大学入試のあり方に関する検討会議(第17回)議事録

1.日時

令和2年11月16日(月曜日)16時~18時

2.場所

文部科学省省議室

3.議題

  1. 大学入学者選抜における多面的な評価の在り方の検討状況について
  2. 「高校生のための学びの基礎診断」の経緯と現状について
  3. 大学入学者選抜における英語4技能評価及び記述式問題の実態調査の結果(選抜区分別調査関係)について
  4. 団体代表委員からの意見発表    ・公立大学協会  ・日本私立大学協会
  5. 自由討議

4.出席者

委員

(有識者委員)川嶋座長代理、益戸座長代理、荒瀬委員、斎木委員、宍戸委員、島田委員、清水委員、末冨委員、渡部委員
(団体代表委員)岡委員、小林委員、芝井委員、柴田委員、萩原委員、牧田委員
(オブザーバー)山本大学入試センター理事長

文部科学省

萩生田文部科学大臣、鰐淵文部科学大臣政務官、藤原文部科学事務次官、伯井高等教育局長、森田文部科学戦略官、西田大学振興課長、塩川参事官(高等学校担当) 他

5.議事録

【川嶋座長代理】
 皆さん,こんにちは。定刻となりましたので,ただいまより第17回大学入試のあり方に関する検討会議を開催いたします。皆様,聞こえていますでしょうか。――はい。ありがとうございます。
 本日は,三島座長が所用で欠席のため,大学入試のあり方に関する検討会議運営要領第1条に基づき,座長代理である私,川嶋が進行を務めさせていただきます。よろしく御協力のほどお願いします。
 今回も新型コロナウイルスの感染拡大防止のため,ウェブ会議方式での開催となっております。音声などに不都合はございませんでしょうか。今確認させていただきましたので,大丈夫と理解しております。
 本日も傍聴者,報道関係者の入室は認めず,ライブ配信での公開とし,後日,議事録をホームページに掲載することとしたいと思います。よろしいでしょうか。――はい。ありがとうございます。
 それでは,事務局から御報告はございますでしょうか。
【武藤高等教育局企画官】
 事務局でございます。今日は,三島座長が御欠席と伺っております。それから前回までと同様に,聞き取りやすいようにはっきりと御発言をお願いいたします。加えて,資料を御参照される際に,箇所を分かりやすくお示しいただければと思います。また,ハウリングを避けるために,御発言を希望される際は挙手ボタンをお願いいたします。また御発言のタイミングでのミュートの解除等々,よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。
 それでは,今回も議事に先立ちまして,萩生田文部科学大臣から御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
【萩生田文部科学大臣】
 本日も,お忙しい中,大学入試のあり方に関する検討会議に御出席いただきありがとうございます。本日は,前回に続き,全大学への実態調査の結果や各大学からの意見発表を踏まえて,英語4技能評価や記述式出題の在り方を含め検討していただくこととなっております。実態調査については,各大学の御協力の下,入試選抜区分ごとの詳細なデータを提出していただき,これをきめ細かく分析しております。この結果も踏まえ,更に議論を深めてもらえればと考えております。
 それでは,本日も活発な御議論をよろしくお願いいたします。
【川嶋座長代理】
 大臣,御挨拶ありがとうございました。
 それでは,議事1の大学入学者選抜における多面的な評価の在り方の検討状況についてに入りたいと思います。これまで委員の先生方より,大学入学者選抜における多面的な評価の在り方について説明をお願いしたいという御意見がございました。これを踏まえまして,大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議の主査であります圓月勝博先生より,協力者会議の検討状況について御説明いただきたいと思います。
 それでは,圓月先生,10分程度で御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【圓月教授】
 圓月です。よろしくお願い申し上げます。
 本年2月に設置されました大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議につきましては,参考資料1を御覧ください。昨年12月に学校の働き方改革の法案が成立したことを受けた教員の負担軽減の観点や,令和6年に実施される新学習指導要領下での指導要録の見直しを踏まえ,資料にございます検討事項について,これまで8回にわたって審議を重ねているところです。現時点での審議の状況について,主査である私から報告をさせていただきます。
 本協力者会議での検討事項について,資料1-1に基づいて説明をさせていただきます。この資料は,これまでの会議において委員から出された意見を整理したもので,直近の10月29日に開催された第8回協力者会議において示した資料です。
 具体的な検討事項は,大きく3項目ございます。1番目が,1ページから始まります大学入学者選抜における多面的な評価の内容や手法に関する事項であります。2番目が,8ページから始まる調査書の在り方及び電子化手法に関する事項でございます。3番目が,16ページから始まります調査書や志願者本人記載資料の活用及び大学への情報提供の在り方に関する事項でございます。順番に説明をさせていただきます。
 まず1番目ですが,主な意見を紹介させていただきます。3ページ,4ページの四角で囲っている箇所を御覧ください。一般,総合型,学校選抜型のそれぞれの選抜区分ごとに求められる多面的な評価の在り方について,様々な意見をいただいております。例えば,各大学のアドミッション・ポリシーで,受験生のどういう能力を評価したいのかを明確にすることが前提であり,調査書だけでなく,志願者本人が記載する資料の活用や,面接などを行うのがいいのではないかというような意見がございました。特に一般選抜における多面的評価につきましては,受験生の数や時間的な制約から多面的評価は困難ではないかという慎重論がある一方,合否に影響のある層だけ抽出して評価するなど,評価方法の工夫によっては評価も可能ではないかという肯定的な意見もございました。さらに,大学入学者選抜実施要項には,一般選抜は様々な資料を使って多面的に評価すると記載されておりますので,多面的評価というものに慎重になるということは実態に合わないのではないか,要項と実態との間に差異があるのではないかという御指摘もございました。
 5ページ,6ページを御覧ください。主体性を評価することの意義については,大学が期待する学びを受験生が理解した上で進路を見つめ直すことで,入学後のミスマッチを解消する狙いがあるといった肯定的な意見がある一方,主体性評価が公平公正な入試につながっていくのかどうかという慎重な御意見もございました。また,評価しようとする主体性とは,ふだんの学習場面での主体性なのか,それとも課外活動等での主体性なのか明らかにすべきではないか,また,こちらの会議でも似た御意見があったと聞いておりますが,高校生にとって過度の動機づけとなり,逆に主体性を損なう危険性はないかという御指摘もございました。
 次は,8ページ以降の2つ目の大項目,調査書の在り方に移りたいと思います。9ページを御覧ください。大学や学部ごとに異なる内容を求められるのは,高校にとって相当の負担である。次期学習指導要領下では指導要録の記述が簡素化されるなら,調査書の様式も必要最小限の共通事項だけにして,記載者による差異を生まないようにする工夫の必要性があるのではないかという御意見もございました。
 次は,10ページから11ページを御覧ください。次期学習指導要領での観点別学習状況の評価についての審議状況を記しております。観点別評価により,教科の学習に限定した主体性は評価できるのではないかとの意見がある一方,高校の現場での観点別評価の実施状況を十分踏まえる必要があるという御意見もございました。
 次は14ページを御覧ください。調査書の電子化の方向性については,様式の統一,標準化は必須であるといった御意見がございます。また,データ管理の考え方につきまして,調査書データは個人データであるから,公的な組織が授受システムを一元的に運用する形とするべきであるという御意見がございました。その一方で,電子調査書の授受システムは安全性の確保が極めて大切であり,データを保持,蓄積しないようにすることも重要なのではないかという御指摘もございました。
 3つ目の大項目の,調査書や志願者本人記載資料の活用等については,16ページ以降にまとめております。17ページを御覧ください。各大学が知りたい情報は,各大学自ら受験生から集めることとし,調査書の記載内容は最小限にすべきであるといった御意見がございました。さらに,その次の18ページを御覧ください。社会経済的格差等をめぐる意見というものをまとめております。適切な多面的評価の手法等につきましては,公平,エクィティーと,平等,イークォリティーの2つの観点をめぐって審議が続いております。大きな2つの方向性といたしましては,不利な条件にある出願者には加点するなどの,いわゆるアファーマティブ・アクションと言われる公平な措置を講じることも1つではないか。2番目としては,不利な条件にある生徒でも平等に書ける評価項目を入れて,この平等な項目づくりというものに努めるべきではないかという御意見がございました。大きく分けて,この2つの方向性で議論を進めているところでございます。
 最後,今後の論点について説明をさせていただきます。こちらは資料1-2のほうを御覧ください。ただいま概略を説明したこれまでの意見を踏まえて,今後の審議における論点を整理するために示したものとお考えください。
 1つ目の項目の,大学入試における多面的な評価につきましては,1ページ目を御覧ください。学力の3要素を大学入試において評価するためには,筆記試験だけではなく,それ以外の評価尺度も用いて多面的に評価することが重要ということでよいか。その上で,学力の3要素の重みづけは各大学のアドミッション・ポリシーや選抜区分により異なり,全ての選抜区分で同程度の多面的評価を行うのではないということでよいかといった論点を示しています。
 志願者の主体性を評価することについては,1ページから2ページを御覧ください。各大学のアドミッション・ポリシーや選抜区分に応じて,調査書や入学希望理由書,活動報告書などにより評価することでよいか。その際,主体性を持ち,多様な人々と協働しつつ学習する態度という,学力の3番目の要素,これのみを取り出して選抜するというよりも,むしろ1番目,2番目の要素,すなわち「知識・技能」及び「思考力・判断力・表現力等」と合わせ,多面的な評価を推進することを明確にし,高校と大学の間で明確な共通理解を図っていくということでよいかといった論点を示しています。
 2番目の項目の調査書の在り方につきましては,2ページから3ページ目を御覧ください。調査書は指導要録に基づき作成するという原則を踏まえると,新しい高等学校学習指導要領の下での調査書の様式は,平成31年3月に示された新しい指導要録の参考様式と合わせて,簡素化する方向でよいかと示しています。ちなみに,この簡素化の論点に関しましては,言うまでもなく高校教員の働き方改革にも配慮した上で,この論点を示させていただいております。
 観点別学習状況の評価につきましては,高等学校の評価の実態等も十分踏まえつつ,大学入学者選抜においてどのような活用の仕方があるのか,引き続き方向性を整理することでよいか。また,調査書の電子化の在り方については,電子化の時期は新学習指導要領に対応した最初の入学者選抜に合わせることを目標としつつ,電子化の在り方について引き続き方向性を整理することでよいかと,現時点ではまとめております。
 3番目の項目の調査書や志願者本人記載資料の活用及び大学への情報提供の在り方につきましては,3ページと4ページを御覧ください。調査書の様式を必要最小限の内容で簡素化した場合,調査書に記載のない学校の教育活動外の取組などにつきましては,入学希望理由書や活動報告書などの志願者本人記載資料を直接大学に提出することでよいかといった論点を示しております。
 最後に,志願者が経済的な条件等に左右されず多面的な評価の機会を得ることができる評価の手法につきましては,エクィティー,公平,経済的不利等がある志願者へのアファーマティブ・アクションとか,あるいはイークォリティー,平等という観点から,経済的不利等がある志願者でも高い評価を得られる活動等も対象にして選抜を行う,この2つの観点に基づいて評価の手法等を整理するということでよいかとしています。前回の会議では,主としてこの論点に基づき議論を行いました。
