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国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議(第7回)議事録

1.日時

令和2年8月31日(月曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省15階 15F特別会議室 ※WEB会議

3.議題

  1. これまでの審議概要(骨子)(案)について
  2. その他

4.出席者

委員

金丸座長、濵口委員、上山委員、大野委員、五神委員、小林委員、篠原委員、曄道委員、冨山委員、星委員、松本委員、柳川委員、山極委員

文部科学省

伯井高等教育局長、川中審議官(高等教育及び高大接続担当)、森審議官(高等教育及び科学技術政策連携担当)、堀野国立大学法人支援課長、生田高等教育局視学官、他

5.議事録

【生田高等教育局視学官】 それでは,定刻になりましたので,ただいまより第7回国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議を開催させていただきたいと思います。
本日も,いつもと同様,新型コロナウイルスの感染拡大の防止のために,このような形,ウェブ会議方式での開催となっております。委員の皆様方には,御参加いただきまして,誠にありがとうございます。音声など現時点で不具合ございませんでしょうか。
本日の議事につきましては,議事次第に書かれてあるとおりでございます。本日は,傍聴者,報道関係者の入室は認めておりませんけれども,会議の模様につきましては,YouTubeの文科省チャンネルにてライブ配信をさせていただいております。
事務局からのお願い事項は,これもいつものことで同じでございますけれども,ウェブ会議を円滑に行う観点から,御発言に当たりましてはインターネットでも聞き取りやすいようはっきり御発言いただく。そして,御発言の都度できますればお名前をおっしゃっていただく。そして,発言のとき以外はマイクをミュートにしていただく。御発言に当たりましては,カメラに映りやすいよう手を挙げていただきたいと思っております。それから,資料を参照する場合は,資料番号,ページ番号,ページ内の該当箇所などを分かりやすくお示しいただく。そして,最後に,毎度のお願いでございますけれども,できる限り多くの委員の方々からの御発言をいただきたいと思っておりますので,1回当たりの発言は二,三分程度にとどめていただくなどの御配慮をよろしくお願いいたします。
それでは,金丸座長,よろしくお願いいたします。
【金丸座長】 ありがとうございます。では,本日もよろしくお願いいたします。
本日の会議は,松尾委員,宮内委員から欠席の御連絡をいただきましたので,委員15名中13名の出席で開催いたします。
それでは早速,議事に入ります。これまで6回にわたって多岐にわたるトピックについて御議論いただきましたが,そろそろ中間取りまとめのフェーズに入ってまいりました。本日は,本検討会議としての方向性を審議概要の骨子として事務局に取りまとめてもらっていますので,これをベースに議論の取りまとめに向けて方向性の確認をしつつ,意見を集約していければと考えています。また,本取りまとめに当たり,キーワードとなる「自律的契約関係」という言葉と,前回の委員会で松本委員から問題提起がなされました「エンゲージメント型」の定義については,特に委員の共通理解を得ていただくことが必要ではないかとの問題意識に基づき,頭の整理をするための資料についても事務局に作成してもらっています。
まずはこれらについて事務局から説明してもらい,9月の中間まとめに向けて土台となる議論を進めていければと考えています。更に本日は,中間取りまとめの後の第2フェーズにおいて新たに議論すべきと考える論点についても,是非委員の皆様から御意見を頂戴したいと考えておりますので,よろしくお願いいたします。
それではまず,事務局から御説明をお願いいたします。
【生田高等教育局視学官】 それでは,失礼いたします。事務局の方から,資料1-1,1-2を使いまして説明をさせていただきたいと思います。
まず資料1-1でございますけれども,こちらがこれまでの審議概要(骨子)(案)ということで提示をさせていただいております。この骨格といたしましては,最初の1番で国立大学法人と国との関係,自律的契約関係ということについて整理をさせていただいていまして,3ページ目からの2つ目の柱,経営裁量の拡大を可能とする規制緩和の事項,これをまとめております。最後の4ページ目の3ポツ,ここで新たな時代の「大学ニューノーマル」の早期実現,このような構成でこの審議概要をまとめさせていただいております。
最初の自律的契約関係,こちらの説明に入る前に,もう一つの資料,1-2,こちらの方で少し,座長からお話があったように頭の整理紙を作らせていただいておりますので,先にこちらの説明から入りたいと思います。資料1-2でございますけれども,自律的契約関係,これは骨太2019に登場している言葉でございます。こちらと,それから,第5回,第6回の本検討会におきまして大野委員の方から御提案をいただいておりますエンゲージメント型,この言葉について,少し混乱というか分かりにくいのではないかという問題意識で,整理をする観点からこのような資料を用意させていただきました。
最初の自律的契約関係,こちらの方は,ある意味,国と国立大学法人との関係性を表現している言葉として,基本的に中期目標・計画,この枠組みの在り方を定義していうものだと考えてございます。これに対して,もう一つのエンゲージメント型,これは国立大学法人とその他多様なステークホルダーとの関係性を表現しているものでございます。簡単に図式すると,3ページ目,絵がありますように,要は,国立大学法人と国のこの赤いところ,ここを自律的契約関係,そして,国立大学法人と,国も含めてですけれども多様なステークホルダー――学生,卒業生,自治体,産業界等,様々ございますけれども,これは大学によって異なると思いますが,こういったところの関係性をエンゲージメント,そして,この全体像,ブルーで囲ってあるところをエンゲージメント型,このようなイメージの整理をさせていただいております。
最初の2ページ目に戻っていただきますと,自律的契約関係,これは国はどのような責任を持つのかという意味で,国立大学法人に負託する役割・機能をまず明確化する。そして,その発揮に責任を持つ。これが国の役割。一方で国立大学法人は,その国から負託された役割・機能を達成するための方策について,その達成を目指す水準とか検証可能な指標・KPI,こういったものを明確化することでその達成に責任を持つ。このような関係性にあるのではないかと考えてございます。
これは従来とどう変わるかというのが下のチェック2つでございます。まず国自身が個々,それぞれの国立大学法人の経営全般にわたる目標をあらかじめ設定して管理する枠組み,これが現行でございますけれども,これはある意味独法制度から引っ張ってきたものだと思いますが,自ら多様な……。
【金丸座長】 生田さんの声が聞こえなくなってしまいまして。
【生田高等教育局視学官】 聞こえないですか。
【金丸座長】 何か音声が途切れ途切れになるときがあります。
【生田高等教育局視学官】 分かりました。では,気を付けながら話をします。
【金丸座長】 はい。
【生田高等教育局視学官】 国が個々の大学ごとに目標を設定して管理する枠組み,これは現状,大学が自ら多様な目的を持って自律的に発展していくという国立大学法人にはなじまないのではないか。ですので,この枠組み自体を見直して,総体としての国立大学法人に求める役割・機能,この基本的事項だけをある意味国の方針として提示をし,各法人は,大学経営の目標に照らして,これは自分が持っている目標に照らして,自らのミッションとして位置付けるものを選んで,自らの責任で達成水準や指標などを明確に設定し,その結果に責任を負う,こういった形に見直してはどうかというのが自律的契約関係でございます。
一方で,エンゲージメント型につきましては,国立大学法人が国内外の多様なステークホルダー,これと積極的に関わり合うプロセス,これに基づきまして,ある意味,価値創出の最大化を図ることで,拡張した機能による活動が新しい投資を呼び込んで成長し続ける大学経営のモデル,こういったことを言っているのではないかというふうに定義をさせていただいております。
このエンゲージメント型,この言葉を今後使っていくのがいいのかどうか,そういったことも含めて今日御議論いただければと思っておりますが,ここでのイメージ,国は国立大学法人が自らの裁量で多様なステークホルダーと常日頃対話ができるように,裁量の余地とか裁量拡大の手段,こういったものを増やしていくことが必要ではないか。一方,国立大学法人は,当然ながら多くの理解・信頼,こういったものを獲得していくために,活動成果の可視化とか情報公開の透明性確保,多様なステークホルダーの視点を取り入れた自己評価の多元化,こういったものが求められるのではないか,このように少し頭の整理をさせていただきました。
これを踏まえていただいて,もう一度,資料1-1に戻っていただければと思います。こちらの方で,まず最初のところ,自律的契約関係のところでございます。最初,(1)は背景……。
【金丸座長】 生田さん,また聞こえなくなりました。
【生田高等教育局視学官】 すみません,今,機材を変えましたので,資料1-1の説明から入りたいと思います。すみません。
資料1-1のところ,最初,1ポツ,これは,自律的契約関係のところですけれども,まず背景を少し書かせていただいております。平成16年に法人化をしまして,簡単に申し上げますと,国立大学の財務構造が大きく変化しているのではないかと。これは具体的に申し上げますと,経常収益,ある意味,活動全体,これが1.3倍ほどに増えているといった中で,その中に占める運営費交付金,いわゆる国費の割合が相当程度減少し,外部資金の割合が逆に増えてきている。そのような構造変化が起きているということを書かせていただいております。
一方で文科省との関係においては,これは2つ言っておりまして,まず国側としても,国の一組織である大学,そういった考えが前提となっている管理の仕組みとか,ある意味,大学間の過度な公平性を重視するマインド,こういったことが国側に残っていることも否めず,また一方,大学側においても,大学の中における横並びの慣習とか,法人化当初に描いていた競争的環境の中で活力に富み,個性豊かな魅力ある国立大学,これは法人化の目的に書いてありますけれども,こういった姿がいまだ実現しているとは言い難いのではないかと。そのような状況で指定国立大学法人が創設されている中で,その発展をも阻害しかねないのではないか。そのような問題意識から,今回見直しをしてはどうかという御提案をさせていただいております。ですので,改めて国立大学法人と国との関係を見直し,新しい段階へと再定義することが課題であろうと。
さらに,知識集約型社会への大転換,そして,現在,コロナ禍,ニューノーマル時代において,ある意味,国立大学が期待される役割,これがどんどん高まっていて,その機能を拡張させていく,これが本当に重要であると。こういった中で,国内外,多くのステークホルダーと積極的に関わり合うプロセス,エンゲージメント,これに基づいて,自ら大学自身が持つ資産,知的資産とかを最大限に活用して,新しい公共的な価値創造,こういったものを担っていく。これで拡張した機能による活動が新しい投資を呼び込み,成長し続ける大学経営モデルを展開していくことが必要ではないか。このような形で背景を書かせていただいております。
そして,その自律的契約関係の見直しの基本的な考え方,(2)でございます。ここは先ほど申し上げたものに近い話ですけれども,国は国立大学法人に負託する役割を明確化,そして,国立大学法人が国のパートナーとして自らの裁量で機能を拡張し,社会と対話ができるよう関係性を新しい枠組みに構築していく必要があるのではないか。国立大学法人は,当然国から負託された業務を確実に遂行する。これは重要です。これに加えて,エンゲージメント型の経営体として多様なステークホルダーからの期待に応えることも必要で,そして,そのステークホルダーとの対話を確実に行うための透明性の確保,外部の視点を取り入れた評価の多元化等,こういったことが求められるのではないか。このような形で基本的な考え方を整理しております。
