大学入試のあり方に関する検討会議(第22回)議事録

1.日時

令和3年3月4日(木曜日)15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省省議室

3.議題

  1. 大学入学者選抜のあり方と改善の方向性

4.出席者

委員

(有識者委員)三島座長、川嶋座長代理、益戸座長代理、斎木委員、宍戸委員、島田委員、清水委員、末冨委員、両角委員、渡部委員
(団体代表委員)岡委員、小林委員、芝井委員、柴田委員、萩原委員、牧田委員、吉田委員
(オブザーバー)山本大学入試センター理事長

文部科学省

丹羽文部科学副大臣、伯井高等教育局長、森田大臣官房審議官、西田大学振興課長 他

5.議事録

【三島座長】
 委員の皆様,こんにちは。主査の三島でございます。今日もどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,定刻となりましたので,ただいまから第22回の大学入試のあり方に関する検討会議を開催いたします。
 今回も新型コロナウイルスの感染拡大防止のため,ウェブ会議方式での開催でございます。音声などに不都合はございませんでしょうか。先ほどからチェックをさせていただいているとは思いますが。
 本日も,傍聴者,報道関係者の入室は認めず,ライブ配信での公開とし,後日議事録をホームページに掲載することとしたいと思いますが,よろしゅうございましょうか。
 それでは,よろしくお願いいたします。
 初めに,出席等,事務局からお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 本日,荒瀬委員が御欠席,それから,牧田委員が途中から御出席ということになっています。
 前回までと同様に,聞き取りやすいような御発言,資料の参照の際の該当箇所のお示し等,よろしくお願いいたします。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,今日はまず会議の開催に当たり,丹羽文部科学副大臣から御挨拶を頂きたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
【丹羽文部科学副大臣】
 改めまして,皆様,こんにちは。文部科学副大臣の丹羽秀樹でございます。本日は,大臣が参議院の予算委員会の方に出席しておりますので,私が代わって御挨拶を申し上げさせていただきます。
 委員の先生方には,お忙しい中御出席いただきまして,本当にありがとうございます。何と今回が22回目の開催となりまして,本当に精力的な御検討を続けていただいておりますことに改めて感謝と敬意を申し上げる次第でございます。ありがとうございます。
 本会議の検討項目も多岐にわたっておりますが,令和6年度実施の入試に向けまして,この夏に文科省から予告を出すことになっております。これに向けて議論を更に進めていただければ誠に有り難いと思っております。
 本日は,大学入学者選抜のあり方と改善の方向性について御議論いただくことになっております。是非また本日も活発な御議論を期待いたしておりますので,何とぞよろしくお願いいたします。
 ちなみに,鰐淵大臣政務官もライブ上で参加させていただいていますので,よろしくお願いいたします。
【三島座長】
 副大臣どうもありがとうございました。
 それでは,議事に入ります。初めに,経緯をもう一度復習しておきます。本検討会議は,まず各委員からの意見発表に加えて,40名近くの外部有識者からの意見聴取,そして,ウェブでの意見募集の結果,669件が集まりました。それから,全大学に対する選抜区分ごとの実態調査と各大学へのアンケート調査の結果を踏まえて議論を進めてきたとところでございます。
 その上で,昨年の10月から本検討会議のテーマごとに「整理しておくべき事項」というメモを川嶋委員から提出いただき,テーマごとに集中的な議論を実施してきたところでございます。まず総論として10月16日と27日,それから,記述式について12月11日,それから,英語の4技能について12月22日,そして,前回ウィズコロナ・ポストコロナでの入試の在り方,2月17日ということでございまして,地理的・経済的事情への配慮については12月22日に末冨委員から包括的な提案があり,議論が行われたところでございます。
 一方,令和6年度実施の入試に向けては,この夏には文科省から予告を出さなければならないというスケジュール感を踏まえまして,議論を加速させていく必要があると思いますので,座長の私とお二人の座長代理とで相談をいたしまして,今回から,何回かに分けて,テーマごとにある程度まとまった形の資料をこれまでの御意見に基づいて準備し,用意が整ったものから順次議論を深めていきたいと考えるところでございます。
 今回はその第1弾で,議事次第のところにございますように,総論的事項ということで「大学入学者選抜のあり方と改善の方向性」というようなところについてペーパーを作成いたしましたので,座長代理の川嶋委員から御説明を頂きたいと思います。その後にこれを踏まえての討議の時間を取りたいと思います。
 ということで,まず川嶋先生から資料1について御説明を頂きたいと思います。先生,どうぞよろしくお願いいたします。
【川嶋委員】
 川嶋でございます。それでは,資料1を御覧ください。今座長の方からここまでの経緯や今回のペーパーの趣旨について御説明がありましたが,本日は,座長及び2人の座長代理と検討した内容についてまとめましたので,御報告させていただき,その後またいろいろ御意見を伺えればと思っております。
 座長からもお話がありましたが,総論的事項ということで,括弧内にありますように,「大学入学者選抜のあり方と今後の改善の方向性」について,4つに分けて整理をさせていただいたということでございます。
 最初は,(1)大学入学者選抜に求められる原則についてでございます。これについては,皆様方のお手元に,最後の方にこういう横長の資料があるかと思いますが,これも参照しながら私の話を聞いていただければと思います。
 まず,大学入学者選抜に求められる原則ということです。大学入学者選抜の在り方を検討する上で,大学入学者選抜に求められる原則を改めて確認しておくことが極めて重要であると考えております。原則としては3つを掲げております。
 まず原則丸1でございます。当該大学・学部での学修及び卒業に必要な能力・適性の判定。1ポツ目,大学入学者選抜は,各大学・学部がそれぞれの卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)や教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)に基づき,入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)を定めて行うものであり,当該大学・学部で学ぶのに必要な能力,また,卒業するために入学時に求める能力・適性等を有する学生を選抜することを目的としている。
 2つ目のポツでございます。このため,入学者選抜がその役割を十全に果たし,大学と学生との望ましいマッチングが図られるためには,これらの3つのポリシーを具体的かつ明確に示し,その連動性を強化することが極めて重要である。また,特に学力検査では,志願者の中から,当該大学・学部の求める能力を有する者を正確に判定し,選抜するための要件,すなわち,信頼性,妥当性,識別力を備えることが重要となる。
 3ポツ目,このような,大学ごと・学部ごとに行われているという選抜という特質があることから,我が国における大学入学者選抜の内容・方法を決める責任主体はそれぞれの大学・学部であり,各大学・学部が主体的に入学者選抜を実施するものとされている。その一方で,個別入試の集合体としての大学入試全体の在り方が高等学校以下の教育に大きな影響を有すること,その中で大学が共同して実施する大学入学共通テストが重要な構成要素となっていることと等を踏まえ,国がコーディネーターとしての役割を果たし,大学入試センターや関係団体と連携・協議し,一定のルールをガイドライン,すなわち大学入学者選抜実施要項等として定め,適切な実施や選抜方法の改善等を促しているが,このことも重要である。
 原則丸2,受験機会・選抜方法における公平性・公正性の確保についてです。まず形式的公平性の確保について説明させていただきます。入学者選抜の結果が当事者である受験生をはじめ,社会的に信頼されるものであるためには,受験機会や選抜方法における公平性・公正性の確保が重要である。具体的には,同一選抜区分において公平な条件での実施,これを形式的公平性の確保としておりますが,これが必要である。ただし,このことは,同一日・同一試験問題による学力検査の結果による選抜のみが公平・公正であると考えるものではない。選抜基準を明確にすることにより公平性・公正性を確保した上で,一般選抜のみではなく,総合型選抜や学校推薦型選抜等を含め,選抜方法,選抜尺度の多様化を進め,志願者の能力,適性等を多面的・総合的に評価することが重要である。
 2つ目のポツでございます。具体的には,試験時間や試験環境の斉一性はもとより,正確な採点や試験問題の漏えいの防止等を含め,全体として公平・公正な手続に基づく合否判定が行われることが重要である。これを手続上の公平性・公正性と呼んでいる方もございます。特に,試験問題の作成や採点をはじめ試験実施業務において,外部の機関や専門家の協力を得ることについては,機密性,中立性等の観点から慎重に対応すべきであり,利益相反の疑義を持たれないようにする必要がある。
 3つ目のポツでございます。こうした観点から,試験問題やその解答,解答例・出題の意図,試験の評価判定方法等の選抜基準,受験者数・合格者数・入学者数,男女別合格率をはじめ,入試に関する様々な情報は適切に公表されていることが必要である。
 2つ目は,実質的公平性の追求に関してでございます。形式的公平性の確保とともに重要なのは,地理的・経済的条件に配慮した受験機会の確保や,障害者差別解消法の規定に基づく障害者への合理的配慮の充実といった実質的な公平性の追求である。これらの具体的内容を一律に定めることは難しいが,各大学のアドミッション・ポリシーに基づき,積極的な取組が求められるとともに,国としても様々な施策を講じていく必要がある。なお,入学者選抜を巡る地理的・経済的事情への配慮等については別に詳しく述べることにしたいと思っております。
 原則丸3,高校教育と大学教育を接続する教育の一環としての実施についてです。高大の円滑な接続ということでございます。1つ目のポツでございます。大学入試は各大学・学部が責任を持って主体的に実施するものということを原則1で述べさせていただきましたが,その一方,現実には,高等学校以下の教育課程や指導方法に与える影響が大きいことから,それらの正常な発展の障害とならないよう種々の配慮を行うことが重要である。このため,学力検査については,高等学校学習指導要領に準拠し,いたずらに難解な問題を出題しないような配慮が求められてきた。いわゆる難問・奇問の排除ということで,この点から共通一次試験が導入されたという背景もあったというふうに記憶しております。
