国立大学法人会計基準等検討会議(第10回) 議事要旨

1.日時

令和3年3月30日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 中央合同庁舎7号館東館17階 17F1会議室 ※WEB会議

3.議題

  1. 国立大学法人会計基準の見直しについて
  2. その他

4.出席者

委員

樫谷隆夫主査、植草茂樹委員、江戸川泰路委員、加用利彦委員、椎名弘委員、野々村愼一委員、水田委員
(有識者)木村彰吾名古屋大学理事・副学長

文部科学省

川中大臣官房審議官、堀野国立大学法人支援課長、生田高等教育局視学官、上野国立大学法人支援課課長補佐、川辺国立大学法人支援課専門官
 

オブザーバー

日本公認会計士協会
 

5.議事要旨

<議題 国立大学法人会計基準の見直し>

(主査)
まずは議題1、国立大学法人会計基準の見直しのうち、財務報告に関する基本的な指針と中間まとめ案について議論いただき、その後、セグメント情報の開示について議論いただきたい。

(事務局)
資料1に基づき、前回までの会議における意見を反映した財務報告に関する基本的な指針の中間まとめ案を説明。
 
(委員)
事業報告書に関して、サービス提供のための源泉やリスク開示を事業報告書にて行うことを念頭に置いた説明であったが、一方で、事業報告書を簡略化することが提案されている。簡略化と記述の追加という部分との整合について質問したい。
 
(事務局)
簡略化しつつも必要な情報は記載するということで考えている。事業報告書において実績報告書のように業務の実施状況を長文で記載している大学もあり、こうした部分は簡略化していきたい一方で、リスク情報等については、必要かどうか委員にご意見をいただきながら追加するかを検討することを考えている。
 
(有識者)
経営努力部分の記述について、議論の経緯を知らない大学関係者が記述を読んだ際に、別の捉え方をする可能性もあるので、丁寧に記述してほしい。利益を出すことが経営努力ではないので、書き方については工夫した方がよいのではないか。
 
(事務局)
検討する。
 
(主査)
本日の議論を踏まえて修正した基本的な指針の中間取りまとめ案を、後日、事務局よりメール送付する。意見の中間まとめへの反映については、主査に一任いただきたい。
それでは、セグメント情報の開示の議題に移る。
 
(事務局)
資料2に基づき、セグメント情報の開示に係る論点を説明。
 
(委員)
収益に関しては獲得セグメントに計上という整理となるのか確認したい。事例としては使用セグメントに間接経費が計上されているケースもあると思うが、この部分について結論が書かれていないので、事務局の考えを確認したい。
また、外部資金、特に間接経費の取扱いに関して、収益だけでなく費用についても検討が必要だと考えている。共同研究経費などは、予算上の運用も様々なパターンがあるが、収益が獲得セグメントに計上されている場合、それに連動して費用も獲得セグメントに計上されている大学もあれば、使用セグメントに計上している大学もある。予算管理の面でも、競争的資金の間接経費については使途に制約があるため、民間企業から受けた間接経費と財源別に使途を管理していると思われる。また、例えば、民間企業から受けた間接経費に関して、単純に大学の利益であると考えて、予算管理の紐づけをしない処理をした場合に、結果的に使用セグメントへの紐づけが難しくなることも考えられる。外部資金に係る費用の計上についても何らかの考え方を整理し示しておく必要があると思われるので、検討いただきたい。
 
(事務局)
外部資金については基本的に獲得セグメントと考えているが、例えば、間接経費に係る本部と部局間の取扱も大学によって異なることもあり、費用の取扱も含めて、次回の会議にてもう一度整理してご意見をいただきたい。
 
(委員)
間接経費に関しては、予算上の運用も大学によって差があり、民間企業から受けた間接経費と競争的資金に係る間接経費とでは予算上の縛りが全く異なるので、本部・部局の区分だけでなく、予算上の運用の違いも各大学で存在する。結果的にセグメント情報が、これらの違いに連動して現状は開示されていると考えられ、大学間で比較可能性が乏しいこの部分を改善するのは重要なポイントだと考えている。
 
