大学入試のあり方に関する検討会議(第5回)議事録

1.日時

令和2年4月14日(火曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省15階特別会議室

3.議題

  1. 委員からの意見発表
  2. 外部有識者・団体からのヒアリングについて
  3. 自由討論
  4. その他

4.出席者

委員

(有識者委員)三島座長、川嶋座長代理、益戸座長代理、荒瀬委員、斎木委員、宍戸委員、島田委員、清水委員、末冨委員、両角委員、渡部委員
(団体代表委員)河野委員(岡委員代理)、小林委員、芝井委員、柴田委員、萩原委員、吉田委員、牧田委員
(オブザーバー)山本大学入試センター理事長

文部科学省

萩生田文部科学大臣、佐々木文部科学大臣政務官、藤原事務次官、伯井高等教育局長、森田文部科学戦略官 他

5.議事録

【三島座長】 それでは,定刻となりましたので,ただいまより第5回の大学入試のあり方に関する検討会議を開催いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は,新型コロナウイルス感染拡大防止のためのWeb会議方式での開催となってございます。委員の皆様には,御参加いただきまして誠にありがとうございます。音声などに御不都合はございませんでしょうか。大丈夫でしょうか。
 本日の議事は,議事次第にあるとおりでございます。
 本日は,傍聴者,報道関係者の入室は認めず,ライブ配信での公開としたいと思います。後日,議事録をホームページに掲載することとしたいと思います。よろしゅうございましょうか。
 それでは,どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは,まず冒頭に,萩生田文科大臣から御挨拶を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【萩生田文部科学大臣】 皆さん,おはようございます。お忙しい中,第5回大学入試のあり方に関する検討会議に御出席いただきありがとうございます。
 本日はWeb会議方式での開催となります。新型コロナウイルス感染拡大防止のため,普段と異なる環境となり,御不便をおかけするかと思いますが,委員の皆様,また,インターネットで傍聴されている皆様の御理解を賜ればありがたく存じます。
 現在,関係者の皆様には,学校の臨時休業をはじめ,感染防止対策をお願いしております。高校,大学等の現場で様々な対応に最善を尽くしている皆様方に対し,感謝を申し上げたいと思います。
 文部科学省としても,先般,新型コロナウイルス感染症に立ち向かうための対策について,緊急経済対策パッケージとして取りまとめたところであり,財政面も含め,必要な対策に全力を尽くしてまいりたいと思います。
 本日は,前回に引き続き,有識者委員の皆様方からの意見発表が予定されていると伺っております。大学入試に関する議論は着実に進めていく必要があると考えており,今回このような形で開催となりましたが,引き続き建設的な御意見を賜れば幸いに存じます。
 本日もどうぞよろしくお願いいたします。
【三島座長】 どうもありがとうございました。
 それでは,議事に入る前に,事務局から何かございましたら,武藤企画官,よろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】 私も今日テレワーク中でございまして,自宅から御説明させていただきたいと思います。
 はじめに,代理委員の出席につきまして,国立大学協会の岡委員の代理として,長崎大の河野茂先生に御参加を頂いております。
 それから,三島座長には文科省の会議室にお越しいただいておりますが,会議室においては,密集を防ぐなど感染予防策を取ってございます。
 3つ目,Web会議等ライブ配信を円滑に行います観点から,幾つかお願いがございます。
 1点目として,御発言に当たっては,インターネットでも聞き取りやすいように,はっきり御発言を頂きたいと思います。また,御発言の都度,お名前をおっしゃっていただきたいこと。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただくこと。そして,御発言に当たっては,手を挙げるというボタンがございますので,これを押していただきたいこと。
 それから,資料を参照する際,資料番号,ページ番号,ページ内の該当箇所などを分かりやすくお示しいただくなど,御配慮いただけるとありがたく存じます。御理解のほど,どうぞよろしくお願いします。
 また,本日御意見発表の先生方におかれましては,お一人10分程度の持ち時間がございますけれども,残りが3分になった時点と持ち時間が終了した時点で札を画面の前に挙げさせていただきますので,大変恐縮ですが,どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【三島座長】ありがとうございました。
 それでは,議事に入りたいと思います。
 まずは,議事1でございますけれども,委員からの意見発表ということでございます。本日は,島田委員,荒瀬委員,斎木委員,末冨委員の順番に,お一人10分程度で意見発表をお願いしたいと思います。発表者が多いため,まずは島田委員,荒瀬委員と続けて御発表いただいて,一度まとめて質疑の時間を取りたいと思います。その後,斎木委員,末冨委員と続けて発表していただき,同様に質疑の時間を取ることにさせていただきたいと思います。
 それでは,島田委員から,御準備よろしければ,よろしくお願いいたします。
【島田委員】 皆さん,おはようございます。筑波大学の島田です。
 画面上で資料を共有していただけるというお話でした。準備はよろしいでしょうか。
 それでは,本日この場では,これまでどおり,検討事項の枠内で意見を発表いたします。よろしいでしょうか。
 それでは,共通テスト「国語」の記述式問題について意見を述べます。ポイントは,御覧のとおりです。
 1,論じる力の育成は大学・高校の双方で取り組むべき重要な課題であること。
 2,一方,今回見送りの要因となった課題の解決は極めて困難であること。
 そして,3として,共通テスト「国語」の枠組を見直す際の観点について述べてまいりたいと思います。
 それでは,はじめに,論じる力の育成について述べます。資料2枚目,レジュメの1.1を御覧ください。国立大学の入試における記述式問題というタイトルの付いた資料です。こちらは,文部科学省が共通テストへの記述式問題の導入に際して掲げた資料です。これによると,国立大学の二次試験において,国語,小論文,総合問題のいずれも課さない学部の募集人員が,全体の61.6%に上るということが分かります。
 これに対して,東北大学の倉元先生ほか,合わせてお二人の研究者から,国語や小論文に限らず,理科,社会など他教科の問題を含めて見れば,これまでも国立大学の大部分において,実は80字以上の記述式問題が課されているという報告がなされました。この報告は国立大学の入試の実態をよく捉えていますが,各教科の記述式問題が,論じる力そのものをどのように測ろうとしているのかまでは分かりません。
 ここでは,また別の成果を掲げます。資料3枚目,資料番号1.2を御覧ください。1.2,こちらは,文部科学省による大学における初年次教育の実施状況の調査報告です。この報告によれば,平成28年度の時点で,全国の国公私立大学のうち,初年次教育を実施する大学が全体の97%となっております。その初年次教育の具体的内容のうち,最もよくなされているのが,レポート・論文の書き方などの文章作法を身に付けるためのプログラムであって,全体の89%の大学で行われています。全国の多くの大学で,新入生に対する文章作成の指導が必要だと考えられているわけです。
 もちろん,新入生にライティングのスキルを指導することは必要であり,重要です。しかし,問題は,多くの場合,そこで必要となる指導の内容に,本来なら高校までに身に付けておくべきものが,すなわち,高校までの教育課程に明確に組み込まれている内容が,少なからず含まれているという現状です。レポート・論文の執筆作法といったスキルの伝達で済むような大学は,実際にはほとんどないと思います。私が勤務先で担当している授業でも,論じることに関しては,より基礎的な内容から始めることを余儀なくされています。大部分の国立大学が各教科の入試問題で80字以上の記述式問題を課しているという事実がある一方で,あるいはそうした事実があるにもかかわらず,新入生の多くが論じる力を十分に身に付けないまま入学しており,多くの大学はその対応に苦慮しているという一面があると言えます。
 高校・大学を通じて生徒・学生の論じる力の育成が図られるべきです。大学入試は,その両者の間にあって,高校での学びを加速し,大学での学びへとつなぐ役割を果たすように設定されることが望ましいと考えています。
 続いて,共通テストの枠組における記述式問題の実施が困難であることについてです。4枚目,2.1.1を御覧ください。
 まず,高大接続システム改革会議「最終報告」が掲げた記述式問題の導入の狙いを確認しておきます。そこには,複数の情報を統合し構造化して新しい考えをまとめるための思考力・判断力や,その過程や結果を表現する力などを評価するとあります。これを実現するために,マークシート式問題の一層の改善並びに記述式問題の導入を検討するとあります。また,解答の自由度が高い記述式ではなく,「条件付記述式」が提案されています。
 文科省が2016年8月に公表した「高大接続改革の進捗状況について」においては,2.1.1に示したように,国語の問題形式が,御覧の①から④の4つに分類されています。そして,共通テスト国語の記述式においては,②だけでなく③,すなわち,「テクストの全体的な精査・解釈によって得られた情報を編集・操作して解答する問題」を条件付記述式として出題することが想定されています。従来のセンター試験が問うていた①,②に加えて,③の形式を出題するということが示されたわけです。
 二度にわたる試行調査の問題作成は,この方針に沿って行われたということが分かります。より具体的な問題作成の方針については,大学入試センターが公表した資料に示されています。資料5枚目,2.1.2の図がそれに当たります。これを見れば,試行調査における設問の狙いは極めて限定的であったということが分かります。もとより自由度の高い記述式問題は想定されていませんし,問題で問える思考力・表現力の深さや高さが採点可能性とトレードオフになるということを考えれば,問題の狙いが限定的になるということは必然です。その意味で,最終報告が掲げた大きな目標には迫り切っていないと言わざるを得ません。むしろ,大学が個別試験で課す自由度の高い問題と組み合わせて使うことが前提とされているという印象を持ちます。
 ただ,狙いが限定的であるという,そのことをもって,こうした設問形式に全く意味がないとは私は思いません。確かに,国立大学を目指すような受験学力が高い層には物足りない問題と感じられるかもしれませんが,ボリュームゾーンの学力中位層には,生涯にわたって言葉で生きていくとはどういうことかを考えさせるような,一定の意味のある問いだったと思います。試行調査の正答率を見れば,それらが問うまでもないような易しい問題ではなかったということも分かります。また,6枚目,レジュメの2.1.3に示しましたように,東北大学の宮本先生らお三方の調査によれば,新傾向の記述式問題は,全国の高校教員に肯定的に受け止められ,メッセージも一定程度伝わったということが分かります。
 しかし,とはいえ,こうした具体的な作問の狙いについては,文科省あるいは大学入試センターが,より多くのモデル問題を公表して,詳細を説明すべきでした。受験生や高校教員の多くが,設問の狙いや形式,学習のポイントなどについて具体的な情報を求めていました。しかし,その求めに応じるためには,余りにも時間が足りなかった。導入までのスケジュールに無理があったのではないかと考えます。
 7枚目,レジュメの2.2を御覧ください。大学入試センターが公表した採点に関する流れのイメージ図と,試行調査の採点で必要になった補正の数の表です。この表を見ると,大学入試センターと採点事業者とがチェックと再採点を繰り返して,ミスを減らしていく,そんなシステムの構築が進められてきたことが分かります。