 2つ目のポツ,また,新学習指導要領の実施に当たり,高校教育関係者が一丸となって,主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善を通して,生きて働く知識・技能の習得や未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成,学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性等の涵養を目指す教育改革を推進しており,こうした高等学校学習指導要領の考え方と齟齬をきたすことのない選抜に改善していく必要がある。入試改革に過度に期待することは適切ではないが,高等学校以下の教育に望ましい影響やメッセージを与え得る入学者選抜に改善することは重要である。
 次,入学志願者の保護という観点でございます。1つ目,大学入学者選抜は,各大学・学部がアドミッション・ポリシーに基づいて自らの責任で受験生を選抜することが基本ということは原則1で述べたところでございますが,受験生にとっては,その準備に相応の時間や様々な努力,負担を要するものである。このことを踏まえれば,合格に向けてどのように取り組めばよいかが明確で,努力が報われるものであることが重要である。
 2つ目,このため,特に大学入学共通テスト及び各大学の個別学力検査において課す教科・科目の変更等が入学志願者の準備に大きな影響を及ぼす場合には,少なくとも2年程度前には予告・公表することとされている。そうした各大学の変更に影響を与える政策決定を行う場合には,更にその1年程度前に予定の通知が行われてきている。その他の変更についても,入学志願者保護の観点から可能な限り早期の周知に努めることが重要である。
 (2)これまでの教訓を踏まえた入学者選抜の改善にかかる意思決定のあり方について。今述べました入学者選抜の原則を踏まえた上で,入学者選抜に係る意思決定に当たっては,以下の観点に留意することが必要である。
 丸1,議論の透明性,データの重視,多様な意見聴取について。1つ目のポツでございます。大学入試改革は,受験を間近に控えた高校生のみならず,既卒者,社会人,幅広い年齢層の子供やその保護者の行動や選択にも影響を及ぼすものであり,政策決定の影響は広範で大きいものと考えられる。また,受験生の立場からすれば,入試はその後の進路にも大きな影響を与えるものと認識されており,その見直しは,受験生をはじめ社会の納得感を得て行うことに留意が必要である。
 2つ目,そのような観点から,見直しの大きさや影響力に応じて,見直しの前提となる現状や課題に関する実態把握を十分に行うこと,議論の透明性の確保に留意すること,政策の推進に慎重な立場の者の意見や当事者の懸念も考慮すること,地域格差や経済格差,障害者への配慮をはじめ(1)で述べた原則の確認を十分に行うことが重要である。
 3つ目,大学入試改革の意思決定に当たっては,個々の選抜の責任主体である大学関係者との協議を踏まえることを基本としつつ,実証的なデータやエビデンスに基づき,専門的・技術的な知見や幅広い関係者,当事者の意見に耳を傾けつつ,見直しに伴う負担と得られる成果の比較考量も加味した慎重な検討を行うことが重要である。また,個別の試験実務を踏まえた議論を行う場合は,機密保持の必要性から一定の制約は生じ得るものの,全体の検討過程については可能な限り透明性を確保し,広く国民の理解を得ながら結論を導き出すことが重要である。
 丸2,実現可能性の確認・工程の柔軟な見直しについて。1つ目,大学入学者選抜は,高等学校以下の教育課程や指導方法に影響を与えるとともに,受験生一人一人の進路にも大きな影響を与えるものと認識されている。このため,大学・高等学校の関係者が理念や方向性を共有しながら必要な改善を図っていくことが重要である。
 2つ目,また,大学入学者選抜には,(1)で述べた原則のように満たさなければならない複数の重要な原則がある。さらに,多くの選抜区分が相互に重複・近接した日程の下で実施されていることなどから,その見直しが高等学校や受験生に与える影響にも様々な角度からの吟味が必要である。
 3つ目,こうしたことから,意思決定に当たっては,理念や結論が過度に先行し,実務的な課題の解決に向けた検討が不十分にならないようにする必要がある。的確な現状分析に基づいて改革の理念や方向性を定めた上で検討を進めつつも,検討の過程で実務的な実現可能性を常に確認し,課題の解消が難しいと判断される場合は工程を見直したり,ほかの方策の適否を検討したりするなど柔軟な姿勢で臨む必要がある。
 丸3,共通テストと個別試験との役割分担等を意識した検討について。1つ目,大学入学共通テストは50万人以上の志願者が受験するものであり,個別試験に比しても公平性の確保に対する国民の注目度は極めて高い。また,入試日程の制約の中で,大量の答案を採点し,迅速に各大学への成績提供が行われなければならない。
 2つ目,他方,各大学の個別試験はそれぞれのアドミッション・ポリシーに基づき行うものであり,当該大学・学部の志願者を対象に選抜するものであり,各大学・学部の判断での工夫を出題内容に加えることができる。また,総合型選抜や学校推薦型選抜の占める割合が私立大学では5割を超え,国公立大学でも増加傾向にある。こうした選抜においては,一般選抜ほどは入試日程上の制約が大きくなく,丁寧な選抜が可能である。
 3つ目,さらに,望ましい能力・適性の全てを入試で問おうとすることは現実的でなく,入試で問うことと,高等学校教育で身につけるべきこと,大学入学後の初年次教育等で対応すべきこととの役割分担の可能性にも留意が必要である。
 4つ目,このようなことを踏まえ,改革の目標の実現に当たっては,共通テストと個別試験との役割分担,総合型・学校推薦型選抜のさらなる充実の可能性や大学入学後の教育等との役割分担に関する議論が不十分にならないようにし,高等学校教育から大学教育までの全体を視野に入れた改善の提案が重要である。
 (3)コロナ禍での入学者選抜をめぐる状況変化について。昨年春以降の新型コロナウイルスの感染拡大は,皆様御承知のように,大学入学者選抜の実施にも大きな影響を及ぼしている。今後の在り方の検討に当たっては,コロナ禍による状況の変化を踏まえることが不可欠になっていると考えられる。
 丸1,共通テストの重要性の高まり。1つ,コロナ禍においては,県域を越えない会場で高等学校の基礎的な学習の達成度の評価を行うことができる大学入学共通テストのセーフティネットとしての役割が改めて認識され,共通テストの安全かつ確実な実施の重要性が多くの関係者から指摘された。
 丸2,面接試験におけるオンライン化の進展。越県移動を可能な限り低減させ,新型コロナウイルス感染症の拡大を防止する観点から,文部科学省は,総合型選抜,学校推薦型選抜等においてICT等を活用したオンラインによる個別面接やプレゼンテーション,大学の授業へのオンライン参加とレポートの作成,実技動画の提出などの工夫を各大学に求め,その実施を推進した。
 こうした中,多くの大学で面接試験がオンラインで実施されており,コロナ禍が収束した後も,地理的・経済的事情への配慮の観点から,オンライン化を引き続き推進すべきとの指摘がある。
 緊急時に入試日程等を協議する仕組みの強化について。1つ目,大学入試の日程や留意事項等については,毎年,高等教育局長によって招集される「大学入学者選抜の改善に関する協議」の合意を踏まえて,大学入学者選抜実施要項の通知を行っている。今回のコロナ禍においても,同様に協議の場が設けられ,令和3年度の大学入学者選抜における共通テストの実施や個別選抜における配慮事項等についての一定の合意がなされた。
 2つ目,他方,今般の協議の過程を通じて,緊急事態における機動的な協議を可能とする観点から,会議体の常設化,協議のプロセスの透明性の確保,構成メンバーの代表性の明確化等の必要性等を指摘する声が出てきている。
 丸4,選抜に活用される資格・検定試験の安定的実施の課題。コロナ禍においては,大学入学者選抜に活用が予定されていた英語資格・検定試験において,一時期,中止や延期をせざるを得ない状況が生じた。これに対し,高等学校や受験生から,資格・検定試験の受験機会の確保を求める声が出された。
 丸5,入学時期弾力化の必要性。1つ目,コロナ禍においては,一斉休校の下での授業の遅れに伴う失われた学びの時間を取り戻すとともに,我が国の教育システムをグローバル化する等の観点から,初等中等教育段階を含め,国全体で秋季入学制に移行することの是非が議論となった。種々の困難性からこの案を直ちに導入することは見送られましたが,教育再生実行会議において,ポストコロナ期の学びの在り方について検討する中で議論されることとなった。
 2つ目,同会議においては,学年の始期と終期を学長が定めることが制度上既に可能となっている高等教育段階においては,ニューノーマルにおける大学教育を実現する方策の1つとして,通年入学・卒業・採用など社会との接続の在り方や学事歴・修業年限を含めた学びの多様化・複線化が検討されている。
 (4),最後でございます。大学入学者選抜の改善の検討に当たっての留意点,種々の役割分担を踏まえた検討の必要性ということでございます。大学入学者選抜の改善に当たっては,一般選抜の改善や大学入学共通テストの改善のみならず,一般選抜と総合型選抜・学校推薦型選抜との役割分担,共通テストと個別試験との役割分担を踏まえた議論が重要である。
 丸1,まず一般選抜と総合型選抜・学校推薦型選抜との役割分担について。1つ,限られた時間で学力試験をベースに多数の受験者の合否判定を行う一般選抜と比較して,総合型選抜・学校推薦型選抜は,時間と労力を要するものの,より多面的・総合的な丁寧な選抜に向いているほか,採点に時間のかかる選抜方法,例えば面接,口頭試問,小論文試験等も実施しやすい等の利点を有している。
 2つ目,また,多様な価値観が集まり新たな価値を創造するキャンパスを実現する観点からは,より多面的・総合的な選抜の果たす役割も大きい。特に,我が国の大学のグローバル化の中で求められている秋季入学の導入等の入学時期の弾力化は,先ほど御説明したように教育再生実行会議で現在検討中でございます。それへの対応については,多様な学生の受入れ等の観点から,学力試験を中心とする通常の一般選抜ではなく,総合型選抜・学校推薦型選抜を活用する意義が大きい。
 3つ,総合型選抜・学校推薦型選抜は,学力の確認に留意する必要はあるものの,選抜時期の分散や面接のオンライン化も可能であり,同一日に一斉に実施される一般選抜と比べ,感染症の蔓延のような事態や大規模自然災害への耐性が高く,受験機会の複数回化にも資するなど,我が国の入試システム全体の安定性を高める観点からの意義も大きい。
 丸2,共通テストと個別試験との役割分担。1つ,今般のコロナ禍での状況も踏まえれば,大学入学共通テストは,高校の基礎的な学習の達成度の評価を主たる機能と捉え,安定的で確実な実施を一層重視していく方向で改善していくことが適当である。
 2つ,これに対して,各大学の個別試験は,各大学・学部のアドミッション・ポリシーに基づき,共通テストでは問いにくく,個別試験でこそ問いやすく,当該大学・学部が必要とする能力の評価を一層重視していく方向で改善を図っていくことが適当である。その際,入学後に必要な能力の測定に必要な場合は自前主義に過度にこだわらず,外部試験等の活用も積極的に検討していくことが適当である。
 以上のことを踏まえ,異なる選抜区分が持つ意義や特性を踏まえつつ,共通テストと個別試験との関係や入試と入学後の教育との役割分担の視点を踏まえた検討を行う必要がある。また,各大学・学部においても,それぞれのアドミッション・ポリシーに基づき異なる選抜区分の望ましい組合せの追求や,入試で問うべきことと入学後の初年次教育等で育成すべきことの仕分等について検討していくことが求められる。
