大学入試のあり方に関する検討会議(第1回)議事録

1.日時

令和2年1月15日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省旧庁舎6階第2講堂

3.議題

  1. 検討会議の議事運営等について
  2. これまでの経緯・今後の検討スケジュールについて
  3. 自由討論

4.出席者

委員

(有識者委員)三島座長、川嶋座長代理、益戸座長代理、荒瀬委員、斎木委員、島田委員、清水委員、末冨委員、両角委員
(団体代表委員)岡委員、小林委員、圓月委員(芝井委員の代理)、柴田委員、萩原委員、吉田委員、牧田委員
(オブザーバー)山本大学入試センター理事長

文部科学省

萩生田文部科学大臣、藤原事務次官、柳大臣官房長、伯井高等教育局長、矢野大臣官房審議官(初等中等教育局担当)、玉上大臣官房審議官(高等教育局及び高大接続担当)、池田文部科学戦略官、森田文部科学戦略官、西田大学振興課長 他

5.議事録

【武藤高等教育局企画官】
 それでは定刻となりましたので,ただいまより第1回大学入試のあり方に関する検討会議を開催いたします。
 委員の皆様におかれましては,本日,御多忙の中,御参集いただきまして,誠にありがとうございます。初回でございますので,出席者の御紹介まで,私,高等教育局企画官の武藤が進行させていただきます。その後,三島座長にお願いをいたしたく存じます。
 なお,この検討会議は,原則として公開で行うこととしております。そのため,取材,傍聴の方がおられること及び本日はカメラによる撮影がありますことを御了承いただきたいと思います。
 それでは,会議の開催に当たりまして,萩生田文部科学大臣から御挨拶を申し上げたいと思います。大臣,よろしくお願いします。
【萩生田文部科学大臣】
 皆さん,おはようございます。文部科学大臣の萩生田光一でございます。新年早々のお忙しい時期に,このような会議に出席いただきましたことをまず心から御礼申し上げたいと思います。
 大学入試のあり方に関する検討会議の開催に当たり,一言御挨拶を申し上げます。三島座長はじめ委員の皆様におかれましては,大変お忙しいところ,本検討会議の委員をお引き受けいただき,ありがとうございました。心より感謝を申し上げたいと思います。
 高大接続改革の一環として,高校関係者,大学関係者等の御意見,御協力を頂きながら大学入試改革に取り組んできたところですが,既に御承知のとおり,英語の民間試験の活用及び大学入学共通テストにおける記述式問題の導入について,来年度の実施を見直さざるを得ないとの判断を昨年,行いました。
 これを受け,本検討会議は,これまでの経緯や課題も踏まえ,今後の大学入試のあり方について,改めてその方向性を御議論いただくために設置したものであります。英語民間試験活用のための大学入試英語成績提供システムについては,当初の予定どおりのスケジュールで実施するために取り組んできましたが,経済的な状況や居住している地域にかかわらず,等しく安心して受けられるようにするためにはさらなる時間が必要だと判断をし,来年度からの導入を見送り,延期することといたしました。
 しかしながら,グローバル化が進展する中,次代を担う若者が英語によるコミュニケーション能力を身に付けること,そして,大学入試で英語4技能について適切に評価することの重要性に変わりはないと考えております。このため,新学習指導要領で初めて実施する入試となる令和6年度,2024年度実施の大学入試に向けて,英語4技能をどのように評価していくのか,できるだけ公平でアクセスしやすい仕組みとはどのようなものなのかといった点について御検討をお願いしたいと思っております。
 記述式問題につきましては,民間事業者による採点の質の確保,自己採点と採点結果の不一致の解消など,指摘された課題の解決に向け,大学入試センターとともに検討を重ね,努力をしてまいりましたが,現時点で受験生の不安を払拭し,安心して受験できる体制を早急に整えることは限界があると判断し,導入の見送りを決めたところであります。
 文部科学省としては,初等中等教育を通じて育んだ論理的な思考力,表現力を評価する記述式問題が大学入試において果たす役割は重要と考えております。このため,各大学の個別選抜において記述式問題の活用に積極的に取り組んでいただくことをお願いしていきたいと考えておりますが,本検討会議でも,共通テストや各大学の個別選抜における記述式問題のあり方など,大学入試における記述式の充実策について御議論を頂きたいと思っております。検討に当たっては,これまで指摘された課題や,延期や見送りをせざるを得なくなった経緯の検証も行っていただき,それを踏まえて今後のあり方の御議論につなげていただきたいと思っております。
 申し上げるまでもなく,高大接続改革は,新しい時代にふさわしい高校教育と大学教育をそれぞれの目標の下に改革し,子供たちが各段階で必要な力を確実に身に付け,次の段階に進むことができるようにするための総合的な改革です。本検討会議は大学入試のあり方を中心に御議論いただく場ですが,委員の皆様におかれては,このような高大接続改革の観点も念頭に置いていただき,御議論を頂ければ幸いに存じます。その際,なるべく多くの関係者からの声を反映していくことも重要であると思っています。様々な方々からヒアリングを行いながら御議論いただければありがたいと思っております。また,大学入試は国民の関心の高い事柄であります。議論の状況を広く情報提供しながら進めるため,原則として本検討会議は公開で開催することとしており,御理解を頂きますようにお願いをいたします。
 お忙しい皆様に大変恐縮でございますが,今後1年程度で議論の取りまとめをお願いしたいと思っております。改めて委員の皆様の御協力に御礼を申し上げるとともに,どうぞ精力的な議論をお願いして,私からの冒頭の御挨拶にしたいと思います。お世話になりますけれども,どうぞよろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 どうもありがとうございました。
 それでは,本日御出席の委員の皆様を御紹介させていただきます。お手元の配付資料の資料1が本検討会議の設置要綱,そして,資料2として,委員の皆様の名簿がございます。
 初めに,本検討会議の座長であります東京工業大学名誉教授・前学長の三島良直先生でいらっしゃいます。
【三島座長】
 三島でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 次,委員御紹介順で,有識者委員として,まず川嶋太津夫先生,大阪大学高等教育・入試研究開発センター長,川嶋先生でいらっしゃいます。
【川嶋委員】
 川嶋です。よろしくお願いします。
【武藤高等教育局企画官】
 UiPath株式会社特別顧問,益戸正樹先生でいらっしゃいます。
【益戸委員】
 益戸です。よろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 大谷大学文学部教授,荒瀬克己先生でいらっしゃいます。
【荒瀬委員】
 荒瀬でございます。よろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 財団法人日本ラグビーフットボール協会理事,前外務省研修所長(国際法局長・経済局長)の斎木尚子先生でいらっしゃいます。
【斎木委員】
 斎木尚子です。よろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 筑波大学人文社会系教授,島田康行先生でいらっしゃいます。
【島田委員】
 島田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 筑波大学大学院教育研究科長・教授の清水美憲先生でいらっしゃいます。
【清水委員】
 清水でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 日本大学文理学部教授の末冨芳先生でいらっしゃいます。
【末冨委員】
 末冨です。よろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 東京大学大学院教育学研究科准教授の両角亜希子先生でいらっしゃいます。
【両角委員】
 両角です。よろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 続きまして,団体代表委員,山口大学学長で,国立大学協会入試委員会委員長をされております岡正朗先生でいらっしゃいます。
【岡委員】
 よろしくお願いします。
【武藤高等教育局企画官】
 学校法人北里研究所理事長で,日本私立大学協会常務理事を務めていらっしゃる小林弘祐先生でいらっしゃいます。
【小林委員】
 小林でございます。よろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 次に,本日,関西大学学長の芝井敬司先生,今日,御欠席でございますので,一般社団法人日本私立大学連盟より代理として,同志社大学学長補佐・文学部教授の圓月勝博先生にお越しいただいております。
【圓月委員(代理)】
 圓月です。よろしくお願い申し上げます。
【武藤高等教育局企画官】
 それから,公立大学法人福岡県立大理事長・学長で,公立大学協会指名理事の柴田洋三郎先生でいらっしゃいます。
【柴田委員】
 柴田でございます。よろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 東京都立西高校長,全国高等学校長会会長の萩原聡先生でいらっしゃいます。
【萩原委員】
 萩原です。よろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 学校法人富士見ヶ丘学園理事長,日本私立中学高等学校連合会長の吉田晋先生でいらっしゃいます。
【吉田委員】
 よろしくお願いします。
【武藤高等教育局企画官】
 一般社団法人全国高等学校PTA連合会長の牧田和樹先生。
【牧田委員】
 牧田です。よろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 最後にオブザーバーとして,大学入試センター理事長の山本廣基でございます。
【山本オブザーバー】
 どうぞよろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 大変恐縮ですが,本日御欠席の委員の御紹介につきましては,お手元の委員名簿をもって代えさせていただきます。
 次に,文部科学省側の大臣以外の出席者を御紹介させていただきます。
 まず,藤原誠事務次官です。
【藤原事務次官】
 よろしくお願いします。
【武藤高等教育局企画官】
 柳孝大臣官房長。
【柳大臣官房長】
 よろしくお願いします。
【武藤高等教育局企画官】
 伯井美徳高等教育局長。
【伯井高等教育局長】
 よろしくお願いします。
【武藤高等教育局企画官】
 玉上晃大臣官房審議官。
【玉上大臣官房審議官】
 よろしくお願いします。
【武藤高等教育局企画官】
 以上でございます。
 その他,高等教育局及び初等中等教育局の関係官が同席しております。事務局の紹介は以上でございます。
 それでは,三島座長から御挨拶を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
【三島座長】
 それでは,一言御挨拶申し上げます。
 このたび,大学入試のあり方に関する検討会議の座長を務めることになりました。皆様,どうぞよろしくお願い申し上げます。
 現在,大学入試につきましては,高大接続改革の考え方の下で思考力,判断力,表現力を一層重視する大学入学共通テストの導入,それから,明確な入学者受入れの方針,アドミッションポリシーでございますが,これに基づく多面的・総合的に評価するための個別の入試改革等が進められているところでございます。
 そして,今般の様々な経緯の中で大学入試英語成績提供システム,それから,大学入学共通テストにおける記述式問題については,延期や見直しが行われることになりましたけれども,英語の4技能を育成すること,あるいは思考力,表現力を強化すること,これにつきましては,大学入学共通テストにおいてその要素を測るべきかどうかは別として,非常に重要なことであると考えられてきていることは確かでございます。これをどのように今後進めていくかということになろうかと思いますけれども,これまでの経緯をしっかりと検証しながら,次にどういうふうにしていったらいいかをなるべく幅広い御意見を伺いながら進めていきたいというふうに考えていることでございます。
 また,同時に,今回の経緯の中では,大学入試における公平性,あるいは公正性というのが非常に重要だということが指摘されてございますので,受験生はじめ国民が不安などを感じる制度であってはならない。これは今,大臣もおっしゃったことでございます。そのためにも,本検討会議において改めて公開の場で議論し,高校・大学関係者のみならず,広く社会と考え方を共有しながら検討を行うことが大変重要であると感じているところでございます。