 しかし,試行調査の採点で生じた補正の数を見ると,このシステムが本番でどれほど有効に働くのか,疑問はぬぐえません。また,それ以上に,最終的に起きてしまったミス,チェックし切れずに生じてしまったミスへの対応方法や,受験生救済の方法についての案がここには記されていません。採点ミスをゼロにすることが極めて困難であるとした大学入試センターの説明に疑問の余地はありませんが,起きてしまったミスへの対応が不明であったことは,受験生の不安・不信につながったと思います。
 さらに,実際には,採点終了後,あるいは出願後に採点ミスが判明した場合,現行の入試日程では,起きてしまったミスのリカバリーというのは極めて困難だと言えます。それらの課題は容易に解決できるものとは思いません。記述力の測定については,共通テストの枠組においてではなく,各大学の個別入試において充実を図ることを考えるべきです。
 ただ,実際には,その実現が困難な大学もあるということは分かっています。個別大学の努力に任せてよいのか,どのような解決策があり得るのか,大学入試センターをも交えて,もう一度知恵を出し合う必要があると思います。
 最後に,レジュメの3を御覧ください。3.2に示したように,令和3年度入試では,記述式問題実施の見送りに伴い,いわゆる実用的な文章を含めた5つの文種から4問が出題されるということが急遽決まりました。この大問構成を継続していくのが適切かどうか,これは改めて検討が必要かと思います。
 その際,変えることを前提にするわけではありませんけれども,教育課程が改定されるこの機会に,共通テスト「国語」のあり方を根本的に見直すとするならば,大問構成や問題作成の方針の観点になり得るかと思います。
 3.1にお示しした大問構成は,実は共通一次テストの時代から変わっていません。変わっていないことにももちろん意味はありましょうが,例えば,このバランスについても確認の対象になってよいと思われます。
 さらに言えば,評論,小説,古文などと,題材となる文章のジャンルごとに大問を立てるという従来の構成も,唯一の適切なものなのかどうか,ほかの観点による設問の可能性はないのか,時間をかけた議論があってもよいのではないかと考えます。
 これらの点については,大学入試センター等において専門家による検討を改めてお願いしたいと思います。
 少々時間が過ぎました。失礼いたしました。以上です。ありがとうございました。
【三島座長】 島田委員,どうもありがとうございました。大変明快に問題点等を御整理いただいたと思います。
 それでは,引き続き荒瀬委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【荒瀬委員】 私は,長らく高等学校の教員を務めておりましたので,高校生たちや高校の先生たちと関わってきた者としての,高大接続改革についての思うところを申し上げたいと思っております。
 資料は,裏表1枚の非常に簡単なメモのようなものでありますけれども,資料の最初,1のところに高大接続改革と書きまして,その1行目に,若者たちに,生涯にわたって学習する基盤を培うことと書きましたが,高大接続改革というのは,このことを目指していると私は思っています。
 この生涯にわたって学習する基盤を培うという言葉は,丸の1つ目で引用いたしました学校教育法30条2項に示されている文言の中にあります。30条2項のこの部分には,実は主語がありません。これは第1項の主語を引き継いでいるからで,第1項では,「小学校における教育は」となっていまして,30条自体は小学校に関する規定でありますけれども,御承知のように,中学校,義務教育学校,高等学校,中等教育学校においても準用されることになっていますので,例えば,高等学校教育は,高校生たちに生涯にわたって主体的に学習する基盤を培う,それが務めであるというふうに読むことができます。
 この30条2項では,学力の要素として3つを挙げています。基礎的な知識及び技能,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力,そして,主体的に学習に取り組む態度,この3つであります。学力の3要素と呼ばれるこの3つの要素でありますが,次期学習指導要領での指導におきましては,学習評価の3つの観点となっています。つまり,これらが身に付くように,引き出されるように指導できているかどうかということでありまして,高等学校は,初等中等教育の最終段階を担う場として,まさに生涯にわたって学習する基盤を培うことに取り組まなければならないですし,実際に各学校では懸命の努力をしているということであると思います。
 高大接続改革が,高等学校で実際に学んでいる生徒たち,あるいは,その学びを支えるために取り組んでいる先生たちに具体的な方向性を示すとともに,何らかの支援ができるものになるようにということを願ってきました。
 メモの2を御覧いただきたいと思います。そこには,高大接続システム改革会議の最終報告の一部を載せております。平成28年(2016年)3月末にまとめられたものでありますけれども,その「検討の背景と狙い」というところから一部を引用いたしました。
 そこにありますように,予見不可能な不透明な社会を,多様な人々と協力しながら主体性を持って人生を切り開いていく力が重要だとしているのでありますが,その次の「また」の後,下線部分は私が付けたものでありますけれども,下線部分の「知識の量だけでなく」,ということは,知識は要らないというのではなくて,知識は必要であるわけなんだけれども,それだけではなくて,「混とんとした」というほど複雑でよく分からない状況の中に問題を発見し,それは,つまり,問題に気付くというところから始まるのでしょうが,答えを生み出し,新たな価値を創造していくための資質や能力が重要になると述べています。
 最終報告は,お読みになった方もたくさんいらっしゃるかもしれませんが,いま画面でご覧いただいているこれです。この最終報告の中で少しだけ御紹介したいと思うのですが,この「検討の背景と狙い」というのは,4ページにわたって書かれていまして,その中で,教育改革に当たって身に付けるべき力として重視するべきものは,先ほどの学力の3要素を少し敷衍した形でありますが,十分な知識・技能,それらを基盤にして答えが一つに定まらない問題に自ら解を見出していく思考力・判断力・表現力その他の能力,そして,これらの基になる主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度の3つが,そして,これらを最終報告における学力の3要素と呼んでいるということであります。
また,この「検討の背景と狙い」には,社会で生きていくために必要な学力の3要素という点から見ての,高等学校教育と大学教育の兼ね合いが述べられておりまして,大学入学者選抜が本来の役割を超え,実態として高等学校教育以下の初等中等教育と大学教育とに大きな影響を与える存在となっている。このため,高等学校教育,大学教育,大学入学者選抜の一体的改革を高大接続システム改革と位置付け,一貫した理念の下,これを推進する必要があるとしています。
 この一体的にというところが,今回の高校教育に対する大学入学者選抜の影響ということを考えていく上で,非常に重要な言葉であったように思っています。
 そして,既に一部の高等学校や大学では,生徒や学生の能動的な学びによる学力の3要素の育成を重視した教育改革や大学入学者選抜の改革が自主的・自律的に進められつつあるとしながら,高大接続システム改革の推進によって,これらの動きを後押しし,加速させるとともに,我が国の教育全体を未来に向けて転換していかなければならないとしています。
 さらには,置かれた境遇を問わず,我が国で学ぶ全ての人々が充実した教育を通じて高い資質・能力を身に付け,それぞれの選ぶ道で輝き活躍することができるようにすることは,世代を超えた経済格差の再生産を防止する上でも大きな役割が期待されるものであるとしまして,最後には,関係者はもちろん,広く社会全体で知恵を出し合いながら取り組む必要があるということが述べられています。
 この点は,先ほど島田先生がおっしゃった,時間との関係ということで,私もそこのところは大変引っかかっているところでありまして,新しい学習指導要領がスタートした,その高校生たちが受験をする2025年の入試ということが1つの大きなポイントになろうかと思うんですけれども,それが2021年の入試からやっていくということで進められてきたというところで,この点に十分な議論ができなかったのではないかという,そういううらみはあります。
 資料の3に高等学校の学習指導要領を,これも一部でありますけれども,記載いたしました。この引用部分というのは,実は,3行目から4行目にかけての「生徒の心身の発達の」というところから「地域の実態」までという部分でありますが,それはその後の括弧書きの中身と使われている言葉は一緒なんですけれども,順番が全く逆になっています。要は,生徒という存在にしっかりと目を向けて,生徒に視点を置いて,生徒が主語になっているということも言えるのではないかと思っています。
 あるいは,また学習指導要領,今回新たに付けられました前文を見ますと,その前文には,「一人一人の生徒が」といった書きぶりが大変印象的に描かれていると私は思っております。
 その生徒を主語にして,どんな学びを,何を学んで,どのように学んで,どんなことができるようになるかということが大変重要である。そのことと大学入学者選抜とをどうつなぐのかということが,先ほど一体的にという言葉を申しましたけれども,それが議論の1つのポイントであったと思っています。
 大学入試改革ということでありますので,裏面を見ていただきたいんですが,4番のところに,思うことを,非常に雑駁でありますけれども,記しました。
 私自身は,共通テストというのが,各大学が行う個別の検査とセットのものであるということから,これが資格試験のようなものであっていいのではないかということを思っておりました。実際にどれほど使われることになるか分かりませんけれども,大学入試センターが各教科の結果を段階別で表して,大学に提供することができるようになるということを聞いています。1点刻みではなくて,段階別ではだめなのかという思いは,私自身は今もあります。ただ,最後の段落に書きましたように,これを共通テストによって高校教育に影響を与えるというのが本当にいいのかどうかというのは,これは本当のところよく分からないといいますか,順番からすると,逆であると思っています。
 実施方法というところに書きましたけれども,入試センターが大きな組織になって,そこが様々なことが賄えるようになるというのは非常に大事な点だと思いますが,現実はなかなかそうは今なっていないということもあります。
 見送りになった二案につきましても,そこに書きましたが,最後,5番のところに書きましたように,この新型コロナウイルスの関係で,学校が十分に今機能していない面もあるということで,大変生徒たちは不安になっています。先生方も大変御苦労をしていらっしゃいます。この時期に,入試の具体的なありようがどうなっていくのかということについては,本当に早くて,本当に良いものをしっかりと届けなければならないということを思っております。
 全ての高校生が大学入試を受けるというわけではありませんが,全ての高校生にとって意味のあるような教育改革でなければならないし,そのためには,この入試改革というのも,その一環をというか,相当大きな部分を担うわけですので,本当にできるだけ早く,しかし,十分に検討されたものが届けられるということが大事だと思っております。
 すみません,少し時間が過ぎてしまいました。以上でございます。
【三島座長】 荒瀬委員,どうもありがとうございました。
 それでは,島田委員と荒瀬委員の2件の意見発表の内容について御質問,御意見がございましたら,御発言をお願いいたします。発言を希望される方は,手を挙げるボタンを押していただければと思います。
 なお,発言終了後は,マイクをミュートにするとともに,手を下ろすボタンを押していただきたいと思います。ややこしいですが,よろしくお願いいたします。
 いかがでございましょうか。
 それでは,末冨委員からお願いいたします。末冨委員からお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。
【末冨委員】 島田委員,それから,荒瀬委員のお二方にお伺いしたいのですが,おっしゃっておられたとおり,時間の問題というのがかなり厳しいものであった中で,議論し尽くされなかった面もあると。
