大学入試のあり方に関する検討会議(第10回)議事録

1.日時

令和2年6月26日(金曜日)15時~17時30分

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 外部有識者・団体からのヒアリング  1林佳世子(東京外国語大学 学長) 2羽藤由美(京都工芸繊維大学 教授) 3‐1川嶋太津夫(大阪大学 教授) 3‐2小川佳万(広島大学 教授) 3‐3山本以和子(京都工芸繊維大学 教授) 4‐1深堀麻菜香(北海道情報大学 4年(あすのば推薦)) 4‐2原真理(兵庫県立大学付属高等学校 2年(あすのば推薦))
  2. 自由討論      

4.出席者

委員

(有識者委員)三島座長、川嶋座長代理、益戸座長代理、荒瀬委員、宍戸委員、島田委員、清水委員、末冨委員、両角委員、渡部委員
(団体代表委員)岡委員、小林委員、芝井委員、柴田委員、萩原委員、吉田委員、牧田委員
(オブザーバー)山本大学入試センター理事長

文部科学省

藤原文部科学事務次官、森田文部科学戦略官 他

5.議事録

【三島座長】
 それでは,本日は大学入試のあり方に関する検討会議の第10回目でございます。多数御参加頂きまして,本当にありがとうございます。
 今回も新型コロナウイルスの感染拡大防止のためのウェブ会議方式となってございます。先ほどからお見えになった方は,映像や音声の調子をチェックなさっていらしたと思いますが,皆様,今のところ不都合はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 本日も傍聴者,報道関係者の入室は認めず,ライブ配信での公開として,後日,議事録をホームページに掲載するとしたいと思います。よろしゅうございましょうか。
 それでは,本日は前回に引き続き,本検討会に多様な意見を反映するため,外部有識者の方からヒアリング,意見交換を行うこととしてございます。
 それでは,まず始める前に,事務局から何かございましたら,よろしくお願いいたします。武藤企画官。
【武藤高等教育局企画官】
 失礼します。本日,斎木先生御欠席,それから岡先生が途中から御出席となっています。今日も外部ヒアリングですけれども,前回までと同様に,はっきりと御発言を頂くことをお願いいたします。それから発言の都度,お名前をおっしゃっていただくこと。資料参照の際は,該当箇所など分かりやすくお示しいただければありがたく存じます。また,ハウリングを避けるために,御発言希望される際は挙手ボタンを押していただくこと。指名された時にミュートを解除してから御発言いただいて,発言後,必ずミュートに戻していただくことなど,お願いをしたいと思います。
 もう一点,今日お手元にお配りしている資料の中で参考資料2というのがございます。大学入学者選抜関連資料集。ここの,今見ていただく必要はないんですが,90ページから92ページに大学入試の国際比較と題する資料を更新して付け加えております。今日,諸外国の入試に関する御発表を3人の先生方からいただきますけども,適宜,必要に応じて御参照いただければと思っております。
 以上でございます。
【三島座長】
 それでは,議事に先立ちまして,毎回,冒頭でやっておりますが,令和3年度の大学入学者選抜について,その進行状況を西田課長から御報告いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【西田大学振興課長】
 では,御報告いたします。令和3年度大学入学者選抜について,高校,大学関係者の協議を経て,6月19日付けで実施要項を決定いたしまして,各大学,都道府県教育委員会等に通知をいたしました。資料として本日,参考資料3という形でお配りをさせていただいておりますが,その概要について御報告いたします。
 当該実施要項では,まず入試日程について,総合型選抜の出願時期について,当初予定の9月1日から9月15日に2週間後ろ倒しをするということ,それから大学入学共通テストにつきましては,第1日程と第2日程を設定をし,第1日程は1月16日,17日,第2日程は,その2週間後の1月30日,31日に実施をするということ,それから一般選抜の日程については2月1日からという形になっております。
 共通テストの第2日程につきましては,会場を例年の追試験の2会場から全国47都道府県に拡充をして設置をし,学業の遅れを理由に出願時から受験日程を選択することを可能とするとともに,第2日程の受験を選択した受験生が疾病等により受験できなかった場合に対応するため,その2週間後の2月13日,14日に特例追試験を実施することといたしました。
 また,各大学の個別学力検査につきましては,追試験の設定や別日程での振替受験を可能とする措置を講ずることでありますとか,高校3年生で履修することの多い科目について,選択問題等の工夫を各大学に対して要請をいたしております。
 併せて,試験会場における感染拡大の防止を図りつつ,受験生が安心して受験に臨めるよう,試験場の衛生管理体制等の構築にあたっての望ましい方法や内容を整理した新型コロナウイルス感染症に対応した試験実施のガイドライン,これも策定をし,実施要項の別添として併せて通知をいたしました。
 なお今後,試験実施時期の感染拡大の状況によっては,試験日程を改めて検討するとともに,秋以降に臨時休業が実施された場合で,高校卒業,大学入学の時期が4月以降にずれ込むというような事態になった場合には,それに応じて入試日程も変更することとしております。
 私どもといたしましては,どのような事態にも受験生第一の立場に立って機動的に対応してまいりたいと考えておりますので,関係の皆様方におかれましても,必要な措置を最大限講じていただきますよう,改めてお願いを申し上げます。
 私からは以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,議事に入りたいと思います。それでは,まず議事の初めの1でございますが,外部有識者・団体からのヒアリングでございます。
 まず,お一方目は,個別大学における取組ということで,東京外国語大学,林佳世子学長から15分程度で御発表を頂きます。その後15分程度の意見交換を行いたいと思いますので,林学長,それではよろしくお願い申し上げます。
【林氏】
 本日はどうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 東京外大ですけれども,今回この会議にお呼びいただきましたのは,東京外大が2019年度から一般選抜前期日程の英語試験にスピーキングテストを導入しているからだろうと思っております。そのため,本日は,その試験の紹介を中心に御報告させていただきます。
 まず,その前提として,東京外大のアドミッションポリシーと英語入試全体を紹介させていただきます。このページ,2ページ目,御覧ください。
 東京外大は創立以来150年近い歴史を持ちますが,常に世界と日本を結ぶ人材の育成ということに努めてまいりました。そういう出口に向けて,様々な文化的背景を持つ人々とともに働き,地球的な課題に取り組む意欲にあふれた人を求めるということをアドミッションポリシーの基本としております。
 そして,外国語の出題方針としては,高等学校の学習指導要領にのっとり,4技能を統合的に活用できるコミュニケーション能力を前提とした総合的な問題を問い,受信した内容を思考,判断し,英語や日本語で発信する表現力を問うということを核にしております。
 つまり,東京外大は,世界と日本を結ぶ人材になるには,「世界の人々とともに働き,地球的な課題に取り組む意欲」が必要だと考えておりまして,それを持っているかどうかを見るには,高校段階の学習の中では,外国語科目で4技能を統合的に活用できるコミュニケーション能力を身につけているかどうかで判定すると,そういう方針を立てております。
 また,ちょっと1ページ前を見ていただけるといいと思うんですけれども,本学では入学後に,右にありますようないろいろな言語を集中的に学ぶという教育体制を取っております。特にネイティブの先生による会話を中心とした授業にしっかりついていくには,高校時代の学習でいえば英語,特に話すとか書くとかいったプロダクションの部分の英語力,これに適性が表れていると考えておりますので,入試においても,プロダクションの部分を中心に探っているという造りになっております。
 次のページお願いいたします。ここに本学の一般選抜,英語の説明がありますけれども,左側にありますような造りになっています。
 2019年度の問題でいうと,リーディングの第1問では英語を読んで日本語でまとめるといった日本語での表現力を問うています。またリスニングの6題目なんですけれども,英語のスピーチを聞いて200語程度で要約する問題ですとか,さらに発展的に200語程度で,自分の意見を英語で書くといった問題を出題しております。
 このように英語と日本語で発信する表現力というのは,本学の教育を受けていくに当たって必要な能力だと考えておりまして,そういう力を見ることを入試の基本としております。
 そうした文脈から,もちろん高校等で身につけた表現力を問うスピーキングテストも従来から非常に重要だと考えてきました。そして,ようやく2019年度入試から英語スピーキングテストを開始し,その年に新設されました国際日本学部の入試で活用いたしました。
 国際日本学部は,本学の3つの学部の一つで,定員は留学生30名を含めて全体で75名,うち35名を選抜する前期日程試験において,このスピーキングテストを2年間実施してまいりました。
 実は本学は次の試験,2021年2月から全学で,つまり言語文化学部,国際社会学部,国際日本学部という3つの学部でその全受験生2,000人を対象に,このテストを行う予定で準備しておりました。
 しかし,昨今のこのコロナの影響で,口頭発言を伴う試験ということに対して多少の懸念がございますため,1年延期し,2021年の試験に関しては,過去2年と同様に国際日本学部においてのみ実施するということを決定いたしまして,つい2週間前に,発表したところであります。
 では,そのスピーキングテストについて御紹介させていただきます。次のページを御覧ください。
 今申しましたように,東京外大は長年にわたって,スピーキングを含む4技能の試験の実施が必要だと考えてまいりました。遡れば明治時代からリスニングの試験を行っていたという大学ですので,そういったことも当然の流れかと思います。もちろん高校の学習指導要領に沿って考えれば,スピーキングは当然,科としての英語の必須事項です。近年は文部科学省からも一般選抜で4技能を評価することが求められておりました。
 しかし,それにも増して,本学のアドミッションポリシーに沿って,こういう技能テストを行いたいというのは本学としての希望だったと言えるかと思います。
 しかし,一般選抜は受験者数も多うございますので,技術的に難しい面が多く,先送りしてきたというところがございました。
 しかし,ICTの発達で,必ずしも無理ではないのではないかということになって,2011年頃から検討を開始いたしました。
 全学的に,具体的に実現に向けて動き出したのは2014年度からです。学内に英語入試改革ワーキングを立ち上げて,英語スピーキングテストの導入の具体的な問題点の検討に入りました。
 私は当時,教育担当副学長をしておりましたので,その立場から,そのプロセスを今回紹介させていただいている次第です。
 そのワーキングでは,まず,独自にできないのかということも検討いたしました。しかし,文系単科の大学である本学でシステム的な開発を行うことは難しいと判断して,外部のシステム開発者と一緒にやる,あるいは外部のシステムを利用するといった方向での検討を進めました。
 複数の候補を挙げて,実際に話合いの機会などを持ちましたが,そのプロセスの中で,British Councilとの共同開発の話がまとまりまして,2017年の12月に協定を結んだと,そういう次第です。
 もちろん御存じのように,この時期は文科省でも高大接続の関係から共通テストへの英語スピーキングテスト導入の問題がまさに議論されていた時期に当たります。
 本学としては,新しい共通テストにスピーキングテストが含まれたとしても,一般選抜において別途スピーキングテストを行うことが必要だと考えておりました。
 また,様々な検討をへて異なる種類の外部試験を利用することが既定方針となった後には,ますます本学の受験層に絞ったテストを,本学自身でやりたいと考えて,準備を進めた次第です。
 複数の候補の中でBritish Councilと協定を結びましたのは,British Councilが開発していたAptisという試験がローカライゼーション可能なものとして設計されていたからです。国や地域ごとのローカライゼーションを認める設計は,それを応用することで大学入試などには適切だと思います。
 また,British Councilの採点体制を活用することにより,一般選抜と同じ日に同じ会場でスピーキングテストを実施することが可能だということが分かりましたので,それも本学にとっては大きな魅力となりました。
 ほかの外部試験と異なり,スピーキングテストだけを取り出して行うものになりますので,受験生の経済的負担も最小限で済むという見込みもありました。
 さらに,British Councilがイギリスの公的な組織であり,非営利団体という点も本学にとっては交渉相手として適切だと思いました。
 その後,Aptisのローカライゼーションの枠組みに従って,スピーキングを取り出して本学の,あるいは日本の大学入試に適した別問題を開発するということをBritish Councilとともに,本学側が参加して,実際にその作業に当たってまいりました。
 開発した試験はBCT-Sと名付けられ,先ほど御紹介しましたように,2019年度入試,2020年度入試において,本学の国際日本学部の入試に活用しております。
 その中身について御紹介いたします。問題は4つのパーツから成っております。問題が進むごとに難易度が上がる造りになっておりまして,全体で12分程度で終わる試験です。
 第1問は受験者自身について説明するような問題,第2問は理由や説明を明確にして自分の意見を述べるというタイプの問題,第3問は写真や図が出てきて,それを描写したり比較したりすることを理由や説明とともに行うという問題。それから第4題目,これが一番難しくなりますが,抽象的なトピックについて自身の意見や経験を述べるという構成になっております。
 受験生はコンピューターやタブレットに現れる指示に従って答えていきます。
 具体的な内容,作題は本学のスタッフが行っております。作題を本学側で行うことで,高校の学習指導要領に沿った問題が作成できますし,ビジネスユースですとか,あるいは英米圏の大学入試に必要な問題とは異なる,日本の大学受験にふさわしい内容を学生に問うことができます。
 特に日本の高校生が持っている文化的背景ですとか学習環境に配慮しております。特別な体験がないと答えられないといった不公平がないようにということも配慮しているところです。
 もちろん本学側が作題に当たることで,本学が受験生に確認したい内容を的確に判断できると,当然ながら,そういう点があります。
 一方,この試験の場合,試験を行った後の採点はBritish Council側によって行われます。British Councilは世界の60か国に在住する,定期的に訓練を受けた採点者を擁しております。採点者は,英語教授歴と,学士以上の資格を持つといった要件があり,それを満たした方々です。
 採点基準は,その基になったAptisのテクニカルレポートとして公開されていて,各問いでチェックする観点というのは非常に明確に定義されています。それにより採点のぶれが防がれていると思います。
 また,上級採点官によるチェック,あるいは統計的な処理,モニタリング等で採点の質が保証され,確保されています。
 4つの問題は,問題ごとに別々の採点官により採点される仕組みになっており,本学での実施から2日で全採点がまとまります。
 もちろんセキュリティーの面も心配しましたが,日本国内にあるテストプラットフォームにデータが保存されて,採点者はそこにアクセスして採点を行うというつくりになっており,データ管理に最新の注意が払われていることを確認しております。
