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国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議(第3回)議事録

1.日時

令和2年4月24日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室 ※WEB会議

3.議題

  1. 諸外国の大学制度について
  2. 国立大学法人に期待される役割について
  3. 自主財源確保に向けた方策について
  4. その他

4.出席者

委員

金丸座長、濵口委員、上山委員、大野委員、五神委員、小林委員、篠原委員、曄道委員、冨山委員、星委員、松尾委員、松本委員、柳川委員、山極委員

文部科学省

伯井高等教育局長、川中審議官(高等教育及び高大接続担当)、淵上国立大学法人支援課長、生田高等教育局視学官

5.議事録

【生田高等教育局視学官】 それでは,ただいまより第3回の国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議を開催いたします。
本日は,新型コロナウイルスの感染防止拡大のために,このようにウェブ会議方式での開催となっております。委員の皆様方には,御参加いただき,誠にありがとうございます。
音声など,ハウリングとかしていないでしょうか。今のところは大丈夫ですか。初めてのために何かと御不便を生じることがあるかもしれませんが,御容赦いただければと思います。
本日の議題につきましては,昨日,遅くなって申し訳ございませんでしたけれども,資料一式送らせていただいた中の議事次第にあるとおり,議事としては三つプラスその他ということで,用意をさせていただいております。
本日は,傍聴者,報道関係者の入室は認めない形で,後日,このウェブ会議の動画をホームページにて配信することとしたいと思います。
事務局からのお願いでございますけれども,ウェブ会議を円滑に行う観点から,できますれば,御発言に当たってはなるべく,インターネット上で聞かれている方もいますので,聞き取りやすいよう,はっきり御発言いただくなどの御配慮を頂きたいと思います。また,御発言の都度,できますればお名前を冒頭におっしゃっていただいてからの御発言を頂きたい。
それから,発言するとき以外は,マイクをくれぐれもミュートの形にしていただきたいと思います。そして,先ほど会長の方からのあれで,「手を挙げる」ボタンを皆様方,押していただきました。万が一なかなか分からないという場合は,手を振っていただくという形で御対応いただければと思います。
資料を参照しながら御発言いただくことになるかと思いますが,資料番号,ページ番号,ページ内の該当箇所などを分かりやすくお示ししていただいた上で,御発言いただきたい。そして,なるべくたくさんの委員の方から御発言いただくためにも,1回当たりの御発言は二,三分ぐらいでとどめていただきたいとお願い申し上げます。
それでは続きまして,令和2年4月1日付けの事務局の異動について紹介いたします。
本日,ウェブ会議上の参加となりますが,大臣官房審議官(高等教育局及び高大接続担当)の川中文治でございます。
【川中高等教育局審議官】 川中でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【生田高等教育局視学官】 それでは,ここから金丸座長,よろしくお願いいたします。
【金丸座長】 皆様おはようございます。本日はよろしくお願いいたします。
本日の会議は,宮内委員から欠席の御連絡を頂きましたので,委員15名中14名の御出席で開催いたします。
なお,柳川委員からは,所用のため11時半頃に退出する旨を承っております。
また,今回,委員以外の有識者として,東京大学大学院教育学研究科教授であり,高等教育論を専門とされている福留東土様に御出席いただきますので,御紹介させていただきます。福留様には後ほど,議題1の中で説明を頂くこととしております。
それでは,議事に入らせていただきます。
前回の会議で,委員の先生方には,国と国立大学法人との契約関係について御議論を頂きましたが,その際,今後,ガバナンスの在り方など各論の検討を深めていくに当たっての参考として,諸外国の大学制度についても,その国の歴史の流れの中で,社会背景なども踏まえて適切な形に変容していった姿の有様として理解しておく必要があるのではないかとの御意見があったところでございます。
これを踏まえ,今回の議題1では,諸外国の大学制度と題して,先ほど御紹介させていただきました福留様から,アメリカの研究大学,特に州立大学の州との関係やそのガバナンスの在り方を中心として御説明を頂き,その後,質疑の時間を設けたいと思います。
それでは,福留様,よろしくお願いいたします。
【福留東京大学大学院教育学研究科教授】 東京大学の福留と申します。よろしくお願いいたします。
私の方から,資料がお手元にあるかと思いますけれども,「アメリカ研究大学のガバナンス」と題して,今日は発表させていただきます。
お手元の資料を御覧いただきながら,御説明したいと思います。
まず,2枚目のスライドの「報告の趣旨」についてですけれども,私が今回,お声を掛けていただいた趣旨ということになると思いますけれども,この検討会議の方で,「独立した,個性的かつ戦略的な大学経営」というものを可能とする改革を実現するために,諸外国の大学,特にアメリカの州立大学から何を学べるかという形で,私のところに御依頼があったものと理解をしております。
私なりに,今の日本の改革課題というものを考えたときに,大学の持つポテンシャルというものをいかに効果的に引き出して,社会的に活用するか。また,それによってイノベーションを先導して,かつ,健全な市民社会の形成に寄与するような大学を形成するかということが重要な課題であろうと考えております。
そのために,大学の特性というものをしっかり理解するということと,大学の持っているポテンシャルを引き出すために,構成員の能力を存分に発揮し得るような自律的な経営,そのための制度改正というところがこの検討会議の一番大きなテーマだと理解をしております。
私なりに,幾つかの米国の研究大学を見ていくと,一言で言うと,活力の根源というのは,やはりボトムにあるのではないか。研究・教育の現場というところにあって,これは当然の話だと思うんですけれども,その活力を引き出して,あるいは高めるための手段として,どういう経営が必要なのかということが,特にアメリカの研究大学を見ていて強く感じるところです。
次のスライドに参りまして,今日,私が発表する研究大学についてですけれども,まず,州立と私立で非常にガバナンス構造が大きく異なりますので,まずは州立にフォーカスをしてみたいと思います。ただ,州立大学間の違いも非常に大きいので,主に,私が研究対象にしておりますカリフォルニア大学の事例を見ていきたいと思います。
御存じの方も多いと思いますけれども,カリフォルニア大学は10のキャンパスを持っていて,実質的には一つ一つのキャンパスが独立の大学のような形で運営をされている。ただ,法的には大学というのはあくまで一つであって,よく「システム」という言葉を使いますけれども,大学全体が一つのシステムをなしていて,その下に個々のキャンパスがあるという,ガバナンス構造が二重の形になっているという特徴があります。ただ,このような,いわゆるマルチキャンパスシステムというのはアメリカの州立大学には非常に多いシステムです。
ただ,同時に,できるだけ一般論というか,なるべく幅広い理解につなげられるように,幾つかの他の州立大学も参照しつつ,今日の資料は作成しております。
州立大学間の違いが大きいというのは,もちろん,州ごとの歴史であったり,文化であったりというものの違いが大きいという,アメリカの国自体の成り立ちの背景との関係ももちろんあるのですけれども,一方で,各大学が自分たちの活力を高めるためにどういうガバナンス構造を採っていけばいいかという点について,いろいろな試行錯誤の歴史があって,それぞれの個性的な発展の中で,多様な在り方が出てきているのではないかというのが私なりの理解です。
次のスライドですけれども,こちらが,私にお声掛けいただいた一つの理由だと思っているのですけれども,最初の検討会議で出された文科省からの資料で,アメリカのガバナンス体制という形でこういう図が提出をされていて,私の論文も出所の一つとして引用していただいているのですが,これについて星先生の方から,少し理解が違うのではないかというような御発言があったという経緯を伺っております。
その後,星先生とも議論をさせていただいたのですけれども,この図が現実と大きく違っているということでは必ずしもないのですけれども,特に,左側に執行部というのがあって,右側に評議会,これは教員組織ですけれども,が描かれていて,このバランスが少し,執行部の方が非常に大きく描かれているのではないかというようなところで,ニュアンス的なところで,もう少し改善の余地があるのではないか。これを私なりに今日,考えながら,大学の中のガバナンス構造というものをお話しできればと思います。
一応,この図を出発点といたしまして,次のスライドが,先ほど「システム」と申し上げましたが,カリフォルニア大学全体の「リーダーシップ」というホームページをコピーしてきたものなんですけれども,3人の顔写真が出ておりますけれども,一番左がボード・オブ・リージェンツ,つまり理事会の議長です。真ん中がアカデミック・セネットといいまして,これが先ほど,図で評議会と訳していたものなんですけれども,教員組織のシステム全体の議長です。一番右が,カリフォルニア大学の,総長と訳しておりますけれども,プレジデントです。
こういう形で,理事会と教員組織と総長が並列の形で,リーダーシップとして紹介されているというのが,カリフォルニア大学のガバナンス構造を見る上での一つのポイントかと思っております。
次のスライドは,システムのプロボストを務められたジャド・キング先生という方に提供していただいた資料ですけれども,これも大学の意思決定の構造を描いています。面白いのは,一番上にファカルティーがあって,理事会,リージェンツが一番下にあるという,日本でよく作られる図とは反転したような図になっているのですけれども,真ん中の列の中心のところにチャンセラーズというのがあって,これがそれぞれのキャンパスの学長に当たる方々です。その下にあるプレジデントというのが先ほどの,今,ナポリターノ総長ですけれども,システム全体のプレジデントということになります。
左側の方に,ディビジョンセネットとアカデミックカウンシルという赤字で書かれたものがありますが,ディビジョンセネットというのが,それぞれのキャンパスの教員組織に当たります。ディビジョンというのは,バークレー・ディビジョンであったり,ロサンゼルス・ディビジョンであったりというようなキャンパスの教員組織という意味です。下のアカデミックカウンシルというのが,システムレベルのカリフォルニア大学全体の教員組織という形になります。
右側の緑色で書いてあるところが,キャンパスレベル,システムレベルそれぞれの役職者という形になるのですけれども,セネットの組織,教員組織と執行部の組織というのが並立して,相互に横でやり取りをしているというところが,この図の特徴となっております。
次のスライドは,バークレーキャンパスの組織図でありまして,こちらの方には教員組織というのは書かれておりません。飽くまでアドミニストレーションの構造をあらわしたものになりますけれども,チャンセラーがいて,その下に,エグゼクティブバイスチャンセラー&プロボストという,いわゆるプロボストがいて,ここが大きな一つの箱の中に書かれておりますけれども,それぞれのキャンパスのガバナンスの一番中心だということですね。
左の方には,それぞれの研究科や学部,いわゆる部局のディーンが書かれてあります。真ん中の下のところに,バイスチャンセラーだったり,バイスプロボストだったりという形で,いわゆる副学長に当たる方々がそれぞれの部門を管轄している。一番右側が,オフィス・オブ・チャンセラーのメンバーという形になります。
ここには教員組織というのは入っておりませんけれども,以上のようなところを見ながら,私なりに,先ほどの図をやや作り直してみたのが次の図でありまして,8枚目です。
まず,政府と大学との関係というところも,後で少し補足をさせていただきたいと思いますけれども,理事会というのは,これも大学によって違うんですけれども,カリフォルニアの場合は,ほとんどのメンバーは州政府からの任命ということになります。知事が任命をし,議会が承認をするという形で理事会が編成をされ,その他,職権上の理事というのもかなりいますけれども,そこで州政府と大学との関係というものが形づくられているということですね。
左側に,経営部門としてシステム,キャンパス,二つレベルがありますが,一応まとめた形で書いておりますけれども,総長・学長とプロボスト,その下にいろいろな担当の副学長がいて,あと,少し右の方に書いたのは,それぞれの部局組織ですね。学部長や学科長がいて,その下に教員がいる。
