大学入試のあり方に関する検討会議(第7回)議事録

1.日時

令和2年5月14日(木曜日)14時~16時40分

2.場所

文部科学省3階第1特別会議室

3.議題

  1. 新型コロナウイルス感染症への対応状況
  2. 外部有識者・団体からのヒアリング 1倉元直樹(東北大学高度教養教育・学生支援機構教授) 2米本さくら(東京都立西高等学校3年)(日本若者協議会推薦) 幸田飛美花(山口県立岩国高等学校3年)(日本若者協議会推薦) 3南風原朝和(東京大学名誉教授) 4新井紀子(国立情報学研究所社会共有知研究センター長) 5大森昭生(共愛学園前橋国際大学学長)

4.出席者

委員

(有識者委員)三島座長、川嶋座長代理、益戸座長代理、荒瀬委員、宍戸委員、島田委員、清水委員、末冨委員、両角委員、渡部委員
(団体代表委員)岡委員、小林委員、芝井委員、柴田委員、萩原委員、吉田委員、牧田委員
(オブザーバー)山本大学入試センター理事長

文部科学省

萩生田文部科学大臣、佐々木文部科学大臣政務官、藤原事務次官、森田文部科学戦略官 他

5.議事録

【三島座長】
 委員の皆様,こんにちは。皆様おそろいでいらっしゃるようでございますので,定刻でございますので,始めさせていただきたいと思います。
 今日は,第7回の大学入試のあり方に関する検討会議ということでございます。今回も前回会議に引き続き,新型コロナウイルスの感染拡大防止のため,ウェブ会議方式での開催となってございます。音声等不都合ございませんでしょうか。
 本日から数回にわたって,本検討会の議論に多様な意見を反映するため,外部有識者の方からの御発表,そして,意見交換を行うこととしてございます。本日のヒアリングに御参加いただきます有識者の皆様には,お忙しい中本当にありがとうございます。様々な分野の方々から御意見を伺うため,本日から会議の時間が少し長めになりますけれども,御協力のほどどうぞよろしくお願いいたします。
 本日も,傍聴者,報道関係者の入室は認めず,ライブ配信での公開としたいと思います。後日議事録をホームページに掲載することとしたいと思いますが,よろしゅうございましょうか。
 それでは,よろしくお願い申し上げます。
 まず,事務局から何かございましたら,武藤企画官,お願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 2点ございます。まず斎木先生が御欠席,それから,清水先生が途中で御退席される予定です。今日は,外部ヒアリングとなりますけれども,意見発表者の先生方も含めて前回までと同様,御発言に当たって聞き取りやすいようはっきり御発言をお願いします。また,発言の都度,お名前をおっしゃっていただく,また,資料を参照する際に該当箇所などを分かりやすくお示しいただくなど,御配慮をお願いできればと思います。また,ハウリングを避けるために,発言時以外マイクをミュートにしていただきますとともに,御発言のときは手を挙げるボタンを押していただければと,お願いいたします。
 以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。
 それでは,議事に入りたいと思います。議事の1番目は,新型コロナウイルス感染症への対応状況ということで,来年度入試や9月入学について種々の意見が出されてございます。これに高校・大学関係者の皆様も強い関心を持っておられると思います。また,本日,末冨委員からも資料が配付されておりますので,来年度入試等の対応について,まずは現時点の状況を前田室長から御説明いただきたいと思いますし,末冨委員からは適宜また御発言の折に触れていただければと思います。
 それでは,前田大学入試室長,よろしくお願いいたします。
【前田大学入試室長】
 大学入試室の前田でございます。資料1でございますけれども,「令和3年度大学入学者選抜における総合型選抜及び学校推薦型選抜の実施に関する配慮事項について」というものをお配りさせていただいております。
 まず一般入試を含む入試全般につきましては,新型コロナウイルスによる臨時休業が長期化する中,来年度の大学入学者選抜においてこうした状況が多くの受験生にとって不利益にならないよう,文部科学省としても受験生第一の立場に立った配慮措置を講じていくことが重要であると考えておりまして,今後,高校・大学関係団体等と十分相談して対応することを考えております。
 その上で,当面,特に9月以降に出願が始まります総合型選抜や11月以降に出願が始まります学校推薦型選抜といった選抜区分におきまして受験生が大きな影響を受けることとなりますため,現時点において入学者選抜を実施する大学に配慮をお願いしたい事項について,これまで高校,大学,団体等から御意見をいただきまして,本日付けで総合型選抜・学校推薦型選抜における配慮事項について通知をいたしました。
 具体的な配慮事項でございますけれども,お手元の資料1をごらんいただければと思います。主な事項といたしまして,最初の1ポツ目でございます。中止・延期となった大会や資格・検定試験等に参加できず,結果を記載できないことをもって不利益を被ることがないよう,それまでの成果獲得に向けた努力のプロセスや大学で学ぼうとする意欲を多面的・総合的に評価すること。それから,2つ目としまして,調査書につきましては,出席日数や特別活動の記録,指導上参考となる諸事項の記載が少ないことをもって不利益をこうむることがないようにすること。それから,3つ目といたしまして,新型コロナウイルス感染症の拡大防止に留意しつつ,例えばICTを活用したオンラインによる個別面接やプレゼンテーション,入学後の学修計画書等の提出等を取り入れた多様な選抜方法の工夫が考えられるということ。それから,4つ目としまして,募集要項を公表する際には,募集要項に記載されている選抜方法とは異なる方法で選抜を実施する可能性がある場合には,その旨を明記するとともに,変更については早期に決定し,周知することといった内容につきまして各大学にはお願いをしてございます。
 なお,そもそも来年の入試の実施時期についての御意見もあることを承知しております。これにつきまして,令和3年度の大学入学者選抜の日程につきましては,例年6月に大学入学者選抜実施要項において周知する予定でございますけれども,受験生の立場に立って慎重に検討する必要があると考えておりまして,引き続き,高校・大学関係者等と十分相談しつつ,全体日程につきましては,臨時休業等の状況等に応じて適切に対応してまいりたいと考えています。
 また,学校の臨時休業が更に長期化した場合の対応としまして,9月入学など様々な御意見が出されておりますけれども,9月入学につきましては,これは文部科学省や学校だけが関わる問題ではなく,社会全体に影響を及ぼすものでございますので,各方面との調整が必要な案件でございますことから,どのような課題があるか,文部科学省を含め関係府省においても検討が進められていると承知してございます。
 他方でまず,文部科学省としましては,学校の臨時休業期間が長期化する場合においても,高校生が授業を十分に受けることができないことによって学習に著しい遅れが生じることがないようにすることが大変重要であると考えておりまして,学習保障のための取組をまずはしっかりと進めていくことが重要であると考えています。
 いずれにいたしましても,新型コロナウイルス感染症の今後の状況を十分見極めつつ,あらゆるシミュレーション,あらゆる事態を想定しながら,大学入試の対応を引き続いて行ってまいりたいと考えております。
 事務局からは以上でございます。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。それでは,来年度入試におけるコロナウイルス対応,入学時期の在り方につきましては,別の場で検討がされることと思いますので,この会議では報告にとどめて,議事に入りたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 それでは,また議事に入ります。本日は,記述式問題等についてお二人,それから,高校生お二人,そして,個別大学のお立場からお一人,テスト理論の分野からお一人,計6人の方からヒアリングを実施いたします。
 お一方目でございますが,記述式問題をはじめ大学入試制度について,東北大学高度教養教育・学生支援機構の倉元直樹教授から15分程度で御発表いただきます。その後,15分程度の意見交換を行いたいと思いますので,よろしくお願いいたします。それでは,倉元先生,どうぞよろしくお願いいたします。
【倉元氏】
 東北大学の倉元でございます。冒頭ちょっと音声トラブルがありまして,聞き取れなかったところがございます。もしかすると趣旨に反することを言ってしまうかもしれません。お許しください。
 それでは,始めさせていただきます。1枚めくって2ページ目を御覧ください。このような内容で発言をさせていただきます。
 次,お願いいたします。ごらんいただいていますとおり,私は30年ぐらい入試に関わってございます。特にこの20年ぐらい,東北大学に来てから200校ほど高校を訪問した経験がございます。きょうお話しの米本さんの西高校にも行っております。幸田さんの岩国高校は,近くまで行ったんですけれども,山口県の交通事情がそこで分かりまして,残念ながら断念をいたしました。直接保護者や受験生の相談なんかも受ける機会がございます。そういった中で東北大学の入試に携わってきた者です。
 次お願いいたします。最近,本を出しました。『東北大学大学入試研究シリーズ』といいます。「大学入試学」というのは私の造語です。大学入試という営みは学問の対象と思われていない。これは軽く見られている証拠でございます。誰しもが自らの経験を基に持論を語ることができる分野であるということが混乱を招いているかと思います。そもそも大学入試の科学化というのが戦後の文部省の悲願であったというようなこともこの本の中に含めさせていただいています。
 次お願いいたします。では,「大学入試学」とは何をするものなのか。これはやはり個人研究ではなくて機関研究ということになりますので,まずは第一義的には,所属大学のための研究ということになります。『大学ランキング』という本,これは高校の進路指導室によくあるものじゃないかなと思うのですが,その中で高校からの評価ランキング,総合評価,15年間で14回全国1位をいただいております。これは1つの成果かと思います。
 次のスライドお願いいたします。「大学入試学」の特徴でございますけれども,当然基礎学問ではございません。いろいろなものの混ぜ合わせでございます。したがって,私も苦手なことをやったりしますので,専門家からは厳しい御意見をいただいたりすることもあるかと思いますけれども,私どもを評価をしていただくのは一般社会であると考えております。問題解決のための学問です。したがって,今の日本の大学入試に知恵を出すということも1つのお役目かなと思います。何よりも大事なのは,証拠に基づく実証的な学問ということで,そのフィールドとして東北大学が高大接続改革に何をしてきたのかということをお話しさせてください。
 次のスライドをお願いいたします。高大接続改革における東北大学の立場でございますが,これは前の総長,里見総長がちょうど国大協入試委員長から会長になるというときに始まりました。当然,積極的に推進するというところで始まったのですけれども,途中から改革案がかなり実現不可能であるというようなことが分かってきまして,それで何度も意見具申を申し上げましたが,なかなかお聞き取っていただけなかったということです。具体的に「こういうことをやるよ」ということになってからは,本学においてどういう意思決定をしていくかということを考えてまいりました。その際,日常的なコミュニケーションによる高校側の実態の把握,それから,質問紙調査による意見の把握,それから,早期からワーキンググループを作って,学内コンセンサスを形成してきた。こういうことがスムーズな意思決定に寄与したのではないかなと考えております。
 次のスライドをお願いいたします。東北大学が直面した4つの課題がございます。1つ目が特有のものです。あとの3つは他大学と共通のものです。とにかく「改革年度の受験生の努力を無駄にしない」ということを1番に考えました。最初のものはちょっと説明が要るのですけれども,共通テストに記述式を導入するということになって,これを第一次選考で使っていたAO入試Ⅲ期が実施できなくなりました。そこで,かつてない「自己採点利用方式」を考案して,第一次選考を行うという発表をしたところでございます。2番,3番はごらんのとおりでございます。4番目,調査書の使い方に関して,「令和3年度から選抜要項に明記するように」というような御指示がございましたので,考え出しましたのは主体性の評価を受験生の自己申告,チェックリストでやる,ということです。そして,その根拠資料として調査書を使うという発表をしております。
 次のスライドをお願いいたします。昨年度の方針転換を受けまして,1番と3番に関しましては撤回をしました。2番,4番はそのままです。受験生に実質的に影響がないというところが,・・・この非常時に影響がないというところが・・・上手にやれたかなと思っているところでございます。このような方針決定に寄与した背景要因でございますが,申し訳ないのですけれども,改革がどこかで頓挫するであろうということは予想しておりました。1つは,私が大学入試センターの試験業務に関する知識があったということがあります。これは一般の方は御存知ないです。そして,研修として入試センターに3度ほどお邪魔させていただきました。今日は理事長がおられますが,御協力ありがとうございます。実際に見させていただいて,これは実施は難しいな,と改めて感じた次第です。それを持ち帰って情報共有をしたところでございます。
 次のスライドをお願いいたします。高校調査でございます。これ,東北大学の意思決定のためでございますので,調査対象は東北大学への受験者・合格者が多い高校です。自己採点利用方式に関しては6割ぐらいの高校が賛成をしていただきました。記述式試験の導入,これはほとんど賛成者がなかったといったところで意思決定に寄与いたしました。
 次のスライドをお願いします。そもそも何が問題だったのか,誰のための改革だったのかというところなのですけれども,高大接続答申で描かれている高校教育,これに大変違和感がございます。実際に今の高校を見てのことなのかということに非常に疑問があるわけです。ということで,いただいておりました共通項目に関して触れさせていただきます。大体のところは,今まで私が書いてきたものでお答えできるのではないかなと思っております。
 最初,学校段階における役割分担。これは当然違っていて当然だと,ギャップがあって当然だと考えております。
 次のところお願いいたします。大学入試が高校教育に与えている影響ですが,これは実は大学入試政策の中でいわゆる「大学入試の三原則」の1つ,定番なんです。1つ前の答申では,大学入試の影響力が低下しているということを前提に議論されていたはずだったのに,またここで出てきたところに非常に疑問を感じるわけです。そもそもが大学入試というものが持つのは,局所的な影響力である。つまり,東北大学の入試の影響力,これは大きいですけれども,これは東北大学に受験生を多く持っている学校に対して大きいのであって,そうでないところには関係ない,という特徴があります。ですので,全体を一括にというのはなかなか難しいところでございます。
 共通テストと個別試験の役割でございます。これ,率直に申し上げます。共通テストは負担です。センター試験の監督,これはミスすると大変な目に遭う。それは教育に対する使命感でやっている。それに対して,個別試験に関しては,やることは同じなのですけれども,自分のところに入ってくる学生ですから,そこへの期待感がある。これは随分違うように思います。
公平性に関して。すみません,これ,入れ忘れたんですけれども,これはもう話しているときりがありません。いろいろなものに書いております。本にも書いておりますので,ごらんください。
 次のところ,お願いいたします。各大学の多様性です。大学が多様であるということもありますけれども,そもそも入試の多様化というのは,文部科学省の基本政策であると認識しております。大事なのは,我が国では入学者の選抜権が大学にあるということで,これは非常に大事だと思います。もしも,そこを見直すとなると,かなり大きな話になるんじゃないかなと思います。
 次,施策のフィージビリティーです。入試というのは何かというと,これは受験生に対する約束だと思います。したがって,どういうことかというと,「こういう入試をするからこういう努力をしてきてください」ということを伝えているわけです。ですから,本来,2年前予告では間に合わないものもあると思います。「受験生保護の大原則」というふうに名前を付けさせていただきましたけれども,こういった性質があるということを私どもは考えております。
 次のスライドをお願いいたします。大学入試改革,これ,副作用は大変大きいです。改革の意図とは違ったところで影響が出てきます。理念から出発すると必ず混乱が起こります。というのは,いろいろな理念があるからです。ですので,逆にこういったことをしたらこういう影響があるといった出口からの議論が必要ではないかなと考えています。入試は「妥協の芸術」。これは私の造語です。1つのロジックで皆が満足する解はない。ですので,上手な妥協を探っていく必要がある。
 結論を申し上げます。最初からボタンの掛け違えがあったんじゃないかなと思います。もう一度問題設定からやり直しませんかというのが私の提言になります。
