大学入試のあり方に関する検討会議(第21回)議事録

1.日時

令和3年2月17日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省省議室

3.議題

  1. 「ウィズコロナ・ポストコロナ時代の入試のあり方」について

4.出席者

委員

(有識者委員)三島座長、川嶋座長代理、益戸座長代理、斎木委員、宍戸委員、島田委員、清水委員、末冨委員、両角委員
(団体代表委員)岡委員、小林委員、芝井委員、柴田委員、萩原委員、牧田委員、吉田委員
(オブザーバー)山本大学入試センター理事長

文部科学省

萩生田文部科学大臣、丹羽文部科学副大臣、鰐淵文部科学政務官、伯井高等教育局長、森田大臣官房審議官、西田大学振興課長 他

5.議事録

【三島座長】
 委員の皆様,定刻をちょっと過ぎましたが,ただいまから第21回の大学入試のあり方に関する検討会議を開催いたします。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大防止のため,ウェブ会議方式での開催でございます。音声など先ほどからチェックを済ませていると思いますが,大丈夫でございましょうか。
 本日も傍聴者,報道関係者の入室は認めず,ライブ配信での公開とし,後日議事録をホームページに掲載することとしたいと思いますが,よろしゅうございましょうか。
 それでは,よろしくお願い申し上げます。初めに事務局から何かございましょうか。
【武藤高等教育局企画官】
 本日,御欠席,渡部委員,それから荒瀬委員,それから萩原委員と吉田委員が途中で御退席の可能性ございます。
 これまでと同様に,聞き取りやすいような御発言と,資料参照の際の該当箇所のお示しをよろしくお願いします。御発言希望される際は挙手ボタン,ミュート等,どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。
【三島座長】
 ありがとうございました。
 それでは,まず会議の開催に当たり,新たに着任なさいました丹羽文部科学副大臣から御挨拶を頂きたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
【丹羽文部科学副大臣】
 おはようございます。このたび文部科学副大臣を拝命いたしました丹羽秀樹でございます。今回は3回目の文部科学副大臣でございますが,決して慣れではなく,改めて,この重要な行政の分野に向かっていくという思いを持ち,気を引き締めて職務にまい進していく所存でございます。委員はじめ皆様方の御理解,よろしくお願い申し上げたいと思います。
 中でも,大学入試のあり方につきましては,国民の関心が極めて高い重要な政策課題でございますので,私といたしましても,副大臣として萩生田大臣を支え,委員の皆様始め幅広い御見識に耳を傾け,よりよい制度となるように力を尽くしていきたいというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【三島座長】
 副大臣,どうもありがとうございました。
 それでは議事に入ります。今日の議事は「ウィズコロナ・ポストコロナ時代の入試のあり方について」ということでございます。
 進め方でございますけれども,まずは,先月実施された大学入学共通テストの実施結果,及び大規模入学者選抜におけるCBT活用の可能性について,山本理事長から御報告を頂くことといたします。次に,事務局から,大学への実態調査におけるウィズコロナ・ポストコロナ時代の入試関連の自由記述等について御説明を頂きます。
 これらを受けて,副座長である川嶋先生に論点ペーパーを作成していただきましたので,川嶋先生からそれについて御説明を頂きたいと思います。
 最後に,これらを踏まえての討議の時間を45分ぐらい取れればというふうに思っておりますけれども,そういう形で進めていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 それでは,まず,山本理事長,どうぞよろしくお願いいたします。
【山本オブザーバー】
 おはようございます。大学入試センターの山本でございます。
 今日は,先ほど座長からございましたように,先日実施しました第1回目になります大学入学共通テスト,この実施結果について概要を少し報告させていただいて,次いで,CBT活用の検討状況についてお話をさせていただこうというふうに思います。
 2ページをお願いいたします。資料の1-1でございます。まず,令和3年度の共通テスト,コロナ禍での準備,実施という大変異例の事態になりましたが,結果としては大きなトラブルなく,無事に実施できたというふうに考えてございます。
 英語民間検定試験の活用,それから記述式問題の導入の見送りということに加えまして,昨年来のコロナ禍で大変な不安の中で受験準備をされてきたことに加えまして,感染症拡大防止のための呼びかけに応じて,適切に行動していただいた受験生の皆さん方にまず敬意を表したいと思います。
 また,受験生を御指導いただきました高校関係者,そして,何より試験場運営に携わっていただきました全国の大学の教職員の方々には,例年を超えた大変な御負担を頂きまして本当にありがとうございました。さらに,文科省には関係機関等との連絡調整ほか,丁寧にサポートしていただきましたということを含めまして,本当に多くの関係者の方々に改めてお礼を申し上げる次第でございます。
 今年度の試験運営は,新型コロナウイルス感染症による学習の遅れなどへの対応のために変則的な実施になったということは既に御承知のことだと思います。本試験を2回設定し,更に第2日程の追試験として特例追試験をセットいたしました。
 第2日程の試験場は,例年ですと,追試験場は2か所なんですが,今回は47都道府県に64会場を設置いたしまして,大学への成績提供はその分,例年より少し遅くなりまして,2月8日から既に開始しているところでございます。
 もう一つは,新型コロナウイルス感染拡大防止への取組でございます。文科省のガイドラインに基づきまして,センターにおきましても各大学が対応する内容を整理した感染症予防対策等を策定いたしまして,また,受験者に対して感染予防対策の徹底等については,受験上の注意で周知を行ったところでございます。
 さらに,受験者に対しましては,発熱等がある場合には追試験を受験するように呼びかけを行いまして,第1日程の追試験の受験許可者数は,例年の約6倍程度となる1,721人となったところです。
 また,試験問題の作成についても大変困難がございました。問題作成の作業の分担をするであるとか,あるいはスケジュールの大幅な見直し,こういった例年とは著しく異なる環境での問題作成にならざるを得なかったんですが,各大学から派遣していただいている問題作成委員の先生方には,こういった環境の下でもきちんと問題を作成していただき,大変な御尽力を賜りました。
 3ページでございます。これはいわゆる第1日程,1月16,17日に実施した結果でございまして,受験者数は約48万人余りでございまして,明日,この確定値を公表する予定にしてございます。昨年に比べて4万人ほど減っております。
 試験場は681会場を設置しました。
 なお,第18回会議におきまして斎木委員から御質問のございました高等学校での会場数でございますが,第1日程では57の高等学校に試験場を設置いたしました。ただ,高等学校に試験場を置く場合であっても,実際の試験監督であるとか,運営は大学が行っているということです。
 あわせて,受験に当たって宿泊が必要な受験者数はどのぐらいかという御質問も頂きましたが,これはセンターでは把握していません。
 また,外国では高等学校会場を使っているのかというようなこともございました。これは今日の資料の参考資料2の120ページのスライドに国際比較というような表が載ってございます。ここにありますように,ほとんどの諸外国では高等学校会場を使われているということになります。また後ほど御覧いただきたいと思います。
 それから,下の段の実施状況でございますが,試験開始時刻の繰下げ等も例年に比べて非常に少なく,大きなトラブルもなく,ほぼ例年並みに安定して実施できたというふうに言えるんではないかと思います。
 なお,今年は,北海道稚内の試験場の73名を対象に,試験場全体の第1日目の全教科を再試験ということにいたしました。暴風雪警報がちょうど出まして,帰路の受験生の安全を考慮して,再試験という判断をしたところでございます。この特定の試験場で終日全ての試験を実施できなかったというのは,これまで共通一次時代から含めて初めてのことでございました。
 続きまして4ページでございます。1月30,31日に実施しました第2日程の実施結果でございます。受験予定者2,516名でございまして,そのうち第1日程の追試験の受験許可者数が1,721人。このうち,コロナウイルス感染症関連の事由によるもの,この表の中のアンダーラインのところを足し合わせていただきますと,224人でございました。受験者数は約2,000人でございまして,これも明日,確定値を公表いたします。
 それから,この第2日程の追試験である特例追試でございますが,これを許可された者は全国で1人ございまして,2月13,14日にこれを行いまして,無事終了いたしました。
 最後の5ページでございますが,出題がどういうことだったかということでございます。今年度の出題に関しましては,これまでも問題作成方針でお知らせしてきたとおりでございまして,実際にどうであったのかということでございますが,既に幾つかの教育関係者のコメント等が報道されているものもございますが,センターにおきましても,例年のように高等学校関係者や,あるいは教科教育の学会等からの外部評価,並びに問題作成委員会による自己評価を現在行っておりまして,この結果を,例年ですと6月から7月に公表するということにしております。今年度もそういったスケジュールで進めておりますが,ただ,例年と違いまして,なかなか集まってディスカッションしながら整理できないという事情があるということで,若干スケジュールがずれるかもしれませんということをあらかじめ申し上げておきたいと思います。
 それから,最後のポチにありますように,この共通テストは学力層が非常に幅広い受験者を対象にした一斉テストでございます。そういう意味では,識別性などを考慮しますと,出題に当たっては一定の限りがあるということも御理解いただきたいと思います。
 以上で,来年度共通テストの実施状況の報告とさせていただきます。
 次いで,資料1-2でCBTの検討状況についてお話をさせていただきたいと思います。
 座長,引き続きでよろしいでしょうか。
【三島座長】
 引き続きお願いいたします。
【山本オブザーバー】
 それでは,資料1-2でございますが,センターにおける検討状況についてお話をしたいと思います。
 この表紙の下にございますように,10年近く前からセンターでもCBTに関する調査研究を進めてきていますが,この概要についてお話したいと思います。
 2ページでございます。まず,この間,CBTに関して政府関係の方から幾つかの提言が出されているということで,これを少し整理しておきました。
 大きな流れとしましては2つございまして,1つは高大接続改革に関する報告書の中で出てきているということ。もう一つは,新課程の中で「情報Ⅰ」というのが必履修になるわけですが,そういったこともあり,教科情報に関する内閣の方針ということの中で,ここに挙げた3点,こういったことが述べられているということでございます。
 3ページでございますが,先ほどの高大接続改革に関する報告書の中で,IRT,いわゆる項目反応理論に基づく複数回実施ということも提起されておりまして,このIRTという言葉,この後も出てまいりますので,少し簡単に説明をさせていただきたいと思います。
 まず,一番上の問題作成ですが,あらかじめ難易度等の品質が管理された大量の問題をプールした,いわゆる問題バンクを構築しまして,この中から問題を抽出して試験に使われることが多いということです。
 問題は非公開,それから再利用が前提でありまして,ただ,使用回数が一定以上になったり,あるいは受験者が出題された問題を覚えて帰るといったようなことによる漏えいへの対応のために,問題の入替え,追加というのが問題バンクのメンテナンスのために必要であるということがございます。