(3)は,これをよりブレークダウンした中期目標・中期計画の在り方でございます。これは先ほども申し上げましたように,現行では,国が国立大学それぞれの目標を定めていく目標管理型の枠組みです。これ自身が国立大学法人にはなじまないのではないかと。これを見直すとして,国自身が総体としての役割・機能,基本的な事項を提示した上で,国立大学法人との自律的な関係性に基づいて多様性にも十分配慮した大方針,これを示す,逆にこれだけでいいのではないかというふうに思っております。
一方,国立大学法人は,大学経営自身が持っている目標に照らし合わせて,役割や機能,そして,ミッションと位置付けるものについて自ら選択をし,2ページ目に行きますけれども,その目標を達成するための方策について,自分の責任で達成水準,検証可能な指標,こういったものを明確に規定することが不可欠ではないかと書かせていただいております。
国は,法人に負託する役割・機能の発展に当然責任を持つ。そういった意味で予見可能性を持った財務運営に基づき業務を確実に遂行できるような配慮が必要であるのではないかと。
ここから先は法人側の話でございますけれども,法人は,いろいろなパータンがあるかと思いますが,中期目標・中期計画の期間と,ある意味,執行部,学長の任期との連動の在り方,それから,国立大学法人は,エンゲージメント型の経営体として,常に社会全体から理解と信頼を得る。そういったために積極的な発信が求められるのではないかと書かせていただいております。これが中期目標・中期計画,ある意味一番大きな部分でございます。
そして,評価の在り方を(4)で記載しております。国立大学法人は,ガバナンス・コードへの適合状況の積極的な公表を行うとともに,それぞれが毎年度行う自己評価で,国以外のステークホルダーの視点も取り入れることで充実・強化を図るべきではないか。そういった形で社会へのアカウンタビリティー,これが確実に担保される,この前提として,国(国立大学法人評価委員会)による法人評価は毎年度の年度評価を廃止するということがあるのではないかというふうに書いております。
また一方,評価の簡素化,これも様々御提言いただいておりましたが,国は,法人評価以外に行われている評価の仕組みも含めて,例えば教育研究活動に係る評価,重複されているという御批判もありますので,抜本的なその簡素化を講ずるべきではないか。一方,国立大学法人は,逆に今まで評価のために投入していたリソースを多様な……。
【金丸座長】 また聞こえなくなってしまいました。
【生田高等教育局視学官】 聞こえますでしょうか。
【金丸座長】 今,聞こえましたけれども,その前は聞こえなくなっていました。
【生田高等教育局視学官】 すみません,多分きょうは文科省側のWi-Fiの調子が全体的に悪くて失礼します。
では,評価の在り方の最後の在り方のところから続けます。国立大学法人は,国による評価に投入していたリソースをほかのステークホルダーとの対話・協創のために振り向けていく,そういったことが必要ではないかという形で取りまとめております。ここまでが,中期目標・中期計画,評価の枠組みに係る話でございます。
(5)のところが,内部統制に係る組織の在り方でございまして,これは第5回のこの検討会で様々御議論いただいた内容でございます。経営の柔軟性,ここはある意味,一言で言ってしまうと,国はできる限り,法人側に組織の柔軟性を委ねていく,そういったことが必要なのではないか。一方で大学自身は,逆に自分の組織の在り方について説明責任を果たすことが求められるのではないか,そのような形で書いております。
もう少し具体の話としましては,牽制機能の可視化。ここは今,学長選考会議,これは現状,経営協議会の外部の委員と教育研究評議会の学内の同数の委員,プラスこれに加えて学長及び理事が参画することが可能というふうになっておりますが,その位置付けが執行部から中立であるということをある意味明確化するために,現在構成員として加えることが可能となっている学長や理事,これを関与させないということを規定すべきではないかと書かせていただいております。
また,その学長選考会議が,学長を決めるだけではなくて,恒常的な業務執行の状況を確認する,そういった機能も規定するとともに,そのための名称の見直しも必要ではないかという形に書いております。
国立大学法人は,ガバナンス・コードを踏まえ,ここはそのまま書いてある内容ですが,監事の常勤化について検討していくとともに,監事が実質的に機能を果たせるように,監事をサポートする体制,こういったものも整備をする。さらに,その候補者の選定に当たっては,適任者を選考するために適切なプロセスを工夫する。このようなことも書かせていただいております。
3ページ目が,学長選考プロセス,候補者育成に関する話でございます。これも最初のポツは,ガバナンス・コードの言葉をそのまま引っ張ってきております。自らの権限と見識において,法人の長に求められる人物像に関する基準を明らかにするとともに,広く学内外からの法人の長になるにふさわしい者を求め,主体的に選考を行うようすべきではないかと。法人の方は,大学経営者として国際的なネットワークの構築等,資質・能力をある意味明確化して,国とともに経営人材育成システム,こういった構築に向けた多層的な取組を検討すべきではないかと書かせていただいております。
続いて,(6),これは会計制度・会計基準,これは正に第6回で御議論いただいた内容でございます。これは言ってみれば,ある意味,産業界のもう少し理解を得て,きちんと投資を呼び込むという観点とか,また,経営協議会にいらっしゃる産業界の人材,そういった方々の助言をしっかり得られるようにするためにも見直しが必要だろうという御議論がありましたように,前回事務局資料に書かせていただいた内容ですが,損益外の情報を含めた表記の工夫とか,産業界へのアカウンタビリティーの改善をどんどん図っていく。さらには,中長期的に自らの判断で積立てができるような仕組みを作る。そのような在り方を見直しに向けて検討すべきではないかと書かせていただいております。
続いて,2のところからが規制緩和の話でございます。(1)基本的な考え方は,とにかく法人が機能拡張,これをしていくためには規制緩和が必要であるという観点に基づきまして,(2)先行投資財源を確保するための仕組みを作っていくことが必要だろうと。その仕組みとしての具体が,長期借入金の借入れ・債券発行から始まって,ジョイント・ディグリー,次のページまで続く内容でございます。
最初の大学債,これは第2回で御議論いただいた内容でございます。これは御報告でございますけれども,早速,政令改正が6月24日行われたものに基づきまして,東京大学の方から8月21日に認可申請をいただき,即座に文科省の方でも対応いたしまして外部有識者会議で審議をした結果,本日付で大臣認可が無事に行われることになっております。40年債200億円ということで,東大におかれましては本当にスピード感を持って対応をしていただきましたし,更にこれから起債に向けて進めていただけるというふうに考えてございます。
ここで書いてございますのは,それに加えて更にの話でございまして,国は発行対象事業を更に拡大することとか,償還期間について,公共的サービスの時間軸を念頭に置いて,更なる長期化を行う,こういったことへの検討が必要ではないかと書かせていただいております。
次の項目,出資対象事業の拡大,これは第3回で御議論いただいた内容でございます。最初のオープンイノベーション支援機能等,これは成果の活用促進に係る部分でございます。これはちょうど研発独法ができるようになってございますので,同等に出資可能な対象事業としてはどうかと。2つ目のポツについては,研究成果の活用,いわゆる発ベンチャーに対する出資でございますけれども,現在指定国立大学法人に限定されている研修,コンサル,これをほかにも広げていくということとともに,更に例えば指定国立大学法人に限定する,しない,そこら辺御議論あるかもしれませんが,教育研究に関するノウハウ――入試支援とか,留学生リクルートとか,若しくは発ベンチャー,テック系発ベンチャー,様々そういったものについても出資対象とすることについて検討すべきではないかといった形でまとめております。
続いて,金融商品,これは前回第6回に少し事務局から提示させていただきましたが,余裕金の運用,これを複数の大学が共同でやる場合の認定の仕方,これを少し簡素化する。これは運用の見直しでございます。見直すべきではないかと書かせていただいております。
次の,間接経費の収入,これは第6回に少し御議論いただきました。間接経費収入が中長期の財源として活用できるような,積み立てて設備更新などに使用可能となる,ある意味,制度の見直し,運用ルールの柔軟化に向けた検討をすべきではないか,そのように書かせていただいております。以上が規制緩和の話でございます。
(3),こちらは定員の管理の柔軟化の話でございます。学部・学科の再編等,これは第4回でこの検討会で御議論いただきましたが,国立大学は,デジタル化,グローバル化等の急速な進展に伴う社会のニーズとか産業構造の変化に対応するべく,スピード感を持って臨機応変に組織整備が求められるため,学位の分野に変更がなく,収容定員の総数が増えない場合においての学科再編を伴う定員変更について,抜本的な簡素化,これは具体では,設置審の事前伺いの仕組みとか,学部定員数について中期計画,この変更認可をしている,このようなことを指しておりますが,簡素化するべきではないかと書かせていただいております。
続いて,収容定員の総数,これも同じく第4回で御議論いただきました。文理の枠にとらわれないSTEAM人材の育成とか,地域の特性・ニーズを踏まえた質の高い人材育成等,こういったところに本気で取り組むような場合に限って,ある意味これまでは抑制的に,いわゆる定員増はできませんでしたが,国立大学の学部の収容定員の在り方を柔軟に取り扱うことも含めて,魅力的な地方大学の実現に向けた取組を強化するべきではないかと書かせていただいております。
続いて,ジョイント・ディグリー,こちらも第5回で御議論いただきました。とにかくジョイント・ディグリープログラム,これを更に拡大していく。そのためには,様々今,規制がございまして,国内大学,連携先大学,それぞれでの最低修得単位数がございますが,この軽減とか,ある意味,連携先大学が主となって管理している留学生定員の扱い,こちらについても柔軟策を講ずるということを検討すべきではないかと書かせていただいております。また,留学生に関しましては,このジョイント・ディグリープログラムの弾力化にとどまらず,ある意味,留学生の授業料の設定の在り方とか,定員管理の弾力化,これも併せて検討すべきではないかと付させていただいております。
次からが,少し短いですが,3ポツ,「大学ニューノーマル」の早期実現でございます。これはもっと大きな話でございまして,ある意味,全世界的なデジタルトランスフォーメーションによる変革期,この時代の中で,世界的な人材獲得競争に打ち勝っていくことが必要であると。そうした中で,国内のみならず世界市場から優秀な多様な学生を受け入れることを可能とするためには,様々な,今あります制度とか,そういったものを見直していく必要があるのではないか,新しい大学モデルと変わっていく必要があるのではないかと書かせていただいております。
さらに,少し具体の話としましては,リアルとバーチャル,これをうまく組み合わせていく,ハイブリッド型と言われておりますけれども,そのためには,大学設置基準の学修単位数とか収容定員等の考え方,新たな時代の大学ニューノーマルの早期実現に向けて弾力化を検討すべきではないかとまとめさせていただきました。
説明は以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございました。それでは,自由討論の時間に移りたいと思います。本日は,意見の取りまとめに向けて,まず国立大学法人のステークホルダー側の声をしっかり時間を取って聞く趣旨から,いつもとは逆に国立大学法人の総長からの御発言についてはきょうは最後に待っていただきまして,ほかの委員からの御発言を伺った後にお願いしたいと存じます。