 以上,総論的な観点を提案させていただきました。よろしく御審議のほどお願いしたいと思います。
【三島座長】
 川嶋委員,どうもありがとうございました。御多忙中,毎回こうやってペーパーをまとめていただきまして,本当にありがとうございます。
 それでは,川嶋先生のペーパーを踏まえて,御質問,御意見等がありましたら御発言を頂くことにいたしますが,その前に,本日,委員から2つ資料の提出がございますが,1つが渡部委員からの共通テストの英語に関する所感というのを出していただいておりますので,初めに,議論を始める前にその資料の御説明を頂きたいと思います。できるだけ要点に限って5分以内ぐらいでやっていただけると有り難いかなと思います。渡部委員,どうぞよろしくお願いいたします。
【渡部委員】
 どうもありがとうございます。本来,前回の委員会で申し述べることでありますけれども,欠席せざるを得ませんでしたので,今日お時間頂くことになりました。資料は,渡部提出の資料であります。3枚にわたっております。要点をかいつまんでお話をいたします。
 このたびは,非常事態にあるにもかかわらず,非常にスムーズに行われたことに対して敬意を表したく思います。大学入試センターにおかれましては,今後検証を行われると承知しておりますので,その際の御参考に供することがでればという思いから,この書類を作りました。
 今回実施の共通テストは,前回のセンター試験と比較して3点において特徴づけられるように思います。第1点目は,基本的な言語観が異なることです。言語の構造です。言語の語彙,それから,文法構造,それから,音声に対する明示的な知識,それを問うテストから,機能,言語を使って,英語を使って何ができるかという言語観に大きくシフトしました。その傾向はセンター試験に既に見られていた傾向でありますが,今回一層はっきりしたと見ております。
 第2点目は,基本的な言語能力観です。言語能力の見方には4技能をはじめとして、いろいろとあります。,ここで紹介したのは,BICSとCALPという区別です。基本的な日常生活の様々な事象を処理する日常生活に関連した能力,これを英語でBICSといいます。もう一つは,認知的に高度な内容の作業を処理するための言語能力,これをCALPといいます。共通テストの中でBICSとCALP,両方が扱われていることは確かですが,BICSの部分,生活に必要な基本的な言語能力を問うその部分が非常に多いという印象を受けました。
 次のページを御覧ください。第3点目は,語彙や文法、文章構造などに関する明示的な知識を問うテストから,言語構造を特化して問わずに、,言語を使って何ができるか。これは第1点目と関係がありますが,言語を使って何ができるか,言語そのものに関する問いはしない,問うことをしないというふうな言語観にシフトしています。
 この観点を踏まえまして,幾つか検討課題としていただきたいことがございますので,申し上げます。第一に,第1点と第3点目に関わることです。これは言語を使って何ができるか,すなわち,それはCan-doステートメントに,言語を使って何ができるかということを問う課題に深く関連しておりますが,やはり学校教育である以上は,言語に関する知識を問う問題があってもいいのではないかと思います。センター試験の場合は,語彙,文法,発音に関する独立した課題がありました。しかし,その問題が全部消えまして,今回はそれが全くなしというふうに問われております。しかし,新たな問い方として,例えばリーディングの中に特定の語彙の意味を明示的に問うような問題,あるいは文法構造がはっきり分からなければ理解できないような課題,あるいはリスニングの中で発音を正確に聞き取るような課題,そういった部分があってもいいのではないかと思います。
 次に,BICSとCALPに関してです。共通テストでは両方の能力が問われている扱われていることは確かです。しかし,大学入学選抜試験の一部である以上,CALP、すなわち認知的な負荷を課すような問いがもっとあってもいいのではないかと思います。例を挙げます。共通テストではセンター試験同様、リーディングとリスニングははっきりと分かれた互いに独立したテストになっています。しかしながら,統合した課題があっても飯野ではないでしょうか。例えば、一定の時間を与えてまとまった英文を読ませた上で,同じテーマをに関する英文を音声で流し、,両方を統合して問うような課題もあり得ましょう。あるいは,授業の場面を設定して,その中で先生が何らかの講義をしている。そして,それに対して生徒が手を挙げて質問しているといった場面を設定して,リスニングの課題として,理解を確認する。そういうことによって,より実際の言語使用の場面に近いような形で言語能力を問うことができるのではないかと思います。今回のリスニングで,例えば最後に4人の学生が出てきてレシートについてディスカッションしているという場面がありました。そういった場面を教室の中に移して,そして,一人一人指名しながらインタラクションすると,そういった課題があってもいいのではないと思われます。
 最後になります。3ページ目を御覧ください。今回大学入試センターでは,事前に非常に綿密な情報を公開なさっていました。これは高く評価するべきだと思います。しかし,報道などを見ますと,非常に変わった,実施されて初めて変化が理解されたというような報道が目立ちました。もしそれが本当であれば,公表の仕方にまだ足りないところがあったのかもしれません。あるいは,受験生の方で見るべきものを見ていなかったということなのかもしれません。
 例えば英語の方では,変化の方は,300ページもある,大学入試センターで公表されている,最初の方できめ細かく説明がされています。しかし,やや具体性を欠くところがあるのではないかなと思います。量に関しましても,どのぐらいの量が出るのか,どの程度の英語の量を聞いて理解すべきなのか,かなり,初めてのテストですので,公平性ということも考慮して,よりきめ細かな情報の提供があってもよかったのではないかなと思います。さらに,例えば配点の問題もあります。配点がどのような影響を及ぼしたかなどといった問題もありますし,質の高いテストが質の高い指導を保証するわけではありませんので,そういった検証も必要なのではないかと思います。
 以上,まとめのサマリーをいたしました。御清聴ありがとうございました。
【三島座長】
 ありがとうございました。新しい英語の問題に対する解釈として,解析というんでしょうか,非常に役に立つペーパーを出していただいたと思います。どうもありがとうございました。
 それでは,先ほどの川嶋先生のペーパーを踏まえての御意見,御質問を頂きたいと思います。挙手ボタンを押してということでございますが,自分がお話しでないときにはマイクをミュートにしていただくことも含めてよろしくお願いしたいと思います。あとは,一件一件をできるだけコンパクトにまとめたお話を頂きたいと思います。まず3分をめどにして,3分を超えると,これは早く終わらせなければといけないなと是非思っていただきながら発言をしていただければと思いますので,よろしくお願いいたします。
 それでは,これからまだあと約85分ぐらいございますので,川嶋先生の資料は項目が(1)から(4)までの4部構成になっております。ここでは一応,1部につき20分ずつぐらいをめどに移っていきたいと思いますので,お考えいただいて,自分はどこで発言しようかというようなことをお考えになりながら手を挙げていただければと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 それではまず,「大学入学者選抜に求められる原則」というところの川嶋先生のまとめに対する御質問,御意見がございましたら,お手を挙げていただければと思います。それではまず,芝井委員,どうぞ。
【芝井委員】
 ありがとうございます。まず川嶋先生,本当に丁寧なまとめをしていただきまして,ありがとうございます。大半については,細かい点は別にしまして,大きな筋については納得のいくものが多いと思っているのですが,1番目の原則の1のところに,「大学入学者選抜は」から始まりまして,最後に「学部で学ぶのに必要な能力・適性を有する学生を選抜することを目的とする」という,ここは「学生を選抜する」という言葉を使っています。ちょっと違和感があるんですけれども。
 それから,ほかにも「入試」という言葉で,通常,入試に当たらないような,学校推薦を受けるような形ですね。意思の確認はするかもしれないけれども,ほとんど実質的には意思の確認をして合格する。つまり,入試,入学試験ですけれども,入学試験を課さないような選抜の枠が大量に現実には私立大学を中心に行われているわけですが,それと言葉の使い方が少しぶれがあって,すみませんが,全体にわたって是非整理をしていただきたいと思います。恐らく正に最後に書いておられますし,ここにも書いてあります「入学者選抜」という言葉で整理をするのが一番望ましいのではないかと思っているんですけれども,いかがでしょうか。
 (1)に関してはもう一点あります。2ページのところに4行目ほどでしょうか,「特に,試験問題の作成や採点をはじめ試験実施業務において,外部の機関や専門家の協力を得ることについては」云々のところです。利益相反の疑義を持たれ得る可能性があるから慎重にすべきであるということなんですが,これは具体的な入試の実施ではない,あるいは試験問題の作成ではない,採点ではないということですけれども,例えば外部試験の活用を積極的に検討していくことが大事だということが一番最後に書いてありまして,利益相反の捉え方のイメージが私と少しずれがあって違和感はあるんです。ですから,入試問題の作成を外部に委託してはいけないという理由についても,私はやや現実離れした議論かなと思います。私立大学を中心ですけれども,恐らくかなりの程度外部機関に試験問題自体を委託している現実がありますので,これはどうなんでしょうか。少し違和感があります。
 2つだけ申し上げました。以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。時間厳守していただいてありがとうございました。それでは次に,柴田委員,どうぞ。
【柴田委員】
 柴田でございます。川嶋先生,大変包括的に難しい論点等を御整理いただきまして,どうもありがとうございました。
 私の方からまず質問というか,お尋ねが1つです。これは先生が最初に提示されました資料1の別紙です。この表は非常に分かりやすいんですけれども,その欄外の参考のところに「大学入試の原則として引用されることの多いもの」という項目が出ておりますが,我々にとりまして,現在実施されている大学入試の原点といいますか源流としてよく引用されるのが,46答申と言われる昭和46年の第22期の答申が源流だと理解していたんですけれども,これによりますと,どうもその前の中間報告をあえて御提示になっておられるのが私には不明なところかと思いますけれども,ひとつお教えいただければと思います。
 それからもう一つ,次は意見でございます。原則1,2,3とございまして,それにそれぞれ「大学・学部」という表現になっている箇所が多々出てきております。これはあえて「・学部」というのをつけるというのが果たして適正なのか。