 その際に,私自身も大学人の立場から見ていて思いましたのは,なぜそれが止まれなかったのかということについて,御意見をお伺いしたいということです。
 以上です。
【三島座長】 島田委員,荒瀬委員,いかがでございましょうか。
 じゃ,島田委員,どうぞ。
【島田委員】 よろしいでしょうか。
 お答えになるかどうか分かりませんけれども,今回の議論では,当初から幾つかの課題が指摘されていて,その課題は先の会議,先の会議へと送られていったというところがあったかと思います。しかし,先の会議へ行けば行くほど,その会議体のミッションというのは具体的なものになっていって,その代わり,本質的な議論というのはちょっとできなくなるというところがあるかと思います。
 時間があれば,先の会議でなされた具体的な議論を基に,前の会議がもう一度判断をし直すというようなプロセスも可能だったかとは思うのですけれども,その時間もなかったので,ただ課題を先送りするだけになってしまったというようなところはあったかなと思います。
 お答えになるかどうか分かりませんが,そんなふうに考えます。以上です。
【三島座長】 ありがとうございました。
 荒瀬委員,いかがでございましょうか。
【荒瀬委員】 私もお答えにならないかもしれませんが。これ,高大接続特別部会での議論があって,その後,高大接続システム改革会議での議論になって,最終的に,共通テストの検討・準備グループというふうに,会議が3つ動いていくことになりました。
 その最終の部分で,どんどん議論が進んでいく中で,幾つもあった案が,例えば,教科別ではなくて5教科のような問題が必要なのではないかとかいったようなこともありましたし,複数回実施することが必要なのではないかというようなこともありましたし,そういったことが幾つも幾つも,これは難しい,これは難しいというふうになって,消えていきました。
 そういう中で,最後に残ったのが,まさに2つになったわけです。英語の外部検定と国語・数学の記述式問題を出す。もちろん,問題の出題の形とかは随分変わりますけれども,しかし,目に見えた大きな違いというのは,その2つに集約されると思います。
 これについて,これは本当に私は責任を感じていますけれども,できると私は思っていました。正直に申し上げて,これはできるだろうと思っていました。何もそういうふうに説明があったからだとか言って,言い逃れする気はありませんけれども。先ほどの様々な努力が行われているし,もともと私自身が,先ほども申しましたように,資格試験でいいのではないかという思いもありましたから,英語が先導して,いわば段階別の入試を導入していく,そういったことがこの共通テストで行われるということについては,私自身はもともとそういうことを望んでいましたので,そういう意味では,これでできるんだろうと思っていたということです。それが,いろんな指摘があって,できないんだということに改めて気付いたということで,本当に私自身の十分に理解できていなかったところがあったんだということを反省しているところです。
 以上です。
【三島座長】 末冨委員,これでよろしゅうございますか。何か。
【末冨委員】 はい,結構でございます。
【三島座長】 それでは,次に,川嶋委員,お願いいたします。
【川嶋委員】 ありがとうございます。川嶋です。
 二人の先生方も大学入試センターの役割について言及されておりますが,今後,具体的に大学入試センターはどうあるべきかということについて,御所見があれば是非お伺いしたいと思います。いかがでしょうか。
【三島座長】 いかがでしょうか。
 お願いいたします。荒瀬委員,どうぞ。
【荒瀬委員】 では,荒瀬から申し上げます。
 大学入試センターは,先ほど申しましたように,大きな組織になっていくということが望ましいのではないかと私は思っています。英語の4技能も大学入試センターができるようになればいいと思いますし,記述式の採点も入試センターが責任を持ってできるという,そういう形になれば,今回の場合の点で言いますと,良かったとは思うんですが,それは現状ではそうはなっていなかったということです。
 今後,大学入試センターが各大学と,とりわけ国立大学と連携しながら,この共通テスト,第一段階の入試をやっていくわけですけれども,その際に,私は,大学入試センターにもっと人とお金とが注がれるということが大事なのではないかと思っています。
【三島座長】 ありがとうございます。
 島田委員はよろしゅうございますか。
 それでは,次に,吉田委員,いかがでしょうか。
【吉田委員】 ありがとうございます。吉田でございます。
 今ちょうど大学入試センターの役割の件で,お二人の委員に質問があったところで,私の方の考え方というか,荒瀬委員の御意見に対して申し上げたいのですが。荒瀬委員の裏の4番の大学入試改革について思うところの共通テストの役割というのが,私は非常に同調できるものでございます。私もこの資格試験を望んでおりましたし,大学で学ぶということのために必要な知識や思考力等について,段階的に評価するというのは,やはりこれから大切なことだと思っていました。
 そして,私自身も荒瀬委員と同じように,できるものと思っていたことと,もう一つは,実は今回,この4技能試験についても,それから,記述式の問題についても,もう2年ぐらい前からいろいろな問題があったので,2024年の教育課程改定というか,新しいテストに完全に移行するまでは,現状のまま行って,そして,4技能試験については,大学によって一般入試,AO入試等で既に使っているところは使っています。つまり,大学が条件を示して,どの試験を課すか,外部検定をどうするか,もうそれぞれの大学が決めると荒瀬委員がお書きになっていますが,まさにそのとおりだと思います。
 そういう意味では,入試センターの役割ということで考えた場合には,今の入試センターも悪いわけではないわけですので,現状で24年まで行って,それまでにセンターで4技能試験ができるものなのか,できないものなのか。それから,記述式についても,記述式をしっかりとセンターが採点できるのかどうなのか。それを検証してやればいいのではないかという話まで言っていたと思っております。
 アドミッション・ポリシーをしっかりと示して,各大学はどうするか。それによってセンター試験の扱いも変わりますし。ただ,現状でセンター試験と,それから,願書だけで合否を判定している大学,それがかなりございます。その辺のところも含めますと,これからの生徒たちに必要な3つの要素を含めた新しい学力というものをしっかり身に付けさせるためにどうしたらいいかという試験を考えていっていただければと思っております。
 ありがとうございました。
【三島座長】 ただいまの吉田委員の御意見ですが,何かそれに対しての御質問,御意見ございますか。よろしいですか。
 荒瀬委員,どうぞ。
【荒瀬委員】 今,吉田委員がおっしゃったことに関わってですけれども,高等学校もそうですし,高校生も,どうなるのかということに対して非常に不安があると思うんですね。期待というよりも不安があると思うんですね。
 その不安がある中で,4技能について言えば,4技能を外部検定でやるということが決まったにもかかわらず,なかなか,これはそれが決まった後,大学も困られたと思うんですね。各大学,どう対応していいのか分からないという面もあったし,いろんな御意見があったと思うんですね。それが十分でなかったがゆえに,結果的に全国高等学校長協会がちょっと待ったということをおっしゃったんだと思います。
 ですから,そういったようなことをもう既に我々は経験したわけですから,今回これをどう考えていくかというときには,そういった様々な意見を頂きながら,いろんなケースを考えて進めていく必要があるだろう。そうしなければ,不安しか残らないということになってしまう。そういうことを危惧いたします。
【三島座長】 ありがとうございました。
 それでは,時間が来ておりますので,このお二人のテーマについて,最後,渡部委員から御発言いただければと思います。
【渡部委員】 どうもありがとうございました。渡部です。
 私も,吉田先生が御指摘になった荒瀬先生の4番について,感想があります。読み上げます。最後の段落ですけれども,ただ,高校教育,とりわけ普通科高校が,大学入試の影響を受けるからということで,共通テストによって高校教育の在り方に注文を付けるというのは,よいやり方ではない。以下2行続きますが,これは,私は,重く受け止めるべき重要なご指摘だと考えております。
 つまり,入試に力を持たせて影響を与えるのだということが前提になって議論が進められるということは,健全な在り方ではないと思いますので,これをいつも改めて念頭に置いて議論を進めるべきではないかなと考えます。
 時間が限られているということですので,感想を述べただけで終わりにしたいと思いますが,もし時間が許すのであれば,島田先生はこの点についてどうお考えか伺いたく思いました。
 以上です。
【三島座長】 島田委員,いかがでしょうか。
【島田委員】 よろしいでしょうか。意見発表の中でも述べましたけれども,あるいは,初回の意見発表のときにも述べましたけれども,先生方と同じように,共通テスト,あるいは,大学入試によって高校教育の在り方を変えようとするのは本末転倒であろうと考えているということは,私も同じです。
 以上です。
【渡部委員】 ありがとうございました。
【三島座長】 どうもありがとうございました。
 それでは,次へ進めさせていただきます。議題1の,今度は斎木委員と末冨委員にお願いしたいと思います。
 斎木委員,御準備よろしければ,どうぞよろしくお願いいたします。
【斎木委員】 斎木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 冒頭に,そもそも大学教育は何を目指すのかについて,一言申し述べます。それは,個人の可能性を伸ばすということです。一人一人の可能性を伸ばし,大学における教育を終えた後,社会に貢献することができるようにするのが大学の使命であると考えます。欧米でよく言われるように,大学教育の意義は,教養ある市民を社会に送り出す,こういった言い方もできると思います。
 もう一つ,冒頭に想起したい点は,持続可能な開発目標です。SDGsと言われます。2030年までに持続可能でより良い世界を目指すための国際目標ですが,その目標の4において,全ての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し,生涯学習の機会を促進することがうたわれているのは,皆様御承知のとおりです。
 さて,文部科学省から前回会議において配付された参考資料2,大学入学者選抜関連基礎資料,72~74ページ,そして,84ページに明らかなとおりですけれども,日本の大学は,「大学全入時代」をも背景に,多様化しています。大学教育の在り方や,その大前提としての入学に当たって求められる能力も,大学ごとに大きく異なっている現状です。なお,本日配付された参考資料2では,それぞれ101~103ページ,115ページとなっております。
 大学入試の基本的な役割は,申すまでもありませんが,受験生の能力と可能性の評価であると考えております。しかしながら,大学と一口に言っても,大変多極化していますので,各大学が求める能力,そして,可能性は,当然大きく異なります。入試の制度設計について検討する際には,この点を十分踏まえなくてはなりません。
 さて,先ほども言及いたしました参考資料2,本日の資料で言いますと,91ページ,そして,94~96ページになりますが,入試にはAO入試,推薦入試と一般入試の区分があり,近年,AO入試及び推薦入試による入学者数とその割合が大きく増加しており,特に私立大学においては,平成30年度入学者のうち半分以上が推薦入試とAO入試で占められています。
 また,センター試験の利用についても,受験科目数の面でばらつきがあります。さらに,センター試験を一次試験として実施し,各大学が二次試験として個別学力検査を課す場合の比重についても様々です。部分的にセンター試験の一部を活用する選抜もあります。また,この場でも繰り返し指摘されてきましたように,一部の私立大学では,センター試験のみで選抜することも行われています。選抜方法が大変多様であることが分かります。後ほど改めて申し上げますが,この多様性を踏まえた上で,議論を更に先に進めていく必要があると考えています。
