大学入試のあり方に関する検討会議(第24回)議事録

1.日時

令和3年4月2日(金曜日)16時~18時

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 「大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者」審議のまとめについて
  2. 平成30年告示高等学校学習指導要領に対応した令和7年度大学入学共通テストからの出題教科・科目に関する大学入試センター発表について
  3. 討議 記述式問題の出題のあり方について

4.出席者

委員

(有識者委員)三島座長、川嶋座長代理、益戸座長代理、斎木委員、宍戸委員、島田委員、清水委員、末冨委員、両角委員、渡部委員
(団体代表委員)岡委員、小林委員、芝井委員、柴田委員、萩原委員、牧田委員、吉田委員
(オブザーバー)山本大学入試センター理事長

文部科学省

伯井高等教育局長、森田大臣官房審議官、西田大学振興課長 他

5.議事録

【三島座長】
 それでは,皆様,こんにちは。座長の三島でございます。定刻になりましたので,第24回の大学入試のあり方に関する検討会議を開催させていただきます。お忙しい中お集まりいただきまして,ありがとうございます。
 それでは,今回も新型コロナウイルスの感染拡大防止のため,ウェブ会議方式での開催でございます。音声などに不都合ございませんでしょうか。
 本日も,傍聴者,報道関係者の入室は認めず,ライブ配信での公開とし,後日議事録をホームページに掲載することとしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。よろしゅうございましょうか。
 それでは,事務局から,出席状況等をお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 本日は,荒瀬委員が御欠席,それから,萩原委員が途中から御出席です。また,益戸委員,末冨委員,吉田委員が途中で御退席になります。
 前回までと同様に,聞き取りやすい御発言と,資料参照の際のページのお示し,それから,指名後のミュート解除と発言後のミュート戻しなど御協力をお願いいたします。
 以上です。
【三島座長】
 それでは,早速でございますが,議事の1番目,「大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議」審議のまとめについて,始めさせていただきます。この件は,第17回会議,昨年の11月16日において,大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議の主査である圓月勝博先生から協力者会議の検討状況について御説明を頂いたところでございます。このたび,令和3年3月31日に協力者会議の審議のまとめが発表されましたので,圓月先生より御報告を頂きたいと思います。それでは,圓月先生,どうぞよろしくお願いいたします。
【圓月氏】
 大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議で主査を務めさせていただいております圓月です。資料1の審議のまとめに従って御報告をしたいと思いますので,そちらを御覧いただければ幸いです。
 この大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議につきましては,昨年3月から12回にわたり会議を開催し,3月31日に審議のまとめを取りまとめました。本協力者会議では,主に2つの点について検討してまいりました。1つ目が,学力の3要素の多面的・総合的な評価の在り方について,2つ目が,新学習指導要領下での調査書の在り方及びその電子化の在り方について,この2点について検討してまいりました。以下,資料1に基づきまして,審議のまとめの概要を御説明したいと思います。よろしくお願い申し上げます。
 まず審議のまとめの3ページ目,2つ目の丸を見ていただければと思います。多面的・総合的な評価の在り方につきましては,これまでの高大接続改革の趣旨を踏まえまして,引き続き,学力の3要素を多面的・総合的に評価するものに改善することが重要であると考えております。
 3ページ目,その2つ下の丸のところを御覧ください。また,その評価を行うに当たりましては,総合型選抜,学校推薦型選抜が,一層重要な役割を有することが期待されます。
 4ページ目の1つ目の丸から2つ目の丸にかけて御覧ください。留意事項として,その評価に当たって,学力の3要素の重みづけをどのように行うかは,各大学のアドミッション・ポリシーや選抜区分によって異なるため,各大学においては,各選抜区分,すなわち,一般,総合型,学校推薦型,それぞれの特性に応じた形で工夫を凝らし,実情に合った方策を講じることが重要だと考えております。
 続いて,5ページ,(2)の3つ目の丸を御覧ください。次に,主体性を持ち,多様な人々と協働しつつ学習する態度の評価の考え方につきましては,主体性,多様性,協働性という要素に分けてそれぞれを評価したり,主体性のみを取り出して評価したりするということではなく,他の2つの要素と合わせて学力の3要素を多面的・総合的に評価することが必要だということを確認しております。
 次は,6ページの2つ目の丸を御覧ください。生徒の主体性につきましては,高等学校が大学に提供できる資料は学校の教育活動に限られるため,学校外の活動に取り組んだ過程等につきましては,原則として志願者自身が活動報告書,大学入学希望理由書などにより直接大学に提出することが適当だと考えております。
 次は,6ページの(3)3つ目の丸を御覧ください。経済的条件や地理的条件などに左右されないための措置を導入する場合,その基本的な考え方として2つを挙げております。1つ目が,経済的・地理的な不利等がある志願者に対して,そうした客観的事実に配慮した選抜を行うこと。例えば地域枠や児童養護施設入所者を対象とした選抜の事例なども参考にすることを挙げております。2番目が,経済的・地理的な不利等がある志願者でも,高い評価を得られる活動(例えば学校の教育活動内の取組)を評価の対象にして選抜を行うことを記述しております。大きくこの2つの観点で,基本的な点としては,公平性と公正性というものに配慮することが必要であることを明確に確認しております。
 次いで,6ページの(3)一番下の丸から次のページの7ページにかけて御覧ください。このような措置を導入する場合は,その趣旨や方法について社会に対し合理的な説明ができること及び入学後の教育に必要な学力を確保すること,この2点が前提として求められること,また,総合型選抜や学校推薦型選抜の一部として実施することが考えられることを示しております。
 7ページの3ポチの(1)の最初の丸のところを御覧ください。新学習指導要領下での調査書については,新しい高等学校指導要録の参考様式で簡素化された部分はそれに合わせて簡素化するなど,指導要録の様式と整合性を取る方向で見直すことが適切と考えております。この辺りに関しましては,働き方改革のことも視野に入れての検討結果と御理解いただければと思います。
 次いで,8ページ,(3)最初の丸,最初の三角のところを御覧ください。調査書の様式に関しましては,各教科・科目等の学習の記録について,観点別学習状況の評価を新たに指導要録に記載することになりましたが,これを調査書にも記載して,大学入学者選抜に活用することに肯定的な意見と慎重な意見の両論がありましたので,ここでは両論併記とさせていただいております。
 結論といたしましては,高等学校においては,観点別学習状況の評価を更に充実し,その質を高めるための取組が開始されたばかりであることや,また他方,大学におきましては,大学入学者選抜における観点別学習状況の活用手法が現時点では確立されていない状況を踏まえまして,この項目を直ちに設けることはしないことといたしました。
 ただし,今後の高等学校における観点別学習状況の評価の充実の状況,大学における観点別学習状況の活用方法の検討の進展等を見極めつつ,条件が整い次第,可能な限り早い段階で調査書に項目を設けることを目指し,引き続き,高等学校,大学関係者において検討を行うこととしております。この観点別学習状況を重視しているという点については異論はないということを確認し,誤ったメッセージとして受け取られないようにと配慮しております。
 9ページ,(4)最初の丸のところを御覧ください。調査書の電子化の在り方につきましては,速やかな完全電子化を目指すべきと考えております。
 10ページ目,最初の1文を御覧ください。その際には,高等学校における統合型校務支援システムや大学入学者選抜における電子出願のさらなる導入を促進しつつ,それらと連動する形での調査書の電子化を進めていく必要があると考えております。その上で,具体的な実装方法として,本協力者会議では現段階では4つの方法を提示しております。今後の検討に当たっては,公益性,安全性,利便性,この3点を重視し具体策を考えていくことを確認しております。
 最後になりますが,今後,文部科学省におきまして,引き続き検討が必要とされた事項について速やかに取り組むとともに,令和6年度実施の入学者選抜に係る予告の策定に関しましては,この内容を十分に踏まえた検討をお願いしたいと思います。
 以上,貴重なお時間を頂いてありがとうございました。こちらの報告はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
【三島座長】
 圓月先生,どうもありがとうございました。御質問等については,後ほどまとめてお願いしたいと思いますので,次に参ります。
 それでは,議事の2番目でございます。本日は,大学入試センターの山本理事長から,先日発表された令和7年度大学入学共通テストからの出題教科・科目に関する大学入試センター発表について御報告を頂きます。それでは,山本理事長から,資料2に基づいて御報告いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【山本オブザーバー】  
 大学入試センター,山本でございます。少しお時間を頂いて,今,座長から御説明のあったことについて報告をさせていただきます。
 平成30年に告示されました新しい高等学校学習指導要領は,来年の4月から年次進行で実施されるということになっております。すなわち,この4月に中学3年生になった方々からこの新学習指導要領下で学ぶことになります。この方々が受験する令和7年1月に実施する大学入学共通テストの出題教科・科目について,大学入試センターが3月24日に公表した内容を資料2に沿って説明をさせていただきます。
 この内容につきましては,これまで大学や高等学校関係者による委員会を設置し,検討を行ってまいりました。また,検討途中におきまして頂戴しました大学あるいは高等学校等の関係団体からの意見も踏まえたさらなる検討を経まして,このたび一定の結論を得て公表したものでございます。なお,最終的な出題教科・科目は,今後この検討会議の結論を踏まえ,また,大学入学者選抜の改善に関する協議を経まして,文部科学省において正式に決定されるものでございます。
 資料2に基づいて説明をさせていただきます。資料2の1枚目に出題科目を一覧表にしてございます。左側のカラムが現行の出題科目,そして,右側が今回公表しました令和7年度試験からのものでございます。その裏面からが本文になってございます。
