令和3年度国立大学法人会計基準等検討会議(第1回) 議事要旨

1.日時

令和3年5月24日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 中央合同庁舎7号館東館15階 15F1会議室 ※WEB会議

3.議題

  1. 国立大学法人会計基準の見直しについて
  2. その他

4.出席者

委員

樫谷隆夫主査、植草茂樹委員、江戸川泰路委員、加用利彦委員、椎名弘委員、野々村愼一委員
(有識者)木村彰吾名古屋大学理事・副学長

文部科学省

堀野国立大学法人支援課長、生田高等教育局視学官、星国立大学法人支援課課長補佐、川辺国立大学法人支援課専門官
 

オブザーバー

日本公認会計士協会
 

5.議事要旨

<議題 国立大学法人会計基準の見直し>

(主査)
まずは、国立大学法人会計基準の見直しのうち、財務報告に関する基本的な指針の中間まとめ(案)を議論いただきたい。

(事務局)
資料1に基づき、前回までの会議における意見を反映した財務報告に関する基本的な指針の中間まとめ(案)を説明。
 
(オブザーバー)
複数のページで使用されている「運営(経営)状況」の記載において、括弧書きで(経営)と付け加えている意図を教えてほしい。
また、BC2.10の記載で「安定的な教育的研究等(診療を含む。以下同じ)」とされているが、診療行為が大学にとって主要な事業であることは言うまでもなく、「教育研究等」には診療も含まれると思われる。さらに、診療以外にも国立大学法人が果たすべき事業があり、今後もそのような役割が増えるであろうことを考えると、ここだけ診療を含むと強調する必要はないのではないか。
 
(事務局)
国立大学法人の財務諸表は、財政状態及び運営状況を開示するものと、従来から会計基準、監査報告書や省令等で取り扱われてきた。ただ、第3期中期目標期間を迎えるにあたり、「国立大学経営力戦略」が打ち出され、また、戦略的経営の実現に向けた検討会議でも、国立大学法人に「経営を意識した運営」をしてほしいと、「経営」という言葉を前面に押し出している。
しかし、会計基準上の文言を「運営」から「経営」に変えるべきかについては、経営を意識した「運営」をしてほしいということであるから、会計基準上の文言は変更せず、経営も意識してもらえるよう「運営(経営)状況」という表現を、今回の基本的な指針で提案している。
2点目の「診療を含む」の部分については、会議で提案のあったとおり「患者」の文言をサービス受益者に加えるため、「教育研究等」の後ろに括弧書きの追記を提案している。「等」に含められるので不用ということであれば、削除したい。
 
(委員)
経営を意識した運営というのが根底にあるならば、最初に明確に「運営」を定義した上で、以下同文とすればよいのではないか。「運営(経営)」という文言を繰り返し目にすると、読み手としても経営と運営の違いは何かという疑問が生じてくる。表現を検討してもらいたい。
 
(事務局)
検討する。また、2点目について、大学の三つの柱は教育・研究・社会貢献とされており、診療については、概念上含まれていると考えられるが、言葉としては含まれていない。
 
(委員)
そうであれば、診療を含むと追記することでより表現が明確になると考えてよいのではないか。

(委員)
教育研究等という言葉は繰り返し使われているので、教育研究等の「等」が何を指すのか、最初に整理した方がよいのではないか。
 
(委員)
19、20ページについて、前回の議論のとおり、事業報告書は記載を簡略化しようという方向性だが、「持続的にサービスを提供するための源泉」については、独立行政法人ではページ数を割いて記載していると聞いている。例えば、校舎等の施設、実験機器等の設備など、具体的なイメージを教えてほしい。BC2.24を見ると、かなり細かい記載を想定しているような印象を受けた。
 
(事務局)
保有している個々の施設を記載するというよりも、総額としてこれだけの施設を保持して事業を実施しているといったイメージを考えていたが、あらためて整理したい。
 
(委員)
それであれば、BC2.24は省略して、BC2.23の方針で各大学に任せるのが良いのではないか。既に統合報告書でこのような事例を出している大学もある。
 
(有識者)
財務諸表の附属明細書でも、ソフトウェア等、かなり詳細に保有資産の記載をしているが、そちらで代替することも可能ではないか。
 
(主査)
BC2.24は省略し、財務諸表もしくは別の部分での記載する方向で検討する。今回頂いたご意見の中間まとめへの反映については主査一任とさせていただきたい。次に、セグメント情報の開示について、事務局より説明いただきたい。
 
