学校法人のガバナンスに関する有識者会議(第9回) 議事要旨

1.日時

令和3年1月21日(木曜日)14時~16時

2.議事要旨

学校法人のガバナンスに関する有識者会議(第9回)での主な御意見

(基本的な認識)
○ 具体の立法段階のところまでは踏み込まない方がよい。歴史的経緯も踏まえ、理念や総論を議論し、望ましい方向性を有識者という立場から提言すべき。
○ 有識者会議で最後にまとめる段階では、あまり細かい問題ではなく、基本的な考え方を示すものとした方がよい。
○ 優れたリーダーには「誠実性」、「インテグリティ」が求められ、このことを強調するとよい。
○ 学校法人の多様性に鑑み、企業がパフォーマンスを追求するのとは異なる価値があることを尊重しなくてはならない。

(評議員会の基本的な職務)
○ 評議員会の役割を諮問機関と記載するだけでは、単に諮問に応える機関だけであるように見えてしまう。重要な事項については評議員会の議決を必要とすることをメインにすべき。理事会が大学を運営し、それが適切であるかを評議員会がチェックするという位置付けをはっきりさせるべき。
○ 評議員会の在り方そのものは、前回までの私学法改正で定めたように諮問機関でよい。評議員会は監督機能も有する組織として、特に不祥事に関するチェック機能を備えるための明確な権限を与えればよい。評議員会の学校全体に対する権限を強めることは、評議員の選任方法や責任が明確に法定化されない以上、かえっておかしなことにならないか。
○ 評議員会の職務として、現在も事業報告を受けたり意見を述べたりすることはできるが、大学のパフォーマンスを評価するという機能を与えてはどうか。
○ 情報の閲覧、差し止め、解任の訴え等は、記載場所を役員の選解任から評議員会の職務に移動すべき。
○ 株主代表訴訟に相当するような役員の責任追及については、責任が宙に浮かないようにするために制度化すべき。いつでも勝手に訴えができるのではなく、例えば評議員会の決議を要求するなど合理的に利用される仕組みとすべき。
○ 理事について評議員会に解任権があれば、十分に不祥事に対応できる。但し、解任の提起から決定までをすべて評議員に集中させる必要はない。
○ 私立学校法上、所轄庁における監督規定として役員の解任勧告があるが、私的な利益を追求して濫用的な権限行使をする評議員を対象に加えてはどうか。

(役員の選解任について)
○ 理事の選解任は評議員会で行うことを原則で書くべき。誰を選ぶかがガバナンスの要点であり、外すことはできない。
○ 評議員会による選任を寄附行為で変えてしまってよいのでは、評議員会の在り方の理念がない。
○ 評議員会の最も重要な仕事は理事の選任であるべき。プロセスは様々でよいが、理事の選任は基本的に評議員会が主体的に行うという位置付けがよい。
○ 現在の私立学校法の校長理事、評議員理事、学識経験者理事の3種類は、それなりの意味がある。役員が執行者かというと、大学はそう単純ではない。
○ 理事長が突然決まり、手足となって動ける役員が急ぎ必要になることも想定し、評議員会が選んだ理事候補を評議員会ではなく理事長が選べるような理事の類型もあってもよいのではないか。
○ 全く理事長が理事選びに関与できないのは、大学の運営として現実的に難しい。
○ 選任はさせずに解任権を与えるのは整合しない。攻めのガバナンスを視野に、明らかな不祥事でなくとも、教学面での対応が十分でないという理由で理事を解任することもあり得る。この場合、評議員会や理事会は自分の気に入った人選になるまで理事(長)を解任し続けることができ、制度設計としては問題。
○ 不正時に役員を解任できるようにすることが元々の議論で、解任する者と選任する者が別ではあり得ないという意見も加わり、理事の選任にも評議員会が関与するという原則が明記されたこと自体が、大きな変化に繋がるのではないか。
○ 会社法上の解任は理由を問わず可能だが、評議員会による理事の解任は、職務執行に関し不正や重大な法令違反を要件とすべき。学校のパフォーマンスの評価なども評議員会の重要な役割だが、評価方法が確立していない以上、権力闘争に陥りやすいので、そのことを理由で解任を行うべきではない。
○ 評議員会の理事の解任権は不正等があった場合に限定しており、パフォーマンスが悪いといった理由でもって広く解任権を持たせることを提案しているわけではない。

(校長理事)
○ 大学は理事会と評議員会だけを見て議論できる組織でもなく、校長理事があることも大学の特性である。
○ 校長理事は、不正行為等がある場合の解任に限定し、少なくとも選任という形では評議員は関与せず、承認や同意にとどめる形はあり得る。解任に伴って、校長でありながら理事でないという者が出てくる問題もある。

(評議員理事)
○ 現行法の評議員会理事にこだわらず、評議員会が選出する原則になれば、その中に評議員の人も学識経験者もいるかもしれないということではないか。
○ 評議員理事には、評議員のみで自分達が望ましい人選をする場合と、選出した理事の中に結果として現評議員が含まれている場合が想定される。
○ 評議員である者の中から理事を選ぶ方法自体はむしろ残した方がいい。評議員理事のカテゴリーをそもそも認めないとなると、議論は十分でなくさらなる検討が必要。
○ 評議員理事の選出方法は、現行法では寄附行為に定める方法によることとなっており、誰が選出してもよいようになっているが、評議員会自体で選出するようにすべき。