 まず検討に当たっての観点につきまして,本文,裏面ですね,この1ページの(1)から(4)に記載してあります。(1)にありますように,高等学校における必履修教科・科目を尊重しつつ,大学教育を受けるために必要な学力の測定に資するものとすること,そして,(2)にありますように,新学習指導要領の各教科・科目の趣旨を踏まえたものとなるように配慮すること,こういったことを基本といたしました。
 また,(3)にありますように,質の高い試験問題を継続的,そして,安定的に出題することも重視しております。具体的には,現在合計30科目の試験科目を出題しておりますが,2年間にわたる問題作成の負担は大変大きく,近年この問題作成をしていただく委員の先生方の確保も大変難しくなってきております。また,科目の増加によりまして,試験実施のオペレーションが大変複雑化してまいりまして,現場で実施を担当していただく大学教職員の方々の負担も増しているところでございます。さらに,18歳人口の減少に伴いまして,今後さらなる受験者数の減少も見込まれているといった状況も踏まえまして,必履修科目につきましては引き続き出題科目として設定しながらも,高等学校によって開設状況が異なる選択科目については一定の精選を行うことといたしました。
 そして,(4)番でございますが,受験生への過度な負担とならないよう,現行の共通テストからの大きな変更を避けるように配慮したものでございます。
 では,最初のページの一覧表を見ていただきまして,変更がある教科・科目を中心に説明をさせていただきます。まず地理歴史,公民でございます。これにつきましては,学習指導要領における必履修科目と選択科目を組み合わせた,「地理総合,地理探究」,「歴史総合,日本史探究」,「歴史総合,世界史探究」の3科目を設定いたします。また,公民につきましては,「公共,倫理」,「公共,政治・経済」の2科目を設定いたします。さらに,専門学科などでは選択科目が開設されない場合があることを踏まえまして,必履修科目のみで受験できる,「地理総合,歴史総合,公共」といった科目を設定することとしております。受験者は,地理歴史及び公民から最大2科目を選択することになり,その際原則として同一の名称が含まれている科目の受験は認められませんが,「歴史総合,日本史探求」と「歴史総合,世界史探究」については,現状でも歴史の2科目受験が認められていることを踏まえ,両方を受験することができるようにする予定でございます。
 続いて,数学でございます。「数学Ⅰ,数学A」,「数学Ⅰ:」,「数学Ⅱ:,B,C」を設定するということにしております。「数学Ⅱ:,B,C」につきましては,学習指導要領で新たに数学Cが設定され,この中でベクトルと複素数平面を学ぶことになりました。大学団体からの要望を受けまして,数学Cも出題範囲に含むことといたしました。また,数学Ⅰ:は必履修科目であることから出題を継続いたしますが,数学Ⅱ:,簿記・会計,そして,情報関係基礎につきましては出題しないこととします。
 続いて,外国語でございます。外国語につきましては,これまでどおり,英語,ドイツ語,フランス語,中国語,韓国語の5科目を設定いたします。なお,英語の試験形態につきましては,センターとしては今のところ現行どおりというふうに考えておりますが,本会議の結論を踏まえ必要な対応を行うこととしたいと考えております。
 そして,一番下の「情報」でございます。必履修科目であります情報1を共通テストの出題範囲とする各種政府の決定を踏まえまして,「情報」の1科目を設定するということにしたいと思っております。
 新学習指導要領における新しい共通の必履修科目であります地理総合,歴史総合,公共,情報につきましては,関係者間で具体的な問題のイメージを共有できるよう,サンプル問題を作成しましてこれも同時に公表し,現在,センターのホームページに掲載をしてございます。
 なお,「情報」をはじめとして共通テストをCBTで実施することにつきましては,その専門家と協議を重ねてまいりましたが,第21回の本検討会議で申し上げましたとおり,現状では数々の課題があることから,令和7年度につきましてはPBTで行うということにしてございます。CBT活用の利点や課題につきましては,先日,「大規模入学者選抜におけるCBT活用の可能性について」という報告書を取りまとめて,先の出題教科・科目の公表と同時に公表いたしまして,これもセンターのホームページに掲載しているので御覧いただきたいと思います。
 私からは以上でございます。ありがとうございました。
【三島座長】
 山本理事長,どうもありがとうございました。本件につきましても,御質問等につきましては,後ほどまとめてお願いしたいと思います。
 それでは,議事3に入りたいと思いますけれども,その前に,前回会議における両角委員から御要望を受け,第1回共通テストの評価について,島田委員,それから,清水委員に資料を御用意いただきましたので,御説明をお願いしたいと思います。それではまず,島田委員,どうぞ。
【島田委員】
 恐れ入ります。筑波大学の島田です。よろしくお願いいたします。
 私からは,第1回入学共通テスト「国語」の問題に対する私見を述べさせていただきます。資料に沿って話を進めます。本日は,1,大問の構成,題材,形式などについて,2,測ろうとした力について,3,残された幾つかの課題,以上の3つの項目に分けて話をします。
 まず資料の項目1を御覧ください。今回の国語の問題のうち,近代以降の文章に関する部分に注目して,大問構成と題材,形式について,大学入試センター試験と,2回にわたって実施された試行調査とを比較し,表にまとめてみました。表から分かるように,題材となる文章の種類,大問の数,全体の試験時間が,過程を通じて二転三転することになりました。これによって,共通テスト本番では,2問の大問に3種類の題材がどのように配置されるのか,各大問は単一の題材なのか,複数の題材なのかなどが不明となりました。このことは昨年4月の会議でも指摘いたしましたが,その後も明らかにされることはありませんでした。このことに不安を抱いたまま第1回のテストに臨んだ受験生は少なくなかったものと予想できます。
 ただ,この不安は,大問の構成や題材あるいは問題の形式に関することであって,問題に取り組むために求められる学習の内容には,現行の学習指導要領に沿ったものであるということに変わりはありません。事前に模試などで類似の形式の問題を解き慣れておくことができれば幾分かは有効だったかもしれませんが,問題を解く上で特段の対策や特別な学習が必要だったというふうには思えません。確かな国語力の身についた高校生には十分に力を発揮できる内容や形式だったと言えると思います。
 もう一つ,これも以前の会議で指摘しましたが,いわゆる実用的な文章として実際どのような文章が題材となるのか,実用の文章という言葉の具体的内容について明確なアナウンスがなされなかったように思います。資料にお示ししたように,学習指導要領の解説にはその点について説明がありますので,高校の国語の教員は知っていたかもしれません。この説明は平成元年版の学習指導要領から継続的に使われているものですが,御覧のように,あまり明快とは言えません。具体的な何かの目的や狙いを達するために書かれた文章であるという説明だと,身の回りにある大方の文章は含まれることになりそうです。
 実用的な文章の内容を試行調査の例から推測しようとした人も多かったでしょうが,試行調査に見られたような,言わば実務的な文章による出題を予想した人にとっては,今回はやや意外というか,肩透かしという印象もあったかもしれません。ただ,これも題材の話です。より大切なのは,共通テストの設問がどのような力を測ろうとしたのかということです。
 資料の項目2を御覧ください。出題教科・科目の問題作成の方針では,アンダーラインで示したように,言語活動の過程を重視すること,複数の題材による問題を含めて検討することが示されていました。実際にどのような出題がなされたのか,第1日程の問題を例に確認しておきます。
 4つの大問のうち,第1問と第2問が近代以降の文章を題材とする出題でした。第1問のメインの題材は,論理的な文章でした。この大問では,探究的に学ぶ活動の場面を想起させる設定がなされていました。そこでは,生徒の作成したノートに加えて,生徒が見いだした資料として小説の一節がサブの題材として提示されました。最後の小問では,その小説に書かれている内容をメインの題材の内容と関係づける問題でした。それぞれの文章から読み取ったことを基に新しい考えをまとめる力を評価しようとする問題になっています。
 第2問の主な題材は,「羽織と時計」という小説です。この問いの中では,この小説が発表された当時新聞に掲載されたこの小説に対する批評の一部が,もう一つの題材として提示されました。この批評の文章は,題材としては斬新でありまして,センター試験では題材となり得なかった種類の文章だと言えます。しかもこの批評は題材の小説に対して批判的な内容であるという点でも特徴的でした。そして,最後の小問では,この批評に対して更に別の立場から見解を述べるという過程が想定されており,複数の文章から読み取った内容を基に多様な観点から新しい考えをまとめていく力を評価しようとする問題になっていると言えます。
 これらの問いには,問題作成の方針に示された趣旨を生かそうとする意図が見えます。また,読み取った内容を活用して新たな考えを生み出す力を測ろうとする意図も見てとれます。ただ,つぶさに見れば,個々の設問には更に洗練すべき点があることも否めません。実施後,既に多くの関係者によって様々な指摘がなされておりまして,今後の作問に生かしていくことが大切だろうと思います。
 最後に,課題です。今回の問題は,大枠では大学入試センターの蓄積を踏まえつつ,これまで測ってこなかった力を測ろうとする問題を適切に加えていると評価できます。ただ,いわゆる実用的な文章の扱いを含めて質の高い作問を続けていくことの難しさを同時に感じます。作問体制の維持・整備は課題の1つです。
 またその一方で,大問の数や試験時間を変えないまま新しい内容を加えようとするとき,従来問うていた内容が同じように十分に問えるのかという疑問が残ります。今回は見たところ,殊さらに指摘すべき点も見当たりませんが,専門家集団によるさらなる検証とフィードバックが望まれます。また,作問にこれまで以上の工夫が求められるという意味で,作問にかかる負担の増大が懸念されます。変わらない大問数,変わらない試験時間の中で問題を洗練していくというのも1つの方法ですが,大問の数や試験時間を増やすということも選択肢の1つとして併せて検討されてもよいのではないかと感じます。
 私からは以上です。ありがとうございました。
【三島座長】
  島田委員,どうもありがとうございました。それでは次に,清水委員,どうぞよろしくお願いいたします。
【清水委員】
 筑波大学の清水でございます。今日はこういう機会を与えていただきまして,ありがとうございます。私は,2枚のレジュメを用意させていただきました。いわゆるカリキュラム研究のときに,意図されたカリキュラムと実施されたカリキュラム,そして,達成されたカリキュラムという3層で考えることが多いんですけれども,テストについても,問題作成の方針や意図,これはセンターの方から公開されています。それに対して実際の問題がどうであったかという実施のレベル,そして,最後に,このテストを通して測れた力はどんな力だったかという達成されたレベルという3層で考えて,前の2層の関係を今日は少し述べたいと思います。
 1ページ目の前半部分は,これまで山本理事長からもお話のあった基本的な考え方や問題作成の教科を超えた方針ですので,そこは省略させていただいて,1ページ目の下の方3分の1ぐらいのところからあります,数学の問題作成の方針のところから少し時間を頂きたいと思います。