 それから,次の実施方式のところでございますが,代表的な2つをここに挙げておきたいと思います。左の方は,問題バンクから必要な数の問題を抽出して,問題セットを複数作って,実施する。もう一つは,右の図のように,1問ごとに正答,誤答を判定して,正答ならそれよりも難易度の高い問題,誤答なら易しい問題を出して,これを繰り返していって学力レベルを推定する。いわゆるアダプティブ方式と言われるものでございます。視力検査なんかを想像してもらえばよいのかというふうに思います。
 各設問には配点しません。成績はあらかじめ測定した各設問の特性,難易度等を基に推定されるスコアで示されるということになります。
 続きまして4ページでございます。CBT導入の意義でございますが,これまで共通テストで行われてきた方式が上段,ブルーの囲みの部分でございます。いわゆる紙と鉛筆でやる試験,PBTでございますが,出題,解答形式の制約,それから問題冊子,解答用紙の印刷,輸送等が必要。真ん中の部分ですね。それから,問題セットは,右ですが,1種類で一斉実施をしなければならないというのが,これまで共通テスト,センター試験で行われてきた方式でございます。
 これに対しまして,下の段の黄色の部分の左側ですが,PBT,ペーパーベースドテストではできないニーズに応えることができる。例えば,動画の利用など多様な出題の形式が考えられる。あるいは回答もそういったことを利用した回答も要求できる。
 それから,解答に至る過程で受験生がどういうふうに解答に至ったかといったログを取るといったことによって,そういった情報が得られる場合もございます。
真ん中の印刷,輸送につきましても,電子データとしての配信,あるいは回収,こういったことが可能となると同時に,採点等も効率化されるということが期待できるわけです。
 そして,右側というか,右下の薄緑で囲った部分でございますが,CBT-IRTで実施する場合には,同一時刻,それから一斉実施,こういったことにこだわらずに実施をできる。また,必要であれば,1人の受験生が複数回受験する,こういったことも可能になるというふうなことがCBTの導入の意義だというふうに考えられます。
 続きまして5ページですが,これは現在やっております共通テスト,これをCBTで実施する場合の具体的なイメージでございまして,左側の既存のテストセンターを活用する場合と,それから右側の大学等でこれまでどおり実施する場合というのを示してございます。それぞれ試験場,ハードウエアうんぬんというところの行がございますが,その表の下の2つのトラブルへの対応と障害等のある受験者の対応,これはどちらの場合も必要になり,共通していることではございますが,試験場の立地や数,ハードウエアの整備,試験実施に係る業務運営の3つがありますが,これの業務は,この表に示したように,かなり違いがあります。
 続いて6ページですが,先ほどのテストセンターというのはどういうものかということをイメージしたスライドです。試験問題の作成と登録,それから制度全体の企画,一番左の企画については大学入試センターが行う。
 それから真ん中でございますが,会場の設置,管理等の試験実施時の運営の具体,これは運営事業者が担当するということになるかと思います。
 試験室での監督等につきましては,共通テストの場合には大学等の教職員が担うことになるんではないかというふうにも考えられますが,これもどの程度まで大学の教職員が関与するかということについては検討する必要があろうかというふうに思います。
 続いて7ページですが,CBT導入に向けた課題と必要な対応についてということでお話をさせていただきます。まず,ハードウエアとネットワークに関しましては,この一番上のところですが,端末のスペックあるいは画面のサイズ,それからネットワーク回線のスピード,こういったことを相当程度統一しないと,公平性に問題が生じるということが考えられます。
 また,現行の共通テストの利点を生かすためには,アプリケーションの新たな独自開発も必要かもしれませんし,同時に,非常にしっかりしたセキュリティー対策も必要になろうかというふうに思います。
 3つ目のトラブルへの対応でございますが,現状の技術水準ではパソコンやネットワークのトラブルを皆無にすることは極めて困難です。したがって,その対応も考えていく必要があろうかと思います。
 また,PBT,ペーパーベースドでは想定し得ない,これまでのようなやり方では想定されていなかった不正行為,こういったことがあるいはあるかもしれません。そういうことを防止するための方策。それから,そういう方策を取ることによるプライバシーとの関係,こういったようなことについても一定検討が必要だろうというふうに思います。
 それから,最後の経費ということで少し書いておりますが,導入に当たっての経費,あるいはその運用経費につきましては,現行のPBTに比べると相当高額になるということが見込まれるかと思います。
 続きまして8ページでございます。右上の図のように,これも左がPBT,四角はですね。右の四角はCBT,その中にIRTを入れるかどうかというようなことで,こんな絵を描いています。赤で囲ったCBT-IRTによって実施しようという場合の必要な課題,必要なというか,こういったことに向けた課題と必要な対応という点でございます。
 先ほど述べましたパソコン,それからネットワークに関する課題,これも当然共通でございますが,これに加えて,次のような課題についても考慮する必要があろうかというふうに考えております。
 問題作成でございます。先ほども申し上げましたように,非常に大量の問題を用意しなければなりません。かなり大がかりな問題作成体制を新たに構築する必要があるということがあり,これについても相当の財政負担というものが必要になってくるんではないかと思います。
 次に重要なことは,その次の問題の非公開と書いてございますが,先ほど言いましたように,これは非公開が原則であります。非公開にすると,現在は,試験後に共通テストの問題が公表されて,また,いろんな参考書等にも掲載されて,これがいろんな教育の場面等々で活用されているということがございますが,こういう試験後の種々の場面で活用することができないということがございます。
 それから,その下の成績の表示方法ですが,これは素点ではなくスコアで示されます。これまでいろんな場面で素点主義というような形で言われてきましたが,こういったことについて,受験生はじめ関係者の方々の理解が欠かせないというようなことがございます。
 さらに,試験の実施時期であるとか複数回受験,これにつきましても十分に検討しないといけないというようなことがありまして,いずれにしましても,このことについては関係者との十分な議論の上で,それぞれの理解,それから合意が必要だろうというふうに考えております。
 続きまして,9ページでございます。こういったCBTの導入のような,非常にドラスティックなというか,劇的な方法の変化,これまでのPBTからCBTに変えていこうということを考えるに当たっては,少し我が国のテスト文化といったようなものについても考えておくことが必要ではないかというふうに思っています。
 現在の共通テストの前身として,四十年余り前から共通第一次学力試験並びにセンター試験が行われて,言わば国民的行事として安定的に実施されてきたものを,かなりダイナミックに,実施の方法の変更をしようということでございます。
 この間,今,真ん中に囲ってあります4つでございますが,我が国におけるテスト文化というようなことが,いいかどうか分かりませんが,テスト文化として一定根づいているということも言えようかと思います。
 大学入試の公平性を担保するために,共通テストはこういった特徴を備えた方式で実施すべきだという考え方が,当然のこととして現在,社会に受け止められているのではないかというふうに思います。
 こういった中で,先ほど述べましたようなCBT導入によって大きく変わるということを社会に受け入れていただくためには,相当の議論がまだまだ必要かなというふうに思っております。
 最後のスライドでございます。CBT活用に向けて,改めて3点整理をしておきたいというふうに思います。まず,これまでも私の方から,最初の頃に時間頂きまして,センター試験並びに共通試験はどういうものかという話をさせていただきました。何度も申し上げてきていますように,入試というのはほとんどの場合,選抜のためにする試験でありますから,いわゆる単なる検定試験とか学力調査,こういったものと比べ物にならない実施水準が求められるわけです。こういったことを前提にCBTの導入を検討しなければならないということでございます。
 2つ目の矢印のところですが,CBTには非常に大きなメリットがあります。これまでいろいろ,ここは何とか解決できないかといった課題を解決することもできる,というような大きな魅力ある方法ではありますが,一方で,これまで申し上げたような様々な課題,これの検討,それから,それを試行してみて,いろんなエビデンスが出てこようかと思いますが,そういったことに基づく検証,こういったことがやはり不可欠だろうと思います。
 従いまして,センターにおきましてもこれらの課題解決に向けまして,国内外の最新の動向も踏まえながら,そして,外部の専門家のお力もお借りして,これまでセンターで蓄積しました幾つかの成果,こういったことの検証も踏まえた調査研究を引き続き進めてまいりたいというふうに考えております。
 私の方からは以上でございます。ありがとうございました。
【三島座長】
 山本理事長,どうもありがとうございました。大変分かりやすくまとめていただきました。ありがとうございます。理事長におかれては,大変御多忙の中でこういうペーパーを2つまとめていただきまして,本当にありがとうございました。
 それでは次に,事務局,武藤企画官から御説明を頂きたいと思います。参考資料の3と4でございます。よろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 参考資料3の実態調査の結果を御覧ください。今回,若干追加の分析等もしておりますので,併せて御紹介したいと思います。
 まず,ページ数でいきますと31ページから32ページ辺り,お開きいただけますでしょうか。
 学科系統分類別の入試方法(入学者数別)と書いてあります。グラフを見ていただくと,人文科学,社会科学から始まって,理・工・農と,それぞれの学科の系統ごとに一般入試とAO入試と推薦入試,それぞれがどのような割合なのかということを示したものでございます。
 同じような形で,これ大学全体なんですが,33,34ページは国立大学,その次35ページ以降は公立,37,38が私立,こういう形になっております。特徴的なところだけ申し上げると,一般入試の占める割合が結構ばらついておりまして,特に一般入試の割合が多いのが,例えば31ページの理学だったり,32ページの保健の分野の中の医学、歯学でございます。この辺りが一般入試の割合が7割を超えています。
 ちなみに,この中の医学については, AOの3%の中の4割ぐらいは地域枠だろうと。それから,推薦入試の21.2%の中の5割ぐらいはおおよそ地域枠だろうというふうに見込んでございます。
 続きまして,71ページから72ページを御覧いただけますでしょうか。これは一般入試での個別学力検査において,各科目の出題状況を示したものでございます。例えば71は社会科学の中の法学・政治学,下に行くと,72で商学・経済学という形で,各分野がずっと同じような感じで並んでおります。
 特徴的なところでいきますと,例えば72ページの商学・経済学系の分野で,例えば数学を必須科目として課しているところが7.2%,選択は70.4%あるんですが,全く出題していないというところも22.4%あります。
 それから77ページのは農学系分野ですけれども,生物を必須科目として課しているところが5.1%,選択が89.9%で,そもそも出題しないというところが10.1%ございます。
 それから, 79ページに医学がございますけれども,医学も生物が必須が0.8%,全く出題しないというのが16.4%あります。後ほど川嶋先生お出しいただいたペーパーの中でもこの辺り触れていただく予定になっております。
