令和元年度国立大学法人会計基準等検討会議(第8回) 議事要旨

1.日時

令和3年2月3日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 中央合同庁舎7号館東館13階 13F3会議室 ※WEB会議

3.議題

  1. 国立大学法人会計基準の見直しについて
  2. その他

4.出席者

委員

樫谷隆夫主査、植草茂樹委員、江戸川泰路委員、加用利彦委員、椎名弘委員、野々村愼一委員、水田健輔委員
(有識者)木村彰吾名古屋大学理事・副学長

文部科学省

川中大臣官房審議官、堀野国立大学法人支援課長、生田高等教育局視学官、上野国立大学法人支援課課長補佐、川辺国立大学法人支援課専門官
 

オブザーバー

   日本公認会計士協会
 

5.議事要旨

<議題 国立大学法人会計基準の見直し>

(主査)
本日は、前回の本会議での議論を踏まえ、方針を示すことになっていた損益外情報の表示方法と科研費の取扱いについて、報告させていただく。その後、国立大学法人の財務報告に関する基本的な指針(骨子)(案)について議論いただきたい。

(事務局)
資料1他に基づき、表示の案として、損益外コストを損益計算書とは別に、行政コスト等計算書(仮称)において表示する方法(以下「案1」という。)及び、損益外コストを損益計算書の欄外注記として表示する方法(以下「案2」という。)等を説明。

(有識者)
損益外コストの表示の2案については、前回の議論を進展したと理解した。案1を別につくると、産業界の方への説明に苦慮するのではないか。

(委員)
前回議論した2案と比べると元々の会計基準に戻っていったという印象があるが、今回の2案とした理由について説明いただきたい。また、今回の案で考えると、案2の欄外注記にしたほうが、これまでの議論が反映されているのではないかという印象を持った。

(事務局)
前回議論いただいた損益計算書の経常費用等に含める案は、損益外費用を研究経費等に計上すると経常利益が大幅に赤字となり、大学の経営責任に関する説明が難しくなってしまうため、国の責任部分をわけて考えたほうがいいのではないかといった理由から採用しなかった。

(委員)
損益外コストを損益内に入れて開示するのが、大学の要請ではないか。損益内に入れても段階損益を工夫することによって、従来のように、大学の経営責任の明確化も示せるのではないか。

(委員)
今回の案であれば、案1を支持する。独法会計基準の平成30年度改訂と同じ方向性の提案になっており、理解が得られやすいのではないか。
また、行政コスト計算書と損益計算書の掲載順序について、独法に合わせて行政コスト計算書を先に掲げてはどうか。一般目的の財務報告ということであれば、サービス受益者や資源提供者などの財務報告のプライマリーユーザーは、行政コスト計算書の方がより関心が高いと思われる。その場合、行政コスト計算書は、当期総利益からスタートする形ではなく、その計算過程を表示したほうがよいと思う。そして、損益計算書は逆に簡素化して、行政コスト計算書のボトムラインからスタートして、出資資産等減価償却相当額を加算調整するという形がよいのではないか。ただし、行政コスト計算書と情報の重複をいとわなければ、損益計算書は案1のままでも構わないと思う。
それから、科研費の直接経費部分の総額表示、これは会計理論上説明が困難なので、大学の研究活動の実態を表したいという要望が多くても、国大特有の会計処理といったような位置付けをされようとしているようであるが、やめておいたほうがいいのではないか。

(有識者)
今、減価償却の議論が進んでいるが、大学の現場からすると、全国で施設整備費補助金というのは当初予算で300億円から400億円くらいだと思うが、非常に競争が激しい補助金で、施設整備のどこに優先順位を付けていくのかというのは、まさに経営的なセンスが問われているところであり、国に依存しているのは、そういう規模感だというのが前提としてある。
また、施設整備の財源の多様化ということも非常に強く求められている。PFIや寄付、あるいは家賃収入など、そうした中で整備をしているという面もあるため、それが実際に大学の努力として見えるようなものが、PLに反映されると良いと考える。
どういう見せ方をすると大学のステークホルダーの皆さんに施設整備が大変だということが伝わるのかというのも、視点としてあると良いと思う。