右側の方に,いわゆるセネットという,これは日本の教員組織に必ずしもぴったり対応するものがありませんので,少し訳語が難しいですけれども,基本的には全学の教員組織ということになります。ですので,先ほど,学部,学科,その下の教員と書きましたけれども,こことは切り離して表現をしております。基本的には学術面に関しては,アカデミックセネットが大きな実質的な決定権を持っているということですね。
ただ,もちろん重要事項に関しては,経営側といろいろなやり取りをしながら,キャンパス,あるいは機関としての意思決定につなげていく。理事会,経営,学術の3者がガバナンスに関わっていくという形をシェアードガバナンス,あるいはコーガバナンスという言葉で呼ばれているものです。ここの全ての3者の主体が関与しながら,機関として何が最善の決定なのかを議論していくというところが非常に重要な部分なのではないかと思います。
それから,政府と大学との関係ということを含めて,もう少し広く,基本的には州立大学ですので,州に対してどういう貢献をするかというところが非常に重視をされていて,理事会というのはある意味,右の上の方に書きましたけれども,州民とか一般社会からの信託を受けた存在であるということですね。
一方,下の方にも,社会・地域・産業界という言葉を書いたのですけれども,こちらは大学本体と直接いろいろな協働をしたり,連携をしたり,あるいは資金提供があったり,大学がそれに対して貢献をしたりという関係性があり,かつ,学部や学科というような部局組織とも当然,研究や開発を通じていろいろなやり取りがあり,かつ,ボトムの教員レベルでもいろいろなやり取りがあるという形を,この図の中に入れ込んでみました。
次のスライドからは,大体,今申し上げたようなことを言葉で説明したものですので,時間の関係もありますので,省略しながら説明したいと思いますけれども,スライドの9枚目の下のところに書いたように,先ほども申し上げましたけれども,日本のよく言われる教員自治というのは,学部の教授会自治とイコールの関係で語られることが多い。カリフォルニアのアカデミックセネットというのは,全学的な教授会というような位置付けなのですね。そこが非常に大きく違うのではないか。つまり教員による全学的な観点から成る管理というものがなされていて,そこがアドミニストレーションと並立をしているということですね。
10枚目辺りも,それを少し具体的に書いたものになります。
それから,理事会が,州との関係というところで,一つポイントになるかと思うのですけれども,基本的には,州知事による任命と議会による承認,先ほど申し上げましたが,それによって決められるのですが,その候補者は,助言委員会というものが編成されていて,そこに学内外いろいろな人が入って,そこの意見を聴きながら,候補者を立てて,それを最終的には知事が任命をする。ただ,そのときに,いろいろな人種だったり,性別だったりという多様性に配慮がなされているということですね。
外部者による,いわゆる素人支配,あるいは市民支配というのがアメリカの理事会の特徴になっております。学内者は大体学長が,カリフォルニアの場合は総長ですけれども,理事を兼ねる場合が多い。投票権がない場合もあります。あと,学生とか卒業生の理事が入る場合もあります。
もう一つは,理事会と学内の教員とのコミュニケーションとして,先ほどのセネットの議長や副議長が教員代表として理事会に参加する。投票権は持っていないわけですけれども,発言権があって,かなり意見を聴きながら,理事会でいろいろな議論がなされていくということですね。
外部者がどう大学を統治していくかというのは,アメリカでも非常に難しい課題として,いろいろ議論がありまして,まず,基本的には社会や,あるいは歴史的には,地方の州政府がいろいろな面で大学を支えてきた。その中で,外部との関係というものが非常に重要視をされてきたという歴史的な背景があるということが一つあります。もう一つは,内部者よりも,直接的な利害を持たない者の方が冷静で客観的な判断ができるのではないかという考え方も,背景にあると思います。
ただ,実際にはいろいろな意思決定というのは,学内者に対して大幅な権限移譲が行われていて,理事会によるマイクロマネジメントというのは慎むべきである。学長の行動,判断というものを尊重するべきであるとされております。いわゆる,統治はするけれども管理はしないということですね。
先ほどのように,州立大学の場合,多くが政治的なプロセスで決まってきますので,例えば政治的な意図がいろいろ持ち込まれたり,あるいは,産業界の人も非常に多いので,極端な企業的な考え方が持ち込まれたりということがないのかどうか。これは,実際にはそういったことが問題化することがあります。ただ,それを避けるためにいろいろな仕組みが織り込まれているということです。例えばカリフォルニアでは,理事の任期というのは知事の任期よりも長いのですね。つまり,一旦指名をされても,一旦理事になった後は自律して動く。かつ,知事が交替する場合には,何名かずつ理事を入れ替えていって,任命時期をずらしていくというような配慮がなされているということです。
あとは,例えばAGBという全米団体,ワシントンDCに本部がある団体なんですけれども,そういう大学団体が,理事の大学に対する理解を促進するためにいろいろな活動を行っていて,外部者である理事が大学を理解することに対する配慮がなされている。
この辺りは日本でも,経営協議会であったり,あるいは外部理事だったり,監事だったりという外部者の方との関係構築が非常に重要な課題ではないかと考えております。ただ,日本において,アメリカでは外部者による管理が行われていると言うと,そのこと自体が独り歩きしてしまうところがあって,やはり大学と社会との関係というのは,それぞれの国の文脈や背景というものがありますので,そこを含めて議論する必要があるのではないかと思います。
スライドの13枚目に示したのが,理事会の主な責任と役割,これはAGBで定めているものになります。
次の14ページの表は,州立大学あるいは公立大学における理事の選任方法というところで,結構多様なものがありますけれども,主には,知事による任命ですね。それから,州によっては,一般の選挙によって決める州もあります。これはコミュニティーカレッジ,2年制の大学に多い方式ですけれども,そういうやり方を採っているところもありますし,あるいは,幾つかやり方を組み合わせて,いろいろな理事の選び方をしているという大学もかなりあります。
どういう人が大学の理事になっているかというのが,スライド15枚目になります。
大学執行部については,総長・学長,プロボストのところを,少し情報提供を兼ねて書いておきました。それから,アメリカでは経営部門,財務とか資金調達といった,いわゆるビジネス部門と呼ばれるところでは,教員の出身者ではない人材が担当副学長に就いている。これも外部人材の有効な活用ということの一つの表れではないかと思います。
ACEという,学長団体が,学長がどういう仕事を行っているかに関する調査を行っています。特に研究大学のところを見ると,外部の資金獲得であったり,予算管理であったりというようなところに,学長の活動のうちかなりの重点が置かれていて,その分,プロボストが,学内の学術部門を中心にしながら管理を行っているところがあります。
スライドの18枚目,19枚目のところに,UCシステムの総長の選考過程,ちょうど,先ほどのナポリターノ総長がリタイアされるということで,今,選考過程が進んでいるのですけれども,どういう組織やプロセスによって決められるかということをまとめておきました。やはり理事が中心なのですけれども,教員の助言委員会が編成され,また,学生や職員や卒業生,それぞれが助言委員会を編成して,いろいろなインプットを行うということですね。
スライド19枚目の方は,キャンパスの学長でありまして,これは教育研究の現場に近いので,委員会もむしろ教員の数が多くなっているという,先ほどの総長とはその辺りが違うということになっております。
20枚目の共同統治のところは説明を省略しまして,州との関係,21枚目のスライドになりますけれども,基本的には,州の憲法あるいは法律によって,各大学の理事会が大学を代表する,そこに対して自律性を認めるという法的な形になっております。
カリフォルニアの場合は,UCは憲法で自律性が定められている。よくカリフォルニアの3層構造と言われますが,カリフォルニア州立大学とコミュニティーカレッジは,憲法でなくて法律の方で定められていますので,これらは州政府によってある程度変更が可能であるということですね。ですので,研究大学の方がより高い自律性を獲得している。
州との関係で言うと,州による補助金の額が非常に大きなファクターになっておりまして,これは基本的には州議会の決定によるわけですね。いろいろな要因の中で,州財政が逼迫する中で,御存じの通り,今,州による補助金の割合は大きく減っております。それに伴って授業料が高騰しておりまして,こういう面で,大学理事会への内外からのプレッシャーが強くなっているということですね。
カリフォルニア大学は,世界的な研究大学群としての使命があり,ただ一方で,州としては,州経済にどう貢献するか,あるいは州民に対する教育機会の提供を大学がどう行うのかというところに関心が強いので,そこに一種の葛藤が発生するということですね。特に大学側は,できるだけ授業料による収入を上げるために,州外学生を入れようとする誘因があります。その方が授業料が高いので。ただ,やはり州に貢献する機関であるということで,州内学生を増やすべきだ,州外学生を一定以内の割合にとどめるべきだといった議会からの要求もあるということで,この辺りでいろいろな政治的なやり取りがなされているという面があります。
そういう使命が幾つか複合的に存在するというのは,大学にとって難しい側面もあります。一方で,多元的な研究大学の機能をもう少し構造的に捉えていこうということで,幾つか研究も現れておりまして,スライド22枚目のところにまとめてありますが,例えば,UCバークレーにいる高等教育研究者のダグラス先生という方は,ニューフラッグシップユニバーシティーという概念を提唱しておられます。これは,フラッグシップ,州の基幹大学というのは,研究機能というのが大事なのだけれども,教育であったり産学連携,地域貢献というような機能もあって,それらを内的に,どうお互いに拡張したり,知識を移転させたりするか,それを自律的に達成する必要があるという概念です。
よく研究大学の国際競争というと,国際大学ランキングでいろいろな指標を上げていくという,どちらかというと他律的な指標に従って,それにどう適応していくかという面が重視されがちなのですけれども,むしろ内的な構造のリンケージをもっと自律的に果たしていくことが重要ではないかという概念です。
それから,アリゾナ州立大学でマイケル・クロウ学長という方が,ニューアメリカン・ユニバーシティーモデルという概念を提唱しています。これは,研究大学というのは選抜性の高さによって質というものを測られがちなのだけれども,これからの研究大学というのは,むしろ多様な学生を幅広く受け入れて,その学生たちに多様な活動を学内でやらせることによって,知的な活力が得られるのではないかという概念を提唱しています。
アメリカは非常に研究大学の厚みがあって,例えばAAUという,研究大学が集まる大学団体がありますが,そこに加盟している大学は63あります。この数自体も多いのですけれども,排他的な組織とされていまして,加盟できる大学は非常に限定的なのですね。例えばカーネギー分類では,最も卓越した研究能力を持つ大学というのは115ぐらいある,博士課程を持つ大学は300ぐらいあるという分類があります。そうした中で,研究大学をどう定義するかという点についても,いろいろな幅があると思います。
おそらく,数やスケールは少し違ったとしても,日本でも同じように,研究大学というのをどういうふうに捉えるのかという問題があると思うのですけれども,そこには当然,威信であったり,資源であったりの単線的な配分構造というものが存在するわけですけれども,一方で,研究大学の中にも,いろいろなモデルの多様性であったり,あるいは,それを創造的に形成していくということであったり,そういう可能性というものがアメリカでも現れ始めている。そこにガバナンスが,どういうふうにその構造を支えていくべきかというような議論があり得るのではないかとという認識を持っております。
あと少し,後ろの方にスライドを付けておりますが,こちらは補足ですので,御覧いただければと思います。
それから,スライド26枚目以降は,参考データとして,幾つかの大学団体とか,あるいは調査による,理事会と学長,それから,先ほどのセネットに関するデータを付けておりますので,こちらも参考にしていただければと思います。