 様々な分野での知見を有しておられる委員の先生方の御意見に加え,外部の有識者からのヒアリングも交えつつ,広く国民に受け入れられる提言をまとめていければというふうに考えるところでございます。その際,先ほど大臣からもお話がございましたように,高大接続改革の観点に立って議論をしていきたいと思います。委員の皆様の御協力を頂きながら,精力的に審議を進めてまいりたいと思いますので,何とぞよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございます。
【武藤高等教育局企画官】
 それでは,これからの進行を三島座長にお願いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【三島座長】
 それでは,ここから,私が進行を行うことにいたします。
 まず議事に入りますが,議題1でございますが,本検討会議の運営等について,まず事務局,お願いしたいと思います。資料1から資料3まで,武藤企画官からよろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 失礼いたします。まず資料1,先ほども御紹介申し上げた検討会議の開催についてという大臣決定でございます。趣旨として,大学入試英語成績提供システム,それから,入学共通テストにおける国語・数学の記述式に係る今般の一連の経過を踏まえ,入試における4技能の評価,記述式問題を含めた大学入試のあり方について検討を行うということで,検討事項が大きく(1)から(4),4点ございます。特にこのうち,趣旨の2行目ですけれども,今般の一連の経過を踏まえということで,先ほど萩生田大臣からもございましたけれども,これまでに指摘された課題,それから,延期や見送りをせざるを得なくなった経緯の検証も踏まえながら,こうした課題について御議論を頂きたいと思っておりまして,実施方法として,(1)から(3)までございますけれども,幅広く関係者の意見を聴くということが(2),それから,会議は原則として公開と,特段公平かつ中立な審議に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合は非公開でございますが,原則として公開ということでございます。
 資料2が先ほど申し上げた検討会議の委員の名簿。そして,資料3として,今回,検討会議の運営要領の案をお配りしております。資料1の大臣決定に定めるほか,この会議の運営に関して以下のとおりとするという案でございます。
 まず,会議に座長を置くと,座長不在の場合は,座長があらかじめ指名する者が職務を代理するということで,後ほど三島座長から御指名を頂きたいと思っております。
 それから,議事の公開,先ほど申し上げたとおり,原則公開,場合によっては,全部又は一部を非公開,会議の傍聴は,事務局の定める手続によって登録を受けなければならないとして,撮影・録画・録音等々の事項をここに記載してございます。
 それから,第4条で,会議資料の公開ということで,配付資料も公開しなければならない。ただし,著しい支障を及ぼすおそれがある場合は,資料の全部又は一部を非公開とすることができると記載しております。
 裏面に続きまして,今度は議事録の公開でございますが,座長は,会議の議事録を作成し,公開しなければならない。ただし,支障を及ぼすおそれがあると認めるときは,議事録の全部又は一部を非公開とすることができる。そして,非公開とする場合には,座長は非公開とした部分について議事要旨を作成し,これを公開する。これら雑則でございますが,前各条に定めるもののほか,会議の運営に関し必要な事項は,座長が会議に諮って定めると,こういう案になってございます。
 以上でございます。
【三島座長】
 御説明,ありがとうございました。
 それでは,ただいまの資料1から3までの御説明でございますが,何か御質問ございましたら,委員の皆様,いかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは,今この運営の要領のところにございましたが,私がやむを得ず不在となる場合についての座長代理を決めさせていただきたいと思います。座長代理については,隣の川嶋委員,それから,益戸委員のお二人にお願いしたいと思いますけれども,よろしゅうございますでしょうか。
 どうもありがとうございます。それでは,川嶋委員,益戸委員,どうぞよろしくお願いいたします。
 次に,議題2に関して事務局より,これまでの経緯,検討スケジュール,それから,本会議の検討事項等の御説明をお願いしたいと思います。資料は4,5,6でございまして,西田大学振興課長から,よろしくお願いいたします。
【西田大学振興課長】
 大学振興課で課長をしております西田と申します。よろしくお願いします。座って説明をさせていただきます。
 資料4,5,6に沿いまして,大学入試に係る現状,それから,高大接続改革の一環として実施をしている大学入試改革のこれまでの経緯等について御説明をさせていただきます。
 主に資料4に基づきながら説明をさせていただきます。まずおめくりいただきまして,1点目,現状でございます。入試制度の現状についてというところで,ページ数で言うと4ページからになります。大学入試の基本的な考え方ということでございますが,大学入試に関しては基本的に,各大学が実施をするということになっておりまして,法令上の規定としては大学設置基準という文部省令に,入学者選抜は,公正かつ妥当な方法により,適切な体制を整えて行うという規定があるのみでございます。これらに基づきまして,私どもから各大学に毎年,大学入学者選抜実施要項という局長通知を出しているわけでございますが,その中に基本方針として記載されているのが,各大学がそれぞれの教育理念に基づき,生徒が高等学校段階までに身に付けた力につきまして,各大学の入学者受入れの方針,アドミッションポリシーに基づいて大学への入り口段階で入学者に求める力を多面的・総合的に評価することを役割とするもの,という内容です。
 公正かつ妥当な方法によって入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に判定するものというような基本方針を位置付けた上で,多様な入試方法や学力検査のあり方等について,ガイドラインとして各大学に通知をさせていただいているものでございます。
 次に,5ページをごらんいただきまして,入試の受験者数の状況でございます。下から上に向けて進んでいくわけですが,これは平成30年度の学校基本調査上の数字でございますが,高校卒業者が約106万人,このうち大学入学の志願者が74万人,このうち大学入試センター試験を志願する者が現役の中では47万,既卒者からは10万来まして,大学入試センター試験の志願者としては58万人,実際の受験者としては55万人というような形になっておるわけですが,入試としては,この大学入試センター試験を受ける,それから,各大学で個別入試が行われていますので,これらの組合せの中で進学が決まりまして,大学進学者数は66万人ということになっております。
 右上に記載しておりますとおり,国公立大学の一般入試では,センター試験を一次試験にし,二次試験として各大学の個別試験が行われている。それから,私立大学については様々でございまして,センター試験のみで判定をするパターン,それから,各大学が実施する個別学力検査のみで判定するパターン,両方課すというようなパターン,多様な方法で選抜が行われているという状況でございます。
 それから,次の6ページをごらんいただきますと,入学者選抜の実施状況の概要でございます。平成30年度の状況を平成12年度の状況と比較をしているわけですが,AO入試や推薦入試を経由した入学者が全体として大きく増加をしているというような状況が見て取れますし,その次の7ページ,これは国公私立それぞれの入学者でございますが,国公立では,一般選抜が中心になっており,私立大学では,約半数がAO入試や推薦入試を経由した入学者となっているというような状況でございます。
 次の8ページをごらんいただきますと,今申し上げたAO入試,推薦入試,一般入試,それぞれのやり方の概要をまとめております。AO入試については,詳細な書類審査と時間を掛けた丁寧な面接とを組み合わせ,入学志願者自らの意思で出願するような形での選抜を行い,出願期間が8月1日からというような形で行われているものです。推薦入試は,出身高校の推薦,これに基づいて調査書を主な資料として判定をするというような方法で行われております。それから,一般入試は,学力検査を中心として,調査書,小論文,面接等々の様々な選抜方法により実施がなされているというようなものでございまして,この区分による入学者の状況を先ほど御説明申し上げたところでございます。
 それから,9ページには,共通テストとして実施されている大学入試センター試験の概略でございます。名前のとおり,大学入試センターが実施をするような試験というふうに思われている場合が多いかもしれませんけれども,この試験は,高等学校段階における基礎的な学習の達成の程度を判定することを主たる目的として,参加する大学が共同して実施する試験という位置付けになっているところでございます。
 この大学入試センター試験が実施される前は,共通第一次学力試験が昭和54年度から,国公立大学で実施をされておったわけですけれども,後ほど説明いたしますが,様々な利点もあった反面,大学の序列化というような問題もありましたので,平成2年度の入試から各大学が自由に選択可能なアラカルト方式,それから,私学も含めた設置主体を問わないような形での試験ということで,参加する大学が共同して実施する試験というようなことで実施されているものでございます。
 次のページをごらんいただきますと,大学入試センターの役割についてですが,センター試験の事務のうち,試験問題の作成や印刷,輸送,答案の採点,集計,各大学への成績提供,などの一括処理することが適当な業務を処理する独立行政法人として,大学入試センターがあるというような位置付けになっているところでございます。
 11ページをごらんいただきますと,今週末,令和2年度の大学入試センター試験がございます。その状況でございますが,志願者は約55万7,000人で,前年度と比べると約2万人減少しているというような状況ですが,利用大学数は706大学,国公立大学の全て,私立大学についても,大学数だけで言えば9割ほどの大学が参加をするというような形で実施をされます。
 12ページをごらんいただきますと,一番上の折れ線グラフのとおり18歳人口は減少しているわけですが,センター試験の受験者数は,平成11年度入試からずっと見て,大体50万人から55万人ぐらいの間で安定しているというような状況になっているところでございます。
 それから,13ページ,14ページは入試制度の変遷ということで,先ほど少し申し上げましたが,大学入試制度に関しましては,昭和54年1月に,共通一次学力試験の第1回が開催をされ,これは国公立大学のみの利用で,5教科7科目,途中から5教科5科目ということになったわけですが,これについては基礎・基本を問う良問を提供し,各大学の個別二次試験と併せることで多面的な判定がなされているというような評価がなされてきた一方で,先ほど申し上げたように,一律に5教科7科目,5教科5科目でしたので,偏差値などで大学の序列化が顕在化したというような問題が指摘をされるようになり,平成2年1月から大学入試センター試験に変わったということであります。このセンター試験は,私立大学が参加をし,5教科5科目というような一律の形ではなくて,教科数や利用の仕方は,各大学で選択をして自由に選ぶというような形をとったわけでございます。これによって,私立大学も含めた各大学の入試の改善に寄与しているというような評価がなされているものと認識をしています。
 センター試験に関しましては,14ページにございますとおり,平成18年1月から,英語に関してリスニングテストを実施するという制度の変更があり,この週末に行われるセンター試験がセンター試験としては最後の試験になり,これから詳細説明しますが,これまでの検討の経緯により,令和3年1月からは,大学入学共通テストとして実施をされるということになるというような流れをたどっているところでございます。
 これは日本の大学入試制度の概略でございますが,参考資料として「大学入学者選抜関連資料集」というのをお配りしており,その16ページをごらんいただきますと,諸外国の大学入学者選抜における共通試験の概略についてまとめております。これは欧米,それから東アジアの各国について共通テストと考えられるものの概略をまとめさせていただいているものですが,右肩に未定稿と書いていますとおり,情報が平成28年度当時のものであり,右中ほどに赤線を引いていますが,左側の欧米の試験などは,大学入学者選抜というよりも,大学入学資格を認定する試験的の色彩が強いような形になっており,右側の東アジアの試験については,より選抜というような色合いがある。
