ありがとうございました。
私の理解では,大学の経営の在り方というものがここで議論されてきたわけですけども,そもそも何でこういうことをやらないといけないか,というところがまずあるんだろうと思います。それにはいろいろ背景因子があるんでしょうけれども,一つにはやはり日本の,特に国立大学の世界的な競争力であるとか研究力等について,欧米の主要な大学と比べて見劣りがするということがあるんだろうと思います。
いろいろなデータがその背景に出されておりますけれども,一つあまり表に出されてないけれども最近内閣府あるいは文部科学省でよく使われているデータに,いわゆる大学全体の規模があります。これは,端的にはキャッシュフローベースでの年間の大学の支出,と言うよりは収入ですかね,どちらかと言えば。そういったもので比較すると,ここ15年のデータが私の手元にもありますけれども,全体として見ると,例えば欧米,特にアメリカの主要大学では2005年ぐらいから見ると250%,それからもっといい所では300%の増加という数字が出ています。我が国の大学で見ると,うちの大学に関していえば120から130%,1.2~1.3倍の増加で確かに明らかに低いんです。問題は,その成長率の違いが何に起因するかということでその内訳をよく見てみると,2005年当時は,実はその内訳は,全体規模自体は当時でも2倍ぐらいの差はあるんですけれども,アメリカの主要大学とあまり変わっていないんです,細かいデータは言いませんけれども。ところがここへきて,例えば前年度で見ると,特定の内訳に非常に大きな違いができていて,これが全体規模の成長率の差に主に反映されているということです。
細かいデータは申しませんが,そこで,特定の内訳の収入の変化が全体の規模に大きな違いを生んでいるということですから,これから私どもがやらないといけないのは,では,新たな資金導入をするとして,内訳の中のどこに入れていくのか,成長のためにはどのような手段でどこに手を加えていくか,という議論がこれから必要になります。そこでは,今回も議論になりましたけれども,各大学がどういうミッションを持っているか,どういう方向へ進むのかということによって規定されてくる,そういうことではないかという気がしています。
それに応じて,多分経営体制というものも変わってくるんだろうと思いますけれども,そういうことで具体的にどういう経営体制が,これも今日話がありましたけど,どういう選択肢があるのか,どういう形がありうるのかという具体策が,これから恐らくこの第2弾で議論されてくるんだろうというふうに考えています。
簡単ですが以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,大野総長,お願いします。
【大野委員】 ありがとうございます。
これまでの会議で「エンゲージメント型経営」ということを申し上げてきました。これはステークホルダーとの信頼関係を築く必要があるという意味で申し上げたので,ここまでステークホルダーでもある委員の皆様からの様々な御意見を,居住まいを正してお伺いしていたところであります。資料も用意してまいりましたので,そちらも使って私から申し上げたいと思います。
その前に,大変失礼いたしました。今回のまとめに関してはすばらしいものができました。これはひとえに委員の皆様,そして金丸座長,事務局のおかげだと大変深く感謝しております。
それを実行しようとする立場から,自分の身の周りを見たときにどういうことが見えるかを,少し具体的な例を挙げつつ,資料にしたものでございます。2ページ目,「機能拡張」と右の図に書いてありますけれども,社会との共創の拡大で財源の多様化にも取り組み,大学自身が,今は成長という話もありましたけれども,機能を拡張して大きくなっていくというモデルを実行しようとしたときの課題についてお話しします。次のページをお願いできますでしょうか。
このように2つの,収入の件と,それから2点目は支出に関してのスピード感という点を,例に挙げました。我々としては戦略的な社会共創事業を展開可能な環境にしていただきたい。株式等についても,必ずしもきちんと決まっているわけではありませんけれども,今は換金可能になった状態から,ある期限を切って,その期限で売却するようなルールになっています。ここで何を申し上げたいかというと,公共財としての大学が成長するというような制度設計がされていない,あるいは成長を許していないと言ってもいいぐらいの状況です。したがって,ファンドのお話もありましたけれども,多分ファンドはいつか償還しなければいけませんので,償還後には,大学がこの規模のファンドを大きな形で成長させられるようにしていかなければいけないわけです。しかし,そこに大きな課題を抱えていると思います。そういう意味で,公共財としての在り方を議論し,社会の承認も得た上で,今,民業圧迫というお話もありましたけれども,我々が社会に貢献し,かつ自身も成長するということを実行できる制度的,文化的背景が必要だと思います。それが1つ目のお話です。