 と申しますのは,従来,先生も御承知だと思いますけれども,日本での大学選抜改革がなかなか進まない原因の1つとして,入学者選抜というのが教授会の専権事項であるという神話みたいなものが続いているわけでございまして,これ,法令的にはこれはもう既に当を得てないと私は理解しているんですけれども,こういう「大学・学部」という表現を全て,ほとんどのところでお使いになっているというのは,そういうものを改めて補強することになりかねないか,今後の入試改革についてどうもそれが障害になるのではないかなという懸念を感じておりますので,御意見を賜ればと思っております。
 特に今,入学者の選抜だけでなくて,この文書でも,入学後の教育等,いわゆるこの会議でも議論になりました教学マネジメントの一環としての入学者選抜というような視点が今後必要になろうかと思いますが,その際,学部というのが表に当然のように出てくるというのはいかがなものかというような感じを持っております。
 3分ぐらいになりますので,丸1についてはそういうところでございます。以上でございます。よろしくお願いいたします。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,最後の御質問に川嶋先生からちょっと答えていただきます。
【川嶋委員】
 今,柴田先生からお聞きしますということがあったのでお答えします。出典,資料1別紙の下にあります別添の中央教育審議会「我が国の教育発展の分析評価と今後の検討課題(中間報告)」というもので,46答申ということが話されましたけれども,実は私も答申の本冊は調べたんですが,本冊の方にはこういう具体的な指摘はなくて,実際に出ているのは中間報告の中にこういうことが記されているということです。それで,正確を期すために,実際にこういう原則が言及されている中間報告を引いたということでございます。
 それから,「大学・学部」ですが,先生のおっしゃるように,ガバナンス改革等は学長のリーダーシップの強化を求めていたということは重々私も理解しているつもりなんですけれども,先ほどの芝井先生のお話ですと,実際の入学者を受け入れているのは,日本の場合,ほぼ学部とか学科ごとに定員を割り振って入学者を受け入れているという現実もあるので,こういう表現にさせていただいたということでございます。先ほどの芝井先生の御意見も含めて今日頂いた御意見は今後また更にこちらで検討して,反映させるべきところは反映させていただきたいと思っております。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは次に末冨委員にお願いしたいと思います。末冨委員からはペーパーが出てございますので,それを御覧いただきますと,3つのパートに分かれていたかと思いますので,まずは最初のパートのところで末冨委員から御意見を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
【末冨委員】
 ありがとうございます。まず川嶋委員,大変すばらしいおまとめありがとうございました。
 それでは,私の意見の1ページ目から始めさせていただきます。まず大学入学者選抜に求められる原則についてですが,今回御整理いただいた3つの原則は,入試政策に関する過去の学術的知見も踏まえたものであり,おおむね妥当と考えます。
 (2),私自身が昨年の4月に発表させていただきましたが,特に今回の入試政策については,Value(達成すべきとされている政策的価値)の肥大化と,そして,Norm(大学入試が遵守すべき規範)の後退というのが改革頓挫の本質であったと把握しております。であるからこそ,改革案がこれらの原則に反していたことが混乱を招いた大きな原因であったということを明確にしていく必要があると思います。それぞれの3つの原則の記述の最後に枠囲みのような形で,見直しを余儀なくされた施策のどの点がこれらの原則に反したのか端的に記載すべきであると考えます。今回のような混乱の再発防止の観点からも,これは必須だと考えています。
 (3),実質的公平性の追求の観点という非常に重要な視点をお示しいただきましたが,この観点をいっそう丁寧に示すとすれば,公表を促進すべき情報の対象には,外国籍や日本以外のルーツを持つ学生の受入れ状況,障害を持つ学生の受入れ状況や,合理的配慮の提供状況等も含めるべきであろうと考えます。
 (4),地理的・経済的事情への配慮等につきましては,また川嶋委員の方から御意見が出るというふうに伺いましたけれども,私自身は,章を立てて積極的な提言を行うべきであると考えます。昨年の12月22日に包括的な意見を提出,説明させていただきましたが,その際に多くの委員から賛意を頂くとともに,特段の異論もなかったと記憶しておりますので,是非内容を盛り込んでいただくように強く要望いたします。
 以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。それでは次に,岡委員,どうぞ。
【岡委員】
 川嶋先生,大変すばらしい案を作っていただきまして,ありがとうございます。
 私は,1点は,(1)のところで,社会や高校への過度の配慮をしている一方,高校関係者に求める協力について記載がないように思われました。時間をかけた入試を展開するに当たっては,高校関係者の協力が必須になるのではないか,そういうことを記載した方がいいのではないかということでございます。
 それから,もう一点は,原則丸2のところで,「形式的公平性の確保の表現」の中なんですが,若干気になりますのは,下から2行目の同一日・同一試験だけでの選抜のみが公平・公正であると考えるものではないというのがちょっとネガティブな表現になっているので,ここは,それはそれとして良いが,更にこういうことが必要であるという記載の仕方をされるべきじゃないかなと思いました。
 以上でございます。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは次に,小林委員,どうぞ。
【小林委員】
  ありがとうございます。川嶋委員のまとめ方は非常によかったと思います。
 1つ,観点,視点として忘れてほしくないのが,「選抜」という言葉を使っているので選抜というふうにどうしても言ってしまうんですけれども,実際,大学によってはもうかなりなユニバーサル化で全入ということも起こっておりますので,マッチングという側面も気をつけて見ていただければというふうに御配慮をお願いしたいと思います。
 日本の大学ではマッチングというのがあんまり考えられていないんですけれども,ドイツの例えば大学はギムナジウムを終えてアビトゥーアを受けた後で,今マッチング機関というのが非常に大事になっていて,どこの大学に入れるかというのはマッチング機関で選別しようとしていると。医学部でも研修医はマッチングというやり方で配属先を決めていますので,そのプログラムもかなり精緻化されておりますので,その辺のことも御考慮いただければと思います。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは次に,萩原委員,どうぞ。
【萩原委員】
 私からは,原則丸3の部分,最初の1ポツのところですが,「それらの正常な発展の障害とならないよう」という記述があるんですが,この「正常な発展の障害」というのは分かりにくい表現ではないかと思います。これについては何らかのもう少し分かりやすい表現ができるといいと思います。代替案を持っていないので申し訳ありません。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,今のところ,今の最初の(1)のところの手が挙がっているのは以上でございますが,まだちょっと余裕がありますけれども,次へ進んでよろしいですか。それとも,ここでということがあればどうぞ。
 牧田委員,どうぞ。
【牧田委員】
 牧田です。これは多面的評価の委員会でも申し上げたんですけれども,この中で関わるとすれば原則3だと思っています。大学入試の問題を今我々は議論しているわけですけれども,高校と大学が接続するというのは,本来,高等学校は高等学校としての存在意義があって,かつ大学は大学としての存在意義があるはずなんですね。私はここをもう少しクリアにするといいますか,だんだん時代とともに大学の役割は変わってきているのかもしれませんけれども,高等教育機関として学究的な機関として非常に最後のとりでみたいなところが私は大学だと実は思っていまして,そこに入る子供たちというのはある程度のレベルに達しないと意味がないと思っているわけであります。
 ということになりますと,じゃ,高校生が全員そこに到達できるかというとできないと思いますし,それから,もっと言うと,高校で高校の3年間ちゃんと勉強というか修めることを正に習得してきたかどうかということは問わずに,大学入試においてなぜかそのフィルターをかけようという動きになっているわけですけれども,私はこれをどうかなと思っているわけです。つまり,高校をちゃんと卒業できてこそ大学に行けるのであって,高校をちゃんと卒業できているかどうかというところをまず確認すべきではないかなということで,そういう問題提起といいますか,課題を持っているということをここでお伝えをしたいと思います。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それではあと,芝井委員がもう一度手が挙がっておりますが,何かございますか。
【芝井委員】
 すみません,ありがとうございます。
【三島座長】
 短くお願いします。
【芝井委員】
 じゃ,ごく簡単になんですが,一番初めの小林先生からの御指摘で思い出したんですけれども,「大学入学者選抜」という言葉が現行の一般試験を想定しているのでないならば,当然ないということなんですけれども,一番初めの原則1の最初の文章はやっぱり少し狭いのかなという感じがするんです。
 ここだと,当該大学・学部で学ぶのに必要な能力・適性を有する学生,入学生だと思いますが,能力・適性で選んでいない現実というのはたくさんありまして,例えば私たちでしたら,学校推薦の中でやはり意欲を買ったり,あるいは経験を見たり,あるいは広い意味での主体性を見たり,あるいは場合によっては資質のような言葉で,持っている彼らの力あるいは潜在的力みたいなものを見ようとするわけですね。ですから,必要な能力と適性というのは少し狭いだろうと思っています。すみません,そこを是非考えていただければと思います。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,宍戸委員,どうぞ。
【宍戸委員】
 1点だけお願いしたいと思います。実質的公平性の追求ということで,合理的配慮の充実等が書かれています。その後に,具体的内容を一律に定めることは難しいと。これは一人一人状態が違いますので,言葉で説明するのは難しいというふうに私も思います。それでお願いしたいのは,特に,少し面倒になるかもしれませんが,個別に相談を求められた場合には,それに応えられるようなそういう機会を与えてほしい。それがある意味,実質的な公平性の1つかなと思いますので,頭の中に入れておいていただければ有り難いと思います。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,両角委員,どうぞ。
【両角委員】
 両角です。ありがとうございます。先ほどから出ていることと関連するかと思うのですが,この3つの原則というのは,これまでの大学入試の政策とか研究で言われていたこととほぼ対応はしているんですが,原則3のところが,今までの研究とか政策だと,高校教育とかに悪影響を排除しようとか,高校教育を乱さないという書き方をしていたものを,今回入学者選抜というか入試を,接続する教育の一環としての実施というようなところで,ちょっとここだけニュアンスを変えたかなというように思ったんです。もともとの表現でも私はよいのではないかと思うんですが,ここをこう変えたという川嶋先生の意図とかをもうちょっと説明していただけますでしょうか。