 それから,164ページを御覧ください。この実態調査,自由記述をたくさん取っておりましたけれども,特にウィズコロナ・ポストコロナ,今日の議題に関わって様々な御意見,御提言を頂いています。
 まず,各大学の個別試験のあり方についてということで,オンライン入試に関する御意見がたくさんございまして,例えば丸の1で,オンライン入試は理想的だけれども,多様な能力を評価するためのシステム開発が必要だとか,丸の2で,不正防止対策がうまく機能するのであれば推進していくべきであり,不正防止のためのガイドラインを示してほしいというお声。あるいは,丸の3ですけど,これはコロナだけではなくて,地域間格差の解消にも有益ではないかですとか,あるいは丸の6ですけれども,個別選抜のICTの利用に大学単独で取り組むのは効率が悪いので,例えば学校推薦,総合型でのタブレットを用いたCBTですとか,あるいはネット出願に関して,何らかの共通のプラットフォームの構築を進めることが期待されるという御意見もございました。
 他方,7番のように,受験生が自宅で受けるような遠隔入試は避けたいと。公平性を欠くのは避けるべきだ,こういう御意見も他方であります。
 それから,資格検定試験の活用等々ということですが,資格検定試験の導入を積極的に行って,今回のコロナみたいな状況をイメージすると,一般選抜に高い負荷が集中しない手法を開発していく必要があるんではないかとか,あるいは丸の2で,コロナ禍では総合,推薦のニーズが高まるですとか,あるいは丸の3で,高3の最後に限られた時期に入試が実施されることがリスクであって,それを回避するためには学校推薦,総合,それから調査書に加えて学びの基礎診断の活用なんかも将来的に考えていってもいいんじゃないかといった御意見。
それから165ページにまいりまして,丸の1ですけども,一斉同日に実施される国公立大学の一般選抜,あるいは私立大学で日程重なる場合に試験会場を融通し合って,地方会場をいろんなところに設置できるような方法が採られるといいのではないかというような御意見ですとか,感染リスクを低下させるためには共通テストの利用を促進すべき,あるいは共通テストは個別選抜実施できない場合の最後のよりどころであって,確実に実施される必要がある。丸の3で,共通手うとをこれ以上複雑化させるのは避けるべきだとか,あるいは丸の4で,これ以上の負荷をかけるのはウィズコロナの時代は危険なのではないか,こういう御意見がございました。
 続きまして,CBTの関係でいきますと,例えば,現役生は在籍校でCBTの受験が可能にできるといいですとか,あるいは丸の2で,複数回受験を前提にして,進学適性の有無を判定するCBT,これは資格試験型等,PBTで従来型のハイステークスを併用することができないかとか,あるいは丸の3で,AIを駆使した監督機能なんかを使って,パソコンでマーク・記述させるシステムが開発できればいいとか,それから丸の4で,感染症だけではなくて,自然災害全般への対応として,共通テストの実施方法自体の検討が求められているというようなご意見がございました。
 また,その他として,例えば共通テストの2日間は不要不急の外出を避けて受験生優先にしていくべきじゃないかとか,それから,英語の資格検定試験の中止・延期が相次ぎましたので,共通テストの枠組みで利用することは避けるべきではないか,こういうような御意見がございました。
 続きまして,参考資料の4を御覧いただけますでしょうか。これは前回の会議におきまして,そもそもなぜ英語力の育成というのを重視していかなきゃいけないのかということについて,関連のデータをしっかり整理して,ここで報告してほしいという御要望があったことを受けて,御参考までに取りまとめたものでございます。
 目次を見ていただくと,大きく国際共通語としての英語に関するデータと,それから我が国のグローバル化あるいは国際化に関するデータ,それから大学にとっての英語に関わるデータということで,大きく3点に分けております。新しく作った資料と,既存で既にお出ししているものもありますので,新しいものを中心に御紹介をしたいと思います。
5ページですけれども,まず,国際共通語としての英語ということでいいますと,世界で最も話されている言語は1位が英語だということ。
 それから6ページですが,世界で最も影響力のある言語は英語であるということ。これは世界経済フォーラムで発表されたデータから持ってきております。中ほどに2016年とありますけど,ネーティブスピーカーの数とか,地理的・経済的なところ,あるいは外交でどう使われているか,メディアがどうなっているか,いろんな観点から指標を作りまして,得点を付けたところ,英語が1番であったということでございます。
 それから次のページに参りまして,ウェブサイトで最も使用されている言語も英語でございます。
 そういう国際共通語としての英語に関する各国の実際の英語力について,9ページ以降でございますが,例えばTOEFL iBT,OECDの加盟国の平均点を並べたものでございます。日本は一番右側ということです。
 それから,同じくTOEFL iBT,アジアで見ますと,日本はラオス,タジキスタンに次ぐ下から3番目ということでございました。
 それから,続きまして,IELTSのスコアの平均でございますが,これも下から5番目ということでございます。
 そして12ページ,TOEICのリスニングとリーディングですけれども,これも御覧のような感じになっております。アジアですと韓国は678とか何ですが,日本は523,990点満点でこういう状況でございます。
 実はTOEICはスピーキングとライティングのテストもありまして,これは13ページに掲載しております。このスコアの平均も日本は下から3つ目,あるいは一番下ということでございました。
 それから, 17ページには,我が国のグローバル化,国際化についての関連データがございます。まず,海外在住の邦人数が右肩上がりで増えていっている。
 そして,18ページですが,日系企業の海外拠点の数も増えていっている。
 そして,企業の海外進出の課題というのは19ページにございますけれども,企業の24.7%が今,海外に進出しているけれども,その際の課題のトップ3は,社内人材の確保とか言語の違いといった,あるいは文化,商習慣の違いということで,かなり言語に関わっての課題が多いんだろうということが見てとれます。
 そして,海外企業と日本企業との融合,連携ということで,国境を越えたいわゆるクロスボーダーのM&Aが非常に高い水準で推移していったり,あるいは外国からの対日直接投資が非常に増えてきているということで,普通の日本企業に入っても,ある日突然,海外の企業と統合されるとか,あるいは,そこから役員や幹部が送られてくる,あるいは自らも外国の企業の方に出向するとか,そういうことも普通に行われつつあって,また増えていくんではないかということでございます。
 それから次に,21ページ以降に「内なる国際化」ということで,いろいろデータを計足しております。まず,在留外国人数が増えていっているということ。それから,いわゆるインバウンド,訪日外客数も増えて,今年度は異常事態でございましたが,基本的には増えていって,政府全体としても2030年までに6,000万人まで伸ばすことを目標としております。外国人留学生も増えていっております。
 また,日本全体が内なる国際化が進むと同時に,日本語指導が必要な児童生徒の数も増えていっています。英語力ということだけではなくて,外国語を学ぶ中でのコミュニケーションを取ろうとする態度とか,そういったところも非常に重要になってくるのかなということを感じます。
 それから,27ページ以降で我が国のグローバル化・国際化の中で,特に社会が求める英語力という視点で,今後のビジネスパーソンにとって重要な知識やスキルで,英語が1番になっているということ。
 それから,企業・団体が目標とする英語スキルということで,テレカンファレンスで議論とか,あるいは電話で海外とやり取りができる,メールでやり取りができる等々ございまして,いわゆるリーディングとリスニングだけでなくて,スピーキング,ライティングも含めた総合的な英語力を企業や団体も求めているんだということ。
 それから29ページに,企業・団体が求めるTOEICのスコアというのを,平均値ですけれども,ここに掲げております。
 それから30ページでございますけれども,Society5.0におけるリテラシーとしての外国語力ということで,一番下から3行目の出典にありますように,採用と大学教育の未来に関する産学協議会というものがございます。これは経団連と国公私の大学トップが直接対話するという取組で,既に昨年の3月に報告書を出しております。その報告書からでございますが,Society5.0の人材には,文系・理系を問わずリテラシーが必要だと。それから,論理的思考力や規範的判断力,課題発見力等々,いろんな能力が求められる。そのためには基盤となるリベラルアーツ教育が重要なんだという中の,このリテラシーの1つとして外国語のコミュニケーション能力というのが位置づけられ,産と学の間で合意されてレポートになって,まとまっているということでございます。
 それから31ページ以降が,今度は大学と英語に関わるデータでございまして,まず入試に着目しますと,センター試験の科目別の受験者で一番多いのが英語である。英語が一番課されている。だから実際に受験されている。
 それから33ページにまいりまして,一般入試の個別学力検査における各科目の出題状況,これも英語が一番多いということでございます。
 ということで,大学として英語力というのを重視してアドミッションを行っているというふうに捉えられるわけですけれども,他方で,いわゆる3つのポリシー,卒業認定・学位授与,あるいは教育課程,それからアドミッション,この3つのポリシーにおいて英語の能力に関する記載は,以前も御報告したとおりで,3割,4割というような状況にあるということでございます。
 この背景としてはいろいろな専門分野がございますので,必ずしも英語は要らないというご意見もありますけれども,他方で,35ページを見ていただくと,大学卒業後の進路で言えば8割は就職をするということでございますので,専門分野だけではなくて,先ほど産学協議会の報告書ににリテラシーとして外国語能力が必要という提言がありましたけれども,専門の能力だけでなく、社会との接続を意識して,汎用的な力の育成も他方で重要ではないかということでございます。
 ここから先,少し飛ばしまして,最後,大学にとっての英語,大学生の英語力という資料でございます。
 まず,39ページ,高校生,大学生のTOEICのスコア推移でございます。一番右の上から2つ目,大学生の公開テストのスコアは少し上がっていて,高校生の公開テストのスコアは少し下がっていて,大学生,高校生ともに,IPテストのスコアは少し上がってきております。
 他方,40ページ,大学生の英語運用能力に関する自己評価でございます。これは,大学1年生と, 2年生から4年生に,英語運用能力の自己評価を聞いたものでございます。ちょっと分かりにくいですが,例えば左上の聞く力というところを見ていただくと,A1からC2までございます。これはCEFRに対照されていて,A1が一番低くてC2が一番高いというものでございますが,1年生は,入学時では,A1,A2を合わせて6割ぐらいだったのが,10月から12月になるとA1,A2が下がって,より高いB1以上の率が高まっているということがある一方で,2年生から4年生になると,またA1,A2が増えて,B1以降が少なくなると,こういう状況がございます。
 注意しなければいけないのは,これは1年生と上級生は同一集団ではないんですけれども,どうも1年生で入試を突破した後は上がっていて,その後,ちょっと伸び悩んでいるという状況が,実は聞く,読む,話す,書く,いずれもきれいに同じような形のグラフになっているというのが,大学IRコンソーシアムの調査の結果からは見てとれるということです。
 41ページは,先般,行いました全国学生調査の結果で,これも既にお出ししている資料です。いろいろな力を大学教育では高めているわけですけれども,特に外国語を使う力ということでいうと,大学教育が役に立っていると思う大学生の割合がほかよりも低いという状況がある。それから,これは東工大の調査の結果,個別大学の話ですけれども,留学を考える上での障害として,1位の経済的理由に加えて,2位が語学に自信がないということでございました。