 以上のように,採点はスピーキングに特化した採点のプロによって行われます。全学での導入は1年延期になりましたけれども,2022年2月の一般選抜では2,000人の受験者に対して実施いたしますが,その際も採点にかかる日数は二,三日と言われております。
 今後,AIなどを使った採点も検討される可能性はあると思いますけれども,本学は現時点においては,現在の採点体制が十分機能していると判断しております。
 スピーキングテストがどういう位置付けになるかということについては,試験結果の分析も当然,本学として行っております。ほかの技能との相関を見ています。
 過去2年の結果を見る限り,リスニングとある程度の相関がある,その次がライティングである,逆にリーディングとは相関が低いといったことが,分かります。
 それぞれの技能の成績と異なる成績分布を示すということから,3技能を試験をすればスピーキングはやらなくてもよいことにはならないということは言えるということは確認した次第です。
 ただ,全体的に見ると,3技能の合計点とスピーキングにはかなり高い相関が見てとれます。これはスピーキングが総合的な英語力を現していると言えるのかもしれませんが,こうした分析は今後,英語教育学部の先生方によって,さらに進めていきたいと考えています。
 レジュメのほうに,この後ろのページに4つの問題の少し詳しい設計ですとか,あるいは2019年度に行った具体的な問題を示しております。御確認いただければ幸いです。
 以上,本学でのスピーキングテストの実施状況をお話ししましたけれども,この経験を踏まえて,3点ほどお話ししたいと思います。
 1つ目は,スピーキングテストは,英語力をトータルに見る上で非常に重要なものだと結論づけたいと思います。本学の実施でもスピーキングの結果は,ほかの技能のテスト結果と必ずしも一致するものではありません。高校における外国語という科目の学びを正しく評価するためにも,4技能トータルに入試で問うということの重要性は高いと考えております。
 2つ目は,これには技術的な問題が伴うという点です。ICTの活用が不可欠であり,相当な準備が必要だと言えると思います。本学の場合は,パートナーとしてのBritish Councilとの共同でそれを解決いたしましたが,個々の大学が単独で安全に確実に行うには,確かに非常に難しい問題が多々あろうと思います。
 ただ,このBCT-Sは本学用につくりましたけれども,他大学も,それぞれの大学に即した問題・内容に変えることで応用可能だということも申したいと思います。
 3点目は,これまでの本会議でも提言がありましたように,スピーキングテストを共通テストの一環として実施すべく,大学入試センターが作題するというようなことが本当に上がってきた場合のことですけれども,その際には,やっぱり自分たちだけでやろうというのは得策ではないのではないかと考えます。
 例えば,海外の大学の入試で日本語が問われるようなことがあったとしたら,国際交流基金の日本語検定試験ですとか,JASSO,日本学生支援機構の日本語の試験とか,そういったものが活用されていくのは当然,質や安定性の確保の面から,あり得るだろうと思います。
 それと同様に,技能としての英語力を問うのであれば,例えば日本政府と英語圏の政府が協力して試験開発をするといった方法が望ましいのではないかと思います。
 例えば,私どもと一緒にやっているBritish Councilはスペインの大学入試の英語をになっておりますし,また中国での全国的な英語検定の作成に協力しています。
 オンラインでつながっていくアフターコロナの時代の教育を考えますと,今後はこういう入試制度についても,一国の閉じた物事として考えるのではなくて,国際協力の下で制度設計をしていく必要があるのではないかなと,感想として思う次第です。
 以上,本学の経験をお話ししましたけれども,参考になれば幸いです。どうもありがとうございました。
【三島座長】
 それでは,林学長どうもありがとうございました。御質問,御意見のある方は挙手ボタンを押していただければと思います。
 それでは,柴田委員。
【柴田委員】
 福岡県立大学の柴田でございます。貴重な事例の御紹介,大変参考になりました。
 聞き逃しているのかもしれませんけども,2,000人対象に実施を予定しておられるということで,これはタブレットで一斉に実施するのを想定しておられるんでしょうか。
 それから,今までおやりになっていた,これ写真を拝見しておりますとICTの部屋のようなんですけども,これも学内だけで準備はできたんでしょうか。その辺り,技術的なことをちょっとお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【林氏】
 ありがとうございます。再来年度からの2,000人の実施につきましてはタブレットを予定しております。タブレットは,次の2021年度入試の国際日本学部の入試より利用を予定しております。ほかの科目と同じ教室配置の中でタブレットやヘッドホン等を配布することで実施する予定にしています。
 2019年度,20年度につきましては,この写真にございますように,学内のコンピュータールームで,入試を実施いたしました。
【柴田委員】
 どうもありがとうございました。
【三島座長】
 それでは続きまして両角委員どうぞ。
【両角委員】
 両角です。林学長,大変貴重なお話ありがとうございました。とても興味深く聞かせていただきました。
 スピーキング能力が英語能力をトータルに見る上で重要で,入試でどんどん拡大されているというお話で,個別大学で必要と考えた場合に,こうやってできるんだなというのがわかりました。一方で,共通テストでスピーキングを入れるべきかどうかということについては,先生はどうお考えかなということをお聞きかせいただけますでしょうか。
【林氏】
 なかなか難しいところだと思います。ネックは技術的な問題で,簡単にできるのであれば,やったほうがいいと思います。トータルな英語力を見る上で,4技能の一つですので,やるべきだと思います。
 ただ,非常にコストがかかる,非常に技術的なハードルが高い。そのハードルを超えることが実現可能なものになった暁には,やるべきだと考えております。
【両角委員】
 ありがとうございました。
【三島座長】
 ほかに,おいででしょうか。挙手ボタンがあまり見られないように思いますが。芝井先生どうぞ。
【芝井委員】
 ありがとうございます。今の御質問と関連してですが,実際には50万人を対象とする共通テストの実施可能性ということはすごく気になる点でして,ましてや同一世代の半分の人間が大学に進学する現状の中で,50万人レベルで,例えばタブレットを用意してスピーキングの12分のテストを実施する。いわゆる費用対効果も含めてですが,やっぱり少し疑問に持っているところです。個別の大学でされることは大変素晴らしいことだと思っているんですが。その点について,一定の見通しをも兼ねてですが,御意見をお伺いできたらというのが1点です。
 それからもう一つは,いろんな大学で,基本的には入学した後,私たちが英語の実際の運用能力の向上に大変力を込めて教育をしているつもりですので,入試の中で本当にそれは測らねばならない能力なのかどうかということも若干気にはなる点です。
 その2つについて,ぜひ御意見をお伺いしたいと思います。
【林氏】
 ありがとうございます。実現可能性については,やはり思いも寄らぬ技術の発展というのはあるのではないかとは思います。
 本学のパートナーであるBritish Councilと話している最中には,例えば中国で,日本とは桁違いの数を実施するという話が進んでいて,そのような場合には,学生が持っているスマートフォンを使って,デバイスはそれを使って行うといったことが現実的な検討の課題に上がっていると伺いました。それがどこまで進んでいるかの確認はしておりませんが,ある種,大学側が必ず,あるいは入試センターが用意した機材を使わなくてもよい時代というのは来るのかもしれない,そういう展開と連動して考えていくべきなのではないか。また,そういう方向で技術的な改革が進めば,あっという間にできることなのかもしれないと思います。
 それから,入学後でもいいのではないかという御意見は,いろいろなところでも伺います。やはり,それは大学それぞれの特性だと思います。本学の場合は,入学した後のミスマッチを防ぐという意味でも,ある種,発話するということに対して抵抗力のない,外国の人とどんどん話したいといった学生さんを求めております。そういう意味で,スピーキング力が現れてくる能力というのは見るべきものだと思っております。もちろん入った後の成長も期待するところですけれども,そこは,やはり大学ごとのアドミッションポリシーによるのではないかなと考えております。
【三島座長】
 よろしいでしょうか。
 それでは,ちょっと時間も押しておりますので,あと,お一方。小林委員どうぞ。
【小林委員】
 どうもありがとうございました。私大協の団体で本日来ておりますけども。
 まず1つは,これをやるのは非常に素晴らしくて,特にアドミッションポリシーとの関係からも,やる必要はあると思うんですけども,共通テストとして全国一律に全ての受験生に課す必要があるとお考えかどうかというのは,技術的な問題を含めてお伺いしたいのと,それから2点目,もう一つだけですけども。
 この前,留学関係の経験のある高校生からの御意見でもあったんですけども,日本人はそもそもあまりディスカッションに慣れていないと。話すことがないと,英語であろうと日本語であろうとも話せないので,まず,そのディスカッションを身につける必要があるんじゃないかというような御意見もありましたけど,その点はいかがでしょうか。
【林氏】
 まず1点目は,先ほどちょっと述べましたように,英語力というものをどう考えるかというのはあると思いますけれども,やっぱりスピーキングも含めて一体となる英語力だと思いますので,技術的に可能であれば,共通テストでも問うべきだと思います。それはそういうふうに考えます。
 それから,スピーキングは,何もないところで独り言を言うわけではありませんので,相手とのやり取りというのが前提になる行動,活動ですから,ディスカッション力をつける上でも重要なんじゃないかと思います。
【三島座長】
 どうもありがとうございます。それでは,まだあるかと思いますが,少し時間が押してございますので,林学長のヒアリング,以上とさせていただきたいと思います。学長どうもありがとうございました。
【林氏】
 どうもありがとうございました。
【三島座長】
 それでは次に,大学入試における英語4技能評価について,京都工芸繊維大学の羽藤由美教授から15分程度の御発表を頂きます。その後,また15分程度の意見交換でございます。
 羽藤教授,どうぞよろしくお願いいたします。
【羽藤氏】
 京都工芸繊維大学の羽藤由美です。よろしくお願いいたします。
 資料の2ページを御覧ください。そこにありますように,本日は英語4技能の統合育成と言語テスト全般へのスピーキングテスト導入を支持する立場から,また,それを前提に,これまでコンピュータ方式やテレビ電話方式のスピーキングテストを開発・運営してきた実績に基づいて,情報共有をさせていただきます。
 資料の3ページをお願いします。結論として共有させていただきたいことは,こちらにまとめました。
 資料の4ページをお願いいたします。まず私としては,取り立ててスピーキングがどうこうと言うまでもなく,一般的な外国語の指導や評価からスピーキングを除外する理由はないと思っています。先ほど林学長もおっしゃいましたけれども,学習者の内面に育つ外国語の運用能力が4つに分かれているわけではありません。その能力を評価するために便宜的に聞く,話す,読む,書くという4つのモードを使わざるを得ないわけですから,大学入試においても使えるモードは使ったほうが,より妥当性の高い評価ができます。それでも,あえて4技能評価に抵抗があるという大学がもしあるなら,使わないという選択肢を設けたり,配点を自由にしたりすればよいと思います。
 したがって,ここで重要なのは,スピーキング導入の費用対効果を見極めることです。スピーキングテストの開発・運営には,他の3領域の評価より費用がかかります。下手なことをすれば,今回7年もかけて準備した制度が導入直前に瓦解してしまったように,弊害のほうが大きいことも考えられます。
 私は,その費用対効果の見極めを最終的な目標として,2012年からスピーキングテストの開発・運営に携わってきました。具体的な実績については,資料の5ページから7ページを御覧ください。
 東京外国語大学のスピーキングテストはBritish Councilが開発したプラットフォームを使っておられるとのことでしたが,京都工芸繊維大学のスピーキングテストは自前のものです。企業との共同研究により,独自のCBT実施システムやオンライン採点システムを構築し,スーパーグローバル大学創生支援事業の予算支援を得て,2014年度から学部の1年生全員を対象にテストの運営を開始し,2015年度からは英語の必修科目の学年末試験として運用しています。また,2017年からは少人数ながら,英語での発信力の優れた学生を採ろうとするAO入試のグローバル枠で,同じ仕様のテストが使われています。
 資料の8ページをお願いします。関連文献をここにまとめました。先ほどスピーキングテスト導入の費用対効果を見極めるのが目標と申しましたが,その間もなく,私たちより後に開発を始めた民間のスピーキングテストが共通テストの主流として使われることになりました。それが制度として成り立ち得ないずさんな設計であることは,テストの開発・運営の実態を知る者には明らかでした。
 しかし,そういう人の多くはテスト業界で働く人や利害関係があって声を上げられない人なので,私はテストの専門家ではありませんが,現場を知り,本当のことを遠慮なく言える研究者として,今日のヒアリングにも出させていただきました。
 資料の9ページをお願いいたします。まず1点目ですけれども,本年4月から導入される予定であった制度もそうですが,今後も,固定数というか,むしろ必然的に数が減る受験生を複数の事業者に奪い合わせる形で民間試験を入試に利用すると,制度が破綻する可能性が大きいということを申し上げます。
 その図にありますように,大規模な標準化テストでは,受験者が受験してから成績が返されるまでのプロセスは完全なブラックボックスです。通常は問題も公開されません。先ほどのBritish Councilも中は見せないと思います。
 ですが,当然のことながら,ブラックボックスの中で行われている全てのことにはコストがかかり,テストの品質や公正性・公平性を高めようとすれば事業者の利潤が減るというトレードオフがあります。
 こういう状況に置かれた複数の事業者に,必然的に小さくなるパイの奪い合いをさせたら何が起こるかは言うまでもありません。実際に今回の制度破綻に向かう過程で私たちが目の当たりにしたものは,コストを下げるための技術開発をするよりは,むしろテスト業者に求められる最低限の質の保証さえ投げ出して,それを隠そうともしない民間試験の姿でした。
 資料の10ページから19ページまでは,そのブラックボックスの中で何が行われているかを御紹介できればと思い,京都工芸繊維大学のスピーキングテストに関する情報を抜粋してきましたが,時間の関係で,ざっと説明させていただきます。
 テストで一番大事なのは構成概念,つまり,そのテストで何を測りたいかです。その測りたい能力を測るために,受験者にどのようなタスクを課すか,どのような評価観点,評価基準にするかなどを決めていきます。
 資料の13ページをお願いいたします。採点の信頼性を担保するには,高度の専門知識と経験が必要です。私たちは研究目的もあって,一問一問の回答を,日本の大学の教員を中心とする英語のネイティブスピーカーとフィリピンのオンライン英会話学校の先生方に並行採点してもらっています。受験者が延べ700名程度ですから,写真にありますように,テストの運営側がじかに採点者に情報を伝えたり,オンラインで採点者訓練をしたりすることができます。しかし,これが何万人,何十万人という規模になれば,子,孫,ひ孫という形で,採点者の訓練や管理のためのシステムを構築することが必要になります。
