大学入試のあり方に関する検討会議(第2回)議事録

1.日時

令和2年2月7日(金曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テストの報告
  2. 中央教育審議会(第124回)における意見の報告等
  3. 過去の検討経緯の整理
  4. 委員からの意見発表
  5. その他

4.出席者

委員

(有識者委員)三島座長、川嶋座長代理、益戸座長代理、斎木委員、宍戸委員、島田委員、清水委員、末冨委員、渡部委員
(団体代表委員)河野委員(岡委員代理)、小林委員、芝井委員、柴田委員、萩原委員、吉田委員、牧田委員
(オブザーバー)山本大学入試センター理事長

文部科学省

萩生田文部科学大臣、佐々木文部科学大臣政務官、藤原事務次官、柳大臣官房長、伯井高等教育局長、矢野大臣官房審議官(初等中等教育局担当)、玉上大臣官房審議官(高等教育局及び高大接続担当)、池田文部科学戦略官、森田文部科学戦略官、塩崎大臣官房政策課長、西田大学振興課長 他

5.議事録

【三島座長】
 それでは,皆様こんにちは。定刻となりましたので,ただいまから第2回大学入試のあり方に関する検討会議を開催いたします。本日は,御多忙の中,御参集いただきまして誠にありがとうございました。本日の議事につきましては,議事次第を御覧いただければと思います。
 本日は,後ほど萩生田文部科学大臣御出席の予定でございます。また,佐々木政務官には御出席をいただいております。ありがとうございます。
 それから,本日は,会場の都合により,一部の傍聴者の方はテレビ会議システムを利用して,別室会場で傍聴いただいておりますということを申し添えます。
 それでは,議事に入る前に,事務局より第1回検討会議に御出席できなかった委員及び本日御欠席委員,代理出席の委員の御紹介をしていただきたいと思います。武藤企画官,よろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 失礼します。それでは,第1回検討会に御欠席であった委員を御紹介させていただきます。
 まず,国立特別支援教育総合研究所理事長の宍戸和成委員。
【宍戸委員】
 宍戸です。どうぞよろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 次に,上智大学言語科学研究科教授,渡部良典委員。
【渡部委員】
 渡部です。よろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 日本私立大学連盟常務理事で,関西大学学長を務めておられる芝井敬司委員。
【芝井委員】
 芝井でございます。よろしくお願いします。
【武藤高等教育局企画官】
 それから,本日は,荒瀬委員と両角委員が御欠席でございますのと,それから,国立大学協会の岡委員の代理として,長崎大学長の河野茂先生に出席いただいております。
【河野委員(代理)】
 河野です。よろしくお願いいたします。
【三島座長】
 それでは,前回御欠席の委員からは,自己紹介を兼ねて一言御発言をお願いしたいと思います。お一人2分程度でお願いできればと思いますので,宍戸委員,渡部委員,芝井委員の順でお願いいたします。
【宍戸委員】
 宍戸と申します。私は,所属する機関の名前にもありますように,特別支援教育を担当しております。主に初等中等教育の子供たちの教育について研究をしたり,学校の先生方に研修を行ったり,あるいは様々な情報を収集して発信したりするような仕事をしております。
 障害がある生徒さんにつきましても,高等学校や特別支援学校の高等部を卒業しまして,大学に進学する者も見えております。その方たちに対して一番大事だなと思いますのは,やはり公平性や公正さを確保するということかなと思っております。特に障害児教育に関しましては,国連で障害者権利条約が制定されました。それは日本も批准しております。それに関わって障害者差別解消法というものができておりまして,その中では合理的配慮を提供しなきゃいけないということがございます。これまでも入試に関しましては,障害のあるお子さんの申し出に応じまして,様々な合理的配慮が行われてきましたが,今後の大学共通テストにおいてもそういうことを継続することが必要ではないかという,そういう関心で参加をさせていただければと思っております。どうぞよろしくお願いします。
【三島座長】
 よろしくお願いいたします。それでは,渡部委員。
【渡部委員】
 渡部と申します。普段は大学で主に現職の先生方,現職の教員,あるいは教員を目指す,そういった学生を相手に英語教育,言語教育,そういったことを研究しながら,また共に学んでいるところであります。
 この会議,この場に私がいるということは全く想定していませんでしたので,2か月ほど前でしょうか,だから言ったじゃないかというようなことを偉そうに言っていたんですが,にわかに緊張しているところです。これが適切な例えかは分かりませんが,聖書に,新しいワインは新しい入れ物に入れなさい,革袋に入れなさいと。そうしないと破れてしまいますというのがありますが,何かそういったような印象を受けてきたんですね。内容がどんなにすばらしくても,受け皿が準備できていないとそれに合わないということになろうかというふうに考えられるんじゃないかと考えてきました。
 内容にいたしましても,まだ私は十分に詳しく理解しているとはもちろん言えませんので,勉強しながら,誰のための教育改革かというところを考えながら,ここで議論をする場に参加させていただければと考えて思います。よろしくお願いいたします。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,芝井委員,どうぞお願いいたします。
【芝井委員】
 私,私立大学連盟から代表として参加しておりますので,次回発表の機会を頂戴できるようですから,その立場をしっかりと表明しておきたいと思うんですが,それとは別に個人としまして少し申し上げますと,やはり今回のことが失敗であったということをどれほど強く認識できるのかというのが,議論の共通の合意事項で出発することが望ましいと考えています。それから,何らかの形の失敗があったわけですが,それが最終的には高校生,受験生を中心に,信頼を喪失した,毀損したということについてもはっきりと認識するところから最終的な出口への議論を,1年間の中で模索する必要があると考えています。
 あとはいろいろありますが,今後の議論の中でお話ししたいと思います。ありがとうございます。
【三島座長】
 それでは,どうもありがとうございました。
 それでは,議事に入ろうと思います。まず,議事の1番目でございますが,令和3年度,来年度の大学入学者選抜に係る大学入学共通テストの報告でございます。これにつきましては,事務局から,西田大学振興課長からよろしくお願いいたします。
【西田大学振興課長】
 では私の方から,令和3年度大学入学者選抜に係る,その中で行われる大学入学共通テストについて御報告をさせていただきます。資料1-1,それから1-2,1-3がその関係資料になっておりますが,1-1,1枚でまとめておりますので,こちらに沿いまして御説明をさせていただきます。
 大学入学共通テストにつきましては,令和3年1月に初回が実施をされるということになっておりますが,昨年の6月に文部科学省からその教科科目や試験時間について,大綱というような形で決定。それから,大学入試センターから試験の配点であるとか出題方針などについて決定をし,公表をしておったところでございます。それにつきまして,昨年12月の国語,数学における記述式問題の導入見送りというようなことになりましたので,その導入見送りを受けた形で去年の6月に発表しておったものを一部改定をして,先月29日に発表したということでございます。
 資料1にございますとおり,大学入学共通テストは,知識・技能のみならず思考力・判断力・表現力も重視して評価をするものという趣旨のもと,マーク式問題についても,知識や理解の質を問う問題とか,思考力・判断力・表現力を発揮して解くことが求められる問題を重視するというような工夫・改善をしております。
 3のところにございますとおり,国語,数学で導入する予定だった記述式の問題,これは見送りになりましたので,国語につきましてはマーク式問題で,大問4問,記述式で1問の,試験時間100分,マーク式の配点200点で,記述式は5段階評価であるというふうに発表しておりましたが,今回改定をし,マーク式の大問4問,それから,試験時間は80分,配点は200点という形に変更。それから,数学については,出題方法としてはマーク式と記述式を混在させたような形で出題する予定で,70分100点というところでしたが,記述式はなくなりましてマーク式のみにし,試験時間は70分,配点100点というような形で変更するということを発表させていただきました。
 それから,英語については記載のとおりですが,もう一つ,大学への成績提供について,記述式問題の導入見送りに伴いまして,成績提供日,従来のセンター試験の提供日より,記述式の採点があるので,それを考慮して後ろ倒しにしておったわけですが,それを従来ベースに戻しまして,約1週間前倒しする形での成績提供をするというような形で,今回改定をさせていただいたところでございます。
 私からの説明は以上です。
【三島座長】
 それでは,ただいまの御説明でございますが,何か御質問ございますでしょうか。柴田委員,どうぞ。
【柴田委員】
 本件,前回の委員会でも私の方からもお願いしましたが,特に大学にとりましては,成績提供が1週間後ろ倒しになっていたというのは非常に苦しいところだったので,これが改善できたというのは大変ありがたく思っておりますし,大学入学共通テストの普及にも影響があるのではないかと懸念していたのですが,善処いただいて感謝したいと思います。どうもありがとうございます。
【三島座長】
 ほかに御質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは,議題の2にまいります。中央教育審議会(中教審)の第124回における意見の御報告でございます。事務局から御説明をお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
 それでは,私から御報告させていただきます。資料の2を御覧ください。資料2,1枚紙でございます。
 これは1月24日の中央教育審議会の総会におきまして,私ども事務局の方から,大学入試改革を巡る昨今の動きと,それから,本検討会議の設置について御報告をした際に頂いた関連の御意見でございます。
 大きく4つに分かれますけれども,まず1つ目として,今般の経緯の中で,課題への対応が不十分で,受験生等の不安を考慮して,延期・見直しの判断がされたことはやむを得ない面があった。ただ,英語の民間試験の活用については,小学校でも英語が変わる中で,高校でも4技能がバランスよく学ばれる好機となるはずだっただけに,準備を進めてきた教育委員会としては少々残念であったと。大学入試を高校教育の改革に利用するという考え方に異論もあるけれども,入試が変わらない限り,高校の教育は大きく変えられないというのが残念ながら事実である。高校で学んだことが大学入試で正当に評価されるということも重要である。
 改革を進めていく上で,課題は小さいに越したことはないけれども,課題の全くない制度の構築は難しいので,実施によるメリットの大きさも考慮する必要もあるのではないか。英語4技能,それから,記述式問題の充実は重要なので,何もなかった状態に戻すのではなく,改善を加えた上で勇気を持って改革を進めていただきたいという御意見が1つ。
 それから,2つ目のまとまりですけれども,一旦決めた事柄を急に変更したり,あるいはやめたりするというのは,現場が一番困ることであると。今回の事態に至ったのは,想像力の欠如だったのではないか。そういう観点で,この本検討会議には,高校生に近く,そして様々な背景を持っている子供たちのことが理解できている人が委員として入っている必要があるのではないか。大学入試のためだけに勉強するわけではないけれども,入試で問われるスキルや知識を3年かけて育成していく必要があるので,早い時期に全体像を示していただきたいということで,これは私どもの方から,本検討会議の委員の構成につきましても御説明を申し上げたところでございます。