 今回は,数学の問題解決の過程を重視するということが前面に出されていまして,テストでなかなか難しいであろう,数学の問題を見いだすこと,あるいは構想・見通しを立てること,一定の手順に従って数学的に処理すること,そして,解決過程を振り返り,与えられた結果を意味づけたり,活用したりすることという,一連の数学的活動のサイクルをどうやってペーパーテストの形で埋め込んで,そういう生徒の力を評価するかというところが狙われていたというのが基本的なところだと思います。
 1ページ目の下に2というところがありますけれども,従来の大学入試センター試験あるいは平成29年度,30年度に行われました試行調査,それとの違いがどうなっているかという,そこを少し述べてみました。今回は,日常事象の数学化,つまり,数学の舞台に乗せるところ,それから,得られた結果を振り返って考えて,統合的・発展的に考えるという,この数学的なプロセスが前面に出た印象が非常に強くあります。これは改訂される学習指導要領の算数・数学化の基本になっています,いわゆる数学における問題発見・解決の過程という図式があるんですけれど,その考え方に呼応したものだというふうに私は受け止めました。
 例えば日常事象の数学化ですけれども,実際の問題場面,日常の場面を,条件を捨象して理想化して数学の舞台に載せるという,そのプロセスを前面に出して考えるようなタイプの問題がありました。100メートル走の3回のタイムに基づいて,ベストタイムを出すのにはピッチやストライドをどうするかといった問題がありました。こういう日常事象の問題をこういうテストに入れようとすると,例えばピッチ,ストライドのような言わば数学の外の文脈や概念,そういうものに対して受験者が負荷を持つことになるわけですから,その辺のところに配慮が少しまたこれも要るだろうなということを思いました。人によっては,そういうものをノイズ的に考えて,理想化された数学の世界から見ると少し違うものじゃないかと考える人もおられますけれど,今回はそこをあえて問題化して考えさせるというような意図があったと思います。
 もう一つは,統合的・発展的な考察ですけれども,従来センター試験でも同じように,数学の教科の特徴として,得られたものを更に一般化,拡張していくようなタイプの問題がよくありました。今回もそれが明示的に意図的に構成されていた印象があります。特に「これまでの考察を振り返ると」なんていう,問題文の中にはっきりそれが出されているところも特徴かと思いました。
 それから,(2)として,文脈をどうつくるかということが数学のプロセスを評価しようとすると問題になるわけですけれども,これもいろいろなところで議論がありますが,太郎さんと花子さんという登場人物が対話をしながら方向をいろいろ展開していくという,そういう問題がありました。試行調査よりも短い形で行われていましたけれども,構想だとか見通しを示す文脈としてある程度有効に機能していたのではないかと私は考えました。
 それから,どのように学ぶかということについても方針に挙げられていますが,授業場面とかコンピューターソフトの上でいろいろ問題を動かすような場面がありました。今回少し全体としてはトーンダウンした感がありましたけれども,学習者の数学の学習の場面を何とかペーパーテストの中に実装しようという,そういう意図を強く感じました。
 そして,今回大きな変更点として,試験時間が,従来の数1・数Aから70分に変更したというところがありました。これが大きなところだと思いますけれども,問題レベルで見ますと,いわゆる誘導型の問題というよりは,特に数Ⅰ:・数Aの場合は,図を提示しないで受験者に描かせたり,あるいは図はあるけれども,もう一回それを自分で描いてみないと解答問題に近づけないようなタイプの問題が出題されていまして,言わば自由度が高くなっているという印象があります。いわゆる思考力を評価しようという意図が,こういう形で実装されていたんだなというふうに受け止めました。
 総じて,「おわりに」のところに書いてありますけれども,まずもって,新型コロナのこの感染状況の中で大きな事故もなく実施されたことに対しては,関係の皆さん,それから,特に受験者の皆さんに敬意を表したいと思いますが,今後,このような方針で出題された問題が実際にどんな力を測れていたのかという,そこの細かい分析が必要になってくると思います。恐らく小問ごとの正答率あるいは五分位図による問題の識別力,そういったことも含めた詳細な分析で,今後のさらなる難易度や配点の軽重についての検討が必要になるのではないかと思いました。
 以上,私からの私見を申し上げました。ありがとうございました。
【三島座長】
 清水委員,どうもありがとうございました。
 それではここで,議事の1と2及びただいまの島田委員,清水委員の報告について,10分程度時間を取りたいと思いますので,御質問がございましたら御発言をお願いいたします。発言を希望される方は,挙手ボタンを押していただければと思います。
 それでは,両角委員,どうぞ。
【両角委員】
 両角です。ありがとうございます。まず清水先生,島田先生ありがとうございました。
 私の質問というか,最初の圓月先生のところにコメントさせていただければと思います。6ページ目辺りの,志願者が経済的な条件等に左右されず多面的・総合的な評価の機会を得ることという,とても大切なことが書かれているなと思いました。ただ,これを全ての入試にわたって全てを取り扱ってみて志願者をできるだけ公平・公正にというのは,理念としては分からんではないんですけれども,実際のことを考えると,ハードルが高いのかなというような印象も受けました。
 こちらでも書かれている,全員にというよりも少し特別枠的なところでそういったところをやっていく大学の事例を参考にするというのも,私はとてもいいことだなと思って聞いていました。例えば経済的に厳しかったり,地理的な条件で不利であったりという学生さんに対しては,困っているからサポートしなければいけない対象だというような語られ方がされがちです。
 私はその点もとても大事だと思うんですけれども,大学教育の場面で,分野によるとも思うんですが,いわゆるアクティブラーニングみたいなもので学生同士議論させたりしようと思うと,例えば首都圏出身の同質な学生同士議論させてもあまり深みが出てこないことがよくあります。むしろ地方出身であったり,何らかのハンディキャップがあったり,あるいは留学生とか社会人とか多様な学生を入れるということが,その学生本人の学びだけではなく,ほかの学生の学びを豊かにするという,そういう多様性のあるキャンパスをつくることがいい教育環境をつくっていくんだという面から重要な意義があると感じています。そういう意味で,特別枠というのは,何か不利な状況の人にサポートするというよりも,大学教育をみんなにとってよくするために必要なんだというような,そういうちょっと積極的なメッセージのようなものもあるとよいかなという印象を受けました。
 以上です。ありがとうございます。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,末冨委員,どうぞ。
【末冨委員】
 ありがとうございます。私の方は,島田委員,そして,清水委員の方から総括いただきました,共通テスト,それから,前身となるセンター試験との対比について意見書を出させていただいていますので,そちらに基づいてざっと今日の議事と併せて説明をさせていただければと思います。私の提出した資料を御覧ください。
 本日も,清水委員,島田委員からの非常に重要な御指摘がありました。例えば時間制限の問題ですとか,あるいは受験生に考えさせる意図があったんだけれども,それがかなり多様なやり方で解かれたのではないかというご指摘でした。そのことも含めまして,やはり第1回の共通テストの評価については,何度も申し上げますが,山本理事長の方から大学入試センターとしての総括,特にセンター試験と共通テストの改革点と現時点での手応えといったものについて率直に御指摘いただいた方が,この会議としての報告にきちんとした形で反映されると思います。
 黒ポツの方は少し飛ばしぎみに申し上げますけれども,やはり私自身が第1回共通テストについての評価を経ないで結論を出すことはあり得ないということを申し上げましたので,是非この点について主な意見に盛り込んでいただくということをお願いしたいということです。
 それから,2つ目の黒丸から4つ目の黒丸につきましては,あえて読み上げることはいたしませんけれども,センター試験に対し、関係者や文科省総括なしに共通テストへの移行が図られた形で現在に至っております。であるならば,共通テストは,非常に挑戦的で面白いテストだというふうに私も思っていますが,その挑戦と,そして,センター試験から引き継がれるべきものが引き継がれたのか、あるいは,第1回の共通テストを実施してみて,センター試験のよさというものを改めて振り返る必要があるのではないかといった点についても,是非可能な範囲で構わないので,振り返りをお願いできればと思います。
 特に英語4技能の在り方については,渡部委員が『AERA』の方に寄稿されていた記事を私も読みましたけれども,当初,民間試験の活用を予定していた都合で,やはり4技能が十分に問えているかどうかといった点についても,公式見解というものがなければ恐らく先に進むことができないと思いますので,この点についてきちんとした評価を出していただかなければ,この会議としての最終提言としては全く不十分であると考えますので,どうぞお願いいたします。
 併せまして,本日御報告いただきました新しい形の令和7年度以降の試験の在り方につきましても,学習指導要領改訂に沿った非常に重要な改編であろうとは思いますけれども,やはり第1回の共通テストの振り返りからの議論の積み上げというものをこの会議の提言として始めておかなければ,この後のステップの積み方自体が危うくなってしまうと思います。であればこそ,望ましい意思決定の在り方を丁寧に踏んでいくという意味でも,是非とも大学入試センターの方からの報告をお願いし,提言に盛り込むということを,何度も繰り返すようですが,必須のものとしていただきたいと考えております。
 以上です。
【三島座長】
 末冨委員,どうもありがとうございました。先生からの資料は,前回の会議が終了した翌日ぐらいにもう出していただいたので,委員の皆様方には前から配ってございましたので特に私の方から御紹介しませんでしたけれども,申し訳ありませんでした。
 今の入試センターとしての見解を出していただきたいということは再三申し上げておりますけれども,理事長の方も一生懸命お考えいただいていると思いますので,今日はそれ以上触れないことにいたします。
 それでは続いて,芝井委員。これで本件についての御質問を最後にさせていただきます。芝井委員,どうぞ。
【芝井委員】
 ありがとうございます。島田先生と清水先生,ありがとうございます。大変勉強になりました。
 それぞれ一つずつお尋ねしたいことがあります。1つは,少し触れられたと思うんですが,島田先生の国語の問題なんですけれども,こういうタイプの問題を解くときに,果たしてこの時間でよかったのかどうかという時間の長さの問題です。私個人としては,本格的な読み込みをして,いわゆる解釈を重ねながら一定の結論を出す,正答を導き出そうとするには,やはりもう少し時間があった方がいいのかというふうに思っていました。そういった意味で,ごく短い間でばたばたと解答につなげるようなやり方がよかったのかというのは少し疑問に思いましたので,その辺の御感想を是非お伺いしたいと思います。