(委員)
産学連携の関係で、東京大学がダイキンやソフトバンクなどと10年で数百億円規模の組織対組織の産学連携を行っているが、学長を中心に獲得した外部資金はどのセグメントに計上されるべきなのか。法人共通なのか、もしくは振り分けられた金額の獲得セグメントになるのかについても同時に検討いただきたい。
 
(事務局)
法人共通に計上するという考え方もあるが、その後に様々な部局に資金が流れることを考えて、部局ごとにセグメントを分けるという考え方もあると思われる。こちらも次回にご検討いただきたい。逆に何か提案などはないか。
 
(委員)
東京大学はじめ名古屋大学などでも組織対組織の産学連携を懸命にアピールしているにもかかわらず、セグメント上では法人共通ではなく部局に分けるというのは実態としてどうなのか。見え方として、組織全体で獲得したということが分かる形とすべきではないか。
 
(有識者)
大型の組織対組織の産学連携については産学連携に係る本部組織がハンドリングし、部局に資金を配分することになると思われる。
部局への配分についてはインセンティブとしての意味合いを持つので、全額法人本部の収入とするのは個々の研究者にとって納得のいくものではなく、このバランスについては大学によって事情が異なるのではないか。この部分をセグメントに適切に反映できるかについては、大学の間接経費に対する考え方にもよるので、セグメント情報だけでなく統合報告書などで考え方を示すと良いのではと考えている。
運営費交付金や学生納付金についても一度本部にまとめて計上して、それらをどのように配分すると大学の機能強化に資するのかという経営的な判断をしており、その上で、何らかの方法で収益を分ける必要があるという面は否定しないが、収益の配賦方法については、統一的な基準に則り行うとの整理でも良いのではないかと考えている。
また、受験生などは、収益よりむしろ費用に関心があるのではないか。
 
(委員)
大学本部の位置付けはマネジメント部署としての整理もある一方で、獲得そのものを業務としている大学もあり、実態を踏まえる必要がある。
 
(事務局)
いずれにしても外部資金、特に間接経費の扱いについては各大学の状況も踏まえながら、次回またご議論いただきたい。
 
(委員)
国大協が「国立大学法人におけるコストの「見える化」検討について(最終まとめ)」を公表したが、各大学がセグメント情報を作成しコストの見える化を進めていて、様々な部局別のコスト情報が様々な形で出てきているが、整合性や統一性についてどのように考えているか。
 
(有識者)
国大協での議論は、既存の財務諸表で得られる教育経費と研究経費には教職員の人件費や諸管理経費が含まれていないので、これらを教育経費と研究経費に振り分ける方向で進めていた。
ただ、教育経費と研究経費に分けるという話だと、例えば、学生がいない部局についてはコストセンターにしかならないという議論や、積極的に外部資金を取っているところはプロフィットセンターでいいのではないかという議論もあり、踏み込んだ議論はしなかった。
 
(委員)
コスト情報が重要だというのは共通の理解だと思われるが、成果の把握を収益ベースで行うのは難しい部分であり、もし仮にセグメント情報を全部局において統一的に作成するということであれば、先ほど議論があった資料1の中間まとめでセグメント情報の記述がなかったので、この部分について事務局に意見をいただきたい。
 
(事務局)
現時点でセグメント情報について細かく記載することは考えていなかったが、例えば、国立大学を取り巻く状況の部分で、そのような情報に対するニーズや提言について記載した方が良いかどうかは、引き続き検討する。
 
(有識者)
例えば、一法人複数大学については、まず大学ごとにセグメントを設置し、さらに各大学の部局をセグメントに分けるという考え方になるのか。
 
(事務局)
一法人複数大学においても法人共通のような組織ができる可能性もあるので、必ずしも大学ごとに分かれないセグメントができることもあると考えている。
 
(オブザーバー)
監査については、まだ方向性を定める段階であり、もう少し詳細が決まったところで監査可能性も踏まえながらコメントできればと考えている。
 
(委員)
マネジメント・アプローチ自体は各大学の判断によるので、整理について基準を定めてほしいという大学の意見に寄り添いつつも、独自の道を行く大学には原則から外れた場合に注釈を付すことにより、幅を持たせながら進めていきたいという考えになるのか。
 