(委員)
国の責任と言いながら、なかなか追いついていないのが実情だと思うが、損益外のまま続けていくということが良いのか疑問もある。最終的には、民間企業の方が基本的には理解ができるということが1つのゴール地点だと思うので、そういったところも踏まえて事務局も含めて考えないといけないと思う。現状どういう方向になるのか、注記がいいのか、行政コスト計算書という新たな計算書まで作ってやるのか。注記で対応できるならその方が良いかもしれないが、注記の場合は損益外のコストを完全に数字から除外するような感じの印象も受ける。そのため案1、案2のどちらがいいかというのは判断しにくいところがある。

(委員)
案2は脚注に記載しているが、これは基本的には、当期の損益計算書を企業会計に準拠した場合の利益のほぼ相当額というイメージ。案1は、損益計算の中に入れるということだが、そうするとこの差額は一体何を意味するのかということももう少し考えないと難しいと考える。また、施設費による当期取得額についても収益と見ないといけない。自己矛盾を起こしてしまう気がする。これらを踏まえてどちらがすっきりとステークホルダーに説明しやすいかということだと思う。

(委員)
これまでも、業務実施コスト計算書などの公開されていた情報で十分に損益外にどれぐらいの費用がかかっているかということは把握できたわけだが、これでは利害関係者が読み取れないということが議論の出発点だったと思う。
フルコストを出そうといったときに、企業会計で当たり前に入っているコストが国立大学法人会計基準上の費用には表れていないというところが一番理解し難かったポイントだと思っており、企業の方、もしくは大学の経営協議会等に参画されている経営のプロの方々が見て、分かりやすいものを作っていこうと考えるのであれば、まずは損益外減価償却費をPLの損益の中に入れた上で、段階損益を工夫していくことで、従来の利用を後退させないように工夫していくというのがここで議論すべき方向なのではと思う。
これまで求めていた情報を少し組み替えて見えるようにしたというのが、今回の案1、案2だと思うが、やはり前回の検討会で出ていたようなフルコストに近い形で損益計算書にちゃんと損益外減価償却費が入ってくるような形を出発点にした方が良いのではないか。

(委員)
案1や案2で、減価償却費相当額と施設費の受入額において、施設の間に何の対応関係もないので、大学によっては、減価償却費よりも施設費による当期取得額が非常に大きな年もあるなど、暦年で対比すると非常に波がある。また、最後に当期差額という数字がまた出てくる。そうすると、逆に読む人を、ミスリードさせないのか。この数字で一体何を大学はステークホルダーに説明することができるのか。

(有識者)
ご指摘のところはそのとおりだが、減価償却費を上回るほど施設整備費補助金は出ていないとすれば、ここが黒字になることは多分ないと考えている。
施設整備に関わるような、いわゆる資本投資に関わるようなものというのは、通常の定常的な取引、活動ではないので、それは特別損益のようなものにしていただいてもいいのではと考えており、施設整備費補助金で取得した資産の減価償却費を経常費用に入れていくのであれば、毎年赤字になっていて、施設整備費補助金があった年だけ利益が大きく出るという形にしかならない。もし施設整備補助がなされたときに利益計上したものを、何らかの計算で繰り越してもいいということであれば、費用と見合いの相殺はできる可能性はある。
それが会計においていいのかどうかということとは別に、テクニカルにそういうことが可能であれば、国の支援はこういう形になっているというのを経常収益と別の損益区分のところで示すことは、ミスリードを防ぐことになるのではないかと思う。

(委員)
戦略的経営実現に向けた検討会議の要請を考えると、まずわかりやすい財務諸表を作ってくださいということだと思うが、今回の案は、要するに損益計算書の外にもう一つあって、それを組み合わせないと全体像が理解できないということなので、一般の方にわかりやすいかというと、ぱっと見てもわからないのではと思う。
議論がここですり合っていないのは、大学自体が公共財ではあるが、独立経営体という面ももっと把握していきたいという中で、結局フルコストで見せる企業会計に切り替えるときに、国の責任で負の遺産を負っているという部分と、大学の経営努力で今経営を向上させているという部分が混ざってしまうのが多分嫌なのだろうと考えると、段階損益として区切ったような形として、2つとも財務諸表には載せるが、区分して見ることができるというのが1つの案なのかと思う。

