大学入試のあり方に関する検討会議(第20回)議事録

1.日時

令和2年12月22日(火曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省省議室

3.議題

  1. 討議 整理しておくべき事項について(英語4技能評価のあり方)
  2. その他

4.出席者

委員

(有識者委員)三島座長、川嶋座長代理、益戸座長代理、斎木委員、宍戸委員、島田委員、清水委員、末冨委員、両角委員、渡部委員
(団体代表委員)岡委員、小林委員、芝井委員、柴田委員、萩原委員、牧田委員、吉田委員
(オブザーバー)山本大学入試センター理事長

文部科学省

萩生田文部科学大臣、鰐淵文部科学大臣政務官、藤原文部科学事務次官、伯井高等教育局長、森田文部科学戦略官、角田文部科学戦略官、西田大学振興課長 他

5.議事録

【三島座長】
 委員の皆様,おはようございます。定刻となりましたので,ただいまから第20回の大学入試のあり方に関する検討会議を開催いたします。お忙しい中ご参加いただきまして,ありがとうございます。
 今回も新型コロナウイルスの感染拡大防止のため,ウェブ会議方式での開催となってございます。音声などに不都合がございませんでしょうか。先ほどからテストをしているようですので大丈夫かと思いますが,何かございましたら,御発言ください。
 本日も,傍聴者,報道関係者の入室は認めず,ライブ配信での公開とし,後日議事録をホームページに掲載することとしたいと思いますが,よろしいでしょうか。
 それでは,よろしくお願いいたします。
 では,事務局から御報告があれば,お願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 本日,荒瀬委員が御欠席,それから,吉田委員が途中で御退席の可能性がございます。
 前回までと同様に,聞き取りやすいよう,はっきりと御発言をお願いいたします。資料参照の際,該当箇所をお示しいただければ,有り難く存じます。ハウリングを避けるために,御発言希望の際,挙手ボタンをお願いいたします。また,指名後,ミュートを解除してから発言して,発言後はミュートに戻していただきますようお願いします。
 以上でございます。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,議事に先立ちまして,萩生田文部科学省から御挨拶を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【萩生田文部科学大臣】
 皆さん,おはようございます。本日もお忙しい中,大学入試のあり方に関する検討会議に御出席いただき,ありがとうございます。1月から始まった本検討会議もはや20回目となりました。コロナ禍の下でも精力的な御検討をいただいておりますことに改めて深く感謝を申し上げます。
 最終的な取りまとめは来春の令和3年度入試の実施状況を踏まえてからとなりますが,本会議の検討項目も多岐にわたっており,そろそろ一つ一つの項目について詰めた議論が必要な時期に入ってきたように思います。本日は,これまでの御議論や実態調査の結果等を踏まえて,英語4技能評価の在り方に絞って議論を深めていただくことになっていると聞いております。本日も活発な議論を期待しております。どうぞよろしくお願いいたします。
【三島座長】
 大臣,どうもありがとうございました。
 それでは,今日は,今ございましたように,議事次第にございますように,英語4技能評価の在り方ということを検討いたしますけれども,その前に,末冨委員から「多様な背景を持った学生の受入れへの配慮」についての資料が配付されてございます。これを10分程度ほどで委員から御説明を頂いて,10分ほど意見交換の時間を設けたいと思います。
 ということで,末冨委員,どうぞよろしくお願いいたします。
【末冨委員】
 よろしくお願いいたします。お時間を頂戴し,ありがとうございます。日本大学の末冨です。本日は,意見書として,「学修者本位の高大接続政策について(多様な背景を持った学生の受入れへの配慮)」を皆様に説明させていただきます。
 説明の前に,そもそもこの意見書を提出するに至ったのは,4月14日第5回会議における意見発表の中で,大学入試の公共性の回復のためには,受験生の経済・社会的格差や地理的格差にも対応したエクイティ,公正の視点も重要であることを提言したためです。川嶋座長代理が第16回会議でも整理くださったように,本会議の重要な論点の1つであり,提言に盛り込まれるべき事項を提案させていただくべく,こちらのペーパーを準備しました。
 以下,駆け足にはなりますが,資料を説明させていただきます。
 1,検討の前提となる政策の流れ。我が国は「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約」を1979年6月に批准し,2012年9月に教育の無償化条項の留保を撤回しました。民主党政権,その後の自公連立政権においても,この大きな政策の流れを維持・加速し,高等教育の修学支援新制度などの充実を図ってきました。
 (2),中教審答申,高大接続答申でも,多様な力を多様な方法で公正に評価し,選抜するという意識に立たなければならないとしています。この答申の考え方を踏まえ,大学入学者選抜実施要項においては,「各大学は,年齢,性別,国籍,家庭環境等に関して多様な背景を持った学生の受入れに配慮する」との文言が基本方針として盛り込まれています。各大学の施策の前提となる国の政策が,多様な背景の学生の受入れに逆行することがあってはなりません。
 (3),中教審グランドデザイン答申でも,SDGsの考え方を引用した上で,多様な価値観が集まるキャンパスになることが必要であるとしています。SDGsについては,本会議においては斎木委員からも御指摘があった事項でもあり,我が国の国際的役割の重さにも鑑み,一層積極的に推進されるべきであると言えましょう。
 (4),(1)から(3)のような考え方が示されていたにもかかわらず,英語4技能評価における資格検定試験の活用において,地理的・経済的事情への配慮や障害を持つ受験生への配慮が決定的に欠けていたことは,政策の一貫性を著しく損なうものであり,高等教育の修学支援新制度の効果を一部相殺しかねないものでした。昨年11月に萩生田文部科学大臣が行われた延期の御決断は適切であったと評価できます。他方,このような問題の大きい政策が課題を先送りしながらぎりぎりのタイミングまで実行に移されようとしてきたこと,その結果,受験生に多大な混乱を引き起こしたことについては,真摯な反省と再発防止策が本検討会議の提言に盛り込まれるべきであると考えます。民間資格・検定試験利用に際しての利益相反ルール等の整備もずさんなまま,国民の不信を招く改革が進行してきた経緯も鑑み,受験生と国民の負託と信頼に応えるためには,政府として遵守すべき規律・ルールを法制に位置づけることも必要であると考えます。
 (5),本検討会議の提言をまとめるに当たっては,丸1,地理的・経済的格差の問題が広く社会に認識されたこと,丸2,経済的な状況や居住地域,障害の有無等にかかわらず,安心して試験を受けられる配慮及びその他大学入試の望ましい在り方が,英語4技能試験や記述式問題とは独立した検討事項として大臣から示されたことの意義・重要性も踏まえた上で,単に英語4技能評価に関わる問題への対応にとどまらず,大学入学者選抜全体における格差の緩和や多様な背景を持った学生の受入れの推進について,無償制導入等の上位政策目標と整合的な施策を打ち出すべきであると考えます。とりわけ,コロナ禍が長期化する中で,受験生の将来不安を緩和するためにも,今検討しておくべき事項であると考えます。
 2,施策の方向性。(1)経済的困窮層の大学進学率は,既に子供の貧困対策指標になっておりますが,依然として低い状況です。文部科学省の高等教育の修学支援新制度の充実などは高く評価されるべきですが,高校在学中の支援あるいは大学入学に至るプロセスへの支援は相対的に手薄なままで,改善が図られる必要があります。
 (2),進学率の地域格差についても,首位と最下位との間では著しい差があり,地方創生の観点からもこうした状況を改善する方向,また,大学進学率の地域間格差がこれ以上拡大しないような配慮を行うべきです。
 (3),進学率の男女格差については,依然,男女差が大きい県もございます。選抜性の高い大学や理系の学部学科において著しく低い例も散見され,是正のための政策が必要です。
 (4),日本語指導が必要な生徒の大学進学率は,やはり著しく低い状況であり,その改善を図る必要があります。
 (5),障害のある学生の高等教育機関在籍者数については右肩上がりで増加しているところですが,大学入試センターでの合理的配慮の積極的な対応,それとともに,各大学での個別入試における対応にはばらつきもあり,やはり改善の必要があります。
 (6),そもそも多様な背景を持った受験生の大学への受入れ状況については,系統的な実態調査が文部科学省として実施されていません。昨年6月に改正されました子どもの貧困対策法・大綱では,生活保護世帯からの大学等進学率など,困窮層からの進学率が明記され,政府指標として公表されています。大学入学者の性別・エスニシティ,出身地域や障害を持つ受験生の受入れ状況に関しては,イギリス政府では調査と情報開示を実施しています。大学における学習者の多様性の確保や調査・情報開示の在り方については,他の先進国の例に学びつつ,日本政府としても本格的に取り組む必要があります。
 3,講じるべき施策。(1)経済格差への対応,丸1,今般の実態調査の結果,多くの優れた取組事例が明らかになりました。これらの横展開を図る観点から,日本学生支援機構等において取組を事例としてまとめ毎年公表するとともに,何らかの財政措置を含む効果的なインセンティブを設けてはどうでしょうか。
 丸2,今回問題になった大学入試における英語試験の活用以外にも,高校教育においては,検定試験や模擬試験が活用されています。この実態を踏まえ,生活保護制度あるいは高校生等奨学給付金に検定試験等の受検料を対象経費として追加してはどうでしょうか。それに先立つ実態調査も必要です。
 丸3,先進事例である東京都の受験生チャレンジ支援貸付を踏まえ,受験料や受験準備コストに貸付支援を行う都道府県に対し,地財措置等の支援を行ってはいかがでしょうか。
 丸4,今回の実態調査の結果,大学入学者選抜で広く活用されていることが明らかになった資格・検定試験の実施団体に対し,低所得層向けに受検料を低減させる仕組みの導入を要請してはどうでしょうか。
 丸5,多面的評価の協力者会議の検討も踏まえ,入学者選抜実施要項においては,総合型,学校推薦型選抜において入学前の多様な経験を評価する際には,経済的事情等に配慮して行うべき旨を明記してはどうでしょうか。
 丸6,いわゆる医学部入試報告において示された,推薦入試・AO入試等の地域特別枠等の例に倣い,受験生の取扱いの差異に関する基本的な考え方は,大学入学者選抜実施要項においても明記されるべきです。その際,経済的事情や国籍などの要素を加えることも考えてはいかがでしょうか。
 (2),進学率の地域間格差への対応。総合型,学校推薦型の選抜のオンライン化については,積極的な導入は求めるべきではないでしょうか。同様に,英語4技能試験を含め,各種検定団体の実施団体に対しても,オンラインシステムの導入を要請してはいかがでしょうか。
 丸3,端末や通信環境を有していない生徒がオンライン面接を受検できるよう,GIGAスクール構想を高校段階に拡大させるとともに,都道府県知事及び教育委員会に対し,1人1台の端末整備を強く要請してはどうでしょうか。既に3次補正で低所得世帯高校生への補助も盛り込まれていますが,配備を急ぐべきであると考えます。
 丸4,入学者選抜実施要項「基本方針」における配慮の対象を広げ,「各大学は,年齢,性別や性的指向・性自認,障害の有無,国籍,家庭環境,居住地域等に関して多様な背景を持った学生の受入れに配慮する」と明記することを検討してはどうでしょうか。
 丸5は再掲となりますので,先に進みます。
 (3)進学率の男女格差への対応。大学の社会に対する説明責任を高めるとともに,高等教育段階における男女共同参画を進め,多様性を基盤とした創造的なキャンパスを実現する観点から,入学者に占める男女比率について法令上の情報公開の対象とすることを検討してはどうでしょうか。
 丸2,医学部入学者報告の記述では,性別については,一律に取扱いの差異を設けることはできないものと考えられるとしていますが,例えば理系への女性の進学者数上昇などの女性の活躍の推進といった政策目標との整合も踏まえ,取扱いの変更を検討するべきではないでしょうか。