それではまずは,国立大学法人の重要なステークホルダーである産業界のお立場の3名の委員から順番に御発言いただければと思います。事務局説明資料に対する意見やコメント,国立大学法人に対する期待や要望など,あるいは厳しい御意見など,そして,中間取りまとめ以降で新たに議論すべきと考える論点などをお一人3分~5分程度で御発言いただければと思います。それでは,小林委員,お願いいたします。
【小林委員】 いきなりの御指名で余り準備できていないんですが,資料1-1の「学長選考プロセス,候補者育成について」で,「大学経営者としての国際的なネットワーク構築やファンドレイジング能力」と書いてあるのは,ちょっと細か過ぎるんじゃないかなという気がしました。国立大学法人では,もうちょっと理念的な要素,それと当然,学問的バックグラウンドも必要だと思うので,事務局の思いはよく分かるんですが,もう少し平たく書いた方がいいのかなという気がします。
【金丸座長】 ファンドレイジング,ちょっと生々しい気がしますね。
【小林委員】 そうなんです。
【金丸座長】 了解しました。
【小林委員】 それと,産学官の連携について盛んに今までも議論されてきましたが,ようやくここ二,三年,文科省なり経産省なり内閣府なりの努力の甲斐もあって,いろいろな研究会や協議会も設立されて大分具体的な枠組みが出来上がって,本格的に産学官連携が動き出してきました。それと,CSTI民間議員の所属企業で研究者にアンケートを取ってみたところ,もともと大学に残りたかったのに助手の口がなくて民間企業に入った博士後期課程修了者も結構いるんですが,結果として皆さん,民間企業の研究環境や設備なり,そこにいる人材との切磋琢磨なりに意外と満足しているという結果も出ています。大学に残れなかった人が敗北感を持って民間企業に入るんだというような捉え方はかなり事実と違っているという辺りをどう表現するか,事務局にはよく考えてもらいたいなと思います。
それと,博士課程では,単純な報酬付きインターンシップよりも,今や大学と民間企業は組織対組織の関係性,大型の共同研究体制をしっかり構築していますので,人事面でクロスアポイントメントをもっと活用するとか,もうちょっと突っ込んだやり方を積極的に推進すべきじゃないかなと思います。
以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。それでは,篠原委員,お願いいたします。
【篠原委員】 2つございます。1つは,今までの議論の中で,大学が自律的に個性的かつ戦略的経営を行うという環境は,国との関係でいうと随分進んできたと思っています。
そこで少し疑問なのが,国との関係で自由度をここまで得たとして,果たして今の大学という制度の中で総長や学長は,どこまで学内でのガバナンスなり,学内でのマネジメントの実効性を高めることができるのか。いわゆる学問の自由との関係もあるかもしれませんけれども,本当の意味での今回手に入れたいわゆるガバナンスの自由度というのを,学内の中でそれを実効的なものにするために何をしなければいけないのか,若しくは例えば制度とかで何かできることがあるのかというところが気になっている点でございます。
もう1つの気になっている点は,今回はステークホルダーとのエンゲージメントという言葉が出てきたのですが,この具体論とかひな形みたいなものを明らかにする必要があるのではないかと。よくいろいろとメッセージは出てくるのですが,そこが何か定性的で非常に難しかったりして,外から見たときにそれをなかなか定量的に評価しづらいという部分もあるので。
例えば我々から見ると,これは一例ですけれども,最近,組織対組織で産学が連携するという話がありますけれども,そうなった場合にそれぞれの大学のいわゆる研究のポートフォリオの戦略が何だというところが見えてこない。研究のポートフォリオの戦略がそれぞれの大学で特徴的なものが出てくれば,我々産業界から見ても,この大学は魅力的だとか,この大学は余り大したことがないというところが分かってくるので,例えばそういう研究のポートフォリオ戦略とか,あとは,いわゆる教学マネジメントと定義されていますけれども,そういうありきたりのものではなくて,教育,学部教育にせよ,博士教育にせよ,自分たちの本当に特徴となるものは何だというところをステークホルダーに対して出していくというのが大事なのではないかと思っています。
一例ですけれども,そのような形でいろいろな多種多様なステークホルダーとのエンゲージメントというのが具体論として何なのかというところをもう少し議論できたらいいということと,1番目に言った,本当の意味で総長,学長が,自分の思うがままに学校の中をマネジメントするためにはどういうサポートが必要になるかというところも気になったところではあります。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。それでは,冨山委員,お願いいたします。
【冨山委員】 ありがとうございます。産業界って何なのかなと思ってずっと考えていたんですけれども。ちょっと話は飛ぶんですが,今回,全然アメリカの話で,ダウ・ジョンーズの入替えがありましたよね。セールスフォース・ドットコムとアムジェンが入って,エクソンモービルが遂に外れて,ファイザーもついに外れたんですよ。それで,私,産業という軸で言ってしまうと,やっぱり日本の最大の問題は新陳代謝が進んでこなかったことだと思っているんです。既存の大企業の方には申し訳ないですけれども,でも,そういうものですよね,こういうイノベーションの時代なので。その新陳代謝をドライブしてきたのは,やっぱり根本的には大学の力だと思っているんです。それはアムジェンにしても何にしても。今度,ステークホルダーという脈絡で言うと,やっぱり本当のイノベーションハブあるいはイノベーションの源泉というのは,正に基礎研究の高さがないとそれは起きないので,そこを正に公共財として作るというのが大学の役割じゃないですか。そして,多分にもうそれを個別の企業がやるという時代じゃなくなってきているわけなので。
そういう意味でステークホルダーあるいはガバナンス,エンゲージメント,言い方はちょっと分からないですけれども,そこにどう貢献していくかというふうな脈絡でこの紙を読んでいると,特に国立大学ってそこですごく大事な役割を果たすべきだと思っているものですから,これ,どこにどう表現するのかよく分からないんですが,ある種のステークホルダー論とかエンゲージメント論って,裏返して言ってしまうと,大学あるいは国立大学法人が何を世の中にコミットするかということなんですよね。そこをどう具体的に書き込むかって,多分後で五神先生が公共財っぽい議論をされるんだと思いますが,そこをどうこの文書の中に取り込んでいくかということは私はすごく大事なような気がしています。
割と言い古された,語り尽くされた産学連携論って,何か今更言っても未来志向で考えるとダサい感じが正直していて,何かそういうのじゃなくて,何かもっと違う感じがするんです。例えばPhDの議論も,さっき小林さんが言われたけれども,要は,世界的感覚で言ってしまうと,大学の何かになれなくて敗北してPhDというのも変だし,そもそも裏側,逆で,我々ビジネスやっていて,僕らみたいな仕事をやっているカウンターパートって,文系でも理系でもほとんどPhDあるいはPhDイクイバレントなんですね。そのぐらいのレベルじゃないと,もう産業界でも通用しない時代なんですよ。
そうすると,そのクラスの人間をどんどんやっぱり国立大学,特に指定国立大学は,世界クラスで通用するやつを輩出していかなければいけなくて。そういう意味では,日本ってはっきり言ってエリート社会がもう画期的な低学歴社会ですから,だから,そこをどうすみません,ぼんやり,ちょっと整理し切れないんですけれども,そこをどう表現するかってすごく気になっています。
それから,エンゲージメントという言葉について一言二言言っておくと,確かにエンゲージメントという言い方をしてしまうとやや違和感があって,それで,どちらかというと,マルチステークホルダーガバナンス的なことを多分言いたいのかなと。私の理解。さっきの絵がありましたよね。ガバナンスの,エンゲージメントの矢になっている絵があるんですけれども,企業統治で言ってしまうと,いわゆるステークホルダーガバナンスという思想,基本的な考え方があって,それを実現する手段としてエンゲージメントという言葉が出てくるんですね。
そうすると,まず根本論として,今後の国立大学のありようとして,大学法人のありようとして,要は,ステートガバナンス,要するに,国がガバナンスを握るガバナンスなのか,それとも,要は,国だけじゃなくて,様々な社会,いろいろな人たちがそのガバナンスを握るというか関わるというマルチステークホルダーガバナンスなのかという多分そこの分かれ目があって,今回のこの議論のすごく大事なポイントは,私の理解はやっぱりマルチステークホルダーガバナンスを採用していこうじゃないかということだと私は割と理解していて,そのうちの最も重要なガバナンス主体はもちろん国なんですけれども,でも,それだけじゃないよという意味で言って,だから,その延長線上でエンゲージメントという流れなので,そこをうまくもうちょっと整理した方がこれは分かりやすいのかなという感じがしました。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。お三方から貴重な意見を頂戴できました。ありがとうございました。
【小林委員】 金丸さん,小林です。
【金丸座長】 言い足りなかったですか。どうぞ。
【小林委員】 今の冨山さんのお話に触発されて一言発言させて頂きます。このコロナ禍にあって,GAFAとマイクロソフトの時価総額は合計で800兆円ぐらいになっていますね。日本は東証一部上場会社を全部合わせてもせいぜい600兆円で,もう完全に5社に負けている。なおかつこの半年でアマゾンやアップルの株価は2倍近くになっていますよね。ところが,我々のような従来型の重化学工業や輸送機器といった産業だと,株価は上がるどころかせいぜい横這いになっているじゃないですか。
だから,議論の取りまとめにはこういう辺りももう少し加味すべきだと思います。日本は時代の変革,21世紀ならではのAIなり,ロボティクスなり,バイオなり,量子コンピューティングなりに対して,余りにも遅れてしまった。デジタルトランスフォーメーションは企業において本来ポートフォリオトランスポーテーションそのものに直結するにもかかわらず,冨山さんが言われたように,本当に新陳代謝が遅れてしまっている。こういう日本の閉塞状況に対して,アカデミアがどう刺激をしてくれるかというのは極めて重要だと思うんですね。そこをやっぱり書き込んだ方がいいなという気がします。
【金丸座長】 同感です。私は座長をしていましてなかなか自分の意見が言えなくて歯がゆい思いをしているところですが,私はこれまでの議論をお伺いして,いわゆる文科省の規制がちがち型から本当の意味で自律的な関係にかじ取りを一生懸命しているところなんですけれども,それを成し遂げて大学を自由にしたときに,この6年間御苦労されて努力もされてきた五神先生が,今回この変革を成し遂げた後に,本当に仕事がやりやすくなって,大学を本当に真に変えることができるのかというのがずっと気になっています。
マルチステークホルダーの話も,割と絵に描いてみたら,あれ? 当たり前じゃない?と。社会の中の大学だったのに,あれが今頃出てくるということは,よっぽど前は文科省しか見ざるを得なかったのかというように,ようやく世界に追い付こうという,スタートラインに今から立つという感じが漂っていまして。そういう意味では,今日の方向性を見いだした以降,後半,中間取りまとめのマイルストーンを越えた以降は,もうちょっと具体的で,かつ突っ込んだような形で,先ほど篠原さんからも指摘されたようなところも含めて,是非中身を身のあるものに更にしていきたいと思っております。ありがとうございました。
それでは引き続き,濵口委員からお願いします。その後,上山委員,曄道委員,星委員,松本委員,柳川委員と,すみません,あいうえお順で柳川さんが多分一番後だったので柳川さんが最後になっていますが,その順でお伺いします。では,濵口さん。
【濵口委員】 濵口です。資料1-6に松本さんと連名で「自律的契約関係」に関する意見書を出しております。中身は読んでいただければある程度分かると思うんですけれども,ポイントは,今までの議論は非常に創造的,プロダクティーブに大学の変革を誘導するような議論がされてきていると思うんですが,大学の元当事者としていた人間としては若干の不安を感じているんです。