 最後,学術研究と英語ということで簡単に御紹介しますけれども,まず論文の使用言語でございます。これ,ちょっと分かりにくい図ですが,中ほどのグラフのところ,他国ジャーナルと自国ジャーナルとあって,それぞれのNon-OAとOAと分かれております。OAというのはオープンアクセス,Non-OAはオープンアクセスでないということでございます。
 例えば,他国ジャーナルの日本のところを見ていただくと,日本人が論文を書くときに他国のジャーナルに掲載する場合はほとんどの英語,これは日本だけではなくて,およそどの国もほとんどが他国のジャーナルに掲載するときは英語だということです。
 他方,自国のジャーナルはどうかというと,日本の場合は自国のジャーナルであっても半分ぐらいが英語,Non-OAで半分ぐらいですけれども,世界中に開かれているオープンアクセスであれば,日本国内であっても9割近くが英語で書かれているということでございます。
 最後,本当に御参考までですけども,アメリカの国際共著論文の相手国に関するデータです。赤い丸が2005年から2007年当時の日本のランクで,それがいずれも下がってきているというデータです。
 以上でございます。ありがとうございます。
【三島座長】
 武藤企画官,どうもありがとうございました。非常に興味あるデータをいろいろと御紹介いただきました。
 それでは,次に資料2でございますけれども,川嶋副座長から御説明を頂きたいと思います。それが終わりましたら質疑に入りたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 それでは,どうぞ,よろしくお願いします。
【川嶋委員】
 ありがとうございます。川嶋でございます。
 これまでも,英語4技能,あるいは記述式についての論点メモといったものを御提示させていただきましたけれども,今回は,今,直面しておりますCOVID-19が,我々の日常生活のみならず,あらゆる分野で大きな影響を与えておりますので,今後の大学入試も従来どおりの,先ほど山本理事長の方から日本の大学入試文化の御説明がございましたが,そういうものが果たして今後の時代に適切であるかどうかというようなことも含めて,問題提起をさせていただきたいと思います。
 まず最初に,(1)でございますけれども,このあり方会議では,夏を目途にして,令和6年度実施の入学者選抜に向けての考え方を示すということも,ミッションもの一つとなっております。先ほど山本理事長からも御報告ございましたが,おおむねトラブルもなく,第1回大学入学共通テストが実施されたということでございます。
 センターにおいては,自己評価,外部評価等が行われているというお話でございましたけれども,狙いとしていた出題方針,意図の実現状況についてどのように考えたらよいのかということです。これは,単にセンター,出題側の意図だけではなくて,高校側の評価,あるいは,このテストを活用しております大学側から見て,センター試験同様に高等学校における基礎的な学力を把握すると同時に,大学教育を受けるのに必要な能力をきちんと評価できているどうかということの検討が必要ではないかと思います。
 他方,先ほど武藤企画官からの資料の御紹介にもありましたけれども,コロナの影響で,県境を越えず高校の基礎的な学習の達成度を見る共通テストの役割は高まったと,安定的で確実な実施が一層重要になったと,私は考えております。つまり,共通テストに過度に依存するのではないというコメントもございましたけれども,大学入学共通テストの役割の重要性は改めて認識されたのではないかということでございます。
 今後に向けての課題ということで,共通テストにおいては,外国語のアウトプット技能,あるいは思考の過程を表現する能力までを問うことには限界があったのではないかと考えております。山本理事長の最後ところのコメントにございましたが,一斉テストとしての出題範囲の限界はあるということでしたので,今後,各大学が実施する個別試験との役割分担が一層重要になるのではないかと考えております。
 それから,マル2でございますが,これも先ほど武藤企画官の方から資料に基づいて御説明がございました。大学入試の原則の一つは,大学,学部の教育を受けるに必要な能力,適性を判定することでございます。単に入学時ではなくて,大学が提供する教育課程をきちんと理解し,4年後,2年後に,それぞれの大学が示すDPに示された能力等を獲得して卒業できることが重要です。そういう観点からすると,先ほど資料の説明がありましたように,例えば経済学部における数学のように,入学後の教育に非常に重要な役割があると思われる科目が,共通テストの利用,又は個別試験での出題も必要であると考えております。入学者や,高校のカリキュラムの組み方にも大きな影響を与えることもありますけれども,方向性としては,やはり入学後きちんと学習して卒業できる,その出発点となる能力をどのように入学試験で測定するのかということは非常に重要な観点だろうと思います。
 マル3,新教育課程への対応として,共通テストでどのような教科,科目を出題するかということでございます。これは御承知のように,今,センターで関係者から専門的な検討を受けて,最終的な出題科目を決定する過程であるとお聞きしましたので,その決定がされ次第,本会議にも御報告をいただければ有り難いと考えております。
 (2)入学時期・修学年限の多様化に対応した入学者選抜のあり方についてでございます。今でも,かなり受験機会や選抜方法の多様化が進んでおりますが,一方で秋入学の可能性についても検討されているところでございます。入学式や修学年限の多様化を,入学者選抜の在り方と一体的に検討する必要があるのではないかと考えております。前回,益戸副座長の方からは,選抜方法の多様化の観点から特別選抜を中心に行うのが適当であるという御意見がございました。その際,例えば9月入学者に対する大学入学者選抜について,共通テストとの関係でどのように考えればよいのかということについても御意見を伺いたいと考えております。
 (3)大学入学者選抜におけるデジタル化の推進の観点でございます。御承知のように,現在,国を挙げて,あらゆる分野におけるデジタル化を推進しようとしております。そういう中で,学校教育や大学教育を含めてデジタル化の推進が求められているところでございます。当然ながら,大学入学者選抜においてもデジタル化を推進すべきと私自身は考えております。
 まず最初に,先ほどセンターでCBTによるテスト開発,研究開発が行われているという御報告がございましたが,報告があったセンターにおけるCBT化の検討状況を踏まえて,委員の方々がどのように考えておられるのかを是非お聞きしたいということでございます。単に共通テストにおけるCBT化の可能性を追求することも必要ではありますが,先ほど実態調査の中でもコメントとしてございましたけれども,各大学の個別試験や総合型・学校推薦型選抜でのCBT活用の先進事例も踏まえて,個別試験でのCBT化の推進ということも重要であると考えております。御承知のように,佐賀大学では既にこのような取組を進めておられますけれども,先ほどコメントもありましたように,個別大学ではなかなか難しいということで,大学から何らかの共通のプラットフォームが必要という御意見もございましたので,これについての御意見も賜れればと思っております。
 2番目は,デジタル化に関連して是非お願いしたいのは,まず共通テストの出願を電子化していただければと思います。これは大学側の観点からでございますけれども,特に成績請求票はいまだに志願者と大学とのやり取りが紙で行われておりますので,共通テスト出願が電子化されると,この部分の手間が省けるということでございます。また,別の会議で検討が進んでおります高校からの調査書の電子化も併せて実現しますと,大学の出願についてはペーパーレスの形になるのではないかと思います。大学側としては,こういう取組の推進を是非お願いしたいと考えております。
 3番目,オンライン面接の推進ということで,これも先ほど武藤企画官から実態調査の御紹介がございましたが,既に多くの大学で面接等のオンライン化が進んでおります。その際,不正防止とか,平等な受験機会という観点から,留意すべきことはどういうことがあるのかということについての御意見もお伺いしたいと思っております。
 また,本日の日経の朝刊に,期末試験等のオンラインでの実施という記事がございましたけれども,学力試験等のオンライン化は可能なのかどうかということです。感染症体制の向上や,地理的,経済的事情へ配慮の観点からも,実地調査からも見られますように非常に重要なことだろうと考えております。
 面接等については,生徒の通信環境への配慮などが必要であり,他方,学力検査については,やはり不正防止といったような観点から,その可能性,あるいは課題は何かということについても是非御意見を伺いたいと思います。
 (4)総合型・学校推薦型選抜のあり方でございますが,現実,このコロナ禍の中で,多くの大学が募集人員を増やしているということでございます。ただ,これまでも総合型・学校推薦型選抜については幾つかの課題が示されておりまして,1つは学力の適切な把握が不足しているのではないかという御意見もございます。従いまして,今後,総合型・学校推薦型選抜を推進するに当たっても,どのように学力を的確に把握すればよいのかということでございます。
 既に文部科学省から,口頭試験とか,共通テストを利用して,必ず学力を把握しなさいということが示されております。これまでも,この会議では何名かの委員の方々から,以前,検討されていた基礎学力テストというものがあれば,総合型・学校推薦型選抜にも十分活用できるのではないかというお話もございました。あわせて,デジタル化ということで言えば,ハイステークスな共通テストへのCBT等よりも,資格試験型の基礎学力テストのようなものになじみやすいのではないかと,私自身は考えております。
 マル2は,当然ですけれども,それぞれの大学,あるいは学部が求める人材像にふさわしい総合型・学校推薦型選抜を推進すべきと,これは言わずもがなでございます。
 (5),今後のことでございます。コロナの感染を踏まえまして,先ほど申しましたように我々の日常生活は大きく変わっております。大学入学者選抜の実施,検討体制についても,従来のやり方ではふさわしくないと私自身は考えております。
 今後,どうするべきかということでございますが,マル1でございます。今回,この会議に向けて,大規模な入試の実態調査を実施し,本会議の検討の大きな材料となっております。従いまして,同様の国による選抜区分ごとの入試実態調査を定期的に実施,公表,分析することが必要ではないかと思います。また,各個別大学においても,選抜区分ごとの入学者の入学後の状況などの分析を推進し,国もその実施状況をフォローしつつ,大学入試センター研究開発部や国立教育政策研究所などが全体状況をメタ分析するなど,入試の在り方の検討については実証的なデータを蓄積して,大学入試の在り方について中長期的に議論していく際の基礎資料とする必要があるのではないかと考えております。
 マル2は,各大学の入試情報の公表ということであります。国による調査,公表とともに,各大学も積極的に試験問題,選抜基準,男女合格者数を公表することをマストとするべきではないかと考えております。それによって,各大学が実施している大学入学者選抜の透明性が担保されるのではないかと考えております。
 マル3として,大学入試についての高等学校,大学等関係者間の協議体の設置を提案させていただきたいと思っております。今回のコロナ禍のように,入試システム全体の調整が必要になる事態も想定されるところでございます。特に,緊急時に機動的に検討できるような,入試の在り方に関する恒常的な体制を整備しておく必要があると,個人的には考えております。
