学校法人のガバナンスに関する有識者会議(第7回) 議事要旨

1.日時

令和2年10月28日(水曜日)14時~16時05分

2.議事要旨

学校法人のガバナンスに関する有識者会議(第7回)での主な御意見

(評議員会の役割)
○ 理事会に対するけん制の観点から、一定の事項について評議員会に議決権限を与えながらも、諮問機関としての役割も維持する構成がよい。
○ 評議員会の理事会に対するけん制・監督は、今回の改革の目玉として落とせない。諮問の役割も十分に評価されなければならない。
○ 理事会で長期・中期のビジョンを議論するには、学内行政に通じた理事だけでは足りず、評議員会の重要性が増す。
○ 評議員会が理事会の提案に自由に十分に意見し、チェック・指導助言を強めるのは理解するが、現在の理事会のような決定機能や理事の選解任への過度な関与となると、ほとんどの法人がとまどってしまう。
○ 基本的な議論の方向性としては、評議員会は、社団の社員総会のように最終的に全て決定できるということではなく、限定された事項に対して決定権、承認権のようなものを持つべきと理解する。

(理事の選解任)
○ ステークホルダーの代表としての評議員会に、年2回程度の開催頻度で日常的な運営ができない中で、信頼する人を理事に選任する機能を持たせるべき。
○ ガバナンスの要として、外部の目が通った形で理事が選ばれる仕組みが必要であり、評議員会で選任するのが望ましい。
○ 私学の自由といっても教育機関として公的に守られている。社会福祉法人改革の機関設計の考え方を受け入れ、評議員会に監視の取組として理事の選任、解任もできるようにすべき。
○ 評議員会の権力闘争で適切な選任ができない問題が生じないよう、評議員会の下の外部有識者を含む指名委員会でノミネートし、評議員会がチェックして選任する仕組みが望ましい。
○ 理事会は組織目的のために財産を守る財団的性格に由来し、評議員会は構成員の意見を運営に反映させる社団的性格に由来する中、前者の性格をより重視した学校法人制度としては、評議員が理事を選ぶというのは若干逸脱する感覚がある。
○ 学校法人は、教学事項を理事会で重要視するため、校長理事の仕掛けがとられているが、学外者を中心とした評議員会が理事を選任する場合、教育研究の理解者を選べるか心配。
○ 原則は評議員会が理事を選任するのがよいと思うが、少なくとも不適切な理事の解任のところでは、評議員会がチェック機能を果たせることが必要。
○ 評議員会の実態やどうあるべきかの問題と絡めて、理事の選任などについて、どの程度の権限を与えたらよいかを議論する必要がある。
○ 理事に対するチェックの肝は選任・解任の人事であり、選解任の権限を別の機関が持つのは違和感がある。
○ 会社法の通説では、取締役の選任と解任の権限が分かれるというのはあり得ず、一体のものとして考えていかざるを得ない。
○ 評議員会が理事の選任を通じて理事会の活動を評価することで、優れた大学をつくるための攻めのガバナンスに大きな役割を果たせる。理事の解任や新たに全員を選任する事態は例外的に過ぎない。
○ 不祥事のある理事の解任、理事会のチェックのためだけでなく、これからの時代に学校がどうあるべきかの観点から、諮問や議決、役員人事の必要性を考えるべき。
○ イノベーションを起こすために必要なガバナンスとして、コーポレートガバナンス・コードで社外取締役が導入された。

(守りのガバナンス)
○ 解任されるべき者が事実上の支配者であるような状況であっても解任の実効性を確保するため、役員の解任の訴えの制度を整備することが必要。不正行為や重大な法令、寄附行為等の違反があるにもかかわらず、評議員会で解任が否決された場合、評議員が役員解任を請求する裁判を起こせるようにすべき。
○ 会社の株主代表訴訟の仕組みを参考に、役員に損害賠償責任が生じ放置されているような状態に対し、是正のアクションを起こせるよう、法人が理事の責任を追及する裁判を起こすよう求めることを評議員会の議決事項に加えることが必要。
○ 評議員会の理事の解任、理事会の理事長の解職とで仕組みの選択と権限の交錯がある。また、理事会でもって理事を解任するとする現在の寄附行為の規定については、評議員会の権限の検討と合わせて整理が必要になる。
○ 理事の解任について、評議員会に理事会が発議するのでは、そこが止まってしまうと機能しないので、評議員の議案提案権を措置することが必要。

(評議員会の構成)
○ 卒業生を中心に、大学の健全な発展や競争力の向上を願う多様なステークホルダーの代表として、評議員会を位置付けるべき。
○ 監視機能を果たす適格性のある母体として評議員会をつくるべき。
○ 自分で自分の行うことをチェックすることにならないよう、理事に評議員を兼任させないのがよい。
○ 多くの大学関係者は、卒業生に派閥、グループがあり、評議員会に権力闘争が持ち込まれることを懸念している。
○ 卒業生の派閥でかえって大学の運営をおかしくする場合や、卒業生が自分の経験、昔のイメージで大学を語りがちで、内部者以上に改革を止める場合もよく起きる。
○ 卒業生はよくも悪くも内部の目であり、評議員の構成として、理事、職員、卒業生などの内部者の比率を4割以内に抑え、外部の目を入れる思い切った見直しが必要。
○ 評議員に法人の適格性を評価するような権限を与える際、監事及び会計監査人との連携により、評議員の社会的な公益性を補完することが有用。
○ 小規模な学校法人で評議員会に外部の目を入れにくい場合、監事や内部監査の取組の強化や公益通報者の保護が重要。さらに、理事、評議員に高い倫理性を持った人材を選任することが原則であり、徹底していくことが肝要。

(評議員の責任)
○ 理事を選ぶ一定の責任はあるが、あまり評議員に対して責任追及をするような形にすると、多様なステークホルダーを代表する適格な評議員を確保するのが難しくなる。

(理事長・理事相互のけん制)
○ 理事会内の相互牽制は現実的になかなか難しく、過去の勤務校では、理事長については再選のタイミングで実質的に議論できたが、担当外の業務には通常口出ししにくい。私学法や行政指導で解任についての明確な規定を設けることに賛成。
○ 建学の精神、大学の置かれている状況を踏まえてどういう人を理事長として擁すべきなのか、後継者計画を議論して作ることが必要。
○ 企業では、CEO・取締役の業績評価や、指名委員会の社外取締役による後継者計画の監督、取締役会の実効性評価などが進められており、理事長・理事、理事会及び評議会も、自己評価または360度評価を行うなど透明性の向上や説得力ある評価の積み上げが必要。
○ 頻繁に開けない評議員会の諮問はもとより、理事に学外の人材を得て中長期の議論をしていくことが大事。日立製作所は社内役員が3名、社外役員が13名であり、学外理事が学校の在り方を議論できないということではないだろう。

(ガバナンスに関する情報開示)
○ 上場企業の「コーポレートガバナンスに関する報告書」も参考に、評議員の構成、理事の推薦基準、選んだ理事の評価など、ガバナンスを毎年報告する仕組みを入れることが必要。
○ 評議員会における卒業生、教職員、学識経験者の割合は大学が自由に決められるが、何のためにどういう割合でどういう人を選んでいるかをきちんと明確にすることが必要。
○ 評議員にも客観的に公平に見る目が期待される以上、属性のディスクローズにより抑止力を働かせることが必要。

(その他)
○ 海外の私立大学ではどういうガバナンス体制をとっている