それは何かというと,運営費交付金なり政府からの大学への恒常的な支援をどう担保していくかというのをもう一度この改革の中で再定義できるかどうかという問題であります。2番のところのマル1に書いてありますけれども,運営費交付金等,これの法的根拠の整備を確認することが今の段階では必要なのではないかと。運営費交付金という名前でなくてもいいです。定常的な資金をどう,どこの国でもステートユニバーシティー,それは必ず国からの支援が定常的にあるわけですから,それをどうするかということを考える必要があるんじゃないか。特に法学者の専門家の意見を聞いて,間違いのないように,法改正をやるならやる,現行法の下で改革をやるならどこを変えていくかということを設計する必要があるんじゃないかと。
もう一つ,2,3,4は,今まで大分,生田さんのレポートで答えられると思いますけれども,5番目の契約変更は可能か,変更する際には,どのような合意形成,手続が必要か。つまり,中期計画一本で行くとして,このスピードの速い社会の中で5年間同じことをやれるかどうかという疑問が物すごくありますね。ですから,そこをどう担保するかということなんですね。
念のためちょっと申し上げると,2003年の衆議院の文教科学委員会で遠山大臣が当時言っておられるんですけれども,中期目標の作成主体を文科省でなく国立大学法人としないのかという質問に,「国立大学が法人化して,国立大学であり続け,国財政措置を受けるという体系であるならば,中期目標を仮に大学が定めるというふうに法文がなったとしたら,国による財源措置の根拠は薄弱になるわけで,制度全体の前提が崩れることになる」,こういう答弁があるんです。
今,相当重い判断を我々はしようとしているんです。法的には極めて脆弱な組織に国立大学法人を置くことになるかもしれない。このとき,2003年の遠藤文科省高等教育局長は,中期目標・計画は,大学の自主性・自律性を促すとの法人化の趣旨に沿うのかという質問に対して,「法人化は国立大学の自律性を高めるものだが,法人化後も国が責任を持って財源措置を行う以上,大学の教育研究の特性や自主性に配慮しつつも,中期目標の策定など必要最小限の基本的事項については国の責任は不可欠ではないか」と,こういう答弁があるんです。
直接的には国立大学法人法あるいは独法通則法,ここの設計を法的にきちんと詰めていかないと,私は後世の大学人に,あのときとんでもないミスリードをした,素人考えをしたと言われかねないような不安を持っておりまして,こういう意見書を出すわけであります。
足りないところがあれば,松本さん,補強していただければと思います。
【金丸座長】 続いて,松本さん,補足ございますか。
【松本委員】 松本美奈です。今,濵口先生がおっしゃったことにプラスするとこの自律的契約関係を国と結んだ大学は国立大学法人法の枠組み,大学設置基準の枠組みから出ていくのかということをやはり知りたいところです。運営費交付金という名前を変えるかどうかも含め,全て設計が変わってしまるのかもしれない。その際,国の責任,誰がどうやって国立大学に責任を持っていくのかというのが分からなくなってしまうのではないかという不安があります。以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。濵口委員と松本委員の御指摘については私としても理解させていただきましたので,そういうことを踏まえながら,この中間取りまとめ以降に法体系の在り方も含めて検討させていただきたいと思います。
それでは,上山委員,お願いいたします。
【上山委員】 ありがとうございます。最初に申し上げたいことは,もう既に話としてぽつぽつ出てきていますけれども,自律的契約関係というフレームワークで国立大学をもう一度捉え直すということになると,それは運営費交付金の配分の問題と必ず接するところがあるということです。
運営費交付金というブロックファンディングは,個々の大学の経営にとって欠かすことのできないものではありますけれども,しかし,それを配分する権限は今のところ,文科省の中に与えられているわけです。したがって,全てが自律的契約関係ということになったときには,この運営費交付金の配分をどのようなフレームワークの中で捉えていくのかという問題が必ず出てくるということであります。
例えば今のGAFAの問題とかアメリカの話も出ましたけれども,アメリカであれ,イギリスであれ,多くのところでいわゆる大学発ベンチャーを生み出していき,極めて大きなドラスティックな産業構造も変えていくことができるような知識集約型産業というのが大学から生まれてくる。そういう大学のところの財務を見ていると,いわゆるブロックファンディング的なところのパーセンテージはずっと減少してきているということです。つまり,それは,ブロックファンディングという公的支援ということから少しずつ離れて,民間の資金も入れて立っていくような大学に変わっていっている。一方で,運営費交付金でやらなければいけない大学も多く存在して,これは公共的な意味を持っているわけですから,そこについてはどうするかということで,ある意味で大学の分類ということに必ずなっていくだろうとは思っております。
したがって,自律的契約関係ということをとっても,運営費交付金をどう配分するのかという問題が必ず出ますので,では,どのような指標でどのような評価でそれを行っていくのか,すなわち,今日の資料で出てきていますエンゲージメントと言うんでしょうか,ステークホルダーの人たちをどのように満足させているのかということをもってその評価の対象としていくという方向も必ず出てくる。
例えばここの中では余り出てきていませんが,具体的には,教育への関わりというか,学生の満足度を高めているというような指標を考える必要があり,それも運営費交付金の配分の指標として使っていくのかということも出てくると思います。イギリスなどは,何年かに1回,7年に1回だと思いますが,大規模な学生への満足度調査等を行って,そして,個々の大学が提供している教育の在り方もある意味で評価の対象となり,それを運営費交付金の中に入れ込もうと今努力している。実際実はその方法は非常に難しいんですけれども,何らかの方法を用いてステークホルダーの関与や関わりの仕方,満足度ということもこの運営費交付金の配分に組み込んでいこうという動きにある種つながっていくかもしれません。その意味では大型の,つまり,ほとんど運営費交付金のところから離れていくような大学と,やはりそうではない幅広い公共性,別の公共性を持っているところとの違いということもやっぱり考えていく必要があるだろうと思います。
もう一つは,そもそも国立大学法人を作ったときから,大学が競争的環境の中で活力に富んで,そして,個性豊かな魅力ある大学となっていくということを目指していたとこの資料にもありますね。日本の大学にある種欠けているのは,個別の大学の個性というか多様性の不足だと思います。このことは我々CSTIの方で議論している,日本の大学に人材の移動が非常に少ないという問題とも関わってきます。大学から大学間への研究者の移動が諸外国に比べて少ない。例えばある大学を出て,博士課程に行くときには別の大学に行くという,その意味での人材の移動が非常に少ない。それは各大学の例えば個別の分野の特色や,あるいはステークホルダーの人たちとの関わりの違いが余り見えないということですね。もし自律的契約関係と整合性のある形で,人の移動をエンカレッジしていくような方向性もあるのではないか,多様な特徴のある大学形成にもどう関わっていくのかということをやっぱり議論していく必要があるんだろうと思っております。
もう一つは,少しテクニカルな問題ですが,3ページのところにある会計制度,会計基準のところです。ここの中の文言では,やはりちょっと我々とすると足りないなと思っていますのは,中期目標・中期計画の期をまたいで,各大学が自分たちの力で稼いできた資金を基金のような形でずっと継続して持ち続けることができる,そのような財務制度を確立すべきだと考えているからです。前にも提案しましたけれども,一番重要なのはやっぱりそこなんだと思います。そういう資金がたまっていけばいくほど,運営費交付金だけに依存しなければいけないような大学の構造から離れ,より自律的契約関係のフレームワークに入っていくことができるということだと思いますので,そこのところはもう一度そういうことを強調していただきたいなということであります。
以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。自律的契約関係に対する問題提起と,それから,会計制度のお話は従来より御指摘いただいていますので,また再検討させていただきたいと思います。
それでは,曄道委員,お願いいたします。
【曄道委員】 曄道でございます。3点,私の方からは意見を申し上げたいと思いますが,既に皆様から出た意見とちょっと重複する部分もございます。
以前に申し上げましたように,中期目標・中期計画という概念の中で,中期という時間尺度がやはり社会の変化によって相当変わっているということがあると思います。その中で立てられている目標や,あるいは計画が,自律的な契約の下でどう変えていけるかということに対して,相当のやはりスピード感のある措置を講じることができないと,非常に今まで議論があったそういったエネルギーを新しいステークホルダーとの信頼構築に向けるといったようなこともまたそこでできなくなるということがあると思いますので,先ほど濵口先生,松本先生から提示のあった資料1-6のマル5の部分,これについてはやはり慎重な検討が必要ではないかなと思います。
2点目は,エンゲージメント型の経営体ということを考えていくに当たって,例えば資料1-1の2ページ目の評価の在り方の上にあるポツ,ここに記載されているような,エンゲージメント型の経営体ということを考えると,ステークホルダーに対しての発信について記載がされていますが,一方でステークホルダーを巻き込んだ経営モデルを作るということがエンゲージメント型の指す対象だというふうに思いますので,経営モデルをステークホルダーを巻き込んでどう作っていくのかといったようなところの記載が少し不足しているのではないかなという印象を持ちました。
それから,最後,3点目です。1-1の資料の3番の新たな時代の「大学ニューノーマル」の早期実現というところで,これは骨子案を作っていただいている趣旨は,恐らく1と2,それから,3と並列的に配置をしていただいているんだと思いますが,3の新たな時代のいうところが,さっき生田さんもおっしゃっていたんですが,少し分量が少ないというか,ここだけ突然一般論になってしまっているかなという気がしています。例えばですけれども,リアルなキャンパスの位置付けであったり,恐らくここで言っておられることは,オンラインを使った学修の単位数等のことについても触れていただいていると思うんですが,これは国立大学法人だけではなく,全ての大学がこれからいろいろと意見を交わしていく事項だと思いますので,この部分がもう少し1や2に書かれていることをどういうバックグラウンドで実現していくかということについては,もう少し具体的な書き込みが必要かなという印象を持ちました。
以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。契約の変更をスピード感を持ってできるようにという話と,それから,エンゲージメント型のプロセス,それに加えて,経営のモデルではないかという話,それから,ニューノーマル,これは多分これからの議論で充実させようということではなかったかと思いますので,参考にさせていただいて,今後更に検討を深めてまいりたいと思っています。ありがとうございました。
それでは,星委員,お願いいたします。
【星委員】 まとめ案に関しては,金丸さんにいろいろ細かいところを指摘した文書を送りましたので,そちらの方は繰り返さないことにして,3つぐらい,そこで言わなかったことを中心に発言します。
最初に,このまとめ案は非常によくできていると思いました。今までまとまっていないような話をしていたと思ったのですが,こんなにきれいにまとめていただいてありがとうございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。