 多面的評価に関する論点案につきましては,一般選抜は日程との関係で多面的評価が難しい面があるとしても,やり方を工夫することで,知識以外の要素も評価する方法が必要ではないか,多面的評価を進めつつも,全ての大学が全ての入試区分で全ての評価資料を一律に用いなければならないということではなく,入試方法の多様性を確保していくということも重要ではないかといった意見も出ております。調査書や志願者本人記載資料の活用の在り方につきましては,調査書を簡素化し,志願者本人記載資料を直接大学に提出することでよいと考えるが,その場合は今以上に,大学は志願者に何を求めるか明確にしなければならないのではないか。大学としては観点別評価のデータが来れば評価はしやすくなる一方,高等学校の実態などを踏まえると,直ちに観点別評価を調査書に記載するのは混乱を招くおそれがあるのではないかといった御指摘もございました。また,志願者が経済的な条件等に左右されないための措置を導入することについては,志願者の家庭背景等を確認することは非常にセンシティブな面もありますので,まずは経済的条件,地理的条件等に焦点を絞って検討することが妥当ではないかという意見が出されております。
 今後の見通しについて簡単に述べて,御報告を終わらせていただきます。今後はさらに議論を重ねる予定であり,最終的には改善協議への報告などを経て,文部科学省において来年夏頃に発出を予定しておられると思います新学習指導要領に対応した大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告の通知に反映されるものと理解しております。
 少し長くなったかも分かりませんけれども,以上で報告を終わらせていただきます。失礼いたしました。
【川嶋座長代理】
 圓月先生,御説明ありがとうございました。
 それでは,質疑応答の時間を10分程度設けたいと思いますので,御質問,御意見等がありましたら発言をお願いしたいと思います。いつもと同じでございますが,発言を希望される場合は,画面上の挙手ボタンを押していただければと思います。また,発言が終わりましたら,手を下げるボタンを押していただくようお願いしたいと思います。
 それでは,御質問のある委員の方々ございましたら,挙手ボタンを押していただければと思います。
 末冨先生,お願いします。
【末冨委員】
 日本大学の末冨です。主体的な評価の在り方の検討につきまして御報告いただきまして,ありがとうございました。私は内閣府の子供の貧困対策の有識者委員もしておりますので,特にエクイティーとイクオリティに関する評価の在り方ということは非常に重要な論点であろうと存じます。ただ,少し気になるところがございまして,例えば課外活動でアルバイト等を評価の対象にしていく場合,現実には高校のほうでアルバイトは原則禁止や届出制の場合も非常に多い実態があります。あるいは,もう禁止されているので隠れてやっているという場合すらあります。特に困窮世帯の子供たちの中で進学を希望する場合には,受験費用や,それから入学金を稼ぐために,学校に黙ってアルバイトをしているという場合すらありますので,困難な子供たちの状況を考えた場合,確かに学校を経由せずに自分自身で大学に申告していくということは現実に沿った対応であろうとは思われます。ただし,それが,現在の高校教育の在り方について,ではそれでいいですかという点については,なお疑問が残るというふうに考えております。
 それからもう一つ,高校の側の観点別評価の在り方については,私も慎重であるべきであろうというふうに考えております。新しい指導要領に対応しながら,特に観点別評価ですとかパフォーマンス評価をしていくという蓄積は,ここから高校教育がより一層の進化を遂げるために必要な挑戦であろうとは考えますけれども,なおやはり現場の教員が習熟していかなければならない。かつ日本の場合,教員の評価能力はエビデンスとして検証されていない状態にありますので,検証しながら改善するというマネジメントサイクルを,ぜひカリキュラム・マネジメントの面でも,各都道府県,それから私立高校でも進められながら見ていかないと,恐らく教員,学校によって非常にばらつきがあるということは私自身も懸念は共有いたしますということで,以上2点について申し述べさせていただきました。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。圓月先生,特に何かございますか。
【圓月教授】
 貴重な御意見ありがとうございました。1点目のアルバイト等の活動につきましては,やはり現状を踏まえた上で,教育的な観点から慎重に検討したいと思っております。また観点別評価についても,こちらの会議で大きな期待も寄せられているのですが,今御指摘いただいたとおり,まだ始まったばかりのところもございますので,その共通理解をどのように確認していくかというのが重要だというふうに理解しております。どうもありがとうございました。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。
 それでは,島田委員,斎木委員の順で御質問,御意見をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【島田委員】
 筑波大学の島田です。よろしくお願いいたします。ただいまの2つ目の論点の観点別学習状況の評価についてということに関してです。私,これについては期待するところも非常に大きいのですけれども,圓月先生御説明の中で,やはり高校等の評価の実態等も十分踏まえつつ考えていきたいと,あまり急ぐと,これは混乱を招くのではないかという,そういう御説明だったかと思います。これは具体的にどういう混乱が考えられるのかということに関しては,末冨先生御指摘いただいたようなことということでよろしいんでしょうか。それとも,ほかにも何か混乱の要因がありそうだということなのか,もしお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
【圓月教授】
 どうもありがとうございました。基本的には末冨先生が御指摘いただいた,その点であります。こちらの会議にも高校の現場で責任ある立場におられる方がおられますので,まだいろいろな観点別評価自体の考え方に関して,必ずしも共通理解が明確にできているわけではないという報告も受けておりますので,その点を踏まえた御説明をさせていただきました。ありがとうございました。
【川嶋座長代理】
 島田先生,よろしいでしょうか。
 それでは,斎木委員,お願いします。
【斎木委員】
 斎木でございます。大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議における検討状況について,これまでの意見を整理していただき,さらに今後の審議における論点を御紹介いただき, ありがとうございました。大変参考になりました。この問題はとても重要でありますので,協力者会議において,ぜひ引き続きしっかりと議論を深めていただきたいと考えております。
 私としては多面的な評価の重要性を強く認識するものですが,他方において,多面的な評価を全ての選抜区分において一様に求めるとすれば,大学の多様性を損なう危険性及び受験生にとって不合理な大きな負担を課すこととなるおそれがあるのではないかと危惧しております。すなわち,そもそも人間の能力や特質は様々であって,筆記試験に強い子もいれば,部活動でリーダーシップを発揮する子もいるでしょうし,また,人付き合いは悪いけれども,実は多くの本を読みこなし,深い洞察力を持つ子もいます。それぞれの子が有する長所を生かせるように,選抜方法は多様であることが望ましいと考えております。
 それぞれの子供が有する長所を生かせるようにということは,つまり,各受験生が,どのカテゴリーの選抜区分ならば自分の能力とそれまでの努力を正当に判断してもらえるかとの観点から試験区分を選べるという状況が望ましいわけです。全ての選抜区分で一律の多面的な評価を徹底しようとすると, 結果として複数の選抜区分を設ける意義がなくなり,画一的な選抜になってしまうことを懸念しております。協力者会議においては,選抜区分ごとの多様性をしっかり保っていく方向で,さらに検討を進めていただきたいと考えております。
 なお,調査書の件でございますが,高校側の負担に鑑みまして,御指摘ありましたように,例えば学校外のボランティア活動の記録などについて詳細にわたり高校の先生に調査書に記載してもらうというのは,私も行き過ぎではないかと考えます。学外に関するものは基本的に受験生本人に記述をさせ,直接大学に提出させる方向が適当であると考えています。どうもありがとうございます。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。圓月先生,何かコメントございますか。
【圓月教授】
 貴重な御意見をいただき,本当にありがとうございました。こちらのほうでも,やはり入試の多様性というものは非常に重要であろうということを考えております。また,月並みな言い方になるかも分かりませんけど,やはり人を評価する難しさがございます。人間にはいろいろな側面がございますので,それを尊重した上で議論を進めていきたいというふうに思っております。どうもありがとうございました。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございます。
 それでは,時間の関係もございますので,芝井委員,渡部委員で,この議事1については御質問,御意見,発表は終わらせていただきます。最後のところでまた時間ございますので,これに関連して御質問,御意見等があれば,そのときにお願いします。
 それでは,芝井委員,どうぞ。
【芝井委員】
 ありがとうございます。お手元いただきました1-2の資料の3ページです。真ん中少し下の(3)調査書の電子化の在り方についてのところで,「新学習指導要領に対応した最初の入学者選抜に合わせることを目標としつつ」とありますけど,具体的に言うとこれは24年4月のタイミングに合わせるということでよろしいのでしょうか。ちょっと読み方間違えると,全然理解が違うかと思うんですが。
 それから,もう一つでございます。先ほどの斎木委員の御意見に誠に賛成なのですけれども,社会人入試,それから留学生の入試,あるいはスポーツ推薦などの入試のタイプには少し合いにくいところが項目としてあって,そういったことも十分包摂できるような形でお考えいただきたいと思います。既卒生の2浪,3浪にとっても少し無理な点があるかと思いますので,その辺の配慮もよろしくお願いしたいと思います。
 以上,2点でございます。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございます。
【圓月教授】
 1点目の電子化の時期につきましては,そのような御理解で結構かと思います。ただし,いろいろ技術的な問題等も絡んでおりますので,これを「入学者選抜に合わせることを目標としつつ」と,ちょっと含みを持たせているのは,その辺りの最終的なことがどうなるかを確認しているところであるためというふうに御理解いただければと思います。
 多様性につきましては,まさにスポーツ推薦等もございますので,それも視野に入れて考えていきたいと思います。ありがとうございました。
【川嶋座長代理】
 それでは,渡部委員,お願いします。
【渡部委員】
 圓月先生,どうもありがとうございました。1件,質問がございます。資料1-1,20ページです。懸念される点の4番目ですが,進学しない生徒も含めてと書いていますけれども,これは非常に重要な点だと思うんですね。イクオリティ,エクイティーという重要な論点が示されましたけれども,評価というのは本来は在校生,高校生のためにあるべきものであって,そして,それを大学入試のためにも使わせていただくということが趣旨だと思いますので,そこで格差が出ないように,大学に進学する生徒の記述も詳しく,進学しない生徒の記述は程々にというのは,それは本末転倒だと思いますので,くれぐれも公平な記載であるよう深くお願いしたいところです。そして,それにつきまして何か議論はおありだったでしょうか。もし何か議論されたのであれば,1点でも2点でもお聞かせいただけると幸いです。
