大学入試のあり方に関する検討会議(第9回)議事録

1.日時

令和2年6月16日(火曜日)14時~17時30分

2.場所

文部科学省15F特別会議室

3.議題

  1. 外部有識者・団体からのヒアリング  1髙田直芳(埼玉県教育委員会教育長) 2斉藤圭祐(NPO法人 全国言友会連絡協議会 理事長) 3近藤武夫(東京大学先端科学技術研究センター准教授) 4‐1河合英樹(学校法人河合塾 理事長) 4‐2石原賢一(駿台教育研究所 進学情報事業部部長) 5‐1杉田道子(秋田県立秋田北高等学校教育専門監) 5‐2井坂直樹(茨城県立土浦第一高等学校教諭) 5‐3小玉裕介(石川県立金沢泉丘高等学校教諭) 6‐1藪内章彦(兵庫県立姫路西高等学校主幹教諭) 6‐2谷口みち佳(愛媛県立松山南高等学校教諭) 6‐3髙木愼二(熊本県立八代高等学校指導教諭)
  2. 自由討論    

4.出席者

委員

(有識者委員)川嶋座長代理、益戸座長代理、荒瀬委員、斎木委員、宍戸委員、島田委員、清水委員、末冨委員、両角委員、渡部委員
(団体代表委員)岡委員、小林委員、芝井委員、柴田委員、萩原委員、吉田委員、牧田委員
(オブザーバー)山本大学入試センター理事長