 この御意見が高校生の立場に立ってという御意見だったのに対しまして,今の高校生にとってよいものと,それから,これからの時代を生きていくために必要な力を,今の高校生にどうつけるのかということ,この両方の視点が必要ではないか。これからを生きていく上で必要になる力は,大学で学ぶ力にもつながると。それらは現行の学習指導要領でも,それから,次期学習指導要領でも示されているものであり,それに基づいて入試が行われているということについては変わりはないのではないか,こういった御意見。
 そして,最後のまとまりでございますけれども,高大接続改革については一定の時間をかけて幅広い視点から検討が加えられてきたものであるけれども,経済的な状況や居住地域,そして心身の障害の有無に関わらず受験ができる条件整備をするために立ち止まることにしたということは理解する。開かれた入試制度となるための,本検討会議での検討に大いに期待をすると。
 それから,初等中等教育で今,ギガスクールということで,1人1台PCということを進めようとしておりますけれども,将来的には入試の内容やあり方を,こういった動きが変えていくかもしれないし,働き方改革にも大いに関係があると。こうした点にも着目していくべきではないか,こういった御意見がございまして,総会の渡邉会長からも,これらの御意見を検討会議の場で御紹介をお願いしたいというお話がございまして,今,御報告をさせていただいたところでございます。
 以上でございまして,それに加えまして,今,お手元に参考資料2という資料が配付されているかと思います。大学入学者選抜関連基礎資料集ということで,これは前回も同じような資料をお配りしておりますけれども,若干資料を増補しておりますので,簡単に御紹介を申し上げます。ちょっと時間の関係もありますので,恐縮ながら目次をベースに御紹介をしたいと思います。
 まず,1.です。大学入試のあり方に関する,まさに本検討会議につきまして,要項ですとか,あるいは先般の大臣からの冒頭の挨拶ですとか,あるいは本検討会議の関係の令和6年度の大学入試に向けたスケジュール,こういった資料を,前回別の資料としてお配りしておりましたが,この資料に統合しております。
 また2.大学入学者数等の推移について。これも前回お配りをしておりましたが,下から4つ目ぐらい,男女別,都道府県別,こうしたいろいろな差があるという御意見があったことを受けて,男女別,県別の大学進学率,あるいは短大進学率。それから,18歳人口と大学進学率の推移,こういった資料を付け加えてございます。
 その次の3は前回一緒でございますが,4.のところで,高大接続改革の経緯についてということで,大学入試制度のこれまでの変遷や,高大接続改革の議論・検討の流れですとか,あるいは大学入試改革に関する議論の推移ということで,提言とか答申のポイント。それから,次のページにまいりまして,英語成績提供システムで指摘された課題ですとか,あるいは記述式について指摘された課題,あるいは,導入に関連する経費とか,概ね前回の資料を別に配っておりましたけれども,こちらの基礎資料ということで統合して移行させているということでございます。
 それから,5.の入学者選抜の実施状況ということで,上からいろいろ実施状況の資料が45ページから49,50ページあたりまでありますけれども,これに加えて,個別入学者選抜改革の進展ということで,前回も配っていたんですけれども,いろいろな大学にお話を伺って資料を更新しております。
 それから,右側にまいりまして,障害等のある入学志願者への配慮の状況。先ほど宍戸先生からも御紹介がありましたけれども,障害者施策全体の流れですとか,それから,不当な差別的取扱いや合理的配慮に関する基本的な考え方ですとか,障害者差別解消法の概要,こういったものを付け加えたものと,それから,センター試験で様々な配慮がされていて,その配慮はどんな配慮があるのかとか,どの程度の数の方々がその対象になっているのかとか,そういったことをここでまとめて掲載しております。
 それから,最後,子供の貧困対策についてということで,先般もいろいろと御紹介がありましたけれども,貧困対策に関する大綱のポイントですとか,あるいは大綱の概要ですとか,それから,末冨先生から,生活保護世帯に属する子供たちの大学進学率が大きく下がっているというか,それ以外の子供と比べて大きな差があるというお話がございましたけれども,その辺のデータを内閣府の方から頂いて,67ページになりますけれども,ここに掲載をしているということでございます。
 これらの資料,全体として最初のページにございますけれども,調整してさらに増補を加えていきたいと思っておりまして,またそれから,先生方のこれから意見発表を頂いたり,また御指摘を踏まえながら,私どもの方でも作業をして,さらに増補をして,ここの検討が実りのあるものになるようにしていきたいと思っております。
 ちょっと今回は時間の関係で目次ということでございますけれども,また議論の中で,折に触れてこの資料の御紹介をさせていただきたいと思っております。
 以上でございます。
【三島座長】
 御説明ありがとうございました。
 それでは,先ほどの資料2の中央教育審議会での御意見というところで,何か御質問や御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。じゃあ末冨委員,どうぞ。
【末冨委員】
 日本大学の末冨でございます。中央教育審議会の御意見というのは,この間,特に高校の現場を中心に熱心に取り組まれた方たちが残念な思いというのもおありということで,私も思いの一端は理解できるつもりでございます。とはいえ,中央教育審議会であるがゆえにあえて申し上げたいのは,1つは大学との接続を考えたときに,どうしてもこの会議のトピック上,記述式と英語4技能というものに議論が特化してしまいがちになるということです。ただ,私も大学教員として大学入試も最前線で関わっておりますけれども,大学入学後に求められる知識・技能を高校段階でつけてもらいたいと。そのために入試をしているという点も確かでございますので,どうぞ全教科のバランス,特に大学教育で求められる専門教育の基礎となるべき高校教育のあり方も含めて,視野の広い御検討をいただくことが大事かなと思っております。
 もちろん私自身も英語4技能ですとか記述式は大事だと思っておりますが,それ以外にも社会科学分野でも,数学の基礎スキルというのはマストになっております。例えば,私の分野で言えばそういうことですけれども,大学との接続ということも踏まえて,是非中央教育審議会でも視野の広い御議論をというふうにお願いできればと存じます。以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。
 中教審とは,今後ともこの検討会の議論の状況を適宜報告するなど,連携を図ってまいりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,文科大臣御到着でございますので,ここで一言御挨拶を頂きたいと思います。文科大臣,どうぞよろしくお願いいたします。
【萩生田文部科学大臣】
 済みません,座って発言をさせていただきます。
 第2回の大学入試のあり方に関する検討会議に御出席をいただきましてありがとうございます。本日も,どうぞよろしくお願いしたいと思います。
 前回,白紙から検討ということに関わって,委員の皆様から様々な御意見があったとお伺いをしました。この点,私の記者会見でも質問がありました。本検討会議は英語成績提供システム及び大学入学共通テストにおける記述式問題の導入について,来年度からの実施を見送ったことを受け,受験生が安心して受験できるよりよい制度を構築するために,これまで指摘された課題や,延期や見送りをせざるを得なかった経緯も検証しつつ,改めて方向性を御議論いただくために設置したものであります。したがって,高大接続改革そのものですとか,英語によるコミュニケーション能力や思考力・判断力・表現力を育成・評価することの必要性は変わるものではなく,これらの重要性を踏まえた上で,入試と高校教育や大学教育との役割分担をどう考えていくか,どこまでを入試で問うべきか,また共通テストと各大学の個別入試との役割分担をどう考えるかなどについて,外部の有識者からのヒアリングも交えつつ,率直な御議論をいただきたいと考えているものであります。
 本日は,これまでの検討において,制度設計のどこに問題があったかを御議論いただく材料の1つとして,過去の検討経緯の整理も配付しております。よりよい制度を構築していくために,建設的で忌憚のない御意見をお願い申し上げて,まずは私からの御挨拶にしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【三島座長】
 大臣,どうもありがとうございました。
 それでは,議題の3に移りたいと思います。これが今日の一番大事なところかと思います。第1回でも申し上げましたように,過去の検討経緯を検証しなくてはいけないということでございますので,そこに入ってまいりたいと思います。
 それでは,資料は3でございますね。資料3を御覧いただきながら,大臣官房政策課長から御説明をいただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【塩崎大臣官房政策課長】
 大臣官房政策課長の塩崎でございます。よろしくお願いいたします。資料3は5までありますけれども,資料3-5が本体の文章となってございます。資料3-4として,その概要をつけております。なお,枝番がついておりまして,1が民間英語の関係でございまして,枝番2が記述式という形になってございます。本体資料はかなり厚いものですから,資料の説明については,資料3-1から資料3-3を使って説明をさせていただきたいと思います。
 まず,資料3-1を御覧いただきたいと思います。この資料の位置付けでございますけれども,先ほど座長の方からもありましたし,大臣の方からもありましたけれども,今後の検討に資するために大学入試英語の成績提供システムの導入及び記述式の問題の導入に関してどのような論点が出され,どう議論されたのかについて事実関係の整理を行ったものでございます。整理作業としましては,検討の発端となりました2012年8月の中教審の諮問以降としまして,それ以降の会議の議事録,報告等に基づいて整理を行ったというものでございます。なお,整理につきましては,作業の中立性を確保するために外部の弁護士の方々の協力も頂きつつ,大臣官房政策課の方で中心となって取りまとめたというものでございます。
 それでは,早速内容について御説明させていただきたいと思います。資料3-2,A3の資料になりますけれども,そちらを御覧いただきたいと思います。これは2012年の8月の中教審以降の検討プロセスを一覧にしたものでございます。資料中,各会議の開催時期を矢印で表記をしておりますけれども,その中で,青色の矢印については民間英語と記述式の両方について検討が行われた会議,緑色の矢印については,民間英語に関する検討が行われた会議ということで御理解をいただければと思います。
 左側の一番上の方に,中央教育審議会と書いてある矢印があると思いますけれども,中教審におきましては,高大接続特別部会という部会が設置されまして,これからの時代に必要な力を判定,育成をしていく観点から,高等学校の教育の改革,大学教育の改革,そして,その間を接続する大学入学選抜の改革という,この3者一体の改革について議論が進められたということでございます。
 そして,2014年12月にその答申が出されますけれども,大学入学者選抜の改革の関係では,現行の大学入試センター試験にかわる新しいテストを2020年度から段階的に実施すること。それから,思考力・判断力・表現力を総合的に評価するために,教科型に加えて総合型,合教科型の問題を出題し,回答方式としてはマークシート式だけではなくて記述式を導入すること。それから,英語については,4技能を総合的に評価できる問題の出題,若しくは民間の資格・検定試験の活用によって英語の能力をバランスよく評価するということが決められまして,今後の検討の基本的な枠組みが提言されたというものになってございます。これ以降の検討は,この表にありますとおり,この提言に沿った形で各種会議が開かれていくことになったというものでございます。なお,英語4技能の議論につきましては,この表中の左ちょっと真ん中辺ぐらいになりますけれども,茶色の丸で書いてあります,グローバル人材育成会議における議論の流れを汲みつつ,中教審の答申を受けて,その後,大学入試における外部試験の活用方策等について複数の会議のもとで議論が進められていくという形になったというものでございます。