 以上です。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。圓月先生,どうぞ。
【圓月教授】
 その点に関しましては,非常に重要な問題かというふうに思っております。私たち大学入試のことを議論しておりますと,ともすると高校生の皆さんすべてが大学進学を目指しておられるように考えがちですけれども,ここにも書いているとおり,今のところ進学率は55%,その他の方で専門学校に行かれる方,あるいは就職なされる方もおられますので,あくまで高校での教育的な目的でこれがなされているということを忘れないようにして議論していきたいというふうに思っております。そのことは会議でも確認をしております。どうもありがとうございました。
【渡部委員】  
 ありがとうございました。
【川嶋座長代理】
 圓月先生,ありがとうございました。議事1はここで終わりなのですが,最後に自由討議の時間がございまして,また関連した御意見が出るかと思いますので,最後まで御同席をお願いできればと思います。ありがとうございました。
【圓月教授】
 はい。承知いたしました。どうもありがとうございました。
【川嶋座長代理】
 それでは,本日の議事の2に入りたいと思います。「高校生のための学びの基礎診断」の経緯と現状についてでございます。前回,本会議で,中教審で出された基礎学力の把握の議論が学びの基礎診断へと変わっていった経過について説明をお願いしたいという委員からの御意見がございました。この御意見を踏まえまして,本日は初等中等教育局より,その点を含む御説明をお願いしております。
 それでは,塩川参事官,よろしく御説明お願いします。
【塩川初等中等教育局参事官】
 それでは,高校生のための学びの基礎診断の経緯について,資料2に基づきまして説明させていただきます。
 高校生のための学びの基礎診断でございますが,目的,実施体制,それから大学入試との関係について,様々な可能性から検討してまいりました。まず,一番上の欄でございます基礎レベルのテストということで,趣旨,目的,それから名称についてでございます。
 まず,左の教育再生実行会議におきましては,高校教育の責務として,質の向上を図っていくことが求められる。そうした中,基礎的・共通的な学力を不断に把握,検証して,指導に生かしていくことが必要であるということから,そうした学習の達成度を客観的に把握していくということで,「到達度テスト(基礎レベル)」という名称で創設の検討が示されたものでございます。その後,26年12月の中教審の答申でございますが,こちらのほうでは高校生が基礎的な学習の到達度の把握等ができるような仕組みということで,「高等学校基礎学力テスト」という名称になっております。さらにその後,28年3月でございますが,高大接続システム改革会議最終報告におきましては,義務教育段階の学習内容を含めた基礎学力の確実な習得,それから学習意欲の喚起を図る仕組みを趣旨,目的ということで「基礎学力テスト(仮称)」,さらに次の高大接続改革の進捗状況のところについてでございますが,こちらのほうでは,テストという名称について,それが選抜の印象を与えることや,導入目的等を踏まえて,仮称ですが「高校生のための学びの基礎診断」という名称になり,それが現在に至っているというものでございます。
 次に,真ん中の欄の実施体制でございます。一番左の教育再生実行会議のほうでは,民間の検定や各種試験との相互補完により学習習慣の定着を図る方法を模索するとなっていたところでございます。その後,28年3月のほうでは,実施に当たっては,可能な業務は積極的に民間事業者の知見を活用する,そういうふうなことをまとめていただいているところでございます。その後,次の高大接続改革の進捗状況についてでございますが,こちらのほうでは,大学入試センターを改組した新センターで実施するa案,それから公的な統括・関与の下で民間事業者が問題を作成,実施するb案について検討するということで進めてきたわけでございますが,a案については統一性,基準性を担保しやすい一方,実施のための体制を整えるコストの発生があること,他方,b案については,民間の知見,ノウハウを積極的に活用することで,直接実施よりも効果的,効率的な実施体制を構築できることなどがあるということから,民間事業者の申請に基づいて,基準に適合する者を認定する仕組みに至ったというものでございます。
 それから,最後,下の欄でございます。大学入試の関係でございます。趣旨,目的,今ほど申し上げたように,大学入試に頼るのではなくて,高校における基礎学力の定着を図る方策として検討が進められてきた中でございますが,副次的な利用として大学入試,就職についてどうするかということがずっと議論されてきた中で,教育再生実行会議のほうでは,大学入試の条件にはしないが,各大学の判断で推薦入試やAO入試にも活用可能とするとされていたところでございます。それが26年12月の中教審答申におきましては,そういった副次的な目的として,やはりその結果,大学等が活用することも可能とする。ただし,進学時への活用については,あくまで高校段階の学習成果を把握するための参考資料の一部として用いることとすると,そのように示されているところでございます。
 その後,28年3月の高大接続システム改革会議の最終報告では,副次的な利用の検討としては,34年度までは試行実施期と位置づけて,この間は副次的な利用は行わないこと,その上で本来の目的の高校生の学習改善に用いながら定着を図っていくこと。そしてその上で,35年度以降の副次的な利用については,仕組みの定着状況を見ながら,高校生の学習意欲,進路実現への影響に関するメリット,デメリット等を吟味して検討するというふうにされているところでございます。そして,平成29年7月の学びの基礎診断の実施方針におきましても,進学時の活用といった副次的利用については,そうした高校生の学習意欲,進路実現への影響等に関するメリット,デメリットを踏まえてさらに検討とするというふうにされて,現在に至っているというものでございます。これが,非常に概略でございますが,これまでの経緯になっているというものでございます。
 その後,資料の2,3,4,こちらのほうは,現状,それから最後の4が基礎診断の利活用の状況調査をまとめたものでございます。またお時間があるときに見ていただければ幸いでございます。
 すみません。簡単でございますが,以上でございます。
【川嶋座長代理】
 参事官,ありがとうございました。
 議事の途中ではございますが,大臣が公務のため御退席になるということでございます。萩生田大臣,これまでの議論を聞かれて御感想ありましたら,一言お願いします。
【萩生田文部科学大臣】
 本日は,圓月先生,御報告ありがとうございました。また協力者会議の皆さんにも本当に熱心に御議論いただいておりますこと,この場を借りてお礼申し上げたいと思います。これらの報告によりまして,大学入試の在り方全体の議論をより深めることができたのではないかと考えております。
 確かに,その主体性を評価すると,すごく難しいことではありますけれども,筆記の,1点刻みのテストだけではなくて,高校生活のいろいろな集大成を正しく評価してあげることというのは,高校生の学びの励みに対しても極めて重要だと思います。他方,働き方改革を実践する上で,高校の先生方に御負担が更に増えることのないように,これは正に,デジタル庁もスタートするわけですし,今までの概念とはまた違った,生徒の履歴などを大学等へ提供できるような仕組みというものも,この機会にやはりしっかり落ち着いて,つくり上げていかなくてはいけないのではないかと思っているところでございます。
 この後,実態調査の結果や,柴田先生,小林先生から意見発表があるというふうにお伺いしておりますが,すみません,国会の関係で退席をしなくてはなりません。政務官が残っていただいておりますので,また議事録も,後ほど確認したいと思いますので,どうぞ忌たんのない御意見を頂きたいと思います。
 他方,この実態調査のいろいろなアンケートを見ますと,先生方に本当に丁寧に,1年間にわたって議論していただいて,また来年に向けて取りまとめをする予定ですけれど,決まったことを本当に大学の皆さんが守ってくれるのか,ちょっと不安になる内容も中にはございます。もちろんそれぞれの大学の個性などがあっていいのですけれど,しかし,1回足を止めて仕切り直しを考えようということで,多くの団体の皆さんに入っていただき,これから,言うならば最大公約数で方向性を決めていくわけですから,是非,皆さんでつくった方向性,皆さんでつくったルールというもので新しい受験体制をしっかり切り開いていきたいと思います。引き続きの御協力と御支援を頂きますようにお願い申し上げて,中座をお許しいただきたいと思います。
 今日はありがとうございました。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。
  (萩生田文部科学大臣 退席)
【川嶋座長代理】
 それでは,引き続きですが,塩川参事官のほうから御説明いただきました高校生のための学びの基礎診断の経緯について,御意見,御質問等ございましたら,先ほどと同じく挙手ボタンを押していただければ,こちらから指名させていただきます。
 それでは,まず初めに岡委員,どうぞ。
【岡委員】
 今まで国大協で議論した点について,御紹介をさせていただきます。基礎学力テストの必要性についてということで議論をしたことがございまして,これは先ほど御紹介ありましたように,AO入試,今でいう総合型選抜,それから推薦入試,学校推薦選抜において学力を担保するためのテストが必要であると。まだセンター試験の結果が出ていないということで,こういう基礎テストがあればいい,学力テストがあればいいという意見でございます。それから,今考えてみると,コロナ禍におけるセーフティーネットとしての位置づけもあるのではないかと,こういう意見が出ております。
 それから,高校生のための学びの基礎診断との関係でございますが,今日も御出席されておられます専門委員でもある筑波大学の島田先生からは,高校生のための学びの基礎診断が開始されて日が浅いということで,これまでの活用例などの検証が必要ではないかという意見も各審議会で頂戴しております。これについては島田先生から,また御発言があろうかというふうに思います。
 以上です。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。
 それでは,末冨委員,どうぞ。
【末冨委員】
 日本大学の末冨です。学びの基礎診断についての経緯の報告と,それから現在採用されている学校が,予定の高校を含めると3,000校あるという実態をお教えいただきまして,ありがとうございます。
 幾つか気になる点がございます。まず1つが,学びの基礎診断は,当然,民間の申請されたテストを利用しているわけですから,費用負担がかかるはずですが,その費用負担というものについては家計負担であるのかどうか。それからもう一つが,高校就学支援制度の現行の枠組みにおいて,学びの基礎診断を前提とした金額の設計がされているのかどうか。とりわけ低所得世帯を中心とした奨学給付金のほうに反映されているのかどうかをお教えいただきたいというのが1点目でございます。
 それから,もう1点目は,申請を受けて,文科省のほうで民間のテストが利用できるかどうかといったことについて検討して,認証されている仕組みであるというふうに理解しておりますが,そのプロセスにおいていかなるルールがあるのかということについて確認をしたいと思います。例えば,ここまでこの会議の中でも,イギリスではOfqualという政府機関があって,民間の試験についても相当にオーソライズする仕組みがあるということは明らかにされておりますけれども,例えばですが,その業界の団体のルール,あるいは試験実施企業の自主規制やルールがきちんと確認されているのかどうかという点について確認をさせていただきたいと思います。
 特に何を懸念しているのかというと,民間のテストを利用する際には,最悪の事態を想定すると,学校側へのキックバックなどを前提として,学びの基礎診断という,本来生徒にとって,あるいは学校のカリキュラム・マネジメントにとって不必要なものまで家計の負担で購入させてしまうようなことになりかねないと。もちろん,日本ではかなり学校側が倫理観を持ってそうしたテストを検討しておられるはずですので,そのようなことというのは現実には起きにくいと思いますが,最悪のことを想定しルールを考えるというのも,また政府の大事な役割だと思います。それは生徒を守る,それから無用な家計負担を防ぐという意味で,教育の機会均等にとってもとても重要なことであると考えますので,例えばですが民間試験の採用の仕方について,あるいはその民間試験が信頼に値するものであるのかについてなどの確認の検証の作業の現状についてお教えいただければと思います。
