令和元年度国立大学法人会計基準等検討会議(第6回) 議事要旨

1.日時

令和2年10月16日(金曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省 中央合同庁舎7号館東館15階 15F1会議室 ※WEB会議

3.議題

  1. 国立大学法人会計基準の見直しについて
  2. その他

4.出席者

委員

樫谷隆夫主査、植草茂樹委員、江戸川泰路委員、加用利彦委員、佐藤誠二委員、椎名弘委員、野々村愼一委員、水田健輔委員
(有識者)木村彰吾名古屋大学理事・副学長

文部科学省

   川中大臣官房審議官、堀野国立大学法人支援課長、生田高等教育局視学官、上野国立大学法人支援課課長補佐、川辺国立大学法人支援課専門官
 

オブザーバー

   日本公認会計士協会
 

5.議事要旨

<議題 国立大学法人会計基準の改訂意見に対する対応>

(委員)
将来の資金調達の手段の多様化を目指して、産業界に受け入れられるような財務諸表の公表を目指すという取り組みがすでにいくつかの国立大学でも行われている。今後の会計基準の検討の中で、例えば私立大学においても資金収支計算書、事業活動収支計算書については、予算と決算を対比する形で公表がされており、こういう予算との対比情報は非常に重要であると考えている。国大法人会計でも決算報告書でこのような表示がされているが、こうした決算報告書や予算決算対比情報の開示の充実を考えていくことも重要ではないか。また、学校法人会計基準では平成25年改正で活動別収支という表示をはじめているが、国大会計基準でもこのような説明の仕方を考えていくべきではないか。

(委員)
資料1の国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議の中間とりまとめの本文に「現行の国立大学法人会計基準及びそれに基づいた財務諸表は、もともと国に対する説明責任を果たすための道具として設計されたものである」との記載があるが、国立大学法人会計基準報告書の前文にもあるとおり、現行の会計基準も国への説明責任というよりも国民や社会への説明責任を意識して作成されていると認識している。中間まとめでの表現はどのような意図がされたものか。

(事務局)
中間まとめにおいては、大学の経営は税金で賄っている部分も当然あるので、国民を含めた大きい意味で国との表現をしている。民間企業と国・国民の切り分けを明確化するために、単純化して対比的に書いているものであるが、最終まとめまでに整理する。

(委員)
初めに、今回の諸論点は非常に重要なので、会計士協会等でも検討に着手しているが、まず基本的な指針が大事で、それに基づいて整合的に検討していく必要があるという見解は大筋一致している。資産、負債、収益、費用の定義に関わるような根本的な事項が多く含まれており、国立大学法人等の財務報告は主に誰のために、どのような目的で行うかという関係を常に念頭に置きながら実質的な内容を並行して検討すべき。
次に、収益について、独立行政法人では評価制度委員会の会計基準等部会において、国際公会計基準の公開草案第70号と第71号を参考に検討するという方向性が示されており、国立大学法人等でも同様の方向性をとってはどうか。
最後に、損益外処理と引当外処理について、資料2では欄外注記とされている。損益外項目を当期総利益の下に表示するということを想定されているが、本来、費用は性質別または機能別ないしは活動別で表示していくもの。まず、普通の損益外項目まで含んだ本来的な損益計算書を作って、そのボトムラインの損益からスタートして、経営努力認定に関係ない費用を加算する調整表、経営努力認定用損益計算書のようなものを別途作ってはどうか。民間企業でも財務諸表は税金の徴収目的にも使われるが、損益計算書の当期純利益からスタートして、これを課税目的上認められない費用を加算調整して、課税所得計算用の申告書別表を作って計算している。

(委員)
独立行政法人は通則法で損益計算書を作成し、その当期利益のなかで目的積立金を計上するという整理になっているが、国立大学法人ではどのようになっているか。

(事務局)
独法通則法を準用しているため、基本的には国立大学も独立行政法人と一緒である。PL上の利益が出た際にその利益をどう処分するのか、その処分の一つが目的積立金である。