少し長くなりましたが,私からの発表は以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
【金丸座長】 福留先生,ありがとうございました。とても参考になりました。
それでは,質疑応答も含め自由討論を行いたいと思います。
発言を希望される方は,「手を挙げる」ボタンを押していただくか,万一うまくいかないケースは,画面に向かって手を振っていただければと思います。発言終了後は,マイクをミュートにするとともに,「手を降ろす」ボタンを押してくださいませ。
それでは,まず,手を挙げていただいた松本委員,お願いします。
【松本委員】 福留先生,御発表ありがとうございます。
質問があります。まず,ファカルティーセネットには学部長は入っていないという理解でいいのか。つまり,日本の国立大学においては,教育研究評議会にかなり近いとは思うんだけど,違うかもしれないんですが,ファカルティーセネットには学部長や学科長が入っているのか,いないのかというのがまず1点。
もう一つは,8ページ目の資料にありました,社会と州民からの信託というふうに書かれていましたが,これをどのように担保しているのか。文科省の資源エネルギー課のシミズさんという方が書かれた資料によると,こういった理事会をオンライン公開していると聞いていたので,どういう形で社会とつながっているのか。先生の12ページの資料にもありましたように,外部との関係構築が課題,つまり外部者が,いかに大学を理解してもらうかということがとても大きな課題になっているというところから考えても,信託をどう担保しているのかというのは重要な課題ではないかと考えます。
以上です。お願いします。
【福留東京大学大学院教育学研究科教授】 まず,1点目に関しましては,学部長,学科長は,アドミニストレーション側に入ることになりますので,その方たちは一般の教員としてのセネットのメンバーになることはできないということですね。
ただ,カリフォルニアでも,法的に見ると,セネットのトップは実はプレジデントだとされていて,プロボストなども,形式的にはセネットのメンバーにはなるのですけれども,実質的にセネットを動かしているメンバーは一般の教員から選ばれることになります。ですので,学部長,学科長はそこには参加しないという御回答になります。
おそらく,日本との比較で言うと,学部長は,教員の代表として全学の会議に出ていくという形になるので,アメリカの全学教授会のようなものを日本で想定しようとすると,アドミニストレーションの組織と教員組織というのが二重構造になってしまうような,結局,どちらがどれだけ自律的な役割を果たせるのかという点に関わる課題が出てくるのだろうと思いますので,そこは構造が違うのではないかと思います。つまり,日本の場合だと,学部長,学科長というのは教員代表であるという側面が非常に強い。
アメリカでは学部長,学科長は,実は少し違っていて,デパートメント(学科)は教育研究にかなり近いので,学科長はどちらかというと,教員の代表という側面が強いですね。選挙で選ばれる場合も多いです。ただ,学部長の場合は,選挙で選ばれるということはほとんどなくて,むしろ,プロボストや他のディーン,学部長が,選考会議を設けて選考をして任命をしていく。つまり,アドミニストレーションに対して責任を持っている人が学部長になることが多いです。また,学外から,その学部の専門分野の研究者ではあるのだけれども,併せて経営手腕であったり,ビジョンであったりを持っている人が,外から呼ばれる場合も非常に多いですね。ですので,その辺りの学部長の位置付けというのも,かなり日本とは違うのではないかと思います。
2点目の御質問は,信託のところですね。これはある意味,私,図を作りながら非常に迷ったところなのです。州知事や州議員に対して選挙を行って,州民の意見が州政府の構造に反映されているという面があるので,州と大学がつながっている面も重要だと思うのですね。州政府に州民の意見が反映されて,それによって知事や州議会が州の代表として,政治的な立場から理事を任命する。それがおそらく,政治的なプロセスの中で理事会メンバーが任命されていくことの意味だと思います。
ですので,この図の書き方をどういうふうにするか,難しいところなのですけれども,州政府と大学がつながっている面があるということと,ただ,御質問の中でおっしゃっていただいたように,理事会は,州立の場合は基本的に公開されます。私立の場合はほとんど公開されませんけれども,州立は公開をされ,議事録も公開をされる。かつ,パブリックコメントを受け付ける。そこに,州の住民は自由にエントリーをして発言をすることができるということですね。そういう意味で,理事会というもの自体が開かれた存在であるということ。
それから,例えば日本の場合だと,中期目標や中期計画を政府に対して作ったりするのですけれども,バークレーもストラテジックプランというものを作ったりしますけれども,これは必ずしも政府に向けてのものではなくて,むしろパブリックに対して,州民や社会に対して,自分たちの活動をどういうふうに表現していくかというような形で作られることが多いということですね。ですので,そういうルートを通しても,州民との関係構築というものが図られているということが言えるかなと思います。
【金丸座長】 ありがとうございます。
では,山極委員,お願いします。
【山極委員】 京都大学の山極です。私の質問は,財務の決定権と人事の決定権の絡みについてお聞きしたいんです。
教員組織は非常に強い発言力を持っているということですが,人件費は,財政の中でどういうふうな決定をされているのか。執行部が教員ポストまでコントロールできるのか。あるいは,教員組織が教員ポストの拡充とか縮小というものの決定権を持っているのか。その辺をお聞きしたいです。
【福留東京大学大学院教育学研究科教授】 その点につきましては,最終的な決定権ということで言うと,キャンパスレベルでは学長になると思います。ただ,アカデミックセネットの中に,人事に関して強い発言権を持つ委員会がありまして,その委員会は,アカデミックセネットの中でも極めて重視されている委員会です。人事に関しては,まず下から上がってきて,学科で実質的に決まって,ディーンがチェックをして,全学組織に送るというルートがありますが,必ずアカデミックセネットを通らなければいけないということですね。
ですので,部局人事というものが,基本的には全学のチェックを必ず受けた形で決定される。それは最終的には,プロボストを経て学長の方に送られる。そういう人事決定システムで,そこも多分,日本と少し違うだろうと思います。
もう一つは,人件費,フルタイム換算の教員数をどういうふうに設定するかについてです。同じ委員会の,これも最終決定権ではなくあくまで助言機能になるのですけれども,そこで議論が行われるということです。この委員会が提案をして,プロボスト,チャンセラーに提案を送って,最終的にはアドミニストレーションの方で決定されるのですけれども,セネットがかなり強い関与をすることができる。
これはUCの中でもバークレーに顕著な特徴だと認識しておく必要はあるかなと思うのですけれども,そういう形でアカデミックセネットが,予算に絡む教学のところにも関与しているということが言えると思います。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,濵口委員,お願いします。
【濵口委員】 濵口です。先生のお話でお聞きしたいことが,簡潔に2点あります。
一つ目は,先生は触れていないと思うんですけれども,主要大学の学長は全部,外部から選ばれていますね。先ほどのジャネット・ナポリターノも,サンタクララ大学,バージニア大学の卒業で,アリゾナ州の司法長官,知事をやって,米国国土安全保障長官をやった後にカリフォルニアへ移っています。これを可能にしているのは,A㎇サーチとか大学理事会のサポートがあって,客観的なデータを,非常にきちっとマネジメント能力を測っているシステムがありますが,先生,フラットにお聞きしたいんですけど,こういう外から選ぶ,基本的には,アメリカの大学のプレジデントは外から選ぶ形になっている。このことに関して,先生はどう思われるかということ。
もう1点目は,これを可能にしているシステムとして,経営と教学の分離があるわけですね。プレジデントとプロボストが違う。日本はこれが一体化していますね。この点に関しても,先生はどう思われるか,御意見を頂けますか。
【福留東京大学大学院教育学研究科教授】 ありがとうございます。スライドの中で,説明を省略しまったのですけれども,19枚目の下のところに書いてありまして,ACEの調査によりますと,内部から昇格して学長になるという人は大体4分の1だそうです。ですので,先生がおっしゃるように,4分の3は外からということですね。
確かに,先ほどの御指摘にあったようなサーチ会社というのが,ほぼ必ず選考過程に入っています。これは候補者を広く探す。国際公募,あるいは国内公募を掛けているのですけれども,むしろサーチ会社を使って幅広く候補者をサーチするということと,あと,候補者がそのポジションに関心を持つかどうかということを,サーチ会社を使ってコンタクトを取ったりするという機能が非常に重要です。それが広く人材を探す上での重要なファクターになっているということですね。
ただ,これはあくまで広く候補者を探す上でのサポートであって,最終的には,もちろん大学による意思決定というところが重要で,そこにはサーチ会社は関与しない。この辺りの切り分けを認識しておくのも大事かなということですね。
外から選ぶことに関しては,やはり改革を促すということですね。中の人だとなかなか根本的な改革というのがやりにくいので,やはり改革を推進する上では外部者が好まれやすい。新しい道を模索していくために外から新しい人を呼ぶのだ,それによっていろいろな新しいイノベーションを起こしていくのだというような,シンボルとしての外部者が好まれやすい。
ただ,AGBにいろいろ話を聞いたときに,やはり中にいる人,中から上がっていく人というのも利点が多くあるのではないかということが認識されていて,それが,4分の1ぐらいは中から上がるという構造にも反映されているのではないかと思います。バークレーでも,前のバークレーのチャンセラー(学長)はコロンビアから来た人で,一つ前の人ですね。教員との折り合いが余りよくなくて,結局辞任をしたという例があったりします。今の学長は,中から上がった人ですね。これはもちろん一つの例ではあるのですけれども,そうしたこともあります。
あと,システムの総長というのは,総長オフィスで,キャンパスを持っていないので,どちらかというと管理機関的な側面が強いのですね。ナポリターノ総長も,おっしゃるように教員出身ではなくて,むしろ政治家であったりという経験が長かった人なのですけれども,州政府といろいろな交渉を行っていくというような機能が,全学のプレジデントの方では大事なので,そこは学長と総長とでかなり求められるものが異なっているということがあると思います。それが,総長にナポリターノのような方が選ばれた一つの要因だと思います。ですので,キャンパスが実質的には大学として機能しているわけですけれども,そこのトップである学長を選ぶ場合には,もう少し違った論理が必要になってくるのではないかということですね。
それから,経営と教学の分離につきましては,これも説明を省略してしまったのですが,スライドの16枚目のプロボストのところですね。
学長はやはり外向けの仕事が多いので,プロボストに誰を任命して,どう学長との関係性を作っていくかというのが大事で,大きく二つほどモデルがあると言われています。一般的には,プロボストは,チーフアカデミックオフィサー(CAO)として,学術部門のトップであるという認識で,ほとんどの場合そうだと思うのですけれども,つまり,いろいろな副学長がいる中で,副学長の中のエグゼクティブ,トップである。学長に何かあったときはプロボストが代行する。
もう一つは,チーフオペレーティングオフィサーといって,COOですね。こちらは,実際には「COO」というポジションが,プロボストとは全く別に設定されている場合もあるのですけれども,学長とプロボストというのは,一つの箱の中にいる2人であって,あらゆる事項が2人によって相談をされ,決定をされる。つまりプロボストは,教学部門に限らず,いろいろな大学の執行部門に対しても責任を持っていくというような,大きく二つのモデルが考えられるのではないかということですね。
ですので,この辺りも,どう学長を支援するガバナンス構造を作っていくかという観点で,それぞれの大学の独自性といいましょうか,それぞれの大学に合ったやり方というものがあり得るのではないかと思います。
【金丸座長】 ありがとうございます。議論は尽きないわけですけれども,議事進行の都合上,ここで一旦切らせていただいて,引き続き,福留先生に御質問等がある場合は,事務局宛てメールを頂いて,また,福留先生,御回答を頂ければ有り難いと思っております。よろしくお願いいたします。