 これが全体のプロセスでございますけれども,次に資料3-3-1という,これもA3の資料でございますけれども,そちらを御覧いただきたいと思います。こちらはまず,英語4技能に係るものをまとめたものでございまして,それぞれ表のいろんな論点が出てきた時点が分かるようにしているのと,それ以降の経緯を時系列で整理をさせていただいたものでございます。表中に四角囲いで書かれた文章がありますけれども,これは具体的な対応策としてまとめられたものを指しておりまして,また赤字で書かれているものについては,論点として残ったものという形で書かせていただいてございます。
 1ページ目の一番上段のところに,中教審の答申に沿ってでございますけれども,2015年1月に高大接続改革実行プランとして公表された実施までの主たる予定が書かれております。その下に,併せて実績というものを書かせていただいてございます。そして,英語の4技能評価に係る論点につきましては,5ページにわたるような形になってございますけれども,全体で14項目に分類をして整理をさせていただいてございます。
 まず,項目1の関係でございますけれども,英語4技能の強化につきましては,2014年の有識者会議において,まず独自に作問すべきなのか,それとも全面的に民間の資格・検定試験に委ねるべきかといったようなことが議論になりまして,結果としては今後の検討に,今委ねられるということになりましたけれども,その議論の過程で民間試験を活用する際の留意点として,多くの論点が指摘をされたということになります。
 これらの論点につきましては,2016年の5月から検討が始まる大学入学学力評価テスト(仮称)検討・準備グループのもとで行われたという形になります。この検討におきましては,本来的には各大学が個別選抜において実施することが望ましいけれども,ノウハウや作問,採点者,採点期間やコスト面などで課題が大きいとする意見があったということ。それから,大学入試センターが直接実施をするということについては,大規模一斉実施のための環境整備等の観点から,物理的に困難であるということ。それから,民間委託による実施については,継続性,安定性,セキュリティーや信頼性等の問題があるという指摘がなされたこと。
 一方で,民間の資格・検定試験を活用する案につきましては,4技能を総合的に評価するものとしては社会的に認知されていること,また,高等学校教育の場や大学入学選抜でも活用されているということが指摘される一方で,学習指導要領との整合性の問題,大学入学選抜としての妥当性の問題,実施場所の確保,受検料の問題等の課題が指摘されたということでございます。こうした議論の結果としまして,民間の資格・検定試験の活用に当たって懸案となるこれらの課題については,大学入試センターが一定の基準を設定し,それを満たすものとして認定した民間資格・検定試験を活用するということで,こうした課題をクリアするということで方針が固まったという流れがございます。
 そして,この方針が固まったことを受けまして,先ほど早い段階から挙げられていた論点についての具体的な対応が検討されまして,例えば,次の2ページ目のところにあります項目3のところ,学習指導要領との整合性につきましては,参加要件の確認過程において整合性がとれていることを確認するということになりましたし,4の高等学校教育への影響とか,項目7の受検回数の制限につきましては,受験生の負担軽減,経済格差が教育格差につながらないように配慮する観点から,高校3年生の4月から12月までの間の2回の試験結果を提供するという流れとなってございます。
 また,4ページ目の項目10でございますけれども,異なる資格・検定試験の結果の換算につきましては,国がCEFRとの対照表を提示することということなどが決まりまして,2017年7月に,大学入学共通テストの実施方針として取りまとめられたという経緯になってございます。
 なお,項目の5,2ページの方に戻っていただきますけれども,2ページから3ページにかけての項目8の経済的事情であるとか,地域的事情への対応,それから,障害を抱える受検生への配慮につきましては,参加要件の確認過程において試験実施団体に対応策を求めるということとされたということでございます。この実施方針を受けまして,大学入試センターにおきましては,具体的に参加のための要件の検討がなされたという経緯がございまして,2017年11月に大学入試英語成績提供システム参加要件という形で公表されてございます。
 この検討に当たりましては,その要件として,法的根拠に基づく認定制度ではないということ。それから,資格・検定試験としての質を評価するものではなく,あくまでもシステムに参加するための要件とすることが前提であるということ。さらに多くの民間試験団体の参加を得るという観点から,要件としては各実施団体の試験の枠組みを尊重しつつ,自主的な努力を促すものという形でまとめられたものでございます。
 この後,2018年12月に,このシステムの適切な運用を図るために,高等学校,大学,英語試験団体等の関係者の意見の調整の場として,大学入試英語4技能評価ワーキンググループが設置をされてございます。このワーキンググループでは,高等学校の関係者等から受検生が安心して準備ができるように,大学に対しては当該システムへの参加の有無,活用する英語試験の明確化,入試における4技能試験結果の活用の方策を早期に明らかにするよう,重ねて要望がなされたということ,それから,英語の試験団体に対しても,2020年度の試験の実施に関しまして,受検会場であるとか受検実施時期を早期に明らかにすること。さらに検定料の値下げについても重ねて要望がなされたということで,文部科学省,それから大学入試センターからも複数回にわたって要請がなされたという経緯でございますけれども,なかなかそれらが明らかにはならないという状況が続いたという流れがあります。
 こうした中で,毎年行う中での12月の試験の実施の有無であるとか,検定料,それから,障害のある受検生への配慮で,実施団体間での対応の差異が明らかになるということ。それから,昨年の10月になっても,なかなか試験会場等が明らかにならない状況が続いて,関係者の不安が高まる中で,受検生のシステムへの登録の申請の開始日である11月1日を迎えることになったという経緯がございます。文科省としては,こうした状態では経済的事情,それから,居住地域に関わらず,等しく安心して試験を受けられる状況になかなかなっていないと。自信を持って受検生に勧められるシステムにはなっていないということで,導入の延期の判断に至ったという流れでございます。
 課題としましては,民間資格・検定試験の活用に係る課題や懸念に対しましては,解決に向けた取組がなされたものの,システムへの参加要件を満たす範囲の中で,民間試験団体による自主的な努力を促す枠組みにおきまして,なかなか関係者の不安や懸念を十分に払拭できる取組を示すことができなかったということが挙げられるかと思ってございます。
 続きまして,記述式の方の説明をさせていただきたいと思います。資料3-3-2という資料を御覧いただきたいと思います。記述式の導入に係る論点としましては,全体として4項目に分類をさせていただきました。
 左側の方からですが,中教審の答申を踏まえまして,2015年3月から高大接続システム改革会議において,大学入学選抜試験の関連では,記述式の導入の仕方についての検討が行われたというものでございます。記述式の場合には採点に時間がかかるということで,テストの日程,採点体制,採点方式が当初から指摘がなされまして,コンピューターによる採点支援とか,CBTの導入等についても検討がなされたということではございますが,導入には十分な時間が必要であるとして,今後の検討課題とされたという経緯がございます。
 それで議論の結果,項目2の2ページ目を御覧いただきたいと思いますけれども,記述式の作問につきましては,問うべき能力の評価と採点等の課題の解決の両立を目指すということで,条件付きの記述式を行うということ,それから,対象教科については,当面高等学校で必履修科目が設定されている国語と数学にするということ。それから,試験の実施時期,採点方法や採点体制については,引き続き検討をするという形になりました。
 この会議に続きまして,2016年5月から,検討準備グループの検討において,引き続き検討されるとされた採点方法,採点体制,実施時期,プレテストの実施時期等について議論が進められたということでございます。そして,実施時期につきましては,高等学校の教育への影響,それから,大学の入試の合否判定の時期も踏まえて,現行の1月中旬の2日で実施をするということが決まったということ,それから,採点につきましては,大学入試センターが行うものの,限られた時間で効率的に行う必要があるために,民間事業者の試験を活用することとされまして,採点ミス,自己採点の問題についてはプレテストで検証するという形になりました。
 そして,2017年と2018年の2回にわたってプレテストが実施をされまして,3ページ目の項目3,それから,項目4,4ページ目の関連にくるのでございますけれども,まず自己採点と採点結果の一致率については,国語が7割程度,数学が8から9割程度で,2回のプレテストとも同程度であったということ。それから,採点ミスの割合につきましては,2018年度のテストにおいて国語で0.3%,数学で0.01%であったということが報告されたということでございます。この結果の要因を分析しまして,採点の質の向上を図るために,2019年度に採点に関する準備事業を実施して,センターと採点事業者との早期からの連携強化,それから,採点の各過程や全体のスケジュールの見直し等を進めるとされていたということ,それから,文部科学省においては,2019年の4月頃から,自己採点結果が実際の採点結果にも上振れをする傾向があるということを踏まえまして,国語の記述式の結果を大学入試の第1段階選抜でどのように活用するかも含めて,各大学に対して慎重に検討するよう,要請なども行われたということでございます。
 こうした中で,11月1日に英語民間試験,検定試験の導入延期の発表を受けまして,記述式の導入につきましても,とりわけ採点の質と自己採点との結果の不一致の幅に関心が高まったということでございます。係る観点につきまして,様々な改善策が検討されまして,採点事業者も対応を求めるなど,努力が重ねられた結果でございますけれども,最終的に大学入試センターの方から,採点者については,採点事業者において,より質の高い採点者を選抜するとともに,必要な研修を行うということで対応したいと考えているけれども,具体的に決まるのは2020年の秋になるということ,それから,採点の質については,採点者への事前研修であるとか,複数の視点で組織的・多層的な採点体制等の取組によって向上させるということが可能であるけれども,採点ミスをゼロにすることは極めて困難であるということ,それから,自己採点と採点結果の不一致については,採点の仕方を説明した資料を周知することとか,実際に模擬答案を用いた自己採点の動画の提供などによって,一定程度改善は見込まれるものの,大幅に改善することは困難であるといったようなことが報告され,また併せて各大学の個別選抜前に採点結果を本人に開示することが困難ということ,また,テスト実施日を早めることについても困難であるといったことが報告されたという経緯がございます。
 こうした状況を踏まえまして,文部科学省としては,受検生の不安を払拭し,安心して受検体制を早急に整えることは現時点では困難であるという考えのもと,見送りの判断がなされたということでございます。課題としましては,記述式の導入に関する課題,懸念が検討の早い段階から指摘がされ,検討がなされましたけれども,具体的な解決方法については,大規模なプレテストの実施を通じて検証するものとされまして,プレテストを通じて明らかとなった採点の質,それから,自己採点と採点結果の不一致について,入試との関係で厳密な公平性・公正性が強く求められたことが挙げられるということが指摘できるかと思ってございます。
 全体として,項目ごとという形で整理をさせていただいておりますけれども,実際の議論全体が絡んで議論が進んでおりましたので,大変分かりにくい説明になったかという点についてはお詫び申し上げますが,説明としては以上となります。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。