 それから,入試制度全体の中でどういう位置付けになっているのかということも含めて,今改めて精査をさせていただいております。各国の入試における共通テストの概略としてはこういうような形でまとめをさせていただいていますが,更に精査をさせていただいているということで付け加えさせていただいたところでございます。
 資料4に戻っていただきまして,高大接続改革の経緯について,15ページからでございます。
 16ページ,17ページは,これまでの高大接続改革の議論や検討の流れを時系列でまとめたものです。これに関しては,平成24年8月に中央教育審議会へ諮問をして以来,25年10月に教育再生実行会議の提言, 26年12月に中央教育審議会の答申というような形で,提言,答申等がまとめられてきております。
 それぞれの答申のところに,今回,延期又は見送りとなった英語民間試験活用や記述式問題の導入に関してどう提言されていたかということを併せてまとめさせていただいております。教育再生実行会議の提言では,英語民間試験の活用は,外国語の外部検定試験の活用を検討するというような記述,共通テストにおける記述式問題の導入については,具体的な実施方法等について中央教育審議会等で専門的・実務的に検討されることを期待するというような記述がなされているところでございます。
 中央教育審議会の答申では,英語民間活用については,4技能をバランスよく評価するために,民間の資格検定試験の活用によって評価するというようなこと。記述式問題の導入については,知識・技能だけではなくて,思考力,判断力,表現力を総合的に評価していくという意味で,多肢選択方式だけではなく,記述式を導入するというような記述がなされております。
 17ページに参りまして,文部科学省として,中教審で答申された内容の実施スケジュールなどを決めた実行プランを経て,文部科学省に高大接続システム改革会議を平成27年3月に設置をして,更に検討を進め,平成28年3月に,最終報告がまとめられました。この中では英語民間試験活用について,「四技能を重視して評価する」,「民間との連携の在り方を検討する」というような記述。記述式問題の導入については,「記述式問題を導入するための具体的な方策等について今後更に検討する」,対象教科については「国語」「数学」とするというような記載がなされているところでございます。
 この最終報告を踏まえ文科省内に検討準備グループを設置し,28年の4月から検討を進め,具体的な制度設計を検討し,29年7月に高大接続改革の実施方針を策定し,入試改革に関しては,大学入学共通テストを2020年度から実施し,記述式問題を導入すること,英語の4技能評価のための,この共通テストの枠組みを活用する形で4技能評価のための民間資格検定試験の活用を行うことを実施方針として決定をしたというような経緯でございます。
 18ページは,「高大接続改革」の必要性ということでございまして,高大接続改革というのは,大学入学者選抜の改革だけではなくて,高校教育改革,大学教育改革,これを一体的に改革する。
何のためにかというと,学力の3要素をバランスよく育むということで,知識・技能,思考力,判断力,表現力,それから,主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度,この3つを育成,評価,さらに発展させるための3つの場面を一体的に改革するというようなものになっておるわけですが,19ページには,この高大接続改革に関する議論の推移ということで,細かいですけれども,記載をさせていただいていて,資料5として,これをA3の拡大版で記載をしているところでございます。
 この中で,大学入学希望者向け共通テストという項目ございます。これが今で言う共通テストという形になってきているわけですが,実行会議の4次提言,中教審答申,高大接続システム改革会議最終報告,実施方針,それぞれでどういったようなことが提言をされているのか,どの部分がどの段階で表から消えているのかみたいなことも含めて,これでごらんいただけるかと思います。
 それから,資料4の方に戻っていただきまして,20ページでございます。この実施方針によって決定をした入試改革の概略をまとめたものです。センター試験について,共通テストとして記述式問題を導入,国語・数学において。それから,英語については,4技能評価へ転換するということで,外部試験を活用して実施をするというようなことで進めてきておったわけですが,英語のシステムの導入,それから,共通テストへの記述式問題の導入については延期,見送りということになりましたので,21ページにございますとおり,共通テストについては,マーク式問題の工夫改善,それから,英語についてのリスニング等の見直し,それから,各大学の個別選抜改革について記載のとおりの改革を進めるというような形での実施ということになろうかということでございます。
 それから,次に,英語の民間試験活用の経緯についてでございます。22ページ以降でございます。
 23ページは,英語の民間試験を活用するために大学入試英語成績提供システムを導入しようとしておったわけですが,これの仕組みでございます。受験生の方々が入試センターからIDを取っていただいて,そのIDをもって資格検定試験を現役であれば3年生の4月から12月に2回まで受験をし,そのIDにひも付けた形で試験の成績が入試センターに集約をされ,受験生の出願に応じて入試センターから成績が一元提供されると。このシステムの活用は,各大学で活用する,しないも含めて決めるというようなシステムだったわけでございますが,これについて導入の延期ということにしたわけでございます。
 24ページは,導入する場合の想定スケジュールだったわけですが,この11月から共通IDの発行申込みの受け付けが始まるところでしたが,その11月1日に延期ということを決定して,大臣から会見でお話をされたということでございます。
 25ページは,このシステムに参加をする予定であった検定試験の一覧表,それから,26ページは,この際に活用する予定であったCEFRと参加試験のスコアの対照表というようなことで,これを示す形で複数の参加試験の点数とレベル付けの関連を示しておったということでございます。
 27ページから29ページまでは,英語の成績提供システムの導入についての実施方針,それから,実施方針の策定に当たっての考え方,平成29年7月に出したものですが,その記載を収録しております。
 28ページをごらんいただきますと,このシステムを導入するに当たって,共通テストの英語試験をどういうふうに実施するのかということで,A案,B案ということがあったわけですけれども,これについても様々な御意見を伺った上で,B案に基づくような形での考え方が示されたというようなことです。
 29ページには,様々な実施場所,障害のある受験者への配慮,それから,受験者の検定料の配慮などについて,参加団体に求めるというような内容が記載されておったということです。
 30ページになりますが,英語成績提供システムの課題として,国会なども含めて指摘をされていた事柄についてまとめております。受験に係る地域的事情への対応が不十分ということで,民間試験の実施場所が都市部に比べて,地方部では試験が限定をされているというようなこと。これについては,団体に試験場所の追加設置なども要請しておったところです。
 それから,経済的に困難な者への対応が不十分というようなことで,受験料の設定は基本的には団体任せというようなことでございました。あるいは,練習受験が可能なので裕福な家庭の子が有利なんじゃないかというようなことがあったわけでございます。これについても,団体に対応を要請しておったというようなことです。
 それから,障害のある受験者への配慮が不十分ではないか。これも試験団体任せで,試験ごとにばらばらなのではないか。それから,31ページに行きまして,参加試験のスコアとCEFRとの対照表を活用することが,それぞれ目的,内容の異なる試験の成績を比較することが不適切なのではないかということ,また,受験の早期化,それから,これは,民間英語試験団体が試験自体は実施しますので,国が行えるのは要請のみだったというようなこと,それから,その他,情報提供や大学の活用予定の決定などが遅れていたというような課題が指摘をされておったわけでございます。
 32ページ,11月1日に大臣から,このシステムの導入の延期を発言した内容の骨子でございます。経済的状況,居住している地域にかかわらず,等しく安心して試験を受けられるような配慮などの準備状況が十分でないので,来年度からの導入を見送り,延期をすると。ただ,これについて,英語4技能評価自体は重要ですので,令和6年度実施の入試,これは新しい学習指導要領で初めて実施する入試になりますが,これに向けて検討会議を設置して検討するというような御発言。
 それから,33ページは,併せて大臣からの高校生等へのメッセージということでございます。
 英語のシステムの延期に伴いまして,34ページにございますとおり,各大学で民間試験の活用は可能ですので,それについて決定をして公表していただきたいというようなことをお願いしたわけでございまして,その状況が35ページ,36ページに記載をしております。
 35ページは,このシステムを導入して活用する予定だった大学の数でございます。全体,大学の数にして7割。選抜区分,それぞれの入試を実施する上での選抜の単位ですけれども,この単位で言いますと,3割ぐらいがこのシステムを導入すると。国公私別で言いますと,大学数で,国公立は8割,9割,私立は65%,選抜区分でいうと,国公立が4割,5割,私立で3割弱というような状況だったわけですが,36ページに参りますと,これはシステム延期後の状況ということですが,活用大学,システム延期後,民間試験活用をする大学の数ということですが,大学数で全体で6割弱,選抜区分で4分の1程度,国公私で言いますと,国立については6割,公立は3分の1,私立は6割弱,選抜区分でいうと,13%,8%,27%ということで,国公立は大分,導入前提のときと比べると数字が減っておりますが,私立大学については,そんなに変わっていないというような状況が分かるところでございます。
 それから,4点目の記述式問題の経緯についてでございます。37ページからでございますが,38ページは,今回導入する予定でした記述式の内容について記載をしております。受験者の思考力,判断力,表現力をより的確に評価することが可能という趣旨で,国語・数学について導入する。採点は,民間事業者に採点作業を委託しながら,大学入試センターで実施をするというようなことでございました。
 39ページは,記述式問題を導入する理由の1つとして考えておったものですが,国立大学の二次試験で国語,小論文,総合問題のいずれも課さない募集人員の割合が6割ほどあるというような内容のデータでございます。
 それから,40ページは,国語の記述式問題,これは見送り前にどれほどが利用するというふうにしておったかということですが,選抜区分で見ますと,一般選抜を予定している区分のうち,約半数の選抜区分が国語の記述式問題の利用を予定している,率にして49.3%という状況であったということでございます。
 41ページ,42ページは,共通テストに向けて29年,30年と2回,試行調査を実施したわけですが,その試行調査で実際に出題をされた国語・数学の記述式の問題の例ということでございます。正答の条件を設定して,それがそういった内容が書かれているかということで正答と判断する内容。それから,数学については,数式を書かせるというような内容になっているところでございます。
 43ページは,採点事業者についてのもので,9月に学力評価研究機構という株式会社と入試センターとの間で契約ということで,今年度から令和5年度まで,5年契約で記述式問題の採点業務や準備事業の実施などについて総額61億円で契約を結んでいたということです。
 44ページは,その採点事業者による採点のプロセスのイメージです。複数の視点から組織的・多層的な採点体制を構築するというふうな予定であったということでございます。
 それから,45ページから47ページは,この記述式の問題を導入する方針を決めた実施方針の内容でございますが,特に46ページには,この実施方針に当たっての考え方というようなことで,センターが採点する案,センターがデータ処理して各大学が採点する案というような様々な案を提示した上で,各団体にも意見を聞き,47ページにございますが,29年度,30年度にプレテストを実施するということを予定していましたので,そういったことの結果も踏まえて,更に検証していくというような形になっておったわけでございます。