 AIについては,私どもも中国大手2団体の日本のエージェントの方にお話を伺いました。しかし,現在の技術では,私たちが測りたいもの──タスクの達成度なんですけど──それは測れないことが分かりました。
 資料の15ページをお願いいたします。ここからのページにあるトラブルとセキュリティーの確保も非常に難しく,どれだけ徹底したつもりでも,トラブルをゼロにすることはできません。
 例えば,ヘッドセットのラインの断線は外からは見えませんが,中でラインが切れていれば,受験者が一生懸命答えた回答が録音されないことになります。そのため,事前に一台一台を確認してからテストに臨みますが,それでもテストの開始の直前に外から猛烈な工事のドリル音がしてきて慌てたこともありました。
 また,資料15ページの表にありますように,私たちの大学では情報演習室が3つしかありません。それで1年生,約600人を6つのグループに分けて,時間帯をずらせてテストをしています。受験者の入替えの際には問題が漏れないように出入りを管理しますが,1コマ空けると別のテストを使う必要があります。それで毎年,合計3バージョンのテストを使います。そして,これらのテストのスコアを,心理統計の専門家に項目応答理論を用いて等化してもらいます。そのために,テストの翌日には,正規受験者の約1割強の人数の上級生に3バージョンとものテストを受けてもらいます。
 これを毎年,週末に行うのですが,その前日の金曜日にも,翌日の月曜日にも,これらの部屋は大学の通常の情報演習室として使われるので,かなり綿密な段取りが必要になります。
 資料19ページをお願いいたします。その項目応答理論についてですが,そこに書きましたように,英語の民間試験が受験した年,回,会場にかかわらず,どのテストを受けても,得られるスコアが同じ意味を持つとされるのは,これらのテストが標準化されているという前提に立っているからです。しかし,大規模テストの標準化には極めて専門的な知識の蓄積と緻密かつ長期的展望に立った計画が必要であり,日本にはそういうことをできる人がごく限られている上に,事業者ごとに育成されているのが現状です。
 また,仮に問題なく標準化されているとしても,IRT──項目応答理論のことですが──IRTは構成概念,つまり各テストが測りたい能力を測れていることを前提にしているので,それぞれのテストのスコアは単一の構成概念の大小を一次元の尺度で表したものにすぎません。その上に,スコアには標準誤差があるのが前提です。
 ですから,標準化テストのスコアは,物差しのようにしっかりしたものではありません。そのスコアで,ある意味,人生を懸けた競争をさせるような場合には,質の高い,信頼性の高いテストを使わなければ,受験生や保護者,教員など,ステークホルダーの納得感を得ることはできません。当該テストの限界を超えた利用をすると,結果が信用されなくなり,制度自体が崩壊することもあり得ます。
 資料の20ページをお願いいたします。そういう観点で英語民間試験を見てみますと,例えば英検ですけれども,級だけで1級から3級まで5つもある上に,ペーパー方式,コンピュータ方式,対面式など,いろいろな方式がいろいろに組み合わされています。その上に,入試対応のために,ごく最近,方式が変更された種類のテストもあります。さらに,英検はテストの問題が公開されていました。
 このような状況では,英検のどの級のどの回のどの方式のテストを受けても,出てくるスコアが同じ意味を持つというような,一般的に標準化と言えるような標準化がなされているとは考え難いです。
 また,もしテストが標準化されていなければ,前提が崩れるわけですから,CEFRとの対応付けなど意味を持ちません。
 資料の21ページをお願いいたします。そこには,民間試験が共通テストで使われていたら一番多くの受験生が受けると予想されていたGTEC Advancedのサンプル問題があります。
 例えば,真ん中の問題を御覧ください。What are you going to do this Saturday? という音声の質問に,スケジュール表にあるままの情報を使って,I'm going to my grandparents’house and the gym.というように答える。ベネッセは,これを2人の採点者で並行採点していると言っていますが,AIにキーワード採点させていても不思議ではない問題です。
 資料22ページをお願いします。このような問題群によって,GTEC AdvancedはCEFRのB2レベル,つまり専門分野の技術的な議論や抽象的な話題,複雑な文章などにも対応できるレベルと,B1レベル,普段出会う身近な話題や標準的な話し方に対応できるレベルとを判別できることになっていますが,どうでしょうか。
 一方,同じくCEFRのB1とB2を判定できるとされているTOEFL iBTの問題が資料の23ページから26ページにありますけれども,相当の分量があり,大学での様々な分野の講義を聞いたり読んだりして,その内容について考えるような問題です。
 日本の大学は,入学者選抜において,GTEC Advancedで得たCEFR,B1,B2の判定とTOEFL iBTで得たB1,B2の判定を,同じ意味を持つものとして扱って構わないのでしょうか。複数の民間試験を使うにあたって,大学が本来考えなければならないことが全く検討されていないように思います。
 その後の資料27ページでは,そのGTECとCEFRの対応付けが極めて危ういものであることを指摘しました。
 また,資料の29ページでは,テストの仕様は変わっていないのに,TEAPの測定範囲が突如広げられたこと,すなわち今まで測れなかった範囲が測れるようになったことや,スコアのダンピングが行われている可能性を指摘しました。
 これらは全て,事業者が試験の作成・運営のコストを削減したり,もうけを増やしたりするために行われたことですが,元はといえば,資料の30ページにあるような,複数の民間試験に受験生を奪い合わせるという制度の構造的な欠陥に起因するものであり,民間試験の事業者を一方的に責められるようなものではありません。
 そのほかにも,障害のある学生への対応や受験対策事業など,全てが事業者の採算を考えて行われますし,そこに第三者による監査の制度を設けるといっても,現在,日本には,テストの事業者がぎりぎり開示するであろう情報を基にブラックボックスの中を精査できるような専門家が育っているようには思いません。
 資料31ページをお願いいたします。これまでのところで共有させていただきたい結論ですが,結論1については既にお話ししました。
 結論2も,既にお分かりいただけたと思いますが,先ほど林学長もおっしゃっていましたが,個々の大学が単独で,例えば個別入試にスピーキングテストを導入することは,東京外国語大学のように,多分,将来のシェア拡大を見据えたBritish Councilの協力を得るというような特例を除いては,ほぼ不可能と思われます。
 理由はそこに書かせていただきましたが,特に通常,入試はスケジュール上,数日間で採点しなければなりません。そうすると,年に数回だけ膨大な数の採点者を雇用しながら採点の質を担保することが必要になり,現在の技術では,現実的に可能とは思われません。
 ですから,下村元文科大臣や自民党のワーキングチームをはじめ,これまで共通テストへの民間試験導入を推進してこられた方が,最近は各大学に4技能入試を求めるべきだというようなことを言われていますが,これは民間試験を使えということとほぼ同義と考えられます。
 そうすると,結論1の問題にぶつかることになります。言い換えれば,今回の制度を破綻させた構造的な問題を解決する方法がないので,その責任を大学に押し付けたに等しいと言えます。
 なお,ここでは1点刻みの入試云々は圏外の話です。私も将来的には1点刻みの入試をやめることに賛成する立場の者ですが,現在は,ほかの科目,つまり英語以外の科目も,合否の最終決定も1点刻みで行われているのですから,英語だけが1点刻みが駄目というのは,民間試験を使わせるための詭弁としか言えません。
 それから,結論3に書きましたように,もし長期的に考えることができるなら,今後のAIの発展などを見据えて,産学の協働で,あるいは先ほど林学長がおっしゃられましたように外国との協働でも構いませんが,TOEFLを運営するアメリカのETSや英国のCambridge Assessmentのようなテスティングエージェンシーを日本に作ることも可能と思われます。
 受験生を奪い合うのではなくて,最初から多くの受験者を見込めるなら,技術開発への投資もしやすくなります。
 また今後,大学が入試の作成や運営にかかる負担をどこまで負い続けられるか,それが限られた人的リソースの有効な使い方であるかを考えても,検討する価値はあるかと思います。
 さらに,テストの品質や良問を作る技術など,英語に限らず,日本の入試で軽視され続けてきたことの改善にもつながるかと思います。
 万一そういう取組で英語のスピーキングテストを開発するなら,資料31ページの下に挙げましたように,まず何をどこまで測りたいかを検討する必要があります。
 例えば,CEFRのA1以下,A1,A2,A2以上を,今回破綻した制度のように大ざっぱに測るのであれば,それほど込み入ったテストを作る必要はありません。
 一方,より精密な評価をしようとするなら,技術の発展度合いや予算,時間との兼ね合い等を考慮して,どこで妥協するかを考えなければなりません。
 また,これまでのセンター試験のような一斉方式を取るなら,問題の配信や回答音声の回収のための技術開発が必要になります。
 一方,民間試験と同じように順次受験する方式を取るなら,複数の民間試験を利用するよりはずっと良いシステムが,比較的容易に構築できると思います。
 実は,資料のここから後のことが,むしろ本日,私が共有させていただきたかったことですが,時間が無くなることを予想して,資料をお読みいただければ分かるようにしてまいりました。まとめとしては,資料35ページの結論4に書いてある,これまでの英語教育改革は手段,例えば民間試験の成績向上や利用推進,英語の授業は英語で行うなどの手段が目的化しており,本来の目的達成にはつながりにくい。もっと本当の目的につながることにリソースの有効利用,集中投下をしてほしいということと,資料37ページの結論5に書いてある,2025年度から入試に4技能評価をどうしても導入しなければならないなら,CEFRはしばらく棚上げして,教師が普段の授業を通して生徒の能力を実感し相対化できるような状態に,指導の現場を近付けていく方法を考えたほうがよいということですので,ぜひお読みいただきたいと思います。
 そうしましたら,資料の最後のページ,40ページをお願いいたします。ここには,昨年11月1日に成績提供システム導入の延期が決まった直後の衆議院文科委員会に私が参考人として呼ばれた際の意見陳述の最後の部分を書き出しました。今回もまた同じことをお願いしたいと思います。
 私は,自らがスピーキングテストを開発・運営することを通して得た知見を活かしてほしいと思い,ここ数年大きな声を上げてきました。実績に基づく情報があるので聞いてもらいたいと,あの手この手で文科省にもアプローチしました。しかし,全く相手にされず,今日やっとここで15分の発表時間を頂きました。しかし,15分で何が伝えられるでしょう。
 今日のために私がしたのは,共有させていただきたかった情報を削ったり,単純化したりすることでした。もちろん専門知だけで政策をつくることはできません。各方面の意見も重視されるべきです。
 しかし,その一方で,文部科学大臣あるいは文科省が,本当に専門家の意見を聞き,それを活かしていこうとされているなら,今回のようなことにはならないのではないかと思います。
 会議の準備をされている皆さんも,私も,お互いに忙しい思いをしながら,実際はガス抜き,アリバイづくり,やっている感づくりをしているだけではないのかというのが,念願かなって15分の時間を与えられた私の感想です。
 有識者と呼ばれる者たちが専門知を持ち寄って,現場や当事者の声を聞きながら,本気で意見を戦わせて最適解を求めるようなことが,なぜできないのでしょうか。過ちが検証されないまま,素人の思い付きのような議論の末の失敗を何度繰り返せばよいのでしょうか。
 どうか,結論ありきではなく,専門知を結集して,本来の議論を通して最適解を求めるような方針決定をしてください。そういう改革こそ最優先でお願いしたいと思います。
 今日はどうもありがとうございました。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。それでは,委員の皆様,御質問あるいは御意見がございましたら挙手ボタンを押していただければと思います。
 それでは,末冨先生お願いいたします。
【末冨委員】
 羽藤先生,御報告大変ありがとうございました。特に私も,この検討会議から,改めて高大接続ですとか,あるいは入試の議論に関わった者として,御発言を非常に重く受け止めました。私自身も,この検討会議がどのような役割を果たすのかといったときに,恐らく,この会議全てで今後の高大接続のあり方を,もう今年中に結論を出すということはあり得ないと考えています。
 ただし,何をすべき会議かといったときに,やはり先生がおっしゃったように,公平性や公正性,あるいはブラックボックスではないような透明性だとか専門性のあり方を含めて,意思決定プロセスそのものが,受験生あるいはステークホルダー全体の信頼に値するものでなければならない,そうした原則のあり方,あるいは意思決定のあり方を決めるということだろうと思っています。
 その際に,先生おっしゃっていただいたように,やはり専門家の御意見が,なぜ高大接続のこれまでのプロセスの中で,これだけ軽視されてきたのかということは改めて検証に値しますし,それから,その上で,今後いかに専門家関与というものがあるべきなのか。特に,やはり様々な立場の専門家の方たちが,虚心坦懐に,この国の,特に大学受験生に何を保障すべきかといったことについては,その議論のあり方も含めて,この会議自体の報告に取りまとめていくべきだと考えています。
 私自身も今回の改革の挫折に至るまでのプロセスというのは非常に重く受け止めなければならないし,だからこそ,その教訓を生かして,次にどうしていくべきかということは改めて考えた次第です。
 特に質問というわけではありませんが,先生の御発言を受け止めての,この会議のあり方ということで意見を述べさせていただきました。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは次に岡委員お願いいたします。
【岡委員】
 ありがとうございます。大変いろんなことを教えていただきまして,ありがとうございます。国大協の入試委員として今まで携わってまいりまして,先生の話は大変参考になりました。
 今,英語を小学校,中学校,高校と,ずっと積み上げてきている状況です。そもそも大学に入るときの英語の能力を入試で評価しないといけないのか,もっと客観的な指標があれば,高校を卒業した,段階,もしくは,どの時点か分かりませんけど,ある段階で評価をしたものを,大学の入試などに使ったほうが,よりいいんじゃないかと。学力の差があるといっても,その標準がきちっと決まっていれば,比較ができるのではないかと思っていますが,いかがでしょうか。特にスピーキングについては。
【羽藤氏】
 ありがとうございます。とりあえず,利潤を競わなければいけない民間の2つ以上のテストを使うということについては,現在,特別選抜等でも使われていますけれども,表面化していないだけで,いろいろな問題があるので,難しいんじゃないかと私は思っています。今後どんどん利用が進めば,このままではいられないだろうなというような予想をしています。
 岡先生のお聞きになった,高校でやるべきか,大学でやるべきかというのは,私の専門とは違うので申し上げにくいですけれども,共通テストをどう見るかという問題であり,大学入試と見るのか,高校の到達度テストの一環と見るのかというところは考えなければいけない問題だと思います。けれども,共通テスト,あるいは今までのセンター試験が,高等教育に進まない生徒の教育にも影響を与えているということは事実です。