 今し方の島田委員,荒瀬委員への御質問にも,あるいは,御発言にもございましたが,この会議で過去において,大学入試改革により高校教育を変えるという点が強調され過ぎていた,それは誤りであったとの御指摘が多々ございました。私も,そうした御批判に同感するところはあります。
 他方において,大学志願者は,高校における教育環境のみに身を置いているわけではないということも指摘したいと思います。大学志願者は,高校での学びのみならず,家庭において自分自身で学習することは言うまでもありませんし,学校の外の塾その他で過ごす時間も相当あるわけです。そのとき,各大学がどのような選抜方法を用いて入学者を評価するかは,一人一人の大学志願者に極めて大きな影響を与えます。したがって,大学入試の在り方によって直ちに高校教育が変わる,あるいは変えるということでは必ずしもありませんが,各高校生の学習の在り方は変わるということです。
 また,前回の会議において,文部科学省初等中等教育局から示されたデータにも留意したいと思います。高校の学年が上がるほど教師の発話を英語で行う授業の割合が下がる一方であること,また,理科の観察・実験に関する指標も,中3から高1にかけて大幅に低下しているとのことでした。大学入試の在り方が高校教育に一定の影響を与えていることが見てとれます。大学入試と高校教育の関連性について,強調し過ぎてはいけませんけれども,この側面を無視することもまた適当ではないと考えます。
 さて,本会議の具体的検討事項であります英語4技能評価の在り方について,民間検定スコアを全受験生に求めるような制度設計には多くの問題があるとの指摘が,この会議で既に複数委員の方々からなされました。その一つ一つの論点について繰り返すことはいたしませんが,私も同じように考えています。
 また,記述式出題につきましても,極めて限られた期間で50万を超える規模の採点をすることの困難性などに鑑み,現時点でこれを共通テストに導入することは適当ではないと考えています。
 その上で,議論を更に深めてはいかがと考える点を幾つか申し上げます。
 まず,共通テストの位置付けです。これまでの大学入試センター試験について,非常に多数の大学が極めて多様なやり方で良質な問題のセンター試験を利用していること自体は,ポジティブに評価すべきものと考えます。しかしながら,同時に,この会議の場で,共通テストに期待し過ぎたのではないか,もっとシンプルにすべきではないかとの御意見もありました。このように,共通テストをいわば身軽にするのか,あるいは,更に多様なニーズに応えるべく制度を作り込んでいくのか,改めて検討を進めてはいかがかと考えます。
 この観点から,大学入試センターにお願いがございます。と言いますのも,大学入学共通テストについて私たちは議論してきているわけですが,その改善によって,おおよそどのようなターゲット層にどのような影響を与えることを狙うのかという点について,過去においてもう少し精緻な議論が必要であったように思うからです。こういった議論に資する資料を大学入試センターから提供いただければ,極めて有益であると考えます。
 2点目ですが,共通テストと個別テストの役割分担です。英語4技能評価及び記述式出題に関し,各大学の判断に任せるとする場合,各大学の関連取組を支援・推進するための方途について検討が必要ではないかと思います。すなわち,英語4技能については,大学の多様性を含めて,各大学がそれぞれ英語によるコミュニケーション能力の育成・評価について,大学入学後にどのように能力を伸ばし,そのために入試段階でどのような能力を求めるのかに関する自分の大学の方針を,カリキュラム・ポリシーやアドミッション・ポリシーでより具体的に明示すること,それらポリシーで明示することが求められる内容を,より具体的に国が示すことも考えられるのではないでしょうか。その際には,一般入試のみならず,推薦入試やAO入試も視野に入れることが適当と考えます。
 次に,記述式問題についてですが,そもそも関係者の間で記述式出題に求めるものが何かについて認識が一致していたのかどうか,やや疑問に思うところがあります。導入が見送られた条件付記述式に関し,これは記述式ではないとの批判があったと同時に,学生の学力によっては,この程度のものであっても出題することに意味があったという意見もございます。多様な大学の個別入試で記述式の出題を求めていく方向を採るのであれば,比較的単純なものから高度なものまで,様々な記述式問題の意義について改めて整理すべきではないかと考えます。その際には,英語4技能と同様,一般入試のみならず,推薦入試やAO入試も視野に入れることが適当かと考えます。
 この関連で,前回の会議において御紹介いただきました,私立大学協会の調査に触れたいと思います。協会加盟大学の約65%が,一般入試において記述式問題を実施しているとのことでした。どのような記述式問題がどの程度実施されているのか,更に詳しいデータを提供いただければ,議論を深めるために極めて有益かと考えますので,よろしくお願いいたしたく存じます。
 3点目に,公平・公正の担保について申し上げます。全受験生に民間検定スコアを求めることとはしない場合には,これまで会議の場でも指摘されてきた,いわゆる格差の問題はかなり解消されます。しかしながら,その場合にも,低所得層や試験会場がない地域の受験生についてどう考えるのか,検討を加える必要があるのではないでしょうか。各大学がこの問題をどう取り扱うべきかについて,何らかの考え方を示すべきかどうか,議論できればと存じております。
 様々な「能力」をそれぞれ測る多種多様な選抜方法。「それぞれ」のところにアンダーラインを引きました。高校が多極化する中,誰一人取り残すことがないようにすることが大切です。高校生が安心して受験に臨めるように,そして,大学において可能性の実現を最大限図れるようにという,いわば原点に立ち返り,本会議において真摯に議論を進めていきたいと考えています。「誰一人取り残さない」というのは,先に御紹介したSDGsの理念でもあります。
 どうもありがとうございました。
【三島座長】 斎木委員,どうもありがとうございました。
 それでは,続きまして,末冨委員からお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。
【末冨委員】 それでは,始めさせていただきます。
 最初にお断りをさせていただきます。与えられた時間が10分程度ということですので,スピーディーな説明となりますこと,おわび申し上げます。
 私は,まず1枚目のスライドからですが,こちらにキャリアの一部を書いておりますように,教育行政学という,教育政策の諸課題に常に向き合うミッションを有する学問分野の研究者の一人です。本日は,「本検討会議における検討・検証についての提言―大学入試の「公共性」の回復の視点から―」と題した意見を述べさせていただきます。
 なぜこのような大上段に振りかぶった話をしなければならないかと考えたかを説明いたします。
 この会議に参加することとなり,毎回困難を感じています。それは,何を論じ,改善すべきか,全くもって明確ではない中で議論を進めなければならないということについてなのです。研究者としての力量を傾けてたどり着きましたのは,各論ではなく総論の方向性をまとめていくための柱立てを整理することが今重要であろうということです。
 具体的には,何を検証して,どのように望ましい大学入試の在り方の検討を行うのかということが,まだ本会議ではまとまった形では示されていません。また,なぜ受験生が安心して受験できない状況になっているのか。原因は,試験制度そのものの課題とともに,共通テスト改革のプロセス自体の透明性,合理性にも課題があるからです。
 ここでいう「公共性」とは,試験制度そのものの公平性・公正性,信頼性・妥当性とともに,意思決定プロセス自体の透明性,合理性といった原理・原則を包括する用語として用いております。私自身がこれまでの会議で把握し理解いたしましたのは,混乱した政策プロセスの中で,大学入試が準拠すべき原理・原則が創出された状態が今日の事態に至っているということです。であればこそ,大学入試が依拠すべき原理・原則を明確にしながら,検証と検討,議論を進めることで,大学入試の公共性の回復が可能であるという状況だと認識し,本日の提言をさせていただきます。
 スライドの2枚目に進みます。まず,改めて本会議の目的について,報道発表及び文部科学大臣の御発言から確認いたしました。
スライドの3枚目に進みます。それを「検討」,それから,「検証」の2つに分類したのが,こちらの3枚目のスライドになります。簡単に言いますと,検討事項と検証事項が対応しておりません。
 その次のスライド4に進みます。これは私自身が整理した「検討」と「検証」の柱立てです。まず検討事項Aの下にありますAダッシュが私が付け加えたものになりますが,今回と同様の混乱を繰り返さないための原理・原則の再構築という,という事項を付け加えさせていただきました。大目標のAのために必要なのは,最初に申し上げましたように,原理・原則の確認と再構築であると考えます。この共通テスト改革が,一連のプロセスを含め,文部科学行政の歴史に残ることが不可避であるならば,私自身は,次の世代に対し,大学入試改革が見失うべきではない原理・原則とは何であるかを,本会議で改めて明らかにしておくことが重要な使命であると考えます。
検討事項に対照させて,右側の赤の4から7の検討事項も加え,更に柱立てを整理したものが,次のスライド5になります。こちらの方が,本検討会議における検討・検証の柱立てについての私の試案となります。
 ごく簡単に説明させていただきます。柱1は,総論に当たります。柱2は,大学入試の原理・原則や意思決定原則の視点。柱3は,経済的状況などの機会均等や公正性に関する視点。柱4は,英語4技能評価,記述式などの各論に当たる柱です。各論と申し上げましたが,極めて重要です。柱5は,入試というよりは,教育面での高大接続に関わるものであり,中教審で継続的に論じられたり,高大連携などの実践などのレベルに丁寧に落とし込んでいく必要があるものです。柱6は,大学入試の多様化の中での共通テストの在り方の視点となります。現時点では,柱5以外は,本検討会議が取り扱う対象となると考えます。
 次のスライド6に参ります。柱1から3の特に大きな柱立てに関連して,ここから2つのことを述べます。1つは,なぜ大学入試改革の中で原理・原則が後退していったのかについては,構造的な課題があるということ。もう一つが,入試の原理・原則のうち,重要な原則である公正について,日本の教育も組織入試も非常にお寒い状況であるということです。
 次のスライドに参ります。7番です。共通テスト改革の構造的課題を明らかにするために,本日は,Evidence Informed Policy and Practiceという理論モデルを用います。このEIPPというモデルは,EBPM(Evidence Based Policy Making)の課題を認識し,しばしばイギリスやOECDに関わる教育系の研究者の間で用いられる意思決定モデルです。エビデンスから政策を立案するというEBPMのアイデアは,しばしば一方向的に狭義に解釈されがちです。また,医療政策のように,ターゲットとエビデンスが対応できるようなケースではワークいたしますが,教育政策の場合には必ずしも妥当いたしません。そのため,EIPPのように,EBPMを補完する複数のアイデアが個別政策領域において示されている状況です。
 特にEIPPの特徴は,エビデンス,リサーチ,政策と実践の相互作用を重視すること。そして,児童生徒や国民社会に対し,達成すべき価値(Value)を明確にするとともに,政策において遵守すべき規範(Norm)を重視する点です。
 次のスライド8に参ります。幸いなことに,私がこれまで文部科学省や内閣府において関わってきた政策決定は,何を実現すべきかのValue,何を遵守すべきかのNormが明確であり,エビデンス,リサーチ,政策,実践が相互に作用しながら水準を向上させることのできているケースが圧倒的でした。しかしながら,大学共通テスト改革,高大接続改革では,そもそもエビデンスの用いられ方そのものを大きく疑問視をせざるを得ません。
 次のスライド9に参ります。時間の都合上,極めて簡略に説明いたしますが,中教審高大接続部会の資料であっさりと指摘されている事項は,「エビデンス」と呼べるレベルのデータの用い方であるのでしょうか。計量分析も扱う専門家としては,違和感を禁じ得ません。これらの高大接続部会の指摘がエビデンスベーストというレベルに値するためには,精密な大学入試の実態調査,最低でも入試形態の実態調査や大学生の学修等に関する国内研究や各大学のIR(Institutional Research)を活用したシステマティック・レビューが行われる必要があるはずだからです。