文部科学省

萩生田文部科学大臣、伯井高等教育局長、森田文部科学戦略官 他

5.議事録

【三島座長】
 それでは,皆様,こんにちは。座長の三島でございます。定刻となりましたので,これから第9回大学入試のあり方に関する検討会議を開催いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回もコロナウイルスの感染拡大防止のためのウェブ会議方式での開催でございます。音声などに不都合はございませんでしょうか。本日も傍聴者,報道関係者の入室は認めず,ライブ配信での公開ということにしてございますので,後日,議事録をホームページに掲載することとしたいと思います。よろしゅうございましょうか。
 それでは,よろしくお願いいたします。前回に引き続き,本日も本検討会の議論に多様な意見を反映するために,外部有識者の方からの御発表,意見交換を行うこととしてございます。本日のヒアリングに御参加いただきます有識者の皆様には,お忙しい中,本当にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それから,前回,私は所用で欠席いたしまして,川嶋座長代理に議事の進行をお願いしたところでございますが,今回も所用のため,途中から,会議運営要領第1条に基づいて,川嶋座長代理にバトンタッチをお願いせざるを得ないということでございますが,御理解いただければと思います。
 それでは,事務局からもし何かありましたら,武藤企画官,いかがでしょうか。
【武藤高等教育局企画官】
 今日は委員の皆様の御欠席はなしで,ただし,宍戸先生,渡部先生,吉田先生につきましては,途中から御出席の予定になっています。今日も外部ヒアリングになりますけれども,意見発表者の先生方も含めまして,前回までと同様,聞き取りやすいよう,はっきり御発言をお願いいたします。また,御発言の都度,場合によっては,お名前をおっしゃっていただいたり,資料参照の際は,該当箇所を分かりやすくお示しいただくなど,御配慮いただければありがたく存じます。また,ハウリングを避けますために,発言時以外はマイクをミュートにしていただきますとともに,御発言の際,手を挙げるボタンを押していただくようお願いいたします。
 以上でございます。
【三島座長】
 ありがとうございました。
 それでは,議事に先立ちまして,令和3年度,来年の入試でございます大学入学者選抜について,現時点での状況につきまして,西田課長から御報告いただきたいと思います。西田課長,どうぞよろしくお願いいたします。
【西田大学振興課長】
 では,御報告いたします。令和3年度大学入学者選抜における入試の日程や出願範囲等についてということでございますが,これらにつきましては,高等学校等の現場の実情を十分に踏まえて決めていくことが重要と考えておりまして,前回の検討会議でも御報告したとおり,全国高等学校長協会に対して,入試日程,出題範囲,追試験の活用による受験機会の確保などに関するアンケート調査の実施を依頼しておりました。
 先週開催された大学入学者選抜方法の改善に関する協議では,このアンケート結果も踏まえ,特に入試日程について回答が多かった,当初予定どおりの実施とし,予定どおりの実施ができなかった場合の予備日の日程も明確にすべきというような案等について議論が交わされました。明日17日に再度協議を行う予定にしております。
 まだ結論は出ておりませんので,引き続き議論を行っていただく予定ですが,文科省といたしましては,受験生の不安を解消し,進学準備に取り組んでもらうためにも,今月中,速やかに大学入学者選抜実施要項を策定,公表していきたいと考えております。
 なお,今後の感染の状況によっては,大学入試の時期や実施の在り方などについて,速やかに専門的な判断が必要になることから,改善協議の下に,感染症の専門家を含めたワーキンググループを設置いたしました。これにより,どのような事態にも受験生第一の立場に立って機動的に対応してまいりたいと考えております。
 以上です。
【三島座長】
 御説明どうもありがとうございました。
 それでは,議事に入りたいと思います。議事の第1番目は,外部有識者・団体からのヒアリングでございます。本日は,地方教育行政のお立場から1名,障害者への配慮の観点から2名,そして,受験産業から2社,及び高校の教育現場から6名の教員の方からヒアリングを実施いたします。会議が長くなりますけれども,どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,まずお一方目でございますが,地方教育行政のお立場から,埼玉県教育委員会の髙田教育長から15分程度で御発表いただき,その後,15分程の意見交換を行いたいと思います。それでは,髙田先生,どうぞよろしくお願い申し上げます。
【髙田氏】
 皆さん,こんにちは。埼玉県教育委員会教育長の髙田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。本日は,大学入試のあり方に関する検討会議におきまして,地方教育行政の立場から意見を述べさせていただく機会を頂きまして,誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 次のスライドをお願いいたします。私は,この4月から教育長の職に就いておりますけれども,もともとは高校の教員でありました。これまで学校現場と教育委員会とで様々な立場から教育に携わってまいりました。高大接続改革につきましても構想が発表されて以来,教育委員会の中で,あるいは学校現場を預かる立場で様々なことを考え,また,取組も進めてまいりました。
 特に,平成31年3月に退職をいたしましたけれども,その最後の3年間は,県内の女子校の進学校で校長をしておりまして,今般の高大接続改革について,制度設計の段階から推移を見ておりました。文部科学省からは,今回のヒアリングの項目につきまして多岐にわたる案をいただいておりますけれども,その中で,本日は主に大学入学共通テストに関することでお話をさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 次のスライドをお願いいたします。では,今般の高大接続改革について,改めて振り返ってみようと思います。既に多くの方がそれぞれの視点で振り返っておられるとは思いますけれども,改めてこのような場で振り返ることに意味があるのではないかと思いますので,少しお時間を頂ければと思います。
 高大接続改革におきましては,具体的には,御存じのとおり大きく二つの狙いがあったのではないかと思っております。
 一つには,大学入学共通テストにおいて,思考力・判断力・表現力などを問うために,国語と数学に記述式の問題を導入すること,もう一つには,英語によるコミュニケーション能力を問うための4技能を含む試験を実施することでございました。どちらも今までの大学入試のあり方を大きく変える改革として大変話題になりました。
 確認しておきたいのは,この二つの改革案は,ともに理念や方向性においては,学習指導要領に沿うものであり,その意味では,当初の狙いは正しかったということであります。この二つについて一つずつ考えてみたいと思います。
 次,お願いいたします。まず記述式の問題についてでございます。これまでの大学入試センター試験は,私は非常によくできたものであったと思っております。問題はもともとよく練られておりまして,完成度の高いものでしたけれども,年を追うごとに一層洗練され,学習指導要領の目指す方向性に合致した,まさにナショナル・テストという名にふさわしいものであったと考えております。
 仮に,そこに改善の余地があり得るとすれば,それは全ての問題が択一式のマークシートの選択問題であったということでありました。したがって,改善の着眼点としては正しかったと思っております。
 思考力・判断力・表現力を育むという学習指導要領の狙いを実現するために,可能であれば,選択問題だけでなく,生徒自身に自分の言葉で表現させる記述式問題を入れることは,より理想に近いことは間違いありません。主体的・対話的で深い学びを授業に取り入れていくという流れにも合致していたものと考えております。
 しかしながら,実施に向かっていく中で,様々な障壁が出てまいりました。記述による答案を短い時間の中で誰がどう採点するのか,公平性・公正性を担保できるのか,そうした制約がある中で,国語は80字から120字程度の記述をさせる問題を含め3問程度,数学は数式等を記述する問題を3問程度と示されたところであります。確かに記述式問題は,受験者自身の記述力や表現力などを見ることができますけれども,80字ですとか,120字ですとか,その程度の字数で大学入学にふさわしい力を見ることが本当にできるのかと疑問に思った方もいたのではないかと思います。
 ちなみに,本県の高校入試でありますけれども,例年,国語の問題の中には,まとまった文章を書かせるものが含まれております。その字数は200字程度となっています。また,数学では,証明の問題ですとか,作図の問題ですとか,記述式の問題を出題していますし,英語でも併せて5文以上の英作文をある一定の条件の下で書かせる問題も出題しております。こうした記述式問題の出題を通じて,思考力・判断力・表現力などをどれだけ身に付けることができたかを見ようとしております。各学校で教員が採点するわけですけれども,採点にあたっては,公平・公正を期すために大変な神経を使って,念には念を入れて,多大な労力を払って行っているというのが実情でございます。
 50万人が受ける大学入学共通テストの記述式問題の採点にあたっては,公平性を担保するために,採点基準もかなり機械的にならざるを得なくなるだろうということも話題になりました。こうなってまいりますと,当初の理念や理想の実現を目指しながらも,実際のテストに落とし込んでいく中で,形骸化に向かっていったのではないかという思いがございます。
 次に,英語によるコミュニケーション能力を問うための4技能試験の実施についてであります。私もかつて英語の教員でありましたので,4技能をいかにバランスよく身に付けさせるかということには大分苦労した経験がございます。大学を卒業しても,なかなか英語のコミュニケーションに課題がある,英語教育に課題があるということは常々言われておりましたので,私の英語の教員としての責任も痛感しながらお話をさせていただきますけれども,そうしたことを大学受験できちんと見ようという理念や方向性にはもちろんうなずけるものがございました。
 しかし,それはあくまで国の関与の下で,私は大学入試センターが行うべきではなかったかという思いがございます。民間試験の導入にあたっては,学習指導要領との整合性でありますとか,あるいは大まかな指標であるCEFRを参考とすることの妥当性などについて,国においては適切であるという御判断をされたわけでありますけれども,現場の感覚からすると,やや違和感があったのも事実でございます。
 文部科学省としては十分確認を行ったということでありましたけれども,できればもう少し丁寧な説明なり,議論なりがあるとよかったなというふうに,今となっては考えるところでございます。
 また,民間試験の実施にあたりましては,受験生の経済的な負担,地域格差,会場の確保など多くの問題が出てまいりましたのは御承知のとおりであります。また,学校現場を預かる者といたしましては,学校の教育活動とのマッチングという視点が少し欠けていたのかなと思っております。例えば英語の検定試験を生徒が受験しようと思いますと,学校行事とぶつかってしまうとか,あるいは部活動の大会にぶつかってしまうとか,いろいろな学校のスケジュールの中で,どの試験を受験するかということを選んでいかなければならないということもございました。その辺をもう少し,期間を置いて,学校がそうした試験日程に合わせて行事などを見直せる期間が必要だったのではないかなと思っております。
 そうした議論は,私が今さら申し上げるまでもなく,多くの方が議論されてきたことだと思います。では,なぜ,一度決めた方針の変更があれほどに遅れて,困難な状況にもかかわらず,早期の変更修正に至らなかったのか。これは私もそうでありますけれども,組織で働く人間として,いま一度,自分のこととして顧みる必要があるのではないかと思っております。
 該当学年の生徒たちには多大な不安と混乱を与えてしまったということを,私としても申し訳なく思っているところであります。
 大学入試センターが六つの民間試験の団体と協定を締結できたのは昨年9月でありまして,9月の中旬には英検の事前予約が始まる,そうしたぎりぎりの日程でございました。そうしたことで,生徒には大分混乱させてしまったなと思っております。
 次,お願いいたします。今回の件で得られた教訓があるとすれば,どのようなことがあるかということをまとめてみました。私が思いますには,制度改革には,理想や理念はもちろん大切でありますけれども,同時に,実現可能性ということも併せて大切であると考えております。この二つが両立して初めて制度が前に進んでいくということではないかなと思っております。
 もう一つには,今回改めて,実現可能性に基づいた大学入学共通テストと,それぞれの大学の個別入試との役割を見直すことが大事なのではないかと思っております。
 次,お願いいたします。大学入学共通テストは,受験生や国民に対する国からのメッセージだと私は思っております。先ほども申し上げましたけれども,ナショナル・テストとしての大学で求められる学力はこういうものだと,一定のレベルを提示するものだと思います。これまでの大学入試センター試験については,問題の質や実施方法については高い評価があり,国民からも深い信頼があったと思います。その良さは再確認しておくべきではないかと思います。
 一方,大学入試は必ずしも共通テストだけではございません。各大学の個別入試において,それぞれの大学が自らのアドミッションポリシー,あるいは多様な理念・理想を提示して,こういう生徒に入学してきてほしいというメッセージであろうと思っております。
 個別入試における実現可能性は,50万人が受けるナショナル・テストとしての大学入学共通テストよりもはるかに融通が利いて可能性に富んでいるのではないかと思っております。高大接続改革を論ずるにあたりましては,個別入試を実施する大学側へのいろいろな改善について,御信頼を申し上げたいと思いますし,期待したいと思っております。
 次,お願いいたします。さて,高校生を指導する学校,そして,それを側面から支援する私ども教育委員会の立場から,大切にしていることについてお話をさせていただきます。
 教育委員会の使命は,学習指導要領の理念の実現を目指すために様々な施策を講じていくことであろうと思いますし,学校の役割は,学習指導要領の理念を具現化した教育実践に努めることであると考えます。
 現在,教育委員会と学校とは,新しい学習指導要領の示すカリキュラム・マネジメントでありますとか,あるいは主体的・対話的で深い学び,評価の在り方などについて,調査,研究し,日々,努力を重ねております。特に,大学入学共通テストにおきましては,通常の教育活動あるいは授業の延長線上にぜひ位置付けてほしいと考えております。授業と受験勉強は別のものではない,授業にしっかり取り組むことで,その延長線上に大学入試があるということを,私は校長をしていた時からずっと生徒には言ってまいりました。
 次,お願いいたします。これまで述べてきたことを少し整理させていただきます。
 まず,理想としての記述式問題の導入ですとか,英語の4技能を適正に評価するということは正しかったと思っております。ただ,制度改革にあたっては,理念や理想とともに実現可能性ということも極めて大事だということであります。ナショナル・テストとしての大学入学共通テストには,これまでも出題してきていただいておりますとおり,今後とも学習指導要領に基づいた出題をお願いしたいと考えております。全国の受験生にとって,可能な限り公正・公平な試験であることは不可欠であります。
 また,この議論の中で1点刻みの入試についての改善の必要性がうたわれておりますけれども,もちろんその必要性は認めるものでありますけれども,その一方で,公平性・公正性の確保もまた大事なのではないかと考えております。大学入学共通テストと各大学の個別入試とは分けて考えたほうがよろしいのではないかと考えております。
 最後,お願いいたします。最後になりますけれども,今年度の3年生は,昨年,いろんなことがありまして,大分混乱させてしまったなと思っております。今年度は,新型コロナウイルス感染症の拡大によりまして,埼玉県も現在もまだ分散登校の途中にございます。早ければ来週から通常登校に戻したいと思っておりますが,この混乱の中で,更に学習に大きな影響が出ていると思っております。こうした生徒の窮状を救うためには,私たち教育に携わる者が責任を持って対応しなければならないと思っております。
 私は教育長として,これからも文部科学省の御指導の下,この国の将来を担う若者たちのために努力してまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 私からの報告を終わります。
【三島座長】
 髙田教育長,どうもありがとうございました。
 それでは,ただいまの御説明に対しまして,御質問や御意見がございましたら,手を挙げるボタンを押していただけますでしょうか。発言の意思表明をよろしくお願いいたします。
 いかがでしょうか。私の画面からですと今どなたかが手を挙げて,芝井委員が挙げていらっしゃいますか。よろしくお願いいたします。
【芝井委員】
 よろしくお願いします。質問も含めて,感想も含めると2つあるんですが,1つは,基本的な議論は分かりますし,学習指導要領が示すものの上に,最終的に延長上に大学入試が位置づけられるというのはそのとおりだと思うんですが,ただ,大学によっては,例えばですが,芸術系の大学は,学習指導要領の示すような達成をそのまま自分のところの大学の入試のポリシーにしているわけではないと思います。全国にたくさん大学はありますし,将来の職業選択であるとか,あるいは個性や個人としての志向を想定しながら,大学の入り口のところで,アドミッションポリシーを置いて,入試を考えていると思うんですね。ですから,単純に高校の教育そのものが大学入試に位置づけられる構造になっていないという現実が片方にあるので,その点についてはぜひ,一般論としては分かりますけれども,個別には必ずしもそれは当てはまらないところがある。これが1点です。
 もう1つなんですが,今回,共通テストの中の問題なんですけど,センター自身が,既に明らかになっていますように,50万人規模の試験ですけれども,センターを使って,実際に大学へ入学する人間というのは多数派ではないという現実です。そこをやっぱり全体の設計の中で考えておく必要があるのではないかと思います。
 その点を2つ,御意見をお伺いできたらと思います。
 以上です。
【三島座長】
 それでは,髙田教育長,いかがでしょうか。
【髙田氏】
 芝井委員さん,ありがとうございます。最初の御指摘でありますけれども,私が申し上げましたのは,あくまでも,大学入学共通テストについて申し上げたつもりでおりますので,各大学がそれぞれの大学の建学の精神ですとか,あるいはアドミッションポリシーに従って,こういう学生に来てほしいというメッセージで独自の入試をされること,それはそれで,そのことが正しいと思っております。私は国の関与の下で行う大学入学共通テストにおいては,あくまでも学習指導要領で学習した延長線上に位置付けられるべきだということを申し上げたところでございます。
 それから,センター試験で入学してくる者が多数ではないということでありましたけれども,それも私も承知しております。先ほどと回答が重なりますが,あくまでも国の関与の下で行う大学入学共通テストにおいては,それなりの制約があって然るべきだろうと思います。いろいろなチャンネルを通じて学生が入学しているということは承知しておりますけれども,そういう意味で申し上げました。
 以上でございます。ありがとうございました。
【芝井委員】
 ありがとうございます。よく分かりました。
【三島座長】
 ほかに御意見ございますでしょうか。
 末冨委員,どうぞ。
【末冨委員】
 髙田先生,大変重要な御報告ありがとうございました。2点質問がございます。
 1つは,大学入試全体の構造を見渡したときに,1点刻みの共通テストですとか,あるいは各大学のペーパーテスト型の個別試験ですよね。そうした選抜の構造と,もう一つが総合選抜ですとか推薦といった日常からの学習評価に依存しながらの選抜とに大きく2つに分かれています。
 資料を読みますと,1点刻みの入試は必要だとおっしゃっているんですけれども,それは本当に必要なのかどうかということを改めてお伺いしたいということと,もう1つは,例えばなんですが,総合選抜型ですとか,あるいは推薦入試と,それから,1点刻みのテストをくぐり抜けていかなければならない受験生との間の大きな意味での公平性を保つときに,特に問われるのは,高校教員の日常の学習評価の在り方であろうと思います。
 埼玉県下におかれましては,その辺りのバランスですとか,あるいは教員の評価技能の改善,あるいは向上についてどのようなお取組をなさっているのかということについて伺いたいと思います。
 以上,2点です。
【髙田氏】
 御質問ありがとうございます。最初の1点刻みの入試の件と,それから,総合選抜などの選抜,中身としては大分かけ離れたものでありますけれども,現在の仕組みの中で言いますと,例えば2段階選抜みたいなものが国立大,国公立大学の中で行われていることを含めて,総合的に入試を改善しようということでありましょうけれども,こうした現実がもし仮に続くとすれば,やはり公平性の観点から点数で刻んでいくということもある程度考えていかなければならないということはあるのだろうと思います。
 それから,総合型選抜の割合がこれから増えていくだろうということについては,私どもも通常の生徒の3年間の学習の成果,あるいは活動の記録等を見ていただいて,それで,アドミッションポリシーに基づいて選抜をしていただけるということは非常にありがたいと思っておりますので,そういう方向に割合として増えていくということは歓迎すべきことだと思っております。
 それから,二点目の御指摘でありますけれども,まさに埼玉県におきましても,評価の問題というのが,非常に大きな課題として受け止めておりまして,観点別の評価でありますとか,学習評価の在り方はこれまで埼玉県がどうだったかということを振り返ってみますと,なかなかそうなっていなかったということもございますので,そこは私どもは大きな課題として受け止めております。
 以上でございます。
【三島座長】
 よろしいでしょうか。どうぞ。
【末冨委員】
 恐らく,諸外国の動向を見ておりましても,特に総合選抜型ですとか推薦のように,教員の評価技量に依存するタイプの入試については,教員の評価の技術をいかに客観テストの結果とすり合わせていくかのような技術的な向上が不可欠の前提となっております。それは文科省の方針だけではなくて,やはり地方教育行政の現場におけるたゆまぬ努力がなければ,特に高校生の日常の努力を正しく正確に評価しているということにつながらないのではないかと思います。
 大きな意味での大学入試のあり方ということについては,この会議全体の中で,特に高校教員の評価技能,あるいは例えばですが,既卒者の総合選抜の在り方についての評価をいかにしていくのかということは大きな課題だと思います。
 以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,柴田委員,どうぞ。
【柴田委員】
 福岡県立大学の柴田でございます。大変貴重なお話ありがとうございました。後半のところでお話になられました地方教育行政のことで,責任者としての立場からお話をお伺いしたいんですが,我々は,高大接続等々で高等学校の現場の先生たちと意見交流をやることがあるんですけれども,その際,特に県立高校などの場合には,教育庁あるいは教育委員会の御指導というのが各県,非常に強い。必ずしもそれが全国に統一されていないというようなお話を伺っておりますし,特に資源配分等々につきましては,かなりそれが県の教育庁の裁量といいますか,地方の実情にもあるんだと思いますけれども,そういうことが多いと。
 それの端的な表れが首都圏と,私どもがおります九州地方での進学率の違いとかそういうところにも表れているんじゃないかというお話を聞くんですけれども,統一された学習指導要領にのっとって高校教育を行っているという前提に立ちますと,そういうところで差が出てくるというのは何となく大学の者にとっては納得できないようなところがあるんですが,これは今後,統一に向かっていくんでしょうか。それとも,各地方独自の方向で進んでいくのか。そういうところ,特に公立大学,地方に根差した者としては大変興味のあるところでございますので,御知見をお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【髙田氏】
 柴田先生,御質問ありがとうございます。地方で教育に格差がある,財源の配分ですとか,資源の配分ですとか,あるいは人的な状況の違いですとか,様々な違いがあるというお話でございましたけれども,地方は地方で,その自治体で特色を出すことをどうやったら図れるのか,そこに県民なり,道民なり,都民なり,府民の方がそこに住んでいてよかったと,幸せだということをどうやって感じるかということの中に,福祉があり,教育があり,産業の振興があり,農林水産業の繁栄がありみたいな,総合的な実際の経営の中で,トップである知事でありますとか,あるいは議会のお考えですとかそういうことによって,いろいろ配分の仕方というのは変わってくるのだろうと思っております。私は,首都圏に位置する,東京に隣接するところとしては,やっぱり人が財産だと思っておりますので,教育にはできるだけお金をかけていただきたいと思って取り組んでおりますけれども,そうした自治体の様々な取組の中で,教育は一生懸命やっているのだろうと思っております。そのようなお答えでよろしいでしょうか。