【福留東京大学大学院教育学研究科教授】 分かりました。
【金丸座長】 五神先生,ずっと手を挙げていただいていたのに,すみませんでした。
それでは,議題2に移らせていただきます。本日二つ目のテーマとして,国立大学法人に期待される役割について,御議論いただきたいと思います。
第1回,第2回の会議におきまして,委員の皆様から,戦略的経営の在り方を検討するに当たっては,そもそも国立大学のステークホルダーは誰なのか,国立大学が何のために存在してきたのか,さらには,時代の要請を受けた国立大学の意義・価値を再定義することが必要なのではないかとの御意見を頂いておりました。
これを踏まえ,今回は,国公私立の高等教育全体の中で,特に公的資金が投入される国立大学にはどのような役割が期待され,また,デジタル革命が進むSociety5.0時代に向けて,国立大学に期待される機能がどう変化・拡張しているかについて,議論を深めていきたいと思います。
それでは,議論に先立ちまして,まずは事務局から,資料の説明をお願いいたします。
【生田高等教育局視学官】 それでは,事務局の方から,資料2-1を用いまして,簡単に説明させていただきます。
最初,2ページ目でございますけれども,国立大学法人に期待される機能・役割ということで,これまで政府,国としてどのような言い方をしてきたのかというのを少しまとめさせていただいております。
最初のところ,過去の中教審答申よりということで,法人化後の平成17年でございますけれども,「我が国の高等教育の将来像」という答申を出しております。この中におきまして,国立大学法人というものが,国からの公的支援により支えられているという安定性,又は,学長任命や中目・中計に関する国の関与という特性を有している。これは右側の,国の高等教育政策を直接的に体現するという側面を持つことに由来しているというような書きぶりで規定をしておりまして,したがってということで,五つ並んでおりますけれども,世界最高水準の研究・教育の実施ですとか計画的な人材育成等への対応等々といったものが,国立大学として重要な役割を担うことが求められるというような書きぶりを答申の中ではしております。
そして,ここから約13年後,平成30年でございますけれども,同じ中教審答申ということで,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」というものを出しております。この中では,正に平成17年の将来像答申で述べた,国立大学法人に求められる役割というものがどう変化していくのか,そして,その社会の変化の方向性を踏まえた新しい役割の再整理をしていくという形で,以下のように述べているところでございます。
基本的に,17年の答申,それほど大きく変わっているものではないんですけれども,特に赤で書かせていただいているところ,知識集約型社会における,その知識が持つ価値が上がっていくことによって,イノベーション創造のための知と人材の集積拠点としての役割ですとか,あと,今までどちらかというと,機会均等的なものにとどまっていたということだけではなくて,各地域のポテンシャルを引き出した形で地方創生に貢献するといった意味合いから,地域の教育研究の拠点としての役割といったものが,グランドデザインの中では書かれているものでございます。
次の3ページ目は,つい最近,令和元年6月に出させていただいております,「国立大学改革方針」でございます。これは令和4年度から始まる第4期中期目標期間に向けまして,その答申も踏まえ,今後の改革の方向性,論点を提示した内容のものでございます。
この中でも,基本的にその答申を受けている形でございますので,真ん中の部分,国立大学の機能と役割のところで書かれておりますのは,知識,人材の集積拠点としての役割,そして,国立大学こそが社会変革の原動力である。そして,各地域のポテンシャルを引き出し,地方創生に貢献する役割,このような記載を,改革方針の中では書いているものでございます。
続いて,4ページ目は,この検討会議の第1回で事務局資料として提示をさせていただいているものでございまして,中段真ん中辺り,我が国の最大かつ最先端の知のインフラとしての国立大学こそが,その知的資源を最大限活用することで,社会変革の原動力として寄与,このような記載をさせていただいております。
続いて,5ページ目でございます。少し話が変わりますけれども,これは経済財政諮問会議,令和2年4月15日,つい先日でございます。ここで開催された資料の一部を記載しているものでございます。デジタル・ニューディールの全国展開に向けてということで,これは,(民間議員ペーパー)と書いてございますが,竹森教授,中西会長,新浪社長,そして,この検討会議の委員のお一人でございます柳川教授の名前で出されているペーパーの資料でございます。
ここで,これも赤字で書かせていただいておりますが,地域を活性化していくためには,国公立をはじめとした地方大学におけるオンライン教育・STEAM人材育成を強化し,地域ごとに特徴ある教育,人材集積を進め,企業進出の誘因とすることが早急に求められる。このような書きぶりで,諮問会議で御議論がなされたというものでございます。
なお,この4月15日の諮問会議に対しまして,文部科学省として提出した資料は,参考として7ページ目,8ページ目,9ページ目に付けさせていただいております。説明は割愛させていただきますが,9ページ目,右下のところでは,今,開催しております検討会議,ここにおいて,このような方向性の議論も進めていくという意味合いで記載をさせていただいているものでございます。
そして,資料を行ったり来たりで申し訳ございませんが,6ページ目に戻っていただきまして,本日,この場におきまして御議論いただきたい論点を少しまとめさせていただいております。
国立大学法人に期待される役割・機能とはということで,まず,国立大学のステークホルダーというのは誰なのだという点,そして,日本の高等教育全体の中において,公的資金が応分に投入されている国立大学に特に期待されるものというのは何なのか,そして,現在,世の中がこれほど大きく変わっている。デジタル革命はもちろんですけれども,今,これだけコロナ危機が起きている中,アフター・コロナにおいても,国立大学の存在意義というのはどういったものになっていくのか,このような観点から御議論いただければと思っておりまして,以下,1から4は,幾つか想定される論点の詳細を記載させていただいております。
ステークホルダーと言ったとき,一般的には社会を指していると思いますが,その中も分解していくと,産業界,地域/地方(自治体),学生・保護者,そして全体としての納税者,様々な観点があるかと思います。
二つ目として,世の中が変わる,この時代の要請を受けた存在意義の再定義というものはどうしていったらいいのか。
三つ目,やはり国立大学というのは一律なものではない,多様性こそが特徴があるものだということで,個性に基づく機能分化の在り方,これはもちろん以前から言われていることでございますけれども,様々な観点での機能というものをどのように分化していくというのがあるのだろうか。
四つ目,国内外の大学間ネットワークや連携を通じた相乗効果の発揮,これは,連携というのも昔から言われて長いものでございますけれども,いろいろなレイヤーのものがあると思います。地域間の連携というものもございますし,海外のトップ大学との連携,いろいろなパターンがあるかと思いますが,ここで言っているのは,いろいろなものを込みの形で,いずれにしても,どのような形態があり得るのか,どういったことが求められるのかといった観点が論点としてあるかと記載をさせていただいたものでございます。
事務局からの説明は以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございました。
ただいま御説明にあった論点の延長にもなるのではないかと思いますけれども,4月15日の経済財政諮問会議に柳川委員が御出席されておりましたので,今,御説明のあった「デジタル・ニューディールの全国展開に向けて」という議題の中,及び,「地方大学におけるオンライン教育・STEAM人材育成の拡充」を取り上げたということでございますので,柳川先生から補足説明をいただければ有り難いと存じます。よろしくお願いします。
【柳川委員】 どうもありがとうございます。諮問会議の民間議員の方でペーパーを出したんですけれども,4人で出していますが,今日のお話は,私の意見,私の解釈が入っているということで,諮問会議の方の話と私の意見を少し交ぜてお話をさせていただきたいと思います。
社会の大きな動きとしては,Society5.0,デジタル化,デジタル・ニューディールということで,大きくデジタル化を進めるということが今,要請されているわけです。特に,コロナの状況の中では,対面がなかなか難しい中では,むしろオンラインを積極的に進めていって,オンラインでできること,あるいはオンラインだからこそできることをどんどん増やしていくということが大きな命題だと思っておりまして,小林委員,あるいは金丸座長が御参加されている規制改革会議の方で,大きくそこのところを動かしていただいていると理解しておりまして,そういうところを教育の分野においてもしっかりやっていくということが,大きなペーパーで書いた目的の一つです。
もう一つは,ある種の分散化の必要性ということでございまして,これだけいろいろな災害が増えていることもあって,東京一極集中のリスクのようなこともかなり広がっている。その意味では,各地域,地方が活性化するということの分散化を図っていく必要があるということと,単に必要があるだけではなくて,デジタル化を使うと,ある意味で,物理的な地域が離れているということのマイナスがかなりなくなっていく,むしろプラスになっていく。
私も昨日の夜は,最近はこういう状況なので,オンラインでインターナショナルな会議ができるということで,中国,スウェーデン,アメリカ,イギリス,ドイツというようなことで,時差があるので夜遅くにやったわけですけれども,全く物理的な距離を関係なく,Zoomで会議ができるということを考えますと,実は世界中のいろいろな教育機関と連携をして,地方の国立大学でもいろいろな教育ができる,正にそういう環境が整っている。
このデジタルのすばらしい環境を教育に生かしていくことが重要になってくるのではないかということで,諮問会議の方の民間議員ペーパーでも,地方大学のSTEAM人材育成ということで提言をしたということでございます。
具体的には,全ての国立大学,地方国立大学を一挙にというのはなかなか難しいことでございますので,やる気のある地方国立大学を中心にということですけれども,やる準備がある,やる気があるというところを積極的に推していって,そういうところから成功事例を作っていくということが重要だろうと思っているところが一つでございます。
もう一つは,こういうことをやっていく上では,既存の大学教員の人材だけではなかなか限界があるので,もちろん今,教員をされている方を,積極的にこういう方向に進んで活躍していただくことも重要なんですけれども,民間の技術に優れた方々を別枠で定員として採用して,そこでSTEAM人材の育成に携わっていただく。場合によってはテンポラリーでも構わないと思いますし,もしかすると,物理的に地方に移住していただかなくても,今のようなオンラインを使えばできるかもしれない。こういうことをうまく使っていくことで活性化を図りたい。
それから,文理融合の話が先ほどの文科省の紙にも出ていましたけれども,文科系は文科系,理科系は理科系ということではなくて,例えば経済学部,経営学部なんかでも,そういう場所を活用した,技術に詳しい,ITに詳しいSTEAM人材を育成していくようなことも大事だと思いますし,その意味では,地方の国立大学がメーンの,この紙の話ですけれども,そこに閉じたところではなくて,国内の他大学との連携,あるいは先ほど申し上げた,海外との連携,そういうところの単位互換制度みたいなことも柔軟に考えて,地域の活性化を図っていけるのではないか。
それから,先ほど海外の事例のお話もありましたけれども,大学の運営のところも,民間の活用も含めて,ダイナミックに動かしていくということで,ある意味で,地域活性化のコアに地方の国立大学がなっていくというところを期待する紙を出させていただいたということでございまして,いずれにしても,今回のコロナのところは非常に急を要する話でございますので,そこはできるだけ早く動かしていかなければいけないんですけれども,実は,教育機会をバージョンアップさせるということもかなり喫緊の課題ですので,ゆっくりやることではなくて,積極的にデジタルを活用して,より活性化を図っていって,地域を大きく盛り上げていくことが重要ではないかと,これは個人的な意見ですけれども,強く思っている次第でございます。
以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございました。