 その中で,これは個人的な考え方ですけれども,例えば,高校に入って,今は一律で同じ学習指導要領でやっているわけですけれども,ここまで意見が分かれて,つまり非常に偏差値の高い大学ではどうしてもリーディングが必要だ,論文が読めなきゃいけないと言っている一方で,多くの大学では英語の論文なんて1本も読まずに卒業していく学生が非常に多いですし,ましてや高等教育に進学しない生徒もいるわけです。ですから,英語を,私は本当に英語教育のことだけしか分からないのですけれども,中学の段階では今までのように,学習者の中に英語の能力を育てるというようなアプローチをして,高校の辺りから,進路に応じて,英語に対するアプローチを変えるというようなこともあっていい。つまり,英語教育に対して,大学を出ても喋れないと言う人がいれば,論文が読めればいいと言いう人もいるところまで割れてくるようならば,そういうことも考えてもいいのかなとは思っています。
 答えになるかどうか分かりませんが。
【岡委員】
 ありがとうございます。
【三島座長】
 よろしいでしょうか。それでは,また時間が押してまいりました。まず渡部委員,いかがでしょうか。
【渡部委員】
 上智大学の渡部と申します。一つ一つ納得しながら,感服しながら聞いておりました。最後に先生がおっしゃったことは全く同感で,私ども言語テスト学会として意見書を大分前に公にしましたが,委員会で全く考慮されず結局頓挫したという経緯があります。
 ただ,今回は,先生も触れられていました通り様々な方々の御意見を,反映されるという機会がありますので大きな進歩ではないかなと,やや楽観的に見ております。
 かぎ括弧に入れた専門家という言葉遣いには,やや注意しなければなりません。つまり,政策と子供たち,何よりも高校生のことを考えながら,バランスを,現場の状況を見ながらということが必要な,ジェネラリストみたいな考え方も必要になりますので,専門家というのをうまく位置付けながら進められる必要があるだろうと考えております。
 先生から御覧になって,一斉に共通テストを,その中に何かスピーキングテストのようなものを入れるということの可能性については,どのようにお考えでしょうか。
【羽藤氏】
 先ほども申しましたけど,今TOEFLがやっているような形で,複数回受験をするのであれば可能だと思います。一方,今の共通テストの最後につけてスピーキングをやるというのは,さっき林学長もおっしゃっていましたけど,かなり技術の開発が進まないと難しいのかなと思っています。
【渡部委員】
 同感です。どうもありがとうございました。
【三島座長】
 それでは,もうお一人お願いいたします。小林委員どうぞ。
【小林委員】
 ありがとうございます。先生たちの強烈な民間資格試験に対する御批判は非常によく分かりました。それで, CBTとかテレビ電話方式,これを発展させれば共通テストに使える可能性は出てくるのかというのが1点と,それから林先生とのお話でもあったんですけども,この前,以前のお話でも,リーディング,ライティング,それからリスニング,その3技能の合計とスピーキングが非常に高い相関があるという話なんですけど,これ逆に言えば,リーディングとライティングとリスニングでスピーキングもある程度能力を測れるとも取れるので,その点はいかがでしょうか。
【羽藤氏】
 まず,私たちのテストが共通テストに使えるかということですけれども,技術的には,そのつもりで作っていますので,そのものを使っていただくつもりはありませんけれども,そこから得た知見は使っていただければと思います。どんな形であれ。
 ですから,やった意味があったとすれば,ブラックボックスの中のものを見せられるのは,多分私たちだけだと思うんですよね。もうけが関係ないですから,どんなデータなのかを全部見せて。先ほどBritish Councilのことを聞かされても,私はやっぱり商売だなと思いながら聞いていたんですけど,そういう点では,私たちは全部透明。科研費で,もともと研究をやっていますので,全部お見せできます。そういう点では貢献できるかと思いますけど,共通テストに使うというような野心は一切ないです。
 それから,能力についてですけど,それも本当に費用対効果であり,資料の続きのところを読んでいただいたらお分かりいただけると思うんですけれども,高校生の英語能力を上げるためにスピーキングテストを共通テストに導入するのであれば,非常にコスパが悪いです。そういう目的が果たされる証拠が無いわけですから。スピーキング力を伸ばしたいのであれば,もっと直接的に攻めるべきところにいろいろなものを投資するべきだと思います。
 それとは別に,繰り返しになりますけど,能力というのは,ここ,つまり頭の中にあるのですから,いろいろな方面から測ればいいわけです。それは測るという目的だけですよ,教育への波及効果とかはまた別にして。測るという意味では,測れるようになれば測ればいいし,測れなければ,つまりコスパがあまりにも悪ければ,諦めるしかないと考えています。
【小林委員】
 ありがとうございました。
【三島座長】
 これで羽藤先生からのヒアリングを終わりにしたいと思います。羽藤先生どうもありがとうございました。
【羽藤氏】
 ありがとうございました。
【三島座長】
 それでは次に,海外の入試事業について,3つお話を頂きたいと思います。
 初めに,まず,この会議の座長代理の川嶋委員から欧米の入試事情,それから広島大学の小川教授から中国の入試事情,そして京都工芸繊維大学の山本教授から韓国の入試事情についてということで御説明をいただきたいと思います。それぞれ10分程度で御発表いただき,その後,3名終わった後で20分程度の意見交換を行いたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 それでは川嶋委員から,よろしくお願いいたします。
【川嶋委員】
 川嶋です。10分で4か国をカバーするのは非常に厳しいので,ポイントポイントでお話しさせていただきます。また,多少早口になるかもしれません。御了承ください。
 それで冒頭,武藤企画官のほうからも御紹介ありましたが,主要国の入試制度については参考資料2のパワーポイント90ページ以降にありますので,またそちらも参考にしていただければと思います。
 3ページをお願いします。次です。ここに参考資料2に似たような表を作りました。大学入学資格の欄を見ていただきますと,高校卒業を大学入学資格にしている国と,後期中等教育の出口での何らかの評価を大学入学資格にしている国というふうに大きく2つに区分できます。
 次のスライドをお願いします。これには,それぞれ国の教育の歴史的な背景がありまして,左側にあります,例えば英国,フランス,ドイツといった国々は,もともと後期中等教育が歴史的には分岐型と言われまして,大学進学を目的とするルートと,それから実社会にすぐ就職する生徒の学ぶルートなど,幾つかに分かれておりました。そして,その中で大学に進学するコース,例えばイギリスですとグラマースクール,フランスですとリセ,ドイツですとギムナジウムといった,後期中等教育で大学に入るための予備教育を提供する教育システムを持っていた国になります。このような国では後期中等教育の出口での評価,先ほどの英語の評価もありましたが,この評価をもって,大学入学を可とするということになります。ここにありますように,後期中等教育の修了試験が入学資格を兼ねていたということであります。
 他方,右側が,必ずしもそういうような中等教育の仕組みを持っていない国々であります。日本やアメリカや韓国が,こちらに該当するかと思います。必ずしも後期中等教育が制度的に分岐もしておりませんし,それから,その中の一部が大学進学のための予備教育を提供しているというわけでもないので,高校を卒業した人に対して,各大学が,大学で学ぶために必要な能力を身につけているかどうかを確認するために,入学試験を実施するというようなことになっています。
 ただ,どちらのパターンも現在は高校教育,後期中等教育への進学者がほぼ普遍化するにつれて,大学,高等教育に進学する者も増えておりますので,入試によるにしても,修了試験にしても,高大接続上幾つかの課題が出てきているということであります。
 次の6ページをお願いします。まず最初に,日本とよく比較されますアメリカですが,アメリカの大学入学者選抜も,もともとは個別の大学が入試をしていたというところもございますが,現在では,日本の大学のように個々の大学が改めて試験を実施しているということはございません。
 選抜に当たっては,その評価基準,評価の仕方については,高校での一定の成績と共通テストの成績がよければ,もう合格とするフォーミュラ方式というものと,標準テストSATとかACTのテストに加えて,後で紹介する様々な観点から総合的に評価するHolistic Reviewという2つの方式に分かれております。
 また日本でも総合型選抜,学校推薦型選抜,一般選抜と,それぞれ日程が異なるように,アメリカでもEarly Decision,Early Action,そしてRegular Admissionと,出願時期や合否決定時期が異なっているという形で入学者を決めております。
 いずれにしても,5月1日までに志願者は合格を得た複数の大学の中から最終的に進学する大学を選ぶというスケジュールになっています。
 Holistic Reviewについては,吹き出しで書いてありますように,これは20世紀初頭にコロンビア大学で,その当時に学力テストだけで合否を決めるとユダヤ系の学生が非常に多くなってしまうということで,学力以外の要素も評価の対象に入れたところから始まったと言われております。
 次のページをお願いします。もう一つの特色は,日本と異なって,大学共通のウェブ出願システムがあるということです。日本でもウェブ出願システムが普及しておりますが,個々の大学がそれぞれ出願システムを持っています。ところが,アメリカでは,一番シェアが大きいのはCommon Application,それから最近できたのは3つ目のCoalitionというような形で,出願者は,ほぼこれらのウェブ出願システムから複数の大学に出願できるという仕組みになっております。
 2つ目の特色は,入試や進路指導に関する専門家集団がいるということです。アドミッションオフィサーとか高校の進路カウンセラーから成る専門職団体があって,この中のNACACという団体が,先ほど紹介したような入試の日程のガイドラインを作成したり,トレーニングを提供したりしています。
 3番目は,先ほどお話ししたように,これまでSATとかACTのスコアを出願の際に提出することを要件としておりましたが,近年は,これを求めないという大学が非常に増えております。Test OptionalとかTest Blindと言われておりますが,現在では1,000大学を超える大学が,もうSAT/ACTの成績提出をマストとしないということになっております。
 これは,標準化テストの内容が社会的,文化的,経済的にバイアスがかかっているということ。それから入学後の成績の予測力がそれほど高くないということなどが理由とされております。
 次お願いします。これがフォーミュラ方式で,カリフォルニア州ですと,カリフォルニア州立大学はこのように,単純に数字のマトリックスで合否を決めています。
 次お願いします。次は,いわゆる様々な要素を総合的に勘案して評価するHolistic評価のものですが,その中にも幾つか種類がございます。
 次お願いします。この総合的評価をする時には,この表にありますように,非常にたくさんの観点から志願者一人一人を評価するということになっております。
 次お願いします。アメリカのアドミッションオフィサーの話を聞きますと,非常に多くの観点から出願者一人一人を評価するので,こういう形に分けて,それぞれの観点を評価していると言われます。
 評価のScience&Artと言われますが,この左側が科学的側面で,これはどちらかといいますと,数字で観点の評価が出てくるというものです。ですから,これらは非常に客観的な数字を読むことによって,その志願者の大学に入るための準備状況は分かるということになります。
 他方,右側にありますように,例えば志願者が書いた志望理由書とか,推薦書とか,面接というのは,その評価は客観的な数字に表すことはできないということで,主観的評価にならざるを得ない。ですから,ある意味で数字を読むのでは追うんじゃなくて,それぞれ志願者や推薦者の声を聴くことだと言われます。
 この両者の組合せによって最終的に合否を決めるということでございます。
 次お願いします。こういう形で多面的,総合的に評価するときには当然2人以上で評価することになっています。究極の総合的評価は,志願者について評価者が合格,不合格,保留と分類し,もうこれだけで最終的な合否を評価するということになっております。
 次お願いします。特にアメリカで重要なことは,志願者の背景,学習や生活の文脈を考慮することと言われています。それがHolistic評価の,総合的評価の非常に大きな特色であります。
 右下にイラストがありますけれども,それぞれ志願者の家庭や通学している高校,あるいは住んでいる地域についての包括的な情報を,カレッジボードが「ランドスケープ」というプロジェクトで提供しておりまして,アドミッションオフィサーは,この文脈情報を参考にしながら合否を決めるということ。
 次お願いします。次はイギリスです。駆け足になりますが,御承知のように,イギリスでは大学進学のためには後期中等教育最終学年に実施されるAレベル試験を,普通は3科目受験して,その結果と,内申書や志望理由書,推薦書を併せて大学に提出します。この際重要なのは,各大学の選考が,このAレベル試験のどの科目で,どれだけの成績を取ってきなさいということを,あらかじめ指示していることです。アドミッションポリシーでそれを示すということになっております。
 それから,この赤字で書いてあります共通出願プラットフォーム,UCASを通じて5大学まで出願できますけれども,オックスフォードとケンブリッジの両方に出願することは不可とされております。
 イギリスでも,次の資料をお願いします。アメリカ同様,一人一人の文脈を考慮しながら最終的に評価をしているということになります。
 ちなみにケンブリッジとかオックスフォードでは,イギリスの一般大学と比べて面接をマストとしています。その具体については終わりのほうに参考として付けさせていただいておりますので,御参照いただければと思います。
 次にフランスに参りたいと思います。19ページです,ありがとうございます。
 フランスは,御承知のように,後期中等教育,リセ修了時にバカロレア試験というのを受けることによって大学進学が決まるということになっております。バカロレア試験は,元々の,先ほどもお話ししたように,いわゆるアカデミックなリセ修了者だけが対象でしたが,今は,技術バカロレア,職業バカロレアという形で,いわゆるアカデミックな高校以外の学生にもバカロレア取得が推奨されております。
 バカロレアというのは,先ほどのイギリスのAレベル試験もそうですが,一つの社会の中で認知された資格,クオリフィケーションであります。
 バカロレアは,御承知のように,今頃,毎年実施されるわけですが,残念ながら今年はコロナで実施が中止になっております。
フランスの現状は,バカロレアの種類が増えたために,バカロレア取得者が非常に増えていることです。ここに書いてありますように,3つのバカロレア試験の獲得者が,現在では修了者の8割近くいます。ただ,その全員が大学に進学するわけではございません。就職するための資格として活用している人もいます。
 大学進学者,高等教育進学者が,非常に急増している一方で,退学者,中退者も非常に多いということで,ここに書いてありますように,学士過程を3年で卒業する率は3割弱となっています。4年でも,4割ぐらいしか大学で学位を取得できないということで,進路指導・選択が不適切ではないかというのが課題になっております。
 次お願いします。このように,こういうたくさんの大学進学,高等教育志願者が増えたので,フランスでは,志願者と大学をマッチングするプラットフォームを2009年から導入しました。これはAdmission Post-Bacというものです。