 それからもう一つは清水委員の方で,数学についてもいろいろ教えていただきまして,ありがとうございます。2ページの裏の方なんですけれども,先ほどの,評価されている,花子さんと太郎さんの対話のことが書いてあります。私は実はこれを見たときに,ちょっとこれ,ジェンダーバイアスがかかっていて嫌だなと思いました。そんなことはちょっと考え過ぎなのかもしれませんが,なぜ太郎さんなのかというのが少し気にかかるところで,こういったところは実は問題そのものには関係はないんだけど,作問するときには本当に配慮が必要なのではないでしょうか。
 その2点,何かお考えがありましたら,教えてください。以上です。
【三島座長】
 それでは,島田委員と清水委員,もしお答えがあれば短くお願いいたします。
【島田委員】
 島田です。よろしいでしょうか。
【三島座長】
 はい,どうぞ。
【島田委員】
 芝井先生,ありがとうございました。私もその点は少し危惧したところです。その新しい問題を合わせて解かなければいけないということで,それ以外のところに,ひずみとまでは申しませんけれども,影響が及んだところがなかったかというところが少し心配なところです。つまり,今まで問えていたことが問えなくなったおそれはないかということです。これは細かい検証が必要ですけれども,やはり同じように心配をいたしました。そこで,試験時間を増やすということも併せて検討していただきたいと最後に申し上げたとおりです。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。清水委員,何かございますか。手短に。
【清水委員】
 はい。いわゆるリケジョとも言われるようなに,理数系科目についてはジェンダーの問題は非常に大きいですので,多分センターの方もその辺は配慮していらっしゃるんじゃないかと思いますけれども,今後その辺は注視していく必要があると思っています。どうもありがとうございました。
【三島座長】
 ありがとうございました。
【芝井委員】
 ありがとうございました。
【三島座長】
 それでは,もう一つ,本日,益戸委員から資料が出てございますが,これは本日の川嶋先生の資料の後で,関連することでございますので,後ほど御紹介申し上げます。
 それでは,議事3に入ります。前々回申し上げたように,これまで頂いた御意見に基づいてテーマごとの資料を作成しております。今回は記述式問題の出題の在り方についてペーパーが準備できましたので,座長代理である川嶋先生から御説明を頂きたいと思います。その後にこれを踏まえての討議の時間を取りますので,どうぞよろしくお願いします。それでは,川嶋先生,よろしくお願いいたします。
【川嶋委員】
 座長代理の川嶋でございます。タイトルにございますように,記述式問題の出題の在り方について,これまで本会議において委員の皆様あるいは有識者からのヒアリングを踏まえてまとめさせていただきました。
 まず1ポツ,記述式問題の意義・必要性です。大学入試において記述式問題を出題することの意義やなぜ必要なのかということについて,これまでの皆さん方の意見を基にまとめさせていただいております。
 まず1つ目は,複数の情報を統合し,構造化するなどして自らの考えを論理的にまとめる思考・判断の能力や思考・判断した過程や結果を的確に表現したり,創造的に表現したりする能力は,高等学校学習指導要領に基づく教育活動の中でその育成が重視されているが,大多数の大学・学部においても,入学後,専門分野を学んでいく上でも必要な能力であると考えられる。
 2つ目,もとより,これらの能力の重要性は最近になって指摘され始めたのではなく,従前から重要なものとされてきました。しかし,人工知能やロボティクスの飛躍的な発展により,労働市場で定型的業務がこれらのロボティクスや人工知能によって代替が進み,人間にしかできない創造的な業務の比率が増す中にあって,より多くの学生により高度なレベルでこれらの能力を育成する必要性は今後一層高まっていくものと考えられています。
 3つ目,マークシート方式の出題でこうした能力を測定・評価することには,大学入試センター工夫されてはいるかと思いますが,一定の限界がある。これらを鑑みて,従来より直接的な評価方法として記述式問題を出題する取組が行われてきたところです。その様態は,短答式,短文,長文,小論文など教科・科目や選抜区分によって様々ですが,上記のような必要性に鑑みれば,各大学のアドミッション・ポリシーに基づき,こうした能力の評価を行うことは,大学入学者選抜に求められる原則1(当該大学・学部での学修・卒業に必要な能力・適性の判定)の観点に沿ったものであると考えられる。
 四角の中には,これまで頂いた主な意見をまとめております。
 2ポツ,共通テストへの記述式導入の見送りの段階で指摘された課題。大学入学共通テストへの記述式問題の導入に関わっては,以下のような様々な問題が指摘され,2019年12月の導入見送りにつながった。
 (1)まず採点者の確保についてです。民間業者に採点業務の一部を委託する仕組みを採ったことについて,1月中旬の2週間という限られた期間に質の高い採点者を大量に確保できるのかが疑問視された。このことについて,採点事業者からは,これまでの実績に基づき,確保は可能との見通しは示されていたものの,実際の採点者は,共通テスト実施の前年秋以降に行われる選抜試験及び研修を経て確定されるため,採点体制を前もって具体的に明示することができず,不安の払拭には至らなかった。
 (2)正確な採点について。平成30年度試行調査の国語において0.3%の採点結果を補正する必要が生じたことを踏まえ,採点の質の向上が課題となった。大学入試センターは採点事業者に対し,複数の視点で組織的・多層的に採点を行う体制の構築,品質管理専門チームの設置,ダミー答案の活用や無作為抽出によるチェック等,採点の質の向上を図るよう指示を行ったが,記述式問題の性質上,約55万人の答案を短期間で採点する中で,採点ミスをゼロにすることは困難であるとの認識であった。
 (3)採点結果と自己採点との不一致。平成30年度試行調査の結果,国語の約3割の答案において,採点結果と自己採点が不一致となり,受験生が出願大学を選択する際の支障になるとの問題が指摘された。大学入試センターは,採点の仕方について説明資料の作成等の取組を検討したが,こうした取組を行うことによって,採点結果と自己採点の一致率が一定程度上がることが見込まれたものの,記述式問題の性質上,大幅に上昇することは困難であるとの考えであった。
 (4)民間事業者の活用に伴う利益相反の懸念ついて。1つ目,大学受験に関わる模擬試験や参考書等の販売事業を行う民間事業者のグループ企業に記述式問題の採点業務の一部を委託した。2つ目,大学入試センターは,丸1,採点事業者に守秘義務を課し,採点業務に伴って知り得た一切の情報漏えいや目的外使用の禁止,これらに違反した場合の損害賠償等を規定した契約の締結,丸2,採点事業者が雇用する採点者等に対し,試験実施前に試験問題を類推できる情報を開示しないこと等を定めた秘密保持契約の締結等により,採点業務に関する機密性を保つ体制の確保を図ったが,出題内容や採点基準等に関する機密の漏えいやグループ企業間での利益相反が生じるとの懸念が指摘された。
 (5)採点を巡る制約から望ましい記述式に限界があることについて。大学入学共通テスト実施方針においては,国立大学の二次試験で行われるような解答の自由度の高い記述式ではなく,設問で一定の条件を設定し,それを踏まえて結論や結論に至るプロセス等を解答させる条件付記述式を中心に作問を行うことにより,問うべき能力の評価と大規模共通試験における採点等テスト実施に当たっての課題の解決の両立を目指すこととされた。これに対して,このような作問を通じて記述式で問うべき能力を問えるかどうかについての指摘がなされた。
 3ポツ,記述式問題に関する大学の意見や出題の実態。本検討会議では,全大学に対してアンケート調査を実施し,大学入学者選抜における記述式問題の在り方に関する意見や,選抜区分ごとの出題の実態について詳細な分析を行った。
 (1)記述式問題に関する大学の意見。1つ目,国公立大学においては,「大学入学共通テストで記述式を出題すべき」について,肯定的意見が8%(内訳は国立6%,公立11.5%),否定的意見が91%(内訳は国立93.7%,公立83.3%)であった。一方,「個別入試の一般選抜で記述式を充実すべき」については,肯定的意見が78%(内訳は国立78.3%,公立77.1%),否定的意見が20%(国立21.5%,公立17.7%)であった。
 2つ目,私立大学においては,「大学入学共通テストで記述式を出題すべき」について,肯定的意見は17.4%,否定的意見は81.5%であった。一方,「個別入試の一般選抜で記述式を充実すべき」については,肯定的意見は51.8%,否定的意見は47.4%であった。
 3つ目,また,自由記述欄においては,公平な採点が担保されない限り,導入は不可能,成績提供に時間がかかるのは困る,画一的な採点基準では思考力を測る意義が失われる,個別入試で判定すべき,推薦入試やAO入試で長文記述やプレゼンテーションを実施している例もあり,全てを共通テストで測る必要はないなどの意見が見られた。
 4つ目,他方,方向性は間違っていないなど,共通テストへの記述式導入に賛同する意見も見られたものの,その実現のための方策については,AIによる採点システムを開発すべき,記述式だけは12月に実施すべきといった意見がありました。詳細については,本日参考資料3の実態調査,スライド番号148から150に書かれておりますので,御覧いただければと思います。
 (2)記述式問題の出題の実態です。まず国公私別の出題実態です。1つ目,国公立大学では,一般入試全体(全教科)で国立の99.5%,公立の98.7%のテストが記述式を出題しており,全体の枝問数に占める記述式問題の割合は,国立で81.6%,公立で70.0%であった。具体的な出題内容は,短答式・穴埋め式が国立で49.0%,公立が41.7%,短文や長文・小論文,また,図表・グラフ・絵,英文和訳・和文英訳の合計が,国立32.6%,公立28.4%であった。
 2つ目,私立大学では,一般入試全体(全教科)では54.1%が記述式を出題しており,全体の枝問数に占める記述式問題の割合は25.3%であった。具体的な出題内容は,短答式・穴埋め式が21.1%であり,短文,長文・小論文,図表・グラフ・絵,英文和訳・和文英訳の合計が4.2%であった。
 国公私間の差が生じる背景。1つ目,こうした,今御説明申し上げました国公立を私立との違いが生じる背景としては,丸1,国公立の一般入試においては,選抜区分当たりの志願者数が少なく,合格者に占める入学者の割合が高いこと,丸2,ほぼ全ての選抜区分で共通テストが一次試験として位置づけられているため,二次試験では少数の志願者に対するきめ細かな評価を志向しているということが考えられる。
 2つ目,一方,私立大学においては,丸3,選抜区分当たりの志願者数が多く,合格者に占める入学者の割合が低いこと,丸4,共通テストを一次試験として活用する私立大学もあるものの,多くの場合,限られた日程の中で個別学力試験によって多数の志願者の中から選抜しなければならないこと,丸5,一般入試だけでも複数の選抜区分を設け,複数の学力試験を作成している例も多いことから,記述式問題の作成や採点に伴う負担感が大きいことなどが,国公立の私立大学の間の差になっているのではと思われます。