【星委員】 資料1-2の自律的契約とエンゲージメント型という言葉の整理も非常に分かりやすかったのですが, 1つ質問させてください。自律的契約関係の,国の役割で,「国が国立大学法人に負託する役割・機能を明確化し,その発揮に責任を持つ」とあるんですが,国立大学法人の「発揮」に責任を持つということは多分国にできるわけがないので,ここで言っているのは,発揮できるような環境を作るということですね。
【金丸座長】 そうですね。
【星委員】 そこで,先ほど濵口さんがおっしゃったことと関係するのですが,環境を作るというときに一番重要なのは,今までは運営費交付金というんですか,そういう形で国が大学に資金を配るということだったと思います。まとめ案の最初のところに経緯が書いてありますが,運営費交付金というのは総額でずっと減ってきたわけですよね。その配分は,上山さんがおっしゃったようにいろいろ議論しなければいけないところがあると思いますけれども,総額で減ってきたというのは,これだけ大学が重要になってきたということを考えると,問題なんじゃないかと思います。そこで,国として,実社会に重要な役割を大学が果たせるようにするということ,国のコミットメントを明らかにすることは最重要なんじゃないかと思います。
二つ目は,自律的契約関係とあるんですが,大学に求められていることは,普通の契約が書けないようなことが結構多いんじゃないかと思います。普通の契約は,事前的にこういうことが起こったらこういうことをすると決めておいて,それを事後的にチェックするというものが多いわけですが,例えば世界的なリーダーを輩出するとかそういうことに関して契約を書けるかというと,これは難しいんじゃないかと思います。そこで,契約というよりも,信託と言った方が考えやすいんじゃないかと思います。
最後に,エンゲージメント型。これは篠原さんもエンゲージメント型の具体例は何かということをおっしゃいましたが,それは非常に重要な視点だと思います。僕は逆に,エンゲージメント型でない経営体というのはどういうものなのかという問いを立てたいと思います。それを考えると,逆にエンゲージメント型というのはどういうものか分かりやすくなると思います。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。自律的契約関係という言葉はもう骨太の方針で使われている言葉なので,生田さんもそれをお使いになったんじゃないかと思いますが,信託というのは,私,個人的にはいい言葉かなと思ってお伺いしました。引き続きこの辺りは深掘りをしてまいりたいと思います。ありがとうございました。
それでは,松本委員は,先ほどの意見に加えてありますでしょうか。
【松本委員】 ありがとうございます。3つ話をさせてください。御説明ありがとうございました。まとめてくださって感謝です。私も星先生と同じ意見を持っています。
まずエンゲージメント型という言葉はやはり多義的で,多義的な言葉は,こういう大改革のときには誤解を招くばかりなので,やめた方がいいと考えています。自律的契約関係という今までにはなかった言葉を使って,国と国立大学法人,社会と国立大学法人という関係を作ろうとしているときです。エンゲージメント型でない関係というのがそもそも国立大学法人にはあり得ないわけだから,わざわざこんな言葉を使わなくてもいいんじゃないという星先生の御意見に賛成です。先ほど出していただいた資料1-1もそうですが,別にエンゲージメント型という言葉を使わなくても全く文章が通じるというのはその証拠の1つではないでしょうか。
2つ目です。どういう言葉にするにしても,新たな契約ということになると,やはり評価がどうしても必要になってきます。先ほどの1-1のこれまでの審議概要の骨子案のところでもそうですが,この評価については,国立大学法人評価委員会に代わるものを新しく作っている暇はないような感じがします。急いでいますので。そうすると,国立大学法人評価委員会を抜本的に見直さない限り,この評価ということは空文化してしまう。
脱線しますが,国立大学法人評価委員会というのを抜本的に変えてほしいと思ったエピソードがあります。私自身がこの委員会にいたときに,余りに内容が空疎なので,国立大学法人評価委員会は一体何のためにあるんですかということをその会議の席上で申し上げたら,委員のお一人が,国立大学法人をエンカレッジするためとお答えになりました。何か勘違いをされているなと思いましたが,それ以上に衝撃を受けたのは,それを文科省が否定しなかったということです。エンカレッジされるかどうかは大学側の受け止め方です。では委員会は評価するための組織です。なぜこんなことが起きているんだろうというのがそのときから引きずっている疑問です。
公表について申し上げます。これは法人化に伴い,財務の内容や何をしているかなどをと公表してきました。ただ,やはり財務は難しくて,多くの人が分からないという問題は残されていますが,大事な情報が出ていない。学生に関する情報が何も書かれていないのです。例えば入試方法別の入学者,退学者,留年者はどのぐらいいるのか,標準修業年限で卒業した人はどのぐらいか。それから,もう一つ,アメリカのカレッジポートレートなどで必ず出ている,卒業生は一体どのぐらいの年収を得るようになっているのかとかが出てこない。国立大学だけではないですが。ここの大学に入ると,こういうふうに社会で活躍できますよぐらいのことは出しておいてもらった方が,進学希望者には親切だし,国立大学に多くの人が関心を持ってくれると考えます。
最後です。契約で大事なのは,ビジネス界の方がいらっしゃるのでよくお分かりでしょうが,履行できなかった場合どうするのかではないでしょうか。冒頭に金丸座長もおっしゃいましたように,自由を与えた結果,じゃ,国立大学は本当にちゃんとやるのか,やらなかった場合どうするのかという問題になります。そのことについて,今の国立大学法人法の31条の4の中に,大臣は,所要の措置を講ずるものとするというだけしか書かれていません。伝家の宝刀が抜かれたことはありませんね。法人法の外に出すのであればまた別なんですが,国立大学法人法の中で新しく自律的契約関係を作るのであれば,所要の措置というだけではなく,一体どういう責任の取り方を大学に求めるのか。そして,先ほどの話,国の責任も当然問われます。力を発揮できる環境を作るというのが国の責任であるとしたら,大臣は,目標を付与して,計画を認可する責任があるわけですから,国として契約が履行できなかった場合どんな責任を取るのか。
国は運営費交付金減しかないようですが,果たして運営費交付金を削るのが本当に契約の履行ができていない,ペナルティーとしてふさわしいのか。法人の責任と国立大学の責任は分けて考えた方がいいのではないかと考えています。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。いずれも重要な視点の御指摘をいただきました。ありがとうございました。エンゲージメント型という言葉は,先ほど事務局の生田さんの説明でも,この言葉は使うかどうかも皆さんの意見もお伺いしたいというようなことでしたので,松本さんは使わない方がいいという御意見をお持ちだということで伺いました。私もできる限り,誤解がない,分かりやすい日本語で書いた方がいいと思っていますけれども,ちょうど議論のきっかけになったときは,大野総長からの御説明の中ですごくうまい御説明をされておられたので,議論のプロセスとして使わせていただいていて,文章上も一応使わせていただいたところでございます。皆様からまた御意見があればと思います。
それから,評価のところは本当にやっぱり難しい問題だと思いますので,これも中間取りまとめ以降に,どんな評価であるべきかというようなことと,それから,情報開示,特に学生に関するようなこと等についても,また議論させていただきたいと思います。
それから,契約のところの,私は大学により自由な活動をしていただいて,社会を変革するのは大学だというふうに先ほど冨山さんが言われたように,まさしく米国を見ていると大学のパワーを感じますので,是非そんなふうになってほしいと思っておりますし,そのための環境づくりは,国がエンカレッジの部分,それから,ベースになるような交付金の支援はやるべきだと思っていますが,だけど,余りにも乖離したような結果しか出せないような大学が出たときにどうするかというのは,また議論をこの会でもさせていただきたいと思います。
それでは,お待たせいたしました。柳川委員,お願いします。
【柳川委員】 柳川でございます。もう皆さんがお話しになったことと重なる部分も少しあるんですけれども,3点ほど大きなポイントをお話しさせていただきたいと思います。
1点目は,やはり世の中が大きく変わっていって,大学が大きく役割を変えていっているんだという,冨山委員,小林委員がお話しになったような話を,できれば少し前に大きく出していった方がいいんじゃないかという点です。今回中間報告取りまとめなので,これはこれで非常にうまくまとめていただいていますし,我々の議論したことをまとめているのでそれでいいんだと思うんですけれども,これを世の中に大きく出していって,あるいはこれから大きく制度を変えていくときには,結局のところ,この問題意識と我々の目指すべきゴールがしっかり内外に理解されているかということがやっぱり一番大事だと思うんです。
特にお話があったような,これ,2周遅れじゃないかと。ちょっと大学内にいる身としては言いにくい話ではあるんですけれども,そもそも今までの,さっきのステークホルダーを重視して積極的にやっていくという体制は今までだって必要だったはずだよねと。それができていなかったのをできるようにしましょうという遅れを取り戻す話と,それから,特にコロナをきっかけにしてニューノーマルな世界になっていく。その中でますます大学の役割が新しい役割として重要になっていくというところは次の1周ですよね。そこの部分も積極的に打ち出していって,ある意味で産業界も含めた世界を牽引していくような大学になってほしいというのは,きょう御議論ありましたけれども,きょうの御議論だけではなくて,ここにいらっしゃる皆さんのほぼ総意だと思うんです。そういう意味では,遅れている分を取り戻すだけではなくて,より未来に向けて大きな大学改革をしていく必要があるんだと。やっぱりこの部分はしっかり書き込むべきなんじゃないかと思います。
2点目は,それに関連してなんですけれども,これがあると,要するに,これを前提にして,じゃ,どういう制度設計が必要かという話が出てくるんだろうと思います。どうしても制度設計が前に出てしまいますと,ある意味で連続性だとか,今までの議論の経緯が表に出てきます。もちろんそういうものも大事なんですけれども,今,我々に問われているのは,ある意味で2周遅れをかなり不連続に大きく変えていく必要があるので,制度の部分もやっぱりある種のジャンプが部分的には必要になってくるんじゃないかと思うんですね。そういうものをやっぱり乗り越えていく必要性がある世の中なんだということが分かる必要があると思います。
もちろん制度のところは,当然いきなりジャンプを全てさせればいいという話ではないので,細かいところを詰めていく必要はあるんだと思いますけれども,我々のこの検討会は余り細かい制度のところを詰めていく話ではないと思いますので,大事なポイント,濵口委員がお話になったようなところとか,幾つか押さえておかなければいけない制度的なポイントをしっかり議論する,この後半戦議論するということが大事かなと思っています。
3点目は,その中で,制度的な,きっちり議論しなければいけないというところでいうと,私も,自由度を大学に与えたときの結果としての責任の取り方という,いわゆる民間企業であれば,自由度を持って競争するわけですけれども,競争してうまくいかなければ,会社が潰れていく,退出していくわけですね。シンプルなそういう競争なメカニズムが考えられるんですけれども,当然大学の場合は,そういうふうな通常のメカニズムどおりにはいかないわけなので,そこをどういう形での責任の取り方にするのか,あるいはどういう形の是正の仕方にするのかというのが最後,多くの人が心配するところだと思いますので,この辺りは制度的に少し詰めておく必要があるかなと。