 ここに書いてありますように,志願コースを24件まで申込みが可能で,このAPBのアルゴリズムが,志願者と大学の要件をマッチングすると言われております。
 定員が応募者よりも少ない場合は,その志願者の出身高校,家庭状況を優先した上で,第1志望か第2志望かで順位付けしていると言われています。優先順位の一番高い学部に合格できなかった場合は第2志望という形で,3回まではそれが可能ということです。
 ただ,様々な批判がありまして,例えば,このマッチングのアルゴリズムは不明であることや,データ処理責任者が不明であることなどが批判されていました。先ほど羽藤先生が言われたようなブラックボックスになっていると言う批判です。
 抽選で決めているのではないかといううわさも出てきて,実際調べてみたら,160の専攻で,実は抽選で合否を決めていたわけです。
 そこで,次お願いします。今のマクロン大統領の政権になって,これらの問題を解決するために,新しいマッチングのプラットフォーム,「パルクールシュップParcoursup」というものを導入しました。可能な限り高大接続を充実させようという観点から,大学側が提供する様々な情報と志願者から出す様々な情報,これをうまくマッチングさせるというわけです。
 先ほどのプラットフォームと違って,今度は志願先は10件までしか出願できない。
 志願者が提出してきた様々なデータを各大学の試験委員会が,ここにありますように,客観的な属性とか適性・能力等に基づいて合否を決めるというわけです。
 2019年から始まりましたが,志願者の92%が,どこかの大学から入学許可をもらったと言われています。
 ただ,これもアルゴリズムが不透明という批判があって,結局,フランスでは元々バカロレア取得者は全員大学へ行けるという制度でしたけれども,必ずしもそういう現状ではないということで,結局,選抜が始まったのではないかという批判が行われております。
 次お願いします。次,これがパルクールシュップのウェブのページで,スケジュールも書いておきました。
 次お願いします。最近,バカロレア改革が検討されております。これまでは普通バカロレアは3コースに分かれていましたけれども,1つにするということになりました。と言いますの も,科学バカロレアを選択した生徒が必ずしも理系の大学に進学しないといった進学上のミスマッチがあるということです。
 それからバカロレアは,基本的に問題は高校の先生が作成し採点していますが,まず,その高校の先生の作問と採点の負担が非常に大きいということ,それから一発勝負だということで,できるだけ高校の先生の負担を下げるという意味で,バカロレアの評価に内申点を導入するとことになりました。一発試験からの脱却ということですね。内申点は40%,最終の試験が60%の比率で,バカロレアの評価をするということになっております。
 それでは,次お願いします。最後にドイツですが,ドイツもフランスと同じように,ギムナジウム出身者が主に大学へ進学しておりましたけれども,最近ではギムナジウム以外の総合制学校や,それ以外の実科学校等からも大学や高等教育機関に進学することが可能になっております。
 アビトゥーアと呼ばれるものは,ギムナジウム最終2学年の成績と最終試験で,これもフランスの最近の改革同様,学校の成績が600点で最終試験が300点という形で,非常に内申点の比重が高くなっているということになります。
 次お願いします。進学状況は,フランス同様,高等教育への進学者は増えておりますが,必ずしも現在はアビツーア取得者だけが大学に進学するという現状ではないと言われています。それ以外の資格を持った形での進学者が増えている。
 それから定員をオーバーしたところは,例えば医歯薬系は,「ヌメルス・クラウズスnumerus clausus」といって,定員制限,入学者制限があります。例えば医歯薬系ですと,アビトゥーアの成績と,何年入学を待っていたかということなどが考慮されて合否が決まるということになっております。
 それでは最後,最近の新型コロナによる各国の影響についてお話ししたいと思います。
 アメリカでは「Class 2024」,つまり今年の秋に入学する学生は20%程度減少するのではないかとか,ギャップイヤー的に1年入学を延期したり,地元の大学に進学する人が増えていると言われます。
 また,今年から来年に向けて入試が行われる「Class 2025」については,アイビーリーグの大学やカリフォルニア大学を含めて,SAT/ACTを免除する大学が非常に増えております。今後も永久に課さないという大学もございまして,カリフォルニア大学では,そういう方向を決めております。
 イギリスは,同じようにGCE Aレベルの試験の実施を中止しまして,代わりに高校からの成績,評価提出をもってGCEの成果に代えるということになっております。
 次お願いします。フランスについては,先ほどお話ししたように,バカロレアの筆記試験は中止で,内申点と簡単なフランス語の口述試験等で代替するということです。
 ドイツは実施する方向で,州や市によっては既に実施している場合もあります。
 最後お願いします。以上,最近の動向を見てきまして,結論から言うと,どの国でも,最終試験や入試,入学試験に加えて内申書を重視する方向性に向かっているのではないかと思います。
 特にフランスでは,先ほど御報告したように,出口の試験,バカロレアで決まっていたわけですが,その中に内申点を導入していこうという方向に変わってきているわけです。アメリカはTest Optionalという形で,テストの点はあまり重視しないという方向に変わりつつあります。
 以上,少し時間をオーバーしましたが,私のお話はこれにて終わりといたします。
【三島座長】
 川嶋委員,どうもありがとうございました。
 それでは続いて広島大学の小川教授,よろしくお願いいたします。
【小川氏】
 広島大学の小川です。聞こえていますでしょうか。
【三島座長】
 はい,大丈夫です。
【小川氏】
 分かりました。はい。よろしくお願いいたします。
 本日は中国の大学入試について報告させていただきますけども,私に与えられた課題というのは,中国では共通試験を行っていると。その共通試験では記述問題を使っているようだと。その記述問題がどうなっているのかを報告してほしいということでしたので,そのことについて報告させていただきたいと思います。
 国が違い文化が違うと,それを理解するための前提条件をかなり丁寧に説明しないと理解しにくいんですけども,与えられた時間が時間ですので,かなり急いで,はしょって説明させていただきますので,御了承願います。
 次のスライドお願いします。中国というのは,共通試験で実質的に行っているわけですけども,その中で東アジアというのは,従来型の共通試験にプラスして,先ほど出たような内申書等も含めて,そういうものを測っていこうということになっているわけですけども,現在でも中国というのは,一発勝負の筆記試験だけで選抜している,そういう国だとお考えください。
 次お願いします。中国の大学入試の最大のポイントを示した,これが表でございます。これは,湖北大学という大学の選抜状況を示しているものですけども,これは一番左側に哲学,経済学と書いてありますけども,これが募集単位です。日本で,強いて言えば学科,募集単位の学科と考えてください。
 そして,それから右に北京,天津,河北と書いてありますけども,これは省名です。もちろん省といいましても,北京とか天津というのは省と同格の特別直轄市ということですので,市といえば市ですけども,便宜上,省と同格という意味では,全部省と書きます。全部で31省あります。
 つまり,この表が示していることは,統一試験は行うけども,省ごとに定員を割り振る形態を取っているということです。つまり,受験者から見ると,省の中の受験生と戦っているということになります。
 つまり,日本でいえば,広島大学の教育学部が,何人かの募集をしますけども,それを東京とか,大阪とか,広島県とか,そういうのに分けて,人数を配分して受験させていると,そういう状況が中国だということです。
 次行ってください。試験問題が統一ですので,基本的には,どの省も同じです。これは筆記試験一発勝負ですので,基本的には単純に,ここは説明できます。
 試験は6月の上旬に行われます。通常は7,8,9日です。2日間のところも多いので,7,8日です。
 しかし,今年に限っては,コロナの影響で1か月ずらすということが3月末に報告されましたので,まさにこれから統一試験が始まるという状況です。今年度に限ってはですけども。毎年は6月の上旬です。
 それで,それから2週間後ぐらいに,その統一試験の成績が開示されまして,それとともにボーダーラインというのが発表されます。これは省ごとです。
 それで,このボーダーラインは何かというと,右のところに一期校,二期校,三期校と書いてありますけども,これは,要するに大学をグルーピングしていまして,このグルーピングの大学群に出願してもいい点数がが,ボーダーラインです。一期校,二期校,三期校,難易度順に一のほうが難しいということになります。
それで,受験生は成績が6月下旬に通知されますので,その結果を見て,自分の点数が一期校よりも上にあれば,一期校の志望校3校で,各大学6校の学科募集単位までを記入して出願できます。それで,ついでに,二期校にも志望校を書く。三期校も書くということです。それは7月の上旬までに出願するということになります。
 出願は全てコンピューターです。成績通知も,受験番号を入れて成績が分かるということで,コンピューター上,になります。
それで一期校,二期校,三期校とと順番に選抜を行い,受験生は決まればそれで終わりということになります。
 次行ってください。統一試験ということですけども,先ほど申しましたとおりに,基本的には,各省が募集単位で自由にやっていいということが原則です。ですので,究極のところ, 31省が,それぞれ別の問題で,試験科目で実施可能です。
 実際に省独自で実施しているのが,ここでいえばオレンジのところです。これは北京,天津,江蘇,上海とか,基本的には人材も,学力も非常に高く,リソースもたくさんあるというところは独自でやっています。
 つまり,省の中で統一してあればいいということです。
 ただし,そうはいっても,作るのが大変ですので,現在,教育部の考試中心は,大学入試センターのようなところですけども,そこが全国巻Ⅰ,Ⅱ,Ⅲという3種類の共通試験の問題をつくっていて,3種類の中から,各省は好きなのを選んでいいということになっています。省の中で統一していればいいので,ということです。
 このバリエーションは,その選択領域の中で特に重視するところが分かれているためですが,実際はⅠ,Ⅱ,Ⅲの順番で,入試問題の難易度が異なっているためです。
 ですので,これは違う問題で同じ大学に入るということの象徴です。
 じゃ,次行ってください。試験問題が,例えば全国巻Ⅰ,全国巻Ⅱ,全国巻Ⅲ,基本的に試験日は全て統一してありますので,基本的には6月7,8,省によっては9日もやるところもあります。試験時間も,基本的には同じです。少なくとも全国巻Ⅰを使っているものは,このような時間になっております。
 語文と書いてあるのは,日本でいえば国語に相当するところです。
 1日目は2時間半の国語に,午後が2時間の数学。文系,理系,分かれています。2日目は,文科総合,理科総合が午前にあります。これは総合といっても,総合問題ではなくて,実質的に中身を見れば分かりますとおり,文科系は地理,歴史,公民に相当するものが,それぞれ問題が入っているということです。理科総合のほうは,物理,化学,生物が,それぞれ問題が入っているとお考えください。要するに,3科目とも,基本的にはやらなければならないということですけども,その後,午後は外国語試験をやるということです。
 次行ってください。具体的に,では,ここからですけども,筆記試験がどうなっているのかということです。大きくは選択式の問題と記述式の問題があるわけですけども,ここで,これは語文ですね。国語に相当するものがどのくらいの割合になっているかということです。これは2019年度の全国巻Ⅰの問題を一応調べてみましたので,こういうように表にしておきました。
 これは問題数と配点と,選択なのか記述なのかで分け,記述式のところには黄色で引いてありますのでご覧ください。
 ここで見ますと,配点から見ますと,大体,語文というか,国語には,70%以上,74%が記述の配点になっているということです。
 ここで特に中国的に特徴だと言えるのは,記述問題の最後で,作文というのがあります。しかも60点という配点で800字以上ということになっておりました。
 800字以上というのは,中国語をやられた方は御存じかと思いますけども,日本語にすれば大体2倍から3倍になりますので,日本語でいえば2,000字ぐらいのものを求めているとお考えください。
 あとは50字とか,12字とか,単純に語句を記入するのもあります。
 次のところ行ってください。時間の関係で,数学があります。文系と理系で数学の問題は異なりますけども,配点方式,記述か選択かは全く同じです。
 次行ってください。外国語も最後に作文というか,100ワード程度のものがあって,25点で結構大きいです。外国語は一番低くて,33%が記述になっているということです。
 次行ってください。総合はこのようになっていて,記述なんですけども,単純に語句を答えるものが結構あるし,文章を書かなきゃいけないのも結構あるんですけども,何字とは書いてありませんでした。字数制限がない回答になっています。全体の53%です。
 次。理科は,記述が結構多いと思いますけど,配点からすれば,それほどでもなくて,58%ということです。理科の場合は,記述というよりは,式を入れたりとか,数字を入れたりとか,語句を入れたりとか,そういう感じの記述だとお考えください。
 じゃ,次行ってください。ここで採点方法がどうなっているのかということです。公式的な説明は,もちろんありません。基本的には公開されておりませんが,新聞等で今年はどうだったとか,やはり社会的関心が高いので,新聞のところで,どうのこうのというのがよく話題になります。最近のところで,そこをちょっと拾ってみました。
 何個かあったんですけども,ちょっと時間の関係で,これだけにしますけども。まず四川省。四川省というのは,規模的にいえば日本と同じ規模です。1億人ちょっとの人口で,受験者53万人が受けているということで,それで採点の期間は11日で行っているということが書いてありました。11日で,採点者数は4,000人です。約4,000人を費やしているということです。その4,000人は,ここの四川省のところには書いてありませんでしたけども,ほかの省と同じで,採点は,約半分が高校の先生,約半分が大学の先生です。ただし,採点の基本的な採点は,ほとんど高校教員がやっています。じゃ,大学教員は何をやっているかというと,配点基準を示したりとか,あるいはちょっと点数が割れたりしたときの3人目とか4人目のところに大学の先生が入るということで,基本的には高校の先生がやるということになります。
 次は浙江省。浙江省は独自の問題を作成している省ですけども,ここでは難易度は書いていなかったんですけども,どのくらいのスピードでやられているかということは出ておりましたので,そこでちょっと紹介できるかなと思います。
 記述部分がありました。記述部分は,単純な語句とか,10字以内とか,15字以内とか,そういうやつですけども,これは,採点者1人当たり1万2,000答案を7日間で採点するということが書いてありました。ということは,採点期間は7日間です。1日8時間なので,56時間で仕上げる。とすると,採点者1人当たりの1時間に214答案を採点する。一答案が17秒程度だということです。
 それで,説明を忘れていましたけども,中国の場合は紙では採点しておりません。全てコンピューターの中に全部入れられています。作文も記述の答案は全部電子化していて,採点者は答案の画面を見て横に数字をクリックするような感じです。点数が5点なら5点,カチッと押すというような感じでやっていくので。終わると次の答案が出てくるという。ランダムに出てくるらしいです。だから,もちろん誰かも分かりませんし,どこのどなたかは分からないけども,ランダムにどんどん,画面上に答案が出てくるので,それを採点していくという形です。ですので,1答案17秒。