 次のスライドをお願いいたします。この改革の経緯で見えてきたのは,個別試験の重要性だと思います。様々な議論があったのですけれども,高度な学力の測定のためには個別試験が重要だというところにコンセンサスが得られてきたと思います。
 次のスライドお願いいたします。こちらの資料は,共通テスト記述式導入の根拠になったものでございます。国立大学の入試の中で,国語,小論文,総合問題を課している募集人員が4割に満たないと。ただ,実際には記述式の出題はこの3教科に限られて出されているものではございません。
 次のスライドお願いいたします。これはたまたま同時期に私どもが2万4,000問ほどあったんですけれども,小問単位で調べた結果です。そうすると,同じ集計の仕方をすると,国立大学の受験者で記述式を課されない受験者は1割弱にすぎない。これが実態でございます。
 次のスライドお願いいたします。実際に教科・科目ごとに見てみますと,様々ございますが,文系では国語,理系では実は理科の中で結構記述式,相当な文字数を書くものが出されているということが分かっております。
 次のスライドをお願いいたします。ということで,これは文部科学省の委託事業という形なんですけれども,私どもも参画させていただいて,実際に高校生に模擬問題を解いていただきました。旧来型のマークシートの問題,それから,旧来型の記述式の問題,新しいタイプと言われている問題,これ,それぞれ特徴がございます。これは高校生の判断です。マークシートは「知識・能力」が測れておりますという理解です。実は「意欲・関心」というのは,小説の素材文が非常に大事だなということが分かってきました。新しい傾向の問題は,まあ新しいなという感想です。
 次のスライドお願いいたします。入試問題,これは選抜のツールであると同時に,無償の教材です。ただであるというところが大事です。高校の先生方は,良質な入試問題と考えるものを使って教科指導をされます。高校の視点に立つと,入試問題こそが各大学のアドミッションポリシーという受け止め方になります。ということで,個別試験の改善,これが大事だと思っております。どうするか。1つは作題の負担です。コンソーシアム化という案があってはどうかなと思っています。もう一つが,専門家の養成です。東北大学では,教科・科目別に特任教授という制度を設けて,高校教育の経験者を雇用しております。
 次のスライドお願いします。彼らの協力があって,入試問題をどういうふうにするかということなんですけれども,これ,5年間の,実際,国語のある2つの大問,毎年の正答率,それから,実際に得点にどれだけ寄与したのかというようなことをグラフ化してお見せして,安定した作題につなげたいという,そういう試みを始めております。
 次のスライドをお願いいたします。同じ試験問題でも,学部によって聞き方が違うというのもあります。これは凡例がずれていてすみません。下にずれるんですけれども,下から2番目のR学部では,第α問は合否に利かないんです。ところが,P学部ではこれが結構合否に利いてくる。こういったようなことを材料にして,解釈を特任の先生方中心にやっていただくということで試験問題の改良をしようと試みているところです。
 次のスライドをお願いいたします。結論です。大学入学者選抜はやはり一般選抜が基本ではないかと思います。望まれる支援ですけれども,1つはエビデンスに基づく現状分析から議論を出発していただけないでしょうかと。このためには,「大学入試学会」というようなものが必要かなと思っています。2つ目,個別試験の強化です。これは作題を各大学に投げるというのもちょっと限界かなと思います。コンソーシアム化と,あと,やはり専門家の養成が必要だと思います。とにかく急ぎ過ぎないで,長期的な視点での改革をお願いしたいと思います。
 最後になります。今一番大切だと考えていることです。次のスライドお願いいたします。令和3年度入試の受験生をロストジェネレーションにしない,これが常に頭にあります。彼らは入試改革に翻弄された世代です。それを新型コロナウイルスが襲っているという状況です。しょうがないでは済まされないと思っています。我々としては最大限の努力をして,何をするかというと,彼らが目標にしてきた入試,選抜方法,それを可能な限りそのまま実現する方策,これを一緒に考えていただけないかなと思います。
 実は3密状態というのは,入試の作題とはそういう状況です。かなり作業が止まっています。これは非常に怖いです。これから取り戻すということができないわけではないのですけれども,恐らくチェックが甘くなるでしょう。本学も痛い目に遭っています。とにかくひとつ時間が欲しいというのが正直なところです。もう間に合わない部分があります。
 3段階で考えているところもあります。1つは,私立大学やAO・推薦を目指してきた受験生も含めてどうするか。これが難しければ,国立大学ないしは国公立大学でどうするか。最後は,本学,東北大学の受験生をどうするか。いずれにしても私が決められることではないので,こういったことを念頭に,執行部,それから,国大協の先生方,文部科学省の皆さんにお願いしていきたいなと考えているところです。
 どうもありがとうございました。
 最後の2枚のスライドは,資料になっております。御参考にしていただければと思います。以上でございます。
【三島座長】
 倉元先生,どうもありがとうございました。
 それでは,ただいまから15分ほどの質疑ということにしたいと思いますが,発言希望の方は,手を挙げるボタンを押していただきたいと思います。それではまず,両角委員,どうぞ。
【両角委員】
 両角です。倉元先生,どうもありがとうございました。先生の大変分かりやすいお話,勉強になりました。先生がおっしゃったように,個別大学の入試というのが重要であると。また,現状分析から議論を出発する必要があるというのも本当にそのとおりだなと思って聞いていました。
 ただ,もう少し先生の御意見をお伺いしたい点があります。現状の共通テストのところについては,何らかこう変えた方がいいというようなことをお考えなのか,そこについては,少なくとも国立あるいは東北大学では今のままでよいというふうにお考えなのか,その辺り教えていただけますでしょうか。
【倉元氏】
 ありがとうございます。これは1つは,日本テスト学会というところで実は私も加わって意見表明をさせていただいております。センター試験は非常に良質の問題であるというのがこれまでの評価でございました。それが共通テストになったときに,質的な劣化が起こるのではないかと非常に心配をしております。信頼性が落ちる,信用度が落ちるということを心配しております。共通試験に関しては,実は共通一次からセンター試験に変わるときに大きな設計の変更があったのですけれども,それを認識しないままに30年来たというところで制度疲労が起こったというのが私の分析です。それに関して書いた論文もありますので,もしよろしかったらまた後日御紹介したいと思います。
 以上でございます。
【両角委員】
 ありがとうございました。
【三島座長】
 ありがとうございました。ほかに御発言御希望ございますか。それでは,柴田委員,どうぞ。
【柴田委員】
 大変ありがとうございました。先生とは,以前よりいろいろ御教示いただいておりまして,改めて先生のお考えを拝聴させていただきまして,先生,大学入試学というのを以前からお話しになっておられますけれども,他面では,AO入試の導入に伴いまして,結構アドミッションセンターのほうにその専任の教員あるいは職員の方々がおられるんですね。これが20年分ぐらい蓄積があるように思うんですけれども,その辺りでの大学入試学の検討と申しますか,そういうものが日本でなかなか成熟しないというのはどういうところが問題だとお考えなんでしょうか。それが1点です。
 もう一つ,日本の大学の入試は,教授会が随分と最終的な権限を持っていますよね。それが今後も続いていくのかどうか,そういう辺りの御意見,先生にお聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。
【倉元氏】
 まず1つ目のことなんですけれども,これは本にも書いているのですけれども,養成が難しいのです。つまり,普通の大学院生からどうやって専門家を育てるのか。というのは,データは基本的に入試,それから,教務という機密事項で,学生に触れさせられない。そうすると,代わりにオンザジョブトレーニングとなってくるのですけれども,ここのところが解決が十分できないままこの20年が過ぎてしまったのではないかなと思っています。
 2番目の御質問は,ちょっと私の任には重いので,その立場の先生方にお考えいただければと思います。以上です。
【柴田委員】
 どうもありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
【三島座長】
 それでは次に,岡委員,お願いします。
【岡委員】
 ありがとうございます。国大協の入試委員長をしております岡です。先生にお聞きしたいんですが,今,国大協でいろいろ入試に関してワーキングを作ったり,議論をしているところですし,非常に早急に議論を進めなければいけないというふうに思っております。ここの会議でも問題になっているのは,共通試験と個別試験の役割分担というのが非常に重要だろうという議論があるんですが,先生,先ほど言われたところ,使命感の違いだけなので,もう少し根本的にその両者の違いをどうお考えになっているかということをまずお聞きしたいんですが,よろしくお願いします。
【倉元氏】
 センター試験というのは,そもそももともと共通一次に源を持つというところで,これは国立大学が協働してやるというところが大きかったわけです。そのとき,当時はいわゆる難問・奇問の排除というところで国立大学が一致してこれに取り掛かりましょうというところで入ってきています。ですので,極めて公共性の高い事業だと思います。今でもそれはそうだと思うんです。
 ただ,個々の例えば試験監督に当たる先生方から見たときに,これはとにかく失敗を許されない。失敗したらバツが付く。でも,うまくいって当たり前なので,それに対する報酬はないという,とにかくひたすらつらい仕事になるわけです。一方,個別の選抜に関しては,結局,自分が教育する学生ですから,やることは同じでも,やっぱり最終的に自分が迎え入れるというところが大きいわけです。多分恐らくそこはモチベーションの違いにはなってくると思います。
 これは日本の非常にいい特徴だと思うのですけれども,入試がやはり教育の一環なんですね。誰かに預けて選抜させて,それで終わりじゃない。これはもう非常に大事なところで,日本の大学教育の一番下のところを支えていることなんじゃないかなと個人的には思っています。
 ただ,公共的な事業として,つまり,個別試験で全てやることはできないですから,例えば東北大学でも,地歴公民に関しては課していないわけです。こういった役割は共通試験に非常に担っていただいていて,これは各大学,非常に大事にしている,頼っているところはあるんじゃないかなと思います。以上です。
【岡委員】
 今のいわゆる監督者などの意気込みの違いではなくて,内容としてどういうふうに役割分担をするかという議論が今あると言われております。内容についてどう棲み分けをするかというお考えをお聞きしたいんです。
【倉元氏】
 共通試験というのはやっぱり受験者層の層が広いですね。層というのは,端的に言いますと,学力層です。これ全てに対応しなければいけないというところが違います。個別大学ですと,やはり層が限られるので,そこに適した問題というのがあるのです。それは極めて多分技術的に難しいところだし,熟練の技があるので,科学的になかなか持っていくことはできないのですけれども,事後の評価は先ほどお見せしたような形でできるものです。ですので,そこの役割は非常に大きく違うと思います。
【三島座長】
 よろしいでしょうか。ほかに御意見がございましたら,手を挙げていただければと思います。清水委員ですね。
【清水委員】
 筑波大学の清水です。どうも貴重な御発表ありがとうございました。スライド13ページにフィージビリティーの問題で,2年前予告では間に合わない云々があるんですけれども,その下に,「初等教育からの変革を待つ必要がある課題も」とあります。これが高大接続の議論の中で初等教育と高等教育との接続の問題がいつもクローズアップされていましたので,これ,もう少し御説明いただけますでしょうか。
【倉元氏】
 私,教育内容のことは実はよく分からないので,非常に単純な話です。例えば日本語は表記が非常に難しいのです。どういうことかというと,コンピューターに文字を打ち込むときにどうするのだという話があるわけです。例えば,CBTで記述式をやるという1つアイデアはあると思うんですけれども,では,そのときに入力方式どうするの,といったら,小学校のところから文字学習の教育をどうするの?という話に関わってくるのです。だから,そう簡単にいかない問題が結構あると思っています。これは1つの例です。すみません,余りほかに適切な例が思い浮かびませんでした。
【清水委員】
 ありがとうございました。
【三島座長】
 よろしいでしょうか。
 それでは,芝井委員,どうぞ。
【芝井委員】
 ありがとうございます。これ,1つ,スライドの23だと思うんですけれども,この大学入学者選抜に関して,一般入試が基本だと。広がり過ぎた推薦,AOの制御が課題であると書いておられるわけですが,現実問題として,入学定員と志願者の間のバランスというのは随分時代の変化とともに変わってきて,明らかに選抜型の大学だけではなくなってしまっているかと思います。その中で推薦とAOは制御だというのは少し時代認識としては私と違いまして,むしろ現実に進んでいる入学前教育とか,あるいはリメディアル教育ですとか,目の前にあることを大事にされた方がという感じがするんですが,いかがですか。
【倉元氏】
 どういった立場で話をするかによって変わってくると思います。基本的に私は本学,東北大学の立場から物を考えてきた者でございます。そういった意味ではちょっと他の大学のお話は差し控えさせていただければ,と思います。
【芝井委員】
 東北大学としてはよく分かります。ただ,全体の日本の入試制度を考えるときには,明らかに入学定員と志願者の間のバランスというのは,少子化の進行という目の前の現実を受け入れて,その中で高校教育と大学をどういうふうにつなげるのか,どう進める必要があるのか。そのときに一般選抜がメインであって,推薦とAOは制御するのが望ましいという結論にはならないように思うんですが。
【倉元氏】
 いや,どうでしょうかね。今,私立大学だと,推薦・AOが5割を超えた状況ですよね。それが想定されていたものかどうかということもあると思いますので……。
【芝井委員】
 それは悪いことですか。
【倉元氏】
 とりあえず……。
【芝井委員】
 いろいろな大学があり,私はそうは思っていないのですけれども,いろいろなお立場がある。東北大学のスタンスがあって構わないと思います。
【倉元氏】
 要は,全体の入試制度をどこに焦点を当てるのかは難しいと申し上げています。層化して考えないと,やっぱりどうしても仕方がないところだと思います。ですので,私が申し上げられるのはとりあえず一般選抜のところですし,それが基本であるということに関しては今でも,時代が変わっても変わっていないだろうなということは思っております。ただし,それが通用しない層がある。それは当然だと思います。それはもう学士課程答申のところで述べられていることですので,今どうのという話ではないと思います。
【芝井委員】
 ありがとうございました。
【三島座長】
 それでは,委員の皆様,倉元先生からのヒアリングと意見交換は以上とさせていただきたいと思います。
 ただいま大臣がお見えになりましたので,一言御挨拶をいただきたいと思います。萩生田大臣,どうぞよろしくお願いいたします。
【萩生田文部科学大臣】
 皆さん,お忙しい中,第7回の大学入試のあり方に関する検討会議に御出席いただき,ありがとうございます。今回から数回にわたって外部の有識者の皆様からのヒアリングを行う予定と承知をしております。本日は,各分野の専門の方々に加えて,現役の高校生の皆さんから御発表いただけると聞いております。発表者の皆様に是非忌憚のない御意見をいただければと思います。
 なお,皆様におかれましては,来年度の大学入試や高校等での臨時休業が長期化した場合の対応について様々御心配をいただいていると思います。既に事務方からも説明があったと思いますが,私からも一言申し上げます。
 まず大学入試の対応について,当面受験生が大きな影響を受けると予想されるAO入試と推薦入試において配慮いただきたい事項について本日大学等に通知を発出したところです。一般入試も含めた大学入学者選抜全体の対応については,臨時休業等の状況等も見極めながら,受験生第一の立場に立って高校・大学関係者等と十分相談しつつ対応してまいりたいと思います。
 また,学校の臨時休業が更に長期化する事態を想定して,9月入学,9月始業を求める声が上がっていることは承知していますが,9月始業は社会全体に影響を及ぼすものであり,各方面との調整が必要な案件です。仮に我が国全体の問題として広く国民の間で認識が共有できるのであれば,私としては選択肢の1つではあると思いますが,いずれにしても子供たちのための最高の選択肢は何かということを第一に考えていくことが重要であると考えております。文部科学省としては,まずは新型コロナウイルスの早期の収束に向け,感染拡大防止の取組を徹底した上で,これまで行ってきている子供の学習の保障のための取組をしっかりと進めてまいります。
