国立大学法人会計基準等検討会議(第9回) 議事要旨

1.日時

令和3年3月1日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 中央合同庁舎7号館東館13階 13F3会議室 ※WEB会議

3.議題

  1. 国立大学法人会計基準の見直しについて
  2. その他

4.出席者

委員

樫谷隆夫主査、植草茂樹委員、江戸川泰路委員、加用利彦委員、椎名弘委員、野々村愼一委員
(有識者)木村彰吾名古屋大学理事・副学長

文部科学省

   川中大臣官房審議官、堀野国立大学法人支援課長、生田高等教育局視学官、上野国立大学法人支援課課長補佐、川辺国立大学法人支援課専門官
 

オブザーバー

   日本公認会計士協会
 

5.議事要旨

<議題 国立大学法人会計基準の見直し>

(主査)
本日は、前回に引き続き、損益外情報の表示方法について議論いただきたい。その後、国立大学法人の財務報告に関する基本的な指針(骨子)(案)と、企業会計基準等の改訂への対応案について、議論いただきたい。

(事務局)
資料1他に基づき、損益外コストを損益計算書の欄外注記に表示する方法(以下「案1」という。)、損益外コストの増減を本表の当期総利益の前に表示する方法(以下「案2」という。)及び、経常費用に損益外コストを含めて表示し、経常利益の前に減額調整を行う方法(以下「案3」という。)等を説明。
また、案1の注記の表示方法について、当期総利益に損益計算書に含まれない減価償却費等を加算する表示方法(以下「注記案1」という)、損益計算書と国からの出資資産等に係るコストを表形式でそれぞれ表示する方法(以下「注記案2」という)を説明。

(委員)
その他行政コストの部分を、案1のように脚注でなく、案2のように横罫線で区切ることもせず、損益計算書の下部に一体的に表示するのが良いと考える。そのような考え方に基づき、机上資料2を提案したい。

(オブザーバー)
今回の3案について、それぞれ会計理論的に説明可能なものかどうかという観点で考えないといけない。案1の注記に関しては、必要なものを開示するという整理なので、特段問題はないと思っているが、例えば、案2や案3のような形で、損益計算書本表の中に入れ込むとすれば、それがどのような概念を持つのか、どのように整理すればいいのかを考えないといけない。
今回の見直しのきっかけを踏まえると、産業界からの分かりやすさ、国と法人の責任の明確化といった観点から検討するのは当然だと思うが、出来上がったものに対して会計的にどのような整理かと考えた時に、今回提示のあった机上資料2であれば、一定の説明が可能なのではないか。経営努力認定の利益を出すための調整項目と考えられる損益外コストの増減を、目的積立金取崩額と同列に扱い同様の場所で表示している点からも、そのように考える。

(有識者)
整理としては理解できたので、案1の方が良いと思う。
別の観点となるが、大学の立場として、施設整備の扱いについて気になる部分がある。国の責任ということが論点になっていると思うが、大学が自ら教育研究をより良くするために、自己責任で投資をした施設設備について減価償却費が計上されることは、自分たちの経営責任だと認識できると思う。一方、国からの支援が十分にされないので、やむを得ず老朽改修等を行うというケースもあり、損益計算書上ではそうした経営判断の切り分けがうまく見えないような気もしたので、その辺りの工夫があれば良いと考える。

(主査)
国と法人の責任の明確化、産業界からの分かりやすさ、フルコストの開示の3つの観点から議論いただいたが、主査として、案1に決めさせていただきたいと思っている。
基本的に企業会計で全ての費用をPLに含めるのは、全ての費用に対して経営者が責任を負うからであり、パブリックセクターは必ずしもそうではない。国立大学法人の学長のマネジメント能力を測定するという意味では、今までの建付けが良いのではと思う。
当然、企業の経営者の理解も重要だという意見については同感であるが、現行の会計の仕組みの中で裁量が働くのは脚注と考えている。脚注では様々な情報を開示することができ、損益計算書と併せて判断するという建付けになっており、企業会計並みで計算すると収益がどうなるのかというのも表示できると考えている。また、注記の様式について、注記案1と注記案2を資料で提示しているが、注記案2は注記なのか本体なのかわからなくなり、少し注記として重すぎると考えるので、注記案1をベースにしたい。私の考えについて、意見等あれば遠慮なく発言していただきたい。