【柴田委員】
 どうもありがとうございます。今回も特に,先生も御承知だと思いますけれども,地域格差という問題が非常に大きく取り上げておられますけども,これはそういう状況だと,一挙に格差が解消するという状況でもないんじゃないかなというのを思っておりまして,各県でこの問題に当たっておられる教育委員会,教育庁の方がどうお考えになっているかというのをお伺いした次第です。どうもありがとうございました。
【三島座長】
 それでは,まだあるかと思いますが,ちょうど時間でございますので,髙田教育長からのヒアリングは以上とさせていただきたいと思います。
【髙田氏】
 ありがとうございました。
【三島座長】
 はい。それでは,次に,障害者への配慮の観点から,NPO法人全国言友会連絡協議会理事長の斉藤理事長からお話を頂きたいと思います。15分程でどうぞよろしくお願いいたします。
【斉藤氏】
 NPO法人全国言友会連絡協議会の理事長をしております斉藤圭祐と申します。今日はよろしくお願いいたします。
 スライドに入る前に,最初に団体紹介と自己紹介を簡単にさせていただきたいと思います。私どもは,吃音のある人の当事者団体でありまして,全国各地にある吃音のセルフヘルプグループ,言友会の連絡機関です。全国言友会連絡協議会としては,1968年から活動を始めていまして,50年以上の歴史があります。
 私の自己紹介を簡単に申し上げますと,吃音のある当事者ですね。――どもります。今のようにですね。ただ,どもったり,どもらなかったりなので,そこは吃音の難しいところではあるんですけども,できるだけ皆さん,聞きやすいように,ゆっくり,はっきりしゃべらせていただきたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 では,スライドを1枚めくっていただいてよろしいですか。まず今日は,吃音のある人への合理的配慮についてという観点からお話をさせていただきたいと思います。
 まず,「吃音とは?」なんですけども,スライドの最初の段落ですね。吃音とは,自分の思うように,スムーズに話せないことですね。その話せないことによって,本人や周囲がネガティブに捉えてしまうことで,コミュニケーション行動に困難が生じることがあります。
 具体的に申しますと,例えば挨拶であったり,感謝の言葉,「おはよう」とか「ありがとう」というのは普段から使うと思うんですけども,その「ありがとう」の「ああああありがとう」のように,最初はスムーズに出てこないということもあります。
 また,自己紹介は,普通,15秒程度で終わる自己紹介が2分,3分かかってしまう。そういったこともあります。あとは,お店で注文する場合,注文したい商品名が言えずに別のものを注文してしまうとか,まさしくコミュニケーションの行動に困難が生じているということなんですけど,あと,仕事,職場でも,例えば「お疲れさまでした」という言葉だけでも出てこなくて,それがうまく言えなかったり,そういったことで,仕事での意思疎通がうまくできないなどということもあります。そういったところからストレスを非常に感じることがあって,コミュニケーション行動に困難が生じることは多々あります。
 スライドの真ん中辺りなんですけども,「吃(ども)る」ということ,症状について簡単に説明しますと,まず繰り返し,スライドにあるように,「おおおおはよう」のような「繰り返し」ですね。このほかに,「お――はよう」のように,言葉を引き伸ばしてしまうものがあります。
 あと一つ,「ブロック」,難発というんですけど,最初の言葉が,「おはよう」の最初の「お」が出るまでに5秒,10秒,かかってしまう。もう声帯がブロックしているような状況ですね。そういった症状もあります。
 あと,言葉を無理に出そうとして,体が動いてしまう。例えば頭が動いてしまうだったり,舌が出てしまうとか,あと,リズムを取るために手で足を叩くとかそういったことがあります。繰り返しでは,緊張していないのに緊張しているとか焦っていると思われてしまったり,ブロックでは,例えば,電話をしても,最初の名前,言葉が出てこずに,無言電話と間違えられて,電話を切られてしまう。そういったこともあります。「随伴症状」では,やっぱり頭が動いたり,手で足を叩いたりするものですから,不審と思われる,そういったこともあります。
 スライドの下の辺りなんですけども,吃音は様々な研究を長年,昔からされているんですけども,原因はいまだに明らかではなくて,完全に治癒させられるような治療方法は未だありません。
 言語聴覚士による訓練があるんですけども,そういったものの症状が緩和することはあるんですけども,確実ではないというのが現状になります。
 では,次のスライドをお願いいたします。「吃音のある人への合理的配慮の必要性」なんですけれども,必ずしも全ての吃音のある人が合理的配慮が必要かと言われたら,そういうわけではないんですけども,今回のように,大学入試のスピーキング場面であったり,入社面接など,そういった状況ですね。合理的配慮を必要としている人は必ずいます。配慮の必要な状況において,配慮をきちんと受けることができる体制,仕組みが大事なのではないかと考えております。
 スライドのところにもありますけども,真ん中辺りですね。大学入学共通テストの英語科目において,話すことに十分な合理的配慮の提供がされないまま,話すことがスムーズではないことによって,英語の能力が低いんだと評価されてしまったら,これは「不当な差別的取り扱い」になるのではないかなと考えております。
 さらに,現在,大学進学率は6割に及ぶということもありまして,合理的配慮がないことによって,子供たちが希望する進路が選択できなく,未来に大きく影響することにもなりかねません。子供たちの未来,選択肢の可能性を奪うことにもなりかねません。
 では,一番下の下線部のところなんですけども,「現行の大学入試制度では『合理的配慮の提供』は確保できるのか?」ということについて,次のスライドでお話をしたいと思います。お願いします。
 「合理的配慮の提供」の確保に向けてということなんですけども,障害者差別禁止法で,合理的配慮の提供,法的義務と努力義務とあることは皆さん御存じかと思います。スライドの星印にあるところなんですけども,私たち,大学入学共通テストに合理的配慮の提供が十分に確認できていない民間試験を参加させている責任を文科省に問うことを選択しまして,昨年3月,文科省に声明を提出しております。
 そのときの提出した意見書にも記載させていただいたんですけども,英語民間試験,GTECにおいて,高校生の吃音当事者と保護者が,吃音に対する配慮に関して,GTECに問合せをしたところ,吃音に対する配慮はないという回答がされました。私たちが文科省に要望書を提出した後,GTECの障害者の配慮事項には,吃音に対する配慮が追記されました。今後も障害のある人に対して合理的配慮の提供がないという事態が起こってはならないと,私どもは考えております。
 スライドの下半分なんですけども,国公立大学では法的義務,私立大学では努力義務とされています。民間企業,特に英語試験の実施企業ですね。及び私立大学においても,努力義務ではなくて,法的義務にしなければ,障害者の「合理的配慮の提供」というのは確保できないのではないかなと思っております。
 文部科学省として,英語試験に民間企業を参入させたことであったり,私立大学の入試において,合理的配慮の提供の確保をどのようにお考えになられているのかなというのを,質疑の時間に少しお聞かせいただければ幸いです。
 では,次のスライドをお願いします。こちらは「吃音のある人への合理的配慮の具体案」ということで,あくまで1例として説明させていただきます。
 まずマル1番なんですけども,発話時間の延長ですね。こちらは言葉がスムーズに出てこないので時間が必要であるということですね。2つ目の発話試験の免除なんですけども,吃音のある方では,症状の度合いによっては,時間を延長されても言葉が結局出ない方もいらっしゃいます。そうすると,発話が不能な状態になるんですね。そういった場合に免除ということも,1つの選択肢で必要なのではないかなと思います。
 3番のタブレット以外の形式での実施ということなんですけども,電話だったり,タブレット,言わば,基本的に音声でメッセージを伝えるということなので,すごくプレッシャーがかかります。吃音の当事者は,電話がすごく苦手ですね。要は,声だけでしか伝えられないからなんですね。そもそも試験,入試とは,学生が自分の勉強してきた最大限の能力を発揮して,それが評価される場であると思うんですね。なので,吃音のある人に対しても,学生が最大限の能力を出せるような環境を整えることは必要な配慮の一つなのではないかなと考えております。
 あと,マル4番とマル5番ですね。総合的な評価における「話す」の部分の重み付けの変更,非流暢性を加味した上での評価ということなんですけども,吃音というのは,言葉の音声の表出,発話や発音にのみ限局して出る障害なんですね。しかし,スピーキング,話すという過程においては,まず質問に対する理解があって,そこから話す内容を組み立てるという作業があって,最後に実際の発声や発音があって話すということが行われるんですけども,しかし,スピーキングの試験において,評価の対象になるのは,実際に外に話す発話や音声でしか評価ができないことがあると思います。
 例えば,「What’s this?」の答えが,「It is 何々」という答え。ただ,「It is」の後が,――このようにブロックで行けなくなってしまったと。そういった場合,言葉がすぐに出てこないから分かっていないとか,理解が足りないということでは決してありません。言えなかったとしても,本人は完璧に理解できているかもしれないです。
 そういった状態をどう評価するのか。その吃音があって,スムーズに言えないこと,もしくは全く言えないことを加味して評価しないと,吃音のある人はスピーキング試験に不利になってしまうだろうと考えております。
 その下のコメ印のところ,「上記について医師の診断書があれば可能となるようにすること」に関してなんですけども,幾つかの民間試験では,合理的配慮を受ける際に必要な提出書類として,医師による診断書が必要とあります。ただし,吃音においては,診断書を書ける医師が非常に少ないという現実がありまして,提出書類,必要な提出書類が医師の診断書では,吃音のある人は配慮を受けることがほぼできません。これではせっかく合理的配慮の提供を民間試験が準備していたとしても,そもそも配慮を受ける資格が得られなくて,これは絵に描いた餅のような状態になっていると思います。
 医師が吃音の診断書を書けない問題というのは,大学入試のあり方や,文科省だけの問題ではありません。厚労省,日本医師会などに私たちが声を届けていかなければならない問題であると考えています。
 ただ,民間試験の障害者配慮事項を確認すると,ケンブリッジ英語検定においては,医師の診断書に限らず,言語聴覚士等のリハビリテーション専門家や公認心理師の意見書も,医師の診断書と同様の証明として扱うとあります。このように,他の民間試験でも提出書類の幅を広げることで,合理的配慮を受けられる吃音当事者は増えていくのではないかと考えております。
 あと,スライドにはないんですけども,各試験,3つの民間試験の障害者の配慮事項について確認させていただきまして,そこで気づいたことをお伝えさせていただきます。
 吃音は,発達障害者支援法の対象疾患に含まれてはいるんですけども,十分な理解や認識が得られていないことが現状にあります。各民間試験の吃音の障害分類もばらばらであったりしますので,発達障害や吃音の理解や認識が不十分であったり,曖昧なままで果たして的確な合理的配慮の提供ができるんだろうかという疑問があります。
 しかし,発達障害といっても特性は本当に様々なんですね。民間試験の合理的配慮事項について,発達障害として一くくりにするほうが逆に困難で分かりにくいのかなとも思っています。今回確認させていただきました配慮事項なんですけども,ケンブリッジ英語検定,IELTS,GTEC,TEAPは,吃音や発話障害として別書きされているんですね。別書きにされていることで,確認する側も分かりやすいし,これから試験を受ける本人や保護者も安心して受験ができるだろうと思います。
 吃音をはじめ,障害の配慮が確保されているということがきちんと示されていなければ,当事者は最初から受験そのものを諦めてしまうかもしれません。例えば,私の吃音を理解してもらえないのかな,吃音があるからスピーキングでは評価してもらえないのかな,ならば最初から受験を諦めよう,仕方ないと。それは先ほども申し上げたんですけども,吃音のある子供たちの未来や選択肢を奪うことになるのではないかなと思っています。
 では,スライドをお願いします。最後なんですけれども,私たちの基本的な主張を3点申し上げたいと思います。
 まず1つ目,吃音のある子供たちが,入試・進学,その後の就職に不利にならないような体制作りをしてほしい。これは先ほども申し上げたとおり,吃音のある子供たちの未来,選択肢の可能性を奪わないでほしいということです。
 2つ目,私たち障害のある人を抜きに,ルールを決めないでほしい。当事者にしか分からないことというのは必ずあります。今回,ヒアリングに招いていただいたことは本当に感謝しております。今後も私たち当事者の声を聞く姿勢を持っていただきたくて,ともに前進していけたら嬉しく思います。
 では,最後が,「吃音があっても,豊かに生きられる社会の実現を」ということなんですけども,吃音があっても,能力を発揮できて,幸せに生きられる社会を実現できたらと思っています。それは必要な時に必要な合理的配慮を提供できる社会でもあると思っています。そのためには,今日のように,行政だったり,政治家の方であったり,専門家であったり,教育関係者であったり,障害当事者,団体などのコラボレーションが必要であると思います。吃音は,10年後も20年後もあり続けますし,大学受験する吃音当事者も今後もあり続けます。だからこそ,お互いが継続して,いい関係を構築しながら,ともに,吃音があっても,障害があっても,豊かに生きられる社会を考え,作っていきましょう。
 以上,御清聴ありがとうございました。
【三島座長】
 斉藤理事長,どうもありがとうございました。
 それでは,皆様,御発言ございましたら,手を挙げるボタンを押していただければと思います。
 それでは,芝井委員,いかがでしょうか。
【芝井委員】
 斉藤理事長,ありがとうございました。大変勉強になりました。
 一つは,医師の診断書ではなくて,言語聴覚士の文書による証明は方法としてあるんでしょうか。そういったものであれば可能になるようにしてほしいということはぜひ実現できればと思います。
 それから,私たちは,例えばセンター試験の中でどのような合理的配慮が行われるのかを一つの手がかりにしながら,私立大学ですけども,私立大学の合理的配慮を考えてきました。当然それ以外に受験生のほうから相談があって,センター試験のやり方でない形でいろんな対応もしてきたわけですが,そういった意味では,新しく生まれる共通テストの中で,吃音に対してどのような合理的配慮をしてくれるのかというのが大きな意味での転換点があると思いますので,ぜひ今日のお話を生かしてほしいと思いますし,私たちもそれを十分考えながら,合理的配慮を考えていきたいと思います。大変良い話をありがとうございました。
【斉藤氏】
 ありがとうございました。
【三島座長】
 ありがとうございます。
 それでは,続いて,末冨委員,どうぞ。
【末冨委員】
 今の芝井先生の御指摘とも重なるんですけれども,恐らく個別の大学においては,吃音もそうですけれども,障害を持つ受験生に対して,まだ合理的配慮が十分ではないと私自身も感じています。ただ,もしもそうした中で,例えばこうした大学の取組が注目に値するですとか,非常にいいというようなことがございましたらお教えいただきたいと思います。
【斉藤氏】
 今日の会議の時点で,どこの大学がこういった取組をしているということまでは,すみません。そこまでは情報がちょっと,準備する時間がなかったんですけども,ただ,そういったことを私たちが収集することも,足りないことを指摘するだけじゃなくて,こういったところが参考になるんじゃないかというのがすごく,ほかの大学においても参考になると思いますので,そういった点,気付き次第,また声を届けさせていただきたいと思います。
【末冨委員】
 ありがとうございます。私自身も気づいていくことができればと思います。
【三島座長】
 どうぞ。それでは,次に,柴田委員,どうぞ。
【柴田委員】
 斉藤理事長,吃音のことについて,私たちに啓発していただきまして,大変ありがとうございました。今回,言うようになさったのは,恐らく英語のスピーキングというのが問題になって,やむにやまれずということなんだと思いますけれども,今までの視点でも総合的な評価ということで,面接など,我々はやっていたわけですね。その場面ではあまりこういうことが取り上げられたような記憶がございませんでしたけれども,何か参考になるようなことがありましたら,ぜひお聞かせいただければと思いますが。
【三島座長】
 斉藤さん,いかがでしょうか。
【斉藤氏】
 参考になる情報を今,持ち合わせていなくて,こちらも情報があり次第,また共有させていただければと思います。
【柴田委員】
 はい。どうぞよろしくお願いします。
【三島座長】
 ぜひシェアしていただきたいと思います。
【斉藤氏】
 お願いします。
【三島座長】
 ほかに御意見がある方はおいででしょうか。よろしいですか。
 それでは,挙手のボタンが押されていないようでございますので,ここまでにさせていただきたいと思います。斉藤理事長,本当にどうもありがとうございました。
【斉藤氏】
 ありがとうございました。
【三島座長】
 それでは,次にやはり障害者への配慮の観点から,東京大学先端科学技術研究センターの近藤准教授からお話を頂きたいと思います。15分程,御発表いただき,15分程度の意見交換を行いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【近藤氏】
 よろしくお願いいたします。東京大学の近藤と申します。今日はこのような機会を頂きましてありがとうございます。
 まず私のほうから,この障害のある学生の受験についてということで,少し包括的なお話をさせていただこうと思います。本日お配りしている資料なんですけれども,今日は15分間のお時間をいただいておりますので,この資料はすごくたくさんスライドがあるんですけれども,最初の13枚を使用いたします。それ以降,たくさん資料をつけておりますが,これは様々な関係資料をまとめております。
 まず,私自身の自己紹介についても,お時間がもったいないので,後半のほうに関連情報として,私が東京大学のほうで取り組んでおります様々なプロジェクトについての資料を添付しております。こちらのほう,もしよろしければ御覧いただければと思います。
 一言で申し上げますと,障害のある子供たち,障害の種別は問わず,大体小学校の3年生ぐらいからサポートを始めて,中学進学,高校進学,大学進学,そこから更に就労への移行で,長期的に子供たちと関わっていくようなプロジェクトを東大のほうで行ってきております。
 それでは,次のスライドをお願いいたします。今日の私のお話なんですけれども,障害のある学生たちの受験については本当に様々な課題が複合的に関わっておりますが,今回,15分という発表時間の制約から「受験上の合理的配慮」に直結するようなテクニカルな内容について,話題を絞ってお話をさせていただきたいと思います。ですので,例えば積極的差別是正策と言われるような障害者特別選抜のお話だったりとか,障害者の受験を取り巻くような様々な制度面の課題であったりとか,あとは今回,障害種別にかかわらず,様々な障害,疾患等を対象としますけれども,それらの診断の名称,特性,症状,そういったものに関しても今回はあまり言及を行いません。もう既に過去のヒアリングの中で,別の方から,障害の社会モデルであったり,障害者差別解消法であったり,そういった考え方は既に話題提供されていると伺っておりますので,そちらの理念や法制の詳しい解説というのも今回行わずに,あくまでもこの受験のところに絞ったお話をさせていただきたいと思います。
 次のスライドをお願いいたします。それでは,大学の入試に存在する障害のある受験生にとって,障壁がどういうものがあるか,それに対してどういう配慮が必要で,その配慮の可否の判断というのをどういうふうに行っていくかというお話をまずさせていただきます。
 次のスライドをお願いします。まず受験における社会的な障壁は何かというと,これは国連の権利条約であったり,差別解消法の中でも言われておりますが,機能障害のある人もそこに参加するということ,平等に参加するということをあらかじめ想定しないでシステムが作られていると,機能障害のある人がそこに社会参加ができないというのが結果として起こってしまう。つまり,わざわざ障害のある人を排除しようと思っていなかったとしても,その作りが障害のある人も参加できるような形になっていないと,結果として彼らが参加できない。つまり,それを社会的な障壁という呼び方をしております。
 合理的配慮というものは何かというと,この社会的な障壁を除去することですね。障害があろうと,なかろうと,学生に対して平等な機会と権利を保障する変更や調整のこと,このことを合理的配慮と呼んでおります。
 ここでポイントになってくるのは何かというと,障害の種別や類型によって何らかの合理的配慮と呼ばれる変更・調整が提供できるかどうかを判断するのではなくて,あくまでも一人一人の状況に応じて,必要性と適切性,それからあとは過重な負担でないかどうかということを判断していくと。それによって合理的配慮の提供を考えていくというプロセスになります。
 次のスライドをお願いします。次に,これは入試の合理的配慮の典型的な流れです。かなり抽象化しておりますけれども,まず左のほう,障害のある学生がいます。障害のある学生には何らかの機能障害が存在しているわけですね。そして,大学のほうには,大学であったり,大学入試センターであったりといった機関になりますが,入試の機会を提供するわけですね。
 そうすると,その入試の環境,例えば紙の問題用紙が配られて,解答用紙も紙で,そこに鉛筆で書かないといけないとか,そういった様々な環境があります。それから,試験時間の長さであったりとか,あとは試験が実施される時期であったりとか,様々な慣行というものも存在しています。この環境や慣行というのが個々の障害のある学生の機能障害と相互作用することによって,何らかの困難が生じてくるわけですね。困難とはつまり,「その形だと私はそこには参加できません」ということですね。
 そうすると,それが社会的な障壁ということになってきます。第一義的には障害のある学生が,「そこに社会的な障壁があるので,何とか自分が参加できるようにそれを除去してください」と依頼をしてくるわけですね。つまり,これは合理的配慮の要望があったということになります。
 そうすると,それを受けて,大学もしくは大学入試センター等の機関は,入試を実施する側として,その入試の環境であったり,慣行に働きかけて,何らかの変更・調整を行って,障壁を除去しなければならない。これが法によって求められているわけですね。こういう流れです。なので,大学が行うことは何かというと,あくまでも,入試の環境や慣行に対して働きかけて,そこを具体的に変更・調整することが必要になってくるわけですね。
 次のスライドをお願いします。とは言っても,この社会的障壁がどこに出てくるかというのは,もう本当に様々なところに起こってきます。更に言うと,障害の種別は全て記述され尽くしているわけではありませんので,例えば希少性の疾患であるとか,そういった新しいものは常に起こってきます。そうすると,そこにどんな社会的障壁が出てくるかは分からないので,個々の場面において考えていく必要があると。
 とは言っても,何らかの基準的な考え方が必要と思いますので,本日は私の私見で5つのポイントを挙げさせていただいております。
 1番から4番については,私がこれまで個人的に支援であったり,研究を通じて知り得た過去のセンター試験の受験上の配慮を参考に資料を作っております。5番について,試験内容(2)については,今後の試験問題の在り方で恐らく起こってくるだろうと思われることを記述しております。こちらはちょっと分量が多いので,次々に進んでいきたいと思います。
 次のスライドをお願いします。まず1番目の問題用紙と解答用紙です。この問題用紙は基本的には紙で行われてきておりますので,印刷物であるということと,そこで,いわゆる印刷された文字が使われているということ。さらに,写真等が使われていて,基本的には視覚的に物が見えないと内容が理解できないという形で作られてきています。
 ですので,伝統的には,例えば点字等での受験が行われる,もしくは拡大されたもので受験が行われる。さらに,近年になりますと,発達障害の中でも特異的学習障害と言われる特異的学習症というものが言われていまして,その中には,知的には障害はないし,視覚障害はないけれども,印刷された文字を読もうと思うとそれが難しくなってくるという生徒がたくさんいるということが知られるようになりました。これは便宜的に読字障害と書いておりますが,そういう生徒にとっても視覚障害等に準じた様々な支援が必要になってくる。例えば音声読上げ等の支援,代読,そういったものが必要になってくるということです。