 それでは,本日も活発な御発表,御議論をいただきますように,どうぞよろしくお願いいたします。
【三島座長】
 大臣,どうもありがとうございました。
 それでは,次に進みたいと思います。きょうは,高校生からの御意見を少しいただきたいと思います。まず,一般社団法人日本若者協議会から推薦をいただいた,東京都立西高等学校3年,米本さくらさん,それから,山口県立岩国高等学校3年の幸田飛美花さんのお二人からそれぞれ7分程度で御意見の御発表をいただきたいと思います。その後,まとめて15分程度の意見交換を行いたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 それではまず,米本さん,どうぞお願いいたします。
【米本氏】
 御紹介にあずかりました,都立西高校3年生の米本さくらです。私からは,英語4技能試験と記述式問題について,アメリカへの留学経験も踏まえつつお話しさせていただきます。高校生からの視点ということもあり,足りない部分も多々あるかと思いますが,よろしくお願いします。
 ではまず,英語4技能試験についてです。1)番の民間試験の導入に伴う影響については,過去に指摘されてきたとおりかと思いますので,説明は省かせていただきますが,複数の特質も受検料も異なる試験から選択する難しさや,試験によっては数分で申込み定員に達するような体制,受験競争の前倒し化など,今回の民間試験導入に関して非常に混乱が大きく,私自身も周囲の友人も非常に民間試験に対して否定的な意見を持っているということがあります。
 資料の下に行っていただいてもいいですか。2)番までお願いします。ただ,4技能試験の導入そのものが高校の教育に起こした変化として,授業での各技能をバランス良く扱うようになったという声が他校の友人からは聞かれました。実践的に英語を使う教育の重要性は既に社会に浸透しているように思われますし,入試改革以前から私の学校でもオンライン英会話やALTの先生の授業がありました。ただ,やはり学校によって重視して教える技能にばらつきがあり,入試問題を解く授業ばかりが多く,英語でコミュニケーションを取る授業が少ない学校もあったそうなので,そうした学校も,入試を変えることで4技能のバランスを重視して構成するようになったのではないかと思います。ただ,そもそも大学入試のために授業を構成することがあっていいのかという疑問が残ることは否めません。
 ここからは,私の留学経験から少しお話しさせていただきます。今回の入試改革のポイントとして,真に使える英語というキーワードがあったかと思います。ただ,英語を使えるようになるには,4技能だけで分離して教えるのではなくて,複合的に活用する練習が必要だと感じています。これは話す練習の繰り返しから経験を積むことが何より大切です。
 次のページお願いします。また,留学を通じ,母語でない言語をツールとしてコミュニケーションする際に重要なのは,ためらわず自分の意見を主張しようという意思と積極性だと学びました。日本では,授業中,手を挙げて発言する生徒も少なく,主張することに抵抗感を覚える生徒が非常に多いです。これでは入試改革で4技能が授業で扱われるようになっても,話す練習をすることは難しいと思います。大学進学にかかわらず,多くの生徒が主体的に関わってくれるような授業,例えばアクティブラーニングというキーワードにもあるように,ディスカッションや,グループワークなどを含んだ授業を行えるような教育のあり方が,社会全体の国際競争力を上げるためには必要なのではないかと思います。
 では,英語4技能試験に関する私見としては以下の資料のとおりです。特に上の2つ,試験の一括作成と受検料の均一化は,今回の混乱を受け,多くの高校生が思っていることだと思います。また,今までの検討の推移を踏まえると,4技能全てを共通テストで測ることには無理があるのではないかと感じています。共通テストと個別試験の役割分担という問題もありますし,スピーキングについても,現状を踏まえると,今の入試で測ることは難しいように感じます。採点体制が確立するまでは国立大では扱わず,私立大でも資料に記載したような形がふさわしいのではないかと思います。
 入試がゴールではないと考えているので,試験内容のいかんにかかかわらず,学校では4技能全てを教える必要があると思います。学校での指導が確立していれば,入試で無理に4技能を導入し,高校カリキュラムを変化させたりしなくてもいいのではないでしょうか。また,主体的な環境,主体的に生徒が授業に参加できるような環境を作っていただきたいです。大学入試からトップダウンで教育を変えていくのではなくて,教育の見直しともっと並行しながら入試改革を行っていただきたいと思います。
 次のページをお願いします。続いて,2の記述式問題と思考力についてです。1)の問題点も過去に指摘されてきたとおりかと思います。高校生の間で非常に不安や不信感が大きかったというように記憶しています。また,そもそも思考力が短文記述で測れるのか,かえって思考が固定化されるのではないかという疑問も残ります。
 そこで,共通テストの科目からは少し逸れますが,思考力を測るにはもっとほかに方法があるのではないかと考えたのが,米国の大学のエッセイです。留学中,周囲にアイビーリーグに進む友人が多くいたのですが,その子たちと話していると,学力はもちろん,大学でのビジョンや学びたいことがしっかりしていたことに驚きました。米国の大学の多くは,SATとGPA,それからエッセイを提出して,面接を行います。そこで人間性や思考力も含め,大学へのモチベーションや社会への関心を判断するそうです。ペンシルベニア大に行った友人からは,エッセイを書く過程で受験する生徒と大学のマッチングがなされたり,学習への意欲が向上するという話を聞きました。大学側としても,論理的思考力や学習意欲を判断することができるということになり,準備や採点にそれぞれ負担はありますが,いい効果がもたらされています。
 それでは,記述式問題と思考力についての私見は以下のとおりです。受験者数の規模や作問・採点を考慮すると,共通試験ではなく個別試験で記述問題は行われるべきであり,役割分担が重要だと思います。また,共通テストの範囲内ではありませんが,思考力の評価はもちろん,生徒と大学のマッチングや生徒の将来のビジョン形成のためにも,エッセイ的な志望理由書の作成は拡大してもよいのではないかと思います。点数化はせずとも,1点刻みを見直して,その内容を選考の判断基準とするなど考えてみていただければ幸いです。
 今回の入試改革が教育そのものの見方の見直しはもちろん,進学する生徒にとって,大学入試が高大の連続した教育の中での通過点の1つになること,高校教育のゴールではなくなるということを期待しています。
 私からは以上です。ありがとうございました。
【三島座長】
 米本さん,どうもありがとうございました。
 それでは続きまして,幸田さん,よろしくお願いいたします。
【幸田氏】
 こんにちは。山口県立岩国高等学校3年の幸田飛美花と申します。私からは,3つのトピックに絞らせていただいて,高校生の意見を,拙い表現ではありますが,伝えさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 まず岩国高等学校の全校生徒数は各学年6クラス編成の700名前後,卒業後は地元の山口県付近や関西地方の大学へ進学する人が多く見受けられます。
 続いて,資料の編成についてなんですが,1ページ目は私個人の意見を書かせていただいて,2ページ目以降からは周囲の高3生に,1ページ目の内容に加え,記述式について,そして,大学入試が高校教育に与えている影響についてのアンケートを取ったその結果をそのまま掲載しております。本当にそのままの意見を載せているので,これらは高校生のリアルな声として受け止めていただけたらと考えております。
 スライドはそのまま1ページ目のままで大丈夫です。まず1つ目,共通テストの枠組みで英語4技能を評価すべきか否かということに関して,私は評価すべきではないと思います。まず受験者数が圧倒的に多い共通テストで,これまでのリスニングやリーディングに加え,ライティングやスピーキングをどういう形式で,又はどのような評価をするのかというのが疑問に思っています。そもそも共通テストの段階で4技能全てを評価する必要はなく,各大学が行う試験,いわゆる二次試験と言われるもので4技能を評価すれば,受験生の立場から言わせていただくと,もうそれで十分ではないのかと思います。
 続いて,2つ目です。民間英語資格・検定の活用の在り方について,私は活用すべきだと思います。ですが,それらの結果をどのように活用するのか,例えば加点形式なのか,又は換算方式なのかなど詳細を当事者である受験者とその関係者等に早い段階で確実に知らせるべきであると思います。というのも,今回英語民間試験導入が見送りになった原因の1つとして,全体的に詳細などのアナウンスが遅くなってしまって,その結果,当事者である私たち入試改革初年度の受験生が,表現は拙いんですけれども,さんざん振り回されたというふうになりました。ですので,やっぱり詳細を早い段階から明確に伝える体制が整うまで活用を導入すべきではないと思います。また,当事者である受験生が被害者にならないよう意識してほしいなと思います。
 続いて,経済的・地理的事情について。受検費用はともかく,地方在住者として声を大にして言いたいことは,民間試験が活用されるとなれば,地方にも受検会場を設置してほしいと思います。というのも,現状として,受検会場まで行くのに1時間以上必要であったり,又はそれ相応の移動費が必要になるということなので,やっぱり地方にも受検会場の設置,又は増やしてほしいと思います。
 続いて,3つ目です。教師の質の差。これに関しては,教師によって教え方や分かりやすさというのが学校内でも差を感じるものなので,やはりそこに書いてあるとおり,より意義のある公開授業や,又は質の高い教師の授業の公開を行ってほしいという要望があります。これらをすることによって,教師の質の地域差を感じる生徒の不安を少しでも減らすことができるのではないかなと考えております。
 続いて,4つ目です。英語に関する話がメインになってしまうんですが,グローバル化に伴い,これからはリスニング力とスピーキング力がよりメインに英語力が必要になってくる,又はもう既に必要とされているという時代になっていると思うので,私個人の意見として,入試改革以前に,教育そのものを改革する必要があると思います。例えば現状でいうと,授業というのは,英語の授業なんですけれども,入試対策がメインになってしまっているので,どうしてもリスニングやリーディングがメインになっているということが英語の授業での現状です。ので,やっぱり米本さんがおっしゃったとおり,大学入試というのはゴールではないので,そこを英語が育つ環境でスピーキング力を補う授業をもっと取り入れてほしいなと思います。
 2つ目の民間の試験の活用の在り方について,付け加えて不安に思っている点というのがあるのですが,民間試験が活用されるとなれば,当然多くの人が大学入試という枠組みを意識してしまって,これまで個人の意思で行ってきたものが急に義務化されたというふうに感じてしまいます。その結果,受験生個人の主体性に欠けてしまうのではないかなというふうに考えております。ですので,やはり民間試験の活用の在り方につきましては,よくよく検討していただきたいなと思うところであります。
 最後になりましたが,当事者である高校生のリアルな声が少しでも多く届いたらなというふうに願っております。御清聴ありがとうございました。
【三島座長】
 幸田さん,どうもありがとうございました。本日は,日本若者協議会から推薦のお二人から御意見をいただきました。高校生も含め広く一般に対しては,別途ウェブによる意見募集を検討してございます。委員の皆さんには,お二人の意見に対する御質問等をお願いできると思います。また,高校生お二人は,お答えはできる範囲で,答えられる範囲でしていただければ結構かと思いますから,気楽にお答えください。
 それでは,質疑どうぞ。手を挙げていただければと思います。末冨委員,どうぞ。
【末冨委員】
 日本大学の末冨と申します。お二人ともに質問があります。質問は2つです。
 1つ目は,受検料の負担とか,あるいは受検会場まで行く費用の負担について,皆さん方の周りで心配していらっしゃる方というのがどういう感じで心配していらっしゃったのかなと。御存じのケースがあれば教えていただきたいということです。
 もう一つは,皆さん方の高校生の意見を聞いてくださいというふうにお願いした1人は私ですけれども,そもそも英語民間試験や記述式テストの導入の経過を非常に不安な思いで見守っておられたと思うんですけれども,過去に遡ったときに,そのプロセスにおいて文部科学省が高校生の声を聞くべきだったかどうかということ,この2つについて御意見お教えいただければと思います。
【三島座長】
 どちらからでもどうぞ。
【米本氏】
 では,発表順で私からお答えさせていただくのでいいですか。まず1つ目の受検料・交通費についての不安ということでしたが,私は今東京に住んでいて,どの民間試験もどこでも受けられる環境にあります。ただ,香川の離島に住んでいる友達は,受けられないことはないけれども,圧倒的に会場までの時間が違うよね,という話をしていました。やはりそういった地方の差はすごくあったと思います。
 あと,2番目の,すみません,一部音声が不明瞭だったところがあって,ちょっと……。
【末冨委員】
 もう一度言いましょうか。
【米本氏】
 多分大丈夫だと思うんですけれども,ちょっとずれていたらすみません。まず前回の入試の改革までというところで,今回こうやって一度,頓挫という言い方が正しいのか分かりませんが,そういう形になってから今こうやって聞いていただいていると思うんですけれども,それより前に高校生の意見を送るプラットフォームがあったかと言われると,なかったと思うんですね。
 ただ,私たちは今まで4技能試験とか受けてきていなくて何も分からない状態で,3年,2年の辺りに急に,これ変わるからね,みたいな感じですごく戸惑いがあったので,今どういう状況で,高校生がどういう教育を受けているかというのを,実際に声は伝えられなかったとしても,高校にアンケートとかを取っていただけるだけでも違ったかなというふうに思います。以上です。
【三島座長】
 それでは,幸田さん,どうでしょう。
【幸田氏】
 私から,まず1つ目の受検料・交通料に関してのことなんですが,私は山口県在住ということで,今行われている英検のS-CBTという試験があるんですが,その受検会場が,広島か,又は山口県の中央の方まで行かないと受けられないという状態で,どちらにせよ受検会場に行くまで1時間以上必要であったり,又は島から来る子もいるので,その子たちに関しては本当にもう受検会場に行くまでも何時間も掛かったりだとか,あとは,先ほども言ったんですが,移動費も掛かるので,そういうところの差をできるだけなくしていただいたら,受検者としても不安がなくなるというか,そこについての心配はなくなるかなと思います。
 2つ目の受験生,高校生の声を聞くべきだったのかということに関して,これは先ほど米本さんもおっしゃったのですが,私たちが高校生になって,3年生になったらセンター試験があるということで,そういう意識で高校に入っていて,なのに,急に2年生,3年生の辺りで入試がちょっと変わったり,あと,英語の4技能のテストも入るんだよみたいな感じで伝えられて,当事者の意見を聞かずに,受験生の意見を聞かずにそういうことがあったので,当然,当事者である受験生が一番戸惑うというか,焦ってしまうんですね。ただでさえ受験に対しての不安があるのにもかかわらず,当事者である受験生の声を聞かないというのは控えていただきたいというか,やっぱり高校生の声を1番に聞くべきだと私は思います。以上です。
【末冨委員】
 ありがとうございました。私も山口県出身なので,いかに会場が遠いかはよく分かります。ありがとうございます。
【幸田氏】
 ありがとうございます。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,ちょっと時間が押しておりますが,島田委員の手が挙がっておりますので,なるべく手短に質問していただければと思います。よろしくお願いいたします。
【島田委員】
 ありがとうございます,御発表ありがとうございました。幸田さんの資料の7ページに,大学入試改革が高校教育に与えている影響という内容があります。入試改革によって授業がこういうふうに変わったと思うというリアルな声をお伝えいただいているんですけれども,幸田さんは,これはポジティブに捉えているのか,それとも,ネガティブに捉えているのか,これはどちらなのでしょうか。教科によって違うかもしれませんし,担当する先生によっても違うかもしれませんが,そのあたりをお話しいただければと思います。よろしくお願いします。
【幸田氏】
 全体的になんですけれども,ポジティブに捉えているかと言われたら,ポジティブに捉えていると言えるんですけれども,やっぱり何か,大学入試によって高校の授業が入試対策メインになるということはどうなのかなというふうに個人的に思っています。ですので,今,現状として例えば英語の授業であったら,リーディングとリスニングメインになっているということなので,でも,これからはやっぱりスピーキング力というのも必要になると思うから,そこも鍛えてほしいなと思うので,偏りが授業に出てくると思うんですね。ですから,ポジティブかネガティブかと言われたらどっちとも言えないみたいな感じになるんですけれども,大学入試によって授業に偏りがあるのはどうかなというふうに思います。