 (4)外国籍・日本語指導が必要な生徒の大学等進学率。外国籍・日本語指導が必要な生徒に対しては,早い段階からの情報提供や進学意欲を高める支援が有効であり,取組を進めるべきであると考えます。
 丸2は再掲ですので,先に進みます。
 (5)障害のある学生の大学進学支援。合理的配慮の提供に当たり,フォームが大学によって異なり,保護者や受験生の負担になっているとの声があります。各大学団体でフォームの標準化を図られてはいかがでしょうか。以下丸2,3の支援も重要であると考えます。
ここまで述べた講じるべき施策につきましては,選抜性の高い大学と低い大学の双方の実態にお詳しい両角委員の御意見も賜ることができれば幸いです。
では,4に進みます。実態調査の継続と関連資料の充実。(1),今般実施した大学入試実態調査については,定期的に行うこととし,優れた取組事例を広く公表してはいかがでしょうか。
 (2),高校在学中から大学入学者選抜,大学入学後の措置も含め,格差の解消に資する既存施策を一覧できる資料を作成し,本検討会議に提供いただくことが有益であるとも考えます。
 5,その他の重要事項。(1),機会を改めて意見を整理・表明したいと考えていますが,フィージビリティや専門家・当事者の意見を軽視し,上位政策との整合性を欠いた意思決定が進められようとしていたことは,文部科学省全体として重く受け止める必要があります。高大接続改革について,同じ過ちを繰り返さぬことはもとより,教育政策全般において今回の混乱を他山の石とし,局課に横串を刺して意思決定プロセスの改善を図ることが求められます。教育ビッグデータの活用についての報道もありますが,目的を見失い,専門家・当事者の意見を軽視してしまう結果,国民の不信につながる,同じてつを踏むことへの懸念もございます。文部科学省の組織としての学習能力が問われており,大臣の強いリーダーシップと文部科学省としての識見及び改善能力に期待いたします。
 (2),困窮層ほど低学年段階から授業が分からなくなっている比率が高くなっているというエビデンスが示されています。大学入試段階での支援策とは別に,教育政策全体を通じて取り組むべき課題であり,義務教育段階における要保護・準要保護加配教員の定数化を含めた新たな取組も必要です。小学校35人学級という40年ぶりの義務標準法改正の中で財務省からも提示された論点であり,政府を挙げて取り組まれるべきであると考えます。
 (3),本検討会議の所掌を超える事柄ではありますが,高校入学者選抜を巡る諸課題についても,大学入試で明らかになった様々な課題を参考しつつ,整理・検討されることを期待します。
 以上です。
【三島座長】
 末冨委員,どうもありがとうございました。歴史的な背景も含めて大変適切におまとめいただいて,どこに問題点があるかということ,あるいはそれに対する提案,どういうふうにしたらいいかという御提案まで頂いたと思います。
 それでは,ただいまの末冨委員の御説明に対して,御質問,御意見がございましたら,挙手をしていただければと思います。それではまず,益戸副座長,お願いいたします。
【益戸委員】
 益戸でございます。どうもありがとうございます。末冨委員の御意見の発表に関する私の意見を述べさせていただきたいと思います。
まず,多様な背景を持った学生の受入れについて,現在教育再生実行会議で議論されている入学時期の弾力化や9月入学への対応についても,目配りをしていく必要があると考えます。せっかく入学時期の弾力化を図るのであれば,多様な学生の受入れを促進する方向で,通常の一般試験とは違うタイプの選抜方法でやるべきで,例えば総合型選抜や社会人選抜,留学生入試といった特別枠を中心に行うのが適当ではないかと想像をいたしました。
 いずれにしましても,教育再生実行会議の検討も念頭に置きながら,入学時期の弾力化に対応した入試の在り方についての基本的な考え方も本検討会議の提言に盛り込む必要があるのではないでしょうか。
 以上でございます。
【三島座長】
 どうもありがとうございます。それでは,2人目の副座長として,川嶋委員,どうぞお願いいたします。
【川嶋委員】
 ありがとうございます。川嶋です。末冨委員,ありがとうございました。簡単に私の所感を述べさせていただきます。
 本日末冨委員から御提案いただいた具体的な施策等は,ある意味,受験機会の平等化ということで,まずスタートラインを一にするような形で様々な支援を行ってはどうかという御提案でございました。
 ただ,それ以上に重要な御指摘は,最後のところに書かれておりました5ポツの(2)のところ,受験のためのスタートラインは同じになっても,そこまでに至る過程で様々な格差が累積されているという研究が非常に多く,日本だけではなく諸外国でも行われております。つまり,学力だけではなくて,モチベーションデバイドと言われるような,意欲とか動機も家庭背景によってかなり差があるのではないかと言われています。そういう点で,今後,機会の平等と同時に,ここの最後のところで御指摘されている,累積されてきた格差に対して,例えば入試では対応すればいいのかということを検討する必要もあるかもしれません。
 それから,最後に様々な支援策についての情報を提供していただきたいというお話もありましたけれども,本会議に提供するだけではなくて,やはり一覧性を持った形でどういう支援策があるのかという公表もする,そういう仕組みも必要ではないかと思います。
 以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。それでは続いて,柴田委員,どうぞ。
【柴田委員】
 福岡県立大学の柴田でございます。末冨先生,大変コンプリヘンシブな総括,提言を頂き,ありがとうございます。
 1つ,御指摘がございましたけれども,今回,大学の現場にいる者といたしましては,高等教育の修学支援新制度というのは,これは画期的な制度でございまして,入学した後のケアというのはこれでかなりのものがカバーできるのではないかと思うんですけれども,そもそもただいまも川嶋委員が御指摘になりました,大学を志願するというモチベーションをどういう具合に維持するかというのは大変大きな問題でございます。大学といたしましては,そういう間口といいますか,入り口のところでいろいろな枠をつくるというのは,先日の調査によりますと,様々な大学で取り入れられている事例がございます。大変参考になります。
 ただし,私立大学につきましては,建学の精神等もございましてかなり明確に具体的な施策ができておりますし,それから,我々の所属する公立大学についても,地域枠等を十分配慮している大学もございます。そういう具合に,大学の種別あるいは分野ごとにそういうものの実態というもの,この間の大学に対するアンケートである程度把握できるところもあると思いますので,できましたら,そういう集計がもし可能であれば,お示しいただければ,今後の議論につながっていくのではないかと思っている次第でございます。
 今回のこのあり方検討会議,当初は記述式と英語が発端になったわけでございますけれども,改めてこういう具合に,多様な背景を持ったお子さん方を大学でどういう具合に教育する機会をつくるのかという非常に大きな問題に発展したというのは,私としては大変画期的なことではないかと思っております。その意味で,この末冨先生のおまとめになられたものは今後の指針になるのではないかと思っております。
 以上でございます。先ほどの調査の件,ひとつ御検討いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【三島座長】
 ありがとうございました。今の御意見ですが,末冨委員,何かコメントございますか。
【末冨委員】
 柴田委員の御指摘も大変重要なものであり,実は特に困窮層の受験機会については,各家庭や支援団体が大学の情報を探すのに非常に苦慮しているという実態がございますので,今おっしゃったようなことが実現できれば,意欲を持って進学できる受験生が,特に困窮世帯からは増えてくるかなと存じます。貴重な御指摘ありがとうございます。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは次,吉田委員,どうぞ。
【吉田委員】
 ありがとうございます。末冨委員のすばらしいレポート,ありがとうございます。
 私,1つだけ気になるのですけれども,今の段階でここまでのことが全部また何か振り返ってきたような気がするのですけれども,これだけのことを3月までにやるというのは不可能ではないかなと。そういう意味では,今回のこの目的というのは,4技能試験の問題を今日特にやられるということですけれども,末冨委員の資料の2ページの(4)などで,経済的な事情とか地理的事情という問題を提言されていると思います。民間検定試験業者等の利益相反等の問題等も記入されているし,地理的・経済的格差の問題を強く訴えられているわけですけれども,失礼ですけれども,それでしたら,各大学が今,推薦入試等で英語4技能試験等を使われていることに対しては,地域的格差とか経済的問題というのは関わらないのか。そして,そういう意味でも,多様な学生の受入れという部分においても,やはり私は各大学の3つのポリシーに基づくきちっとした方向性で各大学はやられているのではないかなと。この大学入学共通テストに関しては,今回,英語の4技能の試験の問題がこのようになったということで,これをどういうふうに公平性でやっていくのかという部分なのではないかと思っております。
 4ページの3の(1)の丸2で,今回問題になった大学入試における英語試験の活用以外にも,高等学校教育においては学科の別を問わず広く検定試験や模擬試験が教育活動の一環として活用されていると。これは本当に実際されているわけですけれども,ここにおいては,公立学校等においては,教育委員会等が支払っていただいたりとか,そういう経済的な問題というのはそれぞれ解決していると思っています。ですから,そういう中で,やはりここまで全て広げても,私は今回,3月までにこれを全部やるのは無理なのではないかなと。それよりも英語4技能試験がそもそも論として,どうして私は大学入学共通テストでは不公平だとか何とかいう問題が出て,推薦入試等では今行われているのかということについての議論も必要なのではないかと思ってあえて意見させていただきました。
 ありがとうございました。
【三島座長】
 御意見ありがとうございました。それでは続いて,両角委員,どうぞ。
【両角委員】
 両角です。ありがとうございます。末冨先生,大変すばらしいまとめをありがとうございました。政策の流れから今後の方向性とか,あと,具体的な施策に至るところまで大変整理していただいて,私もとても理解が深まりました。
 基本的な方向性は,私は賛成というか支持します。先ほど川嶋委員,柴田委員もおっしゃったように,まずは受験機会の平等というスタートラインのところをできるだけ格差がないようにというところなんですが,我々の研究分野で見ていましても,やっぱりそれ以前のところで既に格差が広がってきている。だから,受験のときだけを配慮してあげればいいというわけではないということで,今回入試の会議ではあるんですが,それに至る以前のところの検討も必要だというメッセージはとても大事なことだなと思って聴いておりました。
 また,やっぱり本人の努力が及ばないこと,例えばどういう家庭に生まれたかとか,どういう地域に生まれたかといったことで将来の選択の幅が狭くなるということは,本人にとってだけではなく,社会にとっても大きな損失だと私も考えます。格差の問題というと,何か困っている人がいて,その人を助けてあげなければいけないという発想が強いかと思うんですけれども,そうではなくて,そうやって多様性を確保することが社会としての公正,あるいは社会としての発展を支えていくんだというような考え方がもう少し広がっていくといいなと思って見ておりました。
 あと,先ほどから出ています,いろいろな情報の一覧性とかいったことも私もとても大事だと思っています。今回は例えば障害を持った方から見て分かりにくいということなんですが,今回の実態調査をやってみても改めて感じたのですが,日本の大学入試というのはやはりかなり複雑で,高校の先生からも,毎年毎年,入試の内容が変わって何が何だかよく分からないという声をよく聞きます。そういう意味でも,本当に必要な情報が,一覧性があって,しかも分かりやすいものが提供されていくという仕組みをつくるのはとても大切なことではないかなと思いました。
 以上,感想です。ありがとうございます。
【三島座長】