 次のスライド10に参ります。そもそも高大接続改革そのものが,荒井克弘先生の御指摘なさったように,「一貫した方針を見出すことは難しい」のです。学力・能力の転換という大きなバリューを追求したValue-led型の改革ではあるものの,議論が見失われた結果,入試政策や高校・大学教育の実践において大きな混乱を引き起こしています。
 次のスライド11に参ります。これらのことをEIPPに照らし合わせてモデル化してみると,次のようになります。すなわち,達成すべきバリューが肥大化し,また,エビデンスやそのベースとなるリサーチの在り方にも大きな課題があることが把握可能です。また,その陰で,大学入試が遵守すべき原理・原則が後退してしまったことも,見逃すべきではありません。
 英語4技能試験,記述式試験において,参考書や問題集を発行している民間企業の参入や,問題作成者が予想問題集を発行してしまうことが利益相反の問題として注目されましたが,事業者や個人の責任意識もさることながら,とにかく共通テスト改革を2020年までに進めるならというバリューの肥大化と政策の暴走が,関係者全員が本来遵守すべき大学入試政策の原理・原則を忘れさせてしまったのではないかという問題の把握をしています。
 教育政策というのは,誰もが簡単に考えられそうで,また,誰もがいいことを言えそうな政策であるために,常にバリューが肥大化しやすいという宿命を持っています。しかしながら,教育において最も大事なのは実践,教育の現場における学修者主体のプラクティスなのです。教育の現場にいる高校生,受験生,教職員や保護者の意見や不安を軽視したまま行われるいかなる改革も,良い効果に結び付くことはないはずです。
 では,何をすることが公共性の再構築につながるのかを述べていきたいと思います。スライド12に参ります。ここに示しましたのは,イギリスの高大接続改革をEIPPモデルで図式化したものです。詳細は省きますが,イギリスでは公正という原理・原則が改革の出発点として提示され,専門家のリサーチベースでエビデンスを蓄積し,政策,実践につながっているということです。前半にお示ししました柱2と関連して,大学入試の公共性の再構築のためには,原理・原則の明確化(Norm-led)の発想も大切にされるべきであると言えましょう。
 スライド13に参ります。イギリスにおいては,「教育における社会的公正の実現」が最重要の原理・原則であり,学力や進学機会の「格差を縮減する」ことが就学前から高等教育を貫く政策目標とされています。こちらにありますように,性別,年齢,障害,人種,あるいは,Socioeconomic Statusの分析が可能となるデータベースが政府によって公開されています。我が国は,エビデンスを構築するためのデータ収集やリサーチの在り方自体に大いに進歩の余地があります。
 スライド14に参ります。しかしながら,大学入試における原理・原則は,日本でも歴史的に着実に構築されてきたことは確かです。特に,次のスライドも含め,公正が大学入試の新たな原理・原則の論点として浮上していることは,注目に値します。ただし,これらはあくまで大学関係者や高等教育研究者など,一部のステークホルダーの間でしか知られるものではありませんでした。今や国民的課題となっている大学入試の在り方について,広く情報を開示し,意見を集約し,受験生や教職員を含めた広いステークホルダーと国民に納得されるものである必要があります。
 スライド16までお進みください。日本の大学入試の歴史的課題は,経済格差と都市地方格差,性別格差であり,「公正」の実現のためには,この課題を正面から受け止めなければなりません。
 スライド17枚目に進みます。子供の貧困対策の大綱改正の到達点を踏まえるならば,大学入試における機会均等,公正の実現に際し,貧困,女性,地方などの伝統的マイノリティに加え,障害,日本語指導,高等教育を受けていない成年などの志願者層の多様性を考慮する必要があります。
 スライド18枚目に移ります。ただし,公正な教育機会が実現されるためには,就学前から高等教育までの一貫した取組が必要です。衣食住のベーシックニーズすら幼少期から満たすことのできない我が国で,大学入試だけの公正を論ずることには限界があります。
 スライド19を御覧ください。子供の貧困対策の専門家として申し上げるならば,今の日本の教育システムの中で,18-19歳で大学受験できる若者だけに準拠して考える「公正」は狭すぎるということを申し上げなければなりません。この図は,多くの優れた教育社会学の研究者たちが心血を注ぎ蓄積してきた研究成果をごく簡単にサマライズしたものであり,我が国の教育システムがいかに不公正かという現状をまとめたものです。就学前から生活と学びの双方において格差が開き始めますが,我が国は本格的な格差是正政策を導入していません。子供の貧困対策の改正時に,私自身も文科省と交渉させていただきましたが,学力格差指標の導入は見送られました。高等学校以降は更に厳しく,学校は「格差生成装置」とすら指摘されています。控え目に言っても,日本の大学入試制度の都市部在住,男性,高所得者の子供たちに有利な格差生成装置にすぎないのです。
 次のスライドに参ります。20ページ目です。こちらも説明は省きますが,主要先進国とは異なり,日本だけが教育政策が,公正,格差是正を追求する状況とおよそかけ離れた状況にあります。だからこそ,我々は大学入試の生み出す格差という課題に真摯に向き合い,様々なリサーチやエビデンスを蓄積し,共に考えながら,大学入試や教育システム全体の原理・原則,特に公正を再構築することが必要なのです。
 次のスライド21に参ります。最後に,提言で示した柱立てのうち,1から3に関わって,結論と幾つかの要望を申し上げておきます。
 スライド22です。最初に申し上げたとおり,日本の大学入試には「公共性」の回復が求められる状況にあり,それは可能であると信じています。本検討会議において要望したいのは,大きくは,「検証」とセットになった「検討」を,構造的課題の明確化と改善が必要ということです。
 柱1の実現のためには,各論,英語4技能,それから,記述式テストの在り方と共に,柱2の大学入試における公平・公正の確保,そして,柱3の機会均等・公正性への取組が必要です。
 特に柱3に関連しては,現行の日本の大学入試制度が公正とはほど遠い状況に対しての検証,そして,諸外国と比べて余りに貧弱なエビデンスやリサーチ,専門家関与の体制の改善,そして,これまで指摘されてきたマイノリティグループのほかに,日本語指導が必要な生徒の大学等進学率,障害を持つ生徒の大学等進学率,また卒業率等のエビデンスの拡充が不可欠であり,それらを柱6に示しました,大学の入試形態とクロスさせた分析が不可欠であろうということです。
 以上,時間超過しましたが,御清聴ありがとうございました。
【三島座長】 末冨委員,どうもありがとうございました。
 それでは,ただいまの斎木委員,末冨委員に御発表につきまして,御質問,御意見がございましたら,どうぞ。
 それでは,小林委員。
【小林委員】 小林でございます。
 斎木委員から,私立大学協会の記述式問題,どのような問題がどの程度出されているかをもう少し詳しく教えてほしいという御意見がありましたが,これはアンケート調査なので,どれぐらい膨大な記述か,どれぐらい簡単な記述かというところまでは,申し訳ありませんが,データを持ち合わせておりません。
 もし可能であれば,我々でもう一度アンケートを取ってもよろしいですが,私立大学協会だけ調べても片手落ちかと思いますので,文科省で詳しいやり方で調査をしていただいたらいいかと思います。いかがでしょうか。
【三島座長】 斎木先生,今のコメント。
【斎木委員】 どうも,小林委員,ありがとうございました。
 確かに,前回の会議で御紹介いただきましたものは,アンケート調査の結果でありました。したがいまして,今この場で詳細なデータがないということはよく理解できます。したがいまして,私としても,仮に小林委員の方で引き続き,更に私立大学でどういう記述式がどの程度行われているか,詳細な調査を行っていただくことが可能であれば,大変ありがたく存ずる次第です。
【三島座長】 ありがとうございました。
【小林委員】 私立大学だけではなくて,国公立大学の二次試験でもどれぐらい使われているかということも,やっぱりデータとしては取っておく必要があると思いますので,可能であれば,文科省主導でやっていただければと思いますが,いかがでしょうか。
【三島座長】 御意見として伺っておきたいと思います。ありがとうございます。
 それでは,次に,益戸委員,お願いいたします。
【益戸委員】 ただいまのお話にも関連しますが,同じく,先日の私大協会の調査の中で,加盟大学の約3割が英語4技能評価を実施予定とありましたが,やはりこの調査設計では,一部の選抜区分でも実施していれば,大学としては実施予定という回答になると思います。したがって,選抜区分ベースや,募集人員ベースで見たらどのようになるのかという切り口でも調査をしていただければありがたく思います。
 また,私大協会だけではなく,この問題は全ての大学に通じるものですので,文部科学省としても,是非御検討いただきたいと思います。
 過去の検証から教訓を得るという点で言えば,実態を十分に踏まえた議論も必要であるといった御発言が,初回の会議で萩生田大臣からありました。
 ありのままのデータを出すべきという御発言だったかと思います。
 せっかく各団体の皆さんにこの場に来ていただいております。民間企業においても,生データを持ち寄っての議論に抵抗感がある経営者もいますが,上場企業であれば,株主総会やアナリスト説明会では,まさにデータに基づく質疑応答というものが基本になります。是非,この場におきましても,実態に即した議論をすることが今や当たり前だと思いますので,是非,よろしくお願いいたします。
 以上です。
【三島座長】 ありがとうございます。それでは,事務局と相談して,検討させていただきたいと思います。
 それでは,次に,両角委員,お願いいたします。
【両角委員】 ありがとうございます。
 私も今発言しようと思っていたことと,まさに同じ観点でした。末冨委員がエビデンスが十分ではないとか,検討と検証が一致していない,対応していないというのも,本当にそのとおりだと思います。
 エビデンスについては,各大学の調査というのももちろん必要なのですけれど,試験を受ける生徒さんがどれぐらい勉強しているのかとか,いろんなデータがありますので,文部科学省の方で整理するのか,あるいは,既に研究されている研究者を呼んできて説明してもらうとか,あるいは,受験産業の方に解説してもらうといった機会を設けて,それぞれ印象が違う状態ではなく一定の共通理解のもとで議論した方がいいなと思いましたというのが1つの感想です。
 あと,斎木委員のレジュメで幾つか分からなかったところがあって,1つお伺いさせてください。一番最後のところなんですが,3の(4)のところで,様々な「能力」をそれぞれと下線が入っていますが,それぞれ測ることを可能とする多種多様な選抜方法が,多様な高校生活につながるというのが,どういうロジックでつながるのかなというところがよく分からなかったので,もう少し説明していただけないでしょうかという質問になります。
 以上です。
【三島座長】 ありがとうございました。
 斎木委員,いかがでございましょうか。
【斎木委員】 斎木でございます。どうも,御質問ありがとうございます。先ほど発表の時間が既に超過をしておりましたので,はしょって失礼いたしました。
 私,一言で申し上げますと,スーパーマン,スーパーウーマンを求めてはいけないと思います。すなわち,学力も,スポーツも,ボランティア活動も,あるいは,その他課外活動等々を含めて,全ての能力で秀でていなくては行きたい大学に行けないということは,あってはならないと思います。
 よく言われますのが,この会議の場でも御紹介ございましたけれども,高校3年生の夏までは,例えば,部活動に一所懸命頑張った。夏以降は,今度は頭を切り替えて,受験に備えて一所懸命勉強した。その結果,いわゆる一発勝負と言われる一般入試で希望の大学に行くことができたと。あるいは,それと比較対照いたしまして,むしろ高校1年生のときから自分の将来の夢を見据えて着実に地道に努力をしてきたと。そういう人が調査書でしっかりと評価をされて,例えば,高校推薦という形で希望の大学に行くこともあると。