【三島座長】
 よろしいですか。
【島田委員】
 ありがとうございました。
【三島座長】
 それでは,米本さん,幸田さん,どうもありがとうございました。
【米本氏】
 ありがとうございました。
【幸田氏】
 ありがとうございました。
【三島座長】
 それでは,次のヒアリングに参りたいと思います。次は,テスト理論という分野から,東京大学名誉教授の南風原朝和先生から15分程度で御発表いただき,その後15分程度の意見交換を行いたいと思います。南風原先生,どうぞよろしくお願いいたします。
【南風原氏】
 よろしくお願いいたします。スライドお願いします。
 私からは,「大学入試改革」のここまでの振り返りと若干の提言ということを申し上げたいと思います。
 次のスライドお願いします。この図では,「大学入試改革」の顛末ということで,特に共通テストへの英語民間試験と記述式問題の導入が頓挫した,その原因について考えたことをまとめてみました。これらの2つの改革は,右の方にありますように,萩生田大臣の決断で実施直前に見送りになったわけですが,恐らく仮にあのまま実施していたら,大きな混乱になっていたと思います。そのようなことに至った直接の原因として,その左側にある2つの原因を挙げました。1つは,改革の理論的な基盤が脆弱で,制度設計の詰めも甘かったこと,つまり,改革案自体が地盤が弱く,崩れるべくして崩れた砂上の楼閣であったということです。そして,もう一つは,工程の見直しや後戻りをしない行政のやり方というのがあったかと思います。要するに,改革案が砂上の楼閣であったのに,それを止められない力学が働いていたということだと思います。
 次お願いします。ここでは,今申し上げた2つの原因の更に元になる原因ということについて検討してみました。まず理念やエビデンスの検証が十分でなかったのではないかと思います。例えば思考力・判断力を重点的に評価するといいますけれども,実はこれらは非常に曖昧な概念で,例えば学校の先生が「あなたのクラスの生徒の思考力・判断力が低い」と言われても,何をどうしたらいいか分からない。また,生徒の方も,思考力・判断力というものをどうやって高めたらよいのか,雲をつかむような感じではないかと思います。こういう曖昧な概念を共通テストの主眼に据えて,それを評価するために例えば記述式を導入するといっても,なかなかその道筋は見えてこないのではないかと思います。
 次のスライドお願いします。元になる原因の2つ目のグループですけれども,文科省の会議から改革案に慎重な立場の専門家が外されて,次第に同質性の高いグループが作られていった。また,これらの会議の一部を非公開にしていった。さらには,学会等からの提言をほとんど無視してしまったということを挙げました。また,先ほど高校生からもありましたけれども,実はパブリックコメントも実施されていて,そこには誰でもコメントを寄せることができて,たくさんのコメントが寄せられたんですけれども,そのパブリックコメントに対して真摯に向き合う姿勢はほとんど見られなかったように思います。今,文科省は,対話的で深い学びというものを推進していますけれども,今回の経緯は,対話的で深い学びを自ら放棄して,その逆を進んできたということが言えるのではないでしょうか。
 次のスライドお願いします。原因の3つ目として,本来大学入試の主体となるべき大学が,例えば共通一次試験の開発のときに比べて非常に影が薄く,受け身になっていたことが挙げられると思います。スライドでは東京大学の迷走を例に挙げましたが,国立大学協会においても2017年6月には,文科省から出された「高大接続改革の進捗状況について」に対する意見として,進行中の改革案に対し様々な懸念を表明していました。しかし,その僅か5か月後の11月には,それらの懸念がほとんど解消していないにもかかわらず,英語民間試験や記述式の導入に賛成するという方針を打ち出しています。
 その間,全ての国立大学に意向調査は行っていますけれども,回答の期限が僅か1週間,非常に大きな問題だけども,僅か1週間しか与えられておらず,各大学で,東大含めてまともな検討を行う余裕がありませんでした。恐らくそのときは,2020年という期限ありきで国への協力姿勢を示したものと思いますけれども,やはりもっと主体的で責任のある対応ができたのではないか,あの時点で国大協から出された懸念についてしっかりと対応することによって,その後の混乱を避けることができたのではないかと考えています。
 次お願いします。これは4年前,2016年ですけれども,そこで「記述式の導入を止められなかったときの攻防(?)」というふうに題しましたけれども,私がシステム会議の委員であったときの発言,そして,それを受けての安西座長の発言です。私は,記述式を導入することでこういういいことがあるといろいろとメリットが出されていたわけですけれども,実際に導入しようとしているのは条件付き記述式で,それはそのメリットをかなえるためにはかなりずれている,乖離しているということで,その形での記述式を導入することに反対の意見を述べました。それを受けての安西座長の発言は,「ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。」というもので,完全にスルーされて,そのままとなりました。
 結局,その日が高大接続システム改革会議の最終日で,その後,少人数の検討・準備グループが立ち上げられ,これが非公開,そして,その中で記述式問題の導入の方針や,新たに英語民間試験導入の方針が固められていきます。そのグループには,システム会議の委員は何人か残りましたけれども,私は外れました。結果的にテスト関係の専門家のいない会議でテストに関していろいろなことが決められていくことになりました。
 次お願いします。ここから数枚,今回の改革案のうち,現在まで見送りとなっておらず,今度の2021年度の入試の共通テストで実施されようとしているものについての話題です。何かといいますと,これまでセンター試験の英語で長年出題されてきた発音・アクセント問題と語句整序問題,並べ替え問題を廃止することになっているんです。新しい共通テストではこれらを出題しないという方針となっています。この件は英語民間試験や記述式のように広く知られていないかもしれませんが,私は今回の入試改革を筋の通ったものにする上でそのまま見過ごすことはできないと考えていますので,少し時間を掛けてお話ししたいと思います。
 この問題は,英語の出題内容という,そういう意味では小さな話ですので,システム会議とか,その後の検討・準備グループでは話題になっていません。これが話題になったのは,スライドにあるように,英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検討試験の活用促進に関する連絡協議会でした。その中で安河内哲也委員,この方はその前の英語教育の在り方に関する有識者会議からずっと委員をされていますが,その安河内委員が,発音問題や並べ替え問題は,スピーキングやライティングを間接的に測定しようとするものだが,悪いウォッシュバック効果,つまり,悪い波及効果があって教育に悪影響を与えていると発言されています。
 これを受けて,当時,文科省から大学入試センターに異動されていた大杉住子審議役が,安河内委員の発言に沿った形で,2018年2月のプレテストではそれらの発音問題,語句並べ替え問題を出題しない方向で進めているという趣旨の答弁をしていますけれども,ここでの説明を見ても,またそれ以前の議事録を見ても,なぜこれらの問題を廃止する必要があるのかという具体的な理由が見えてきません。
 次お願いします。これは先ほど言及のあった2018年2月のプレテストで,先ほどの審議役の言葉どおり,発音問題,語句整序問題が外されたことについて,有識者からいただいたコメントとして大学入試センターのサイトに掲載されているものです。吉田研作先生と松本茂先生から,非常に良い,発音等の問題を排除できたことは評価したいというふうにコメントをされています。このお二人の先生は,安河内先生と共に英語関係の文科省の会議にずっとおられた方々で,こういうコメントはもともとから予想されたものです。これを恭しくといいますか,有識者からいただいたコメントとして掲載しているのを見て,何か大学入試センターも最近変わったな,学術的な感じが薄くなったなという感想を持ちました。ちなみに,この中の松本先生のコメントにもあるように,発音問題や語句並べ替え問題を廃止する背景には,英語民間試験,4技能試験を導入するからということがあったわけです。
 次お願いします。これは萩生田大臣が民間試験導入を見送ると発表された後です。発音・アクセント問題などを廃止する方針の背景にあった民間試験の導入が見送られて,ではどうするかということについての大学入試センターの決定です。結論を言えば,民間試験の導入が見送られても,発音・アクセント問題,語句整序問題を廃止する方針は変更しないというものです。その理由は,これらの問題が,これまで英語教育の観点から課題として指摘されていたことを踏まえたものであるということで,私にはこの説明では具体性がなく,ほとんど理解できませんでした。しかもこの重要な会議が,実際には集まってもおらず,書面審議で簡単に済まされている。センター試験で長年出題されてきたものを廃止すること,それは根拠があればよいと思うんですけれども,それがこんなふうに簡単に決められるものなのか,こういった試験の主体となるべき大学というのはどこにいるのかということを思いました。
 次お願いします。これは前回のこの会議で渡部良典委員が提出された資料の一部で,話すことというのが複雑なプロセスを経る作業であるとして,そのプロセスのモデルの例を示したものです。このプロセスの中には,単語の文法的特性に応じて文構造を作り出すということが書かれていて,これはまさに言葉を正しい順序に配置する語句整序のプロセスではないかと思いました。
 あと,これは私見ですけれども,発音・アクセント問題や語句整序問題は,よく,話す力・書く力の間接測定というふうに言われますけれども,私はこれらの問題は間接測定である以上に,話す力・書く力を育てる上での土台となる基礎知識という意味があると考えています。これらの知識を土台にして,話す経験,書く経験を積むことによって話す力・書く力が付いてくると考えていて,高校卒業レベル,大学受験レベルでは,その時点でどれだけ流暢に話せるかということよりも,これらの土台となる基礎知識をどれだけしっかりと身に付けているかを評価することが,その後より高みを目指す上でも大事ではないかと考えているところです。
 次お願いします。これは参考までに,実際にセンター試験の問題を作っておられる問題作成部会の先生方がこれらの問題をどのような狙いで作っているかを示したものです。ここには,筆記試験で発音やアクセントを問うことの意義は,スピーキング技能につながる基礎的な音声的知識を見ること,そして,スピーキングへの土台を築くという言葉があり,私の考えとも重なるように思いました。
 次お願いします。これも参考ですけれども,日本言語テスト学会の学会誌に掲載されている論文で,筆記による発音・アクセント問題の妥当性に関する検証を包括的に行ったものです。この研究の結論として,パフォーマンステストを用意しないまま発音・アクセント問題を廃止するというのは説得性がない,それから,波及効果の立場からも,これらのテストの意義はあるかもしれないということが述べられています。この問題について,私はともかく決め方,決まり方に疑問があるところなんですけれども,また,英語関係者の中でもいろいろな見解があると思いますが,ここに例を挙げたような実証的な研究,また,大学入試センターが持っている豊富なデータも活用して,是非専門家の間でエビデンスを基にしっかりと議論をし,学術的にも納得のいく方針を定めてほしいと思います。
 次お願いします。ここは再び,大学入試改革の大きな問題に戻って,特にこの会議に関わることですけれども,今後の検討に求められることを挙げました。といっても簡単なことで,冒頭で図に示した今回の頓挫の要因を見て,その真逆を行くということ。例えば,理念は正しいが,制度設計が悪かったということをよく言われますけれども,本当に理念は正しかったのか,理念と言えるようなしっかりとしたものがあったのかというところから見直したい。それから,エビデンスの活用ということで,大学入試センターの研究開発部には長年にわたって蓄積した豊富なデータ,また,専門性があります。それを活用して,また,関連学会等にはむしろこちらから提言をお願いする。そして,大学には主体性・専門性を発揮していただく。もしこれに不当に介入するものがあれば,それを排除するということであります。
 次お願いします。今申し上げたような慎重な検討をしていたら,とても新しい学習指導要領で学んだ高校生が受験する2025年度入試には間に合わなくなるのではないかという心配があるかもしれません。多分間に合わないと思います。しかし,何が何でも間に合わせるということになったら,今回の失敗をまた繰り返すことになると思います。
 発想の転換というか,少し引いて考えると,大学入試は,大学で学ぶのに必要な力を評価するものですけれども,大学で学ぶのに必要な力というのが,高校の学習指導要領が変わったからといって,それによってすぐに変わるものではないと思います。学習指導要領の変更に合わせて大学入試をその都度大きく変えていくというのは,日本の高校の新卒者だけを考えてのことで,それ以外にも,数年前に卒業した既卒者や,日本の高校以外のカリキュラムで学んだ受験者もいるわけですから,むしろそうした多様性を大事にするためにも,大学入試を急ハンドルを切るように変えるのではなく,学習指導要領の変更にも緩やかに対応,緩やかに接続するのがよいのではないでしょうか。
次お願いします。ですので,この会議では,最低限決めなければならないこと,無理なく決められることとそれ以外のことを峻別して,時間が掛かる内容については,拙速とならないよう時間を掛けて検討する土台を作っていただきたいと思います。
 次お願いします。ここから最後まで4枚のスライドは,今回のヒアリングに当たって文科省の方からヒアリング項目の案として示されたものがありますので,それの幾つかに対して見解を短く回答したいと思います。
 まず2つ目の丸で,共通テストと個別入試の役割分担については,大学が多様化する中で,その入試の共通部分たる共通テストにあれもこれも盛り込んで肥大化させるべきではないというふうに考えています。そもそもこの一連の入試改革,高大接続改革の議論の当初は,センター試験が肥大化・複雑化して,問題冊子の配付ミスまで生じている,大学等の負担も限界に近付いている,何とかスリム化しなければ,という問題意識が共有されていたはずです。そのことを再確認することが必要だと思います。
 次お願いします。大学入試での英語4技能の評価について,マル2は繰り返しになりますけれども,高校卒業段階で英語を話す力の出来不出来で合否が左右されることよりも,個別はちょっと別ですけれども,特に共通テストでは,話す力・書く力の土台となる基礎力をしっかり評価することが大事ではないかと考えています。それがより高いレベルの4技能の育成につながると考えています。
 マル5の個別入試への国の支援の在り方については,その支援というものが介入や誘導とならぬよう,大学の主体性を尊重してほしいと思いますし,大学はその尊重,期待に応えてほしいと思います。
 次お願いします。思考力・判断力・表現力の育成・評価ということについてです。これも一部繰り返しになりますが,思考力・判断力というのは概念規定が曖昧で,指導の目標とするにも余り適切ではないと考えています。では,その代わり何を目標とするかということですが,私が大事だと思っているのは,深い理解を伴う知識。そういう深い理解,質の高い知識を得るには,日頃からの粘り強い思考が必要になります。テストで思考力を測るというと,1問に付き数分間で高速に働く,クイックに働く思考を想定しがちですが,学校教育でもっと大事なのは,日頃から考え続けること,考え抜くことではないか。だとしたら,その成果として得られる深い理解を評価するのが教育的であり,かつ評価方法としてもすっきりしてよいのではないか。そこに思考というものも反映されているというのが私の考えです。試験時間に高速で働く思考を測ろうというのは,それ自体大変難しく,出題者を悩ませます。その方針で行くとしたら,今後,入試センターも大変苦労されると思いますけれども,これは長く維持できる方向性ではないように思います。
 次,最後のスライドになります。お願いします。諸外国で参考になる事例はあるかという問いについてですけれども,一例として,SATのWriting and Language Testを挙げました。WritingとLanguageのテストなんですけれども,これは記述式ではなく,多肢選択で書く力を評価しようというものです。具体的には,文章を推敲する力を評価しています。これは良い文章を書くことができる人には自然に答えられるもので,逆に文章の苦手な人には難しく,そういう意味でテストとして妥当性があるように思いました。書く力の評価だから記述式でというふうに短絡的に考えずに,多肢選択式を工夫することによって書く力に迫るということも大事な努力の方向ではないかと思います。
 私からの発言は以上になります。どうもありがとうございました。
【三島座長】
 南風原先生,どうもありがとうございました。それでは,御質問,御意見がございましたら,手を挙げるのボタンを押していただければと思います。末冨委員,どうぞ。