 個人的にはやはり,多様な試験があり,現在はその一部が利用されているにすぎませんけれども,どの業者も,あるいはどの民間企業,もしくは団体も,胸を張って参入できるように,やはり公的な認証,あるいは利益相反ですとかを含めた公平公正なルールというものを整備しながら,このような手続で学びの基礎診断をしていますというふうにできることが望ましいのではないかと考えます。
 以上,大きく2点ですが,お教えいただければと思います。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。それでは,費用負担と認定のルール,プロセスについて,塩川参事官のほうからお願いします。
【塩川初等中等教育局参事官】
 基礎診断の費用負担の件でございます。費用負担については,末冨委員おっしゃるように,家計負担でございます。文科省のほうから,制度認定の際には,家計負担のほうに配慮して,受験料については低廉なものとすることということで要件を設けさせていただいており,かつその上で,実際,業者さんのほうの認定のときにはそういった点の確認もしているところでございますが,現行の制度としては家計負担になっておるところでございます。ただ一方で,もう末冨委員も御存じかもしれませんが,一部の県等においては,県の独自の事業として入れているようなところもあります。そういったところについては県の教育委員会のほうで費用負担をしているというような事例もあるところでございます。
 それから関連して,奨学給付金の積算に反映されているのかどうかということでございます。これは,そういう建て付けでございますので,積算には含まれていないものでございます。もちろん各家計で使っていただくのは可能でございますが,積算には含まれていないというのが現状でございます。
 それから,認定基準等についてという御質問がございました。認定基準については,しっかりとPDCAサイクルにのっとった結果提供がされることですとか,学校にその負荷が過度にかからないようにといったような要件がございますが,委員おっしゃったような,何というんでしょうか,いわゆるキックバック的なものとかについては特に,現行においては規定を置いていないところでございます。今,立ち上がって,今年度2年目の途中でございますが,そういった点について,より公的認証としての外形的な,内容を伴ったクレディビリティーの確保については,初中局のほうで検討会議も設けておりますが,先ほどの御意見も踏まえて,また充実のほうを図っていきたいというふうに思っておりますが,現状このような状況でございます。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。
 続きまして,渡部委員,どうぞ。
【渡部委員】
 ありがとうございました。末冨先生のおっしゃったことと関係あるのですけれども,これは日本の学習指導要領に基づいた学習内容が習得されたかどうかということを確認するためのテスト,検定,診断の手段というふうに理解しております。ただ,それにしては民間のテストが多いというのが非常に目につきます。
 基礎研究の段階から様々な研究団体の援助を協力を仰ぐというのは,むしろ積極的に進めてよろしいかと思います。ただ,既存のテストを使って,本当に日本の学習指導要領で育った子たちがその内容をしっかりと身につけているかどうかということは,測定が困難だと思われます。もっと我が国の学習指導要領に特化していて,しかもほかと大きくずれないような内容をテストする,1つのプロジェクトとして検定試験をつくると,そういった方法というのはないものでしょうか。
 複数の検証の手段がばらばらにあると,それだけ共通の理解がしにくくなります。ですからやはりこういった,卒業後,能力はしっかり付けたんだと,知識はあるんだと,そういうことを共通の理解が必要となります。繰り返しになりますが,例えば何らかのチームをつくって,そこにいろいろな方々の協力を仰いで,そして非常に優れた評価システムを作るというような方法はあり得ないものでしょうか。
 以上です。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。御意見として承るということでよろしいですか。――はい。ありがとうございました。
 それでは続いて,芝井委員,お願いします。
【芝井委員】
 ありがとうございます。資料2の1ページの表についてお尋ねしたいと思います。大学入試との関係をずっと6段階で見ていきますと,文言の問題なんですけれども,4つ目の項目です。平成29年の5月の高大接続改革の進捗状況の中では「将来的な基礎テストの結果活用に関し,学力の定着度合いが認定され,対外的な証明について改めて検討する」という文言になっています。その次の項目では副次的利用,いわゆる主として高校生自身の学力の確認というのが自己診断の目的でしょうから,そういう意味では,大学がもし入試の場面でその結果を使うというのは副次的利用だということだと思うんですが,そのときには,その認定制度の云々かんぬんがありまして,最後に,メリット,デメリットを十分に吟味しながらさらに検討すると。その後の30年3月の認定基準・手続等についてのところも,メリット,デメリットを十分に吟味しながら具体的検討を実施すると書いてあるんですが,この具体的検討はどんなふうな形で行われて,どういう状況なんでしょうか。これが1点です。
 それからもう一つなんですが,具体的に学びの基礎診断の中に,例えばですが,3教科型だと3種類,もっと中が細かく分かれていますから,様々な種類の測定ツールが各社から出ているわけですけれども,例えば英語の4技能であればCEFRのような,不十分かもしれないけど相互に共通するレベルを想定しながら位置づけることができるわけですが,基本と標準という2段階はあっても,そこで取ったものがどんなふうな相互共約可能性があるのかについて全く何も書いてないんです。これは一体,副次的利用というのはどういう形で想定されているんでしょうか。この2点です。
 以上です。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。現状の検討状況について,何か参事官のほうから,2点について御報告ありましたらお願いしたいと思います。
【塩川初等中等教育局参事官】
 検討状況についてでございます。こちら基本的に現段階においても,28年3月のところの,35年度以降の大学入学者選抜においての活用方法についてさらに検討を行うということにしているところでございます。これを念頭に置きながらと思っているところでございまして,現在の段階においては,まずもって高校段階の基礎学力の定着に向けた各高校の取組でしっかりPDCAサイクルを回していただくこと,それに向けて,この活用の定着を主目的としているところでございます。なので,今のフェーズにおいて具体に検討の状況どうかというと,何か進捗しているものがあるかというと,ないところでございます。
 ただ,今こうした整理になっている中で,いろいろな課題として挙げられておりますのは,当時の議論としては,例えば試験というか,この検定の実施日ですとか試験監督のやり方等についても特段設けているものではございませんので,そういったものも含めて,定着する中で,使っていくに当たってはどうするのかというのを,むしろ,次の指導要領改訂,高校はまだ導入されておりませんが,そこも導入された中で検討していく形で進めていくのかなというふうに考えているところでございます。
 すみません。以上でございます。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございます。導入2年目ということで,高校での活用の仕方,それから認定の仕方,基準の作り方,あるいは同等性の確保,それから入試との関係については,これからさらに議論を進めるという理解でよろしいですかね。――はい。ありがとうございました。
 それでは,後ほど自由討議時間がございますので,関連質問等,御意見ございましたら,そのときにお願いします。
 それでは引き続きまして,議事3,大学入学者選抜における英語4技能評価及び記述式問題の実態調査の結果(選抜区分別調査関係)について,事務局より御説明をお願いします。
【武藤高等教育局企画官】
 それでは,御説明いたします。資料の3を御覧ください。
 本件調査についての御説明は,今回が2回目でございます。今回は選抜区分別調査でございます。2ページを見ていただきますと,この前は学部別調査でございましたが,今回は2,3,4を御説明いたします。全部で75ページあるので,はしょりながら御説明したいと思います。
 まず4ページを御覧ください。入試の方法を選抜区分数別に見たものでございまして,一般入試が52.3%,AO入試が13.5%,推薦入試が33.7%,これは全体の数字でございますけれども,国立大学について見たものがその右にございますオレンジのところですが,一般入試が57%,公立を同じように見ますと52%,私立大学は51.8%と,選抜区分で見るとこんな感じでございますが,5ページに参りまして,同じような図ですけど,これは入学者数別で見たものでございます。これで見ていくと,例えば国立大学のところです。一般入試が87.8%,公立大学が71.8%で,私立大学が44.1%ということで,かなり国公私で大きな違いが,選抜区分ではそうでもないんですが,入学者数ベースで見ると大きな違いがあるということでございます。
 9ページを御覧ください。ここは推薦入試の種類についてまとめたものでございまして,青いところの下ですけれども,公募型が,私立だと39.5%,附属・系列高が19.5%,指定校が28.0%ですが,国立,公立はほとんどが公募型という形になっております。
 それから10ページに参りまして,これを同じように入学者数別で見たところ,御覧のような感じでございます。若干公募型の数が少なくなって,指定校が増えるという形でございます。
 12ページを御覧ください。全学部あるいは複数学部での共通入試の実施についてデータを取っております。まず一般入試におきまして,全学部で共通の試験問題を用いて合同で試験を実施すると,そういう形で合否判定を行っているのが42.9%,複数の学部で同じく共通の入試を実施しているのが17.8%という結果でございました。
 続いて16ページを御覧いただけますでしょうか。16ページは電子出願の可否について聞いたものでございまして,全体の欄を見ていただくと,電子出願可能というのが一般で90.2%,AOで55.5%,推薦で57.8%ということで,全体的にかなり進んでいるんですが,AO,推薦がもう少しという感じでございました。
 それから,次の17ページに行きまして,これからまさに今回の御報告の中心的な事項で,選抜区分別のいろいろな試験の実態について見ていきます。まずはセンター試験の利用の実態でございます。
 18ページを御覧ください。まず一般入試でいきますと,オレンジ色のところですけれども,個別選抜とセンター試験を合算して合否判定しているのが,国立で94.9%,公立で93.2%,これに対して私立では,それは8.1%にとどまりまして,34.9%がセンター試験だけで選抜をしている。それから,そもそもセンター試験を利用していないというところが55%あると,こんな状況でございました。これをAOで見ますと,国立のところ,個別選抜と合算するのが30.8,一方,利用がないというところが52.1,私立に至っては,これは99.1%がAO入試にはセンター試験を使っていないと。推薦入試は,御覧のとおりですけど,国立で合算が32.8,公立で14.5,私立は推薦についてもほぼ利用なしと,こういう状況でございました。
 次のページを御覧ください。センター試験の過年度成績の利用状況ということで,一般入試で6.8%,AO入試で2.5%が過年度成績の利用をしていると。特に一般入試のところは全部が私立大学ということで,AOも国立が6%,公立が1%,私立が3%と,こういう状況でございました。
 それから,合否判定で利用するセンター試験の科目数というのは20ページにあるとおりで,国立大学では7科目,公立では7,5,6科目,私立では2あるいは3科目の利用が多いと,赤字で示しているところでございます。