 したがって,一人の高校生にありとあらゆる素養であり,能力であり,可能性を求めるということは当然ないわけでして,それぞれの特色,強みを生かして,持てる可能性を大学で最大限実現できるような多種多様な選抜方法を用意することが重要だという趣旨を申し上げたかった次第です。
【三島座長】 ありがとうございました。よろしいですか,両角委員。
【両角委員】 はい,大丈夫です。ありがとうございます。
【三島座長】 分かりました。
 それでは,次,芝井委員がお手を挙げておられますが,御提出の資料に関することでございますか。そうではなくて,今の議論のことでございましょうか。
【芝井委員】 今の議論です。
【三島座長】 では,よろしくお願いいたします。
【芝井委員】 2つありまして,1つは,末冨先生,ありがとうございました。大変大きな議論なので,なかなか付いていけないところがありまして,その分,しっかり勉強してみたいと思っています。
 同時に,末冨先生の指摘された視点というのはすごく大きいのですが,その分,すぐに根本的な形で,この問題,当座抱えている問題について回答を導くことがなかなか難しいという印象をやはり持ちました。
 そのときに,どんなふうに問題を絞り込んで,今後の,簡単に言いますと,まさに公共性の回復のためのきっかけになるような形で具体的アクションを起こすのかという,そういう問題の絞り込みが同時に必要かと思います。
 恐らく末冨先生は,そういうことを最後のところでも触れておられるかと思うんですけれども。すごく大きな枠組の共有と,それから,目の前の現実的問題の解決に向けた方向付けをどんなふうにうまくマッチングするのかというのはすごく大きなテーマだと思いまして,そこについて,もう少しお話を頂戴したいと思いました。よろしくお願いします。
【三島座長】 末冨委員,いかがでございましょうか。
【末冨委員】 御質問ありがとうございます。
 私自身も非常に大きな問題提起をしているとは思っています。ただし,今までの中央教育審議会の答申の在り方を見ておりますと,我が国の社会の非常に厳しい状況,特に子供や若者にとっての教育機会や育ちが厳しい状況の中での大学入試がいかにあるべきか,あるいは,高等学校教育,義務教育がいかにあるべきかという,大きな状況のディスクライブについて,少し視点が偏っているんですね。
 確かに不透明な時代です。新型コロナウイルスでまさか,こんな事態になるとは私も思っていませんでした。とはいえ,現在も衣食住すらままならない子供たちがおり,学年がすすむほど格差生成装置と言われる学校教育のシステムがあると。その中で,大学入試がいかにあるべきなのか。
 短期的に言えば,2025年に新しい学習指導要領で教育を受けた世代が入試を受けると。そこに向かって,短期的には,いかなる公共性を意識しながら改革を進めるべきなのかというふうに,まず図と地をちゃんと正しく描写した上で,2025年までの次の改革の在り方について確定をしておくことが必要であろうと。
 特に,延期という判断があった以上,同じことを二度と繰り返さないためにどうすればいいかというのが,この公共性という言葉に込めた意味でございます。
 差し当たり,以上です。
【芝井委員】 ありがとうございます。
 それから,もう1点ありまして,斎木委員の御発表に関してなんですけれども,入試自体が大変多様化している。特に私立大学の場合には,そういう傾向が強いわけですが。その背景には,御承知のように,高大接続改革もあるわけですが,同時に,入学定員と志願者の割合を見ていただいたら分かるように,確かに一部の大学はかなり厳しい,入試における競争的な選抜が行われているわけですが,そうでない大学,入学定員割れも抱えるような状況の中で,今高等教育があるという現状はあると思います。
 そこで,推薦入学の制度,よく推薦入試と言われますが,推薦入試をやっている大学はあんまり多くはありません。推薦入学制度というのが正確な呼び方だと思います。そこで選抜を加えていないというのが現実だと思っています。推薦を受けて,一定の成績評価の基準,評点を示し,あるいは,能力を示し,学校長の推薦を受けて入学を認めているわけですから,入試,いわゆる入学試験をしているわけではないわけです。公募制の推薦入試はちょっと別にしまして。
 そうすると,推薦入学の制度で,多くの高校生がテストという形を経ずに大学に入っている現状がある。それも,大学の方も,推薦入学制度という形で,学校長の推薦を受けて入学を認めている現実が,片方に巨大な数,割合としてあるわけです。それと共通テストは,やっぱり全体として設計をしていかないといけなくて,共通テストだけより望ましい形にすれば高大接続の課題が全て解決するような見通しでは,やっぱりこの問題は解決できないと思います。そういう意味で,重要な指摘だと思います。これは感想も含めてです。よろしくお願いします。
ありがとうございました。
【三島座長】 ありがとうございます。
 斎木委員,何か追加ございますか。
【斎木委員】 どうも,芝井委員,御指摘,御意見ありがとうございました。
 おっしゃるように,大学の現状は極めて多極化といいましょうか,多様化しているということだと理解しております。
その中で,私が最後のところで,更に議論をしてはいかがであろうかと申し上げたところに来るわけでして,まさに共通テストについて,そのターゲット層をもっと絞り込んで身軽なものにするのか,あるいは,まさに多極化している大学の現状に合わせて,共通テストももっと作り込んでいくのか,ここは大きな判断の分かれ目になるだろうと思います。そういった点は,是非,この会議で皆様と議論をしていきたいところでございます。
 さらに,共通テストと個別テストの役割分担についても,2点目として問題提起をしたところでございます。どういうふうに大学がそれぞれ,今まさに委員のおっしゃった推薦型入学ということで,基本的に学力のフィルターをかけることなく入学する者が相当数いるという,これに対して,大学がアドミッション・ポリシーやカリキュラム・ポリシーで何を示すべきなのか,また,実際に大学に入学した後,そういう学生をどういうふうに大学として育てていけるのか。これについては,単に各大学にお任せということではなくて,大きな枠組といいますか,あるいは,一つ横串を刺すといいますか,そういった議論もしていく価値があるのではないかと考えている次第です。
【三島座長】 どうもありがとうございました。
 それでは,少し時間が押してまいりましたので,清水委員から手が挙がってございますので,できるだけ短めにお願いいたします。
 この後,もう一つ別の議題があって,その後,もう一度自由討論がございますので,そのときにまた御意見いただければと思います。
 それでは,清水委員,どうぞよろしくお願いいたします。
【清水委員】 ありがとうございます。清水でございます。
 お二人の委員から,論点整理,それから,柱立てを頂いて,大変参考になりました。
 末冨委員の資料の2ページに本検討会議のミッションが4つ示されておりますが,今日の御議論ですと,1番,2番がどちらかというと各論で,4番がその他という,これが本質的に大きな問題だという形で,これは初回からもうその問題は顕在化していたと思うんですけれども,それが大きく出てきた感じを持ちました。この会議が令和2年末までということで,どこまで課題にチャレンジできるかというのは非常に混沌としてきた感じがありますので,タイムラインの中でどこにアプローチするかという,その論点だけ教えていただければというのが1つ。
 それから,もう一つは,先ほど両角委員が奇しくも受験産業というふうにおっしゃっていましたけれども,東アジアの韓国,中国,日本のような,受験文化とでも呼ぶような文化の中で,ハイステイクな環境に高校生が身を置いている,そういう国で,イギリス型のこういうシステムがどの程度実効性を持つのかというあたりもちょっと教えていただきたいなと思いました。
 以上です。
【三島座長】 ありがとうございます。
 それでは,末冨委員から先にいかがでしょうか。
【末冨委員】 どこの部分にアプローチすればいいかということなんですが,私のスライドで申し上げますと,14,15を御覧いただいてよろしいでしょうか。
 これは文科省の通知,そして,中教審,そして,昨年度の大学入学者等の公正確保等に関する有識者会議の主立った部分をまとめたものです。これらの議論というのは,共通テスト改革と同じ時期に行われているものもありますし,中教審の46答申というのは,伝統的に日本の大学入試の原理として重視されてきたものなのですが、高大接続部会の皆様も,必ずしもこの原則のことを御存じではなかったのではないでしょうか。言い方は悪いのですが。
 入試政策については、原理・原則の確認からは我が国の大学入試は始まっていませんでした。Value-ledという言い方を先にしましたが,こうした方がいいのだ,だという信念あるいは思い込みが先にあって,そのために守るべきルールは何なのかということについての確認がなかったということです。ですから差し当たり,本検討会議が今年度あるいは今年を目途として行われるのでしたら,これまでの文科政策の中で,あるいは,中教審の中で蓄積されてきた原理・原則の在り方を確認することが必要です。
 そして,私は,子供の貧困対策に関する有識者会議の委員としてもこの場にいると考えておりますけれども,我が国における子供の貧困対策等の視点も踏まえながら,新たな公正の在り方の方向性については示すべきであろうと考えております。
 以上です。
【三島座長】 ありがとうございました。
 清水委員,いかがでしょうか。
【清水委員】 大丈夫です。ありがとうございました。
【三島座長】 それでは,お二人の発表についての意見交換,ここまでとさせていただきまして,このタイミングで萩生田大臣が公務のために退席されますので,一言御挨拶を頂ければと思います。
【萩生田文部科学大臣】 改めまして,この大変な時期に本検討会議に御参加いただきまして,本当にありがとうございます。
 荒瀬先生,島田先生,斎木先生,末冨先生に,様々な立場で御意見を頂きました。それぞれ異なる立場にございますけれども,これまでの議論を通じて,ある意味,問題意識は徐々に共有されていると思っております。
 末冨先生,大きくまとめていただいて,検証と検討,方向が見えないという御批判を頂いたんですが,私,冒頭,この会議が始まるときに,あらかじめ結論を予断を持って導くような議論ではなくて,この際,本当に幅広く皆さんに議論していただきたいということをお願いしましたので,そういう意味では,是非,こういう機会に少し大きな話をしていただくことも大変ありがたいと思います。
 大学入試のみならず,初等中等教育における在り方というものも,当然,その方向,大学へつながっていくわけですから,こういったことは文科省として共有していきたいと思います。
 実は,国会等では,メンバー構成に偏りがあるという批判もございました。過去の議論に加わった先生方が多いので,その先生方のことを推進派というレッテル貼りを勝手にしているんですけれど,今日,荒瀬先生,島田先生から,言うならば,振り返りの議論をしていただいたことは極めて重要だったと思います。ある意味では,矛盾や問題点を共有しながらも,どんどん隘路へ入っていってしまったというのが多分思いだというふうに私思いますので,この辺も含めて,大いに,引き続きフラットな議論をしていただければありがたいな,こんなふうに思っております。
 後ほど座長の方から御提案をさせていただくと思いますけれども,少し委員の皆様以外からも幅広な意見を聞いていきたいと思っております。ただ,この環境がいつまで続くか計り知れませんので,次回もWeb会議での開催になるかと思いますけれども,是非,引き続き御理解と御協力をお願いしたいと思います。
 いずれにしましても,国民の皆様に納得していただける,より良い制度を構築することが本会議の任務ですので,過去の教訓を生かしつつ,未来に向けた建設的な御議論を引き続きお願いをしたいと思います。
 中座をしますけど,お許しください。
【三島座長】 大臣,どうもありがとうございました。
(萩生田文部科学大臣退席)
【三島座長】 それでは,議事の2でございます。今,大臣からもちょっとお話がございましたが,今後,外部有識者あるいは団体からのヒアリングについてでございます。