2つ目は,7ページに飛んでいただきますと,これは我々が何か物を買おうとしたときに,仮に民間由来の資金であっても国の調達手続を踏まなければいけない。見てお分かりになりますように,民間であれば資金調達後,半年でできることが,我々は1年と2か月かけなければ2億円以上の研究装置を調達できない,あるいは,1,500万円以上であればもう少し短くはなりますけど,いずれにせよこの差があることは変わらない。
次のページをお願いいたします。
例えば建物を建てようといったときにも,我々は2倍以上の期間が必要であります。これは国由来の資金ということですけども,民間由来であっても,あるいはプロジェクトでという建て付けであっても,このルールがありスピードが出ない仕組みになっています。次のフェーズでは,ここの制度を整備する必要があると思います。私たちはどうしているかと言いますと,施設整備を早期に行う必要がある寄附案件の場合には,そのための資金でお受け取りするよりも(民間の調達ルールで短縮できることから)建物をつくってくださいと,その後つくったものを寄附してくださいというふうにして時間的な差を埋めています。スピード感のある経営,あるいは世界に伍する活動をするためには,こういうところがこれからは問題になるのではないかと,ブレーキを外していただかなければいけないのではないかと考えています。
以上をまとめますと,公共財としての大学ということを言われたときに,今は利益を上げるということ,あるいは成長するという概念がその中に入っていない仕組み,制度になっていますし,社会もそれをよしとしていると思います。したがって,その部分の改革,概念を変えていく作業が我々に課せられたものであると,今回の検討会議で理解したところです。
我々は現場でこれから,検討会議のまとめも踏まえてスピード感のある,皆様の社会にこの大学があってよかったという活動をしてまいりたいと思いますので,是非とも御支援も,御意見もいただければと思います。
私からは以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございました。
五神委員,お願いいたします。
【生田高等教育局視学官】 今,東京大学の方がフリーズしているようなので……。
【金丸座長】 ああ,そうなんですか。
それでは,五神先生が復帰される前に,どなたかまだ御意見がある方がいらっしゃれば。
では,松本委員,お願いします。
【松本委員】 御説明,ありがとうございます。
大野委員に伺います。先ほどスピードが出ない仕組みというお話がありました。これは国のつくった枠という意味なのか,学内の仕組み,文化という意味なのか,どちらのことをおっしゃっているのか御説明願えますか。
【大野委員】 大野です。よろしいでしょうか。
今日お示しした例は国の契約調達手続です。それに準拠するということで,全ての国立大学が今の,例えば建物であれば2,000平米,設備であれば1,500万円あるいは2億円という基準があって,それ以上になるとここで述べた調達手続を踏むことになっています。これは国立大学個別のものではなくて,国の調達に準拠しているということでございます。
【金丸座長】 よろしいでしょうか。
五神先生どうですか。難しそうですね。
五神先生の御意見は十分これまでも承ってまいりましたので,よろしいですか。
【五神委員】 すみません,五神ですけれども,よろしいでしょうか。こちらで聞こえますでしょうか。
【金丸座長】 東京大学のIT環境が心配になりましたけど。
【五神委員】 五神ですけれども,よろしいですか。
【金丸座長】 はい。
【五神委員】 ありがとうございます。めったに落ちないんですけれども。
いろいろ御意見をお聞きしていて,そのとおりだなと思うことが多かったわけですが,いくつかコメントしたいと思います。まず公共的なものということの考え方について,この報告書の中にも書いていただいていると思いますが,民間企業の方もベネフィットコーポレーションとか,フランスの「使命を果たす会社」のように,地球規模の課題を解決するということが経済活動の方向性として極めて重要だと認識されはじめています。ですから,官と民が同じ方向に歩み寄っているところです。地球温暖化のようなグローバルなイシューは相当新しい知恵を繰り出さないと解決しないことが明らかな中で,その歩み寄りの中で大学ができることはたくさんあり,それをやっていくことが大学が担うグローバルな公共財としての責務です。民においても資金の流れがそちらに向かっている状況があるので,今までとは違った意味での資金循環が起こります。これが東京大学のソーシャルボンドを発行するときの重要なポイントだったわけです。