【川嶋委員】
 ちょっと出典は忘れたんですが,幾つかの答申,入学者選抜とかに関わる答申等では,随分前から入試も教育の一環であるというような指摘もされていたかと思います。それでここでは,教育上の接続という表現にしました。下級学校への影響を考えるというのが従来の3番目の原則でしたけれども,そういう御指摘も最近のみならずかなり前からされていたということもありまして,こういう表現にしました。
 ただし,先ほどの牧田委員のお話のように,高校と大学というのはそれぞれ目的が異なるという御意見もあって,こういうことについては接続というよりアーティキュレーションというような言葉を使われる識者の方もございますけれども,今回はこういう形で教育接続という観点を第3の原則として掲げさせていただきましたけれども,内容的には高校教育への悪影響を配慮するということで,従来の考え方とは変わっていないというふうには考えております。
【両角委員】
 ありがとうございます。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,2番目の(2)の方に移りたいと思います。「これまでの教訓を踏まえた入学者選抜の改善にかかる意思決定のあり方」というところでございます。御意見,御質問がある方は挙手をお願いします。
 それでは,末冨委員,末冨委員の資料の(2)と合致していると思いますが,どうぞよろしくお願いいたします。
【末冨委員】
 その前に,先ほどの両角委員の発言と関連してなんですけれども,原則の丸3の高校教育への正常な発展の障害とならない配慮につきましては,もう少し慎重な表現が要ると思います。私自身も中央教育審議会の高校ワーキングの委員でございましたので,現在の高校の多様性を踏まえると,正常な発展が何であるかについては,恐らく一義ではありません。であるからこそ,例えばですけれども,佐々木先生の御著作にあるように,高校教育の尊重といったように,現在の高校で既に広義の多様化が起きているということ,そして,今後の普通科改革によってより一層の多様化が起きていくということを念頭に置かれまして,もう少し慎重な表現を御検討になられたらいかがでしょうかということを申し上げたいと思います。
 それでは,私の意見書の2ページ目を申し上げたいと思います。まず(1)の方は割愛をさせていただきます。重複する内容となっています。
 (2)の方から申し上げます。この会議もそうなんですが,外部有識者からのヒアリングというものが,通常で15分,それから質疑応答を入れても30分であることも多く,この検討会議の中での意思決定といったものについて限界があると考えています。それは文科省のほかの審議会もそうです。
 だからこそ,あらかじめある政策について,肯定,否定の主張ですとか関連データの有無について,広範な文献レビューを実施した結果を基礎資料とし,この基礎資料に委員全員が目を通した上で,更に深掘りするためにヒアリングを実施すべきであるというふうに考えます。
 特に審議会型の意思決定をいかに実質化していくかといったことについては,エビデンスベーストで考えた場合には,もはやいま指摘した手続が不可欠になっているというふうに思われます。
 それから(3)番,意思決定の在り方につきましては,本検討会議の議論を改めて振り返ってみますと,透明性,それからデータの重視,多様な意見の聴取については,ほかの審議会や有識者会議の範となる取組をしてきたと思われます。
 他方で,最終報告に際しましては,やはり第1回の共通テストに対する一定の評価を踏まえて結論を出すことが重要かと思います。本日,渡部先生が御意見を出されましたけれども,従来の共通テストとは大きく異なった形で出題されている英語それから国語・数学については,評価を避けて通ることはできないというふうに考えます。
 そして(4)番,実現可能性の確認や工程の柔軟な見直しについては,川嶋先生からも言及いただきましたけれども,課題の解消が難しいときには,恐らく理念そのものが政策に対して妥当するかどうかといったことも含めて検証が必要になるというふうに思われます。だからこそ,こうした原則は一応明記すべきであるというふうに考えます。
 そして(5)番目,高大接続の在り方については,前回の川嶋先生の御意見で,新たな協議体を設置し,中長期的な入試改革の検討を行うべきという提案がなされまして,私自身は大変よい御提案であると思います。特に今般の改革の頓挫の反省に立って,エビデンスインフォームドの政策改善のサイクルを進めていく観点からは,データ基盤の充実を提言に盛り込む必要があると考えます。
 細かい点は省きますけれども,(3)番のその他と併せて申し上げますと,例えばですが,経済的・地理的な事情に配慮した政策の必要性・方向性も含め,データをきちんと使いながら現状をアセスメントし,意思決定を行っていくということをしていただきたいと思います。
 特に,今回の基礎資料に付け加えていただきたいものとしては,沖先生の御研究に基づくもの,そして濱中義隆先生の御研究に基づくものと松岡亮二先生の御研究に基づくものについては,我が国の入試について実質的な公平性というものを担保する上で欠くべからざるものであるというふうに考えますので,是非とも盛り込みをということをお願いいたします。以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。それでは,ほかに御意見ございましたら挙手をお願いいたします。萩原委員,どうぞ。
【萩原委員】
 丸1の3ポツ目のところで「個々の選抜の責任主体である大学関係者との協議」ということですが,これは誰との協議なのか。後ろの方にはいろいろ書いてはありますけど,やはり高校関係者,要は送り出す方との文言を明確にするべきではないかと思いました。
 また,全体としてですが,この黒ポツの主語が一体誰なのか。国なのか,それとも文部科学省なのか,大臣なのか。要は,誰が全体として統括していくのかという大学入試改革の意思決定に当たっては,誰がこの入試の意思決定を行っていくのかということについても触れるべきではないかと思いました。
 それからあともう1点,丸3ですが,共通テストと個別試験との役割分担等ですが,個別試験は当然各大学ということになると思うんですけど,大学入学共通テストは,誰が主体となってやるのか。これは大学入試センターがという前提になっているのかどうか。だと思うんですが,大学入試センターが主体となって大学入学共通テストの運営をやっていくということを,今までどおり行っていくということであれば,その部分は明文化しておいた方がいいのではないかと思います。
 となれば,大学入試センターとして,大学入学共通テストというのはどういう位置づけで考えてやっていくのかということが,今までも明文化されている部分はあるかと思うんですけど,この部分に反映されてくるのではないかと思います。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。
【川嶋委員】
 萩原先生,ありがとうございました。御指摘の点の主体は誰であるとか,大学関係者だけではないだろうという御指摘,ごもっともかと思います。
 それから,最後の大学入試センター,大学入学共通テストの主体はということについて,大学入試センターということを明記すべきではないかという御発言でしたけれども,山本理事長が御発言されるべきとは思いますが,私の理解では,大学入学共通テストは利活用大学と大学入試センターが共同で実施し,共通の業務については大学入試センターが担う,そういう形でこれまでずっとセンター試験も含めて,大学と入試センターの共同という形で実施してきました。
 前段の御発言のように,主語とか主体とかというところが不明瞭だという御指摘については,今後,正確を期したいというふうに思っております。以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。山本理事長,何かコメントございますか。
【山本オブザーバー】
 今,川嶋副座長がおっしゃったとおりでして,大学入学共通テストは利用大学と大学入試センターが共同して実施する試験,共通の部分を大学入試センターがやっているということでございます。これは法律にも書かれている言葉ですので,そこのところは萩原先生おっしゃるように,ちょっと分かりにくいかもしれない。大学入学共通テストは大学入試センターがやっている試験だというような誤解があるとすれば,どこか脚注に法律の文言を書いていただいたらいいのかなというふうな気がいたしました。以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。よろしいですか。
 それでは次,吉田委員,どうぞ。
【吉田委員】
  ありがとうございます。困ることなのですが,今,末冨委員が飛ばされた(1)のことでお尋ねしたいのですけれども,1から3のそれぞれの記述の最後,又は枠囲みのような形で「頓挫した改革案のどのような点が問題であったのか」とあるのですけれど,この「頓挫した改革案」というのは何を示すのでしょうか。私ちょっとそこが分からないので,質問させていただきました。
【末冨委員】
 私の意味したかったところは,英語民間試験,記述式の延期に至った経緯を私自身の表現で「頓挫した」と申し上げました。以上です。
【吉田委員】
 改革案というか,英語4技能試験のことを表しているということだけですね。
【末冨委員】
 その延期に至った経緯も含めて表現しております。記述式も含んで意味合いで用いております。
【吉田委員】
 いや,「頓挫した改革案」というと,何か今までの改革案がもうなくなってしまったみたいな,頓挫したという意味なのかと思ったので,お尋ねしただけですので,よろしくどうぞ。
【三島座長】
 よろしいですか。それでは次,清水委員,どうぞ。
【清水委員】
 ありがとうございます。筑波大の清水でございます。今日は川嶋先生に非常に分かりやすい総論のおまとめを頂いてありがとうございました。
 (2)の表題,あるいは,この総論事項全体の表題にも関わるんですけれども,原則から出てくる規範的な在り方というものに対して,「改善」という表現が何を指すのかというところを少し確認したいなと思って挙手させていただきました。
 善に改めるという表現を使うときの前提となっている,まだ善に至っていない状況は何かということについてなんですけれども,もちろん今議論になりました今回の英語4技能や記述式の問題もありますけれども,この会議で行った大きなエビデンスとして各大学に協力していただいた調査がありまして,その調査の結果からも,共通テストと個別入試のすみ分けの問題ですとか,あるいは入試の選抜単位のいろいろな違いによる多様な学生の選抜とか,いろいろ論点が出ておりますので,この(2)の直下にある2行ですね,「意思決定に当たって留意することが必要である」という,この「必要である」の根拠に,調査の結果から言えることをどのぐらい入れられるかというところが大きなポイントかなというふうに思っていまして,相当細かく,選抜単位ごとの入試の実態や自由記述も含めて課題が挙がっていましたので,その辺を根拠に入れることができるのか,できないのかという,そこを少し考える必要があるかなというふうに思いました。以上コメントです。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは続いて,岡委員,どうぞ。