 さらに,ここに書字障害と書いてありますけれども,これは肢体不自由はないんだけれども,鉛筆で文字を書こうと思うと文字をうまくつづることができないもの。こういうふうに書くことだけに特異的な障害のある生徒たちもいます。そういう人たちに対して,例えばキーボード入力等で支援を行うことができる。鉛筆ではない形で受験を行うことができる。そういったものもあります。
 これらに関係して,例えば背景になってくる疾患は,肢体不自由であったり,発達障害であったり,弱視であったり,様々な理由があるんですが,結果として,例えば鉛筆でグラフが書けないとか,文字をつづることが難しいとか,マークシートを塗り潰すことが難しい。そういったことが起こってくると,それらの個々のものに対して,どこまで適切な対応ができるかというのを考えなければならない。そこで代読や代筆等のことが行われてきています。
 次のスライドをお願いします。次に,受験室等での環境でもそういった困難が起こってきます。例えば大勢が同室に集まるような試験の場合,騒がしさに対して強い過敏性のある学生たちであったりとか,もしくは注意面の障害があって,音や動きの刺激があると注意を容易に乱されてしまうような学生たち。さらに,多数の人との同席によって強い精神的不安を感じてしまうような学生たちもいます。そういう学生たちに対しては,例えば別室での受験実施を認める,もしくは耳栓であったり,ノイズキャンセルヘッドフォンのようなものを認めることが行われています。
 さらに,試験の最中というのは,試験監督からの指示が音声だけで行われると,音や音声が聞こえにくい人たちには社会的障壁になります。難聴以外にも,ここに「聴覚処理障害」と書いているのは,聴力そのものには障害はないんですけれども,聞こえてきた聴覚情報の処理が非常に難しい方たちもおられます。ほかにも注意の集中が難しくて,そのために聞こえに困難さを持つ,これは聞き逃してしまうという状態が近いんですけれども,そういったことが非常に強く起こってくる生徒さん。そういった方々に対しては,例えば口頭での指示内容を,文書で伝達することも行われています。
 ほかにも,一般的な教室や机,椅子がそもそも使えない。これは肢体不自由であったり,何らかの身体的な疾患で起こってきますし,例えば介助を必要とする学生さんにおいても,同じようなことが起こってきます。そういった場合には,例えば姿勢保持の用具であったり,機器の持込みを許可したり,特別なクッションであったり,特別な机だったりの利用で解消することがあります。ほかにも介助者の利用が必要になる生徒もいますので,その場合は介助者の利用や待機を許可することも行われてきています。
 次のスライドをお願いします。次に,試験時間と実施時期です。試験時間の延長は,センター試験においては,1.3倍や1.5倍という倍率が伝統的に採用されてきています。これがなぜ1.3,1.5が適当かということは,実は特段の根拠はないようです。どうして時間延長が認められるかというと,やはりほかの一般的な生徒と比べて,読むことに時間がかかる,書くことに時間がかかる,もしくは計算することに時間がかかる,もしくは解答に集中できず,時間が足りない。様々な障害を理由とする機能制限によって,その結果,試験時間が足りなくなってしまう。そういった生徒に対して,1.3倍や1.5倍を判断していくことになります。
 この個々のケースで,どの倍率が適当かに関しては,日本社会の中ではまだ共通理解が十分に醸成されているとは言えない状況にあると思います。例えば米国等においては,1.5倍,2倍もしくはそれ以上,つまり,制限なし。そういったことも行われてきています。これはその背景に,この試験問題において,短い時間の中で多数の問題を解くということを,いわゆる本質的な能力として問うていないという考え方が恐らくあるのだろうと思います。ですけれども,日本の場合は,そういったことをどう判断するかがまだ十分,共通理解が作られていないので,ここは今後の議論かと思います。
 さらに,休憩時間の短さや,あとは,冬季に受験が集中してきたと。センター試験ですね。これは肢体不自由があったり,難病のある生徒によっては,時には生命の危険を冒しながら受験に参加している状況があります。これは特に学力選抜型ですね。推薦やAO入試がなく,学力選抜型の受験しかない大学のコースに進学しようと思うと,冬季の入試を受けなければいけないというふうに,機会がかなり制限されています。今後,これが例えば年間で複数回受験できることになってくると,状況は変わってくるのではないかと思います。
 次のスライドをお願いします。次に,試験内容の1番なんですけれども,これは内容に関する部分ですね。この試験内容の調整ということに関しては,適当性をどう判断するかということについて,かなり議論が多いです。例えばリスニングの免除ですね。免除という行為は,本来は合理的配慮を行うこと・・・つまり,競争するための土俵を公平になるように整えて,そこでフェアに競争するという考え方とは,ちょっと違ってくるところがあります。場合によっては,何らかの方法によって,免除ではなく,公平に評価する方法ももしかしたらあるかもしれない。なので安易な免除に向かわないことは必要ではないかなと思います。もちろん,とはいっても「免除が不適切だ」と否定するべきものでもないと考えています。
  ほかにも,漢文の試験が,例えばセンター入試などにはあります。それから,本学の2次試験にもあります。漢文は基本的に視覚的な情報によって問題を解いていくものになります。例えば例を挙げると,点字受験の場合は伝統的に書き下し文に変更した文書を使って,漢文の試験を受けている。点字は漢字を表現できませんので,そういうやり方を伝統的に取ってきています。ところが,例えばこれは論理的には,発達障害の中でも読字障害,学習障害のある学生さんにとっても同じようなこと。つまり,漢字を読むことが障害によって難しい生徒さんにとっても適用可能かもしれません。しかし,これは恐らく前例がないと思います。
 ほかにも,更に言うと,入試には暗算が必要とされる問題がたくさんあります。これは発達障害の中にも,学習障害の一種に,特異的に計算ができない,暗算ができないという生徒さんもおられます。これは計算障害,ディスカリキュリアと言われます。ディスカリキュリアのある生徒に対しては,例えばアメリカのSATという大学進学適正試験等においては,四則演算のみができる計算機を利用することが受験の配慮として認められたりします。ところが,日本の中では,この計算障害のある受験生が計算機を利用して受験した前例は恐らくないと思います。ただ,センター入試の点字受験では,点字そろばんを使って受けられるようになっていますし,私の知る限り,四肢麻痺のある生徒で,体を動かすことができない生徒が四則演算のできる電卓を利用してセンター入試を受けた前例も個人的には知っております。こういった環境調整の部分はかなり,適当性について今後じっくり考えていく必要があると考えています。
 次のスライドをお願いします。次に,こちらは試験内容についてのもので,今後,生まれていくであろうと考える試験内容の障壁です。これは何かというと,特に新試験の中で,筆記型の試験の中で想定されていたことなんですけれども,「問題文を読んで,さらに複数の資料を読んで見比べながら,出されている問題に対して適切な解答を思考して,記述によって解答する」というタイプの試験です。こちらは複数の印刷資料を,グラフや図によって表現されているものも多いんですけれども,これらを探索的に読解して,字数制限のある解答を筆記して答えていくという作業を同時処理的に実行することが求められます。
 そうすると,これは視覚や読字に困難のある,もしくは手書きすることに障害のある受験生に対しては,かなり認知的な負荷を非常に高めてしまう可能性があると考えます。そうすると,これは思考力を問うているのか? 障害がある中でも,その情報をうまく統合しながら問題を解いていこうとする認知的能力を問おうとしているのか? 一体,試験問題が本質的に何を問おうとしているのかが分からなくなってくると思います。こちらについては,この負荷に対する変更・調整,合理的配慮をどういうふうにやっていくかを,かなり踏み込んだところまで考えないといけないと考えています。
 例えば,これまでには1.3倍や1.5倍までしかないですけれども,この時間の延長の倍率をどう考えていくか。場合によっては,問題数の変更なども踏み込んで考えていく必要があると思います。この適当性を判断していくためにポイントになってくることは何かというと,やはり作問の意図ですね。これはもう体制の問題になるんですけれども,何らかの配慮を考えるときに,配慮の委員会,配慮だけを考える委員会のようなところで考えると,そもそも作問の段階で一体この問題は何を意図しているのか,本質的にこの問題が問おうとしていたのか分からないとなると,やはり適当性の判断が難しくなってくるわけですね。
 ですので,やはり受験の配慮を考えるときには,作問意図等について対話ができるような体制において配慮を考えていく。こういう体制整備を行っていく必要があると考えています。
 次のスライドをお願いします。こちらなんですけれども,こちらが先ほどお示しした典型例のところですね。この大学,もしくは試験実施機関においては,入試の変更・調整,合理的配慮を行っていく中で,それが果たして適当なものなのかどうかを考えていくこと,第一義的には,大学がそれを行っていく必要があるということです。
 さらに,障害学生の視点からしてみると,自分にこういう障害がありますよ,だからこの合理的配慮を要望しているんですよと大学に求めていく。こういう機能障害が自分にあって,だから配慮の必要性があるんですよという根拠は,本来的には障害学生に証明が課されるようなものではあってはならないと思うんですが,受験における合理的配慮の可否の検討は,やはりほとんどが対面ではなく書類での審査です。配慮を認められるかどうかというのは書類の審査で行われるので,今,第一義的にはやはり障害のある学生にその必要性をしっかり説明することを求められざるを得ない状況になっている。ここは課題かと思います。
 次のスライドをお願いします。これが最後のスライドになりますけれども,この合理的配慮という言葉の中には,国連の権利条約の中にも,「必要かつ適当な変更または調整」であると書かれています。この適当性の判断については,先ほど申しましたように,第一義的には大学が判断していく。何らかの変更・調整が試験問題の本質を変更してしまったり,毀損してしまったり,そういったことがないかどうかというのを検討する必要がありますし,もちろん社会的障壁をしっかり解消できているかどうか。これは当然考えなければならないことです。
 また,逆に,変更・調整を行うことによって,その変更・調整を受けた障害学生が他の受験生と比べて不適切に利得を得ていないかどうかも考える。これらのバランスを考えて,個々の障害のある学生に対しての配慮の妥当性を検討していかなければいけない。そうすると,先ほどのように合理的配慮の実施担当者だけが考えるということはなかなか難しいところがあるので,やはり作問者と直接対話して,本質的にこの問題は何を求めているものなのかということをしっかり対話できる体制が必要と考えます。
 次に,必要性の判断で,これで最後になるんですけれども,適切な根拠資料の提出というのは,第一義的には,特に入試もしくはセンター入試等の大規模入試においては,障害のある受験生の役割になってしまっているところがあります。この根拠資料の作成というのは非常に難しくて,学生によっては,先ほど吃音についてのお話がありましたけれども,学生によっては,明らかに自分にはニーズがあるのに,その根拠資料を提出することができないという学生さんがいます。そうなってくると,個々の学生と大学で,建設的対話を行う必要があるんですが,大規模入試の場合というのは,なかなかそれが大変なところがあります。しかし,この根拠資料作成の公的支援が現在,不在な状態ですので,やはりその部分を充実させていくという必要はあると考えています。
 私のほうからは,本日,話題提供したいことは以上で終了になります。
【三島座長】
 近藤先生,どうもありがとうございました。
 それでは,御質問,御意見のある方は挙手ボタンを押していただければと思います。それでは,両角委員,どうぞ。
【両角委員】
 近藤先生,どうもありがとうございました。障害のある受験生と,その合理的な配慮についての理解を深めることができました。1つ,質問があります。一番最後におっしゃった根拠資料の作成が難しいということで,個別大学の入試であれば,もう少し柔軟にやれるかと思うんですが,大規模な入試で,公的支援というのは具体的にどういう形であるといいというふうにお考えか,もう少し教えていただけますでしょうか。
【近藤氏】
 私自身は,後半の資料につけております「DO-IT Japan」という取組を行っていて,これは全国の児童生徒ですね。これは高校の入試のときも同じですし,特に難関校を受験するような障害のある学生さんの受験のときも同じですし,大学入試のときも全く同じなんですけれども。明らかにその生徒にニーズはあるんだけれども,そのニーズを入試を実施している学校に対して合理的に説明できないということが起こります。
 そういうときに私たちのほうでは,このプロジェクトに参加してくれている生徒さんに対して,例えば心理学的なアセスメントを行うとか,あとはニーズについて,それを合理的に説明するため,客観的かつ合理的に説明するための支援も行って,所見であったり,根拠資料というのを本人と一緒に作成します。その作成したものを,生徒が学校に対して提出して,配慮を求める交渉を行っていく。しかし,こうした支援が本当にないんですね。
 どうやっていったらいいのかと。保護者の方が懸命なご家庭は,保護者が様々な医療機関であったりとか,もしくは大学の教育相談等であるとかそういったところを駆けずり回って,何とか根拠資料そろえていくことを行われているんですけれども,これが現在のところ,保護者の努力のみに課されている状況になっているということです。ですので,例えば,生徒本人が進学の気持ちはすごく強くても,家庭的な支援が得られていないタイプの場合だと,やはり配慮がほとんど得られない。学校のほうも障害についての専門性があるわけではないです。場合によっては,例えば各地の都道府県レベルでの教育センターであったり,そういったところがアセスメントを行って,根拠資料を一緒に作ってくれるところもあるんですけれども,これもやはり各地の自治体ごとの取組に限られているので,なかなか全国的なものが行われていない状態ですね。これを何とかしていく必要があると思っています。
【両角委員】
 ありがとうございました。
【三島座長】
 それでは,小林委員,どうぞ。
【小林委員】
 小林でございます。近藤先生,非常に分かりやすい説明で,どうもありがとうございます。私立大学もそういった状況をよく理解して配慮しなきゃいけないことを痛感いたしました。今回は,大学入学共通テストに関連してなんですけども,センター入試では今までいろいろ,障害のある学生さんに対する様々な配慮を行われてきたと思うんですけども,今度,共通テストで,仮に記述式とか,英語4機能のスピーキングを行うタスクということになった場合に,どのような配慮がさらに加わって必要になるかというふうにお考えでしょうか。
【近藤氏】
 これは非常に難しくて・・・例えば先ほど,これまでにない時間延長の倍率であったり,問題数そのものを変えていくことであるとか,そういったことを申し上げました。やはりなぜ難しい問題と考えているかというと,やはり新しい試験問題が,何を問おうとしていることなのかという,そのテクニカルスタンダードの部分ですね。ここをやはり明示していただく必要があるんですけれども。この部分が今,不明瞭ですね。ですので,私としては,作問の方とぜひ対話をしてみたいと思っています。作問する方と対話をする中で,ここで求めているテクニカルスタンダード,クリアしなければいけない本質的部分は何なのかを対話して,その結果,「これは本質的な能力とは違うところと言えることなので,これについては柔軟な配慮が可能ですね」という合理的配慮の適当性についての議論ができると思うんですね。
 ただ,現時点ではやはりその部分が,私自身としてもまだ十分に分かり得ていないところがありますので,今,パッと思いつくことというのはやはり時間延長の倍率を柔軟にしていく。2日間に及ぶようなものも考えていくとか,問題数を変更していって,負荷そのものを変えていくということが考えられます。が,実際にはやはり本質的な部分は何かを議論していくことが今後必要であると考えています。
【小林委員】
 例えば英語の試験を民間試験を代用するというか,使うということに関して,民間でどこまでそれが対応してくれるか。障害のある学生に対応してくれるかということがまた問題かと思うんですけども,その点はいかがでしょうか。
【近藤氏】
 こちらについてもやはり,こういった,いわゆるハイステークス・テストと言われるような,非常にのるか反るか性が非常に高いものに関しては,民間であろうと,公的なものであろうと,ここの機会保障をしていかないと,結果として,障害のある学生たちは不利益な立場になってしまいます。ですので,民間においても高い専門性を持った委員会であったり,そういったものを構築して臨むことが不可欠になってくると思います。
 もう一つは,一体どういう状態が合理的なのかという状態は,簡単には決められるものではありません。ですので,合理的配慮の考え方においては,異議申立てや不服申立て,それによって個々の障害のある学生たちの権利を保障するという仕組みが,諸外国においては担保されているわけですね。日本の部分もやはり最初から完璧な合理的配慮提供体制というのはなかなか難しいところもありますけれども,それがよりよい方向に向かっていく,さらに,障害のある人たち,当事者の人たちの考え方というのがしっかり反映されていくように,この権利保障の部分をしっかり作っていく。それによって,結果としてよりよい配慮の在り方,もしくは民間団体も当たり前のように高い水準の配慮提供の仕組みを作っていく。そういう仕組みを作っていく必要があるのかなと考えています。
【小林委員】
 非常に感動いたしました。賛同いたします。ありがとうございました。
【三島座長】
 それでは,続いて,末冨委員,どうぞ。
【末冨委員】
 高大接続という観点から,障害を持った学生さんたちがより挑戦しやすい,そして,安心して学び続けられる仕組みというのは,入試を含めてどのようなことなのだろうかと思いながら話を聞いておりました。先ほど,特に都道府県の教育センターの支援が重要であるというお話をされていたんですけれども,一つは,高校設置形態ですね。国公私立の違いによって,高校生が支援を受けられないケースがあるのではないかという懸念は持っております。
 もう一つが,受け手である大学のほうですね。私どもの日本大学にも障害を持った学生の支援システムがありますが,入試も含めて,大学の体制について,望ましい在り方のお考えをお聞かせいただければと思います。
【近藤氏】
 ありがとうございます。まず,私の参考資料の17枚目,17と書かれたところを見ていただければと思うんですけれども,こちらには「高等教育機関での体制例」を示しております。この体制の例では何を示しているかというと,学内の障害のある学生の,高い専門性を持った支援部署があって,それができるだけ,学長,副学長,そういった意思決定機関に,高いところにこういったものを設置しておく。そういう形にしておかないと,なかなか各教授や教員がお話を聞いてくれなかったりもしますので,そういったものを作っておく。さらに,先ほどお話しした,学内のハラスメント委員会的な調整組織を持つことによって,よりよい配慮の在り方を作っていく。こういった体制を,大学内においてはこういったものを作っていくことが求められています。
 文科省の高等教育局の中で,過去,第一次まとめ,第二次まとめという名前をつけて,障害のある学生のよりよい支援の在り方についての検討会。そこの中でのまとめ文書を出してきております。その文書の中でも,こういった考え方を示してきています。さらに,近年ですとAHEAD JAPAN,これは全国高等教育障害学生支援協議会という,今,全国で100ちょっとの大学が加盟して作っている協議会なんですけれども,ここの中でも非常に高い専門性で,様々な支援を提供している大学の議論も行われています。
 こういった体制を作って臨むことがまず大学においては不可欠なことで,これは大学の中で,温度差がすごいんですけれども,本当に,特に国立大学等と,あと一部の私立大学等を中心として,かなり取り組みを牽引していくような動きが起こってきています。AHEAD JAPANには,レフェリー,査読つきの協議会誌などもありますので,もしよろしければ見ていただければと思います。
 ただ,私が懸念していることが何かと申しますと,24枚目のところにある資料ですね。そちらを見ていただきたいんですが,大学のほうはやはり障害者差別解消法以降,かなり大学内での体制整備が進んできています。ですけれども,今,欠けている部分は何かというと,中等教育ですね。特に中等教育,中等後期の教育の中においては,障害のある学生に対してのインクルーシブ教育がまだ本当に始まったばかりです。
 こちらの数字を見ていただければなんですけれども,障害のある学生の中でも特に分かりやすいのが,最近,支援が始まり始めた発達障害,精神障害になるんですけれども,発達障害の学生というのは,通常のクラスの中におよそ6.5%ぐらい,発達障害,学習障害,ADHD,自閉症のある子たちが通常クラスの中にいると言われているんですけれども,高校などを見てみると,これは全国の数字なんですが,高校の通級で支援を受けているのが72人とかそういうレベルなんですね。
 なので,やはりそういった,例えば学習障害があって,読むことがすごく難しいですよという生徒がいたとして,大学で入試を受けたいんですが,根拠資料を作ってもらえますかと高校にお願いしたら,当然それは作ってもらえる体制にないということですね。私たち,「DO-IT Japan」の中では,それを私たち外部団体がサポートしているんですが,中等教育の格差は本当にすさまじいものがあると考えています。この中等教育の部分をどうしていくか。高大接続というキーワードをおっしゃっていただきましたけれども,まさにここは非常に重要なところだと考えています。
【三島座長】
 よろしいでしょうか。末冨委員,よろしいでしょうか。
【末冨委員】
 はい。ありがとうございます。
【三島座長】
 ほかにございませんでしょうか。
 それでは,ないようでございましたら,近藤准教授からのお話,以上とさせていただきます。先生,本当にどうもありがとうございました。
【近藤氏】
 ありがとうございました。
【三島座長】
 それでは,恐縮でございますが,ここから川嶋座長代理にバトンタッチをさせていただきたいと思います。川嶋先生,どうぞよろしくお願いいたします。
【川嶋座長代理】
 それでは,ここから進行は川嶋が務めさせていただきたいと思います。
 次に,大手予備校等からの御発表をしていただくことになっております。学校法人河合塾理事長,河合英樹様。駿台教育研究所,進学情報事業部部長,石原賢一様から,それぞれ7分程度の御発表を頂きまして,その後,お2人様の発表をまとめて,15分程度の意見交換を行いたいと思います。できるだけ意見交換の時間を有効に使いたいと思いますので,発表は7分程度の厳守をお願いしたいと思います。
 それでは,まず,河合塾,河合理事長,よろしくお願いします。
【河合氏】
 今,御紹介にあずかりました学校法人河合塾の河合英樹でございます。よろしくお願いいたします。
 では,お時間も限られていますので,早速中身に入っていきたいと思います。スライド2を出していただいてもよろしいでしょうか。こちらに河合塾グループの概要がありますが,殊さら,この数字については今ここで取り上げませんが,現役生,浪人生,受験生を数多くおあずかりして,また,営業やコンサル活動を通して,高校,大学様との接点を持ち,また,国内最大規模の試験の作成実施,採点等々を行っている河合塾として,大学入試のあり方について,これから意見を述べたいと思います。
 では,次のスライドをお願いいたします。今回の大学入試のあり方という点におきまして,評価すべき力を問える入試にしようということを我々も考えていまして,英語4技能,それから,論述・表現する力について,これらがきちっと問える枠組みが必要であると。これらが大学進学に当たって,大学を卒業して,将来的に社会に出た後も含めて必要なものであるとするのであれば,広く大学志願者に課されるよう強制力を持った仕組みが必要と考えます。
 次のスライドに,今回の私どもの発表の骨子をまとめております。下から御説明しますけれども,大学入学者選抜実施要項については,強制力を持ったものに今後変えていく必要があると考えております。そして,その上にある大学進学に当たり必要な力の確認,これは大学共通にして問うべきものというふうに我々は考えておりまして,英語4技能評価については,英語資格検定試験を必須化すべきと考えます。また,今回の共通テストに当たりますけれども,この共通試験については,できるだけ科目をスリム化してシンプルな試験へ,そして,理想を言えば,IRTなどで複数回実施を行うべきと考えます。
 続いて,その右にありますけれども,大学の個別試験につきましては,この個別試験において記述・論述試験を必須化していただきたいと考えています。そして,出願時の提出書類については,教科学力のみならず,ジェネリックスキルといったものを数値化して測るような内容にということを求めていきたいと考えています。