 御意見ありがとうございました。それでは,ちょっと時間が押しておりますけれども,今の末冨委員の資料について,あと3人手が挙がっておりますので,なるべく手短にお願いいたします。あと3人で一応この件は終わりにしたいと思います。それでは,芝井委員,どうぞ。
【芝井委員】
 ありがとうございます。まず末冨先生,ありがとうございます。大変頭の中の整理ができることになりました。
 それで,手短なので,4つほど考えていたんですけれども,1つだけ質問させてください。1つは,いわゆるソーシャルエコノミックステータスが大学入試に与える影響がすごく大きいということはよく言われていることですし,今日のお話の中でも,そこをどういうふうに解消していくのかというのは,多様で公平な入試のことを考えるときにすごく大事だということかと思うんですが,この問題というのは,恐らく根っこは文化の問題と深く関わっていて,経済的支援をしたらそれが解消されるということではないということだけ申し上げておきたいと思います。ただし,じゃ,経済的支援をしなくていい,経済だけじゃなくて様々な支援をしなくていいということでは全然ないので,方向は大賛成なんですが,なかなか大きな課題で,時間のかかることだと思っています。それが1つ意見です。
 それから,もう一つ是非申し上げたいのは,本当はこれ,大学だけじゃなくて大学院まで考えないといけない問題だろうと思っています。例えば最後の調査の問題でいうと,私個人は実は,文部科学省は高等教育に関してある種の専門家集団としての役割を果たしてほしいんですけれども,現状の官吏の任用という観点で言いますと,必ずしも行政というのはそういうスタンスではない。一定の政策はお出しになるけれども,それが教育全体に対して一定の専門的意見を外部の専門家集団と一緒に取り組んでやるような状況が生まれているとはあんまり思っていません。それは御本人の問題ではなくて,正にマスターだとかドクターという形で教育を,あるいは高等教育を専門にされる方が行政の中にすごく少ないという構造になっているのではないかと思います。そこは是非何かの形で,これは文部科学省だけではないと思いますけれども,行政の方でも本当は対応していただかないといけない大きな問題だと思っています。
 その2つだけ申し上げます。以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。それでは続いて,斎木委員,どうぞ。
【斎木委員】
 斎木でございます。末冨委員におかれては,御意見,御提言をおまとめいただきまして,どうもありがとうございました。このうち,地域間格差への対応について,特に試験会場の問題に関して,1点申し上げます。
 先日事務局から御報告がありました実態調査の結果においても,共通テストの「受験のために何日かホテルに宿泊を余儀なくされる生徒が何百人もいる」とか,会場確保のために「公立の小中高で実施すべき」であるといった声がございました。この点に関連して,先日は山本理事長にも御説明いただきましたが,山本理事長の御説明によれば,現在でも高校会場で実施している例はあるということでした。地域間の格差を少しでも緩和する観点からは,地域によってはこうした高校会場を増やす可能性について検討することが有益ではないかと考えております。
 もちろんいろいろな意味でコストのかかる話となりますので,簡単に結論が出る問題ではないと思いますけれども,現在の高校会場設置の具体的状況,特に各地域において,実際に宿泊を余儀なくされる事例がどの程度発生しているのか,諸外国において共通試験はどのような会場で実施されているのか等につきまして,次回以降御報告をいただければ,今後の検討を進める上で参考になると考えます。よろしくお願いいたします。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。それでは,最後,小林委員,どうぞ。
【小林委員】
 ありがとうございます。今日のお話は,次回以降,恐らくその他大学入試の望ましい在り方とか公平性のところでもうちょっとじっくり議論すればいいと思います。今日はせっかく川嶋委員が整理すべき事柄について,英語の4技能評価の在り方ということを中心に持ってこられていますので,今日の議論の中で4ページ目ですかね,ですから,PDFの8ページ目の講じるべき施策の中の4番目,英語4技能を含め,今回の実態調査の結果というところで,実施団体に対して低所得者向けに受検料を低減される仕組みの導入を要請してはどうかと,ここだけ切り出して一緒に議論させていただければと思います。吉田先生と同じ意見です。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。
 それでは,議事の1に入ります。これまでの委員の皆さんや外部有識者の意見発表,ウェブ意見募集,大学への実態調査の経過も踏まえつつ,英語4技能評価について整理しておくべき事項について議論していただきたいということでございます。
 それでは,川嶋委員,まず御説明をどうぞよろしくお願いいたします。
【川嶋委員】
 川嶋でございます。先般は,記述式の論点・課題等を整理させていただきましたが,今回は英語4技能について,今後取りまとめを行うに当たって検討すべき論点・課題等を整理させていただきましたので,本日時間を頂いて御説明させていただきたいと思います。またそれぞれについては,後ほど委員の方々の御意見をお伺いしたいと思っております。
 まず最初に,英語4技能の育成・評価の意義についての確認が必要ではないかということでございます。下に参考として小さな字で書いてございますけれども,センター試験では,英語というのは最も受験生が多いということ,英語というのは変わることなく非常に重視されているということ。また,同じくセンター試験の英語のリスニングの受験生も97%以上いるということで,受験では英語というのは非常に重要な役割を占めていると。また,実態調査でも明らかになっておりますけれども,個別の入試においても一般選抜では英語が一番多く課される科目で,必須プラス選択を合わせますと9割近くの大学が課しているということで,大学入試においては非常に重要な位置を占めているということです。
 他方,参考2にありますように,大学を出てから社会でどういう能力が求められているかということについても,ある調査によりますと,今後のビジネスパーソンにとって重要な知識・スキルの最初に出てくるのがやはり英語である。8割以上の企業がそのように回答しているということ。また,企業・団体が目標とする英語スキルのとしても1位は,英語できちんと会議でディスカッションできる能力も重要視されているということでございます。
 また,参考3に書かれておりますように,高等学校の英語教育についても,昭和35年告示の学習指導要領以来,4技能を総合的に育成することを明示しております。この4技能という表現については,先般,渡部委員の方から,分割できないというかホリスティックな能力だという御意見もございましたけれども,教育の中では,4つの技能をきちんと総合的に育成することがかなり長期にわたって今日まで求められているということでございます。
 これらのことを踏まえ,高校における英語教育の実態が,学習指導要領の今お話ししました狙いと違いまして,大学入試の影響を受けて高校の英語教育が学習指導要領の狙いどおり実施されていないのではないかという御意見もございますが,これについても御意見を伺いたいと思っております。
 (2)英語資格・検定試験活用の意義でございます。これも本会議の主要なテーマの1つになっております。受験生から見ますと,これは吉田委員等からも御意見があったかと思いますが,英語4技能の検定試験等を目指して頑張ってきた受験生の努力の成果が入試できちんと活用されるのは非常に重要だという御意見もございました。
 また他方,大学側の視点に立ちますと,先般報告がありました実態調査では,とりわけ私立大学での英語資格・検定試験の活用が進んでいるということでございます。そこに参考までに数字を記させていただいておりますけれども,これまでの実態調査の御報告では,この点が明らかになっているということ。例えば英語の資格・検定試験の活用で,現在活用していたり,今後活用するという回答の大学は,一般入試で21%,AOで4割弱,推薦入試で4分の1ありますと。それから,今検討中あるいは検討予定というものもそれぞれ,一般選抜では3割,AO,推薦等では4分の1程度の大学では活用を検討しようとしているということでございます。
 それから,(3)共通テストの枠組みにおける資格・検定試験の活用の実現可能性,これが今回問題となったことでございます。丸1,共通テストでの枠組みでの資格・検定試験の活用に対して様々な課題,問題点が指摘されてきたところでございます。例えば国やセンターと試験団体との関係。これも先ほどの末冨委員の御提言にもございましたけれども,地域・経済格差,障害者への配慮,それから,異なる資格・検定試験を単一尺度,CEFRで対照させる仕組みが妥当かどうか,また,コロナの感染が広まる中で,しっかりと受検機会を提供することができるかとか,様々な懸念,課題が提案されてきたところでございます。
 これらの課題をどのように解消すべきかということについての提案もされております。例えば試験会場を大幅に増やすということで,各試験団体には,可能な限り試験会場を増やすという要請をしておりました。また,受検料についても減免措置を試験団体にもお願いしておりましたし,また,各団体で障害者への合理的配慮も異なっており,加えて,できるだけセンターにおける合理的配慮に合わせるようにというような依頼も行っていたところでございます。
 今回問題になりましたけれども,共通テストの枠組みの中で資格・検定試験を活用するということですが,その際の議論としては,将来的な共通テストの英語の廃止も視野に入れて,英語4技能の資格・検定試験を導入するという議論になっておりまして,成績提供システムを使って多くの大学が受験生に資格・検定試験の成績をそのシステムを通じて提供するということでございました。
 ただ,共通テストの枠内でということになった結果,国民の公平性・公正性に対する考え方が非常に厳しい形で表れたということでございます。これまで行われていたセンター試験と同様に公平性,あるいは障害者に対する合理的配慮等が必要ではないかという声が非常に高まったということでございます。その中で,先ほど末冨委員も言及がございましたけれども,昨年,大臣が英断をされたということでございます。
 こういう状況の中で,共通テストの枠組みの中で英語4技能試験を実施するということについて,これまで出されてきた様々な課題が果たして解消できるかどうかということ,それも令和6年度実施というところも含めて可能かどうかということについても御意見を伺いたいと思います。
 それから,(4)でございます。大学入試センターによる4技能試験の開発の実現可能性。これについては,次の(5)の参考2のところにも記載しておりますけれども,幾つかの団体や今回のこの会議の委員の方々からも,将来的には大学入試センターが独自に4技能試験を開発して実施してはどうかという,そういう御意見もございました。ただ,これについては,11月27日のセンター山本理事長の御報告の中で指摘されていましたように,英語4技能をたとえセンターが独自に開発・実施しても,採点などについて記述式と同様の課題に直面する。つまり,採点の公平性とか,成績提供時期が遅れるといったような課題が実際にはあるという御指摘がございました。
 ただ一方で,有識者ヒアリングということで,6月26日,東京外国語大の林学長からは,技術の進歩ということを考えると,開発・実施の可能性はあるのではないかというようなお話もあったというふうには記憶をしております。とりわけ,個別の試験で英語4技能を導入するということの可能性というのは,既に東京外国語大では実施されているということで,そういうお話をされたんだろうと理解しております。
 (5)個別選抜における英語4技能評価の形態ということでございます。先ほどから吉田委員等からも言及がございましたが,既に総合型選抜とか学校推薦型選抜では資格・検定試験が多くの大学で活用されている実態がございます。どのような試験を対象にするのか,あるいはスコアの有効期間についての議論もあり,かつては英検というのは永久に資格として通用するということがございましたが,TOEFL等は2年間有効である。それを大学としてどう考えるか。それから,受検の時期ですね。今回の共通テストの枠組みの中では4月から12月というふうなことになっておりました。