(事務局)
資料2-1に基づき、セグメント情報の開示にかかる論点を説明。
 
(委員)
資料2-1の2ページに、「学部、研究科等の区分についても共通的な開示区分とすることとしたい」という記載がある。作成して文科省に提出する必要性は理解できるが、セグメント情報の注記として公表し、監査の対象とする必要があるかどうかは検討の余地があるのではないか。財務諸表とは別の内訳表として作成したり、それを事業報告書から参照したりする形が考えられる。
学校法人では、事業活動収支内訳表は作成して提出しているものの、必ずしも公表はされておらず、監査対象にもなっていない。また、海外においては、例えばカリフォルニア州立大学のセグメント情報では、デイビスとかアーバインといった学校別の内訳を出しており、メディカルセンターも別途、財務諸表を出しているが、学部別には分かれていない。イギリスのケンブリッジやオックスフォードは、英語圏では国公立という扱いだが、ケンブリッジはHigher Education Institution (HEI)、Assessment、Press、Endowment Fund (CUEF)、Trusts and otherという5セグメントである。オックスフォードはUniversity – AcademicとUniversity – Pressの2セグメントである。これらを踏まえると、セグメント情報の粒度についてはもっと粗くても良いと思われる。
学部別に分けること自体は、ニーズもあろうかと思うし、マネジメントアプローチとしてそうしたい大学はそうしても良いが、本資料にあるように共通的な開示区分として全て注記し監査もするとなると相当重いのではないか。
もう1点、計上セグメントについては、IPSAS 18の52項において、予算割当や予算配分によるセグメント収益は個別に報告しなければならないとなっている。日本で必ずしも当てはまるとは限らないが、これらも踏まえて折り合いをつけるといいのではないか。
 
(委員)
セグメントの粒度については難しい話で、細かく出した方がよい部分と、そうでない部分とがあるように思われる。また、監査上の問題への指摘についても、海外の事例ではそこまで細かく開示していないこともあり、方針次第でセグメント情報に対する会計監査の比重も大きく変わってきてしまう。
 
(有識者)
運営費交付金の成果による配分においては、学部別のセグメント情報を開示したかについて評価項目となっている。会計監査が間に合わないということで、財務レポートのように自発的な開示の形で開示したケースもあるので、どのような形であれ開示するインセンティブを設けて、開示方法については各大学の判断とするのでいいのではないか。部局毎のセグメント情報について全部を監査するとなると手間もかかるため、情報開示の費用対効果も見合いで考える必要がある。
 
(委員)
議論の発端として、統合イノベーション戦略や財政審から、成果の把握をしたいとの要望があるということだが、具体的な背景を共有できないか。
 
(事務局)
予算に関する議論の中で、運営費交付金が長期にわたって減額されたと文科省は主張する一方で、財務省としては、競争的研究費といった補助金の金額は増えており、大学に届いている金額はむしろ増えているはずだという主張である。それにもかかわらず、研究成果において論文数などの国際的な地位が日本は低下しており、投入したお金が大学の中でどう使われているかがブラックボックスとなっているので、有効に使われているか確認できないという観点から、学内のコスト構造の見える化を図るべきだという要請から生まれたという背景である。
 
(委員)
ディスクロージャーとして最低どこまで開示する必要があるかをまず議論しなければならないのではないか。大学では実際の管理としてより細かく行っているかもしれないが、全ての情報を出すとなると膨大な量のディスクロージャーをしなければならなくなるので、その加減をどうするべきか。基準として記載すべきかについても考える必要がある。
 
(事務局)
附属明細書のセグメント情報で開示を行うのであれば、もちろん監査対象となると考えていたが再度検討する。運営費交付金の成果配分の評価の対象となったことで、現在、事業報告書やホームページで開示している大学と、附属明細書のセグメント情報で開示している大学とがある。それ以外の開示していない大学からは、開示すべきであるなら基準等で定めるべきだという意見もある。
また、セグメント情報以外で開示してもよいと基準で定めた場合に、既にセグメント情報で開示している大学が、開示をやめられるのかという問題もあるので、再度整理して次回提示したい。
 