 ただいま御説明いただいた資料と,それから,その次に3-4-1と4-2に概要にまとめたもの,それから,3-5-1,5-2が今,一番大元になる検討経緯の整理が,英語の問題と,それから,記述式の問題,それぞれに分かれて冊子になってございます。大変膨大ないろいろなデータが入ってございますので,こういったものを見ながら,今回はスタートということでございますけれども,この中心になった経緯をしっかりと検討していきたいと思いますので,よろしくお願い申し上げます。
 それでは,ただいまの御説明に対する質問,あるいはこの検討会議で議論すべき事柄などを含めて御発言をお願いしたいと思います。御発言を希望される方は,名札を立てていただければ,できるだけ順番に指名させていただきます。それから,時間の都合上,御発言はなるべくコンパクトに,2分程度を目途に御発言いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,いかがでございましょうか。益戸委員。
【益戸委員】
 益戸でございます。どうぞよろしくお願いします。私はこの委員会で唯一の経済界からの委員です。そこで,企業での経験に基づいても,今のお話に対する意見を述べさせて頂きます。
 大きな政策,言ってみればプロジェクトを立案していく場合は,まず最初に課題,問題点,そしてリスクをしっかり洗い出して,実現可能なのかを多角的に検討することがとても大切なことです。私は入学試験の専門家ではありませんが,この入学試験のような技術的な要素が強い問題は,結論を決めてから実現策を考えるのではなく,実現策を考えながら方向性を決めるべきだったのではないかと感じます。
 やはり今回の件は,どうも結論が先にあったのではないでしょうか。制度の細かい設計が追いついていかない中で,どんどん議論が進んでしまった。その理由は,2020年というターゲットイヤー的な目標が定められていて,それに縛られ過ぎていたのではないかなと思います。当然のことですが,大きなプロジェクトを行う場合は,いつまでにやるかということを決めるわけですが,その議論の過程や,最終局面で,勇気を持ってそのスケジュールを後ろ倒しにしていくことはとても重要な事です。考え方次第ですがある意味では当然の事かもしれません。
 一方,この検討会では,令和6年度の大学入試を目指して検討しようということになっています。この点は新しい学習指導要領のもとで,どんな勉強をして,どんな結果に結びついたのかということを,最初の入試として問うターゲットにする事は妥当です。しかし,今回の反省を踏まえますと,この検討会においては,その実現可能性も同時に,しっかり考える事が大切です。
 また,検討会として取りまとめをしますが,その局面では,直ちにやる事,直ちにできる事,すなわち,確実に実現が可能であるという事と,もう一つは,将来に向けた検討課題となる事をはっきり区別して残す事が重要ではないでしょうか。今のIT技術は非常に進歩が早いわけですから,実現可能かを検討している間に,確実に実現できることも出てきますし,一方でもう少しこうなったら実現できるぞ,ということも出てくるでしょう。それを将来に向けた課題として,必ず残していくということを忘れない様にしたいと思います。
【三島座長】
 ありがとうございます。それでは,末冨委員,どうぞ。
【末冨委員】
 末冨でございます。まず,限られた時間の中で非常に丁寧に,ご説明いただきました。口頭での説明はかなり端折られたなという気もいたしますけれども,私は一読して,何が課題としてクリアされなければならなかったのかということが大変よく分かる整理をしていただいたということで,まずもってこの作業に携わられた方々に対して感謝を申し上げたいと思います。
 その上で,今の整理を拝見して改めて思いましたのが,1つは益戸委員と全く同じで,やはりリスクですとか技術的な制約条件というものを踏まえながらの再検討がされなければ,もう一度同じ轍を踏むことになるであろうということです。それと同時に,英語4技能と記述試験は私も大事だと思っていますけれども,365日24時間というのは誰でも同じですが,高校生にとっての3年間の365日24時間というのはかなり忙しい日々だと思います。そうした中で,英語4技能ですとか記述式の学びというものに,どのようにバランスかけていけるのかということで考えると,まさに高校との接続ということを丁寧に意識されなければならないかなと思っております。
 ところで,ちょっと大きな視点で申し上げますと,この見直しについては,私,もう少し丁寧に説明していただきたいかなと思う点がございます。1つは,教育学者として,この間一貫して疑問を感じておりましたのが,英語学習指導要領と英語の民間試験とが対応しているという御説明をされていたと思うんですけれども,それがどのようにそういうふうに御判断をなさったのかということについて知りたいなと。かなり性質が違う民間団体さんの試験について大学共通テストとして位置付けるという点につきましては,是非教育論の観点からは詳しく伺いたいですし,専門家を挟みながらの議論をやるべきであろうと思います。
 もう一つが,今の件を拝見しますと,やはり民間団体さんに記述式の採点ですとか,それから,共通テストを担っていただくことが妥当であったのかどうかということについては,やはり疑問を感じざるを得ません。とりわけ受験生の一生に関わるという意味では,民間団体様もリスクを負われるわけです。そうしたリスクについて,耐えられない民間団体と判断された民間団体さんは事前に離脱されたところもありますし,恐らく4技能試験が始まってしまえば,そこから離脱される可能性もあるという意味では混乱が防げなかったのだろうと思います。この国の大学入試における民間との関係というものをどのようにルール付け,整理していくのかということについては,やはり検証すべきと思います。
 私も一昨日まで,東京外国語大学で集中講義をしておりました。恐らく日本全国の中で,最も英語4技能のスキルを持っている学生が集まる大学ですけれども,この件について何か意見はございますかと聞いたところ,やはり民間団体が担うということについては,参考書も受検料もとても高いんですという意見が出ました。私たちはすごくお金を払ってきたけれども,それがとても大変でしたということについて,高校時代の思い出として言ってくれた学生もおりましたので,例えばそうした費用の面もそうですし,民間団体さんに受験生の一生を左右する共通テストのリスクを共有していただくということへの検討というのをどのようにすべきかというのは,恐らくこの会議の論点の1つにあるのではないかと思います。
 それから,今回大変丁寧な検証をいただいたんですが,私自身も教育行政学の専門家で,この間の文科省の意思決定というものをもう1回おさらいはしてまいりました。ただ,今回の場合には,例えば,高大接続システム会議ですとか中央教育審議会,あとワーキンググループのように,省内に会議体として設置された意思決定が中心となっていると思います。ただ1点ずっと疑問に思っているのが,2016年の高大接続システム会議の最終報告が3月に出ておりますけれども,その時点では,今確認したとおりですが,必ずしも英語民間試験については積極論ではなかったというふうに私自身は読み取っております。ただし,その後の2016年8月の文部科学省内の決定においては,英語民間試験に対して,現在に至る積極的な流れというのが形作られており,その5か月の間にはほかのいかなる会議体も設置されていなかったのではないかというふうに考えております。
 ちょっと今の点は非常に細かい点ですけれども,例えばなんですが,そうした省内の意思決定が,幾つか時系列の矢印が長い部分がございますけれども,これらの会議と会議の間の意思決定をどのように埋め,かつ判断されていかれたのかという検証も併せてしていただいた方が,なぜ英語民間試験で大丈夫だと思われたのかといったような経緯を検証し,かつそのときに,何が重要だと思われたのかといった,英語4技能試験といったものについて,何を重要だと思い,そのような判断がされたのかといった,共通テストとして何がふさわしいかという判断の検討については,とても大事な内容を含んでいるのではないかと思います。
 以上,長くなりましたが,検証の論点ということでお願いいたします。
【三島座長】
 ありがとうございました。今の英語の民間テストでよいという経緯のところでは,何か塩崎課長ございますか。
【塩崎大臣官房政策課長】
 指導要領との関係というお話がございました。少し私の方では,外形的なところの会議の過程を追っていく中では,外形的な方のお話しかできないんですけれども,実際に各英語試験団体が行おうとする目的,それから,試験の作問の方向性,それから,実際の作問というものを文科省の方に提出をしていただきまして,そこで学習指導要領を見ている,視学官等を始め専門家が実際にその団体と意見交換をして,指導要領の整合性がとれているのかどうかというのを判断されたという形で記録が残っているというものでございます。
 それから,省内の会議体が中心で,2016年の3月から2016年8月で,英語4技能に対する姿勢が変わっているのではないかという御指摘のところでございますけれども,実際,1つは,英語力の方については,先ほどの資料3-2になるかと思いますけれども,こちらの緑の線で引いてある,英語力評価及び入学選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡会議というものが開かれてございまして,その中で,大学の入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する行動計画についての議論がずっと進んでいたということで,そういった流れ。それから,具体的にはこちらの方の大学入学希望者学力評価テスト検討・準備グループの方の検討の中で,実際にはそういった流れができてきたということでございますけれども,一番大きいのが,とにかく英語4技能についてきちんとバランスよく評価をするためにどうしたらいいのかという前提があったというのが実際のところでございます。
 それから,会議機関の引き継ぎの検証の必要性ということでございまして,確かに会議体の中では実際に有識者会議の先生方については,前の会議の報告書,それから,ある程度議事録という形で引き継がれているということにはなりますので,事細かな前段での会議の状況が必ずしも伝わっていないという点についてはそのとおりだと思うんですけれども,基本的にこれまでの流れとしては,そうした会議の流れについては事務方,それから,資料,報告書といったような形で引き継がれてきているというところが確認できるというところでございます。
【三島座長】
 ありがとうございました。
 それでは,続いて渡部委員どうぞ。
【渡部委員】
 御説明どうもありがとうございました。流れが大変よく分かって助かりました。
 1件確認ですが,受検の件を検定の検にしたのは意図的に検定という意味ですよね。
【塩崎大臣官房政策課長】
 そのとおりです。
【渡部委員】
 検証ではなくて。
【塩崎大臣官房政策課長】
 はい。
【渡部委員】
 ありがとうございます。これから議論していく上で,幾つか区別をした方がいいかなということを,今伺いながら思いました。1つは,4技能の試験をするということと,民間試験を使うということはイコールではありませんから,これは区別して判断すべきだろうなと思いました。例えば,センター試験のような形にリスニングを入れたような形でスピーキングテストを入れる可能性を考えるのであれば,リスニングテストにつきましても5年以上検証して,生徒が公平に聞き取れるかどうか,そして点字を準備してということをしています。それで結果としていろいろ試行錯誤して,その検証の結果としてヘッドセットをするということになっています。これから熱心に熱心に重ねて入試というものが考えられるべきものですから,簡単に民間のテストをやればいいんだということにはならないかと思います。しかもCEFRで監査表がありますが,それはまた改めてということになろうかと思いますけれども,それぞれ並べられているテストは目的が違うテストです。したがいまして,同列に置くということはどの程度の妥当性があるんだろうなということは考えるべきだろうと思います。つまり,民間試験と4技能はイコールではないということが1つです。