(委員)
戦略的経営実現会議から、産業界からも分かりやすい財務諸表、大学が独立経営体を目指すインセンティブ付けになるように、これが恐らく国と法人の責任の明確化ということだと思うが、この2点が要請されていたと考えている。
財務諸表の分かりにくさという点では、企業会計と異なる特殊処理のこと全てを指しているのだと思うが、これは今後、見る側にも知識が得られるような形で補足をしていくことが必要になるのではないかと考えている。
その上で確認だが、表示される利益の意味について、恐らく国と大学の責任を明確にして、大学の努力をいかに表示するかがポイントになっているものと考えるが、今回の改訂により損益計算書から出てくる利益は法人の運営努力による成果であり、一方で注記で表される利益は、大学の経営実態を示すものになるという理解で良いか。

(主査)
現在も損益計算書は経営者の努力を表示するものという制度設計になっている。

(委員)
産業界から分かりやすい財務諸表のための改正ということであれば、損益外処理と資産見返を無くすといのが大きな目玉だと思う。そういう意味では案3のまず企業会計で数字を出して、特殊な処理をその後に調整するということが分かりやすいのでないかと考えているが、国立大学法人の損益計算書には法人の責任に帰する費用のみを計上するという考え方があるということだと思うので、現時点においては、注記で示すという案1の方法しか、選択肢としてはないということで納得した。一方で、損益外が残り、資産見返のみ廃止される今回の改正について、利益概念がこれまでよりも分かりにくくなってしまうのでないかという疑問は残る。現状の国立大学法人の損益計算書の費用の概念を考えると、法人の責任外とされるコストを費用に織り込むことができなかったという改正の経緯について、きちんと説明されることを求めたい。

(主査)
資産見返の廃止は、中長期的に見れば影響はそこまで大きくないと考えているが、期間ごとに見た経営努力という意味では、経営者の努力を測定しない方向に動いているという議論になる可能性もあるので、何らかの形で説明していく必要があると考えている。他に意見があればお願いしたい。

(主査)
ないようなので、案1・注記案1とさせていただく。
続いて、国立大学法人の財務報告に関する基本的な指針(骨子)(案)について、議論いただきたい。

(委員)
損益計算書の費用、収益という現行の順番を、収益、費用という順番に変更してはどうかということと、科研費について、損益計算書に入れられないのであれば、決算報告書に含めて開示してはどうかという2点を提案したい。

(有識者)
大学の予算編成のスキームとしては、使えるお金が幾らあってというのが先に立つので収益、費用という順番になる。一方で、コストがあり足りない部分をどう賄うのかということだと、費用、収益の順ということになるので、ここは制度上の問題と大学の資金繰り、財務の実態とのすり合わせの中で決めていただいても良いものと認識している。

(委員)
国際公会計基準IPSAS第1号第102項で、財務業績計算書上に表示すべき情報として列記されている順序では収益が先である。私立大学や海外大学と比較する場合、収益が上、費用が下の方が見やすいのではないか。

(主査)
パブリックセクターとしては、政策目的があって、それを達成するためにコストがあって、コストを賄うために収益があるという整理をしている。国立大学もパブリックセクターであることは違わないが、稼ぐことなども求められており、民間企業に寄っていくという意味では、その通りだと考える。一方で国立大学全体を見たときに、民間並みの努力ができるところとそうでないところとの2種類あると思える。後者のような大学にある程度は合わせないといけないとも考える。ただ様々な解釈があると思うので、これはまた今度議論していけば良いと思う。