(委員)
例えば、東工大では部局数が現在31あり、ページ数でいうと財務レポートで4ページぐらいをセグメント情報の開示に使っている。ただ、ステークホルダーにとっては単に資料編という位置づけでしかなく、誰に向けてセグメント情報を開示しているかという点については、国向けということになってしまう。本表の財務諸表に入れると、監査コストも上がるため、どの程度手間をかけるべきかをしっかり考えたほうがよい。
 
(委員)
組織対組織の産学連携収入という項目の箇条書き部分は、直接経費の話だという理解である。複数部局に跨るような組織対組織の産学連携の場合は、それぞれその部局に配分された直接経費の予算分だけ収益計上されるということなのか。
 
(事務局)
実施セグメントで計上されることになる。ただ、細かい分担状況については、法人によって違うかもしれない。基本的には実施主体であるが、複数部局に跨る場合は各部局に予算配分された金額に従って計上することを考えている。
 
(委員)
本部で直接経費を使うケースも当然出てくると思われるが、その場合、本部に収益が計上されることには問題がないか。
 
(事務局)
あくまでもその実施主体で計上することを考えている。
 
(委員)
もう1点。間接経費について、こちらは収益に限った話にはなるが、運営費交付金や学生納付金では使用セグメント、獲得セグメントという言葉で整理しており、間接経費収入に関しては、使用セグメントではないという整理となっている。獲得セグメントの獲得の定義はどのようになるのか。例えば、間接経費を部局と本部とで50対50で按分するルールがある場合、この配分された金額が収益であり、部局が獲得した共同研究であっても、あくまでも間接経費に関しては部局と本部が50%ずつ獲得したと考えるということでいいのか。要するに、使用セグメントを把握しようとすると個々の間接経費がどれだけ使われたのか、紐づけて管理する必要があり、大変な作業となるため、あくまでも使用セグメントではなくて獲得セグメントであるという整理であり、獲得の概念を予算配分に基づくものとして整理したという考え方となるのか。
 
(事務局)
そのとおりである。
 
(委員)
言葉の使い方ではあるが、獲得セグメント、使用セグメントという言葉は共通的に使うべきではないか。獲得セグメントという概念としては、対外的な契約を締結する際の主体となる部局であるが、その収益を予算配分するといったルールがある場合には、配分された予算を獲得とみなすという整理として、「獲得」と「使用」とを会計上の論点で整理すべきだと思う。
 
(事務局)
今回の資料では、部局Aで100を計上するのではないということを示すため、このような表現としているが、「獲得」に関する注を入れるようにする。また、直接経費の記載部分で用いている「使用」という言葉に関しては、大学内で部局配分される場合に、「使用」と「獲得」という言葉のどちらに近いのか大学にヒアリングして整理したい。「使用」していること自体は間違いないが、意識的には、もしかすると「獲得」なのかもしれない。
 
(オブザーバー)
方針案の2ページに、「一定規模未満の部局については集約して開示することを認めてもいいのではないか」とされているが、民間企業でも量的基準等で重要性が乏しいものは開示しなくてもよいことになっているので、これ自体はぜひ認めてほしいと考えている。その際、基準がなければどこまで集約していいかわからないため、あわせて検討いただきたい。
 
(事務局)
一定の規模未満の部局を集約する場合の基準については、目安の基準を定めるつもりである。そもそも附属明細で必ず開示しなければならないのかという議論もあったが、附属明細での開示する場合には、実務指針で細かく定めがあるので、公認会計士協会にも相談したいと考えている。
 
(有識者)
各大学で予算配分、管理方法やセグメントに対して考え方の差異があるので、基本的な考え方を示すことは重要である。むしろ、大学としては学外への開示より、経営を踏まえた学内での調整が大変であり、一定の考え方を示してほしいという要望があるのだと思われる。
 
(主査)
用語の問題も含めて、次回、事務局より説明いただく方針としたい。それでは次に国立大学法人会計基準の改訂案について議論いただきたい。
 
(事務局)
資料の3に基づき改定案を説明。
 
(委員)
負債の名称において、繰延収益を使用するという提案は、非常によいと思っている。収益にいずれ振り替わる負債は全て繰延収益でよいのではないか。内訳については注記や附属明細に記載するが、大科目としては繰延収益とするとよいと考えている。スイス連邦工科大学のチューリッヒ校のIPSASベースの財務諸表でも「deferred income」となっていることから、国際的にも親和性が高いと思われる。