(事務局)
基本的に大学の方々がおっしゃっているのは、大学の学長の経営努力でできている部分はここまでだけれども、実はその他にももっと借金や負債はあることをはっきり見えるようにしたいという話だと思う。フルコストだからといって、全て混ざってしまうと逆に説明しづらくなるのではないか。だからその区分けを見せつつ、なるべく1表に近い形で見せる方法というのは、まだもう少し工夫の余地があろうかと思うので、また案を考えてご相談させていただければと思う。

(主査)
御意見それぞれお聞きしましたので、もう一度預からせていただき、事務局とも相談しながら、次回もう一度案を出したい。
続いて、科研費等の表示区分についてご議論いただきたい。

(委員)
これから議論を予定している国立大学法人の財務報告に関する基本的な指針において、収益や費用の概念等も決められるのではと思うが、科研費の直接経費を収益と費用で総額表示するという整理が、この指針と矛盾するようであれば、説明が苦しいのではないか。どうしても科研費を損益計算書に表示するのであれば、経常収益の区分においてプラスの直下でマイナスすれば、経常収益の総額と経常費用の総額に影響させずに済むのではないか。

(委員)
この件に関しては前回も検討したとおり、会計理論的には正しくないので、いいですというのはなかなか言いづらい。せめて預かりの増減であることが分かるような科目を設定してほしいという話をさせていただいたが、ご提案があったプラスマイナスで表示するというのは、いいアイデアかなと思っており、今回の変更趣旨を満たすものであれば、ぜひ検討いただきたいと思う。

(有識者)
科研費は大学の研究力を見るエビデンスとしての数字と認識している大学が多い。大学の研究力を示す意味では、科研費は何らかの形で情報開示されるほうがいいと思っている。

(事務局)
大学から研究経費に科研費も含めた形で表記したいという意見が多くあり、それで一応こういった案を事務局としては出させていただいたところ。それで、損益計算書の中で研究経費ということで預かり研究経費にするという案を出させていただいているが、もう一つ例えば脚注で経常費用の研究費、科研費の研究経費、合計で大学全体の研究経費はこれだけというのを表示するイメージというのがもう一つの案としてあるかと考えており、例えばそういった方法というのはいかがか。

(委員)
事務局の提案の注記でもって研究費の総額、科研費も含めたところの研究の規模ということで情報を開示する、これはなお一層結構なやり方だろうと思う。

(委員)
注記の方がいいと思う。注記であれば特に抵抗は少ないと思うが、監査で対応できるかどうかというところは気になるポイントのため、その点だけご留意いただきたい。

(委員)
科研費は個人補助ではあるけれども、資金管理の責任は機関に求められているという実態がある。収益計上できるかは非常に微妙なところだが、少なくとも管理責任はあるため、脚注ならば問題ないかなと思う。ただ、脚注表示とすることで、監査上の影響はないか。

(事務局)
現在でも、残高については負債に預り科学研究費補助金等として入っており、受入額についても附属明細書に記載しているため、PLの本表に載るかどうかでどこまで監査を厳しくしなければいけないかといった影響は別として、現時点でも全く監査対象外とは言い切れないのではないかと考えている。

(オブザーバー)
監査上どうかという点に関しては、確認する時間を頂ければと思っている。脚注であるということ自体に対しては、特に異論はない。

(主査)
続いて、詳細は次回の検討会議でご議論いただくこととしたいが、国立大学の財務報告に関する基本的な指針の案について、事務局から説明願います。

(事務局)
資料2に基づき説明。

(主査)
本件については、次回ご議論いただきたい。

本日の議事は以上である。

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高等教育局国立大学法人支援課

(高等教育局国立大学法人支援課)