 それで,作文部分がどうなのかということだったんですけども,採点者は1人当たり1日600答案を採点しています。800字のあの中国語ですね。作文。1時間に70答案を大体採点するんだけども,1答案は,そうすると60秒弱で800字をやっている。60点配点があるところをやっている計算になるということです。
 次行ってください。じゃ,採点はどうなるの,60点もあるのに,ということがあると思います。基本的には,どうやって採点しているのかということで,これも新聞等で漏れ伝えるところですね。公式には出ていませんけども,誰もが知っています。誰もが知っているというか,高校の先生たちはみんな知っているということですけども,作文は2人で採点します。コンピューターで,横にある数字に点数を付けるんだけども,あらかじめ点数の差を決めておいて,何点以上の差があれば次に回すということです。基準点以内ということになれば,そのままそれが,平均点がその人の得点になるということになります。だから,1分以内の答案で,さっと採点したものの平均点が出るということです。
 しかし,基準以上の点数が開いているならば,3人目が,これは恐らく大学の先生じゃないかと思うんですけども,採点に関わって,3人目の先生の点数が得点になるんだけども,この点数も,要するに,何人,前の人と基準以上の差があれば,ここも保留して,さらに4人目が出てくる。4人目が最終ということで,最終的には4人目。4人目が採点して,4人目の先生の得点が点数になるということになっています。もちろん,それはコンピューターでどんどん,どんどん答案が出てきて採点していくので,前の人の点数はもちろん分かりません。分からなくて,ランダムに出てくるということです。
 では,次行ってください。ということで,こんなような感じが実際です。では,高校と大学の役割はどうなっているのかを示してほしいという御希望がありましたので,一応ここでまとめてみましたけども,共通テストに関しての管理・運営はどこがやっているかというと,高校でも大学でもないです。つまり,省の教育局にあります,いわゆる入試センターに相当するところが管理・運営をして,そこで受験生の管理だとか,点数の管理だとか,大学への得点を知らせるとか,そういうのをしているということなので,高校でも大学でもありません。
 では,試験問題は誰が作っているのということですけども,これは,新聞をざっと見ましたけども,どちらかというのは書いていなくて,教師が作っているということで。ですが,全国問題ですので,全国から教師は呼ばれているようです。大学の先生がどのくらいなのか,高校の先生がどのくらいなのかは分かりません。が,教師が北京に呼ばれて,北京で作っているということらしいです。
 ただ,ここではっきりしているのは,試験会場は高校でやります。大学は使いません。これは,隣の韓国もそうですし,台湾も,私も見ましたけど,台湾でも基本的に高校です。基本的に大学入試というのは,高校と大学といえば,やや高校のほうの範疇に入ることだということなので,高校側でやるということです。ですので,採点も基本的には高校の先生がやるということです。
 なぜ高校の先生がやるかというと,基本的に大学入試の内容は,高校の教育課程の内容を問うているからです。それを毎日教えていて,指導していて,こういう作文を書けと言っているような先生のほうが,採点が正確に早くできるだろうと,そういうことです。ですので,高校の先生が基本的にやって,大学の先生がついているような感じです。割合から見ると,どうも,どの省も半分半分が一応,採点委員として選抜されているようです。
 じゃ,結果が出てきました。最終的な合否判定はどうするのでしょうか。大学側が,募集人員など分けておりますから,各省からデータが来ますので,それで一応,ここは5人にしてあったといったら5人までを合格にするとか,そういう決定は大学側がしています。
 最後にですけども,すみません,急ぎましたけども,今日はちょっと英語の入試のことを議論していたので,英語の入試もちょっとどうなっているのかを伝えてほしいということでしたので,簡単に説明します。あまり詳しくはないですけども。今まで一発勝負のところだったんですけども,年に2回やるように今,まさに今年ぐらいから変わってきますし,一部の省は既に数年前から始めています。
 年に2回やるということで,例えば北京は,年に2回でも筆記試験とリスニングの試験のところのリスニングのみに1回実施するような感じです。いいほうの成績を取る。さらに6月の筆記試験の点数で加算していく。
 上海は,年に2回ありますけども,2回とも,筆記試験もリスニング試験もやって,その点数のいいほうを採用するという形になっています。
 ちなみに外部試験ではありません。入試センターが作った試験問題を採用するということになっていますので,外部試験を使っているわけではないということを申し上げておきます。
 かなりはしょってしまいましたけども,以上で私の報告を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは次に,韓国の入試事情でございます。京都工芸繊維大学,山本教授からお願いしたいと思います。ちょっと時間が押しておりますので,コンパクトに,できるだけしていただければと。お願いでございます。よろしくお願いします。
【山本氏】
 よろしくお願いいたします。音声のほう聞こえておりますでしょうか。
【三島座長】
 はい,大丈夫です。
【山本氏】
 では,始めます。
 韓国の入試と聞けば,非常に激しい受験戦争を思い出す方も多いと思います。その背景として,国家戦略の側面からは,輸出依存の経済でありながら,朝鮮半島のみハングルで,隣国と疎通が難しい点,そして,個人のキャリア戦略からは,就職はソウル市内の大学が有利だとか,兵役が挙げられます。中でもTOEFL,TOEICの受験は当然で,高得点でなければ使える資格としてみなされなく,特に15歳から29歳の青年失業率が高く,2018年は9.5%もあり,その結果,韓国を離れて他国で就職をするという青年が多い状況です。
 そういった中で,大学入試は,その後の人生を左右する大きなイベントであり,どのような制度政策を政権が取るかに国民が関心を寄せています。政権が替わるたびに少しずつ入試制度が変化する特徴があります。
 韓国の大学入試では,そこにあるように「三不政策」というのがあります。1999年度に導入されて以降,韓国の大学入試の根幹をなす原則です。この政策は,高等教育へのアクセスの公正性を確保するということを目的にしています。1つ目の本考査とは,我が国でいう個別学力試験に当たります。我が国の入試と異なる大きな点がここで,韓国では大学修学能力試験。今日は,修能試験とか修能と私は表現すると思いますが,日本のセンター試験のような共通テストです。この大学修学能力試験で学力を測定し,教科学力面の合否判定はそれで行われます。個別大学での試験といったものは基本的にありません。禁止をしています。 次に,高等学校間に存在する学力レベルの差の区別,それから寄附を見返りとしての入学の許可,これら3つを禁ずるものが「三不政策」です。
 これらからも分かるように,韓国において大学入試は社会階層化に直結するもの,また学校外教育機関への参加や学校外活動の受賞,資格取得といったようなスペックは,保護者の経済力や社会的地位,立場が影響しているとしています。例えば,金のさじ,銀のさじ,泥のさじの,どのさじを手にして生まれてきたかによって,大学入試の合否,さらには将来までも左右すると言われています。だから,その影響を排除して公平性を保つために,修能試験の出題の多くは,EBSという公営の教育専門放送局のプログラムから,と決まっています。
 そのような背景の下,NEAT(国家英語能力評価試験)の開発に取り組みました。NEATは文字どおり,韓国で国家を挙げて英語能力試験システムを開発したものですが,それはヒアリング,リーディング中心の理解能力からスピーキング,ライティングの表現能力を育む英語教育の転換を目指したものでした。
 本日は,検討会議のほうからのオーダーどおり,このNEATの開発と廃止の経緯を中心にお話します。
 次お願いします。ここで,韓国の大学入試システムについてポイントだけ簡単に説明します。
 韓国の大学入試は現在,選考の時期による随時募集と定時募集があります。修能試験は11月に開催されますので,その前に出願をして,修能を受け,合否判定されるのが随時募集です。ここでは学校の調査書,志望理由書,そして9段階の等級別に最低学力水準として示された修能試験の結果が選考要素となります。12月には進学先が決まりますので,第1志望はこの時期に出願をします。定時募集は,いわば随時募集の不合格者が再チャレンジをする機会です。ここでは修能試験でほぼ合否が決定します。
 次お願いします。まず,NEAT開発の経緯を示しています。盧武鉉政権は,2006年に「英語教育のための革新計画」を発表します。2001年当時ですが,韓国人の英語スピーキング力は,108か国中105位という結果がありました。その順位から脱却するため,10年以内に英語での授業実施率100%を目指して,優秀な英語教師の確保とスピーキング,ライティング教育の強化,英語教育のインフラの拡充,この3つの方策を打ち出しました。それとは前後して,海外留学に必要なTOEFLが,文法中心のCBTからインターネットを介したiBTとなり,そこにスピーキングが導入されるようになりました。
 2006年,TOEFLのスコアの利用者が,滑り込み受験のために,受験回数を増やすという動きが出現しました。そのため,受検申込み窓口が供給量を超過し,サーバーダウンとなって,受験の受付ができない事態となっています。中には,この受検機会を高額で販売したり,日本や中国で受検する学生も出たりして,社会問題となりました。海外資本に英語教育が引きずられることを危惧し,政権は2007年にNEATの開発基本計画を公表します。4技能の国家的スタンダードを構築し,試験開発から実施,管理などを,修能試験を管轄している韓国教育課程評価院が担当することになりました。
 政権が李明博大統領に替わります。選挙公約では,実用的英語スキルを重視した新しい国家英語能力試験の導入を表明します。併せて,政権の引継ぎ委員会では,NEATを韓国型TOEFLとして,高校生用の2級,3級,そして成人用の1級を開発し,修能試験の代替とするという発表をしています。この開発予算は5年間で393億ウォン,日本円にして約40億円となりました。
 2009年度からはフィールドテストが行われます。その中で2010年には,NEATを2013年度の募集で活用することを発表しました。
 次,お願いいたします。NEATの企画目的は,ここにありますように,学校で英語コミュニケーション力をつけることです。そして,教育課程とNEATの足並みをそろえ,その授業実施のための教員訓練も供給する方針でした。
 韓国教育課程評価院では,従来の修能試験(CSAT)の英語とNEATを,右側の表のように比較をしています。
 CSATではリスニングとリーディングの2技能試験だったのが,NEATではスピーキング,ライティングを加えて4技能が対象でした。NEATの問題では多肢選択法だけではなくて,パフォーマンス・アセスメントも扱います。測定結果(成績)は,集団の標準に準拠する測定から,到達基準に準拠する測定となり,4段階評価となりました。また,NEATはインターネットでのテストになり,受験機会は1人につき2回与えられるという計画でした。
 次お願いします。さらに,開発しようとしていた各レベルの内容です。NEAT2級は大学教育に必要な英語力の測定が目的でした。文法事項は設けず,基本的アカデミック英語に関するトピックで展開されていて,想定単語数は3,000語,教科書とのカリキュラム連動も考慮していました。
 NEAT3級は,基本的かつ実践的英語能力の測定が目的でした。文法事項は設けず,日常生活及びビジネスでの実用英語に関するトピックで展開されていて,想定単語数は2,000語。一般英語,実用英会話との連動を考慮していました。
 NEATの成績表には4技能ごとのパフォーマンスレベル(A,B,C,F)を示すように設定しています。
 次お願いします。NEATの実施規模は120万人対象です。24のテスト・フォームで行い,同じテストを5万人が受験できます。韓国教育課程評価院を中央センターとして,全国約1,800か所のiBTテストセンターを設置し,問題作成や採点については,5,000人の中学,高校教員を導入し,担当に当たらせる計画でした。先ほど小川先生からもお話ありましたとおり,韓国も修能試験,そしてこのNEATも,高校側で全て行われるという形を取っています。
 次お願いします。2009年から11年のテストの開発時期では,プレテストを計7回実施し,最大169校,2万人の規模で行っています。そして,12年度からは大学入試のパイロット版を実施しています。13年度から修能と併設実施をして,15年は修能の英語を廃止して,NEATに完全移行する計画でした。
 この2015年は新教育課程生が受験する年でした。ちょうど英語において表現力重視の教科書が開発されていましたので,その成果をNEATで見ることができるように配慮されていました。ところが,受験生60万人を対象に,間違いなく試験を進行することが物理的に難しいとして,まずは2012年に,教育部は修能試験の英語をNEATに変えることについて延期すると発表しました。翌年6月に,NEAT試験で大量の電算ミスが発生します。内容は,答案が入力されていない,また答案画面が突然消えるといったエラーでした。
 このときは既に李明博政権から朴槿恵政権に替わっています。朴槿恵政権は施政方針に則って,「大学入試制度簡素化法案」を公表します。その中でNEATのシステム運用が難しいこと,またNEATという新しい試験が導入されれば,学校外教育機関を誘発する可能性もある,という理由から,修能試験の英語からNEAT英語の代替はしないということを発表しました。
その後,社会人用のNEATのみを残して開発の継続を試みましたが,既存の英語試験を超えるメリットがNEATには見当たらないということで,企業での活用もなく,NEAT事業は結局廃止となりました。
 次お願いします。NEATの課題です。まずは高校側からです。
 スピーキングとライティングをどう教えればいいかと高校をはじめ,教育現場は混乱しました。韓国では当時,受け身な理解能力を養成する授業展開をしていたのですが,表現力の育成となると,今後は生徒が主体的に関わる授業にしなければなりません。こういった授業にどれだけの生徒がついていけるのか。また,教師はどのように評価するのか。必要なツールや人員配置もなく,もっともこういう授業をしたこともないという点で問題となりました。 さらに英語教員の業務量も増え,人事考課をどう設計するかという学校の組織管理面も問題になったようです。
 次はシステム面です。トラブルの可能性は否定できません。御存じかもしれませんが,修能試験では,実は使用する鉛筆までも指定されたものが配付されます。公平性,公正性を大学入試に強く求める国ですと,システムのトラブルは決して許されることではありません。 またシステムの運用費が年間約30億ウォン(約3億円)もかかるため,試験を有料化にする必要があります。
 ほかに学校でスピーキング,ライティングの指導が十分に行われないということで,結局,英語塾が乱立します。修能試験に導入されるとあって,早くからNEAT対策塾に通学される保護者も多かったと言われています。
 そして,韓国の知り合いの研究者や関係者が指摘していたのですが,この領域の研究者,関係者との議論もなく,さらに学校や家庭にも準備,理解,信頼を得るような組立てもなく,政府の事業が導入されたことを課題としています。
 NEATの廃止以降は韓国内でも,英語教育に関して,もう文法的な学習だけでは立ち行かないという認識が広がっているようです。また学校でも,プロセス評価の重要度が高まっています。大学入試に調査書が反映されることで,英語学習方法の変化を呼んだと言われています。