 では,次のスライドをお願いいたします。「共通試験」と「各大学の個別入試」の役割分担ということで,測りたい力の多様化,それから,公平性・公正性の担保,また,フィージビリティといった観点から,共通試験はなるべくシンプルな内容及び機能としまして,個別試験の役割をより大きくするべきと考えます。
 また,現状の共通試験は一発勝負の状態ですので,この位置づけが非常に大きい中においては,下のコメ3に書いてありますけれども,IRTに基づく実施が望ましいとは考えますが,すぐに実現できない場合においても,追試や再試験の活用などのやり方において,複数回実施をぜひ御検討いただきたいと考えます。
 次のスライドをお願いいたします。この共通試験といったものも含めた共通の枠組みをしっかり構築・運用していくべきと考えておりまして,具体的には次のスライドから御説明を申し上げます。
 次のスライドをお願いいたします。まず1つ目,枠組み利用時のルール化ということで,枠組みを作るに当たっては,当然ながら一定のルールが必要であり,現状の事例において幾つか変更が必要なのではないかというものを事例1ということで,また,次のページにも事例2ということで挙げております。細かい内容は割愛しまして,9に行っていただいてよろしいでしょうか。次のスライドをお願いいたします。
 マル2,運用ルール遵守の徹底ということで,ルール化されたものが遵守されないということでは意味がありませんので,今の事例で言いますと,入試スケジュールルールの形骸化や入試情報の開示が不十分といった状況が見て取れます。これらも強制力がなかなかない。罰則の規定がないということもありますので,受験生ができるだけ混乱しない,不安を与えないという観点から,ぜひ足並みがそろうような一定の強制力を働かせていただきたいと考えます。
 次のスライドをお願いいたします。早期告知ということで,大学が2年前ルールを遵守できるよう,スケジュールの制度設計・告知をお願いしたいということです。これも次のスライドに行っていただいてよろしいでしょうか。
 今回,いかに生徒たちが安全志向に走ってしまったかというものを,河合塾調べでありますが,このように示させていただきます。詳細の御説明は割愛しますが,やはり大きな変化があるときには,チャレンジをせずに志望を下げてしまうといった生徒が非常に多く発生しています。恐らく次の施策実行のタイミングは新課程入試かと思われますが,その年で一度にいろんな枠組みを導入するというよりは,準備が整ったものから段階的に導入をお願いしたいというものを,ここではお伝えしたいと思います。
 では,続きまして,2つ,スライドを進めていただいて,個別項目「英語によるコミュニケーション能力の育成・評価」に移りたいと思います。英語4技能評価の現状としましては,民間の資格検定試験の活用は拡大しているものの,大学での活用は一部にとどまっています。これは下に参考資料を付けております。一方で,入試が変わることによって,4技能への取組は,高校に置いても大きく変化が見られ,ここについては効果が見られるものと考えています。
 次のスライドをお願いいたします。では,大学入試において4技能をどういった観点で導入するかということですが,2つ目のところに書いていますが,外交やビジネスの場面などで,多様な話者と議論,交渉ができる人材の育成が今後も一層求められると考えますので,やはり4技能は重視されるべきと考えます。
 各大学個別,もしくは学部単位で見た場合には,4技能は大学における学びにおいては不要というところもあるかもしれませんが,高等教育を受ける上で,その後の社会での活躍等々も鑑みたときに,大学入試において4技能を問うかどうかについては,大学で使うかどうかとはまた別に議論すべきと考えます。我々河合塾としては,英語4技能は必須と考えて,ぜひともこれを共通の枠組みに入れていただきたいと考えております。
 では,次のスライドをお願いいたします。4技能を共通試験の中で評価すべきか否かということについて,このスライドで御説明しております。共通テストの英語,民間の英語資格検定試験,それぞれの特性を鑑みますと,役割を整理して併用での活用がよろしいのではないかと考えます。
 共通テストの英語については,これはほかの教科と同様に選抜,合否判定の一部として活用しやすいものですし,先ほど申し上げたとおり,できるだけシンプルにするという考えに立てば,もしかしたらリスニングも不要という考え方もあるかもしれません。その一方で,民間資格検定試験でしっかりとこれを必須化して,英語4技能をはかっていくことが必要と考えています。
 次のスライドをお願いいたします。では,どのように英語資格検定試験を活用するかについてですが,成績提供システムのような成績の一元管理が必要で,これがないと大学での成績管理が非常に煩雑になりますので,これが活用拡大阻害の要因になっていると考えています。
 受験回数,受験期間の制限は不要と考えておりまして,成績は高校,場合によっては中学からでもよろしいと思いますが,入学以降のものを全て登録できる幅広なものが必要と考えます。また,大学がこれらを,成績を活用する場合には,当然ここにもルール化が必要でして,認定されている試験は全て活用できるというふうにすべきと考えています。この場合にスコアを使うと非常に煩雑化,複雑化しますので,スコアではなくて,CEFRのレベルのみを利用するであったり,出願資格としてA1以上を求める,A2以上を求める等々の,それ自体を点数化するというよりは出願の資格,条件にとどめるといったようなルールが必要と考えます。
 また,複数試験の成績を一元管理する場合は,CEFRのような試験をまたいだ基準の存在が非常に重要になります。この換算表の制度は,公平性・公正性という点から非常に重要だと考えますので,これは国が責任を持って管理していただきたいと考えています。また,受験生への経済的支援,これは必須化する上では当然必要になりますので,例えば高校時代に3回受験が可能とする受験料支援などを考えていただきたいと思います。
 では,スライドを2枚進めていただきまして,続いて,「思考力・判断力・表現力の育成・評価」についてです。国公立大の個別試験においては,記述式問題はほぼ出題されていますが,一方で,私立大学では,問題作成・採点に課題を抱えているところも多いという現状です。ただ,2021年度入試を機に,記述式問題の導入や個別試験での論述試験導入などへ,大きくかじを切るような私立大学も登場しております。
 スライド,次をお願いいたします。思考力・判断力・表現力を評価する上で,我々は必ずしも記述式の出題,そういった問題形式でないとできないとは考えていません。しかしながら,理解の深さやプロセス,もしくは実際の表現力といった,記述式問題でないと測れない要素というのも当然あると考えています。では,これらを共通テストの枠組みの中で評価すべきか否か。これも4技能の話と同じではありますけれども,共通試験で課すにはあまり向いていないのではないかと考えております。特に大学,これは評価者になりますけども,評価者としての大学によって見たい観点も異なりますし,評価も異なるということを考えると,共通でやるのにはそぐわないのではないかと。ついては,個別の大学の試験において記述式を必須化することを,ぜひ強制力を持ったルール化していただきたいと思います。
 次のスライドをお願いいたします。ただ,先ほど申し上げたとおり,各大学では,作成や採点に課題があることも事実でございます。そういった中において,幾つかアイデアとして挙げさせていただいていますが,国の支援というものも必要かもしれません。記述式問題をある程度ストックした上で,フレキシブルに大学が利用できるような仕組みが必要かと思いますし,また,問題作成・採点を大学がグループを作って共同実施をしたり,それらを民間に外部委託することなどを可とする仕組みもよろしいのではないかと。また,広げるための仕掛けの支援として,意欲的な新しい選抜方法に取り組んでいる。そして,追跡調査をしっかり行っている大学については,支援をぜひ行っていただきたいと思います。また,事前課題としての実施をしまして,出願時に提出させるといった方法や,それから,教科試験のある一定の点数を超えた方のみ記述の採点を行うなど,各大学においても様々な工夫のしようがあるのではないかと考えております。
 最後のスライドが,今まで申し上げた内容のまた振り返りになっておりますので,ここで御確認をいただければと思います。
 駆け足になりましたが,河合塾からの意見発表は以上でございます。御清聴ありがとうございました。
【川嶋座長代理】
 河合理事長,ありがとうございました。
 引き続きまして,駿台教育研究所の石原部長,よろしくお願いします。
【石原氏】
 駿台の石原です。よろしくお願いします。私のほうの資料で,1番は私どもの予備校の紹介になっておりますので,これは割愛させていただきまして,今の入試の現状というものについて,かなり危機感を持っておりますので,少し御報告いたしたいと思います。
 2番がセンター試験の過去20年間の志願者数の推移です。今年度は,前年度から1万9,000人も減ってしまいました。現役も減ったのですが,志願者数では現役と浪人の比率は1対4ぐらいなのですが,減少数では約半数ぐらいが浪人の減少数でした。要するに,今回の入試改革に対する不安が浪人を敬遠させたということです。
 それからもう一つ,3番です。3番のスライドを見ていただくと,国公立大学離れです。いきなり国公立大学の志願者数が3万人も減ってしまいました。これもやはり今回の大学入試改革への不安が大きかった。
 4番をお願いします。4番のスライドを見ていただくと,青色の棒グラフが募集人員の多い前期日程の増減なのですが,我々のセンター試験自己採点集計での目標ラインが一番高いAグループが9%減少で,比較的,目標ラインが低いFグループは2%減少にとどまっている。どちらかというと,難関大を避けて合格を取りにいっている。これがはっきりと見えるのです。
 では,5番をお願いします。私立大学です。私立大学は2006年を底として,前年度まで13年連続で志願者数が増えてきていましたが,今年度は減ってしまいました。特に減ったのがセンター試験利用型入試なのです。これが大きく減っていて,やはり入試改革で,センター試験が変わってしまう,この変化に巻き込まれて,もし浪人したら,もう使えないかもしれない。じゃあ,変わらない私立大学の一般入試を受けよう,それが今の流れになっているわけです。
 次,お願いします。こちらは私どもの模擬試験の合格目標ライン別に,AからEまで5グループに分けた志願者数の増減率です。赤の棒グラフが文系です。文系が特に特徴的ですが,Aグループ,Bグループという難関大を避けて,Eグループ,ここが23%も増えているのです。理科系は緑の棒グラフです。若干,理科系に人気が戻っているので,Cグループ辺りから増えているのですが,やはり一番入りやすいEグループが3割以上も増えています。
 これらは7番にまとめておきました。赤字で示していますが,国公立大も私立大も,いわゆる首都圏や関西圏の難関大が非常に易しくなってしまっている。特に国公立大は,東大,京大はほとんど変わっていないのです。その次に続く千葉大とか横浜国立大,大阪市立大といったところが減っているという状況なのです。要するに,いわゆる安全志向なのです。これっていいのでしょうか。若者たちに夢をなくしている。チャレンジ精神がない。内向き志向。この原因というのはやっぱり今回の入試改革の混乱というのは大きいわけです。
 8番を御覧ください。これは今回,よくマスコミでも英語4技能試験で負担が増える。共通テストで国語や数学の記述式問題で負担が増える。そうではないのです。そんなことは決まったら受験生は対策をやるのです。私は40年間,駿台に勤めていて,経験上,受験生たちはやるのです。ところが,入試の中身が決まらないのです。何をやったらいいか分からないのです。共通テストの国語と数学の記述式,萩生田大臣が見送りを発表された日,その時点でもまだ多くの国公立大学から具体的な利用方法が発表されていませんでした。あるいは,英語4技能検定試験についても,自分が希望する試験を希望する日で受けられるかということが分からなかった。
 9番を御覧ください。国語の記述式の話です。これは2017年と18年の試行調査の際の採点基準です。各設問,3つの設問で4段階評価を行って,このマトリックスに従って,問3は少し問題文が長いのでウエイトをかけて採点する。2年間やりました。これに対応する解説本も出ました。私どもも10番に示したように,このような参考書,問題集を出させてもらい,結構売れました。
 ところが突然,昨年8月23日にこの採点をやめるという発表がありました。今度は,11番で示したように3段階でつけて,それぞれ表記上の間違いについて少し減点する。それを12番のスライドのようなマトリックスに当てはめて,A,B,C,D,Eの5段階に評価する。いきなり変えられたのです。だから,私どもが準備した,今年の2月にやろうとした高2対象の模試では,もし記述式問題を出題しても,この新しい基準には間に合わなかったかもしれません。結果的には,大臣の御判断で記述式問題が無くなったので,模試では記述式問題は採点しなかったのですが,こういったこともありました。
 それから,英語4技能試験についてです。受験者数が多い実用英語検定と,ベネッセコーポレーション主催のGTECに絞ってお話をします。英検では,従来型の英検は駄目だと言われました。各高校では長年来従来型をやってきましたが,新しいCBT,S-CBT,S-Interviewという3つの方式を受けなさいということになりました。これらは誰も見たことがありません。そのうちS-Interviewは,先ほど吃音障害者の団体の先生がお話しされましたが,身障者用に特化したものになってしまって,一般の受験生は,このS-CBTを中心に受けなさいとなりました。それが14番にあるとおり,第1回は9月18日から予約開始で,11月11日で締切りなのです。高3生にとっては浪人した時のことを考えて,まだ入試も受けない前に予約しろという話です。これに対して,実用英語検定協会は,既卒生に対する配慮の方法を示すと言いながら,結局は見送りが発表になるまで,一切その配慮についての具体的な発表がありませんでした。こんな状況で,高3生が落ち着いて入試を受けられるわけがありません。
 15番のスライドをお願いします。また,GTECでも,最後に示した従来型のアセスメント型とか検定型は共通テストには使えないと発表しました。はっきり言って,こんなことは高校にとっては寝耳に水です。
 16番に進みますが,私立大学はもう数年間にわたって,それもいわゆる難関大で,今日ご出席の芝井先生の関西大学でも御採用になっていますが,従来型の英検とかGTECを使ってきたのです。そして,トラブルとか不正行為が起きていない。しかも,高校を会場として使えるので,今回,問題になったような会場設置における都市部と地方の格差もない。高校を使わずに,本当に東京とか大阪のように受験者数が多いエリアで,公開会場を置けたのでしょうか。それから,私立大学の多くは高2からの成績が使える。受験生たちにいろいろな機会を与えて,英語の学力向上に頑張ろうと言っているのに,なぜ受験機会を抑えるかということに,私は理解できない。やる気のある生徒を抑えて,一番低いところにレベルを合わせて,全国一斉のルールを作るということはあり得ない話だと思います。
 芝井先生の関西大学の文学部の英語4技能外部試験利用方式の要項からコピーしてきたものですが,見にくいところだけを赤で大きく書いています。実用英語技能検定2級以上,GTEC(4技能)960点以上。オフィシャルスコアに限ると。しかも,2018年1月以降ですから,高2段階,いや高1の3学期から取得した成績を入試に使えるということが示されていました。
 これは18番を御覧いただくと,今年度のGTECの実施方法ですが,検定版は学校会場がオーケーなのです。しかも,これはオフィシャルスコアがとれます。アセスメント型はもっと緩く,学校の実情に合わせてやれるのですが,アセスメント型は厳しいのです。このアセスメント型はずっと私立大学では使われているのです。なぜ,これをダメとしたのかよく分からないのです。
 もう一つはスピーキング対策の環境です。まず,評価基準がよく分からない。他の読む,書く,聞く。これに関しては以前から入試にあって,センター試験にリスニングが導入される前から,東大とか一橋大とかはリスニングを導入していましたし,ほぼ評価基準はわかっています。ところが,スピーキングにはそういった長年来の見えているところが分からないのです。例えば,完璧な文法や構文で英語を喋っているが,「ディス・イズ・ア・ペン」みたいなジャパニーズイングリッシュの発音だったらどうなるのか。逆に,すごく流暢な発音やアクセントだが,中身はむちゃくちゃな英語の構文を使っている。いったい,これはどっちが高得点なのでしょうか。各実施団体に示してほしいのです。現状は,だれも分からないのです。
 あと,学習環境です。受験生たちは自分たちが練習する場がないのです。他の3技能はいろんな場面で,自学自習もできますし,学校の先生に添削をやってくださいと,英作文を持っていけるのですが,スピーキングはそれができない。そこで,20番は,駿台でやった一つなのですが,バイリンガル・インストラクターという名称で,スピーキングのトレーニングの場を与えたのです。これは私どもの卒業生で,TOEFLの高いスコアを持っているとか留学経験があるという大学生,大学院生を集めて,生徒と英語でフリーディスカッションをやらせている場なのですけども,これがすごい人気なのです。最初は,英語が得意なものが参加すると思ったのです。ところが,実際はほとんど喋れない初級者も参加して,「私も○○さんのように話せるように頑張ります」と言っていて,喜んで帰った。初めて参加して,大学生,大学院生から,「君,その発音,良くないよ」,「その文章はね,誤解を招いちゃうから,こんな言い方で言って」などと言われたらすごく喜ぶのです。私は,こういう場面を作るような仕組みを作らないと,いくら試験だけ入れても,英語力はアップしないのではないかと思いました。
 まとめです。英語4技能資格・検定試験は,生徒たちが希望どおり受験可能なシステム,これは私立大学の導入例があるのだから,これに倣ったらいい。そして,得意な生徒はプラスアルファだという考え方が欲しいと思うのです。だから,英検準1級以上を持っていれば,小学校での成績でもいいじゃないでしょうか。それぐらいの許容範囲を出してほしい。それから,記述式問題は,国公立大学は個別試験でやればいい。これは2016年12月8日に国立大学協会がメッセージを出されたことがありました。ところが,これがあまり議論されなくて,スルーされていまいました。それで,共通テストの記述式問題導入に行ってしまったのですが,もう一度このメッセージに戻ってほしい。場合によっては,大学入試センターが個別試験の記述式問題を提供する。これは,試行調査としてやったと思いますから,こう言うやり方もあります。
 私立大学は,各大学のアドミッションポリシーの問題です。画一的でないことに私立大学の存在意義があるのです。ところで,私立大学も最近,河合塾さんの御発言でもあったように,英語4技能試験の利用が拡大しています。すべての募集単位での利用ではありませんが,それは各大学に任すしかないと思っています。
 それから,既卒生は先ほども言いましたが,まだ10万人近くいるのです。従って,改革についての2年前告知の原則はぜひとも守ってください。2025年度入試から変えるのだったら,2023年4月には分かるようにしてください。そうしないと,高3の受験後に浪人したときに,またどう変わるか分からないというのでは不利益になります。
 それから,既卒生への事務手続の周知徹底です。今回は,既卒生への対応がよく分からなかったです。私どもや河合塾さんのような大手予備校に在籍する都市部の受験生ばかりじゃありません。自宅で浪人している地方の受験生を考えれば,どれだけ周知期間を取っても,十分だということはないと思います。とにかく再チャレンジ可能な社会というのが今求められているのに,それと逆行するような現役生のみを見たようなシステム設計は,私どもとしては,ぜひ改善していただきたいと,そう思う次第でございます。
 御清聴ありがとうございました。
【川嶋座長代理】
 石原部長,ありがとうございました。
 それでは,今の2人の御発表について,御質問,御意見がある方は,挙手ボタンでお知らせください。芝井委員,お願いします。
【芝井委員】
 関西大学の芝井です。石原さん,ありがとうございます。本学の宣伝もしていただきました。幾つか申し上げたいことがあるんですけど,ほかの方もあるでしょうから,1点だけ質問させてください。
 私個人が,割合,大学の中で試験に関わる経験が長かったこともあるんですけども,やっぱり今お2人の方から御説明いただいたように,これはやっぱり現場のある種の常識といいますか,状況判断だろうと思うんです。だから,大学が抱えている問題もあるし,それから,高校の現場もあるし,文部科学省でお考えのこともあるし,あるいは教育の専門家がお考えのところもあると思うんですけども,本当に共通テストをどういうふうに考えるのかということを論じるときに,ぜひ予備校も含めた御意見をしっかり聴取して,その中でやっぱり設計していただかないと,現実からすごく離れたものになるなということを,やはり今日のお話を聞いて強く思いました。
 そのことで,少し関連して質問なんですけども,石原さんにお願いしたいんですが,現在も少し前まで9月入学の議論があって,大幅に日程が変わる可能性がありました。それ自体は,9月入学はすぐに導入ということはもうなくなったわけですけれども,現在も実施要項がまだ出ておりませんし,その中では入試日程そのものを1か月繰り延べるべきだという議論が片方でなされているわけですけども,現実問題としてそういうことをしたときに,今年の入試が成立するのかどうか,私は大変危惧を持っていまして,大混乱に陥るだろうと思うんですが,その点はいかがでしょうか。ぜひ御意見をお伺いしたいと思います。
【石原氏】
 私どもとしては,当初予定どおり1月の共通テスト,2月の私立大学入試,それから,国公立大学の前期入試,後期入試が行われるものとして,浪人生も,あるいは夜間に通ってくる現役生のクラスについても,そういうことでいろいろ日程も詰めたりして,そろそろ対面授業が再開できてきていますので,準備しております。
 お願いしたいことは,何らかの事情でコロナウイルス等に感染して,受験機会を持てなかった受験生に対する追試験とか,私立大学でしたら幾つかの入試をなさっていますので,最初の日程が駄目だったら,後の日程へ受験料を振り替えていただくとか,そういうことを柔軟にしていただくほうが,いいと思います。実は変にずらされると,いろんなことで,またストレスがたまります。例えば今のアメリカのような大流行が来たら,またそれは別の話として,今の状況にようにある程度コントロールできるような状況ならば,早く発表していただいて,受験生に全部のタイムスケジュールが分かるようにしていただくほうが助かると思っています。
【芝井委員】
 高校生は明らかに,もういい加減にしてくれ,あるいは自分たちをモルモットにするのはやめてくれということははっきり言っていますので,私たちはそこにもちゃんと耳を傾けながら,やっぱり判断していかなきゃいけないと思っています。ありがとうございました。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。ほかに御質問,御意見ございませんでしょうか。
 では末冨委員,どうぞ。
【末冨委員】
 ありがとうございます。河合さん,石原さんともに非常に重要な御指摘をなさったと思うのですが,お二方に伺いたいのが,1つは,大学入学者選抜要項に示されたルールを破ってくる大学があるという話ですが,私も小さい国立大と,今は大きい私立大にいるから分かるのですが,明らかに大学の体力の違いではないかとは思うのですが。その辺りの,要するに出題ですとか入試の体制と,入学者選抜要項が遵守できるかどうかの関連性についての質問が1つ。
 もう1つが,確かに英語4技能は大事です。ただし,この間の議論で行われていたことの1つが,高校の教育が英語4技能に偏ったときに,例えばですが,研究者養成に不可欠なリーディング,ライティングの能力の養成が不十分になる。それから,ほかの主要教科との授業バランスが崩れていくという指摘が行われていましたが,この辺りは,特に受験生の能力養成の最前線に立っておられるお二方の御意見を伺いたいと思います。
 以上2点,お願いいたします。
【川嶋座長代理】
 それでは河合理事長,お願いします。
【河合氏】
 はい。お2つ御質問を頂きましたが,まず1点目からですが,選抜要項を守れるかどうか。これは確かに,それぞれ体力,かけられるリソースが違いますので,御指摘のとおりだと思いますが,だからこそ,支援の仕組みというのをしっかり,民間か国か,どこが担うかは別として用意をして,あまねく必要であるという設定をしたからには,守れるものをまず示すというのもあるのですが,あらゆる手段を使って,それを実現していくという仕組みが必要なのかなと思っております。
 2つ目の御質問については,私どもの発表の中で申し上げましたが,例えば4技能については,中学で取った成績も使えるようにする,それから,スコアそのものを使うのではなくて,あくまでCEFRのレベルを出願要項として使うのはいかがかと。ある一定を取っても,もっと上を取らないと不利になるかもしれないということで,ひたすらそこに偏ってしまうということは,そういった仕組みである一定は防げるのではないかと考えております。
 以上です。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。石原部長,いかがでしょうか。