 4ポツ,記述式問題の推進の考え方。以上御説明した1ポツ,2ポツ,3ポツを踏まえ,大学入学者選抜における記述式問題の出題や,思考力・判断力・表現力の評価についてどのように推進すべきか。これについては,これまで出された主な意見を改めて御紹介させていただきたいと思います。
 丸1,共通テストの位置づけ。1つ目記述式問題は,採点者の裁量が大きく,採点ミスのリスクもゼロにならない。採点基準を明確にすればするほど,問題は画一的かつ単純な訓練で解答が可能となり,本来問うべき表現力から遠ざかる。各大学が独自に問題を作り,自前の採点者が自前の採点基準で採点すべき。
 2つ目,本来求められる記述式とは,定型の模範解答があるようなものではない。
 3つ目,記述式問題で問う思考力・表現力の深さと採点可能性はトレードオフの関係。条件付記述式は学力中位層には一定の意味があったが,限定的なものとならざるを得なかった。
 4つ目,現行の共通テストの日程の枠外で,バカロレアのような本格的な記述式テストを実施すべき。条件付記述式を実現するためにCBTを導入したり,AIによる採点システムを開発したりすることには反対。
 5つ目,共通テストにおける記述式問題導入について指摘された問題は,容易に解決できるものではないため,現実には,個別試験における出題を促す以外の選択はあり得ないのではないか。
 6つ目,共通テストはマークシート方式だが,それで思考力・判断力・表現力を一切判定できないから記述式が必要というのはおかしい。センター試験では思考力等をより問う形に変化してきたはず。
 7つ目,米国SATのWriting and Language Testでは,多肢選択式で文章を推敲させ,書く力を評価している。記述式以外でも書く力を評価することは可能である。
 丸2,一般選抜における記述式出題の位置づけ。1つ目,記述式は,教科・科目を限定せず,各大学のアドミッション・ポリシーに基づき適切な教科・科目で推進すべき。
 2つ目,志願者数が少なく歩留り率も高い国公立は,より高度な記述式を出題する方向で改善すべき。
 3つ目,志願者数が多く歩留率が低い私立は,効率的な採点・出題の工夫により出題増に努めるという努力目標的な方向で改善を図るべき。
 4つ目,記述式を出題できていない残りの5割の私立大学に対する支援が必要。
 5つ目,共通テストで一律に記述式試験を行う必要はない。また,個別試験でも一律の導入を避け,その採否も含め大学の自主性・自律性に委ねるべき。
 6つ目,私立大学は,国公立と異なり一般入試を複数回実施しており,問題も複数回分作成している。一般入試で本格的な記述式の出題を求められても,現実的には困難な大学がある。
 7つ目,共通テストで記述式が不要という私立大学が多いと言うが,センター試験の利用のみで入学している者もいる中,思考力・判断力・表現力等を適切に評価できていないのではないか。
 8つ目,記述式を出題する私大もあり,工夫次第という部分もあるが,一方で難易度を上げると志願者が離れる傾向もあり,ある程度大学界として足並みをそろえる必要。私学の自主性を踏まえ一律の義務づけは行わないとしても,入試で記述させる部分を少しでも増やしていくという大きな方向性は合意すべきである。
 丸3,多様な選抜形態の役割。1つ目,総合型・学校推薦型選抜は,時間と労力を要するが,採点に時間のかかる面接,口頭試問,小論文,プレゼンテーション等も実施しやすい。
 2つ目,実態調査では,AO入試,推薦入試で小論文を課している例が案外少ない。国公私問わず,選考期間や採点期間に余裕のある総合型・推薦型選抜で思考力・判断力・表現力を見ていく工夫を充実させるべき。
 3つ目,各大学が出題意図,求める能力等を募集要項等で明確にした上で,受験生に記述式問題を課すこととし,新しい考えをまとめる思考・判断の能力や,その過程を表現する能力,自らの考えを立論し,その過程を表現する能力を様々な選抜方法を通じて丁寧に問う必要がある。
 5ポツ,個別入試における記述式出題の推進策。これまで御説明した実態調査の結果によれば,一般選抜において記述式を充実すべきと考えている大学が58.5%,総合型・学校推薦型選抜において思考力・判断力・表現力を評価できるように改善すべきと考えている大学が76.7%であった。また,国公立では一般入試全体で国立の99.5%,公立の98.7%が記述式を出題しており,全体の枝問数に占める記述式の割合は,国立で81.6%,公立で70.0%だった。一方,私立大学は54.1%が記述式を出題しており,全体の枝問数に占める記述式問題の割合は25.3%であった。こうした状況を踏まえて,各大学の取組を支援する方策についてはどのように考えればよいのか御意見を承りたいということで,支援策については,四角の中に具体的に幾つか書かれております。
 6ポツ,高校・大学における教育の充実。(1)高等学校における教育の充実。1つ目,教育課程全体で言語活動の充実を求める現行学習指導要領に基づく指導を徹底するとともに,2022年度から年次進行で実施される新学習指導要領に基づき,主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善による思考力・判断力・表現力等の育成を推進する必要がある。
 2つ目,その際,穴埋め式問題等に過剰適応した学習が広がっているとの指摘にも留意し,日常的な指導や定期考査等で文章を書かせるなど,論理的に説明する力を高める指導を充実させることが重要である。
 3つ目,高大接続改革の理念に立ち戻れば,大学入試における改善を推進するとともに,高等学校の指導実態を継続的にデータで把握し,国や設置者が必要な指導助言を行うとともに,高校と大学との対話,連携協力に生かしていくことも重要である。
 この点に関して,(2)高大連携プログラムの充実。高等学校と大学の連携の下,実際に大学で扱われている研究テーマについて,課題の発見や仮説の設定,それらを裏づける実験や調査の組立て方,一連の課題解決のプロセスをレポートにまとめる方法等を総合的に指導する取組が広がりつつあるが,こうした取組は,より適切な進路選択に資するだけでなく,思考力・判断力・表現力等を伸ばす観点からも有効であると考えられる。
 2つ目,こうした高大連携プログラムのプロセスや成果をAO入試や推薦入試の中で活用する取組として,例えば,大学による模擬講義を利用する選抜区分が,AO入試で14.3%,推薦入試で1.7%,令和2年度の入試でそういう実績があります。更にこれらの取組を充実させていくことが有益と考えられる。
 (3)大学入学者選抜と大学入学後の教育の一貫した取組の推進について。1つ目,高等学校段階までに培われた思考力・判断力・表現力は,大学入学者選抜において適切に評価するだけではなく,大学入学後の教育でも一層伸長させ,社会に出た後にその能力を発揮して活躍できるようにする必要がある。
 2つ目,近年,初年次教育等の取組の中で,論理的なレポート・論文の書き方などの技術指導,いわゆるアカデミック・ライティングの指導や,プレゼンテーションや集団討論等の技法を身につける教育をカリキュラム上明確に位置づけて取り組む大学や,全学組織としてライティング・センター等の支援組織を設置し,課題を抱える学生の個別支援に取り組む大学も増えてきている。国においては,大学入学者選抜における記述式問題の充実と大学入学後の教育を一貫させ,思考力・判断力・表現力等の能力を育成・評価する取組を一層推進していく必要がある。これに関しては,以下の囲みの中に主な意見を抽出しております。
 以上,よろしく御検討のほどお願いしたいと思います。
【三島座長】
 川嶋委員,どうもありがとうございました。それでは,記述式問題の出題の在り方に関するペーパーに基づいて御質問,御意見がありましたら,御発言をお願いいたします。挙手ボタンを押していただければと思います。また,なるべく多くの委員の方に御意見を頂くとともに,委員会でのやり取りも活発に行っていきたいので,御発言はポイントを絞って,1回3分程度でお願いいたします。
 項目が6つございますが,関連する部分をまとめて,いつものように時間を区切ってやりたいと思いますが,実は末冨委員が17時15分頃に御退出になるというふうに伺って,早めの御指名を御希望になっておりますので,まずは末冨委員に全般の中で御発言いただいて,その後,各項目に区切って,改めて皆様に発言をお願いしたいと思います。末富委員,どうぞ。
【末冨委員】
 ありがとうございます。すみません,私だけちょっと先に全般的なことを申し上げたいと存じます。まずは川嶋先生,お取りまとめ大変ありがとうございました。
 記述の力が大学で必要だということは,これはもう大学においても合意が取れることではございますけれども,入試の段階でやはりどのように測定していくのかということについての在り方というものが,特に私立大学において難しいです。更に言えば大規模な私立大学において難しいという実態に対し,どのように対応していくのかということを解決できなければ,実際の入試への導入は進まないとは考えております。
 この際に,例えばですけれども,短答式だけでも課した方がいいのではないかという御意見もありましょうが,高大接続の観点からいえば,現在の大学入試というものは専門分野を考慮されない形で,どちらかというと,高校の学びに寄り添った形で作られている者が非常に多いと思います。とりわけ一般選抜はそうなっているはずですが,できるだけ大学後の専門分野に寄り添った形,ある程度専門分野が理解できる形での出題,例えば医学部入試などは既にそうした工夫のある出題をされておられる大学が圧倒的であると考えますが,医学部入試以外の学部・専攻においても,専門性をある程度反映させるような短答あるいは多肢選択等の出題も例えば試行的には考えられていいのかもしれないとは思いました。
 なお,記述の力は必要ではあるのですが,川嶋先生が高校と大学の教育の双方の重要性と接続の在り方をおっしゃいましたけれども,入学前のスキルから在学中のスキルの伸び,そして,一般選抜等で記述を利用したかどうかということと卒業後の進路の在り方については検証がされておりません。とりわけ,これ以降は児童生徒IDを使って教育ビッグデータが時系列のパネルデータとして蓄積できます。大学のIRもこの点においては飛躍的に改善でき,さらなる向上が図れるはずですので,是非各大学団体におきましては,現在可能な入試形態,記述を利用したかどうかと,それから,在学中の履修の在り方,例えばGPAの推移とか,そして,卒業後の進路の在り方も含めて検証なさり,可能な範囲で大学団体としての分析と見解をお示しになるべきであると思います。何度も繰り返すようですが,検証から始めるという政策サイクルを動かさなければ,理念がまた暴走し,また同じ失敗を繰り返すことになります。この際にとりわけ重要なのは,やはり大学側が持っているデータを効果的に活用していくということをお願いしたいと思います。
 なお,今申し上げた大学の学び自体で学習者がどのように力が伸ばせているかがまだよく見えていないということは,実は高校教育についてはより深刻であると考えております。初等中等教育局にお願いしたいのは,教育課程の実施状況調査を更に充実させて,新指導要領への移行の中で,きちんと記述の力を伸ばしたり,あるいは考察できる力を伸ばせる指導が高校でできているのかということについて,かなり丁寧に現状を検証しながら高校の学びを深化させていかないと,正直申し上げて,日本大学に入ってくる高校生の層でいえば,記述の力はやはり不足していると考えざるを得ない高校教育の現状があります。ただし,それは私自身の直感に基づくものであって,エビデンスはありません。高校での指導の在り方,特に記述の在り方については今まで文科省としては検証されていないはずですので,初等中等教育局として責任を持って丁寧な解明を行うべきであろうと思います。