 そもそもNEATの目的は,学校の英語の授業を意思疎通中心に改善することでした。そういった点から見ると,その後の状況は,その目的に達成したとまでいかなくても,目的の方向に向かっていると評価できるかと思います。しかし,意思疎通ができるような英語能力のためには,学校教育以外にも個人的な努力,つまり塾とか予備校などにも頼ることがなされているという実態があります。
 ちなみに,こういった状況に対して,2014年に教育部は,これまでの相対評価体制で1点を巡るような過度な学習負担と学校外教育費が増大し,負担につながったと指摘をして,その解消のために,2018年度から修能試験の英語では絶対評価を導入しています。現在の議論は,この絶対評価のほうに移っている状況です。
 以上,報告発表が,大学の英語4技能試験の導入の教訓や考慮点になれば幸いです。御清聴ありがとうございました。
【三島座長】
 山本先生,どうもありがとうございました。先生だけ,ちょっと時間短くして申し訳ございませんでした。
 それでは時間,かなり大幅に過ぎておりますので,次のヒアリング,公益財団法人あすのばから御推薦いただいた大学生,高校生の方,2名からのお話を先に伺いたいと思います。その2名の方は,ちょっとこの後の予定があるということで,まず,このお二人の学生さんのお話を伺ってから質疑応答としたいと思います。
 それでは,本日は北海道情報大学4年の深堀さん,それから兵庫県立大学附属高等学校2年生の原真理さんのお二人に御参加いただいておりますので,それぞれ7分程度御発表いただき,質問あるいは意見交換をしていただければと思います。
 それでは,どうぞよろしくお願いいたします。深堀さんからよろしくお願いいたします。
【深堀氏】
 先に原さんをお願いしていいですか。
【三島座長】
 原さんから。
【原氏】
 ただいま御紹介にあずかりました原真理と申します。今回この会議で高校生の声を聞いていただくとともに,今後の入試をよりよいものにするため,この場をお借りして意見を述べさせていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 私は兵庫県の公立高校の2年生です。公益財団法人あすのばで高校生メンバーとして活動しています。あすのばは子供の貧困対策センターであり,多くの人に子供の貧困問題が他人ごとではなく,もっと身近に感じてもらうことを目的として活動し,またその多くの子供たちに支援をしたり,心休まる場所を提供する団体です。
 あすのばとつながったきっかけは,中学1年生時に,新聞で見かけた小中春合宿キャンプの記事でした。中学1年生と3年生の計2回参加し,高校1年生の夏にも高大夏合宿キャンプに参加しました。そして,あすのばという団体に興味を持ち,継続的に関わりたいと思い,今に至ります。
 今回は大学入試について,私だけではなく友人も含めた高校2年生の状況や考えを知っていただくことができればと思います。
 資料では5点意見を述べていますが,口頭発表では4点,意見を述べさせていただきます。
 まず1点目,若者の意見を聞くことを大切にしていただきたいです。大学入試を受験するのは高校生です。今後も,今日のこの会議のように高校生の意見を聞いて考えていただくことを大切にしていただきたいです。
 私は今回の会議に当たって,10名以上の友人や先生に簡単なアンケート調査を行いました。その結果,この議題に対して,私自身も含め,周りの高校生はひどく混乱している状況でした。
 私は去年の高校1年生時に,大学入試に英語民間試験や記述式テストを導入するという話を突然聞かされ,ひどく戸惑いました。しかし,それが延期されたということで,さらに戸惑いました。
 これは私自身に限らず,アンケート調査によって多くの高校生が同じ状況に置かれているという事実が明らかになりました。
 入試の方針を世間に公表する前に,あらゆる問題点などを予想して対策を取り,様々な面から考慮してほしいです。公表する際は,問題点がこれ以上ないか,またあったとしても,きちんと対策が取れているかをしっかり確認してから公表してほしいです。
 このような発言により何万人もの人々が影響され戸惑うことを考え,責任感を持って発言していただきたいです。
 次に2点目,英語民間試験についてです。
 アンケート結果より,英語民間試験の導入はあまりよく思われていないことが分かりました。その理由として,主に金銭面や地域との差,採点の誤差,学校で対策が取られているところとそうでないところの差,また一発勝負にならないとの意見がありました。
 まず金銭面については,受験料や会場までの交通費などを考えると,安い試験でも1回1~2万円かかってしまいます。地方の高校生は,家が裕福でない生徒たちも多く,この金額では受けにくい試験です。何回もチャレンジできる人とそうでない人とで,どうしても差がついてしまいます。また田舎に住んでいる人は,都会に住んでいる人と比べて,そもそもチャレンジできる機会に大きな差が生まれると思います。何回も英語民間試験を受けられる人ほど有利になるような試験は不公平だと思います。
 採点の誤差について。英語民間試験は毎回問題が異なります。それを全部1種類として採点してしまうのは,どこかで必ず誤差や何かしらの問題点が出てくるのではないかという意見もあります。
 今年度の入試も,コロナウイルスの影響で試験を数回に分けて行うという意見もあるようですが,全て同じ難易度で数回分テストを作れるのかなどで今問題になっていますよね。
 また,正確性がない,英検で問われる技能は二次試験でも十分問えることができるので,わざわざ一次試験で複雑なことをする必要がないという意見もありました。
 ほかの学校の高校生にもアンケート調査を行ったところ,英検対策を授業の一環として取り入れている学校もあるようです。そこでも,また差が生まれてくると思います。
 また,もし受験料補助があれば導入してもいいかと言われると,それもあまりよく思いません。先ほど述べた理由もありますが,やはり大学受験,つまり学力勝負というのは一発勝負が一番いいと思います。
 私が一番共感した友人の意見は,その日の調子の良し悪しも含めて勝負だし,どんな状況下に置かれても自分のベストを出し尽くせる人材こそがこれから必要になってくるし,需要があるのではないかということです。
 3点目,どんな高校生でも大学入試に挑戦しやすい支援をしていただきたいです。
 私は来年度大学受験する予定ですが,不安なのは,入試もそうですが,金銭面です。大学の受験料,入学金で100万円ほどお金を使ったという話を聞いたことがあります。ある大学に合格した際,入学金の締切りが,ほかの大学の合格発表の前になってしまう場合もあります。浪人するよりはましだからという理由で,多くの受験生は第一志望校ではなくても入学金を支払うそうですが,その大学に入学しないとしても返金されないと聞きました。
 私はその実態に疑問を覚えました。入学しないのに,なぜ入学金を支払わないといけないのでしょうか。
 そもそも受験料も入学金も,大学進学のためにかかるお金が一つ一つ高過ぎます。そこで進学にかかる高いお金を国が支援していただけると,大学入試に挑戦できる高校生が増えると思います。
 海外の教育現状と比べると,日本は政府が教育にかけているお金が少な過ぎます。OECDの報告書,図表でみる教育2018年版によると,その現状は明確になっているはずです。35か国中,日本は最下位です。
 先ほど述べた受験料,入学金に加え,教育面について述べると,例えば病気やいじめ,家庭の事情などで学校に通いたくても通えない人たちに何か支援をすることはできないのでしょうか。タブレットやパソコンなどを支援することができれば,そのような状況に置かれている人でも平等に教育を受けることができるのではないでしょうか。
 大学の無償化という制度もあると末冨先生に教えていただいたので,実際にそれを利用できるか,オンラインシュミレーターを試してみたところ,難しくてよく分かりませんでした。また,この制度があることも,私自身含め周りの高校生は知らないと思います。学校などでの説明も,もちろんありません。
 住民税非課税所得という低所得世帯の高校生の進学を支える仕組みだと思いますが,あすのばに関わる若者や私の友人の中には,そういう基準でなくても,お金のせいで大学進学しようかどうか悩んでいる人もいます。
 もっと幅広い層の若者が大学の無償化を利用できるようにしてほしいです。
 日本の政府は国民からとても遠い存在になっていると思います。先ほど羽藤様もおっしゃられておりましたが,政府に意見や改善の提案をしたけど改善されなかったという話をよく聞きます。もっと周りや国民の意見を親身に聞き,それを受け止めて今後につなげていってほしいです。
 今回の会議に関しても,私たちの意見を聞くだけ聞いて改善されないのであれば意味はありません。
 最後に4点目,今後の大学入試のあり方の提案・その他大学入試について。
 今後の大学入試のあり方を1つ提案します。ロングホームルームの時間にポートフォリオという制度について説明を受けました。それについてのアンケート調査は行えなかったのですが,私自身はとてもいい制度だと思いました。
 学力はとても優れているけど親に強制されたからなどの望まない入学で何もアクションを起こさない人よりも,内面を重視し,行動力や人格などを見て,本当に学びたい人を入学させるほうがいいと思います。「好きこそ物の上手なれ」という言葉もあるように,伸びしろもあると思います。
 また,何においても自ら自主的に言動できる人材こそが,これから重要になっていくと思います。
 今でもポートフォリオ制度に似た推薦入試がありますが,募集定員がとても少ないです。以前,推薦入試を受験した先輩に話を伺うと,「推薦入試で受かる確率は宝くじが当たるぐらいのものだ」と言っていました。また,ある先生は,はっきりとは言いませんでしたが,「推薦入試なんか受けても落ちるだけ。意味がない。交通費や宿泊代が無駄だ」というようなことを話していたように私は捉えました。
 以上の理由から,もっと内面を重視する受験方法を促進することを提案します。
 以上です。
【三島座長】
 原さん,どうもありがとうございました。それでは,高校2年生の原さんからお話を伺いましたが,もし御質問があれば,1つ2つ程度かと思いますが,いかがでしょうか。芝井先生,挙げていらっしゃいますか。柴田先生,挙げていらっしゃいますか。
【柴田委員】
 福岡県立大学,柴田でございます。どうも大変貴重なお話ありがとうございます。
 最後に推薦入試のお話をなすっておられましたが,総合型選抜というのがございまして,これ推薦入試とは違います。ぜひ原さんのような方に,いろんな大学で行われている総合型選抜というのにチャレンジしていただけたらなと思った次第で,感想を述べさせていただきました。
 以上でございます。
【三島座長】
 それでは芝井先生,手を挙げていらっしゃいますか。
【芝井委員】
 それでは,私のほうからですが,せっかくなので。大変面白い話だったのですが,一番最後に触れられたeポートフォリオなどを使った推薦型の入学がいいということと,途中に書いておられた一発勝負がいいんだというのは矛盾していませんか。
 それからもう一つは,こんな場で言うのは本当はいけないんだけど,たまたま個人的には言えないので言っておきますけど,原さんが3行に書いてあるのは,「たにんごと」と読んではいけなくて,「ひとごと」と読んでください。よろしくお願いします。今後ためになると思います。「ひとごとではない」と読んでもらわないといけない言葉。
 それは別にしまして,先ほど言いましたように,eポートフォリオのような形で,人を全般的に評価してほしい,それがいい入試ではないかということと,それから途中で試験は一発勝負であるべきだというのは,実は矛盾しているんだけど,それは原さんはどういうふうに考えていますか。
【原氏】
 そうですね。矛盾していることに関しては,学力勝負については一発勝負という形で,それにプラスアルファとして,また内面も見たら,本当に学びたい人を入学させることができるのではないかという私の意見です。
【三島座長】
 芝井先生よろしいですか。
【芝井委員】
 ありがとうございます。
【三島座長】
 それでは,原さん,どうもありがとうございました。では続いて,北海道情報大学4年生,深堀さん,よろしくお願いいたします。
【深堀氏】
 よろしくお願いします。ちょっと電波が弱くて,カメラが映っているかどうか微妙ですけど,お話しさせていただこうと思います。
 私は入試制度だったり教育の専門家ではなく,あくまでも一学生として,本日は子供の貧困対策センターあすのばの立場でお話しさせていただくので,私自身も当事者だったということもあって,経済的な部分からの観点で主にお話しさせていただけたらと思っています。
 本日用意した資料のほうは,詳しい統計とかデータを載せているわけではありませんし,子供の貧困については,いろいろなところで詳しくお話しされていると思うので,現在関わっている高校生とか学生たちの声など,数字では見えてこない部分の声に注目していきたいと思います。
 1番「はじめに」のところで,主に簡単な私の自己紹介について記載させていただいたんですけれども,札幌市内のNPO法人だったり,子供支援の団体で,札幌市内だったり北海道内で経済的に困窮している家庭の子供へ学習支援を行っています。そんな中で関わっている子供たちから,今回,入試についてどう思っているか聞いた部分について,お話しさせていただこうと思います。
 私は恐らくもう大学入試を受ける機会はない。そういった意味では,私は大学入試の当事者ではないので,高校生たちの声です。
 2番の情報格差という部分,お願いします。
 今回,入試の制度が変わるよということについてどう考えているかと聞いてみたところ,まず,そもそも共通テストがセンター試験からどういうふうに変更されるのかというのを具体的に知っている高校生が少なかったなと思います。というのも,入試の内容が変わるということは授業でも触れられているし,進路の説明でもされているけれども,じゃ,どんなふうに中身が変わっていくのかという部分は,学校によるとは思うんですけども,教員からの具体的な説明はなかったということでした。
 なので,まず,そもそも入試制度について中身を深く知らないので,共通テスト自体がいいのか悪いのかさえの判断材料もなかったということでした。
 なので,私たちの学習支援のスタッフ,支援者側としても,どんなふうにサポートすればよいのかわからない,ネットで検索しても公的な情報が見つかりづらい,効果的にできない,不安を抱える高校生に寄り添い切れないという部分もありました。
 一方で,塾に通える家庭の子たちなどでは,やっぱり受験の対策はしっかりしていると思います。塾に通っているか否かで受験対策に格差が生じてしまうということで,どんな対策をしたらいいのかなど,正しい情報が当事者である高校生に伝わっていなくて,家族や学生に不安が残っているという部分が挙げられると思います。
 次,3番お願いします。
 今回高校3年生,道内の子なんですけど,聞いてみたところ,センター試験だと先輩から教材のお下がりがもらえた。
3年生で高校卒業するタイミングで,もう使わないからいいよと,部活の後輩だったりとか学校の後輩に教材を渡すという高校生,結構たくさんいると思うんですけど,それが共通テストになると,対策の参考書だったり教材が全部新しくなるので,新しくそろえなければならないので,ちょっとそこが大変だと言っている子がいました。また4技能試験が,もともとやるよという話だったので,何とかお金を親に出してもらって参考書を買ったというんですけれども,来年度やる予定がなくなってしまい,使う機会がなくなってしまったので,せっかく買ったのに使わないものとなってしまった,お金が消えてしまったと言っていました。家の経済状況を考えると,受験にそんなにお金をかけられないので,ちょっと厳しいと言っていました。
 これは北海道だったり,地方の都道府県はきっとそうだと思うんですけれども,地理的な事情による交通機関の差だったりとか,試験会場の場所の差も結構大きく影響してくるなと思います。北海道,特に雪によるダイヤの乱れも多くて,毎年,センター試験会場に遅れてしまう学生も多数いるわけなんですけれども,教材費の補助などの実現はできなくとも,受験費用の一部補助,負担だったりとか,受験会場が限られてしまう試験などでは,地方会場の設置も細かくできていくとよいのかなと思いました。