【末冨委員】
 ありがとうございます。大変勉強になりました。この会議が最低限決めなければならないことについて私自身もいろいろ模索しているんですけれども,1つはやはり理念が膨張し過ぎている。先ほどの学力の定義なんかもそうなんですけれども。という状況があるときに,エビデンスやリサーチの活用の仕方をいかに高校の実践,それから,大学での実践を豊かにするふうに使うかというような原理原則とかルールの考え方が大事なのではないかなというふうには思っているわけです。
 例えばですが,今の9月入学・始業の話も降って湧いたように起きているわけですが,何回もこの国で議論されてきたことを急に思い付きで教育の世界に突っ込んでくるようなやり方というのが恐らく入試も共通しているんだろうと思います。これについては意見書の方で後で説明をさせていただきますが,南風原先生自身は,最低限決めておくべきルール,特に私自身は同じミステイクを繰り返さないということがすごく大事であるというポイントがあろうと思うのですが,この考え方についてはどのように思われますでしょうか。
【南風原氏】
 新しく学習指導要領が変わるので,2025年度入試には再度大きく変える,例えば記述式を国語,数学で小さく導入しておいて,25年度には大きく入れていくということが言われていたわけですよね。そのように25年度入試に向けていろいろと言われてきたことの中で,いや,まだまだ慎重さが必要だというものは置いておいて,それでも25年度に向けてやらなくちゃいけないのは何なのか,それはできるのかということ,そういったことの峻別が必要だという,そういうレベルでの提言をいたしました。
【末冨委員】
 ありがとうございます。プラクティスベースの非常に大事なお考えだと思います。
【三島座長】
 次,吉田委員,どうぞ。
【吉田委員】
 ありがとうございます。最初に南風原先生に一言御質問したいんですが,きょうのこのお話で行くと,そうすると,先生のお考えでは,4技能入試というか,4技能を学ぶ必要,それから,大学に入るまでは,17ページの2番等でもおっしゃっているように,それとか,10ページでもおっしゃっていましたけれども,スピーキング力というのは必要ないということに受け取ってよろしいんでしょうか。
【南風原氏】
 いえ,全然そういうことではありません。私が問題に思ったのは,2017年に共通試験として複数の民間試験のどれでもいいので受けることという案が出されたのが最初で,そこから問題を感じ始めたんですね。テストとして考えたときに,これは余りにも乱暴だと思いました。そこから私は問題意識を持ち続けてきたわけですけれども,今先生が言われた,4技能を育てるということについてはもちろん全然反対ではありません。
 ただ,4技能を,高校レベル,大学レベル,社会人レベルで本当に高めていく,本当に力を付けていくにはどのような順序立てで指導していくのがよいのか,その辺りについては英語の専門家からの意見もありますので,そういったことも踏まえながら,例えば,早い段階からスピーキングを入れるのがよいとも限らないようなので,その辺りの知見を整理してやっていくということが必要だと思っています。
 東京大学の英語教員の話を聞いても,東大に入ってくる学生たちの本当に突き詰めて読む力というのが以前に比べて劣化しているというのです。これまでずっと,この十数年以上オーラル重視で来た結果ではないかとも言われているので,その辺りを検証して,もしそういった基礎力が落ちているのであれば,そのような緩い土台の上にスピーキングを積み上げても,これは本当に世界で戦えるような英語力にはならないと思います。本当に高いレベルを目指すにはどういう教育が必要で,大学では更にそれをどのように育てていくのかということを専門家の意見を聞きながら組み立てていくべきだと考えているんです。
 例えば中学,高校では英語で授業をすべきだというふうに言われますけれども,それも本当にそうなのか,どのレベルの子にも本当にそうなのかといったことも検証していない。小学校の英語教育の導入についても同様です。そこのところ,本当に高いレベルの4技能を育てる,恐らく吉田先生もゴールは同じだと思うんですけれども,その方法について専門的な意見をしっかりと踏まえて教育,そして,入試というふうに組み立ててほしいと思っているんです。
 入試での英語4技能については,これは是非必要だという大学もありますし,そうでないという大学もあると思います。そこはそれぞれポリシーがあると思いますので,それはよいと思います。それから,民間の試験はそもそも入学者選抜のための試験ではなく,先生も以前指摘されていたと思いますが,本来,資格・検定試験ですよね。それを中学,高校で活用しながら教育に生かしていく,これは全く問題ないと思います。私が最初に問題視したのは,複数の目的の異なる資格・検定試験を横並びにして,どれを受けてもいいですよ,それが共通テストですと言われたときに,これは試験として余りにも乱暴だというところから問題意識を持ち始めたところです。
【吉田委員】
 申し訳ございません。先生,今回,今のお話を伺っていると,大学教授の立場でお話しなのかもしれませんけれども,今回わざわざ先生の資料にもお書きじゃないですけれども,先生は現役で今,広尾学園の中学・高等学校の校長をなさっていますよね。そういう中で広尾学園の教育で特に英語教育に関しては,聞く,話す,プレゼンテーションをする,対話する,読む,書くの5技能をバランス良く身に付けるため,英語は実技教科という意味を持ち,英語を実際使うことを重視しています。年に5回行うスピーキング試験,これは中1から高2,PLT,授業中の英語発表などの機会を通し,生徒たちは使える英語を身に付け,中学3年本科コースでは,卒業英語プレゼンテーションを行います。また,生徒たちの英語力を測る客観的な判断材料として,毎年3月にGTEC for STUDENTSを実施していますということが英語科では書いてありますけれども,それだけのことを先生なさっているのに,今おっしゃっていることと,私や御自分の学校での教育というのは別なのかどうかを教えていただきたいんです。
【南風原氏】
 ありがとうございます。広尾学園では今現在27名の外国人の教員がいて,コースによっては英語以外の教科も英語で授業をする,そして,海外への進路を開くというようなことで,かなり特別な狙いを持って英語教育を実施しています。なので,民間試験以外でもスピーキングのテストを日常的にやっている。これは1つの学校のやり方としてあってよいと思うし,私もその狙いに合わせて更にこれを深めていくということでやっています。それぞれの学校がそれぞれの教育方針を立てて努力していくということ,それは良いことだと思います。
 私が問題にしたのは,大学の共通試験で品質がばらばらな,目的がばらばらなものを並べて,いろいろな不公平がある,また,採点の精度も定かでない,そのような共通試験は危ういのではないかということで見直しをお願いしたというところであります。それぞれの中高でのそれぞれ特色のある教育はどんどん進めていっていただきたいと思いますし,広尾学園もこれまで以上にまたそういう特色を出していきたいと考えています。
【吉田委員】
 ありがとうございます。広尾学園さんは,我々にとっては,ICT教育,それから,英語で授業を行うという,そういった部分でも本当に先進的な学校として進めていらっしゃいます。それこそ今の高校3年生が中学校1年生に入るときに,英語4技能,それから,思考力・判断力・表現力といった3要素,そういったものをやるんだよと言われて中学1年に入った子たちが今,高3になっていると思うんです。その高3の生徒たちの立場になったときに,先生の今の御意見というのは,今の試験に対して,私はちょっと子供たちに対してかわいそうなんじゃないかなと思うのと,それと,先生があえてここに広尾学園校長と入れない意味も,私は同じお仲間として非常に寂しい気がするんですが,是非教えていただいて終わりにしたいと思います。
【南風原氏】
 広尾学園という名称が肩書に入ることも入らないこともありますけれども,きょうの話はこれまで大学人としての立場でずっとしゃべってきたことの延長なので,今回もそういうふうにしています。
 それから,英語については,入試を変えるよりも,やっぱり教育を充実させるべきだということをずっと考えていまして,そういう意味では広尾学園は,必要に応じて少人数にしたりというようなことで,英語教育のための環境を整えてやってきた。そういう教育を,今回の入試改革のことが出る前からやってきています。それなりに力も付いてきていると思いますけれども,それが例えば共通試験で民間試験が課されないから生徒たちにとってどうこうというようなレベルではないというか,それを超えたところで,もっと高いものを目指して研さんを積んでいるところです。
【三島座長】
 それでは,ほかに手が挙がっていないようでございますが,よろしゅうございますか。
 それでは,南風原先生,どうもありがとうございました。
 ここで大臣が公務のため退席されます。大臣,ここまでの有識者の皆様からの御意見を聞かれて,もし御感想がございましたらどうぞ。
【萩生田文部科学大臣】
 本日は,倉元先生,また,米本さん,幸田さん,南風原先生から様々な観点の御発表をいただきました。ありがとうございます。またこの後も新井先生,大森先生から御発表があると思いますけれども,私,申し訳ないんですが,別な会議に出なければならないので,後ほど議事録かビデオで拝見させていただきたいと思っています。
 本検討会議に御参加いただいたことに改めて感謝申し上げるとともに,委員の皆さんにおかれましても活発な意見交換をいただいて感謝しています。大学入試の在り方については,高校生,保護者の皆さんをはじめ多くの国民が関心を持っています。現下の新型コロナウイルス感染症対策にしっかりと取り組むと同時に,本検討会議の議論も着実に進めていく必要があると考えております。これからしばらくは長時間の外部ヒアリングが続くことになりますけれども,委員の皆様には引き続き活発な御議論を賜りますようによろしくお願いしたいと思います。引き続きどうぞよろしくお願いします。
【三島座長】
 大臣,どうもありがとうございました。
 (萩生田文部科学大臣退席)
【三島座長】
 それでは,次に参りたいと思います。次は,記述式の問題につきまして,国立情報学研究所社会共有知研究センター長の新井紀子教授から15分程度で御発表いただきたいと思います。
 なお,新井教授からの御説明資料のうち,「大学生数学基本調査」に係る部分の公開の取扱いにつきましてお諮りいたします。委員の皆様には,資料の本体と共に実際の答案例も含めてお配りしておりますが,個人の答案ですので,本検討会議の運営要領の第4条の規定に基づき,答案部分のみは非公開としたいと思いますが,よろしゅうございましょうか。
 それでは,そのように取り扱いさせていただきたいと思います。
 それでは,新井先生,どうぞよろしくお願いいたします。
【新井氏】
 どうぞよろしくお願いします。新井紀子でございます。聞こえておりますでしょうか。では,お話をさせていただきます。
 私は,国立情報学研究所の社会共有知センターのセンター長・教授をしておりますが,同時に人工知能の,ロボットは東大に入れるかというプロジェクトを率いたり,汎用的な読解力を測定するリーディングスキルテストの開発に携わっております。その経験等から今回の資料をまとめております。
 では,次のページお願いします。私は,センター入試に関して,多くの国民が認識のアップデートをする必要があるというふうにまずは考えております。頓挫してしまったこのたびのセンター入試改革については,余りに理念が先行したことと,センター入試を取り巻く状況認識が実は実態と有識者あるいは国民との間がずれていたことが大きな問題だったのではないかと考えております。
 御存じのとおり,来年2021年以降,大学入試の倍率というのは1倍を切るという見込みになっています。ということは,一部の大学を除きますと,大学入試は1点刻みの競争ではなく,むしろ倉元先生もおっしゃったように,教育機会に変容しているということを認識する必要があろうかと思います。また,センター入試といいますと,国立大学というのがすぐ話に出てくるんですけれども,今,実態としては,メインの利用者は,数字上,国立大学から私立大学にシフトしています。私大のセンター入試利用受験が受験者のボリュームゾーンだということがございます。
 もっと大きな問題は,センター入試の成績がほとんどの科目で,正規分布ではなくて二こぶラクダ化しているという問題があります。これはどういう意味かといいますと,成績上位層,つまりは,国立S群と呼ばれているような大学の受験者については易し過ぎ,一方でボリュームゾーンである私大偏差値50プラスマイナス10ぐらいの層には難し過ぎる。なので,センター入試の成績が二こぶラクダ化している。全ての層の能力を判定するには,項目応答理論,IRTが効果的だということは多分南風原先生もおっしゃると思うんですけれども,これ,問題のa値とかb値等を決定するには,SATやTOEFL同様,事前に多数の高校生に解いてもらう必要があります。つまり,問題をばく露しないといけない。CBTが必須になることもあり,今,現実的ではないというふうに思います。
 ということで次に言いたいのは,倉元先生がされているような,東北大学のような丁寧な記述式試験を別途課すことができる国立大学向けではなくて,センター入試のみで入学する可能性が高い受験者,特に私大の偏差値50プラスマイナス10に対して適切な出題ができているか,適切な教育機会提供になっているか,それに貢献しているかということを私は議論するのが非常にプラクティカルだと思っております。
 次のページお願いします。記述式導入への問題意識を私が持ったきっかけは,私が委員長を務めておりました日本数学会の大学生数学基本調査,これは2011年に行いました。これは委員の皆様には全部の資料,概要資料と本体資料をお送りしています。これ,6,000人以上の大学新入生を対象として,90の大学の御協力をいただきまして行った調査です。この中で,記述式の数学入試を経ていない大学1年生における,極めて初等的な問題についての数学的説明力の欠如が大きな問題になりました。
 お手元の配付資料の中の非公開資料の答案をごらんになっていただけますか。この答案には,これ,実は,本物の基本調査は数学会の許可がないと出せないので,前年度に行ったプレ調査の答案が出ています。これは私大の教育学部のちょうど偏差値が50ぐらいの生徒さんの書いた答案をお出ししています。これは実は同じクラスの答案なんです。ですので,偏差値の違いはない。ですけれども,ごらんになっていただくと分かるように,例えば「y=-x2乗+6x-8のグラフはどのような放物線でしょうか,重要な特徴を文章3つで答えてください」というような問いに対して,「横に4,縦に2」とか,「左上」とか,「大きい」等,主語がない,単語だけの,文章ではない回答が記述式を経ない学生に続出しました。特に私大教育系において深刻な誤答が多かった。原因として,アラカルト方式導入への過剰な最適化であったり,穴埋め式への過剰最適化等があったと思います。
 次,お願いします。もう一つ,記述式導入への問題意識としては,私が行っている汎用的基礎的な読解力を問うリーディングスキルテストをやって感じたこともありますし,その中で多くの私大の偏差値50プラスマイナス10ぐらいのところからヒアリングをした結果です。大学全入時代です。選ばなければどこかの大学に入学できるということで,リメディアル教育が必要な大学生が増加しています。これは何かというと,学ぶスキルが欠如しているんです。知識が足りないのではなくて,学ぶスキルそのものが欠如している。例えばシラバスが読めないので単位の取り方が分からないとか,講義を聞いてノートを取るということができないのでノートを取れないとか,予習・復習を自力でできないとか,指定教科書が読めない。あるいは,大学における不登校率・退学率が増加しています。また,資格取得系大学,例えば薬学部,看護学部等で,卒業時国家試験が取得できないという問題が起こっています。
 次お願いします。読解力の実態を私たちが20万人で調べた結果でお見せします。これは一部なんですけれども,これはよくいろいろな本とか新聞でも取り上げていただいている問題ですけれども,これは出典は中学校の英語の教科書の註の文章です。「Alexは男性にも女性にも使われる名前で,女性の名Alexandraの愛称であるが,男性の名Alexanderの愛称でもある。」という文章を読んで,Alexandraの愛称は何ですかというふうにただ聞いただけのことです。答えはここに書いてあります。当然Alexが正答なんですけれども,そして,AIももちろんこれは答えることができるんですけれども,中学生の平均正答率が38%しかありません。高校生も3人に1人が間違っていて,しかもこの高校生はサンプルが偏っておりまして,県立の上から3番目ぐらいまでの高校の正答率がこれぐらいしかないという実態があります。
 次お願いします。これは2つの文が同じ意味かどうかを聞く問題です。「幕府は,1639年,ポルトガル人を追放し,大名には沿岸の警備を命じた。」という文章と,「1639年,ポルトガル人は追放され,幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。」というのが同じ文か違う文かと聞く,ただの二択問題なのでコインでも50%当てられるんですけれども,ごらんのとおり,中学生は正答率57%しかないんですから,コインと余り変わらないということになります。県立の上から3番目ぐらいまでの高校でも大体3割間違えるというような状態です。