(事務局)
大学で予算が何に使われたのかが分からないといった意見も多い中で、比較可能性を確保するということが重要な観点の一つではあるので、基本的な基準を設けて比較可能性の観点で一定の統一を行いつつ、各大学のマネジメントの部分については、幅を持たせたいとも考えている。
 
(委員)
例えば企業では、常に全てのコストを配賦するわけではなく、運営面でも違いがある。企業の尺度自体は各々の考え方があり、ゆえにマネジメント・アプローチになっているので、そのような部分が説明できるよう幅があっていいのではと思っている。
 
(主査)
次回までには結論が得られるように進めていく。それでは、事業報告書について議論いただきたい。
 
(事務局)
資料3に基づき、事業報告書の見直しに係る論点を説明。
 
(主査)
事業報告書を何のために作成するのかについて、財務情報と非財務情報を組み合わせて法人全体の概況、あるいは、部局の概況をしっかり説明できることが大事だと思っている。
 
(委員)
事業報告書の簡素化に賛成する。事業報告書に財務情報の記載が相対的に多いとのことなので、一部の項目について附属明細書に移行することは良いと思う。財務諸表を要約して載せている部分は一般の事業会社や株式会社の事業報告書と比べると大きく異なるところである。有価証券報告書のハイライト情報などもあるので、主要の財務指標を書き抜くのはいいと思うが、財務諸表をそのまま要約して載せれば見やすいというわけではない。財務諸表と事業報告書の財務諸表の概況分析を見比べるというような使い方をするのであれば、必ずしも事業報告書の中に要約した財務諸表を丸ごと乗せる必要はないと考えている。
 
(委員)
簡素化は非常に大事だが、単純にページ数を少なくしても意味はなく、どの観点から簡素化したものがより有用か考える必要がある。細かい部分については、実績報告書もあるのでそれぞれが関心ある部分を見られればよく、独法で議論した際にも、情報へのアクセスについて、詳細を知りたい場合にどうすればよいかが掲載されていれば、全ての情報を事業報告書に詰め込む必要はないのではないかとの議論であった。
 
(委員)
先進的な企業ではディスクロージャーポリシーを定めているところが多く、様々なステークホルダーを想定したうえで、そのアプローチに対して戦略的な整理をしている。紙媒体に限らずホームページの活用や、日本語と英語で同じ情報を開示するということをしている。最近では、これに統合報告書作成の流れが加わっており、よりビジュアルな表現や、会社の成長ストーリーから説明した方が理解しやすい側面もあり、これら開示の使い分けを上手く整理しているのが、最前線の方たちの動きなのだと思っている。
もし国立大学法人について、法令上の決算報告書や事業報告書の記載内容を改正できるのであれば、実務サイドとしては、事業報告書の簡素化が、統合報告書の作成などに資源を振り向けられることになり、非常にいい取組になると思われる。
 
(有識者)
実務の観点からすると、事業報告書の軽量化により大学の負担は相当軽減できる。例えば、補助金を獲得する際の説明資料などに非常に見やすいものも多く、そういうようなものを大学としてパッケージ化し、ステークホルダーごとに説明するのが、より大学が伝えたいことを伝えられるのではないか。
 
(主査)
次に、決算報告書の記載事項等について議論いただきたい。
 
(事務局)
資料4に基づき、決算報告書の見直しに係る論点を説明。
 
(委員)
決算報告書の計上基準については、会計監査の対象にもなっているため、監査上統一した方がいいとは考えられるが、監査可能性については会計士協会とも調整が必要ではないか。
科研費についてはあくまでも予算の報告書ということになるので、損益計算書と取扱いが異なるということに問題ないと考えている。

(オブザーバー)
事業報告書や決算報告書については、財務諸表に対する意見表明とは監査報告の内容が異なるところがある。
ただ、当然ながら法律で対象となっている以上は監査をするということになるが、様式と限られたQAがあるだけの現状で、どこまで統一化するかというのは、決算報告書がそもそもどのような位置付けなのかについても考える必要があると思われる。
 