 それから,次に21ページを御覧ください。センター試験における外国語の利用ということで,英語,ドイツ語,フランス語,中国語,韓国語の利用状況。一般入試でいきますと,必須科目としているところが60.6%,選択科目というのが35.1%でございました。左下ですけれども,この必須科目と言っているところの内訳が,英語以外の外国語も選択できるというところが58%,英語だけだというところが42%,また選択科目としているところの内訳でも,英語以外の外国語もできるというのは57.6%で,英語だけが42.4%と,こういう感じでございました。ただ,実際はほとんどが英語でございまして,その他の科目全て入れて1,000人ぐらいというのが実際の規模感でございます。
 23ページを御覧ください。センター試験の英語のリスニングの利用の状況ですけれども,一般入試でリスニングを利用するのは,国立大学で97.4%,公立で98%,私立で72.1%ということでございました。そのリスニングを利用する際の外国語の得点算出方法というのが24ページにございますけれども,一般入試においては,今,センター試験の配点の割合がリーディングが4,リスニングが1でございますけれども,これと同様の配点にしているところがほぼ100%に近い状況でございました。来年1月の共通テストはこれが1対1になりますけれども,今のところ変えるところと変えないところに分かれているような状況だというふうに伺っております。
 続いて25ページに参りまして,センター試験の合否判定時の換算点というのを掲げております。
 これはセンター試験の点数と二次試験などでの点数,総合で決めることが多いわけですが,それを100とした場合にセンター試験が占める割合をグラフにしているものでございます。
 国立では平均すれば57.5%なのですが,一番多いのが66%から70%というところが382でございます。公立は全体としては65.7%なのですが,同様に66から70が一番多いと。
 これに対して私立は二極化しておりまして,そもそも一番左側の個別選抜だけでやる,センター試験は使わないというところが一番多くて,また,右側ですがセンターだけで選抜というところがその次に多いというような状況でございました。
 続きまして個別選抜の実態に移ります。27ページを御覧ください。
 まず,センター試験を利用していると回答した選抜区分のうちで,さらに個別学力検査を実施しているところが,一般入試で69.4,AOで4.3%,推薦入試で4.1%でございました。
 その際の科目数,その次のページにございますが,国立大でいくと2科目,1科目,4科目が多いと。公立大では1科目,2科目,私立大学で1科目,2科目が多いという結果でございました。
 駆け足で恐縮ですが29ページを御覧ください。今度はセンター試験の利用がないというところで,センターも利用しないし個別学力検査もやらないというところが,一般で6.0%,AOで85.3%,推薦で77.6%でございました。その科目数は次のとおりでございまして,これはほとんど私立大学ですが,2科目ないし3科目を課しているということでございました。
 途中大分飛ばしますが,45ページを御覧ください。これは英語に関する4技能別の出題の有無について伺っておりまして,左上の全体のところを見ていただくと,一番多いのがリーディング,「読む」でございます。ほぼほぼ出題がされている。その次に多いのは「書く」です。5割弱ぐらいが「書く」で,その次が「聞く」,これは一般入試だと2.4%,そしてスピーキング,「話す」が0.2%と,一般入試ではそういう状況でございました。
 続いて47ページに移っていただけますでしょうか。これは,この会議でも何度か話題になっておりましたが,AO入試における学力不問のような状況が課題であるという御発言が何度かあったところだと思いますが,AO入試での学力把握ための措置というのを聞いております。
 これはセンター試験,丸1が6.4%,個別検査をやっているところが12.4%というような感じで見ていただいて,書面(推薦書等)というとこが82.6%,実技検査等々の検査が21.4%,小論文等が47%,面接・討論等が89.6%,高校の学習成果,これは調査書等ですが,ここが93.2%,高大連携の成果等を見ているところが22.6%,資格・検定試験が51.1%,活動歴等が42.3%というような状況でございました。
 同じように推薦についても御覧いただければと思いますが,特に多いのがやはり書面であったり,あるいは,推薦の場合は面接・討論が非常に多いのと,高校における学習成果が非常に多いというところが特徴的かと思います。
 その次,52ページに参りまして,これは今,ざっくりとしたデータが47,48ページでございましたが,例えば書面といったときに,実際にどんなものが使われているのかというのをより深掘りして聞いているところでございます。
 例えば推薦書であれば,AO入試でいうと中ほどの黄土色のところですが,推薦書でいえばAO入試で16.1%,推薦入試でいうと推薦書が86.7%。真ん中の入学希望理由書・学習計画書はAOで80.8%,推薦で59.6%。活動報告書はAOが38.7%で推薦が16.1%というような状況でございます。
 同じような形で,今度は検査ということで見ていくと,基礎学力の把握のための簡易な検査をやっているところが,AO入試で15.4%,推薦で9.0%でした。
 それから,次の54ページ,小論文等でいきますと,レポートがAOでは20.5%使われている。小論文がまさにAOで28.8%,推薦で30.6%。英語による小論文・エッセイというのはかなり少なくて,1.8%あるいは1.2%という具合でございました。
 続けて55ページ,今度は面接・討論等でございますが,面接が一番多くて,AOで84.1%,推薦で77.5%。口頭試問となるとかなり減って,AOで21.7%,討論がAOで8.7%,プレゼンがAOで18.4%,英語等による面接・プレゼンがAOで6.1%という形でございました。
 その次は高校における学習成果というところで,調査書が一番多くて8割から9割ぐらい。それから高校の評定平均が,AOだと72.5%で推薦だと82.9%。それから総合的な学習の時間や探求などを見ているというのが,AOで42.7%,推薦で32.2%という具合でございました。
 次のページは高大連携の成果ということで,模擬講義とありますが,大学で受けた講義の成果,あるいは大学から出された事前課題の評価といったものが,AOでそれぞれ14.8%,あるいは11.7%という具合でございます。
 それから,英語も含めた資格・検定試験の成績ということでいきますと,グラフで2つ目ですが,英語に関しては一般入試で18.6%の選抜区分が使っている。AOで47.9%,推薦で31.7%でございました。それ以外も,ざっと見ていただくと非常に多種多様な検定試験のスコアが選抜で使われているというところが見て取っていただけます。
 続けて59ページでございます。活動歴・顕彰・表彰の類いですが,例えば国際科学オリンピック等の成果ということでいくと,AOで31.7%,推薦で18.0%。それから各種大会,顕彰の記録がAOで41.9%で,推薦で24.8%。英語のディベート・スピーチ・プレゼンテーション等がAOで33%と,推薦で19.5%。留学経験等が同様に29.5%と17.7%という具合でございました。
 それから,特に英語資格検定試験の活用の実態について,さらに深掘りをして聞いているものでございます。61ページを御覧ください。
 これは,まず国公私計という左上のグラフを見ていただきたいと思うのですが,この検定試験の活用が「あり」,あるいは「今後活用予定」,あるいは「検討中」,「検討予定」,「検討予定なし」と,こんな感じで聞いております。
 一般入試については「活用あり」と「今後活用予定」を合わせて21.1%。同様に,AOで見ていくと36.8%,推薦で24.4%という具合でございましたが,「検討中」と「検討予定」を加えたものを見ていくと,それだけで一般入試だと34.5%,AOで21%,推薦で28.0%といった具合でございました。
 これは,一般入試の欄を見ていただきますと国公私で結構違いがありまして,この「活用あり」と「今後活用予定」を合わせたものでいくと,国立よりも公立が大分少なくて,私立が大分多いという形で,設置形態で結構違うということが言えると思います。
 学科系統別分類したものが62ページにありますが,活用すると言っているところが,人文科学・社会科学,理学・工学が大体同じぐらいでございます。農学や保健がちょっと少ないのですが,今後の活用の検討なども含めると,実は農学・保健は結構増えるという感じでございました。
 これらの検定試験を活用している選抜区分をくぐり抜けて入学した方々の数ということで,これは延べですが,全体で,中程にありますが9万9,439,約10万人ということでございました。しかしながら,これを国交私で見ていくと,国立大学は,64ページですが1万3,155人。65ページで公立大学は1,821人。66ページ,私立が8万4,463ということで,ほぼ私立大学で占められているということを見て取っていただけると思います。
 それから,次の67ページで,この資格検定試験の実際の活用方法について詳しく聞いております。
 まずグラフの左側を御覧いただければと思うのですが,例えば出願資格や,あるいは加点しているか,あるいは得点換算をしているか,あるいはもう独自の英語の試験は廃止して個別学力検査を代替しているのか。さらに,判定の優遇や合否の際の参考に使うという使い方なのか,こういうふうにきめ細かく聞いておりますが,その結果,国立大学で一番多いのは,センター試験に換算と。センター試験の免除はしないのだけれど,センター試験に換算するというのが80%。公立も同様でこれが50%。一方,私立大学は個別の学力検査に換算して,かつ学力検査の免除もありというところが36.3%で最も多いという結果でございました。同様に,AOあるいは推薦が68,69ページにあるので,後ほどまた御覧いただければと思います。
 利用可能な英語資格・検定試験のリストというか,グラフが70ページにございまして,御覧のような,かなり幅広く,昨年の英語成績提供システムに参加していたところだけではなくて,いろいろなところの資格・検定試験が使われているということで,71,72ページに同様にAOと推薦もございますが,ほぼ同じような傾向でございました。
 続けて73ページで,複数の検定試験が利用可能な場合,活用を認めている場合に,スコアを比較する方法ということで,まず,文科省が当時示したCEFRの対照表を参考にしているというところが,一般入試で39.7%,AOで33.6%,推薦で31.1%ということでした。丸2,大学が独自に換算をしているけれど,その際はCEFRも参考にしているというところが,一般で40.1%,23.7%,31.5%という具合。それから,大学が独自にやって,その際CEFRは参考にしていないというところが7.5%,6.8%,15.0%という具合でございました。
 それから,資格・検定試験のスコアの有効期限についてですが,一律1年以内と言っているところは非常に少なくて,2年以内というところが一般だと30.3%,それから試験実施団体が定める有効期限内というところが一般だと22.3%。「特に定めていない」が結構各選抜区分で多いのですが,「その他」もかなり多くて,その他は,高校在学中に取得したものであれば認めるとか,あるいは一律に3年以内という回答が多かったところです。
 最後の1枚ですが,スコアが提出できない場合の何らかの代替措置をつくっていますかという設問に対して,スコアの提出が不要な選抜区分を設定しているというところが,一般ですと13.5%ございました。それから,高等学校における同等の能力証明というのはすごく数としては少ない。AO・推薦で若干ございます。それから成績の有効期限の延長というのが若干あるのと,一番多いのが,代替措置を設けていないというところが7割から8割近く,それぞれの選抜区分であったところでございますが,恐らく,この6番の中に丸1がかなり入っているのではないかと思っていまして,代替措置を設けていますかとストレートに聞かれたら,いや設けていないよということですが,実際には,スコアがなくても受験が可能な,同じ学部に入るために受験できるような選抜区分がたくさんありますので,1と6がかなり込み入ってきているのではないかなと思われます。