【岡委員】  
 ありがとうございます。私,(2)のところで,最初の丸1の議論の透明性,データの重視,多様な意見聴取は当然とてもいいことだと思っているんですが,最初のポツの最後に「その見直しは,受験生をはじめ社会の納得感を得て行うことに留意が必要である」。この「納得感」は何なのか,どうしたら納得って言うんだろうなというのが私の疑問でございました。
 それから,次の丸3の共通テストと個別の役割分担については何度も国大協は言っておりますので,これで問題ないのですが,最初の丸ポツの「個別試験に比してもより高い公平性が求められる」という文言が若干,個別試験がそう高くなくてもいいということもないでしょうけど,そういうところで,できれば質的に異なるとか,そういう表現に変えられた方がよろしいのではないかというふうに思いました。以上です。
【川嶋委員】
 ありがとうございます。その点については多少口頭では表現を変えさせていただきましたが,今回,例えばリスニングでも機器のトラブルとか,あるいは全国で非常に膨大なマニュアルに基づいて監督者が試験に当たるとか,個別試験よりもかなり緊張感を強いられる実態がございますので,こういう表現にしたところでございますけれども,また,これもほかの委員の方の御意見と同じく,頂いた御検討を基に,より分かりやすい適切な表現に今後はまたブラッシュアップしていきたいと思います。ありがとうございました。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,小林委員,どうぞ。
【小林委員】
  私の方は4ページ目の丸3の2ポツ目,その真ん中辺に「総合型選抜や学校推薦型選抜の占める割合が私立大学では5割を超え」という表現があるんですけども,私の理解だと,文科省の指導で5割は超えないようにというのがたしかあったと思いますので,結局,私立大学は5割を超えないように意識しながらやっているというのが現状ですので,5割を超えていると書くのはちょっとまずいというのと,もう一つは,5割を超えてもいいんだったら,そのような議論をしていただければと思います。以上です。
【川嶋委員】
 小林先生,御指摘ありがとうございます。少し誤解があるかもしれませんけれども,文部科学省の選抜実施要綱で示されている割合は,学校推薦型の試験については定員の50%を超えないということが記載されておりますが,いわゆる総合型選抜については一切定員に関する上限等の定めは今のところないので,現実的には学校推薦型と総合型選抜を合わせると,私立大学では入学者のうち50%を超えているということでございます。よろしいでしょうか。
【小林委員】 
  分かりました。文科省もそれでよろしいですね。
【武藤高等教育局企画官】
 はい。
【小林委員】
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは続いて,芝井委員,どうぞ。
【芝井委員】
 今のところなんですけど,私もう少し気になるんですが,私立大学全体では5割を超えているというのは,もしかすると正しい結果かもしれませんけれども,全ての私立大学がそうなっているわけではない。
 片方で,そこでは5割を超えと書いておいて,国公立大学でも増加傾向にあるという,その数値が出てこないのはどうしてなのか。多くの大学,国公立大学も3割を目標にしながら取り組んでおられるというお話もお聞きしましたので,そこちょっと,ある種の風評被害になりかねないような文言だと私は思いましたので,何か検討していただきたいと思います。
 それからもう一つですが,丸3の共通テストと個別試験との役割分担等を意識した検討なんですけど,これはちょっと誤解があるかも分かりませんが,ある種,国公立を想定した文言のように思えるわけです。私立の大学は,基本的には個別試験で本当に1本でできるならば,それでいいだろうと思っているところがある。
 ところが,現実には国公立の併願者の受皿にもなりたいわけで,そういった意味で共通テストを使いたいと思っているわけです。共通テストの問題も優れた問題が多いので,自前で全てを作り出すことというのはなかなか難しいことがある。そう考えると,共通テストと個別テストの組合せを考えている,そういう形で私立大学は共通テストに参加しているんです。ですから,共通テストと個別テストというのは明らかにやらねばならないもので,その役割分担はどうなのかという議論されると,ちょっと違和感が強い表現です。
 国公立だと当たり前ですが,私立大学だと,これはかなり,そういう意味だと,大学によっては違和感の強い表現だということだけ指摘しておきます。以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,島田委員,どうぞ。
【島田委員】
 筑波大学の島田です。よろしくお願いいたします。川嶋先生,おまとめをありがとうございました。
 共通テストと特別試験との役割分担,このことに関してなんですが,私がちょっと伺いたいのは,実は末冨先生がお出しくださったペーパーの内容に関することです。末冨先生のペーパーの2ページの大きな2の(3)の中で,2つ目のパラグラフ,「他方,丸3の共通テストと個別試験との役割分担については,本検討会議の主たる検討対象が令和6年度入試における共通テストを含めた入試の在り方である以上,第1回共通テストに対する一定の評価の状況を踏まえて結論を出すことが重要である」と書いてくださっているんですけれども,「第1回共通テストに対する一定の評価」というのは,どういうことを具体的に想定されておられるのかということをちょっと教えていただければと思います。
 個々の問題の出来栄えに関しては,恐らく大学入試センターも毎年これまでやってきたように評価の結果を公表されると思うんですけれども,それのことを指しておられるのか,あるいはそうではないのか。
 また,それを踏まえてということになると,この会議のまとめが一体いつになるのかというのもちょっと心配になるので,このあたり,御真意を改めて伺えればと思います。以上です。よろしくお願いいたします。
【三島座長】
 末冨委員,どうぞ。
【末冨委員】
 私自身は,大学入試センターが例年これまでのセンター試験については,非常に丁寧で精密な評価活動をなさっていることは存じ上げております。
 ただ,それを待っていては,確かにこの会議の提言自体が夏若しくはそれ以降にずれ込む可能性がございますので,できればですが,令和6年度入試に向けて遅くないタイミングで最終提言を出していくためにも,フルパッケージの評価というよりは,特に出題傾向の変更ですとか,あるいは渡部先生からも御指摘ありましたように,英語のリスニングの配点が大きくなったことの影響ですとか,あるいは特に英語に関しては,出題内容自体も実はかなりの構造的変化を起こしている点に限定しての報告も必要だと考えます。もちろん,逆に私自身も,高校関係者からは,この共通テストというのは非常に意義がある改革であったということも承っておりますので,経過で構わないと思います。
 完璧なものというよりは,これまでと何が変わり,そして,そのことが特に,私自身が今回このドキュメントに書いたように,共通テストと個別試験との役割分担に与え得る影響というものについての幾つかの予測というものを踏まえた上で,最終報告にまとめていく必要があると考えます。そうでなければ令和6年度以降の入試政策についても安定しづらいのではないかという予測を持っているために,このような表記とさせていただきました。
 決してフルパッケージ型の詳細なアセスメントというものを申し上げているわけではございません。そこのところは誤解がなきようにお願いいたしたいと思います。
【三島座長】
 ありがとうございました。山本理事長,タイムスケジュールみたいなところで何かコメントございますでしょうか。
【山本オブザーバー】
 山本です。前回,実施状況の概要を話させていただきましたように,先ほど島田委員,また末冨委員からおっしゃったように,センターの中にそういう外部評価並びに自己評価委員会を設けて,現在,そういった評価をやっていただいているところです。
 前回申し上げましたように,6月ぐらいには全体まとめたものが公表できるかなというぐらいの,例年のとおりですが,進めているところです。以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,吉田委員,どうぞ。
【吉田委員】
 ありがとうございます。先ほどの芝井先生の御意見の中で逆の御質問なのですけれども,丸3の共通テストと個別試験との役割分担の問題なのですが,ここで言う共通テストと個別試験というものがパッケージだというお話でしたけれど,現実に今,この共通テストと願書だけで入試を終えている学部・学科をお持ちの大学も数あると思うのです。
 そういう場合に,個別試験で見られるようなことが見られているのかどうか。それから,今年は特にコロナ禍で,国立の中でも2次試験を中止したところもございます。そういう部分において,何でせめてオンライン面接だけでもやらなかったのか,そういうことを含めて,先ほどの共通テストを利用してという意味合い,個別があるからこその利用なのか,それともそこだけでいいのか,その辺をお尋ねしたくて伺いました。
【芝井委員】
 ありがとうございます。もしよろしければお答えしたいんですが,よろしいでしょうか。
【三島座長】
 はい。
【芝井委員】
 何度かその御質問もあったと思うので,はっきり言っておきたいと思うんですが,以前も申し上げましたように,私立大学というのは一定の定員をどのような形で入り口に分けて,そこで入学者を獲得するかということをいつも考えているわけです。ですから,当然のことですが,共通テストの利用のときに,おっしゃるような単独での,つまり共通テストの点だけで合否を出すのはありますけれども,それは一定の割合にとどまっています。
 それから当然,そこで合格した人が入ってくるわけではありません。入ってくるんですけど,全員が入るなんて考えられないわけです。だから,ほとんど国立大学や公立大学との併願者が私立大学にも,いわゆる押さえとして併願先に選んでいただいているわけです。それが現実です。そうでない大学は一部ありますけれども,ほとんどの私立大学はその中で単独での実施もしています。
 それから当然,個別テストを加えた併願型の共通テストの利用というのはかなり広まっていまして,恐らくそちらの方が入り口としたら大きいし,実入学者でいうと間違いなく大きいです。
 ですから,一部の大学は,一部の定員に関して,私立大学は単独のセンターのみ,現在でしたら共通テストのみの合否を出しているということを余りおっしゃらない方がいいと思います。現実とは全然違うと思います。以上です。
【吉田委員】
 ありがとうございます。私は現実だと思っているので,言わせていただきました。
 なぜそう言うかというと,実際に先生方の手でそれだけの何十万人という,極端な言い方したら,そのテストを利用した入試で受けていらっしゃる方が10万人超しているなどという話もあります。そういった大学がこういった共通テストがなかった場合どうだったのか。やはり自分の大学に国立・公立との併願とはいえ,受けてもらう生徒なのでしたら,学生になるべく人なのだったら,それなりの人を見なくてはいけないというのが今度の高大接続改革の目的だったのではと思うのです。