それに対して,日本の市場において,東京大学の大学債に対して発行額の6.3倍のオーダーをいただくという意味で市場が歓迎してくださいました。公共分野においてどう無形の価値をマネタイズする方向に誘導していくかを官と民が連携する中で進めていく,その中で大学の経営体化という議論がここまで進んだので,パブリックな役割を担いながらも,大きな経済体としても回っていくというモデルがリアライズしてきたという点が,この1年間の議論を踏まえても重要な前進ですので,それを捉えることが重要です。つまり,例えば診療報酬と授業料収入だけが大学の収入であるという既成概念をどう乗り越えるか,それを経営マネジメントを現場で既に実際にやっているという理由で私立大学が率先すれば良いというのではありません。国立大学は,公共のものとして,国がサポートすることについて既にきちんとコンセンサスを得られているので,その公共の役割を拡張するのであれば,国立大学こそが先行すべきであろうということが,私が言ってきたことです。しかし,大学が経営体化するといっても,国が国として支えるベースの部分はあるはずです。そこが明確化されてない中で大学が機能拡張して新しい資金循環の方だけに走ってしまうと大事な基盤的な機能を逆に見失ってしまうことがあるので,まず国の役割を明確化してほしいということなのです。
そのためには,Society5.0という価値に向けたパラダイムシフトが起こる中で,国が日本としてどう世界の中で稼いでいくのかということを明確化することが必要です。カーボンニュートラル宣言などがかなり明確化して来ているので,今は方向性が分かりやすくなってきて,そことタイアップして大学改革を一気に第2弾で改革を進めるべきタイミングに来ています。そのときに私立大学は,国立大学とは設置形態が違う中で,相補的な存在であり,重要な仲間です。私たちは最近,早稲田大学との連携も積極的に進めていますし,慶應義塾大学とも量子の分野で連携しています。これらの連携を通して,それぞれの相補性・重要性は非常によく実感しています。そこが民業圧迫というようなコンテクストになってしまうのであれば,かなり舌足らずだということになるので,そうならないような書き方をすべきと思います。
それから,学生目線ということを強調していくということはとても重要で,重要なステークホルダーとしての学生という存在が,今までの議論の中でまだ十分ではなかったかもしれません。しかし,エンゲージメントということの定義が,相互の責任ある関与だということが明らかになったわけです。したがって,学生も責任を担う存在として,ステークホルダーとしてエンゲージしていくという視点も重要になります。その相互の責任をきちんと理解し合う形で学生の目線を強化していくことが,社会変革の駆動を大学に求める上では極めて重要です。
最後に,柳川先生の御意見は,議論を宙に浮いたものにしないために現実的にやっていくことが重要という意味でそのとおりだと思います。その中で大学のガバナンスにおけるグループ経営のイメージに関して,私は総長として予算の透明化などを進めてきましたが,これは部局主義で非常に硬直化してしまっていた制度を,全体のスケールメリットを生かす形でマネジメントを改革したというものでもあります。例えば,各部局ごとに予備費を用意しないといけないような資金配分をやめて,各部局への配分額を明らかにし,全部蓋を開けた上で,みんなで議論する部分を3割確保したというところがポイントです。そのスケールメリットによって生まれた資金を活用して,若手研究者の雇用安定化などを進めることができたのです。
実は,柳川先生のいらっしゃる経済学研究科は,私が6年間見た中で一番改革成果が上がって,見違えるように変わったと思っている部局の一つです。その要因は,部局の先進的な議論と大学全体の改革が同期したからだと思います。ですから,部局と全体をどうマッチさせながら進めていくかが大学のマネジメントでは極めて重要で,それを有効に働かせるための仕組みをうまく制度としても仕込んでいくことが改革を加速するためには極めて重要です。そうした手法について,かなりいろいろなことが分かってきましたので,是非それをほかの大学にも展開したいと思っています。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,ほかの方で御意見はありますでしょうか。
