学校法人のガバナンスに関する有識者会議(第11回) 議事要旨

1.日時

令和3年3月2日(火曜日)15時00分~16時30分

2.議事要旨

学校法人のガバナンスに関する有識者会議(第11回)での主な御意見

(基本的な認識)
○ 2つ目の黒ポチの冒頭「学校法人は」の前に、「私立学校法はその目的を、私立学校の特性に鑑み、この自主性を重んじ、公共性を高めることによって、私立学校の健全な発達を図ることと定めている。」と入れた上で、最初に持っていってほしい。学校法人、私立学校の理念、哲学をまず述べた上で、いろいろな公的支援もあるし、公教育としての責任もあるし、だからこういうことが必要だという論理の展開になるべき。具体的な提言に加えて、理念的な部分を提言していくというこの会議の目的にも沿う。
○ 4ページ17行目において、「理事会の執行と監督の分離」となっているが、私立学校法36条で理事会は監督し、37条で理事が職務を行うことになっているので、「理事の執行と理事会の監督の分離」というような形にしないと、理事会そのものが執行と監督で分離するというのは違和感がある。
○ 4ページ17行目の「優れた理事長・」の後に「学長」を入れほうがよい。学長は大学の運営にとって非常に重要な役割をするので、「理事長・学長・役員の選任」として、優れた学長を選ぶことも非常に重要だということを入れたほうがよい。
○ 学長の選考についてはいろいろなデータに基づいてきちんと議論したことはなかったので、8ページの注32のような形で入れることについては、違和感はあるけれどもこれで了承。これ以上進んで本文の中に何か学長を入れることであれば賛成できない。

(評議員会の基本的な職務)
○ 6ページ30行目から7ページの2行目で、「理事長があらかじめ評議員会の意見を聴かなければならないとされている事項のうち、中期的な計画、寄附行為の変更、合併、解散、役員報酬支給基準など一定の重要事項については、評議員会の同意、承認等の議決を要するものとしていくべきである」とあるが、これらの事項のうち、同意、承認の議決ではなくて、評議員会の議決そのもので決まるものもある。例えば寄附行為の変更については、評議員会で決めることになるではないか。同意、承認を評議員会が議決するということになると、今度は理事会が拒否権を持ってしまう事項が出てきてしまう。理事会の同意を評議員会がするという形では機能しない。「一定の重要事項については、評議員会の議決(同意、承認等)も含む」と、同意、承認が原則というニュアンスが出ない書き方ができるのかどうか。理念としては、そういう方向になっていくだろう。
○ 承認、同意の決議という形で評議員会が関与するときに、理事会で拒否権を持っているとは考えない。前回も、評議員会自体に提案権がある場合もあるという議論をしたが、その提案権の下において議決すれば、それを理事会が拒否できるということにはならない。最終的に評議員会の決議が必要なときには、評議員会の決議があれば、それで決着する。実際に私学の関係者がこれを理解するときに、中期的な計画などは理事会でまとめて評議員会に提案して、評議員会としてはそれを承認、同意する、という形を取るので、そういうごく普通の流れを分かりやすく書いたということだ、と理解している。
○ この提言には、理事、監事、評議員、それから役員という言葉が出てくるが、この提言は一般の人に向かって示すものなので、最初のところで「何を役員と呼ぶ」のような形で入れたほうが一般的な誤解が防げる。

(評議員の在り方)
○ 11ページ注45で評議員のメンバーとして教員や職員も参加することを前提にしながら、議決権の行使に関しては一定の制約を受ける場合もあると書いてある。理事長の言ったことに従うというよりは、むしろ理事長の意見に反対するような教員が実際には多いのではないか。そういう意味では、教員は利害関係があるから、例えば教員の地位、身分に関連する問題だから、教員たる評議員は議決権の行使ができないというのが果たして適切なのかどうか。しかし文章としてはこれで収まればと思っている。

(監査・内部統制の体制整備)
○ 16ページ14行目の「これ」が消えて、「同法に基づく監査」になっている。この「同法に基づく監査」はその直前の私立学校振興助成法に基づく監査と読み取れる。かえって前のほうで自然に読めるのではないか。私立学校法の中で会計監査人という位置づけがあって、その会計監査人が専門的な知見を持って、会計と外の目から見た監査を行っている。この文章は「会計監査人による監査と監事監査との連携」という読み取り方ができるような文章にしたほうがよい。
○ ガバナンス・コードについては、この有識者会議の方向性・理念を踏まえて、極力取り入れてほしいという要請を文部科学省から関係団体にして欲しい。
○ ガバナンス・コードについては、関係団体に、ぜひ有識者会議の議論を取り入れる方向で検討いただきたい。文部科学省でコードを作ってしまえばそれはそれでいいが、それはやらないということなら、関係団体にこの精神をできるだけ取り入れて、コンプライ・オア・エクスプレインを理想として考えるということをお願いしたい。

(用語の在り方)
○ 「寄附行為」について「より一般的に理解しやすい用語とする観点から、改めてその見直しについて検討することが考えられる」と修正してあるが、社会一般に対して、私立大学のいろいろな情報を開示していく中で、「寄附行為」という言葉で開示しても一般の人たちに理解されない。私学関係者は寄附行為という言葉に思い入れはあるが、より広く社会にいろいろな情報を出して、社会のステークホルダーの理解を得る中で大学を運営していくことになると、「寄附行為」という言葉を使い続けるよりは、本当は「定款」に変えたほうがよい。「考えられる」は「求められる」や「望まれる」にするべき。
○ 私学団体では「寄附行為」という言葉への思い入れが強いというので、これは守るべきだという意見が非常に強いが、一方で、だんだんと「定款」になっているし、という意見もある。重要なことを積極的に公開していく、社会に示していくということが理由だとすれば、大学の現場では寄附行為の中に盛り込んだり書き換えて公示するのではなくて、むしろ規約や規定にガバナンス・コードを盛り込んで、ホームページを公開したり、あるいはガバナンス・コードそのものを大学のホームページ冒頭に公開したりするという形で示すことになる。ガバナンスに関する大学の考え方を発表する場として、寄附行為が重要だからそれを「定款」に変えるのは、必ずしもそうしなくてもよい。
○ 「寄附行為」は財団法人の歴史。私学は民法上の一般法人だったところ、財団法人になって、学校法人になったという歴史を大事にすべきではないかという意見が相当多数ある。「寄附行為」でよい。
○ 規約やいろいろな形で情報を開示するにしても、大学運営の一番根本のところは寄附行為に書かれているので、そこを参照するようなことになってしまうと、大学関係者以外の多様なステークホルダーが評議員会に入ってくるときに、あるいは多様な人たちに大学運営について関心を持ってもらうときに、「寄附行為」という言葉で示していてはなかなか理解されない。
○ 「望まれる」との表現は賛成。素人が入ってきた印象から言うと、最初から「寄附行為」という言葉が全く分からなかった。