それから,冨山委員がおっしゃったように,マルチステークホルダー型なんだと思うんです。マルチステークホルダー型のしばしば言われることは,結局それってゴールが曖昧になりますよねと。あっちの言うことを聞いているから,こっちの言うことが聞けませんでしたといろいろな人にみんなそういうふうに言って動くと,結果的に全ての人のゴールが達成できないという話になるので,やっぱりそこの,マルチステークホルダーであれば,そもそものステークホルダーに対してどういう目標と責任を負うのかということをしっかり示してもらうということだと思います。それが余り細かくならずに大きな形でというのが,私はエンゲージメント型というふうに大野先生がおっしゃったところの大きなポイントだったと思いますので,そこをどうやってうまく作れるかというのが,今の段階というよりは後半戦の大きなポイントかというふうに思います。
以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。是非大義とゴールをはっきりさせた上でこの文書の取りまとめをしたいと思ってございます。私,感じるのは,さっきのGAFAとの違いでいうと,いわゆる向こうのエリートたちは,伝統ある大企業に入るより,自分でベンチャーを起こすか,ベンチャーに入るということですよね。だから,大学を出た後の一歩目の選択肢がまず大きく違っていて,それは大学側も後押しをすべきだと僕は思っているんですけれども,新聞社が就職人気ランキングって学生を惑わせる情報を出すものだから,そうすると,エリートの人たちは,世間一般の覚えめでたいようなところに入るというようなことをずっと繰り返している。すみません,小林さんが最初,重化学工業は成長していないと御自身でおっしゃっていただいて言いやすいんですけれども,そういう大企業に入ったところで,先輩のエリートもいるのでエリート新米になってしまうから,自分の実力を発揮するのには物すごく時間が掛かるのではないかというようなところも実は問題意識として持っております。
というようなことを話をさせていただいて,お三方,大学の総長,最後まで待つという気分も味わっていただいたんじゃないかと思いますが,それでは,大野総長からお願いいたしたいと思います。よろしくお願いします。
【大野委員】 どうもありがとうございます。資料を用意しましたので,御覧いただきつつ,大分議論が進みましたので,端折りながら少しお話をさせていただきたいと思います。
2ページ目,これまで,いろいろ御意見をいただいたニューノーマルに対して,エンゲージメント型という用語と,それから,ニューノーマルにおける新しい大学の在り方ということを,規制緩和も含めて御提案させていただきました。今回の審議概要案というものは,これらも含めて非常に上手にまとめてあり,大変有意義であって,心強く思います。大学の期待される役割を果たしていく上で,こういう議論が非常に重要だなということを改めて実感しています。
審議概要案について少しコメントするため,3ページ目にまとめました。この背景として,エンゲージメント型という言葉をつかったことも含めて少しだけ説明いたします。これは図でお分かりのように,現行の中期目標・中期計画という割と細かい形で作成したものに縛られて6年間を過ごすのではなくて,大学としてマルチステークホルダーを念頭に置き,例えば松本委員がお話しになられたように,学生に対してどういうメッセージを発して,それがどういうふうな形で倍率に反映してくるか,あるいは,大学の成果が今どうなっていて,それに対して企業側の反応にたいしてやり方をダイナミックに変えていくと,そういうエンゲージメントが大事と思っています。もともとエンゲージメントだったというのは間違いありませんが,それを改めて強調することに価値があるのではないかと。エンゲージメントすること自身に価値があるというよりは,エンゲージメントして価値創造することに価値があると考えています。
一方,自律的契約関係に契約という言葉が出てまいりますが,契約ということに私は余りとらわれてはいけないと思います。先ほど星先生がおっしゃられた信託関係,あるいは我々が使っている公約の方が良く,契約ですと,ペナルティーをどう課して,そのためにはどういうふうに数値的に評価してという形でどんどん発想が行くわけです。そういう方向でぎちぎちにやっていくと,(今と変わらない過剰な評価が要求される)窒息するような世界が待っていると思います。いつの間にか,それらの様々な評価がいままでの評価の上にプラスされてしまうのではないかと恐れています。
いまの議論は,運営費交付金が配分されている,その法的枠組みを前提にしていると思っています。これは(自律的契約関係を新たに定義し)法改正をして次の第4期をスタートするには余りにも議論の時間が短いですし,そのためのエビデンスを積み上げるという時間も足りないと思います。今ここで議論していることを,現在の中期目標・中期計画の枠組みの中で表現し次期の6年間を過ごす中で,大学により多くの(自律性と)自由度を与えることによって社会の発展に寄与するんだというエビデンスを出し,その後次のフェーズに移るのであろうと考えております。
今回の様々な文書を出していただいた中で若干気になるのは,例えば牽制機能として,総長選考会議と監事があります。これはどう役割が違って,なぜ牽制機能が2つ必要なのかと。(これと相まって)契約という言葉に付随する様々な細かい,かつ厳しい評価が出てきそうで,私は若干懸念を覚えています。皆様にはここで様々な大学からのプレゼンを聞いていただいたと思います。そういう大学は,自律的な形でこれから社会に貢献していくことに手かせ足かせを外せばやっていける状況になっています。甘いものではないとは十分承知していますけれども,それを是非見てやろうという感覚で次の6年が設計できれば(より大学の力を出すことができる)と考えています。
参考資料として付けました5ページを見ていただければと思います。(大学が自律的環境の中で価値創造を行うには)変化のスピードが重要です。企業と全く同じで,いかにステークホルダーとの対話あるいは社会との厳しいやり取りを通しながら,我々自身がスピーディーに変わっていけるのかが,今大学経営のテーマです。ステークホルダーとのエンゲージメント,その内容はいろいろありますが,図にある3番のエンゲージメントによる共創が目標となり,そのためにはスピーディーでアジャイルな戦略的経営への転換がされなければならず,それにはサイバー×リアルのデジタルトランスフォーメーションが必須という図です。
次のページを見ていただくと,これは私どもの大学の例ですけれども,デジタルトランスフォーメーションということを組織の課題として推進するために,7月1日にはCDO,Chief Digital Officerというものを置き,自らをいかに早く変えて価値創造ができるか,大学内を変えていっています。こういう改革をどう思うかで,我々にはまってくる手かせ足かせ,あるいは評価の重さが決まってきますが,ここでプレゼンされた大学は変わり続けていますので,(規制を緩和する)そういう方向に強力に後押しをしてほしいというのが今日の議論をお伺いしていて,大学の責任者として感じたところであります。
以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。それでは,五神委員,お願いいたします。
【五神委員】 ありがとうございます。五神です。まとめ案については,これまでの審議事項の重要な項目をきちんと配列していただいていると思います。最終取りまとめに向けて,本日の議論ではかなり本質的な議論も出てきているので,しっかり反映していただきたいと思います。
私が用意した資料1-4を御覧ください。東京大学は新型コロナウイルス感染症が拡大する以前から,大学が中心となってSociety5.0へ向けた社会変革を駆動するというビジョンを掲げて活動してきましたが,そのインクルーシブでサステナブルなSociety5.0こそ,ポストコロナのあるべき社会だと思います。しかし未だSociety 5.0 readyではないということが今回のコロナへの対応で判明しました。この転換を加速して,日本をポストコロナの時点で優位に立たせるためには,本気で大学を駆動力とすることが必要だと思っています。
私が総長になった2015年と今の時点を比べると,世界は本当に大きく変わりました。2016年には,アメリカ大統領選挙やブレグジットという大きな変化がありました。その変化を目の当たりにして,正に大学が社会変革の駆動力になるのだという思いで,真の経営体になるための取り組みを続けてきました。ここへ来て,新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大するという事態になりました。この大きな事象によって,世界中がひっくり返るような状況であると思います。先ほど柳川先生から,ジャンプが大事なのではないかというお話がありましたが,リープフロッグのようなジャンプをするなら今が正に絶好の機会です。現在の日本のように後発で2周遅れになっている場合には,真面目に先発と同じトラックを追い掛けるという戦略は取るべきではないと思います。
大きなポイントは,デジタルトランスフォーメーションが急激に進んだことで,ビジネスにおいては,個性や多様性を尊重する中に新しい価値の源泉を見出すことが重要であることが明らかになりました。成長モデルについても,インクルーシブネスを追求するような成長の形を求めるべきという議論がダボス会議などでも,なされています。そのような状況を踏まえますと,日本の大学を取り巻く環境は,インクルーシブネスを追求するという意味では非常に良い形を既に備えていたともいえます。ただ,それが生かされていない状況になっているのです。
2ページをお願いします。2ページには今述べたようなことを書いています。まずウィズコロナはかなりの長期戦になります。また,今後,別のパンデミックも発生することが予想されます。感染症は衛生環境の悪い国の問題であるという認識で,日本ではこれまで研究などの対策にそれほど資源が投入されていなかったのかもしれません。しかし,人々のグローバルな活動が活性化している中で新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起きたことによって,感染症は現代的な非常に大きな問題で,先進国も例外ではないということを,世界中が同時に実感することになりました。
Society5.0は,インクルーシブで地球環境に配慮したサステナブルな未来だということをいろいろな場で発言してきましたし,金丸座長とともに議員として参加している未来投資会議などの中心課題でもありました。Society5.0の方向性は,コロナ,ポストコロナを見据えた,正に向かうべき正しい方向であったということは間違いありません。しかしながら,そのベースのインフラであるデジタル技術やデータの活用の面で,日本は相当後れているということが問題です。本日のウェブ会議で本丸の文科省の通信環境が不安定という状況はその象徴で,このままではいけません。
一方で大学ではいま,デジタル活用が明らかに加速しています。例えば先週行われた東京大学の大学院入試では,研究科の単位で試験を実施していますが,大きなところでは1,000人規模の完全オンラインによる筆記試験が大きなトラブルなく実施されました。このような大規模のオンライン活用は,恐らく日本の企業でも難しいのではないでしょうか。やはり大学は非常に大きな潜在力を持っています。これは試験を運営した何百人もの教職員たちの努力による成果でもあります。
デジタルトランスフォーメーションの重要な点は,それによって無形の知的資産が大きな経済的な価値を持つようになったということです。そして,無形のもののうち,値付けされているものと,値付けされていないものがアンバランスに混在しています。社会的に重要なものにきちんと高い値段が付いていれば,資本主義と整合して,社会が良い方向へ向かうかもしれませんが,そこは必ずしも整合していません。その隙を突くようなビジネスが非常に巨大化してしまうと,資本主義がひずんでしまいます。そこをどう修正していくか,ポストコロナに向かう中で考え,実行していかなければなりません。その大きな変革を駆動するために,正に大学が自ら真の経営体になるということが役に立つはずだと信じて,総長就任以降の約5年半にわたって,大学を経営体にしようと実践してきました。これを本気でやろうとしたのは,恐らく私が初めてかもしれません。
