令和元年度国立大学法人会計基準等検討会議(第2回) 議事要旨

1.日時

令和2年2月6日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 中央合同庁舎第7号館東館3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 検討会の進め方等について
  2. 国立大学法人会計基準の改訂について
  3. その他

4.出席者

委員

樫谷隆夫主査、植草茂樹委員、江戸川泰路委員、加用利彦委員、佐藤誠二委員、椎名弘委員、野々村愼一委員、森公高委員
(有識者)木村彰吾名古屋大学理事・副学長

文部科学省

玉上大臣官房審議官、淵上国立大学法人支援課長、生田高等教育局視学官、上野国立大学法人支援課長補佐、川辺国立大学法人支援課専門官

オブザーバー

日本公認会計士協会

5.議事要旨

<今後の検討スケジュール(概要)について>
(事務局)
大学改革支援フォーラムPEAKSのもとに設置されている財務・経営ワーキングにおいて、今後、国立大学法人会計基準についても議論される予定となっている。この財務・経営ワーキングより提言された課題についても本検討会議で議論いただく予定である。また、国立大学法人会計基準の利用者である国立大学法人に対して「会計基準等に関するアンケート」を実施している。PEAKSの提言に加えて、可能な限り現場の意見を吸い上げて、本検討会議において議論いただき、その議論を踏まえて第4期中期目標期間に向けて会計基準の必要な見直しを行いたいと考えている。

(委員)
それではPEAKSや大学から提起された課題等について、本検討会議で議論させていただくこととしたい。

<一法人複数大学における財務諸表の開示について>

(委員)
前回、大学別の開示はセグメント情報でという議論であったが、一方で、それ以外にも附属明細書などで大学別の開示が必要な場面はあるのではないかと考えている。

(有識者)
財務諸表の附属明細書は各種評価で使用されるものも多いので、財務諸表のPL情報はセグメントで整理し、外部資金の受入なども附属明細書でもう少し詳細なものを出せるのではないかと思う。セグメント情報については、統合のメリットを活かして、法人に直接ぶら下がる研究所の設立なども考えられるが、そういったセグメントに対する戦略的な資源配分を可視化するためにも、独立して開示することは考えられる。

(オブザーバー)
附属明細書の開示については、情報開示が後退しないように実務指針で附属明細書の記載方法を示していくということになるかと思う。実務指針については、文部科学省と公認会計士協会で内容を詰めさせていただきたい。

(委員)
設置基準上の組織は大学毎に設置されるため、一法人一大学をベースに考えたらよいと思う。設置基準上にしても寄附金にしてもやはり大学という単位で組み立てられているので、それぞれの大学をセグメントとして、それを法人として取り纏めるという形がよいと思う。大学間の共同運用についても、共同教育過程などを準用していけばよいのではないか。

(委員)
法人統合した際のガバナンスがどうなるかが見えにくい。当面すぐにガバナンスが一本になるということは難しいのだろうが、将来的なところを含めて、各法人の判断になるのか。

(事務局)
一法人複数大学は、一本のガバナンスの下で運営することとなるが、教学の部分はそれぞれ大学の特徴をもって行うものであってよいと考えている。法人統合の内容によってバラエティが出てくると思うが、文部科学省としては法律に基づく理事の人数など以外のところで内容に制限をかけるということは考えていない。

(委員)
例えば、2つの企業がグループ経営であれば、連結のグループ開示が主体になっていて、個別企業の情報がないかといえば企業別や事業別の情報も持っている。ただ、それぞれの情報について、比較可能性や情報の利用者を考えて、どういった情報開示が必要かを考えている。おそらく企業が大学と個別に取引する際には、外部に公表されている情報だけでは不足しているが、その場合は個別に出してもらえばよい。全てを満たすというよりも統一的に必要な情報は何かという点を整理する必要があると思う。

(委員)
統合する法人によっても異なるだろうが、全部のセグメントを開示した場合、膨大な情報になってしまい、かえって外観性を損なう可能性もある。細かいところは、それぞれ個別に開示すればよく、決算書として何が求められるかということが重要。そのバランスを考えて今回の議論で整理できればよい。

(委員)
法人共通の取り扱いのところで、現在の様式例では最後となっている法人共通セグメントを最初にするかどうかという記載があるが、民間企業のセグメントでは共通は最後になるので、従来通り最後でよいと思う。

(委員)
法人共通に含める範囲については、会計基準で縛り付けてはいないが、比較可能性などを考えたときに、どういう整理をすれば一番法人の実態を生かしながら比較可能になるのかということも考えていかないといけない。ある程度の統一は必要だと思うが、統一した方が良いという部分と、裁量を残した方が良い部分はあるのか。

(事務局)
事務局としても法人共通の取扱いについては、何らかの指針は出した方が良いと考えているが、一法人複数大学だけの問題ではなく、全ての大学に対して示さなければいけないため、第4期に向けたセグメントの開示の在り方と併せて検討していきたい。

(委員)
大学からはセグメント情報は何のために作るのかということをよく聞かれる。実務指針上では、一番目に比較可能性の確保、二番目に学内資源配分の可視化の促進という観点で記載されている。この後の議題である情報の利用者の整理にもつながってくると思うが、この辺りもきちんとメッセージを発信しておかないと、各大学が混乱してしまっているように感じる。

