令和元年度国立大学法人会計基準等検討会議(第4回) 議事要旨

1.日時

令和2年7月2日(木曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省 中央合同庁舎第7号館東館16階 16F1会議室

3.議題

  1. ステークホルダーの整理について
  2. 国立大学法人等会計基準に関するアンケート結果について
  3. その他

4.出席者

委員

樫谷隆夫主査、植草茂樹委員、江戸川泰路委員、加用利彦委員、佐藤誠二委員、椎名弘委員、野々村愼一委員、水田健輔委員
(有識者)木村彰吾東海国立大学機構機構長補佐・名古屋大学副総長

文部科学省

川中大臣官房審議官、淵上国立大学法人支援課長、生田高等教育局視学官、上野国立大学法人支援課課長補佐、川辺国立大学法人支援課専門官

オブザーバー

日本公認会計士協会

5.議事要旨

<ステークホルダーの整理について>

(事務局)
国立大学法人における代表的な財務報告利用者として、サービス受益者については、学生・保護者、企業、同窓会・卒業生、地域住民などが想定されるのではないか。また、資金提供者としては納税者、寄附者、共同研究の相手先としての企業、債権者などが、外部評価・監督者としては文部科学大臣や国立大学法人評価委員会、会計検査院、国会などが、法人内部利用者としては国立大学法人等の長、理事、監事、教職員などが想定される。平成16年の法人化当時に比べて、国立大学法人の財務報告利用者に占める企業等の重要性が増していることを踏まえ、企業会計に馴染んだ企業関係者や一般の財務諸表利用者にも理解しやすい財務諸表である必要性が高まっている。

(委員)
財源の多様化によって産業界や企業にも分かりやすい形での情報公開の必要性が増している中、海外の基準に当てはめた財務諸表の作成や、独法ベースで作られた国立大学法人会計基準の改訂について検討していく時期に来ている。また、国立大学の要望を聞いた上で設備更新のための積立金の仕組みなどもつくっていく必要があるのではないか。

(有識者)
資料2で示しているのは、アメリカの州立大学の会計基準を適用した形で既存の損益計算書を組み替えたものである。ここで重要なポイントとなるのが損益外減価償却費の取扱いであり、本来P/Lに載らないこの部分を考慮すると、大学で必要な資金が足りていないことが分かる。また国立大学では現金の裏付けのない利益が非常に多く計上される傾向があり、利益は出ているけれども手持ちの資金が少ないということを外部の方に説明するのが難しい。

(委員)
国立大学と言ってもそれぞれの大学の規模感には大きな違いがある。企業会計においても、大企業と中小企業で別に整理がされているように、すべての国立大学に同一の基準を適用してもいいのかという議論もあり得ると思うので、中・小規模大学の意見も聞く方がよいのではないか。

(委員)
ステークホルダーについて資金提供者は企業の場合は債権者、投資家などで、国立大学の場合は納税者や寄附者も含まれるが、そこに共同研究という対価性のある拠出をしている企業が入るのは不自然であると思われる。企業は資金提供者ではなくサービス受益者とすべきではないか。
また、国立大学の会計基準の問題は、国立大学法人制度そのものの課題・問題とセットとなる話であり、まずは制度的な課題への対応を検討していかなければならないのではないか。一方でアカウンタビリティーの在り方については、ステークホルダーに対してどういう説明をしていく必要があるのか、何が重要なのという点を会計基準と併せて議論していくべきだと思う。

(委員)
ステークホルダーについては、単純に並べるだけではなく主要な利用者(プライマリーユーザー)を明確にした上でアカウンタビリティーの優先度を考えていく必要もあるのではないか。

(委員)
大学によって、統合報告書などの非財務情報を積極的に公開しているところもあり、一方でまだ情報公開の議論が進んでいないところもあるなど、対応のスピード感は異なっている。情報公開には、法律などに基づいて一定のルールで開示するものと、IRのように広報活動的に情報を開示していくものがあり、この辺りは混在して広がっている感じがあるため、この会計基準検討会において、どこまでの範囲を議論に含めるかを含め、整理しておかなければならない。
民間企業では株主や市場評価によって経営の透明性が担保される仕組みとなっているが、大学でも大学債の発行などによって今後企業と同じような目線が入ることになるので、企業会計に近い形での財務諸表の方が理解もされやすいのではないかとは感じている。

<国立大学法人等会計基準に関するアンケート結果について>

(委員)
アメリカの州立大学の損益計算書を参考に組み替えた損益計算書ということで、ここでは対価性のある収益を営業収益として計上する一方、運営費交付金収益は一対一でサービスや財を購入する対価性というものではないため営業外収益として計上している。国立大学の活動では、社会への貢献として直接サービス受益者から対価を受け取れない費用も営業費用に含まれてくるので、この部分の費用が営業損失として出てくることになり、その損失を公的資金や寄附金などで負担してもらって、最終的にきちんとバランスしているかどうかを見ている損益計算書である。

(有識者)
アメリカの大学の収支構造を見ると、基本的には学生納付金等では教育研究が全然回らず、それを州立大学であれば州からの支援、私立大学であれば基金で賄っているという整理ができる。
議題1にてステークホルダーとして寄附者が挙げられていたが、寄附と言っても奨学寄附金のような形のものと、アメリカの大学のような基金があり、基金の場合は使い切りではなく運用益で事業を行うことが考えられる。基金についてはきちんと運用できているのか寄附者に示す必要があり、会計基準に依らない独自の運用報告も必要である。