 次,4番お願いします。学生が通っている学校現場によって対応の差がかなり違うということも見えてきました。
 まずは今年,新型コロナウイルスで休校になっていたと思うんですけれども,その間の授業や学習を,結構手厚く授業でやっているところもあれば,もう既に終わったことにされてしまっていて,しっかり理解できていないのに,もう分かっているというていで,次の単元だったりとか,さらに応用の内容に進んでしまっていて,結構しんどい,苦しいという学生たち。これに関しては小学生,中学生の子たちも,結構そういう子たちがいっぱいいるということも分かってきました。
 札幌市内ではあるんですけれども,既に英語4技能試験の準備として,英検IBAを受検させている中学校もあるということで,やっぱり通っている中学校によって,そういったものが事前に受けられるとか,受けられないとか,学校ごとによる対応の差が結構,分かりやすく差が開いているなと分かりました。
 また,高校生なんですけれども,高校の先生に,ちょっと進路変更したいと相談したところ,来年から入試が変わるから今から進路変えても受験の準備は難しいよと,まともに取り合ってもらえなかったと言っている子もいました。その学校だったりですとか教員によりけりだと思うんですけれども,やっぱり対応の差によって,結構学生に不利,困難が生じてきているという部分が分かってきました。
 次,5番ですね。5番は,特に北海道の事情になってしまうんですけれども,北海道は2022年から高校入試の制度が変更されるんですね。5教科の合計300点だったんですけれども,それが1教科100点の5教科500点になります。それと,裁量問題という,ちょっと応用の難しい問題を高校ごとに採択するかどうかという部分が選択制で選べたんですけれども,その裁量問題自体も廃止するということで,ちょっと22年から高校生たちも,中学生たちの高校入試が変わるよということなんですけれども,この2022年に高校入試を受験する中学3年生が,ちょうど2024年の大学入試を受験する世代ということで,高校,大学ともに新しい入試制度に当たってしまうので,結構,心理的な負担だったりとか,準備に当たる部分は大変になってくるだろうなというのが,北海道特有の事情ではあるんですけれども,そういう部分も見えてきました。
 ほかの方もおっしゃっていたように,もちろん大学入試で使えるものは使ったほうがいいと思います。英語が得意だったりとか,留学の経験があるとか,4技能試験の結果が入試に有利に働く学生がいるのも分かります。そういうのは積極的に活用していくべきだなとは思います。
 ですが,それを全員に強制する必要は特に感じません。それらの成績や試験を利用するかどうかの選択が大学ごとだったりとか,もしくは個人ごとに自由に選択できる柔軟性があるといいかなと思いました。
 いろいろなツールだったりとかやり方を利用することも,学生が参加しやすい形を取ることはとてもいいことだと思うのですが,何かをしようとするとき,必ずそこにたどり着けない人も出てくるわけで,少しでもこぼれ落ちてしまう学生を減らすために,方法や選択肢は少しでも多く用意されているとありがたいかなと私は思いました。
 最後にというところなんですけれども,本人の努力ではどうにもできないような生まれ育った家庭の経済格差だったりとかが,そのまま教育格差,ひいてはその後の人生に深く影響するなんてことはあってはならないことで,それらの溝を埋められる唯一無二のツールは教育だと私は思っています。
 私は生活保護を受けて生活していたんですけれども,私ちょうど3姉妹の長女なんですけど,妹2人も大学に通っています。特に次女,2番目の妹は,医療系の6年間の大学に通っているというのもあるんですけれども,6年間で1,200万円の奨学金を借りています。大学に進学するときに,高校生の同級生に,そこまでして,どうして大学に行きたいのと言われて,ちょっと泣いてしまったと本人も言っているんですけれども,やっぱりそういう家庭の経済格差が,そのまま教育格差につながるというのは,これからどんどん改善していけたらありがたいなと思っています。
 私は本日,子供の貧困対策センターあすのばという立場でお話しさせていただきましたが,あすのばでは,子供がセンターということで,「子どもたちと明日をつくる」というミッションを掲げていますが,子供たちの明日をつくっていく教育を実現するのは文部科学省の皆様と思っています。
 本日のこの会議のように,学生を置いてきぼりにしないように,これからも声を拾い続けていただければと思います。どんな環境の子供,若者も諦めることなく,自分の望む進路選択ができるような教育を実現していただきたいと思います。
 以上です。
【三島座長】
 深堀さん,どうもありがとうございました。それでは,また,もし御質問がございましたら,1つ2つになりますが,いかがでしょうか。渡部委員,いかがでしょうか。
【渡部委員】
 新しい知識として,気付きをたくさん起こさせるようなお話で感謝しています。
 お話の中で触れられた参考書など先輩のお下がりがもらえるというお話しがありました。私たち試験制度を準備する立場からしますと,そのような準備教材も含めた情報を十分に受験者に提供する必要があるということを改めて認識しました。試験制度を変えるときには,それなりの時間を取って事前にたくさんの情報を,サンプルのテスト課題と一緒に提供するということが必要だということを,今お話を伺いながら改めて感じ取ったところです。ありがとうございました。
【深堀氏】
 ありがとうございます。
【三島座長】
 それでは続いて萩原委員どうぞ。
【萩原委員】
 高校の校長を代表している萩原からお話をさせていただきますと,深堀さんのお話を聞いて,やはり高校の校長先生方も,生徒の状況等をよく把握して,校長として,文科省にも,必要なことについては要望をしていきたいと思います。生徒の思い,それもきちっと伝えられるのも高校長の役割だろうと思っています。ぜひとも,またそういった思いがあれば,高校の校長先生にも,伝えてもらえるといいと思います。
 本日,深堀さん,いろいろな思いを含めて,お話を聞けて,私のほうも大変ありがたかったと思っています。ありがとうございました。
【深堀氏】
 ありがとうございます。
【三島座長】
 それでは最後,芝井委員の手が挙がっておられますか。
【芝井委員】
 すみません,直接挙げていないのですが,念のために深堀さん,大変小さな問題で申し訳ないんですけど,北海道の高校入試の制度は変更されるということで,ちょっと何が変更されたか分からなかったんだけど,300点満点から500点満点,比率は変わらないので。すみません,内申書との比率が変わるんでしょうか。
【深堀氏】
 そうですね。まず点数の配分が変わるというのもそうなんですけれども,裁量問題という…。
【芝井委員】
 それはよく分かります。裁量問題でなくて,300点満点から500点満点,同じ5教科ですよね。同じ重みですよね。
【深堀氏】
 はい。
【芝井委員】
 ただ単なる計算の仕方だけですよね。6,5,30なのか,5掛ける100の500なのかという話ですよね。だから,内申書との比率が変わるんですか。合否に際して。
【深堀氏】
 内申書との比率も変わってくると思います。
【芝井委員】
 それが多分ポイントだろうと思うんだけど。すみません,小さな話で申し訳ありません。ちょっと分からなかった。
 それともう一つは,これも大変申し訳ないんですけど,恐らく学生じゃなくて高校生のことですから,生徒ですよね。
【深堀氏】
 そうですね,はい。
【芝井委員】
 そうですね。はっきりと大学生のことを喋るんだったら学生とおっしゃって,高校生までだったら,やっぱり生徒と呼ぶと,理解のミスがないと思います。
【深堀氏】
 はい,ありがとうございます。
【芝井委員】
 実際に文科省からすると,せっかく修学支援制度をつくったので,ぜひ在学生,在学している学生も使えますので,利用してほしいと思います。
【深堀氏】
 はい。
【芝井委員】
 本当に困っている人たちがきちっと教育を受けられることが日本にとってもすごく大事なことだと思いますし,大学もそのためにたくさんの支援をしていきたいと思いますので。ありがとうございました。
【深堀氏】
 ありがとうございます。
【三島座長】
 それでは,ここまでにさせていただこうと思いますけども,原さん,それから深堀さん,先ほど高校生や大学生の声を広く聞いてくださいということございましたけれども,この検討会でも高校生,大学生を含めて広く一般に,別途ウェブによる意見募集等もやりますので,安心していただきたいと思います。これは,また今日お集まりの委員の方にも,そういう動きをちゃんとしているということをお伝えしたいと思います。
 それでは,お二人の大学の学生と生徒の皆さん,ありがとうございました。
【深堀氏】
 ありがとうございます。
【三島座長】
 それでは,大分時間が過ぎてしまいましたが,先ほど御講演を頂いた海外の入試事情,川嶋委員,それから小川先生,山本先生に,もし御質問がある方がおいででしたらと思いますが,いかがでしょうか。両角委員どうぞ。
【両角委員】
 ありがとうございました。ちょっと時間がなくてあれなんですが,3人ともに本当はたくさん聞きたいのですが,1つずつ教えてください。
 まず川嶋先生のところの御発表もとても興味深く拝見したんですけれど,内申書重視になっていくということで,フランスとかだと高校の先生が作問するという負担が大きくて,そちらにというふうなんですが,それぞれにやっぱり,なぜそうなるのかというところの理由っていろいろあるかなと思いまして,それをもうちょっと教えていただきたいです。
 例えばSATとか非利用の大学増えているというのを結構ニュースでも見ます。社会文化的,経済的バイアスがあるという指摘は多くなされてますが,内申書にしたところで,その辺は変わらないんじゃないかなという思いなどもあり,先生のお考え聞かせてください。
 続いて,小川先生についての質問なんですが,採点方法など聞いていますと,これでちゃんと採点できるのかしらと思ってしまうのですが,こういう記述式問題の採点方法について公平性だとか厳密性みたいなところに対して,中国の国内で,どう評価されているのかということについて教えてください。
 最後,山本先生ですけれど,すみません,韓国で修学能力の英語の試験が絶対評価になったと最後おっしゃったんですけれど,具体的にそれがどういうことを意味しているのかというところが,ちょっとよく分からなかったので,補足いただければと思いました。
 すみません,たくさんありまして。以上です。
【三島座長】
 それでは,いかがでしょうか。川嶋委員。
【川嶋委員】
 ありがとうございます。手短に。1つ,フランスについては,スライドにも書いてありますけれども,やはり試験一発の弊害が大きいので,プロセスも評価するという方向への変化だと思いますが,日本の場合同様,共通テストの試験問題の作問や採点に比べると,まだ内申書の作成はプレッシャーが少ないのでは。アメリカについては,いろいろ議論があるんですけれども,大学が一番重視しているのは,入学してから少なくとも1年目,フレッシュマンイヤーの成績にどれくらい,テストの得点を初めとして,それぞれの要素が影響するのかということと,最終的には卒業できるかどうかということがあります。そこで,どの要素が一番予測できるのかということを分析したときに,SAT/ACTよりも高校のGPAのほうが,入学後1年間の成績とか卒業率の予測率が高いという分析が多く報告されています。あと高校ごとの格差については,先ほど御紹介したように,カレッジボードが最近,高校の情報データベースをつくったということと,それから各大学のアドミッションオフィサーが,かなり高校回りをしていて,出願者の高校とか,その近辺の地域ってどういう地域かということを熟知している。また,高校の先生とのコミュニケーションがあるので,かなりテスト得点を含めた出願情報を補正できるし,高校との信頼関係が出来上がっているということで,GPAや推薦書等をかなり重視して合否を決めていると私は理解しています。
 以上です。
【三島座長】
 それでは,小川先生いかがでしょうか。
【小川氏】
 小川です。御質問ありがとうございました。手短に回答させていただきますけども。基本的に出てきた採点に対して受験生は,制度としては,一応疑問を呈するプロセスというか,訴えるルートはあるんですけども,実質的には使っていないのが現状です。それはそのような,あまり訴えるという文化が元々ないということもありますけども,現実的には,その点数が分かった後で,すぐにもう出願のプロセスに入るんですね。実質的には,もう受け入れざるを得ない状況がそこにあると,そういう文化ですね。これはいいか悪いかというか,悪いほうだと思いますけども。仮に訴えた場合,逆に点数が下がるんじゃないかというおそれもあると,そういうようなことも言われておりますので,文化的というか,時間的にも,ちょっと難しいということです。
 一応,高校の先生がやるほうがいいということで,高校の先生にお願いしているという意味では,大学の先生じゃないという意味では,少し安心があるというような感じだということです。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,山本先生いかがでしょうか。
【山本氏】
 両角先生ありがとうございます。韓国の大学入試における英語について,特にNEATの開発経緯と挫折がテーマでしたので,その後の状況に触れる程度の報告となりました。ご質問を受け,少し追加をいたします。
 NEAT廃止以降,意思疎通可能な英語力も必要という認識が拡大し,幼少時からの早期留学が増えました。しかし,高校現場は修能試験の対策のために,読解・文法中心の問題解答式授業が継続されました。この課題に対して,2018年度生より修能試験の英語において絶対評価が導入されました。
 絶対評価導入の期待は,学校の英語授業が修能対策型授業から外れたことで,過度な競争と学習負担を軽減でき,表現力の育成を中心とした授業を実施して,生徒の実用英語能力を向上させる方向に向かうことでした。
 しかし,実際は,修能の英語の絶対評価の導入とともに英語教育の方向転換のための評価方法や授業開発などが伴わず,学校現場での大きな変化をもたらすことはありませんでした。また,学校外教育費の負担を減らすために導入するという政府の期待とは違って,政府が2020年4月に結果を公開した“2019年の私教育費調査”を見ると,1人当たりの月平均私教育費は,前年比で英語=9000ウォン,数学=7000ウォン,国語=2000ウォン値上がりし,英語の増加幅が最も大きい結果となり,等級の境目の生徒たちの早期対策が加速しました。さらに,修能試験の問題の量や難易により,等級の精度に影響があることが明らかになる,など,中途半端な英語絶対評価導入で不確実性が増し,相対評価への揺り戻しも検討に挙げられる状況にあるようです。
 NEATや絶対評価の導入といった韓国の入試改革を見ますと,時代や社会の動向に合わせた人材育成の中で大学入試を改革,構築しているのですが,そこには学校における授業,評価,運用や体制,また家庭の経済状況や協力など,一個人の大学進学に対する奮闘努力だけではすまない領域への目配りをはじめ,配慮や考慮がなければ,入試の3原則が崩れたり,新たな課題を創出してしまうことを示唆していると思います。
 以上でございます。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,大分時間を今日は超過してしまいました。
 本日の検討会はこの辺で閉会としたいと思いますけれども,最後に事務局から何かございましたらお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 次回,第11回の会議ですけれども,7月7日の火曜日に行いたいと思っております。ただ,具体的な時間は,ヒアリングの対象者との調整の結果,決定して,また御連絡をいたします。
 以上でございます。
【三島座長】
 それでは,大変長時間にわたりまして御協力ありがとうございました。本日の検討会,以上でございます。ありがとうございました。

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