 なお,もしもなんですが,記述の力を試すために民間の試験を利用するというような大学も出てくるのかもしれませんが,この点につきましても,やはり今日の主体性の会議の方の報告にもありましたが,経済的・地理的な条件への配慮も含め,あるいは検定料の補助も含め,機会の均等,公平性・公正性が損なわれることのない配慮が必要であると思われます。
 以上の点について指摘させていただきました。お時間の御配慮ありがとうございます。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,改めまして委員の皆様から御意見を伺いたいと思いますが,項目が6つございます。今,時間を見ますと,残りが45分でございますので,1から3,それから,4及び5,そして,6と,3つに切って15分ずつと思います。自分はどこで発言しようかということをお考えになりながら手を挙げていただきたいと思います。
 それではまず,1,記述式の問題の意義・必要性,それから,2ポツ,共通テストへの記述式の見送りの段階で指摘された課題及び3,記述式問題に関する大学の意見や出題の実態に関して,御質問,御意見がございましたらお手を挙げていただければと思います。いかがでございましょうか。それでは,島田委員,どうぞ。
【島田委員】
 筑波大の島田です。よろしくお願いします。川嶋先生,またいつもながらどうもありがとうございました。
 2ページ,2ポツ,問題点の指摘の部分ですけれども,そこの2ページの一番下,(5)のところ,「採点をめぐる制約から望ましい記述式に限界があることの指摘」とございます。「望ましい記述式に限界がある」という表現がちょっと分かりにくいかなと思うのですけれども,それはそれとして。
 この項目の最後のところで,「このような作問で」というのは,つまり,条件付の記述式でという意味だと思いますけれども,記述式で問うべき能力を問えるかどうかについて指摘がなされたとございます。ただ,もともと大学生に求められる記述力のうち,共通テストで測れるのはどのような力か,それはどのような作問で実現できるのかを考えて,条件付の記述式というのが採用されてきたということだろうと思います。その条件付の記述式で測ろうとした力も,採点上の制約から極めて限定的なものにならざるを得なかったというような筋道かなと思います。
 そこで,この部分,「これに対して」以下の部分ですが,より現実に近いのは,採点を巡る制約がある中で,このような作問で限定的に記述力を測ってもコストに見合わないという指摘がなされたということの方がよさそうに思います。ちょっと感想程度ですが,以上です。ありがとうございました。
【三島座長】
 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。芝井委員,どうぞ。
【芝井委員】
 言わないでおこうかと思ったのですけれども,今の島田先生からのところなんですが,私もちょっとここが気になっています。「このような作問で」の後ですが,3ページの一番初めですけれども,「このような作問で,記述式で問うべき能力を問えるかどうかについて指摘がなされた」というのは,ちょっと日本語としてどうなのかと思うので,私の感じでいうと,記述式で問うべき能力を問えないのでないかという指摘がなされたというのが現実かなと思うんです。
 それについてはいろいろな意見がある。確かに限定的なことなんだから,限定がある中でのことなんだから,先ほど島田先生御指摘のように,コストの問題で書かれるのも1つの方法ですが,「問えるかどうかについて指摘がなされた」というのはちょっと日本語としてはまずいんじゃないでしょうか。つまり,問えないのではないかという指摘がなされたというのが現実ではないかと思うんですけれども,御検討いただけましたらと。
【三島座長】
 ありがとうございます。ほかいかがでございましょうか。それでは,渡部委員,どうぞ。
【渡部委員】
 ありがとうございます。渡部です。5ページの4番ですが,5ページの下から2番目の黒丸です。実態調査では,AO,推薦で小論文を課している例が案外少ないというところです。これはやはり残念な傾向だとみるべきだと思います。
 記述式について議論している場合,どうしても合否にかかわる得点として考慮するといった視点から議論しているように思います。しかし,多様な目的があり得ます。例えば特に推薦・AO入試などでは,一定の適性を判断するために書かせる,事前に提出させると,そういった使い方があってもいいのではないでしょうか。一般試験でもこういう在り方があって良いのではないかと思います。書くという行為を通して,能力を判断するだけではなく,専攻分野への適性を見る,志望動機を見ると,いわゆる記述式の課題が多様な目的で使いうるということは議論の上で念頭に置いておくべきことだろうと考えます。
 以上です。ありがとうございました。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。それでは,小林委員,どうぞ。
【小林委員】
 今回川嶋委員にいろいろとまとめていただいたのは,私立大学のことも非常によく配慮していただきまして,ありがとうございます。よく書けていると思います。
 その中で,2ページ目の2番の共通テストへの記述式の見送りの段階で指摘された課題で,この中に入っていないのが,たしか記述式をやって採点をすると,成績報告までの時間がかなりかかってしまって,我々大学が共通テストの成績を受け取るのがずれ込むと一般入試に影響を与えるというのも1つあったのじゃないかと思うんですけれども,御確認ください。すみません,過去の議論でございますので。
【三島座長】
 その記述はあったと思いますね。3ページの3ポツの一番下のところで,他方で「方向性は間違っていない」など共通テストへの記述式導入に賛同する意見も見られたものの,その実現のための方策については,「AIによる採点システムを開発すべき」,「記述式だけは12月に実施すべき」でといった意見があったというところです。
【小林委員】
 表現が若干違うんですけれども……。
【三島座長】
 ちょっと違いますね。分かりました。
【小林委員】
 これで包括しているのかもしれませんけれども,普通の共通テストの日程ですと,採点の結果が時間がかかって2月中旬ぐらいになってしまうという問題もあったかと思います。
【三島座長】
 分かりました。そこは確認いたします。ほかいかがでしょうか。芝井委員,また手が挙がっておりますが,下げ忘れでしょうか。
【芝井委員】
 ありがとうございます。
【三島座長】
 どうぞ。
【芝井委員】
 4ページの,今,小林先生からいろいろな形で私立大学のことを書いていただいてという部分なんですが,ちょっと気になりますのは,国公私間の差が生じる背景の分析のところなんですけれども,4ページの真ん中から下のところですが,これ,全て当たっていると思います。そのとおりだと思うんですが,ただ,現在の受験生の立場に立ったときに,国公立と私立をどんなふうに捉えて受けているのかという実態の話が全然書いてないんです。
 これは多分予備校だとか高校だとか,あるいは受験生本人からすると,国公立と私立と分けて書いてあるけど,自分はいろいろな形で併願をしていくわけです。だけど,これ,併願の話が全く書いてなくて,あんまり現実的ではないなという感じがします。もともと初めから国公立を受ける人と私立を受ける人がすごいクリアに分かれているわけでも何でもないので。私立大学の方は,日程的に国公立大学よりも前に試験日が実施されるという現状がありますので,その中で物を考えているわけですけれども,逆に言うと,国公立の方は,私立の大学の受験が終わってから自分たちの試験ができるという,これ,有利なのか不利なのかいろいろな意見があると思うんですが,そういう立ち位置にあるわけですね。
 ですから,その全体像を踏まえた形で実は書いていただかないと,差が生じる背景を正確には述べたことにならないというふうな気がいたします。言い出すとすごく長くなりますが,一旦そういう問題があるということだけは是非受け止めて,何らかの工夫をしていただきたいと思います。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,柴田委員,どうぞ。
【柴田委員】
 福岡県立大学の柴田でございます。ただいま御指摘いただきました4ページの国公私間の差が生じる背景というところです。ここは,最大の理由としては,国公立においては,分離分割方式という受験生がかなり限定的に志願しているというシステムがあるのが最大の理由ではないかと思っておりますので,是非そこを背景の中に書き込むべきではないかと思います。しかもこれは,志願者数あるいはここにあります歩留り率等についても非常に大きな影響を及ぼすシステム,大学にとっては非常に効率のいいシステムを国公立は取っているというところを看過すべきではないのではないかと思っております。
 以上でございます。
【三島座長】
 ありがとうございました。渡部委員,御発言ですか。
【渡部委員】
 もう一点です。
【三島座長】
 はい,どうぞ。
【渡部委員】
 5ページ,下から4番目の黒丸です。ここに,私立大学は,一律の義務づけは行わないものの,大きな方向性は合意すべきというふうな文言があります。私立は本当に多様ですので,義務化するということがあっては困るということはあります。ただし,1つだけあるいは2つだけ,少数の大学だけというふうにやると,学生が離れていくとか,受験生が少なくなるということの事情がありますので,一斉に,ややもう少し強い文言で,一緒に協力していきましょうというようなことが文言として含められてもいいのではないかなと思います。義務としないまでも,英語では,strongly recommendedという便利な言葉がありますが,強く勧めますと。肯定的にみんなで協力していきましょうと,そういった文言にしてもいいのかなというふうな印象を持ちました。
 以上です。
【三島座長】
 それでは,ほかに今,手が挙がっておりませんけれども,今の御質問ももう項目の4に入っておりますので,一応この時点で4と5を合わせて15分というところに入っていきたいと思います。質問がなくなりましたら,どんどん先へ進んで,残り時間がありましたら,また全体像の御質問をしていただければと思います。それでは,項目の4,記述式問題の推進の考え方,5,個別入試における記述式出題の推進策,これに関して御質問,御意見がございましたら,御発言いただきたいと思います。
 先ほど益戸委員から提出資料があるというふうに申し上げましたけれども,島田委員,清水委員,そして,末冨委員からの資料と,もう一つ,益戸委員の意見が入ってございます。これは,記述式問題はできるだけ増やしていくことに合意すべきという点について,益戸委員からの資料として,採用と大学教育の未来に関する産学協議会の提言を踏まえた意見ということが出ておりますので,後で御覧いただければと思います。今御覧いただきながらでも結構でございます。
 それでは,4ポツ,5ポツのところで御発言ございましたら,挙手をお願いいたします。清水委員,どうぞ。
【清水委員】
 ありがとうございます。筑波大学の清水です。今,座長からお話のあった益戸委員の資料を拝見して,同じようなことを申し上げたいなと思って拝見しました。
【三島座長】
 お願いいたします。
【清水委員】