また,本日は国立大学の現場の五神委員,大野委員から資料提出を頂いておりますので,お二人に意見を伺わせていただきたいと思います。その後に,意見メモを頂いている星委員,松本委員,小林委員には優先して御意見を頂戴いたしますので,その旨御了承願います。
まずは,五神委員,一言お願いいたします。
【五神委員】 ありがとうございます。資料2-2を御覧いただきたいと思います。
今,既に柳川先生,あるいは金丸座長からお話がありましたように,新型コロナウイルス感染症への対応をこの一月ぐらい,社会全体でやっているわけです。
東京大学の場合は,3月18日の段階で,学事暦を動かすことなく,4月以降の授業はオンラインをメインで行うということを決めて,4月1日以降は,オンライン以外の授業はやらないという方針としています。その結果,講義を担当している教員がすべて,オンライン授業を行っているという状況になります。
新型コロナへの対応は世界同時に起こっています。2月17日にオンライン授業を始めた北京大学の学長と,学長ホットラインで先日議論しましたけれども,北京大学では50%以上の授業がリアルタイム配信でできているとのことです。ところが,日本でそれをやろうとすると,ネットがパンクしてしまうことが危惧されます。つまり中国のネット環境が,少し目を離している間に劇的によくなったことは間違いないと思われます。
テレワーキングも進んでいる中で,金丸委員とも御一緒させていただいていますが,未来投資会議でSociety5.0に向かうために,データ活用やデジタル技術の社会実装についてずっと議論をして参りました。なかなかスピードが上がらなかったのですが,今回の新型コロナ感染対応をきっかけとして,一気に加速したのです。それはよかったのですが,インフラとして見ると,課題も明らかになりました。資料の1ページにありますように,Society5.0 readyではなかったと言わざるを得ないわけです。
例えば遠隔の会議でいきますと,本郷と駒場をつなぐのに,シンガポールのサーバーを介さなければいけないという状況が起こります。これはセキュリティー上も問題でありますし,デジタル環境を地球環境と調和させるという意味でのエコの観点からも,無駄が多いわけです。そういう意味で,リモートワークで海外クラウドに依存しないようなものを作っていくということは極めて重要です。
しかもこれは世界同時で起きていて,かつ長期化することは避けられません。ですから,イン・コロナすなわち,新型コロナと戦う中でどうするか,そして,アフター・コロナ,ポスト・コロナを見据えて,どう戦略的に備えていくかという意味で,デジタル・ニューディールというのはやはり今やるべきことであろうと思います。そのときに,大学は全教員が,好むと好まざるとにかかわらずデジタル技術活用に向かっていくという状況ですので,これを活用して大学を変えていく好機であると思っています。
その中で,私はいろいろなところで,SINET5が47都道府県を100Gbpsでつなぐすばらしいインフラであるという話を言い続けてきましたが,セキュリティーの問題からいっても,クローズな専用回線網であるというのは極めて重要です。これを,例えばGIGAスクールなどで,全国3万6,000か所ある小学校,中学校,高校につなげば,日本列島は,世界にないようなデジタルアイランドになります。
そういう,セキュアでエネルギー的にもエコなデジタルネットワーク神経網を持つということにより,海外からの投資家から見たときに,日本が非常に魅力的な投資先になることは間違いありません。これを使って日本が,イン・コロナの間に優位性を獲得する,そのために大学を使うべきです。地方を活性化させて,それを国全体としてどうつなげていくかということは,抽象論では駄目なので,このような具体的なやり方を提示して進めていくのが一番早いと考えています。
我々は既に,新型コロナ危機が始まる前から,SINETを活用するためのデータプラットフォームの大学連合なども作ってきました。実際,今,コロナの中で,遠隔授業などにおいても,非常にパワフルになっています。大学間でノウハウをシェアすることにも役立っています。これを迅速に進めていくことが重要です。
1ページの最後の部分ですが,このSINET活用における大きな問題があることを指摘しておきます。SINETが大学の学術情報を運ぶためのものだけではなく,日本の重要な情報神経網となるという将来像を考えたときに,それを仕切っている国立情報学研究所の組織的な位置づけが問題です。国立情報学研究所は,情報・システム研究機構という大学共同利用機関法人の一部局です。大学で言えば工学系研究科のような,一学部という立場です。国全体のインフラを担うには,いろいろな意味でパワフルに行動する必要がありますが,それがしにくいところが問題になっています。
資料には東大で取り組んでいること,あるいは私の考えなども記載していますが,飛ばしまして,9ページと10ページで,最後,この会議で議論していただきたいことをまとめたいと思います。
まず一つは,大学を一気にリフォームするためには大きな先行投資資金が必要です。コロナ対策で国の財政がより逼迫するはずですので,民間資金をうまく市場から集めるということがいっそう大事になります。そういう意味では,前回の会議で,大学債発行ということを,金丸座長も,議論がまとまったものからすぐに実行に移すと言っていただきました。文科省でも政令改正案を速やかに策定いただいて,内閣法制局による審査まで終わっているということで,迅速な対応に大変感謝申し上げるとともに,東大も具体的に進めたいと考えています。各国を見ますと,コロナの問題が出た以降,長期の大規模な大学債が次々に発行されています。その意味でも,これは非常にタイムリーであったと思います。
これを更に実効性の高いものにしていくという意味で,9ページに書きましたのは,大学債が,今回の政令改正だけでは箱物にしか使えないので,これをもっと,例えばSTEAM教育をきちんと強化するといったようなソフト的なものにも使えるようにしていただきたい。これは法改正が必要で,今後のこの検討会の議論に期待することであります。
また,寄附を拡大するという意味で,前回御説明したプランド・ギビングのようなものもやっていく必要があります。
もう一つは,大学を地方の核にしようとすると,土地活用についての規制緩和が必要です。各地方の大学でも,その地方の中で特に立地の良いところにある大学が多いと思いますが,それだけに規制もあると思います。
国立大学の経営のガバナンスの話が今回の会議の中心課題だと思いますが,経営体として,大きなお金を動かすようになるということを前提としたガバナンス改革の議論でなければ,意味がありません。運営費交付金をただ真面目にきちんと使うというだけのことを前提にしたガバナンス改革の議論はほとんど意味がないと思います。
10ページ,最後のところですが,そういう点で見ますと,やはり国の役割を明確化することが必要です。つまり,責任,権限をきちんと明確化した上で,大学に何を任せて,その部分のガバナンスをどうしっかりしていくのかということを議論すべきです。中長期に支えなければいけないものは,国が国の基盤として責任をもって支えるべきです。特に優秀な若手研究者を安定的に確保して,日本として維持すべき学術と文化を持続的に支えることは国の重要な役割です。人文社会系も含めて,日本版CNRSのような形で,研究者を安定雇用し維持する組織や仕組みを立ち上げるべきです。これは私が2013年に,当時読売新聞におられた松本美奈委員の取材で記事にも取り上げていただいたことです。今こそ,それを実現することが重要であると考えています。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございました。
それでは,大野委員,お願いいたします。
【大野委員】 東北大学の大野です。私からは,資料3-2の2ページ,3ページを説明させていただきます。
基本的には,五神先生,あるいは柳川先生がおっしゃったトーンと同じかと思います。
2ページの一番上の行にありますが,ポスト・コロナ時代,ニューノーマルに向けた大学の新しい在り方を模索する動きが世界で今,始まっています。それを先導するのは国立大学法人であるべきと考えています。明治・戦後・法人化を大きな転換点と捉えれば,今回はSociety5.0時代のバージョン4になると考えます。
まず最初のところですが,大学は,オンラインとリアルのハイブリッドでグローバルな大競争時代に突入しています。特に欧米,英語圏の大学は,留学生が来なくなって,非常に大きな欠損を抱えている状態であり,必死で新たな市場を開拓しています。同じスピードで我々も,新たな競争力のある高等教育システムへの変革が必要と考えています。
このためには多様なトライアルへの挑戦が必須です。従来の考え方に縛られずに自由度を高めて,あらゆることを試行できるようにすべきです。
この意味は,ポスト・コロナの姿が,世界中どうなるか予測がつかない中で,できることを全て試行して,グッドプラクティスを共有することで新たな大学の在り方を形づくっていく,走りながら考えるという姿勢が必要ではないかと思います。自律分散であるが,一本芯が通っている,これが85を数える国立大学法人群ではないかと考えています。
この考えに至った背景が,2ページの下にございます。東北大学では,全ての講義をオンライン化し,かつ,会議も当然のことながらオンライン,学生ピアサポーターもオンラインで配置することで,新入生に対しても,様々な学習,そして心のケアもできる体制に変えました。
実際にこうした取組を進めてみると,今までオンラインに若干抵抗感のあった教員も含めて,リアルな場がなくても,学生一人一人と教員が実はつながることができるといったことから,新たな時代の大学の在り方が見えてくるという認識が広がりつつあります。
3ページ目ですけれども,これら種々のトライアル,試行を進めるためには,やはり様々な規制が緩和される必要があると考えています。
例えば今,オンラインでつながることで,地方,都会,あるいは国境といったボーダーがなくなりましたから,教育の変革で言えば,定員をどのレベルでどう自由化するのか,大学の裁量で実施するといった,幾つかの試行をする大学を指名してサンドボックスに入れて実行するといったこともあるかもしれません。
研究は,もともとボーダーレスですが,オンラインでいろいろなことができるようになりますと,勤務形態として,アメリカで雇い,カンボジアで雇い,インドネシアで雇い,といったことが実施できます。戦略的な人事を可能とする仕組みを,どうグッドプラクティスとして共有・展開していくかが重要になります。
社会連携では,X on Campus時代による地方創生が重要です。「X」は,民間がキャンパスで活動する事例はありましたが,地方自治体をはじめとする様々な事業体が,キャンパスで融合して活動します。大型研究施設,私どもの関係では次世代放射光ですけれども,を共用することも我が国の競争力向上に必須ですし,先ほどお話のあったSINETは,こうした大型研究施設のバックボーンとして極めて重要です。次世代放射光に関して言えば,世界の放射光施設をつないだサミットを本日午後にオンラインで開催し,このパンデミックに対する貢献に関する,コミュニケを出す予定になっています。そうした中で,大学からの出資対象事業の対象を広げ,我々の活動がスピード感を持ってスムーズにできるようにしたいと考えています。先ほど例に挙げました,東南アジアで雇用する教員とヨーロッパで雇用する教員の管理を,別会社で行うという考え方もあるかと思います。ガバナンスについては,既にお話がありましたが,オンラインで世界の人材にリーチできますから,物理的に移動せずとも,最適な人材を大学経営にどう資源として活用していくかを,積極的に進めるべきです。
最後に,4ページ目は,出資対象事業の対象拡大です。これからのニューノーマル時代に向けて,私どもも既に海外の入試をオンラインで一部実施しておりますが,例えばオンラインの面接やAO入試,さらには,設備共用といった研究の変革につながる業務を子会社に落とし込むことができないかと考えています。こうすることによって,国立大学が世界から後れることなく,逆に先導できる形になると考え,この資料を配らせていただきました。
以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,星委員,お願いいたします。
【星委員】 ありがとうございます。今までの議論を聞いていまして,特に資料2-1の6ページ,「国立大学法人に期待される役割・機能とは」ということで重要だと思うことを,今,五神総長がおっしゃったこと,それから大野総長がおっしゃったことにも関わると思うので,一つ指摘しておきたいと思います。