では,冨山委員,お願いします。
【冨山委員】 皆さんのお話のやや総括的になっちゃうと思うんですけど,今,コーポレートガバナンスコードの改定作業をやっておりまして,正に今の改定作業は,先ほど何人かの方からありましたけど,要はESGなりSDGs的な価値観というものを企業経営統治に反映していきましょうというのが1つの大きな流れです。だから,その脈絡で言うと,五神先生が言われたように明らかにだんだん寄ってきているんです,寄ってきていることは間違いありません。
それで,恐らくその中で,ただ企業というのは一番頂点に株主という私的所有が存在します。ですから,その私的所有が存在するからいい面もあれば,私的所有が存在するための限界もあります。逆に大学というのは,ある種すごくマルチバリュー,マルチステイクホルダーという部分があるんですけど,でも,逆に私的所有というのが頂点に存在していないからできることってやっぱりあるわけで,それをどういうふうに役割を共有していくかということは,これは極めて現代的に,かつ世界的に重要なイシューで,時正にゼロエミッションみたいな話が出てきちゃっているわけで,例えばなんですけれども,私も一応電力会社にいたので,あの議論をつらつら考えると,電動車にすることはあまり本質的じゃなくて,恐らく多分水素のようなエネルギー密度の高い蓄電媒体,蓄エネルギー媒体で循環させるということを真面目に考えないと,実はあまりうまくいかないんじゃないか,多分。
そうなると,これは一企業だけでは絶対無理な話で,あるいは複数企業と,あるいは正に知のハブになっている大学あるいは国研というのがかなりいろいろな形で連動して,これは1つのグローバルな,恐らく水素を使ったエネルギー媒体循環のエコシステムをつくらなきゃいけなくなるんで,そうすると,これはまた国境をまたいでいろいろな物事を動かしていくということになると思うんで,そういった意味で,例えばこの1つを取っても大学と民間企業のコラボレーションというのは社会課題解決という意味でも,収益追求という意味でも,これから一つ大事になる時代になっていくと思っています。
それからもう一点,大学と民間との関係性でいうと,東京大学が今度つくったエコノミックコンサルティングの会社の取締役をやっていまして,それでつくづく思うに,やっぱりデータ駆動社会というのは,実は大学がやっている,松尾先生なんかがやっているような先端的な学術的研究と,民間におけるビジネスアプリケーションの距離が劇的に縮まるんです。要は,民間からすると,大学の中に存在している,これは別にいわゆるAIだけじゃなくて,いろいろな社会科学も含めて,あるいはバイオなんかも含めて大学の中にある知的な先端的な発見とか発明とか技術というものが割と即ビジネスにつながっちゃうんです。今回はコロナが変異を起こして,それで変異に対して,実は6週間で対応できるというふうにファイザーが言っていて,これはどういうことからというと,あれはRNAなので,その記号が変わっているところを見つければすぐ開発はできちゃうということなんです。だから,もう本当にそれって本来はRNAの塩基配列はもともと極めて確率的な話なわけで,ですから,もう今はそういう時代になっていますので,ますますその距離感は縮まっていると思います。
だから,全く今の話は私も同感だというのと,そうすると,これは先ほどの大野総長の話と絡むんですけど,自律的な契約関係というのは国と大学だけではなくて,大学と民間との関係も自律的な契約関係で動かせるようにしていかないとまずいんですね。私は日本の今の国の仕組みは,その意味でいうと実はすごく欠陥を抱えていると思っていて,例えばなんですけど,東京大学の今回のエコノミックコンサルティング会社というのは,国の入札ランキングではまだDとかの低いランクなんです。そうするとおそらく300万円以上の仕事を受けられないんですよ。申し訳ないけど,Aランクになっている何とかソウケンよりもよっぽどやっている人間のレベルとは高いんです,はっきり言って。こんなランキングを使っているということ自体,まともな市場経済におけるプレーヤーじゃないですよ,国は。だから全く自律的な契約関係を,それは何を言っているかというと,国自身が自律的な契約関係を民間と結べないということを宣言しているに等しいです,ああいう仕組みは。だって,何でランキングを付けるかという,そういう判断する能力が国にないという前提だからランキングでやっているわけだから。それはもう個別個別で相手の能力を評価して,それで入札して,別にできたばかりの会社で1億円のビジネスをやったっていいんです,それを判断するケイパビリティがある人が国にいるんであれば。