 その中の検討項目としては,例えば毎年度の入試日程や方法,共通テストの実施時期,これについては益戸副座長の方からも,雪害や感染症拡大期である1月実施については前倒ししてはどうかというような御意見もございました。また,先ほど斎木委員からの御質問に山本理事長が答えられていましたが,高等学校を試験会場とすることについての是非でございます。外国は高等学校がほとんどというデータはございますが,基本的に諸外国では入学者選抜に必要な試験の結果が高等学校の修了資格と結びついておりますので,そういう実態があるということでございます。
 最後になりますけれども,新型コロナウイルス感染症によって我々の日常生活は本当に大きく変わりました。我が国は,単にこういう新型感染症の影響だけではなくて,先日も東北地方で大きな地震がありましたけれども,常に地震などの自然災害のリスクに直面しております。それによって,これまで実施してきた大学入試に限らず,教育や高校入試も大きな影響を受けてきております。従いまして,こういう状況が起きるごとに,また関係者が集まって対策を検討するよりは,恒常的な検討組織を設置した上で,受験生保護の観点から,こういう状況の場合にはこういうふうにして入試を実施しますといったようなことを,あらかじめきちんと整えておくべきではないかと感じているところでございます。
 高校教育,大学教育,我々の日常生活,働き方は大きく変わっております。大学入学者選抜だけが従来のやり方でよいのかと私は疑問に感じますので,このようなしっかりとした議論の場を設けた上で,大学入試の在り方について腰を据えて議論する必要があると私は考えておりますし,そうあることを個人的には期待しております。
 以上でございます。ありがとうございました。
【三島座長】
 川嶋副座長,どうもありがとうございます。川嶋副座長におかれては,お忙しい中,毎回,ペーパーを出していただきまして,本当にありがとうございます。議論をしていく上で非常に有効であると思います。
 それでは,萩生田文部科学大臣が到着されましたので,ここで大臣から御挨拶を頂きたいと存じます。大臣,どうぞよろしくお願いいたします。
【萩生田文部科学大臣】
 皆さん,おはようございます。本日も,お忙しい中,大学入試のあり方に関する検討会議に御出席を頂きまして,ありがとうございます。
 今回で21回目の開催となります。精力的な御検討を続けていただいていることに改めて感謝を申し上げます。また,今年初めてということになりますので,本年も引き続きよろしくお願い申し上げます。
 大学入学の共通テストにつきましては,既に山本理事長から報告があったかもしれませんが,感染症対策も含め,おおむね無事終了することができたのではないかと思っております。特に,これまでの大学入試センター試験では,本試験の1週間後に全国2会場で追試験を行ってまいりましたが,今回は第2日程を第1日程の2週間後に設定し,試験場も全都道府県に設置しました。
 当初,第2日程を望む現役の受験生は少なくて,意味があるのかなどと言われたのですが,こうした措置を講じたことで,コロナ禍で受験機会が失われてしまった学生さんたちが第2日程に回ることができました。特に,症状がないのに濃厚接触者に指定されて,やむを得ず第1日程を受けられなかった学生さんにとっては,極めて有効な手段だったとの報告を聞いております。しかも,各都道府県ですから,県をまたがずに近くで受験ができたということも,大変意味があったのではないかと思っているところでございます。
 また,今,川嶋座長代理からもちょっと触れられましたけれども,先週末,東北でまた大きな地震がありまして,新幹線や東北自動車道が不通になっております。その関係で,文科省としては直ちに受験を予定している各大学に配慮をお願いしました。既に日程を延ばしていただいたり,追試験の設定をしていただいたりした学校もありますし,もともと用意をしておいたコロナの配慮のための追試験に,この交通困難者の人たちも回っていただくような配慮もしていただいております。
 そういった意味では,今年度,非常にセーフティーネットがうまく張れていたのではないかと思っておりまして,改めて先生方にこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。
 本日は,ウィズコロナ,ポストコロナ時代の入試の在り方について議論していただくことになっていると聞いております。正に一般選抜の真っただ中でありますが,今年度の入試の実施状況も踏まえつつ,受験生が安心して入試に臨めるような仕組みについて検討いただければ幸いに存じます。
 本日も,活発な御議論をどうぞよろしくお願いいたします。
【三島座長】
 大臣,どうもありがとうございました。
 それでは,残った時間で,ここまでの御報告等を踏まえて御質問,御意見ございましたら,発言をお願いしたいと思います。発言を希望される方は,挙手ボタンを押していただければ思います。よろしくお願いいたします。
 それでは,まず益戸委員,どうぞ。
【益戸委員】
 益戸でございます。
 川嶋副座長,そして山本理事長,文部科学省の武藤企画官,非常に頭の整理になる資料を発表いただき,ありがとうございました。
 大きく分けて2つお話をさせていただきます。まず1つは英語の問題です。資料と説明を聞いて第一に感じたことは,英語は世界で最も話されて,最も影響力がある国際共通語であるということは間違いない。しかしながら,
残念なことに日本は,その運用能力がいずれの試験のスコアを見ても振るわない。この現実だけを見ても,大学4年間で,高校までの基礎の上にのっとった一層の英語力を向上させていくことは重要ということは明らかではないかと考えます。
 先日もお話ししましたが,少子高齢化によって国内の消費市場が縮小する中,海外での売上比率は企業にとってますます重要な傾向にあります。先日,お目にかかった大手自動車メーカー,建設機械メーカー,食品メーカーのトップのお話では,海外売上比率は80%から90%に近づいているとのお話でした。
 国内でも,就業者数が多い観光やサービス業にとって,日本人だけを相手に成り立つ時代は終わろうとしています。実際,コロナの感染が広まった結果,海外からの観光客がいなくなり,日本は大変な大打撃を被ったわけです。全国の自治体,観光業,サービス業界が,世界の富裕層の来日客を増加させるための策を競い合っています。投資や消費可能な資産レベルを1億円に引いたとして,こういった富裕層が多い国は,日本以外では,アメリカ,ドイツ,フランス,イギリスなど欧米諸国,アジアでは中国,台湾,韓国です。特に,富裕層の方々はビジネスで英語を使うのは当たり前です。共通語として英語を皆さん使える。したがって,企業の約3割が訪日外国人向けのビジネスを実施し,6割が拡大意欲を持っているという調査結果につながったのだろうと考えます。
 また,企業の人事政策についても触れますと,今までは現地化といい,シンガポールのオフィスは,シンガポールの方を雇用して,その方を昇格させて,最終的には社長にするという人事をやっていましたが,今やそういった形ではグローバル企業文化は育たないので,シンガポールの方を日本に勤務させる,日本の方を海外に行かせる,イギリスの方を中国で勤務させるというような形で,グローバル企業は異文化交流によるシナジーを作っています。正に人事のグローバルな互換性を求めることは当たり前となってきました。
 こうした中,日本人は英語が不得意なために,日本でしか働けないというのは大きなハンディではないでしょうか。英語ができないばかりに,若者の将来が狭められてしまうというのは誠に残念だと思います。そして,日本語の方が大事ではないかとか,英語だけでいいのかという御意見もありますが,この二項対立の議論というのは余り生産的ではないと思います。英語も日本語も大事であって,両方に力を入れる必要があります。また,英語力を高めるだけではなくて,英語力を高めるプロセスの中で,広く異文化とのコミュニケーションを積極的に行う態度を育てることが非常に大事だと思います。
 次に,川嶋副座長からのお話の中で,大学入試についての高校,大学など関係者間の協議体の設置というお話がありました。私は大賛成であります。そもそも私たちのこの検討会というのは,令和6年,2024年の入試をどうするかという課題ですが,この2024年に入学した方が卒業するのは,ストレートにいって2028年,大学院を考えたりすると2030年,今から10年後です。そのときの世界は,日本は一体どうなっているのか。日本全体も,やっとデジタル化に後れを取らないように頑張ろうという決意表明をしたわけですが,これは非常に大切な議論であるし,今後,その時代に即した形での議論を進めていかなければいけないということに直面していると思います。共通テストの実施時期であるとか,デジタル,ICTを使った選抜方法の検討は積極的に行わないといけないと思います。
 特に,現在の多様化する社会では,教育関係者側の経営目線だけではなくて,学修者目線での検討はますます必要です。もちろん,政府がその必然性に賛同するのであれば,改革を早めたり,例えばデジタル化のための必要な予算措置などをきっちりと解決していただかないと,前へ進まないということは言うまでもありません。従いまして,この協議体では,予算であるとか,資金計画などについての議論もテーマに入れていただきたいと思います。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。
 ただいま,たくさん手が挙がってございます。今,10名の方の手が挙がっております。時間を考えますと,できましたら二,三分でポイントをついた御発言をしていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは,末冨委員,どうぞ。
【末冨委員】
 お時間の都合がおありにある委員が,先に発言なさるべきだと存じます。ほかにお時間の都合がおありの方,いらっしゃいませんでしょうか。萩原委員,先ほど途中退席の可能性,伺っておりましたが。
【三島座長】
 御親切にありがとうございます。
 もし,もうすぐ出なければいけないので,今,発言したいという方がおられましたら,すぐにマイクで入っていただけますが。よろしいですか。
【吉田委員】
 吉田でございますが,45分までに出られれば結構でございます。
【三島座長】
 はい,分かりました。
 それでは,まず末冨委員,どうぞ。
【末冨委員】
 それでは,簡潔に申し上げます。
 まず,山本理事長,それから川嶋副座長のペーパーと関係してですけれども,1つ気になりますのは,やはり高校会場の実態把握についてでございます。特に,地理的な受験機会の公平性,冬場に共通テストが行われているということとも兼ね合わせますと,宿泊を要する,あるいは大学会場へのアクセスが困難な受験層の特定と把握は必ずされなければならないということで,実態把握をまずお願いしたいということです。
 それから,もう1つ,今年度の共通テストの評価につきましては,こちらの会議においても,どういったテストで,どのような到達点があり,今後,どのように改善されていくべきなのかという内容は必ず盛り込まなければ,提言としては不足と考えます。受験し得にとっては英語4技能試験や記述式テストとともに,共通テスト本体への不安も抱えながらの今年度の受験であったわけです。だとすれば,やはり今年度の実験を次の年度にどうやってつなげていくのかというような検証も含めて必ず必要であるということで,大学入試センターにおかれましては,お忙しいことは承知の上ですけれども,今回の共通テストについての総括をこちらの会議にも報告されるべきだろうと判断いたします。
 そして,もう1つですが,川嶋副座長がおっしゃった出題電子化と関連してですけれども,せっかく電子化が行われ,デジタライゼーションの時代ですので,自己採点による仕組みもこれを機会に見直していく必要があるだろうと思います。2月9日付の「AERA」でも,日本はいつまで自己採点をやっているのかという問題提起の記事がございましたが,全く正鵠を得た指摘であると思いますので,これを機会に出願電子化と,それから自己採点ではなく,可能な限り早期に受験者が得点を知ることができる仕組みの導入をお考えいただければと思います。