1番目の社会から期待される役割や機能というところで,社会全般が一般的な大学のステークホルダーで,そこからの期待に応えなければいけない,これは合っていると思うんですけれども,何が期待される役割なのか,どういった機能が必要なのかというのは,ここで議論していてもしようがないところがあって,これは先ほど松本さんが福留先生に質問された観点とちょっと関わるんですけれども,社会からの信託というのをどういうふうに大学が捉えるべきかということで,まず最初にやらなければいけないことは,ステークホルダーから期待される役割や機能が何なのかということを,各大学が受け止めていくというか,考えていくというか,そういう制度,仕組みを作るというのが一番重要なんだと思います。
それで,先ほど大野総長がおっしゃったことですけれども,これから,ポスト・コロナということで,従来の考え方にとらわれず,走りながら考えることが重要だということはここにも当てはまって,ステークホルダーから期待される役割というのは,これから変わってくる可能性もありますし,そのときに,どういったことを求められているのか,どういったことが必要なのかということを,常に大学の経営に反映できるような仕組みを作るという議論が重要なのではないかと思います。
その意味で,五神総長がおっしゃったことにつながるんですけれども,社会の多様なステークホルダーとのコミュニケーションをどう取っていくか。大学債を発行するとかプランド・ギビングの仕組みを作るというのは,その都度,社会と関わっていなければいけなくなりますから,本当に期待される役割というのがどうなっているのか,どう変わっていくのかというのを,それぞれの大学がくみ取っていく上で役に立つと思います。
それに加えて,同じような意味で,大野総長がおっしゃったような,出資事業の範囲を拡大するというのも,社会と大学の対話を密接にするということで重要になると思います。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,松本委員,お願いします。
【松本委員】 皆さんのところに,私が書いた意見書というのは,お手元に行っているんでしょうか。
【金丸座長】 共有できていると思います。今日,お手元にお持ちかどうかはちょっと分かりかねますけれども。
【松本委員】 ありがとうございます。国民が支えたくなる国民立大学という,余り格好よくない名前の意見書をお出ししています。
言いたいことはたった一つで,国立大学に社会の,国立大学法人のステークホルダーは社会全体であるということをまず認識すること,そこからしか始まらないのではないかと考えています。そのために,今の仕組みでは全くできない。それは,下の方の図を御覧いただければお分かりいただけます。
かつて国立大学は,文科省の中の内部組織でした。出先機関と言ってもいいかもしれません。それが法人化によって,独立したという言い方はあるんですが,実際は独立していなくて,これは星先生のお言葉を使うと,単に分離した,しかも文科省の下にくっついているという図になってしまいました。その結果,国立大学法人は,徹底的に社会の目に背中を向けて,文科省の目だけを気にするようになってしまったのではないかと感じています。
今日,御発言いただいている五神先生,大野先生,山極先生たちのところは違うという言い方はもちろんできるんですが,それはごく一部で,多くの大学はこういう形になってきていたと見ています。
その証左としては,中期目標は大臣に付与され,中期計画は認可される。そして,学長の任命,解任の権限も大臣にあるというのは,その証拠の一つです。ですから,いつも社会の評価がない,社会に評価してもらおうということも考えない,社会のニーズも考えないということは,その行動を律しているように見えます。
ここから,文科省も,国立大学の上に立っていて,政策が一貫していないので,その一挙手一投足に国立大学が振り回されてきてしまったということを,はたから元新聞記者として見ながら,ずっと感じていました。
まず,国立大学は,法人化では独立した自律的な経営ということを,民間手法の経営とか,それから競争原理ということがありましたが,文科省の目しか気にしていないので,そこで競争原理は働きません。国内の,今85法人になりましたが,86の国立大学の中だけの競争というのをずっと展開してきました。
ですが,私ごときが言うようなものではないんですが,大学というのは何かといったら,これはしょっちゅう五神先生が,世界に対して,人類に対して責務を負っている存在であるということをおっしゃっています。それに共感します。これは五神先生のお言葉ではないけれども,例えば教育基本法の中にも,社会の発展に寄与するという言葉が,大学に課せられています。これはそのまま学校教育法にも書いてあって,社会の発展に寄与するというふうに大学は書かれている。
ところが,国立大学の上に乗っかっている文科省は,国家公務員法によると,国民に対し,責任があると書かれているわけです。つまりそこには,誰に対して仕事をするのかということで矛盾が生じてくる。大学は世界に対して,人類に対して,ところが文科省,つまり国家公務員は国民に対して,これはどちらが正しいか,どちらが間違っているかではなくて,向いている方向が違う。そこでは当然矛盾が生じ,議論をしなくてはならない場面がいっぱい出てきます。
ところが,文科省は国立大学法人の首根っこに手を当てています。すごくえぐい言い方をすると,その首根っこに手を当てている人に対して,一般的に人は議論はできません。ですから,世界に対してどう貢献しなくてはいけないのか,それと,日本に対してどう貢献しなくてはいけないのかということが矛盾するときに,議論にならない。常に文科省の方針が優先されてくるというふうに見えてきました。
先ほどの福留先生のお話にありましたが,外部者が大学を理解しにくいというのは日本でも同じです。そして,これまでの改革の中で,社会が徹底的に排除されてきてしまったので,外部者が,私たち一般の人間が国立大学を理解する機会が物すごく少ない。ですから,これだけ景気が,お金がなくなっているときに,何で国立大学なんかにお金を出さなくてはいけないのかというふうになるのは当然です。
そういった面からも,早い段階で,すぐにでも理事会なり何なり,とにかく大学の内部を公開し,国立大学に理解をしてもらう。そのためには,やっぱり文科省の支配から離して,文科省の下に国立大学があるのではなく,文科省と国立大学というのが並列する組織として,議論ができるようにする。
そこからでしか自律性はできないし,そのために,例えば五神先生の大学債というのは,いい機会ではないかと感じています。文科省にとっては子離れの機会だし,大学にとっては,大学は社会と向き合わなくてはいけないというマインドセットへの好機です。それから,社会全体で支えるという,私たち一般の人間にとっても,国立大学は私たち自身のものであるというマインドセットになるのではないかと考えます。
次回以降に,未来工学研究所の中崎さんという方を呼んでいただけないかということを,推薦しています。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,小林委員,お願いします。
【小林委員】 提出した資料は,コロナ・ショックから,ウィズ・コロナ,ポスト・コロナを通じて,医療も教育も,我々企業における仕事のやり方も含めて,オンライン化,遠隔化が進んでいく中で,大学に対する私なりの考えを簡単にメモしたものなので,第1回,第2回と内容がちょっと重なるかもしれませんが,後で簡単に触れさせていただこうと思います。
今日はまず,先ほどのカリフォルニア大学のお話を聞いて,上場企業のコーポレートガバナンス構造と非常に似てきているんだなと感じました。つまり,理事会が取締役会に相当していて,総長・学長がCEO・COO的に執行,エグゼキューションに任じ,一般の大学教員は研究・教育現場における実務に当たっている。組織として非常にいい方向性だなという感じがしました。
それと,先ほど名前が出たアリゾナ州立大学のクロウ学長。彼と僕は昨年4月,アリゾナのキャンパスに「The Global KAITEKI Center」という研究所を立ち上げました。アリゾナ州立大学はサステナビリティー研究が非常に進んでいるので,サステナビリティー学の教授を50人,100人,すぐ集めることができて,フードロスなどの非常に社会的,経済的な問題を含め,サステナビリティー全体を俯瞰した研究ができる。クロウ学長には政治力やファイナンス能力も含めて,非常に早いアクションを取っていただいたわけですが,そういう意味で,アカデミアと民間企業のどこが違うんだと感じるほどでした。企業顔負けのマインドがあって,それでもやはり大学,従来のアカデミアとしても十分成り立っているわけで,そういった形はいろいろ参考にすべきなのかなと感じます。
次にオンライン化関連ですが,そもそも今,民間企業が大学のことをどうこう言える立場にはありません。経産省や法務省でいろいろ調整していますが,開示に関する会社法の規制などもあって,株主総会をスムーズにオンライン化できない。安倍総理がゴールデンウイークは遠隔スタイルで過ごしてくれと言うような時代なのに,1,000人も2,000人も集まって3密になることが明らかな株主総会という基本的な問題さえ解決できずにぐちぐち言っているわけです。
こういう状況ですので,余り偉そうに大学にコメントできる立場ではないんですけれども,大学だけが別格で遠隔,オンラインがうまくいっているとも思えませんので,非常に不幸なコロナ禍ではあるんですが,これをいいトリガーにして,オンライン化,遠隔教育を是非大きく前進させていただきたいと思います。
ただここで問題提起したいのは,ウィズ・コロナ,ポスト・コロナ時代にあって,日本の大学のオンライン教育がグローバルに見てどうコンペティティブであるのかという点です。そもそも僕は本質的に,個が強い人,個人として力量がある人は組織に関係なく何でもできてしまうという考え方をベースにしているんですが,場所も時間も完全に超越したオンライン教育というフィールドの中で,地方大学であろうが総合大学であろうが,東京大学であろうが何であろうが,教育なり研究なりの優位性,差異化をどう成り立たせていくのか,組織としてよく考える必要があると思います。
一方で,大学にはそういうバーチャルな部分もありますけれども,我々の工場もそうですが,実験したり観測したり,やはり物というリアルな世界で,物理的にそこに行って,物理的に作業をしなくてはいけないという部分も重要なわけです。オンラインとフィジカルな対面,バーチャルとリアルのハイブリッド系をどう効果的に機能させていくかというのが,今後,非常に重要なポイントになるのではないかなという気がします。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。
議題がもう一つ残っていまして,今,15分オーバーでございまして,4人の方が手を挙げていただいているんですが,議題3に移らせていただいて,最後残った時間の優先権をこの4人の方に差し上げたいと思います。残った時間で4人回るかどうかというのはちょっと自信がないんですが,御了承いただきたいと思います。
本当に皆様,様々な御意見を頂きましてありがとうございました。本日の議論の中で,国立大学法人に期待される役割や機能が今まで以上に拡張していること,特にアフター・コロナに対しては,世界中のあらゆる国家がまた新たな競争の舞台に進みつつある中,そういう危機感を出していただきました。
そしてまた,地域内進学率が都市部に比べて低い地方の国立大学には,地域の特色を生かした人材育成や研究開発等とその人材の地元集積等による新産業創出機能が大いに期待されており,そのためにはオンラインを活用した国内外の大学資源の活用,SINETの活用,STEAM人材養成機能の強化が非常に重要な課題と認識をいたしました。
文科省におかれましては引き続き,やる気のある地方国立大学の機能強化に向けた具体方策の検討にも取り組んでいただきたいと思います。
それでは,次の議題3に入ります。本日三つ目のテーマとして,自主財源確保に向けた方策として,出資対象事業の拡大について御議論いただきたいと思います。
それでは,事務局から資料の説明をお願いいたします。
【生田高等教育局視学官】 それでは事務局より,資料3-1に基づきまして,簡単に説明させていただきたいと思います。
国立大学の出資対象事業の拡大ということですが,まず,現行どのような形になっているのかをお示ししているのが,2ページ目でございます。三つ書かせていただいておりますが,現状におきましては,TLO,真ん中の認定VC,そして,指定国に限る部分でございますが,コンサルティング会社等への出資が可能となってございます。
次の3ページ目に行っていただきますと,TLO及びベンチャーキャピタルにつきましては,国立大学法人が持っている,いわゆる研究成果の活用を促進するといった意図で出資が可能という形になってございまして,一方で,指定国のみにできることになっております研修ですとかコンサルに係る大学発ベンチャーにつきましては,それ自体が成果を活用するという形で整理がなされております。