 また,令和3年度入試については,新型コロナウイルス対策の観点で,代替措置を実施する選抜区分も相当数あると承知しております。
 ちょっと駆け足で恐縮ですが,以上でございます。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。この実態調査に関しての意見交換等は,次の議事4の御報告の後,最後に自由討議のところでまとめて行いたいと思います。
 それでは,次に議事4,団体代表委員からの意見発表に入りたいと思います。本日は公立大学協会の柴田委員,日本私立大学協会の小林委員から,それぞれ10分程度,意見発表をお願いしたいと思います。
 それでは,まず柴田委員,10分ほどで御報告をお願いしたいと思います。
【柴田委員】
 福岡県立大学の柴田でございます。一般社団法人公立大学協会におきまして,本日,会長名による意見を提出させていただきました。
 この意見まとめに当たりましては,全公立大学,今93校ありますが,それに対しましてアンケート調査を行い,各項目について御意見を伺った上で,公立大学協会の中の第2委員会に設置されております入試作業部会において検討し,取りまとめたものでございます。
 公立大学は御承知のように地方自治体が自ら設置するという形で,その設置目的に即してアドミッション・ポリシー等を定め,適切な入学者選抜を実施するよう努めています。
 一方で,この93ある大学のうち,約6割の公立大学は極めて小規模で,教員数が百人以下というものが半分以上を占めております。したがいまして,ぎりぎりの人員体制で公正な入学者選抜を実施しているという実情もございます。
 そういう状況の中で,本意見は各公立大学から寄せられたものを集約したものですが,大学の規模や分野等に応じて,寄せられた意見も多様なものとなっております。
 さらに,コロナ感染症の状況が見通せない中では,大学がそれぞれの実情,地域の状況にも即して,現実的な方向性を選択できるということを確保するため,今後の制度設計がなされるということも期待されるところでございます。
 以下,6つの項目について意見を述べさせていただきます。
 1番目が英語4技能の評価についてです。英語4技能の評価を行うことは,言うまでもなく重要で,既に多くの大学において,アドミッション・ポリシーに即して,必要な技能を個別学力検査等で評価していますが,大学入試センターが共通テストで可能な部分を実施し,それ以上の評価については大学側で適切に判断して実施していくことが基本的な枠組みとして望ましいと思います。
 その際,特に小規模大学では,個別学力検査において4技能全てを評価するということは,体制面,費用面,人手不足,問題作成の労力などで,実現がなかなか難しいところがございますので,共通テストでの枠組みの実施を望む声も多くございます。
 したがいまして,外部試験を共通テストの枠組みで導入し,成績の提供を行うことについては,公立大学,特に小規模校にとってはメリットが大きいところですが,併せて地域間格差,経済的格差等によって,公平性・公正性が失われることのないようにするとともに,どのように英語4技能評価を採用するかについては,受験資格とするなど,各大学が柔軟に判断できるようにすることが望ましいというのが多くの意見でございました。
 2番目,記述試験の導入につきましては,既に多くの大学では個別学力検査の記述問題や小論文,出願書類等で記述する力を評価しておりますが,一方では,それが必ずしも記述する力,思考力・表現力等,深みのある力を担保する上で十分でないといったような指摘もあるところです。
 そうした意味では,共通テストにおいて記述式の導入の必要性は高いと言えますが,採点の公平性,それから成績提供が遅れることで,個別学力検査等の日程が厳しくなるデメリットへの懸念は強く残っているということでございました。
 3番目,多面的評価及び調査書の取扱いについてです。調査書の活用につきましては,受験生を多面的に評価する上で,調査書は極めて重要な書類であり,多くの大学では面接時の参考資料として扱っています。
 しかしながら,高校によってこの取扱い方法,力の入れ方に差があり,公正に評価することが困難なため,点数化まで至っていない大学が多くございます。今後,公平で客観的な評価基準の開発が望まれます。
 さらに今年度より,調査書の分量が弾力化し,また記述項目も細分化されておりますが,それらの審査作業での取扱いの負担も増しております。また,高校ごとに異なる基準で記載されていることは,タイトなスケジュールの中で,大学側が適切に評価することを困難にしているという指摘もございます。
 次に,主体性の定義についてです。主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度について,主体性は受験生の性格にも左右されるものであり,優劣をつけて入試で判定することは極めて難しい。それから,「主体性」という言葉が一人歩きし,人間性までもが評価されるような印象をもたらしており,主体性を発揮できる機会に恵まれたかについては,格差を反映するのではないかという意見もあり,留意が必要であろう。
 その他,一般選抜において多面的評価を行うとすれば調査書を頼るしかないが,一般選抜における調査書の取扱いについては,各大学において,現在,研究の途上であります。一般選抜における調査書の取扱いの重みが増せば,総合型選抜や学校推薦型選抜との差別化が困難となり,多様な学生を受け入れるために複数の選抜方法を実施する意味が失われるのではないかという指摘もございます。
 4番目,公立大学の入学者選抜についてです。ごく一部の大学を除きまして,公立大学は国立大学とともに分離分割方式を一般選抜で実施しております。特に薬学,芸術系等を中心にし,公立大学独自の中期日程が実施されております。
 これらの方式については課題も指摘されておりますが,過密な日程の中で選抜を実施していくための制度として一定の理解を得ているものと考え,現行のまま維持していきたいと考えております。
 それから5番目,新型コロナウイルス感染症への対策のガイドラインについてです。今般制定されました無症状の濃厚接触者への対応や,受験生の動線確保等は,大学の規模が多様であるため,過度な標準化は望ましくないと考えておりまして,個別学力検査においては,全体としてガイドラインに即しつつ,個別大学の判断で適切な対応を実施することが望ましいと考えております。
 なお,公立大学では,先に開かれました入学者選抜における協議会におきまして,今回の新型コロナウイルス感染症への対応につきまして共通認識を得ておりますので,時間がありましたら後ほど御高覧いただければと思っております。御紹介させていただきたいと思います。
 6番目,その他でございますが,障害のある受験生に対する合理的配慮につきましては,例えば英語4技能をどのように評価するかなどについて,独自で判断することは難しい。想定される障害について,具体的な合理的配慮の在り方を国のほうで示しておく必要があるという希望があります。
 それから,英語4技能や記述における能力など,共通テストに過度の役割を担わせることについては無理があり,共通テストでは基礎学力を評価するという当初の考え方に立ち返るという方向性もあろう。発展的な学力については,各大学がアドミッション・ポリシーに従って個別学力検査で評価することが望ましいということでございます。
 それから,大学入試は大学が求める資質を評価するものであり,高校までの学校教育に関する問題を解決することには直接につながるものではないということに留意することが必要であるという御指摘もありました。
 新たな入試制度の検討に当たっては,小規模な公立大学が多いことでございますので,入試実務担当者,特に大学職員の声にも広く耳を傾け,特にフィージビリティーの検証に当たっては,現場の状況を十分に踏まえた議論を求めたいというところでございます。
 時間がございましたら,追加資料として後で提出されたものでございますが,大学入試の危機管理事例集というのを,そちらのほうで御提示いただけませんでしょうか。いただけなければ,また別の機会にでも御説明させていただきますが。
【川嶋座長代理】
 画面上への提示は今できないようですが,委員のお手元には渡っています。
【柴田委員】
 お手元にありますでしょうか。それでは,大学入試の危機管理事例集というのがお手元にあると思います。まず,これは先ほどございましたエクイティーとイクオリティの話の参考資料でございまして,参考になればということで,先ほどの多面的な評価の協力者会議で提示された資料で,これは私の個人的なものです。それに引き続きまして,入試危機管理のこの資料は,皆様,お手元に御覧いただいていますでしょうか。
 これまで,日本の入試というのは,特定の日時に集中して全国一斉に集まってやるということで,非常に脆弱性があるという指摘を受けていますが,御覧いただきますと,過去にも度々,かなりクリティカルな局面に直面した事例がございます。
 私の承知しているところでも,最近では平成7年の阪神・淡路大震災のとき,これはセンターが行われた2日後の火曜日の早朝だったと思いますが,急遽センターの追再試が2会場から3会場になって,九州でも開催したということと,一般入試で特例入試といって特別に学生募集をした記憶がございます。国立の全95大学,公立全48大学。私立大学では41大学が実施され,結果として国公立では合格者を349人,私立では802人が,この特例入試で合格しています。
 それから,今回によく似たのが平成21年,新型インフルエンザが秋口から流行して,感染対策ガイドラインが設定され,センター試験の追試験が今年度と同じように2週間後,47都道府県で会場設定されています。幸いにもこの時は,秋口から始まった流行がセンター試験の時にはかなり終息に向かいまして,追試を受けたのは900人弱だったようでございます。
 直近では,御記憶のように東日本大震災が後期日程の前日に起こりまして,被災した大学では個別の二次試験を中止せざるを得なくて,センター試験の成績や調査書等々で個別に合否判定を行ったということでございます。
 それからその次,ちょっと長くなりますが,これは公立大学で共有したスキームでございますが,令和3年度の入試,2つの要素,感染症対策と,それから学業の遅れに対する対応の二通りがありますが,第1日程,第2日程というのを設置しております。
 今後のこの感染症の蔓延状況によっては,どういう変化があるか分かりませんが,過去の事例から言いますと,何らかの特例選抜等々も準備した上で,十全の対応ができればということを祈っている次第でございます。
 ちょっと雑駁なお話ですが,以上が公立大学で共有している,新型コロナウイルスに対する対応策等々を御紹介させていただきました。
 私のほうからは以上でございます。
【川嶋座長代理】
 柴田委員,ありがとうございました。
 引き続き小林委員から,10分程度の御発表をお願いしたいと思います。
【小林委員】
 私大協団体代表の小林でございます。ありがとうございます。
 資料5について説明いたします。最初のページは全体のまとめですので,次ページからかいつまんで説明させていただきます。
 まず初めについては,これは私大協が毎回言っていることですが,3行目,私立大学は我が国の大学の77.4%を占め,学部学生数についても78.1%を担い,その多様な教育により,我が国の社会を厚く支えている現実を直視すれば,私立大学の振興を大学政策の中心に据える高等教育政策の構造的大転換,パラダイムシフトの実現が求められます。
 次の行,国立大学と私立大学の間でいまだ手つかずとなっている学部学生1人当たりの公財政支出の格差が約13倍にも及ぶ不合理の早期是正は,入学者選抜を含む公正な大学間の競争を促す上で極めて重要であります。
 次の行,私立大学における大学入学者選抜は,建学の精神を源泉とする多様で特色ある教育実践の第一歩に位置付けられるものであると。少し過ぎて,私立大学における大学入学者選抜は,第一義的には各私立大学の自主性・自律性に委ねられるべきであると。
 今回の意見開陳に関しましては,大臣に最初に言われた諮問内容に沿って説明させていただきます。
 まずクエスチョンの1,英語4技能評価の在り方について,次のページをお開きください。
現実的には,先ほどの資料3の中にもありましたが,10万人のうち8万4,463人の学生が民間の資格検定試験を活用する現状にあります。最初の丸,私立大学は多様であり,入試においては英語4技能評価を重視する大学がある一方で,大学・学部によっては4技能を均等に必要とせず,アドミッション・ポリシーに入れていない場合も少なくありません。