 それから,異なった資格・検定試験のスコアをどう比較するのかといったような様々な課題もあると同時に,実際にはそういうものを克服して導入している大学も数多くある。例えば共通テスト又は個別試験で,資格・検定試験スコアを持っている生徒は,そのスコアでの代替等を認める選抜区分が設定される場合がもう既に存在しております。例えば加点であったり,得点に換算したり,あるいは一定以上の点数を取った場合は,共通テストないしは個別試験の英語の試験を満点とみなすというような取扱いもしております。
 それから,先ほどこれ,益戸委員からも言及がございましたけれども,資格・検定試験スコアを必須とする選抜区分の設定の是非。これは今お話ししましたように,総合型とか学校推薦型に数多くございます。ただし,その際留意すべきは,何らかの事情で資格・検定試験のスコアを出せない受験生への代替措置を必ず設定しておく必要があるかと思います。例えばスコアを要しない選抜区分を別に設定する,あるいは共通テストの得点,英語での面接,高校による英語力の証明書等をもって資格・検定試験のスコアに代えるといったような方法もあるのではないかと思います。
 下の参考1は,これは実態調査で明らかになったところですけれども,私立大学の例として,具体的に掲げてあります。最後のところは,当該大学での活用方法が一番有効であったというふうに書かれております。
 それから,先ほども御紹介しましたけれども,国大協からの御意見では,将来的にはCBT等を活用して開発・実施してはどうかという御意見がございました。
 これらのことを考えますと,総合型選抜や学校推薦型の英語4技能の検定試験等の活用について,どういうふうに考えたらいいのかということでございます。これは先ほど益戸委員からもお話があったとおりでございます。
 (6)4技能評価の実施上の課題ということでございます。様々な形で,共通テストであれ,個別選抜であれ,英語4技能の評価を活用していく際には,依然として様々な課題がございます。
 丸1,資格・検定試験について低所得層の費用負担軽減,離島・へき地等在住者の受検機会確保。これは先ほど末冨委員からの御提言にもございましたし,共通テストへの導入を巡っても大きな課題として指摘されたところでございます。
 丸2,資格・検定試験実施団体及び高大関係者による協議の必要性。例えば低所得層への検定料減免,オンライン受検システムの整備,合理的配慮の推進,質に関する第三者評価等。これもこれまで幾つか委員の方々から御意見があった論点でございます。先ほどの末冨委員からのペーパーにも書かれておりました。
 丸3,受験生,大学にとって利便性の高い資格・検定試験の成績提供の在り方。これはこれまでも会議の中で何名かの委員の方々から,成績提供システムに大いに期待していたという御意見もございましたが,一方で,実施に関しては非常に大きなコストがかかるということもございます。これについては,山本理事長のお考えをお伺いしたいと思います。
 それから,丸4,国による積極的な取組事例の収集・公表ということで,これは先ほど末冨委員のところでも何名かの委員の方々が,情報を集約して公表するべきだということがございました。これまでのお話でも出てきた点が参考として書かれておりますけれども,資格・検定試験団体を更にモニタリングするような評価機関がイギリスにはあるというお話もございました。
 それから,最後,(7)と(8)は,高校と大学の教育に関わる論点でございます。まず高校までの学校教育の充実ということです。これは言うまでもなく,英語4技能については,今回小学校から育成するということになっておりますが,各高等学校で育成することを目指す資質・能力を再確認する必要がある。新学習指導要領の周知を徹底したり,大学だけでなく,多様な進路に対応した目標設定が必要である。
 丸2,効果的な指導・評価方法の普及ということで,定期テスト等における4技能評価の改善,資格・検定試験の効果的な活用など,グッドプラクティスを普及することが必要だろう。
 丸3,教科横断的に学習・探究したことを生かして,英語で発信したり交流したりする機会の拡充。これはもう既にSSHとかSGHでは実践されておりますが,探究活動の成果を英語でプレゼンする,あるいはポスターセッションで説明するといったような様々な取組が今後更に拡充される必要があるかと思います。
 それから,丸4としては,GIGAスクール構想という,先ほど出ましたけれども,ICTを活用したり,ALT,海外の英語教員の人材を効果的に活用したり,英語に堪能な人材に特別免許を付与した上で高校で指導していただくこと。
 最後に,大学入学後の教育については,当然,これまでも何名かも意見,指摘されておりまして,英語力の育成・評価について3つのポリシーできちんと明示しなさい。3ポリシーがきちんと連携しているような形で入試と教育と出口をきちんと体系化すべきだという御意見がございました。
 2番目,質の高いプログラムの充実。これはいろいろ各大学で様々な,英語教育については,優れた取組が行われておりますので,そういうグッドプラクティスを共有したり,あるいはそういう大学には何らかのインセンティブを付与してはどうか。
 3番目は評価の充実ということで,検定試験を大学教育の中で活用したり,英語教育の成果を見える化するということも必要だろう。
 丸4,英語力育成・活用の機会拡充ということで,英語による授業や,高校と同じですけれども,英語を通じたプレゼンテーション,ディスカッション,海外留学等を充実させる。
 5番目は,これは企業様の方にお願いしたいことになるかと思いますけれども,就職時に求められる外国語能力の基準を是非明確に大学あるいは大学生にお示しいただく必要があるのではないかということでございます。
 最後に,参考として,これまでの調査等をベースにしたことを書かせていただいております。参考1のところは,私の勤務する大学もほぼそうですけれども,学部から修士に進学する際には,TOEFLのスコアを提出する。従来は,独自に英語の試験を課しておりましたが,非常に多くの大学院では,TOEFLのスコアあるいはTOEICのスコアの提出をもって英語の試験に代えるということが盛んに行われております。
 それから,参考2は,先ほどの3ポリシーの連動のことについてですが,これは既に事務局の御報告がありましたけれども,必ずしも十分に明示されているわけではない。
最後,参考3でございますが,これも外国語を使う力の育成ということで,全国学生調査が試行実施されておりますけれども,その調査によりますと,かんばしい実情ではないということでございます。
 以上,様々な論点を整理させていただきましたので,是非委員の方々の御意見を伺いたいと思います。ありがとうございました。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。川嶋委員におかれては,お忙しい中,ペーパーをまとめていただきまして,本当にありがとうございました。
 それでは,このペーパーを材料として議論を行いたいと思います。項目が8つありますが,一緒に議論した方がよいものもあると思うので,まず(1)と(2)を別々にやります。その後,(3)及び(4)という切り口と,それから,(5)及び(6),そして最後に,(7)ということで,5つに分けてと思います。ただ,もう65分ぐらいしか残っておりませんので,1つについて平均でいえば十二,三分ということかと思いますので,御意見いただければと思います。
 それではまず,(1)の英語4技能の育成・評価の意義について。これについては随分今までも議論されてきたところがございますけれども,何かまとめていくような方向での意見をいただければと思います。いかがでございましょうか。それでは,渡部委員,どうぞ。
【渡部委員】
 川嶋委員におかれましては,大変お時間使ってくださったことがもう十分推測できるような,本当に丁寧なおまとめを頂きまして,いつものことながら感謝いたします。
 ただいま三島座長がおっしゃった区分けをする前に,私から半ば義務感で申し上げなければいけないことも多々あろうかと思いまして,あえて挙手をいたしました。やや長めになるかと思いますけれども,御容赦ください。
 (1)番と(7)番と(8)番は,非常に強く関連していると見ております。英語ができない,できるべきであるという,そういう観察の多くは,多分に入試ではなくて,それぞれのレベル,初等中等,そして,高等教育,そこで十分に機能していないということを示しているのではないかなと思います。特に大学教育の英語でありますけれども,例えばテストの使い方で申し上げれば,あるテストの得点を取っていれば,大学での英語教育は免除しますと,そういうような体制も多くの大学で取られています。しかし,そういったことが行われている限り,大学での英語教育というのは充実しないであろうと思います。従いまして,できるべき人ができる英語ということがなかなか行われないであろうと思います。
 今多分に課題なのは,できるべき人ができないということだろうと思います。1億人の全員が,ネーティブとは行きませんけれども,かなりのレベルまで行くということは必要ないと思います。しかし,たくさんの委員の方々がこれまでに述べられていますように,できるべき人ができないと。必ずビジネスの場面あるいは何らかの学会などでプレゼンテーションができなければいけないと,そういったことが問題になっているんだと思います。それは多分に大学教育における英語教育が十分に機能していないところがあるということだと思います。
 例えば日本文学,国文科でも,ある大学は国際的に何か発表ができるようなことをポリシーとしているところもあるでしょう。そういうところは,もちろん重要な分野として英語能力4技能ということが必要になるでしょう。しかし,そうでない大学もたくさんあろうかと思います。従いまして,大学によって個別性があるということが望ましいことだと思います。しかし,その中で,できなければいけないところができないと,そこに課題があるんだろうと思っています。
 もしそうであれば,入学試験というものは,英語でゲートキーピングファンクションといいますけれども,門番の役割ですね。あるいは,例えとしてはパスポートコントロールと言ってもいいかもしれません。入学するのに最低限の資格があると,それを確認するという,単純にしておくべきだと思うんです。いろいろな機能をたくさん持たせますと,それだけ複雑になりますので,運営が難しくなります。課題も大きくなります。従いまして,単純にしてくべきだと思います。それであとは,個別性を出して,各大学のアドミッション・ポリシーに応じて,カリキュラム・ポリシーに応じて,ディプロマ・ポリシーに応じて,そして,組み立てていくと,そこが大切だと思います。
 大学の英語教育に関しましては,多々申し上げたいことがありますけれども,今その時間ではないと思いますので,それは省略したいと思います。
 それで,川嶋委員がお作りくださったことに加筆・訂正をするということは,私としては要望としてはございません。ただ,観察を幾つか申し述べさせていただければと思います。
 まず第1点ですけれども,Ofqualですね。これは2ページの(6)番の参考に書いてあります。これはこの会議でも何度となく出てきています。ただ,Ofqualというのは,具体的に日本版のOfqualというのは見えてこないんですね。どういう機能を果たすことになるのかということを理解できないでいます。これ,イギリスでは,国内でのテストのコントロールですね。従いまして,例えばテストの業者の財政基盤とか,業務の実行能力とか,そういったことを確認するという機能を持っている。これは重要な機能ですけれども,そういったことを果たしている機関だと理解しています。
 一方,私たちが今議論している場面では,海外で使われているテスト,作られているテスト,例えばプリンストンのETSのTOEFL,ブリテッシュカウンシルや,あるいはケンブリッジ,そういった機関で作られているテストの観察をする,監督をするということだと思います。
 そういったときに,Ofqualは一体どういう機能を果たすんだろうと。例えばブリテッシュカウンシルに同じように資材がちゃんとしていますかなんていうことを聞くということはないだろうと思うんですね。つまり,恐らく私たちが想定しているのは,公平に使われているか,あるいは公平性がたもてているか,そういった機能を持たせるということを考えているんだと思います。
 しかし,実際の場合に,その判断をするのがいつの時期になるかということなんです。恐らく大学入試が一旦終わってからということだと思うんです。そうしますと,例えば4月の時点で何か不正が見つかったと。そうしますと,これは取り消してくださいというわけにいきませんので,どういうふうに機能するのか,本当に機能するのかどうかということが疑わしく思われます。そうすると,共通の基盤をつくるという基礎が崩れてしまうんですね。