 5ページの下の方の丸3の直前のところでしょうかね,各私立大学の様々な事情も今回の調査で大分明らかになってきましたし,先ほど末冨委員が言われたような,大規模な私立大学のいろいろな制約の問題,それから,歩留り率の問題等ありますが,その中でもやはり大学の受験者の全体像ですね。いわゆる集団として見たときに,やはり受験を通過する中で一定程度の,記述の洗礼と言うと変ですけれども,それを通過するような緩やかな合意のようなものがあってもよろしいんじゃないかなというふうに個人的には考えておりまして,そこのところに注目したいなと思いました。
 そういう意味で,実は6ページの5の2つ目と3つ目のポツのところがちょっと参考になるなと思っています。特に3つ目のところに,ボリュームゾーンの志願者には,数式を書かせるだけでもスクリーニングとして十分機能するという,これは新井紀子先生の御指摘だったでしょうかね,その上にもありますけれども,上には,概念の定義を書かせる問題というような形で,自分の考えていることを外にアウトプットするという,書くこと自体がもう学習と切っても切り離せないものですので,こういうところを少し見ながら,何らかの形で入試で記述される部分を少し増やしていくようなことを大事にしていただけないかというふうに個人的には思っています。
 以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。では,渡部委員,どうぞ。
【渡部委員】
 失礼しました。私,先ほど4番に入っていると思いましたので,間違えました。5番,よろしいでしょうか。四角で囲ってある最初の黒丸,ガイドラインを作成するというところでありますけれども,これ,とても建設的でいい案だなと思います。更にその1つの参考としてですが,IELTSは毎年200万以上が受けているテストですが,記述式の問題が取り入れられています。それは小論文のように長い文章を書かせるというのではなく,理解を確認するために3つのキーワードを書かせるというような工夫をして書かせるという課題があります。これは外国語としての英語のテストではありますが,第一言語の記述式問題でも適用することが十分可能だと思います。一言で記述式とは言っても,目的は一つではなく,また形式も一つではありません。広く視野を広げてこういったガイドラインを作るということは建設的だと思います。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。ほかございますでしょうか。ないようでございましたら,もう6番も含めてということにいたしたいと思います。6番を優先にしますけれども,時間がたっぷりありますので,もし6番で特に御発言が切れたら,全体像ということにいたしましょう。それではまず,岡委員,どうぞ。
【岡委員】
 ありがとうございます。7ページの6番の高校・大学における教育の充実というところで,3ポツの「高大接続改革の理念に立ち戻れば,大学入試における改善を推進するともに,高等学校の指導」云々というふうに書いてあるんですが,ここは大学入試における改善推進とは具体的にどのような改善を言っているのかという。大学入試に高校の教育が引きずられているように感じられる文章だと思いますので,書くとすれば,高校と大学の垣根を低くして,定常時に大学が高校教育に積極的に参画するなど相互の理解を深め,連携・協力していくことが重要であるというような,こういう程度の記載がいいのではないかと思われます。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは今度,萩原委員,どうぞ。
【萩原委員】
 萩原です。6の(1)の1ポツ目ところですが,高等学校におけるこれからの授業,学習指導要領に基づいてということでは,主体的・対話的で深い学びであったり,思考力・判断力・表現力等の育成をしたりしていくということが必要になってきます。大学入試でこれらの力を確認していくということであれば,ちょっと戻りますが是非とも4のところの丸3の直前のポツのところ,入試で記述させる分を少しでも増やしていくという方向性については,全体として合意をしていくということも必要であろうと思っています。
 私からは以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは続いて,両角委員,どうぞ。
【両角委員】
 両角です。ありがとうございます。私は,6番目の高大連携というか,高校で問われているような記述の話と大学で求められるものが少し乖離しているのではないかということがこれまでの議論で出されているんですけれども,そこに関連して少し感じていることを述べたいと思います。
 記述式といっても,書かせることだけにも意味があるという意見もあって,そうなのかなと思って聞いてはいたんですけれども,大学に入ってから例えばレポートが書けないとか,卒業後,働いてもなかなか文章が普通に書けない人が増えているということで記述式ということが出てきたんだと思います。そういった際の記述式というのは,論理的に自分の考え方を組み立てて書いて,根拠づけて述べていくとか,大学で言うレポートを書くような能力だと思います。
 それと,例えば,私は専門ではないのであまりよく分からないのですが,例えば先ほどの国語などの試験を見ていますと,論理的な文章を扱うというものと,小説と実用的な文章とあるんですが,何となく大学で一番問いたいものは,論理的な文章をきちんと読める能力であるし,小説でそのときのあの人の気持ちはどうでしたかといったことを情緒豊かに書くということが求められているというよりは,論理的な文章を書くということではないかなと感じます。また,実用的な文章というのも,なかなかその定義とかいろいろ難しいんだということを島田先生がおっしゃっていて,なるほど,そうなのかと理解が深まったのですが,それこそ契約書みたいなものを高校生に読ませたいわけでもなかったりするのかなという気がしています。
 大学教育とつなぐ,本当に欲しい記述的なものというと,論理的に書かれた文章をきちんと読んだり,書いたりするということかなと考えます。そういうところでの高校と大学のつながりという視点と,入試で問われているものというのが本当に見合っているものなのだろうかなというような疑問を少し感じています。今回のまとめで,意外とそうした論点がどこにも出てこなかったので,どこで発言していいか分からなかったのですが,気になっておりましたのでここで指摘させていただきました。ありがとうございます。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,宍戸委員,どうぞ。
【宍戸委員】
 お願いします。先ほどから,書かせるということを共通理解してもっと押し出してもいいんじゃないかという話がありました。私もこれは賛成です。ただ,障害のあるお子さんのことを考えると,書かせる,筆記ということがなかなかスムーズにいかない場合もあります。書かせることを,今,両角先生がおっしゃったように,論理的な考えをまとめる,また,表現するというふうに考えて,これからタブレットなども普及していくと思いますので,書くということがある意味,タブレットを打つというようなことでも可能ですよというような考え方が広がっていくと,障害のあるお子さんの可能性を伸ばせるんじゃないかなと思いますので,その点もどこかで考慮していただけると有り難いと思いました。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,柴田委員,どうぞ。
【柴田委員】
 柴田でございます。8ページの高大連携プログラムの充実というところです。これ,私,以前も御紹介したと思いますけれども,本学では全ての入試区分で小論文を出題しております。この小論文を出題したものを,翌年にはオープンキャンパス等で高校生には解説をやっております。本年度はそれをウェブに載せて流したことがございます。どういう方々がそれを見ているかというと,受験生,3年生ではなくて,主に高校2年生でございました。その辺りから本学での小論文をどういう狙いで出題しているのかという意図を御理解いただいた上で受験していることなんだろうなと理解しております。
 入学後は,その教材を用いて,それだけじゃないんですけれども,教養演習というのを,15回にわたっていろいろスキルをつけるものをやっております。そういう形での高大連携という1つの見做しになる取組をしておりまして,幸いにも卒業生なんかの評価は,本学の卒業生は文章力があるとお褒めの言葉を頂いていると伺っています。
 以上でございます。
【三島座長】
 ありがとうございました。具体的な取組の御紹介ですね。ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。渡部委員,どうぞ。
【渡部委員】
 ありがとうございます。細かい文言で申し訳ないんですが,4ページの上から3行目,ここに「短答式・穴埋め式が国立で」という文言があります。ここで穴埋め式というのは,記述式の一部として含められているように見受けられます。一方,7ページを御覧ください。7ページ,6番の高校・大学ですけれども,この2番目の黒丸,ここにも「穴埋め式問題等に過剰適応した」とあります。ここでは穴埋め式が,多肢選択問題の一部として扱われているようです。6番のところは例えば「多肢選択問題に過剰に反応した」などという言い換えが必要かと思われます。
 以上です。ありがとうございました。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,島田委員,どうぞ。
【島田委員】
 筑波大の島田です。何度もすみません。両角先生が御指摘くださいました,高校と大学で求める記述力というのは少し違うのではないかという御指摘でした。そのことと大いに関係がありそうなんですが,今日おまとめいただいたペーパーの中でも,ところどころに,「本来求められる記述力」とか,「本来問うべき表現力」というような言葉が何度か出てきています。その,「本来求められる記述力」の中身というのが,必ずしも明らかではないんですけれども,やはり大学で求められる,大学生に求められる記述力というのは,端的に言えば,「論じる力」だと思うんです。すなわち「的確な根拠で,適切な論拠で,考えを述べる力」ということになろうかと思います。そのことがこういうペーパーの中でも書き込まれればいいなとは思うところです。
 また,そういう力を育成しようというのは,実は小中高の教育課程の中にも散りばめられてきてはいるんですけれども,なかなかそれが実現できていないことが,国語教育の長きにわたる課題です。その結果,大学入学者の中に記述力の不足した者が少なくないというのは,先ほど末冨先生もおっしゃってくださったとおりだと思います。というわけで,大学生に求められる記述力とは,そのような「論じる力」だということをどこかに一度書き込んでいただけるとよいのではないかと思った次第です。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,小林委員,どうぞ。
【小林委員】
 意見というわけではないんですけれども,この川嶋委員のペーパーを見てみると,1,2,3というのは,事実を,今までの経過を踏まえたことをそのまま書かれていて,それを踏まえて,残りの4,5についてどのように推進するかという問いかけをされているというふうに感じるんです。その中に書かれている枠の中は,賛否両論含めていろいろな意見がこれだけありましたという立てつけになっているので,これをまとめるおつもりでこのペーパーを出されたのか,あるいは賛否両論いろいろありましたということをただ書き連ねるおつもりでこれを出されているのか。その辺,もしまとめるのであれば,これ,今までに出された意見を踏まえて皆さんでディスカッションするというのが筋かなという気がしたんですけれど,これ,どういうことだったんでしょうか。すみません。