(主査)
それでは、次の国立大学法人の財務報告に関する基本的な方針の骨子案に入らせていただきたい。

(事務局)
資料2に基づき説明。

(委員)
「財務報告利用者及び財務報告の目的」のところは、単に財務報告ではなくて、IPSASのように一般目的の財務報告、いわゆるGPFRと位置付けることを提言したい。IPSASではGPFRの主要な利用者は「サービス受領者」「資源提供者」「それらの代表者」とされている。つまり、外部評価・監督者や法人内部利用者は含まれない。外部評価・監督者や法人内部利用者は、自らの情報ニーズに応じて、必要に応じて追加の情報を容易に取れる立場にあるため、主たる利用者ではない。
理想的には、財務報告の目的は一般目的の財務報告として、サービス受益者と資金提供者を主たる利用者とし、それ以外はその他の利用者というように、利用者に軽重をつけたほうがいいと思う。

(有識者)
収益の定義のところで、教育研究の実施、財貨の引き渡し、その他と、要するにサービスを提供した対価と呼べるものが挙げられているが、研究論文とか研究成果を社会に公表しても直接的な収入はもらっておらず、まさに公共財であるという認識。教育研究を行ってもあまり収益が出ない収益費用の構造となっている点は、誤解がないようにしたいという点は大学の現場からの感想。

(委員)
資金提供者のところで提案だが、これから寄附を集める大学というのも、政策課題として重要と考えている。私学でも、基本金みたいな形でやっているが、将来の寄附目的というか、基金の目的の明示を考えていく中で、どういう方向に大学が向かっていって、それに対して寄附者はどのように貢献していくのかというところも、財務諸表でどこまで表すか、事業報告書なり、統合報告書なりいろいろあるため、ここに要素として入れていただけると有難い。また、潜在的寄附者、これから寄附しようとしている方に対して、何らかの情報を提供するということも重要だと思っている。

(有識者)
ファンドレイジングの中で、独立系ファイナンシャルアドバイザーの方に財務諸表を見せたところ、そんなに資産も利益もあるのに寄附をするのはどうかという話で、立ち消えになったことがあった。大学の実態ともう少しあった財務諸表だと有難い。
それから、寄附は財務諸表上ではすべて寄附金債務になってしまうので、別途、何にどう使用したかといった、基金だけの独立した会計報告を作ってお渡ししている。

(オブザーバー)
資料2「財務報告利用者および財務報告の目的」で、資金提供者としての寄付者に、どんな情報ニーズがあるかが記載されているが、財務報告、財務諸表だけで寄附者の意図したとおり支出されているかは、説明できないだろう。個別の寄附者ごとに財務報告を作るというのは、難しいのではないかと考えると、改めて記載ぶりを考えた方が良い。
また、「本指針の性格と取り扱い」という項目の中に、「本指針は会計基準ではなく、会計基準に優先するものではない」という一文がある。もともと、この基本的な指針というのは、会計基準をつくるにあたっての概念を定めるもので、この指針の考えを踏まえて会計基準を作成するものだと思っているが、「会計基準に優先するものではない」という表現だと、指針はなくてもいいのではないかといった印象を与えるので検討いただきたい。
なお、この先に結論の背景といった文章が盛り込まれて完成するものだと考えているが、次回の検討会議のときに文章が出てくるとイメージして良いか。

(事務局)
次の中間まとめ案のときに、考え方等を入れたものにしたい。先ほどの「会計基準に優先するものではない」という記載は、IFRS等に書いているので入れたが、独法と合わせて入れるべきではないというご意見であれば、削除を検討したい。

(主査)
次に、企業会計基準等の改訂への対応案について、議論いただきたい。

(事務局)
資料4に基づき説明。

(オブザーバー)
次回の検討会議でどこまで検討するのか。

(事務局)
次回の検討会議での議論は、監査基準の改訂案のみを予定している。
その他の項目は来年度以降の検討を予定しているが、会計上の見積りの開示に関する会計基準については、今年度は適用せず、その旨を事務連絡で発出することを考えている。ご意見いただきたい。

(主査)
特段ご意見ないようなので、企業会計基準等の改訂への対応案については、資料4のとおり進めることとしたい。

本日の議事は以上である。
 

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