(事務局)
資産見返負債の名称は廃止したいと考えているが、補助金で固定資産を購入した場合の繰延部分を、預り補助金と同じ整理としてしまうと、固定資産の減価償却期間が長くなってしまうため、その部分は分ける必要があり今回の提案としている。勘定科目については再度検討したい。
 
(オブザーバー)
7ページにおける会計上の財産的基礎について、「独法においては業務に関連して発生した剰余金についても記載しているが、資本取引と損益取引の区分の記載があれば必要ないのではないか」と備考があるが、独法と違う取り扱いとすることの意図を教えてほしい。また、9ページで利益の定義という項目を新たに設けているが、独立行政法人会計基準の方では、注解が2つほど付されていた一方で、国立大学法人会計基準では注解を入れていない理由もあれば教えてほしい。
最後に、業務実施コスト計算書に関連する文章を全て注記に移したため、分量が多くなってしまった印象。その部分を簡略化する、もしくは注記の詳細を例えば実務指針に振るといった方法もあるのではないかと思っている。
 
(事務局)
会計上の財産的基礎について、内容として備考に書いてあるとおりだが、資本取引と損益取引の区別についての記載があれば、重複感もあるため必要ないのではないかと考えて外している。利益の定義の注解についても、ある程度は基本的な指針に書いてあり、また、IFRSなどの定義を見ても、どのような性質のものが計上されるかまでは記載がないこともあり、基準の注解にあえて書かなくてもいいのではと考えて外しているが意見をいただきたい。
 
(オブザーバー)
独法でも同じような重複感はあると思うが、独法側で記載をしている意図がないかを総務省に確認した方がよいのではないか。その上で、国立大学法人ではその意図に照らさなくてよいのであれば、基準や注解のボリューム感も考えて、記載を少なくしても良いと思う。
 
(有識者)
寄附金の扱いについて、寄附金債務という勘定ですべて整理されているが、寄附者からすると寄附したものが債務となるのかという印象があるはず。また、現在、多くの大学が運用益で様々な事業を行うため、エンダウメント型の寄附を一生懸命集めようとしている。内閣府でも税制を改正してまで応援している案件だが、エンダウメントを集めるほど、寄附金債務として負債が増え、見た目としては自己資本比率が悪くなってしまう。寄附金債務を寄附者に魅力的な言葉に変え、財務基盤の強化という点からもエンダウメントは負債ではない形で処理するといった扱いも、長期的に検討いただきたい。
 
(事務局)
エンダウメントについては、長期的な課題として検討していく。名称も何かよい案があれば提案いただきたい。
 
(委員)
過去の議論との整合性についての確認だが、36ページで、科研費の直接経費相当額のうち、当期支出額と損益計算書の研究経費の合計額を注記するとの提案について、大学の要望は、大学の規模感を表すことがメインテーマだったかと思うので、研究経費の支出だけを表すのは物足りない感じがある。また、過去の財源の内部留保に関する議論で、預金の特定化という話があったが、今回は特にそのような記述がないので、この辺りをどのように整理したか教えてほしい。
もう一点、負債の名称について、授業料債務は国立大学において最終的にはゼロとなり、財務諸表に表れてこないので、議論の対象とする必要があるのかも確認したい。
 
(事務局)
科研費の直接経費について、以前改訂案として提示した際には、使用額と同額を収益額に計上する形で提案していたので、過去の議論と異なるものを提示したという認識はないが、受入額も注記するべきということであれば、さらに検討する。
資産の特定化については、勘定科目の話なので、実務指針で対応できると考えている。関係省庁との調整が済んでいないため、現時点では実務指針での改訂をイメージしているが、基準にも入れた方がいいのであれば、次の改訂に入れ込むことを考えている。
授業料債務については、最終的にゼロとなることもあり、わざわざ勘定科目を変えなくてもいいという認識である。ただ、今後も必ずゼロとなるかは不透明であり、様式から消さなければならない理由もないため記載はする予定である。
 
(委員)
科研費の話だが、収入と支出で差はあるのか。
 
(事務局)
繰越も認められているので、差はある。研究規模を示すという意味では、研究に使用した額を示し、受入額については附属明細書に従来から注記があるので、そちらを見ていただくことを考えていたが、意見を踏まえて再検討する。
本日の会議は以上である。
 

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(高等教育局国立大学法人支援課)