(委員)
国立大学の収益構造は、均衡会計と収益会計で大きく二つに分かれると考えられ、ステークホルダーの議論で言うと、均衡会計だと資金提供者、収益会計だとサービス受益者といった整理ができるのではないか。会計構造や制度的な話とステークホルダーの話はすべてつながっているので、そういったところも今後整理していく必要がある。
また、予算構造や間接経費などの制度的な問題もクリアしないといけないが、意識的に大学がきちんと内部留保をためていくという仕組みは大変参考になった。

(委員)
内部留保的な引当金を計上するとしたら、財源はどう考えているか。また、これまでは損益均衡ということで、引当金経理はあまりしてこなかったわけだが、今後様々な引当金の計上が可能になるという方向で広げていくのか。財源別にどういう風に処理をするのかというところも説明していく必要があるのではないか。

(事務局)
財源の特定化については、今後議論していきたい。
大学からの要望から積み立てられる制度を提案したが、会計上の引当金という形で負債に計上するということではなく、従来から大学内にて更新費用として貯まっていたはずの現金を大学で管理しやすいように固定資産の取り換え費用として明示するということを想定している。国立大学法人会計基準において引当金等をどこまで計上できるようにするかについては、独立行政法人の検討状況なども参考にしながら今後検討していきたいと考えている。

(委員)
こういう会計構造の場合、自己収入で過去に貯まった財源で設備投資を行っているか、大学債を発行して借金をして設備投資をするというようなケースが考えられるが、借金をするような場合には当然返済資金を貯めなくてはいけないわけで、こういう特定という仕組みをあえてつくる必要性を明確にするべきではないか。

(事務局)
ご指摘の通り、元々大学のマネジメントとして余った資金を取り換え更新費用などに充てるということは実施されているが、大学によっては特定の財源として確保しづらいという事情もある。強制するという意図ではなく、固定資産の取り換え更新費用として特定化するのか、従来通り大学のマネジメントの中で整理していくのかは、大学の任意とすることを考えている。

(事務局)
今の論点について、国由来の施設整備については施設整備費補助金で整備していくことが制度上予定されているが、現在の厳しい補助金の状況を考えると、各大学でマネジメントをしながら一定の資金の用意をしていく必要があるという意見も多くあるので、それに充てるものとして明記をして処理する必要があるのではないかという問題意識もある。
また、制度に起因する問題と会計基準で処理すべき問題と両方が出てきているが、現在別の会議でも国立大学の自律的な経営のための制度設計について議論が行われているところなので、今後制度設計がどういう方向になるかというのを前提とした上で、会計基準の在り方について審議していただきたいと考えている。
アメリカの州立大学の損益計算書を参考に組み替えた損益計算書において、運営費交付金が営業外収益と位置付けられているが、今の国立大学の制度上は中期目標と中期計画があり、国から中期目標を提示した上でその事業を行うためという観点で運営費交付金を交付しているという構造がある。このように国からの提示があって大学の事業が行われているという場合に、大学本来の事業に由来するものが営業収益であるのに対して、事業の裏付けとして交付される運営費交付金がこのような位置付けでいいのか。また反対に、このような位置付けが適当だとすれば、今後中期目標・中期計画の関係性を変えていく必要があるのではないかという点について少し疑問を感じている。

(有識者)
大学の実務としては、自己収入と運営費交付金の額が支出可能な額であり、それに基づいて支出予算をつくっていくので、大学の資金としてはこのP/Lとは逆のプロセスになっている。限られた収入の中で大学に必要な教育研究の支出を回していくという発想なので、どうしても資金ショートを気にして保守的な執行となってしまっている。この部分については文科省とも相談しながら、大学の財務支出の実態を表すような損益計算書のフォーマットについて考えていく必要があるのではないか。

(委員)
運営費交付金が本来業務からの収益なのか、営業損失の差額補填として捉えるのか、考え方によって表し方が異なってくるのではないか。ここについてはもう一度議論する必要があるかもしれない。

(委員)
国からの出資や国からの施設整備費由来の減価償却費、承継職員の退職給付引当金など、本当に今のままでいいのかという問題はあるが、大学にどういう資金の入れ方をしていくかという話にも直結する話であり、この検討会議でどこまで議論するべきかという問題もある。大学にある程度の自助努力を促して、自律性を確保することを支えるような会計制度を検討していく必要があるのではないか。

(委員)
資料の中で事業報告書の件が取り上げられている。事業報告書の記載の明確化と、会計監査人の監査範囲に含めることを検討するということが書かれているが、今後企業会計の監査基準の改正が行われる予定で、監査報告でも、事業報告書と財務諸表との整合性という点で監査の過程で得た知識との間で重要な相違がないか検討することになっている。国立大学の監査基準では、事業報告書については会計に関する部分に限るという昔の監査の建付けが今も残っているが、今の流れとしては、非財務情報も含めた上で重要な相違がないか検討し監査報告に書くという制度になっているので、これは準用通則法なども関わるのかもしれないが、国大会計基準、国大監査基準の中でも提言していきたい。

(委員)
大学の施設整備については、国の予算がなかなかつかないので自己財源を使用すると表明している大学も一部ある。会計基準では、施設整備は本来国の責任の部分であることを根拠に損益外処理を行うことになっているが、そういう前提も今後そのままで大丈夫なのかという議論もある。これは会計基準ではなく全体の制度の話になるが、会計基準にも影響する部分はあると思うのでご留意いただきたい。

(委員)
それでは、今回の議題は以上であるため、本日の検討会議を閉会とさせていただく。

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高等教育局国立大学法人支援課

(高等教育局国立大学法人支援課)