 あわせて,まとめて意見を申し上げると,CBTについてです。確かに,CBT自体はメリットもありますが,山本理事長がおっしゃったように,かなりの導入コスト,あるいは技術的安定性を確保するといったことも含めて課題が多いと思います。CBTを導入すること自体が自己目的化してしまうことについては非常に懸念を覚えます。特に,英語4技能試験の記述式試験の経緯を踏まえましても,これをやらなければいけないから共通テストに盛り込まなければいけないんだみたいな発想をすること自体が,また同じ失敗のてつを踏むことになるであろうと思います。
 それらは情報についてのCBTもそうですけれども,とにかく適切な政策のマネジメントということを意識していただきたいと思います。例えば,英語4技能については,益戸委員もおっしゃるように大変重要ですが,なぜ英語4技能が伸ばせていないのかについては,課題の適切なアセスメント,改善オプションは恐らく複数あるはずで,それをスモールスタートで検証しながら進めていく。一気に何かをやろうとするような改革のやり方というのは,恐らくアフターコロナの時代には適していない,グローバル化の中で多様な人材が求められるような選抜の在り方についても,必ずしもヒットしない時代になっているんだろうと思います。だからこそ,多様な改善策,スモールスタート,そして検証を重ねながらの改善というような,政策自体のマネジメントを特に強く意識していただきたいと思っております。
 そして,益戸委員のおっしゃった高大接続については,先ほどの御意見に非常に強く賛同しております。やはり高校側,大学側,そして大学を卒業した先にある企業側の御意見も聞きながら,特に高校と大学はテストだけでつながっているわけではなくて,カリキュラムやプログラムでもつながることができます。テスト以外のつながりの在り方についても,対話を重ねる場をよりフォーマルに進めていくべきだろうと考えます。
 以上です。お時間を頂戴して,ありがとうございました。
【三島座長】
 ありがとうございました。
 それでは,続いて芝井委員,どうぞ。
【芝井委員】
 それでは,なるべく短く,質問も含めましてお願いしたいと思います。
 1つですけれども,山本理事長の方には,すみません,共通テストの実施結果は分かったんですけれども,次年度,令和4年度の実施に関して,今年が1つのモデルになるのか,あるいは今年は特殊な事例であって,来年度はもう一度,元へ戻るのかということだけ,ちょっと確認をさせていただきたいと思います。これが1点です。
 それから,英語の参考資料4については,まとめていただいてありがとうございます。ただ,益戸委員の御意見に関わらず,やはりここに書いてあることは,ある種,英語帝国主義を助長するだけの材料であると私は思っています。世界に多数の外国語がある中で,どうして英語なのかということは,現実問題としてリンガ・フランカであること以上ではないんですよね。その現実はちゃんと見てくださいというのはよく分かるんですが,私は別にグローバリゼーションが反対でも何でもなくて,当然そうだろうと思います。でも,なぜ英語なのかということは,やはりきちんとした議論をしておかねばならないということを申し上げたつもりです。
 益戸委員がおっしゃることは分からないではないんですけれども,私は,日本の若者全てにまず英語の力をつけるべきだというのは,はっきり言いまして暴論だと思っています。そういう意味では,私の意見は大変弱いと思いますので,鳥飼玖美子さんはどのように言っているのかやはり読んでいただいて,私たちは,今,生きている日本の若者に対してどういう教育を施すべきなのかということを,やはりしっかりと詰めないといけないと思っています。
 山本理事長,すみませんが,来年度のことだけ教えていただけたらと思います。
 以上です。
【三島座長】
 山本理事長,今,よろしいですか。できるだけ手短にお答えいただければと思います。
【山本オブザーバー】
 芝井委員,ありがとうございます。
 来年度の実施,運営の面ですよね。日程とか,今年を踏襲するのかということですか。
【芝井委員】
 簡単に言うと,今回のパターンを踏襲されるのか,それとも元に戻すのかですが。
【山本オブザーバー】
 コロナの状況,その他いろいろなことがあろうかと思いますが,今年度は極めて特殊な事例だったと考えております。ただ,これからのコロナの状況,それから文科省,大学,高校団体との協議等の中で決まっていくことだろうと思いますが,今年は特殊な事例だったと思います。
【芝井委員】
 分かりました。まず,元の形がベースであって,今年は特殊な事例である。それで,やはり今後の推移,あるいは関係団体との協議の中で決まっていくということでよろしいですね。
【山本オブザーバー】
 そういうことです。
【芝井委員】
  ありがとうございます。
【三島座長】
 ありがとうございました。
 それでは,吉田委員,どうぞ。
【吉田委員】
 ありがとうございます。
 まず初めに,私,1つ,もう1回考えていただきたいのですけれども,この会議は2024年のための会議ですけれども,本来であれば今年から入試制度は変わっていたわけです。そういう中で,子供たちが今,どういう状況かといったときに,今年の高校3年生,そして浪人生は本当に振り回されて,かわいそうだったと思います。コロナに対して,先ほどセンターのお話がありましたけれども,センターの対応としては共通テストはできていると思いますけれども,果たして今の状況において,受験生たちは本当に幸せな入試を受けることができたのでしょうか。
 コロナというものによって,行きたい大学にも地方からは行けない気持ちになった子もいる。それから,私が今,一番びっくりしていますのは,このコロナの状況によって,突然,2次試験等がなくなって,共通テストと単なる調査書だけになってしまった学校が幾つもあります。私は,今回の入試の改革というか,高大接続改革の目的は一体何だったのかと考えたときに,私どもが指導してきた子供たちに対して非常に申し訳ないことをしたような気がしています。
 そして,その中で各大学のアドミッションポリシーに照らし合わせた場合に,本当にこれでよかったのかどうか,それを検討すべきではないか。今,センターの共通テストのCBTうんぬんのお話もありましたけれども,このCBT一つとっても,実際に何をCBTにするのか,今回,記述式ができなかった部分がどう変わるのか,そして英語4技能は本当に2技能のままなのか。先ほど来,スピーキングとライティングの話も出ています。S&Wをやるとしたら,センターでは1回の試験ではできませんということだと思うのです。そうなれば,必然的に先ほど来お話あるように,共通テストの採点の問題も含めて,テストの前倒しなり,何回かに分けてやらなければならなくなる。そうすると,今度,CBTの問題が登場してくる。そういうようなことを,もう少しセンターとして考えていただいていいのではないでしょうか。ただ,CBTをやるからどうの,情報だけがどうのという問題ではないと思います。
 それから,英語について,先ほど武藤企画官から詳細なる説明があり,今,芝井先生からもお話があったんですけど,これは確かに,なぜ英語なのということを言ったら,今更言ってもどうしようもない状況が1つございます。それは,小学校から英語を義務化したことです。つまり,今,英語が教科化されている以上,英語以外の語学を入れるという余裕は我々中高にはございません。もちろん,上の方の優秀な学校は,第二外国語もやっている学校もございます。そうすると,この英語を何とかして,しっかりとしたものにしようということで,今,入試で英語4技能になり,そして大学1年生まではあそこまで伸びているものが,なぜ2年生から4年生で下がるかといったら,それは大学での授業が英語じゃないからというのがあるのかもしれません。それは,ディプロマポリシーなりカリキュラムポリシーなりによって,各大学が私は判断することだと思います。
 ですから,もう1回ここで子供たちの目線に返ってあげていただいて,やっぱり各大学が3つのポリシーに従ってどういう入試をやるのか。やはり,センターテスト等,調査書だけでやっている試験が正しいことなのかどうなのか。さらには,大変申し訳ないですけど,今年の大学1年生,ほとんどの学生が地方にいるままとか,大学に足を踏み入れたことがないなんて子がいるような状況になってしまっています。やはりその学生たち,生徒たち,それを中心にお話を進めていただければと願っておりますので,よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【三島座長】
 ありがとうございました。新型コロナということがあった年でもあり,またCBTのことですと少し長期的な話になりますので,その辺のバランスをしっかり取りながら議論をしていかなきゃいけないかというふうに思います。
 それでは,柴田委員,どうぞ。
【柴田委員】
 ありがとうございます。福岡県立大学の柴田でございます。
 詳細な資料の提示,及び川嶋先生のポストコロナの大学入試等,おまとめていただいて,改めて感じたんですけれども,この会は,当初,英語の問題,それから記述式の問題がございましたけれども,先ほどから出ておりますように,現状での入学者選抜のスケジュールを含めた検討というのも必要になってきているんじゃないかなと感じております。現在,日本の入試というのは,大学入学の選抜要項にのっとって,この位置づけというのもございますけれども,それにのっとって各大学やっているわけですけれども,改めて,今回の改革では,これを新しいルールということで名称等の変更とか,期日の設定とかいろいろございましたけれども,改めて見直す必要があるんではないかなと感じた次第でございます。
 その一つとして,本日の資料の1ページ目にもございますけれども,受験機会,選抜方法の多様化ということで,秋入学についての提起がございまして,これも非常に議論のあるところですけれども,これを導入した場合に,現状での春の入学との関係がどうなるのか,場合によっては大混乱も起こしかねませんので,是非,先ほどのまとめの方にもございましたけれども,大学,高校,連携した協議体のようなものが必要になってくるのではないかと思っておりますし,入試日程についても,ほかの検討会でも総合的,多面的な選抜をする際に,現状の入試日程等々,なかなか継ぎはぎで変わってきているものですから矛盾も出ているという御指摘もございますので,その辺りを含めて御検討いただく機会があればと思います。特に,総合型,学校推薦型選抜を行う際の学力の適切な把握について,もうちょっと皆さん方とも一緒に時期を含めて考えていかなければいけないと思います。具体的に言いますと,余り周知されておりませんけれども,10日前ルールというのがございまして,共通テストをこれらに使うとすると,一般入試の期間が非常に制約されるという限界がございます。そういうのも含めてやっていただければと思います。
 それから最後に,言い訳ではございませんけれども,1ページ目にございます医学部で生物をほとんど課していないのはいかがなものかというような論調でございましたけれども,これ,3つですね,物理,化学,生物,みんなとれればいいんでしょうけども,御承知のように,この理科の科目というのは階層性がございます。医学部で生物を理解しようと思うと化学が必須でございます。その化学の理解のためには物理が必須でございます。ということで,生物は医学部で教えることができますけども,その前提としての化学,物理が必要であるということで,こういう選択になっているのではないかと考えております。
 以上,時間の制約がございますので,是非入試日程を含めた検討というのを,高校,大学と行わせていただければという御提案をさせていただきたいと思います。
 以上でございます。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,続いて島田委員,どうぞ。
【島田委員】
 島田です。ありがとうございます。2点ほど申し上げます。
 川嶋先生のペーパーに従いまして,(1)のマル1,第1回大学入学共通テストの実施を踏まえて,その1,狙いとしていた出題方針,意図の実現の状況ということについてです。
 私は,国語に関しては,これはある程度実現できたのではないかと考えます。改革の方向性は示されたと言えるかと思います。一方,これはある程度までの実現にとどまったということも言っておきたいと思います。山本理事長のお話の中にもありましたとおり,今回はセンター試験から踏襲すべきところは踏襲しつつ,新傾向の問題を取り入れて,何よりも円滑な移行を目指して実現されたというところがあった,円滑な実施というところに重きが置かれたと感じられます。難易度もセンター試験から大きな変化はなく,意欲的に導入された新傾向の問題も,受験生を大きく混乱させるものではなかったというところはよかった点だろうと思います。