(委員)
通則法との関係で難しい部分が出てくるようであれば、損益計算書はそのままとしてよいかと思う。独立行政法人で平成30年の会計基準改正のときに行われたように、業務実施コスト計算書の方で本来的な損益計算書との役割を担わせて、損益計算書はその補助的な位置付けにして、そこでは従来どおり損益を表示するという方法も考えられるのではないか。

(委員)
国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議では、新たな規制緩和を積極的に入れていこうという考え方のようであるが、これまで国立大学は広義の独立行政法人というような位置付けをされ、国大会計基準も独法の会計基準に準じて改訂してきている。今後、独法と区分けしながら、制度の建付けの変更や法改正も踏まえて国立大学法人特有の事情を入れ込んでいくのか、あるいは従来の延長線上で考えているのか。

(事務局)
国立大学が法人化して15、6年経ち、大学の財務構造も変わってきている中で、外部資金を自分で獲得していこうという動き、外部のステークホルダーに対する説明をもっと積極的にわかりやすくし、投資を呼び込みたいという大学が増えてきている。また、経営協議会に外部委員として民間の経営者の方や、発言力のある方々が入っているにも関わらず、財務諸表を見てもよくわからない、経営にコミットメントできないという声が入ってきている。こうした状況変化の中で、国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議では大きな方向性として、外部のステークホルダーの方にもわかりやすくすべきであるという視点、また自ら外部資金を獲得して経営感覚を高めていくという観点から、計画的に積み立てていくことを前提とした仕組みが必要であるという大きな2つの視点が示されている。そういった意味で我々としては大きな時代の変化に対する2つの方向性は何かしら実現したいと考えているが、それが現行の仕組みとの整合性、実際制度を変えてみたら不具合が起きたということにならないように、専門家である委員の方々の目線で議論いただきたいと考えている。

(委員)
必要があれば、国立大学法人法を変えることも有り得るということか。

(事務局)
可能性としてはなくはないが、現行の制度や今回事務局案で示した方策をベースにして議論していけば、目的は実現できるのではないかと考えており、今直ちに法改正が必要であると判断しているわけではない。

(委員)
先ほど事務局から話があったような支障が出ているのであれば、基本的なところを変えていかなければならないし、必要であれば、会計基準の方もそれこそバランスシートなり、資産概念、負債概念、資本概念あるいは費用概念、収益概念全て見直さないといけないということになるが、いつから適用というのを想定しているか。

(事務局)
早いものは第4期からスタートしたいと考えているが、今回の変更は大学に影響を及ぼすことになるので、準備期間を取って、見直しの方向性については来年度初めには示す必要があると考えている。もちろん第4期に入ってからも何らか変更を行わないといけないという事由が生じた場合は、必要な見直しを行いたいと考えている。

(委員)
個々の論点についての議論も必要であるが、まず大きなところで、利益概念について確認したい。今回の事務局案では、損益外の方は欄外で注記するという案となっているので、結果的に損益均衡会計、資産見返がなくなることによる影響が、損益インパクトとして出てくることになったと考えるが、これで元々のステークホルダーに対して、実態として損失が出ていることを主張したいという大学側の思いは果たされるのだろうか。例えば、そこで損失が出ていたとしても、運営費交付金や寄付金を財源とした設備投資額が減価償却費よりも小さかったというだけであり、これだけ損が出ているので、企業から間接経費をたくさんもらいたいという交渉に使うには利益概念として当初意図していたものと違う結論になっていくのではないか。損益均衡は大学の運営実態を表すには非常に優れた会計概念であるが、この概念を崩してまでそれに見合うだけの本当にリターンがある改正になるのか。全体的に今回の議論が出てきた経緯を踏まえて、こういった改正が趣旨にあっているのか。

(オブザーバー)
損益均衡会計や損益外処理をどうするかという議論の前に、国立大学の財務報告がどうあるべきか検討した方がよいのではないか。その議論の前に事務局案が良いかとかどちらが良いかを決めることは難しい。損益外を欄外に書く現行案もあるが、その場合、財務諸表の中に業務実施コスト計算書の存在意義はどうなるのか。総論の前に各論と結論が先行することを危惧している。本日の議論を踏まえ色々な要素を含め、会計的に説明可能かを検討しなくてはいけない。