(有識者)
国立大学協会にも「コストの見える化検討会」というものがあり、財務諸表を基に学部別セグメントのコストを出すことが試みられたが、大学としては国立大学協会の議論と本検討会議での議論を整合的に進めていただけると有難い。

(委員)
セグメント情報の位置づけを考えた場合に、民間であれば最大の目的は最後に出てくる損益を見て、どの部門が中核になっているとか、最近伸びているとか、そういうメッセージを発するものだと思うが、国立大学の場合は均衡会計で予算どおり執行すれば理論的には損益ゼロだという事だとすれば、経費の内訳だけ出せば足りるのではないかとも思う。

(委員)
今回のご意見を踏まえ、事務局にて課題を整理のうえ、次回の検討会議にて引き続き議論いただきたい。

<セグメント情報の開示について>
(委員)
大学におけるセグメント情報開示は、各大学工夫はされているが、企業と異なり単純ではないので分かりにくい部分がある。

(委員)
国立大学法人会計の建付けとして、学生納付金でも寄附金でもまず負債計上してから収益化していくこととなっている。なぜ一旦負債という形をとるのかというと義務を負うからである。ではこの義務を負うのは誰に対してかということを念頭に整理していけばよいのではないか。学生納付金であれば学生に、寄附金であれば寄附者に負っている。それ以外の間接経費や使途が特定されない運営費交付金は学内の意思決定で配分されるものであるため、配分されたところに付ける。もともとそういう会計の建付けになっているのだから単純に考えればよいと思う。

(委員)
色々なパターンが示されているが、自然に考えると、学生納付金や病院収入、自己収入などは獲得したセグメントに計上するという考え方が馴染むように思う。ただ、例えば学生納付金の獲得金額を下回る予算執行しかなされない部局があった場合、それをセグメント情報として開示するとなると抵抗感があるように思う。

(事務局)
実例としてあるかどうかは分からないが、実際には附属図書館や全学的な学生に要する経費もあったりするので、総合的に考えると下回ることはないと思われる。学生納付金のセグメント上の整理については、大学も悩んでいると聞いている。

(委員)
実態として学生納付金で儲かるという学部はないと思う。減価償却費だとか本部共通のような経費をどう負担させるかという問題になる。透明なキャッシュフローとして直接費だけを見ると、誤解を生む場合もあるかもしれないので、上手な説明をする必要がある。

(委員)
運営費交付金を使用セグメントに差額充当で計上している事例があるが、学生納付金等は獲得セグメントで計上しつつ、運営費交付金で差額をやりとりするということになると、学生納付金が当該部局の執行予算を越えた場合にはマイナスの収益が計上されるセグメントが出てくる可能性もある。それは見かけ上おかしいと思うので、こういった点についても議論が必要ではないか。

(委員)
運営費交付金と学生納付金が予算配分上、一体的にみられている部分を、法人全体でみるときに区分して開示することには意味があるが、セグメント別に考えたときには、その財源の色を無理に付けることで、かえってミスリードするという問題もある。本当にセグメント情報で必要となる区分なのかという点も議論すべきではないか。

(有識者)
大学での経営においては、財源がいくらあり、部局にいくら配分ができるかということが重要。大学全体のレピュテーションを上げるような部局には大学として戦略的に資源配分をしたいが、学生のいない研究所などでは赤字という見え方をしてしまう可能性もあり慎重にする必要がある。民間であれば赤字部門は廃止なども簡単にできるが、大学では赤字だからといって廃止にはできない。

(委員)
各大学にインタビューしたところ、セグメント情報の開示がかえってミスリードになるリスクを感じているようだった。例えば財務レポートなどで損益ベースではない方法で資源配分の可視化を進めるという方法もあるのではないかと思う。いずれにしても情報の利用者が誰なのかという点を整理してからでないと、統一的な基準を作るのは難しいと思う。

(委員)
例えば附属図書館などのコストセンターに対して、収益を貼りつけて計算することが合理的なのかという点も考える必要があると思う。国立大学のセグメント情報に赤字、黒字だという観点が本当に必要かという点についても、今回の大きな見直しの中で議論した方が良いと思う。

(委員)
学生納付金については、学生や保護者からどう見られるかという観点も必要。

(委員)
企業のセグメント情報の規格でいうと、通常は事業別にセグメント情報を出している。大学において、附属病院であれば病院事業として独立しているが、共同利用・共同研究拠点や附属学校のような教育研究事業の一部分を取り出して並列のセグメント情報として開示するような要請が実務指針で出されていることに違和感がある。教育研究事業を一本のセグメントとして、その内訳情報としてコスト情報を部局別に出すなど、大学として出しやすい情報開示の方法を検討してもらうとよいのではないか。

(オブザーバー)
法人化当初にセグメント情報として開示を求められたのは附属病院だけで、それ以外についてはほとんどの大学で全く情報を出していなかったので、今のような議論はしていなかった。求められる情報に対して、セグメント情報はどうあるべきか、誰に見せるべきか、全部セグメント情報で表すべきかということをまとめて整理する良いタイミングではないか。

(委員)
今回のご意見を踏まえ、事務局にて課題を整理のうえ、次回の検討会議にて引き続き議論いただきたい。

<ステークホルダーの整理について>
(委員)
本日は議論する時間がなかったため、決算書の利用者にとって共通的に必要な点について、次回の検討会議にて議論いただきたい。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課

(高等教育局国立大学法人支援課)