 48ページは,そのプレテストの結果概要です。29年度,30年度と2回を実施したわけですが,国語について不一致率とあります。これは自己採点と実際の点数との不一致率でございますが,2回とも約3割前後というような状態。それから,国語の30年度の試行調査,補正率とあります。これは平たく言えば採点ミスということですけれども,30年度の国語の調査では0.3%前後というような状況であったということでございます。
 49ページは,この記述式問題について指摘をされていた課題ということです。質の高い採点者が確保できるのか。これは採点事業者に委託をしておりますが,採点事業者は質の高い採点者を確保する見込みでありますけれども,今年の秋から冬にかけて必要な研修などを行って実際の採点者の陣容がそろうというような状況。それから,正確な採点ができるのかということについては,採点の質の向上はいろんな取組で可能ですけれども,ミスを完全にゼロにすることは極めて難しいということ。それから,自己採点の問題については,ある程度一致率が上がることは見込まれますが,大幅に上昇することは困難であるというようなこと。その他,守秘義務の徹底,民間事業者が行う他の教育事業との関係,障害がある受験者に対する配慮などについての課題が指摘をされておったわけですが,先ほど49ページで記載をしておりますようなそれぞれの課題に対する認識などについて,入試センターの方から,大臣が直接お話を聞いた上で,50ページにございますが,12月17日に,令和3年1月実施の共通テストにおける記述式問題の導入については,受験生の不安を払拭し,安心して受験できる体制を早急に整えることは現時点において困難であり,記述式問題は実施せず,導入見送りを判断するというような形で発表いただいたということでございます。
 ただ,記述式問題が入試で果たす役割は重要ですので,各大学に個別入試での活用をお願いしていくとともに,この検討会議で共通テストや各大学の個別選抜における記述式問題のあり方など,入試における記述式の充実策についても御検討を頂くというような形での発言ということでございます。
 51ページから54ページまでは,大臣の御発言の実際の内容でございます。
 それから,最後に,資料6でございますが,この検討会議後のスケジュールということでございます。検討会議は約1年を目途に御検討をお願いしたいというお願いをしているわけですが,この後,例えば英語については令和6年度実施の入試を目指してということでございますが,その間,丸々5年間,空いているということではなくて,令和6年度に実施される入試で大きな変更をするということであれば,それについて,約2年前には大学に,共通テストで課す科目や個別入試の教科科目の変更という大きな変更については,2年前に大学から受験生に予告をしていただく必要があります。その2年前の予告を大学ができるように,私ども国として,その1年前の令和3年度の夏頃には,どういった内容の試験になるのかということを予告するような通知をさせていただく必要がありますので,1年間,御検討いただいた後,その次の年の半ばには,令和6年度に実施する入試について,どういった形でやるのかということを明らかにする必要が出てくるということで,時間的余裕は実はそんなにないというようなことを表しているものでございます。
 すいません。長くなりました。以上でございます。
【三島座長】
 御説明,ありがとうございました。大変膨大な資料の御説明を頂きましたけれども,これまでの大学入試の歴史といいますか,どういうふうに変化してきたかということと,後半になりますと,今回の問題の取組,どういう検討がされてきたかというようなことがきちっと御説明を頂いたと思っております。ありがとうございました。
 それでは,今日,第1回会議でございますので,議題の3としては,委員の皆様方の自由討論というか,御発言をお願いしたいと思います。
 今,この問題に対して考えておられること,あるいは個別に,今,御説明のあったところに対する御質問でも結構ですし,どんなことでも結構でございますので御発言を頂ければと思います。
 名立てを立てていただきましたら,私,できるだけ順番に御指名いたしますけれども,どんな角度からでも結構でございます。フリーディスカッションということでお始めいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。いかがでございましょうか。
 それでは,末冨委員は資料を御提出になっていらっしゃると思いますので,それに沿っての御説明を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
【末冨委員】  
 恐れ入ります。日本大学の末冨でございます。資料の説明を始める前に,この会議の前提状況をちょっと改めて確認をさせていただきたいんですが,私,この会議に参加するに際して,前提条件が白紙であると認識しております。原点に立ち返って,これまでの経緯の御説明はありましたけれども,英語民間試験,それから,記述式,4技能ともに,原点からの再検討を行っていくということで話を承っておりますが,それで間違いございませんでしょうか。
【三島座長】
 それで結構でございます。
【末冨委員】
 ありがとうございます。だとしたら,私が今から申し上げることは,原点に立ち返っての検討というものに多少はお役に立つかなと思って,資料を準備してまいりました。
 こちらの私の名前が付してあります提出資料というものですが,まず最初に,簡単に私自身のバックグラウンドの紹介をさせていただきたいと思います。私の専門は,ここに書いてあるとおりですけれども,特に教育費問題を中心として,厳しい状況にある子供,若者への教育機会というものをいかに改善していくのかということについて,具体的な政策としてどうやって実施すればいいのかということを特に中心に研究を重ねてまいりました。教育における貧困・格差の改善というものが法理念に照らし合わせましても,また,我が国の経済成長や社会統合にとっても極めて重要な課題であるということを私の原点の1つとしております。
 こうした問題意識の下で,内閣府の子供の貧困対策にも関わらせていただきましたし,また文部科学省の高校政策,あるいは学力調査分析や高校の管理職の皆様への研修などを通じて,高校の皆様もまた精力的なお取組を頂いていたり,イノベーティブな教育にお取り組みいただいているということは承知しておるつもりでございます。
 本日は,大学入試のあり方を改めて検討するに際しまして,子供の貧困,それから,格差の改善という視点の重要性,そして,多様な主体の参画保障の重要性について,申し述べさせていただければと思います。
 次のスライドに参ります。本日御出席の委員の皆様方は,私のような者が何でここにいるのかということを説明した方がいいと思うんですけれども,令和元年に子供の貧困対策の法等改正について重要な変更が行われたということは御存じでいらっしゃいますでしょうか。何人かの方はうなずいていただいていますが,御存じない方は,これ以降,政府政策としての一貫性を保つためには,大学入試政策もまた子供の貧困対策を視野に入れながら進められるべきであるということを認識いただけますと幸いに存じます。
 内閣府の委員として私自身も,令和元年度の子供の貧困対策の法,大綱改正におきましては,かなり自分の研究者としての時間を割いてまいりました。特にお礼を申し上げたいのは,高等教育の無償化については政府を挙げて,そして,様々な関連省庁挙げてお取り組みいただいたということです。同時に,子供の貧困対策においては,貧困層の子供への教育の機会均等の実現,また,最も厳しい状況にある生活保護世帯に属する子供の大学進学率が子供の貧困の改善を捕捉するための指標として法,大綱に規定されております。併せてEBPMの方向性も盛り込まれております。これらの改革が何を意味するかといいますと,これまで我が国で本格的な取組が行われてこなかった,教育機会において不利な状況にある若者に対して実質的な教育機会を保障していくという政策転換が起きているということを意味しております。
 私自身が大変心配しておりましたのが,拙速な大学入試改革が結果として格差拡大政策として機能してしまうという側面を持ってしまうことにございます。内閣府政策と文科政策との齟齬が生じてしまうことも当然懸念はしていたわけですけれども,厳しい状況にある若者たちの教育機会,特に大学進学というものにチャレンジしていく機会というものが奪われるということを心配しておりました。それゆえに,一旦立ち止まるという御決断を頂いたということに対しては,萩生田文部科学大臣に大変感謝をしております。
 大学入試のあり方を検討する際にも,厳しい状況にある子供,若者への実質的な教育機会保障という大きな政策との整合性を踏まえなければ,これまで大学教育機会の中で不利なまま放置されてきた低所得世帯,そして,地方在住者,女子の受験生といった,これからの社会において高等教育を受け,産業の高度化をする社会で活躍する人たちの将来は開けないというふうに考えています。
 少子化の中にあって,教育の機会均等の保障と大学入試制度改革とどのように両立するかというのは,我が国の将来の成長に関わる重要な問題であると考えています。特に今回の大学入試制度改革については,私自身も実際に貧困層の若者たちと接しながら仕事をしていますけれども,やはり受験自体をやめなきゃいけないんじゃないか,これでは自分たちは受けられない,そして,とても不安だと,大学入試がどういうふうな方向に進んでいくのか全く分からないといったことも含めて非常に悩んでいました。であるからこそ,見直しに当たっては,高等教育の無償化の効果が打ち消されることがないように,入試の壁があってはならないものという前提の下で議論を進める必要性を強く感じております。
 実際に数値で示しましたけれども,生活保護世帯からの大学・短期大学等進学率は19%にすぎず,同じ年度の18歳人口全体と比較しますと33ポイントの差がございます。現政権で進めていただいている高等教育の無償化というものは,この格差を縮めていくということが我が国の成長戦略としても大事であるというお考えの下にお進めいただいておりますので,どうかこうした格差が縮まるように,大学入試改革を含めて大きなあり方を検討していただければと思います。
 最後のスライドに参りますけれども,内閣府の子供の貧困対策におきましては,実は今回,私自身がかなりこだわったポイントの1つが子供,若者や保護者など,政策ターゲットとなる当事者の御意見を聞いていくということにあります。併せて当事者のアドボケイトの適切性というものを担保するために専門家や現場の支援者の知見を活用する仕組みというものが内閣府の子供の貧困対策においては実現されており,法の裏付けも得られております。
 これは,我が国が批准している児童の権利条約に照らし合わせて望ましい,いいことなんだという考え方もありますけれども,政策論の観点から冷静に申し上げさせていただくならば,当事者の意見やニーズを無視した政策というのは大体,効果が低いということは言えるのではないでしょうか。大学入試制度も先ほど大臣がおっしゃいましたように,当事者である受験生が安心して受験できる,それから,納得して受験できる公平・公正な制度でなければ,入試段階での混乱を招きまして,大学段階でも不本意入学ですとか,ドロップアウトのリスクも高めていくことになる負の影響もあると考えています。
 また,成績優秀層は魅力的ではない日本の入試制度を見限って,海外への人材流出が本格化してしまうリスクも視野に入れていく必要がございます。
 特に延期に至るプロセスでは,文部科学省に対しての署名や,あるいは記者会見を行った高校生も出現するなど,若者たちが当事者として勇気を持って声を上げたことを政策担当者としては重く受け止めるべきではないでしょうか。教育行政がここまで若者からの不信の対象となってしまうような事態は,この検討のプロセスにおいては二度と引き起こしてはならないことだというふうに考えます。
 従いまして,高校生や,あるいは2024年度以降の入試の当事者,今まだ中学生ですけれども,中学生世代,例えばその保護者も含めてですが,それから多様なニーズも持つ受験生等の不安や要望を丁寧に分析して,若者たち,あるいは保護者の皆様と方針を共有しながら改革が進められるべきであろうと考えます。
 あわせて,延期に至る前に,先ほどプロセスは御紹介いただきましたけれども,かなりの数の専門家が「慎重に検討を行うべきだ」というような御意見は意見表明なさっていたかと思います。こうした経緯を考えますと,様々なお立場の専門家の御意見,あるいは高校の現場で教育活動の最前線にいらっしゃる教員や,あるいは貧困層を含めて,多様な立場の大人が受験生を支援してくださっていますので,そうした多様な主体の参画を保証するということが不可欠のプロセスであろうというふうに存じます。
 もちろん,この会議本体に様々な意見の方をというようなこともございましたが,多分,時間にも数にも限りがございますので,可能であれば,せっかくSociety5.0の時代でございます,オンラインの意見集約等の活用といったものを御検討いただきまして,短い期間でのパブリックコメントではなく,継続的に意見を集めながら,我々もこの場で検討をしていけるような仕組みというものをお願いできればと存じます。