(委員)
根本的な議論もした方が良いのだろうが、法律的な建付けや会計基準の定義等すべてを議論するのは、第4期からのスタートを見据えると、時間的な制約もある。独法も様々に進化し、仕組みが変わったので、ガイドライン、概念フレームワークも含めて検討したうえで会計基準や指針の見直し、事業の見直しを取り纏めたところ。国立大学もやるとしたらそういう部分もやらないといけないが、長期的な観点と時間的な制約の観点の両者を踏まえて検討を進めていく必要がある。

(事務局)
今後の進め方については座長とも相談したい。

(有識者)
大学の経営努力認定について、本来大学は非営利組織で教育研究のアウトプットを挙げることが努力の成果そのものであり、そのためのインプットとしての資金であると思う。独法由来の損益計算書を用いているが、本来の営利企業であれば最終的には挙げた利益で経営努力が明らかになることを考えれば、非営利組織である大学に適応するフォーマットと同時には最終的に何を収益と認識するのかの深い議論ができたらよいのでは。
一方、海外の大学も含めお金の出入りは明らかにしている。教育研究に対する資源の投入と、そこから得られる直接的な対価としての収益には乖離があるが、それを補填する仕組みとして州政府からの補助金等がある。その観点から言えば、非営利組織である大学の損益計算書のフォーマットは長期的に議論してもいいのではと思う。短期的にできそうなのは、科研費について、科研費はこれを獲得し研究をして論文を書いて大学としての研究成果としてのアウトプットともなるので、これを反映することは多くの大学が理解を示すだろう。実際の大学の事業規模は科研費も含めたものだと多くの大学の学長は認識しているのではないか。

(委員)
科研費は規模も大きく、努力の結果でもあるので、それを表示しないのはどうかという議論も当然あるだろう。国大会計基準において、科研費が国立大学の損益概念の収益の概念・費用の概念で読めるということであれば表示することも問題ないだろう。読めないのであれば少なくともその部分については改正しないといけない。科研費は大学の活動規模としては大きいので明示すべきという意見もわかる。

(有識者)
科研費は研究者に交付される補助金なので、研究者が異動すると異動先で経理処理をする建付けとなっている。各大学は科研費獲得のために様々なリソースを投入しているので、獲得できたことについては努力として反映されている方がよいのでは。一方で私立大でも科研費は獲得できるので、私学と国立でどう表示するか整理はしないといけない。

(事務局)
科研費の取扱いについては、私立大・独法・民間企業等での扱いを次回までに整理する。

(委員)
国立大学や学校法人、国の機関等で違いはあってもいいと思うが、科研費自体の取扱が異なるというのは整合性がないのでは。

(委員)
科研費を本当の意味でコスト情報として表示するには、預り金を消耗品や固定資産等に表示することになるが、臨時的にそこまでは難しい。そういう意味で、損益計算書上は予算規模を示すことしかできないのであれば、損益計算書に入れるのも一案だが、決算報告書の充実を図り、科研費収支を含めて表示する等の整理もできるだろう。損益計算書だけで全部を表示するのか、その他決算報告書やキャッシュフロー計算書等も活用して大学の活動を表示していくのか、どの財務報告で何を実現するのかも含めて検討すべき。

(委員)
どこで事業規模を示していくのかは検討するべきだと思う。総額、つまり科研費等は大学で研究をしている先生方はぜひ示したいだろうと理解する。科研費は単年度のみか。