 もう一つの,共通の基盤をつくるということを期待しているものはCEFRです。これは前々回のこの委員会の最後に柴田委員が非常に貴重な御質問をなさったと思うんです。それで,私,時期を逃して答えられないでいましたけれども,CEFRは1つの理論ですので,研究を重ねていっているうちにだんだん変わっていくというのがあるわけです。それで,今回もこれ,今,現行版は2001年です。これ,文部科学省も4技能ではなくて,学習指導要領は5技能になっていますが,CEFRも5技能ですね。今回は6技能になっています。
【三島座長】
 渡部委員,5分を過ぎておりますので,ちょっとまとめていただけないでしょうか。
【渡部委員】
 失礼しました。変わっていきますので,共通の基盤としては使いにくいんじゃないかと考えます。
 すみません,全く途中になりますけれども,一旦ここで,それでは,発言ストップということにいたします。
【三島座長】
 そうですね。ちょっとまた時間が残ったときにまた。申し訳ありません。
【渡部委員】
 失礼しました。ありがとうございました。
【三島座長】
 それでは,芝井委員,どうぞ。
【芝井委員】
 ありがとうございます。英語4技能のことを議論するときに,やっぱり最初に高等教育の中でどういう形でその技能を育てて達成するのかという観点がやっぱり必要で,そのときに,英語の4技能だけに焦点を当てるというのはやはり十分ではないと思うわけです。当然,各大学・各学部でディプロマ・ポリシーがあって,その前提としてのアドミッション・ポリシーになるわけですから,英語4技能はほとんど必要がないという表明をすることすら場合によったらあるのかも分かりません。例えば芸術系の学部あるいはスポーツ系の学部だと,うちは全然必要がないということを言う可能性があって。
 そんなときにやっぱり考えておかねばならないことは,例えば新井さんがここの場でお話になったように,日本語での4技能はどのように担保できるのかということをやはり私たち,ある面で真剣に問われていると思っています。あるいは,最近言われるように,デジタルリテラシーというのはどのように担保できるのかということも問われているんだろうと思うんですね。その議論をまず本当はしていただきたいというのが強い希望です。
 それから,英語4技能に限って言いますと,まずなぜ英語なのかということをやっぱり何らかの形で共通理解をつくるべきではないでしょうか。当然,世界中には各国語があって,私たちは今こうやって日本語でしゃべっているわけですけれども,なぜ英語なんでしょうかということがまずあって,2つ目に,なぜ4技能なのかということをやはり深く議論,議論でなくてもある種の共通理解が必要で,ここに書いているように,学習指導要領が昭和35年からこうでしたというのは,私はもうほとんど理解できない。構わないのかもしれないけれども,そういう議論はしたくはないなという気がしています。恐らく渡部先生もそこが一番根っこのところにあるんだろうと思います。それから,まず4技能と言いながら,なぜ均等に測定しなければいけないのか,あるいは測定できるのかという割合大きな問題があって,最後に,なぜ大学入試,あるいは共通テストで4技能が必要なのかということがあるんだろうと思うんです。
 ですから,一番初めの,私たちにとって英語ってどういうことなのかについて,何らかのやっぱり共通理解が必要だと思います。それ抜きではこの議論ってなかなか入っていけないというのが個人としての感想です。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,益戸副座長,よろしくお願いします。
【益戸委員】
 ありがとうございます。ただいまの芝井委員,渡部委員のお話を聞いて,やはりこの(1)の英語4技能の育成・評価の意義について議論するには,各委員の間で現実が共有されていないように感じました。次回以降事務局の方から,我が国を取り巻くグローバル化がどのように進展していて,その中で英語の重要性をどのように考えればよいかについてデータを整理して御提示いただければ,有益な議論につながると思いますので,どうぞひとつよろしくお願いいたします。
 以上です。
【芝井委員】
 すみません,一言言わせてください。先ほど一番最初に申し上げたと思うんですけれども,英語の4技能の前に,日本語の4技能がどうしても必要なんですね。日本語の4技能がない人間がどうして英語の4技能ができるんですか。そういう根本的な問題で,全ての高校3年生あるいは全ての大学生に何を求めているんでしょう。だから,正に渡部先生はすごいはっきりと,あるいは川嶋先生もおっしゃったけれども,どうしても必要な者に対して十分な形の教育ができるのかを問われているのは事実です。だけども,全ての日本人が日本語の4技能ができていない段階で英語の4段階どうするという議論は,やっぱり転倒しているというふうに言わざるを得ないと思っています。
 以上です。
【三島座長】
 分かりました。
 それでは,大臣が,御所用がございますのでここで席を立たれますので,コメントを一ついただければと思います。
【萩生田文部科学大臣】
 毎回途中で失礼します。本日もそれぞれのお立場から率直な御意見を頂いたことに改めて感謝を申し上げたいと思います。また,川嶋先生,末冨先生におかれましては,お忙しい中にペーパーを御整理いただいたことに感謝申し上げたいと思います。
 今も議論が白熱しまして,芝井先生のおっしゃることもそのとおりですが,それはまた別の機会に横出しで議論していきたいと思います。まずは,入試制度をどうするか,来年の3月,4月に一定の方向を決めなければならないので,私もうなずけるところはありますが,またの機会に文科省としてもしっかり議論していきたいと思います。
 最低限,ミニマムの共通項として,英語4技能は必要で,あった方がいいというところまでは,先生方は一緒だと思います。それを大学の入試でどう評価するか,高等学校の時代にどこまできちんと勉強するかということについては,多分そこまでは異論はないのだと思います。それをどうやって使うかとかいう深い議論になりますと,更に大きな議論はきっとあると思いますので,それはそれでまた是非御示唆をいただければ有り難いなと思っています。
 いずれにしましても,入試にどう紐づけていくのか,この英語4技能評価を紐づけることが高等学校の英語教育にどう変化をもたらすのかということが,もともとの高大接続の本来の目的じゃないと言えばそのとおりなのですけれども,そういった期待値があって始まったことなのだと思います。他方,今,振り返りで末冨先生も過去のことも触れていただきましたけれども,じゃ,全く目的の違う民間の英語試験をどうやって横串を刺して,それをスコアにして大学の入試にどうやって反映するのか。私すごく不思議だったのが,この前,各大学のアンケートを見て少し落胆したのですけれども,文科省が考えているほど大学の皆さんは必要性を感じていなかったという一面も数字の上では読み取れるのではないかなと思います。
 もちろん今お話があったように,学部・学科によっては別に直ちに英語が必要ではないところもあるわけですから,そういう意味では多様な判断があってもよろしいのだと思うのですけれども,そうは言うものの,国際社会を目指したときに,この英語4技能をある程度身につけた若者たちを育てて社会へ出していくという使命も我々にはきっとあるのだと思いますので,是非そんな点でまとめに向かってまた先生方の知見を頂きたいなと思っています。
 末冨先生がおっしゃった,多様な背景を持つ学生を大学機関が受け入れていくということはこれからの世の中ですごく大事だと思います。新制度ができて,分かりやすく言えば,大学進学を考えていなかった家庭のお子さんも,これだったらチャレンジしてみようというインセンティブが出てきているのだと思うのですが,他方,学校側の情報提供に限界があって,どういう配慮があるのかというのが受験生によく分からないという課題も浮き彫りになってきたと思います。私は一定の基準みたいなものは公表していくことも必要なのではないかなと思っていまして,こんな点も是非参考にさせていただきたいと思います。
 コロナ禍で各大学は大変御苦労されていまして,なかなか対面の授業ができなかったりしているのですけれども,たまたま対面とオンラインとをハイブリッドでやってもらいたいということを各大学関係者にお願いして,50%に達していないところについてはどういう授業をやっているのかをヒアリングさせていただいて,それを公表していこうということにしました。大学の団体の関係者からは,それはあんまり望ましくないということを言われているのですが,別に私,それを公表してプレッシャーをかけようなんていう気は全くなくて,受験生の皆さんが,自分がこれから目指す大学がこういうときにどういう授業をやっているのかというのを知ってもらうということは極めて重要なことだと思っていまして,合理的な配慮と併せて,こういう大学の取組を受験生に知ってもらう,あるいはどういう奨学金などの制度があって,入学後もそういうチャレンジができるのかということを知っていただくことは極めて重要だと思いますので,こんな点も文科省として引き続きしっかりやっていきたいなと思っています。
 残りの議論につきましては,鰐淵政務官が同席させていただいて,また議事録を拝見させていただきたいと思いますが,また先生方と問題意識を共有して来年に向かってまいりたいと思います。年の瀬にこのような会議を開いていただきましたことに感謝を申し上げて,是非来年,コロナを吹っ飛ばして,いい行政ができるように,皆さんとまた力を合わせて頑張りたいと思いますので,引き続きの御指導と御支援をお願い申し上げたいと思います。ありがとうございます。
【三島座長】
 大臣,どうもありがとうございました。
  (萩生田文部科学大臣退席)
【三島座長】
 それでは続けますけれども,一応5つに分けてお話をすると言いましたけれども,確かにいろいろ相関するのできれいに分けられないことは承知なんですが,一応5つの区分の各時間帯を見るという形で進めたいと思います。今,柴田委員,末冨委員,吉田委員の手が挙がっておりますが,一応ここで,先ほど言いました項目(2)の時間にもう入りたいと思います。別に(1)も(3)が入ってもいいということで続けさせていただければと思います。
 それでは,まず柴田委員,どうぞ。
【柴田委員】
 福岡県立大学の柴田でございます。では,(1),(2)と,先ほどの御指摘ありました,お互いにクロスしていますから,(8)に関連した,(8)の大学入学後の教育というところでお話しさせていただければと思います。
 英語も,大胆に割り切りますと,専門教科としての英語と,それから,汎用的なスキルとしての英語というのがあると思います。私,理系の人間なものですから,いわゆるイングリッシュといいますか,英語力というのは,シェークスピアとかそういう分野とは別に,今の理系の教育では,英語の文献あるいは英語の教科書を読まなければ,ほとんどついていけない。これ,学部段階もあるんですけれども,特に大学院レベルではもうそういう時代になっているというのは十分皆さんも御認識いただければと思っております。
 そういうことで,以前,カレッジレディネス,要するに,どういう資質を持った人間が大学に入ってくるかの1つで,理系で最先端のことに近づこうと思うんだったら,英語力がないとほとんど不可能であると。先ほど芝井先生がなぜ英語なのかとおっしゃるんですけれども,例えばドイツに行ってもフランスに行っても,今,英語で通用する時代ですし,英語以外の国際学会というのはちょっとあり得ないし,ドイツの文献も,全てじゃないでしょうけれども,英語で発刊されているような時代なんですから,少なくとも理系では英語力というのは大学教育をちゃんと世界に通用するような形で修得するには必要な技能であるということは理解いただければと思っております。
 私も大学時代余り勉強しなかったという話じゃないんですけれども,卒業してから差がつくのは,英語力があるかどうかというぐらいの話ではないかなと思っております。ということで,これからグローバルの時代というのは言い古されておりますけれども,英語力,リンガフランカとしての英語というのはやはり若い子たちには是非大学に入る機会にきちんとあるレベルまで持っていただきたいなと思っておりますし,技能として,先ほど4つじゃなくて6つぐらいあるというファクターもあると思うんですけれども,そういうことを総合的にちゃんと評価する機会として入試というのは1つのステップになるのではないかなという具合に考えております。