 以上です。
【三島座長】
 御意見どうもありがとうございました。
 それでは,ちょっとここで大臣が公務のため御退席されますので,御感想あるいは一言,最後にお話しいただければと思います。
【萩生田文部科学大臣】
 皆さん,本当に忙しい中ありがとうございます。これからまだ議論は続けていただけると思います。率直な様々な御意見を頂きたいと思っております。
 私もこの2つの制度を立ち止まるに当たっては,一部報道などでは何か政権の支持率を危惧してみたいなことを言われましたけど,そんなことではなくて,局の皆さんとも夜な夜な本当に真剣な議論をし,また,多くの皆さんの声を聞いて,最終決断をしました。今まで積み上げてきていただいた多くの皆さんの御苦労があるわけですし,これは少なからず国民の皆さんの税金を使わせてもらって様々な制度設計をしてきているわけですから,やめるということも大きな責任があるという,そういう判断の下で最終決断しました。
 したがって,やり直しをするに当たって,過去をなぞるような議論をしてはならないと思っています。是非,今日選ばれた委員の先生方は,過去の議論に参加をしていただいた先生方もいらっしゃいます。それから,外から様々な問題提起をしていただいた先生方もいらっしゃいます。また,今回のこの問題が発生して,様々なアドバイスを頂いた先生方もいらっしゃいます。それぞれ,実はお立場のある皆さんですから,会議原則公開は大いに結構ですけれど,しかし,検証のことになりますと,あのときに私が気づいたことは,実は野党の皆さんも国会で指摘をしました。野党の皆さんが指摘をしたことは,後ほど議事録を見ると,専門家の先生たちも問題提起をしていたり,外からの様々な提言もあったりするわけです。なのに,なぜここまで来てしまったのかというのは,私は当時,不思議でならなかったんです。
 この平場で,メディアの皆さんの前で,例えば文科省の批判をするとか,他の委員の皆さんの発言に対して意見具申するというのは結構大変なことだと思うので,決して隠すつもりはありませんけれども,どこかでは1回ちょっと雰囲気の悪い会議をやってもらった方がいいんじゃないかと。一度はクローズで是非そんなこともやっていただいて,後ほど議事録を出していただくということを1回やっていただいたらいかがかな,こう思っております。
 これ以上後退するわけにいきませんので,あのとき足を止めて,皆さんで話し合って本当にいい制度になった,子供たちも前向きに大学受験を目指すことができるようになったと思ってもらえるような制度を作るために,是非,先生方のお力をお借りしたいと思いますので,闊達な御議論を賜りますようにお願いしたいと思います。
 あわせて,文科省側もいろいろ思いはあるのでしょうけど,ここはもう全てオープンにして,皆さんにさらして話をしていただきたいなと思うんです。例えば,さっきセンター試験の説明の中で,私立大学や短大が約700校がセンター試験を利用していますって,こういう報告がありました。普通の人はそう思うわけですよ。だけど,これは入試の,要するに700校というけれども,700校のうちのA大学の1学部の1学科のほんの一部が使ったって,1校とカウントしているわけですよね。ですから,結果として,いわゆる選抜区分で割り戻したら, 3割の大学しか最初から使う予定はありませんでしたと。
 そして,あれだけ4技能が大切だ,記述式も大切だって大学や大学関係者は会う人全てが私に言ってくれました。だけど,文科省がやめたからといって,自力でやるという学校はこれしかないわけじゃないですか。では,本当に大事だと思ったら,なぜやらないのか。私は不思議でしょうがないわけです。
 ですから,そういうことも含めて,数字は変なマジックは要りませんから,そのままの数字を出していただいて,先生方に様々な議論していただく準備をしてもらいたいなと思います。大学入試センター試験は700校の私立が使っていますと言ったら,そう思うけれど,そんなことはないわけですよ。700校のごく一部の学部の人たちが利用しているだけであって,圧倒的に国公立の大学の受験システムであることは今の段階では否めないわけです。
 じゃ,ここに本当に私立の皆さんの思いというものを付加していくことが可能なのかどうなのかということは,これから本当に考えていかなくてはならないので,数字は,格好つけなくていいですから,正しく示していただいて,また,先生方にも繰り返しになりますけれども,どうぞ忌憚のない御意見を頂いて,御批判も真摯に受けたいと思いますので,これから約1年間,長い時間になりますけれども,よろしくお願い申し上げて,今日は中座をお許しいただきたいと思います。
 以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。
(萩生田文部科学大臣 退席)
【三島座長】
 それでは,大臣からこの会議の基本的な姿勢ということも言っていただきましたので,皆様方から本当に忌憚のない御意見を頂きたいと思います。
 続いて,両角委員がやはり提出資料を出されておりますので,そこまでお二人,先にしていただいて,あと十数名の委員の方がいらっしゃるので,その後はなるべくコンパクトに2~3分というようなことをめどにやっていただければと思いまして,今,名立てが立ち上がっているのが次が吉田委員,牧田委員,そして柴田委員という順番になろうかと思います。よろしくお願いいたします。
【両角委員】
 東京大学の両角と申します。私は高等教育を研究している立場からこの議論に参加することになりました。
 今回は最初の会議ということで,一人2分ぐらいで意見を出してくれということなので,事前に資料を提出させていただきました。個別の論点に関してはいろいろまた思っていることはあるんですが,今日は最初だということで,この会議をどう進めるのかということで,先ほど武藤さんの方からも説明ありましたし,今,大臣からも徹底的にという御発言を聞いて心強く思いましたが,まず,私が1つ目にこの会議に期待したいと思ったことは,やはりこれまでの経緯の徹底的な検証をしっかりするべきではないかという,当たり前と思われるかもしれませんが,その主張です。
 というのは,今回,趣旨には「今般の一連の経緯を踏まえ」とは書いてあるんですが,検討事項と掲げられた4つの中に,なぜこれほどの大混乱に至ってしまったのかという検証を徹底的に行うということが書かれていません。それが一番最初の検討事項ではないかと思っていたんですが,書いていなかったので大変驚きまして,それをまずやはり,オープンでできない場合はクローズでも構いませんので,徹底的にすることが必要であると思います。それをなくして,この英語4技能,記述式の話などに入っていっても,また同じ失敗を繰り返すのではないかと懸念しております。
 先ほどからも意見が出ておりましたが,英語の問題にしても記述式の問題にしても,何年も前から専門家の方々がいろんな問題を指摘し続けたにもかかわらず,そういった意見が反映されることがなく,土壇場になってこういう見送りとなったりして,そのときに出てきた論点は前から多くの方が言ってきたことでした。なぜそういったことが反映されなかったのかということは,犯人探しという意味ではなく,今後そういうことが起こらないためにも,きちんと経緯等を把握しておく必要があると思います。
 また,先ほど大臣もおっしゃったことと関連するんですが,文科省の方針を撤回したことを受けて,もともとやると言っていた大学がやっぱりやめますという判断をたくさんしたということに対しても,私はすごく驚きと憤りを感じているわけなんですけれど,その程度の判断をなぜ大学はしたのかということとか,いろいろ反省すべき点が多いかなと感じています。
 今回の事態に至った背景として,私自身は,手段と目的を取り違えたことがそもそも問題だったんじゃないかと思っています。入試を変えることで高校と大学の教育を変えるという発想自体がおかしくて,教育の課題は教育の現場で解決されるべきで,入試で解決しようと思ってできることではなく,新たな問題を生むだけだというふうに思います。
 英語の民間試験も記述式テストも,それぞれの目的に沿ってやるのであれば,私は非常にいいものだと思いますが,入試,しかも共通テストに使おうとしたところでおかしなことが起きてしまったというふうに考えておりますので,そのあたりの根本的なところからの議論をきちんとしたいというのが1点目の要望です。
 2点目は,先ほどの末冨委員ともほとんど重なっていますので,提出資料に書いてありますので省略しますが,入試の問題は現場の高校あるいは大学,しかもそれもすごく多様な存在で,どこか1校の話を聞いたから済むというものではないと思うんですが,そういう現場の声ですとか,あるいは,入試ってみんなにとって身近なものではあるんですが,それを公平に公正に行うためには,実は専門的な知見がすごく入っていまして,そういった専門家の声というものもきちんと入れた上で議論をしていきたいということを要望しますという,この2点について私からは意見表明させていただきます。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは次,吉田委員,お願いします。
【吉田委員】
 吉田でございます。ありがとうございます。
 私どもは本日,日本の私立中学・高等学校の代表としてこの会議に臨ませていただいているわけですが,まず基本的なことを言えば,大学入試というもの自体は各大学が決めることであって,我々が決めることではありません。ただ,今回は,大学と高等学校,そしてこの大学入試を変えることによって,今,日本が世界の国に遅れてきている,いろんな部分で遅れてきているものを取り返して,きちんとした教育をやっていこうという目的で,国の,それこそ内閣の教育再生実行会議の第4次提言においてこのことが提言されて,そして,英語4技能試験も記述式の問題もそこで決まってきたことであったと思っています。
 そして,その間にいろいろな問題もありました。ただ,そういう中で決定されたわけなのです。そして,先ほど末冨委員のお話にもあった子供の貧困,格差改善というのは,これは別問題として大変なことであると思います。ただ,このことに関しても,内閣がやるべきことであって,試験をやると決めたのであれば,それに対して内閣がどういうふうにお金を付けて,そういう方たちを救うかということをやるべきだと思います。
 ただ,教育が本当に世界に対して遅れてきているという実態を考えた上で,英語4技能の必要性,そして記述式の必要性,極端な言い方をしたら,正解のない,これから様々な問題に対して対応できるような思考力,判断力,表現力といった新しい学力をしっかりと身に付けた子を育てるための教育改革をやるために,高校教育,大学教育を変える,その間にある大学入試を変えるということで始まったのではないかと思います。
 ですから,先ほど英語4技能試験,それから記述式も全部白紙に戻してということでしたが,我々が今まで何年間も費やさせられたこと,それから内閣というか,政府が決めてくれたこと,それは一体どこに戻すのか,そこをゼロにするのか,それを私は伺いたいと思います。
 そして,さらには,今年というか,来年から,格差の問題でいえば,大学の高等教育無償化はもちろんのこと,高等学校においても所得590万円以下の人たちに39万6,000円の,私立学校に通う生徒たちへの,授業料補助を出していただける就学支援金の拡大ということもできました。そういういろいろな方策も考えていただいています。それは多分,国がこの日本の教育を変えようということだと思いますので,変える方向で進んできたものを是非きっちりと進められるような,そういう有意義な会にしていただけることを願っております。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。まさに,なぜここでやらないことに決めたかというところの経緯についての検証はきちっとしなきゃいけないと思いますので,そういう意味の,ある意味で,「白紙」という言葉は全部を元に戻すということではなく,しっかり今までの経緯をよく見た上で,より,いろいろなステークホルダーの方たちが安心できるようなシステムにこの1年考えてみようということだろうというふうに思いますので,是非御協力を頂ければと思います。
 それでは,牧田委員どうぞ。
【牧田委員】
 高等学校PTA連合会の牧田でございます。先ほど大臣がクローズドな会議をこの後やるというふうにおっしゃったので,えげつないことはそっちに回したいと思いますので,今日は1回目ということでありますので,まず,基本的な思いを述べさせていただきます。
 最初に,先ほど資料の説明を頂いた各国の入試制度の比較がありましたけれども,これは基本的に教育制度が違うので,一概にそのまま比較をするとなるとミスリードになると思っています。ドイツなどはある程度途中途中でセレクトされて,最後,ギムナジウムで試験を受けているわけですから,日本の事情とは全く違うわけでありまして,その辺は是非お気を付けいただきたいと思います。