 例えば医学部,歯学部,看護学部,薬学部,福祉学部など,国家試験合格を目的としている大学,それからスポーツ関係,芸術関係,国文学関係などの大学では,AC,CP,DPを通じて英語4技能が最優先課題ではない。決して課題ではないとは言っていませんが,最優先ではないです。
 また,一般選抜では実施されていないものの,総合型選抜で先進的な4技能評価を実践しているケースもあります。これは今回の資料3を見ていただければと思います。
 よって,私立大学の個別入試においては,英語4技能評価を一律に課せられるべきではなく,その採否や方法については学部等の特性の考慮も含めて,私立大学の自主性・自律性に委ねられるべきである。
 次に,民間の資格試験を用いた英語4技能評価には,複数の問題点がこれまでの検討会議で指摘されています。
 丸1の後ろのほう,CEFRの信頼性は確かではなく,境界も安定していないという意見もある。CEFRはもともとイギリス系の資格試験の評価に使われ,そのマニュアルが整備され,さらに第三者機関に定期的な査察を受けてその信頼性を担保している。一方,イギリス系以外の資格試験では,イギリスのマニュアルを基に,それぞれの機関が自己評価し,換算表を作成していることに加え,査察制度もなくその信頼性に乏しい。
 次に丸2の2行前の一番後ろのほうからです。文科省はCEFRを換算評価に適用する際の問題点や正しい使用方法を周知することが肝要である。これは要望です。
 丸2,ウェブ意見募集の際に,多くの国民は共通テストにおいて特定の受験産業の業者が民間資格試験を行うことに利益相反の危惧を表明した。また,高校の教員へのヒアリングでは,英語資格試験の対策講義を保護者が期待したり,教材を民間資格試験を行っている業者から購入したりすることへの道義的問題が指摘されている。
 先ほどもお話がありましたが,イギリスでは第三者機関であるOfqualが利益相反事項もチェックしており,過去問解説集の出版なども規制しているということです。
 次のページの,丸3の2行前の後ろのほうです。試験対策機会に恵まれた高校生が有利となり,地域格差や経済格差を助長することが危惧される。丸3,民間資格試験は受験機会に恵まれる地域が有利である。最後のほうの行で,受験生の公正な競争が担保されるような環境整備を国には期待される。この民間資格試験を利用する場合ですね。
 次の丸の黄色の網かけのところ,1つの解決策ですが,大学入試センターや英検など公益法人を中心とした英語4技能の試験体制を共通テストとは別に整備し,第三者機関による定期的なチェックや利益相反に関するマネジメントを行うことも検討されたい。この定期的なチェックや利益相反に関するマネジメントがしっかりできれば,民間の資格試験でも,公益法人でなくてもよろしいかと,私は個人的には思います。
 クエスチョンの2,記述式出題の在り方についてです。丸の次の段落で,記述式による思考力,判断力,表現力の評価は,多くの私立大学で総合型選抜や一般入試で既に取り入れており,一律に大学入学共通テストで試験を行う必然性を感じ得ない。記述式出題も,各大学のアドミッション・ポリシーで必要とされる能力が異なる。1)から4)まで,かなり異なった内容の能力が必要になることを具体的に書いています。
 次の丸,黄色の網掛け,記述式出題については,共通テストで一律に記述式試験を行う必要はなく,私立大学の個別試験においても一律での導入を避け,その採否も含めて,私立大学の自主性・自律性に委ねられるべきである。
 民間の記述式試験の採点には複数の問題点が指摘されていますが,割愛させていただきまして,次の下ページで4ページ目ですが,丸5を読ませていただきます。大学入学センターや幾つかの大学が集まり,手分けして記述式の作問を行い,希望する大学に供与して,それぞれの大学で採点する,いわゆるコンソーシアムをつくるという案も挙げられていましたが,入試時期が同日同時刻でない限り難しいのではないかと考える。
 丸6,共通テストで記述式出題を課し,採点を志望校に任せるという案も仄聞するが,複数の志望校への受験が通例であり,それぞれの志望校ごとに採点するのは採点に要する労力が過大な上に,採点のばらつきが生じ,その信頼性において大いに懸念される。
 次,クエスチョン3 経済的な状況等に関しまして,センター入試では多くの私立大学は施設と教職員を提供し,センター利用による入学者の割合は少ないにもかかわらず,多くの国公立志望の学生の受験にも協力してきました。この私立大学の努力により,経済的状況や居住地域,また障害への合理的配慮もされてきたことを忘れないでいただきたい。
 また,個別入試では地方会場を設置するなど,地方への配慮は私立大学の各大学で取り組んでいます。黄色の網掛け,今後,共通テストCBTやオンライン受験が可能となった場合には,その受験環境を私立大学も利活用できるように開放していただきたい。
 クエスチョン4 その他,丸1ウィズコロナ・ポストコロナ時代の大学入試の在り方について,共通テストがオンライン化でき,感染症や天災などの突発事項により個別入試が施行不能になった場合,共通テストの結果を合格判定に利用できることはリスク回避の意味を持つと。このようなインフラが整備されるようであれば,個別テストもそれを活用できるようになれば,共通テストでリスク回避の必要性がなくなる。
 最後のページです。丸2大学入学共通テストの在り方で,一番最初の行,大きな課題の1つに成績提供時期の問題がある。これがあるためになかなか利用できない。
 共通テストの成績のみで入学させている大学があるという批判については,大学入学共通テストの実施大綱を読んでみても,共通テストを一次試験とする旨はどこにも記載されていない。皆さんそれを使ってくださいと書いているだけですので,黄色の網掛け,私立大学における共通テストの利用は各大学の採用に委ねるアラカルト方式とされており,その結果をもって大学教育を受けるために必要な能力を判定することに問題はないと考える。
 さらに,(大学での教育は)エリート教育だけではない,実際に多くの人たちに関しては。したがって,共通テストだけの利用で入学させて,その方々を育んで,社会人として活躍できるように育てていくということも大学の在り方の1つとして否定されるものではないと考えております。
 さらに,共通テストを私立大学も含めて一次試験として一律に課し,各大学で二次試験として個別試験を行うべきであるという主張に対して,多様な入学者選抜について,2行目,大学入学共通テストを一次試験とする大学もあれば,利用しない大学もあってしかるべきと考える。昨今は国公立大学でさえも,総合型選抜や学校推薦型選抜を取り入れており,共通テストの枠組みにとらわれず,多様性を重視し始めているのが実情である。
 最後に,共通テストを一次試験として一律に課すべきではなく,その採否も含めて私立大学の選択に委ねられるべきであると結びました。
 少し長くなりました,すみません,以上です。
【川嶋座長代理】
 小林委員,ありがとうございました。それでは,これまでの議事も含めて,残り少なくなりましたが自由討議の時間としたいと思いますが,塩川参事官は次の用務があるとお聞きしておりますので,学びの基礎診断について,まず何か御意見がある方から伺いたいと思います。
 末冨委員いかがですか。学びの基礎診断に関連した御質問でしょうか。
【末冨委員】
 はい。学びの基礎診断について意見がございます。
【川嶋座長代理】
 ではどうぞ。
【末冨委員】
 それでは,学びの基礎診断についてですが,教育再生実行会議以降の流れを整理していただいたのですが,やはり高校においていかなる目的で活用されるかという点の実態の解明と目的の再確認が必要であろうと思われます。
 塩川参事官の部署で先日お取りまとめいただいた中教審の高校ワーキングのほうでも,スクール・ポリシーを学校で設定しながら,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシー,グラデュエーション・ポリシーを学校のマネジメントサイクルの中で生かしていきましょうという方向になっております。
 その中で,民間テストに頼らなければ回らないカリキュラム・マネジメントであっていいのかどうかという点については,テストの理論,それから現実のテストというものの目的,あるいは作成の方法と照らし合わせても,やはり疑問が拭えません。
 特に,指導のためのテスト,教員にとって指導に必要だから行われるテストは,決して民間依存でするものではありません。教員が自分の実践に基づいて設計し,作り,実施するものです。
 もう1つが,高校生が自分の学習方略を立てるためのテストであったとしても,それが民間ベースで行われるべきものなのかどうかということについても,高校のカリキュラム・マネジメントが回っていた場合には,もちろん,高校自身がカリキュラムにとって必要であるという民間のテストを利用することは構いませんが,本来,それが本当に必要であるのかどうかという吟味こそがスクール・ポリシーの議論の中で行われ,慎重に選択されるべきであると考えます。
 だからこそ,もう一度,学びの基礎診断とは何であるのか,それから高校改革において今後導入されようとしているカリキュラム・ポリシーあるいはカリキュラム・マネジメントの中でいかなる位置づけを占めるべきなのかについては,初中局としても改めて目的を確認し,高校の現場の改革が進み,かつ最終的なゴールはやはり高校生が意欲を持って前向きに学ぶということであろうと思われますので,その目的との整合性について慎重に御検討いただきますようお願い申し上げます。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございます。
 益戸委員,挙手の表示が出ていますが学びの基礎診断関係の御意見でしょうか。
【益戸委員】
 私のは違います。
【川嶋座長代理】
 それでは島田委員は。ではお願いします。
【島田委員】
 筑波大学の島田です。そもそも今日,高校生のための学びの基礎診断に係る経緯をお示しいただいたのは,この委員会で高校基礎学力テストを新たに,改めて導入しようという話が出てきた,そういう文脈であっただろうと思います。
 その時に,その新たな基礎学力テストの導入を検討するならば,その前にまず学びの基礎診断のメリット,デメリットをきちんと検証することが先だろうというような話の流れで,今日,この事を御説明いただいたのだと思います。
 それで改めて分かったことですが,もとより学びの基礎診断のメリット,デメリットをきちっと検証することが計画されているということです。具体的な進捗はまだということではありますが,そのように設計されているということですので,基礎学力テスト導入以前に,これをしっかり検証することになるということを,今日は確認できて大変よかったと思います。
 以上です。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。末冨委員のほうから,高等学校教育の改革に絡んで,高校側の主体的な改革意欲とか,そういうところをしっかりと検討してほしいという御意見だったと思います。それから,民間試験の活用については,これは十分考慮を加えるべきだという御意見というふうに承りました。
 何か塩川参事官,よろしいですか。では,御意見を承ったということで,ここからは今日の議事の全てに関わる御意見,自由討議に入りたいと思いますが,益戸委員,どうぞ。
【益戸委員】
 この実態調査の結果は,今回も非常に興味深いので,意見を述べさせていただきたいと思います。
 61ページに,英語資格・検定試験活用の有無という箇所がありますが,この中で,活用を検討中・検討予定との回答は,一般入試で34.5%,AO入試が21%,推薦入試が28%という回答率になっています。私はぜひ,これらの大学には引き続き積極的な御検討をいただきたいと思っております。過去にも申し上げておりますが,私は経済界という立場で,日本人の英語力のなさが,ビジネスの世界だけでなく,スポンサーという立場を通して見ても,芸術やスポーツの世界で,我が国の国際的プレゼンスや競争力を損なっているというのを肌身で感じておりますので,英語4技能というのは全ての大学でしっかり評価していただきたいと思っております。
 次に,先ほど私大協の小林委員からもあったように,確かに,学部などの特性を考えますと,4技能評価を一気に,又は一律にやれないという御主張は,なるほどと理解できます。
 ただ,入学試験で英語を課しているということは,最優先でなくても,ある程度,英語を重要だと考えている結果ではないかと想像いたします。