そういった意味でいうと,まず大学自身もそういう自律した契約関係というものを,国とだけじゃなくて全ての民間プレーヤー,あるいはよその大学,あらゆる関係性においてそういった自律した契約関係をつくれるというのもガバナンスの課題になるなというふうに今日の皆様の意見を伺っていて思ったので,是非ともこれは次の第2弾でそういうものも入れてもらったらいいなと思います。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。
松本委員,お願いします。
【松本委員】 今の冨山委員のお話の補足なんです。お話に付け加えてなんですが,国が自律的契約関係を結ぶ主体としてなり得ていないというと,大学が自律した契約関係を結べるようになるということとちょっと関連するんですが,このたび12月11日に東京大学が総長選考会議における総長の選考過程の検証報告書というのを出しています。この中で,学長選考会議というものをこの会議体でも随分議論してきましたが,その選考会議の中では,実は学内委員というのが部局ローテーションで委員を交代させていたということがあからさまに書かれています。つまり,どれだけシステムを整えても,このシステムを整えて,こういう大学をつくりたい,こういう国をつくりたいというのが学内に届いていないという事実をこの報告書はあからさまにしているので,こういったことも含めてこの検討会議から発信できればいい。それから,その次の第2弾に,どんなにシステムを整えても,大学人がこの改革自身が自分たちのためのものなんだということをどうやったらお分かりいただけるだろうかということも,どこかで出していければなということを考えています。
以上です。ありがとうございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。
ほかの皆様,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
本当に1年はあっという間だったんですけれども,私がこの大学改革の座長を拝命して,皆様と議論をしてくる中で思い出したシーンがあるんです。ちょっと古い話で恐縮なんですが,1995年のラスベガスでビル・ゲイツが,大体プレゼンを毎年やるんですけど,すごいお金をかけてプレゼンテーションをしたんです。会場はなかなか座れないんですけど,何十人かの日本人の皆様と私もその席にいたんですが,そこでWindows95を華々しく発表したと同時に,世界中のPCはマイクロソフトがつないでみせると言って,マイクロソフトネットワークというのを発表したんです。会場にいた多くの人たちは,既にみんなインターネットでつないでいるので,「マイクロソフトネットワークって何?」という,こんな衝撃を受けたんですよ。ひょっとして,ビル・ゲイツはインターネットのことを知らないんじゃないかっていって,翌日から120ドルだったですかね,ちょっと記憶が曖昧ですが80ドルまで株が下がったという。
ここからが,さすがとちょっと思ったんですが,それで,その翌年の1996年3月12日ですから,半年ぐらいの間でビル・ゲイツは全社員に謝罪文と,それから皆の知恵を貸してくれと,マイクロソフト社員全員からインターネットを知っている人を募って2,000人ぐらいの人を集めて巻き返すというプロジェクトをスタートして,その発表が半年後の1996年3月だったんです。そのときは,誰が先行していたかというと,大学が先行していたんですね,インターネットは,商業化の前に学術利用で開放されていたので。ですから,ブラウザーとかは,マイクロソフトの大企業が出てくる前は学生がつくったブラウザーが席巻していて,それでマイクロソフトがインターネットエクスプローラーを出してきてそれを潰しにかかるということだったんです。
何が言いたいかというと,その当時ももちろんマイクロソフトはガリバー企業ではありましたけど,そういうガリバー企業が知らないことがあるんだというのは,私にとってはすごく新鮮な発見だったんですよ。もちろん巻き返したマイクロソフトは立派でありましたけど,ただ,そのマイクロソフトの地位を脅かしたのも学生の人たちだったということが,私はカリフォルニアというか,アメリカの学生の人たちのリスクを取って挑戦するということが繰り返し行われているということが今日の大学の競争の質も変えてしまった。インターネットの出現以降は更に起業しやすい環境が一気に増えて,それからキャッシュリッチになる卒業生が多く出たわけですから,そうすると,従来の大学から見た寄附金というのは,大企業に依存している率が日本は高かったと思うんです。