(評議員理事の在り方、評議員による理事の兼務)
○ 理事会の活動を評議員会がチェックするとなれば、理事と評議員の兼務は適切でない。将来的に廃止していくべき。
○ 評議員と理事の兼任を認めない立場を取るのであれば、評議員である者が理事になった段階で評議員を辞めることが考えられる。
○ 取締役であった者が監査役となる「横滑り監査役」の場合は、取締役と監査役の兼任ができないので、監査役への就任承諾は取締役を辞任する意思を含むと解されれているので、理事就任時に評議員を辞任する扱いはあり得るのではないか。

(評議員会への理事の参画の在り方、理事による評議員の兼務)
○ 評議員会の活発な議論に理事が必要なら、理事が評議員を兼任しなくても、理事が評議員会に出席、陪席して説明すれば足りる。

(評議員会の運営)
○ 評議員会が理事を選任する以上、評議員会が案件を持ってくることは当然。公益財団法人では同様のことが既に行われており、できるわけがないと言っているといつまで経ってもできない。学校法人でもやればできるようにすべき。
○ 評議員会が自ら行うか、出てきたものに同意するかの根本的な違いは、評議員が提案権を持つかどうか。評議員会に議決の権限があるのであれば、評議員に提案権も位置付ける必要がある。議場に出てきたものだけしか審議しないのではおかしい。
○ 評議員会が候補者を探して自分で理事を選び、その理事の中からしか理事長を選べないとなると大学の在り方が変わってしまう。理事長も含め、理事会が候補を考えて、最終的に評議員会が承認するという形が間違いはない。
○ 評議員会の事案は、現状としてほぼ全てを理事会が用意している。評議員会が独自に理事を選解任することは現実的に難しい。評議員会が独自に議案を提案できるということなのか、理事会が提案してきたものの最終的な承認を評議員会がするということなのか、はっきりした議論をしておく必要がある。
○ 評議員理事に関しては、評議員会の母体から選ぶため、評議員会が自分達で候補を出して選任することが可能だが、その他の理事に関しては、人選能力が評議員会にあるか。
○ 会社でも、取締役会が株主総会の議案を提案し、追認されている実態もある。その上で、執行側で都合よく人選するのではなく、経営方針に合った取締役をカテゴライズして必要な能力のある者のノミネートをしっかりさせていく方向だ。学校法人も、学識経験者などの理事を大学の理念に基づいて分類し、適合する人選がなされるプロセスを確立すべき。その枠組みがあれば、理事会の推薦を評議員会が承認することも目指すガバナンスに適合するし、評議員会が自ら探して選ぶことも不可能でない。

(理事会における理事長の選任、評議員会との関係)
○ 理事長は執行側の理事会で決めるのが原則。評議員会で理事を決め、その理事が集まり理事長を決めるべき。
○ 理事長は理事会が選任するということでよい。
○ 評議員会は理事の選任には関与するが、理事長の選任には関与しないのではないか。
○ たとえ理事長でも、理事長の贈収賄のような不正を是正できないときは、評議員会が理事を解任すれば理事長は自動的に解任されることになる。
○ 理事会と評議員会が理事長の選解任などで双方が対立することもありうるため、理事会と評議員会が連携し合うことを基本として、不適切な事案が起きた際には評議員会が明確に力強く関与していく仕組みにすべき。
○ 企業でのCEOの選解任も、社外取締役がいきなり張り切るのではなく、会社のことをよく知る執行側が適切な情報共有を行うからうまくいく。学校法人でも、理事会側が評議員会側に常日頃の評価を伝えるコミュニケーションをとる実務が非常に大事。
○ 理事会の議事録は評議員会に完全に開示することを義務化すべき。

(監事、監査、内部統制)
○ 監事の任期は、監事が安心して仕事ができるようにするために決めるべき。
○ 監事がどこにでも出る権利を有していることを理解していない学校もある。寄附行為作成例において理事会の招集通知の宛先に監事が入っていないのはおかしい。
○ 会計監査人の設置というよりも、会計監査をしっかりとやる意味だと理解するので、正確な表現とすべき。
○ 監事の人材が不足しており、十分な業務監査を行うことも困難。内部監査室の必置や常勤監事への切替えなど、実質的な機能を最大限に強化していくべき。
○ 理事と監事の定期的な対話や監事のサポート体制の確保をガバナンス・コードにもっと書き込んでもよい。
○ 内部統制システムの一環として、内部通報だけでなく、監査を補佐する体制の整備などを加える必要がある。
○ 組織内の情報の記録保存を明確にすべき。
○ 内部通報については、規模にかかわらず、情報提供者の保護や通報体制の整備を義務付けるべき。

(その他)
○ 組織に関する訴えの本来の趣旨は、提訴権者や提訴期間を限定し、団体としての法的安定性を確保することにある。いつまでも無効を主張できると、大学が紛糾した時に尾を引く。
○ 「寄附行為」という用語は私学関係者の思い入れは深いが、外部人材が理事・評議員として参加していくことを踏まえると、広く理解されやすい「定款」に変えた方がよい。