3ページを御覧ください。先ほど,エンゲージメント型の経営体という言葉がありましたが,私にはその意味がよく分かりません。恐らく大野先生と私の英語に対するなじみの度合いの違いによるものかもしれませんが,片仮名になるとよく分からないのです。しかし,金丸座長もおっしゃったように,その議論の中身そのものは,正に私が言っていることと非常に一致しています。それは正にこの場で議論しなければならないことだと思いますし,まとめにもきちんと入れなければなりません。
ただ,問題は,「経営体」という言葉も,学内外で誤解されがちな言葉だということです。例えば先ほども紹介がありましたように,大学による債券発行がいよいよ実現しそうになっているわけですが,経営体になることはすなわち借金をするわけですから,それを返すための収益性のある活動をする。つまり,債券を発行してしまうと,収益を求めるような活動に私たちの自由な活動が限定されるのではないかと,東京大学の学内の教職員であっても不安を感じてしまう方々が多いです。学外者はなおさらそのように感じていることでしょう。
しかしそれは誤解なのです。ここで議論していただいたように,今回の大学債の発行は,コーポレートファイナンス型,つまり,大学が自由度を持った形で使える資金を調達するのであり,しかも償還期間も40年という長期に設定されています。大学や社会も変えることができるような長期の時間軸で大規模な資金調達を行うことで,より良い社会に向けて大学が主体的かつ積極的に貢献するという目的があるのです。
東京大学の学内でも最初はかなり違和感を持った構成員が多かったのですが,丁寧に何か月も掛けて説明をすることで,今では9割以上が理解し賛成していると感じています。本日の会には東大の教員も何人か出席していますので,私だけがそう理解していることではないかどうかも,確認していただければよいと思います。
このように債券発行を通じて大学が経営体となる目的は,経済メカニズムをよりよい社会,すなわちSociety5.0にふさわしい形に変革していくための駆動力を生み出す活動をするためです。その方向がいま正に進んできていることこそが,大きなパラダイムシフトであると認識しています。
4ページをお願いします。2015年6月に文部科学省から発出された,大学は運営から経営へ転換せよというメッセージは,運営費交付金を頼りにする受動的な組織から,自分たちで考えて,多様なステークホルダーをアトラクトしながら能動的に動いていくような組織になりなさいというメッセージだと私は理解しました。真の経営体というのはすなわち,能動的な経営体であり,大学が経済活動の中心に入ることによって,日本の経済が新たな形に向かう駆動力が生まれてくるのだという理解です。
世界から見ても,そのようなことをしようという大学は,余りないようです。私たちの大学改革モデルは斬新なものだという評価を,オックスフォード,ケンブリッジ,スタンフォードといった大学のマネジメントをしているトップの方々からも受けてきました。このモデルは,今のこの状況の中だからこそワークするのではないかと思っているわけです。エンゲージメントという言葉が私にとっては分かりにくいので,できれば言葉は変えていただきたいと思っています。
5ページをお願いします。大事なポイントは,大学に限らず,知的な資産が社会的価値と相応する形で値付けが行われるような仕組みをどのように作っていくかということです。知的資産を生産・分配する仕組みは,市場メカニズム,国家メカニズム,コモンズメカニズムの3つに分類することができます。これは星先生と議論していて整理していただいたものです。大学を経営体化する中で,私たちはコモンズメカニズムに近い形で,Society5.0に適した取り組みをしてまいりました。例えば,この6年の間では,台湾の半導体のファウンドリーと連携し,東大がゲートウェイとなることによって,日本の企業が最先端のプロセスの試作製造に関わるチャンスを作る仕組みを構築しました。その仕組みは,大学が新しい形で収益を得る仕組みになっています。これまでに,このような新しい経営メカニズムを幾つもクリエートしてきたわけです。トータルでは,かなりの経営資源を生むことができています。
6ページを見ていただきたいと思います。6ページをお願いします。
【金丸座長】 五神先生,ページでいうとかなりまだ残っているんですけれども,中間取りまとめに対する意見は10ページとか11ページとかにまとめていただいたようですが。
【五神委員】 それでは,ちょっと飛ばしていきます。
【金丸座長】 ちょっと巻きでお願いします。
【五神委員】 承知しました。6ページは,フランスのダノンという企業の取り組みの例です。民間企業側が社会的価値を生み出すための法制度について紹介しています。
7ページをお願いします。大学債発行の最新状況です。大事なところは,2項目めのソーシャルボンドとしての評価も受けようとしていることです。社会貢献に寄与することを明示することで,事業会社にも購入していただきたいと考えています。1口を1,000万円と比較的少額に設定していますので,金丸座長も是非御検討いただければと思います。
【金丸座長】 うちの会社でも検討します。
【五神委員】 8ページをお願いします。もちろん大事なことは,調達した資金をどう使うかということです。それを市場に問い掛け,それに対して評価があれば債券が売れるという形になっています。
9ページを御覧ください。ウィズコロナ,ポストコロナという状況では,インターネットを使って,ネット環境を使ってリモートで活動することが絶対に必要です。その際には,皆が自由に使える良質なデータをきちんと整備することも非常に重要です。データのクレンジングには大変な時間とコストがかかります。更に何よりも,データはセキュアに扱えなければいけません。ここでも何度も紹介しているSINETのVPNは,専用回線を使用するためにエコでセキュアであるというメリットがあります。SINETを支えている大学群は,従来の大学としての役割だけではなくて,大事なSociety5.0の社会インフラを支えるために不可欠の存在になるという,大きな転換が来ているということを,述べておきたいと思います。
10ページのところに,中間取りまとめで欠落しているところがあります。大学債については,さらなる法改正がとても重要です。現状としては,債券で調達した資金はハコモノ,物理的な固定資産にしか使うことができないという大きな制約があります。そこは是非法人法の改正をお願いします。さらに,債券の償還期間が最長で40年という制約も課題です。債券市場の方々からすると,40年では超長期とはいえず,普通の長期債券です。ですから,オックスフォードやケンブリッジ大学が発行している本当の超長期とは少し意味合いが違ってしまうので,ここも是非変えていただきたいところです。本日の資料を見ますと,「今後検討を行っていくことが期待されるのではないか」,という非常に引いた表現になっているので,是非とも強調していただきたいと思います。今の状態のままでは,大学債による経営のパラダイムシフトは実現しません。ですから,ここは皆さんに理解してサポートしていただきたいと思います。
他にも課題は,土地利用の緩和,あるいは国立大学時代から引き継いだ負債や矛盾の解消と,たくさんあります。特に雇用の関係では,承継教職員という国家公務員に準拠したポストを引き継いでいますが,ここは真面目に検討する必要があります。
先ほど濵口先生がおっしゃったように,国の役割の明確化を行うことは極めて重要です。高等教育は国家としての責任を果たすべき基本のところです。その部分をどれだけ国立大学に担わせるのかという整合性のある議論をしながら,拡張が必要となる部分はそのための仕組みづくりをすることが必要です。
資料には,他にも具体的なことを書きましたが,そこは各自で御参照いただければと思います。どうもありがとうございました。
【金丸座長】 ありがとうございました。それでは,大変お待たせいたしました。山極委員,お願いいたします。
【山極委員】 山極でございます。私も資料を用意しましたけれども,その資料の説明に行く前に,きょうの議論で感じたことを述べさせていただきたいと思います。
エンゲージメント型の経営ということを皆さん賛成されている。私も賛成しているんですが,現状と法人法,それから,文科省の在り方の間に大きな齟齬があります。例えば運営費交付金という話が出てきました。運営費交付金を決めるのは,大枠を決めるのは実は文科省ではなくて財務省です。財務省の財政審で国立大学の在り方が決まって,そして,補助金あるいは運営費交付金の配分方式まで議論がされています。国立大学は,その財政審の委員が誰であるかを知らないし,我々自身がその委員を決める権利を持っていません。文科省の委員でもそうです。
言うならば,我々が様々なステークホルダーとアカウンタビリティーを通じて様々な意見交換をし,契約を結ぶということは,運営費交付金には全く反映されていないわけですね。産業界の代表でも我々が知らない人です。我々自身が関係している産業界の人たちというのは実は経営協議会の中にいるわけですけれども,そういう方々の意見を年に4回とかそういった形で意見交換をして,それを実際に大学経営に反映させています。それ以外に,大野先生がおっしゃったように監事の方の意見,それから,経営協議会と教育研究評議会から選ばれた委員たちによる総長選考会議というのがあって,その三重で様々な経営に対する意見を聞いているんですが,これは全く運営費交付金には反映されません。
ですから,もしエンゲージメント型の経営体をするならば,それが一体どういう予算に反映されるのかと,これ,非常に重要な問題なんですね。文科省が運営費交付金の在り方あるいは額をずっと独自の体制で決めていく以上,エンゲージメント型の経営体はできないです。これをしっかりと議論し,それを法体系の中に定めていくか,あるいは文科省と財務省との間の関係を変えるか,いずれもやっていただかないとエンゲージメント型にはなりません。そこは非常に重要な問題だと思いますので,文科省の国立大学との関係の在り方を決めると同時に,文科省と財務省の関係の在り方もきちんと我々に分かるように決めていただかないと,これはせっかく改革をしても,結局財務省がうんと言わないからできないんだよという話になったら元も子もない,そういう気がいたします。
それから,非常に中間まとめをきれいにまとめていただいてありがたいんですが,京都大学の目指している目標からすれば,ちょっと資料を出していただきたいんですが,5ページ目ですね,特に国際化という視点がほとんど書かれていないということです。実はコロナ禍で一番重要なのは,留学生対策でもあるんですね。実際,イギリスにしても,アメリカにしても,留学生に運営資金を頼っている場合がすごく多いわけです。特にイギリスはほとんどが国立大学であって,先ほど上山先生がおっしゃったように,運営費交付金,国からの資金は10%~12%ぐらいまでに低減されています。それに代替するものとして授業料がある。この授業料が相当大きな比重を占めています。50%ぐらいになっているところもあります。
であるからこそ,実はイギリスは2018年に学生局というのを作って,600ぐらいある学生ユニオンの代表をそこに入れて,学生の意見を取り込んで,つまり,ステークホルダーの学生としての意見を取り込んで,それを評価にも反映させています。そういうことをやはり日本もやっていかないと,今回コロナ禍で授業料返せとか,あるいはオンラインはいいかげんにしてくれとか,いろいろな意見が出てきています。アメリカでもそれは大統領令まで発展するぐらい大きな問題になりました。だから,日本もエンゲージメント型の経営をする以上,いろいろなステークホルダーの意見を一体経営のどこに反映させていくのかということをきちんと考えてからそれを実施に移さないといけないだろうと思います。
これが法制度として反映できるのか,あるいは単に各大学の自助努力に任せるのか。今までは実は自助努力に任されていたと思うんですね。学生との意見交換はそれぞれの大学がやってきたわけで,そういうことをやはり事前に決めておかないといけないと思います。例えばどこの国立大学でも授業料はほとんど一緒です。20%内外は勝手に変えられるわけですけれども,ただ,私立大学と比べればその幅はすごく狭められている。今回その自由度を増すのであれば,学生側の反発も相当予想されるわけです。きちんとした理由がなければいけないし。