 ということで,是非何らかの形で,今までありますペーパーだけでないような形での英語力をチェックしてあげれば,それが高校生,中学生,小学生の目標になって,豊かな人生が送れるのではないかなと,理系の人間としては考えている次第です。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,末冨委員,どうぞ。
【末冨委員】
 (1)と(2)にわたって申し上げます。まず英語4技能あるいは英語スキル全体ですけれども,こちらの重要性については私も支持いたします。
 ただ,英語4技能試験だけを論じればいいという御意見がございましたが,昨年度までの専門家の議論のプロセスでも,英語に偏った学習時間とか,あるいは学校の指導がされることになりますと,各専門分野で必要とされます他の教科の力がどうしても置き去りにされがちになるという懸念がございました。であればこそ,英語はとても大事である。けれども,各専門分野,特に各大学のアドミッション・ポリシーはじめ3つのポリシーにかなったやり方での高大接続も意識されなければ,かなり偏ったものになると思います。あわせて,新しい学習指導要領が高校でも先行実施中ですから,恐らくそこで何らかの形で効果も出てくるのではないかとも思われます。単純にやはりテストで測ればいいんだなとか,そういうことももう議論としては少しフレームは古くなりつつあるのかなという気もいたします。
 (2)につきましては,確かに大学側は検定を利用しておられますし,それから,受検料の補助をなさっている自治体があるとの御指摘もありましたが,サプライサイドとデマンドサイドの視点がそれぞれ擦れ違っているように思われます。大学側としては,やはりクリームスキミングをしたい,おいしいとこ取りをしたいという動機はございますので,各家庭で十分に投資をされ,かつ自分でタイムマネジメントがうまくいくタイプの受験生を早く確保するために英語4技能試験を利用している可能性もございます。そうした場合には,どうしても格差,貧困の問題というのは置き去りにされがちです。であればこそ,大学が自ら襟を正し,公正に対してアカデミアとしての責任をどのように果たすのかといったことについては強く自覚的であらねばなりません。私も大学人ではございますが,大学が一般的に日本において公正を重視する姿勢を持っているというふうには簡単には断言できない状況がございます。
 受験生のがわからも,受験料も高いけれども,参考書も高いと。先ほどのOfqualのところで,参考書も含めて利益相反事項に入るのでコントロールされているという話がありましたが,日本ではそのようなルールがないために,受験生が,悪い言い方をすれば,経済的搾取の対象になっているというふうな現状もございます。なので,意義はありながらも,やはり受験生のがわがよりチャレンジしやすい,不安を感じなくていい,そして,大学のがわも,自らが若者や社会に対して果たすべき責任は何であるのかということをもう一度問い直しながら,英語のスキルをどのように育てていくか,あるいはどのように測定していくかということについて検討されなければならないと考えます。
 以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございます。それでは次は,吉田委員,どうぞ。
【吉田委員】
 ありがとうございます。私,全般にわたってということでお話しさせていただきますけれども,そもそも論として,今回私心配しておりますのは,今度,OECDのPISAの試験で2025年から英語が入ることになりました。実際に今回川嶋先生がまたすばらしいメモをお作りいただいたわけですけれども,そこでもございますように,昭和35年から実際高校以下は4技能をやらなくてはいけないという教育課程になっているにもかかわらず,これが後れてきていた。そこの原因がどこにあったかということの中から大学入試の問題とかが出てきた部分があったと思います。
 私,これも1つの大きな原因だったと思うのですが,3ページ目の(8)番の大学入学後の教育の充実の丸5で,就職時に求められる外国語能力の基準というのが,長い間というか,最近もまだそうかもしれませんが,企業自体がTOEICの2技能をやっていた。例えばの話,日本のフラッグシップのエアラインも,それから,大手の自動車産業等もそれがないと昇進できないとか,そういうような2技能に特化していた。ですから,大学で進級条件にTOEICのスコアが入るとかいうような後れた部分があったのだと思っています。
 そういう中で,やはり私どもとしては,今回の,先ほど柴田先生のお話にありましたけれども,英語がもう本当に大学教育では必須なんだと。理系は本当にそうです。論文とかもそうだと思いますし,我々もこれから高校以下だってグローバルにつながっていかなければいけない。ワールドワイドラーニングコンソーシアムの問題もあります。そういう部分を含めて,私はやはり高校時代にどこまでの英語力を持っている人をつくるか,そして,大学では逆に,基礎となる英語力,何ももう一般教養で英語の授業をやるとかいう問題ではなく,大学で学ぶべく英語力をしっかりと判定することが必要なのではないかなと。そうすると,そこに4技能試験というものがどうしても出てくる。
 川嶋先生の資料の2ページ目の(5)番で,個別選抜における英語4技能評価の形態の中で,共通テスト又は個別試験で英語を課しつつという問題なのですけれども,丸2で独自の4技能試験の実施というのは,これはセンターでは不可能であるということを先般も山本理事長がおっしゃっていました。そうすると,ここで思い切って,どこかの段階でもう各大学が,自分たちの都合のいい英語4技能試験を使う。それから,英語に限らずほかの外国語,これもセンターでなくして,そこのセンターの費用を少しでも安くして,今度逆に,各受験生の英語4技能試験を受ける方に回してあげるとか,それから,最後のページにありました検定試験の活用法の流れですか,それで,例えば今,センターで何十億もかけてシステムを作ろうとしていましたけれども,もうこれ,資格・検定試験なんですから,英語とかと同じように,各大学が,何十万人いようと,自分たちのところに直接送ってもらって,自分たちの必要なテストを評価すればいいではないかと。センターで開発しようとしたお金を国が受験生に渡すことによって,受検機会の平等化,そういったものに使っていただければいいのではないかなという思いもありまして,あえて言わせていただきました。
 ありがとうございました。
【三島座長】
 どうもありがとうございます。それでは,時間枠としては,項目(3),項目(4)のところということでここからしたいと思いますが,今お二人手が挙がっていますので,そこはまだ(1)や(2)に関係するかもしれませんけれども,先ほど申したように,時間枠として次の設定に入ります。それでは,岡委員,どうぞ。
【岡委員】  
 それでは,(3)と(4)を主に話させていただきます。国大協としましては,英語4技能が必要だということは前から言っておりますので,これについては議論の余地がないと思っております。
 そして,検定試験におきましては,様々なフェーズで総合型,それから,学校推薦,そして,大学の一般入試においてもだんだん導入されているということはもうお話ししました。
 さて,共通テストの実現性,共通テストの枠組みにおける資格・検定試験の活用性というのは,これまでいろいろ議論されてきましたけれども,課題をクリアすることは非常に難しいと思います。これについては,なかなか実現性がないという方向で考えてはどうかと思っております。
 それで,大学入試センターの4技能試験の開発についてですけれども,これについては,国大協,大学全体,私大協も全て,それから,できましたら高校側も含めて,国,センターでAIを使ったような,それから,CBTを使ったようなシステムを将来的に研究するということは極めて重要だと思っておりますので,是非ともそういう方向で文科省は検討していただいたらと思っております。
 いずれにしても国大協としましては,この4技能におきましては,大学も含めて非常に重要と思っているということを申し上げます。以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,萩原委員,どうぞ。
【萩原委員】
 萩原です。先生方のお話を聞いていて,また,全高長として今までもお話をしてきた部分ではありますけれども,国策として,要は,英語に関して全ての高校生に一定の力をつけさせていきたい,そしてまた,それを評価していきたいということであるならば,やはりナショナルテストのようなものをきちっと創設をしていく。今そういうお話が出ていましたけれども,やはりそうするべきではないかと思います。大学入試センターが開発は今のところいろいろ課題があってできないからやりませんというような形ではなくて,それをできるような形で国が応援をしていく,やらせていくということが必要ではないかと思っています。
 民間の各資格団体が作られている検定試験は,決して悪いものであるというふうには言えないとは思っておりますけれども,ただ,学習指導要領にのっとった形での出題が全ての団体で全ての内容がなされているかどうか。英語を学ぶ目標・目的には一致はしているとは言いつつも,各学年で指導する内容を一つずつ踏まえている内容には決してなっているわけではありません。やはりそういう点でもきちんと国策としての英語をということであるならば,やはり国としての試験問題で,それは共通テスト下で実施するのか,それ以外のところで実施するのか,実施時期の問題はあると思いますけれども,検討すべき段階に来ているのではないかと思います。
 以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。それでは,芝井委員,どうぞ。
【芝井委員】
 すみません,今の萩原委員のお考えに従って1つ申し上げたいと思うんですが,確かにナショナルテストを開発することは,例えば大学入試センターにおいて1つのナショナルテストでもって4技能試験を行うというのは将来的に検討すべきことだと思うんですけれども,ただ,間違っていただきたくないのは,それが大学入学の前提条件だと言われると,私立大学も含めてですが,やっぱりまずいというか,望ましくないと思っています。これははっきり申し上げておいた方がいいと思います。
 英語の4技能が一定のレベルに達しないと大学に入学できないという,そういうことをここの場で決めたり,方向づけしたりするのには,やっぱり私たち多様な形で大学の入学を考えている者からすると,やはりちょっとそれは無理がある。ナショナルテストはいいかも分からないけれども,それをナショナルな前提条件にするのは反対です。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,清水委員,どうぞ。
【清水委員】
 ありがとうございます。清水です。川嶋先生からおまとめいただいた前回の記述式と,それから,今回の英語4技能のものが,多分最終的にはこの会議のまとめの項目立てというか,そういうものにつながっていくと思いましたので,意見をちょっと申し上げます。
 今,共通テストの枠組みという観点で検討がされていますけれども,やはりこの議論も,(1)の項目での意義の問題をある程度整理しないとなかなか議論できないなということを強く思いました。先ほど渡部委員が最初の方で御意見を述べられました,本来できるべき人ができていないという高等教育の問題ということがありましたけれども,できるべき人というのが誰か,それはどの程度できるべき人なのかという,その整理をやはり(1)の項目でしておくべきではないかと思いました。
 先ほど柴田委員がおっしゃっていましたように,私たちここの委員として参加している者自体は,自分の大学院生に,学会で発表しなさい,海外の学会発表しなさいとか,ペーパーを英語で書きなさいという立場から意見を申し上げがちなんですけれども,一方ではやはり高校生の基盤的な英語の4技能をどこまで求めるのかということ,それから,高等教育,大学,それから,大学院も含めて,それから,ビジネスパーソンを育てるという意味も含めて,どのカテゴリーで(1)番の意義を論ずるかというのを少し,(1)の下に丸1,丸2という項目をあえて入れるとしたらどんなものが入ってくるかという,その観点から柱立てを考えてみる必要があるかと思いました。
 あとあわせて,(2)のところも,今は受験者,それから,大学側という2つの視点で整理されていますけれども,これも中等教育の視点,つまり,中学校や高校で実際に英語教育に携わっておられる先生方が,前々回議論になりました学びの基礎診断の活用の問題等もあわせて必要かなということも思いましたので,あわせて申し上げます。