そこが今の米国との差で,大学がキャッシュリッチになって,今回そのキャッシュリッチに,当然今から日本の国立大学も自由度を高めて規制を緩和して稼げる大学になっていただきたいと思うんです。今彼らは上位3校ぐらいが10兆円規模の基金を持っていてということから,多分上山さんたちが大学ファンドという構想に至ったのではないかと思います。いずれにしても今回の大学改革が第一歩で,その大学が変わり,魅力を増していただいて,真に学生が興奮するような教育の中身に変わっていただいて,松尾先生のような大学生から見ても魅力あるような先生が東京大学工学部にずらっと並んで,しかもどっと若返っていただいて,もちろん伝統も大事ですけど,今回はイノベーション競争ということだし,キャッシュリッチ競争でもあります。今からスピーディーに改革の歩みが始まるんだということを本当に期待して,この最終の取りまとめの最後の挨拶にさせていただきたいと思います。
皆様とは,本当は対面で熱い議論を交わしたかったんですけども,この1年近くウェブ上で,時々はフリーズしたりしましたけれども,ウェブ上で温度も伝わるような熱い議論が繰り広げられたのではないかということで,委員の皆様には感謝しております。
また事務局の皆様も,前半の文部科学省批判に耐えていただいて,文部科学省側から変わるんだという気概も,私は議論を通じて感じましたので,国の未来を,先を見なきゃいけない役割だと思いますので,今回の改革が単なるペーパーに終わらないように,是非文部科学省の皆様におかれては,皆様からいただいた意見を真に読み取り,参考にさせていただいて,第2弾以降の改革の道筋をスピーディーに歩めるようになればというふうに思います。
本当に皆様,ありがとうございました。拙い座長のリードで申し訳ございませんでした。御容赦いただければと存じます。
それでは,最後に文部科学省事務局から一言,御挨拶をいただけますでしょうか。伯井局長,お願いします。
【伯井高等教育局長】 高等教育局長,伯井でございます。
金丸座長をはじめまして,委員の皆様方におかれましては,大変お忙しい先生方,この1年間ありがとうございました。検討会議の議論を精力的に進めていただきましたことに,改めまして心より御礼申し上げます。
今,座長からもありましたように,今年はコロナ禍での1年でございましたので,第3回からはリモート開催ということになりました。文部科学省の会議もこういうオンラインの開催というのは今まで経験がなかったわけですけれども,役所の会議の在り方もこういうふうに大きく変わってきている中で,コロナ禍で全世界的なデジタルトランスフォーメーションの変革が進み,国立大学法人を取り巻く状況というのも大きく変わる転換期でございます。
本検討会議では,こうした転換期の状況も踏まえして,ポストコロナの新たな時代を見据えた大学経営のニューノーマルを日本発モデルとしてつくり出すことを目指して,熱心に御議論いただきました。正に,お取りまとめいただきました御提言につきましては,産業界,アカデミアなど多様なバックグラウンドをお持ちの先生方から忌憚のない御意見を賜りまして,磨き上げられた知の結晶であろうかというように受け止めております。
文部科学省といたしましては,まずは御提言いただきました内容の改革を着実に進めますよう,法律改正という形で必要な制度改正を,立法府の御理解もいただきながら着実に準備を進め,取り組んでまいりたいと思っておりますし,その他もろもろの制度改善もスピーディーに進めてまいりまして,第4期の中期目標期間を迎える国立大学がよりよい形で自律的な経営の実現を図るよう,全力で取り組んでいきたいと考えております。
また,今回第2弾として御提言いただきましたさらなる大学改革,さらなるガバナンス改革,あるいはさらなる規制の緩和につきましても,文部科学省としてしっかり検討を進めていきたいというふうに考えております。その際,内閣府,CSTIの議論と同調しながら密に連携を図り,議論を進めていきたいというふうに考えているところでございます。
金丸座長,皆様方におかれましては,今後も御指導,御鞭撻,御叱責をいただきますようお願い申し上げまして,閉会の挨拶とさせていただきます。先生方,本当にありがとうございました。
【金丸座長】 ありがとうございました。
それでは,第11回,最終の会議を終了いたします。皆様,本日は御多忙のところ,長時間にわたりまして熱い議論をしてくださいましてありがとうございました。
それでは,これにて終了させていただきます。
 

── 了 ──

お問合せ先

国立大学法人支援課