 もう一つは,テスティングの見解,これは釈迦に説法ということになろうかと思いますが,テストの研究では,到達度テストと熟達度テスト,アチーブメントテストとプロフィシェンシーテストを分けるのが普通ですね。到達度テストというのは,これまで学習者がしっかり教えたことを学んだかどうかというテストです。それで熟達度テストというのは,彼らがこれから将来課されるテストをちゃんとできる能力があるのかどうかという,将来を見据えたテストです。過去を見るテストと将来を見るテストを区別するのが普通ですね。その両方のテストが,民間テストを並べられているリストでは一緒になっています。ですから,分けて考える必要があるんじゃないかなと思います。
 最後ですが,実証研究,あるいは海外の事例を検証したという形跡がないんです。おそらく議論はあったんだろうと思いますが,ただ今伺った限りでは,話題に上っていませんので調査が不十分ではないかなというふうに思います。例えば,韓国ではスピーキングテスト,4技能テストは頓挫しました。これ,今はっきりしているのは準備がなかったものですから,記憶を頼りに言ってますけれども,そういった事例をよく学ぶということが必要だと思うんです。それから,アメリカでもSATは2016年度から自由作文はオプションになっているはずですね。中国で大規模な入試改革が今,進んでいるというふうに私の学生も研究していますけれども,そこでスピーキングが入っているということは聞きません。
 ということで,それが分かった上で,日本でもやるんだと。それじゃあパイオニアになってやっていきましょうということは十分意味のあることだと思いますが,ただ,余りにも先に先に4技能があるからテストしなければいけないんだ,入試をしなければいけないんだというふうな,ちょっと論旨の飛躍が目立つように思ったんですね。したがって,幾つかの有効な区別をしながら議論する必要があるかなというふうな印象を受けました。以上です。ありがとうございました。
【三島座長】
 何かお答えはございますか。
【塩崎大臣官房政策課長】
 4技能を見ることイコール民間試験を活用することではないと,そのとおりで,実際に検討の中でも,実際に自分たちが自作をすべきではないか。先ほどありましたけれども,実際に海外の事例等も検討されています。それでやはり日本人は,どちらかというとA1レベルの方が多いので,むしろそちらを細かく見られるようなテストを作るべきではないかとか,いろんな議論がなされておりました。
 ただ,今,4技能を見るという中で,実際にそれじゃあどうするのかと,実施手段という形に検討としてはなっていったんだと思っておりますけれども,大学入試センターで自作するのは非常に難しいという,物理的に困難な状況。それから,先ほどちょっと申し上げましたけれども,各大学で実施するのも難しいと。そうすると,どういう形にするべきなのか。大学入学入試センターテストは2技能をやっておりますけれども,2技能をそれぞれ別々に見るというよりかは,4技能をきちんとやるべきではないか,まとめてやるべきではないか,そういった議論の中で,社会的にも認知されている民間の試験をうまく活用するという方向で議論が進んでいっているという流れが見てとれるかと思っております。
 それから,CEFRのところについて,先ほど到達度テストと熟達度テストという話があったと思いますけれども,実際中教審の中でも,テストについては達成度テストと発展レベルのテストと,高校段階で見るものと大学に入る能力を見る発展テストという2つのテストが実際提言されております。ただ,達成度テストの方については議論の過程で難しいという形でなくなり,最終的には発展度の大学入試に関する共通テストという形で議論がなされてきたと,そんな経緯もあるということで,ちょっと今回,紹介はできておりませんけど,そういった様々な議論がなされているのは事実でございます。
【三島座長】
 ありがとうございました。
 それでは,続いて小林委員どうぞ。
【小林委員】
 先ほど末冨委員から御指摘のあった,学習指導要領と民間試験との関わりですけれども,資料3-5-1,民間指導要領活用の導入に関わる検討経過の整理の中の20ページ目のウのシステム改革会議4行目に「現行の英語の資格・検定試験は,学習指導要領で示された内容を必ずしも包括したものではないのではないかなどの課題があり,新たな資格・検定試験を開発するなど,高等学校で学習した英語の能力を適正に測るための方策をとっていただきたいという旨の意見が出た」とあり,それから次のパラグラフの第8回会議の5行目に「高等学校の学習とどうつながっているか分からないので評価に使いにくいという意見」があります。次のページ,エの連絡協議会でもその議論の中で,例えば2パラグラフ目の1行目に「TOEFLやIELTSはオーセンティックな英語であり,アメリカの大学で使われているとか,イギリスの大学の講義で出てくるといったものであり,今の高等学校の教科書では恐らくいい点は取れないだろう,日本の教科書をオーセンティックにしていくとか,海外の教科書等をどんどん使っていくことも必要である。ある程度文化も分かっていないと答えられない問題が多い」というような指摘もありました。
 ところが,最終的に22ページのオの検討準備グループで学習指導要領の問題が討議されていましたけれども,最後のパラグラフで,「学習指導要領との整合性が図られていることについては,試験団体から提出された資料を英語教育の専門家,学習指導要領を担当する職員などにおいて,すべて整合性がとれていることを確認したと文部科学省から報告された」というふうに書かれていて,これが少し乱暴というか,根拠が権威的に決められているという印象を持ちます。委員の間からはいろいろな疑問を出されているにもかかわらず,それも根拠のある意見を出されているにもかかわらず,最後はこういう形で結論付けられているというのは,これも検証するべき問題点をはらんでいるのではないかというふうに感じました。
【三島座長】
 ありがとうございました。ここはいかがですか。よろしいですか。
【塩崎大臣官房政策課長】
 ちょっと我々,外形的なところで調べているので,実際この中でどういう議論で整合がとれたかというところまで調べきれていないというところなので,ちょっとそこについては宿題を頂くという形にさせていただきたいと思います。
【三島座長】
 それでは,ほかに御意見ございましょうか。
【末冨委員】
 最初に大臣がおっしゃったことと関わりまして,検証の論点の1つが,よりよい入試であるべきにはというのが,やはりこの会議で一番大切にしたいことで,特に安心して受検できるといったときに,今回の検証の範囲においては,やはり会議体が中心であるということと同時に,文部科学省ではない様々な個人,団体から省に寄せられた意見というものがどのように考慮されなかったり,あるいはされたのかといったことも含めて,一度整理し,検証する必要があると考えます。可能であれば,極めて具体的に憂慮して意見を文部科学省の方に提出されたり,何らかの形で発信された有識者,それから,高校生もたくさんいらっしゃると思いますので,そうした当事者の,文部科学省の外にいた専門家ですとか,あるいは当事者としての高校生といった声を挙げた人たちの意見についても,やはりできればお招きして検討を重ねていく必要もあろうかと思います。丸っきり反対だとおっしゃった方はこの改革についてはいらっしゃらないと思います。ただ,立ち止まるまでの方式について,余りにも不安であると。前回も同じことを申し上げましたけれども,重ねてお願いをしたいと思います。それはよりよい入試に至るとても大事な手続だと考えるからです。以上です。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,芝井委員さんどうぞ。
【芝井委員】
 ちょっと幾つかの論点にわたるわけですが,1つは,これまで当初,現在想定されている共通テストの起源でいうと共通一次で,これは明らかに国立大学の二次試験を想定した一次試験という役割だったと思うんですが,明らかにセンター試験になってアラカルト方式が入ってきました。それによって徐々にですけれども,多くの私立大学はセンター試験に参加するという,そういう歴史をたどっていると思うんですけれども。ただ,今回の共通テストを構想するときに,少しそういった各大学における入試,つまり合否のシステム全体ではなくて,単純に共通テストと称するものをどういうふうに理念的に作り上げるのかということが前に出過ぎたように思うんですね。私立大学というのは,実際にはこういう形のテストではなくて,AO入試であるとか,あるいは内部進学であるとか,スポーツ推薦とか多様な入り口を持っていて,その中で様々な基準を持っていて,その全体の定員の一部が今回で言うと共通テスト,現在までで言うとセンター試験を利用した形の様々な入り口として構想されていたという歴史があるわけです。
 そのときに,確かに共通テストをどのように構想するのかって大事なことなんですが,それが全ての受験生を縛っているかのように考えること自体がちょっと現実に合わない。だから,そこはしっかりと見ていただかないといけないんだろうと思います。それともまさか今回の共通テストで全大学受験生に全て押し付けるつもりだったんですか。そんなことはあり得ないですよね。ですから,そこは少し議論としては分けていただかないといけないと思っています。
 それから,もう一つは同じようなことなんですが,確かに新学習指導要領の中で,例えば英語で言いますと,4技能を指導するというふうに書いてあるんですけれども,じゃあ今回の共通テストで,その4技能をふさわしい形で測らねばならないという形で,測れればいいですが,本当に測れるまでにならないんでしょうか。例えば,英語学者の中には,読解力がすごく大きな役割を果たしているので,読解力をしっかり測ることができれば,4技能の大方を覆い尽くすことができるとおっしゃる方もいらっしゃるわけです。あるいは,少なくとも大変難しいスピーキングの問題を少し脇にのけて,3技能であればかなりの程度英語の力を判断できるじゃないかということをおっしゃる方もいらっしゃるんですね。ですから,高校の中で4技能は必要だということと,共通テストでどんなふうに測るのかというのは,やっぱり基本的には別問題でなくてはいけないと思っています。
 先ほど言ったように,私立大学にとってはごく一部の入り口が共通テストを通じて入ってくるわけですから,もっとほかの調べ方,判定の仕方があるわけです。高校でしっかり4技能をやっていただいているならば,その資料を出していただければ,私たちは合否を出すことはできる。だから,共通テストに過大な,まさに過大ですね,余り大き過ぎるような課題を押し付けること自体が,今回のやっぱり迷走を招いた1つの原因ではないかと思っています。以上です。
【三島座長】
 ありがとうございます。ほかに御意見ございますでしょうか。柴田委員,どうぞ。
【柴田委員】
 今回の改革,我々,この学習指導要領の改訂が終わる2024年ぐらいがゴールであろうと当初思っていたのが,2020年から導入するというのは,かなり唐突な感があったのですけれども,その決定過程というのが,先ほどの御説明の中に入っていたのかもしれませんが,ちょっと理解できないということが1つと,今,芝井先生おっしゃったのですが,この英語の民間試験というのは,共通テストとイコールではない性格もあるわけですね。共通テストというのは1月にあって,2月に成績提供があるけれども,その前年秋からシステムとして大学に提供される。こういう基本設計というのがどこで設計されたのか。またある段階では,共通テストの英語を全てこれでかえて,入試センターでの作問はないというような設定があったように記憶していますが,そういう変遷はどこで進められたのかというのも,振り返ってみて大変気にかかるところでございます。
【三島座長】
 ありがとうございます。その点はいかがでしょう。もしあれでしたら,また宿題としてと思いますが。
【塩崎大臣官房政策課長】
 実際に今,話がありました,もう共通テストは全部やめて,英語の4技能の試験の方に全部任せて,大学の共通テストの方では英語をやらないといったような意見も,実際に検討の中ではやっておられたというのは確認ができております。ただ,最終的にはまだ2024年の新しい次の学習指導要領での対象者が出るまでの間は,少なくともこの共通テストは残すと,英語は残すということで,今後またそれについては検討するという流れになっていたかと思ってございます。
【三島座長】
 ほかにいかがでしょうか。
 それでは,もしないようでございましたら,議題の3に移りたいと思いますが,よろしいでしょうか。最後にもし時間が残れば,また御意見を伺えればと思います。