 さて,本論ですけれども,そもそも大学入試というのは大学に入学するための試験だというふうに認識をしておりますし,先ほどの基本方針でもそれは述べられてございます。ということは,前提として,子供たちはまずは大学を選択する自由が与えられているわけでありまして,その選択する自由に基づいて,今度は大学に入学を許可するというか,認める方は,大学はどういう人材が欲しいのか,どういう資質を持った子供たちが欲しいのかということがベースにあると思うのです。これは先ほど両角委員がおっしゃったことと全く一緒だと思います。その上で,それぞれの大学が作問をし,試験をするというのが大原則なのだろうと思っています。
 ところが,それがセンター試験というところでいろんなことを加えていこうというような動きがあって,これが本当に公正さにつながっていくのかというと,実はこれは逆の動きだろうと思っています。
 子供たちは大学を選択する自由が与えられているということは,自由と平等というのは,これは成り立たないのでありまして,そこへ公平とか平等とかという概念を持ち込むと,子供たちは試験しなくて入ればいいじゃないかといった究極の結論が出てくるわけであります。それでは全く意味がないのでありますので,本日の検討会議の検討事項が4つありますけれども,少なくとも1番目,2番目については,これはまずは大学の2次試験といいますか,それぞれの大学でクリアすべきことであろうと思っております。
 ですから,是非,大学入試というのは大学さん側にしっかりとしていただきたいというのが基本的な考え方であります。
 以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,続いて,柴田委員どうぞ。
【柴田委員】
 私は今回の改革等々,以前から入試に関わっておりましたので,随分と思い切った改革だなと思っておりました。従来のいわゆる日本の入試風土といいますか,公平,公正を担保した上で厳密にやるというようなものに大きな変化を与えるので,このまま行くのかなという懸念は持っていました。
 さはさりながら,我々公立大学団体の集まりとして,円滑に今回の改革を取り入れて,大学の入学者選抜を進めなければいけないので,対応したいろいろなことをやってきました。その一方で前々から文科省の方もおっしゃっておられましたが,今回,最終になるか分かりませんけれども,令和6年度の指導要領の改訂があるので,その際にも更にまた一段階違うバージョンになるというようなお話を聞いていましたので,この3年,4年間というのはある程度の移行期間ではないかと我々の団体では見ておりまして,恐らく今までの日本の入試制度からするとかなりの混乱が起こるだろうと思っていたら,こういう事態になったわけでございます。
 この検討会議でこれから大所高所からいろいろ議論が進んでいくことを期待しておりますけれども,大学団体として差し当たって,今の高校2年生から受験する令和3年度の入試について,英語外部試験と記述式問題はなくなったわけでございますから,早急にどういう体制でやるのかというのを明確に,恐らく入試センターの方から発表があると思いますが,是非早めに出していただいて,それに対して大学団体としても対応を決めなければいけないと考えております。
 特に大学としまして,先ほど両角委員から,何でこんなに急に利用大学が減ったんだという御指摘がありましたけれども,英語4技能の成績提供システムというのは大学にとっては大変ありがたい制度だったんです。それから受験生にとっても,わざわざ成績証明書を取らないでいいので,恩恵は結構あったんですけれども,一面では多々難点はありますし,非常に不利益を被る方がおられたというのは事実なわけです。したがって,これがなくなったときに大学はどう対応するかというのは,このアドバンテージを利用することを前提で入試を設計していたものですから,その前提がなくなったらちょっと無理だなというところです。
 それから,記述式問題につきましても,随分苦労して大学の方としては記述式の導入に対応したわけです。一番大学として困ったのは,採点のために成績提供日時が1週間ぐらい後倒しになって,大学の方は少なくとも一般選抜の入試日程などが非常に窮屈になっています。だから,これは記述式がなくなったというこの時点では是非解消していただければと思っております。できるだけ早く,できましたら令和3年度,我々は既に実施要項を会員校には通知しているんですけれども,それが変更できるかどうかというような事態になっております。この会議は大所高所,長期的なお話をするというのは理解しておりますが,それについてはまたおいおい発言させていただくこととして,以上の2点,これは入試センターさんにお願いすべきことと思いますけれども,是非早急な対応をお願いしたいと思います。
 以上でございます。
【三島座長】
 どうもありがとうございます。それでは,次が,益戸委員どうぞ。
【益戸委員】
 益戸でございます。どうぞよろしくお願い致します。
 自己紹介を兼ねまして,私の意見を述べさせていただきます。私は,大学卒業後,10年間,日本のメガバンクにおりました。その後30年強,外資系金融機関におり,現在はロボティックス・プロセス・オートメーションと呼ばれているRPAの外資系企業の顧問を務めております。
 私の外資系企業勤務での経験なんですが,一度も「どこの大学の卒業ですか?」と聞かれたことがありません。「何が専門ですか?」とは必ず聞かれました。日本と海外では随分違うものです。終身雇用前提と職種別採用の違いによる高等教育に対する考え方の違いだと思います。
 中央教育審議会の各委員を引き受けるようになったのは,専門職大学などの創設の委員会からです。次は,2040年の高等教育のグランドデザイン答申。本日御出席の両角委員もご一緒でした。昨年は,グランドデザイン答申で議論をし尽くすことができなかった教学マネジメントについて,約1年かけての議論に参加しました。これは,予測困難な時代を生き抜く自律的な学修者養成には,学修者本位の教育への転換が必要である。そのために,教育組織としての大学が,教学マネジメントという考え方を重視していく必要がある。卒業認定,学位授与,教育課程編成,入学者受入れなどの方針決定を学修者目線で考え,かつ大学から積極的に情報公表していく,というものです。間もなく,その意見が中央教育審議会の大学分科会で議論されます。
 さて,私は初等中等教育分野の議論には参加していませんが,間もなく新しい学習指導要領が始まります。そして,学校の先生方の働き方改革の答申も出ました。私たち民間企業は,80年代の国際化,90年代から始まったグローバル化という波の中で,企業が生き残るためのあらゆる議論や改革に取り組んできました。
 私は,改革について議論するこの委員会の中で,入試改革というのは飽くまでも,従来の初等中等教育から高等教育にかけての教育の質の転換の中での1つの手段と捉えて議論していくべきなのではないかと考えています。先ほど吉田先生がおっしゃいましたが,日本の教育はこれでいいのかというところが原点だったと思っております。もちろん大学入試という意味でのテクニカルな問題もあるとは思いますが,一連の大きな流れの中で結論を出していく,点検をしていくということが非常に重要だと考えておりますので,よろしくお願いいたします。
 あと,座長,1つお願いがあります。本日,大学入試センターの山本理事長がオブザーバーとして御参加です。一言,昨今の議論をどのようにお感じになっていたのかということをお聞きしたいと思いますが,いかがでしょうか。
【三島座長】
 理事長,よろしいですか。
【山本オブザーバー】
 皆さんの御意見が済んだ後,もし時間があれば,私から少しコメントを差し上げたいと思います。先ほどの柴田委員の御質問も含めて。
【三島座長】
 分かりました。
 それでは,次は岡委員ですかね。よろしくお願いします。
【岡委員】
 国立大学協会の入試委員として,今日出席させていただいております。
 先ほどから,大学は英語の試験についてもなぜこういう声明が出たらすぐやめたんだというようなお話が出ておりましたけども,国大協としましては長年の間,入試改革についていろいろ議論をしてきておりまして,膨大な時間をかけてまいりました。いいかげんな気持ちで決して対応してきたわけではなくて,問題点も全て指摘しながらやってきたというのは,これは誤解されないようにしていただきたいなというふうに思っておるわけでございます。
 そもそも,いわゆる高大接続改革といいますか,大学入試が変われば高等学校の教育が変わるだろう,高等学校の教育が変われば中学校が変わる,中学が変われば小学校が変わる,そういう連鎖の目的でこれが起こったわけですけども,確かに英語の4技能というのは非常に重要でありまして,大学の中でもこれをどうやって涵養するかという非常に努力をしています。
 それから,思考力,判断力,表現力等の3技能というのは,自分が自ら新しいものにチャレンジをしていくという,その姿勢のためには非常に重要だというふうに誰もが考えるところでありまして,それをどうやって評価するかというところで,大学の共通試験ですが,今回は大学入学共通テストという形で変わっていこうという議論がされて,その直前で中止になったということでございますけれども,まず英語の試験に関しましては,一部は民間の試験を実際に使っていますけども,我々として最大限の英語の評価をしているんですが,これにスピーキングの評価をせいと言われると,何千人の学生にそれを等しくやるというのは,本当に一部の例えば外大とか,そういうのはやっていても,なかなか困難だということは御理解いただきたいと思います。
 で,なぜやめたかということも,これだけ問題になったものに,国から支援をしていただいている国立大学がそのまま続けるということの判断は非常に難しかったんだろうと。私もそれはやめろというふうに指示をしたわけです。ここは冷静になってもう一度しっかり議論をしていただいて,できるもの,できないものというのを明確にしていただきたい。
 それから,先ほど記述式の問題がありましたけれども,国立大学の中でもかなりのところで,東北大学が2015年の調査では,国立大学のいわゆる個別試験の2万4000に上る試験のうちで,短文,長文で答える問題や小論文,数式などの記述式が88%に上がっているというのも事実でありまして,全ての学部で導入されているかどうかは別として,そういうことはやってきたわけです。
 もともとこの記述式に関しましては,国立大学協会の議論の中では,自分のところは個別でやっているんだという意見もあったんですが,そういう形で等しく記述式を導入するというのは,それなりに高等教育も変わっていくでしょうからということで容認をしていったわけですが,なかなか,採点とかいろいろな問題点も私たちも指摘してきたところでございます。
 いずれにしましても英語の民間試験の導入,英語の4技能をどうやってやるかというのをここでまた白紙で考えていただくというのは非常にいいことですし,記述式問題についても,各大学でどのようにしているかも調査されまして,そしてここで議論されるというのがいいんじゃないか,こういうふうに思っている次第です。
 ありがとうございました。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,圓月委員,お願いいたします。
【圓月委員】
 日本私立大学連盟の圓月と申します。先ほど萩生田大臣の最後の御挨拶の中でも特段,私立大学に対する御期待を述べていただいたものというふうに思っておりますので,私立大学の立場から大学入試のあり方に関する検討会議に対する期待と要望というものを簡単に述べさせていただきたいと思います。
 御存じのとおり,大学生の70%を超える若者たちが私立大学で学んでおります。私立大学は,国公立以上に多様な学生に高等教育の機会を与えるということに大きな貢献をしてきたというふうに自負をしております。
 以前,この入試改革関係の会議に参加させていただいたときも当初から申しましたが,高大接続改善に関しましては,国公立に負けることなく強い関心を持っておりますけれども,多様な学生を引き受けてきた私立大学としましては,何よりもまずやはり経済的格差,地域格差等の不安というものを払拭するような案を作っていただきたいと述べてまいりました。この方針というものは変わりません。また,その問題を受けてこの会議も開かれたものというふうに理解しております。今後,経済格差,そして地域格差,そして障害の有無等に関しての公正性を担保するような案というものを是非作っていただきたいと思っております。
 また,先ほど事務局の説明,資料の中にもございましたけれども,一般入試の実施の仕方という点でも私立大学,やはり多様なものがございます。それぞれ建学の精神,教育の理念を軸にしてアドミッションポリシーというものを独自に運営しておりますので,それぞれ多様性があるということを御理解いただきたいというふうに思っています。