ちなみに,これは国立大学と公立,そして研発法人を比較したものでございますが,研発法人につきましては,以下のように,成果活用等支援法人――ここにはTLO機能よりもう少し広めの範囲が入っておりますが――への出資は理研のみ可だと。ベンチャーキャピタルは,これも理研のみが可,そして一番右側,研発法人につきましては,発ベンチャーへの出資が22法人で可だという形になってございます。
そもそも,独法も含めて出資につきましては,平成11年4月,中央省庁等改革推進方針の中で,独法の出資は独法の本来業務ですとか,それに付随する,附帯する業務といったものに係るもの以外は認められないと。また,個別法で定めるという形で規定されているものでございます。
ですので,現行も,TLOですとかベンチャーキャピタル,それから指定国に対する出資の認可というものにつきましては,いずれも,次の4ページ目でございますが,国立大学法人法の中で規定されているものでございます。
これは細かな表になっておりますが,国立大学につきましては,真ん中右側にございます国立大学法人法の22条の中で,それぞれ規定がなされておりまして,この三つ,TLO,ベンチャーキャピタル,指定国のコンサル等が規定されているものでございます。
少し説明をはしょらせていただき,次の5ページ目に行きますと,先ほど,国立大学法人との比較で説明させていただきました,研発法人の方の動きでございます。研究開発法人につきましては,先ほど,理研のみが認められていると申し上げましたが,この辺,少し広げていく形で,法改正が今,国会に提出されている部分でございます。
具体的に申し上げますと,右側,新たな制度概要のブルーのところ,成果活用等支援法人,ここでやる業務を明確化するということで,特に,例えば特許等についての企業への実施許諾,それから,成果を企業につなぐための共同研究等の企画提案,さらには,その実用化を目指した共同研究等の実施,これを整理すると,一つは,よく言われるオープンイノベーションに係るような機能,そして,企業と出口に近い共同研究を行う機能,この二つについてきちっと,研発法人につきまして出資を可能とするということを明記するための法改正が現在,提案なされているところでございます。
こういった状況を踏まえまして,6ページ目でございます。こちらは事務局からの提案という形で出させていただいておりますが,先ほど申し上げましたように,研究成果の活用促進という意味におきましては,現行,TLOが政令で可能となっております。ここに,先ほどの研発法人と同様の形で,三つ目の四角に書いてございますように,オープンイノベーション機能担うための「共同研究等の企画・あっせん等の事業」,そして,「事業化に近い研究開発や試作等を行う共同研究等事業」,これらを出資の対象事業として追加してはどうかという御提案でございます。
基本的には,これは研発法人と同じ並びということでございまして,国立大学法人につきましては,これは先ほど,従来できる承認TLOと同様の並びにおきまして,政令改正で対応が可能となってございます。
なお,最後の四角のところで書かせていただいておりますが,従来より国立大学法人法の中では,出資対象事業につきまして3点,要件というのを主にベースとして検討しております。
一つは,事業としての捕捉するに足るだけの成熟性があるということ,そして,この事業自体が産学連携推進という政策的見地からきちっと説明ができ得るもの,三つ目として,出資対象とするに足るだけの公益性が何らかの形で担保されているもの,このようなものを要件として検討を今までも行ってきておりまして,マル1,マル2は基本的にクリアするもので,マル3につきましては,従来もTLOですと,承認をされたTLOということで,まず,TLO自体を承認し,そこに出資の認可をしているという形になってございます。
今回,オープンイノベーションですとか共同研究,多様な形態が認められますので,法律で承認とか認定ということではなくて,飽くまでも認可をする際の基準のような形で,出資条件の規定の中で,公益性を担保する仕組みを入れてはどうかというようなことを御提案させていただいております。
続いて,7ページ目,8ページ目の二つは続いている資料でございますけれども,今までがある意味,御提案という形で資料を作らせていただいておりまして,次からが問題提起という形で,ここから先は,どこまで出資対象を認めるのがよいだろうかということを御議論いただければと思ってございます。
少し話が戻りますが,先ほど指定国につきましては,自分の大学が行った研究の成果をそのまま活用する事業という意味で,研修・講習,そしてコンサルにつきまして,出資が可能ということが政令で規定されているところでございます。
先ほど少し申し上げましたように,研発法人については,実は研究開発自体,例えばテックベンチャーといったものについても,直接の出資は認められている一方で,国立大学法人はそちらについては認められていない,そのような状況になってございます。
少し論点を整理しますと,四つ目の四角の一つ目として,まず,そもそも論なんですけれども,現状,指定国だけに限定されている出資,これをほかの国立大学法人が行うことを可能とするのがよいかどうかというのがまず1点。
二つ目の論点といたしまして,先ほど来,指定国の出資可能な範囲として,成果の活用という意味合いにおいては,研修・講習,コンサルに限定されておりますが,これを更に拡大する。イメージとしては,テックベンチャーのような研究開発成果をそのまま活用していく,そういったところまで認めることをした方がいいのかどうか,これは政令改正の内容になります。
最後に,3点目として,これは更なる話なんですけれども,研究の成果の活用にとどまらず,もう少し広い範囲で,国立大学法人等が培ってきた教育研究に関するノウハウのようなものを,出資可能な事業として加えるといったことはどうか。これは成果の活用というものを超えていく話になりますので,法改正の対象になるかと考えてございます。
これをもう一回,おさらいしているのが8ページ目でございまして,論点として三つあると思っております。
一つ目の指定国に限っているものをほかの大学に広げるかどうかという観点,「1.に係る論点」で書いてございます。指定国における取組と同程度のものが認められているかどうか,成熟性の観点,そして,実は指定国になぜ限定しているのかという意味合いにおいては,指定国の財務状況といった,要は出資に足るだけの自己財源,そういったものが確実に確保できるのかどうか。それから,当然,指定国自体が株主となって,出資対象事業の方の議決権を行使して,出資先のモニタリングをする,そのようなことが必要になってきますので,そういったことができるのかどうかというのが論点としてあるかと思います。
それから,二つ目,三つ目に係る論点としては,そもそもどのようなものが想定されるのかですとか,そもそも出資することの意義ですとか,出資したことによって国立大学法人がちゃんとメリットを得られるようなものなのか,もうけがちゃんと出てくるのかどうか。それから,先ほど少し申し上げました,テック系の研究開発型ベンチャーに対する出資に関して,特に生じ得る利益相反といったものをどう考えるか。さらには,研究開発の成果の促進ではない,もう少し広げていくといった意味においては,民業圧迫等の問題をどう回避したらいいのか。そして,そもそもでございますけれども,研究成果の活用を目的とする,この目的自体をもっと広げるという意味においては,どのような政策的見地というものを設定していくことが妥当であるかどうか。このような形で問題提起をさせていただいております。
次ページは,いろいろ参考資料を付けさせていただいておりまして,11ページ目には,第1回,東北大学の大野総長から御提案いただいた資料,12ページ目は,同じく第1回,山極委員の方から御提出いただいている資料,これに係る議題のものでございますので,付けさせていただきました。
説明は以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございました。残り十二,三分になってしまいまして,今,手を挙げていただいている,5人の方々から御発言いただきたいと思います。
まず初めに,先ほど御説明があった科学技術イノベーション活性化法案の検討に当たり,政府部内で中心的に動かれていたCSTIの常勤有識者議員でもある上山委員から,CSTIでの検討過程並びにそれ以外の御意見も賜れればと思います。
お一人2分半程度でお願いいたします。
【上山委員】 上山でございます。
御紹介いただきましたように,CSTIの方でこのたび,科学技術基本法と並んで,科学技術イノベーション活性化法の改正案を今,国会の方に提案しております。活性化法の改正の中で,御説明にありましたように,国立大学の外部法人というものを立てることを可能にするということ,そしてまた,共同研究に至るような過程の中で,国立大学が出資をできる道を開くということを提案しております。
外部化法人の意図するところは,この例示にも出ているスタンフォード・リサーチ・インスティチュートのような組織を念頭に置いております。この研究組織は,1960年代ぐらいからスタンフォード大学の外部組織として始まり,70年代にスタンフォードと完全に分かれてしまって,今は独立の法人になっておりますけれども,それに近いような共同研究を可能にする組織です。他にはベルギーのIMECとかも念頭に置いてきました。最近の例では,ハーバードとMITがやっているブロードインスティチュートも,ちょっと近いような研究組織です。そういう外部組織の可能性を,研究開発の活性化とオープンイノベーションの拡大のために提案したということでございます。
同時に,この法案を作っているときにはそれほど意識はしませんでしたが,今日の提案にございますように,ひょっとすると共同研究以外のもの,教育などのノウハウも含めて,この出資の活動を広げていくべきではないかという声があるということは承知しております。しかしながら,国立大学に関する政策ということで言えば,我々CSTIの所掌を少し超えて,国立大学法人法の改正まで,行かないといけないかもしれない。しかし,それならむしろ政令的なもので対応していくべきだという形で,一応落ち着いたと思っております。
ただ,国立大学が出資を対外的にできるという道を開くということも,なかなか難しい問題がありまして,アメリカの大学でも,スタートアップ企業に資金を提供する道を開くべきだという議論も結構ありました。ちょうど大学の基金が非常に拡大化していくときに,多くのスタートアップ企業から,同じような形で大学から資金提供してくれないかという要望があったときに,1979年にこれは公共性の観念からはやるべきではないと判断した歴史があります。
なぜならば,大学は研究の内容に対して,インサイダーの情報を非常にたくさん持っているために,そこが潤沢になっていく大学の基金を使って,お金を提供していくことに対しては,非常に強い抵抗があったからです。今でも恐らくそうだと思います。その意味では,資金提供に関しては,スタンフォード大学においても,ベンチャーキャピタルを使おうという迂回的な方法を採用したという歴史があります。
その意味で,大学のお金を外部の機関に提供することに関しては,文科省が書いてくださっていますように,改めて公共性という観点から検討することが必要になってくるだろうと思っております。したがって,これについては今後,議論の展開を見ようという形で,我々の方では終わってございます。
同時に,先ほどの話とちょっと関係しますけれども,カリフォルニア州立大学もそうですが,いわゆるレイボードというのがあるんですね。スタンフォードもそうです。つまり,学外の全く,素人と訳していましたけど,むしろ市民層ですね。市民層の関わりによる大学の意思決定の道を,かなり広範囲に実は開いています。カリフォルニア大学の場合でも,オンラインで,年に4回ぐらいだったと思いますけれども,非常に広範囲の多様な市民も含めて,大学の意思決定に関して,声を拾い上げる機構ということを作っております。
その意味で,大学の公共性というのは極めて重要なイシューでありまして,とりわけ金銭にまつわるということで言えば,大きな利益相反の可能性を持っているということを考えておかなければいけない。
我々の方で出した提案の中には,飽くまでオープンイノベーション推進をしていくための資金出資という形で限定を掛けていて,これが更にどういう形で拡大していくかについては,今後の展開を待たなければいけないという形に,議論としては止めてございます。
その意味で,文科省に対する御批判が結構,先ほどの議論の中にもありましたけれども,文科省は,国立大学の1兆1,000億円の資金を持っているわけですし,また,私立大学に対する私学助成金も持っているわけですから,むしろ,一般の市民や国民の声を拾い上げるとともに,大学行政に対して,もう少しプロフェッショナルな分析に基づく行政を行う体制を作っていくべきだと思います。