 これまで本会議の委員による意見発表を行ってまいりましたが,次回で一通り御発表いただく方が終わりになると思います。次々回から,外部の有識者あるいは団体から御意見をお伺いしたいと考えておりますが,その方法等について御審議を頂きたいと思います。
 まず,この件につきまして,武藤企画官から御説明を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】 よろしくお願いいたします。
 資料5を御覧ください。これまで4回の御意見を基にして,座長,副座長と相談して作成させていただいた資料でございまして,外部有識者・団体からのヒアリングについて(案)となってございます。
 まず選定の視点といたしまして,本検討会議の議論に多様な意見を反映するという趣旨で,以下のような観点に留意してヒアリング対象者を選定してはどうかということで,大学入試政策全般,テスト理論,英語4技能の評価,思考力・判断力・表現力の育成・評価,海外の大学入試,経済的・地理的事情への配慮,障害者への配慮,地方教育行政,高校生・大学生,当事者の御意見,産業界等の意見,民間資格・検定実施団体,それから,先ほども御意見ありましたように,受験産業からのお話も伺ってはどうかと思っています。
 進め方としては,5月中旬から,3回程度に分けて実施してはいかがかと思っていまして,ただ,これは,非常に観点も多いところでございますので,恐らくうち1回又は2回は,2時間というよりは,もう少し長めの時間を設定せざるを得ないと思っていまして,イメージとしては,15分程度の御発表と意見交換で,大体1人あるいは1団体30分程度でやってはいかがかと思っています。
 具体的な聴取項目は別紙にございますので,後ほど御説明いたします。
 それから,特に民間試験団体と受験産業,これは非常に数も多うございますので,これらについては,事務局がヒアリングを実施して,その結果をこの検討会議の場に御報告してはどうかということでございます。
 1枚めくっていただきまして,ヒアリングの聴取項目(案)というのがございます。これ,ご意見を伺うに当たってある程度よすがになるようなものをお示しした方がいいのではないかという考えに基づきまして,座長,副座長と相談の上,作ったものでございます。
 まず1点目の共通項目,これは,多分,いろいろな御提言がなされると思うんですけれども,共通に念頭に置いていただきたいと思うものでありまして,うち1つが,入試と大学教育,高校教育との役割分担。我々,高大接続改革と言っていますが,大学を出た後は,当然社会に出ていくわけですから,社会との接続も念頭に置きながら,どんな役割分担があるべきなのかという視点。
 それから,入試が高校教育に与える影響をどういうふうに評価するのか。
 それから,共通テストと個別入試との役割分担。
 そして,1点刻みの入試の改善の必要性が一方である,その他方で,入試の公平性と公正性の確保,どうバランスを取っていくべきなのか。
 それから,これは何度もいろいろな先生からございましたけれども,それぞれの大学が持つ多様性。
 そして,最後に,政策,施策のフィージビリティということで,実現の可能性とそれに要する時間というのを常に念頭に置きながら御発表いただきたいということで,共通に念頭に置いていただく項目というのを1ポツで整理いたしました。
 2つ目のポツで個別項目とありますけれども,これはそれぞれの先生方の専門分野に応じて,発表に盛り込んでいただくということで,まず英語につきましては,4技能を入試で評価する理念・意義。それから,共通テストの枠組で評価すべきなのかどうか。それから,民間資格・検定試験の活用の在り方ということで,大学と受験生それぞれにとっての利便性という観点ですとか,受検回数の制限の是非ですとか,CEFRの対照表の活用の在り方,それから,経済的・地理的事情への配慮,こういった事柄。それから,先ほど斎木委員の御発表にもありましたけれども,一般選抜以外のAOとか学校推薦がこの議論の中で果たしている役割ですとか,それから,個別入試への国の支援の在り方,こういったことを列挙してございます。
 それから,思考力・判断力・表現力につきましては,上と同様に,それらを大学入試で問うていく理念・意義。どんな記述式問題が推進されるべきか。共通テストの枠組で評価すべきか否か。一般選抜以外の選抜区分が果たす役割。このあたりは,上の英語と並びでございますし,個別入試への国の支援の在り方,これも同様でございます。
 これらに加えて,障害者への配慮,そして,これら全体を議論する中で,諸外国で参考になる事例はあるか。こういったものを列挙してございまして,必ずしもここに列挙した黒丸ないし番号のところについて,一個一個それぞれの先生から御意見を頂きたいということではないわけですけれども,各人の専門分野に応じて適宜盛り込んでいただく。その際に,1ポツについては,少なくとも念頭に置きながら御意見を頂きたいと,こういう趣旨で御用意した資料でございます。
 事務局からの説明としては,以上でございます。
【三島座長】 どうもありがとうございました。
 それでは,外部の有識者あるいは団体のヒアリングを次々回から進めていく上で,選定の視点,今後の進め方,そして,ヒアリングでどういうことを聴取するかというようなことで,たたき台を御説明いただきました。こうした方がいい,こういう方は是非呼びたい,そういうことがございましたら,御発言いただければと思います。いかがでしょうか。
 まず,牧田委員,いかがでしょうか。
【牧田委員】 ありがとうございます。
 ヒアリングの対象者についてなんですけれども,高校生・大学生の意見を聞くというのは大賛成であります。もし可能であれば,それに加えて,現場で実際に教鞭を執っておられる高校の先生方も対象に加えていただきたいのと,それと,先ほど社会との接続という項目がありましたので,これも可能であれば,私は,大学を卒業して社会人,それも大・中小・零細といった区分で,彼らが社会に出て大学入試というものをどう経験し捉えてきたかという意見も聞けたらいいのかなと思っております。
 以上です。
【三島座長】 ありがとうございます。
 それでは,続いて,末冨委員,お願いいたします。
【末冨委員】 ありがとうございます。
 私も,高校生・大学生,あるいは,大学に行っていない若者も含めて,当事者の意見を聞くということが大事かと思います。
 特に子供の貧困対策の視点から申し上げますと,経済状況が非常に苦しい御家庭のお子さんたち,あるいは若者たちを特に呼ぶべきだと。とはいえ,内閣府での招請のときにもいろいろ議論はあったんですが,例えば,プライバシーに配慮した在り方ですとか,あるいは,18歳は,年齢によっては未成年になりますので,例えばですが,声だけのような御配慮が必要かと思います。
 牧田委員がおっしゃった学校の教職員を是非招くべきだは大賛成でして,特に,管理職ではない現場の教壇に立つ教員,それから,地方の高校の教員,あるいは,中堅や若手の教員など,教員も多様であるということに配慮した在り方が必要かと思います。
 併せて,先ほど申し上げ忘れたのですが,大学入試の実態について,私立だけではなく,国公私立の全てに対しても改めて調査をすべきではないかということについては大賛成でございます。
 特に入試形態の多様化については,私自身もあれこれ探しはしましたが,やはり納得できるデータベースがないという状況にあると。確かに,新型コロナで現場はばたばたしておりますけれども,重要な調査については,私の勤務する日本大学を含めて,調査には協力を惜しまないはずですので,改めて調査をお願いしたいと思います。
 以上です。
【三島座長】 ありがとうございます。
 それでは,続いて,両角委員,どうぞ。
【両角委員】 ありがとうございます。
 私も現場の意見を聞くというのが賛成で,高校の先生もそうですし,高校も多様な高校,大学も,大学団体として皆様,委員として参加されていますけれど,大学団体としての意見と個別大学としての意見というのも,またちょっと違うのではないかと思いますので,個別の大学についてもしっかり意見を聞いてもらいたいなと思いました。
 あと,9番目に産業界等というのが入っていまして,確かに,社会との接続も念頭に,大学教育の在り方も含め考えていくというのは,そうかなと思うんですが,果たして産業界の方で,どこまで今の大学入試のことを理解できているのか。大学関係者でさえ,こんなに議論がよく分からないというか,共通のものがないので,産業界の方に一般に言っても,それは大学に対する要求なのか,高校に対する要求なのか,入試のことを直接言い始めると,入試に言っているわけではないところもあるので,その点を少し聞くのであれば,注意して聞きたいなと思いました。
 以上です。
【三島座長】 ありがとうございます。
 それでは,続いて,吉田委員,どうぞ。
【吉田委員】 ありがとうございます。
 私,今のこの件というのではなくて,大臣から先ほどその他の件もいいということであったので,是非この場でお願いしておきたいのですが。高等教育局長も,大学振興課長もいらっしゃるし,各大学の先生方も多数いらっしゃるのですけれども。
 今年,今の高校3年生,この試験が急遽変わって,なくなった世代ですね。その世代が,実はこの3月から,今までコロナの関係で,もう学校での勉強はもちろんですけれども,その他の行事とか,大会とか,そういったものも全てなくなっています。今,一歩間違えると,夏休みまで危ない。もう全国大会等,運動部系は全部,夏,予選すらできないので中止になっていると思いますけれども。この子供たちをどうやって大学入試で救済するのか。そういう話が全く出るまえに,こんな先のことを5月にどうのこうの言う前に,今の子供たちをどう救うのか。
 一方で,官邸では9月入試なんていう話が,出てきているといううわさもあります。もしそんなことになったら,今の子供たち,どうなっていくのか。
 それから,各学校が,この半年間の,例えばの話,授業料その他がどういうふうになっていくのか。それも大変なことになります。
 ただ,今の子供を中心に考えて,何しろ早急にやらなければならないことを是非しっかりと出していただきたい。この入試の問題は,まだ何年か,いざとなれば,今年度一杯ではなくても間に合うと思います。是非,その辺のところも,文部科学省として,高等教育局として,大学入試を扱っている振興課として,本当にそれをどう持っていくのか,そして,子供たちの学修,教育課程を初中局の方ではどう考えているのか,それを出していただければと思っておりますので,あえて強く申し上げさせていただきました。
【三島座長】 貴重な御意見ありがとうございました。
 それでは,続きまして,渡部委員,お願いいたします。
【渡部委員】 ありがとうございます。
 ヒアリングについて,基本的に賛成です。ただし,方法について幾つか疑問と要望があります。
 まず最初に,どういうふうにやるかということで,特に8番の高校生・大学生の意見ということにつきましては,ちょっとイメージしにくいところがあります。私の希望としましては,入試を受けない高校生にも聞く必要はあろうかなと思うんですね。しかし,その高校生をどういうふうに選ぶのか。そして,ここに来てもらって,そして,どういう発言をしてもらうのか。本当に今の高校生はしっかり発言できるのかなと思いますけれども,その辺に難しさがあるのではないかなと。
 また,本心を本当に語ってもらえるのかなというふうな不安はありますね。何か介して,どなたかに,研究者の方で,そういったところでやっていらっしゃる方もいらっしゃると思いますので,そういう方にまとめていただくということも,1つの在り方としてあるかと思いました。
 それから,これは英語に関してですが,配付資料5の1番の選定の視点の10番なんですが,私の理解といたしましては,昨年までの委員会で,民間試験・検定試験実施団体の情報の提供がかなりなされてきていると考えています。それについて,客観的にまとめて検証すると,それが我々の仕事なのではないかなと思うんですね。
 今後の進め方の中に,4番として,これについてはヒアリングを事務局が行うとあります。しかし,もうインターネット上にたくさん出ていますし,聞いていただくことは,もちろん,できれば有益かなと思いますが,むしろ今まで集められたデータ,あるいは,公表されているデータを批判的に検証すると,そういったプロセスが必要なのではないかと思います。