 一方,出題の工夫,改善については今後も続けて,方針や意図の実現というところを一層目指していくということが必要かなと思いました。
また,試験に関する様々な事前の情報提供というところには,やや不十分な点もあったかと思います。例えばですけれども,国語の問題の中では,いわゆる「実用的な文章」を新たに題材の対象とするということが示されておりましたが,正にその「実用的な文章」なるものが具体的にどのようなものを指すのかということが受験生には明示的に示されていなかったようにも思います。実は,この「実用的な文章」については現行学習指導要領の「解説」の中でもはっきり説明されていますので,高校の国語の教員は当然知っているだろうと思われますけれども,受験生に対しても,どこかで明示する必要があるかと思います。今後,文部科学省なりセンターなりで検討いただければ思います。
 もう1点です。これは,川嶋先生の資料で申しますと,(3)のマル3です。オンライン面接等の推進というところです。
 これは,喫緊の問題で総合的に検討する必要はもちろんあるのですけれども,個々の大学は当面の対応がもう正に必要となっているところでもあります。そこで,これは文部科学省へのお願いですけれども,この入試のオンライン化について,本年度の実施状況を整理して公表していただきたいです。各大学がどの程度の規模でどのように行ったのか,また実施した大学ではどのような課題が見つかったのかというような知見を共有できれば,これから導入しようとする大学にとっては大変有益な情報になるだろうと思います。すぐにはできないかもしれませんが,本年度の入試でどのように実現できたのか,どんな課題が浮上したのかというところを,是非まとめて公表していただければと思います。
 以上です。ありがとうございました。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,両角委員,どうぞ。
【両角委員】
 両角です。ありがとうございます。今回の川嶋副座長が御整理いただいたウイズコロナ・ポストコロナ時代の大学入試等ということで,非常に重要な点について整理してもらったと思いました。
 先ほどから出ていますように,今年の受験生は本当にいろいろ振り回された挙げ句,コロナという状況で大変な苦労をしました。また大学側にいろいろお話を伺っていても,そういった受験生の行動が変わったことによって,大学も予期せぬ対応が求められたり,いろいろな予想がつきにくくなっており,学生確保においてもいろんな混乱が起きているかと思います。先ほどは,今年はコロナで特殊だったというような御説明があったんですけれど,私は余りそう楽観的には思えなくて,それほど早く本当に終息するのか,また自然災害も含めていろんなリスクを考えておくということで,ある程度のこういった状況を念頭に置いた検討というのが,もう不可欠に残念ながらなっているのではないかと,そういう意味ですごく貴重なまとめだと思いました。
 2つだけ,時間もありますので指摘したいと思います。
 まず,この川嶋先生の(5)の丸1のところで,国によるエビデンスに基づいた検証をということも本当に重要だと思うのですが,それに加えて,やはり個別大学での分析なども更に進めてもらう必要があるかなと思っています。大学によってはもちろん入試形態別に,その後学生さんがどう成長して,どう卒業していったのかといったことをきちんと分析されていて,それをAP,CP,BPを結びつけて,改善に結びつけていいサイクルを生んでいらっしゃると思うんですけれど,大学によっては,そこが十分にできていないで,ちょっと場当たり的な対策をしているところがまだあるように思います。例えば今回も,二次試験しなくなって共通テストだけでとってみたとか,あるいは高校の調査書など、いろんなものをより活用したといった動きが見られますけれど,そういったことが本当にどうだったのかといったことは,一般論では言えない話で,各大学の状況,学力のレベルによって全く異なる文脈があると思うので,個別大学でのそういった分析を重ねることが全体の議論を進める上でも重要なのではないかなというふうに思いました。
 もう一点目は,直接関係ないのかもしれないのですが,やはり大学入試がやたら複雑になり過ぎているというところ,特に個別の試験をたくさんやっているという私学とかですね,そういうのは,定員の縛りが大きいことによるところかと思います。こういったいろいろ読みづらい状況の中で,定員管理が厳しいと,私学は最後の最後までいろんな入試をして,本当に3月最後の日まで格闘することになると思うんですけれど,そういったところをちょっと緩やかに捉えて,結果として質が保障できていればいいんじゃないかというような緩やかな考え方にいくことによって,本当の意味でのよい入試になっていくのではないかなというふうに思います。
 以上です。ありがとうございます。
【三島座長】
 ありがとうございました。岡委員,どうぞ。
【岡委員】
 ありがとうございます。私は簡単に3つほどお話をさせていただきます。
 今回の共通テストについては,私もしっかり見ましたけど,非常によくできているんじゃないかなというふうに思いました。島田先生と同意見でございます。国大協は,この共通テストの重要性をずっと,センター試験から述べてきましたけど,今回しっかりできたというのがよかったなというふうに思っております。
 それから,CBTの導入についてですが,前回お話ししましたように,この導入に当たってはいろんな技術が必要なので,国大協もそれに協力をするというふうに申し上げておりますが,実際に,どのような負荷がかかるかということをしっかり理解せずに,CBTがいいんだという意見もたくさんあるような気はします。今回,このようにまとめていただいたのは大変有り難いところで,山本理事長にお願いですが,一番最後のページに,入試センターの運営には今後国の支援が必須だということを国大協は述べておりますように,CBT導入には国の支援が必須だということを明確に書いていただいた方がよろしいんじゃないかというふうに思いました。
 それから最後に,秋入学については非常に大学だけで話す話ではないということで,社会との話合いが必要だということはもう既に述べておりますけども,春と秋を大学院以外でやるということは,特殊な入学者以外は授業を2回やるということがございます。医学部では,社会人入学のときに2回講義をしたという経験もありまして,そういうことも十分に考えて議論されたらいいんじゃないかというふうに思います。
 以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございます。それでは,萩原委員,どうぞ。
【萩原委員】
 萩原です。まず,お礼という形になるんでしょうか,高等学校側としては,共通テストについてはおおむね順当に,大臣からもお話がありましたように,おおむね無事に終了することができたのではないかということで,これは大学関係者の方々,皆様に対して大変有り難いということで感謝の意を表したいと思います。
 また,今回,地震とかコロナに関して,大学側がかなり柔軟に対応していただけたということで,大変有り難いと思います。
 今後の大学入試としては,やはり今年度のこういう流れを元に,4年度以降についても考えていく必要があるのではないかと考えております。先ほどの話で,大学入試についての高校・大学等関係者間の協議体の設置という点が上がっておりますが,これは是非とも必要な部分であろうと思っております。ただ,これが短期的な部分,ですから来年度に向けてという部分と,中長期的な部分の両面があると思っているところです。
 ほかにも幾つかお話ししないといけない部分もありますが,今日のところは,川嶋先生のまとめていただいたこの内容が,これからのこの会の方向性を決めていくと感じたところです。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,清水委員,どうぞ。
【清水委員】
 時間もありませんので,ちょっと短く2点申し上げたいと思います。
 1点は,先ほど島田委員が言われたオンラインの今年度の活用状況等についての現状把握ということがありましたけれども,これは昨年秋以来,高等教育局からいろんなガイドラインというか案内が出ていますが,こういう状況になりましたので,各大学が今進行中のことも含めて,準拠すべきガイドライン,あるいは参照枠のような,そういうものが必要かなと思います。今年度どういう状況かということと併せて,少し長いスパンでどうするかという検討が必要かなと思いました。
 もう1点は,先ほど山本理事長から御丁寧に御説明いただいたCBTの件です。現在行われているリスニングの試験でさえ,いわゆるテープレコーダーを使っていた時代から長い時間をかけてようやく現在の完成形になり,驚異的な事故の少なさが実現されたというふうにも伺っていますので,理念とか期待とかが先行してしまいがちですけれども,やっぱりリアリティーを見ながら,少し慎重に考える面も大事かなということをちょっと思いました。
 あわせて,センター試験から新しくなった共通テストについては,受験者側から見ますと,試行調査との関係という形で注目された面もあると思いますので,少し時間がかかるかもしれませんけれども,各教科の出題意図等の実現状況について,また評価していただく,報告がいただければというふうに思いました。
 以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。それでは,斎木委員,どうぞ。
【斎木委員】
 斎木でございます。まず,川嶋副座長におかれましては,メモをおまとめいただきましてどうもありがとうございました。この資料の(3)及び(5)につきまして,一言発言をいたします。
 (3)のマル1「CBTの研究開発の加速」についてでありますが,山本理事長におかれまして,大変丁寧な御説明を頂きました。感謝申し上げます。とても理解が深まりました。CBTについては,その活用可能性について,引き続きしっかりと検討を深めていく必要があると考えております。その観点から,内外の取組事例の研究も重要と考えますが,例えば海外の共通テストで導入された事例や,将来的な導入に向けた研究等の動きがあるや否や,その辺りの情報についても御紹介いただければ幸いに存じます。
 また,日本の共通テストで直ちにCBTを実施導入することが困難である理由について,様々な技術的及びその他の課題を指摘していただくとともに,スライド9において,「参考」として,いわゆる「日本的試験文化」が大学入試のスタンダードとして社会的に定着していると御指摘された点を非常に興味深く伺いました。すなわち,大学入試の公平性を担保するためには,この「日本的試験文化」の特徴を備えた方式で実施すべきであるという考え方が広く深く浸透している中で,CBTを活用した試験による変化というものが,受験者を含めた社会全体に受け入れられるかどうかと疑問を投げかけておられる点です。この辺りは,正に大学入試の在り方の本質に関わる問題でもあり,結論ありきではなく,しっかりと議論し,また,関係者にも丁寧に説明をしていく必要があると強く考える次第です。
 それから,マル2でございますけれども,共通テスト出願の電子化について進めるべしという御提言でありました。私も大いに賛成をするところです。
 そして,マル3「オンライン面接等の推進」でございます。感染症耐性の向上に加え,地域格差や経済格差の緩和の観点からも,総合型や学校推薦型におけるオンライン面接等を積極的に推進する必要があることは,幾ら強調しても足りないと思います。他方,先ほどCBTに関する議論の中でも触れましたが,いわゆる「日本的試験文化」の下,極めて厳格な採点が求められる学力試験においては,公平性の観点からなかなか現時点においては高いハードルがあるように認識をしています。一部の中学入試や大学院入試の論述試験,資格検定試験等では前例があるようですけれども,学部の一般入試への導入については,将来の技術進歩をもにらみながらその可能性を追求しつつ,当面は,不正防止策を含め,内外の先行事例の分析,及びこれらを踏まえた研究を着実に実証していくことが必要ではないかと考えます。