その中で,例えばこういう出資を開いたときには,どのような公共性に対して問題があるのか,そのときにはどのような意思決定の構造を入れていったら,いい効果が生まれるのか,こういうことも含めて文科省の行政の中に,よりプロフェッショナルな視点を入れていき,そして,今の文科省の体制の中で,より国民の負託に対応できるような行政に変えていくべきだと思っております。その余地が随分あると思いますし,そのような体制を是非ともこの検討会の中で作っていきたいと思っております。
以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,冨山委員,お願いいたします。
【冨山委員】 ありがとうございます。簡単に。
ちょっと遡りますが,先ほどのステークホルダーとの関係の話なんですが,これも何人かの,今の上山先生の話もそうなんですけど,マルチステークホルダーであるということは,こんなもの公共財なんだから当たり前で,問題はそれをどう実現するかだと思います。
その観点で,要はマルチステークホルダーでスタンスを取るのは,難しさは,要するに,ぼんやりしていて訳が分からないので,結果的に,マルチ言いながら,日本の会社の場合もそうなんだけど,多くがサラリーマン共同体至上主義になっちゃったわけですよ。要は,閉じたガバナンスになっちゃったわけで,それをどう回避するかという意味合いで,今日のカリフォルニア大学の話はすごく参考になったと思うので,そういったスタンスをどう現実に作るか。
そういう意味で言っちゃうと,国もステークホルダーのワン・オブ・ゼムにすぎません,はっきり言って,マルチステークホルダーとしては。そう考えた方がいいと思います。
それから,二つ目の,さっきの経済諮問会議の話で,柳川先生が入っているのでちょっと言いにくいんですけど,私は,今回のポスト・コロナで地方大学はいよいよ本当に滅びると思います,ボーっとやってると。要するに,サイバー空間は集中化が進むんですよ。フィジカルには分散が起きるんです。ということは,座学の教育なんてサイバーでできちゃうわけだから,みんな,はっきり言って,東京大学の例えばAIを勉強したかったら,松尾先生のプログラムを見ればいいんですよ,日本中で。だから,別に和歌山大学独自でやる必要はないんです,はっきり言って。
そうなると,そのときに地方大学が本当は何するんですかという観点で議論しないと,リモート側とSTEAM側と書いてありますけど,あれすなわち,東京大学独り勝ちということです。五神さんがいるので言いにくいですけど,絶対そうなります。それは自然の流れで,世界で言うと,スタンフォード,ハーバードの独り勝ちです,これははっきり言って。これは小林さんが書かれている紙のとおりです。だから,この現実を踏まえてどうするかということを考えるべき。
それから,最後の出資の議論なんですが,私は東京大学の例のTLOにしても,UTECも,創業時からずっと現場で関わってきているので,この観点から一つ申し上げると,先ほどの上山先生の公共性の問題も一つ,すなわち利益相反性や学業,研究との両立あるいはシナジーをどう実現するか,それともう一つは,そもそも出資をする,投資をするという組織体としての組織能力の問題がすごくリアルにあります。
ベンチャー投資なんていうのは,民間がやっても難しい話なので,それを大学が直接,どうするんだという議論があって,実ははっきり,UTECの歴史も,東大TLOの歴史も,今,それなりに評価され実績も積みあがってきた東大の産学連携の歴史は,本当に苦難の歴史です。当初は何度も失敗しかかった歴史です。それを乗り越えて優秀なリーダーを得て今日に至っているので,制度的に緩和するということは,自律性という意味で言うと,できるものはやった方がいいと思いますが,要は,身の程を知ってやってもらわないと,日本全国,何個も大学があって,身の程を知らないやつがやったら絶対事故を起こすので,その観点をこの制度の中にどう盛り込むかということが私は大事だと思います。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,曄道委員,お願いいたします。
【曄道委員】 ありがとうございます。今,冨山委員がおっしゃった順番を,私も同じように考えていました。
社会のステークホルダーのことについて,要は,社会から信託を受けて,国立大学は運営をされているという形を取っているとすると,やはりそこで決められる中期目標とか事業計画といったものの管理が今,少し厳し過ぎるのではないかなと。
例えば,今回のコロナのような事態になったときに,先ほど五神先生なんかが御紹介されたような,非常に大きなかじの切り方というのがあるわけですから,それがタイムリーに行われるといったようなことについて,中期目標であるとか,そういったものの管理を誰がどこまでやるかといったようなこと,あるいは結果的に,成果に対して評価を誰がやるかということについて考えないと,ステークホルダーの意識というものは,非常に薄いままになってしまうのではないかなということが1点あります。
もう1点は,先ほどの国立大学法人で出資の対象のというところで,資料3-1の8ページにある論点ですけれども,指定国立大学のところに非常に自由度を生んで,今ここにおられる3学長も御提案されているような,いろいろな試みがなされるということは,私はどんどん進めるべきだと思うんですけれども,一方で,地方の国立大学と指定国立大学の中で,どんどん差が開いていくということについての懸念があるかなと。
そうなると,先ほどの論点の中にもあるように,例えば,ベンチャーに対する出資というものが,ほかの国立大学法人,もちろん公共性とか財務の健全性というものは,これは大学を運営する立場にそれぞれの法人があるわけですから,その中で大きくそれが損なわれるということは,むしろ経営の健全性がなされていないわけで,そういった自由度をほかの国立大学にも与えていかないと,さっき冨山委員がおっしゃったように,私は地方の国立大学の意義というものが,非常にこれからの時代は見えにくくなってきて,さらに,例えばベンチャーへの出資であるとかそういったことで,地方の中に何かを根づかせるといったような仕組みをもっと積極的に提供していかないと,国立大学法人全体のバランスというものが取れなくなって,社会から見たときに,どういう位置付けなのかといったような指摘が出てこようかなと思います。
それは,例えば地方の国立大学法人と公立の大学とのすみ分けというもの,要はその存在意義というものも,どう考えるかということも含めて考えていかないといけないかなと感じました。
以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,篠原委員,お願いいたします。
【篠原委員】 ありがとうございます。もう時間がないので,1分以内に,1点だけお話しいたします。
ステークホルダーの話がありましたけれども,様々なステークホルダーとの対話や,情報公開の更なる充実が必要なのではないかと思っています。例えば企業から見ると,アメリカの大学スコアカードのような情報が,他大学と比較できるような形で示されると,我々としても非常に有り難いと思っています。
先ほど冨山さんから,日本の企業はだらしないというお話がございましたけれども,近年,日本の企業も有価証券報告書や,投資家説明会,ホームページなど様々なツールを使って,対話を更によいものにしようとしています。さらに,情報公開の実効性を外部から評価するという仕組みもございます。
ですから,大学も各種ステークホルダーがあるということであれば,各種ステークホルダーとの対話ツールや対話の窓口の整備を一層行って活用していくということも必要ではないかと思っています。ある意味,大学間で,単に学問を競い合うだけではなくて,情報公開を競い合うということが,やはりステークホルダーに対する信頼を高めることにつながるのではないかと思っています。
以上でございます。
【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは,松尾委員,お願いいたします。
【松尾委員】 まず,講義,地方の大学の話で,先ほど冨山さんから強烈な御意見がありましたけれども,僕も同意しますが,僕はしようがないと。つまり,ある程度大学間で連携して,いい講義が残って,そうじゃないものは滅んでいくというのはしようがないと。一旦そういうふうになった後に,地方独自のものだとか,実際のものを動かさないといけないようなものだとか,そういったところに対しての創意工夫が出てくると思いますので,僕は大学間の連携というのは,オンラインになった期間に一気に進めていくべきだ,そのための単位互換の制度等は一気に進めていくべきではないかと思います。
それから,五神先生がおっしゃった,NIIを中核機関に引き上げるというのは僕も賛成でして,これだけ情報技術が重要になってきている中で,実際にその情報技術を使ったサービスを提供する部分が余りにも貧弱だと思いますので,NIIをしっかり強力にしていくということは重要だと思います。
それから,投資に関して,当然,案件の上流に行けば行くほど,リターンとしては大きくなるというのは当たり前で,そういう意味からすると,イノベーションが正に起こっている現場である大学というのは,非常にいいポジショニングにある。これは絶対に生かしていくべきだと。
従いまして,御提案のあった共同研究等の企画・あっせん等の事業とか,事業化に近い研究開発や試作等を行う事業,こういう出資も可とするべきだと思いますし,指定国立以外の国立大学法人がベンチャーに出資するというのも,どんどんやっていった方がいい。
ただし,デューデリジェンスとか,いろいろな管理に関してのノウハウがありますから,そこに関しては何らかの共有の枠組みを作らないと,UTECの苦労をほかの大学がもう一回やるというのは,余り意味がないと思いますので,何らかの共有の枠組みというのは使うべきだ。
それから,ノウハウを生かすことができる事業というのもやっぱり作られた方がよくて,AIの場合,知財がはっきりしていないケースがほとんどで,ノウハウですから,やっぱりそこというのは重要だと思います。
一番極端に言うと,僕は究極的には,いろいろな法人をたくさん作っていくよりは,大学法人と対になる持ち株会社のようなものを作って,そこで理念を共有して,大学との関係におけるガバナンスをしっかりした上で,持ち株会社の下で自由に活動してもらうべきではないかと。そのときにいろいろな形での出資もあってもいいと思いますし,大学のいろいろな活動に対してのサービスもあってもいい。そこに対して余り細かく言うべきではないんじゃないかというのは,究極的には思います。
以上です。
【金丸座長】 ありがとうございます。ちょっと時間も過ぎてしまいましたけれども,この辺で今日の会議を終了したいと思います。
本当に皆様,ありがとうございました。様々な論点について御議論いただきましたが,おおよその方向性が見えてきたのではないかと思ってございます。
つきましては,今回の事務局からの提案である「国立大学法人による外部組織への出資の対象範囲の拡大」の前半の部分,「提案」の研究成果の活用促進事業への出資拡大については,事務局において必要な諸手続を迅速に進めていただくとともに,後半の部分,「問題提起」がなされた,更なる出資拡大については,皆様からも様々な意見が出ましたので,引き続き,メリットやデメリット,費用対効果などを整理して検討していくという結論にしたいと考えますが,いかがでございましょうか。
よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは,時間の都合もありますので,本日の議論は以上とさせていただきたいと思います。
また引き続き,皆様から御意見が浮かんだら,都度,事務局にメールなりペーパーで提出をしていただきたいと思います。
それから,この会議に正式な提出資料として出したいという御意見については,今日の委員の皆様と同じような提出資料として提出いただければと存じます。
それでは,今後の日程等について,事務局から説明をお願いいたします。
【生田高等教育局視学官】 本日は,本当に活発に御議論をありがとうございました。
本日のウェブ会議の状況につきましては,後日,動画をホームページに掲載させていただきます。その際には事務局から,委員の先生方にも御連絡をさせていただきたいと思っております。
また,次回の第4回につきましては,日程としましては,予定どおり5月22日,金曜日,10時からを予定しております。状況によりまして,また同様,ウェブ会議方式の可能性が高いかと思いますけれども,また改めて,詳細は御連絡したいと思います。
以上でございます。ありがとうございます。
【金丸座長】 次回は,資料はやっぱり共有で見せていただいた方が有り難いのではないかと思いました。御検討いただきたいと思います。
【生田高等教育局視学官】 承知いたしました。
【金丸座長】 それでは,本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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