 ですから,そういう意味でお尋ねしただけで,先生のお話を否定しているわけでもないですし,いけないとかいうわけではなくて,私は子供たちにとって,受けやすいとは言いませんけれど,APとの絡みでもそれで言いました。
【芝井委員】
 入り口の5割以上,総合型選抜と,それから学校推薦型で選抜を埋めているのが現実です。その中での話ですので,絶対そこを間違えないでください。国立大学,公立大学の現実とはやっぱり違うというのは,はっきり押さえた上で議論したいと思います。以上です。
【三島座長】
 じゃ,この件ここまでにさせていただきます。
 それで,次の(3)に入りたいんですけど,柴田委員が挙手ありますが,(2)のところでございましょうか。
【柴田委員】
 本来なら最後の(4)のところに出てくる話なのかもしれませんけども,これまでの教訓等から,今の議論にもございましたけれども,それから全大学への調査結果からも見えるように,この文章の中には出てきていない1つの観点が,いわゆる大学セクター間の問題で,国公立の入試と,それから私学の入試というのは性格が随分と違う現実があるというところは,やはりどこかで認識してこれからの議論を進めていかなければいけないんじゃないかなということを一言申し上げておきたいと思います。以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。
 それでは,(3)のところに入りたいと思います。コロナ禍での入学選抜をめぐる状況変化でございます。これに御意見がある方は挙手をお願いいたします。小林委員,どうぞ。
【小林委員】
 5ページ目の丸2の面接試験におけるオンライン化の進展というところで,オンライン化を進めるべきだという御意見が多々書かれておりますけれども,前回の討議のときにお話しいたしましたけれども,オンラインをやるためにはインフラがしっかりと整備されていなければいけないんです。
 私どももコロナ禍でオンラインの面接を試みたんですけども,政令指定都市でありながら相模原市にある相模原キャンパスは,インフラが余りにも貧弱で,調べてみても,計算してみても,オンライン面接はまず無理だという結論になりました。
 一方,港区の薬学部がある白金キャンパスは可能であったというふうに,インフラをしっかり整備していただかないと,この議論は全く成り立たなくて,特に地方のインフラがうまく整備されていないところではかなりこれ厳しいんじゃないかと思いますので,まず国として,ベンダーに言わなきゃいけなくて,大学で頑張っても駄目なんです。
 各ベンダーにちゃんと光ファイバーを,回線の太い光ファイバーを設置していただかないと,オンラインは無理だと思います。以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは次に,岡委員,どうぞ。
【岡委員】
 今の御意見と全く同じなんですが,オンライン化,今からどんどん進めていかないといけないというのは分かっておりますけれども,課題があるということが余り書いていないのが少し気になる点でございます。
 高校側からもかなりいろいろな問題点を指摘されていると私聞いておりますので,そこを推進しなきゃいけないというのは十分言っていいんですが,まだ課題があるということを一方では言われた方がいいんじゃないかと思います。
 それから,5ページのマル4の,選抜に活用される資格・検定試験の安定的実施の課題というので,ここの記載が物すごくスペシフィックな話になっており,総論のところでもう少し書き方を変えた方がいいのかなというのが,読ませていただいたときの感想です。
 以上です。
【三島座長】
 何かございますか。よろしいですか。それでは,コメントとして伺ったということでよろしいですか。
 それでは,次に,渡部委員,どうぞ。
【渡部委員】
 ありがとうございます。2点です。
 第1点目は,4ページの一番下の行です。ここに「セーフティネットとしての役割」と書いてありますが,セーフティネットというのは必要ないんじゃないでしょうか。「共通テストの役割が改めて認識され」で十分通じると思います。特にセーフティネット,安全性を最後の砦のようにして使われることが前提とはなっていませんので,この文言は必要ないのではないかと思われます。
 もう1点です。これは先ほどから小林先生,岡先生がおっしゃっていることに関連していますが,5ページ目のオンライン化です。これは公平性というものが確保されて初めて機能すると思いますので,もう一つ点をつけられて,条件として,公平性の確保は緊急の課題であるというような文言が必要かと思いました。
 以上です。
【三島座長】
  ありがとうございました。
 それでは,柴田委員,どうぞ。
【柴田委員】
 柴田でございます。リード文のところ,(3)のすぐ下のところでございまして,確かに今回,オールジャパンの問題として,コロナ禍での混乱が生じたわけですけれども,これまでもいろいろな自然災害等々で,地域的に現在の入試実施体制では混乱が起こっておりますので,令和6年を見据えた場合には,もっとより広く様々な障害というのも視野に入れておく必要があるというのも,研究しておいた方がいいんじゃないかなと感じております。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,萩原委員,どうぞ。
【萩原委員】
 今,大学側からも御指摘あるように,丸2のオンライン化については,高等学校もなかなかまだ環境整備が十分でないというところがあることから,その部分については触れていただきたい。
 それから,丸3の2ポツ目のところですけれども,協議常設化,透明化の確保,代表制の明確化については、やはり通年で何らかの会を持っていくということは必要だろうと思います。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。清水委員,どうぞ。
【清水委員】
 ありがとうございます。清水です。
 コロナ禍の問題が,実は(1)の3つの原理から見て,どういう状況になったかという観点で整理すると分かりやすいかなと思って伺っていました。もしかしたら,アドミッション・ポリシーにうたっていながら,コロナの問題で共通テストに頼らざるを得なかったですとか,先ほどのオンラインの問題は,公平性・公正性の問題かもしれない。あるいは,高校生がコロナ禍の中で厳しい学習の状況の中で受けなければいけなかったかもしれないという,原則の1,2,3の観点からこの問題を整理すると,少し分かりやすい整理になるかなというふうに思って伺っていました。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。今,手が挙がっておりませんが,ほかにいかがでしょうか。(3)についてですが。よろしければ次へ移っていきますが,どうでしょうか。
 それでは,特に手が挙がりませんので,(4)大学入学者選抜の改善の検討に当たっての留意点(種々の役割分担を踏まえた検討)というところでございます。よろしくお願いいたします。
 両角委員,どうぞ。
【両角委員】
 両角です。ありがとうございます。
 ここに書かれている留意点は,そのとおりだなと思って,よくおまとめいただいたなと思う一方で,一般論をまとめるだけでは難しいかなというのが実態かなと思います。一般選抜と総合型,学校推薦型の役割分担にせよ,共通テストと個別試験の役割分担にせよ,先ほどから出ておりますように,設置形態によっても随分違ったりします。なので,要するにこういった観点で,個々の大学がどういう方針で学生を入学させたいのか。入学させた結果として,その子たちが思ったとおりに成長しているのかとか,それぞれの入試区分で採った子が,結局卒業までどうなったのかといったことをきちんと分析して,それぞれが選んできちんと示していけばよいということであり,一般論としてというよりは,その作業を個々の大学がやって説明するということの重要性の方が大事なのかなという印象を受けました。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。ほか,いかがでございましょうか。柴田委員,どうぞ。
【柴田委員】
  柴田でございます。総合型,学校推薦型の選抜について,丸1の3つの箇所で述べられておりまして,最初の方の1番目のところでは,これは時間と労力を要するものの利点を有するというような評価がございますし,3番目のところは,自然災害にも耐性が高いという,非常に高く意義を出しているんですけれども,最初の方で御指摘になったように,これは非常に労力,資源の投入とか,そういう準備が必要になろうかと思います。現実に,教官だけで対応する,あるいは職員だけで対応するのは非常に難しゅうございまして,やはりこれらの専門的な人材の育成ということも,併せて今後,考慮していく必要があると感じておりますので,是非その辺りの御配慮も入れていただければと思っております。
 以上でございます。
【三島座長】
 ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。芝井委員,どうぞ。
【芝井委員】
 ありがとうございます。今の柴田先生の御意見に続けてでございますけれども,例えば,具体的にアドミッション・オフィサーの育成をすべきであるというふうなこととか,あるいはどうでしょう,現状でしたら日本の場合には,大学の教員が職員と協力をして問題を作って,それで入学者を選抜しているんですけれども,どこの国でも同じような制度かといったらそうではなくて,入学者の確保はアドミッションの仕事であって,教員は一切手をつけないという大学も結構多いんですね,外国の場合には。果たして将来を見たときに,そういったことも含めて,現状の日本の入試の在り方が当たり前であるかのようにするのは,少しやっぱり私個人としては違和感があります。何かの形で触れてもいいのではないかと思うんですけれども。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。ほか,いかがでしょうか。渡部委員,どうぞ。
【渡部委員】
 6ページ目のマル1,2番目の点の中に,グローバル化という文言が見えています。留学生に関する視点というのが入っていませんので,何らかの形で留学生に関するコメントというのが必要になるかなと思いました。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。末冨委員,どうぞ。
【末冨委員】
 6ページのマル2の2ポツのところに,外部試験等の活用も積極的に検討していくという御指摘がありまして,現状,かなり外部試験の活用はされているわけですけれども,こうしたことを指摘する際には,やはり実質的な公平性の確保の観点から,必ず高校就学支援制度や,あるいは既卒者に対する支援制度の拡充といったものもセットで記述していかないと,ただ外部試験を導入すればいいという安易な流れになりかねないと考えます。もちろん大学の側は,その辺りのことは当然御配慮されていると信じてはおりますけれども,ルールはルールとして明記すべきであろうと考えます。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。ほか,いかがでしょうか。
 それでは,(4)ということで,今手が挙がっていないんですけれども,そうしましたらもう一度,川嶋先生作っていただいた資料,ほかのところでも結構ですので,全体としてもし何か発言がございましたらどうぞ。岡委員,どうぞ。
【岡委員】