 今回の一連の動きの中でも,ともすると時折,私立大学の情報の公表が遅れがちで,足並みがそろわないのではないかという御質問を受けるようなこともありました。しかし,私立大学は,それぞれが高大接続改善というものに取り組んでおり,私立大学の特性上,一律に足並みをそろえて情報公表することはなかなか難しいところもございます。
 特に,先ほどもございましたとおり,入試情報に関しましては,2年前予告ルールという非常に難しいルールがございます。また,実施に当たっても,1月から2月にかけて,非常に込み入った入試日程もございますので,私立大学の現状に合わない日程が示されたりするときも時折ございました。
 今後も私立大学も貢献していきたいと思いますので,発言の機会を与えていただき,また,私立大学の現状も理解したスケジュール等を組んでいただきたいというふうにお願いしたいと思います。
 以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。それでは,次,川嶋委員。
【川嶋委員】
 ありがとうございます。いろいろ論点はあるかと思うんですけれども,今日は第1回ということで,各委員それぞれ自由な発言をという座長あるいは文部科学大臣からの御発言もございましたので,直接,今回のこの委員会の審議課題と関係するとは限らないんですけれども,2点述べさせていただきます。
 1点目は,世紀が変わる頃,1999年中央教育審議会から「初等教育と高等教育の接続の改善について」という答申があり,その翌年に大学審議会から「大学入試の改善について」という答申がございました。この頃の2つの答申の大学入試についての問題意識というか,状況認識は,中学校から高等学校へは98%の進学率,それから大学への進学率も50%を超える。さらに大学も増えているが,18歳人口が減っているということで,いわゆる括弧付きですけど,「大学全入時代」がやってくるんだという,そういう状況認識を示した上で,それ以前のように,大学入試を変えることによって高等学校教育の質保証,出口保証,それから大学の入り口保証,これらを今後も期待することは困難である。このような前提の中で,これからいかに高大接続を図っていくのかということで,いくつかの提言をしました。例えば高大連携の推進ということで,大学教員が高等学校で出前授業を行うとか,教育上の接続を重視した取組などをしてはどうかという提言がされたところでございます。
 その後の「学士課程教育の構築に向けて」とか「質的転換答申」等も含めて,大学入試に関しては,入試によって高等学校教育と大学教育の質を図るということは困難な状況にあるという前提の中で,その接続をどうすればよいかという認識で議論が進んできたと思います。
 その中で,高大接続特別部会が設置された際には,先ほど大臣発言もございましたけれども,大学入試だけではなくて,高等学校教育のあり方,大学教育のあり方,そして両者を結ぶ入試のあり方をどうするかということで検討が始まったかと思うんですが,入試を変えれば教育が変わるだろうという従来型の思い込みが強いがために,今回の様々な議論も,どうしても大学入試,特に共通テストのあり方に議論が集中したというところがあるのではないかと思います。
 一方,高等学校教育についても多様化が進んでいる中で,標準性というものも重要ということで,高等学校教育部会が高大接続特別部会と同じぐらいの時期に設置されまして,高等教育の質保証について,高校教育の共通コアは何か。コアの中でも知識,技能あるいは思考力,判断力については,客観的なテストで評価できるのではないかということになり,当時は「達成度テスト(基礎レベル)」とか「高等学校基礎学力テスト(仮称)」等を含む多様な評価のあり方が提言されました。
 しかし,結局は高等学校教育の多様性というところに戻ってしまって,「高校生の学びのための基礎診断」の名称のもと,基礎学力の評価については各学校の状況に応じて外部検定やテストなどを導入して,それぞれの高校の教育の質保証をしなさいということになりました。
 そういうこともあって,ここからは私見ですけれども,ならば,高等学校教育の共通の質保証をどこでするかということで,今回,大学入学共通テストで例えば英語の4技能あるいは記述力というものを評価すれば,高等学校への影響力もあるのではないかということで,本来,大学入試の純粋な機能に絞って大学入試を改革すべき,というもともとの高大接続改革の発想は変容し,どうやら高等学校教育あるいは大学教育の質保証まで,改めて大学入試に期待されるようになったというところに1つの混乱があったのではないかというふうに考えます。
 2点目は大学入試の平等や公平,公正性についてです。これについても,先ほど御紹介した幾つかの答申では常に課題として挙げられております。それで今回,英語の4技能試験で受験機会の地域格差,経済格差が大きく取り上げられましたけれども,しかし,英語4技能試験だけではなくて,例えば個別入試の受験,あるいはセンター試験の受験,これについても,自宅から受験できる生徒もいれば,同じ県内でも,受験会場である大学や高校が近くない生徒の場合は宿泊して受験しなきゃいけない。既にそういう平等,公平さの観点からいくと,受験機会の格差というのは生じているわけです。
 ちょっと卑近な例ですが,私も本日の会議に出席するために昨夜上京しました。そうしますと,3時間ぐらいの時間をかけて移動しますので,そういう時間というコストをかけて東京にくるわけです。一方,都内からの委員の方は昨晩遅くまで職場でしっかり仕事をして,家庭で楽しい食事をして,本日の会議に万全を期して出席されているかと思うのですが,私みたいな者は寂しく一人ホテルで食事をするわけです。このように心理的な,あるいは時間的なコストをかけて,この会議に出席している。これらを機会コストと言いますが,大学受験についても同様です。
 東大を受験しようと思ったら,都内の生徒はそれほど機会コストはかからないけれども,地方の受験生は機会コストがかかる。幸い,私の場合は交通費と宿泊費は文部科学省から出していただけるのでいいのですけれども,地方の受験生の場合は自分で交通費,宿泊費,心理的な不安定さなどの機会コストを払わないといけない。このように考えると,なかなか受験機会の平等性というのを厳密に担保するのは非常に難しい。
 では,どうするかというと,やはり大学側がきちんと一人一人の受験生の背景を考慮した上で,公正な評価をする,これが「接続答申」での1つの提言だったと思います。
 最後に1つの例を挙げますけれども,定員100人のところで100番目の受験生の点数が90点,101番目の受験生の点数が89点。現状の平等で公平な入試の考え方では,90点の受験生を合格させるわけです。だけれども,90点取った受験生が,例えば都内の私立の6年一貫校出身者,89点の受験生が地方の公立高校の受験者といった場合,どっちを合格させるのが公正なのでしょうか。機会の平等さだけでなく,同等の評価かどうかという点では,現状の入試には不公平が存在しているのではないでしょうか。大学側がこれからはきちんと受験生の様々な背景までそれこそ総合的に評価して,合否を決めるというふうな形に日本の入試を変えていかないと,いつまでもこの問題は解決できないのではないかと思います。
 すいません,長々と。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは続いて,清水委員,いかがでしょうか。
【清水委員】
 筑波大学の清水と申します。私は数学教育を専門にしておりまして,私の研究科の修了生たちは全国の高校の教員にもなっていますし,特に数学についてはこの4月から全面実施に移る小学校あるいは次年度からの中学校の学習指導要領も少し眺めたりしながら,今日はこの会議に参加させていただいています。
 この会議の名称が意味深ですけれども,この「あり方」という議論を教育の文脈でしようとすると,誰もが教育の経験はありますし,家族や関連の者が直接入試が近かったりしますので,いろんな意見が出てきます。数学的に言うと多変数の関数のようになっていて,どこを大事だと考えるかによって,どういうふうに決定されるかという議論が相対的になってしまっているというふうに思います。
 ですので,私が今日申し上げたいなと思ったのは,先ほど両角委員がおっしゃいましたけれども,目的と手段ということの徹底的な検証ということに併せて,何を前提としているかという公理に当たるものをもう1回見直してみる必要があるのかなということです。
 例えば数学の場合ですと,マーク式,マーク式と言われますけれども,あれは単純に多肢選択でやっているわけではなくて,数値を選ぶような形で回答するものもあったり,それから,先ほどの資料の42ページに数学の試行調査の問題が載っていましたけれども,文脈の中に入れて1つの命題を書かせることが良いのか悪いのかという議論もいろいろあって,さらに33度の「度」という記号を間違えたらとか,書かなかったらどうするかとか,そういう各論になってしまうんですけども,その各論になる前に,そもそも論で何を前提として考えるかというところを一旦交通整理する必要があるかなということをちょっと思いました。
 それは総じて言うと,川嶋委員も言われましたように,この大学入学共通テストの守備範囲と,それから個別入試での各大学の守備範囲をもう1回ズームアウトして見てみることになるのかなというふうに思いました。
 どうしても議論の焦点がいろんなところに当たりますので,先ほど私が申し上げたような試行調査の問題例のレベル,それから,先ほど貧困の問題とか教育政策の文脈の問題,そういうところをうまく切り分けながら議論を尽くしていかないと,同じことが繰り返されていくかなということを思いました。
 感想程度ですが,初回ですので,今後の交通整理をお願いしたいということで。
【三島座長】
 大変大事なやり方だと思います。ありがとうございます。
 それじゃ,萩原委員どうぞ。
【萩原委員】
 私の方からは,今回,私どもの団体全高長としては,英語の民間の4技能の試験のあり方ということで,昨年の7月に文部科学大臣に一度立ち止まっていただけないかということでお話をさせていただき,その後9月に延期及び制度の見直しについて要望書の提出という経緯がありました。
 なぜそんなような形になったかというと,検証,先ほどの文部科学省からの説明中でも簡単なお話もありましたけれども,全国の高等学校の校長先生方と,お話をしていく中で,要するにまだ決まっていないことが余りにも多過ぎる。本来であれば来年から実施する大学入試に当たって,英語の民間検定でいえば4月からというところで,決まっていることが少なく,どこまでが決まっているのか,実施に当たって非常に不安である,決まっていることがまだはっきりしていないということで,文科省に要請したということです。
 文科省は,先ほどの中でも,8月の28日に検定の大学の活用方法等について示しましたというお話をしていますが,もっと早く公表していただきたかった。実際にふたを開けてみたら,大学の方もまだ決まっていないということが非常に多かったので,この後の先々の検討のところでは,英語の4技能につきましては令和6年度実施で,2年前,さらに1年前ということでかなり周知を早く決めて動いていくということでした。その流れを作っていくために,この1年間でということですので,私どもとしてもできるだけこの1年間の中で次の方向性が決められるようにしていただければありがたいと思います。
 それから,英語の4技能に関しましては,本来,高等学校での授業の中で扱っていくべきこと,その中でしっかりとした力を付けさせていく,その力を大学で確認をしていくべきで,大学の方でどういう活用方法をしていくのかというのを決めるのが本来だろうと思っています。
 となりますと,高等学校の教育に関しては,実は今回,ここは高等教育局が主管ということになっておりますけど,初中局,また英語教育の関係の部署などの関係の方に入っていただく等々というようなことも必要ではないかと思っています。
 今後,いろんな形でのお話しする機会もあるかと思いますが,私ども英語の4技能をしっかりとやらせていくということについては全然問題視しているわけではありません。ただ,そのやり方,やらせ方というのですか,大学入試というところで英語の4技能をどうやって確認をさせていくのかというその手法,やり方等についてお話をさせていただいていたというところです。よろしくお願いいたします。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,続いて島田委員,そして斎木委員という順番でお願いいたします。大分時間がなくなってまいりましたので,よろしくお願いいたします。
【島田委員】
 島田でございます。私,国語教育を専門としておりますので,今回,この場では国語の記述式問題に限ってお話をさせていただければと思います。
 既に多くの委員の先生方の御指摘のとおり,国語の記述式問題に関しては,導入が提言された直後から様々な懸念が表明されておりました。幾つかの具体的な課題も指摘されておりました。ただ,その解決に向けた取組もしっかりと時間をかけて進められてきたということも理解はしております。