 それでは,今後,各委員からの意見発表,あるいは外部有識者からのヒアリング等を交えつつ,引き続き過去の経緯の中で何が問題だったかということを整理・分析していくと,すなわち検証はこれからということでございますけれども,できるだけ今出していただいたようないろんな側面から,どうしてそれが決まったのかとか,どうしてそういうものを抽出したかということを提唱していこうという段階でございますが,今日の議題の4が,委員からの意見発表ということになってございまして,前回に団体代表から始めたいと申し上げましたけれども,すぐに都合がつかない委員もおられましたので,本日は川嶋委員と,それから,牧田委員に,ともに10分程度ずつ意見発表をお願いしたいと思います。お二人から続けて発表いただいた後,まとめて質疑の時間をとりたいと思いますので,川嶋委員,そして牧田委員の順番でお話をいただければと思います。
 じゃあまず川嶋委員,どうぞよろしくお願いいたします。
【川嶋委員】
 ありがとうございます。大阪大学の川嶋です。今,座長の方からも御説明があったように,前回の説明では,しばらくは各団体からの選出委員の意見表明だというふうに聞いていたので,私のんびり構えていたところ,団体からの御意見はすぐには出ない状況なので,何とかなりませんかというお話がありました。最初に話した方が楽かなと思いまして,簡単に引き受けたのはいいのですが,考えれば考えるほど,難しい問題かなと実感している次第です。
 これからお話しするのは,今回の高大接続改革も含めて,高等教育の改革に多少なりとも政策策定に関わってきましたし,また入試については国大協の入試委員会で専門委員も務めてきたという経緯もあり,そういう個人的な体験,経験から,今回の高大接続改革,あるいは大学入試改革をどう理解すればいいのか,あるいは私がどう理解したのかということについてお話しさせていただきます。
 スライド番号2のところは,前回の第1回でこれまでの経緯について私なりの解釈をお話しさせていただきましたものをまとめたものです。大学進学者が増加して,進学率は今,52,3%になっております。一方で,大学が増加して入学定員が増えておりますので,懸念されていたようないわゆる大学入試が過熱するということもなく,特定の大学にこだわらなければ,数字上はほぼ大学に希望する人は入れるという大学全入時代がやってきているというのは,ここ20年,30年の関係者共通の認識かと思います。
 それから同時に,進学者が増えたということで入試の方法も多様化しておりまして,先ほど芝井委員の方からもお話がありましたけれども,AO・推薦入試というのが拡大してきておりまして,私立大学だけをとれば,既にAO・推薦入試を通じて入学者の半分以上が大学に進学しているという状況にもなっています。
 そういう状況の中で,大学進学希望者の二極化が起きておりまして,二極化より多極化と言った方がよいのかもしれませんけれども,入試センター試験の受験者層を分析したセンターの論文等によりますと,国立,公立大学を目指す学生が10万人程度,それから,国立大学と併願する私立大学志願者が十数万。一方で,一切成績請求をしない受験者が10万人,そして残りが私学専願という形で,進学志望者も二極化どころか,多極化しています。そういう状況の中で課題になってきたのが,一方で非常に厳しい学力選抜が行われている大学もある。他方,2科目,3科目の試験だけとか,あるいはAO・推薦という形で,必ずしも学力を十分確認しないまま入試の合否判定を行っているような状況もある。他方,日本の社会は知識集約型社会,少子高齢社会がどんどん進展しているということで,答申等では予測困難な時代がやってくるとか,新しい時代,社会がやってくると言われている。
 そういう中で,日本の教育を改革し,一層充実させなければいけないということなんですが,これも前回お話ししたように,そういう状況の中で,大学入試も選抜ではなくて相互選択へ,大学と受験生の相互選択,つまり,受験生と大学をマッチングさせる大学入試に変えていくことが重要だと言われてきました。そのためには,アドミッション・ポリシーを明確にして,こういう学生に来てほしいということを公表する。それを受験生は確認して,入れる大学ではなく,入りたい大学を受験する。そういう意味で,選抜による高大接続ではなくて,高校と大学の接続は教育上の接続へと転換すべきだというようなことが言われております。そういうことが言われたのは,結局,入試の高校教育への遡及効果は非常に限定的になってきているからです。そういう状況の中で,大学入試だけを変えても日本の教育は変わらないということで,高校教育改革と大学教育改革も一体的に進める必要があるということで,高大接続改革ということが検討されてきたんだろうと思います。
 では,どういう前提で議論が進められたのかということですが,次の3枚目のスライドですが,この図は,高大接続改革会議特別部会の初期の頃に出されたと思うのですが,左上に現状が示され,高校教育,入試,大学教育があるが括弧書きに書かれているように,現状では,大学入試に過大な役割が期待されている。入試を通じて各大学の教育水準や学生の質を保証している。入試で大学進学希望者の能力・適性を判定し,それから,高校における学力の状況も把握し,高校における幅広い学習の確保と,高校生の学習意欲の喚起など,入試を通じてとにかく大学教育の質と高校教育,あるいは高校生の学びの保証の機能も負わされている。非常にたくさんの役割が大学入試1点に期待されている。これが大きな問題を起こしているので,これからは,それぞれ大学教育,入試,高校教育の機能を明確にして,それぞれの果たさなければならない役割を,それぞれの責任で進めていくべきだということです。ですから,大学入試というのは,大学へ進学を希望する者が,果たして入学後,それぞれの大学での学習に耐えられるかどうかの能力と,それから,4年後に卒業できるかの可能性を確認するというところに機能を明確にすべきであるということになったのだろうと理解しています。
 4番目のスライドですが,これは今お話ししたように,高校も現在主体的で対話的で深い学びを重視した教育改革,学習のあり方の変革が行われています。したがって,新しい学習指導要領はまだですが,現行の学習指導要領でもそういう方向で高校の教育改革が行われていますので,高校教育が変わるのだったら大学進学希望者の評価,大学入試も変えなきゃいけないでしょうということで,入試改革につながります。
 それから,大学の方も,先ほど申したように社会が変わってきていて,社会で活躍するために必要な能力とか知識もどんどん変わってきているということで,大学教育のあり方も変えていかなければいけない。したがって,新しい大学教育にふさわしい人を適切に受け入れるためには,入試における評価の方法も変えるべきだということになろうかと思います。
 1点,高大接続改革について申しますと,ほぼ同時期に中教審の初中分科会に高等学校教育部会というのが設置されまして,高大接続だけではなくて,高校教育のあり方全体の議論がされていました。高校教育が非常に多様化している。進学者が98%で,国民的教育機関になっているということもあり,高校教育が極めて多様化しているけれども,高校教育,高等学校卒業者としての共通性,標準性も必要ではないかということで,コアの議論がなされました。コアのうち,テストで測れる能力,主に知識・技能,思考力・判断力あたりは,高等学校教育の共通の成果として,先ほど課長さんの方から達成度テストというお話が出ましたけれども,このときは高等学校基礎学力テストというものを導入してはどうかという議論もされています。つまり,大学へ進学する生徒さんだけではなくて,日本の高等学校で学ぶ全員についてきちんと学習成果を評価することによって,高校教育改革を進めて,その成果の判定にしてはどうかということが議論されていました。やはり高大接続改革で大学進学者だけの話ではなくて,高校教育全体のことをこれからも議論していく必要があると思います。
 入試を変えるとどういうことが起きるかというと,大学ではいわゆる3ポリシーが重要であるということが言われています。大学で卒業時までに達成を求める学習成果を示したものがディプロマ・ポリシーです。そのディプロマ・ポリシーを達成するためにどういうカリキュラムを編成するのかを示したのが,カリキュラム・ポリシーです。入試はアドミッション・ポリシーで,どういう人材が欲しい,どういう能力を持っている人を受け入れるかを示しているわけですが,入試での評価の方法を変えると,やはり従来とは異なった学生が入学してくることになりますので,大学教育のあり方も変えていく必要があります。
 ちなみに先ほど冒頭に企画官の方から参考資料の紹介があって,今入試がどう変わっているかということで,大阪大学のAO・推薦入試の事例も少しだけ紹介していただいておりますが,今年で全学部で実施して4年目になりますが,AO・推薦入試で入ってきた学生は,従来の一般入試で入ってきた学生とはかなり異なった,学力はほぼ同じでも,将来展望とか意欲で非常に異なったタイプの学生が入ってきています。それは学生集団の多様化ということで非常によろしいかと思いますが,そういう従来と異なったタイプの学生が入試改革によって新たに大学に入ってくれば,教育方法も当然変えていく必要がありますので,3ポリシーの一体的な運用・改革は非常に重要かと思います。
 5枚目は,簡単に言うと現行の高校と大学の関係を示した図ですが,制度上,高校教育と学士課程,大学教育というのは十分に接続しておらず,入試という1点だけで結ばれていることになります。では,現実はどうなっているかというと,入試が果たして大学で学ぶために必要な能力を十分保証しているかというと,そうではなくて,大学の1年生が高校4年生じゃないかというぐらい,補習教育とか初年次教育が必要になってきている。こういう状況を改善していくために,教育接続への転換が必要ということで,高等学校教育の改革,それから,大学教育の改革を通じて,生徒・学生の学びがスムーズに移行できるような形に変わっていくべきである。そういう方向性の中で,では,大学入試はどうあるべきかということを考えていくということか重要だろうと思います。
 最後にこの会議の今後の論点についてです。先ほど何人かの委員からも,今回の英語4技能と記述式の問題だけではなくて,より中期的・長期的な課題の検討もきちんと整理すべきだというようなお話がありました。そういう意味で,まずこの会議で緊急的といいますか,年末までに解決しなければいけないアジェンダとか,何を議論すべきか,そういうことをまずこの会議体の委員の方々で合意を形成する必要が,まず一番重要だろうと思います。
 次に,初等教育,中等教育,高等教育を多くは,切れ間なく児童・生徒,学生さんは学んでくるわけですが,その中で大学入試というのも1つの評価の仕組みですので,この初等,中等,高等教育の学習のプロセスの中で,大学入試を学習評価としてどう位置付けるのかというような議論も,今後必要だろうと思います。高等学校での学習成果の評価を大学入試に求めるのか,大学教育を受けるために必要な能力の評価を大学入試に求めるのか,あるいは両者が大学入試に必要なのかといった点の議論も必要だろうと思います。
 そして,高等学校の学習成果の評価を誰が行うのか。例えば,主体性とか,今回議論になっている英語4技能とか,表現力とか,調査書の評価というのは,高校がやればいいのか,大学がやればいいのか,あるいは両者がやればいいのかというような整理も必要だろうと思います。それから,これらについて議論が進み,大学入試がどういう役割を今後果たしていくべきかということが明らかになった場合,先ほども議論がありましたけれども,共通試験と個別試験のそれぞれの役割をどう考えるかということも検討していく必要があるのではないかと思います。
 先ほど芝井委員からお話がありましたけれども,共通一次試験というのはまさに国立大学の入試改革として行われ,共通一次試験で高等学校の普遍的な学習成果の達成度を確認し,大学に入って必要な学力・能力は個別の試験で評価するという,そういう制度設計になっておりました。現在は国立・公立はそういう制度に乗っかっておりますけれども,先ほど芝井委員の御指摘もございましたが,共通試験,センター試験のみの結果で合否を判断している大学もありますし,センター試験を活用せずに個別試験のみで合否を判定している大学もたくさんありますので,共通試験と個別試験のそれぞれの関係,役割を明確にしていく必要も,今後あるわけです。