【石原氏】
 選抜要項の遵守に関しては,そうあってほしいのですが,これは現実問題としては,必ずしも全て守られていない。例えば,今でも入試情報を非公表にされている大学がかなりあるわけです。それはそういうものかなと,容認してはいないのですが,予備校というのはそれに合わせながら何とかうまくやっていくところなので,そう考えています。
 それから英語4技能に関しては,前回のこの検討会議で旺文社の方がおっしゃっていましたが,私立大学で問題が起きていないのは,全ての募集人員を割いていないというか,もちろん,一部そういう大学もありますが,一般的には募集人員の一定の割合を振り分けているということです。私は申し上げたのですが,英語の得意な人に有利になるシステムであってほしい,絶対それを必須条件にしては欲しくない。あるいは,英語はものすごく苦手だけれど,国語とか社会は得意だという受験生はそっちで勝負できるようなシステムであれば,いわゆる高校教育が英語4技能取得に特化してしまって教科間のバランスが崩れるということはないと思うのです。
 今は,いろいろな得意科目を持った受験生たちが,総合力でいろいろな大学に入れるので,必ずしも高校が特別の部分に特化しないでいい。そういった入試制度ならば,高校教育がずれてしまうということはないと考えています。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。
 それでは渡部委員,どうぞ。
【渡部委員】
 どうもありがとうございました。大変情報量が多くて,とても参考になりました。
 お2人のお話に出てきましたCEFRに関してなのですが,私自身は,大学入試にCEFRで妥当性を基準とするというのは,あまり頼ることができない方法だと思っているんです。
 といいますのは,1点差の差を解消するためにというのが1つの理由になっていますが,結局,A1とA2のレベルを分けるのは1点差なんです。
 それから,複数回テストを受けられる人はそれだけ高い得点を取れる可能性が高くなりますが,実際に見てみますと,B1を課すという大学はあまりありませんが,中級ちょっとレベルというと,かえって,バンドスコアになっていますので,得点を上げるというよりも,なかなか上がらないんです。何回受けても上がらないということになりがちなのです。A2から,例えばB1に上げるというのはとても大変なことです。ですから,CEFRがそれほどうまく機能しないだろうと予測されるんです。
 あと,先ほど石原さんのお話に出てきました,19番のスピーキングの評価基準なのですが,これは,CEFRに合わせると,あたかもその基準が統一されているように見えるのですが,これは釈迦に説法だと思いますが,それぞれのテストによってスピーキングテストの基準が違うんですよね。あるところは,アキュラシーがとても重要だと。あるところは,ある機能が使えればいいんだと。テストによってまちまちですので,やはり民間のテストを,CEFRで統一して使うのには――大学において共通として使うには,かなり無理があると思っています。もしコメントがおありでしたらお教えください。
 以上です。
【川嶋座長代理】
 いかがですか。よろしいですか。
 では,河合理事長。
【河合氏】
 先ほど申し上げたことの繰り返しになってしまう部分はあるのですが,だからこそ,私どもはCEFRを使う上では,あくまで選抜としてではなくて,出願の資格にとどめるぐらいがちょうどよい使い方なのではないかと思っています。それが,複数回受験で有利になっていくところの緩和にも多少はなりますし,1点刻みというところも,少しは緩和できるのではないかと考えています。
 一方で,CEFRが万能とは当然思っていませんので,本来はいろいろな試験を換算するためのものではないのですが,複数の民間試験を認める上では,今CEFRに代わる別の基準というのは,現実的には我々も思い付かないといったところが,現時点での我々の意見です。
 以上です。
【渡部委員】
 ありがとうございます。
【川嶋座長代理】
 石原部長,何かコメントございますか。
【石原氏】
 これも私立大学では,いわゆるCEFRの基準で機械的にやっているところは少ないわけです。それぞれの大学のポリシーに従って,英検の級はこう使うし,GTECはこう使うし,TEAPはこう使うし,TOEFLはこう使うというやり方をやっているので,国公立大学も本来は,学部によっても何を重視するかという考え方が違うはずです。それを,全国の国公立大学を無理からそろえようとしたことがおかしいです。もう,来年度の入試から,大学入学定員よりも大学志願者数が減ってしまうのです。倍率が0.95倍とかそういう具合になってくる中で,かつての大量の受験生を一斉に処理した共通一次,センター試験から離れて,共通テストをやることはいいと思うのですが,今回の使い方でも,もう少し大学に任せるといいと思います。
 それができない大学のための1つの基準みたいなものは作ってもいいと思います。先ほど,末冨先生かな,おっしゃっていた,大学の体力とかいろいろな問題もあると思うので,それはいいと思うのですが,何か全部一緒にしてしまうと,今,渡部先生がおっしゃったとおりの弊害が出てくるので,そういう枠組みを外して,もう少し柔軟に,国公立大学についても考えていただいて,それぞれの学部学科で違って当たり前だと思います。今でも各大学はセンター試験の得点は傾斜配点で使っており,学部によっても配点がほとんど違います。一橋大などは4つの学部で全部傾斜配点が違いますから,そうなるほうが自然だと,私は思っています。
【渡部委員】
 どうもありがとうございます。
【川嶋座長代理】
 柴田委員,手が挙がっていましたがよろしいですか。
【柴田委員】
 ありがとうございます。時間がないので下ろしたのですが,では1つだけ。
 今,入試日程のことがいろいろ,最初のほうから問題になっていまして,これ,私は2つ要素があるんだと思うんです。1つは,感染症の蔓延で入試の実施自体が危ないという話と,それからこの間,高校などが休業になっていましたので,生徒さんたちの学習が遅れているのではないかというお話,地方格差が出ているのではないかというお話なのですが,これは,家庭学習,我々の感想からいうと,学校に通うよりも家庭でゆっくり勉強したほうが,受験の準備などは進むというような感覚の時代の人間なのですが,実際,最近の生徒さんはどんなものなのでしょうか。ちょっとお答えしにくいと思いますが,できましたら聞かせていただければと思います。
【川嶋座長代理】
 どちらかの方,手短に,もし御回答があればお願いしたいと思いますが。
【石原氏】
 やる学生は,昔と一緒だと思います。やっていると思います。ただ,やっぱりボリュームゾーンの学生は,指導がないとなかなかできないので,偏差値が高い大学ではほとんど影響はないのですが,ボリュームゾーンの学生を受け入れる大学だと,若干学習の遅れという影響があって,例えば去年と同じ入試問題を出せば合格者のラインが下がる,そういうことでは出てくると思います。
【川嶋座長代理】
 では河合理事長,手短にお願いします。
【河合氏】
 私どももこの間,授業を行えない間はオンラインで授業をやっていましたが,やはり学力が高い層は,今,石原さんがおっしゃったとおり,自分で学習を進めることができましたが,ボリュームゾーンの子はそうではない,かなりいろいろ管理をしないと見てもらえないという状況もありましたので,石原さんとほぼ私も同じ意見です。
【川嶋座長代理】
 御両名の方,ありがとうございました。
 ただいま,大臣が御到着されたということですので,ここで一言御挨拶を頂きたいと思います。よろしくお願いします。
【萩生田文部科学大臣】
 皆さん,こんにちは。萩生田光一です。今,河合さんと石原部長のお話を興味深く聞かせていただきました。
 9回目になります本会議に御出席頂きまして,本当にありがとうございます。本日は入試における障害のある皆様への配慮に詳しい皆さん,また大手予備校の皆さん,中央教育行政や高校の現場の先生方からも御発表頂けると聞いております。発表者の皆様には,ぜひ現場の状況をお話しいただくとともに,忌憚のない御意見を頂ければ幸いです。
 なお,大学入試の日程等については,現在,高校・大学関係者等から成る,大学入学者選抜方法の改善に関する協議の場において御審議をいただいております。全国高等学校長協会のアンケート結果を踏まえ,また入試日程,出題範囲,追試験を活用した受験機会の確保などについて議論が交わされると承知をしております。
 明日,再度協議が行われる予定であり,まだ結論が出ているわけではありませんが,私としては,仮に当初予定どおりの日程で実施になったとしても,例えば共通テストの追試験について,受験生が抱える様々な状況にも柔軟に対応し,受験できるようにすること,また各大学の個別入試において,追試験の実施や選択問題の設定を確実に行っていただくことが重要であると考えています。特に入試を実施する大学においては,今年の特別な状況に鑑み,受験生の立場に立って,できることは最大限実施するという考えで,積極的な対応をお願いしたいと考えております。
 受験生の不安を解消し,進学準備に取り組んでもらうためにも,今月中,速やかに選抜実施要項を策定,公表できるよう,文科省としても全力で取り組んでまいります。
 それでは,本日も活発な御意見をお願いします。どうぞよろしくお願いします。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。それでは,引き続き議事に入りたいと思いますが,次は高等学校の教育現場から,主に進路指導に携わられた御経験のある先生方に御発表をお願いしたいと思います。
 今回は,各地の6名の先生から発表をお願いしておりますので,3名ずつの2グループに分けて,御発表並びに御意見の交換をしたいと思っております。
 まず,最初の3名の方の最初の御発表として,秋田県立秋田北高等学校,杉田道子教育専門監から,7分程度で御発表をお願いしたいと思います。
 それでは杉田先生,よろしくお願いします。
【杉田氏】
 よろしくお願いします。では,スライドのほうを見ていただきたいと思います。では,スライドをお願いいたします。
 本日お話しすることですが,簡単な自己紹介の後,英語教育,それから進路指導,それから,大学側あるいは入試担当者の方に期待することをお話ししたいと思います。
 次のスライドお願いいたします。教育現場に立って33年になりました。本校,今の勤務校では,進路指導主事という立場で2年目になっています。秋田県独自の制度で,勤務校に普段は勤めておりますが,時折,全県的な英語教育に関わったり,小中学校にお邪魔したりすることもありました。
 現勤務校は,先ほどありました,いわゆるボリュームゾーンに値すると思いますが,非常に伝統のある秋田市内の進学校になっております。
 次のスライドお願いいたします。まずは英語教育に関してですが,コミュニカティブ・ランゲージ・ティーチングというような形で,非常にSELHiとか,そういったものがよく聞かれた時期に,ちょうど英語科のある学校に勤めておりましたので,4技能のバランスを意識した指導というのは,20年以上前から実践してきております。
 SELHiという文科省の事業であったり,秋田県で実施している研修,それから小中学校の先生方を含めて,教員の先生方の向上心ということで,非常に現場のほう,20年前と比べますととても変わっております。子供たちの声が中心になっていたり,学習者が中心となっている実践が非常に多くなっています。
 その中で私は,やはり英語の資格検定というものを,現場で,学習者の到達度を測る物差しとして使ってきました。生徒たちも,受かりたいとか,点数が伸びるといいなとか,リスニングが上がったとか,そういった短期的目標の動機づけにもなりますし,私たちも指導する側で指導を振り返ったり,次からの授業を改善していく材料として使ってきましたので,私個人的には,そのままの形で指導として使っていきたいなと考えております。
 次のスライドお願いいたします。ということで,議論はし尽くされておりますが,個人的にも,共通テストの枠には民間の資格検定は含めないほうに賛成いたします。今日も,高校3年生の授業を2つしてきましたが,もし,あのとおりの形で行われていたのであれば,多分,私は特定の検定の対策を,今日,午前中してきたと思います。ちょうど6月の中旬ですので,検定試験が行われ始める時期です。
 地方ですと,特化した塾だとか,対策の講座とかはあまりありませんので,公立の高校の先生方が,生徒たちの希望,それから保護者の期待になるべく沿おうとしますので,授業の中で特定の民間の対策をするということが,恐らく全国のあちこちの学校で行われていたのではないかなと思っています。そういった意味で,言葉はちょっと横柄かもしれませんが,健康的な授業を行うことができております。
 次のスライドお願いいたします。大学入試の中に私たちの教室があると思ってしまうと,なかなかうまくいかないと思います。
 次のスライドお願いします。前に座っている先生が数学の先生で集合をやっていたので,ちょっと集合のイメージで表してきたのですが,やはり一生涯,英語は使っていくものですので,その中に高校の教室もあり,大学の英語の授業もあり,留学もあり,そこでのつなぎになるようなものが,やはり大学入試であると思います。ですので,大学で英語がどんなふうに私たちからバトンタッチされてつながれていくのか,そのつなぎになるものということが,理想として大学入試に求めることになります。
 次お願いいたします。先ほど申したように,勤務校では進路指導主事という立場で調整役をしております。それで,今,本当に困っていること,困ったなあと一番悩んでいることが,煩雑さだけ残ってしまったということになります。
 先ほどありましたリーディングとリスニングの100点・100点も,大学,学部によって1対1,4対1,そのほかいろいろ分かれていますし,そのことに加えて,主体性を評価するということで,一般の試験で面接がたくさん入ってきます。英語の民間試験と同じように,私たちは指導を期待されますので,それに合わせてやはり面接の指導とかも,新たに大人数に対してしていくことになると思います。
 後は,調査書の弾力化ということがありまして,担任の先生方の負担が非常に,今年と来年と多いです。今の1年生が3年になる時には,電子化という形で調査書は行われていますが,今はまず紙ベースになっておりますので,3枚でもいいし5枚でもいいし,10枚でもいいし100枚でもいいよということなので,担任の先生方が,一人一人の生徒が受ける大学に合わせて,アドミッションポリシーに合わせて,受けるたびに,受験校が変わるたびに調査書に手を入れなければいけないということ。それから,私たちは全員チェックしますので,10枚の間のページが抜けてしまったりだとか,違う生徒のものを大学に送ってしまわないかとか,大学でもどういうふうに処理するんだろうかとか,そういった実質的なものに関しても,非常に不安を覚えていることです。
 それが,先ほどの1点刻みの合否ということも今回の話の中だと思っておりますが,担任が作る調査書が,この大学は10点で,この大学は5点,この大学は参考にということで,全体の総合点数の中に含まれてしまうんです。それの,担任の先生が抱える責任感というものが,非常に大きいものになっていくかと思います。
 次お願いいたします。共通テストは,英語民間に完全移行するつなぎではなかったかと思うので,もう一度リーディングを中心に,大学の先生方が付けてほしい力の問題になっているかというのを,いろいろ考えていければと思っています。
 次お願いします。個別試験は非常に毎回,感動したり,アドミッションポリシーはこうなのかというメッセージだと思っています。非常に期待しているところで,そこのところで,各大学の先生方が欲しい力を思う存分測っていただけるような,それに向けて,高校生あるいはほかの受験生が勉強できるような波及効果を期待しております。
 次お願いします。最後に,期待することですが,やはり調査書が変わったことで,現場がどうなるのかということをちょっと一回考えていただいて,大学側からも,どんなふうに,人によっては5枚,100枚と違うものを,どういうふうに点数化していくのかということが私は分かりませんので,いろいろ教えていただけたらいいなと思っております。
 では最後です。学習者の英語の力がつく,そんなテストの波及効果というものを大学入試に期待しておりますし,高校から大学にバトンタッチするというつもりで英語教育に携わっていきたいと思っています。
 以上です。ありがとうございました。
【川嶋座長代理】
 杉田先生,ありがとうございました。
 続きまして,茨城県立土浦第一高等学校,井坂直樹教諭から御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【井坂氏】
 よろしくお願いいたします。スライドを,お願いいたします。
 茨城県立土浦第一高等学校の井坂と申します。本日はこのような場を与えていただき,ありがとうございます。
 早速,内容に入りたいと思います。簡単に自己紹介をさせていただきます。
 数学科の教員として,本年度16年目を迎えました。現任校には今年度,赴任しました。昨年度までは,同県の竜ヶ崎第一高等学校に9年間在籍しておりました。今年度,昨年度ともに3学年の担任をしております。また,両校ともに,ほとんどの生徒が4年制大学への進学を志望し,そのほとんど多くが,様々ある入試形態の中でも,一般入試と呼ばれる形で受験を行っています。その意味で,大学受験に直面する生徒を2年連続で間近で見ている立場という点,また数学教育に関わっている一教員としての立場として,その経験をお話しさせていただければと思っております。
 次のスライドお願いいたします。まず,昨年度1年間の経験の中で,様々なところから私の耳に入ってきたのが,先ほどの発表の中にもありましたが,「超安全志向」という言葉です。それには様々な要因があるとは思いますが,その中の大きな1つというものが,共通テストが今年度から始まるということで間違いはないと思います。
 生徒も,もちろんそれに対しては気にしていましたが,それ以上に保護者の方々が心配しているという印象が強くありました。これは,保護者面談等を通して私の耳にも入ってきたものです。
 では,生徒自身はどうだったのか。大丈夫だったのかというと,やはりそうとは言えませんでした。前任校で,引率としてセンター試験の会場で待機している際に,よく試験と試験の間に生徒が外に出てきて,私たちと話をしたりするのですが,そのときの生徒の決まり文句というのが,「先生,今年,新傾向です,見たことありません,初めての問題です」というもので,決まって言う子たちが多くおりました。
 ですが,後ほど問題を見てみると,ほとんど変わりはありません。やはり生徒たちはその問題にとても敏感で,自分たちの人生に関わるという意味でいうと,その問題をすごく集中して見ているのかなというふうに感じていました。そういう意味でいうと,もちろん変化に敏感な,ややもすると少し弱いというのが,最近の生徒の気質なのかなというふうに感じているところはあります。
 その意味でいうと,数学の教員としても,高校の教員としても,そのような変化に臆することなく立ち向かえるような生徒を育てたいなと,常日頃から感じております。
 特に数学に関して言えば,本質をきちんと理解していれば,問われていることが変わっていても,形式が変わっていても,困ることはないんだよと。まずは数学をきちんと理解しよう,楽しもうという話を,授業の中で重ね重ねかねがねしてきました。それが生徒にどれぐらい通じたかというのは,振り返ってみなければ分からないところはあるのですが,結果として,私が去年担任させていただいた子たちに関しては,例年とさほど浪人する生徒数が例年とさほど変わらなかったという結果は出ています。共通テストがあったから,変化するからということで変わったということではないのかなと感じています。
 次のスライドお願いいたします。その当時に,また別の生徒なのですが,当時の2年生の生徒とやり取りをしたことが非常に印象的に残っていまして,ちょっと紹介させていただければと思っています。
 2年生ですので,今年3年生,すなわち共通テスト初年度に当たる生徒になります。この子は自分の進路に関しては非常に積極的に考えていて,どのような将来を描くかというのを一生懸命考えていた――ほかの子たちもそうですが,そういう1人です。
 その子と進路の相談をしていた際に出てきたのは,英語民間試験に関してはとても心配だと。でも,数学や国語の記述式問題に関しては,正直あまり実感が持てないということを言っていました。
 よくよく話を聞いてみると,英語民間試験に関しては,もう準備が2年生の段階から始まっていました。共通IDの取得だったり,実際の試験が3年生から始まっていくということを考えると,もう今から準備をしなければ間に合わないという感覚だったわけです。
 それに対して,国語や数学の記述式試験に関しては,模擬試験を経験することがあれば,本人たちは実感したかもしれませんが,まだ経験する前に,実際は延期という形になってしまいましたので,実感せずに終わったというのが本当のところなのかもしれません。
 また,その子が言っていたのは,仮に記述式試験が導入されたとしても,学校の指導を受けていれば十分対応できると考えていたと。なので,それにしっかりと従っていこうと思っていたと話していました。
 これは,学校を信頼してくれているといううれしさの反面,潜在的に,既に学校が対策してくれるという期待,ややもすると要望の部分が含まれているのかなあと感じました。
 総じてですが,生徒たち,私が接してきた子に限定されるかもしれませんが,漠然とした反対――質問されて,賛成ですか反対ですか,民間試験の利用だったり記述式問題が入るのはどうですかと聞かれると,漠然と反対と答える。ただ,はっきりとした強い意思があるかというと,そこまでではない。それよりは,目前に迫ってくると,初めて自分事になって,不安が入ってくるというような実際なのかなと感じました。
 次のスライドお願いいたします。では,現在,今年度の生徒と接していてどうかというと,正直なことを言いますと,それところではないというのが本音かもしれません。3月から数えると3か月間,学校生活がなかったわけで,当然,入試に対する不安はあります。ですが,そもそも学習時間が取れなかったり,生活リズムが保てなかったりというような状態が続きましたので,そちらの不安のほうが強いように感じます。
 ですが,これに関しては,私自身が学校が変わったということもありまして,その学校ごとの生徒の特性の違いもあるのかなというふうに感じました。ですが,先ほどの前任校の生徒と含めて感じるのは,共通テストに対する感情が大きく表れてくるのはこれからなのではないかなと感じます。生徒たちは,やはり決まれば,与えられた条件の中で頑張ろうとする,それだけの意思は持っていると感じています。
 次のスライドお願いいたします。この,昨年度,今年度の経験を基に,私から述べたい意見としては,2つです。まず1つは,もちろん,これまでも慎重に検討してくださっているとは思いますが,この共通テストに関する議案に関して,さらに慎重に検討を重ねていただければと思っています。生徒の,先ほど述べたような潜在的な要望のように,学校現場は,やはり生徒や保護者の意見を酌むように動くところがあります。
 その点でいうと,大学入試が与える教育現場への影響は非常に大きいです。その意味でいうと,なるべく早く決めてほしいという部分と,やはりその影響力を考えて,慎重に検討していただけたらうれしいという2面性があります。
 また,数学を教育している一教員として,記述式の試験というものは,大学ごとの個別選抜で活用するのが望ましいのではないかと感じています。やはり大学ごとで,望んでいるアドミッションポリシー,また,それを分かって入ってくる生徒ごとに評価するほうが,実際の力というものを判断できる,すなわち論理的な思考力や表現力を育て伸ばすことにつながるのではないかと感じております。
 まとまりのない発表で大変申し訳ありません。以上になります。御清聴ありがとうございました。
【川嶋座長代理】
 井坂先生,ありがとうございました。
 続きまして,石川県立金沢泉丘高等学校,小玉裕介教諭より御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【小玉氏】
 よろしくお願いします。石川県立金沢泉丘高等学校の小玉裕介と申します。担当教科は国語です。本日はよろしくお願いいたします。スライドではなく,レジュメのほうを御覧ください。
 大学入試の在り方に関して,進路指導に携わる現場の教員の立場で,今日は意見を述べたいと思っています。
 大学入試は,高校教育によくも悪くも大きな影響を与えていると思っています。よい面は,大学入試という高い壁が高校生を3年間で大きく成長させることです。本校であれば,特に3年次,そして3年次のセンター試験が終わって国公立大学二次試験までのおよそ1か月間の生徒の急成長には,目をみはるものがあります。
 その成長は,単純に学力だけではなくて,集中力や忍耐力といったメンタル面を含めての成長です。生徒の成長を間近で見ている私は,現在の一般選抜のシステムに一定の意義を感じています。
 一方で,負の側面として挙げられるのは,高校教育における大学入試を最終到達点とする傾向です。他教科のことは詳しく話せないのですが,自分の専門の国語の現代文では,教材の中心はやはり評論文であり,入試に出題されることの少ない小説や韻文,短歌や俳句や詩,そういう韻文が授業で扱われる割合は相対的に高くありません。古典であれば,入試の中心が現代語訳なので,授業ではやはり訳読が目的化している部分があります。