 以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございます。それでは次,岡委員,どうぞ。
【岡委員】
 すみません,1つ忘れておりまして。1つ要望なんですが,大学入学共通テストの中で,英語は今までどおり2技能の試験は続けていただきたいと思っていますし,問題の工夫によりまして,他の2技能についても評価できるような問題を国・大学入試センターに作成していただきたいというのが,国大協からの強い要望でございますので,それについては申し上げておきたいと思います。
 以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。それでは,斎木委員,どうぞ。
【斎木委員】
 斎木でございます。ありがとうございます。(3)と(5)について申し上げます。
 資格・検定試験を共通テストの枠組みにおいて活用するかどうかについては,将来的な課題として引き続き議論することには一定の意味があろうかと考えますけれども,川嶋副座長からも改めて御説明がありましたし,また,岡委員からも御意見ございましたように,共通テスト本体並みの公平性が求められているという状況に鑑みますと,これまで指摘されてきました様々な課題を短期間で全て解決することは極めて困難である。すなわち,共通テストの枠組みにおいて資格・検定試験を活用する実現可能性は極めて低いと,このように考えております。
 そうなりますと,(5)のところに参ります。すなわち,これも川嶋副座長の御説明の中でございましたが,資格・検定試験スコアを持っている生徒について,そのスコアでの代替等を認める選抜区分の設定は既にいろいろな形で実施をされているところでして,この拡充が望まれます。また,資格・検定試験スコアを必須とする選抜区分の設定も既に行われているわけですが,今後こうした区分設定が拡大される際には,スコアを提出できない場合の代替措置を手当てすることが重要であるという点にも同意をしております。
 以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。それでは,ちょうど今,(5)の問題についてのコメントがございましたが,(3)と(5)という形でございましたので,これで3つ目のこまに入ると考えていただければと思います。それでは,今度,(5)と(6)のということを一応設定して御意見いただきたいと思います。では,吉田委員,どうぞ。
【吉田委員】
 ありがとうございます。先ほど来の先生方のお話の中で思ったのですが,忘れていただきたくないのは,高等学校以下の教育はもう4技能になっているということです。そうすると,必然的にセンターテストを,岡先生のお話等にもありましたけれども,2技能を残すのでしたら,私はセンターで何があっても4技能をやっていただきたい。そうしなかったら,高等学校の学習指導要領の中で,変な話ですけれども,共通テストでの英語を受ける子たちは,残り2技能を勉強しなくなってしまいます。そういう意味でも,4技能テストを使わないでセンターテストで英語をやるということになるのでしたら,何があっても英語4技能をしっかりとセンターテストというか共通テストで組み込むことを確認させていただきたいこと。
 それから,もう一つ,例えば私大協会の案等で,やはり国家試験等の方が大切であって,英語4技能をやっているような余裕はないというようなお話がありました。それが私がさっき言いました,高校まででしっかりとした英語の基礎力を身につけるといったことがそういうことにも逆につながるのではないかと思っておりますので,是非その辺,もし共通テストで英語を続けるとするならば,高校生が学んでいることをきちんと評価していただけるような試験にしていただければと思いますので,よろしくお願いします。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,小林委員,どうぞ。
【小林委員】
 ありがとうございます。2点ほどあります。最初は(5)に関連しているんですけれども,事実上,全体10万人が外部の資格試験を使って入学しているんですけれども,そのうち8万人が私立大学の入学者ということで,かなりだんだん使われてきて,ますます使われてくると思うんですけれども,先ほど末冨委員がおっしゃったように,この資格試験を使うに当たっては,格差とか地域格差,いろいろな格差にやはり目をつぶって使っているというところがありますので,民間の資格試験の格差問題というのはやはり解消していただかないと,私立大学としてもなかなかすんなりとは使いにくいところがあるかと思います。事実上どんどん使っているんですけれども,その問題は置いてけぼりになっているということを認識しなければいけない。
 それから,(6)番目の第三者評価に関して,先ほど渡部委員からイギリス流のやつはできないというような話をされましたけれども,そうかといってやはり利益相反とか質の問題をなおざりにするわけにはいきませんので,日本流のそういう第三者評価機関というのは,もし仮に資格・検定試験を民間のものを利用するのであれば必須であるというふうに私は個人的に考えております。
 ちなみに,英検は公益財団法人,TOEFLは一般社団法人,ケンブリッジは一般社団法人,TOEICも一般社団法人ですけれども,GTECは株式会社なんですね。ですから,もしこういったものを使うのであれば,必ず利益相反問題をチェックする機関,第三者機関が必要であるというふうに,私は,私大協としての意見ではなくて,個人的に考えております。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,柴田委員,どうぞ。
【柴田委員】
 柴田でございます。丸3と丸6に関係したことでございます。共通テストの枠組みにおいてというのがそもそも随分窮屈だったのではないかと思っておりまして,(6)の丸3の成績提供の在り方,これも既に昨年かなり,最終段階までもう実施が瀬戸際まで行っていたものなんですけれども,これ,大学にとって,あるいはまた受験生にとって非常に有り難い制度であるというのは以前にも発言させていただいておりました。
 ただ,そのときに私も不可思議だったのは,共通テストの枠組みという枠にあるというのが,なぜそういうことになっているのかというのでいろいろな問題が出てきてこういう経緯になったのではないかと思っておりますが,やはり大学入試センターで取りまとめていただくんだったら,共通テストの枠組みというものが必要だったという御事情なんだろうなと思っておりますので,できましたら,新たにいろいろ提起されました問題点,格差の問題等を解決といいますか手当てした上で,統一した成績提供,それから,先ほどの適格性等の点検の仕組みを導入していただければ,受験生にとっても有り難いのではないかなと思っておりますし,利便性もあり,総合型選抜,それから,学校推薦型選抜にも利用できるし,共通テストを使わない大学にも利用が可能であるという仕組みになればいいなということをいまだに私は個人的には願っております。
 以上でございます。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。それでは,岡委員,どうぞ。
【岡委員】
 吉田委員から御発言がございましたので,少し私の説明が不足しておったような気がしますので,もう一度発言させていただきます。
 確かに令和6年から共通テストの英語の試験どうするかという話がありまして,それがなくなるということに対しては国立大学協会としては非常に困るという意見を申し上げ,そして,中長期的には試験の中に英語4技能も十分評価できるような作題をしてほしい,そういう要望を出したわけです。一方,申し上げましたけれども,直近に英語4技能を全て国立大学が個別試験で評価をするというのは非常に難しいといいますか,困難な状況でございます。その中で2技能を中心に共通テストを続けてほしいということでございます。もちろんこれから英語4技能試験の開発には協力していきます。
 後で申し上げようと思ったんですが,国立大学は,入学させて英語4技能については十分に今,教育をしている状況でございますので,決して高校側の英語4技能の教育が無駄になることはないというふうに,むしろ大変有り難いことだと思っております。
 以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。それでは,今,手が挙がっていない状態でございますので,もう(7),(8)も含めて,残った時間,15分ぐらいございます。広い範囲での御意見でも結構ですので,挙手していただければと思います。末冨委員,どうぞ。
【末冨委員】
 ありがとうございます。(7)の高校教育までの学校教育の充実という点につきましては,大変重要な論点だと考えています。その際に,先ほども申し上げましたように高校の学習指導要領というものが,特に今の新しい学習指導要領の中での英語4技能の育成の方法というのがかなり変化をしている,進化を遂げつつあるということですので,この部分についての評価だとか,あるいはグッドプラクティスを継承しましょうということも書いてございますけれども,是非とも大学側の専門家とのやり取りの中で,高大でどのようにうまくつなげていくかという検証をしていただければと思います。
 あわせて,英語スキルについては,従来,国際的にクラスサイズの効果がかなり指摘されておりますので,せっかく小学校の少人数学級で学級サイズの議論が盛り上がっているところですが,是非とも高校のクラスサイズの問題としても捉えていただければなと思います。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,益戸副座長,お願いいたします。
【益戸委員】
 益戸でございます。ありがとうございます。川嶋先生のメモの(8)番,大学入学後の教育の充実の中の丸5番の就職時に求められる外国語能力の基準ということについて一言意見を述べさせていただきます。
 先日の会議で,3つのポリシーに外国語能力を位置づける大学が少ないことについて苦言を申し上げましたが,大学が大きく鈍った原因の1つとして,卒業生の受皿である社会が必要な外国語能力について,必ずしも明示的に求めてこなかったこともあると考えます。
 企業というのは,能力と適性の範囲内で採用するということに徹しておりますので,もしもですが,今後外国語能力の基準について,経済団体とか行政機関などと連携して一定の考え方が示されたり,それに基づいてそれぞれが具体的な目安,スコアなどを提示するということになれば,大学が3つのポリシーを考える上でも参考になるのではないかなと思います。もし実現すれば,大きな進歩につながるものと思います。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,手が今,4名挙がってございますけれども,先ほどの柴田委員からの御発言がございましたように,成績提供システム,これはどうなっているのかということでございましたので,山本理事長にその点だけお話を伺ってから,残りの時間で御質問いただきたいと思います。よろしくお願いします。
【山本オブザーバー】
 山本です。分かりました。成績提供システムをせっかく作ったから,これをうまく活用すると,受験生,大学にとっても大変有益ではないかというのはこの検討会議の何回かで,特に柴田先生中心に御発言があったと思います。
 現在,我々は,3点のことについて考慮する必要があるのかなと思っています。
 まず1点目は,今回開発しましたシステムでは,高校3年時のスコアに限定するということで,検定試験を受ける前の年に共通IDを付与してということでございました。ただ,この検討会議でも意見が出ておりますように,受検時期,すなわち,どの時点でのスコアを使うのかというのは,これは,現在でも2年間はいいんだとか,いや,いつ受けてもいいのでとにかくあるデータを出してもらって,というようなことがございましたので,こういう,どのスコアを使うかということの関係で大学の判断に任せるということになってきますと,このシステムそのものの根幹が大きく変わることになるということが1点目です。
 2点目なんですが,このシステムのランニングコスト,これについては成績提供の手数料で賄うということで作ってきたわけでございます。共通テストの枠組みということで,こういった仕組みの中で使うというようなことであれば,すなわち,50万人全員ということにはならないかもしれませんが,それにしても数十万人がこれを活用して大学の方に成績提供するというようなことであると,ランニングコストを賄えるということになるかと思いますが,それを外しますと,成績提供件数が十分確保できるのかどうか,こういったところに甚だ疑問があるということでございます。