(委員)
決算報告書を何のために作成するのか、誰が何のために使用しているのかについては曖昧な部分があるが、ステークホルダーに説明が果たせる計算書類にすべきではないか。
例えば、前期の繰越額を当期の収入に含めるかどうかは、繰越額という欄を作れば統一できると思われる。また、科研費の間接経費の収入についても独立項目にすれば統一できる。この部分については事務局も含めて協力いただきたい。
また、法人法改正により年度計画が廃止されることになるが、その場合の取扱についても整理が必要ではないか。
 
(委員)
決算報告書は、準用通則法で財務諸表の添付書類として必要ということもあり、また、IPSAS国際公会計基準では、予算情報と財務諸表の比較が求められている。財務諸表の一部として必要な開示であり、監査を受ける法人であれば監査対象にもなる。科目表示の方法については、IPSAS24「財務諸表における予算情報の表示」を良く読んでいないのでわからないが、セグメントのマネジメント・アプローチのように各作成法人の創意工夫がより認められる方向か、それとも、ある程度定型の決め方をしているのか、参考にしたら良いのではないか。
 
(有識者)
決算報告書の有用性はこれからの議論ではあるが、例えば、収入の部は一年間で大学が使えるリソースという位置付けになり、これを人件費や各部局に予算として配分する作業が大学の中の一連のプロセスとしてあるので、学内の予算編成する際には非常に有用性が高いという認識である。むしろ学内の予算編成の際に、民間企業のように予算PL、BSを作成しないため、決算報告の情報で学内予算配分をしているというのが現実としてあるのではないか。
 
(事務局)
決算報告書の統一については、各大学にどのような影響があるのか確認する必要があるので、いくつかの大学に確認した上で次回以降報告したい。今年の12月ぐらいまでには決めたいと考えている。
 
(主査)
それでは、議題3の会計監査人の監査に関する報告書について議論いただきたい。
 
(事務局)
資料5に基づき、会計監査人の監査に関する報告書に係る論点を説明。
 
(オブザーバー)
基本的な内容は問題ないが、細かい点も確認したい。字句修正に絡む部分になると思うが、別途相談の上、細かいところは一任という形で対応させていただきたい。
 
(主査)
本日用意した議事は以上だが、そのほかに何か意見があれば。
 
(委員)
参考資料3に、これまで議論したことを踏まえた会計基準改訂等の方向性が示されているが、科研費に係る対応の方向性にフルコストを開示したいという大学からの要望によって、「フルコストが見えるようにする」という記述がある。科研費に関して大学の負担しているコストであるという前提での記述になっているが、ニュアンスに違和感がある。科研費を含めた財政規模が見えるようにするという議論であったと思うので、表現について留意いただきたい。
 
(事務局)
修文の上、次回、参考で提示させていただく。
 
(事務局)
本日議論いただいた基本的な指針の中間まとめは、頂いたご意見を踏まえながら座長一任で進められると思うが、セグメント情報の開示の在り方や、外部資金由来の間接経費、事業報告書と決算報告書についても、そもそも誰にどのような情報を見せるべきかを踏まえて全体感を出す一方で、大学側の作業軽減についても、検討する必要があるという積み残しがある。これから引き続き検討をさせていただきたいが、我々としてはあと一年で全ての結論を出したいと考えている。
 
(委員)
会計基準については各大学の準備と会計士協会の実務指針など、いろいろと考えなければならないことがある。事業報告書などの計画書は12月とのことだが、会計基準の本体は、各関係省庁との協議が必要だと思われるので、その辺も踏まえた時期の目標を教えていただきたい。
 
(事務局)
6月を目途に考えている。各法人で決算作業があると思うので、決算期明けには方針等が大学に示せるようにしたいが、今後の進め方についてはまたご相談させていただきたい。
 
本日の議事は以上である。
 

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高等教育局国立大学法人支援課

(高等教育局国立大学法人支援課)