 このような負の側面の解決のためにも,幅広い分野,幅広い学力を問うような入試問題の作成が求められているのではないかと感じています。
 では,大学入試の在り方に関して,具体的に述べます。まず国語の記述式問題における共通テストと各大学の個別入試との役割分担についてですが,共通テストは,大学教育の入り口段階で共通に求められる力と規定されています。言わば,基礎力の到達度テストです。それに対し,大学の個別入試は,それぞれの大学が望む学力の到達テストです。
 その意味では,基礎的な思考力,判断力,表現力を問う記述式問題を共通テストの国語で課すことは,理にかなっていると思います。ただし,一般に言われているように採点の煩雑さ,自己採点の難しさ,あるいは別解の可能性等を鑑みると,50万人以上の受験生が参加する試験として適切であるとは言えません。
 加えて,これまでのセンター試験においても,本文の表現とは違う表現で書かれた同内容の選択肢を選ぶ問題で,基礎的な表現力を測ることはできています。
 ですので,文系は二次試験の記述式問題を通して表現力を問い,理系で国語を課さない場合は,二次試験の理数科目で表現力を問うことが,現時点では妥当と考えています。数学的思考を伴わない表現力を大学側が測りたければ,大学入試センターが大学に提供する国語の記述式問題を用いることも1案だと考えます。
 そもそも,大学入試において推奨される記述式問題が,東大文系の随筆に代表される,模範回答が想定しにくい問いに対し,論理的に説明,表現できるかを問うような問題であり,そのような問題が全体の中に含まれることが望ましいと考えています。各大学は国語の解答例を公表していませんが,その理由は正答を限定できないからであり,それこそがまさに個別入試でしか問えない問題だと思います。
 平成30年度に実施された共通テストのプレテスト,国語第1問の問の1や問の2のような,本文からの抜き出しをつなぎ合わせて回答を作成する記述式問題で,基礎的な思考力,判断力,表現力を評価することは可能です。ただ,既に述べた様々な障害を含め,総合的に考えると,やはり共通テストでは評価しきれない,評価すべきでないと考えます。
 また,その時のプレテスト第1問の問の3に関しては,複数の性質の異なるテキストを関連付けて考える力を問うているのは理解できますが,制限字数が多く,そして条件が複雑で,大学教育の入り口段階で共通に求められる力を測るという共通テストの理念にふさわしくないことも補足しておきたいと思います。
 次に,1点刻みの入試に関して述べます。賛否両論ありますが,個人的には,公平性が高いものだと認識しています。改善の余地があるとすれば,センター試験の配点が高いために,二次試験で逆転が難しかったり,あるいは二次試験が差の付かない試験内容であるため,センター試験の得点でほぼ合格が決まってしまったりする場合が少なからずあることです。また,センター試験の選択式問題1問の正誤によって,合否が決定されたような思いを抱く受験生もいます。
 改善方法の1つとして,東京工業大学のように,共通テストを2段階選抜にのみ用いる方法があります。この方法であれば,共通テストでの1点刻みは改善されます。二次試験に進める基準点を各大学で決める難しさは課題になるとは思いますが,個々の大学が責任を持って,自らが作成した入試問題で学生を選抜する方式は,結果に対して受験生が納得する度合いが,現行の入試制度よりも高いものになると思います。
 一般選抜以外の選択,AOや学校推薦が果たす役割に関しては,部活動や課題研究で活躍した,ペーパーでは測りきれない学力や主体性を持つ生徒も少なからずいるので,今後も継続してほしい入試形態です。ただ,一方で,推薦書の作成や面接指導といった教員の負担が,以前に比べ増加してきているということも見逃せない事実だと思っています。
 最後になりますが,英語検定試験活用と,記述式問題導入の延長に加えて,コロナウイルスによる休校で,数か月の間,対面で授業を受けられなかった今年度の受験生たちの,大学入試に対する不安は察するに余りあるものがあります。それは,来年度以降の受験生も同様です。
 多種多様な意見があると思いますが,国と大学,そして高等学校の3者が連携を密にし,情報共有を行い,真に大学教育の入り口段階で共通に求められる力を見定めることができる共通テストを作成していってほしいというのが,現場の教員に共通した意見だと思いますので,何とぞよろしくお願いいたします。
 以上です。
【川嶋座長代理】
 小玉先生,ありがとうございました。
 それでは,これから10分か15分程度かけまして,3名の御発表に対する質疑応答をしたいと思いますが,まず,どなたの御発言に対する御質問かを明らかにしていただきたいと思います。挙手ボタンでお知らせください。
 柴田委員,どうぞ。
【柴田委員】
 まず杉田先生に,英語についてお話しいただいたことで,おまとめいただいて,大変英語力が必要だというような,人生において必要だというのは全く賛同するところでございます。
 具体的にお聞きしたいのは,9ページにございました共通テストは英語検定に完全移行するまでのつなぎではなかったのかという御指摘,これは確かに経緯から言うとそうなのですが,今後,やはりつなぎとして,最終的には英語資格検定試験に移行すべきだと,今でもお考えなのでしょうか。
【杉田氏】
 民間には頼らないほうがいいと思っています。その議論は,もういろいろし尽くされていると思いますし,プラスアルファで経済的な負担もありますし,それぞれが特徴のある検定ですし,やっぱり特徴があるので,一生懸命対策すると点数が伸びたりするんです。ですので,共通テストの中で取り入れられるのであれば,そちらのほうがよりよいと思っています。
 以上です。
【柴田委員】
 ありがとうございました。つなぎという表現を私がちょっと誤解したのかもしれませんが,最終的に移行するということなのかなという誤解をしましたので。失礼しました。
【杉田氏】
 いえ,すみません。言葉足らずでした。
【柴田委員】
 いえ,こちらこそ。
 それから次が井坂先生,数学についてでございますが,先生の御意見では,記述式は共通テストには出さなくてもいいのではないかという具合に承ったのですが,そうなりますと,文系に進む子が,個別試験では,理系の子は数学の記述を多分課されると思うのですが,そういう経験がなくなってしまうと。そうなると,あるところで聞いたのですが,数学も暗記だとか,何か極端なことを言う子が出てきているみたいなのですが,そうなるようなことになるといかがかなと思うので,私は,数学の先生はできるだけ記述も何とかできないかなという具合におっしゃっていたように思っていたのですが,いかがなものでしょうか。御意見をお伺いしたいと思います。
【井坂氏】
 私としましても,やはり文系の生徒でも記述できるような表現力をつけてほしいという意見は賛同します。ですが,共通テストとなると,文系理系という幅広い生徒が一律に受けるテストになります。その生徒たちの力を見るために,ある程度共通化が図られた問題を出題することになると思います。その問題で,果たして多くの生徒の力をきちんと評価できるのかどうかというのが,私の中では疑問があります。
 実際,試行調査において,第1回と第2回で,随分出題の形が変わったと思います。ある程度,1回目を見て2回目の難易度を調整したのだと思うのですが,それによって,見られる力というものが少し平易になってしまったというか,難しくなったのではないかなあと感じております。
 理想論になってしまうかもしれませんが,もしそういう力が必要なのであれば,個別入試で数学を課すというような方向を考えていく必要もあるかと思いますし,数学が暗記だというように言う生徒がいるのも実際事実だと思いますが,出題の仕方によってそれを防ぐというか,ある程度,共通テストの中で,暗記にさせないような問題作成というのはできるのではないかと感じております。そういう形で思考力を見ればいいのではないかと,私は考えます。
【川嶋座長代理】
 続きまして岡委員,どうぞ。
【岡委員】
 ありがとうございます。私は杉田先生に質問がございます。先生は生涯学習ということで,英語のことについて語られました点は,まさにそうなのですが,大学はどうなっているかといいますと,1年生で共通していろいろな講義をしているのですが,現在,私どもの大学では,知的財産教育と数理情報,データサイエンス教育,それから英語教育というのが,全ての学部で共通して教えているところです。
 もちろん,英語はレベルによってクラス分けをして,ネイティブの先生によって教育されているのですが,一番不得意レベルでは,喋れない。非常に,恥ずかしがるとか,田舎の大学ですからそういう学生が多いのだとは思いますが,すごく良くできる学生はたくさんいるのですが,一方で不得意な学生はやっぱり英語が嫌いなんです。つまり,高校まででとても英語が嫌いになって入ってきて,なかなかそれ以上にならない。
 したがって,言いたいのは,資格試験を大学でも課しているのですが,高校でどうしたら高大接続になって,私たちがさらにグローバル化に向かっていい人材を育成できる,その基礎的な力であると思っている英語をさらに伸ばすことができるか。それは,入試はどうあったらいいのかということを教えていただきたいと思います。
 以上です。
【杉田氏】
 非常に大きなことですが,やはり,普通の高校生は経験がないです。例えば,共通言語として英語を使って,英語以外の国の方とコミュニケーションを取ってうれしかったとか,そういった経験がやはり,若いですので不足です。
 大人になってくると,ビジネスの場だったり,大学の先生方の学会であったり,いろいろな経験ができてくると思うのですが,そのときに,自分で勉強の仕方が分かったり,失敗した経験を生かして学びを続けていってくれたりということがあるのではないかなと思います。
 SSHとかSGHとか,非常に海外交流をやっている学校が県内にもあります。そういったことを経験できる生徒は,数は限られているのですが,帰ってきた後に発表会をやったり,行く前にプレゼンの練習をしたり,それを全校生徒が見たりとか,そういったものの研修とかの波及効果もあると思います。そういった経験をさせてあげるということが,嫌いなんだけれども使えるだとか,そういった気持ちにつながっていってほしいなと思っています。
 以上です。
【岡委員】
 ありがとうございました。大学も一生懸命英語教育をしているということですので,良い高大接続ができればいいと思っています。
【杉田氏】
 よろしくお願いします。
【川嶋座長代理】
 それでは,続きまして清水委員,お願いします。
【清水委員】
 筑波大学の清水と申します。後ろの時間も押していると思いますので,杉田先生と井坂先生に短い質問を1つずつお願いしたいと思います。
 まず杉田先生,前に数学の先生が座っておられるということで,ベン図を出していただいて非常に分かりやすかったのですが,この大学入試の中に,高校の英語教育がどっぷり浸かっているという――数学的には真部分集合と言いますが,ここで外に何も出ていないのかということが1つ,集合として,高校の英語教育が入試の世界から一歩も出ていないのかというのがちょっと気になって,次のスライドを拝見したら,むしろ大学入試のほうが生涯学習の中に入っているという,逆転しているということは分かったのですが,むしろこの図が,Bの大学入試が生涯学習の中に入っているというふうに,集合の向きを逆にしていただくと,AがBに含まれているという,AとBのラベルを変えていただくと分かりやすいかなと思って,そんなことをちょっと思いましたがいかがでしょうか。
【杉田氏】
 やっぱり慣れないことはするものではないですね。ありがとうございました。
【清水委員】
 いえ,すみません。それから井坂先生ですが,生徒さんの様子がよく分かったのですが,英語の民間試験活用の問題,それから記述式の国語の問題,そして記述式の数学の問題が,それぞれ生徒の肌感覚が違うのではないかとちょっと予想するのですが,その辺,先生の感触で何かお気付きのことがあれば,お願いしたいと思うのですが。単純に不安ということではなくて,土浦一高のようなトップの高校で,生徒さんの様子はちょっと違うと思いますので,何かあればお願いしたいと思います。
【井坂氏】
 現在校に移って,私もまだ3か月経っておりませんので,今の学校の生徒がどういうふうに感じているかというのは,ちょっと述べられないところがあります。
 ですが前任校,やはり進学校と言われた学校だったのですが,前任校について考えてみたときに,やはり英語の民間試験利用と記述式試験――これは数学・国語はほぼ変わらないのですが,に関する感覚というか,温度差はありました。
 記述式に関しては,やはり学校のほうで対応してくれることをきちんとやれば,どうにかなるだろうという期待感は強く感じました。英語民間試験に関しては,生徒たちの力を考えれば,そんなに心配することはないと,私は個人的には思っていたのですが,それよりは,失敗してしまうともう受ける機会がなくなってしまうかもしれないと。そういう意味での温度差というか,受けることさえできなくなるという怖さみたいなものを感じているように思いました。
【清水委員】
 ありがとうございました。大変参考になりました。
【川嶋座長代理】
 3名の先生方,ありがとうございました。
 引き続きまして,残りの3名の先生の御発表に移りたいと思いますが,ただいまと同様,まず3名の先生方に7分程度御発表いただいて,その後,10分から15分取りまして意見交換を行いたいと思います。
 まず,お1人目の方は,兵庫県立姫路西高等学校,薮内章彦主幹教諭でございます。よろしくお願いします。
【薮内氏】
 ではスタートさせていただきます。
 私は兵庫県立姫路西高等学校に勤務しております。本校は,創立142年目の伝統校です。SGHの指定を平成26年度から30年度まで受けておりました。この時に川嶋先生に大変お世話になりまして,ありがとうございました。また,今年度からSSHの指定を受け,データサイエンスを中心に事業を展開しております。
 私は英語教員になりまして30年目になりました。モットーとしては,当初から,「英語で討論ができる生徒を育てたい。」そういう思いで,これまでやってきました。
 ここ最近の活動では,SGHで姫路西高の主担当をしておりましたが,アメリカ研修でハーバード大,マサチューセッツ工科大での研修プログラムを開発,実施したり,課題研究発表会を英語で実施するなど,様々な取組を実践してきました。また,昨年度から,日本,オーストラリア,台湾の3か国の高校生を集めまして,トラベルプランコンテストを実施してきました。これは,各国から生徒が参加するためオンラインで英語を介して実施しております。
 ここで,日本人の英語力についてのエピソードを2つほど紹介させていただきます。まず1つ目は,某国公立大学,難関大学の大学院の先生からお聞きしたお話です。
 その先生によりますと,学生たちを集めてグループプロジェクトをしようと企画したところ,留学生たちがこぞって,日本人の生徒と組むのは嫌だと言ったそうです。理由を聞きますと,日本人と組むと成績が下がるからということだそうです。国費等で来ている留学生にとっては,大学院での成績が下がるというのは死活問題です。そういった意味から,彼らは日本人と組みたくないと言ったそうです。
 では,何故,日本人と組むと成績が下がるのかというと,日本人の学生は英語力が低い,パソコンが使えない,プレゼンが下手,三拍子そろっているというのです。
 これは,難関大学の大学院の状況です。私はそれを聞いて非常にショックを受けました。
 次のエピソードですが,これも難関大学の某ビジネススクールでの一幕です。たまたま,このビジネススクールの授業を見学する機会に恵まれ,1時間ほど見学していたのですが,20人から30人ほどいる学生たちが,英語で,各企業を代表しての議論を展開しているわけです。私は素晴らしいなと思っていたのですが,後で教授にお伺いすると,そこには日本人の生徒はいなかったということでした。日本の超難関大学のビジネススクールの授業に,これはたまたまだったのかもしれませんが,留学生しかいなかったという状況でした。
 ということは,日本の他の大学でも同じようなことが起こっているのではないかということを危惧します。世界大学ランキングにおいても,なかなか日本の大学が上位に入らず,海外大学への留学生の数も減少しています。これはトビタテJAPANのおかげで少しは増えていると聞いておりますが,昨今,日本の置かれている状況の中で,このような状況をどうにかしないといけないと考えております。
 こういった状況を考えますと,やはり,日本を背負って立つハイブリッドなグローバル人材の育成が急務だと考えております。教員生活の30年,それをずっと思ってきましたが,なかなか実現できないままきました。
 前出の教授の話ですが,大学入学後から上述の人材育成を始めたのでは遅い。何とか中学,高校の英語の授業等で,早くグローバル人材の育成に向けた取組をスタートさせないと手遅れになってしまうとおっしゃっていました。
 それでは,文部科学省が,何もこれまで手をこまねいてきたかというとそんなことは全くありません。小学校での英語の教科化,学習指導要領の改編で,コミュニケーション活動を随分導入してきました。それから,英語の授業は英語で,思考力,判断力,表現力,こういった能力の伸長が伴わないとグローバル人材は育たないと考え,アクティブラーニングとか探究的な活動等の導入,を踏まえて高大接続に取りかかってきたのだと思います。
 このたび入試改革で,英語4技能,そして記述式の導入ということを打ち出されましたが,私はそれに非常に賛同をしておりましたが,どういうわけか外部試験を新テストに置き替えるというところで,問題がいろいろ発生したのではないかと考えています。
 貴検討会議でも,これまでの議論の中で,そのような意見がたくさん出ていたと思いますし,現場の声として,英語の外部試験については,やはり見直すべきではないかと考えております。
 それでは,日本の英語教育の問題点は何か。これはあくまで現場の視点ですが,大学入試による弊害があると思います。昔から,「大学入試があるからコミュニケーション活動までは手が回らないんだ」とか,リスニング,スピーキングよりも読解,文法,英作指導がやはりメインだ。」等,これまでも先輩の先生方からもよく言われてきました。覚えることに重点を置いてしまい,英語を活用することが軽視されてきたのではないかと思います。
 また,これまでの貴検討会議の議論の中でも,入試で高校教育を変えるのは本末転倒であるというような御意見,御議論がされていたとは思いますが,その考え方は理想的でもあると思います。現場の実状としては,「入試が○○だから,やはり授業内容を構成せざるを得ない」というような声をよく聞きます。
 あと,教員の研修機会の不足というのもあると思いますが,今回は,割愛させていただきます。
 では,日本人が英語で議論ができないのは何故なのかということを考えると,議論とか対話のプロセスの圧倒的な経験不足だと思います。日本の学校では,日本語や英語を問わず,議論する機会が非常に少ないです。英語で議論させないのは受験に不要だからとか非効率だからだと考えられてきましたが,最近はアクティブラーニングや探究的な活動の導入で,随分状況も変わってきていると感じています。
 また,ネタを作ってそれを発表する場,つまり英語を使う場がない。これではやはり,英語を話せるようにならない。インプットだけでなく,今後は,インプットそしてネタ作りをしてアウトプットする,このプロセスが非常に重要だと考えています。
 我々現場の教員としましては,学習指導要領に基づいて,これらの課題を克服するために,いろいろな活動を今,実施している最中です。
 そういった背景から,やはり4技能を活用し,発表する,英語を使うということについて,特に英語力のアセスメントの必要性というのをすごく感じています。定期考査や模試などでは3技能のテストを行ってきましたが,通常の授業以外に,インタビューテスト等で4技能の取組の過程をしっかり評価していきたいと考え実践していますし,また,外部試験等も活用しています。
 ただ,外部試験に関して言うと,高校生には非常に高額です。また,遠隔地の生徒にとっては,受験機会に非常に制限があります。ということで,私は,外部テストは共通テストの代用には適さないと考えています。
 しかしながら,先ほども言いましたように,英語力のアセスメントとしては大変有効なものだと思っていますので,今後も外部試験,GTEC,TOEIC,TOEFL,英検等を活用していきたいと考えております。
 では,差し出がましいですが,提言をさせていただきます。共通テストをこれまでどおり大学入試センターが作成,そして共通テストの英語も,これまでどおり活用,作成していただき,現行どおり国公立の一次試験,私学のセンター利用という形で継続実施していただきたい。ただし,英語の外部テスト導入には反対です。
 それから,55万人の受験生が高大接続の改革の流れの中で高校生活を送っています。それから小学校で英語を学んだ生徒たちが,もう高校に入ってきます。アクティブラーニング等の流れの中で,英語でのプレゼン,ディベート,スピーチなど,彼らは,4技能を使う活動を積極的に行っているはずです。だから,共通テストで4技能をテストすべきだと思います。これはリスニングテストをセンターテストの英語に導入したように,日本の英語教育の大きな変革です。入試が変わると,高校の授業も変わっていきます。そういった意味で,ぜひともお願いしたいと思います。
 また,制度設計であるとか,採点システムの構築とか,デバイスの向上とか,時間をかけて実現――これは5年から10年かかるかもしれませんが,お願いしたいと思います。
 次に,共通テストにおける4技能のテストの導入案です。4技能のテストには,簡易なタブレットを55万台用意していただければと思います。リスニングで現行使用しているICプレーヤーも,タブレットに変更して,タブレットでリスニングとスピーキングの両方を実施するという考えです。
 スピーキングの採点については,録音済みのタブレットを回収して,できたらAIによる採点で,公平性,公正性を担保する。もちろん,システムを構築するまでにかなり時間はかかると思いますが,これができてから導入に踏み切るという形でお願いできないでしょうか。
 また,問題作成・実施についてはこれまで通り入試センターが担い,タブレット本体の開発とかプログラミング,採点システムの開発,保守・点検については外部委託でいかがでしょうか。
 加えて,データを蓄積して,項目反応理論による問題作成を目指し,できれば,吉田研作先生も提案されていましたが,1年で複数回,受験ができたらと思います。
 なお,個別試験,推薦入試,AO入試については,現行どおりでいいと思います。特に個別試験については,先ほどからも言われているように,各大学でいろいろな色が出せると思います。アドミッションポリシーに基づいたいろいろなテストができると思います。
 最後になりますが,大学入試の改革から高校の授業の改革,そしてそれがハイブリッドなグローバル人材の育成につながっていくのではないかなと思っています。以上で発表とさせていただきます。ありがとうございました。
【川嶋座長代理】
 薮内先生,ありがとうございました。
 続きまして,愛媛県立松山南高等学校,谷口みち佳教諭に御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【谷口氏】
 愛媛県立松山南高校で進路指導課長をしております,谷口みち佳と申します。担当教科は国語です。よろしくお願いします。
 事前に頂いたヒアリング調査項目案を基に作成したレジュメに沿って,私の意見を発表させていただきます。
 では,共通項目1,高校教育,大学入試についてです。
 大学入試は,各大学が受け入れたい生徒を選抜するために実施されます。しかし生徒は,志望大学に合格するために高校入学,高校教育を受けるものではありません。生徒は,高校教育を受けていく中で,自分の能力を高め,適性や将来を考え,志望が定まっていきます。ですから,一部の能力に特化され過ぎた入試は避けるべきで,高校教育で学力を高め,経験を重ねてきた生徒が疎かにされない入試を実施していただきたいです。
 続いて,2,大学入学共通テストと個別入試についてです。
 共通テストは,大学進学を志す生徒たちが必要な学力をどれくらい身につけているかをはかるテストです。合否に関わるものですから,得点がきれいな正規分布を描く結果になることが望ましいと思います。共通テストですから,日本全国でできるだけ公平な条件で実施されるべきです。
 一方,個別入試は,各大学が教科配点などを自由に決め,各大学の教育を受けられるレベルに達しているかを判断するために行うものです。両方を受けることで,入試の効果は高まると考えます。共通テストで失敗した生徒も,二次試験で挽回できます。個別入試で良識のある出題がなされれば,学力の3要素などもきちんと判定できると思います。
 また,共通テストと個別入試の配点の割合や評価などは,2年前までに公表していただくことを望みます。
 3,1点刻みの入試についてです。
 CEFRなどの段階別では,その分け目の生徒にとっては大きな違いとなり,不利益が大きく,公平さに欠けます。一つ一つ丁寧に取り組んだ生徒がきちんと評価されるためには,1点刻みのほうがよいと考えます。
 ただし,合否のボーダー辺りの受験生については,他の要素を組み込んだ総合的な判定がよいのではないでしょうか。例えば,入学定員の9割は1点刻みで合格を判定し,残り1割のボーダー周辺の生徒については,志望理由や活動成果などを重視して判定をするなど,各大学で工夫が可能です。これは恣意的であってはならないので,判定方法は事前に公表し,後日の成績開示にも応じることが前提です。