 最後は教育における公平性とは何かです。教育における公平性や公正性,特に今回は大学入試における公平性をどのように考えればいいのか。前回申しましたが改めて申し上げますと,もはや現状でも様々なところで公平性というのは必ずしも保証されていないわけで,大学の方できちんと一人一人の背景を含めた形で適切に評価していく方向に,個人的には是非変わっていけば良いと思います。
 最後に,ここには書きませんでしたけれども,過去20年来,30年来,日本の入試をめぐっては様々な課題が指摘されたまま,全てが積み残しにされてきたところもあります。まず定員制の問題です。これも過去の中教審や大学審議会で入試改革の障害として定員制の問題は指摘はされております。定員があるために,1点刻みで,志願者に順位をつけざるを得ないという状況が生じているがために,大学入試が国民の皆様の関心が非常に高いということになっています。私はやはり,入試という入り口ではなくて,大学教育の出口で学生をきちんと評価するという国に変えていくべきだと思います。そのためには,定員についてはもう少し柔軟に考えてもいいのかなと考えます。それから,これもシステム会議等で議論されておりましたが,共通試験の機会は1回だけ。また,個別試験も国立,公立大学では基本は2回までです。そのため人生の一大事ということになるわけです。それでいいのかということで,これまでも複数回実施の可能性に言及されてきましたし,今後も真摯に議論すべきです。また,入試の時期も,毎年センター試験の頃は雪が降って交通機関が乱れて,試験開始が繰り下げ,というような話もあります。今年は幸いにして暖冬でしたので問題はなかったんですが,この時期,冬というのはインフルエンザの流行とか風邪に罹患するとか起きますので,この時期に本当に大学入試を集中的に我が国で実施してよいのかというようなことも課題ではないでしょうか。
 このように,大学入試をめぐっては,様々な大きな課題がありますので,この会議で解決していくのは難しいかと思いますが,益戸委員が御指摘されたように,この会議で解決できない問題についてはきちんと整理した形で,次の会議体に申し送るということが必要ではないかと思います。少し時間オーバーしたかもしれませんが,これにて私の発表は終わります。ありがとうございました。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,続きまして,牧田委員よろしくお願いいたします。資料5でございます。
【牧田委員】
  よろしくお願いいたします。まず,私の属性なのですけれども,私は地方の中小企業経営者でありまして,地元の商工会議所の会頭を10年ほど務めております。それから,経済同友会の副代表幹事もやっております。経済同友会の活動の中で教育問題に取り組んでいまして,世界各地の教育事情を,これで六,七年にわたって視察をしてまいりました。ということで,今日私が皆さん方に発表する意見のほとんどは,地方で活動する経済人としての視点が中心になるかと思っております。
 最初にエクスキューズをしておきますけれども,私はとにかく第1回目の発表に,団体代表を選ぶというのは何事かということで文科省の方に申し上げたわけでありまして,こういう発表は知見のたくさんある有識者の皆様からやって,最後,我々団体代表が発表するというのがいいのではないかなと思っているわけであります。おまけに私,次の回は都合が悪くて参加できないので,今日発表せよということでありましたので,本当に気が引けております。それから,テクニカルな話は正直できないので,今日は本当に私の主観に基づいた概念論に終始すると思いますけれども,どうかお付き合いをいただければと思います。
 お手元の資料に従ってお話をしようと思ったのですが,何分思いついたことを書き殴ってきたものですから,正直きちんと精査をしておりません。早速訂正がありまして,3ページ目の5の検討事項への結論の1,英語4技能評価のあり方というところの2つ目のパラグラフで,「したがって,大学入学共通テストにおいて「聞く」「話す」の2技能」というふうに書いてありますけれども,基本的には私はリスニングも別にとらなくてもいいと思っていまして,マークシートでは「読む」というところだけで十分なのではないかと,そこはそういうふうに読み変えていただければと思いますし,傍聴者の方々,この紙だけ持っていってこれをどこかに載せるということだけはやめていただきたいと思っております。
 それでは,頭から御説明をしたいのですけれども,10分という限られた時間でありますので,本当にかいつまんだ話になると思います。この章立てといいますか,Ⅴの結論を導き出すための前提条件として,ローマ数字のⅠ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳが,そういう視点から捉えた考察であります。
 まず,1番目は大学入試についてということでありますけれども,そもそも大学入試というのは,大学に入るための試験なのじゃないかということが私の大前提であります。そこへ共通一次学力試験が導入されて,これはまさに一次試験だったわけなのですね。ですから,私はこれがまず大原則なのではないかと思っております。これが歴史の変遷を経て,今回大学入学共通テストという形になりますけれども,やっぱり始まりはそれぞれ大学で行われる,国立大学で行われる二次試験を補完する機能が大前提だと思っています。
 それから,2つ目,高校生の現状ということで,これはデータがありません。データはありませんけれども,私がPTA活動をしていて感じたことは,ほぼこのようなことであります。つまり,どういうことかと言いますと,高校生に聞くのですね。何で高校行くのって聞いたら,みんなが行くからと答えるのですね。誰も高校行きたくて行くわけではないのでありまして,小学校,中学校,勉強についていけなかった子供たちは,本当は高校へ進学せずに働きたいのです。ところが,働いても一人前の給料を頂けないわけであります。これは例えば,ドイツなんかでいうとマイスターという制度があったりして,国が賃金を保障するわけですね。ですから,勉強が嫌いな子でも,ちゃんと義務教育が終わった後は生きていける道を準備されているのですけれども,残念ながら我が国ではそれは準備されていないので,子供たちはしようがなく高校に行くということなのです。
 これがあるがゆえに,今度は高校卒業する段階で,本当に高校生たちが高校で身に付けなきゃいけない力を本当に付けているのかという問題があるのであります。これは残念ながら,半分以上の高校生はこの力を身に付けてはおりません。学習指導要領でこういったことを学びなさいと言われたことの半分もマスターしていないのであります。でも,そうは言いながらも,次は今度はみんな大学へ行くから,みんな専門学校へ行くから,みんな短大へ行くからということで,高等教育機関へ進学していってしまう現状があるわけであります。これが実は今の高校生の実態なのであります。
 こういったことで入試ということを捉えていくと,何と言いますか,今,高大接続システム改革という話がありますけれども,実はこれはいわゆる皆さん方が描いておられる普通といいますか,ちゃんと勉強ができてきている子供たちが対象になっているわけでありまして,実はそれの対象にならない高校生たちがたくさんいるということを,是非御理解いただきたいと思っています。
 それから,3番目の英語(入試)についてとありますけれども,これは全く皮肉っぽく書きましたけれども,我が国は実は翻訳天国であります。我が国ほど洋書が日本語に翻訳されて出版される国は,実はないのであります。世界いろんな国へ行っても,原文で読まなきゃいけない国がほとんどなのですね。そのため,そういう国の人たちは,必要に迫られ英語を学ぶのであります。
 フィンランドという国も見てきましたけれども,フィンランドというのはフィンランド語という母国語があるわけですけれども,ほとんどの国民が英語をしゃべれます,使えます。それはなぜかというと,フィンランドという国は貿易で儲けなきゃいけないのですね。国を挙げて英語が使えないと,国の経済が干上がってしまう現状があるわけです。ですから,例えばフィンランドのテレビをつけても,英語の番組があふれるぐらい流れてくるわけですね,フィンランド語の番組と併せて。ですから,そうやって必要に迫られることが,実は大事なのであって,じゃあ本当に我が国で英語が必要に迫られてやらなきゃいけない人というのはどれぐらいいるのですかというのが問題提起であります。
 ちょっと有名になりましたけれども,某企業が英語で会議を,日本企業がですよ,日本人だけで英語で会議をやるというのが話題になりましたけれども,私ら経営者からして,本当にその会議で意思疎通が図れるのかななんて思ったりもしているわけであります。
 そういったことで,英語を含めた外国語教育というのは,基本的には日本人であれば国語と外国語が変換できればそれでいいわけでありまして,英語で考えなきゃいけないとか,英語でイメージできなきゃいけないなどというのは,それはまさにネイティブや帰国子女の皆さん方が理想とするところであります。ですから,日本人の英語というのを考えてほしいというのがⅢであります。
 Ⅳの記述式についてであります。これはいろいろ議論がありますけれども,記述式というのは自由に書くわけでありますから,採点者の裁量が大きく左右します。ですから,ここに公平さ,公正さというのが確保できることは,これは絶対リスクはゼロにはならないわけでありまして,これはある程度責任を持って試験を実施できるところが責任を持って採点すべきでありまして,私の思いから言えば,それぞれの大学がそれぞれの大学の問題で,それぞれの大学の採点者で,それぞれの基準ですればいいことだろうと思っています。
 これを踏まえまして,Ⅴの検討事項への結論ということでありまして,検討事項というのは,この会議で検討すべきことという4項目を頂戴したわけでありますけれども,それに対する私の結論であります。1番目の英語4技能の評価。これは先ほど訂正で申し上げましたけれども,大学入試センター試験,つまりこれからの大学入学共通テストにおいては,本当にそこまでの技能を問う必要があるのかということであります。私は個人的には,ですから,今のリスニングも,実はリスニングも毎年トラブルが起きているのですね,会場などの問題で。このリカバリーにはまたすごい手間がかかるわけです。だったら読む,リーディングだけの試験をマークシートでやればいいのではないかと。そこで聞く,話す,書くという技能が調べたいのであれば,それはそれぞれの大学が個別におやりになればいいことだろうと思っています。
 それから,記述式の出題については,これは全く先ほどと同じですけれども,採点基準を明確にしようとすればするほど,実は問題は簡単かつ画一的な問題になっていくわけで,本来記述式で問わなければならない表現力だとか何とかという3つありましたけれども,それは実はどんどん遠ざかっていくことになります。したがって,これもそれぞれの大学の個別の試験でおやりになるべきだろうと思っています。
 それから3番目,経済的な状況等の話ですけれども,これは今現在行われている大学入試センター試験で大きなトラブルは起きていません。ですから,私はこのまま踏襲していけば,この問題はクリアするのではないかと思っています。
 最後です。これが実は肝なのでありますけれども,今我々は,大学入試を考えてはいますけれども,実は大学入試だけを考えていては,この問題は解決しないと思っています。子供たちというのは,就学前から大学へ入学するまでの一連のプロセスの中で生きています。そのプロセスをしっかり捉えないと,この大学入試というものを語ることはできないのではないかと思っています。簡単に申し上げますと,先ほど申し上げたように,高校生というのは多様化しているのです。多様化というか,言葉は悪いですけれども,偏差値で言うとレベルがついている,格差があるのです。その全ての高校生たちに大学入試を課すという観点は,実は間違っていると思っていて,先ほどこれは川嶋先生がおっしゃったとおりなのであります。ですから,まずは大学入試を受ける資格があるかどうかということで,私は一段階,何て言いますかね,言葉は悪いですけれども,選択をするというか,セレクトをするというか,そういったことが必要になってくると思います。
 そうするとどういうことが起きるかというと,今度は高校であります。高校で本当に高校に行かなければならないというか,高校に行きたい人,高校でちゃんと勉強できたかどうか,高校で学ぶべきことを学んだかどうかということを達成するためには,中学校から高校へ行く人もきちんと覚悟を持って行ってもらわなければいけないのであります。先ほど申し上げましたけれども,みんなが高校行くから行くということでは,実はいけないのだろうと思っております。