 また,同じく10番ですけれども,受験産業の意見と言われた場合に,先ほどと同じ問題が持ち上がるかもしれません。つまり,高校生と大学生の意見を聞くということと同じような難しさがあるように思います。つまり,1つはサンプリングの問題,そして,ここに来ていただいて,どういった視点で話していただくのかということがしっかりしていないと,これはうまくいかないのではないかなと思います。
 1番の選定の視点の中の3番に,英語4技能の育成・評価についてというトピックがありますが,ここでまとめていただいて,この方に御発表いただくと,そのような在り方もあるのかと思います。
 最後ですが,先ほど武藤企画官から,ヒアリング聴取項目の全部を聞くわけではありませんというようなお話があったかと思いますが,私はむしろ半構造インタビューみたいにして,これを全員に聞いて,ある程度精査して全員に聞くことを前提にして,分からないところは分かりませんと,そういった公平な問題の聞き方をするということが説明になるのではないかと思いました。
 以上です。
【三島座長】 ありがとうございました。
 それでは,続いて,岡委員の代理でいらしていただきました,河野学長からございましたら。
【河野委員代理】 河野です。
 私も,教育の現場から幅広くヒアリングするというのは大賛成であります。特に,高校や大学の先生,そして,よろしければ,例えば,都会の進学校だけでなくて,普通の地方の高校に勤務する先生の声も是非取り入れていただければと思っております。
 それと,もう一つ,先ほどから話にあがっている高校生を,どう選定するか,なかなか難しいということでしたけれども,1つ,例えば,留学生,留学の経験のある生徒たちが,日本の入試についてどう考えているのか,また,英語教育をどう考えているのか,こういったところもヒアリングしてもらうと,1つの興味深い意見が聞けるのではないかと思っております。
 以上です。
【三島座長】 ありがとうございました。
 それでは,小林委員,ございますか。
【小林委員】 小林でございます。よろしいでしょうか。
 ヒアリングはやっていただくのは非常によろしいかと思います。
 2点ありまして,1点は,やはり高校生が対象のときは非常に選択が難しいと思います。私立大学協会の加盟校の入試を見るときに,よく批判されますが,例えば,センター入試だけで採っている大学が多いとか,推薦だけで採っている大学が多いとか,批判されますが,大学の中には非常に優秀な生徒をたくさん採る大学もあれば,日本語も満足に書けないような学生を採って,しっかりとした社会人として送り出すという役割をしている大学もあるわけなので,ユニバーサル化を考えるときに,ヒアリング対象の高校生のチョイスの仕方も結構難しくて,いい高校生ばかり対象にしても,お行儀のいい答えしかもらえないのではないかということを危惧します。
 2点目の危惧は,受験産業の意見を伺うときに,今回,共通テストで外部の民間資格試験を使うとか,それから,あと記述式も外部に委託するといったときに,どうしても受験産業を介さざるを得ない。そのときに,例えば, 個別名を出してしまうのはよくないかもしれませんけれども,GTECの試験だと受験産業の影がどうしてもあって,そうすると,利益相反の問題があり,その試験対策のチームができ上がるのは当然ですので,その間の利益相反関係を排除する仕組みというのはどうなのかというのを詳しく聞きたいと思います。
 以上です。
【三島座長】 ありがとうございました。
 それでは,萩原委員,お願いいたします。
【萩原委員】 萩原です。
 今話に出てきています民間資格・検定試験実施団体,受験産業のヒアリングで,進め方で,団体数が多いことから,事務局がヒアリングを実施しということで,事務局が任意に選んで,その取りまとめをしたものを我々に提供するというのでは,ヒアリング団体そのものについて,我々委員が直接関わることがなく,恣意的に選んでいるという印象を受けざるを得ないと思います。例えば,事務局がヒアリングするにしても,実施団体について事前に提示を頂いた上で,どうするのか。できればヒアリングを我々の方でするという形が望ましいのではないかと思います。
 それから,もう1点,先ほど吉田委員から出ました件について,もし時間があれば一番最後のところでお願いできればと思います。
 以上です。
【三島座長】 それでは,次,柴田委員,お願いいたします。
【柴田委員】 先ほどの島田先生,荒瀬先生の発表にも関係したところなので,併せて御質問したいと思います。今回の高大接続システム改革の中で,3つの柱というのがあったわけでございまして,新テストはその一つですけれども,高校生に対しては,高校生のための学びの基礎診断が発足していると理解しております。これがどういう新テスト等々への位置付けになるのか,既に資料の御提示は頂きましたけれども,現状等,併せて御説明いただければ,今回の改革の全体像というのがもう少し見えてくるのではないかと考えた次第でございまして,御配慮いただければと思います。
 以上でございます。
【三島座長】 ありがとうございました。
 それでは,末冨委員,もう一度ということでございますか。
【末冨委員】 はい。吉田委員,それから,萩原委員もお考えになっていることだと思いますけれども,やはり今年度入試を受けなければならない高校生たちに対してのサポート,それから,入試の方針をどうするのかということについては,本会議の検討事項ではありませんが,早急に解決されるべきだと思います。
 特に,内閣府の子供の貧困対策の委員としてこの間動いておりますのが,この後も休校が断続化するはずだということです。そのときに,オンライン学習の機会格差というものをどうやって解消していくのかと。授業ができないということで,学校はストップしてはいられないはずですので,オンライン学習に移行する体制を整備できませんかというお話は文科省の方にも伺ったことがありますが,そうした環境整備も含めてお願いしたいということです。
 併せまして,御指摘がございました,若者ですとか高校生のアドボケイト,意見表明の在り方につきましては,多様な方式が考えられるというのも私の意見です。とはいえ,文部科学省に対して書面を提出した高校生たちがいるはずです。そして,研究者や実践者も含めて,例えば,大学入試を考える会などの慎重論に立たれた方たちの意見は重要だと思います。
 高校生に限って言えば,オンラインを活用して,あるいは,大学生もそうですけれども,ある程度の意見集約は可能かと思います。
 加えて,特に書面を提出した高校生たち,あるいは,特に研究者の場合には,私も幾人か心当たりはございますが,この入試改革について不安を覚えて,勇気を持って声を上げることを考えられる若者・研究者たちが何人かいますので,プライバシーと,あるいは,意見表明に対して,こういうやり方がいいんだというふうに寄り添ったやり方を考えるというのは当然のことですけれども,なるべく多様な若者たちの意見を吸い上げるべきだと思います。
 以上です。
【三島座長】 それでは,この件と同じかと思います。萩原委員,先ほど最後にもしもあればとおっしゃったと思いますが。
【萩原委員】 萩原ですが,先ほど吉田委員からも話がありましたように,今年度,これからの入試に関して,特に9月に総合型選抜であるとか,学校推薦型選抜であるとか,いろいろな形の入試が始まるというときに,学校は今授業ができない,学校に登校させられないという地域があり,全国によってばらつきはありますけれども,こういう状況の中において,今後の入試をどうしていくのかということについて,この検討会議で扱うべき部分ではないのかもしれませんが,是非とも,今,高校生が非常に困っている,今後どうなっていくのか,就職する生徒にとっても,調査書を本当に出せるのかなど,非常に心配になっている部分があります。
 この部分につきましては,文部科学省の方で早急に対応等々について,更に進めていただければと思っています。よろしくお願いいたします。
【三島座長】 ありがとうございました。もちろん最重要課題だと思いますので,またそれを検討しているところからの御報告のようなことも,併せてまた紹介できればと思います。
 それでは,議題がもう一つ,自由討論というのがあるんですが,もうほとんど時間がございません。
 それで,もう一つ,芝井委員から資料が出てございます。委員提出資料という形で入っていると思いますが,これを手短に御説明いただけますでしょうか。
【芝井委員】 それでは,私の方から,時間もないようですので,お手元のこれまでの主な意見の概要という参考資料1があるんですが,その11ページのところに該当の部分があります。
 11ページのその他のところで,定員管理の問題が少し触れられました。そのときに,私どもで既に定員管理について申し入れをさせていただきましたということを紹介させていただいたわけですが,その資料が委員提出資料としてお手元にあるかと思います。1枚物のものです。
 19年3月に出したものですけれども,概要はお読みいただくとしまして,3点あります。
 1つは,様々な競争的資金,あるいは,大学の設置許可に関して,学部ごとの定員管理の超過率で申請が認められないだけではなくて,そもそも競争的資金に手を挙げることができない状況になっていることについて,やはり見直しをしてほしいというのが1点です。
 それから,2つ目は,いわゆる入学定員をそういう形でコントロールしようというのは,基本的には4年間で大学を卒業させるのは当たり前だという,そういうことになっているわけです。それは世界的に見ると大変おかしな現象,高等教育の在り方としては不思議な現象なんですけれども,そこについては,やっぱり少し考えていただきたい。直接的には,「入学定員」ではなくて,「収容定員」に着目した基準に転換することを求めますというのが2点です。
 それから,3番目ですけれども,定員管理を「学部単位の入学定員」ではなくて,「大学単位の収容定員」という大きな枠で考えてほしいというのが3点です。
 念のための資料ですので,もうそれ以上は申し上げません。是非お読み取りいただきまして,よろしくお願いしたいと思います。
以上です。
【三島座長】 どうもありがとうございました。
 それでは,最後に,本日の委員の皆様の御意見を聞かれて,政務官から御感想を伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【佐々木文部科学大臣政務官】 皆様,長時間にわたりまして,大変お疲れさまでございました。
 いつもと少し勝手が違うところもあったかも分かりませんけれども,冒頭大臣から申し上げましたとおり,文部科学省といたしましても,この新型コロナウイルスに立ち向かうための対策ということで全力を尽くしてまいりますので,引き続き御理解,御協力をお願い申し上げたいと思います。
 今回の今日の会議では,前回に引き続きまして,委員の皆様から貴重な御提案を頂きました。改めて感謝を申し上げます。それぞれのお立場から様々な御意見を頂きましたけれども,この検討会議の場を通じまして,問題点や課題認識を共有していくことが重要であろうと思っております。
 そのためには,本日御意見もございましたけれども,データに基づいて,焦点を絞った具体的議論を展開していくということが必要であろうと私も思っております。
 次回も,是非,引き続き活発な御議論を頂きたいと思います。次回もWeb会議の開催ということで,様々御面倒をおかけいたしますけれども,どうぞ,引き続き御理解,御協力をお願い申し上げたいと思います。
 本日は大変にありがとうございました。
【三島座長】 政務官,どうもありがとうございました。
 それでは,本日いろいろ多岐にわたる議論がございました。いずれも大変ごもっともな御意見が多いということだと思いますけれども,本検討会議のミッションと限られた時間を勘案の上で整理をしながら,また進めていきたいと思います。
 それでは,この検討会議,本日の分は閉会したいと思いますが,最後に,事務局から連絡がございましたら,武藤企画官からお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】 第6回の会議は,4月23日木曜日の15時から17時で行いたいと思います。次回もWeb会議になろうかと思います。
 以上でございます。
【三島座長】 それでは,今日の検討会,以上でございます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

 

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