 2,個別項目に進みます。まず1,記述式問題について意見を述べます。
 思考力,判断力,表現力を問う問題は,じっくり時間をかけて解くものであり,採点がしやすい問題とはなり得ません。共通テストの2日間の枠組みで無理やり入れるではなく,個別試験でしっかりと出題していただきたいです。
 私の担当教科は国語ですが,思考力,判断力,表現力は,評論,小説,韻文,古典など様々な分野の文章を読んだり,グループ活動などの共同的な学びを行ったりする中で育成されています。説明文などを主とした試行テストの出題は,単純な訓練で解答が可能となり,記述式問題導入の趣旨からは外れます。2日間の日程で,かつ自己採点で出願先を決めていく現状で,共通テストに記述式問題を導入しても,きちんと実力が測られるとは考えにくいです。
 大学が個別試験問題の作成に不安があるならば,大学入試センターが個別試験用の問題を作成し,各大学に提供してはいかがでしょうか。採点は各大学の基準で行えば,不公平は生じないはずです。
 次に,2,一般選抜以外の選抜区分についてです。
 入試の多様化が進むことは良いことだと考えます。高校生活で身につけた学力を,何かしらの方法で判定に取り入れるという方向性にも賛成です。ここでは,高校が作成する調査書について考えを述べます。
 本年度から枚数規定がなくなり,幾らでも記述できることとなりました。高校3年間の様々な活動などを細かく記述しなければならない今回の改定は,教員への負担を増やしています。
 一方,大学の先生にすると,多くなった調査書の記述をいちいち評価することは考えておられず,評価の参考にしたい部分は限られているようです。
 それならば,知りたい部分について,各大学が志望理由書や活動報告書,推薦書などを求めることで,調査書は簡潔となり,作成の負担が減ると思います。そして,各大学が調査書や志望理由書などをどのように評価するのかを,できるだけ明確にしていただきたいです。一時期よく言われていたポートフォリオについては,大学入試に活用するにはハードルが高いと思います。
 最後に,3,英語の4技能について述べます。
 大学入学共通テストで評価する場合は,別日程や民間委託ではなく,共通テストの時程の中で行い,採点も大学入試センターが行うことで,受験生に新たな費用負担を強いることもなく,公平に実施されます。それができないなら,導入はせず,4技能を重視する大学が個別試験で評価をすればよいと考えます。
 話す,聞く,読む,書くといった言語能力は,国語を含め他の教科でも重要な技能です。それぞれの教科で出題の仕方を工夫し,テストの質の向上が大切ではないでしょうか。
 以上で発表を終わります。
【川嶋座長代理】
 谷口先生,ありがとうございました。
 それでは最後になりますが,熊本県立八代高等学校,髙木愼二指導教諭より,御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【髙木氏】
 最後になりました。よろしくお願いいたします。7分間の持ち時間ですが,よろしくお付き合いください。熊本県立八代高等学校で進路指導主事をしております,髙木といいます。
 次のスライドお願いします。まず,本校の紹介を簡単にさせてください。創立125周年目で,熊本県の南部,八代市――八代市というのは人口規模では熊本市の次の,県では2番目の規模があるのですが,大体13万人です――にある普通科高校です。
 県立の中高一貫校として中学校を併設して,今現在12年ですから,中学から学んだ生徒は,今6期生まで卒業しております。1学年が6クラスですから,1学年240名程度の規模の進学校であります。
 次のスライドお願いします。頂いたオーダーに対して,このような項目でお話をさせていただきたいと思っています。1番,入試改革の迷走について。2番,英語の4技能統合の指導について。民間資格検定の導入が見送られたことについて。CEFRで見た実態について。共通テストが行われますよ、ということについて。最後に提案という形でお話をさせてください。
 次お願いします。まず,入試改革の迷走について。
 改革の理念というものは十分に理解できます。いろいろな状況を鑑みて,やはり入試を変えていくこと,大学教育もを変える,入試も変える,高等学校の教育も変えるというふうな三位一体の部分があって,これは面白そうだな、と思っておりました。
 それで,大学入試改革についてなのですが,昨年,あのような状況がございました。やはり,進め方に少し問題があったのではないか、と思っています。簡単に申し上げますと,一番大切な公平性,公正性というところに問題があって,今の状況になっているのではないかと思います。一番いい例が,民間試験の成績提供システム導入が延期になったことだと思っています。
 次お願いいたします。現行の指導要領で,私は英語の教員ですが,現場で4技能統合の英語指導が進行中です。いろいろな工夫で,現場では英語をやっています。
 例えば知識の獲得,これは絶対必要ですから,英単語やそれから文法事項といったものに関してですが,その獲得を授業でやっていくことがあります。に加えて,スピーキングやプレゼンをさせてそれを評価する,いわゆるパフォーマンスの評価ですとか,エッセイを書かせてそれを試験の中に入れるですとか,そういったことを子供たち全員に課して,いわゆる経験値といいますか,スキルといいますか,そういったものの獲得を目指す。そしてスキーマも広げていく,そういう指導をやっております。
 やはり背景には,この入試の改革というものがあり,民間試験活用というものがあるから,じゃあ4技能の統合的総合的な指導を授業の中でやっていこう、というところがありました。そういう動機がございました。
 次をお願いいたします。昨年、民間外部資格検定の導入が見送られたわけですが,これについて少しコメントをさせてください。
 民間外部検定への準備ということで,授業スタイルを変えて,指導を変えてということをやっておりました。ですがしかし,導入に向けていろいろなアナウンスがあり,それを見ていきますと,本当にずっと指摘されていた問題点への対応が十分ではなかったと思います。
 スライドそこに3項目挙げておりますが,例えば,対象も狙いも異なる複数の民間試験をCEFRで並べる。CEFRのバンドは広過ぎないか,こういう議論が英語科内,それからいろいろなところで,進路部内でも出て行われておりました。
 次です。地方の学校としては,これは非常に申し上げたいところです。試験会場,受験料,こういったものの都市部と地方の差,これは大きいです。幾つか紹介されている外部試験で,どれを受けたほうがいいだろう,どれを生徒に勧めよう,などということを,喧々諤々,英語科内,それから進路部内で議論しておりましたが、地方の子が一番受験しやすいのは何か、と。
 大学の活用への働きかけと書いておりますが,これは,いわゆる各国公立大学がどのように外部検定試験を利用するかということです。例えば1つの例ですが,過去の実例で,東京大学が,一時は使いませんと言ったところが,その後変わりました。いわゆる出願資格という形で,CEFRのA2をというふうなところが出ましたが,そのような,個別試験と民間試験とのバランスの問題、というようなところを感じました。
 次のスライドお願いします。では、ということで,1つデータを御紹介させてください。字が小さくて申し訳ございませんが,本校のある年度の生徒の4技能GTECの結果で,それに伴ってCEFRがどんなバンドになっているか,それから英検と,センター試験の自己採点をひも付けしてまとめたものです。
 見ていただきたいのは3番です。CEFRでまとめた場合なのですが,B2は残念ながらおりませんでした。準1級を取った子は全部で4名いたのですが,このような表の状況です。
 こう見ますと,215名,GTECを受験して,その結果でCEFRの結果が出たわけなのですが,178名はA2のレベルにいる。ということは,このCEFRですが,結局,物すごく英語ができるB1の子を少し,それから,ほぼ英語が苦手で苦しんでいるA1の子を少し,弁別するぐらいのことしかできていない、ということが言えるのではないかなと思っています。
 続けてお願いいたします。ですから,英語は4技能統合の力で、という理念には,私個人としては異論はございません。面白そうだと思います。そして,それをほかの教科の先生方に,こうだからこうだからと説得した,または説明をして協力を要請したというのを覚えています。
 ただ,共通テストに民間試験をくっつけるやり方,これにはやっぱりノーが突きつけられたということであろうと思います。
 そこででは,民間試験の活用なのですが,大学の総合選抜型や学校推薦型,それから個別試験に利用しているような今の活用法でいいのではないかと思っています。個別試験の英語の問題は,どの教科の問題も一緒ですが,各大学の文化,各大学からのメッセージ,こんな問題をしっかり解いてこいよというメッセージではないかと思っています。
 次お願いいたします。共通テストがいよいよ実施されます。2年分,2回試行調査がございました。本校では,各教科の先生方に問題を解いていただいて,分析をしていただいて,文章にしていただいて,それを教員みんなで共有する機会を持ちました。
 そうするとこんな意見がありました。ちょっと読んでみます。平成30年度の2回目のほうが,何かセンターに近くなったなとか,平均点5割を取るためには,やはりどんな授業をしていかなきゃいけないか考えるなあ、というコメント。それにから,現行のセンターでも,知識だけではない,思考力を問う問題はちゃんとあるよとか,記述式の問題に関して,平成30年度,の2回目のものは洗練されてはきたのだけれど,1回目と比べるとトーンダウンの匂いがあるな,などというふうな意見がございました。あとさらに各教科の詳しい分析をしてもらったがあったわけです。が,そういったところで,第1回目の実施まであと200日になります。生徒たちが納得の結果を出せるように,我々は全力を尽くして,授業や指導法の工夫をしながら取り組んでいかなければいけないと考えています。
 次お願いします。最後に提案です。4技能の外部検定試験テストに関しては,やはり共通テストに民間試験をくっつけるやり方は,僕はノーだと思っています。先ほどと重なりダブりますが,個別試験の英語は,やはり各大学の作問文化を反映したものであり,大学側が発する強いメッセージだと思っています。
 次お願いいたします。それでも4技能を共通テストで見たいのであれば,もう民間外部検定試験の活用はしない。CEFRも利用しない。大学入試センターが自前で作問される。これしか全てを満足させるものはないのではないかと,現時点では思っています。先ほど,他のほかの先生もおっしゃっていましたが,私も同じ意見です。
 ではどうやって?じゃあ,ということになりますですが,スピーキングは機材の問題や採点の問題がございます。ライティングに関しては,これは自然と記述式になります。採点の問題があります。が,4技能をこの試験で測りますよというメッセージは強烈に発することができると思っております。
 以上で私の発表を終わります。ありがとうございました。
【川嶋座長代理】
 髙木先生,ありがとうございました。
 それでは,残り時間も少なくなっているのですが,今の3名の先生方について,御質問等ございましたら,どの御発表に対する御質問かをまずおっしゃっていただいて,挙手ボタンを挙げてください。
 それでは牧田委員,どうぞ。
【牧田委員】
 牧田です。谷口先生にお伺いしたいのですが,御発表の中でちらっとお触れになったのですが,ポートフォリオの活用というのが難しいというふうにおっしゃっていたのですが,それは現場として,どのような理由で難しいとお考えになっているのか,ぜひお教えいただきたいと思います。
【谷口氏】
 御質問ありがとうございます。ポートフォリオを,生徒たちが自由に入れることは可能なのですが,それを大学入試で判定するとなると,担保が必要だろうと思います。生徒は,ボランティアとしてこれをやったとか,こんな会に参加をしたと書いてはいますが,書くことはできますが,それが本当かどうかということの担保を,高校側の調査書なり何なりに求められるというのが現状だろうと思います。
 また,ポートフォリオを入れようと思ったら幾らでも入れられるわけですが,やはりそれは自分が志望理由書なりを考える,将来のことを考える資料としてはとてもいいと思うのですが,その中の,今までの過去を振り返って,自分がこんなふうになりたいと思った,その部分をきちんと,次の志望理由書なりに記述するためのものとしては,非常に役に立つだろうと思います。
 ただ,今,eポートフォリオとかよく言われますが,やはりその環境があるとか,そういったことになじめる家庭環境とか,Wi-Fiの環境とか,そういったものにも影響されるものですし,大学がそのまま受け入れてくれるわけではなく,高校がある程度担保しての,その結果というふうに受け入れられるのであれば,これは入試としては難しいのではないか。大学のほうが,どういう子が欲しいというときに入ってから,過去の経験なりを見たり,適性とかを見たりするのには大変いいと思うのですが,大学入試の公平さとかを考えると,難しいと考えております。
 以上でよろしいでしょうか。
【牧田委員】
 よく分かりました。ありがとうございます。
【川嶋座長代理】
 すみません,意見交換の途中なのですが,大臣がここで公務のために退席されるということですので,これまでのやり取りをお聞きになった感想等をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【萩生田文部科学大臣】
 皆さん,ありがとうございます。新型コロナウイルスの対応等で大変御多忙の中,本検討会議に御参加頂きましたことを改めて感謝申し上げたいと思います。
 本日は髙田教育長,また斉藤理事長,近藤准教授,河合理事長,石原部長,そしてただいまは杉田先生,井坂先生,小玉先生,薮内先生,谷口先生,髙木先生から,まさに現場の声を聞かせていただいたというふうに感謝を申し上げたいと思います。
 ちょっとイレギュラーなのですが,杉田先生につながりますか。
 杉田先生,こんにちは。文科大臣の萩生田です。
【杉田氏】
 こんにちは。よろしくお願いします。
【萩生田文部科学大臣】
 1点だけ聞かせていただきたいなと思ったことがあったのですが,先生は先ほどのプレゼンの中で,今日も午前中授業をやってきました,仮に外部試験導入がなされていたとすれば,今頃はきっと対策授業をやらざるを得なかったというお話をされましたよね。
 それは,進学校であると何となく肌感覚で分かる話なのですが,秋田北高校がどこにあるか,ちょっと私,土地勘がないのですが,今日,それぞれ地方都市の先生方にお話を聞いて,例えば先生がおっしゃった対策の授業というのは,前回選ばれている,7つもある外部の試験に全て対応するというのは非常に難しいという予想ができるので,そうすると,地方都市の場合は多分,近くで会場があって受験しやすいものを,結果として授業の中に取り入れていくことになってしまうということが必然的に考えられるのですが,こういう認識で間違っていませんか。
【杉田氏】
 そのとおりです。私の学校の周りの近隣の学校も,まず,これを推奨しますというような形で決めておりました。理由は,指導しやすいということですよね。
 それから,私の学校では,はっきり申し上げてまず英検を選んだのですが,小学校からの学習履歴,形式への慣れ,先生方の指導の履歴,慣れ,それから教えやすい,指導しやすい,ライティングがレベル別なので,その子に応じた指導もライティングが非常にしやすい,ほかの検定はライティングのお題が1つ,みんな共通,上の子も下の子も共通,では英検で行こうと。そんな形で英語科で決めました。
 ですので,ほとんどの生徒がやはり英検を予約,ちょうどしたところでしたので,ちょうどこの時期,やっていたと思いますということを,正直に申し上げます。
 以上です。
【萩生田文部科学大臣】
 御迷惑をかけてすみませんでした。
【杉田氏】
 とんでもないです。良かったです。
【萩生田文部科学大臣】
 逆に,言い換えれば,特定の自治体で特定の外部試験が授業の中にも入り込んできてしまうということも,制度に組み込まれてくる可能性は否定できないということですよね。
【杉田氏】
 そうですね,はい。
【萩生田文部科学大臣】
 そうですね。ありがとうございます。
 本当に御意見を頂きましてありがとうございました。今後も,ウェブ会議を使いながら皆さんとヒアリングを続けて,ぜひいい制度へとブラッシュアップをしていきたいと思いますので,引き続き,委員の先生方,また現場の先生方の声もいろいろ聞かせていただきたいと思いますので,今日のプレゼンで足りなかったところは,またメールなど頂ければしっかり拝読させていただきたいと思いますので,よろしくお願いします。中座をお許しください。
 (萩生田文部科学大臣 退席)
【川嶋座長代理】
 大臣,ありがとうございました。
 それでは,質疑応答に戻りたいと思います。
 芝井委員,どうぞ。
【芝井委員】
 ありがとうございます。姫路西の薮内先生にぜひお尋ねしたい点なのですが,先生の英語教育の目的といいますか,指導の理念というのは大変よく分かるのですが,資料の何ページになるでしょうか,何枚目かに,どうして英語で議論できないのだろうか,できないのはなぜかという項目があって,その中に,議論のプロセス,対話のプロセスを経験していない,十分経験していないからだということなのですが,その後,すごく大事なことが書いてあって,日本の学校では,日本語,英語を問わず,議論をする機会が圧倒的に少ないという指摘をされていまして,私はやっぱり,これは英語だけの問題ではないと思っています。
 逆に言ったら,英語だけの問題ではないのに,英語だけでディベートするというのは現実的なのかということについて,やはり少し疑問がありまして,せいぜい,両方ともどういう形で議論をするのか,ディベートの経験を作るかということを求められているだろうと思っていますが,いかがでしょうか。英語だけでディベートになりますか。
【薮内氏】
 私は,やはり,英語で議論ができるようになるという目標を持っていますので,もうかれこれ20年ぐらい前から,クラス内のディベートを取り組んできました。また,現在では,兵庫県の高校生英語ディベートコンテストを仲間たちと一緒にやっていますが,英語ディベートは,今の高校生はすごいレベルで行います。
 もちろん,ディベートなので,準備をして,それを例えばコンストラクティブスピーチと言いますが,立論をしっかり準備し,エビデンス等も準備をして行いますが,日本人にとってみれば,英語でディベートというのは意外と役割分担ができているんです。だから,「この準備を私はしてくるわ」とか,「じゃあ君はこれをしてきてね」という形で,分担して全員がしゃべります。大体5人1組になりますので,日本のクラスルームでいくと40人を5人,だから8チームぐらいできるわけです。それで,授業の中でもディベートもできます。
 ただ,今のは英語の話ですが,学年という単位でいきますと,ロングホームルームであるとか,総合的な学習の時間で,日本語によるディベートというのもやっています。ですので,やはり先ほど先生にもおっしゃっていただきましたが,日本語,英語を問わず議論の機会が圧倒的に少ないので,やはりそれをカバーしたいなと思っていますし,高校生は割とそういうのに飢えていたりしますので。
 以上です。
【芝井委員】
 ありがとうございます。
【川嶋座長代理】
 不手際で予定の時間を過ぎておりますので,ただいまお手をお挙げの岡委員と斎木委員の御質問で,本日の意見交換会を終わりたいと思います。
 岡委員,どうぞ。
【岡委員】
 ありがとうございます。英語の試験のことで,薮内先生と髙木先生にお聞きしたいのですが,大学は,やっぱり今のSociety5.0等を見越して,英語教育にというか,グローバル化に対していろいろな英語教育を仕掛けております。それはもう1年生から。
 それで,外部試験を使う,使わないという,今いろいろな御意見を頂いたのですが,私は,高校の先生がちゃんと4技能を評価していただいて,それを大学に提供していただいたら十分じゃないかというふうに思っているのですが,いかがでしょうか。
【川嶋座長代理】
 髙木先生,いかがですか。
【髙木氏】
 御質問ありがとうございます。高校の教育活動の結果として,4技能の評価を大学に提供するということでしたが,めちゃくちゃ面白そうだというふうにお聞きしました。
 ただ,しっかりとしたルーブリックがあって,ぶれないような評価軸があってというところがないと,どちらかというと判官びいきなものになるというか,そんな感じも否めないなと思っています。
 ただ,先ほど,共通テストでどうしても4技能を聞きたいのだったら,大学入試センターが作問するといいというのは,そういった部分も含めての私の考えでございます。
 以上です。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。
 薮内先生,いかがでしょうか。
【薮内氏】
 非常によく似た意見になると思いますが,各校で行ったスピーキングのテストや,4技能のテストを提供するのは可能ですが,やはり,公平性を欠くようにと感じます。
 やはりこれも髙木先生と同感ですが,共通テストの中で,公平・公正に4技能がテストできれば,これは非常に素晴らしいなと。そしてプラス項目反応理論を利用して,何回受けても同じような結果が出るというようなことにもつなげていければ,非常にありがたいと思います。
 以上です。
【岡委員】
 ありがとうございます。AIができればそれでいいのでしょうけれど,とてもスピーキングを50万人もできるわけもないので,実際するとすれば,高校の先生方に公平に成績をつけていただいたらいいなと思いました。
 以上です。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございます。
 それでは最後に斎木委員,お願いします。
【斎木委員】
 斎木でございます。それぞれの御報告,大変興味深く拝聴しました。ありがとうございます。私は薮内先生に1点,質問をいたします。
 今し方の岡委員の御質問に対する回答の最後のほうにも改めて出てきたのですが,薮内先生におかれては,共通テストにおける英語4機能テスト導入を,具体的なアイデアを示しつつ,御提言をまとめてくださいました。
 将来的には,1年で複数回受験可に持っていきたい,これにより全国共通の英語力測定・アセスメントになると,こういうことでございますが,私の質問は,その際,そういった1年で複数回受験できる英語4技能テストは,共通テストの一環として行われるというお考えでしょうか。
 というのは,他の教科との関連を整理する必要があると考えるからです。すなわち,他の教科については,恐らく1年で複数回受験可にはならないと。その場合,なぜ共通テストの一環である英語だけが複数回受験可になるのか,この辺りについてのお考えをお聞きしたいと思いました。よろしくお願いします。
【薮内氏】
 ありがとうございます。なかなか厳しい御質問だと思います。以前の検討会議の議事録を読ませていただいたのですが,その中で,吉田研作先生が,複数回の受験ということも書かれておりました。
 私は,ただ1回の英語のテストで英語力を測れるのか,ということも思っていましたので,それこそ今回の外部試験であれば年間2回は受けられるというようなこともありましたので,共通テストとして2回,複数回受けられるようにするのがいいと考えています。それと,1年生から3年生まで,英語力のアセスメントとして何回も受けられるという意味でも,ただ1回のテストとして終わってしまうのではなくて,また何度も使えるようなものになっていければいいと,考えています。
【川嶋座長代理】
 ありがとうございました。
 司会の不手際もあり,予定の時間を少しオーバーしましたが,中身の濃い意見交換だったと思います。本日は長時間にわたり御意見をいただきましてありがとうございました。
 それでは,時間も過ぎておりますので,本日の検討会議はこれで終了したいと思いますが,最後に事務局から何か連絡がございますでしょうか。
【武藤高等教育局企画官】
 事務局の武藤です。今,益戸先生が手を挙げておられます。
【川嶋座長代理】
 では益戸委員,どうぞ。
【益戸委員】
 意見ではなくて今後の会議の進め方についての提案を申し上げたいと思うのですが,先ほど大臣からもお話がありましたとおり,コロナ対応の中で,これだけ全国から人が集まれたというのは,大変,運営上よろしかったのではないかと思っております。
 民間企業でも,もはや元には戻れないという状態で,緊急事態宣言が解除された後も,テレワーク,会議のオンライン化というのはさらに進めているところでございます。
 したがいまして,この会議というのは,霞ヶ関の中でも非常に早くオンライン会議を始めておりますので,委員の皆さんや外部の皆さんの顔もよく見えますし,お話もよく聞こえますので,ぜひ,このスタイルを今後もずっと続けていただきたいなと。ぜひ,大臣ですとか文科省の幹部の皆さんには,事務局経由でお伝えいただきたいと思います。
【川嶋座長代理】
 はい。三島座長にもその旨申し伝えたいと思いますので,よろしくお願いします。
 それでは最後に,事務局から何か御連絡があればお願いします。
【武藤高等教育局企画官】
 第10回,次回の会議は,6月26日の金曜日に行いたいと思います。具体的な時間は,ヒアリングの先生方との調整の結果を踏まえて,また御連絡をいたします。
 以上でございます。
【川嶋座長代理】
 本日は誠に長時間にわたりありがとうございました。これにて終了したいと思います。

―― 了 ――
 

 

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