 それからもう一点,これは我々が得ている情報ですが,昨年の見送りを受けて以降,試験団体自身が,受検者,そして,利用大学との間で,それぞれの団体が成績提供システムの開発を進めているというようなことも聞いておりまして,センターで全体を管理する必要がまずあるのかどうか,こういったことを見極める必要もあるのかというふうに考えてございます。
 こういった課題を踏まえた上で,高等学校並びに大学の方でよく話し合っていただく必要があるのではないかと考えております。
 以上です。
【三島座長】
 理事長,どうもありがとうございました。
 それでは,柴田委員,ちょうど手が挙がってございますが,今の理事長の御説明等で何かもしコメントがあればどうぞ。
【柴田委員】
 多分,入試センターとしてはそういう御事情なんだろうなと推測する次第でございます。できるだけ大学にとっても,高校生にとってもいいものができればと願っている次第でございます。
 私が手を挙げたのは,8番目の丸5,先ほど益戸委員からは卒業後のことだったんですけれども,大学教育についても,先ほど言い忘れましたが,2つ議論があるところで,ラーニング・イングリッシュなのか,ラーニング・イン・イングリッシュなのか。我々が関心があるのは,ラーニング・イン・イングリッシュなんです。英語でどういう具合で学んでもらえるかという。
 これは,ありていに申しますと,ちょっと語弊があるかもしれませんが,医学の教科書というのは,日本語は随分値段も高いし,分かりにくいんです。ところが,英語で勉強すると,安くて非常によく分かるんですね。しかも英語だと国際的に通用しますが,日本語では全く通用しません。ということで,私どもは学生にはできるだけ英語で医学用語等を教えていたんですけれども,学生から大反対が出まして。それはなぜかというと,国家試験は日本語ではないかと。なぜ英語で勉強しなきゃいけないのかというので,思い切って申しますけれども,できれば国家試験等も英語の部分も出していただければ,随分と関心が広がるんじゃないかなと。全くこれは入学試験とは関係ございませんけれども,日頃大学教育に当たっている人間としてはそういう実感を持っておりましたので,ラーニング・イン・イングリッシュというところも御配慮いただければと思っております。
 以上でございます。
【三島座長】
 どうもありがとうございます。それでは,萩原委員,どうぞ。
【萩原委員】
 高校のということでお話をさせていただきます。英語スキルとして,以前はリーディングが中心で,センターテストを契機にリスニングテストが行われてきたことで,かなり高等学校の教育も変わったという部分はあると思っています。
 今,4技能と言われている部分でいうと,唯一,スピーキングの部分をどうしていくのかということがやはり高校現場でも一番大きな課題と思っています。パフォーマンステストをやったり,いろいろ工夫はしてきているところではありますが,日本人が日本人に対してスピーキング力を高めさせるというのは,現実的にはなかなか難しい部分があります。
 今,これだけネット社会にもなってきていますので,例えば島嶼地区であったり,中山間部であったり,そういう地域の子供たちであっても,外国人,ネーティブと関わる場面を多く持たせるという教育をしていくことがスピーキング力を上げていくことにつながるだろうと思っています。是非ともオンライン英会話等を使うということは可能だとも思いますので,そういう部分での支援を是非ともお願いをしたいと思います。高校の英語力を高めていくためには,英語教育そのものに対しての具体的なところでの施策等をお願いしたいと思っています。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,岡委員,どうぞ。
【岡委員】
 ありがとうございます。今,高校の萩原委員から大変有り難い話をお聞きしましたけれども,国大協として高校教育に対して少し要望がございますので,述べさせていただきます。
 共通的な評価方法の開発などを通じて,大学は,大学としても活用できる学習成果の見える化が進展するよう,高校関係者のさらなる尽力を要望したいと思っております。特に大学側に提出されている各高等学校からの調査書の情報では,一定の基準を持った客観的な評価を行うことが難しい状況です。個々の受験生の英語力を一番正確に把握されておりますのは高等学校の現場の指導に当たっている先生方であると思いますので,英語を使って何ができるようになるかを明確にすることが大変重要なのではないかと思っております。
 例えばCan-Doリスト形式による客観的な評価方法を導入することによって,高校教育から大学教育につながる学習成果の見える化が進展するのではというふうにも考えております。どうぞよろしくお願いしたいと思います。
 以上でございます。
【三島座長】
 どうもありがとうございます。それでは,あと3名の手が挙がってございます。時間があと五,六分というところでございますが,コンパクトに最後,3人,お願いいしたいと思います。ではまず,芝井委員,どうぞ。
【芝井委員】
 ありがとうございます。(8)の丸5について一言コメントしておきたいと思います。大学には様々な学部や学科があって,そこでディプロマ・ポリシーを決めているわけですが,英語能力に関する記載がなくても全く不思議ではないわけです。繰り返し申し上げますけれども,私どもの大学には例えば外国語を専門にする学部があります。ここは特に英語能力を表記する必要がないんですね。かなり高い能力を持って卒業することは分かっていますので,一々,どんな英語能力をつけてくださいなどという目標をあえておく必要はないわけです。
 それに対して,例えば理系の学部は先ほど柴田先生等からおっしゃったような事情がありますので意味があるんですけれども,例えば文学部には国語国文科という,そういうデパートメントがありますよね。あるいは,日本史があったり,日本の芸術論みたいなこともあるわけですけれども,果たして英語が,それもディプロマとして要りますかというと,要らない。明らかに要らないんです。あったらいいですよ。だけど,少なくともみんなに対して,これができないと卒業できませんなどと言う必要は全くないわけです。ほとんどの学問分野,詳細を見ていただいたらいいと思うんですけれども,こういう外国語能力の基準を置くべきだという議論自体がやっぱり私,現実から考えると破綻していると思うんですが,いかがでしょう。
 飽くまで現在の日本の高等教育でいうと,半分以上,54%とかが大学に行っていて,なおかつ専門学校まで入れると,広い意味でいうと8割ぐらいの人間が,高校を卒業してから更に教育,場合によっては教育,研究を受けているわけですけれども,そのような現実に対するちゃんとした認識の下に丸5番が提案されることはいいんですけれども,こうあるべきだみたいなことで,だから,外国語能力の基準を大学は置くべきだと言われると,それはちょっと違うとしか言いようがないです。
 もう一つ大きいことは,繰り返し,資格・免許に関しては,当然ディプロマ・ポリシーで求めているのは資格や免許のことであって,それは外国語能力でないのは明らかです。外国語能力が高い者であっても,資格が取れなければ,その大学はもう存続できないわけです。そこをはっきりと見た上で,何かの充実のための方法を出していただきたいと思います。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,渡部委員,どうぞ。
【渡部委員】
 ありがとうございます。高校のレベルで,あるいは大学のレベルで教育を充実させるべきだということについては,先ほども最初に申し上げたとおりです。それで,例えば高校のレベルで行われていることを確証するためには,大学の入試試験ではなくて,卒業試験で行うべきですね。それを確証して,必ずこの人たちは最低限のことをやっていると。その確証が私たちは欲しいわけです。それは入学試験とはまた違うレベルの話だと私は考えています。
 高校,大学の入試充実ということであれば,繰り返しになりますが,4技能を別々に把握するというのは,これはかなり不自然です。リーディングというのは,ディスカッションしながら深めていくものです。そして,聞いて,読んで,そして,それを統合して話すような能力が本当の英語能力として問われているわけです。街の中に出ていって,突然会話を求められて,そして,片言で話すようなことは,そういう機会があればできます,それは誰でもね。ですから,今そういったことを議論しているんじゃないと私は考えています。そういった実質的な英語能力の話をしているんだと思います。
 その実質的な能力を鍛えるために民間試験を使うというのは,純粋な気持ちで受けている人たちがたくさんいます。自分の本当に実力を試したいとして受けている人は本当にたくさんいます。しかしながら,入試ということになると,世知辛くなるんです。1点差を争うようなことになって,そして,じゃ,このテストが取りやすいですからそっちを受けましょうなんていうふうになるんですね。多くの人はそうなるということを予想すべきだと思います。そういった英語教育をだらしなくしてほしくないんです。純粋な気持ちで,本当の実質的な英語力をつけてもらいたいんです。それを入学試験を変に動かすことによって崩すようなことをしてほしくないんです。
 計算しますと,文部科学省の調査ですけれども,中学校,高校で普通に授業を受けてきてどのぐらいになりますか。高校で423時間,中学で420時間。ぎゅっと圧縮しますと,6年間なんてやってないです。たったの1か月です。そこにそんなに多くのことを求めるべきではないと思うんです。
 ただし,そこで申し上げているのは,スピーキングはやらなくていいとか,そういうことを申し上げているんじゃないんです。4技能を別々に考えるというのはかなり不自然なことで,入試にそれを持っていくというのはかなり不自然なことだということを私たち,便宜上はそういうアプローチの仕方はいいですけれども,しかし,それは本当のあるべき姿じゃないということは認めるべきです。
【三島座長】
 了解いたしました。御意見,理解いたしました。
【渡部委員】
 言語を理解する(インプット)ことがなくて,話したり書いたりするアウトプットがあるということはあり得ませんので,読んで,そして,聞いて,話す,書くということが行われるということはやはり常識として知っておくべきです。
 以上です。ありがとうございました。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,最後に,小林委員,どうぞ。
【小林委員】
 芝井先生もお話しされたんですけれども,私大協では,大学教育研究充実部会を先週の火曜日に行いまして,191大学284名の方々が集まってオンラインでディスカッションしたんですけれども,いわゆる大学の質保証という問題の中で,3つのポリシーの中で一番大事なのはやっぱりディプロマ・ポリシーだと。ディプロマ・ポリシーが決まるからこそカリキュラム・ポリシーがあって,それで,それに基づいたアドミッション・ポリシーが出てくるので,確かに出口部分がきちっとしているということはとても大事なことだと思います。
 そのディプロマ・ポリシーをどういうふうに設定していくかということについては,大学それぞれの理念とか教育方針に基づいてディプロマ・ポリシーが決められていくので,もちろん英語がその中に入っている場合もありますけれども,入っていない場合もあるということは御理解していただきたいと思います。そのディプロマ・ポリシーを決める一番大事なのは,やはり社会がその大学に何を望んでいるかということでございますので,その辺のやはり社会からの発信を大学にしていただくというのは1つ大事なことかと思います。
 以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。それでは,今日は長時間にわたる御意見交換ありがとうございました。時間の関係もございますので,本日の検討会議はここまでとしたいと思いますが,最後に事務局から連絡がありましたら,どうぞ。
【武藤高等教育局企画官】
 第21回の次回の会議は,委員の皆様の日程調整の上で,また御連絡させていただきたいと思います。
 以上です。
【三島座長】
 分かりました。それでは,本日これにて終わりにしたいと思います。御協力ありがとうございました。失礼いたします。

―― 了 ――



 

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