 しかし,にもかかわらず,最終的には幾つかの課題が解決できなかった,解決に至らなかった,そして導入が見送りになったということでございますので,この事実,すなわち最終的に幾つかの課題が解決できなかったという事実は,見送りになった理由やそのプロセスも含めて,重く受け止めなければならないと考えています。
 今後,共通テストや個別試験など,入学者選抜のプロセス全体の中で記述式試験というのをどういうふうに扱っていくか,どういうふうに課していくかということを検討していくことになろうかと思いますけれども,今回幾つかの課題が解決できなかったという結果は重く受け止めるべきだと考えるわけです。
 そもそも今回の入試改革ですが,高校教育,大学教育との一体的な改革というのを目指しておりました。カリキュラム改定の方も着々と進んでおりまして,小学校,中学校,そして,一昨年には高校の方でも論理的な思考力や論理的な表現力を育成するということを重視する学習指導要領が出来上がっております。
 それを踏まえて,国語の方ではしっかりと教育がなされるはずですが,そこで育成される力のうち,大学で学ぶために必要であると認められるものについては,やはり入り口の段階でそれらを評価するということは合理的でありましょうから,その意味で大学入試の全体の中で記述式問題が果たす役割というのはますます重要度を増してくることと考えます。
 これまでの高校の国語教育は,様々な問題を抱えておりました。長く,読むことの指導が中心であるとか,主体的な表現が重視された授業が十分行われていないといった課題が指摘されておりました。その解決に向けた取組は今も続けられております。もちろん新しい学習指導要領もその点を踏まえた内容になっているところです。
 大学入試によって高校教育を変えようとすることは本末転倒であるということも,何人もの委員の方が御指摘されていたとおりかと思います。ただ,大学で学ぶために必要な力というのは一体どういう力なのか,そういう力が高校教育のカリキュラムの中にどのように位置付けられているのか,また,それをきちんと反映した入試問題になっているのかといったような観点から,大学入試の恒常的な検証と改善が必要だという問題意識を共有して,今後の入試改革を議論していくことが重要かなと考える次第です。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。
 それでは,斎木委員,そして最後,小林委員,お願いします。
【斎木委員】
 斎木でございます。外務省で37年間ほど勤務いたしまして,昨年退官をいたしました。外務省で働く傍ら,いろいろな大学や大学院で教鞭を執ってまいりまして,来る4月からもまた教授として学生の指導に当たる予定でおります。そうした大学や大学院において学生たちとともに過ごした体験を通して,私なりに考えてまいりましたことを念頭に置きつつ,また,これまでの公務員として培ってまいりました行政経験を踏まえ,特に外務省において外国との接点の最前線におりましたので,そこから得られました知見を生かして,会議の議論に積極的に参加いたしたいと考えております。
 自己紹介の後,一言だけ申し述べます。私,教育の意義とは,当該個人が一生を通じて,自らの力で学び続けることのできる能力を身に付けさせることではないかと,そのように考えております。まさに,教育とはいかにあるべきか,そして,そのあるべき教育を実現するために,例えば入試であれ,その他制度であれ,どのようなものであるべきか,こういった観点が重要だと認識をしておりまして,入試のあり方の議論に際しては,今申し上げたような問題意識を持って,総合的かつ包括的に検討することが求められていると考えております。
 川嶋座長代理ほか,複数の委員の方々から,入試によって教育を変えられるというのは思い込みであって,そこから混乱が生じたという御指摘もありました。そうした御指摘を重く受け止めた上で,しかし,私としては,大学入試の前後,すなわち高校における教育と入学後の大学における教育とを有機的につなぐものとしての入試の役割は一定程度求められていると,そのように考えている次第です。
 もちろん,入試は選抜機能が最重要機能でありますけれども,同時に教育の方向性を導き,また,その実施を後押しする機能をも有していることに留意し,真摯に議論に臨みたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。それでは,小林委員。
【小林委員】
 学校法人北里研究所理事長の小林です。私立大学協会の立場で説明させていただきます。大学入試のあり方についての会議ですので,3点ほどそれに絞ってお話しさせていただきたいと思います。
 1点目は,先ほど圓月先生がお話しされていたことに補足しますと,私立大学は非常に多様性があって,ノーベル賞学者が出るような大学もあれば,本当に日本語も書けないような学生を入れて,教育して社会で働けるようにしていく大学もありまして,全部1つにまとめて表現することは非常に難しいということです。
私立大学協会の立場としては,いろんな入試制度の中で,いいとこ取りと言うと語弊がありますが,それぞれの大学の理念やアドミッションポリシーに合わせて,それをチョイスしながら組み込んでいくという立場に変更はありません。こちらから言えることは,やはり公平性,それから経済的格差とか,そういったものを解消するということが一番大事じゃないかと考えております。
 2点目は,今までの議事録等見てみても,やはり理想と現実といいますか,理想は非常にすばらしいことを掲げられていましたが,それを制度設計にうまく落とし込めていなかったということだと思います。検証するとしたら,なぜそういうことになったのかという制度設計の面をもう少し詳しく掘り下げてみてはいかがかと思います。
 3点目は,それにも関連しますが,スケジュールが決まってしまっていて,今年中に答申ということが決まっていると,皆さんの意見が非常にいろんな方向に向かい,最後に時間がなくなり,事務局案が出てきて,答申をエイヤとまとめてしまうというような事態を一番危惧するところです。三島座長にリーダーシップを発揮していただき,本当に議論をまとめていただきたいと思います。
 また,時間が足りないようであったら,臨時の会議でもいいですし,それから今はインターネットがありますので,テーマについて,いろいろな人たちがどんどん意見を出していくという方法もありますので,新しい方法も取り入れて,まとめていただければと思っています。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。座長として,今おっしゃったことはできるだけ努めていきたいと思いますので,よろしく御協力頂きたいと思います。
 それでは,一応時間でございますが,先ほどちょっと山本理事長にコメントを頂きたいという御意見もございましたので,コンパクトにお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
【山本オブザーバー】
 発言の機会を頂きましてありがとうございます。
 今週末,冒頭ございましたように,最後の大学入試センター試験が行われます。実際余り報道されませんが,その1週間先に追・再試験として,セーフティーネットのような形で,これを25日,26日に行うということでございますが,センター試験ではこの間,40年間を通じて安定的な試験実施,それから良質な問題の提供,採点のノウハウ,こういったことを蓄積してまいりました。こういったノウハウ等の蓄積があるということで,この大学入学共通テストにおいても,知識・技能,思考力・判断力・表現力,こういったことをバランスよく評価していくようなことを通じて,高等学校段階における基礎的な学習の達成の程度を判定して,大学教育のために必要な能力を把握しようということが目的だというふうに書かれております。
 ただ,大学入試センター試験と同様に,大学入学共通テストも恐らくこういった規模でやると思うんですが,こういった大規模,かつ学力面でも非常に幅広い能力を有した受験生を対象としているわけです。先ほどございましたように,55万人ぐらいの受験生が同日同時刻にやるわけですが,ですから,この共通テストにおきましては,各大学の特性あるいは機能,こういったものを踏まえたアドミッションポリシーに基づく個別試験との適切な役割分担の下で実施されるということが大事ではないだろうか。こういう能力が必要だからということで,何でも全部,共通テストに盛り込んでいくというのが,今回のような混乱の一因になったのではないかなということも考えております。
 先ほども専門家の御意見がございましたが,センター試験では,これまでも,教育測定学,あるいはテスト理論,こういったことに関する専門の先生方,あるいは当センターには十数名の研究者,教員がおります。こういったところで研究しつつ,教育測定,テスト理論に関する知見を十分に考慮しながら問題を作成しているわけでございます。こういったノウハウをセンターとしましては,十分にこの検討会議の委員の先生方をはじめとする御意見を頂きながら,今後とも大学教育の基礎となる学力を把握して,高等学校における授業の改善に対するメッセージを送れるような良問の作成をやっていきたいというふうに考えてございます。
 もう2点,簡単に説明させていただきますと,先ほど少し申し上げましたように,共通テストと個別試験の両方,個別大学の試験との両輪で大学入学者選抜だということで,共通テストの中に何でもかんでも盛り込んでしまうというのはちょっとどうかなと。これは先ほど清水委員もおっしゃったことだと思います。
 もう1点は,テストというふうに一言で言いますけれども,いわゆる学力調査のためのテスト,それから資格検定試験のテスト, それから,いわゆる競争選抜試験,これらは全然意味が違うということなんですね。求められる精度,それから,何と言うんですかね,厳密性といいますか。先ほど言いました順番に,非常にどんどんハイステークスになっていくわけです。そういう試験の中で,この大学入学共通テストというのは競争選抜試験に使われる試験だということを,もちろん先生方は御存じだと思いますが,改めて申し上げたいと思っております。
 それから最後になりますが,先ほど柴田委員の方から,この記述式の見送りに伴ってどうするんだということでございます。英語の4技能の見送りについては,既に11月15日に,作題方針あるいは出題方法等については変えませんということをセンターの方から公表をさせていただいております。
 記述式の方につきましては,現在,この共通テストのための企画委員会という,テスト全体を整理する,センターでは試験規格をする一番上の委員会ですが,ここで議論をしていただいているところです。その企画委員会の下に方針分科会といって,科目ごとにおかれて出題方法等を議論する委員会があります。
 既に国語と数学については,試行調査で示したような形の問題を実は4月から作って,ほぼプロトタイプができておるところですけども,この分科会で,これを後どうするかということを今議論していただいております。冒頭申し上げましたように,今週末,センター試験がございます。それからその1週後に追・再試がございますので,それが終わって今月中ぐらいのところでは具体的に国語,数学の記述式問題についての出題方法,あるいは問題作成方針,こういったことについては発表させていただきたいなというふうに思っております。
 以上です。
【三島座長】
 分かりました。ありがとうございました。
 それでは,時間が参りました。私の不手際でちょっと時間が延びましたけれども,次回でございますけど,まずはやはりこれまでの政策決定の経緯についての整理したものを事務局から,いわゆる先ほどから言っている今回の成り行きの検証ですね,そんなことで御議論を頂きたいというふうに思ってございます。
 それから,ヒアリングについては,まず団体代表委員の皆様の意見発表から始めて,その後,外部の有識者からもというような話を聞きたいと思いますけれども,細かいことにつきましては,私と座長代理とで調整させていただこうと思いますが,どうぞよろしくお願いしたいと思います。
 最後に,事務局から御案内がございましたら,よろしくお願いします。
【武藤高等教育局企画官】
 第2回の会議,2月7日金曜日15時から17時で行いたいと思います。第3回以降につきましては,委員の皆様において調整の上で,決まり次第,御連絡させていただきます。
 また,本日時間の関係で言い足りなかったこと等ある場合,事務局までメール等で御連絡いただければと思います。どうもありがとうございました。
【三島座長】
 それでは,第1回目,ここまでとさせていただきます。委員の皆様どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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