【川嶋委員】
 小林委員おっしゃるとおりで,この2つのパートは,これまでの委員や有識者から頂いた意見を前半の1,2,3では整理してお示しして,4,5については,大学入学者選抜における記述式の出題についてどのように方向性を考えたらよいか,あるいはどのような個別あるいは国全体としての支援策があるのかということについての委員の方々の御意見を伺いたいということで,こういう本日のペーパーの構成にしているところでございますので,御賢察のとおりでございます。
【小林委員】
 そうだとすると,この主な意見,いろいろ賛否両論がありますので,その中でどうやって整理をしていくかということになると思うんです。共通テストの位置づけについては,縷々として書かれておりますけれども,下から3つ目ですかね,共通テストにおける記述式問題導入について指摘された課題は容易に解決できるものではないため,現実には個別試験における出題を促す以外の選択はあり得ないのではないかという表現が一番全体をまとめているような,両論の中で一番まとまっているような感じがします。
 一般選抜における位置づけは,やはりこれ,国公立と私学では大分意見が違ってしまうので,国公立についてのまとめ方と私学についてのまとめ方は少し分けた方がいいのではないかと思います。どうまとめるかなんですけれども,個人的には,上から5番目,私立大学では,一律に記述試験は共通テストでは行わないと。個別試験でも一律の導入を避け,その採否も含め,大学の自主性・自律性に委ねるべきというのは,今までずっとお話ししていたことそのものです。あとは少し尾ひれをつけてもよろしいかと思います。
 3番目の多様な選抜形態の役割ですけれども,総合型,学校推薦型選抜,これについては,特に異論なくて,一番最初の丸が一番全体をまとめているんじゃないかというのが私自身の意見なんですけれども,その他の方々,ほかの方々の意見も是非伺っていただければと思います。
 以上です。
【三島座長】
 御意見どうもありがとうございました。それでは続きまして,芝井委員,どうぞ。
【芝井委員】
 ありがとうございます。先ほどあまり申し上げなかったんですけれども,時間があるようですので是非。4ページのところですね。どうして国公立の間の差が生じるのかという,その背景に関わることです。ちょっとうまく表現できないんですが,受験生というのは大学に入ることを目的にしています。できれば第1志望に入りたい。力のある子は国立大学に入りたいわけです。これ,現実としてですね。
 日程的に国公立の方は2月の終わりから3月にかけて試験がありますので,その前に私立大学の一般試験を受ける,あるいは共通テストの結果をもって合格を手にするわけです。これは併願先ということになるわけですね。ほとんどの受験生はそういう形でやっぱり受験していまして,まず私立の大学を受けて,そこでできれば合格を手にして,その上で安心材料を持った上で国公立を受験するという,こういう構造になっているわけです。
 そのときに,私立が大変負荷の高い試験をしてしまうと受けてもらえないわけです。これは明らかなことですけれども。だから,そういう構造になっているので,私立は何もしたくないわけではないんだけど,頑張ってやってみても,なかなか受験生は集まらない,あるいは敬遠されてしまうという現実があります。
 うちの大学でも小論文の方式で受験の枠をつくりましたが,やっぱり多数は受けてくれない。一部しか受けてくれない。そのためにきちっとした採点ができるので,本当に力のある子ならば是非合格したいというのでいいんですけれども,小論文を全体に及ぼすことはもうほとんど不可能,現在の構造が存在する限りにおいて不可能だというのは,私の正直な思いです。
 この構造全体を変えるのであれば,何かいろいろなことができると思うんですけれども,単純に現在のその構造が変わらないときに,やっぱり記述をすべきであると言われても,いや,それは限定的でしかできませんと言わざるを得ない。これはもう全くの現実でして,受験生も負担が多いのは困りますし,受験生も体力を残して2月,3月の国公立の受験をしないといけない。そういう現実から目をそらして議論されると,やっぱりちょっと困るというのははっきり申し上げておきたいと思います。
 やっぱり併願先としてきちっと選んでもらうことが必要で,それによってリターン,歩留りが低くなるというのは仕方がないんですが,これ,現実ですので,そこの現実を無視した議論はやっぱりちょっと困るなというのが正直なところです。とはいえ,理念は大事ですから,理念は大事なんですけれども,やっぱり現実も均等に見ていただいて御判断をお願いしたいと思っています。
 以上です。
【三島座長】
 御意見ありがとうございました。それでは,岡委員。あと,岡委員と清水委員と手が挙がっておりますけれども,全体でも結構ですので,御発言お願いいたします。岡委員からどうぞ。
【岡委員】
 すみません。先ほど大学でどのような記述式の能力をということを島田委員が,それを加えたらという話がありましたけれども,以前,私がお話をもう既にしておりまして,受験生の新しい考え方をまとめる思考・判断力の能力や,その過程を表現する能力,自らの考えを立論し,更にその過程を表現する能力を様々な選抜を通じて丁寧に問うということを,受験生には具体的にこういうことが必要だということを述べております。それから,もう少し高校関係者の皆様には,根拠を持って問いに答えるレポート作成をする力などを含めて養成していただきたいというようなことを述べております。以前述べたことをもう一度確認をさせていただきました。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,清水委員,どうぞ。
【清水委員】
 ありがとうございます。1ページ目の一番根幹に当たる記述式問題の意義・必要性の根拠になっているところが,大学生になり,あるいは社会に出て,論述する力や論理的に説明する力というふうに必ずなるんですけれども,それをちょっとズームアウトして考えて,今,記述式問題というのは入試の議論ですので,記述式というものの中身は何を指しているのかという話が必要だというふうに思いました。
 1ページ目の3つ目のポツのところには,短答,短文,長文,小論文という,いわゆるフォーム,形式で分類されたものが入っていますが,先ほど申し上げたように,センテンスとか定義のようなものを書くことも記述であって,コンテンツとして何を書いているか,コンテンツと言ってしまうと内容に特化してしまいますけれども,カテゴリーとして何を書かせるかというのがとても大事です。
 例えば数学の場合には,民主主義の根本である,同じ土俵で議論するという定義自体をちゃんと言えるかと。東京大学で今から20年ほど前に,サイン・コサインの定義を書きなさいという問題が出されましたけれども,これ,結構インパクトがあって,意外と東京大学の受験者ができなかったという話があったりしました。ですから,記述といったときに,論述する力もそうですけれども,概念を説明したり,例を挙げたり,定義を述べたりという,そういうレベルのものも入試問題としてはあってもいいということをちょっと考えておきたいなというふうに思いました。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,島田委員,どうぞ。
【島田委員】
 島田です。何度もすみません。5ページの4です。ここで丸1から丸3まであって,丸2が一般選抜における位置づけ,丸3は多様な選抜形態の役割となっております。この丸2と丸3を必ずしも分けなくてもいいのではないかなと考えました。というのは,大きな私立大学では,一般入試で記述式の出題を求められても現実的に無理だというお話が今日もありました。そこで,一般選抜に限らなくても,一般選抜や総合型あるいは学校推薦型の全てを含めて,学生選抜のどこかで,全体の中のどこかで記述式を出題していくような努力を今後していくというようなことであれば,合意ができるのではないかなと考えた次第です。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,斎木委員,どうぞ。
【斎木委員】
 斎木でございます。どうもありがとうございます。5ページですけれども,4.の「記述式問題の推進の考え方」について,既に複数の委員から御指摘ございましたように,共通テストにおいて記述式問題を導入することは現実には困難である,したがって,個別試験において記述式の出題を促すことが適当である,という点に,私も強く同感するところであります。
 更に続けまして,これも複数の委員から既に御意見がありましたけれども,大学界としてある程度足並みをそろえていく,すなわち,大学の自主性を十分踏まえつつも,入試での記述の部分を少しでも増やすという大きな方向性に合意すべきだろうという点についても私として強く支持するところでございます。
 この観点で1つ想起したい点があります。それは,すなわち,前々回の本検討会議で川嶋先生におまとめいただきました大学入試の3つの原則ですけれども,その原則の1番目として皆様から異論なく賛同を得た点に関してです。具体的にどういう点かといいますと,ちょっと読み上げになって恐縮ですけれども,前々回川嶋先生からお示しいただいた大学入試の原則丸1というのは,「我が国における大学入学者選抜の内容・方法を決める責任主体は各大学・学部であり,各大学・学部が主体的に入学者選抜を実施するものとされている。その一方,個別入試の集合体としての大学入試全体のあり方が高等学校以下の教育に大きな影響を有すること等を踏まえ,」「一定のルールをガイドライン(大学入学者選抜実施要項等)として定め,適切な実施や選抜方法の改善等を促しているが,このことも重要である」と。これは大変重要な原則だと思います。したがって,各大学の,特に私学の自主性や様々な御事情を十分踏まえつつも,記述式問題について,これをできる限り増やしていくという大きな方向性に合意することは可能ではないかと思いますし,また,適切なことであると考えております。
 どうもありがとうございます。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。現在もう手が挙がってございません。そろそろ会議の終了の時間になりますので,これで閉めたいと思いますが,どうしてもあと一言がございましたら,お手を挙げてください。よろしいですか。
 それでは,本日は長時間にわたり御意見交換をありがとうございました。資料3につきましては,本日頂いた意見を踏まえて,座長代理とも相談しながら更にブラッシュアップをさせていただきたいと思います。
 それでは,時間の関係もございますので,本日の検討会議は以上とさせていただきますが,最後に,事務局から何かございましたらお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 次回の会議の具体的な時間につきましては,委員の皆様の日程を調整の上で近日中に御連絡申し上げたいと思います。
 以上です。
【三島座長】
 それでは,本日の検討会議は以上とさせていただきます。御協力どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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