 次お願いします。これが非常に大きな問題だった問題です。「メジャーリーグの選手のうち28%はアメリカ合衆国以外の出身の選手であるが,その出身国を見ると,ドミニカ共和国が最も多くおよそ35%である」。この問題で,この4つの円グラフからどれがメジャーリーグの選手の出身国の内訳として一番正しいかというのを選ぶわけなんですけれども,当然,右上の図が正しいです。これは28%がアメリカ合衆国以外という,この「以外」がちゃんと読めていて,「出身国を見ると」というのが「そのうち」ということが分かればすぐに答えられる問題なんですけれども,中学生の正答率が13%しかなく,全体,一般社会人も含めて,大学生も含めて正答率29%しかありません。
 次どうぞ。これはきちんとテスト理論的にやりまして,つまり,こういうタイプの問題を大量に作って,それで,いろいろな人に解かせてみる。そうすると,目の検査と同じなんですけれども,横軸が能力値というんですけれども,汎用的リーディングスキル能力値が上位になる,上位というのは上から10%ぐらいですかね,1.4ぐらいまでの能力があると大体9割ぐらい正答するんですけれども,中の上ぐらいになると急激に正答率が落ちて4割ぐらいまでしか正答しないということになります。
 1個戻ってもらっていいですか。実は中の上よりも下の人が圧倒的に選ぶのが,右下の図です。アメリカ合衆国28,ドミニカ共和国35の図を選んでしまうんです。これは国語が得意とか何とか関係なく,きちんとやっぱり読めていない。読めてなくて,キーワード検索的に答えてしまうという人が多い。
 次,どうぞ。ということで,20万人の汎用的読解力調査,こういう問題を私たちは数千持っております。これをCBTでやった結果です。汎用的読解力は,伝統的な国語科の読解力とは違います。これは明記しておきたいと思いますが,中学生の半数以上が,何らかの観点・科目で,中学校の教科書を自力では読めない状態で卒業しています。高校生の汎用的読解力は,データから見ると,現状の学校教育では全く上がっていません。1年生,2年生,3年生とリーディングスキルの状態が上がっていません。ですので,中学卒業段階のリーディングスキルが高校卒業段階のリーディングスキル,つまり,大学入試を受ける際のリーディングスキルだと思っていただいてよろしいかと思います。
 中高ともに汎用的読解力の学年内分散が極めて大きく,汎用的読解力の高さと入学し得る高校の偏差値との相関は0.85もあります。ですから,汎用的読解力で進路はほぼ決定されます。中学における汎用的読解力と全国学テとの相関は,いろいろな自治体で調べましたが,0.65程度あります。幾つかの大学でのリーディングスキルテストの実施の結果から,リーディングスキルが低い学生は,退学をしたり,留年する率が高いことが明らかになりつつあります。ですので,教科書が読めないから,プリント学習や塾に頼らざるを得ず,経済格差や地域格差がそのまま学歴に反映されている状況があります。
 次お願いします。高校学習指導要領の解説の総則を見ると,「基盤となるのは言語に関する能力であり,国語科のみならず,各教科等においてその育成を重視し」と書いてあるんです。非常に重要だと思います。これを文科省はずっと強調してきているんですが,残念ながら,データ上からでは本目標は達成されておらず,各科目がサイロ化しているままである。科目を横断した読む力・書く力の育成が十分に図られていないということが分かりました。
 次お願いします。例えば汎用的読解力って何ですか,どういうふうに国語と違うんですかというと,例えばこれは中学校3年生の理科の教科書です。「地球から見ると月が太陽に重なり,太陽がかくされる現象を日食という。また,月が地球のかげに入る現象を月食という。天体が完全にかくされることを皆既食,部分にかくれることを部分食という。もし,天球上の太陽の通り道と月の通り道が一致していれば,半月ごとに日食や月食がくりかえされることになる」。こういうものを理科では読まなければならないわけです。国語科が求める文脈とか,文に書かれていないようなことを理解するというようなことなんですけれども,理科の場合は,例えば半月ごとに日食や月食が繰り返されることになるということに対して,なぜそうなるのかというのをこれまで学習したことから論理的に分かるようなことが理科で求められる汎用的読解力で,これは国語科とは違うタイプのものの文脈理解であると思います。
 次お願いします。数学も同じようなことで,例えば「同様に確からしい」とかいうようなことは,日本語で確かに書かれている文章ですけれども,中学,高校で学ぶ語彙や言い回し,国語で学ぶ語彙や言い回し,意味とは大分違うということが分かります。
 次お願いします。ということで,私は,リテラシーに関するテストが実は必要なんだろうと思っています。リテラシーというのは,科目によらない基盤的・汎用的な読解力と記述力を問うべきだと。これは数学の記述式や理科のレポート作成,プログラミング的表現等も21世紀に求められるリテラシーに含まれます。少なくとも教科書を自力で読み,ノートを取れ,レポートを作成する基本的能力を身に付けて大学に進学する必要があることは,誰が見ても明らかなことです。科目にひも付かないテスト,大学でスムーズに学び続けることができる基礎スキルの有無を判定することが目的で,科目固有の知識を問うテストではないタイプの,南風原先生もおっしゃいましたけれども,大学で学び続けることができる能力を問わないといけないんじゃないかなと私は思います。
 汎用的読解力と記述力をセンターで課すことは重要だと思っています。それは高大接続の観点からで,記述を目指して大学入試に挑むか否かで,見掛けの偏差値以上の差が生じているというのは,日本数学会の大学生数学基本調査のデータからも明らかになっています。大学全入時代における大学生の基礎学力保証が必要。特に地方の公立大学,私立大学のAO・推薦入試におけるニーズがあるということだと思います。これは中・低位層における記述式でのスクリーニング・教育機会提供ということだと考えています。二次で記述式を課しているような上位国立大学にはこのリテラシーテストなんていうのはむしろ不要で,そういうことができない大学にこれを提供するということが意味があるだろうと思っています。
 次お願いします。新テストにおける記述式についての私の提案は以下のとおりです。数学ⅠA,これは問題文をきちんと読解しないと解けない,つまり,キーワードとかでは解けない,読ませる問題を出題する。新テストは確かにその方向に向かっています。ただし,プレテストの中ではあまりにも理念に走り過ぎてそういう分量が多過ぎた。だから,全問解けなくなっているので,スクリーニングに不適切になっているので,理想論に陥らず現実的な調整が必要だろうと。
 もう一つ,すごく重要なことですが,これは全く議論を今までされていませんが,多項式と多項不等式に限定した式を書かせる出題を数問出題するべきだと思います。答えを多項式プラスアルファに限定すれば,Mathematicaを用いて,答案と正答が同一かを判定することが理論上はできます。これは自動採点という意味では全くありません。採点ミスはこれで完全に防げます。自己採点もできます。
 これはまず,記述式ですので,どこかに依頼して採点していただくことになると思いますが,第三者に読める式を書けるかということはとても重要なんです。例えばxの2乗と書くときに,単にxの横に2と書いてあるのと,2が下付きになっているのか,それとも上付きになっているのかとかが読めるように書きましょう,ということがまずあります。それで典型的な正答・誤答とそれ以外で分けます。これでもうほとんど10分の1,本当に見なければいけないのはもっと少ないですかね。それ以外は,監督者がMathematicaに掛けて,正答と同値かを判定すれば,同値ならば正答とするとすれば,全く採点ミスは生じなくなります。これは私大偏差値50プラスマイナス10をターゲットとして考えています。これは式を書かせることもスクリーニングとして十分機能します。もしも機能していないんだったらば,実際多くの私大理系がそのような入試を行っているということが説明できなくなります。実際多くの私大理系は式を書かせて,それを採点するという試験を行っています。
 もう一つはリテラシーです。これはターゲットは,記述式の二次試験を行わない,行えない大学です。科目を問わず,教科書,新聞,マニュアル等高校生がふだん接している文書から出題し,それが読めているか,他者に伝わる日本語を書けているかを問います。高度な内容でなく,あくまでも正確に読めているかを問う問題に限定します。クリエイティビティーとか深く考える力とか,そういうことは聞いていません。指示を正しく理解できるかとか,第三者に伝わる文章を書けるか等が採点基準になります。高度な内容ではないため,採点フローを確立すれば,トレーニングを受けたアルバイトでも採点が可能です。
 それでも多分,やはり業者の採点は信用できないという御意見もあろうかと思います。その場合は,業者の採点はあくまでも参考採点とします。参考採点とともに,答案の画像ファイルを添付して,出願大学に送付するのは非常に簡単です。これを大学で改めて採点をするのか,参考採点をそのまま受け入れるかは,大学のアドミッションポリシーに委ねればいいです。半数の大学は今現在,定員割れを起こしています。そういう大学は,実際答案を見たがっています。なぜかというと,実際に答案を見て,文章が書けているか,指示が読めているかということが分からないと,退学するかどうか,留年してしまうかどうかということの判断ができないからで,こういうことは求められています。
 次が最後です。これは参考資料ですけれども,南風原先生がおっしゃったような話で,今,新テストというか,共通テストが肥大化しているので,むしろスリム化しましょうということで,出題委員等の継続的育成に支援が必要と思われる科目について,支援をどうにかしましょうと。世界史とか地理とかですね。あとは,整理の検討が必要と思われる科目がありますねと。世界史A,日本史A,簿記会計,情報関係基礎,ドイツ語,フランス語,韓国語のように整理の検討が必要な科目があるのではないですかというようなことを参考までに付けて,私の発表を終わります。ありがとうございました。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。それでは,ただいまの新井先生の御発表に御質問のある方,手を挙げていただければと思います。それでは,両角委員,まずは。
【両角委員】
 新井先生,大変貴重なお話ありがとうございました。すごく興味深く伺ったのですけれども,2つほど確認したいことがあります。1つは,リテラシーテストが必要だというので,確かに大学で学ぶ上の基礎的な能力が足りない学生が多くて,それを見る必要があるというのでとても面白いなと思っていました。先生が御著書とかでも書かれている,そもそもちゃんと読めないという,読解力が結構まずい子が多いというのは,本当に大学教員の実感としてもあるのですが,読解力と記述力と両方をセットでリテラシーというふうに言われていて,読解力を課すというのも分かるんですが,それプラス記述式までをリテラシーというふうに必ずセットで捉えられているというのがどういう理由によるのかなというところを,1点目としてお聞かせください。
 もう一つについては,例えば3ページでお示しいただいた結果とかは,式の問題なのか。文系私大などで非常勤講師とかやっていると,そもそも3教科とか2教科で入試を受けようと思って高校時代に数学を全く捨ててしまっている学生が多くて,記述云々じゃなくて,数字を見たら,もう,ヒャーッとか何かもう思考停止になってという,そちらの問題もあるのかななんて思って聞いていて,それは記述式の話なのか,もうちょっとバランス良く学ぶことが大事なのか,どうなのかなというふうに思いました。
 本当に先生おっしゃるように,共通試験の問題は国公立のところは私は,それほど大きな問題が今までもなかった気がしていまして,むしろ私学のボリュームゾーンで活用するところが多いところに向けてもうちょっと何とかすべきじゃないかというふうに思っていましたので,物すごく頭の整理にもなりました。ありがとうございます。
【新井氏】
 ありがとうございます。では,お返事させていただいてよろしいでしょうか。
【三島座長】
 はい,どうぞ。
【新井氏】
 書く力についてなんですけれども,書く力って,多くの方がやっぱり小論文のようなこととか,自分の感想を書くようなことをイメージされる方が多いと思うんです。私が言っているのはそういうことではなくて,先ほどの幕府の問題がありましたね。あれを受け身の形で書いてみましょうとか,そのぐらいの非常に簡単なもので,書いてある文があって,その内容を変えずに長さをあと10文字減らしましょうとか,ボリュームゾーンに対してはそのぐらいのことでいいと思っています。やっぱり読むだけだと,どうしてもキーワード検索とか,リバースエンジニアリングをされやすいので,テストの精度として考えたときに,変なリバースエンジニアリングをされないように両方聞いた方がいいだろうというのが,私が書く力も見た方がいいと思っている理由です。
 1つ目,それでよろしいですか。
【両角委員】
 はい,ありがとうございます。
【新井氏】
 2つ目なんですけれども,何でしたっけ。もう一回言っていただいていいですか。
【両角委員】
 3ページの記述の問題で二次関数の問題のようなものは拒否感がある生徒もいるのではないか,ということです。
【新井氏】
 分かりました。3ページ目の問題なんですけれども,上下に2つ問題があります。お尋ねは上の問題ですが,下の問題を見ていただけますか。ヒマワリの成長の問題です。配付した資料にわざとそれを付けたんですけれども,これは数学基本調査のプレテストで出しました。正式な大学生基本調査には出ていない問題なんですけれども,ヒマワリの成長記録が書かれています。種をまいてしばらく何の変化もなかったが,一週間目にヒマワリが芽を出した。しばらくは,なかなか成長しなかったが,あるときからぐんぐん成長した。1メートルを過ぎるころから成長が緩やかになって,1メートル20センチになって成長が止まりました,というような小学生みたいな文章があって,それを横軸を時間にして,縦軸を高さにしてひまわりの成長をグラフにしましょうという問題です。
 これは数式は1個も出てきていませんよね。小学校でやるような問題ですよね。それを教育学部の中学校の先生になるつもりの学生がやって,全然何も書けない。突然何か割り算をしてしまうとか,直線で120センチという線を描いてしまうとか,y=axみたいな直線のグラフを描いてしまうとかというような状態です。ということなので,数式を見るとだとか,高校の内容だからとかいうことには全く関係なく,論理的な文章を読むとパニックを起こしてしまうとか,全然関係ないことを始めてしまうというような層が,実は私大のボリュームゾーンに多いということが大きな問題だなと思っています。
【両角委員】
 ありがとうございます。
【三島座長】
 それでは次に,小林委員,どうぞ。
【小林委員】
 どうも。私大協の小林でございます。新井先生の内容からも,センター入試の利用が私大にシフトしていて,確かに私大協の調査でも,約9割の大学がセンター入試を一般入試において利用していて,その利用も,その中の6割,利用しているうちの6割程度がセンター入試のみで合否判定をしている現状を見ると,今度変わる共通テストでも,私大をターゲットとした,ある意味では少し内容を下げたような試験を設定していただけると,私大は助かるところが確かに多いと思うんです。
 ただ,少しお伺いしたいんですけれども,リテラシーのいろいろな試験のやり方なんですけれども,前回にセンターの山本先生からも話がありましたけれども,記述式でなくても,かなりマルチプルチョイス,多肢選択問題にしてもかなりのところは測れるという話を伺いまして,今回のリテラシーの問題もこれもマルチプルチョイスにできないことはないんじゃないかという気はするんですけれども,その辺はいかがでしょうか。
【新井氏】
 お返事してよろしいですか。私思うんですけれども,先ほども御質問いただいたときに,マルチプルチョイスにしてもいいんですけれども,リバースエンジニアリングをされると,何か余り,本来望ましい普通の学び方とか普通の読み方をしないで変な読み方をするようになると困るなというのは思います。でも,一番最初はマルチプルチョイスも含めてそれで設計をなさって,しばらくしてから,うまくいきそうだから記述式も考えてみようとかというふうでもいいんじゃないかなと思っていまして,2025年みたいな直近のことを考えると,マルチプルチョイスでも十分なんじゃないかなと私の印象では思います。
【小林委員】
 どうもありがとうございました。
【三島座長】
 それでは次,末冨委員,お願いいたします。
【末冨委員】
 大変興味深い御報告ありがとうございました。共通テストの意義自体が何であるのかということからもう一回考え直すべきだなというのは非常に参考になりました。
 とはいえ,1つお教えいただきたいのが,汎用的読解力のスキルなんですが,私自身,子供の貧困調査に関わっていまして,恐らく既に就学前から格差は開き始めており,もう小学生の段階で低学年の段階からもう十分に開いてしまっているんですが,この辺りの埋め合わせ方とかというものについて何かエビデンスがあるかと。