(事務局)
複数年度の科研費もある。

(委員)
研究者が異動した際に、間接経費の移動も伴うのか。

(事務局)
大学によって異なるだろうが、直接経費相当の間接経費は移動するのではないか。

(委員)
間接経費はマイナス処理するのか。

(事務局)
残額がある場合、間接経費のうち直接経費の未使用分相当は前受金として処理する。

(委員)
基本的な指針にも絡むことになるだろうが、科研費は収益認識会計基準上、典型的な本人代理人の論点に関連するのではないか。直接経費部分は研究者個人に与えられ、機関は代理人として収納代行をし、間接経費は機関が研究支援の対価としてもらうと考え、施設の提供や光熱水費の支援をしているとなると、間接経費部分のみが損益計算書の収益となり、直接経費部分は会計基準、国際公会計基準の公開草案第71号としては純額表示の方が適切ではないかと思う。

(委員)
PLの収益の定義に科研費が当てはまるかは難しい。規模を表すという意味ではPLの表示範囲を広げてもいいと思うが、企業会計ではどうか。

(委員)
商社取引や広告代理店取引等、純額表示の売上高では会社のビジネスの規模がわからないということだったので、取扱高などとして、別の書類で表示するというところで折り合いをつけているのでは。

(委員)
民間どおりである必要はないが、定義から言えばやはり計上は難しいように思う。

(有識者)
外部の人が気にするのはこの部分。大学のアウトプットである論文等が科研費によって行われた場合、そのインプット情報が表示されないままアウトプットのみを表示するのはステークホルダーのミスリードになるのではないか。PLに入れるかどうかという議論は別にして、会計基準に限らず統合報告書で開示というような議論も聞いているが、何らかの形で研究成果というアウトプットのもとになるインプットを示すことができるように議論してほしい。

(委員)
事業報告書についての検討はどうなっているか。

(事務局)
国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議の中間まとめでも「非財務情報と統合させた財務情報の開示のあり方を見直す」といった提言がされており、事業報告書の見直しについても議論いただきたいと考えている。

(委員)
独法でもそのような議論をしたが、パブリックではステークホルダーへの説明として財務情報だけでは完結しない。ミッションの達成・コスト・財源の3点がそろわないと説明責任が果たせない。このような事業をして目的を果たしてこのようなアウトプットを出した、それに対するコストはこう、財源はこうという整理の方法が事業報告書等で説明するためには一番いいのではと思う。

(委員)
科研費は個人に交付する補助金であり、経理だけを大学が行う特殊な建付けとなっているが、例えば、科研費によって得た研究成果や知財がどこに帰属するのか。大学に帰属するのであれば、会計上法人のPLに帰属させることも考えられるし、あくまで個人の成果であるとするのであれば、PLに含めるのは難しいのではないか。そうなると別の報告書等で開示していく道を探す必要がある。

(事務局)
科研費と研究成果や知財の関係について、次回までに整理する。

(委員)
国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議にも関係するが、自律的経営や独立経営体を目指す中で、現実として今後、数年間で運営費のウェイトが下がり、グローバルな大学の外部資金依存が高まることが起きるだろう。運営費が交付されるという国との関係は継続していく一方で、外部資金を獲得していけば、民間企業に近い情報開示も求められるようになり、ここを両立させていかなければいけないということは現実にある。
そうなれば、基準をどちらに置くのか、また両立しないという話もあり得るので、枠組みの話も一つテーマではないか。民間では、グローバルに資金調達するということであれば日本基準だけでなく米国基準等を準用することもあり、グローバルな大学では各々の基準で作成するという整理もあるだろう。予算管理で言えば、民間でも監督官庁向けに別の資料を多数出すなど、すみ分けしているということもある。色々な段階の利益を見せることで、両方を兼ねた複数の目的を果たす報告を作る方法もある。枠組みとしてはいくつかのパターンがあって、時間軸が切られるとするならば、大きな枠組みの上で考えることもできるのではないか。

(委員)
時間軸の問題と長期的な観点という根本的な問題はしっかりと議論をしないといけない。独立行政法人がそうであったように、大学も時代の変遷の中で変わっていく。国立大学はパブリックセクターに所属するので、民間・法人化という観点で行くのか、国立という観点で行くのか、どういう定義をしたら大学として動きやすいのか議論をしていきたい。

本日の議事は以上である。

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高等教育局国立大学法人支援課

(高等教育局国立大学法人支援課)