それから,定員の問題。これは留学生がどれだけ入ってくるかによって,これは大野先生もおっしゃいましたけれども,それを内数とするか,外数とするかというのはすごく経営上の大きな問題となります。留学生の授業料の価格をどうするか。今までは授業料は基本的に私立大学でも国立大学でも日本人学生と一緒でした。これを大きな収入源として考えるならば,例えば学部によっては授業料の設定を変えていかなければならないかもしれないわけですね。そういったことをどういうふうに法改正に盛り込めるのか。
それから,もっと大きな問題があります。これは例えば先ほど五神先生がおっしゃった承継教員の問題です。これは人給,人事給与問題をどういうふうに解決していくかという国立大学の中の議論で年俸制がなかなか進まなかったのは,そこの原因があるわけですね。退職金付きの年俸制というのを今回導入したわけですけれども,承継教員,いわゆる座布団というのが定められていて,それが法人化のときにもう限定されてしまっているわけですね。それ以上全く変更できないという状態になっていて,それが大きなかせになっていることは事実です。今後それをどうしていくのかというのは,外部資金を導入していくと同時に,それを運営費交付金の中で解決していくのか,外付けで確保していくのか,その解決策を講じてからでないと,なかなかうまくいかないと思います。非常に重要な問題であることを指摘させていただきたいと思っております。
あとは細かい問題になりますから実際に読んでいただければと思いますが,検討が必要と考えている事項等を記載していますので,是非御参照いただきたいと思います。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございました。もう残りの時間が15分程度なんですけれども,皆様の中で御意見,まだこれは言い足りないという方いらっしゃればお願いいたします。
【上山委員】 上山ですが,1点付け加えてもよろしいでしょうか。
【金丸座長】 上山先生,お願いします。
【上山委員】 先ほどの五神先生のパワーポイントの中にある,ちょうど5ページになりますが,市場メカニズム,国家メカニズム,コモンズメカニズムと,この3つの問題は極めて重要で,80年代にアカデミックにキャピタリズムの力学が明示的に入って以来,アメリカの大学が苦しんできたのが,実に,このコモンズの問題であったわけです。
この問題を日本の現状に移し替えたときには,コモンズを支えている重要な要素として運営費交付金があるということです。運営費交付金という渡し切りのお金がどのようにアカデミアのコモンズを支えているかということを考えたときに,その問題と自律的契約関係を合わせて考えてみると,最初にも申し上げたけれども,運営費交付金の評価の問題を必ず我々は真剣に考えないといけなくなる。つまり,ステークホルダーの様々な関わりの人たちの中の満足度も含めた,あるいは情報の公開も含めた大きなステークホルダーの波の中でこの運営費交付金を評価していかなければ,アカデミックのコモンズは守れないということなんだと思っています。
ですから,恐らく会議の後半では,この評価の話を金丸座長,議論していかれると思うんですが,やはり改めてこの問題をやるときには,相当幅広い評価の軸を考えないといけない。重要なステークホルダーとしての学生の問題,大学の教育を受けている学生の評価ということも,これは実は余り今までのコモンズの議論中には日本の場合は入ってきていない傾向がありますけれども,諸外国ではアカデミックコモンズを守るために学生の評価ということ,満足度ということを高くやっぱり掲げてきましたから,そのことも恐らくはお考えになっていただけるものだと思っております。
以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。五神さんと冨山さんからで,ちょっとさっき五神先生長かったので,冨山さんから行きます。冨山さん,お願いします。
【冨山委員】 すみません。さっきのエンゲージメント云々かんぬんって,一応,私,法律家なので一言二言ちょっと言っておくと,要は,契約のありようというのはいろいろ多義的でありまして,個別具体的にこれをやる,やっちゃいけないという形の極めてルールベース的な契約も存在しますが,会社なんかはその典型なんですが,そういうふうな契約はしていないんですね,株主との関係でいうと。ですから,要するに,これはある種信託法理というか,包括委任に近い形でステークホルダーは経営陣に対していろいろな要素を,最近は単なる株主価値の最大化だけじゃなくて,大学に近い議論になってきているわけですけれども,相当多義的な意味での,英語で言うと,Enlightened Value of Co-operationというのが最近のはやりの言葉なんですが,要するに,企業の本源的価値というのかな,というのを最大化するということを言われて。その裏返しとして言うと,じゃ,何の責任を負うかというと,法形式的に言ったら,フィデューシャリーデューティーとかになるんです。要は,ステークホルダーに対して信任義務,忠実義務を果たしなさいという構成です。
恐らく株式会社との違いというのは,株式会社はやっぱり生々しい私的所有というのが頂点に,株主の私的所有というのが頂点にあるんだけれども,大学というのはそういうものは存在しないわけであります。ということは,いわゆる本当にマルチステークホルダー的になるんですが,どなたかおっしゃったように,マルチステークホルダーの危なさというのは,結局訳が分からなくて,あ,そうだ,金丸さんがおっしゃったんですかね,要は,ノーガバナンスになってしまう危険性があるわけで。
そうすると,やっぱりここで大事なことは,言い方はエンゲージメントがいいかはともかくとして,そこでちゃんと,要は,フィデューシャリーなり,ガバナンスなりが機能するような,言ってみれば,エンゲージメントのフォーマット,これを今後どうしていくかというのが多分今後詰めていくべき議論であって。これはくどいようですけれども,多分,星先生が言われたように,個別具体的に細かく契約条項が何ページにもなるという形態ではここは決してないので。だけども,裏返して言ってしまうと,そういう包括委任の場合には包括委任で,むしろガバナンスの形態でそこを担保するしかないわけですから,それを具体的にどうしていくのかというのは,何人かの先生方がおっしゃっていましたけれども,それが今後すごく鍵になるような気がしております。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。それでは,五神先生,お願いします。
【五神委員】 ありがとうございます。先ほど長かったので,今度は短くします。
上山先生あるいは冨山さんのおっしゃったことに非常に関係があることについてです。お二人のおっしゃったことはそのとおりだと思いますが,コモンズの部分を支えるのが運営費交付金だという前提では,ゼロサムの議論になってしまいます。つまり,コモンズとして社会を支えなければいけない大学の役割は既に拡張している中で,拡張部分に応じて運営費交付金を通じて中国のように国が直接投資として増やせるという状況であれば別ですが,日本はそうではありません。大学のミッションが拡張している中で,ゼロサムの議論は窮屈過ぎるわけです。
そのミッションを担うために,株式会社ではない形で,大きな経済体として資金が回るような大学の経営メカニズムを作ろうというのが我々の提案です。私たちはその先行投資資金はどこからも頂くことができなかったわけですが,いろいろな資源を工夫しながら,ゼロから火をおこすようなことをして,1,000億円規模の資金を作り出しました。その中で純粋な余剰金,すなわち自由にできる真水の資金は10%ぐらいですが,確実に生み出すことができてきました。それを促すような仕組みが見えてきたので,ゼロサムではない議論でコモンズを支える経済メカニズムを作ることを検討することが必要です。
それは大学以外のセクターにも役に立つでしょう。民間企業が向かっている方向とも整合するので,かなり大きなムーブメントを引き出せるのではないかと感じています。ですから,大学の収入が授業料と診療報酬のほかは運営費交付金しかないという前提から議論が始まると,何も出てきません。皆が疲弊するだけなので,そうではない議論をここで行って,結果を出していただきたいと思います。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。
【上山委員】 五神先生おっしゃっているのは全くそのとおりで,実はアメリカの大学だって苦しんで4兆円の基金を作って,そこからペイバックしていくというのが,正にこのコモンズを自力でどうやって作っていくかということに苦しんできた歴史なんですね。そこから派生的に大学発ベンチャーみたいなものも出てきたということで,そのモデルに改めて東京大学がチャレンジしていると。つまり,新しい形のコモンズを自ら作っていくということをやろうとしているんだなと私は理解しておりますので,どうぞ頑張ってください。
【五神委員】 基金を作って突き放されては仕方がありません。アメリカのモデルではないモデルを,日本の優位性を使って作っていこうというところがポイントです。上山先生にも頑張っていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
【金丸座長】 みんな頑張りましょう。
それ以外,どなたかいらっしゃいますか。よろしいですか。
今日は議事進行もいつもよりはスムーズに行きました。ありがとうございました。
それでは,来月が本当の中間取りまとめでございまして,本日は様々な観点からの議論を深めることができたと感じてございます。特に今日の議論としては,自律的契約関係というのが主要テーマの1つだったわけですけれども,皆様から様々な問題提起,御意見を賜りました。基礎的なところでは多くの委員の皆様に共通の理解は出来つつあるのではないかというふうに今日感じてございます。
本日の議論を踏まえまして,事務局にて審議概要骨子に肉付けを行うとともに,来月の中間取りまとめ以降の検討に向けた問題提起なども今日皆様からも幾つか意見が出てございましたので,そういうものも加えていただいて,次回の会議までに本検討会議としての中間まとめに向けた準備を進めていただきたいと思います。
また,本日の議論でも一定の方向性が確認されたわけですけれども,中間取りまとめに書かれる制度改正のうち,きょうは法体系みたいな話が出ましたけれども,法改正が必要な事項を整理して,政府部内の手続もそろそろ開始をしなければいけない時期でございますので,その準備も同時に進めていただくようよろしくお願いいたします。
また,これまでは冒頭申し上げましたとおり,大学の総長の皆様から国に対しての自由度を高めてほしいという御要望を聞かせていただき,私としても全力を尽くして文科省と議論してまいりました。今後は,国立大学の重要なステークホルダーであり,今日は上山先生からも触れていただいたんでしょうか,それから,ほかの委員の方々もあったと思うんですけれども,学生目線からの大学の在り方というのはこれまで議論がなかった点でございますので,こういうような視点も加えさせていただきながら,最終の取りまとめに邁進をしてまいりたいと思ってございます。
本当に本日も長時間にわたり熱心な御議論ありがとうございました。本日はこれにて終了させていただきます。
今後の日程等について,事務局から説明をお願いいたします。
【生田高等教育局視学官】 本日は活発な御議論ありがとうございました。次回,第8回の会議につきましては,9月25日金曜日の,朝早いですけれども,9時から今度は予定しております。次回こそは,中間取りまとめの案を御提示して,また御議論いただければと思っております。
以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。文科省さんのWi-Fi環境はちょっと改善の余地があるのではないかと思いました。SINETにつなげればいいんじゃないですか。
【生田高等教育局視学官】 本日は大変申し訳ございませんでした。今後改善したいと思います。
【金丸座長】 本当に皆様,本日もありがとうございました。冨山さん,是非次回も出席を賜ればありがたいです。よろしくお願いします。
それでは,これにて終了させていただきます。ありがとうございました。

 ―― 了 ――

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