 お話を聞いていますと,確かに入試に向けてというよりは,全学校段階を通じながらリテラシーを意識してということの大事さは分かったんですけれども,やっぱり抜き難い,学校以外の要因の影響についてどのようにお考えなのかなと。ちょっと入試の話とはずれますけれども,この調査やデータの解釈自体についてお教えいただきたいということです。
【新井氏】
 リーディングスキルテストは小学生からもしておりますので,相当なエビデンスがあります。そういう中で,やはり就学援助率の高い学校ほどリーディングスキルの結果が低いというような状況もあります。ただ,そういう学校でも,先生方がリーディングスキルというのが汎用的に,教科書が読めるようになるということが貧困から,貧困サイクルというんですかね,負のサイクルから抜け出すために必要だということを先生方が意識をして,普通に読めば読めるでしょうとか,読めば分かるでしょうとかというような指導ではなくて,日本語をゼロベースできちんと教える。バックグラウンドが,例えば,保護者のどちらかが日本語ネイティブではないとかそういうような場合もありますし,そういうようなお子さんであっても科学的にリテラシーを上げるということに取り組む学校があるんです。例えば朝,1分間ストップウオッチで計って視写をするとか音読をするとか,これとこれは同じ意味かとか,同じ意味の文を3つ作りなさいとか,そういうような,今まで国語科で余りやられていないような指導をやっているところは,リーディングスキルの結果が上がるというような結果があります。
 私は,小中学校というか義務教育というのは,入学時の格差をいかに減らし,教科書を自力で読めない児童・生徒をいかに減らすかということがまさに義務教育の使命だと思っているんです。だから,中学校を卒業する段階で中学校の教科書を全員が読めれば,みんな自学自習ができますから,あとは好きなことをやりましょうみたいなふうになるのが本来だったら望ましい教育の在り方ですから,そういうことが必要だということ,非常に基盤的なことをまずはきちんとしましょうという,当たり前なことに戻るというのが大事なことだと私は20万人のデータからは感じます。
【末冨委員】
 ありがとうございます。恐らくそれはコロナ休校中やコロナ後の学校の在り方を考える上でもまさに今大事な指摘かというふうに思いました。大変勉強になりました。
【新井氏】
 ありがとうございます。貴重な御指摘ありがとうございました。
【三島座長】
 ありがとうございます。
 それでは,ちょっと時間が押しておりますので,柴田委員,最後ですけれども,手短にお願いできますでしょうか。
【柴田委員】
 それでは,手短に。お伺いしたいことがたくさんあって,目からうろこのようなお話で,大変感銘を受けています。10ページ,11ページの辺りをごらんいただきますと,高校生の汎用的読解力というのは中学校レベルで止まっているというお話だと理解したんですけれども,では,高校でやっている国語というものが何なのかというのは,これ,以前にも大学入試センター試験の国語を分析するときに話題になって,高校の先生にお尋ねしたら,あれは論理的思考力を養っているんだとおっしゃられたような記憶があるんですけれども,これは何が問題といいますかね,どう捉えればいいのか,それが1つと,もう一つ,それに対してセンター試験の問題はやっぱり読解力がないと,ほかの理科も数学も解けないわけですよね。だから,そういうところで汎用的読解力を見ているんだというような具合に理解したというのがあります。そういう理解が正しいのかどうか。
 それからもう一つ,最初におっしゃった,ちょっと長くなるのですけれども,私学と国公立の話なんですが,国公立では,もう先生御承知だと思いますけれども,センター試験の点数って,ある意味,天井効果みたいに上に張り付いてしまっているわけですね。だから,資格試験的な意味はあるのではないかと。あの試験ができない子は,そもそも資格としてかなり欠けているんじゃないかという具合にみなさなければいけないんじゃないかと思います。その2点をお尋ねしたいと思います。
【新井氏】
 一番最初,国語については余り私,専門ではないので発言したくないんですけれども,先ほど汎用的読解力が必要な例を事例で中学校の教科書で2つお見せしました。あれはやっぱり国語科では指導ができないタイプの読解だと思うんです。でも一方,高校に入ってしまうと,指導要領の内容が重過ぎるので,各科目では,これはどういうふうに読めばいいのかとか,どういう文脈で理解すればいいのかということを教える時間的余裕がございませんので,これは読めるという前提で知識の方をやってしまうということがあると思うんです。そうすると,結局,教科書は読めないんだけれども,何となく解けるというような状態になってしまっているというふうに理解をしています。だから,先ほどお見せしたものの中の文脈とか論理的理解まで国語科で教えろというのはやっぱり無理があることなので,それは国語科は国語科としての試験をなさったらそれはそれでよろしいのかなと,私は余り申し上げないというか,それで,リテラシーがあった方がいいんじゃないかなと思います。
 2つ目なんですけれども,2つ目は何でしたっけ。
【柴田委員】
 国立大学等は資格試験的な観点でということ。
【新井氏】
 そうです。だから,正直,私の気持ちで言うと,国立大学は記述式試験はできる能力が自分のところでありますので,時間もスタッフもいるので,国立大学に関しては,もうあれは準備しなくても,受ければ,読めば分かるというぐらいのものになるのがいいんじゃないかと思っています。ですから,資格試験というふうに思う感じが国立大学はいいんじゃないかなと思っています。以上です。
【柴田委員】
 どうもありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
【三島座長】
 よろしいですか。それでは次へと思いますが,芝井委員もお手をお挙げになっていましたが,手短にいかがでしょうか。できますでしょうか。
【芝井委員】
 ありがとうございます。それでは,1つだけに絞らせていただきます。14ページのところでリテラシーに関するテストの必要性について書いておられるわけですけれども,そこで御指摘になったように,かつての制度設計の中には基礎学力テストを導入するということが想定されていました。それが最終的には,学びの基礎診断ですか,という民間のテストで行うということになって,いわゆるテストの力がなくなっちゃったんですけれども,私としては個人として大変残念に思っているんですが,同じような形での共通テストの,将来的にですが,組み替えみたいなことを考えておられるでしょうか。それを是非教えていただきたい。
【新井氏】
 どちらかというと,国立大学の本丸というのは,倉元先生がおっしゃったように,やっぱり記述式の二次試験が本丸なんだろうなと思っていて,それで,センター入試というのは基本的に,多様な大学がありますと。それは芸術系とかいろいろな多様な大学がありますと。そういう多様な大学の中でもやはり自学自習して学び続ける力というのはどこかで担保されなければいけないでしょうと。それはAOとかスポーツ推薦とかそういう方も含めてみんなが受けて,そして,大学で学び続ける力が担保されて入ることが,結果的に退学率を減らしたり,留年率を減らすことで受験生の幸せにつながるような大学入試になるといいなと私は願っています。
【芝井委員】
 ありがとうございます。ある場所で先生おっしゃっていましたように,今頃,プログラミングだとかAOだとか言っている問題じゃなくて,今,読解力だよというのはそのとおりだと思っています。ありがとうございます。
【新井氏】
 ありがとうございます。
【三島座長】
 それでは,新井先生,どうもありがとうございました。
【新井氏】
 ありがとうございました。
【三島座長】
 次の議題に移らせていただきます。それでは次に,個別大学のお立場からということで,共愛学園前橋国際大学の大森昭生学長から15分程度でお話をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【大森氏】
 共愛学園前橋国際大学の大森でございます。本日は大変貴重な機会をいただきまして,ありがとうございます。委員の先生方,大分お疲れだと思いますし,時間も押していますので,かなり飛ばしていきたいと思いますけれども,御容赦いただければと思います。
 それでは,資料を共有していただけますでしょうか。共有されていますか。ありがとうございます。
 私自身は,入試,試験の専門家でもありませんし,高等教育の研究者でもありません。地方の小規模大学の現場レポートとしてお聞きいただければなと思います。そういった意味では,今,新井先生のお話の後というのがいい順番だったんだなと思っています。それと,今回,今,コロナ対策で毎日どたばたしていまして,この会議の過去も全部復習を十分できていないので,空気感のないお話をしてしまうかもしれませんけれども,御容赦いただければと思います。よろしくお願いします。
 では,次お願いいたします。本学は地元の高校さんといろいろな取組をしています。そうした中で聞いたのがこの言葉です。進路の先生から,共愛さんは育てるんだから,資質を評価しなくてもいいよねというふうに言われたということで,確かにこの資質が元々あるのであれば大学で育てなくてもいいわけでして,この辺の矛盾をどう解いていったらいいのか悩みながら今日に至っているということでございます。
 次お願いいたします。本学の御紹介です。個別の大学ということですので,ちょっとだけ紹介します。学校法人共愛学園は,明治21年,新島襄が発起人の1人となって設立された,132年目を迎える学園です。こども園から小中高大全てを持っている群馬県唯一の総合学園ということになります。大学は1学年255名の入学定員という本当に小規模な大学,この小ささというのがうちのパワーだと思っております。
 次をごらんください。本学の特徴はこの4つです。特に一番右に書きました地学一体ということで,学生の9割が群馬県内出身の学生,そして,7,8割が群馬県内に就職をしていく,そういった大学です。地域からお預かりをして地域にお返しをしていく,これが使命であると心得ています。これも新しい大学の1つの形だというふうに自信を持っているところです。
 次お願いします。この間,GGJからAP,COC+まで文科省さんの大規模事業,これ4つを同時に全て採択いただいて回してきたところでもあります。群馬という超グローバル地域において本学が育てているのはグローカルリーダー,いわば飛び立たないグローバル人材を育成している,そんな大学です。
 次お願いいたします。そのために教育の質転換も取り組んでまいりました。
 次お願いします。かなり時間があれなので,飛ばします。グローバルも,地域の企業さんや教育委員会と組みながら,一緒にプログラムを開発しています。年間二十数プログラムを用意していますけれども,海外研修参加率が全国2位になったことがありますが,それでも7,8割が群馬に就職をしていくというグローカル人材です。
 次お願いします。地域との関係はまさに一体で,半年間大学に来る代わりに地域留学をするようなプログラム,こういったものを置きながら,まさに地域の皆様に学生を育てていただいております。
 次お願いします。最近ではプラットフォームも形成しまして,その主導もさせていただいているところです。
 次お願いします。今,教育のトレンドは,私も中教審で参加させていただきましたけれども,質保証あるいは教学マネジメントに移っていると思います。こういった教育成果の可視化にも取り組んできています。9割の学生が「入学して力が付いた」というふうに答えて大学を卒業していきます。
 次お願いいたします。学修成果の可視化は,KCGというこのポートフォリオとSHOWCASE,これを基盤に行われています。共愛12の力という学修成果指標の伸びを評価して,またそのエビデンスを社会に公開していく,オープンにしていくという取組を展開しています。
 次お願いします。本学では,エビデンスベースの自己評価による学修成果の可視化,これを通しまして,自律的な学修者の養成ということに取り組んでいます。自分の評価をできるのは自分だけであると。これから予測困難な時代において,自己の学びを可視化し,時にはアピールできるようなこと,これが彼らの幸せな生涯につながっているというふうに信じて取組をしています。
 次お願いします。これは宣伝です。そうした中で学長先生方から御評価いただいて,4年連続5位ということにしていただいております。
 次お願いします。本題に入ります。本学の入学試験の状況です。地方小規模大学は大変だというふうに言われておりますけれども,この10年ぐらい何とか定員を超えての入学者ということでやってきています。ただ,2020年度の入試結果もリアルな数をそこに挙げておりますけれども,見ますと,一般入試で倍率が3.5倍,センターで2倍弱になって,それぐらいにしかなっていない。とはいえ,本学のような小規模大学で全体で2倍以上付いているというのはそれなりのものだというふうに御理解いただければというふうには思います。
 もっと見ていただきたいのは,歩留まりのところです。ここをちょっと説明します。歩留まりで,センターでは23%。実は去年並みの35%ぐらいを想定していて,そうすれば,入学者は270人ぐらいかなと踏んでいたんですけれども,どういうわけか3月末になって,今年,国公立大学さんがかなり合格を出されたんですかね,辞退が相次ぎまして,本学も追加合格を出して何とか入学定員ぎりぎりというところでした。1.15倍以内にしないと申請事ができませんので,今年は定員増を申請するということもあって,高校の先生方にはかなりお叱りを受けながら,推薦入試をかなり絞ったんです。そういうこともあって,3月末はかなり厳しかったです。ちょっと愚痴を言うと,国公立大学さんの結果を待ちますので,3月二十六,七日ぐらいになってやっと入学者が確定します。1週間後には入学式ですから,その1週間の間に学籍番号を振り,クラス分けをし,プレースメントテストをやりという,全部をやるというかなりしんどい話になっています。
 それから,2020年度の入試で実施した入試の締めもそこに右に挙げましたけれども,たくさんやっているのをお分かりいただけると思います。ただ,これでもかなり減りました。前はもっとやっていました。偏差値でいくと,新井先生がおっしゃっていたボリュームゾーンまさにど真ん中というところでございます。
 次お願いします。大学入試について,本学にとっての理想の入試を考えてみますと,実は全て総合型選抜というのが本当は理想だと思っています。本学の「地域の未来は私がつくる。」というキャッチフレーズを理解して,ディプロマポリシーを目指し,APに合致した人材であるということをアピールしてもらってマッチングしていくということが一番のはずです。私はオープンキャンパスで高校生たちに,うちのディプロマポリシー,共愛12の力を説明して,この力以外を育みたいんだったら,ごめんなさい,うちに来ちゃ駄目ですという話をします。うちでは育ててあげられないから。DPというのは,やっぱり大学にとって覚悟の宣言でもあるというふうにも理解しています。そこに共感して頑張ろうと思えるかどうかということが入試でのマッチングで重要なんじゃないかと思っています。
 マッチングでいいますと,下にTopicを挙げましたけれども,本学ぐらいの規模になると,願書を出すまでに何らかのコンタクトが普通あります。そうやって本学を知った上で出願してくれるというのが大体我々のような大学です。
 現実というのを書きました。とはいえ,本学でも全てを総合選抜で行うのは物理的にも無理です。受験生は複数の大学で受験できる時間も必要です。アドミッションオフィスを整えられるような補助をいただけて,通年若しくはギャップイヤーなどを活用して行っていくのであれば可能かもしれませんけれども,物理的になかなか難しいなと思っています。
 もう一つ現実の問題でいうと,私たちにとっては,入学試験も学生確保にとってはとても大事な機会だという事実があります。これは避けて通れない話なので正直にお話しします。せっかく大学の中身がいいと思ってもらっても,入試が受けづらいのでは受けてもらえません。また,本学でいうと,地元の国公立大学さんの滑り止めとしての役割,これをしっかり果たしていかなきゃいけないということもあります。ゆえに,本学だけが変な入試をするということはできません。そういう現実があるということです。主体的に独自の入試をすべきじゃないか,私学なんだからという御意見もあろうかと思いますけれども,それは助成が同じで,学生の学費負担が同じになるなど大学同士の土俵が同じになって初めて言える話かなと思っています。
 次お願いいたします。高大接続というのは,本来,学びの接続のことなんだろうと理解しています。大学生と高校生の学び,あるいは高校の学びに大学が入っていくこと,あるいは本学では,県教委から依頼されて,高校の先生が1年間本学に常駐するという派遣研修も受け入れていますけれども,大学と高校の行き来というのは今もうかなり進んでいると思っています。
 次お願いします。一個一個は時間がありませんので説明いたしませんが,本当にいろいろな高校さんとそういう取組をしているという事例です。後でごらんください。
 次お願いします。この高校では,本学が高校の探究の授業も担当しています。そういった形で学びの接続が動き始めているという御紹介です。
 次お願いします。きょうは高校の先生方もいらっしゃるので私なんかが言うのはあれなんですけれども,高校生の皆さんの学びをどう評価するかということです。そもそも入試は全てを評価しているのでしょうかということです。例えば教育学部の家庭科の専攻を受験するのに,試験に家庭科の教科がないわけですね。ということもあります。そう考えると,もともと入試は全てを評価しているわけではないという前提に立たなきゃいけないと思います。