 そして,(5)でございます。マル1で大学入試についての高校・大学関係者間の協議体の設置についての御提言がございました。大いに賛成するところであります。また,そこで取り扱われるテーマの1つとして,先般の会議で私からも御質問申し上げました高校会場の拡充の可否についても取り上げていただいています。本日の山本理事長の御説明の中で,高校会場の数についても御説明いただきまして,ありがとうございました。いろいろ地域格差の緩和の観点,共通テストの安定的で確実な実施,高校,大学関係者の負担などの観点も考慮をして,各県ごとに高校,大学関係者間で高校会場の設置状況,宿泊の発生状況,ニーズ等について実態把握の上,まずはそのレベルで協議をして,そしてその結果を,またこの新しく設置する協議体において取り上げ,更に検討を深めていくというようなことも適当ではないかと考えました。
 最後に1点,文部科学省におかれまして,大変包括的な力の籠もった資料,すなわち「総合的な英語力の育成・評価が求められる背景について」という資料を作成いただきましたこと,お礼申し上げます。大学教育において,そしてその後の社会人としての活躍を支えるものの1つが英語力であるということが改めて明らかになったと考えます。例えば,スライド35で,「3つのポリシーにおいて専門分野の能力に加え,社会との接続を意識し,汎用的能力の育成が重要」であるとしていますが,私も同感です。一人一人の持てる潜在的能力を最大限発揮させるとの観点から,一見直ちには英語力は必要でないと考えられるような学問分野に携わる大学生も含めて,すべからく総合的な英語力を身につけさせることが極めて重要と考えます。各大学にはしっかり取り組んでいただきたく,そして,3つのポリシーにおいて,この点を対外的に明らかにしていただく必要があることを改めて強調し,お願いしたいと思います。
 ありがとうございます。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。そろそろ定刻になりますけれども,最後,お一人,小林委員から手短にお話を頂いた後,大臣からお言葉を頂いてというふうに思います。では,小林委員,どうぞ。
【小林委員】
 ありがとうございます。川嶋委員の3番目のデジタル化の推進と英語についてちょっと意見を述べさせていただきます。
 デジタル化のCBTなんですけども,実際に医療系の大学では,医学部,薬学部,それから獣医学部ではCBTをやっておりまして,その後に臨床実習が始まるわけなので,CBTそのものは非常に慣れているというか,身近なものであって,実際このCBTは非常に有効だと思います。先行事例もありますので,是非CBTを活用していただければと思っております。
 その中で,オンライン面接なんですけども,実はうちも始めたところはあるんですけども,港区にある薬学部では学校推薦型選抜でオンライン面接ができました。ところが,相模原市にあるキャンパスでは,もともと敷設されている回線が非常に細いんです。ですから,オンライン面接が事実上不可能だということが分かって,今,回線を太くしてくれないかベンダーと交渉しているんですけど,そういうインフラの問題点もオンライン面接にはあるということをまず御理解いただければと思います。
 それから英語については,今日の資料3の68ページに,もう既に私立大学で英語で必須選択で93.5%も課題として受験科目に入っておりますので,英語は私立大学では遅れているとか採用してないというわけではないし,私も入試での英語の必須化について反対しているわけではございませんので,そう思われているとしたら,誤解があると思います。芝井先生とはちょっと意見は違うんですけども,実際,英語の能力が一番その後の能力に関係すると, IRの分析結果からも出ておりまして,1年生の後期の英語の成績がその後の成績全部にかかわってくるというのは,例えば医学部でもそういう結果が出ていまして,とても重要な科目であるということは確かであります。望むらくは,柴田委員が前回お話しされているように,国家試験に英語が出題されていれば皆さんもっと頑張って在学中も英語をやっていただけると思います。
 以上です。どうも失礼します。
【三島座長】
 ありがとうございました。
 それでは,ちょっと時間を過ぎましたけれども,最後に萩生田大臣からお言葉を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
【萩生田文部科学大臣】
 皆さん,本日もそれぞれのお立場から率直な御意見を頂きまして,ありがとうございました。また,山本理事長,川嶋先生におかれては,御多忙中にペーパーを御整理いただき,感謝を申し上げたいと思います。
 いろいろ課題が浮き彫りになってきたと思います。先ほど多くの先生も触れられましたけど,確かに今年は特別なコロナ禍での受験でありましたので,日程的にもこういうことをやりましたけれども,では,来年はもう日常に戻れるのかと言われれば,ワクチンの接種がまだ始まったばかりであります。18歳,19歳の子たちが打つのは秋口以降になってしまう可能性もありますし,来年の受験のときにコロナがどういうふうに落ち着いているかというのも見えない中でありますので,決して今回限りと宣言するのではなくて,今回の取組のよさというものは,しっかりレガシーとして残していきたいなと思っています。2週間後に追試験をやるのがいいのか,従来の1週間後にやるのがいいのか,その後の大学のそれぞれの個別試験の日程を考えると,実は2週間というのはちょっと受験生にとってはリスキーな時間でもありました。ただ,今年は逆に,各大学もその二次試験などをずらしていただいておりますので,今年はよかったのですが,来年どうするのかということは,また省内でもいろいろ考えていきたいと思います。本当に試験場として開くかどうかはともかくとして,やっぱり47都道府県で開ける環境をつくっておくことは極めて重要なのではないかなと思っておりますので,追試験の在り方についても慎重に対応していきたいなと思っています。
 本来でしたら,受験が始まった後に受験の選抜方法を変えるというのは,受験生にとって望ましくないのですけれど,コロナ禍の中で,各大学が様々な工夫をしていただいていることには感謝を申し上げたいと思います。他方,感謝をしながらも,実は私,担当に,大学が本当に考え抜いた結果そういう判断に至ったのかどうかを確認するようにということを申し上げております。すなわち,個別試験をやめて,共通テストの成績や高校の調査書だけで合否を判断するということになりますと,共通テストに満足な結果を出せた受験生にとってはプラスですけど,これから個別試験で逆転を目指して頑張っていた子たちにとっては,そのチャンスを奪われることにもなるわけですから,そこにもう少し一手間かけることはできないのだろうかということを省内では議論しました。オンライン面接などを加えて評価の対象にするとか,あるいは小論文などを送らせて,これは予備校の先生に手伝ってもらって書いてもらうということも考えられますので,その提出した小論文に対して逆に質問するとか,何かもう一手間あってもよかったのではないかなという気がします。そこは,先ほど両角先生からもお話がありましたように,特に私学などは定員を埋めることが優先してしまっているのではないか,という声もあります。だとするならば,本来の受験の在り方と違ったゆがんだ形が生まれてしまっていると思いますので,こんな点も,省としてしっかり考えていきたいなと思っているところでございます。
 多くの先生から,CBTについての御懸念や期待の声がございました。既に医学系ではもう数年にわたって運用しているわけですから,そういう実績も踏まえて,あるいはこれからのDX社会を考えると,CBTは考えないというわけにはいかないと思います。果たしてそれが正しい評価につながるかということを,センターを中心に深く考えていただきたいなと思っていまして,すぐに,来年からCBTの導入に踏み切りますなんていうことにはなかなかならないと思いますので,そこはスモールステップでしっかり検証しながら,有効な科目が何なのか,全ての科目に対応できるのか,こういうことを考えていきたいと思います。あわせて,こういう世の中になったので,電子出願というのは,これはもう避けて通れないと思っていますので,こちらはこちらで前向きにしっかり頑張っていきたいなと思っています。
 今年の4月から,小学校,中学校の日本の学校も変わります。おかげさまで,小学校35人という少人数に変えることができましたし,この延長で中学も是非見直していきたいと思っています。また1人1台の端末という環境が整いました。こういったものを使って,今までの概念とは違う学校の教育が始まるのだと思います。したがって,今省内で深く議論していますのは,教員養成の仕組みそのものをやっぱりしっかり見直していかないと,高大接続で英語4技能がしっかり反映できているかできていないかの以前で,せっかく小学校から英語を義務教育に入れても,小中の段階でしっかり教えていかないとそこへつながっていかないと思います。
 実は,私,就任当初は,例えば小学校の高学年の理科の授業というのは,全国にフォーカスを引いて見渡しますと,理科でさえ専科は4割程度です。すなわち,担任の先生が小学校6年生の理科を教えています。もしかしたらすごく理科が苦手な先生が理科を教えていて,そこから日本を支える科学者を出せと言われても,なかなか上手くいかないのかなと思います。したがって,少人数学級とともに,専科の先生方を増やしていくということもしていきたいと思います。算数についても,やっぱり5,6年生になると専門性というのは必要だと思いますし,特に英語に関しては,英語を話せない英語の先生に教わった我々は英語が話せなくなるという,こういうことになるのだと思います。文法や単語はしっかり覚えて受験には勝ち上がってきても,結局,英語4技能がしっかり身についてないということになるので,ALTという補助教員を全国に配置していますけど,これにも限界があると思います。
 実は,私の提案で外務省の独立行政法人である国際交流基金で行っている「日本語パートナーズ」という,アジア圏に日本語を教えるティーチャーを派遣する制度を活用し,将来,中学校などで英語教師を目指す学生の方に一定枠を頂いて,フィリピンなどの英語圏に,今年から試験的に派遣をしてみようと思っています。こういうことがうまくいくのだとすれは,例えば将来,中学校で英語の教員を目指す先生に関しては,慌てて4年で卒業しなくてもいいのではないでしょうか。1年間,海外での,英語圏での研修というものを逆に国が応援してあげて,ネイティブスピーキングができる先生たちが日本中に散らばってくれることで,4技能の1つ,2つ埋めることができるじゃないかと思っています。この令和の時代,新しくフェーズが変わり,コロナでいろんなことを我慢したり苦労したりしたわけですから,今回の苦労や皆さんへの大変な思いを無駄にしないように,次の時代の新しい教育の形というのをしっかりつくっていきたいなと,そんなふうに思っています。
 是非,限られた時間でありますけれども,国民の皆さんが納得できるような受験制度の構築に向けて,引き続き頑張ってまいりたいと思いますので,どうぞ忌たんのない先生方の引き続きの御指導,御支援,心からお願い申し上げたいと思います。
 以上です。
【三島座長】
 大臣,どうもありがとうございました。
 それでは,今日はちょっと時間オーバーしましたけども,ここで閉会としたいですが,まず事務局から何か,次回等の御報告があれば。
【武藤高等教育局企画官】
 第22回の会議,3月4日木曜日に行いたいと思いますが,具体的な時間は調整の上で、改めて御連絡いたします。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,本日の大学の入試のあり方に関する検討会議,以上とさせていただきます。御協力どうもありがとうございました。
 

―― 了 ――

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