 そこで,そういった大学は無理をして一足飛びに自前の英語試験をやめたり,逆に,資格・検定試験を全面的に取り入れたりということをするのではなくて,例えば,この調査の結果では67ページに数字が出ていますが,資格・検定試験のスコアを持っている受験生がいる場合は,現在実施している英語の個別試験の点数の代わりに評価するなどの仕組みを御検討いただくという対応もあるのではないかと考えます。
 その際に,おっしゃるように,どんな検定試験ならば認めるのかということは,各大学のアドミッション・ポリシーに基づいて判断すればよいことではないかと思います。
 そういったやり方であれば,大学としてもそれほど御無理をしなくてもよいと思いますし,また,頑張っている高校生を応援するということにもつながりますので,私は大切なことではないかなと思います。
 以上です。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。
 末冨委員の挙手表示が出ているのは先ほどの件ですか,それとも別件でしょうか。
【末冨委員】
 別件になります。
【川嶋座長代理】
 それでは末冨委員,岡委員,清水委員,小林委員の順で御発言をお願いします。
【末冨委員】
 ありがとうございます。今日,実態調査が明らかになりまして,大学は恐らく,それぞれの学部や選考の特色に応じて英語民間試験を活用しているという実態自体は当然のことだと思います。
 ただし,その際にやはり気になりますのが,小林委員からの指摘にもありましたが,英語民間試験の活用というのは,試験を受けやすい都市部在住者で,かつ何回も受けられる高所得層ほど有利になるという基本的な特性というか仕組みになっておりますので,この辺りを各大学がいかに自覚し,社会的責任を果たしていくか。特にやはりエクイティーに対して,責任を自覚し,どう果たすかという点については,試験機会に恵まれない,あるいは地理的な条件が不利であるといったことについて,大学側のルールの整備が必要であろうと考えます。
 併せて,やはり受験料の補助策等についても,国としての支援がなければ教育の機会均等からますますかけ離れるということで,英語民間試験自体の活用は,私自身も当然,必要な時代にはなってきている学部・専攻はあると認識しておりますので,この辺りの政策についても,もう少し具体的な検討はされるべきであろうと思います。
 以上です。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。
 それでは岡委員,どうぞ。
【岡委員】
 ありがとうございます。国大協から,英語4技能について簡単に紹介させていただきます。先ほどのアンケートにもありますように,総合型選抜や学校推薦型だけではなく一般選抜におきましても,各大学,各学部の特性に応じて,英語民間検定試験の活用も含めて,今,検討をしているところでございます。多分,導入するところが増えるのではないかと予想しております。
 それから,1つは短期的にですが,令和6年度以降の共通テストの枠組みにおける外国語の教科の中の英語について継続的に実施するということを強く希望いたします。
 それから高校と大学の間の関係でございますが,大学としては,英語4技能を教授可能な教員の養成・研修により積極的に取り組みますので,高校でもそのようにしていただければということと,高校におきましては,英語を使って何ができるのか,なぜこれが有効なのかということも含めて,しっかり教えていただければと思っております。
 それから最後に,今日は情報についてのお話がございませんでしたので,またの機会があれば紹介させていただきたいと思います。
 以上です。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。
 続いて清水委員,お願いします。本日は時間が限られておりますので,今,挙手されております斎木委員までとさせていただきたいと思います。
 清水委員,どうぞ。
【清水委員】
 ありがとうございます。筑波大学の清水でございます。今日の資料3の18ページの,センター試験の利用状況のデータを非常に興味深く拝見したのですが,これまで小林委員から私立大学の状況を非常に詳しく御報告いただいていまして,大体分かっているなと思っていたのですが,実はこの選抜単位で見ると,私立大学の35%ぐらいの大学がセンター試験のみで選抜を行っているということで,非常にボリュームとしては大きいなと感じましたので,今後また,調査で記述式の問題等が出てくると,一律に私立大学というふうにくくった議論がなかなかしにくいのではないかということを,今日は強く感じました。これが1つです。
 2つ目は,58ページに,学力検査以外に使われる資料の利用率というのがありまして,こちらに資格や検定等の成績をどのぐらい使うかというのがあるのですが,先ほどの学びの基礎診断の議論と少し絡めて考えますと,既に高校生あるいは高校の先生方が,こういう検定等を使うことを意図して受験に向かっているというような姿も少し浮かびましたので,先ほど末冨委員からお話のありました,公平公正というエクイティーの問題や,利益相反の問題等々に配慮しながら,実態としてこうなっていることと,これから基礎診断をどういう形で検証していくかという,このスムーズなつながりを考えていくことも大事かなと思いました。
 以上です。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。
 それでは柴田委員,どうぞ。
【柴田委員】
 ありがとうございます。ただいま清水委員が御指摘いただいた18ページについて,ちょっと感じたことを申し上げます。
 私立で,推薦入試,センター試験,ほとんど利用されておられなかったということなのですが,これは制度上の制約というのが随分あったのではないか。御承知だと思いますが,10日前ルールというのがございまして,これは廃止になったと思うのですが,要するに一般入試の10日前に推薦入試の合格発表をしなければいけないというルール,これは何に基づいてかというのは,導入された経緯がよく分からないのですが,これがある限り,今後もかなり少ないのではないか。逆に言うと,これに従うと推薦入試で新しい共通テストを導入するとすると,一般入試は10日後からしか開始できないという話にもなりかねませんので,今は翌日からでもよくなったんですかね,ルールが廃止されて。
 そこも併せて,どういう必要性があってこういうルールができているのかというのも,併せて検討していただければと思います。
 以上です。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。
 小林委員,どうぞ。
【小林委員】
 繰り返しになりますが,外部試験,大学の4技能評価の英語の民間外部試験と,それから学びの基礎診断に関しても,末冨委員も何回かおっしゃいましたが,やはり検証機関,利益相反をチェックする機関といったものが必要になるのではないかと思います。そうすることによって,安心して受験生も公平な試験ができるのではないかと,私は感じております。
 申したいことは色々あるのですが,他にも御意見あるでしょうから1回ここで終了します。
【川嶋座長代理】
 それでは,斎木委員で最後にしたいと思います。
【斎木委員】
 斎木でございます。ありがとうございます。2点申し上げます。
 1点目は,英語4技能と記述式に関してです。この検討会議の場でも幾度も指摘されていますように,大学全入時代とか定員割れといった流れの中で,全体として選抜試験の内容が平易化し,その中でより簡単な試験を課す大学に学生が流れるということになれば,日本全体として大学生の質が低下することとなりますが,これは避ける必要があると思います。
 記術力や英語4技能については,大学での学習を支える能力であり,社会に出た後も求められるものです。大学によって実情は様々で,いろいろな制約があることは認識しておりますが,しかし,大きな方向性としては,英語4技能と記述式問題については,各大学におかれてしっかり問う方向で努力していただきたいと思います。
 そして,国としては,そうした各大学の努力を後押しすべく,グッドプラクティスの普及や補助金の配分等でインセンティブをつけることが適当ではないと考えております。
 2点目は,入試のデジタル化についてです。資料3の実態調査の結果でございますが,スライドの16に,電子出願の可否についての記載があります。
 これを拝見しますと,一般入試では90.2%の選抜区分が電子化されているようですが,一般入試と比べてAOや推薦の電子化が進んでいないようです。もちろん,AOや推薦入試については,その特質上,全てを電子化することには困難が伴うのかとも想像しますが,しかし,電子出願は志願者にとって利便性の向上につながりますし,大学のお立場からしても,外部から送られてきた大量の書類を処理するという負担の軽減につながることから,全ての選抜区分において一層の電子化を進めることが適当ではないかと考えます。
 また,コロナとの共存を迫られる社会の在り方に思いを致しますと,共通テストの出願についても,ぜひとも電子化を図るよう,早急に改善をする必要があるのはないかと考えました。
 以上です。ありがとうございます。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。ほかの委員の方も御意見があろうかと思いますが,お時間が参りました。
 1点だけ,私のほうからコメントさせていただきたいと思います。前回の吉田委員からもそうでしたが,今回,私大協の小林委員のほうからも,本日ご呈示いただいた文書の中には,この会議の議論が当初の大臣の諮問事項を超えた議論になっているのではないかという御指摘がございました。
 ただ,先般の座長・副座長提案を出させていただいた1人としては,この2つの重要な課題を検討するにあたっては,英語4技能や記述の能力を,いつどこで誰が評価するのかということに大きくかかわっていますので,共通テストと個別試験の関係をきちんと議論しないと最終的な結論は出ないのかなとも思っております。
 また,大学入試センターの経営問題ですが,これは小林委員のほうからも御発言がございましたが,昨今の状況を考えますと,共通テストは非常に重要であるということが改めて認識されているところでございますので,共通テストをこれからも安定的に実施するためには,センターの経営問題というのも非常に重要な論点かと思います。ただ,ここでそれを深く議論するということは必要ないかなと思いますが,皆様方がセンターに,これをやってほしいというような御要望をされる際には,ぜひ経営問題も念頭に置いて議論していただければと思います。
 それから,定員問題等についても,これは前回申し上げましたが,大学入試の在り方には非常に大きな影響を与えているかと思いますが,これについては中教審の大学分科会のほうで議論が,質保証の観点から進んでおりますので,そちらのほうへ重要な事項として申し送りしたいと思っております。
 いろいろな御意見をいただいております。これも再三,座長等から申し上げているように,令和6年度実施の大学入試に関して早急に決めなければいけないことと,それ以降,少し中長期的に考える事項については分けた上で議論していくということを提案させていただいております。
 そこで,三島座長とも相談して,優先度を上げて早急に議論すべき問題と,もう少し時間をおいて議論すべき問題の仕分を,今後三島座長,益戸副座長と検討させていただいて,またこの会議で御提案させていただきたいと考えております。
 なお,本日色々御意見がまだあるかと思いますので,そのような御意見がある方は,またメールで事務局のほうに提出していただければと思います。
 それでは,最後になりましたが,事務局のほうからのアナウンスをお願いします。
【武藤高等教育局企画官】
 次回第17回の会議ですが,11月27日の金曜日に行いたいと思います。具体的な時間は先生方の日程調整の上で御連絡を申し上げます。
 以上です。
【川嶋座長代理】
 ちょっとタイムマネジメントがまずくて,少し時間超過しましたが,これにて17回の会議を終わりたいと思います。
 圓月先生,ありがとうございました。ほかの委員の方も御参加ありがとうございました。これにて本会議は終わりにしたいと思います。
 

―― 了 ――

 

 

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