 ということで,じゃあこの原因はどこにできたかという,ここが肝ですけれども,戦前,我が国は複線型の教育制度をとっておりました。それを敗戦によって,強制的に単線型に変わったわけですけれども,ところが大学という位置付けは複線型の大学のままなんですね。要するに,学力を究めたい人が行くところが大学ということが,単線型になってもそのまま適用されたわけです。ですから,したがって入試もそのまま複線型のときの学力を問うものだけが残っていってしまったわけで,ところがアメリカの大学入試というのはそうじゃありません。アメリカは単線型の代表ですけれども,アメリカは学力だけ問うことはあり得ないわけであります。ですから,そういった意味では,私は複線型と単線型の変換期においての大学入試が変わらなかったことに,根本的な原因があると思っておりますので,結論から言うと,義務教育後は複線型に近い形で,子供たちにたくさんの選択肢を与えていく。大学に行きたい人は,そこで自分の希望どおりに大学の受験をすると。そこに私は求められる入試があるのではないかと思っています。
 以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,大臣が公務のため御退席されますので,御感想などございましたら一言お願いしたいと思います。
【萩生田文部科学大臣】
 感想というのはちょっと僣越なんですけれども,熱心な御議論をいただいたことに感謝を申し上げたいと思います。
 過去の経緯の検証は,国民の皆様に納得していただける,よりよい制度を構築するために行うものであります。事務方が詳細な資料を作りましたが,今日十分にお目通しいただけなかった皆様は,また改めて読み込みをしていただくと分かっていただけると思うのですけれども,実は私が最後に言うならば,立ち止まらざるを得なくなってしまって記者会見などで申し上げたことは,平成28年,29年の段階で多くの皆さんから指摘をされていることばかりでした。言うならば,課題があるまま進んでしまったということを申し上げれば,もしかすると大きな課題というのは,私,文科省そのものの体質にもあったのかなという,こういう自分自身の反省も含めて思っております。がゆえに,職員の皆さんを信用しないで議論してくれというわけにいきません,信用していただきたいと思います。それに応えるだけのことを,この改革は我々,乗り越えていかなきゃいけないというふうに心に決めて,この会議を開かせていただいておりますので,どうぞ忌憚のない御意見をこれからも頂いて,今回で終わりということではなく,引き続き委員の皆様の意見発表や,あるいは外部の有識者の皆さんのヒアリングを交えつつ,過去の経緯から得られる教訓を生かして未来に向けた検討をしていきたいという,こういったスタンスで議論を進めていきたいと思いますので,引き続き精力的な御議論をお願いしたいと思います。
 また,最後にちょっと場違いでお叱りいただくかもしれないんですが,なかなか会う機会がないので。最後のセンター試験,概ね無事に終了することができました。山本理事長,ありがとうございました。この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。また来年に向けて,新たな気持ちで一緒に頑張りたいと思いますので,よろしくお願いします。皆さん,本当にありがとうございます。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,残り時間が大分少なくなってまいりましたけれども,ただいまの川嶋委員と,それから牧田委員の御発表に対して,もし御質問,御意見がございましたら,1つ2つ伺いたいと思います。それでは,河野委員どうぞ。
【河野委員(代理)】
 私,国大協の入試委員長の代理で参りましたが,恐らく今日だけの出席と思われますので,一言私の立場から意見を言わせていただきます。
 実は私,長崎県の出身であります。ご承知のとおり,長崎県は日本で最も離島の多い県であります。そういった中で,いわゆる陸続きのところと離島では,極めて経済的な格差が大きいという現実があります。このような点につきましても,基本的なことをいろいろ御議論されていますが,やはり長崎県においては島嶼群の収入と,それ以外では相当大きな差があります。そういう中で,やはりこの地域格差,経済格差は十分に考慮していただいて,様々な御議論をしていただければありがたいなと思います。特にこの点を鑑みながら,先ほどから挙がっている民間業者の活用を踏まえ,是非ともこの機会に,こういった地域の様々な問題を御理解いただければと思います。以上です。
【三島座長】
 御発言どうもありがとうございました。
 ほかにございましょうか。清水委員,どうぞ。
【清水委員】
 先ほど,1つ前の議題のときにちょっと申し上げようと思ったんですけれども,時間が気になってちょっと遠慮させていただきました。川嶋委員の1つ目の論点,ゼロとなっていますけれども,そこが非常に大事だなと思って今日伺っていました。非常に詳細な経緯の検証と,それから,課題をそれぞれ英語と記述と分けて示していただいた中に,14項目と4項目の項目が両方の試験に共通する部分と,1つずつ固有の問題というのが入っていまして,今この瞬間にも,高校2年生は来年の試験のことを考えたり,あるいはその先の試験が動いていたりという中で,動きながら委員会をやっていますので,整理の仕方として時系列に検証した後に,一旦前提となって動かないものは何で,それから,個別に検討してさらに検討していかなきゃいけないものは何かという,時系列とは違う整理の仕方も一旦どこかでやってみる必要があるなということを思いました。
 ですので,川嶋委員の射程の明確化ということがありましたけれども,守備範囲はどこまでか,ここで1年間でできることは何かをはっきりさせないと,やっぱり教育の問題,入試の問題はいろんな意見がいろんなところに及んでしまいますので,かなりシャープにいかないといけないということを,ちょっと感想程度になってしまいましたけれども思いました。
【三島座長】
 貴重な御意見ありがとうございました。
 それから,小林委員。
【小林委員】
 私立大学協会の立場で来ていますが,団体の代表というのは意見をまとめてから来ないといけないので,なかなか個人の立場で話せないということもありまして,今日,発言することはできませんでした。
 今日川嶋委員と牧田委員がお話しされた中で,大学入試共通テストに関連して言えることは,多様性というキーワードが非常に大事だと思います。つまり,高校生にも,いろいろな学生がおり,国が求める,英語がペラペラ話せて表現力があって,思考力・判断力がある,そういう人が全てではない。そうでなくても成功する人はたくさんいらっしゃるので,そういう多様性を一把一絡げに同じ共通テストで測るというのが,結局,多様性になっていないのではないかという危惧はしております。
 特に英語の4技能を資格試験に代用するというのは,結構高校生にとってはかなりな負担になってしまいますし,多様性という意味でも合ってないのではないか,という気がしました。それから,記述式も,条件付き記述式で短い形式にすると多様性がなくなります,同じ採点をしないといけませんから。そういうやり方が本当にいいのかどうかというのが,お二人のお話を聞いて感じたところです。
 あと,牧田委員の入試の資格試験にしたらどうかという御意見もありますけれども,私立大学はとても無理です。2月5日に試験結果をもらっても,もう1月から一般試験が始まっていますので,文科省は一般入試を2月1日以降にしてくれというふうに要望されていますが,実際には私立大学では1月から,しかも何回も一般入試を行うところもありますので,入試の資格試験とするのは無理だと思います。アラカルトで使うぐらいがせいぜいだと思います。一応参考までに。
【三島座長】
 ありがとうございました。それでは,最後に。
【末冨委員】
 手短に申し上げます。まず,川嶋委員の報告を聞いて思いましたのは,この会議の役割が何をどこまで検討しなければならないかというときに,やはり大学共通テストそのものの役割自体に踏み込まざるを得ないと。そうすると,期間が確か1年を目途にと言われていましたが,1年以内とはどこにも書いてございません。終わりを12月と切るのか,それとも第1回の共通テストの状況まで含めて判断をしていくのかということについては,期間の問題はかなり慎重にされなければならないんだと思います。私も正直早く終わった方がいいなとか,個人的には思ってしまっていますが。とはいえ,またここから新たな会議体を別にとか,そういった御判断は文科省の方でなさるのでしょうけれども,1年でいいのでしょうかということです。
 もう一つが,牧田委員が最後の4ページに書かれていらっしゃったことに私,強く感銘を受けました。私自身は有識者会議委員として意見は申し述べておりますが,私が正義だとも思っているつもりもございません。ただし,限られた時間,限られた場での発言をどうしても尊重しながら,文部科学省が意思決定をしていかなければならないというときに,今日おまとめいただいた参考資料3の様々な経緯の検証を見ていたら,どの会議体で何を判断しなければならなかったのか,文部科学省と大学入試センターは,そこにおいてどのように,例えばですが,これを決めてほしいだとかいった権限を持ち得るのかといった意思決定の権限の錯綜といったもの,あるいは不透明性といったものがあるのではないかと思います。そういった望ましい大学入試のあり方を考える上で,誰がどのような権限を持っていくかというのは非常に大事な意思決定の基本であろうと思いますので,そうした権限体系の整理も含めて,併せて検証をしていく必要がある。それから,望ましいあり方の将来像も含めて検討していく必要があるのではないかと思いました。以上です。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,5時を過ぎてしまいましたけれども,最後に本日の委員の皆様の御意見に対して,政務官から御感想等ございましたらお願いいたします。
【佐々木文部科学大臣政務官】
 本日は,熱心な御議論をいただきまして誠にありがとうございました。グローバル化を始めとして社会が変化していく中で,高大接続改革や英語によるコミュニケーション能力の育成,そして記述式問題自体は重要であるのかなと,このように思っております。
 しかしながら,今日も様々御指摘いただきましたけれども,それらの課題について,共通テストと個別選抜の違い,また入試と入試以外の高校の教育ですとか大学の教育,こういったこととの役割分担を意識しつつ,検討していかなければならないんだろうと思っております。その際には,入試の公平性,公正性,政策の実現可能性や,受験生の立場に立った検討,これが重要であると思っております。
 また,大臣からもございましたけれども,過去の経緯につきましては,引き続き委員の皆様方の意見発表や,外部有識者からのヒアリングを交えつつ,重要なことですので御議論をお願いしたいと思っております。
 私もこの検討会議の重要性に鑑みて,今後もできる限り出席をさせていただきたいと思っておりますので,今後ともどうぞよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。
【三島座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,時間がもう過ぎておりますので,本日の第2回の検討会議はこれで閉会させていただきたいと思います。次回以降,引き続き団体代表委員,有識者委員からの意見発表を行っていただき,それらが一段落ついたところで外部の様々な有識者のヒアリングも行ってまいりたいと思います。再三御意見がございましたように,なるべく主題に絞っていって考えないといけないと思いますので,進行にはいろいろと考えてまいりたいと思います。
 それでは,武藤さん,よろしくお願いいたします。
【武藤高等教育局企画官】
  第3回の会議ですけれども,2月13日木曜日の15時から17時で行いたいと思いますので,非常に近接しているんですけれども,どうぞよろしくお願いいたします。
【三島座長】
 それでは,本日はこれまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。

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