 もう一つ,今,探究が始まっていますけれども,高校生の学びを大学生が,あるいは大学の教員が相当に支えていると思っています。私も学生たちも幾つもの高校に伺っています。それを見ていると,彼らは入試のために学んでいるとは思えないんです。言葉が陳腐かもしれませんけれども,純粋に取り組んでいるというか,そういうことです。「これ,入試に役立つんですか」とか,そういう話を高校の先生とか生徒さんから聞かれたことは一度もないです。「これをやると入試に得なんですか」とか言われたこともないです。
 先ほどの,飛ばしましたけれども,17ページの高校さん,県内のいわゆる学力トップ高校ですけれども,その高校の探究の授業に1年生の一番最初,私が講演に行くんですけれども,入試のことを考えたら,私を呼んではいけないんです。もっと彼らが行く,それこそ東大とかから先生を呼ばなきゃいけないけれども,そういうことでやっているわけじゃないということです。
 戻っていただいて,もちろんその高校からも入学者はいるんですけれども,先ほどの授業を担当している高校の生徒,高校生の未来は多様だという話ですけれども,成果としてすごいビッグビジネスイベントにチャレンジしてすごい賞を取ったりしているんですけれども,その子たちの進路を見ると,去年は最後に残った2人,1人は早稲田に行って,1人はうちに来ています。それから,今年は1人は地元の優良企業に就職をして,1人はうちに来ています。つまり,高校生の未来は本当に多様なんだということです。入試のためだけに学んでいるわけではないということです。
 私が関わっている群馬の高校では更に,もうルーブリックを使ったり,カリキュラムマップを使ったりしながら,カリキュラムマネジメントにも着手が始まっています。その中で高校生の学びというのは評価され,可視化されていくことになるんじゃないのかなと,そんなふうにも思っているわけです。
 次お願いします。そもそも入試が高校生の学びの全てを評価できないのであれば,あるいは高校生の未来・学びも多様なのであれば,それぞれのチャレンジを後押しできる,あるいは得意なことを生かせる,頑張っていることを評価できる入試にしてあげたいなと,そんなふうにも思うわけです。
 この観点で英語の外部入試のことも本学は考えました。いろいろな課題はあったことは承知ですけれども,それに向けて頑張るぞと勉強してきた子たちがいたことも確かなわけです。そう考えたときに,しっかりと学校の勉強を頑張っている生徒さんも,外部試験に向けてチャレンジした生徒さんも,自分が得意な方で受験できればいいんじゃないかというようなことを考えました。なぜか多くの大学さんが外部試験を受験要件にしたり,加点要素にしたりしていたので,不公平感というのはやっぱり拭えないと思うんですけれども,自分が得意な方で受けられるという方式にしていくということ,それを設計しました。課題はあることは承知ですけれども,やると決めたんだったらば,なるべくチャンネルを広げなきゃいけないと思ってやったんですけれども,やらないことになったので,せっかく考えた計算式も没になりましたけれども,そういうことです。
 次お願いします。高大接続というのは,社会一般には入試改革とイコールのように語られていますけれども,本学,本来は学びの接続ではないかということはさっき申し上げました。今,高校が取り組まれている探究とか社会に開かれた教育課程,あるいはカリキュラムマネジメントと成果の可視化,これは常に大学がやってきたことです。それを高校生の皆さんとも一緒に取り組んでいく,あるいは高校がちゃんと育ててくれないとか,大学に送っても伸ばさないじゃないかとか言っている場合じゃなくて,1人の若者をみんなで育てていくということを地域の中で作っていくということが大事だと思っています。
 冒頭の主体性のお話ですけれども,完成された学生だけ入ってくるなら,そもそもこれまでの大学教育改革も必要なかったんじゃないかと思います。まだ十分じゃなくても,しっかりと大学で育ってもらって社会に送り出していく,それが大学の役目だと思っています。本学の英語も,Topicに上げましたけれども,相当にコスト,体力を掛けてやっていますけれども,とにかく育てるんだということです。下のTopicには,責任を持つということのエピソードを,20年前のエピソードを挙げておきました。本当は,うちに入りたいと言ってくれるんだったら,みんなに入ってもらいたい。でも,それは定員があってできない。だから,ある一定の基準,それは教科試験かもしれないし,評定平均かもしれないし,それで入ってもらって,入ってもらったら必ずDPを達成してもらうという覚悟が大学に求められているんだと思います。
 次お願いします。終わりにします。僭越ながら,少しだけ御意見。この会議の議論を見ていると,ちょっと選抜性の高い入試のイメージをお持ちのような気がしていて。でも,そうじゃない大学も絶対必要ですし,そこで頑張っている学生たちも応援したいと,そんなふうに思っています。これまで国でも,機能分化ということでそれぞれの大学の機能を伸ばしていこうと言ってやってきた,つまり,多様化させてきたはずです。その大学の多様性を踏まえた御議論がいただけたらと思います。
 もう一つ,御議論の項目の4項目のうちの4番目,その他が結構大事で,入試改革でかなり大きくて,3要素を全ての入試で測る必要があるのかとか,主体性は本当に評価することができるのかとか,そういったことの方が実は現場は思っていて,主体性ですけれども,せっかく高校の先生が心を込めて調査書を書いていただいたのに,参考程度としている大学さんとかもあったりして,それでいいのかとか,でも,主体性って本当に評価できるのか,そういう問題が積み残されていると思います。
 それから,センシティブとしたのは,ほかの2要素に比べて主体性ってかなり人間性みたいなところに関わってくるところで,就活でも学生は心が折れるのに,18歳にこれを課すのかというのは,我々は,やるならすごく慎重にやらなきゃいけないなと,そういうふうな思いは持っています。
 それから,入試日程。確かに高校の学びを評価するためには後ろにということは分かるんですけれども,一方で,総合型が例えば不合格になった場合には次にチャレンジしなきゃいけない。そのための準備というのも受験生にはすごく大事な期間なので,余り後ろに後ろにとやってしまうことが本当に受験生のためなのかという,そのことは気になっているところです。
 私自身は,学力の3要素という考え方は大賛成で,高校生の親でもあるのでなんですけれども,だから,入試も変わらなきゃと当初思っていました。予測困難な時代における入試に期待感を込めて,PTAとかでも呼ばれていろいろな話をしてきました。もちろん先があるんですけれども,実際の改革は何か今,英語と記述にかなり議論が集中していますけれども,3要素を身に付けるための高校での取組については本当にすばらしいことが始まっている。そのことを目の当たりにしながら,実際に現場で入試を作っていくと,何かせっかくの高校の学びを形骸化させるというか,あるいは入試対策にしてしまうというか,そういうことは違うんじゃないかなと思いながらまだまだ悩んでいるというところでございます。
 以上,大変ぶしつけな,あるいは青臭いこともお話ししましたけれども,私からの発表は以上にします。御清聴ありがとうございました。
【三島座長】
 大変いいお話を聞かせていただきました。教育に対する本当にしっかりとしたお考えをお持ちで,大変感動いたしました。ありがとうございます。
 それでは,御質問のある方,挙手ボタンを。それでは,渡部委員,どうぞ。
【渡部委員】
 大変参考になりました。ありがとうございました。1件伺いたいことがございます。共愛学園の中学校,高校,あるいは小学校からずっと教育を受けてこられた学生さん,あるいはその教育を受けないで外からいらした学生さん,この言い方がふさわしいかどうか分かりませんが,あるいはいろいろな入試の型を,違った型を通して来られた学生の方がいらっしゃるはずですね。そういった方について,何か違ったタイプといいますか,違いが見えるものなのでしょうか。先生の目からごらんになって,あるいは教員の方々からの声といったものについて伺えればと思いました。
【大森氏】
 ありがとうございます。まず共愛学園なんですけれども,小学校が出来たのが2016年なので,まだ小学校出身の子が大学までは来ていません。ただ,中高大と来ている学生は多数おります。本学の280人入る中の60人ぐらいが共愛高校出身ということになります。そういう意味でいうと,ほかの高校からの生徒たちということになると,多少英語に慣れているというようなことや,あとは,人懐っこいというか,優しい環境の中で育ってきたんだろうなという特徴は見られます。
 ただ,一方で本学は,いわゆる県内のトップ高校から地域のいろいろな高校さんの学生がみんな来てくれている多様性を持っています。そういう学生が私のゼミにもいろいろな高校から来ていますけれども,そこで大きな何か違いというものを感じることはない,あるいは感じないような人に育っていくことが,社会にそのまま行ったときには多様な人と一緒に活きますので,重要なのかなというふうに感じているところです。お答えになりましたでしょうか。
【渡部委員】
 はい。どうもありがとうございました。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは続いて,芝井委員,どうぞ。
【芝井委員】
 ありがとうございます。いつもながら大変すばらしい話でありがとうございました。「おわりに」のところで少し質問させていただきたいと思います。1つは,「選抜性が低い大学は必要ないという議論に抗いたいというふうに思います。」と書いておられるんですけれども,ある面でいうとユニバーサルな段階に入ったという意味での選抜性を考えるときに,あるいはある種エリートと言うと言い過ぎかも分かりませんが,選抜性が高い大学と議論として分けた方がいいとお考えですか。それとも,いわゆるユニバーサル段階に入っているということを背景に,トータルに視野の広い議論をすべきだという,そのどちらの方に力点があるでしょうか。私はどちらかというと後ろの方が大事だと思っているんですが,もしかすると分けて議論しないといけないのかもしれないと思いますが,いかがでしょうか。
【大森氏】
 ありがとうございます。例えば共通テストの話でいえば,東大を受ける生徒さんも本学を受ける生徒さんも同じ問題でやっているというのが,先ほど来,出ている話題だと思います。でも,多分求める力とか,それから,そこに優劣があるという意味ではなくて,私は新井先生が御提示いただいた汎用的読解力なんかがありさえすれば,うちでしっかりと群馬で頑張れる子を育てられるという自信があります。すごく感銘を受けました。そういう意味からいうと,どこから分けるのかというのが非常に難しいですけれども,ちょっと違う役割のものと分けて議論してもいいのではないかとさえも思ってはいます。
【芝井委員】
 ありがとうございます。もう一点ございます。よろしくお願いしたいと思います。同じページの下にある,主体性というコンピテンシーが高校の先生のフィルターを通って,さらにそれを大学が評価するという,そういうことはどうなのかということ,これは割合根本的な問題かと思うんですが,かつて,たかがテストの点数だからとか,運が悪かったんだよとかいうふうに受験を失敗した子に言えたのが,恐らくもしかすると人格否定に当たるような,人の評価に,人格評価に当たるようなことで不合格だというふうに受験生が言われてしまう可能性があるのかなという感じもするんですが,それについて何かコメントをいただけましたらと思います。
【大森氏】
 ありがとうございます。まさにそのことで,学生たちを見ていても,就活でSPIで落ちてもまだ,「次に頑張ります」とか言うんです。「勉強サボったので」とか言えるんです。だけど,最終面接に行って,「君は駄目だね」と言われちゃうと,次になかなか行けない。それはあくまでマッチングなんだけれども,自分の全部を否定されたと勘違いしちゃうということを見てきていると,同じようなことを18歳が感じたら,結構しんどいんじゃないかなということを感じています。
 そうすると,いきおい,調査書の,キャプテンだったら5点,副キャプテンだったら3点とかいう話になっていって,あなたが悪いわけじゃないみたいなところにもなるんですけれども,副キャプテンでサポーターとしてキャプテンをすごく支えてきたような主体性ってどう見てあげたらいいのというところを考えると,AOに移っていかざるを得ないんですけれども,そうすると,今度は物理的にも難しい。まだ答えが見えていませんけれども,あそこの部分というのはかなり気を付けていかなければいけないし,何を書いてあげようかなとかいうことも含めて,担当してくださった高校の先生の主観がまず最初の段階で入ってきますので,そこも気を付けなきゃいけないなと。実は現場で入試制度を作っているときは,記述式が云々というのは技術的な問題なんですけれども,主体性の評価のところはなかなか解決がまだ至っていない,議論が続いているところです。
【芝井委員】
 ありがとうございました。
【三島座長】
 それでは最後に,もう一件,小林委員,どうぞ。
【小林委員】
 ありがとうございます。共愛学園様は私立大学協会の会員校でもありまして,ちょうどすばらしい発言をしていただいて私は付け加えることがほとんどないんですけれども,先生,この中で,大学入学の共通テストに望まれることというのは端的に言うとどういうことになりますか。先生のところは,あまりセンター入試で入られている方はそれほど多くはないみたいなんですけれども,それを期待感を含めてお話しいただければと思います。
【大森氏】
 今度の共通テストですね。今まではセンター試験。本学も,今までも議論になっていると思いますけれども,御多分に漏れず,センターのみで入試をやっている大学の1つです。ただ,センター試験の問題は非常にやっぱり良問だというか,我々があのレベルのすばらしい問題を作っていくのにはかなり苦労がありますけれども,そういう意味では,高校で頑張ってきたことがどのぐらい定着しているのかというのを見せていただくには,我々にとってはすごく使わせていただきやすい。
 もう一つ言うと,受験者の母数が多いですから,本学の一般入試の母数というのは少ないです。そうすると,平均点を見ても,今回は問題が難しかったのか,どうだったのかとかいうのは難しいんですけれども,センター試験はそれが非常に分かりやすいという意味で,私どものような私学にとっては,教科で見ていくんだとすれば,実は非常にありがたい入試だというふうに思っています。そういう意味では,先ほどのように,まさに共通テストとして基盤ができているかどうかを測る試験に今後なっていくのであれば,ボリュームゾーンの大学としては今後も使い続けていきたいと思うんじゃないかなとは思っています。十分なお答えになるかどうかあれですけれども。
【小林委員】
 どうもありがとうございます。
【三島座長】
 本当にどうもありがとうございました。時間を大分オーバーいたしましたけれども,たくさんいいお話がきょう聞けて,こういう外部の方々の御意見を聞くのは非常に重要だなと思った次第でございます。
 それでは最後に,佐々木政務官から,本日の有識者の皆様の御意見を聞かれた御感想などもしございましたら,伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
【佐々木政務官】
 長時間にわたりまして御議論いただき,大変にお疲れさまでございました。活発な意見交換をいただきまして,本当にありがとうございます。本日,ヒアリングに御対応いただいた皆様におかれましては,新型コロナウイルスへの対応等で大変お忙しい中御参加をいただきまして,また,貴重な御発表をいただいたことに改めて感謝を申し上げます。
 本検討会議におきましては,受験生の立場に立った検討ということが重要であると思っております。今回は高校生のお二人の声を聞いたということも大きかったのではないかと思っております。そして,実現可能な政策を検討していく中で専門的知見は不可欠でありますので,今回有識者の皆様から様々な御示唆をいただいたということ,引き続き,様々なお立場の皆様,専門家の御意見を伺っていきたいというふうに思っております。
 今後もしばらく外部ヒアリングが続くことになると思いますけれども,委員の皆様方にも引き続き御理解,御協力のほどよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 本日は大変にありがとうございました。
【三島座長】
 政務官,どうもありがとうございました。
 それでは,本日の検討会議はここで閉会といたしますが,最後に,事務局から,武藤企画官から御発言があれば,よろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 次回の会議は第8回ですけれども,6月5日金曜日に行いたいと思っています。ただ,具体的な時間は,ヒアリングの対象者の先生方との調整の結果を踏まえて決めますので,また決まり次第御連絡したいと思います。以上です。
【三島座長】
 それでは,きょうは時間を大変オーバーいたしました。申し訳ございませんでした。そして,どうも本日はありがとうございました。以上で終わりにさせていただきます。ありがとうございました。

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