 全体的に非常によく書いていただいておりまして,本当に感謝しております。2点ちょっと発言させていただきたいのですが,総論ですので細かいことの記載はないということでよろしいかと思うのですが,どこかに大学入学共通テストはじめこれを維持するには,かなりの資金援助が必要だということも,国大協は何度も申し上げておりますので,どこかのところにこれを維持するには,それなりの国の負担と協力が必要であるというような文言を入れていただければと思います。
 それから,4ページ目の2ポツ目ですけれども,ここは今回,やっぱり問題であった英語の4技能の導入や,それから,記述式についても非常に実現可能性を十分に考えるというところで,よい記載だと私は思います。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,小林委員,どうぞ。
【小林委員】
 2点ありまして,1点目は先ほどお話ししましたように,オンラインはいいんですけれども,やはりインフラの整備というのを国の方から各ベンダーに言っていただかないと,なかなか大学では対処できない,高校でも対処できないことだと思います。その実態をちょっと調べていただければと思います。
 2番目が,先ほど大学入学共通テストに対しての今後の評価ということをするというふうに話されていまして,渡部先生のように言語学者とか,あるいはテスト理論の方々とか,そういう方の意見も欲しいと思うんですけれども,もう一つは,私はそんなに造詣が深いわけじゃないので,各予備校の評価というのが公開されていますので,それを読んでみると,なかなか厳しいというか,余り変わらないとか,内容的には難易度はそれほど高くないとか,そういった表現が多くて,それから,会話文がいろいろ出てくるんですけれども,要するに,多くの雑音の中から重要なものをどうやって拾い上げるかという能力を問うているのではないかというような表現も見られて,現場の予備校の先生の感触も知りたいと思います。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,両角委員,どうぞ。
【両角委員】
 ありがとうございます。4ページ目のマル3の3番目のポツで書いてあることで,「さらに,望ましい能力・適性の全てを入試で問おうとすることが現実的ではなく」という部分に関連しての発言です。ここ最近の議論では,学力の3要素の全てを,入ってくる学生全員に問わなければいけないというような論調がかなり強くなっていると思います。今回の会議の中でも,それは余り現実的ではないんじゃないかというような流れになっていると思いますし,私も別に全員にすべての要素をはかりきらなくてもいいのではないかと個人的にはすごく思います。
 かなり大事なことが書いてありますので,ここの共通テストと個別試験の役割分担のところの議論というよりは,むしろ1ページ目の原則1で,必要な能力とか適性の判定というようなところに書いてもらったらどうでしょうか。何でも全てはかればいいというものではないという,当たり前だと思うんですけれども,その当たり前が破られそうになったので,明記しておいてほしいなと,全体を読み返して改めて感じました。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,ほかにいかがでございましょうか。それでは,柴田委員,お願いいたします。
【柴田委員】
 今の両角先生の御発言ですけれども,今回の改革の大きな1つは,学力の3要素を必ず全ての選抜区分において見るように努めるというのが理念に入っていると我々理解していて,それをいかに現実に実現するかということに腐心をしているんですけれども,今の御発言だと,そのうちのどれかを見ればいいというようなお話と,私,今ちょっと受け止めたんですけれども,それはやはり理念に関わること,かなり大きなお話じゃないかなと思うんで,再度両角先生,御説明いただければと思いますが。よろしくお願いします。
【両角委員】  
 もちろんそういう理念で進めてきたと思いますけれども,現実的に本当に全ての学生を全ての要素ではかるのがいいのかといったこと自体も,実際にそんなことはどこの大学もやっていないのではないかと私も思いますし,理念を本当にどこまで現実に当てはめたらいいのかなというところの難しさみたいなのが,今回の混乱を来したところにあるかなとは,個人的には考えています。
 もちろんいろいろな能力をはかった方がよかったり,大学によって,学力だけではなく,主体性であったり,いろいろなものを見てはかった方が,その後の大学生活でより成長しているというのであれば,そういったところをよりはかっていけばいいというふうに思うんですけれども,必ず大学に入る子は,全員が全員その3要素で評価されなければならないという理念がやや強過ぎているのではないかなというふうに,個人的には感じております。政策ではそっちに向かっているかもしれませんが,そこに対してはちょっと疑問があるということです。
【柴田委員】
 貴重な専門家としての御意見どうもありがとうございます。ただ,現実に我々,大学で入学者選抜に当たっている人間としては,そこの3要素を全てカバーするという理念といいますか,それが求められているところで,具体的にどうやればいいかというので苦労しているというのが実情でございますので,その辺りの議論が改めてできるのであれば,是非深めていただければと感じた次第でございます。ありがとうございました。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,芝井委員,どうぞ。
【芝井委員】
 ありがとうございます。今回の川嶋先生のペーパーと直接関係ないんですけれども,むしろ末冨先生が出しておられたものの一番最後に,先ほども御紹介ありましたけれども,松岡亮二さんのちくま新書の御本から引っ張ってこられたものがあるんですけれども,この中の議論,実はソーシャル・エコノミック・ステイタスの問題というのは,教育を論じるときに避けて通れないということがデータとして明示されましたので,私たち,理念を語るのは構わないんですけれども,ある種の強い挑戦を受けているんだろうと思っています。すごくいい本,19年の一番いい本だと私,個人的に思っているんですけれども。ですから,私たちはある種の挑戦を受けていて,私たちだけではなくて,恐らく文部科学省も挑戦を受けているんだと思うんですけれども,これに対してどんな答えを出して,その答えを出す中で,大学の入学者選抜どうするのかということを問われているんだと思います。是非そんなことと,何らかの形で結び合わせるような形の議論が,ここの最終的な取りまとめのときにできればと思います。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。ちょうど末冨委員,手が挙がっておりますので,いかがでしょうか。
【末冨委員】
 まず,芝井先生の今の御指摘につきましては,もちろん大学側の自主性,自立性に任されることではあるとは思っております。とはいえ,この国の教育機会構造の偏りというものについて,いかに社会貢献をなさるかという方向性については,是非大学側の,特に大学団体としての御見解なりポリシーを自主的にお示しになることを期待しております。
 それから,もう一つ,先ほどの両角委員の発言に関連してなんですけれども,私も初中行政の方がもともと専門家ですので,現在の学力観というものが全て測定可能であるかどうかについては,教育学研究者としては,それは不可能であると断定せざるを得ない状況があります。もちろん新しい学力観に対応して,特に例えば非認知能力ですとか主体性といったものをいかに評価し,適切な学校間の接続につなげていくかということについては課題ではありますが,測定はむしろ難しいものであるというふうにお考えいただいて構わないと思います。
 であればこそ,理念的には当然どれも大事なものであるというふうには思っておりますが,現実の大学入試において,それが測定可能なものであるという技術的な前提を置いて議論すること自体が,現時点では不可能であるということをはっきりと申し上げておきたいと思います。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,次に,渡部委員,どうぞ。
【渡部委員】
 ありがとうございます。2件です。
 先ほど小林先生がおっしゃってくださったことなんですが,私も同感です。それで特に,やはり受験生の視点というのは重要になるかと思います。たくさんの受験生に聞くことは無理だと思いますので,せめてテストの質を評価するときに,自分が受験生になって解いてみて,そして感覚をつかむと,そのプロセスは絶対欠かせないというように思います。つまり,定量的な検証を行う場合に,定量的な,量的な検証に加えて,定性的な,質的な考察が非常に重要じゃないかなと思います。その一環として,予備校も含めたいろいろな方々のコメントが必要になるかと思います。
 もう1点は,両角先生のおっしゃったことに関連がありますが,やはり高校までに到達すべきことをはかるという部分と,それから,大学に入って必要とされる能力をはかるという部分をはっきりと分けて,現実には分けることはできないかもしれませんが,分けて現実的に見るということが必要ではないかと思います。高校で修得すべきことは高校できっちりと修得させて,そして評価をすると。そして,大学入試は現実の制限の中で行うということが必要じゃないかなと思いました。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。ほか,いかがでございましょうか。まだ少し時間がありますけれども。
 それでは,ないようでございますので,この委員会が時間内で終わるのは非常に珍しいことですけれども,たくさんの御意見を頂きました。今日は大項目の総論的なところをやっていただきましたけれども,次回以降は,続きとして準備ができたところから順番に進めて参ります。このような形で,今日の総論から一連の個別課題についての検討が終わりましたら,それをベースにそろそろまとめに入っていくような段階になろうかなと思っているところでございますので,引き続きよろしくお願いいたします。
 事務局から何かございますか。川嶋先生,何かコメントございますか。
【川嶋委員】
 たくさんの意見やコメントを頂きましてありがとうございました。最後の方の芝井先生とか末冨先生や両角先生,あるいは渡部先生の御意見,正に大学入試の大きなチャレンジの項目だというふうには,私自身お話を聞いていて考えておりましたので,また座長と座長代理で検討して,次回以降,先ほど納得感というのはどういうことだという御意見もありましたが,委員の皆様の納得感のあるような,また論点整理を示させていただきたいと思っております。本日はありがとうございました。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,武藤さん,次の予定等を。
【武藤高等教育局企画官】
 次回の会議の具体的な時間について,ちょっと調整の上で,近日中に御連絡したいと思います。
【三島座長】
 よろしいですか。それでは,今日も長時間にわたりまして熱心な御意見のやり取りがございました。本当にありがとうございました。それでは,また次回ということにさせていただきまして,本日はここまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――




 
 
 

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